1: 2012/06/15(金) 22:09:11.09
古畑「……え~、皆さんどうもご無沙汰しております」


古畑「巷では、アイドルと呼ばれる方々がお茶の間を賑わせております」

古畑「アイドルというのは、元々は“偶像”という意味だそうですが、最近では
   主に若くて人気のある歌手や俳優、タレント等を指してアイドルと良く呼びます」

古畑「この単語が今のような使われ方をされるようになったのは、実は結構古いんですねぇー」

古畑「通説では、80年以上前に売れたアメリカの歌手ルディ・ヴァリーが先駆けとされ、
   1940年代にフランク・シナトラが『女学生のアイドル』と呼ばれた事で確立されたのだそうです」

古畑「ンフフ、皆さんご存知だったでしょうか。私も知りませんでしたぁ」


古畑「それだけかって?いえぇ、とんでもない。
   問題はですねぇ、アイドルという言葉の意味や使われ方じゃあないんです」

古畑「要は、誰がアイドルの支配者、すなわち“マスター”になるのかということ…」



『古畑任三郎 VS 765プロ』
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1339765750/

4: 2012/06/15(金) 22:12:51.11
~夜、都内の公園~

千早「………………」

渋澤「……なぁ、千早ちゃんよぉ…」

千早「話が違います」

渋澤「へへへ……話が違うって言われてもねぇ…」


千早「私は約束を守りました。これ以上は、あなたに一銭も払うつもりはありません」

渋澤「……そうか…」


渋澤「………まぁいいよ、俺は最悪それでも」

渋澤「でもよぉ……困るのはアンタだろ?」

渋澤「……なぁ?」


千早「…………」キッ!

渋澤「おうおう、そう怖ぇ目で睨むなって」

千早「……………ッ」ギリギリ…

渋澤「へっへっへ……」

5: 2012/06/15(金) 22:14:12.71
渋澤「アンタが払えなくてもよ、事務所にはアンタのお友達がいっぱいいるだろ?」

千早「……私には友人はいません。少なくとも、あなたにお金を渡すような友人は」

渋澤「へぇ、そうかい……かわいそうにねぇ」

千早「………………」


渋澤「まぁ、今のは聞かなかった事にしといてやるよ。
   今のアンタ、ちょっと頭に血が上ってらぁな」

渋澤「もう一度さ、落ち着いた時にでもゆっくり話し合おうや」

千早「………………」


千早「………失礼します」スッ

スタスタ…


渋澤「言っとくけどよぉー。俺のことを恨んでんなら、そりゃお門違いだぜ」

千早「………………」

6: 2012/06/15(金) 22:16:01.90
渋澤「ビジネスだよ、ビジネス。アンタは買いたいから、俺の持ってる写真を買うんだろ?」

渋澤「アンタの家族の写真をよぉ」

千早「!!」


渋澤「俺らジャーナリストの仕事っつーのはさ、そういう商売なんだよ。
   世間が欲しいと思う情報を仕入れて売るわけ」

渋澤「千早ちゃん、全然プライベートを大っぴらにしねぇもんなぁ。
   そりゃあ、ファンの皆さんも知りたいと思うもんなぁ」

千早「………………」


渋澤「俺は誰に買ってもらおうと構わねぇんだぜ?売れりゃあな」

渋澤「どうしてもアンタが買いたいって言えば、売ってやるよ。特別価格でなぁ?」

千早「…………ッ!!」ギリギリ…!



千早「…………………」


スタスタ…

7: 2012/06/15(金) 22:17:51.53
渋澤「………へへへ、いい金づるだぜ」ニヤニヤ



コツッ…

謎の人物「……渋澤さん、ですね?」

渋澤「………あぁん?」


謎の人物「ヒラタと申します。主にアーティストのライブ演出に関するアドバイザーをやっております」スッ

渋澤「………へぇ、ライブコーディネイター……芸能関係者の人?」

ヒラタ「まぁ、そんなところです」


ヒラタ「ところで、彼女……如月千早とは、どういったご関係で?」

渋澤「おいおい、見てたのかよ……おたくには関係ねぇだろ」

ヒラタ「あぁ、失礼。しかし彼女、最近お金に困っているようですね」

渋澤「知ってんのか?」

8: 2012/06/15(金) 22:20:48.28
ヒラタ「一年ほど前、この業界で知り合いましてね。
    何度か面倒を見てきたので、彼女も私には気を許す面もあるようです」

ヒラタ「理由は聞かされていませんが、渋澤さんという方からお金をくれるよう
    頼まれている、という相談も受けております」

渋澤「ほぅ……」


ヒラタ「もし、お金に困っているようであれば、良い働き口をご紹介しましょう」スッ

渋澤「別に職に困ってる訳じゃ……これは、アイドルオーディションのチラシ?」


ヒラタ「オーディション会場というのは、規模が大きければスタッフの待遇も良くなります」

ヒラタ「それに、スタッフになれば、上手く行けば如月千早だけでなく、
    様々なアイドルと関わりを持つ事も可能です」

渋澤「………ふむ」


渋澤(オーディション会場のスタッフになれれば、他のアイドルとも接する機会が増える…)

渋澤(普通にフリージャーナリストやってるよりも、スクープを撮れる機会も増えるっつー訳だ)

渋澤(つまり、上手くいきゃあ金づるが増える……くくく、面白ぇ話もあるもんだぜ)

9: 2012/06/15(金) 22:22:28.05
ヒラタ「いかがでしょうか?」

渋澤「あぁ、そうだな……ぜひ前向きに検討したい」

ヒラタ「それは良かった」


ヒラタ「明後日の14時、こちらのライブ会場にお越し下さい。スタッフの採用面接を行います」

渋澤「おいおい、誘っておきながら面接なんてやるのかよ」

ヒラタ「審査は私が行います。どうせ形だけのものですので、特に構える必要はありませんよ」

渋澤「チッ……まぁいいか」


渋澤「それじゃあな。良い話をくれて、恩に着るぜ」

ヒラタ「いえ、こちらこそ。会場の裏口でお待ちしております」

渋澤「裏口だな、分かった」

ヒラタ「それでは、また明後日に」

スタスタ……



ヒラタ「………………」

10: 2012/06/15(金) 22:25:33.36
~765プロ事務所~

ガチャッ

ヒラタ「ふぅー……ただいま」


春香「あ、真っ!」

伊織「本当、その格好だと男にしか見えないわね」

ヒラタ「皆してノリノリで着せ替えたクセに、ひどいなぁその言い方…
    ちょっと着替えてくるね」ヌギヌギ…

美希「えぇー?そのままでいいの。真クン、カッコイイもん」

律子「ふふっ……メガネ似合ってるわよ、真」

真「勘弁してよ。メガネはまだしも、このシークレットブーツが歩き辛くて…
  あいたた…」ヌギヌギ…

響「げぇー、靴擦れしてるじゃん。大丈夫か、真?」

真「うーん、まぁね。痛いけど」

11: 2012/06/15(金) 22:26:54.31
春香「それで、どうだった?」

真「うん、大丈夫だと思うよ。やっぱり、まだ千早にたかってるみたいだったけど」

伊織「状況は改善されないままって訳ね…」


響「くそっ!あのジャーナリスト……まだ千早を苦しめてるなんて!!」ドンッ!

律子「落ち着きなさい、響」

響「落ち着ける訳ないさー!律子は平気なのか!?友達が脅迫されてるんだぞ!!」


伊織「どうせ明後日には全て終わるわよ」

春香「伊織……」

美希「でこちゃんの言う通りなの。ここまで来たら、いちいち気にする必要ないって思うな」

伊織「でこちゃん言うな」

12: 2012/06/15(金) 22:28:04.28
春香「で、でもさ……本当に、私達に出来るのかな…?」

真「やるんだよ。もうこれは千早だけの問題じゃない」

伊織「そうよ。かと言って、あんな男を頃して刑務所に入るなんて氏んでもゴメンだわ」

美希「やるからには、どのみち完全犯罪しかないの」

響「う、うん…」ゴクリ…


律子「………………」


律子「皆、ちょっと聞いてくれるかしら」

春香「律子さん?」

ザワ…

13: 2012/06/15(金) 22:30:04.65
律子「確かに、あの渋澤という男は、殺されても仕方のない男だと思うわ」

律子「千早が受けた傷は深い…
   私達は、あの子の仲間として、絶対にあの男を許す事はできない」

響「当たり前だぞ」


律子「でも……最後にもう一度、良く考えてみてほしいの。
   今から私達がやろうとしている事が、本当に正しい事なのかどうかを」

真「そんなの今まで散々話してきた事じゃないか。何言ってんだよ、いまさら…」

春香「世の中に正当化できる殺人なんて無いって事くらい、私達だって分かってます」

律子「立派な大罪よ。ここにいる私達だけでなく、事務所の皆、その家族…
   多くの人達が、取り返しのつかない事になってしまう恐れもあるわ」

響「いまさら怖気づいたのか?律子らしくないぞ」

伊織「何のために、今までこうして時間かけて計画練り上げてきたのよ。
   大体、私達の中心になって計画を練ってきたのは律子じゃない」


律子「だからこそ言ってるの。私の計画で、事務所の皆の人生を棒に振る事になるかも知れない」

律子「本当に、皆はそれでいいの?」


一同「……………」

14: 2012/06/15(金) 22:31:49.05
美希「失敗した時の事なんて考えてたら、何も出来ないの」

律子「美希……」

美希「いまさら律子…さんを信じない人なんて、ここにはいないの。
   それに、千早さんのためになるって信じてやるんだから、結果がどう転ぼうと後悔しないって思うな」


春香「そうですよ!千早ちゃんをあんなに苦しめる人は許せないです」

真「ここまで来たら、ボク達ができる事、信じる事をやるだけさ」

響「律子の計画は完璧だぞ!なんくるないさー!」

伊織「いまさら計画を中止にするなんて、許さないんだからね。にひひっ」


律子「……そうね。皆、ごめんなさい。
   私も、どこか心の中で、改めて踏ん切りをつけたかったのかも知れない」

美希「り、律子…さんが謝ったの。明日は雪が降るかも…」ゾゾーッ…

律子「あんたね……まぁいいわ」

15: 2012/06/15(金) 22:36:18.79
律子「ところで、今回の計画だけど……ここにいる6人以外には知られていないわよね?」

春香「それは絶対に大丈夫です。ね、皆?」

一同「うんうん」


律子「今回の計画で最も重要な事は、皆のアリバイを完璧に作ることよ」

律子「ここにいる私達だけでなく、事務所の皆も疑われることが無いよう、完璧なアリバイをね」


律子「そして、何があっても実行部隊である真、美希の邪魔をされてはならないし、
   極力その様子を目撃されてはならない」

律子「真と美希以外の4人は、他の皆が現場に行かないための足止めに徹すること。いいわね?」

春香・伊織・響「分かりました」「任せて」「うん」


律子「そして、真と美希……特に真は大役だけど、人目には十分に気をつけてね」

美希「大丈夫なの」

真「必ず上手くやるよ、心配しないで」



律子「明日の夜、各自ガムテープを持って例の廃ビルへ集合」

律子「皆……もう後には引けないわよ」

16: 2012/06/15(金) 22:37:19.76
~二日後の午前、某ライブ会場 楽屋~

高木「765プロ感謝祭ライブも、これで何度目になるかな」

P「これまでの事を思えば、本当に皆良く成長してくれましたね」

亜美・真美「キャッキャキャッキャ!」ドタドタ…

律子「あの二人はあまり成長しませんけど……こらぁー!楽屋の中で暴れないの!」


千早「………………」

あずさ「あら~、千早ちゃんどうしたの?元気無いわねぇ」

千早「……いえ、何でも……すみません」

雪歩「千早ちゃん、お茶だよ。緊張、ほぐれると思う」コトッ

千早「えぇ……ありがとう、萩原さん」

春香(…………)


P「よし、そろそろリハーサルの時間だな。行くぞ」

一同「はーい」

17: 2012/06/15(金) 22:38:41.64
アーユ レディ- アイム レイディー ウターヲ ウッタッオー…♪



P「何か、いまいちピリッとしないな」

律子「……そうでしょうか?」

P「春香と千早の動きが良くない。あと、美希や真、響と伊織も、少し調子が悪いみたいだな」

律子(さすがプロデューサー……良く見てるわね。特に、春香は全く集中できていないわ)


律子「うーん……確かに春香は調子悪そうですが、他はそれほどでもないんじゃないですか?」

律子「あの子達もプロなんですし、本番ではちゃんとやってくれますよ」

P「それもそうだな」



P「ステージの流れは大体掴めたな。リハーサルはこの辺でいいだろう」

P「本番前、17時のミーティングまで、各自時間を自由に使ってくれて構わない。
  動きの良くない者もいたから、本番はもっと頑張れるように頼むぞ」

一同「はーい!」

18: 2012/06/15(金) 22:40:33.55
P「それじゃあ、ひとまず解散!俺と昼飯食いに行くヤツは…」


律子「よーし!私やプロデューサー、社長と一緒にお昼食べたい人いるかしらー?
   たまにはおごってあげるわよー」

高木「おや、律子君がおごってくれるのかい?」

亜美「チョ→太っ腹じゃん!どうしたのさ律っちゃん!?」

律子「たまにはそういう時もあるのよ。あ、でもプロデューサーと社長にはおごりませんからね?」

P「わ、分かってるよ…」


真美「んっふっふ~、こりゃ大チャンスですな、亜美殿」

亜美「そうですな。律っちゃんの財布をスッカラカンにしてやろうZE、やよいっち」

やよい「えー!私も行っていいんですかー!?」

律子「えぇ、もちろんよ。伊織も来る?」

伊織「ふん、しょうがないわね」


小鳥「トホホ……私も皆とお昼食べたいなぁ」

律子「小鳥さんは大事な事務仕事が待っていますからね。
   開場準備、スタッフのお弁当の手配、電話対応…」

19: 2012/06/15(金) 22:42:16.61
あずさ「まぁまぁ、ライブが終わったら一緒に飲みに行きましょうね」

小鳥「えぇ~ん、あずささぁ~ん…」シクシク…


あずさ「小鳥さんを一人にしておくのも可愛そうなので、私は遠慮しておきます」

P「そうですか。すみません、飲みには俺も付き合いますから」


響「あ、じゃあさ!自分、あずささんやぴよ子と一緒にお昼ごはん食べたいぞ!」

あずさ「あら~、響ちゃん。珍しいわねぇ、いいわよ~」

小鳥「私みたいな女を慰めてくれるなんて、本当に響ちゃんはいい子ね…」グスッ…

響「わわっ!な、泣かないでよ!ちょっとオトナなトークに混ざりたかっただけさー」


響「そうだ、雪歩も一緒に食べようよ!」

雪歩「えっ!?私も、いいの?」

真「ボクは美希と、少しダンスの振りについて確認したい事があるから、先に食べてていいよ、雪歩」

響「サーターアンダギー作ってきたんだ!雪歩にも食べてもらいたいぞ!」グイッ

雪歩「う、うん……ありがとう、じゃあ一緒に行っていい?」

20: 2012/06/15(金) 22:43:07.23
貴音「律子嬢。貴女方は、らぁめんを食べに行くのではないのですね」

律子「え、えぇ……残念だけど、普通のファミレスに行くつもりよ」

貴音「では、私は一人行きつけのお店へ…」


春香「あ、じゃあ私もついて行って良いですか!?」

貴音「おや、春香。珍しい事もあるものです、私とらぁめんを食したいと?」

春香「そ、そんな!私だってラーメンくらい食べますよ!久しぶりに良いかなーって」


春香「そうだ!ねぇ、千早ちゃんも一緒にラーメン食べようよ、ラーメン!」

千早「春香……でも私、あまりラーメンは…」

春香「たまにはカ口リー高いの食べて元気つけなきゃダメだって!ね?」

千早「え、えぇ……分かったわ。四条さん、私も行きます」

貴音「そうですか、嬉しいです。では、参りましょう」ニコッ

21: 2012/06/15(金) 22:44:16.55
美希「ねぇねぇ小鳥、ダンスルームの鍵を借りたいんだけど」

小鳥「あぁ、真ちゃんとダンスの練習をするのよね。
   スタッフさんに言えば貸してもらえるけど、私の方からお願いしておくわね」

美希「ありがとうなの!」


春香「それじゃあ」

響「また」

伊織「ミーティングの時にね」

P「お、おいおいそんなに時間かけて昼飯食う訳じゃ…」

律子「え、えぇそうですね。じゃあ、行きましょうか」

テクテク…



美希「上手く分かれたの」

真「ここまでは予定通りだね」

小鳥「真ちゃーん、美希ちゃーん、行くわよー」

真・美希「はーい!」

22: 2012/06/15(金) 22:45:42.02
小鳥「はい、これ。ダンスルームの鍵ね」チャリッ

真「ありがとうございます」


雪歩「練習するのって、『マリオネットの心』だよね?響ちゃんは練習しなくていいの?」

あずさ「一緒にバックダンサーで踊るものねぇ」

響「ふふん。自分、完璧だからなんくるないさー」ドヤァ

美希「何か、ミキ達が完璧じゃないって言われてる気がして、ヤ!」

響「あ、あわわっ!違うぞ、そういう意味で言った訳じゃ…!」アタフタ…


真「へへっ、分かってるさ。美希もイジワルするのは止めなよ」

美希「あはっ☆」

響「な、なんだ、焦ったさー……でも、ごめんね」

真「いいって。それじゃあ、またね」

テクテク…



響(練習なんてしてる場合じゃないぞ。自分は、ここにいる皆を見張っておかなきゃ…)

23: 2012/06/15(金) 22:47:16.52
~ファミレス~

やよい「ど、どれにしようかな……えっと、えっと…」モジモジ…

律子「遠慮しなくていいのよ。好きなもの頼みなさい」


伊織「プロデューサー、あんたコレにしたら?超がっつりジャンボサーロイン」

P「げぇーっ!?……こ、これか?」

真美「す、すんごいボリュームだよこれ!兄ちゃん食べきれんの!?」

P「い、いや……正直今そこまで腹減ってないし、自信は無いが…」

律子「食べきれる訳ないじゃない、こんなの。プロデューサー、無視して構いませんからね」


伊織「あーら、私達のプロデュースを行おうという者が、随分と弱気な発言ねぇ?」

律子「……何ですって?」ガタッ

高木「お、おい律子君落ち着きたまえよ…」

24: 2012/06/15(金) 22:48:46.36
伊織「普段、私達に無理難題を押し付けてるくせに、自分の身はかわいいと見たわ」

亜美「お、そーだそーだ!律っちゃんもやればできるってとこ見せてYO!」


律子「何よそれ……いいわ、たまには挑発に乗ってやろうじゃないのよ」

P「お、おい律子まさか…」


店員「ご注文はお決まりでしょうかー?」

律子「超がっつりジャンボサーロイン二つ、どっちもライス大盛りで。
   後は各自好きなの頼みなさい」

P「おいぃぃぃ!?お、俺もかよ!」

律子「あの子達にナメられたままでいられないでしょう?」

真美「さっすが律っちゃん!マジかっけEEE!」

高木「あ、あまり無茶はせんようにな…」


伊織「………………」ニヤリ



伊織(何とか、時間稼ぎをしないとね…)

律子(真と美希のためにも…)

25: 2012/06/15(金) 22:50:20.40
~ライブ会場、ダンスルーム~

ガチャッ バタン

真「荷物は、あらかじめ律子が部屋に用意してくれているんだよね?」

美希「うん、確か入って左奥の倉庫の中に…」ガチャッ

美希「あっ、あったの!」

真「よし、着替えよう」


ヌギヌギ… スチャッ

真「ふぅ……どう、似合う?」

美希「バッチリなの!あとは、整髪料をチャチャッと付けて…」ワシャワシャ

美希「律子が買ってきた、男っぽいメガネをかけて…」


美希「謎のスーツ男、ヒラタの完成なの!」ジャーン!

