1: 2012/03/31(土) 00:27:45.91
P「おはよう、スーパーアイドル伊織ちゃん」

伊織「あんたよく飽きないわね…何年も」

P「いおりんの怒った顔も好きだからさ」

伊織「そんな事じゃ怒んないわよ、ばかね…」

P「そんな目で見ないでよ、
 でもその顔も好きだけどね」

伊織「朝から馬鹿なこと言ってないで、早く仕度しなさいよ!」

P「あれ?顔赤いんじゃない??」

伊織「う、うるさいわねぇ!」

いつもこんな感じの朝を過ごしてから俺は仕事へ向かう
六年前伊織はアイドルを引退し、俺と結婚し
同時に俺も765プロをやめ
これまで二人でつつましい結婚生活を送ってきた

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333121265/

2: 2012/03/31(土) 00:28:31.31
伊織「ねぇ」

P「ん?」

伊織「今度行きたいところがあるの」

P「いいよ、どこ?」

伊織「遊園地」

P「うん、じゃあ行こうか今度の休みに」

伊織「うん」

P「あれ?でも絶叫マシーン苦手じゃなかった?」

伊織「そうね、苦手だったわ」

P「じゃあ克服したんだ、いつ?」

伊織「こ、このまえ…」

このあいまいな返事が嘘とわかりつつも嘘に乗ってみることにする

3: 2012/03/31(土) 00:29:05.07
P「よかったな、じゃあジェットコースターに乗ろうか!」

伊織「いいわよ、全然怖くないわよそんなんもの」

明らかな虚勢を張っている
でもどうしていきなり遊園地なんだろう?
結婚する前に一度いった時は
絶叫マシーンにのってキャンキャン泣いていたのに…

そして週末俺と伊織は遊園地に出かけた

P「遊園地につきましたよ」

伊織「じゃあ行きましょうか」

P「そうするか、じゃあしゅぱーつ!」

車を走らせること二時間弱
俺たちは目的地に着いた

P「着いたよ」

伊織「運転お疲れ様、さっそく入りましょ」

P「はいはい」

6: 2012/03/31(土) 00:45:15.42
チケットを二枚買って中に入る

P「なに乗るの?」

伊織「まずはあれに乗りましょ」

伊織が指差した先には絶叫マシーンがあった

P「マジで?あれすごく怖いらしいよ」

伊織「知ってるわよ、だから乗るんじゃない」

すました顔で言うが声が震えている

P「まあ乗ってみるか」

絶叫マシーンの列に並んでいる間も伊織の口数は少なかった

いざ乗ってみるとやはり俺の隣でギャンギャン泣いている
絶叫マシーンを降りると伊織の顔色は真っ青だった

P「大丈夫か…?」

からかうつもりだったが心配になってきた

伊織「ええ…次行きましょ」

また伊織が指差した先には絶叫マシーンがあった

P「マジかよ…」

もう24になる女性が絶叫マシーンで大泣きしている姿は
旦那からみても軽く引くくらいだから周りからみればドン引きだろう

12: 2012/03/31(土) 13:37:43.69
P「やめといた方がいいんじゃないか?」

伊織「大丈夫だって言ってるでしょ…さあ行きましょ」

結局俺たちは列に並ぶことにする

P「なあ、無理してないか?」

伊織「無理なんかしてないわ…」グス

P「とりあえず泣きやめよ…」

伊織「泣いてないわよ!」

キッと睨みつけてくる目は充血して真っ赤になっていた

それから俺たちの順番きて乗ることになる

P「大丈夫か?」

伊織「だから大丈夫って言ってるじゃない…」

絶叫マシーンに乗り終わるとさらにやつれた伊織がいた

ちょうどお昼時になったので休憩がてら昼食をとることにする

P「どうして絶叫マシーンなんか乗ろうと思ったんだ?」

伊織「別に…」

泣きやんではいるがまだ目が真っ赤だ

17: 2012/03/31(土) 19:08:05.64
P「やっぱりまだ苦手じゃないか…なんかあるんだろ?」

伊織「わかったわよ、話せばいいんでしょ…」

P「うん」

伊織「実はね、やよいが今度兄弟で遊園地行くから一緒にどうかって誘われたの」

P「へぇ」

伊織「それでね、一番下のこうぞうですら絶叫マシーンが好きだっていうのよ
   私だけ苦手なんてかっこ悪いじゃない」

P「なんだ、そんなことか…」

伊織「なんだとはなによ!やよいにはかっこ悪いとこ見せられないの!」

P「ははは、前から伊織はやよいにはやさしかったからな」

伊織「やよいには、ってなに?私はみんなにやさしいわよ」

P「そうだっけ?」

伊織「ええ、そうよ」

P「そういやそうか、でこちゃんはやさしいよね」

伊織「あんた喧嘩うってんの?」

ちょっと怒らしてしまったけど俺と伊織は
昼食をとってまた絶叫マシーンに乗るため列に向かう

21: 2012/04/03(火) 23:34:23.04
P「なあ無理しなくてもいいんじゃないか?」

伊織「無理なんかしてないわ」

P「やよいだって別に笑ったりしないだろ」

伊織「やよいがそんなことするわけないじゃない」

P「だろ、じゃあ苦手なものは苦手でいいんじゃないか?」

伊織「でもみんなで乗りたいのに私が苦手じゃ迷惑かけちゃうし…」

P「ですよね…」

伊織「うん」

P「じゃあ俺が乗ってる間、手をつないであげるよ」

伊織「そんなの意味ないわよ、大体あんた当日来ないでしょ」

P「まあいいじゃない、これがきっかけで大丈夫になるかも」

伊織「ま、まああんたがどうしてもっていうなら…」

P「じゃあ決まり!」

そして俺たちの番が来た

伊織「ほら」

P「ああ」

手をつなぐと伊織の手はかすかにふるえていた

P「大丈夫だよ、怖くない」

伊織「………」

黙って手を強く握り返す伊織

少したつとコースターが動き出した

コースターがゆっくりと登っていく
伊織がより強く手を握ってきた

頂上に着いた時伊織の顔を見るとちょっと涙目になっている

P「怖い?」

伊織「ちょっとね」

やがてコースターが落ちてゆく

猛スピードでかけ抜けていきあっという間にゴールへたどりついた

伊織「不思議ね、今回は大丈夫だった」

P「それはよかった」

もう一度乗りましょ伊織がそう言って手をつないだまま歩きだす

正直疲れていたけど
俺の手を握る少し小さな手
俺はこの手とのあったかいつながりを
離したくなかったから黙ってついていくことにした

終わり

23: 2012/04/03(火) 23:40:20.69
乙です

引用元: P「10年後の伊織」伊織「私ももう24ね…」