1: 2021/07/01(木) 18:04:15.028
男「へぇ~、この毒手って技かっこいいなぁ。俺もやってみよう!」
……
男「えーと、こうやって毒薬や毒虫や毒草を容器に入れて……」
男「右手で突く! 突く! 突く!」ザクッザクッザクッ
男「しばらくしたら薬で洗う」ジャブジャブ
男「これを繰り返すと……」
……
男(右手がどす黒くなった……)
男「出来た! 毒手の完成だ!」
これが苦難の始まりになろうとは――
……
男「えーと、こうやって毒薬や毒虫や毒草を容器に入れて……」
男「右手で突く! 突く! 突く!」ザクッザクッザクッ
男「しばらくしたら薬で洗う」ジャブジャブ
男「これを繰り返すと……」
……
男(右手がどす黒くなった……)
男「出来た! 毒手の完成だ!」
これが苦難の始まりになろうとは――
3: 2021/07/01(木) 18:05:57.288
バカの世界チャンピオンだ
6: 2021/07/01(木) 18:08:02.653
男「さっそく外に出て、誰かに見せびらかすか」グッ
ブスブス…
男「ゲ!? ドアノブが……!」
男「一瞬でボロボロになった……修理しないと……」ピタッ
グズグズ…
男「わぁっ!? 手をついただけでテーブルが……!」
男「マジかよ、威力高すぎだろ!」
ブスブス…
男「ゲ!? ドアノブが……!」
男「一瞬でボロボロになった……修理しないと……」ピタッ
グズグズ…
男「わぁっ!? 手をついただけでテーブルが……!」
男「マジかよ、威力高すぎだろ!」
8: 2021/07/01(木) 18:09:06.522
容器はなぜ溶けなかったのか
10: 2021/07/01(木) 18:10:07.824
毒皮膚まで浸透してるのになんで毒手使いは氏なないの?
11: 2021/07/01(木) 18:10:08.882
めっちゃ痛いんだよなあれ作るの
12: 2021/07/01(木) 18:11:17.933
男「毒手……やっぱやめよう!」
男「漫画に毒手のキャンセル方法載ってないかなぁ……。クーリングオフ的な……」サッ
ボロボロッ…
男「ああああっ! 漫画がっ! 朽ち果ててしまった!」
男(落ちつこう……おにぎりでも食べて落ちつこう)サッ
グズグズ…
男「おにぎりが一瞬で腐った! もったいねええええ!」
男「漫画に毒手のキャンセル方法載ってないかなぁ……。クーリングオフ的な……」サッ
ボロボロッ…
男「ああああっ! 漫画がっ! 朽ち果ててしまった!」
男(落ちつこう……おにぎりでも食べて落ちつこう)サッ
グズグズ…
男「おにぎりが一瞬で腐った! もったいねええええ!」
15: 2021/07/01(木) 18:14:17.273
男「くそっ、どうしよう……」
プーン…
男「こんな時にうるせえ蝿だ! シッ、シッ!」バッバッ
ボトッ
男「触れただけで氏んだ……」
男(ヤバイ、これ想像以上の殺人兵器だぞ)
男(こんな右手持ってたら、いつか誰か頃しちゃうし、自分の命も危ないじゃねえか)
プーン…
男「こんな時にうるせえ蝿だ! シッ、シッ!」バッバッ
ボトッ
男「触れただけで氏んだ……」
男(ヤバイ、これ想像以上の殺人兵器だぞ)
男(こんな右手持ってたら、いつか誰か頃しちゃうし、自分の命も危ないじゃねえか)
17: 2021/07/01(木) 18:15:35.632
早く裏返さなきゃ
20: 2021/07/01(木) 18:17:34.379
男「水で洗おう!」
ジャブジャブ…
男「ダメだ! 水が毒水になるだけで全然洗えねえ! 下水で働いてる人達が危ない!」
男「だったら毒手作る時の薬で――」
ジャブジャブ…
男「一度完成してしまった毒手に効果はないようだ……」
男「そうだ、漫画キャラみたいに包帯巻いて……」グルグル
ボロボロッ…
男「包帯ィィィィィ!!!」
……
男「自力じゃどうしようもない……病院に行こう」
ジャブジャブ…
男「ダメだ! 水が毒水になるだけで全然洗えねえ! 下水で働いてる人達が危ない!」
男「だったら毒手作る時の薬で――」
ジャブジャブ…