ヒラタ「ふぅ……やっぱり気が進まないな、この変装」

26: 2012/06/15(金) 22:51:31.09
美希「じゃあ、真クン…」

ヒラタ「あぁ……今日で終わらせるんだ。千早の苦しみの元を、ボクが断つ」


美希「ミキも行きたいな」

ヒラタ「律子も言ったでしょ?今はミキがここにいてくれなきゃ、
    ダンスを練習していたっていうボクと美希のアリバイが崩れちゃう」

美希「うん…」

ヒラタ「大丈夫さ……上手くやるよ」


ガチャッ

美希「真クン!」

ヒラタ「ん?」

美希「……頑張ってね」

ヒラタ「ああ」


バタン…

28: 2012/06/15(金) 22:52:48.54
~ラーメン屋~

ガヤガヤ…

春香「いやぁ、すごい行列だったねー」

千早「やっとお店の中に入れたわ」


店主「いらっしゃーい!おっ、今日はお友達も一緒かい?」

貴音「えぇ。ご無沙汰しております、大将」


貴音「さぁ、春香、千早。先ほど買った券をかうんたぁに置くのです」スッ

春香「ところで、どんなラーメンが出てくるんだろうね?」スッ

千早「とりあえず、四条さんがお勧めするものにしたけれど…」スッ


店主「豚ダブルの方、どうぞー」

貴音「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ」

春香・千早「えっ」

店主「お次ー、もうお一人、豚タブルの方ー」

貴音「同じでお願い致します。次の豚だぶるも同じで」

春香・千早「えっ」

30: 2012/06/15(金) 23:10:48.62
~ライブ会場 正門~

響「それでいぬ美がさー、もう大変だったさー」

あずさ「あらあら~、うふふ」

雪歩「響ちゃんのお話は、聞いてて飽きないですぅ」


小鳥「あの~、もし手が空いてたら、ちょっとこっち手伝って欲しいんですけど…」

あずさ「あぁ、すみません!」

雪歩「パンフレット並べるの、手伝いますぅ」タタタ…


響「それじゃあ自分、何しよっかな~…」キョロキョロ

響「!!」



渋澤「…………」ウロウロ…



響(き、来た……!)

31: 2012/06/15(金) 23:12:15.60
渋澤「チッ……どこだよ、裏口って…」



テクテク…

響「………ふんふふーん…♪」ウロウロ…


渋澤「おう、そこのアンタ」

響「えっ?」キョロッ

渋澤「ん、おおアンタは……我那覇響ちゃんだよな、765プロの。
   やっぱ実物の方がかわいいねぇ」

響「自分に何か用?」

渋澤「いや何、ヒラタって人に用があってよ……裏口に来いと言われてんだが…」

響「こっちは正門だぞ。裏口なら、あっちからグルッと回れば行けるけど」

渋澤「あぁ、そうだったのか……
   ところで、サインと握手、お願いしても良いかい?」スッ

響「うっ……ごめん。今自分、開場準備のお手伝いで忙しいんだ」

渋澤「そうかい……邪魔したな」

テクテク…

32: 2012/06/15(金) 23:13:11.26
響「……ふぅ、これで良し」


小鳥「響ちゃん、どうかしたの?」

響「へっ!?……ど、どうって、何が?」

小鳥「いや、さっき知らない人と話してたみたいだから…」

響「お、男の人が来て、裏口に行きたいって言ったから案内しただけだぞ」

あずさ「あら~、誰かしら?」

小鳥「裏口ねぇ……基本的に、開場前はスタッフさんしか入れないはずだけど…」



響(い、いよいよだぞ……上手くやってくれよ、真…)ゴクリ…

33: 2012/06/15(金) 23:25:06.36
~ラーメン屋~

貴音「おいしゅうございました」フキフキ

春香「んぐっ……た、貴音さんもう食べたんですか!?」

貴音「えぇ……おや、二人ともまだ食べていなかったのですね」

貴音「特に千早、あなたは先ほどからほとんど箸が進んでいないようですが…」


千早「……こんなものを食べてる場合じゃないわ。早く発声練習をしないと…」ガタッ

春香(わわっ、やばい!今、千早ちゃんをライブ会場に行かせちゃ…)


貴音「千早ッ!!」

千早「!?」ビクッ!

貴音「この店での……いいえ、らぁめん屋でのお残しは、絶対に行ってはならぬ事です」

貴音「この一杯に、大将の魂が込められている…
   あなたは、人の努力の結晶を蔑ろにするおつもりですか?」


千早「は、はい……すみません」スッ

春香(ほっ……良かった、貴音さんが引き止めてくれて)

34: 2012/06/15(金) 23:26:13.21
貴音「どうしても食べきれないのであれば、もったいないので私が食べましょう」ズイッ

千早「あっ」

春香「え、ええぇぇぇぇぇっ!?」


貴音「早く個人練習をしたいのでしょう?さぁ、行きなさい」

千早「四条さん……ありがとうございます」


春香「ちょ、ちょっと待ってよ千早ちゃん!」アセアセ…

千早「春香、悪いけど私、発声練習をしたいから…」ガタッ

スタスタ…


春香「待って千早ちゃん!今、ライブ会場に行っちゃ…!」ガタッ

貴音「春香ッ!!」

春香「!?」ビクッ!

貴音「私の言う事を聞いていましたね?」

春香「は、はい…」

貴音「それならば良いのです」


春香(うぅ……ど、どうしよう…)

35: 2012/06/15(金) 23:27:43.12
~ライブ会場裏口~

チクタク…  チクタク…

ヒラタ「………………」



テクテク…

渋澤「おっ、ヒラタさん」

ヒラタ「!………渋澤さん。お待ちしていました」

渋澤「へへへ、ちょっと遅れちまったかな?」

ヒラタ「いえ、構いませんよ。それでは、ご案内しましょう」


ヒラタ「ですが、その前に……これを首にぶら下げていて下さい」スッ

渋澤「あん?」

ヒラタ「スタッフが持つカードです。会場は、スタッフ以外の出入りは許されていませんので」

渋澤「あぁ、なるほどね」

36: 2012/06/15(金) 23:29:07.41
テクテク…

ヒラタ「今回はオーディション会場のスタッフ採用面接という名目ですが、
    実務上、ここのようなライブ会場のスタッフも兼任することがあります」

渋澤「正門だっけか……765プロの我那覇響ちゃんがいたんだが、今日は何かあるのか?」

ヒラタ「えぇ、765プロ感謝祭ライブがあるんですよ。私も演出担当として呼ばれています」

渋澤「ほぅ……とすると、如月千早ちゃんもいるんだな?」

ヒラタ「えぇ、そうですね」


ヒラタ「あっ、と……しまったな…」

渋澤「?……おい、どうした?」

ヒラタ「いえ……会議室を押さえておくのを忘れていました。今、使える会議室がないんです」

ヒラタ「まいったな、このままじゃ採用審査ができない」

渋澤「おいおい、そっちが日時を指定しておいてそりゃないぜ」

ヒラタ「えぇ、申し訳ありません。
    すぐに係の者に用意させますので、それまでどこか暇を潰せる場所があれば…」


ヒラタ「……そうだ、屋上に行きましょうか」

37: 2012/06/15(金) 23:29:49.97
~ファミレス~

P「う、うぐぐ……」モグモグ…

律子「さすがに、キツイわね……」モグモグ…


高木「だから無理をしない方が良いとあれほど…」

亜美「何かグダグダだねー」

真美「ねー」

やよい「そ、その辺にしといた方が良いんじゃないかなーって…」


伊織「ふん、だらしないわね」ニヤニヤ

律子(伊織……あんた、今日の計画が終わったら覚えてなさいよ)


38: 2012/06/15(金) 23:30:46.73
ヴィー!… ヴィー!… 『コーイーヲー ユメーミールー オヒメサマハー♪』

律子「あら、携帯が…?………!?」

律子(春香から?……何かしら、このタイミングで…)

律子「プロデューサー、ちょっと外に行ってきます」ガタッ

P「あ、あぁ…」

スタスタ…



ピッ

律子「もしもし、春香?」

『律子さん!い、今大丈夫ですか!?』

律子「えぇ。何かあったの?」

『ち、千早ちゃんが……千早ちゃんがライブ会場に向かってます!!』

律子「えっ……な、何ですって!?」

40: 2012/06/15(金) 23:33:06.92
『ラーメンの量が予想以上に多くて……
 千早ちゃん、発声練習しに行くって、食べきれなかった分を貴音さんが食べて…!』

律子「落ち着きなさい、春香!今はあなた一人なの!?」

『いえ……私の分も食べてる貴音さんを、店の外で待ってる状況なんです』


律子「くっ……まいったわね…」

『ご、ごめんなさい…』

律子「起こってしまった事態はしょうがないわ。
   千早は私が対応するから、あなたは貴音をしっかり見張っておく事。いいわね?」

『は、はい…』

律子「そう気を落とさないで、後は私が何とかするから。じゃあ、切るわよ」

ピッ


律子「………ウーム…」ポパピプペ…

41: 2012/06/15(金) 23:34:16.22
P「ゲェップ……マジでしんどかった…」カラン

亜美「すげ→!兄ちゃん完食できたじゃん!」

伊織「律子のは、まだ結構残ってるわね」


ヴィー!… ヴィー!… 『ヒィアウィ ゴ-! ヒィアウィゴ キミートー ウェーカップ! ウェーカップ スベーテー♪』

伊織「あれっ?……メールだわ…」

伊織(!?………律子から?)ピッ


『差出人:律子
 件名:緊急事態
 本文:千早がライブ会場に向かっているらしいので、私が行って対応してきます。
    伊織はここにいる皆の足止めをお願い。
    読み終わったら、このメールは削除して。』


伊織(千早がライブ会場に!?よりにもよって千早が……)

伊織(千早と一緒だったのは春香よね……何やってんのよ…!)


スタスタ…

律子「お待たせー。あら、プロデューサー完食したんですね」

P「も、もう少し褒めてくれよ……本当にキツかったんだぞ…」

42: 2012/06/15(金) 23:35:46.77
律子「えぇ、そうですね。それでプロデューサー、ちょっと私会場に行ってきます」

P「会場に?もうそんな時間だっけか?」

律子「いえ……ちょっと美希が私に用があるみたいなので、様子を見に行こうかと」

高木「確か、美希君は菊地君とダンスの練習をしているんだったな」

律子「はい、細かい用件は聞いていませんが、とにかく行ってきます」

P「そうか……俺も行こうか?」

律子「いえ!あの、たぶん、プロデューサーではなく私を名指しで呼ぶという事は、その…」

伊織「女同士でデリケートな話をしたい時だってあるのよ。
   いちいち言わせないでよ、恥ずかしいわね」

P「す、すまん…」


律子「それじゃあ行ってきます。あ、お会計はコレで。後でお釣り下さいね?」スッ

真美「わーい、諭吉っちゃんだ→!」ヒラヒラ

律子「あげないっての、じゃあね」

スタスタ…

43: 2012/06/15(金) 23:37:58.55
P「さてと、どうするかな……律子の余った奴を俺が食う訳にもいかないし…」

亜美「えー?食べちゃえばいいじゃん!間接キスしちゃいなYO!」

亜美・真美「キース!キース!キース!キース!」

P「だから食えねぇって言ってんだろ!大人をからかうな!」


やよい「余ったのなら、これに詰めても良いですかー?」サッ

真美「で、出たー!やよいっちの伝家の宝刀、タッパーだ→!」

伊織「!」

高木「うむ、お残しをして帰る訳にもいかないからね。一旦それで持ち帰ろうか」

やよい「うっうー!またお腹が減った時に食べたい人が食べましょうー!」ヒョイ ヒョイ

P「やり慣れてるだけあって、手際がいいな」


伊織(まずいわね……やよいがタッパーに詰め終わったら、きっとこの店を出る雰囲気に…)

45: 2012/06/15(金) 23:40:13.52
やよい「詰め終わりましたー!」ホッコリ

P「良くぞ俺の危機を救ってくれた。偉いぞ、やよいは天使だな」ナデナデ

やよい「えへへ」ニコニコ

亜美「ちぇー、つまんないの」

高木「まぁまぁ……さて、あまり長居をしてもお店に迷惑だし、そろそろ…」


伊織「追加でデザートを頼みましょう。私はこのイチゴパフェね」

P「何っ!?」

伊織「あら?当然じゃない、デザートまで食すのがランチよ」

真美「おー、さすがいおりん、セレブだねぇ」

P「まだ食う余裕があるなら、残ったステーキ食ってくれても…」

伊織「甘いものは別腹なのよ」

46: 2012/06/15(金) 23:40:57.42
やよい「で、でも律子さんのお金であまり頼みすぎるのも悪いかなーって…」

伊織「いいのよ、律子が好きなの頼めって言ったんだし。ほら、あんた達は頼まないの?」

亜美「あ、じゃーねじゃーね!亜美はー…」

亜美・真美「十勝あんとバニラの黒蜜パンケーキ!」

真美「あー、亜美マネしたっしょー!?」

亜美「先に頼んだのは亜美だもん!真美の方こそマネだもんねー!」

真美「何をー!」

亜美・真美「やいのやいの!」

P「一語一句、声が揃うのもすごいけどな…」

高木「やっぱり双子なんだねぇ」



伊織(これで、もう少し時間稼ぎができる…)

47: 2012/06/15(金) 23:42:09.25
~ダンスルーム~

美希「はぁ……落ち着かないの」ソワソワ…

美希「真クン、危ない目にあっていなければいいけど…」ソワソワ…


ヴィー!… ヴィー!… 『ベツニ ナンテ イーワナイーデー チガウッテ イーッテー♪』

美希「キャッ!?着信………あれ、響からなの」ピッ

美希「もしもし、どうしたの?」

『美希か!?大変だ、今千早がライブ会場にいるらしいさー!』

美希「えっ!?」


『律子から連絡が来たんだ!自分、正門にいたけど見かけなかったから、
 たぶん裏口から入ったみたいだぞ!』

美希「そ、そんな……もし、真クン達と千早さんが鉢会っちゃったら!」

『それだけは絶対に避けるって、律子が急いで向かってるぞ!
 美希も、なるべく千早に会わないように十分注意しててくれ!』

『あ、あと他の皆への偽装工作も忘れずにね!今なら雪歩に電話するといいぞ!』

美希「わ、分かったの!」

48: 2012/06/15(金) 23:42:57.14
『頼んだぞ!』ピッ



美希「…………!」ポパピプペ…


プルルルルルルル…  プルルルルルルル…

ガチャッ

『もしもし、美希ちゃん?』

美希「あ、雪歩?お疲れ様なの。響その辺にいる?携帯につながらなくて」

『えぇっと……トイレかも、ちょっと見当たらないや。ごめんね』

美希「ううん、いいの。それじゃあ響に伝えといて。マリオネットのダンスだけど…」


真の声『いや、まだいいよ。もう少し練習するって言っといて』(←テープ音)

美希「あ、真クンまだ練習するの?美希もうクタクタなのー」

真の声『だらしないなぁ美希は。それでも本番上手くやれるんだから大したもんだよ』

美希「えへへ、褒められると照れちゃうの」

49: 2012/06/15(金) 23:43:38.38
『美希ちゃん?今の、真ちゃんの声だよね?』

美希「うん。聞こえたと思うけど、もう少し練習するから、やっぱりいいや」

美希「あ、部屋には来ないでね。ちょっとマジメに練習したいの」

『うん、頑張ってね。真ちゃんにもよろしく伝えてあげて』

美希「ありがとうなの」

ピッ



美希「………………」

美希「ま、真クン……!!」ポパピプペ…

50: 2012/06/15(金) 23:48:49.40
~屋上~

ヒラタ「こちらが屋上です。どうぞ開けてみて下さい」

渋澤「屋上で一対一のお話かよ……高校生同士のイチャイチャじゃあるまいし」

ガチャッ


渋澤「おぉーう……なかなか良い眺めじゃねぇか」

ヒラタ「地上8階建てですが、向かいの廃ビル以外、周囲に高いビルも無いですからね」


ヒラタ「…………」チラッ


ヒラタ(ロープが手すりに括りつけてある……律子の言う通りだ)

ヒラタ(それに、向かいの廃ビルの窓一面には、ガムテープが貼られている…
    今からこの屋上で行われる事を、周囲から確認することはできないはずだ)

ヒラタ(あとは、ボクがあのロープの輪っかの部分を渋澤の首に引っ掛けて、
    廃ビルとの谷間に突き落とすだけ)


ヒラタ(一瞬の隙を突くんだ……チャンスはたぶん一度しかない…)

51: 2012/06/15(金) 23:51:08.86
渋澤「それで、面接ってのは何やるんだ?」

ヒラタ「えっ?あぁ……書類がございますので、それを書いていただくだけです」

ヒラタ「面接とは名ばかりの、採用率100%の申込書を目の前で書いていただくだけ」

渋澤「随分いい加減な職場だな」

ヒラタ「へへっ、面目無いです」


ヒラタ「今、係の者に空いている会議室を調整させています。それまで世間話でもしていましょう」

渋澤「特に話す事も無いんだが…」

ヒラタ「まぁそう言わずに。あっ、渋澤さん、カメラをやられているんですね?」

渋澤「あぁ、これか?……まぁな」

ヒラタ「ここの会場の職員も、カメラなどを趣味にしている人が多くてね。
    お昼休みなんかは、ここでバードウォッチングなり芸能人観察する人もいますよ」

渋澤「……芸能人観察?」

52: 2012/06/15(金) 23:52:21.47
ヒラタ「そうです。この辺は、芸能人の目撃情報が多いんですよ。
    たぶん、近くに住んでたり、所属する事務所が密集しているんでしょうね」

ヒラタ「そういう人達のプライベートな瞬間をカメラに収めて、週刊誌に匿名で投稿する人も…」

渋澤「………………」

ヒラタ「あ、これはオフレコでお願いします。本来はいけない事だと思いますので」


渋澤「……どの辺りで目撃されてたりするんだ?」

ヒラタ(よし、食いついてきた……!)

ヒラタ「えーっとですね……こちらへどうぞ」

テクテク…


ヒラタ「ちょっと手すりを乗り越えないと行けませんが……よっと」

渋澤「おいおい、危ねぇぞ」

ヒラタ「大丈夫ですよ、渋澤さんもどうぞ」

渋澤「う、うむ…」

53: 2012/06/15(金) 23:54:42.11
ヒラタ「この位置だと見えづらいかな。えぇと、あっちのビルの横の…」

ヒラタ「ほら、あのマンションの中をご覧下さい。
    遠いので、目一杯カメラをズームにしないとハッキリとは見えませんが…」

渋澤「あの青色っぽいマンションか?何階辺りを見ればいいんだ?」

ヒラタ「えーと、確か5階くらいだったかな?あの有名な小早川瑞樹の自宅があるんです」


渋澤「こ、小早川瑞樹!西園寺プロの!?……ま、マジかよ…」

ヒラタ「中には、あの自宅の中であんな事やこんな事がされているのを
    この位置から目撃した人も…」

渋澤「あ、あんな事って、どんな事だよ…?」

ヒラタ「やだなぁ、分かるでしょ?いい大人なんだから」ニヤリ

渋澤「……………」ゴクリ…

54: 2012/06/15(金) 23:55:35.72
ヒラタ「あっ!」

渋澤「ど、どうした!?」

ヒラタ「な、何か今、部屋の中に人影らしきものがチラッと動いたような…」

渋澤「何っ!?」


バッ!

