2: 2010/07/17(土) 00:10:20.94
律「どうしたんだよ、薮から棒に」

澪「律は何も思わないのか?」

律「唯の口調?」

澪「うん」

3: 2010/07/17(土) 00:13:04.58
律「具体的に何がムカつくんだよ。
言わなきゃ分かんないよ」

澪「それはつまり、律は唯の喋り方や口調について何も思ってないってことだな?」

律「まどろっこしい言い方するなぁ。
……まあ、いちいち人の喋り方なんか気にしないし、それに唯の喋り方って何か問題あるか?」

澪「大有りだろ。アレやらソレやら」

律「アレやらソレじゃ分からんわ」

澪「律なら分かってるくれると思ってたんだけどな。残念無念また来週だ。」

律「さっさと話題に入れ」

5: 2010/07/17(土) 00:16:32.74
澪「唯の喋り方とか高三とは思えないだろ?」

律「そうか?
慣れちゃって今更どうこう思わないな」

澪「え?仮に私が唯の母親だったら、養護学校に連れていこうと思うぞ」

律「いくらなんでも言いすぎだろ」

澪「ええー!りっちゃんは何にもわかってないよおぉ~」

律「……」

澪「りっちゃんのぼくねんじ~ん~」

律「もしかして、唯のマネ?」

澪「うん!たん!うん!たん!」

律「おい、やめろ」

7: 2010/07/17(土) 00:19:08.39
澪「な?うんたんとか、はたから見てると痛々しいことこの上無いだろ」

律「うん。澪がうんたんしてるの見たら急にそう思えたよ」

澪「だいたい唯は語尾をやたら伸ばしすぎなんだよ」

澪「私はりっちゃんのこと愛してるんだよお~、とかさ」

律「唯がいつそんなこと言った?」

澪「…………内容は問題じゃない」

律「なんで顔赤くなってんだよ?」

澪「うるさい!うるさい!うるさい!」

9: 2010/07/17(土) 00:23:22.99
律「でも、唯以上にイタい口調のやつなんていくらでもいるしな……」

澪「一人称が自分の名前のヤツは確かにイタいな」

律「うん、私もそれはどうかと思う。それに比べたら唯の口調なんて可愛いもんだよ」

澪「あ」

律「なんだよ?」

澪「ふと唯のことで腹立つことをもう一つ思い出した」

律「まだあるのかよ……何?」

澪「『あ』だ」

律「あ?」

10: 2010/07/17(土) 00:27:42.56
澪「私が今から、今日実際にあった唯て和のやりとりを再現する」

律「?」

澪「コホン」

澪「唯ー」

澪「『あ』、和ちゃん」

律(なんか寸劇が始まったぞ。つうか、どうして『あ』を強調する?)

澪「そうなんだ。それじゃあ、私、生徒会行くね」

律(会話が全然成立してねえ)

澪「終わり」


11: 2010/07/17(土) 00:28:50.73
律「……」

澪「私がイライラする理由がわかった?」

律「理由はわからないけど、澪の寸劇見てたらイライラしてきたな。不思議だ」

澪「どうして苛々するか教えてほしい?」

律「澪にはイライラの原因がわかるの?」

澪「当たり前だろ。答はズバリ『あ』、和ちゃんの『あ』だ」

律「『あ』?」

澪「『あ』」

12: 2010/07/17(土) 00:32:08.17
澪「あ、和ちゃん」

澪「唯は毎回和と目が合う度に『あ』、と言って、それから和ちゃんって言うんだ」

律「そうだっけ?全然覚えがないな。で、その『あ』に対して何がどうイライラするんだよ?」

澪「え?理由なんてないけど」

律「ないんかい」

澪「でも、見てて腹が立つ。だって『あ』だぞ、『あ』」

澪「私は『あ』じゃないって!」

律「『あ』っそ」

16: 2010/07/17(土) 00:35:50.02
澪「しかし、唯に関して苛々することはこれだけじゃないから困る」

律「まだあるのかよ」

澪「まだあるんだ」

律「聞かないとダメ?」

澪「この会話が今後の律の人生に大きな影響を与えるかもしれない」

律「大げさだな。しかも澪が一方的に喋ってるだけで私はほとんど喋ってないし」

澪「会話をキャッチボールにたとえることがあるだろ?」

律「あるな」

澪「律も知っての通り私は会話が下手だ」

律「まあ、決して上手ではないな」

18: 2010/07/17(土) 00:38:33.76
澪「だから私は最初はキャッチボールではなく、
投球練習をして、それからキャッチボールすることにしたんだ」