男「一度完成してしまった毒手に効果はないようだ……」
男「そうだ、漫画キャラみたいに包帯巻いて……」グルグル
ボロボロッ…
男「包帯ィィィィィ!!!」
……
男「自力じゃどうしようもない……病院に行こう」
22: 2021/07/01(木) 18:19:43.465
薬つけろ
23: 2021/07/01(木) 18:21:14.150
医者「無理ですね」
男「え……」
医者「こんなに侵食してしまった毒を除去するなど不可能です」
男「そ、そんなぁ! このままじゃ不便すぎるんです!」
医者「なんで右手を毒手なんかにしてしまったんですか」
男「つい軽い気持ちで……」
医者「どうしてもというなら切断するしかありませんけど」
男「切断は嫌です!」
医者「ならばどうしようもありません。上手く付き合って下さい」
男「はい……」
男「え……」
医者「こんなに侵食してしまった毒を除去するなど不可能です」
男「そ、そんなぁ! このままじゃ不便すぎるんです!」
医者「なんで右手を毒手なんかにしてしまったんですか」
男「つい軽い気持ちで……」
医者「どうしてもというなら切断するしかありませんけど」
男「切断は嫌です!」
医者「ならばどうしようもありません。上手く付き合って下さい」
男「はい……」
28: 2021/07/01(木) 18:24:22.575
男「え、クビ?」
店長「ああ、今日限りでな。というより今すぐ」
男「なぜですか!」
店長「なぜって……自分のその右手に聞いてみろ!」
男「あ……」
店長「君が触った商品、全部ダメになってるじゃないか!」
男「すみません、これからは気をつけますから……」
店長「これから気をつけるで済むか! とっとと出ていけ!」
店長「ああ、今日限りでな。というより今すぐ」
男「なぜですか!」
店長「なぜって……自分のその右手に聞いてみろ!」
男「あ……」
店長「君が触った商品、全部ダメになってるじゃないか!」
男「すみません、これからは気をつけますから……」
店長「これから気をつけるで済むか! とっとと出ていけ!」
29: 2021/07/01(木) 18:27:40.308
男「以上が私の志望動機です」
面接官「ずっと気になってたんだけど……そのどす黒い右手はなに?」
男「あ、これは……毒手です」
面接官「その毒手がなにか当社に役立つことはありますか?」
男「えぇと……ライバル会社の社員を毒殺できます!」
面接官「そんなことしたら犯罪ですよね。当社はオシマイですよ」
男「はい……」
面接官「もう結構です。お引き取り下さい」
男(まさか、自分がどこかのコピペみたいな事態になるとは……)
面接官「ずっと気になってたんだけど……そのどす黒い右手はなに?」
男「あ、これは……毒手です」
面接官「その毒手がなにか当社に役立つことはありますか?」
男「えぇと……ライバル会社の社員を毒殺できます!」
面接官「そんなことしたら犯罪ですよね。当社はオシマイですよ」
男「はい……」
面接官「もう結構です。お引き取り下さい」
男(まさか、自分がどこかのコピペみたいな事態になるとは……)
32: 2021/07/01(木) 18:31:18.259
友人「なぁ、たまには合コンしねえ?」
男「合コンって……俺仕事なくなっちゃって金ねえんだよ」
友人「いいっていいって、金なら出してやるよ」
友人「女サイドが人数合わなきゃやだってゴネててさー」
男「んー、なら行くよ」
……
男「これ……毒手」サッ
ギャル「うわっ、なにそれ……」
茶髪女「キモーイ!」
男「……」
男「合コンって……俺仕事なくなっちゃって金ねえんだよ」
友人「いいっていいって、金なら出してやるよ」
友人「女サイドが人数合わなきゃやだってゴネててさー」
男「んー、なら行くよ」
……
男「これ……毒手」サッ
ギャル「うわっ、なにそれ……」
茶髪女「キモーイ!」
男「……」
33: 2021/07/01(木) 18:34:30.359
男(くそっ、仕事はなくなる、面接は落ちる、女にはモテない。ろくなことがない)
男(全部毒手のせいだ……毒手なんかにしなければ……)スタスタ