渋澤「どこだ!?良く見えねぇぞ!」スチャッ

ヒラタ「5階の、えーと左から2つ目か3つ目辺りの部屋です。ほら、カメラをズームして良く見て!」

渋澤「むむっ……!」ジィーッ…


ヒラタ「………………」

55: 2012/06/15(金) 23:57:10.42
スッ

ヒラタ(このロープを……)ドクン…

渋澤「どこだ……くそ、見えねぇじゃねぇか、どこだよ!!」ジィーッ…


ヒラタ(今、渋澤はカメラを食い入るように覗いてる……隙だらけだ、やれる…!)ドクン…


渋澤「おい、本当にあのマンションで合ってんだろうな!?」ジィーッ…



ヒラタ(今だっ!!)バッ!


ヴィー!… ヴィー!… 『モット! ターカメテ ハテナク コーコローノー オークマーデー♪』


ヒラタ「!?」ビクッ!

渋澤「あん?」クルッ


ヒラタ「…………!!」ギクッ!

渋澤「……おい、何だそのロープは」

56: 2012/06/15(金) 23:58:53.43
ヒラタ「くそっ、えいっ!!」バッ!

渋澤「うおっ!?」

シュルッ  ギュゥッ!


渋澤「な、何しやがる!!」ドンッ!

ヒラタ「うわっ!」ドシンッ

ぐきっ

ヒラタ「!!………あぐっ…!」


渋澤「首が……ゲホッ、ウエッ……何だこれ、取れねぇ!」グイッ グイッ

ヒラタ「くぅ……うおぉぉぉぉぉぉ!!」バッ!


渋澤「!?」

ヒラタ「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ドンッ!


渋澤「う、うおっ…」グラッ…

57: 2012/06/16(土) 00:00:00.25
渋澤「……き、貴様…!?」グラァ…!

ヒラタ「地獄に、落ちろ……!!」

グラァァ…


渋澤「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

ヒューン…


ビシィッ!


渋澤「!!……あがっ!!……か…がっ…!!!」ジタバタ!

渋澤「がっ…あ…………かぁっ………」ジタバタ…



渋澤「……………………………………」プラーン…

58: 2012/06/16(土) 00:01:21.39
ヒラタ「はぁ……はぁ……や、やった…!」

ズキッ!

ヒラタ「!……つぅ……足挫いちゃった…」ヨロヨロ…


ヒラタ「ぐっ……く……さっきのは、一体誰からの着信だったんだ?」ピッ

ヒラタ「美希か……何でだろう。とにかく、成功した報告をしなくちゃ…」ポパピプペ…


プルルルルルルル…  ガチャッ

『真クン!?』

ヒラタ「美希、何かあったの?」

『ごめんね、あの……千早さんが、ここに来てるらしいの』

ヒラタ「ち、千早が、ライブ会場に!?」

『だから、鉢合わないように気をつけてって言おうと思って…』

ヒラタ「そうだったのか……ありがとう、気をつけるよ」

59: 2012/06/16(土) 00:03:09.04
『うん、それで、真クンの方は…』

ヒラタ「今、終わったよ……無事に成功した」

『本当っ!?』

ヒラタ「あぁ……うぐっ!」ズキッ!

『真クン、どうしたの?大丈夫!?』


ヒラタ「いや……大丈夫、心配しないで。それよりも、美希は早く5階の倉庫の窓から渋澤を…」

『分かってるの、窓の外で渋澤が吊るされてるから、美希が倉庫の中に降ろしとくんだよね?』

ヒラタ「あぁ。倉庫に降ろしたのを確認でき次第、ボクが屋上のロープをほどく」

ヒラタ「その後、ボクも5階に降りて倉庫に向かうから、倉庫で自頃したように二人で偽装工作しよう」


ヒラタ「廃ビルとの谷間に吊るされてるとはいえ、いつ人目につかないとも限らない。早めに頼むよ」

『分かったの!それじゃあ、また後でね?』

ピッ


ヒラタ「………くっ…」ズキズキ…

60: 2012/06/16(土) 00:04:26.45
渋澤「……………………………………」ズズッ…

美希「うぅぅ……すっごく、お、重いの…!」ズルズル…


ドシン

美希「ふぅぅ……や、やっと降ろせたの……氏んでも迷惑な人なの…」グッタリ…

61: 2012/06/16(土) 00:05:05.64
ヒラタ「美希が降ろしたか……じゃあロープをほどいて、と…」


ヒラタ「いたた……靴擦れもしてるし、結構重傷かも、これ…」ヨロヨロ…



ガチャッ

ヒラタ「!?」


千早「珍しいわね、いつもは『立ち入り禁止』の札が掛かってるのに…」

千早「あら?」

62: 2012/06/16(土) 00:06:15.43
ヒラタ「あ……あぁ………」

千早「先約がいたなんて……すみません」


ヒラタ「こ、ここで何をしているんだ!!」

千早「えっ!?……あ、あの……会議室がどこも一杯だから、屋上で発声練習をと…」

ヒラタ「すぐにここを離れて!ここは関係者以外立ち入り禁止だ!!」

千早「す、すみませんでした……いつもの札が掛かっていなかったから、てっきり…」

ヒラタ「いいから、さぁ早く!!」

千早「し、失礼します…」ペコリ

スタスタ…



ヒラタ「くっ……指紋を拭いておこう…」フキフキ…


ヒラタ「……ボクも早く行かないと…!」

ヨロヨロ…

63: 2012/06/16(土) 00:07:47.18
~倉庫~

ヨロヨロ…


ガチャッ

美希「あっ、真クン!」

ヒラタ「渋澤は?」

美希「ほら、あそこ。すっごく重くて大変だったの」


ヒラタ「渋澤と千早との関係を疑われるような所持品は?」

美希「見つけられたのは全部とったよ。携帯とか、手帳とか」

ヒラタ「よし……じゃあ、さっさと済ませよう。ドアノブにロープを括って渋澤の首に巻くんだ」

美希「うん!」

セッセ セッセ…

64: 2012/06/16(土) 00:09:02.45
美希「……完成なの!」

ヒラタ「よし。あとは、響があらかじめ守衛室から盗んでおいたスペアキーで倉庫の鍵を閉めて…」

ガチャッ


ヒラタ「これでよし……さぁ、ダンスルームに戻ろう」ヨロヨロ…


美希「……ま、真クン、足痛いの?」

ヒラタ「あぁ……大丈夫さ、そうでもないから」

美希「全然大丈夫そうじゃないの!しっかりして!」

ヒラタ「静かに、あいたた……まずはダンスルームに戻ろうよ…」ヨロヨロ…

66: 2012/06/16(土) 00:10:58.12
千早「さてと……困ったわね、練習する所が無いわ」


タタタ…

律子「千早っ!!」

千早「あら、律子。ちょうど良い所に来たわ、発声練習をしたいのだけれど場所が無くて…」

律子「練習する所ならさっきスタッフさんにお願いして押さえたから、早く行くわよ!」

千早「えっ?良く知ってたわね、私が練習しようとしていたの」

律子「春香から聞いたのよ、さぁ早く!」

千早「えぇ、ありがとう」

スタスタ…



千早「律子、ありがとう。一人で確認したいから、後は大丈夫よ」

律子「あ、そう……じゃあ私はこれで」

ガチャッ バタン


律子「………ふぅ、やれやれだわ」

67: 2012/06/16(土) 00:12:53.44
~ダンスルーム~

真「あいたたたた…」

美希「本当に、ごめんなさいなの…」


ガチャッ

律子「真、美希。何とかやったみたいね」

真「あぁ、律子…」

美希「律子!…さん、大変なの!真クンの足が…!」



律子「これは、かなり腫れてるわね……それに、靴擦れもひどいわ」

真「あいたた!あんまり押さえないで…」


美希「ミキが真クンに電話しちゃったせいで、真クンが手こずる事になっちゃって…」グスッ…

真「大丈夫だよ美希。ボク達は元々ダンスの練習をしてたんだし、それで挫いた事にすればいいさ」

律子「そうね……そうしましょう。美希も気持ちを切り替えなさい」

美希「うん…」

真「シークレットブーツ履く時点で、捻挫しそうだなぁとは思ったんだよね…」

68: 2012/06/16(土) 00:16:15.67
律子「美希が雪歩に電話して、犯行時間に真と美希がここにいたというアリバイも作れたとして…」

律子「問題は千早ね…」

真「一応、屋上のドアノブについた指紋は拭いておいたけど…」


美希「律子…さんもヤバくない?今のところ、犯行時間に単独行動してるの、千早さんと律子、さんだけなの」

律子「私は千早を部屋に誘導した後、あなた達の練習を見ていた事にすればいいわ。
   プロデューサー達にも、美希から連絡があったって言って席を外したんだから」

真「問題は、千早のアリバイを誰がどう証明するか、か…」

律子「生真面目な性格だものね、あの子。
   屋上に行ったら知らない人に怒られたので引き返した、なんて正直に証言しかねないわ」

美希「そしたら色々ヤバイ気が…」


律子「警察が来て、もしあの子の事を追いかけたところで、どのみち事件解決には結びつかないけど…
   とにかく、あの子と警察を引き合わせないよう尽力する事を考えましょう」

真「うん…」

69: 2012/06/16(土) 00:17:39.46
『差出人:律子さん
 件名:無事成功
 本文:17時のミーティングまで、ひとまず自由に行動をして構いません。
    結果報告と今後の対応について話すので、ミーティング終了後、ラウンジに集合すること。
    読み終わったら、このメールは削除して。』

春香「終わった…」



響「上手く行ったのかな…」

伊織「何よ、今後の対応って…」

70: 2012/06/16(土) 00:19:32.45
~17時、楽屋~

響「えぇー!真、ケガをしたのか!?」

真「ああ……ごめんね、美希、響」

美希「ううん、真クンが謝ることないの…」


あずさ「あら~、困ったわねぇ」

雪歩「真ちゃん、無理しないで今日は休んだ方がいいよ」

P「律子もそう気を落とすなって。起こってしまった事はしょうがないさ」

律子「はい、すみません…」


P「とにかく、『エージェント夜を往く』は中止、『マリオネットの心』は美希のソロで行く。
  1曲目とラストも編成を変えるから、各自頭に叩き込んでおいてくれ」

一同「はーい!」

P「じゃあ、ミーティング終了!今日も頑張ろうな!」

71: 2012/06/16(土) 00:23:53.55
~ラウンジ~

伊織「なるほどね……千早が暴走した、と…」

春香「ご、ごめんなさい!私がちゃんと引き止めていれば…」

響「しょうがないさー。二十郎に行ったんでしょ?量がすごいもんなぁ、あの店」


律子「渋澤の遺体が発見されるのは、いつになろうと然したる問題じゃないわ。
   ライブ中、始まる前、終わった後…」

律子「問題は、その後の警察の事情聴取……おそらく、私達にもくるでしょうね」

律子「その時に、千早が正直に証言してもあの子が不利にならないように仕向けなければならない」

真「それ、どうやってするのさ?」

春香「正直に証言したら、千早ちゃんが疑われる可能性だって…!」

72: 2012/06/16(土) 00:26:29.04
律子「どのみち渋澤の身の回りを捜査されたら、あの男と千早との関係がバレるのも時間の問題よ」

律子「ウソの証言をして疑われるくらいなら、警察の捜査を誤った方向に
   向かわせることを考えるべきだわ」

美希「屋上じゃなくて、5階でどう自殺が行われたかを警察に考えさせるってこと?」

律子「えぇ、もちろん千早を捜査線から遠ざける努力はするべきだけれど…」


コツッ…

貴音「……おや、これは?」

律子「!?」

73: 2012/06/16(土) 00:28:20.01
伊織「貴音……どうしたのよこんな所へ」

貴音「私はただ、らうんじの窓から見える月を眺めたいと思っただけのこと」

貴音「屋上は立ち入り禁止らしいと、千早に教えられたものですから」

真「………………」


貴音「ところで、貴女方は?何やら珍しいめんばぁですが…」

律子「ちょっとしたミーティングよ」

美希「いつも同じ人の意見聞くのもアレだから、たまにはね?」

貴音「なるほど」


律子「さぁ!今言ったような形で行くわよ、気合入れていきなさい!」

4名「はーい!」

真「ボクは出られないけど、本番は頑張ってね、貴音!」ガッツ!

貴音「えぇ、貴女の分まで頑張ります、真」ニコッ

スタスタ…


貴音「………おや、月が見えませんね」

74: 2012/06/16(土) 00:29:37.46
~18時 ライブスタート~

ワァァァァァァァァァァ!!

「今日は皆さん来てくれてありがとうございまーす!」

「皆さんと私達で、今夜を最高の思い出にしましょうねー!」

「それじゃあ行くわよー!!」


『ARE YOU READY!?』

『I’M READY!!』

ワアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


……………………

75: 2012/06/16(土) 00:33:38.70
~ライブ終了後~

ファンファンファン…


キーコキーコ…

古畑「あぁぁ、やっと着いた……結構遠くてさぁ、大変だったよもう」キキィ

向島「首を長くして、お待ちしておりました」

古畑「あっそう。この自転車さ、盗られないようにね、あまり無い型だから」

向島「はい、了解しております」

古畑「うん、それじゃあ…」


古畑「あーそうだ、君の名前、何だったかなぁ……えぇっと、そう向島君」

向島「はいっ!ですが……今は、東国原です」

古畑「ヒガシクニバル?……あれ、同じ漢字だよね、元県知事の。コクバルじゃないの?」

向島「えぇ、クニバルなんです」

古畑「うーん……ダメ、覚えられないや、ごめんね」スタスタ…

向島「はいっ、お気をつけて!」

76: 2012/06/16(土) 00:38:16.52
西園寺「では、倉庫には鍵が閉められていたと?」

警備員「えぇ、妙だなと思って鍵を開けて中を見たら、男の人がドアノブで首を…」


今泉「あ、古畑さん!」

古畑「大きい建物だねぇ、私苦手なんだよこういう所疲れちゃって」

今泉「さっきまで、ここで765プロの感謝祭ライブやってたんですよ!
   知ってます、765プロ?」

古畑「うーん、そうねぇ」


西園寺「遺体の身元は渋澤マタイチ、46歳、男性。職業は今のところ不明。
    遺書の類は見つかっておりません」

西園寺「使用されたロープの長さは約15m程度。
    氏亡推定時刻は、今日の14~15時の間のようです」

今泉「発見当時の遺体の写真、見ます?」

古畑「いいよ、どうせ自殺でしょ……何でこの人ここにいたの?」

西園寺「スタッフのカードを下げていましたが、他のスタッフは面識が無いそうです」

古畑「面識が無い…?」

西園寺「氏亡前に彼を見たという人がいないか、引き続き調査致します」

古畑「お願い」

78: 2012/06/16(土) 00:39:38.47
~楽屋~

春香「えっ、自殺!?」

P「あぁ。今も詳しい状況は捜査中だが、ライブ中に5階の倉庫で遺体が見つかったらしい」

あずさ「そ、そんな…」


伊織「私達、何か聞かれるの?事情聴取とかって」

律子「まだそこまでは分からないけれど、心配する必要は無いと思うわ。
   怖いでしょうけれど、あまり気負わずにね」

亜美「う、うん…」

雪歩「こ、怖いですぅ…」プルプル…

真「大丈夫だよ雪歩、ボク達は別に悪いことしてないんだから」


貴音「真の言う通りです。ところで律子嬢、警察の方々はどちらに?」

律子「えっ?……5階で色々調査してると思うけど?」

貴音「見に行っても良いのでしょうか?」ワクワク

P「はっ?」

79: 2012/06/16(土) 00:41:03.22
今泉「あぁーそこ、そこの君、もっとキビキビ動くようにねー」

今泉「ほらー、お喋り禁止だよー、分かってるー?」


古畑「………………」



テクテク…

真「あのー…」

今泉「えっ………あっ!!」

美希「捜査の現場って、見学しても良いの?……じゃなかった、良いですか?」

貴音「おぉ……大勢の人が…」


今泉「も、もちろんです!僕は今泉慎太郎、それで……あっ、ちょっと待ってね!」

今泉「古畑さーん!ちょっと、古畑さんこっち!」

古畑「はいぃ?」

80: 2012/06/16(土) 00:43:29.39
今泉「紹介するね、あれがボクの上司の古畑警部補」

古畑「古畑ですー」ニコッ

今泉「そ、それでこちらが、765プロアイドルの菊地真ちゃん、星井美希ちゃん、四条貴音ちゃんです」

三人「こんばんはー」ペコリ

古畑「どうぞよろしく」ペコリ


今泉「自分の家だと思って、いくらでも見学してっていいからね!」

真「あ、ありがとうございます…」

今泉「うんうん……あっ、そこぉー!ほらほら、もっとちゃんとやってよー!」ドタドタ…


貴音「おぉ……おぉ……」キョロキョロ…

真(もう遺体はどこかに行ったみたいだね)

美希(指紋採ってるみたいだけど、自殺の時も採るのかな?)


古畑「どうも初めましてー、古畑と申します」ヌッ

美希「あっ、は、初めまして…」

81: 2012/06/16(土) 00:45:41.97
古畑「こういう現場を見るのは初めてで?」

真「え、あ、はい……どんなものかなーって、興味本位で……迷惑、ですよね?」

古畑「いえぇ、とんでもない。あのでこちゃんが言ったように、好きに見てって下さい」

美希「でこちゃん?」

古畑「えぇ、あのでこちゃん。分かりやすいでしょう?」

真「え、はぁ……あははは」


古畑「エージェント夜を往く…」

真「えっ?」

古畑「ずっと気になっているんです、『エージェント夜を往く』のサビの歌詞ですー」

古畑「もっと、高めて果てなく、心の奥まで、あなただけが、使えるテクニックで、の次…
   アレ、何て言ってるんでしょうか?」

真「えっと、と……溶かしつくして?」

古畑「トカシツクシテ?」

真「溶かしつくして」

82: 2012/06/16(土) 00:47:31.40
古畑「とかしつくして、溶かし……あぁ~、やっと分かりましたぁ」

古畑「私ずっと“とかちつくちて”だと思ってたんですー、喉のつかえが取れましたぁ。
   ありがとうございます、ンフフフ」

真「え、えぇ、どうも…」


古畑「『生っすか!?サンデー』いつも拝見しています。星井さんの司会はいつも楽しい」

美希「えっ、見てくれてるの!?ありがとうございますなの!」

古畑「えぇ、アレのメイン司会者は天海さん、如月さん、星井さんの三人ですよねぇ」

古畑「そう決まった経緯を、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

真「そ、捜査に関係あるんですか?」

古畑「単純な興味ですー、すいませぇん、エヘヘ」


美希「んーっとね、あれはハニ……プロデューサーや、皆で話して決めた事だけど、
   特に深い意味は無いの。ただ、ミキ達が一番やりやすいかなって」

古畑「あぁ~そうでしたか、変な事聞いてすいません」

美希「ううん、別にいいよ」


貴音「おぉ……」キョロキョロ

83: 2012/06/16(土) 00:50:43.91
美希「ところで、自殺の時でも指紋って採るの?」

古畑「んー、どこからどう見ても自殺の時は採りませぇん」

真「どこからどう見てもって……今回は自殺じゃないかもって事ですか?」

古畑「えー、何とも言えませんが一つ気になる点が……こっちを見ていただけますかぁ?」


古畑「遺体が所持していた、いわゆる遺留品です。このカメラを見て下さい」

美希「カメラ?」

古畑「そうなんです、デジタル一眼レフという奴だそうですが、これ…
   レンズキャップが外れています」

美希「……あっ…」


古畑「これから自殺をしようという時に何か撮影したいものがあったんでしょうかぁ?
   それもこんな何も無い倉庫の中をー?」

真「……キャップを元々付けてなかったとかは?」

古畑「うーん、そうであればもっとレンズが汚れてたり、キズが付いてても良いと思いますー」

古畑「それにこのレンズキャップは、両側を指で押さえて外すタイプのものです。
   つまり何かの弾みで取れたとは考えにくい」

古畑「おそらく氏ぬ直前に彼自身が取った可能性の方が高い、そう思いませんかぁ?」


貴音「………………」ウロウロ

84: 2012/06/16(土) 00:52:17.17
美希「………………」

真「……なるほど、変ですね」

古畑「そうでしょう?意外とこういうのが重要だったりするんですー」


古畑「『きゅん!ヴァンパイアガール』聞きましたぁ、星井さん達の新曲」

美希「えっ?……あ、あぁ。すごい、良く知ってるの」

古畑「エッヘッヘ、あんな可愛らしいヴァンパイアがいたらぜひお目にかかりたいものですー」

美希「え、えへへ…」テレテレ…


今泉「古畑さーん!せっかくなんで皆で写真撮りましょう、写真!」ドタドタ…

古畑「せっかくなんでとか失礼な事言うんじゃないよ」ペチン

今泉「あいたっ!」

古畑「すいませんね、一つお願いできますか?」

真「え、はい、いいですよ……貴音ー、写真撮るってー!」

貴音「はぁ、承知しました」


パシャッ! パシャッ!