律「順序逆じゃん」

澪「後で律にも投げさせてあげるから」

律「私はこの会話を投げたいな」

澪「上手いこと言うなあ」

律「いや、別に上手くないし。ていうか澪は唯の話がしたいんだよな?」

澪「そうそう。これは是非聞いてほしい」

律「……」

澪「先週、たまたまコンビニで唯と鉢合わせた時の話だ」

律「コンビニで唯が何かやらかしたのか?」

澪「逆だ。何もしなかったんだ」

律「?」

20: 2010/07/17(土) 00:41:47.33
澪「そう……唯は何もしなかったんだ。コンビニに入ったのに、だ」

律「悪いんだけど、私にもわかるように説明してくんない?」

澪「先週、偶然私はコンビニで、りぼんを立ち読みしている唯に会ったんだ」

澪「てっきり私は唯がコンビニに用事でもあるのかと思って聞いたんだ」

澪「『何か買いに来たの?』って」

澪「でも、唯は『違うよ。ただ涼みに来ただけ』って返してきたんだ」

律「それに何か問題あるの?」

澪「この時点では問題は無い。問題はその後だ」

澪「二、三分会話して唯はコンビニを出たんだ」

澪「何も買わないで、だ。有り得ないだろ」

律「どこら辺がどう有り得ないんだ?私にはさっぱりわかんないんだけど」

23: 2010/07/17(土) 00:46:39.35
澪「まさか律、本気でわからないのか?」

律「うん。全然わかんない」

澪「……ハア」

律(その哀愁漂うため息は何だ?)

澪「コンビニに涼みに来るのはわかる。
私も何の理由もなくコンビニに立ち寄ることがあるから」

澪「でもな、コンビニに入ったからには十円ガムのひとつでもいいから、何か買うのが人としての常識だろ?」

律「そ、そうかな?」

澪「そうなの。だいたい、私は
店員さんの視線が気になって何も買わずに店から出るなんてできないしな」

律(小論文の問題に出てきそうな話題だな……)

澪「もちろん律はそんなことしないよな?」

25: 2010/07/17(土) 00:50:41.51
律「まあな。この前もコンビニでホームランバーとか
ガリガリくんとか、メロンの容器に入ってるアイスとか買ったよ」

澪「さすが、律。常識を弁えてるな」

律「当たり前だよーん」

澪「それに比べ唯ときたら……」

律「いやいや、待った。その時、唯はたまたまお金を持ってなかったのかもしれないよ?」

澪「高校生にもなって外出する時にサイフ持ってないとか馬鹿だろ」

律「確かに、それは正論だな」

澪「そもそも唯は憂ちゃんに依存しすぎなんだよ。将来どうするんだ、あれ?」

律「澪ちゅわーんっ!」

澪「急に大きな声を出すな!心臓に悪いだろうが」

律(本当に悪いのはお前のイメージだ!……とりあえず話題を変えよう)

26: 2010/07/17(土) 00:53:43.22
律「ほら、この前どこのコンビニが一番イイかって話してたじゃん」

澪「前から思ってたんだけどさ」

律「……何だよ?」

澪「律ってコンビニで買い物する時、買いすぎじゃないか?」

律「へ?そうかな?」

澪「うん。コンビニの商品とか無駄に高いんだからなるべく薬局やスーパーで済ますべきだと思う」

律「でもさっき、澪……」

澪「それとこれは別だろ。
コンビニに入ったら、やっぱり何かしら買うべきだけど、だからって無駄遣いしちゃダメだ」

律「……そうだな」


29: 2010/07/17(土) 00:57:58.33
澪「だいたい律はバイトもしてないんだろ?
それなのに無駄遣いするなんて、親に失礼だよ」

律「澪もバイトしてないじゃん!」

澪「私は、バイトしないかわりに勉強きちんとしてるし、無駄遣いもしていない」

律「む。私だって無駄遣い……は、するけど勉強はきちんとしてるぞ!」

澪「当たり前のことだ。勉強しない受験生なんているわけがないだろ」

律「ぬぬぬ……」

律(ムカつくな……てか、何で今日の澪はこうもツンケンしてるかね?)

