1: 2012/10/12(金) 02:06:33.49

P「え……」

千早「私には歌しかない、と前までの私は思っていました」

P「う、うん」

千早「でも今は違います。プロデューサーと二人三脚で頑張ってきて、私は変わったんです。
歌うことにしか興味がなかった如月千早はもういない。今の私にとって歌は本質ではない。
もちろん今でも歌うことは私にとって大切なことではあるけれど、それは現在の私を私たらしめるための要素ではないんです。
私にはあなたしかいない。いいえ、あなたさえいればそれで十分なんですよ、プロデューサー」

P「……それで、不法侵入なんかを」

千早「はい。暗い部屋の中でずっとあなたの帰りを待っていました」

P「……」

千早「……ふふ、ふふふ……」

3: 2012/10/12(金) 02:11:52.09

P「……千早」

千早「なんですか? 何がお望みですか?」

P「まず一言いいか?」

千早「なんなりと……ふふ、プロデューサーのためなら私……」

P「正直、驚いたんだ。ドアを開けたら目の前に千早がいてさ」

千早「あなたの喜ぶ顔が見たくて……」

P「ああ、嬉しかったよ。千早の満面の笑みを見ることができるなんて幸せさ」

P「でも……」

千早「……」

P「真っ暗な部屋で待ってたなんてこと、もうするんじゃない」

千早「……。やっぱり、あなたには――」

P「違う。目を悪くするだろう」

千早「!」

4: 2012/10/12(金) 02:15:45.30

P「俺は千早が心配なんだよ……」

千早「……ご、ごめんなさい」

P「いや、反省をしてくれたならいいさ。次からはちゃんと電気を付けていてくれ」

千早「……」

P「さて、それじゃあご飯を食べようか」

千早「あ、あの!」

P「うん?」

千早「……実は、ご飯を作ってきたんです」

P「え? 千早、料理なんて……」

千早「……ふふふ……この日のために、春香と一緒に練習したんです……」

P「……」

千早「初めての手料理は、あなたに食べてほしかったから……」

5: 2012/10/12(金) 02:19:11.76

P「……」カチ

パッ

P「! これは……パスタか」

千早「はい。いきなり凝った料理に挑戦するのは出来ませんでしたから……」

P「いや、それでも嬉しいさ」

千早「……」

P「さっそく食べようか。千早も席についてくれ」

千早「え、ええ……」

6: 2012/10/12(金) 02:23:05.06

P「……」モグモグ

千早「……」ジー

P「そんなに見つめないでくれよ。照れるじゃないか……」

千早「一秒たりとも、一瞬たりともあなたから目を離したくありませんから……」

P「……千早……」

千早「……おいしいですか?」

P「ああ、もちろん! でもこれ、なんだ?」

千早「これとは?」

P「何本か、青っぽい長いモノが混じってるような気がするんだけど」

千早「……ふふ……なんでしょうね? ふふふ……」

P「……まさか、千早の髪の毛だったりしてな!」

千早「……だとしたら、どうしますか? どう思いますか? ふふ……」

P「意外とドジっ子なところあるんだなーって思うよ」

千早「!」

P「そこもまた可愛いじゃないか……」

10: 2012/10/12(金) 02:29:54.11

P「しかし、噛み切れないな……この青いの」

千早「……」

P「もう飲み込んでしまうか……」ゴックン

千早「……プロデューサー」

P「どうした?」

千早「今はまったく関係のない話ですけれど……髪の毛というのは、胃の中で消化されないらしいんです」

P「へ~。今は関係ないけど、そんなこと知らなかったな」

千早「飲み込んだ髪の毛は消化されずに体内に残り、腸壁にこびりついてしまうんですって……ふふ」

P「そうなのか……またひとつ豆知識が増えた。あはは、飲み会の席の話題のネタになるな!」

千早「……もし、今プロデューサーが飲み込んだモノが……本当に私の髪の毛だったら……」