85: 2012/06/16(土) 00:56:11.33
~ラウンジ~

律子「自殺を疑ってる?」

美希「レンズキャップが取れてるのを見て、そう判断したらしいの」

真「まぁ、こっちを疑ってる感じは無いから大丈夫とは思うけど…」

伊織「捜査開始から2、3時間程度で疑われるとはね…」

春香「昨日、皆で廃ビルに忍び込んで窓にガムテープを貼ったし、
   犯行の瞬間を見られた心配は無いですよね…?」


律子「スタッフのカードは、渋澤が無許可で偽造したものとすればいいわ。
   どうせ渋澤に渡したのは、紙に印刷しただけのものだもの」

律子「金に困った渋澤は、最後の賭けとして、スタッフになりすましアイドルのライブ裏側の盗撮を試みた」

律子「しかし、実状を見てそれが不可能と分かり、帰る場所も無く、絶望感に駆られて自殺…」

律子「たとえば、最終的にそう警察が判断してくれればいいけれど…」

響「そんなに上手くいくかなぁ…」


律子「とにかく、明日の朝、私が担当の刑事さんに会うことになってるから、
   出来る限りの事はしてみるわね」

春香「お、お願いします、律子さん」

86: 2012/06/16(土) 00:58:20.88
~明朝、765プロ事務所近くの喫茶店~

ガチャッ  カラン カラン…

律子「お待たせしました」

古畑「いえぇ、お忙しいところすいません。警視庁の古畑と申しますー」


律子「話というのは、昨日の…?」

古畑「えぇ、そうなんですー。あの場にいた人達に聞いて回らないといけなくて」

律子「となると、私だけじゃなくて、他の子達にも聞くんですか?」

古畑「すいませぇん、仕事なもので」

律子「いえ、構わないですよ」

87: 2012/06/16(土) 00:59:36.11
律子「事件が起きた日は、午前中は会場到着後、皆で昼過ぎまでリハーサル…
   その後は、各自昼食をとったり、個人練習をする子もいました」

古畑「秋月さんはどちらに?」

律子「私は若い子達を数名、それとプロデューサーと社長と一緒に、ファミレスで昼食を」

律子「あ、でもその後私は一人席を外して、ライブ会場に行きました」

古畑「それはどうして?」

律子「先ほど言った、個人練習する子の様子を見に行ったんです。
   その後は、17時のミーティングに行って、ライブ開始……というわけです」


古畑「ミーティングに行かれるまで、ずっとその子達……あぁっと…?」

律子「えぇ、千早という子をレッスン室に案内した後は、真と美希という子達のレッスンをずっと」

古畑「ライブに向けての最終調整を?」

律子「えぇ、美希、真、あと響という子達のトリオでやる曲がありまして…」

古畑「『マリオネットの心』」

律子「……お詳しいですね」

古畑「第1回目の感謝祭ライブは感動しましたぁ、エッヘッヘッヘ」

律子「とにかく、そのレッスンに付き合っていました」

古畑「あぁ~、なるほどそうでしたか…」

88: 2012/06/16(土) 01:00:54.07
律子「こんなもので良いのでしょうか?」

古畑「えぇ、十分ですありがとうございますー」


古畑「えぇっと、後10名以上聴取しなければならなくて……いやぁ困ったなぁ」

律子「ウチの子達全員分の、今日のスケジュールをまとめたメモになります。
   空いてる時間を狙って、話を聞きに行ってあげると良いかと」スッ

古畑「……うわぁ、これはありがたい。頂戴致します」

律子「でも、あまり良い手がかりは得られないと思いますけど?」

古畑「形だけですから」ニコッ


古畑「それとぉ……もし出来たらで結構なのですが、明日のライブのぉ…」

律子「あぁ、チケットですね?ご用意しておきます」

古畑「アハハハ、ありがとうございますー。いやぁ、良かった」

89: 2012/06/16(土) 01:03:06.16
ガチャッ  カラン カラン…

古畑「ん?」


亜美「律っちゃん、まだー?」トテトテ…

律子「あぁ、亜美、真美。そろそろ行くわ。古畑さん、もうよろしいですか?」

古畑「えぇ、ありがとうございますー」


真美(うわ……刑事さんだ…)

古畑「どうもー、古畑と申しますー」

亜美「ど、どうも…」

律子「緊張してるみたいですね。普段はもっと騒がしい子達なんですが…」

古畑「そりゃそうですー、刑事の受ける印象なんて良い訳ありませぇん、エヘヘ」

律子「そ、それは……うーん、そうかも…」


律子「あ、そうだ。もしよろしければ、途中まで私の車に乗って行かれますか?」

律子「この子達はCM撮影に行くのですが、その途中に、
   今グラビア撮影している子達がいるスタジオがあるんです」

古畑「あぁー……アハハハ、何から何まですいません、ありがとうございますー」

90: 2012/06/16(土) 01:04:26.94
~律子車内~

ブロロロロロ…

亜美「すごーい!チョー知ってんじゃん、ふるふる→!」

古畑「エェッヘへヘヘ、大したもんじゃありませぇん」

律子(もう打ち解けてる……それに、古畑さんの事をふるふるって…)


古畑「『無尽合体キサラギ』楽しく見てましたよ。劇場版も素晴らしかった」

真美「んっふっふ~、ありゃあ真美達渾身の演技だったからね→」

亜美「千早ちゃんは何でか好きじゃないみたいだけどね、あれ」

古畑「ンフフフ、何ででしょうかー」


亜美「あ、ふるふる!ちょっと違うYO!」

古畑「はいぃ?」

真美「んっふっふ~。はい!」

古畑「ン?……ンフッフ~?」

91: 2012/06/16(土) 01:05:54.02
亜美「ノンノンノン、んっふっふ~。はい!」

古畑「ン……ンッフッフ~?」

真美「そう!んっふっふ~」

古畑「ンッフッフ~」

亜美・真美「んっふっふ~」

古畑「ンッフッフ~……ンフフ、練習しておきますー」



亜美「亜美達はねー、リハやった後は、兄ちゃんや律っちゃん達と一緒にお昼食べてー」

真美「その後は、楽屋でDSやってたよ、二人で」

古畑「あぁ~、そうですか……ゲームを」


亜美「それにしても、お昼は面白かったねー。最後の方グダグダだったけど」

古畑「ん?」

92: 2012/06/16(土) 01:07:24.75
真美「あ、えっとね、いおりんが律っちゃんを挑発してね、チョーでかいステーキ頼んだの」

亜美「兄ちゃんと律っちゃん、それしんどそうに食べてて……でも兄ちゃん偉いよね、完食してさ」


古畑「えー、失礼、秋月さんとマネージャーさんが大食い勝負をされたと?」

律子「マネージャーじゃなくてプロデューサーですね」

古畑「あぁすいません、プロデューサーさんが」

律子「勝負という訳ではないのですが……とあるアイドルの子からけしかけられましてね」

律子「今にして思えば、何であんな挑発に乗ったのか、自分でも分からないわ」

古畑「ついカッとなるのは人間良くありますー、仕方ありませぇん」


ブロロロロロ…

律子「とか言ってる間に着きましたね。ここがグラビア撮影やっているスタジオです」

古畑「あぁ、すいませんわざわざ。本当にありがとうございますー」

律子「いえ、それでは」


亜美・真美「じゃーねーふるふる→!」「オシゴト頑張ってね→!」フリフリ

古畑「どうも」ニコッ

93: 2012/06/16(土) 01:08:51.34
~某撮影スタジオ~

古畑「『あず散歩』毎週見ていますー。先週のあの辺り、私の家の近くなんですよ、エヘヘ」

あずさ「あらあら~、そうなんですか。見て下さってありがとうございます、うふふ」

春香(この人が、担当の刑事さん…)


あずさ「リハーサルの後は、そうですねぇ……皆でお弁当買って、ラウンジで食べて…」

古畑「皆というのは?」

あずさ「私と響ちゃん、雪歩ちゃん、事務員の小鳥さんです。珍しいメンバーでしたねぇ」

あずさ「あとは、開場準備をしていました。それがひと段落したら、ちょっと会場の外を散歩して…」

古畑「迷子になった」

あずさ「あら~、良く分かりましたね」

古畑「あず散歩を見てたら大体想像つきます。あぁ失礼、ンフフ」


春香「わ、私はあの……貴音さんや千早ちゃんと一緒にラーメンを…」

古畑「ラーメン?どこかおいしいお店が?」

春香「はい、すごく量が多くて……その後は、貴音さんと公園の屋台を物色してました」

あずさ「そうしたら、偶然春香ちゃん達に会って~」

古畑「あぁー、それは良かったぁ、アハハ」

94: 2012/06/16(土) 01:10:28.86
古畑「ありがとうございます、お仕事頑張って下さいー」

あずさ「あら~、もうよろしいんですか?」

古畑「えぇ、それじゃあ私はこれで」

春香(ほっ……こんなもんで済んで良かった…)


古畑「あぁそうだ最後に一つだけ…」


古畑「天海さん」

春香「は、はいっ!?」ビクッ!

古畑「ラーメンを食べた後、四条さんとご一緒だったと……如月さんはどちらへ?」

春香「えっ、あ、あの……個人練習をしたいからって、一人で外へ」

古畑「一人で?」

春香「は、はい……千早ちゃん、すごくマジメだから…」

古畑「あぁ~、そうでしたか……それとそうだあと一つ…」

春香「な、何ですか…?」ドキドキ…

古畑「『ゲロゲロキッチン』や『生っすか!?サンデー』で、よく転んでらっしゃる。
   おケガをされないように、どうかお気をつけ下さい」

春香「あ、は、はぁ……あ、ありがとうございます!」

古畑「……………」ニコッ

95: 2012/06/16(土) 01:11:41.30
~某テレビ局ラウンジ~

古畑「先ほどやられていたのは『高槻やよいのお料理さしすせそ』の収録で?」

やよい「えー、何で分かったんですかー!?」

伊織「スタジオのセットに名前書いてあるじゃない」

やよい「あ、そっか」

古畑「毎週平日にやっていて、大変でしょう~お若いのに」

やよい「そんな事無いですよー、とっても楽しいです!」

古畑「そうですかー、それは何より、ンッフフ…」


古畑「ン?ンフ?……ンフッフッフ………ン~フフッ……」

伊織「?……どうしたんですか?」

古畑「あぁいえ、先ほど双海亜美さん、真美さんから笑い方のアドバイスをいただきまして…」

古畑「こう、タメを作るのが難しいんですねぇ、私せっかちでぇ、ンッフフフ~」

やよい「へぇ~?」キョトン

伊織(また馬鹿馬鹿しい事を他人に吹き込んで…)

96: 2012/06/16(土) 01:13:16.16
伊織「私とやよいは、律子達と一緒にファミレスでランチを。
   その後は、やよいと本番衣装の確認をしていました」

古畑「何か普段と変わった事はありましたか?何でも良いんですー」

やよい「えぇっと、特に何も……あっ」

やよい「珍しいなーって思ったのは、律子さんが伊織ちゃんの挑発に乗った事かなーって」

伊織(…………!)

古畑「秋月さん達から聞きました。特大ステーキを苦しみながら食べたと?」

伊織「そうですね、ちょっとした出来心だったんです」

伊織「プロデューサーと律子には、悪い事をしたと思っています」

古畑「アハハハ、そういう気持ちがあるだけでも大人にとっては十分でしょう」


古畑「ちなみに、そういう事って良くある…?」

伊織「……えぇ、まぁ…」

やよい「あんまり無いと思いますー」

古畑「そうですか……『美人姉妹探偵団』の二期、期待しています」

伊織「……どうも」


古畑「ンフフ、それじゃあ」ニコッ

97: 2012/06/16(土) 01:14:28.89
~ラーメン屋~

ガヤガヤ…


テクテク…

貴音「………おや?」



今泉「水臭いじゃないですかー古畑さん!何で僕を呼んでくれないんですか!?」

古畑「うるさいね君は、お昼呼んであげただけ良いでしょう。すごい行列だねぇ」

今泉「まぁいいですけど、僕ラーメン好きですし。でも次からは僕も…」

今泉「………あっ!!」


貴音「昨日の刑事殿……確か、古畑警部補と」

古畑「覚えていただけて光栄ですー、ンフッフ~。今日はオフだそうで」

今泉「貴音ちゃん!!ひ、久しぶりだね…」テレテレ…

貴音「はて……どこかでお会いしましたでしょうか?」

今泉「……………」

98: 2012/06/16(土) 01:16:19.23
店主「はいー、豚ダブルでーす」ゴトッ

今泉「えああああっ!?」

古畑「うわぁ~……これはすごい、アハハハ」


古畑「このお店、そう言えば『四条貴音のラーメン探訪』でも?」

貴音「えぇ。ただ、あの時は本店でしたが」

今泉「古畑さん!急いで食べないと麺伸びちゃいますよ!」ガツガツ


古畑「天海さんから聞きましたぁ。あの日は天海さん、如月さんと一緒に三人でこちらへ?」

貴音「そうです。あの会場でのライブの前には、必ずここへ来るのです」

古畑「なるほどー、必勝祈願」

貴音「ふふっ……そのようなものですね」


古畑「そうそう、一つお聞きしたい事が…」

貴音「おいしゅうございました」フキフキ

今泉「ブフォッ!!……ゲホゲホッ!…えぇ、ウソぉ!?」

古畑「あら~……本当にお早い。いつ食べていたんでしょう?」

貴音「ふふっ、トップシークレットです」ニコッ

今泉「そんな!一度もモグモグしてなかったはずなのに!」

99: 2012/06/16(土) 01:17:36.58
貴音「お聞きしたい事とは、その事で?」

古畑「あぁそうだ、すいませぇん」

貴音「春香や千早とは、普段一緒には来ません。私が記憶する限り、初めての事です」

古畑「はいぃ………なぜ私の聞きたいことが分かったのでしょう?」

貴音「それも、トップシークレットです」

古畑「……ンッフッフッフ、いつかお伺いしたいものですー」

貴音「では私はこれで。失礼致します」ガタッ

古畑「どうもありがとうございました」ニコッ

今泉「あぁ、ちょっと!僕とも話し…」

スタスタ…


今泉「あぁ~……古畑さん、僕にも話振って下さいよぉ」

古畑「………今泉君、君ラーメン好きだよね」

今泉「へっ?」

古畑「あとお願い」ガタッ

今泉「ちょっ、古畑さん!古畑さーん!!」

ニジュ口リアン「ギルティー…」

今泉「お、俺ぇっ!?」

100: 2012/06/16(土) 01:19:46.78
~某ラジオ局~

雪歩「け、警察…」プルプル…

古畑「突然すいません、正直にお答えいただくだけで良いんですー」

響(何か、不気味な刑事さー……気をつけないと…)

古畑「『とびだせ!どうぶつワールド』あれは良い番組ですー」

響「えっ、知ってるのか……ですか!?」

古畑「ンフッフッフ、日曜の朝は大抵寝ているので、ビデオに録画してから見るのですがー」

響「そ、そこまでしてくれてるのかー、えへへ…」テレテレ…


響「自分達は、リハの後はあずさやぴよ子と一緒にお昼ご飯食べて、開場準備のお手伝いをしたんだ」

古畑「その後は?」

雪歩「えぇと……楽屋で、響ちゃんと一緒にお茶を…」

響「亜美や真美がDSやってる横で、自分達は一息ついてたんさー」

古畑「あぁ~、そうでしたか。何か変わった事は?」

響「変わった事?……何かあった、雪歩?」

雪歩「いえ……特に何も無いですぅ」

101: 2012/06/16(土) 01:22:04.48
古畑「いやぁ、お仕事中すいませんでした、ありがとうございますー」

古畑「ミュージカル『コゼットの恋人』のDVDがようやく出るそうで」

雪歩「えっ!?な、何で知ってるんですか?」

古畑「有名な話ですー、楽しみにしていた甲斐がありましたぁ、アハハハ」

雪歩「そ、そんなぁ……私、ひんそーでちんちくりんだから、あまり…///」カァーッ

古畑「ンフフ……あ、そうだついでにもう一つ…」


古畑「我那覇さん」

響「ん、何?」

古畑「三浦さん達と一緒にお昼ご飯を食べたと」

響「うん……それが?」

古畑「いえぇ、珍しい事だと三浦さんがおっしゃっていたので、
   何か特別な用事があったのかと、ンフフ」

響「いや、別に……オトナなトークに混ざりたかっただけさー」

古畑「そうですか、ん~不思議ですねぇ」

響「えっ…?」

102: 2012/06/16(土) 01:23:45.74
古畑「星井さんと菊地さんは、ダンスの練習をされていたそうです」

古畑「『マリオネットの心』は我那覇さん、あなたもバックダンサーとして踊る予定のものだった」

響「…………」

古畑「本番のわずか4~5時間前です、それにあの曲はとてもダンサブル…
   最後の調整をしようというお二人の気持ちは良く分かる」

古畑「普通なら、三人のうち二人が手を挙げれば、残りの一人もそれに同調する気がします」

古畑「しかし~?それでもあなたは、練習に参加するのではなく三浦さん達とお昼を食べ、
   お話しをされていた…」


雪歩「あ、あの……?」

古畑「ンフフフ、よほど大事でオトナなトークをされていたのでしょうか。気になりますー」

響「べ、別に話したくないさー……」

103: 2012/06/16(土) 01:25:09.93
雪歩「わ、私達は…!」

古畑「ん~?」

雪歩「私達は、ただ響ちゃんのペット……じゃなくて、家族の話をしていただけですぅ。
   別にその、変な話は、何も…」

古畑「あ~、我那覇さんが飼ってるペットの話……我那覇さんが。それだけ?」

響「そ、それだけだぞ!そこまで掘り下げる話じゃないさー」

古畑「あぁ~、失礼致しました。この仕事してるとつい疑い深くなっちゃって」

古畑「どうかお気を悪くしないで下さい、エヘヘヘ」

響「……………」


古畑「では私はこれで。お仕事頑張って下さい」ニコッ

104: 2012/06/16(土) 01:27:14.59
~某レッスンスタジオ~

P「えっ、刑事?」

美希「そうなの、古畑さんって人なんだけど…」

古畑「古畑と申しますー。レッスン中すいません、昨日の事でちょっと…」

P「そうですか、我々で良ければお話しますが…」

古畑「ん~?……如月さんはいらっしゃらない?」

P「えぇ、今日は新曲のレコーディングがあったので、レッスンは早めに切り上げたんです」

古畑「あぁ~そうですか。秋月さんから、この時間ならここにいると聞いていたのですが…」


美希「昨日の千早さんの行動なら、ミキお話できるの!春香から聞いてるよ?」

P「本当か、美希?」

古畑「ふ~む…?」

105: 2012/06/16(土) 01:29:12.10
美希「んっとね、まずミキはリハ終わった後、真クンとダンスの練習したの。
   『マリオネットの心』って曲、ちょっと不安な所があったから…」

