1: 2012/05/27(日) 13:55:59.94

P(新世代アイドルプロジェクト……)

P(事務所の垣根を越えたアイドルユニットを作るための計画だ)

P(そして今回その計画に抜擢されたのが……)

伊織「にひひ!当然の結果よ!ねぇ!」

P(我が765プロのアイドル、水瀬伊織である)

伊織「ねぇったら!」

P(そしてここで注目されゆくゆくはピンの活動を……)

伊織「ちょっと!!」

P「ん?どうした?伊織」

伊織「さっきから呆けてどうしたのよ?」

P「あぁ、ちょっとな……」

伊織「にひひ!この伊織ちゃんの美貌に目が眩んだんでしょ?」

P「はいはい。そういうことにしといてやるよ」

伊織「な……なによ!その態度!」

2: 2012/05/27(日) 13:57:06.27

やよい「伊織ちゃん、おめでと~」

伊織「ありがとう。やよい」

亜美「亜美もやりたかったな~。新世代アイドルプロジェクト」

真美「大丈夫だよ、亜美。次は真美たちが選ばれるもん」

亜美「だよねだよね~☆」

P「そんなのんきなこと言ってたら次も危ういぞ?」

亜美「うあうあ~……兄ちゃん厳しいよぉ~……」

春香「そう言えば今日、新ユニットのもう1人の子が挨拶に来るんですよね?」

P「ああ、もう少しで来るはずなんだが……」

3: 2012/05/27(日) 13:57:46.40

千早「ですが、どうしてプロデューサーがそのユニットのプロデュースを?」

律子「今回選ばれた両プロダクションがあまり大きなところじゃなくてね。プロデューサー殿に白羽の矢が当たったってわけよ」

P「男ならアイドルユニットの二つや三つ、プロデュース出来なくてどうする。とか言われてさ……」

伊織「まったく。頼りにならないわね」

真「でもそうなると僕たちのプロデュースは……」

雪歩「うぅ……大変になっちゃいますぅ……」

P「大丈夫だ、二人とも。さっきも言ったろ?二つや三つプロデュース出来なくてどうする」

4: 2012/05/27(日) 13:58:25.80

貴音「ふっ……プロデューサー。燃えていますね」

響「おぉ!じゃあ自分達も負けずに燃えていくさ~!」

美希「ミキは寝るね~」

響「お、おい!美希!」

小鳥「それにしても遅いですね。もう1人の子」

あずさ「道にでも迷ってしまったのでしょうか?」

P「ははっ、あずささんじゃないんですから」

あずさ「ふふっそうですよね」

春香「プロデューサーさん……軽く失礼ですよ」

5: 2012/05/27(日) 13:59:24.36

カツカツカツ

P「そんなことを言ってたら到着したようだ」

カツカツカツ

春香「ドキドキ……」

カツカツ…タッ

千早「ドアの前に……」

………

…………

……………

真美「開かないね?」

亜美「はっはっはっ!我が765プロに恐れをなしたか!痛っ!?」

律子「バカなこといわないの!」

亜美「りっちゃんがぶった~!」

6: 2012/05/27(日) 14:00:34.32

P「しょうがないな……」

ガチャ

「やっと開けてくれたんですか。あんまり待たせないでください」

P「え?」

輿水「せっかくこのボクが訪ねてきたんですからお出迎えは当たり前でしょう?」

P「は……はぁ」

伊織「ちょっ……ちょっとなによ、アイツ」ヒソヒソ

春香「わ、私に聞かれても……」ヒソヒソ

律子「輿水幸子。Bランクアイドル。デビュー3ヶ月でBランクアイドルにまでのしあがった実力よ」

7: 2012/05/27(日) 14:01:33.96

輿水「誉めていただいてありがとうございます。でもそれは当然のことですよ」

輿水「だってボク、とっても可愛いですもん」

律子「あなたが選ばれたときは耳を疑いましたよ。こんな道楽じみたことに出てくるとは思わなかったので」

輿水「たまにはいいかなって思っただけですよ。道楽も」

P「あ…あの……」

輿水「なんですか?」

P「いや、とりあえず自己紹介でもしてくれないかなって」

輿水「………はぁ。仕方ないですね。では……」

8: 2012/05/27(日) 14:02:32.32

輿水「輿水幸子。DNAプロ所属Bランクアイドル。新世代アイドルプロジェクトのためやってきました」

P「………それだけ?」

輿水「他に何か?」

P「いや……別に……」

伊織「ちょっと待ちなさいよ!」

律子「伊織?」