律「なあ澪?」

澪「なに律?」

32: 2010/07/17(土) 01:01:48.08
律「今日イヤなことでもあった?」

澪「……」

律「あったんだな」

澪「うん」

律「言ってみな。言うだけでもけっこう気分が楽になるだろうし」

澪「実は……唯に馬鹿にされたんだ」

律「唯に?何を馬鹿にされたんだ?」

澪「喋り方」

律「はい?」

35: 2010/07/17(土) 01:05:28.73
澪「だから唯に私の喋り方を馬鹿にされたんだよ」

律「どんな風に?」

澪「コホン」

律(また寸劇を始める気か)

澪「ねえねえ澪ちゃ~ん」

澪「なんだ唯?」

澪「澪ちゃんの喋り方って面白いよね~」

澪「え?そ、そうかな?」

澪「うん、だって澪ちゃんの喋り方って男口調だったり、女口調だったりメチャクチじゃん」

澪「なん……だ、と?」

澪「以上だ」


37: 2010/07/17(土) 01:12:24.48
律「それって別に馬鹿にしているわけではないんじゃ……」

澪「いーや。どう考えても馬鹿にしてる」

律「そんなことないって。唯の場合、ちょっちデリカシーに欠けてるだけだよ」

澪「違う!絶対に唯は私の喋り方を馬鹿にしてるんだ!」

律「落ち着けよ。だいたい話し方なんて個性の問題だろ……んー?」

澪「……どうした?」

律「いや、澪ってそういえばいつからそんな喋り方だったかなあってふと疑問に思って」

澪「どういうこと?」

律「ほら、澪も昔はそんな話し方じゃなかったじゃん」

澪「そうだっけ?」

38: 2010/07/17(土) 01:14:07.48
律「昔はもっと女の子らしい口調だったよ」

澪「言われてみればそうかも。でも、今はそんなことはどうでもいいよ」

律「まあまあ。私にも投球練習させてよ」

律(ふふふ、りっちゃん隊員思い出しちゃったぜ。澪ちゅわんの黒歴史を)

澪「ニヤニヤした顔でこっち見るな」

律「まあまあまあまあ」


40: 2010/07/17(土) 01:18:33.05
律「そう。確かに昔は普通に女の子らしい喋り方してたんだよ」

律「でもいつからか、こんなカワイくない喋り方になっちゃったんだよな。いつからだっけ?」

澪「カワイくないは言わなくていい……中学にあがってからじゃないか?」

律「言われみればそうかも。ああーそういえばあの頃の澪は色々変だったよなー」

澪「…………何が?」

律「いや、何て言えばいいのかな?けんもほろろとでも言うのか?」

律「ずいぶんツンツンとしてたよな」

澪「そうか?私はよくその中学時代を覚えてないんだけどな」

41: 2010/07/17(土) 01:21:06.41
律「私は鮮明に覚えてるよ」

澪「……そう」

律「最初私が澪のことおかしいなって思ったのは……そうそう、たしか中二の文化祭が終わった頃だ」

澪「……」

律「私が、クラスのみんなで文化祭の打ち上げに焼肉でも行こうって言ったんだ」

律「もちろん、澪のことも誘ったんだけど」

律「澪、その時なんて言ったっけ?」

澪「……記憶にございません」

律「それじゃあ教えてあげよう」

43: 2010/07/17(土) 01:25:08.73
律「『私は遠慮する。馴れ合うと、人間強度が下がるから』」

澪「……」

律「いやあ、私には澪が言った言葉の意味が全くわからなかったな。これ、どういう意味?」

澪「いや……だから、何かこう、何て言うか……」

律(ヤベー、澪イジメるの超楽しい)

律「中三の頃は、やたら『やれやれ』って口にしてたよな」

澪「そ、そうか?あれれ?」

律「肩竦めて、両手広げて、やれやれって。なに、あれはアメリカ人のマネ?」

澪「あれはアニメのキャラの……いや、何でもない」

50: 2010/07/17(土) 01:29:23.46
律「まだまだあるぞ」

澪「あの、悪いけどそろそろ、話を変えないか?」

律「おいおい、さっき約束しただろ?私が澪の話聞く分、澪も私の話聞いてくれるって」

澪「……ハイ」

律(りっちゃん隊員、続投です!)