美希「でも、練習してる途中で、真クンが足挫いちゃって…」

古畑「えぇ~、足を?」

美希「うん……それで、律子…さんも来て、プロデューサーにも看てもらって…
   だから、ミキ達はずっとダンスルームにいたよ?」

古畑「それじゃあ、昨日のライブは…」

P「そうです、真抜きでやらざるを得なくなりました」

古畑「あぁ~、それはとても残念ですー」


美希「で、千早さんはね、リハの後は貴音や春香とラーメン食べに行ったの」

美希「その後は、律子、さんに案内されてレッスン室に行って、ずっと歌の練習してたんじゃないかなぁ」

古畑「お昼ごはん食べた後ずっと?」

美希「千早さん、歌に関してはすっごくマジメなの。普段の練習もすごくするし、
   今までのライブでも本番前は何時間も発声練習するの。ねっ、ハニー?」

P「人前でその呼び方は止めろ……しかし、美希の言う通りですね」

P「喉を潰してしまう恐れもあるから、ほどほどにしろと何度か注意はするのですが…」

古畑「それは心配ですー、あの綺麗な歌声が聴けなくなるのは考えたくありませぇん」

106: 2012/06/16(土) 01:30:49.11
美希(律子の言う通り、無理言ってハニーを引き留めてて正解だったの)

美希(ハニーが上手い事、千早さんに有利な証言してくれて、容疑者候補から早めに外されていけば…)


P「私は、会場で皆のリハーサルを行った後、同僚の秋月や社長の高木、
  あとは若手を何名か連れて、会場近くのファミレスに行きました」

古畑「双海亜海さん、真海さんから聞きました。すごく大きなステーキを食べたそうで」

P「あぁ、良くご存知で。もう、まいりましたよ」

古畑「ンフフッフフ、その後は?」

P「えぇ、秋月が千早を迎えに行って、デザートを食べて店を出た後は、
  先ほど美希が申した通り、ダンスルームへ真の様子を見に行ったり…」

P「あとは、開場準備の様子を確認して、ステージの段取りについて
  スタッフと最終チェックをしていました」

古畑「失礼、ステーキを食べて、さらにデザートも?」

P「いえ、私ではなく他のアイドルの子達が、です」

古畑「うーん、そうですか……」

107: 2012/06/16(土) 01:32:40.14
古畑「ん~、ちなみにこれは単純な興味でマネージャーさんにお伺いしたいのですが…」

P「プロデューサーです」

古畑「あぁごめんなさい、プロデューサーさん、ンフフフ」

P「何です?」

古畑「765プロでプロデュースを担当されているのは、秋月さんとあなただけ?」

P「えぇ、そうです」

古畑「このレッスンスタジオ、今いらっしゃるのはあなた方二人だけ?」

P「え、えぇまぁ……765プロの人間はそうですね」


古畑「お二人で10名以上のアイドルを抱えるプロデューサーというと、とてもご多忙かと思います」

古畑「そのような中、個人のアイドルの練習にマンツーマンで付き合う事もあると?」

P「えぇと……まぁ、最近はあまり無いですが、えぇ…」


美希「ハニーはミキの事見てくれなきゃ、ヤ!仲を引き裂かれるのは許せないの!」ダキッ

P「あ、こら美希!馬鹿、離れろ!……すみません、コイツが今日だけはどうしてもと…」

古畑「あぁー、なるほど、アハハハ」

P「変な噂をされたくはないので、くれぐれもオフレコでお願い致します」

古畑「えぇ、分かっています。お邪魔しました、それではごゆっくり」ニコッ

108: 2012/06/16(土) 01:34:40.25
~765プロ事務所~

小鳥「お茶をどうぞ。ごゆっくりなさっていって下さい」コトッ

古畑「あぁーどうもすいません。ずっと外にいて疲れちゃって、アハハハ」

真「それで、最後はボクって事ですよね?」

古畑「いえぇ、関係者全員ですので、事務員さんや社長さんにもお聞きしたいのですが…」

小鳥「わ、私もですか!?」

高木「分かりました、良いでしょう」

古畑「ありがとうございます。これで765プロ全員の方々の聴取が終わりますー」

真(千早はもう済んだと見なしてる訳か……律子と美希、上手くやってくれたみたいだね)


真「ボクは午前中のリハの後、美希と一緒にダンスルームで練習をしていました」

古畑「皆さんから聞いておりますー、そこで足をケガされてしまったと」

真「そうなんです。だから、今日も仕事はキャンセルしたんですけど、
  暇なのでこうして事務所に顔を出したり」

古畑「なるほど、ンフッフフ……ダンスの時は、何か履き慣れてない靴を?」

真「いえ、ずっと使ってるダンスシューズを履いてましたけど?」

古畑「へぇー、そうなんですか……『王子様TV』にはもう?」

真「えっ?あ、うーん……機会があれば、また出るかもですけど……はぁ」

109: 2012/06/16(土) 01:36:07.37
小鳥「私は、開場準備やスタッフのお弁当の手配を主にしていました」

古畑「お昼は、我那覇さんが飼われているペットについてお話をされていたと」

小鳥「そうみたいですけど、私は色々作業があったから、あまり参加できなくて…」シュン…

古畑「あぁ~、それはお気の毒だぁ……お察し致しますー」

高木「私は律子君やプロデューサー君、それにアイドルの水瀬君や亜美君、真美君とランチを。
   その後は、知り合いの記者がいたので、彼と喫茶店にいました」

古畑「喫茶店にいたのはどれくらいでしょう?」

高木「2時間くらいかなぁ。思いのほか、ランチの時間が長くなりましたからね」

古畑「そうですか……」


ガチャッ

亜美「ただいま→……あっ、ふるるん!」

真美「来てたんだ!ねぇねぇ、アレ出来るようになった?」

古畑「あぁ、双海亜美さん、真美さん。いやぁ、なかなか上手く行かなくて、エヘヘ」

110: 2012/06/16(土) 01:37:07.35
小鳥「あら、随分仲良くしてもらってるんですね」

真「亜美、アレって何のこと?」

亜美「いやー、アレはアレっしょ→、ねー真美?」

真美「ね→?」


古畑「いえぇ、ちょっとあのー、鼻での笑い方について講釈を受けまして、エヘヘヘ」

古畑「ンフフ……ンフッ………ンッフッフ~」

亜美・真美「んっふっふ~」

古畑「ンッフッフ~」

亜美・真美「んっふっふ~」

真「はぁ……なるほどね」


ガチャッ

律子「ただいま……あら、古畑さん」

古畑「どうも、お邪魔しています」

111: 2012/06/16(土) 01:38:48.71
亜美「律っちゃん、亜美達疲れたからお茶ー」

真美「真美アイスー」

律子「自分で取りなさい、そんなの」

亜美・真美「ええぇぇぇぇぇ…」


真「いいよ、ボクが取ろうか」スッ

律子「真、あんた足ケガしてるんだから…」

真「大丈夫さ、大した事じゃないし」

ヨロヨロ…

古畑「………………」


真「ほら、コレ」

亜美「うわー、まこちんマジ王子様!」

真美「やっぱどこぞの律っちゃんとは器の大きさが違いますな→」

律子「ほら、あぁやってすぐ調子に乗るんだから。いちいち甘やかす事無いのよ」

真「あぁ、ごめん…」

112: 2012/06/16(土) 01:40:05.08
小鳥「古畑さんも、よろしければお茶のお代わりを…」

古畑「あぁいえいえ、もう十分ですー。皆さん、貴重なお時間をありがとうございましたぁ」

真美「えぇー、ふるふるもう帰っちゃうの?」

古畑「今度会う時は、ちゃんと出来るように練習しておきますー、ンフッフッフ~」

亜美「出来てないし!ちゃんと頑張ってね、ふるふる!」

古畑「ん~、分かりました。何とかしましょう」ニコッ


古畑「それでは、失礼致しますー」

ガチャッ バタン


亜美「んー……ちゃんと出来るようになるかなぁ、ふるふる」

真美「結構トシだしねー」

真「そう思うなら余計な事させるなよ…」


律子(出来る限りのことはやった……わよね)

113: 2012/06/16(土) 01:43:57.65
~ライブ会場、ラウンジ~

西園寺「関係者に聞き込みをしましたが、渋澤というスタッフがいた事は
    誰も認知していなかったようです」

西園寺「それに、良く見たらこのスタッフ証、他の物と比べて安っぽい作りとなっています。
    おそらく、偽造されたものと考えられます」


古畑「ん~………」

今泉「きっとその渋澤が勝手に偽造して会場に忍び込んだんだ。そうですよね古畑さん?」

古畑「あれ、君いたの?」

今泉「い、いましたよ!ていうか、あの後僕本当に大変だったんですから!
   危うくギルティーされかけたり、それでなくてもお腹が痛くなって…」


古畑「それで西園寺君、他には?」

西園寺「はい……渋澤は、フリージャーナリストだったようです。
    彼の自宅の近所を聴取したところ、発覚しました」

古畑「フリージャーナリスト……?」

今泉「だから、会場の裏側を盗撮しようとしたんですよ。
   まったく酷い奴だなぁ、ロクな人間がいないですよジャーナリストなんて」

古畑「ふーん、自頃した理由は?」

今泉「……………」

114: 2012/06/16(土) 01:46:24.84
西園寺「さらに、渋澤について気になる情報がもう二点…」

西園寺「検案を担当した医師によると、氏因は縊氏、すなわち首吊りで間違いないようですが、
    首に残ったロープの痕がどうも不可解であると」

古畑「どんな所が」

西園寺「痕が濃すぎる、とのことです」

西園寺「ドアノブで首を吊ったのなら、全体重がかからないので、
    一般的にはロープの痕は薄いと」

古畑「………………」


西園寺「また、渋澤の家を家宅捜索した所、家のメモにこの名前が……」

古畑「…………!」

今泉「こ、これ……!?」



古畑「……西園寺君ありがとう。ついでにもう一つ調べといてもらえる?」

西園寺「はい」

115: 2012/06/16(土) 01:49:12.23
~夜、某レコーディングスタジオ前~

テクテク…

千早「悪いわね、真。まさか迎えに来てくれるなんて」

真「いや、いいんだ。どうせ今日は暇だったんだし」

千早「足の具合はどう?」

真「うん、痛みは少しひいてきたよ。ありがとう」


真「じゃあ、帰ろうか。それとも、皆呼んでどこかご飯食べに行く?」

千早「そうね、それじゃあ…」


コツッ…

真「……!」

古畑「どうも」


千早「あら……えぇと、失礼ですが…」

古畑「如月さん、初めまして。警視庁の古畑と申しますー」

千早「あ、あぁ、警察の人…」

真(一体何しに来たんだ、この刑事…)

116: 2012/06/16(土) 01:51:46.04
古畑「夜分に突然すいませぇん、昨日のライブ会場での自殺の件でちょっと確認したい事が…」

真「やっぱり、あれは自殺だったんですね?」

古畑「いえぇ、断定した訳ではありません。そのための捜査、という所でしょうか、ンフフフ」


千早「私に何か…?」

古畑「えぇ、昨日の如月さんの行動については、星井さん達からお聞きしていますー。
   如月さんにアリバイがあるという事も」

千早「えっ?……ど、どうも…」

真「……だったらもう良いじゃないですか。千早に何を聞いても無駄ですよ」

古畑「いえ、聞きたい事というのは、氏んだ彼と如月さん……あなたとの関係です」


古畑「渋澤マタイチさん」

千早「!?」

古畑「……やはりご存知のようで。そうです、遺体の身元は彼だったんです」

千早「………そんな…!」

真(…………)

117: 2012/06/16(土) 01:55:57.31
古畑「私の部下に西園寺という者が…
   えぇあの~、まだ異動したてですが有能な小男がいましてですね」

古畑「彼が渋澤さんの身元を捜査していましたところ、家のメモにあなたの名前が…」

千早「え……えっ………」

古畑「如月さん、どうか教えていただきたい。
   渋澤さんとはどのようなご関係だったのでしょうかぁ?」

千早「……そ、その人とは、別に……大した関係じゃありません」


真「ち、千早だってすっかり有名になったんだし、いまさら芸能人の名前が
  ジャーナリストの家のメモに残されてたって…!」

古畑「特におかしい話ではないと…
   如月さんの携帯電話の番号が書かれていてもですかぁ?」

千早「!」

真(………!)


古畑「事務員の音無さんにも確認していますー。確かに如月さん、あなたの番号であると」

古畑「フリージャーナリストと人気アイドルが連絡を取り合う…
   大した関係じゃなくないように思えるのですがー?」

古畑「如月さん、やはりこういうのは本人から聴取をしたいんですー。
   昨日の事について、お話をいただけないでしょうかぁ?」

118: 2012/06/16(土) 01:58:03.52
千早「………うぅ…」ガタガタ…

真「……ち、千早が怖がっています!これ以上尋問しないで下さい!」

古畑「あぁ~、どうもすいません。ちょっと言葉が強すぎましたぁ」

真「いいよ、もう帰ろう千早……先に駅で待ってて」

千早「…………すみません、失礼します」

スタスタ…


真「……古畑さん、もう自殺で良いじゃないですか。あんな責めるような言い方…」

古畑「えぇ、すいません。あぁそうだ菊地さんにもぜひお聞きしたい事が…」

真「何ですか。ボク達、急いでるんですけど」

古畑「ケガをされたのは左足首?」

真「そうですよ」

古畑「片足だけ」

真「えぇ」

古畑「ダンスの練習中に」

真「はいそうです、それが何か!?」

古畑「靴擦れもでしょうかぁ?」

真「だから……えっ?」

119: 2012/06/16(土) 02:01:12.70
古畑「捻挫したのが片足だけなのに、歩いている様子を見ると、
   どうも両足が痛そうに見えたんですー」

古畑「それが気になって、菊地さんのご自宅の近くの病院を調べました。
   これもあの~、西園寺君に調べてもらった事なのですが…」

古畑「それで、菊地さんを診療したというお医者さんに会えまして、
   お話を聞いたところ、確かに左足首の捻挫だった、そうおっしゃった!」

古畑「ただー?靴擦れが……それも両方の足のくるぶしとカカトにひどい靴擦れがあったと。
   履き慣れた靴を履いていては、まずつく事は考えられないほどの傷なのだそうです」

古畑「ましてや、私は良く分かりませんがダンスシューズなどの柔らかい生地ではなおさら。
   革靴のように硬く、しかも履き慣れていない靴を履かないとあそこまでひどい靴擦れは無いと」

真「……ッ!」


古畑「菊地さん……改めてもう一度聞きたいのですが、
   本当に履き慣れた靴を履いていたのでしょうかー?」


真「…………………」

120: 2012/06/16(土) 02:03:55.60
~765プロ事務所近くの公園~

美希「それで、何て答えたの?」

真「うん……ダンスをやってる時にできた靴擦れです、って言い張った」

響「えぇー、それもう完全に疑われてそうだぞ」

真「だって……響こそ、ダンス練習に参加しなかったの怪しまれてるじゃん!」

響「うっ!そ、それは……でも、自分よりも真の方がヤバイさー!」

春香「あぁ~、二人ともケンカは止めようよぅ…」オロオロ…


伊織「それよりも千早ね。元々、時間の問題だったけど…」

律子「………………」

美希「どうするの、律子?…さん」


律子「仕方ないわね……こちらから打って出るわ」ポパピプペ…

響「誰にかけてるんだ?」

律子「……千早よ」プルルルルル…

真「………………」

121: 2012/06/16(土) 02:06:08.16
~翌朝、765プロ事務所~

ガチャッ

古畑「おはようございますー。わざわざお呼びいただけるなんてぇ」

今泉「うわぁ、ここが765プロの事務所なんだぁ!すごいなぁ!」キラキラ

亜美「あっ、ふるふるー!」トテトテ

真美「今日は違う人もいるね!うわー、この人小っちゃい!」

西園寺「き、君達だって大して変わらないじゃないか!」


律子「お待ちしておりました。どうぞ、こちらの社長室へ」

古畑「どうも……あぁ、今泉君」

今泉「はい?」

古畑「君はこの双海亜美さん、真美さんと一緒に遊んでもらってなさい」

今泉「え、えっ!?」

亜美「おぉー、これはいおりんを凌駕するオデコの広さ…!」キュッ キュッ

真美「良いシゴトしてますな→」キュッ キュッ

今泉「こ、こら!止めなさい、触るな!ていうか磨くな!」

伊織「いじめてんじゃないわよ!」

122: 2012/06/16(土) 02:10:02.47
千早「………………」

古畑「話というのは、如月さんの?」

律子「えぇ、そうです。昨日、古畑さんのご質問にお答えできなかったので、
   気持ちの整理がついた今日、改めてお話をさせていただきたいと…」

P「律子、一体何を話すんだ?」

律子「とても大事な話です。なので、社長にも同席していただきます」

高木「う、うむ…」

律子「さぁ、千早…」


千早「………私は、あの男……渋澤から、脅迫を受け、お金を要求されていました」

西園寺「脅迫……」

古畑「……………」


千早「発端は一年前です。あの男が、仕事で暴力団と絡んだ事があり、
   その時に多額の借金を背負っていたようです」

千早「その時に目を付けられたのが、私の父……もう両親は離婚し、父とは別居していましたが…」

千早「渋澤は私の父をほとんど強制的に連帯保証人にし、金を要求してきました。
   普通に働いていては、到底支払えないようなお金を…」

123: 2012/06/16(土) 02:12:48.41
千早「そうすると、渋澤は暴力団とのコネを活かし、父を危ない仕事に就かせました。
   詳しくは聞いていませんでしたが……危ない薬の運び屋のような…」