伊織「私イヤよ!こんなやつと一緒に仕事するなんて!人を見下して、さも自分が一番可愛いみたいな言い方して!」

P「お……おう」

伊織「何か?」

P「なんでもないです」


9: 2012/05/27(日) 14:03:29.03

伊織「とりあえず私はイヤ!こんなやつと……」

輿水「Dランクアイドルがよく言えますね」

伊織「……っ!?」

輿水「ボクに意見したいならボクと同等かそれ以上の実績をつけてくださいよ」

伊織「なんですって……」

P「伊織!落ち着け!それと輿水さん、アンタも言い過ぎだよ」

輿水「……ふ~ん」

P「な……なにか?」

輿水「あなた、今日からボクの犬になってください」

P「は……」

10: 2012/05/27(日) 14:04:29.39

伊織「はぁぁぁぁ!?なによそれ!コイツはね!大分前から私の下僕なの!」

春香「えっ!?そうだったんですか!?」

P「いやいやいやいや!そんな契約は交わされていない!」

雪歩「プロデューサー……」

真「くっ……」

P「やめて!そんな哀れんだ目で見ないで!」

輿水「とにかくあなたは今日からボクの犬ですよ。では顔合わせはこれくらいでいいでしょう?」

春香「も、もう帰るの?」

輿水「ええ、ボクもそこまで暇ではないので。これからよろしくお願いします、水瀬さん」

伊織「…ふん!」

P「コラッ!伊織!」

輿水「ふふっ、構いませんよ、では」

ガチャ


12: 2012/05/27(日) 14:05:30.80

……………

亜美「なんか変な感じだったね~」

真美「うんうん。真美だったら一緒に仕事したくないかも」

律子「こ~ら、そんなこと言わないの」

真美「でもりっちゃんもそう思うっしょ?」

律子「ま……まぁ……」

やよい「……………」

春香「どうしたの?やよい」

やよい「あ、いえ。あの人……どこかで見たことあったような……」

真「Bランクアイドルなんだし、テレビや雑誌で見たんじゃないかな?」

やよい「そう……ですよね。……はい!多分気のせいです!」

13: 2012/05/27(日) 14:06:17.77

千早「それにしても水瀬さん、これから大変ね」

伊織「絶対イヤよ!あんなやつ……」

あずさ「でもお仕事なのよ?伊織ちゃん」

伊織「ぐっ……ちょっと!プロデューサー!何とかしなさいよ!」

P「なんとかって言われてもな……もう決まってしまったことだし。今からキャンセルなんて」

伊織「でも……」

貴音「伊織」

伊織「な、なによ?」

14: 2012/05/27(日) 14:07:08.65

貴音「確かに伊織の気持ちはわかります。これから一緒に活動していく方が気にくわないのでしょう?」

響「貴音貴音、伊織はさっきからずっとそう言ってるぞ。そんな『わかった』みたいな顔で言われても」

貴音「おや、そうでしたか」

伊織「いったいなんなのよ……」

美希「ミキ、やりたくないならやらなければいいって思うな」

伊織「は?」

美希「そうすればデコちゃんの抜けたところにミキが入って、一躍大スターなの!」

伊織「ちょっ……」

15: 2012/05/27(日) 14:07:59.07

美希「ハニー、デコちゃんが降りるみたいだから代わりにミキが……」

伊織「待ちなさいよ!誰が降りるなんて言ったの!わかったわよ!やるわよ!やってやるわよ!」

美希「そっか、残念」

伊織「フン!」

春香「あれ?伊織、どこ行くの?」

伊織「レッスンよ、レッスン。やるならあんなやつに負けたくないからね」

亜美「亜美も行く~」

真美「真美も~」

伊織「邪魔しないでよね」

亜美「は~い」

真美「りょ~か~い」

バタン

16: 2012/05/27(日) 14:08:53.99

P「……前途多難だな、こりゃ。それにしても美希」

美希「なに?ハニー」

P「ありがとな。伊織の性格を読んで焚き付けてくれて」

美希「…………?」

P「ん?」

美希「ミキ、本気だったよ?」

P「え……」

美希「だってもったいないの。せっかくのチャンスなのに」

P「ああ……うん、そうだな」

美希「だからハニー、ミキに新しいお仕事ちょ~だい♪」

P「わかったよ。なるはやで見つけてくるさ。だから待ってろ」

美希「ありがとー!やっぱりハニー大好きなの!」


17: 2012/05/27(日) 14:09:38.16

小鳥「でもどうするんですか?プロデューサーさん。伊織ちゃんも輿水さんも相当我が強そうですけど……」

