1: 2021/06/25(金) 18:01:18.488
ザシュッ!

不死女「フフフ……」シュゥゥゥ…

剣士「くそっ、斬っても斬っても再生しやがる……!」

不死女「もう諦めろ。お前に私は倒せない」

剣士「(確かに……これじゃキリがない)ん?」

剣士「なんだ、この木箱」パカッ

不死女「あっ、それは!」

剣士「中に石ころっぽいものが……なんか脈打ってやがる」

ドクッ… ドクッ…

不死女「それに触るなぁっ!」

剣士「ははーん。これもしかしてお前の“核”か?」

不死女「!」ギクッ

3: 2021/06/25(金) 18:05:13.474
剣士「なるほどなるほど、肉体と核が分かれていたとは……これが不死身の秘密ってわけだ」

剣士「つまりこれを壊せば、お前は氏ぬわけか」

不死女「ち、違うっ! そんなもの、私とは関係ないっ!」

剣士「じゃあ試しに斬ってみるか」チャキッ

不死女「よ、よせっ!」

剣士「握り潰すのもありか」ギュッ

不死女「やめろっ!」

剣士「ツンツンしてみよう」ツンツン

不死女「やめてっ! 私の核をツンツンしないで!」

剣士「やっぱり核なんじゃねえか」

不死女「ぐ……!」

6: 2021/06/25(金) 18:08:18.356
不死女「頼む、返してくれ! お願いだから!」

剣士「アホか。こんな弱点、みすみす返すわけねえだろ」

不死女「じゃあ、どうしたら……」

剣士「俺についてこい」

不死女「なんで……」

剣士「この核、握り潰しちまうか」ガシッ

不死女「わ、分かった! ついていく!」

7: 2021/06/25(金) 18:11:47.986
剣士「おーい、みんな! このところ村に迷惑かけてた化け物女を捕えたぞ!」

不死女「ぐ……」

ザワザワ…

剣士「この通り縛ってある。こいつ氏なないから好きなだけボコっていいぞ。ただし殴る蹴るだけな」

不死女「は!?」

村人A「ありがとう、剣士さん! よーし……覚悟しろい!」

村人B「食料を散々盗みやがって!」

不死女「なんということを……鬼か、貴様ァ!」

剣士「鬼? むしろ甘々だろ。盗みは即氏罪なんて地方もあるんだぞ。俺の心の広さに感謝して欲しいぐらいだ」

村人A「みんな、やっちまえ!」

不死女「ああああっ……!」

11: 2021/06/25(金) 18:14:44.154
村人A「はぁ、はぁ、はぁ……もういいや」

村人B「ああ、このぐらいで勘弁してやろう」

ワイワイ…

不死女「あ、あうう……前が見えねェ」ボロッ…

剣士「いやー、やられたなぁ。アッハッハ、俺なら五回は氏んでるかも」

不死女「笑うな!」

剣士「おお、治るのも早い」

不死女「これで……核は返してくれるんだろうな」

剣士「え、なんで?」

不死女「!」

13: 2021/06/25(金) 18:18:30.434
不死女「だって村人にリンチされたら返すって……」

剣士「んなこと一言もいってないんだけど」

不死女「な、なんだとォ!?」

剣士「じゃあ今度は俺んちに来てもらおうか」

不死女「ふざけるな!」

剣士「あー、なんか試し斬りしたくなってきた。お、ここにちょうどいいものが……」ドクンドクン…

不死女「やめろっ! 分かった、お前の家に行く!」

14: 2021/06/25(金) 18:21:07.246
剣士の家――

剣士「どうよ、俺の家は」

不死女「狭い」

剣士「じゃあ、広くするために核を斬るか。お前が消えて一人になる」

不死女「広いっ! まるでどこぞの宮殿のようだ!」

剣士「今日はお前と戦ってお腹すいたし、さっそく夕食を……」

不死女(おお、ごちそうしてくれるのか)