P「!…………」

千早「自分はほとんど働かないくせに、父にそのような仕事をさせて…
   さらにその弱みにつけ込んで、もっと脅迫まがいの事を行いました」

千早「やがて……精神的に追い込まれ、肉体的にも無理が祟った父は、ほどなくして…」


P「……何ということだ…」

高木「如月君のお父上に、そのような事があったとは…」

律子「私も、昨日電話で初めて聞いて驚きました」

古畑「……………」


千早「父が亡くなった後、渋澤は、今度は私と母にたかるようになりました」

千早「私は、弟を交通事故で亡くしているのですが……あの男は…
   危ない連中と一緒に写っている父の写真も一緒にちらつかせて…」

千早「……弟と父の事を明るみに出したくなければ、金を出せと……!」



千早「……………」グスッ…

P「………千早、良く頑張ったな……もういい」

124: 2012/06/16(土) 02:14:29.24
千早「いいえ……古畑さん」

古畑「はいぃ」


千早「あの男に対して……私に殺意があった事は認めます」

P「ち、千早!?」

千早「でも、その上で言います。私は、誓ってあの男を頃したりなんてしていません」

古畑「えぇ、分かっています」


西園寺「渋澤は、ドアノブにロープを括って首を吊っており、暴れた形跡もありません」

西園寺「仮に、あれだけ大柄な男が暴れたとしたら、たとえ男性でも
    取り押さえるのは難しいでしょう」

西園寺「ましてや、女性があの狭い倉庫の中で暴れる男を制し、絞頃する事は、
    現実的に見てほぼ不可能と推察されます」

P「そうですか……じゃあ、もし他殺だったとしても、
  ウチのアイドルは容疑者にはなりえないという事ですね?」

古畑「えぇ、そうなりますー」

125: 2012/06/16(土) 02:16:11.99
千早「昨日は、リハーサルが終わった後、春香と四条さんと一緒にラーメンを…
   その後、食べ切れなかった分を四条さんに預けて、私はライブ会場へ行きました」

古畑「発声練習をされに行ったと?」

千早「そうです。最初は、会議室がどこも空いていなかったので、
   屋上に行ったのですが…」

律子「屋上があいていなかったから、すぐに引き返したのよね?」

千早「えぇ……その後すぐに律子に会って、空いているレッスン室へと案内してもらい、
   17時のミーティングが始まるまで私はそこにいました」

古畑「…………なるほど…」


律子「この事を、古畑さん達に聞いて欲しくて、今日お呼びしました」

古畑「……ありがとうございますー。おかげで胸のつかえが取れましたぁ」ニコッ



ガチャッ

西園寺「今泉さん、終わりましたよ」


今泉「でこちゃん言うな!」

伊織「でこちゃん言うな!」

亜美・真美「キャッキャッ♪」ドタドタ…

126: 2012/06/16(土) 02:17:44.99
古畑「今泉君、何遊んでるの。帰るよ」

今泉「あ、古畑さん!聞いて下さいよ、亜美ちゃんと真美ちゃんが僕のオデコを馬鹿に…」

古畑「褒めてもらってるんだよ、失礼な事言うんじゃないよ」ペチン

今泉「あだっ!」

伊織「そんなひどい事しなくたって良いじゃない!仮にも部下でしょう!?」

亜美「あー、やっぱりでこちゃん同士惹かれてるんだ→!」

今泉・伊織「でこちゃん言うな!!」


古畑「ではまた」ニコッ

ガチャッ バタン


千早「………………」

律子「千早、もう大丈夫よ。心配しないで」


真「……それじゃあプロデューサー、ボク先に会場行ってますね」

P「あ、あぁ……まだ捻挫は治ってないんだよな?」

真「はい、2週間は様子を見た方が良いだろうって」

P「そうか、残念だな」

真「いえ、その分皆を応援しなきゃ……それじゃあ」

127: 2012/06/16(土) 02:20:22.55
~とある喫茶店~

花田「いらっしゃいませー、メニューをどうぞー」



西園寺「かくかくしかじか」

今泉「な、何てこった……許せないですよ、渋澤の奴めー!」


古畑「……昨日はあんなに拒んだのに、如月さん、今日は一転して
   私達を呼んで聴取に応じた…」

古畑「今泉君、君ならこの事をどう考える?」

今泉「えっ?……そりゃあ、昨日はすぐに帰りたい用事があったんですよ、きっと。
   見たいテレビがあったりとか」

古畑「西園寺君、君は?」

西園寺「……真実を証言すると都合が悪いので、即座の証言を拒んだ」

西園寺「そして、捜査を間違った方向へ誘導させる嘘の証言を思いついた今日、
    我々を呼び寄せた、というのはいかがでしょう?」

古畑「半分正解」

西園寺「半分、とは?」

古畑「それは私にも分からないよ、今のところはね」

古畑「どちらにせよ、彼女達にとって都合の良いタイミングで呼び出したのは間違いない」

128: 2012/06/16(土) 02:22:48.04
今泉「……古畑さん、まさか、765プロを疑ってるんですか?」

古畑「さぁ」

今泉「じょ、常識的に考えて下さいよ!あんな良い子達が人頃しなんてする訳ないじゃないですか!」

古畑「私だって信じたいよ。そんな事言うなら君ね、あの子達が犯人じゃないって証拠持って来なさいよ」


今泉「なっ……わ、分かりましたよ!証拠ですね、分かりましたよ!行くぞ、チビ太!!」ガタッ

西園寺「えっ」

古畑「あぁ、西園寺君は連れてっちゃ駄目だから」

今泉「えぇっ!?」

古畑「西園寺君、君とは違って優秀だから連れ回すの禁止。いいね」

今泉「………ち、ちきしょ~!!」ダッ!

タタタ…

129: 2012/06/16(土) 02:26:15.09
西園寺「……ありがとうございます、古畑さん」

古畑「あぁいいのいいの、私もちょっと出かけてくる」ガタッ

西園寺「どちらへ?」

古畑「散歩。お代はコレでね」スッ

テクテク…



花田「何だ、また事件か?」ヒョコッ

西園寺「えっ……またあなたですか」

花田「良いから話してみろって、ん?」

西園寺「無関係の人間に、捜査の内容をお教えする訳にはいきません」

花田「さっき聞こえた限りだと、765プロで首吊りの遺体が発見されたようだな。
   自殺じゃないとしたら、狭い空間で暴れる大柄な男を絞頃するのは難しい。
   薬物反応も無い……だが、別の所で絞頃することは可能かもな。たとえば屋上からロープで吊るとか。
   あらかじめ輪っかをつけておけば、あとはそれを首に引っ掛けて落とすだけ。
   協力者がいるなら、そいつが下の部屋の窓から遺体を引きずり降ろし、工作するんだ。
   これなら、たとえ1~2人の女でも犯行は可能なんじゃないか?
   765プロの中でも運動神経の高い人物ならなおさらだろう。
   響ちゃんもそうだが、たとえば真ちゃんや美希ちゃんとか。なーんてね」

西園寺「あなたの推理には根拠が無さ過ぎる」

花田「いや、俺はいつも勘だから」

130: 2012/06/16(土) 02:29:38.49
~たるき亭~

ガチャッ

P「ふぅ……社長、今日は何食べます?」

高木「うーん、そうだねぇ……おや」


古畑「どうも」ニコッ

P「……またあなたですか」

古畑「昨日の事でどうしても、えぇ確認したい事が、マネージャーさん」

P「マネージャーじゃない。私はプロデューサーです」

古畑「あぁごめんなさい、ンフフフ」


P「もう十分答えたでしょう。それとも何ですか、まだ事件を疑っているんですか?」

古畑「ンフフ、すいませぇん、疑うのが私達の仕事なんですー」

P「我々やウチの子達が犯罪を、ましてや殺人を犯すと?あり得ませんよ」

古畑「はいぃ、あり得ないというのは?」

P「あなたね……私を疑うならともかく、ウチに人を頃すような子なんて一人としていません」

古畑「ンフッフフ、そのような証言を警察がいちいち真に受けていたら
   この世に現行犯逮捕以外の“殺人事件”は起きませぇん」

P「ふざけるな!!」

131: 2012/06/16(土) 02:32:03.31
高木「キミ、もう良いだろう」

P「しゃ、社長…」

高木「捜査に協力し、我々も含め、早期にウチの子達の身の潔白を証明することも、
   あの子達のためではないかね?」

P「………そうですね。すみません、つい熱くなってしまって…」


高木「刑事さん」

古畑「古畑です」

高木「古畑さん……捜査には協力するが、私は何もあなた方警察を好意的に見ている訳ではない。
   たとえそれが仕事であろうとも、我々を疑っているというのならね」

高木「その点は、どうか斟酌いただきたい」

古畑「もちろんです、承知しております、ンフフ」


P「………………」

古畑「事務所の業務を総括するあなたにお伺いしたいんです。
   どこか、当日おかしな点は無かったのでしょうかぁ?何でも良いんですー」


P「……昨日、申し上げた通りです。強いて言えば、お会計の時か」

古畑「お会計……お昼ご飯の?」

132: 2012/06/16(土) 02:34:55.59
P「そうです。あの時は、律子がアイドルの子達の分を持ちました」

P「アイツ、金にうるさい所があるから、あまり人におごる事は無いのですが…」

古畑「はぁ~……言われてみれば確かにそんな印象がぁ、エヘヘヘ」

P「あとは、そうですね……リハーサルの時、いつもより動きが悪い者も身受けられました」

P「律子は、そんな事無いと言っていましたし、実際本番もちゃんとやっていたので、
  気のせいだったと思いますが…」

古畑「動きが悪い……具体的にどなたかお教えいただいても?」

P「……春香、千早が特に。あとは、伊織、真、美希、響が少し気になる程度でした」

古畑「調子の悪い人の人数というのは、いつもそんなに多いものなのでしょうか?」

P「いえ……こんなに気になったのは初めてですね」

古畑「………………」


P「私から言えるのは、これくらいです。全員の行動を逐一直接見たわけでは無いので、
  昨日古畑さんが直接聞いた中で違和感が無ければ、それが全てでしょう」

古畑「えぇ、もう十分です。いやいや、お昼時にどうもすいませんでしたぁ」ガタッ

高木「捜査の方、早期に解決すると良いですね」

古畑「ありがとうございます。今日のライブ、期待しています」ニコッ

133: 2012/06/16(土) 02:37:16.44
~ライブ会場 楽屋~

ガチャッ

春香「……あっ、貴音さん。こんにちはー」

貴音「ごきげんよう、春香」

春香「皆はまだ来てないんですか?」

貴音「いいえ、律子嬢と竜宮小町の皆が来ていますよ。それ以外は、私と貴女だけですが」


春香「…………………………」

貴音「…………………………」

春香「…………………………」

貴音「……………………ふふっ」


春香「?……どうしたんですか?」

貴音「珍しい事が続くものです。春香達と一緒にらぁめんを食べたその日に、かの事件…
   今日は、楽屋で春香と二人きり…」

春香「…………」

貴音「何より、いつもなら取り留めの無い事で私達に話しかけてくれる春香が、一言も話さない…
   誰よりも調和を愛し、仲間同士の絆が冷え込む事を恐れる貴女が、です」

134: 2012/06/16(土) 02:39:51.80
春香「そ、そんな……私を買い被り過ぎですよ、貴音さん」

貴音「私は、慣れない事をすべきではないと申しているのです」

春香「えっ?」


貴音「私に隠している事があるのでしょう?……いいえ、私以外の皆にも」

春香「!?………えっ……」

貴音「ふふっ……響もそうですが、貴女も誠、顔に出やすい人ですね」

春香「わ、私別に隠し事なんて…!」

貴音「していない?」

春香「いえ、あの……た、貴音さんだって、いつも言ってるじゃないですか。
   人には誰しも秘密の一つや百個はあるものです、って」

春香「私にだって、あまり知られたくない秘密があっても良いでしょう?」


貴音「それもそうですね……無粋な詮索でした、許して下さい」

春香「そ、そういうつもりで言ったんじゃないんです!私こそ、あの、すみません…」


貴音「しかし、辛いですね……千早が苦しむ姿を見るのは」

春香「………えっ!?」

135: 2012/06/16(土) 02:41:29.33
ガチャッ

響「はいさーい、ってあれ?春香と貴音だけ?」

春香「あ、響ちゃん」

貴音「響……貴女にも良く考えていただきたいのです」

貴音「如月千早にとって、本当の救いとは一体何なのかを」

響「な、何だよいきなり…?」

貴音「いいえ、何でも……さて、売店でも物色しに行くとしましょう」スッ

響「あ、ねぇ…」

ガチャッ バタン


響「ど、どうしたんだ貴音のヤツ……まさか…」

春香「……気づかれてない……よね…?」

136: 2012/06/16(土) 02:42:42.77
~ダンスルーム~

律子「亜美、そこでブレないで!」

律子「そう、伊織!指先!」

律子「あずささんは遅れてる、合わせて!」


三人「ふえぇぇぇぇぇ……」グッタリ…

律子「こんな事じゃ、今日のお客さんに見せられないわよー」

あずさ「そ、そんな事言われてもぉ…」

亜美「本番直前だってのにキツすぎだよ律っちゃぁん」

律子「文句言う余裕があるならさっさと立つ!」

伊織(気が立ってるわね、律子…)


コンコン

律子「ん?」

ガチャッ

雪歩「り、律子さん、あの……」

律子「何?………!」

古畑「度々すいませぇん」

137: 2012/06/16(土) 02:46:38.36
亜美「じゃーねー律っちゃん、ふるふる→!」フリフリ

あずさ(た、助かったわ…)ホッ…

伊織(でも、大丈夫かしら律子……変な事にならなきゃいいけど)



律子「何ですか話って。私、さっさとレッスンに戻らないといけないんですけど」

古畑「えぇ、すぐに終わらせます」

律子「もう終わってるでしょう?仮に殺人だとしても、私達には皆アリバイがある。
   古畑さん、あなただってご存知のはずです」

古畑「えぇ、そうなんです。あなた方のアリバイは実に完璧ですー」

古畑「たまたま秋月さんが、お昼ご飯を自分がおごると提案して若い子達を誘いー?」

古畑「たまたま行った先のファミレスで、水瀬さんの挑発に乗って大食いを行った…」

古畑「追加でデザートを注文されたのもたまたまでしょうかぁ、エッヘヘヘ」

律子「……何ですって?」

古畑「それだけじゃあありませんよぉ?
   たまたま天海さんと如月さんが貴音さん行きつけのラーメン屋さんに同行し…」

古畑「たまたま我那覇さんは三浦さん達と一緒にお昼ご飯を食べた…
   ダンスの練習を蹴ってまでも。これが一番不思議ですー」

古畑「さらにー、たまたま菊地さんが練習で足を挫いてしまった…」

138: 2012/06/16(土) 02:50:22.63
律子「………………」

古畑「ん~、たまたまたまたまたまたまたまたま…」

律子「……何が言いたいんですか?」

古畑「ンッフッフフフ、秋月さん…
   たまたまが続いて良いのは二回までなんですよぉ?」


律子「ふーん……何か決まりでも?」

古畑「え~、これは私の経験則ですー」

律子「話にならないわ。
   あなたは今、主観で物事を捉え、私達を一方的に疑ってるんじゃないですか」

古畑「ん~、お気を悪くされたのなら謝りますが、それは心外ですー」


律子「大体、倉庫にはそもそも鍵が掛かっていたんでしょう?
   それで自殺じゃないって言うなら、せめて鍵を持ってる人…」

律子「そうね……たとえば守衛さんとかをまず疑うべきだと思いますけど」


古畑「ンッフフフフ、その点はご心配なく」

律子「えっ?」

古畑「実は今日のお昼前、ここのダンスルーム……先ほど皆さん練習されていたお部屋で、
   こんなものが見つかりまして…」ピラッ


律子「………!!」

139: 2012/06/16(土) 02:53:51.74
古畑「これが何なのか、その顔はどうやらお察しがついたようですねぇ」

古畑「そうです。これは、5階の倉庫…
   つまりぃ、遺体が見つかった部屋のスペアキー!……の写真ですー」

古畑「守衛さんに聞きました、三日ほど前から無くなって困っていたと…
   それに、おっしゃった通り、まず疑われていたのは守衛さんでしたからねぇ」

律子(な、何でこんなものが今さら……!)


古畑「ンフフフ、これが意味する事というのはあの部屋、実は密室ではなかったという事ですー」

古畑「おかげ様で捜査の方針を切り替える決定打が出たと、
   それだけご報告しておきたかったということで、エヘヘヘ」


律子「……わざわざお気遣いどうも。
   つまり、迂闊な証言したら逮捕するから気をつけろって、そういう事ですか?」

古畑「ンーフフ、そこまでは言っていませぇん。ただー、用心するに越した事は無いと思いますー」

律子「ご心配には及びませんよ。私達は無関係だし、逮捕される筋合いもありませんから」

律子「何か物的証拠があるというのなら、話は別ですけど?」

古畑「んー、分かりました。何とかしましょう」


律子「では、私はこれで。レッスンがありますので」スッ

古畑「今夜のライブ、楽しみにしています」ニコッ

140: 2012/06/16(土) 02:54:58.39
亜美「もー、律っちゃんいつにも増して怖かったよー」

あずさ「確かに、何だか機嫌悪そうだったわねぇ」

伊織「たまたま虫の居所が悪かったんでしょ」


ガチャッ

律子「………………」

あずさ「あっ!……あら~律子さん、お帰りなさ…」

律子「伊織、私がいない間もレッスンは続けていたのよね?」

伊織「えっ?」


亜美(いおりん、やってた!やってたって言って!)ゴニョゴニョ…

亜美(サボってお喋りしてたなんて知られたら、律っちゃんマジやばいっしょ!!)ゴニョゴニョ…

伊織(聞こえてるわよ、たぶんそれ全部…)


律子「………………」

伊織「えぇと……まぁね、はは…」

141: 2012/06/16(土) 02:57:06.86
律子「なら今日はもう終わっていいわ。各自、入念にストレッチなりケアをしておくこと」

あずさ「えっ?」

律子「私、ちょっと考えなきゃいけない事があるから。それじゃあね」

ガチャッ バタン


あずさ「どうしたのかしら、律子さん…」

亜美「やっりぃ~!どうでもい→じゃん、今日はラッキーだね!」

伊織「………………」


ヴィー!… ヴィー!… 『ヒィアウィ ゴ-! ヒィアウィゴ キミートー ウェーカップ! ウェーカップ スベーテー♪』

伊織「あっ、メール…」ピッ

伊織(……!?)


『差出人:律子
 件名:緊急事態
 本文:倉庫のスペアキーが警察に見つかりました。
    私達が疑われる可能性があるため、対応方針を検討します。
    会場に来ている人は、至急ラウンジに集合。
    読み終わったら、このメールは削除して。』

142: 2012/06/16(土) 02:59:05.81
~ラウンジ~

美希「ゼェーッタイにおかしいの!!」

春香「美希、落ち着いて…」

美希「だってあの日の夜、ミキ事務所のゴミ箱にちゃんと捨てたもん!何で出てくるの!?」

律子「……それは間違いないのね、真?」

真「あぁ……あの鍵は美希と一緒に、確かにゴミ箱に捨てたよ」


響「どういう事さー……あーもう意味が分からないぞ!」ワシャワシャ

伊織「……裏切り者…?」

春香「えっ?」

律子「伊織、それ以上言うのは止めなさい」

伊織「……そうね、ごめんなさい皆」

春香「そ、そうだよ!いまさら裏切る人がいるなんて、そんな事あり得ないよ!」


コツッ…

貴音「………おや、また」

春香「あ……貴音さん…」

143: 2012/06/16(土) 03:00:59.13
貴音「最近は、このめんばぁは仲良しなのですね。誠、良き事です」

響「あっ、あぁ!そりゃあそうさー、だってこの間のライブも皆でアドバイスを…」

貴音「……………」

響「えっ、う……ど、どうしたんだ貴音、何か顔が怖いぞ…」


貴音「……ふふっ、仲間同士、協力し合う姿を見るのが微笑ましかっただけの事です」

真「そ、そうかな……へへっ、貴音だって仲間だろ?」

貴音「えぇ、そんな貴女方に相談したいのですが……私の友の事です」

伊織「友達…?」

貴音「えぇ、友に与えるべき助言について悩んでいます」

律子「貴音の友人への助言……どんな悩みなのかしら?」

美希「……………」


貴音「私の友の仲間が、犯罪に手を染めています」

春香「えっ……」

144: 2012/06/16(土) 03:07:51.73
貴音「ただ、友の仲間には同じく他の仲間も、その家族もいる……
   もし犯罪を犯したその仲間を告発すれば、周囲の方々も一蓮托生でしょう」

貴音「一方で、もし仲間の犯罪を黙認してしまっては、友は、
   自分も共犯同然になるという自責の念に駆られてしまうというのです」

春香「………貴音さん、それ…」

貴音「私は、その友にどのような助言を与えるべきなのか……その答えが出ないのです」


響「た、貴音……?」

伊織「……その友達は、どうしたいって言ってるのよ」

貴音「そこが問題なのです。友は、どうもしたくないと言っているのです。
   しかし、事実を知ってしまった以上、友は自分にも一部の責任があると感じている」

貴音「もし、友の仲間が素直に自供し罪を償えば、それが一番良いと思っている。
   告げ口をして、仲間を困らせるような事はしたくないのだそうです」


律子「………なるほど、難しい問題ね」

145: 2012/06/16(土) 03:09:40.42
真「ボクは……貴音の友達の仲間が、どうして犯罪を犯したのかを考えた方が良いと思う」

貴音「犯罪を犯した理由…」

春香「その人にだって、きっと理由があるのなら、助言の仕方もきっと…」

貴音「……そうかも知れませんね。私も、もう少し考えてみる事にしましょう」


律子「すぐに答えが出るものではないわ。私達も考えてみましょう」

貴音「ありがとうございます、律子嬢」

貴音「では、私はこれで」スッ

コツコツ…



伊織「……何よ、あの完全に気づいてる素振りは」

律子(計画は誰にも知られていないはず……犯行の瞬間も目撃されていない…)

律子(貴音……あなた、どこまで知っているの?)