律子「うまくまとめられるといいんですけどね……」

P「確かに。だから俺はあえてその我の強さを推していこうと思った」

小鳥「我の強さを……?」

律子「推す……?」



『新世代アイドル:two princess爆誕!』

『ダブルSの女王様コンビ!』

『踏まれたい!罵られたいら!見下されたい!』

律子「うわぁ………」

P「え!?引く!?」

18: 2012/05/27(日) 14:11:52.32

律子「そりゃ引きますよ。いきなりこんなの見せられたら」

小鳥「でもニッチな層には受けがありそうですよね」

P「そ、そうです!そうですよ!いや~、小鳥さんならわかってくれると思いましたよ」

律子「はぁ……まぁいいですけどね。プロデューサー殿のことだからなにか考えがあるんでしょう?」

P「………お……おぅ」

律子「なんですか、今の間は……とにかく担当は貴方なんですからよろしくお願いしますよ」

19: 2012/05/27(日) 14:12:25.60

P「は~い……」

律子「言葉を伸ばさない!」

P「はい!」

律子「では私は他の子の仕事を見てきますね」

P「あぁ、ありがとう。苦労かけるな」

律子「いつものことです」

P「さいですか……」

小鳥(なんだろう。この長年連れ添った夫婦みたいな会話……。私だって……)

春香「音無さん、どうしたんですか?」

小鳥「えっ!?は、春香ちゃん!?あ、いや……なんでも、なんでもないのよ」

春香「?」

20: 2012/05/27(日) 14:13:15.73

P(こうしてtwo princessは始動した)

P(意外にも二人のキャラは受け、ニッチな層だけに留まらず着実にファンを増やしていった)

P(しかし……)

伊織「アンタ!なんでさっき勝手に振り付け変えるのよ!私が間違ったみたいじゃない!」

輿水「なに言ってるんですか。あの時はより多くの人にステージを見せるためにはああしないと駄目でしょう」

伊織「だからって……!」

P(毎回毎回仕事終わりによくやるよ……まったく)

21: 2012/05/27(日) 14:14:11.85

輿水「あ、もうこんな時間ですか。それではボクはこの辺で」

伊織「ちょっと!話は終わってないわよ!」

P「なぁ、たまにはなにか食べていかないか?」

輿水「いえ、遠慮します。それでは」

………………

伊織「なんなのよ!アイツは!いつもいつも仕事終わったらパッパと帰って!反省会とかする気ないの!」

P「お、伊織はなにか反省するところあったのか?」

伊織「あるに決まってるじゃないの。いつだって反省してるわ」

P「それは殊勝な心がけだな、うん」

22: 2012/05/27(日) 14:14:59.88

伊織「とりあえずアンタはもっと大きな仕事取るために反省しなさいよ」

P「言葉もありません」

伊織「はぁ……じゃ、私も帰るわ。ちょっと疲れたし」

P「おぅ、気を付けて帰れよ」

伊織「……送るって言葉知らないのかしら」

P「なんか言ったか?」

伊織「なんでもないわよ!バカ!」

P「へ?」

伊織「じゃあね!フン!」

P「……俺、なんかしたかな」

P「とりあえず事務所に戻ろう……」

23: 2012/05/27(日) 14:16:10.86

~765プロ~

P「ただいま戻りました」

P「……あれ?誰もいないのかな」

小鳥「あ!プロデューサーさん。いいところに……」

P「どうしたんです?」

小鳥「いえ、今お客さんが来ていて。おそらくプロデューサーさんが話した方がいいかなと」

P「俺が……ですか?」

小鳥「応接室にいらっしゃいますのでどうぞ」

P「は、はい」

P(俺が聞いた方がいいって……どういうこっちゃ)

24: 2012/05/27(日) 14:16:59.54

ガチャ

P「失礼します」

「本日は急な訪問で失礼しました。こちらでうちの輿水がお世話になっているとのことで」

P「は……はぁ」

P(誰なんだろうこの人……うちの輿水って言うからにはまさか……)

P(1:輿水の母親、2:輿水の事務所の人)

P(どっちだ……見た目からすると……駄目だ。どちらも当てはまる)

「……どうしました?」

P(こ、ここはもう賭けるしかない!)

P「え~と……輿水さんの親御さんですか?」

25: 2012/05/27(日) 14:17:35.79

「は?」

P(ま……間違えたー!!ヤバい!なんか空気がヤバい!)