剣士「作ってもらおうか」

不死女「え」

15: 2021/06/25(金) 18:24:33.832
剣士「材料はある。すぐ支度してくれ」

不死女「ふざけるな! なぜ私が……!」

剣士「じゃあ、俺がこの核を調理するか。心臓みたいなもんだし味はいいかもしれない」

不死女「や、やめろっ!」

不死女「おのれ……! 貴様、核を人質にして、いや核質にして、私を召使にするつもりだったのだな!」

剣士「(わざわざ言い直さんでも)やっと気づいたのか」

剣士「というわけで、とっとと飯の支度してもらおうか」

不死女「くぅぅ……いつか核を取り戻し、逆襲してやるからな!」

18: 2021/06/25(金) 18:28:00.504
不死女「できたぞ」

剣士「どれ、いただきます」モグッ

不死女「どぉう?」

剣士「うえっ、まずっ!」

不死女「え!?」

剣士「なんだよ、この味付け!? 俺よりずっと長生きしてるんだから、料理も上手いはずだろ!?」

不死女「うーむ、なに食っても氏ぬことはないから、むしろ味には無頓着になってしまって……」

剣士「そういうもんなのか……」

不死女「頼む、核は斬らないでくれ!」

剣士「飯がまずかったぐらいで斬るかよ。ちょっと待ってろ、俺が作る」

20: 2021/06/25(金) 18:30:19.832
剣士「ほら、肉と野菜のスープだ」

不死女「……」

不死女「おいしい……」

剣士「そりゃどうも」

不死女「お前はプロだ! 料理のプロフェッショナルになれる!」

剣士「大げさだっての」

不死女「だから、核を返して……」

剣士「おだてても返さない」

不死女「ぐっ!」

剣士「長生きしてるわりに作戦がチープすぎるんだよ」

24: 2021/06/25(金) 18:33:14.661
剣士「じゃあ寝るか」

剣士「俺はもちろん、核と一緒に」ドクッドクッ…

不死女(寝てる間に奪う作戦も見抜かれてるか……)

剣士「そういや俺、寝相悪いんだよなー」

不死女「寝返りで潰すのだけはやめてくれ! 頼むから!」

剣士「じゃ、おやすみー」

不死女「くうう……!」

27: 2021/06/25(金) 18:36:22.624
次の日――

剣士「出かけるか」

不死女「どこに行くんだ?」

剣士「付近の村や町をパトロールするんだ。これが主な俺の仕事だ」

不死女「歩き回るだけで金をもらえるのか。楽な仕事だな」

剣士「その代わり、異常があったら命がけで戦わなきゃならないがな」

不死女「異常? たとえば?」

剣士「盗賊が現れるとか、化け物が現れるとか」

不死女「そんなことがあるのか」

剣士「一番最近の事例だとお前だな」

不死女「あ、そっか」

28: 2021/06/25(金) 18:39:09.112
剣士「今日は異常なかったな。いいことだ」

不死女「おかげで働かず給料をもらえるわけだ」

剣士「まるで給料泥棒みたいにいうなよ。んじゃ、帰るか」

不死女「帰るついでに私の核を返してくれ」

剣士「いいよ。かえ……」スッ

不死女「おおっ!」

剣士「さない」サッ

不死女「おのれ!」

30: 2021/06/25(金) 18:42:16.264
剣士「風呂入るかー。お湯を沸かして、と……」

スタスタ…

不死女「!」

不死女(さすがに風呂までは核を持っていかんだろう)

不死女(奴が脱ぎ捨てた服のどこかにあるはず!)