ドンッ
チンピラ「おう、兄ちゃん! 人にぶつかっといて素通りかい!?」
男「……」
チンピラ「なんだその目ェ!? 刺してやんぞォ!」サッ
男「刺してみろよ」ガシッ
チンピラ「あっ、ナイフを……」
男(全部毒手のせいだ……毒手なんかにしなければ……)スタスタ
ドンッ
チンピラ「おう、兄ちゃん! 人にぶつかっといて素通りかい!?」
男「……」
チンピラ「なんだその目ェ!? 刺してやんぞォ!」サッ
男「刺してみろよ」ガシッ
チンピラ「あっ、ナイフを……」
36: 2021/07/01(木) 18:37:14.877
グジュグジュ…
チンピラ「え」
ボロッ…
チンピラ「ひっ、ナイフが!?」
男「……」
チンピラ「ひえええええっ~!」
男(こっちがひええだよ。ナイフの刃すら腐食させちゃうなんて……)
チンピラ「え」
ボロッ…
チンピラ「ひっ、ナイフが!?」
男「……」
チンピラ「ひえええええっ~!」
男(こっちがひええだよ。ナイフの刃すら腐食させちゃうなんて……)
37: 2021/07/01(木) 18:40:05.022
黒服「今の見てたよ」
男「え……どうも……」
黒服「うちの組に来ねえか? 歓迎するぜ」ニヤッ
男(組!?)
男「い、いえっ! 結構です! 失礼します失礼します!」スタタタタッ
黒服「ちっ」
男(さすがに裏社会は嫌だ!)
男「え……どうも……」
黒服「うちの組に来ねえか? 歓迎するぜ」ニヤッ
男(組!?)
男「い、いえっ! 結構です! 失礼します失礼します!」スタタタタッ
黒服「ちっ」
男(さすがに裏社会は嫌だ!)
38: 2021/07/01(木) 18:43:29.364
男「仕事見つからないし、金がなくなってく……」
男「この一万円札が切り札だな……。大切に使おう……」
ボロッ…
男「あ、しまっ! ちょっ! あっ!」
ボロボロッ
男「毒手で触っちゃった! 俺のバカ~!」
男「この一万円札が切り札だな……。大切に使おう……」
ボロッ…
男「あ、しまっ! ちょっ! あっ!」
ボロボロッ
男「毒手で触っちゃった! 俺のバカ~!」
42: 2021/07/01(木) 18:46:39.651
……
ある崖に立つ男。
ヒュゥゥゥゥ…
男(高さ30メートルはある……絶対氏ぬな)
男(俺なんか生きてても迷惑かけるだけだし、ここから飛び降りて氏のう……)
男(後々遺体が発見されて、収容する人が毒手を触らなきゃいいけど……)
男「よし……」サッ
「あら、何をしてらっしゃるんですか?」
男「!?」ギクッ
ある崖に立つ男。
ヒュゥゥゥゥ…
男(高さ30メートルはある……絶対氏ぬな)
男(俺なんか生きてても迷惑かけるだけだし、ここから飛び降りて氏のう……)
男(後々遺体が発見されて、収容する人が毒手を触らなきゃいいけど……)
男「よし……」サッ
「あら、何をしてらっしゃるんですか?」
男「!?」ギクッ
45: 2021/07/01(木) 18:49:29.517
男「だ、誰!?」
女「何をしてらっしゃるんですか?」
男「いや、なんだろなぁ……ハハハ」
女「あら」
男「え」
女「あなたの右手……真っ黒ですね。どうしたんですかそれ?」
男「ああ、これは……えぇと……毒手でして」
女「手が毒になってるんですか? ぜひ触らせて下さい」サッ
男「あっ、ダメ! 氏んじゃう! バカッ!」
ガシッ
女「何をしてらっしゃるんですか?」
男「いや、なんだろなぁ……ハハハ」
女「あら」
男「え」
女「あなたの右手……真っ黒ですね。どうしたんですかそれ?」
男「ああ、これは……えぇと……毒手でして」
女「手が毒になってるんですか? ぜひ触らせて下さい」サッ
男「あっ、ダメ! 氏んじゃう! バカッ!」
ガシッ
47: 2021/07/01(木) 18:52:27.273
女「へえ……」
男「え?」
女「感触は普通の手とさほど変わりありませんね」ニギニギ
男「あの……体はなんともないの?」
女「はい。強いていえば、この手を触ってるとなんだか落ち着きます」
男「……!」
男(どういうことだ……!?)