P「い、いえ……なんでも……ではDNAプロの方ですか?」

「はい。そうです」

P(ピリピリしてる……この人すっごいピリピリしてるよ)

P「そ、それでDNAプロの事務員さんがいったい……」

「…………私、アイドルです」

P(二段階の罠かよー!!)

26: 2012/05/27(日) 14:18:24.71

「川島さぁん。自己紹介もしてないんだから仕方ないですよぉ~」

P「え……」

P(あ、もう1人いたんだ……)

川島「そ、そうよね。失礼しました。私、DNAプロ所属アイドルの川島瑞樹と申します」

喜多「日菜子はですねぇ~喜多日菜子と申しますぅ……むふ、むふふ」

P「こ、これはご丁寧にどうも。僕は765プロでプロデューサーをやらせてもらっています、Pと申します」

ガチャ

小鳥「失礼します。お茶菓子を持ってきました」

川島「お気を使わせてしまってすみません」

小鳥「それではごゆっくり……」

27: 2012/05/27(日) 14:19:12.55

P「こ、小鳥さん!小鳥さんも一緒にどうです?お話聞きませんか?」

小鳥「え、でも私が聞いても……」

川島「構いませんよ。むしろ聞いておいていただいた方がいいかもしれません」

小鳥「で、では……」

P「それでDNAプロの方がお話とは?輿水さんに関係が?」

川島「特にコレといったこともないのですけどね。うちの社長が心配をしていて……」

P「心配……ですか?」


28: 2012/05/27(日) 14:20:11.86

川島「えぇ、あの子の性格上うまく打ち解けているのかと」

P「……………」

川島「その様子だと芳しくないみたいですね」

喜多「やっぱり……輿水ちゃんはここでも女王様なんですかぁ……そして」

P「ん?」

喜多「あなたに対してあんなことやこんなことを要求して……むふ…むふふ……」

P「………」

川島「すみません。気にしないでください」

30: 2012/05/27(日) 14:20:56.64

P「あ、いえ。大丈夫です。慣れてますから。ね、小鳥さん」

小鳥「えっ……」

小鳥(慣れてますから→いつも見ていますから→あなたしか見えません→好きです。結婚してください)