P「え……」

千早「……どう思いますか?」

P「……」

P「一生千早の要素が俺の中に残るなんて、嬉しいって思うよ」

千早「!」

13: 2012/10/12(金) 02:34:25.94

P「あっ、ご、ごめん。こんなこと言ったらセクハラになってしまうな」

千早「……いえ……」

P「悪く思わないでくれよ、別に俺にそういう趣味があるわけじゃなくて……」

千早「……プロデューサーは……」

P「え?」

千早「……怒らないんですか? 引いたりしないんですか?」

P「なんで?」

千早「……勝手に部屋に入ったこと……」

P「だって、ご飯を届けにきてくれたんだろ?」

千早「……」

P「それは千早のまごころじゃないか。それが嬉しくないわけないよ」

千早「!」

P「でももう、あまりビックリはさせないで欲しいけどな! 来るなら来るって事前に言ってくれ」

千早「……わ、わかりました……」

18: 2012/10/12(金) 02:39:08.78

P「ところで、どうやって部屋に入ったんだ?」

千早「……」

ジャラ…

P「あれ? これ、俺の家の鍵?」

千早「合鍵、作ったんです」

P「!?」

千早「ふふ……これでいつでも、一緒にいられますね」

P「ち、千早!!」

千早「……なんですか? 言っておきますが、これを取り上げたって無駄ですよ。もうあと何本か、スペアもありますから」

P「そうじゃない!」

千早「……」

P「いつの間に作ったんだ……?」

千早「……プロデューサーがこの間、事務所のソファで昼寝しているときに……ふふ」

P「……」

20: 2012/10/12(金) 02:44:48.82

P「……千早。さすがにこれは見過ごせない」

千早「……」

P「こんなことをして許されると思っているのか? いい加減にしてくれ……!」

千早「……それなら、どうしますか? この部屋から追い出しますか?
警察に突き出すと? ふふ、それでも無駄ですよ。私は何度だってこの部屋に帰ってきます。
それとも……」

P「……それとも、なんだ?」

千早「もう私には付き合っていられないと言って、私のプロデュースもおしまいにしますか?」

P「そんなことするわけないだろ!!!!」

千早「!」

P「いいか、お前は勘違いをしている。俺が言いたいことはそんなことじゃない」

千早「……」

P「大体、俺が千早を見捨てるわけないだろう。千早はまだまだ、これからどんどん延びていくんだから」

P「俺が言いたいことはだな……金の話だ」

千早「え……」

P「合鍵を何本も作ったら、結構かかっただろう。俺も払うよ、いくらだった?」

24: 2012/10/12(金) 02:50:12.49

千早「えっと……ゴニョゴニョ」

P「ふんふん……なるほど」

千早「……あの……」

P「ちょっと待っててくれ。今財布を……」ガサゴソ

千早「お、お金なんていりません!」

P「そういうわけにはいかないよ。ほら」

スッ

千早「! こんな大金! う、受け取れません! 全額どころかそれ以上……!」

P「これは今日ゴチソウになったご飯代だ」

千早「……ふふ。勘違いしてはダメですよ、プロデューサー。私はお金のためにご飯を作ってきたわけじゃ」

P「わかってるよ」

千早「なら……」

P「だからな、これは材料費に当ててくれ。それでもまだ余るって言うなら……」

千早「……」

P「その、出来ればでいいんだけど……明日も頼む」

31: 2012/10/12(金) 02:59:12.45

P「あ、えっと……無理なら、そう言ってくれていいんだけど」

千早「……プロデューサーの考えてることが、わかりません」

P「え?」

千早「私はあなたのことならなんでも知っているつもりでした。
いつもいつもいつだって……あなたのことだけを見てきたから。それでも今はわかりません。
普通、怒ったりするものなんじゃないですか? どうしてこんなことを言ってくれるんですか?」