男「え?」
女「感触は普通の手とさほど変わりありませんね」ニギニギ
男「あの……体はなんともないの?」
女「はい。強いていえば、この手を触ってるとなんだか落ち着きます」
男「……!」
男(どういうことだ……!?)
48: 2021/07/01(木) 18:55:19.751
男「……」
男「とりあえず、町に行こうか」
女「そうですね」
女「あ、そうだ。せっかくだから手を繋ぎながら行きません?」
男「う、うん」
ギュッ…
男(不思議な子だ……毒手も効かないし)
ザッザッ…
男「とりあえず、町に行こうか」
女「そうですね」
女「あ、そうだ。せっかくだから手を繋ぎながら行きません?」
男「う、うん」
ギュッ…
男(不思議な子だ……毒手も効かないし)
ザッザッ…
50: 2021/07/01(木) 18:59:45.636
ファミレスに入った二人。
女「まあ、漫画を読んで右手を毒手に?」
男「うん」
女「ふふっ、すごいですね」
男「すごいどころか後悔してるよ。毒手にしてからろくなことがないんで」
女「まるで私とは正反対……」
男「へ?」
女「いえ、なんでもありません」
女「まあ、漫画を読んで右手を毒手に?」
男「うん」
女「ふふっ、すごいですね」
男「すごいどころか後悔してるよ。毒手にしてからろくなことがないんで」
女「まるで私とは正反対……」
男「へ?」
女「いえ、なんでもありません」
51: 2021/07/01(木) 19:02:15.598
男(しかし、この子……改めて見ると色白だな)
男(いや、色白というか青白いというか……幽霊みたいな雰囲気だ。ホントに生きてんのか?)
女「どうかしました?」
男「いや、なんでもない」
男「とりあえず、ご飯食べようか」
女「はい」
男(ほんのわずか残ってた金もこれで尽きたな)
男(いや、色白というか青白いというか……幽霊みたいな雰囲気だ。ホントに生きてんのか?)
女「どうかしました?」
男「いや、なんでもない」
男「とりあえず、ご飯食べようか」
女「はい」
男(ほんのわずか残ってた金もこれで尽きたな)
54: 2021/07/01(木) 19:05:19.909
女「……」
男「ほとんど食べないね、大丈夫?」
女「ええ、食欲がなくて」
男「じゃあ、俺がもらっちゃおうかなーなんて」
女「どうぞ」
男「いいの!? ありがとう!」
女「……ぐ」
男「?」
女「ハァ、ハァ……」
男「どうしたの!?」
男「ほとんど食べないね、大丈夫?」
女「ええ、食欲がなくて」
男「じゃあ、俺がもらっちゃおうかなーなんて」
女「どうぞ」
男「いいの!? ありがとう!」
女「……ぐ」
男「?」
女「ハァ、ハァ……」
男「どうしたの!?」
55: 2021/07/01(木) 19:08:22.118
女「いえ、なんでも……大丈夫、です……」
男「いや、ものすごく体調悪そうだけど……」サッ
男(って、やべえ! 毒手で!)
女「あ、落ちつきます……」
男「へ?」
女「その手で触ってもらってると、体調がよくなるみたい」
男「……!?」
男(毒手が効かないどころか、治療になってる……?)