小鳥「望むところです!」フンガー

P「話を進めましょう。それで輿水さんがなにか?」

川島「は、はい。あの子の性格上あまり他人と仲良くすることが難しいのではと思った社長が私たちにお願いしてきたので様子を見に」

喜多「あの時の社長の土下座キレがすごかったよねぇ~」

32: 2012/05/27(日) 14:21:53.90

川島「そういうことは言わないでいいの。それで今日は輿水は……」

P「あ~……その、仕事が終わったらすぐに帰ってしまって……」

川島「……あの子ったらまた……」

P「また?」

川島「はい。あの子はいつも仕事が終わったらすぐに帰ってしまうんです。なにをしてるのかは私たちにも……」

P「事務所の仕事などではないんですか?」

川島「えぇ、違います。あの子がこの業界でなんと呼ばれてるか知っていますか?」

P「いえ……」

33: 2012/05/27(日) 14:22:52.84

喜多「さっちゃんはシンデレラガールと呼ばれているのですよぉ」

P「シンデレラガール?」

川島「はい。時間になったらすぐに帰ってしまうからだそうです」

P「なるほど」

川島「そんな子だから仕事終わりにコミュニケーションを取るのも難しいと思います」

P「そう……ですね。今日も断られましたし」

喜多「すでに体験済みでしたかぁ」

川島「そんな彼女だから社長は心配なんでしょうね。私も心配です」

34: 2012/05/27(日) 14:23:42.39

P「なにをしているのかがわかればいいんですけどね」

喜多「そうなんですよぉ。日菜子も何度か後を付けたのですがいつも降りきられてしまってぇ」

川島「この事を伝えておこうと思っていたところにいいタイミングで社長が土下座で頼んできたので本日はお邪魔させていただきました」

P「貴重な情報ありがとうございました」


川島「いえ、それでは私たちはこれで」

P「あ、もう帰ってしまうんですか?」

川島「はい。これから少し仕事が残ってまして」

P「そうですか。本日はありがとうございました」

36: 2012/05/27(日) 14:24:24.42

川島「いえ……喜多さん。行くわよ」

喜多「それでぇ……道に迷った日菜子をですね。王子さまが見つけてくれて……むふ…むふふ……」

川島「……すみません。連れて帰りますね」

P「……お互い大変ですね」

川島「えぇ……では」

バタン

P「…………」

P「シンデレラガール……か……」

P「小鳥さんは検討つきますか?」

小鳥「あん……止めてくださいプロデューサーさん。こんなに明るいうちから……」

P「………そっとしておこう」

37: 2012/05/27(日) 14:25:15.45

バタン

やよい「うっうー!ただいま戻りましたー!」

P「お疲れやよい」

やよい「あ、プロデューサー」

P「仕事はどうだった?」

やよい「はい!バッチリでした。これもプロデューサーが私にあった仕事を取ってきてくれるからかなーって」

P「うぅ……やよいはかわいいなぁ」ポムポム

やよい「?」

やよい「あ!プロデューサー!それよりこれから一緒に来てもらっても大丈夫ですか?」

P「ん?どうしたんだ?」

38: 2012/05/27(日) 14:26:21.64

やよい「はい、あの……今日いつも行ってるスーパーのタイムセールがあって」

やよい「それで卵がお一人様1つまでで……その……」

P「なんだ、そんなことか。わかった、一緒に行くよ」

やよい「本当ですか!うっうー!ありがとうございます!」

P「やよいはいい子だなぁ」

やよい「?」

やよい「あ!そうと決まったら早く行きましょう!もう少しで始まっちゃいます!」

39: 2012/05/27(日) 14:26:58.95

P「そうか。それなら早く準備を……小鳥さん、留守番お願いします」

小鳥「そして二人は熱いヴェーゼを……」

P「いい加減目を冷ませ!」

小鳥「痛っ!?あれ……DNAプロの人たちは……?」

P「とうの昔に帰りましたよ。俺もこれからやよいの用事に付き合うので出ますから留守番お願いしますね」

小鳥「は、はい。わかりました」

P「よし。それじゃ行こうか」

やよい「はい!」


40: 2012/05/27(日) 14:27:41.39

~スーパー~

やよい「うっうー、間に合いました」

P「それじゃタイムセールが始まるまで店内でも回るか」

やよい「はい!」


P「ケチャップにコンソメ、もやしが10袋。こんなに買うのか?」

やよい「もやしはお腹にたまるんですよ~。でも今日の夕食はオムレツになります」

P「お、豪勢だな」

やよい「プロデューサーのお陰です。ありがとうございます」

P「気にするなって。それにまだ買えた訳じゃ……」

41: 2012/05/27(日) 14:28:31.37

「さっちゃん!そろそろタイムセールいこうか!」

「はい!」

P「………ん?今の声……」


輿水「ただいまよりタイムセールを行います!本日はなんと卵が1パック10円!10円でのご提供です!」

輿水「お一人様1パック限り!皆様奮ってお買い求めかください!」

P「輿水……」

やよい「行きますよ!プロデューサー!うっうー!」

P「ちょっ……やよい……。とりあえず、確保しよう」


輿水「卵が1パック10円!10円ですよ!残りはあとわずか!早い者勝ちですよ!」

P「輿水」

輿水「っ!?」

42: 2012/05/27(日) 14:29:11.27

P「…………」

輿水「ぁ……ぁ……」

P「ここでバイトしてたんだな。だから仕事が終わったらすぐに帰ってたのか」