54: 2010/07/17(土) 01:33:40.89
律「覚えてないっていうか、思い出したくないだろうけど中三の頃の自分の口癖、覚えてる?」

澪「……」

律「教えてさしあげよう」

律「『やっぱり私には人の気持ちが理解できない』」

澪「ぐはっ……!」

律「いやあ、よくわからん心理学の本を見ながら事あるごとに真顔で澪が言うからさ」

律「いやあ、真面目に澪の考えてることが理解できないからさ」

律「あの頃はどう対応すればいいのか全然わからなかったよ」

55: 2010/07/17(土) 01:37:43.86
澪「り、律……待ってくれ、私が……私がなにをしたと……」

律「特に一番私が困ったのは澪と私の二人で喫茶店行った時」

律「注文したブラックコーヒー眺めながら」

律「『このコーヒーのように深い闇をまとった私の
心を知ることのできる人間なんて、この世には一人もいないのだろうな』」

律「澪……カッコよすぎたよ」

澪「古傷をえぐるなああああああああ」


57: 2010/07/17(土) 01:42:34.79
澪「はあはあはあはあはあ、はあはあ」

律「どう?落ち着いた?」

澪「……何とか」

律「そいつはよかった」

澪「……」

律「……」

澪「……」

律「何か言えよ」

澪「あ」

律「『あ』はムカつくんだろ?」

澪「うん。でもそれ以上にもっとヒドイことに気がついた」

58: 2010/07/17(土) 01:46:03.06
澪「そうなんだよ。私は唯の存在がかすむほどのイタい女子だったんだ」

律「うん、そうだよ」

澪「思い出すだけで氏に至る病っていうのが、この世の中にはあるんだな」

律「おいコラ、私の部屋のベランダから飛び降りようとするな」

澪「いけない、いけない。昔を思い出して氏ぬところだった」

律「今だって、メルヘン乙女歌詞をファンクラブの前で
疲労したりしてるし、イタさについては中学時代とそう変わらないよ」

62: 2010/07/17(土) 01:49:52.18
澪「うぅ……律がいじめる」

律「人のふり見て我が身をうんたんって言うだろ?
唯のことの前に自分のことをどうにかするべきだと思うよ」

澪「……おっしゃる通りです」

律「そうしょげるなよ。百年もしたら忘れるよ」

澪「氏なないと忘れられないんだな」

律「それに、最近家の弟もよく、『クッ……右腕が……!』
とか悶えてるし、そんなに珍しいことでもないんじゃない?」

澪「そ、そうか。それなら安心だな」

66: 2010/07/17(土) 01:54:43.46
律「まあ、三年くらい経ってからまた氏にたくなるかもしれないけど、ガンバれよ」

澪「高校では別にイタいことしてないし、イタいことも言ってないだろ、私」

律「……」

律(澪は痛いの苦手と言いつつ、イタいのは得意なんだよなあ)

律(しかも自覚無し)

律「うん?ところでさっきから何読んでるんだ?」

澪「これか?はい」

律「……これか」

68: 2010/07/17(土) 01:59:57.93
澪「『猿でも面白いほどよくわかる!心理学』って本」

澪「詞の参考になるかと思って持ってきたんだけど……」

律「この本って澪が歩く黒歴史って呼ばれてた時に持ち歩いてた本だよな?」

澪「かげで私はそんなふうに呼ばれていたのか?」

律「うんにゃ、みんな堂々と言ってたぞ」

澪「律、来世では私がイタい行動をしそうになったら止めてくれ」

律「だから、ベランダから落ちようとするな。ていうかどこからそのロープは用意したんだよ」


69: 2010/07/17(土) 02:05:40.95
律「まあなに……中学生ってさ、一番多感な時期じゃん」

律「だから、澪みたいに多少愉快な性格になっちゃう人は、私はたくさんいると思う。」

澪「本当?本当にか?私はイタくないのか!?」

律「多分。……そうだ。この心理学の本に書いてないか調べてみようぜ」

澪「頭いいな、律」

律「ペラペラペラペロ」

70: 2010/07/17(土) 02:08:08.84
律「……残念ながら、澪や私の弟みたいな症状については書かれてないみたい」

澪「……そうか。ははは、私はこの先もイタい人間としての十字架を背負っていくのか」

律「おーい、また例の症状が出てるぞー」

澪「あ、何か詞が浮かびそう」

律「やめろ。ビジュアル系みたいな歌詞になりそうだから、今の状態で詞を書いちゃダメだ」

律「……ん?」

律「あ、すごくいいことが書いてあるページがある」

71: 2010/07/17(土) 02:13:45.47
澪「心理学の本に何が書いてあったんだ?」

律「はい、読んでみなよ」

澪「……」


澪「適度なコンプレックスが人を成長させる……」


律「過ぎちゃったことは仕方ないしさ、イタい中学生時代を胸にガンバろうぜ、澪」

澪「……そうだな、よし!今日からは今まで以上に勉強も部活も作詞もガンバるぞ!」



おしまい!

73: 2010/07/17(土) 02:14:33.19
乙!
面白かった

75: 2010/07/17(土) 02:16:25.73

キレイにまとまってる

78: 2010/07/17(土) 02:18:48.90
おまけ!

紬「はーい、今日の紅茶よ」

律「おお、相変わらずムギの煎れた紅茶はいい香だな」

梓「本当ですね」

紬「ふふ、ありがとう」

澪「……唯、紅茶をずーっと眺めてるけど、どうした?」

唯「……紅茶を見てるとね、血を思い出してね。
身体の疼きが抑えられないんだよ……ククク」



引用元: 澪「唯の喋り方がなんかムカつく」