男「いや、ものすごく体調悪そうだけど……」サッ
男(って、やべえ! 毒手で!)
女「あ、落ちつきます……」
男「へ?」
女「その手で触ってもらってると、体調がよくなるみたい」
男「……!?」
男(毒手が効かないどころか、治療になってる……?)
57: 2021/07/01(木) 19:12:06.039
ファミレスを出て――
女「少し……歩きません? 手を繋ぎながら」
男「うん」
ガシッ
女「……」
男(俺は……惹かれてる、この子に。今日会ったばかりのこの子に)
男(毒手が効かないからってだけじゃない)
男(なんていうか落ちつくんだ……。フィーリングが合うっていうか……)
女「少し……歩きません? 手を繋ぎながら」
男「うん」
ガシッ
女「……」
男(俺は……惹かれてる、この子に。今日会ったばかりのこの子に)
男(毒手が効かないからってだけじゃない)
男(なんていうか落ちつくんだ……。フィーリングが合うっていうか……)
58: 2021/07/01(木) 19:15:18.762
男「ごめんね。俺が金持ってれば色んなところ行けるんだけど」
女「いえ、こうして歩いてるだけで楽しいです」
男「俺もだよ」
スタスタ…
男「君は普段なにを?」
女「小さな会社で事務を……。この通り体が弱いせいで迷惑をかけてまして……」
男「俺なんてクビだよ。毒手のせいで」
女「まあ、大変」
男「毒手持ちでもできる仕事、探さないとなぁ」
男(さっき自頃しようとしてたのに、なにいってんだ俺は)
女「いえ、こうして歩いてるだけで楽しいです」
男「俺もだよ」
スタスタ…
男「君は普段なにを?」
女「小さな会社で事務を……。この通り体が弱いせいで迷惑をかけてまして……」
男「俺なんてクビだよ。毒手のせいで」
女「まあ、大変」
男「毒手持ちでもできる仕事、探さないとなぁ」
男(さっき自頃しようとしてたのに、なにいってんだ俺は)
59: 2021/07/01(木) 19:18:17.773
男「毒手で元気になったなら、お腹すいたんじゃない?」
女「そうですね。ちょっと……」
男「ドラッグストアだ。あそこでお菓子でも買わない?」
女「ドラッグ……い、いえっ! 行きたくありません!」
男「そ、そう」
男(なんだこの怯え方)
女「歩きましょう!」スタスタスタ
女「そうですね。ちょっと……」
男「ドラッグストアだ。あそこでお菓子でも買わない?」
女「ドラッグ……い、いえっ! 行きたくありません!」
男「そ、そう」
男(なんだこの怯え方)
女「歩きましょう!」スタスタスタ
61: 2021/07/01(木) 19:21:22.876
女「今日は楽しかったです」
男「俺も……楽しかった」
男「もしよかったら……また会えるかな?」
女「それは……おそらく無理でしょう」
男「ど、どうして?」
女「……」
男「いや、ずっと気になってたんだ。なんで君もあの崖にいたのかって」
男「ひょっとして……君も氏のうと思ってたんじゃないか?」
女「……はい」
男「俺も……楽しかった」
男「もしよかったら……また会えるかな?」
女「それは……おそらく無理でしょう」
男「ど、どうして?」
女「……」
男「いや、ずっと気になってたんだ。なんで君もあの崖にいたのかって」
男「ひょっとして……君も氏のうと思ってたんじゃないか?」
女「……はい」
62: 2021/07/01(木) 19:24:40.063
男「どうして……」
女「私には……彼氏がいるんです」
男「!」
女「彼はいつも私に治験と称して、自分で作ったブレンド薬や薬草を飲ませてくるんです」
女「茶碗一杯、市販の医薬品を食べさせられたこともありました」
男「なんだそりゃ……(俺と正反対――)」
男「薬だって多量に摂取すりゃ毒になる! んなことしたら確実に体を壊す! ドラッグバイオレンス……DVだ!」
女「ええ……おかげで体はみるみる弱って……」