バサバサッ バサバサッ

不死女「くそっ、ないっ! ないっ! ないっ! どこにある!?」

32: 2021/06/25(金) 18:45:14.086
剣士「ふっふっふ……」ホカホカ

不死女「あっ!」

剣士「核はお前を従わせる生命線……その辺に置き去りにするわけないだろうが」

剣士「ちゃあんと一緒に風呂に持っていったよ」ドクッドクッ

不死女「くっ!」

剣士「ああ、それと――」

不死女「なんだ?」

剣士「お前も風呂入っていいぞ」

不死女「わぁい!」

34: 2021/06/25(金) 18:48:18.454
剣士「ほら、メシだ」

不死女「相変わらずお前の料理はうまいな」

剣士「そりゃどうも」

不死女「なんでこんなにうまいんだ?」

剣士「別に……何年も自炊してりゃこの程度は自然と作れるようになるだろ」

不死女「何百年も生きてきた私の立場は……」

剣士「ごめん」

36: 2021/06/25(金) 18:51:47.790
剣士「っていうかさぁ……」

不死女「なんだ?」

剣士「なんでお前、核をあんな自分の近くに置いてたんだ?」

剣士「もっと誰の手も届かないところに置いておけば、無敵じゃん」

剣士「おかげでこうして俺のいうこと聞かされるはめになってる」

不死女「……」

不死女「私が最も恐れるのは、核を破壊されることより、核を永久に破壊できなくなることだ」

剣士「!」

不死女「もし、私が絶対安心な場所に核を隠して、何らかの原因でそこに誰も近づけなくなったらどうなる?」

不死女「私は永久に生き続けることになるかもしれない。たとえ、氏にたくなっても――」

不死女「それは怖い……氏ぬよりも怖い」

不死女「だから、核を目の届かぬところに置くこともできなかったのだ」

剣士「そうか……」

37: 2021/06/25(金) 18:54:39.272
剣士「そういや、そもそもなんで不死なんだ? そういう種族なのか?」

不死女「さぁな」

剣士「さぁなって……自分のことだろ」

不死女「本当に分からんのだ。気づいた時には、体と核が分かれ、老いも氏にもしない体質になっていた」

不死女「この核が破壊されたら私も氏ぬというのも本能的に知っていた」

不死女「それから数百年は生きたが、未だに自分に何があったのかは思い出せん」

不死女「元々こうだったのか、何らかの実験や魔法でこうなったのか、もっと他の原因があるのか……」

不死女「私と同じような者に出会ったこともないし、なんの手掛かりもない」

不死女「おそらく……真実が分かることは永久にあるまい。その確信だけはある」

剣士「……」

40: 2021/06/25(金) 18:56:15.013
剣士「悪かったな、変なこと聞いて」

不死女「!」

剣士「過去なんて関係ねえ。大事なのはこれからどう生きるかだ」

剣士「最高の誕生の仕方したって、ろくでもねえ人生送ったらしょうがないもんな」

不死女「フッ……ろくでもない剣士に慰められるとは思わなかった」

剣士「核をツンツンしたくなってきた」

不死女「やめて!」

42: 2021/06/25(金) 18:59:15.255
ある日――

不死女「今日はどこに行くんだ?」

剣士「何もしないでいると暇だろ? だから……」

剣士「おーい!」

村人A「おお、剣士さん」

剣士「今日からこいつを手伝わすから、よろしく頼むよ」

村人A「ああ」

不死女「手伝う? なにを?」

剣士「決まってんだろ。畑仕事」

不死女「なんだと!?」

44: 2021/06/25(金) 19:02:04.231
不死女「ふざけるな、なんで私がそんなことを……」

剣士「さようなら、核……」ギュッ

不死女「わ、分かった! 分かったから!」

剣士「じゃあ、村人さんのいうこと聞いて、しっかり働けよ」

村人A「こないだボコボコにした人に手伝ってもらうってのも妙な気分だが、よろしく」

不死女「ふん……」

剣士「核を潰されたくなかったらしっかり挨拶しろよ」

不死女「よ、よろしくっ!」

45: 2021/06/25(金) 19:05:20.624
剣士「パトロール終了っと……」

剣士「どうだい村人さん、あいつは」

村人A「それが……」

剣士「まさか、何かやらかした? それとも逃げた?」

村人A「いや、そうじゃなくて……」

不死女「畑仕事楽しい!」ザクッザクッ

村人A「妙にハマっちゃったみたいで……はりきってるよ。こっちが恐縮しちゃうほどに」

剣士「ちょっと意外!」

48: 2021/06/25(金) 19:08:44.059
不死女「お腹すいた~」

剣士「不死でも腹はすくんだな」

不死女「ああ、食わなくてもいいし氏なないが、腹はすく」

剣士「便利とも不便とも言い難いな。ほら」

不死女「いただきまーす!」バクバク

不死女「おかわり!」

剣士「ほらよ」

不死女「おかわり!」

剣士「三杯目はせめてそっと出せよ」

49: 2021/06/25(金) 19:11:06.402
川にて――

ザザザ…

剣士「たまには釣りもいいもんだろ」

不死女「うむ」

不死女「ところで核は?」

剣士「ここにある」

不死女「間違っても川に落とすなよ。流されたら大変だ」

剣士「分かってるよ……あっ」ポロッ

ザバン…

不死女「バカーッ!!!」

50: 2021/06/25(金) 19:14:18.119
不死女「どこだ! どこだ! どこいった!?」

バシャバシャバシャ

剣士「おいおい、核はここにあるよ」サッ

不死女「あれ? じゃあさっきのは?」

剣士「石で作ったニセモノ」ニヤッ

不死女「貴様、からかったな!」ダッ

剣士「自分の核かどうかも見抜けないお前が悪い」ダッ

不死女「待てーっ!」

バシャバシャバシャ…

51: 2021/06/25(金) 19:17:22.997
剣士「うわっ!」ツルッ

不死女「きゃっ!」ツルッ

バシャァッ!