輿水「…………」

P「輿水?」

輿水「………ぅ」

P「?」

輿水「うわああぁぁぁぁん!」

P「号泣!?」

輿水「見られたぁぁぁ!見られちゃったぁぁぁ!」

P「ちょっ!?なにもそこまで……」

「テメェ!うちのアイドルになにしてんだ!」

P「ぐほっ……」


43: 2012/05/27(日) 14:29:52.89

「大丈夫か、さっちゃん。こいつになにかされたのか?」

輿水「ひっく……い、いえ……その人は……」

やよい「プロデューサー!?」

「や、やよいちゃん!?」

やよい「大丈夫ですか!?プロデューサー!」

P「いたたっ……結構効いた……」

「やよいちゃんのプロデューサーってーと……」

輿水「すみません……今のボクのプロデューサーです」


44: 2012/05/27(日) 14:30:32.13

~控え室~

P「いたっ!」

輿水「これくらい我慢してください」

P「………」

輿水「………」

やよい「ぅ~……」

輿水「……すみません。ボクのせいで」

P「いいよ。たいした怪我でもないし」

輿水「ですが……」

P「そんなことよりどうしてここで働いていたんだ?お前はまだ14なんだしバイトなんて」

45: 2012/05/27(日) 14:31:19.18

輿水「……アイドル活動を続けるためです」

P「お金なら親御さんに言えば……」

輿水「ボクは今、独り暮らしなんです」

P「え?」

輿水「実家が山梨なので仕事のたびにいちいち出てくるのは大変ですし」

P「それでも仕送りとかで……」

輿水「………父は……ボクがアイドルをするのを反対してるんです」

P「………」


47: 2012/05/27(日) 14:32:10.42

輿水「でも母は応援してくれて……そして父を説得してくれて」

輿水「でもすべてを許してくれたわけではなく、生活費や学費は入れるがアイドルのレッスン費は出さないと」

輿水「だから仕事が終わったら母の知り合いの勤めるこのスーパーにお世話になって」

やよい「だから私がさっちゃんさんのことを見たことあったんですね」

輿水「誰にも気づかれたくなかったんですけどね……」

P「でもお金ならアイドルとしての給料があるんじゃ……」

輿水「お給料はすべて親のところにいきます。まだ14ですし……」

48: 2012/05/27(日) 14:33:01.97

P「そうか……。ならDNAプロの社長に頼むとか……」

輿水「プライドが許しません。それに……」

P「それに?」

輿水「ボクはそろそろ潮時な気もしますし」

P「なっ!?なに言ってんだよ!お前はBランク、頑張ればいつかは……」

輿水「ボクがいつからBランクアイドルかわかりますか?」

P「え?」

輿水「デビュー3ヶ月でなったんです」

P「すごいことじゃないか」

49: 2012/05/27(日) 14:33:52.23

輿水「それから半年間ランクが上がる様子がなくてもですか?」

P「っ!?」

輿水「いくらテレビに出ても、CDを出してもファン数は一向に増えず」

輿水「これがボクの限界なんだと感じました」

P「………」

輿水「だから今回のプロジェクトをラストチャンスにしようと思ったんです」

輿水「あの日……顔合わせに行った日。なかなか扉を開けなかったじゃないですか」

P「ああ。仕方なく俺が開けたんだよな」

輿水「あの時、とても怖かったんです。この扉を開けても今までと変わらなかったらどうしようと」

輿水「だからあの時、もしも扉が開けられなければ…ボクはその場を立ち去っていたかもしれません」

P「………」

50: 2012/05/27(日) 14:34:36.75

やよい「………」

輿水「ですがあなたは開けてくれました。こんなボクを迎え入れてくれたんです」

輿水「その瞬間にラストチャンスを頑張ろうと思いました」

P「でも今うまく行ってるじゃないか。二人の人気も上がって……」

輿水「それはユニットとしての人気です。個人の人気に変動がありません」

輿水「水瀬さんはCランクに上がっているのに……」

P「でも……」

52: 2012/05/27(日) 14:35:53.54

輿水「この業界、1年で芽が出なければ生き残れない。そうでしょう?」

輿水「ユニットを組んで1ヶ月。あと2ヶ月中にランクが上がらなければボクはそれまでです」

P「きっと上げてみせる!」

輿水「気休めは止めてください。口だけならなんとでも言えます」

輿水「やはりボクはまだ、父の手の上で踊っていたにすぎないんでしょうね」

53: 2012/05/27(日) 14:37:02.43

P「………」

輿水「それではボクはバイトに戻ります。あちらも手が足らないようなので」

P「ああ。でも1つだけ覚えておいてくれ」

輿水「はい?」

P「俺が必ずお前をAランクに上げてみせる」

輿水「期待せずに期待していますよ」

輿水「あ、そうだ。今日のことは誰にも言わないでくださいね」

P「ああ」

輿水「では」

バタン

P「………」

やよい「………」

54: 2012/05/27(日) 14:37:52.56

P「俺たちも帰るか」

やよい「そう……ですね」

やよい「プロデューサー……」

P「どうした?」

やよい「さっちゃんさん……可哀想です」

P「だな」

やよい「なんとかならないんですか?」

P「なんとかするさ。それが俺の仕事だ」

P(それから俺は必氏に仕事を取った。できる限り人の目に写るような仕事を)

P(着実に、着実にファンを増やすために)

P(そして……)