女「ただ、体内に蓄積された薬が奇跡的な配合になって、あなたの毒手への耐性になってるようですけど」
男「彼氏はなんのためにんなことやってんだ?」
女「薬剤師になるため……だといってます」
女「私には……彼氏がいるんです」
男「!」
女「彼はいつも私に治験と称して、自分で作ったブレンド薬や薬草を飲ませてくるんです」
女「茶碗一杯、市販の医薬品を食べさせられたこともありました」
男「なんだそりゃ……(俺と正反対――)」
男「薬だって多量に摂取すりゃ毒になる! んなことしたら確実に体を壊す! ドラッグバイオレンス……DVだ!」
女「ええ……おかげで体はみるみる弱って……」
女「ただ、体内に蓄積された薬が奇跡的な配合になって、あなたの毒手への耐性になってるようですけど」
男「彼氏はなんのためにんなことやってんだ?」
女「薬剤師になるため……だといってます」
63: 2021/07/01(木) 19:27:48.318
男「薬剤師……? つまり、薬学部とかの学生なわけだ」
女「いえ、大学なんか通ってません。とっくに辞めました」
男「は?」
女「授業についていけずドロップアウトしてしまって……だけど夢は諦められず……」
女「付き合ってた私にたくさんの薬を……」
男「ただの頭おかしい奴じゃないか! 別れろよ! 本当に殺されちゃうぞ!」
女「分かってます。でも、もし自分から逃げたり通報したら家族や知り合いを頃してやると脅されてて……」
女「やりかねない人だから、誰にも相談できず……」
男「なんて奴だ……!」
女「いえ、大学なんか通ってません。とっくに辞めました」
男「は?」
女「授業についていけずドロップアウトしてしまって……だけど夢は諦められず……」
女「付き合ってた私にたくさんの薬を……」
男「ただの頭おかしい奴じゃないか! 別れろよ! 本当に殺されちゃうぞ!」
女「分かってます。でも、もし自分から逃げたり通報したら家族や知り合いを頃してやると脅されてて……」
女「やりかねない人だから、誰にも相談できず……」
男「なんて奴だ……!」
64: 2021/07/01(木) 19:30:21.078
男「……」
女「男さん?」
男「やっと分かった気がする。俺の毒手の使い道……」
女「え?」
男「今すぐそいつんとこに案内してくれ」
女「どうするんです?」
男「俺がそいつを――何とかしてやるッ!」
女「男さん?」
男「やっと分かった気がする。俺の毒手の使い道……」
女「え?」
男「今すぐそいつんとこに案内してくれ」
女「どうするんです?」
男「俺がそいつを――何とかしてやるッ!」
65: 2021/07/01(木) 19:34:15.381
男「ここか」
女「……」ピンポーン
ガチャッ
彼氏「んだよ。今日は治験の日じゃねえだろ……ゆっくり寝かせろ――」
男「入るぞ」
彼氏「なんだお前!?」
バタンッ! ガチャッ
男「鍵なんかかけても無駄だ。俺の毒手にかかったらな」ガシッ
グジュグジュグジュ…
女「……」ピンポーン
ガチャッ
彼氏「んだよ。今日は治験の日じゃねえだろ……ゆっくり寝かせろ――」
男「入るぞ」
彼氏「なんだお前!?」
バタンッ! ガチャッ
男「鍵なんかかけても無駄だ。俺の毒手にかかったらな」ガシッ
グジュグジュグジュ…
66: 2021/07/01(木) 19:37:29.108
彼氏「人んちに入ってきやがって……! なんだよ、なんなんだよ!?」
男「お前、散々彼女を苦しめてきたそうだな」
男「ド素人の分際で調合した薬やら何やらを飲ませてよ」
彼氏「だからなんだってんだ! こいつは俺の女だ! 俺は薬剤師になるんだ!」
彼氏「自分の女を好きにして何が悪い!」
男「俺が右手なら、お前は脳みそが毒に侵されてんな」
彼氏「んだとォ!」
男「面白いショーを見せてやるよ」サッ
グジュグジュグジュ…
彼氏「わっ、俺のコーヒーカップが!」
男「お前、散々彼女を苦しめてきたそうだな」
男「ド素人の分際で調合した薬やら何やらを飲ませてよ」