剣士「つめて……ずぶ濡れになっちゃったな」

不死女「貴様こそ」

剣士「……」クスッ

不死女「……」フフッ

剣士「アハハハハハハッ!」

不死女「アハハハハハハッ!」

…………

……

53: 2021/06/25(金) 19:21:15.637
不死女「ふぅ~、今日はたくさん収穫できたぞ。お芋に大根に……ん?」

剣士「……」

不死女「どうした?」

剣士「いや、そろそろいいかな、と思ってな」

不死女「なにが?」

剣士「ほら」ポイッ

不死女「これは……」

ドクッ… ドクッ…

剣士「お前の核だ。返すよ」

不死女「剣士……」

54: 2021/06/25(金) 19:23:20.629
不死女「いいのか?」

剣士「ああ、もうお前は十分償ったと思うしな」

剣士「どこに行こうがお前の自由だ」

剣士「ただし、なるべく悪さはすんなよ。もう二度とお前と戦いたくないしさ」

不死女「……」

剣士「……」

55: 2021/06/25(金) 19:26:33.278
剣士「いや、やっぱりこういうのは男からいうのが筋だよな」

不死女「え?」

剣士「あのさ……できればもう少しこの家に残ってくれないか?」

剣士「俺はお前を気に入っちまった。もっと一緒に暮らしたい」

不死女「……!」

剣士「いつ出てってもかまわないしさ……どうかな?」

不死女「私の返事は……」

57: 2021/06/25(金) 19:29:52.877
不死女「これだ」サッ

剣士「え、核?」

不死女「これをお前に預ける。結婚指輪のようなものだと思ってくれ」

剣士「思ってくれって……なかなか難しいものがあるけど。どうして?」

不死女「しばらくの間、お前に核を奪われて……お前に命を左右されてる感覚……決して嫌いじゃなかった」

不死女「だから、一緒に暮らすなら、お前に核を預かっていて欲しいのだ」

剣士「……分かった。そうしよう」

不死女「ありがたい」

剣士「だけど、ひょっとしてお前ってMだったの? 命を左右されたいって……」

不死女「Mっていうな!」

59: 2021/06/25(金) 19:33:27.840
二人はささやかな結婚式を挙げた。

剣士「みんな、ありがとう!」

不死女「祝福してくれて感謝する」



パチパチパチ…

村人A「いよっ、おめでとう!」

村人B「まさか剣士さんと不死女さんがねえ」

村娘「おめでとうございます!」

60: 2021/06/25(金) 19:36:08.924
その後は二人で――

村人A「け、剣士さん!」

剣士「どうした?」

村人A「盗賊の集団が……村に向かってきてるって……」

剣士「よっしゃ、返り討ちだ!」

不死女「ああ、私がいれば盗賊など恐れるものではない」

剣士「村人さんたちはどっかに避難しててくれ。俺たちだけで十分だ」

村人A「無茶しないでくれよ!」

62: 2021/06/25(金) 19:39:11.750
盗賊A「うりゃあああっ!」ズバッ!

盗賊B「どりゃあああっ!」ザンッ!

不死女「どうしたどうした? 剣士の斬撃に比べれば中途半端な傷しかできんな」シュゥゥゥ…

盗賊A「ひいっ、なんだこの女!?」

盗賊B「いくら斬っても平然としてやがる!」

剣士「おいおい……人の女房斬ってんじゃねえぞ!」

ズバッ! ザシュッ!