55: 2012/05/27(日) 14:38:45.22

伊織「にひひっ。ついに伊織ちゃんがBランクまで上がったわよ」

P「やったな、伊織」

輿水「おめでとう」

伊織「これでアンタに言いたいことが言えるのね」

P「お、おい……」

輿水「そうですね。ボクと同等になったんですから。それで?なにか言いたいことでも?」

伊織「たくさんあるけど今日はいいわ。機嫌がいいから」

輿水「そうですか。ではボクはこれで」

伊織「待ちなさいよ!」

56: 2012/05/27(日) 14:39:20.31

輿水「はい?」

伊織「この私のランクが上がったのよ?少しは私に付き合うとかできないわけ?」

輿水「暇じゃないんですよ」

伊織「いつもいつもいつもいつも……なんなのよ!アンタは!」

伊織「そんなんだからいつまで経ってもBランク止まりなのよ!」

輿水「っ!?」

P「伊織!!」

伊織「なによっ!」

57: 2012/05/27(日) 14:40:11.11

P「今のは言い過ぎだ。謝れ」

伊織「なんでよ……」

P「いいから」

伊織「……嫌よ」

P「伊織!」

伊織「っ!?」

輿水「いいですよ。本当のことです」

P「輿水……」

輿水「それではボクは行きます」

P「ああ」


P「伊織……いくらなんでも……」

58: 2012/05/27(日) 14:40:50.76

伊織「………さい」

P「え?」

伊織「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」

伊織「せっかく……せっかくこの私がランクアップしたのよ!なのになによ!なんなのよ!」

P「すまん伊織。別にお前を蔑ろには……」

伊織「触るな!バカ!」

P「うわっ!?」

伊織「………先に事務所帰るわ。アンタの顔見たくないから少し時間潰してから帰ってきなさい」

P「…………了解」


P「ヤバいかな……これは」

59: 2012/05/27(日) 14:41:38.89

~765プロ~

伊織「なんなのよ……なんで私が謝らないといけないのよ」

やよい「あ、伊織ちゃん。お帰りなさい」

伊織「ただいま、やよい」

やよい「あれ?プロデューサーは一緒じゃないんですか?」

伊織「知らないわよあんなやつ」

やよい「?」

伊織「私がBランクに上がったのよ?少しは誉めてくれてもいいと思わない?」

61: 2012/05/27(日) 14:43:26.06

やよい「伊織ちゃんBランクに上がったんですか!?うっうー!すごいです」

伊織「当然の結果よ。今までがおかしかっただけ」

伊織「それにこれでアイツに言いたいことが言えるからね」

やよい「アイツって?」

伊織「輿水よ」

やよい「あ……さっちゃんさん」

伊織「明日会ったら今まで溜めてたもの全部ぶちまけてやるんだから」

やよい「い、伊織ちゃん。それは可哀想かなーって」

62: 2012/05/27(日) 14:45:06.00

伊織「……やよいもアイツの肩を持つの?」

やよい「え?」

伊織「やよいも……私より輿水を取るのね」

やよい「ち、違うよ伊織ちゃん……さっちゃんさんは可哀想で……」

伊織「可哀想?」

やよい「あ!いや、違う。なんでもないよ」

伊織「なにか知ってるの?」

やよい「えと……その……これは言っちゃいけなくて……その……」

伊織「お願い、やよい。なにか知ってるなら教えて」

やよい「うっう~……」

63: 2012/05/27(日) 14:47:15.77

P「もう帰ったかな」

P「はぁ……うまくいってたはずがいきなりこれだよ……」

P「どうしようかな……」

ガチャ

P「ただいま戻りまし……」

伊織「…………」

P「い、伊織……まだいたのか。じゃあもう少し時間を……」

伊織「こっちに来なさい」

P「え?」

伊織「こっちに来なさいって言ってんのよ!」

P「は、はい!」

66: 2012/05/27(日) 14:48:23.48

P「で、どうしたんだ。いお……」

バチーン!!

P「ぐほっ!?」

P「い、伊織……?」

伊織「なんでよ……」

P「へ?」

伊織「なんで言わなかったのよ!アイツのこと!」

P「アイツって……まさか!」

やよい「ごめんなさい、プロデューサー……」

P「やよいから聞いたのか」

伊織「言っちゃいけないこと言って……これじゃあ私悪者じゃない!」

伊織「教えておきなさいよ……バカ……」

67: 2012/05/27(日) 14:49:08.92

P「すまん、伊織。伊織にはいつか言わなきゃとは思っていたんだけどな」

P「俺が勝手にしていいことでもないから……」

伊織「………」

P「伊織?」

伊織「連れていきなさい」

P「え?」

伊織「私をアイツのバイト先まで連れていきなさいって言ってんのよ!」

P「そ…それは……」

伊織「アイツに一言言わないと気がすまないの!」

P「…………わかったよ。でも邪魔はするなよ」

68: 2012/05/27(日) 14:49:57.04

輿水「いらっしゃいま……せ……」

伊織「…………」

輿水「水瀬さん……」

P「…………」

輿水「誰にも言わないでくださいと言ったじゃないですか」

P「……すまん」

輿水「それでなにか用……」

バチン!