彼氏「だからなんだってんだ! こいつは俺の女だ! 俺は薬剤師になるんだ!」
彼氏「自分の女を好きにして何が悪い!」
男「俺が右手なら、お前は脳みそが毒に侵されてんな」
彼氏「んだとォ!」
男「面白いショーを見せてやるよ」サッ
グジュグジュグジュ…
彼氏「わっ、俺のコーヒーカップが!」
67: 2021/07/01(木) 19:40:28.108
男「他のもんもどんどん腐らせてくぞ」
グズグズ… ブスブス… ジュワァァァ… ボロボロッ…
彼氏「ひいい……なんだよ!? お前のその手はなんなんだよ!?」
男「毒手だよ。聞いたことぐらいあんだろ?」ニヤッ
男「これでお前に触ったら……どうなるかな。間違いなく苦しんで氏ぬだろうな」
彼氏「やめてくれええ……!」
男「楽しいな……漫画の毒手使いもきっとこんな気分だったのかな」
彼氏「ひええええ……!」
男「じゃあな」
男(こいつを頃して刑務所に行く。これが俺の毒手の役割――)
グズグズ… ブスブス… ジュワァァァ… ボロボロッ…
彼氏「ひいい……なんだよ!? お前のその手はなんなんだよ!?」
男「毒手だよ。聞いたことぐらいあんだろ?」ニヤッ
男「これでお前に触ったら……どうなるかな。間違いなく苦しんで氏ぬだろうな」
彼氏「やめてくれええ……!」
男「楽しいな……漫画の毒手使いもきっとこんな気分だったのかな」
彼氏「ひええええ……!」
男「じゃあな」
男(こいつを頃して刑務所に行く。これが俺の毒手の役割――)
68: 2021/07/01(木) 19:43:41.820
女「待って!」ガシッ
男「!」
女「お願い……それだけはやめて」
男「なんで止めるんだ……。やっぱりこいつが好きなのか?」
女「そうじゃない。あなたに人頃しになって欲しくないから」
男「!」
女「それに、この人の治験のおかげで、私が毒手に触れるようになったのは紛れもない事実だから……」
女「あなたの毒手に触れるのは私だけだから……それはとても嬉しいことだから……」
男「……」
男「!」
女「お願い……それだけはやめて」
男「なんで止めるんだ……。やっぱりこいつが好きなのか?」
女「そうじゃない。あなたに人頃しになって欲しくないから」
男「!」
女「それに、この人の治験のおかげで、私が毒手に触れるようになったのは紛れもない事実だから……」
女「あなたの毒手に触れるのは私だけだから……それはとても嬉しいことだから……」
男「……」
70: 2021/07/01(木) 19:50:21.971
男「分かったよ」
男「おいお前」クルッ
彼氏「ひいっ!」
男「お前と彼女の関係は今日で終わりだ。消え失せろ。金輪際姿見せるな」
男「もしまた姿を現したり、何かしてきたら――」
男「この右手でお前を……」
彼氏「わ、わかっ……ひっ……」
彼氏「あ、ああああ……」ダダダダダッ
男(一目散に逃げていきやがった。あの様子なら大丈夫だろう)
男「おいお前」クルッ
彼氏「ひいっ!」
男「お前と彼女の関係は今日で終わりだ。消え失せろ。金輪際姿見せるな」
男「もしまた姿を現したり、何かしてきたら――」
男「この右手でお前を……」
彼氏「わ、わかっ……ひっ……」
彼氏「あ、ああああ……」ダダダダダッ
男(一目散に逃げていきやがった。あの様子なら大丈夫だろう)
71: 2021/07/01(木) 19:52:18.207
女「ありがとうございました!」
男「毒手が役に立ったのは初めてかもしれないな」
女「あなたが毒手を作ってくれて、本当によかった」
男「それじゃ行こうか」
女「はい!」
女「あ、せっかくなので手を繋いで……」
男「そうだね」
ギュッ…
男「毒手が役に立ったのは初めてかもしれないな」
女「あなたが毒手を作ってくれて、本当によかった」
男「それじゃ行こうか」
女「はい!」
女「あ、せっかくなので手を繋いで……」
男「そうだね」
ギュッ…