響「……どうする、律子?」

真「最後の奥の手……出しちゃう?」


律子「…………………」

146: 2012/06/16(土) 03:11:06.74
~会議室~

古畑「………コレが証拠?」

今泉「そうですよ!これまであの子達が行ってきたライブやテレビ番組とかのDVDを
   一通り持って来ました!」

今泉「これを見てもらえれば、あの子達が殺人をするような悪人じゃないって
   分かってもらえるはずですよ!」

古畑「………………」

西園寺「………………」


古畑「……まぁコレはコレでありがたくもらっておくとしましょう。
   西園寺君、君は何かあった?」

西園寺「えぇ、実は……つい先ほどですが、女子トイレでバッグが見つかりまして…
    その中からこんなものが…」ピラッ


古畑「………何コレ、スーツ?」

147: 2012/06/16(土) 03:13:19.31
~正門付近~

響「こ、この人なのか!?氏んだ人って」

西園寺「えぇ、名は渋澤マタイチ、46歳、男性です。彼が、この正門に?」

響「そうなんだ!自分がこの辺をウロついてたら、急にこの人に声を掛けられて…!」

響「ヒラタって人に呼ばれた、って……確かそう言ってたぞ!」

P「間違いないのか、響?」

響「こんな時にウソつく訳無いさー!」

雪歩「わ、私達も見ましたぁ!響ちゃんが、知らない男の人と話してるの!」

小鳥「裏口に行くって言ってたのよね?何だったのかしら…」


古畑「………ヒラタ…」

今泉「古畑さん、もう決まりですよ!そのヒラタが渋澤を頃して倉庫にやったんですよぉ!」

西園寺「さらなる目撃情報を得るため、状況を推察し再現した写真を撮っておきます」

今泉「どっちが誰役やる?」

西園寺「……スーツのサイズ的に、私がヒラタ役でしょうか」

148: 2012/06/16(土) 03:14:56.33
古畑「……ヒラタが何者なのか、それは追々調査しておく必要がありそうですー」

古畑「ところで西園寺君、そのバッグの中にはスーツ以外に何か?」

西園寺「はい。実は、こういったものが…」スッ


響「……えっ!?」

古畑「おやおやこれはぁ……?」

今泉「何か、妙にカカトの部分が高いな…」

西園寺「シークレットブーツです。私もたまに使用しております」

今泉「今も使ってんの?」

西園寺「そ、それは……」

今泉「あー、使ってんだ。使ってそれなんだー、やーいチビー」ウリウリ

西園寺「くっ……!」


響(な、何でだよ!……シークレットブーツはバッグから除いておいたはずだろ!?)

149: 2012/06/16(土) 03:17:14.95
西園寺「オホン……とにかく、見知らぬスーツ姿の男が渋澤とうろついていたのを、
    何名かのスタッフが目撃しています」

古畑「しかしこのブーツ、男モノにしては小さいねぇ、サイズ」

西園寺「女性の足ほどのサイズだそうです。
    それに加え、スーツの背広とズボンのサイズが合っていません」

古畑「合っていないというのは?」

西園寺「ズボンの丈がやや長いのだそうです。足の長い人物なのか、それとも…」

P「このシークレットブーツを履く事を前提とした丈の長さ、なのか…」


古畑「……マネージャーさん」

P「マネージャーじゃなくてプロデューサーです、何度言ったら分かるんですか!」

古畑「あぁすいません、プロデューサーさん」


古畑「『菊地真改造計画』アレはとても楽しい企画でしたぁ」

今泉「……ふ、古畑さん!?」

P「まさか……」

古畑「はいぃ、そのまさかですー」


古畑「西園寺君、菊地さん呼んできて」

150: 2012/06/16(土) 03:18:51.30
~楽屋~

春香「な、何で真が!?」

伊織「そろそろ本番前のミーティングなんですけどー?」

西園寺「どうしても、菊地さんにお伺いしたい事が…」


真「はぁ……別に良いですけど」ガタッ

千早「ま、真…!」

やよい「でも、何だか怖いですー…!」

真「ははは、大丈夫だよやよい。すぐ終わるんですよね?」

西園寺「お時間は取らせません」

美希「とか言って、ゼッタイ長い事尋問する気なの!」

真美「行ったらヤバイってー、まこちん!」

真「心配ないさ、すぐに戻ってくるから。ねっ?」


真「じゃあ、行きましょうか」

西園寺「ご協力感謝します、どうぞこちらへ」

ガチャッ バタン


美希「……………!」ギリギリ…

151: 2012/06/16(土) 03:21:12.07
~会議室~

P「ふざけるのもいい加減にしてくれよ!!」ドンッ!

古畑「ふざけてなどいませんよぉ?いたってマジメです」

今泉「………………」

P「小柄な男が犯人っていう線をまず考えるべきでしょう!?」


西園寺「こちらのスーツ……以前『菊地真改造計画』にて紹介されたお店で
    売られているものと全くの同型なのだそうです」

P「!……なっ………だとしても、他に売ってる所はいくらでも…!」

西園寺「都内近郊で、婦人服のフロアで男装モノ、それもこのメーカーの衣装を
    扱っているお店は、このお店以外にありません」

西園寺「加えて、このシークレットブーツ…
    菊地さんのプロフィールに載っている足のサイズと同じです」

西園寺「当日の靴擦れについても、このブーツを履いていたのであれば、辻褄が合います」

P「ぐぬぬ…」


真「………………」

西園寺「菊地さん……どうか正直にお答えいただきたい」

152: 2012/06/16(土) 03:23:50.42
真「……ボクが犯人である、という条件が揃いつつあると言いたいんですね」

今泉「………………」

古畑「えぇー、そうなんですー菊地さん。しかしぃ、どうしても腑に落ちない点が…」


古畑「イマイチ良く分からないんですー。もしあなたが犯行に加わっていたとしてもー?」

古畑「いまさらこんなモノが出てくる事が考えられない。
   あなたはそんなミスを犯すような人じゃない」


古畑「倉庫の鍵がなぜいまさら見つかるのでしょうかぁ?それもダンスルームで」

古畑「シークレットブーツもそうです。これは犯人の身長、ないし男装して欺くための小道具。
   こんなものが見つからなければ、あなたが疑われることも無いんですー」

153: 2012/06/16(土) 03:25:08.94
古畑「私はですねぇ、菊地さん……どうも誰かが私達にメッセージを
   送っているように思えてしょうがないんです」

古畑「あなたを疑え、と…」

P「………真を…?」


古畑「菊地さん……あなた、何か心当たりは無いですかぁ?」


真「……………………」


古畑「……今日のライブには、菊地さんはまだ?」

P「えっ?え、えぇ……安全側を見て、2週間は安静にしといた方が良いだろうと」

古畑「あぁ~そうですかぁ、それは残念です。どうかお大事になさって下さい」


古畑「お引取りいただいて」

西園寺「はい……どうもありがとうございました」ガチャッ

P「……失礼致します」


真「……………………」

154: 2012/06/16(土) 03:26:12.33
テクテク…

P「……大丈夫か、真?」

真「………はい」

P「あんな奴らの言う事なんか、真に受けなくて良いからな」


真「……すみません、ちょっとトイレに行ってきます…」

P「あ、あぁ……先に、楽屋に戻ってるぞ」



ジャー…  フキフキ…

真「………………」

155: 2012/06/16(土) 03:27:46.30
テクテク…

真「………あっ」


千早「……真」

真「やぁ」


千早「大丈夫だった?」

真「うん、まぁね」

千早「そう……」

真「そろそろミーティングだよね?先に楽屋に行ってるよ」スッ


千早「事件の日…」

真「えっ…」

千早「これは誰にも言っていないのだけれど……私、一度屋上に行っていたの。
   発声練習する場所が無かったし…」

千早「いつも屋上の扉に掛かっている『立ち入り禁止』の札も、
   たまたまその時掛かってなかったし…」

千早「でも……いざ、扉を開けると、目の前に知らないスーツ姿の人がいて…」

真「………………」

156: 2012/06/16(土) 03:29:25.18
千早「ものすごい剣幕で怒られて、引き返してきたのだけれど…
   あの声、どこかで聞いた覚えがあるって、ずっと思ってて…」

千早「それに、ずっと不思議に思っていたの。
   何で、頼んでもいないのに春香が律子に連絡して、練習場所を押さえてくれたのか…」

千早「どうして私がいない間に、美希が当日の私の行動をほぼ正確に証言してくれたのか…
   それだけの情報収集も、なぜ予め行ってくれていたのか…」

千早「真……あなた、何か知っているんじゃ…」


真「千早、それ以上は言わないで」

千早「えっ?」


真「いいかい、千早……君は何も知らなくていい。知る必要もない」

真「知ってしまったら、君はたぶん、ウソをつかなきゃいけなくなる」

千早「……それってどういう…」

157: 2012/06/16(土) 03:30:17.40
真「あの古畑さんは、人のつくウソとか、状況の矛盾を的確に見抜いて、しつこく追求してくる」

真「だから、君は最後まで傍観者でいるんだ。いいね?」


千早「真、言っている意味が分からないわ」

真「言った通りの意味だよ、それじゃあ」

千早「質問に答えて!あなたは何を知っているの!?」


真「今はまだ、答えることはできない……ごめん」

テクテク…


千早「真……あなた、やっぱり…」

158: 2012/06/16(土) 03:31:34.08
~楽屋~

ガチャッ

P「ふぅー、やれやれ…」

ガシャーン!

P「!?」


律子「美希、止めなさい!!」

美希「放して、律子!いい加減にとぼけないでよ!!」ジタバタ

貴音「………………」


やよい「はわわわわ…」ガタガタ…

亜美「ミキミキもお姫ちんも怖いよぉ…」ガタガタ…

真美「どうしちゃったのさぁ……何があったんだよぅ…」グスッ…

あずさ「や、やよいちゃん達、ここは危ないからお部屋の外に行ってましょう。ねっ?」


P「こ、小鳥さん、これは一体何があったんですか!?」

小鳥「あぁ、プロデューサーさん!突然、美希ちゃんが貴音ちゃんに言い寄って…」

小鳥「あぁいえ!暴力を振るってはいないですけど、犯人にでっち上げて、とか何とか…」

P「犯人……!?」

159: 2012/06/16(土) 03:34:22.79
美希「何で倉庫の鍵をダンスルームにやったの!?」

美希「シークレットブーツだって、わざわざこの人がスーツと一緒のバッグに入れたの!
   そうとしか考えられないの!!」

雪歩「た、貴音さんはそんな事しないよぅ!美希ちゃん、落ち着いて!」

伊織「貴音、あんた何も知らないんでしょう?それならハッキリそう言ってごらんなさい」

春香「い、伊織もそこまで強く言わなくても…!」


貴音「私は、犯人でない者を陥れるような真似はしません」

貴音「犯人でないのなら、ね」

美希「~~~~~!!……何でいちいちいちいちシャクに触る言い方するのー!!!」ジタバタ!

響「わー!美希っ、落ち着くさー!!」

美希「貴音のせいで真クンが尋問されてるのー!!お願い、放して!!!」ジタバタ!


P「止めろ、美希!!」

美希「あ、ハニー!聞いて、この人が真クンを…!!」

P「あぁ、状況は大体飲み込めた……ちょっと来い。貴音、お前もだ」

貴音「承知しました」

美希「……………」

160: 2012/06/16(土) 03:35:37.63
P「まったく……本番直前だってのに、何て有様だ」

美希「だって貴音が…」

P「だってじゃない。お前は、貴音が実際に事を行っているのを見たのか?」

美希「…………」フルフル


P「貴音、お前は何か知っているのか?」

貴音「この事件によって、千早だけでなく765プロ全体が苦しんでいる…
   それは承知しております」

P「お、お前…」

貴音「私は、事件の早期解決を願っているだけです」


P「お前は何もしていない……それでいいんだな?」

貴音「えぇ」

P「分かった……この件については、もうおしまいにしよう」

P「今日もお客さんは超満員だ。気合入れて頼むぞ」

貴音「もちろんです。共に頑張りましょう、美希」

美希「………………」

161: 2012/06/16(土) 03:37:42.77
~会議室~

古畑「………………」

今泉「古畑さん、もう止めましょうよ……彼女達がかわいそうですよぉ」

今泉「それに、さっきも言ってたじゃないですかぁ。
   女の子が、あんな男を持ち上げて首を吊らせるなんて不可能ですよぉ…」


西園寺「お茶をお持ち致しました」コトッ

古畑「ありがと」


今泉「ねぇねぇ、僕のは?」

西園寺「あぁ……すぐにお持ちします」

今泉「ちぇっ、気が利かないなぁ」

古畑「君は僕にお茶出してくれなかったけどね」

今泉「うっ……違いますよ!新人の仕事を取っちゃかわいそうだなーって…」


西園寺「どうぞ。コーヒーではなく、紅茶のパックしかありませんでしたが」コトッ

今泉「自分で入れろって?」

西園寺「給湯室なら、あちらにございます」

今泉「………もういい」ビリッ

162: 2012/06/16(土) 03:39:38.00
今泉「あっ」ポロッ

コロコロ…

ヒューン…

今泉「あ、危ないっ!!」バッ!

バシンッ!


プラーン…  プラーン…


今泉「ふぅ、間一髪……危うくパックを落とすところだった…」

西園寺「思いのほか、良い反射神経でしたね。持ち手の糸を手で押さえるとは」

今泉「う、うるさいなぁ!“思いのほか”とか、いちいち一言余計なんだよぉ!」



古畑「……………………」ニッコリ


古畑「西園寺君」

西園寺「はい?」

古畑「被害者を吊ってたロープの長さ、もう一度教えて」

西園寺「はい。約15mですが、正確な長さを確認してまいります」スッ

164: 2012/06/16(土) 03:44:16.66
古畑「今泉君、君は765プロの人達にもう一度連絡を」

今泉「は、はい」ガタッ

ガチャッ バタン


古畑「……………………」



古畑「……えー、まさか二次元世界のアイドルと共演することになるとは
   夢にも思いませんでしたぁ」

古畑「本家と比べて色々と残念な、エッヘヘ……そんな180レス弱のSSに付き合わされる
   私の境遇も、どうかこれ斟酌していただけると幸いですー、ンフフフ」


古畑「さて……これまでにも多くの女性の犯人がいました」

古畑「その誰もが美しく、そして、誰もがある種の悲しみを秘めていた…
   今回の犯人も例外ではありません、同情できる部分も多い」

古畑「一方で、なかなかに狡猾な一面も持っているようです。
   未だ確たる物的証拠も見つかっておりません」

古畑「しかし、これがチームによる犯行である事は確実です。
   なのでぇ……自供させるための罠を、張る事にしましょう」

古畑「問題は、誰を罠に引っ掛けるのか。
   ヒントはぁ……私、古畑が最初に疑った人物…」

古畑「……古畑任三郎でした」ニコッ

166: 2012/06/16(土) 03:46:26.27
~ステージ裏~

P「冗談じゃない、もうライブが始まるんですよ!?」

小鳥「え、えぇそうですよね……じゃあ、ライブ終わった後にお願いするよう…」


律子「……いいえ、プロデューサー、小鳥さん。今呼びましょう」

P「!?……何を言ってるんだ律子!」

律子「今のモヤモヤした気持ちのままライブをやっても、あの子達本来の実力は出し切れません」

律子「彼らとしっかり話し合って、私達の疑いを完璧に晴らし、
   あの子達の不安を拭い去ってあげるのが先決だと思います」


高木「……律子君の言う事も一理あるな」

P「社長……分かりました」

P「小鳥さん、20分押しで行きましょう。あと、古畑さん達にOKと伝えて下さい」

小鳥「わ、分かりました!」ダッ!