輿水「っ!?」

P「伊織っ!?」


69: 2012/05/27(日) 14:51:00.08

輿水「いきなり平手打ちとはとんだご挨拶ですね」

P「なにしてんだ!伊織!」

伊織「アンタは黙ってなさい!」

伊織「さぁ、殴り返しなさいよ」

輿水「は?」

伊織「いいから殴り返しなさいよ!」

輿水「………しょうがないですね」

バチン!

伊織「っ!」

輿水「これで満足ですか?」

70: 2012/05/27(日) 14:52:14.17

伊織「………全然」

輿水「はい?」

伊織「私はね。今の環境に全然満足してないの」

伊織「こんなところで止まる気もなければアイドルを辞める気もない」

伊織「私はいつかSランクまで上がるの。Sランクに上がって誰もが知ってるアイドルになるの」

輿水「………」

伊織「そんな私のアイドル人生にはね。何一つ汚点を残す気はないわ」

伊織「ユニットのパートナーが急に引退するなんて汚点は特にね」

P「伊織……」

72: 2012/05/27(日) 14:54:04.20

伊織「アンタにはなにがなんでもAランク……いや、Sランクまで上がってもらうわ!」

伊織「この私のパートナーに相応しいくらいにね!」

輿水「……そんな夢物語、信じてもボクは……」

伊織「自分の限界を自分で決めるんじゃないわよ!」

輿水「っ!?」

伊織「もっと足掻きなさいよ!貪欲になりなさいよ!」

伊織「自分の限界を決めてたら先になんか進めないじゃない!」

輿水「水瀬さん……」

73: 2012/05/27(日) 14:54:47.78

伊織「伊織……」

輿水「え?」

伊織「伊織でいいわよ。水瀬さんなんていつまでも他人行儀で嫌になっちゃう」

輿水「……伊織」

伊織「なに?」

輿水「それじゃボクも言わせてもらいます。いつもいつもボクが写るときに邪魔しますよね?」

伊織「あ…あれは……」

輿水「それとこの間のライブ、振り付け間違ってましたよ」

輿水「あといい加減噛むのは止めてください。フォローが大変ですし」

伊織「……な、なによ。いきなり」

74: 2012/05/27(日) 14:55:32.28

輿水「反省会です。したかったんでしょう?」

伊織「そ、それは……」

輿水「まだまだありますよ。結成すぐ……」

伊織「わ、私もアンタに言いたいことがたくさんあるのよ!あの収録の時……」

P「邪魔すんなって言ったのに……ま、いいか」

P(こうして二人はこのあと数時間にも及ぶ反省会を繰り広げた……スーパーで)

P(しかしそれが功を奏し、二人の人気はグングンと伸びていった)

P(世間ではSランクとAランクアイドルのユニットとして完全に認知された)

P(だがしかし、これは終わりではなく二人の新しいストーリーの幕開けなのである)

75: 2012/05/27(日) 14:56:27.94

伊織「なに書いてんのよ」

P「ん?いや、このユニットのことをさ」

輿水「だからさっきからボクたちのことをジロジロ見ていたんですね」

P「ジロジロとは心外だな」

伊織「ま、いいじゃないの。アンタが変態なのは前からなんだし」

P「なにそれひどい」

輿水「仕方ないです。自分の変態さを恨んでください」

P「幸子まで……」

76: 2012/05/27(日) 14:57:21.20

律子「三人とも、そろそろ仕事の時間じゃないの?」
P「え?うわっ!?やばっ」

伊織「ちょっと!アンタのせいで遅刻なんて嫌よ!」

輿水「はぁ……まだまだ前途多難ですね」

小鳥「幸子ちゃん。顔が笑ってるわよ」

輿水「ふふっ……そうですか?」

小鳥「そうよ」

伊織「幸子!なにしてんのよ!置いていくわよ!」

輿水「はいはい。わかってますよ。それでは行ってきます」

小鳥「はい、行ってらっしゃい。頑張ってきてね」

輿水「えぇ、ボクはこんなところで止まる気はありませんから」


おしまい♪

77: 2012/05/27(日) 14:59:58.98

78: 2012/05/27(日) 15:00:38.01
意外に早く投下が終わってしまった
書き溜めじゃ100すらいかないか。いつものことだけど

79: 2012/05/27(日) 15:03:29.00
乙ううううう

引用元: 伊織「あいつは私の下僕なの!」