盗賊A「ぐはっ!」

盗賊B「げばっ!」

不死女「私が斬られてる間に、お前が斬る。最高のコンビネーションだな」

剣士「味方にするとこんなに頼もしいんだな……不死者って」

64: 2021/06/25(金) 19:41:37.441
剣士「戦った後の飯はうまい」モグモグ

不死女「……」モゾ

剣士「どうした?」

不死女「今夜はいいだろう?」

剣士「おいおい、俺の体の剣まで酷使させるつもりかよ」

不死女「私は不死だからな……そう簡単に眠らせんぞ」





時は流れ……

66: 2021/06/25(金) 19:44:04.918
>おいおい、俺の体の剣まで酷使させるつもりかよ


やかましいわwwwwwwwww

68: 2021/06/25(金) 19:47:14.185
剣士「……」

不死女「剣士……」

剣士「俺はだいぶ年老いたが、お前は若いままだ。羨ましいな……」

剣士「ごほっ、ごほっ、ごほっ」

不死女「すまない。私はやはり不死ゆえ、子をなすこともできなかった」

不死女「私と結ばれたことで、お前は普通の幸せを逃してしまったのでは……」

剣士「んなことあるかい。お前と一緒に暮らしたいといったのは俺だし……」

剣士「この数十年は本当に楽しかった。俺は間違いなく幸せだったよ。断言できる」

不死女「ありがとう……」

71: 2021/06/25(金) 19:49:29.266
不死女「剣士よ」

剣士「なんだ?」

不死女「まだ動けるうちに……私の核を斬ってくれないか?」

剣士「!」

不死女「お前は私が生涯でただ一人愛した夫……私はお前と氏にたいのだ」

不死女「お前に核を斬られるのならば……これ以上の滅び方はない。だから頼む」

剣士「……」

ドクッ… ドクッ…

73: 2021/06/25(金) 19:52:43.604
剣士「バカいえ」

剣士「お前だって、俺にとっちゃただ一人愛した女房……」

剣士「その命を俺の手で断つなんてできるかよ……」

不死女「!」

剣士「これは……俺のワガママだ。だが、聞いて欲しい」

剣士「お前は生きてくれ。できる限り、生きて、生きて、生きて……いい土産話を持ってきてくれ」

剣士「俺は……あの世でいつまでも待ってるからよ……頼む……」

不死女「……」

不死女「ああ、分かった!」

剣士「ありがとう」

剣士「ああ、そうそう。いい男を見つけたら、再婚したっていいぞ」

不死女「無論、そうするつもりだ」

剣士「ハハ……。安心したよ」

不死女「ふふっ……」

75: 2021/06/25(金) 19:56:15.893
一週間後――

不死女(村人たちがこんな立派な墓を建ててくれた……)

不死女「剣士……楽しかったよ」





剣士はこの世を去り、不死女もまた村を旅立った。

村のことは気に入っていたが、土産話を増やすために――

…………

……

76: 2021/06/25(金) 19:59:26.831
50年後――

チンピラ「おう兄ちゃん、その抱えてる金貨袋よこしな」

青年「や、やめてくれ! これは親方から預かった大切な……」

チンピラ「よこさねえと、刺しちまうぞ!」ギラッ

「よさんか」

青年「え?」

チンピラ「ああん!?」

77: 2021/06/25(金) 20:02:26.779
不死女「他人から金をせびるなどというあさましい真似はやめろ」

チンピラ「なんだとこの女、刺されたいか!?」サッ

不死女「ああ、刺してみろ」

チンピラ「え」

不死女「どこでもいいぞ。胸でも腹でも首でも刺してみるがいい」ズイッ

チンピラ「うぐ……」

不死女「久しく痛みを味わってなかったのだ。さあ、ズブリとやってくれ」

チンピラ「ちっ、イカれてやがる! ……やってらんねえや!」ダッ

不死女「なんだ、つまらん。いくじなしめ」

青年「あ、あの……ありがとうございました!」

不死女「礼などいらん。度胸のないチンピラ撃退……またひとつ土産話が増えたな」

青年「へ……?」

78: 2021/06/25(金) 20:05:27.937
不死女「……」

不死女(剣士……。私は今、世界中を旅している。自分の核を持ってな)

不死女(もし、どこかで核を破壊され、私もそっちに行ったら……)

不死女「たっぷり嫌になるぐらい土産話を聞かせてやるから、覚悟しておけ!」







~おわり~

79: 2021/06/25(金) 20:07:08.166
映画化決定

80: 2021/06/25(金) 20:07:25.977
面白かった乙です
やっぱり不死や長命キャラの話は最後が少し切ないね

引用元: 不死女「やめてっ!私の“核”をツンツンしないで!」