タタタ…


伊織(律子…)チラッ

律子(あんた達は余計な事喋らないように、良いわね?)チラッ

響(う、うん…)コクリ

167: 2012/06/16(土) 03:50:15.48
ガチャッ

古畑「どうも失礼しますー、ライブ直前のお忙しい中すいませぇん」

西園寺「失礼致します」

今泉「………すみません…」


P「今回でもう終わるんでしょうね?」

古畑「えぇ、もうありませぇん。皆さん今までどうもありがとうございましたぁ、ンッフッフ~」

古畑「あっ!……双海亜美さん、真美さん、今の聞きましたか!?
   やっと滑らかに言えましたぁ、ンッフッフ~」

古畑「ンッフッフ~……いやぁ練習した甲斐があった、アハハハ」

亜美・真美「………………」


律子「それで、用件を聞かせて下さい」

古畑「はいぃ……まず皆さんにお伝えしなければならない事は、
   渋澤さんは自殺ではなく、計画的に殺されたのだという事ですー」

高木「自殺ではない…?」

168: 2012/06/16(土) 04:00:19.71
古畑「被害者が見つかった場所は5階の倉庫でした、しかしぃ?」

古畑「被害者が氏んだ場所……コレ、倉庫じゃないんです」

P「なぜ、そうと分かったんです?」

古畑「被害者の首に残されたロープの痕ですー。ドアノブに括って首を吊るなら、
   全体重がロープにかかる訳じゃありませんから、痕はあまり残りませぇん」

古畑「がしかしぃ……被害者の首にはクッキリとロープの痕が残っていたそうです」

古畑「ドアノブじゃなく、足場が無い、全体重がかかる場所じゃないと
   こんな傷はつかないと検案のお医者さんは断言しています」


古畑「じゃあどこか!?……どこだと思います、高槻さん?氏んだ場所」

やよい「えっ!?……そ、そんな、分からないですー……高い所…?」

古畑「ンフフフ、正解ですー」

やよい「えっ?」


古畑「そうなんです、被害者は高い所から首を吊っていたんです、屋上から」

古畑「使われたロープの長さは約15m……いいですか、15mですよぉ?」

古畑「ドアノブに首を括って自頃するための物を、被害者本人が調達したにしては、
   どう考えても長すぎますー」

古畑「よっぽど計算が苦手か、あるいは大は小を兼ねる精神の方なのか、ンフフ…
   しかし、屋上から吊ったのなら話は早い」

169: 2012/06/16(土) 04:08:08.77
古畑「この建物は8階建て、階高は約4m」

古畑「首に巻かれていた輪っかの分と、どこか屋上に括る分のロープの長さを考慮すれば、
   15mというのは屋上から垂らして、ちょうど5階の窓の位置に重なる程度の長さです」

古畑「被害者を屋上から落として吊った後、5階の窓から、外で吊られている遺体を
   部屋の中へ降ろして偽装工作をし、スペアキーで鍵を閉める!」

古畑「……ンフフフ、自殺の完成ですー」


P「自殺以外の可能性がある、というのは分かりました」

P「ですが、殺人であるという証拠はあるのですか?」

古畑「エヘヘヘ、マネージャーさんせっかちですねぇ」

古畑「あぁ、失礼プロデューサーさん。今から説明しましょう」

P「……………」


古畑「おそらく、今回の犯人が最も気を配ったのはアリバイ作り」

古畑「自分達だけでなく、計画を知らない他の仲間にとっても完璧なアリバイです」

古畑「だから犯行時間、仲間全員の行動を確認できるよう、不自然な事が行われるのです」

古畑「たまたま普段おごらない人がおごったり、挑発をしたり、
   違うメンバーでランチを一緒に取ったり、ダンス練習に参加しなかったり…」

響「……………」

170: 2012/06/16(土) 04:14:38.04
古畑「その中でぇ……ただ一人屋上に行った人物がいました」

古畑「さらに、メンバーの中で唯一被害者と交流を持っていたのは如月さん、あなただけ」

千早「!!…………」

古畑「お金に困っていた被害者です。
   魅力的な言葉で犯行現場まで誘い込むのは難しい事ではありませぇん」


春香「ち、千早ちゃんは…!」

古畑「えぇご心配なく……ご自分で屋上に行ったと証言されたのです。
   わざわざ自分が不利になるような証言をするとは考えにくい」

古畑「一方で、美しい友情をお持ちの皆様です。
   如月さんの事情を察知し、奮起する仲間がいても不思議ではありませぇん」


古畑「つまり、疑うべきは……被害者の氏亡推定時刻の近くに、
   ライブ会場に少数で行動していた如月さんのお仲間のうちの誰か…」

古畑「かつ、真っ先に容疑者として疑われると考えられる如月さんを頑なに守ろうと、
   如月さんの代わりに証言をしたり、逆に聴取をさせまいとした方…」

171: 2012/06/16(土) 04:17:59.50
美希「なっ……ミキと真クンを疑ってるの!?」

雪歩「ふ、二人は違いますぅ!
   私、美希ちゃんとの電話で確かにその時間、真ちゃんの声も…!」

古畑「実際にお会いになった?……テープ等で再生された声でないと、
   またダンスを本当に練習されていたと断言できますかぁ?」

雪歩「あ、あう……」


P「ふ、ふざけるな!あんたの推理は主観ばかりじゃないか!」

古畑「いいえ、証拠はありますよぉ?」

律子「……!?」


古畑「今泉君、例のヤツを」

今泉「は、はいっ!」サッ


古畑「ンーフフフ、このでこちゃん、大変ミーハーな性格でして…
   えぇ私はどうなんだと言われちゃいそうですが、はいぃ、エッヘッヘ」

古畑「良くこの周囲を散策することがあるのだそうですー、えぇ。
   何でって、そう、芸能人観察。この辺は芸能人の方々の目撃情報が多いそうですねぇ」

律子「…………」


172: 2012/06/16(土) 04:19:27.70
古畑「事件当日も、昼間ここに来て写真を撮っていたんだそうです。そうだよね今泉君?」

今泉「は、はいっ、そうです!」

古畑「その時誰か芸能人いた?」

今泉「いいえ、誰にも会えませんでした!」

古畑「じゃあ何を撮ってたの?」

今泉「そ、その辺の風景を撮っていました!」

古畑「あ、そう。ありがと」


真「………………」

古畑「ンッフッフ~」


古畑「えぇ、そうなんです。このでこが、しょうがないからその辺の風景を
   撮っていた時に、偶然写真に納まっていたんですー」

P「………まさか…」

古畑「はい、そうです。コレ」ピラッ


美希「…………えっ!?」

春香「あっ………!」

173: 2012/06/16(土) 04:23:34.79
古畑「遠目に映っているのを拡大したので、画像はとても粗いんですけれども、
   見てください、この辺り……会場の裏口ですー」

古畑「渋澤さんと思われる後姿……そして、その先には、スーツ姿の男が立っています」

古畑「このスーツの柄、先ほど女子更衣室で見つかったものと全く同じ!
   つまり、この男がヒラタなのでしょう」

古畑「ヒラタという男になりすまし、被害者をおびき寄せ突き落とすことができる場所にいた…」

古畑「そしてなおかつ、自身を捜査線から外す、男装という手段を持っている人物!」

古畑「どのみち、あとは専門家の手によるこの写真の解析結果を待つのみですー。
   十中八九、この男の顔は菊地さんになろうかと思いますが。最近の機械はすごいんですー」

伊織「…………」

響「うぅ……」

真「………………」


古畑「菊地さん……重要参考人として、後で詳しく話を聞かせていただきたい」



律子「……………ふふ」

律子「ふっ、くくく……ねぇ、古畑さん?」

古畑「はいぃ?」

律子「あなたって、こんなに強引な推理をする人なんですね」

174: 2012/06/16(土) 04:26:54.18
古畑「はぁ……強引な推理?
   すいませぇん、自分では分からないのでお教えいただきたいのですがー」

律子「間違ってるって言ってるんです。これは真じゃありませんよ」

古畑「おや、菊地さんじゃない、どうしてそう言い切れるのでしょうかぁ?
   スーツ、髪型、どれも目撃情報と合致しています」

古畑「それにこのスーツはぁ、菊地さんの番組コーナーで紹介されたお店のものですー。
   疑う余地はあまり無いと思うのですがー」

律子「だって、メガネかけて無いじゃない」

古畑「はぁ、メガネ?」

律子「この写真に写ってる男はメガネをかけていないわ」

古畑「それが何か?」

律子「だから、ヒラタはメガネをかけていたのに、この写真の男はかけていないでしょう」

古畑「どうして?」

律子「どうして?この男がメガネをかけていない理由!?私に分かる訳無いじゃない!
   どこの誰がこんな写真捏造してきたか知らないけど…!」

古畑「いいえ、そうじゃないんです」

律子「えっ?」

古畑「……………」ピラッ


律子「!!!」

175: 2012/06/16(土) 04:30:58.76
小鳥「こ、これは……メガネ?」

古畑「そう、スーツと一緒に入っていたメガネの写真です。バッグの奥の方にありました」

律子「あっ……う…!」


古畑「秋月さん……あなたの言う通りです。
   この写真に写っている男は、菊地さんではありません」

古畑「ついでに言うと、この後姿の男も渋澤さんではありません。
   写真も、事件当日ではなく、今日の昼過ぎに撮影したものです」

古畑「西園寺君を始め、刑事チームが既存の証言を元に更なる目撃情報を集めようと、
   状況再現を試みて撮った写真なのです」

古畑「この後姿の男は今泉君……そして、このスーツの男は西園寺君なんです」

古畑「まぁ~、後でメガネが見つかりましたので、この写真はボツになったんですけども…」


古畑「しかし、あなた!
   何でヒラタがメガネをかけている事をご存知だったんですか!?」

古畑「この事は、警察関係者もまだ大っぴらに公表していない事実なんです!」

古畑「あなた!いいですかぁ!?
   あなたが今回の事件の重要参考人であるヒラタという犯人像を考え出した一人なんです!」

古畑「そうでなければ、ヒラタがメガネをかけていたという事実を知っているはずがありません!」

176: 2012/06/16(土) 04:32:53.34
律子「…………ッ!」

古畑「……まだ続けますか?」


律子「あ、あなた……まさか、最初から私を罠にハメようと…」

古畑「ンッフフフフ、あなたのようなタイプの人間が最もボロを出すという事を
   私は経験で知っています」

古畑「とても生真面目で責任感の強そうなお方だぁ。
   おそらく今回の計画を立案したのもあなたなのでしょう」

古畑「だから、少しでも私の推理に間違いがあったら、即座に揚げ足を取る腹積もりが出来ていた…」


高木「り、律子君…」

小鳥「律子さん……?」

P「………マジかよ……」


律子「…………ッ!!」ギリギリ…!



真「律子……もういいさ、止めにしよう」

律子「ま、真……!」


真「古畑さん……ボクが渋澤を頃しました。ヒラタは、ボクです」

177: 2012/06/16(土) 04:34:43.80
やよい「えっ!?」

亜美・真美「えぇっ!?」

雪歩「そんな、真ちゃん!!」


美希「ウソなの!!全部ウソなの、ミキが全部やった事なのー!!!」

千早「ま、真……あなたやっぱり……そうだったのね…」

真「へへっ……黙っててごめんね」


千早「…………馬鹿…」

千早「何で………何で黙っていたのよ、律子も……私達、仲間じゃなかったの…?」グスッ…


伊織「千早を苦しめるあの男を、どうしても許す事が出来なかったのよ、私達」

春香「こうするのが千早ちゃんのためになるんだって、そう信じたんだよ…」

響「だから、自分達……精一杯出来る事を、やろうって…」ジワァ…


P「という事は、お前達…」

春香「プロデューサーさん……私達も、共犯なんです…」

あずさ「そ、そんな……ウソ…」

178: 2012/06/16(土) 04:36:07.23
真「皆はただの傍観者です。実行犯はボク一人……ボクが全責任を負うべきなんです」

律子「そ、そんな事許されないわ!私が計画を立案して…!」


古畑「菊地さんは、苦悩されていたんですよ」

古畑「捜査の手がいずれ765プロの皆に及ぶ、それが逃れられないであろう事を
   実行犯として肌で気づいていたんでしょう」

古畑「かと言って、自首すれば他の皆さんも名乗り出るかも知れない。
   皆を巻き込みたくはない」

古畑「だから、自分だけが捕まろうと、わざとご自分が不利になるヒントを
   我々警察に与えてきたんです」


響「まさか……」

伊織「倉庫の鍵も、シークレットブーツも…」


真「そうさ、貴音は関係ない……ボクが全部やった事なんだ」

美希「えっ……!」

貴音「………………」

179: 2012/06/16(土) 04:38:16.21
美希「何でなの!!何でそんな意味の無い事するの!!」

美希「ミキだって一緒にやったのに、そんなの皆ゼッタイ納得しないって……
   何で分かんないの…」ボロボロ…


真「分かってたさ。でも……千早が古畑さんに目をつけられているのを見て…」

真「そして、ボクや響も、やがて皆も疑われる…
  それで律子も焦っているのが見て分かって……嫌な予感がしたんだ」

真「だから、ボクだけが捕まれば良いって、上手くやろうと思ったんだけどね……へへっ」


伊織「へへっ、じゃないわよ!本っ当……信じられない!!馬鹿っ!!」

響「うわーん……真ぉ……千早、ごめんよぉ……!」ボロボロ…

千早「我那覇さん……いいのよ、皆…」

千早「そこまで私の事を考えてくれていただけでも、とても嬉しいわ…」

千早「でも……私も皆に話すべきだったけど……皆も私に、話して欲しかったな…」

春香「千早ちゃん……」



律子「古畑さん……一体、いつから私の事を…?」

古畑「えぇ、会った時からずっと疑っていましたぁ」

律子「会った時から?そんな馬鹿な」

180: 2012/06/16(土) 04:43:22.40
古畑「あなた、最初に会ってお別れする前に、事務所のメンバー全員の
   スケジュールが書かれたメモを私にくれました」

古畑「普通、事情聴取というのは誰しも受けるのを嫌がるものです。
   しかし、あなたは前もってそのメモを作っていた。私が何も言う前にです」

古畑「まるで、万全の体制を敷いたから大丈夫、どうぞ来なさいという、
   ある種の挑戦的な意思が感じられました」


律子「捜査に協力するため、次の展開を予測してメモを作っていたというのは考えられませんか?」

古畑「765プロ全員に事情聴取するのを知らなかった素振りを最初に見せておきながら、
   メモを作っていたなどとは考えられませぇん」

古畑「仮にそうだとしても、指定された時間に行った時、
   如月さんは既に場所を離れていた。その情報は私にくれなかった」

古畑「要領の良い人間が、そのような初歩的なミスを犯すとは考えにくい。
   恣意的に情報を与えなかったという可能性の方が高いでしょう」


古畑「守るべき人物に聴取をさせまいとし、意図的に状況を支配できたのは、
   秋月さん……あなた以外にはいませぇん」

律子「……あっ、そ…」

181: 2012/06/16(土) 04:44:55.24
美希「……貴音、あの……本当に…」

貴音「良いのです、美希。過ぎた事は仕方がありません」

美希「それだけ仲間を思う気持ちが強かったという事……
   私も、貴女のような人を頼もしく思います」

美希「…………ごめんなさい……」


律子「貴音……あなたは、この真相に気づいていたの?」

貴音「正確には分かりません。ですが、千早が苦しみ、皆が何かを隠しているのは分かりました」

貴音「今日、皆に投げかけた質問も、どのような反応を示すか見たかったまでの事」

伊織「要するに、吹っかけたって訳ね……してやられたわ」

貴音「私にも、何か出来る事があればと思っていたのですが……誠、残念でなりません…」

響「た、貴音ぇ……うえぇぇぇぇぇ……!」ボロボロ…


ワアァァァァァァァァァァ…!!

古畑「あぁ~……お客さんがお待ちだ…」

今泉「………………」

182: 2012/06/16(土) 04:48:22.81
P「ふ、古畑さん!」バッ!

律子「!?……ぷ、プロデューサー!?」

古畑「………………」


P「頼みます……どんなに見苦しく見られても良い!限りなく卑怯なお願いだってのは分かってる!!」

P「でも!!彼女達を見逃してもらう事はどうしても出来ないんでしょうか!?」

春香「プロデューサーさん…」

P「どれだけの苦労をしてこの子達がこれまでやってきたと思ってるんだ!!」


P「道行く人に声を掛けても見向きもされない無名の頃から、必氏に営業活動を続けて…」

P「厳しいレッスンにも耐えて、業界の約束事に縛られ精神的にも追い詰められてやっと!」

P「やっと人気が出てきて!仕事もやっと少しずつ選ばせてやれるようになってきた!」

律子「…………」ジワァ…

P「これからなんです!これからがやっと、こいつらが自由に羽ばたける時なのに…」

P「そんな時に……こんな事で全てを失わせる訳には行かないんですよ!!」


古畑「………………」

P「お願いです、古畑さん!どうか、せめて俺がやったって事にして下さい、この通りです!!」ガバッ!

183: 2012/06/16(土) 04:51:14.47
古畑「………“こんな事”とおっしゃった?」

P「えっ……」

古畑「人が一人、亡くなってるんです」


古畑「私には、あなた方がこれまでどんな人生を歩んでこられたのか…
   これからどんなご活躍をされるのか…」

古畑「実のところ、大した興味は無い」

古畑「あなたの愛する子達が、どれだけ不条理な苦しみを強いられてきたのか…
   正直申し上げてどうでも良い事です」

古畑「刑事である私にとって大事なのは…
   人を頃した、それに加担した者が目の前にいるという事実」

古畑「765プロは素晴らしいアイドル事務所です、しかしながら…」

古畑「世の中に正当化できる殺人なんて無いんです。
   そしてその罪は、彼女達自身が償わなければならない」


P「……………………」

高木「古畑さん……あなたの言っている事が正しいのでしょうな…」

古畑「ありがとうございます……残念ですが」

184: 2012/06/16(土) 04:52:38.30
雪歩「プロデューサー……ステージに、行きましょう…」

P「ゆ、雪歩………どうしたんだ…?」

雪歩「お客さん、待ってます……それに…」

雪歩「悪い事したら……謝らないと、いけないかなぁって…!」ボロボロ…

P「お前……」


やよい「うっ……うっうー!そうですよー、皆で謝りに行きましょうー!」

亜美「グスッ……許してもらえる訳、無いけどね!」

真美「でも、基本っしょ、基本!」

律子「あ、あんた達…」


あずさ「うふふ、そうね……行きましょう、皆」

伊織「今まで応援してくれたファンへの謝罪、ね……ただの自己満足じゃない」

春香「自己満足でもいいよ!私達がやるべき事をやろう!」


真「今日が、765プロ最後の日になるかもね…」

古畑「いいえ、そうするかどうかはあなた方次第です」

律子「えっ?」

185: 2012/06/16(土) 04:55:10.47
古畑「どんな時でも、人生は何度でもやり直すことが出来ます。
   だから、たとえ全てを失ったとしても、生き続けなければなりません」

古畑「ん~、私はそういう信念で事件に関わった方々に接してきています」

律子「ふ、古畑さん……」


響「これが最後になんてさせないぞ!皆でまた戻ってこようよ!」

貴音「響の言う通りです。そのために、さぁ美希も…」

美希「うん……今日来てくれたお客さん達に、ごめんなさいするの!」

千早「皆……ありがとう。これからも頑張りましょう」


高木「私が挨拶をしよう。ステージになんて滅多に立たないから緊張するなぁ、ハハハ」

P「しゃ、社長…!?」

高木「765プロは当面、営業自粛。事務所の存続も極めて危うくなるだろう」

高木「だが、たとえ潰れたとしても、そこからの再起に向けて課題は山積みだ」

高木「のんびり落ち込んでいる暇は無いぞ!」

P「……はいっ…!!」


小鳥「スタッフさん、準備オッケーです!あっ、私もステージに上がって良いですか?」

P「何言ってんですか、当たり前でしょ」

186: 2012/06/16(土) 04:59:03.35
古畑「それでは、我々は会場の外で…」

律子「はい……よろしくお願い致します」



ワアァァァァァァァァ…!!

古畑「結局、君の言う通りだったねぇ、今泉君」

今泉「えっ?」

古畑「悪人だったら、こんなにたくさんの人の心を掴むことは出来ない」


ワアァァァァァァァァ…!!

「お、やっと出てきた!」

「でも、あれ?何かおかしくね?」

「変なオッサンとかも一緒に出てきてんだけど…」

ザワザワ…



高木「本日ご来場のお客様をはじめ、全ての765プロファンの皆様並びに業界関係者の皆様に、
   この場を借りてお詫び申し上げなければならない事がございます…」


~スタッフロール~

187: 2012/06/16(土) 05:06:44.91
元ネタは、古畑任三郎スペシャル『古畑任三郎 VS SMAP』です。

ビッグタイトル、しかも推理モノとのクロスなんて書けるのか、
大丈夫なのかと思っていたら、全然大丈夫じゃありませんでした。

以前、ウルトラマンを題材にした真メインのギャグっぽいSSをVIPで書いたので、
今回シリアス長編に挑戦しましたが、難産の割に捻りの無い作品になってしまいました。

投下しながら、自分でも色々、これ変だろって思う部分があるので、
ぜひ、元ネタを見てお口直ししていただけると幸いです。

それでは、失礼致します。

188: 2012/06/16(土) 05:11:46.01


次は美希が観覧車に爆弾しかける話だな

189: 2012/06/16(土) 05:16:13.18
面白かった!乙

まぁ殺さなくても事務所か水瀬、雪歩の実家あたりの力で何とかなるんじゃと思ったけどww


引用元: 古畑「ん~……これは765プロの人間による殺人ですー」