72: 2021/07/01(木) 19:53:07.934
おめでとう
74: 2021/07/01(木) 19:55:25.899
それから――
男「おおっ、この素材、俺の毒手にも耐えられる! やっと見つかった!」
女「ということはこれを右手に巻けば……」
男「俺もまともに生活できる!」
女「やりましたね!」
男「よかったぁ~、いつもいつも毒手を上手く空中に位置させるの疲れるんだよ」
女「特に寝る時は大変でしたからね」
男「おおっ、この素材、俺の毒手にも耐えられる! やっと見つかった!」
女「ということはこれを右手に巻けば……」
男「俺もまともに生活できる!」
女「やりましたね!」
男「よかったぁ~、いつもいつも毒手を上手く空中に位置させるの疲れるんだよ」
女「特に寝る時は大変でしたからね」
77: 2021/07/01(木) 19:58:14.185
中年「え、常に右手にそれを巻くの?」
男「は、はい……」
中年「ま、いいか。人手不足だし。来週から働いてくれ」
男「ありがとうございます!」
中年「夏場なんて大変そうだねえ」
男「ずっと巻いてたら慣れましたから」
男(仕事決まったぁ~……よかったぁ……)
男「は、はい……」
中年「ま、いいか。人手不足だし。来週から働いてくれ」
男「ありがとうございます!」
中年「夏場なんて大変そうだねえ」
男「ずっと巻いてたら慣れましたから」
男(仕事決まったぁ~……よかったぁ……)
78: 2021/07/01(木) 20:01:26.855
……
男「仕事もだいぶ覚えてきたし、今なら君を幸せにする自信がある」
男「結婚しよう」
女「喜んで!」
男「それじゃこれ、安いけど……指輪」
女「ありがとうございます!」
男「つけるのが左手でよかったよ。右じゃすぐダメになっちゃうもん」
女「アハハ、ホントですね」
男「仕事もだいぶ覚えてきたし、今なら君を幸せにする自信がある」
男「結婚しよう」
女「喜んで!」
男「それじゃこれ、安いけど……指輪」
女「ありがとうございます!」
男「つけるのが左手でよかったよ。右じゃすぐダメになっちゃうもん」
女「アハハ、ホントですね」
79: 2021/07/01(木) 20:04:42.400
……
……
男「君に触ってもらってたら、俺の毒手、ちょっと薄くなってきたな」
女「私も……だいぶ体調がよくなってきました。この通り血色もよくなって」
男「毒と薬が中和されてきてるってことか」
女「そうだと思います」
男「このままいけば、いつか二人とも元通りになれるかもね」
女「ええ、いつかきっと……」
……
男「君に触ってもらってたら、俺の毒手、ちょっと薄くなってきたな」
女「私も……だいぶ体調がよくなってきました。この通り血色もよくなって」
男「毒と薬が中和されてきてるってことか」
女「そうだと思います」
男「このままいけば、いつか二人とも元通りになれるかもね」
女「ええ、いつかきっと……」
81: 2021/07/01(木) 20:08:25.227
男(ふと毒手を見る)
男「……」
男(まだ右手は黒いけど、毒手のおかげで俺は彼女と出会い、彼女を救えた――)
男(今は後悔なんかしちゃいない)
男「ありがとよ、俺の毒手」
― 完 ―
男「……」
男(まだ右手は黒いけど、毒手のおかげで俺は彼女と出会い、彼女を救えた――)
男(今は後悔なんかしちゃいない)
男「ありがとよ、俺の毒手」
― 完 ―
82: 2021/07/01(木) 20:09:37.922
乙
85: 2021/07/01(木) 20:16:14.639
乙
ちょっと毒手にしてくる
ちょっと毒手にしてくる
86: 2021/07/01(木) 20:17:07.723
乙です
このスレを見て毒手にしようと思いました
このスレを見て毒手にしようと思いました
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