P「あはは、怒ったりするわけないだろ!」

千早「……」

P「千早はさ、俺が普段面倒くさがってまともな食事を取らないって言ったのを、覚えててくれたんだよな?」

千早「……え、ええ……それもありますけど……」

P「嬉しかったんだよ。誰かの手料理を食べたのなんて、随分久しぶりだった……」

千早「……あまり、上手には出来なかったと思うけれど」

P「……確かに、なんか噛み切れない謎の青いのも混入してたしな」

P「でもそんなこと関係ない。これからもっと上達していけばいいさ」

千早「!」

P「あ、いや……こんなことを言ったら、毎日作りに来てくれって言ってるみたいだな。あはは……」

34: 2012/10/12(金) 03:10:15.16

千早「……」グッ

P「……千早? どうしたんだ、万札を握り締めて」

千早「このお金、大事にします。一生……」

P「いやあ、金はそこまで大事にするものでもないぞ。使ってこそ価値を発揮するんだから」

千早「それでも……あなたがくれた、プレゼントだから……」

P「プレゼントって……そういうつもりじゃなかったんだけどな」

千早「……ふふ、ふふふ……神棚に飾っておくわ……」

P「……千早はさ。そういうのを大事にしてくれる子だったんだな」

千早「もちろんです。あなたからもらったものは私、なんでも大切に取ってあるんですよ?
アクセサリーもステージ衣装も、実は家に持ち帰っているんです。
他にも、あなたのハンカチ、あなたのティッシュ、あなたの消しゴム、あなたのボールペン……」

P「え!? 無くなったと思ったら、千早が持ってたのか!?」

千早「……ふふふ……」

P「千早!!」

千早「……なんですか?」

P「今度という今度は、一言言わせてくれ……人のモノを勝手に取るなんて、どうかしてるぞ……!」

35: 2012/10/12(金) 03:15:49.29

千早「……やっぱり、あなたも――」

P「消しゴムやティッシュ、ボールペンなんかはいい。きっとそのときの千早に必要なものだったんだろう」

千早「……」

P「まぁ、結構無くしがちなものだしな。でも……ハンカチだけは勘弁してくれ」

千早「ハンカチ……?」

P「ああ。実はあのハンカチ……俺が去年、自分へのご褒美に買った、結構高いものなんだ」

千早「!」

P「いや、値段の問題じゃない。手触りもかなり気に入っていたし、何より思い出が詰まってる」

P「だからさ、ハンカチだけは返してくれないかな……」

千早「……そういわれると、ますます返したくなくなってきました……ふふ」

P「ええ!? 参ったな……」

37: 2012/10/12(金) 03:20:34.52

千早「あなたの思い出が詰まったハンカチは、もう何度も使っていますし……」

P「イジワルが過ぎるぞ……ちゃんと洗ってるのか?」

千早「そんなもったいないことしません」

P「とはいえ、洗わないのは衛生的に問題がある。どうしてもあのハンカチが気に入ったって言うなら、同じものをプレゼントするからさ」

千早「!」

P「それで勘弁してくれないか?」

千早「……同じハンカチはいりません。どうしても返して欲しいなら、別のモノをください」

P「何か欲しいものでもあるのか?」

千早「……指輪」

P「え? 指輪?」

千早「……プラチナの指輪がいいです。そして私とあなただけの思い出を……」

P「きゅ、給料足りるかな……」

38: 2012/10/12(金) 03:26:30.79

P「……まあ、わかった」

千早「え!?」

P「あまり高いものは買えないだろうけど……うん、今度買いにいこうか」

千早「……」

P「よく考えたら、今までずっと頑張ってきた千早に、俺はろくにご褒美もあげてなかったしな」

P「千早も年頃の女の子だ。ギャランティとは別に、きっとそういうのが欲しかったんだろう……」

千早「あ、あの……」

P「ん?」

千早「……嬉しいです」

P「あはは、千早が嬉しいなら、俺も嬉しいよ」

千早「ふふ、ふふふ……約束、忘れません。もし破ったら、あなたの髪の毛で指輪を編んで一生つけます……」

P「そんなの、カッコ悪いだろ……真っ黒な指輪なんて」

千早「もしそれがダメなら、あなたの皮でも……ふふ、ふふふ……」

P「猟奇的だなぁ……千早がこんな冗談を言う子だったなんて」

42: 2012/10/12(金) 03:34:22.77

P「ところで……」

千早「なんですか? ふふふ……」

P「さっきから俺ばっかり食べてるけど、千早も食べてくれよ」

千早「……私は、あなたの食べてる姿を見るだけで満足ですから」

P「そういうわけにもいかないだろ。ほらほら、あーん」

千早「!?」

P「あ、っと……ごめん。こんなこと、子どもにやるみたいだな」

千早「い、いえ……」

P「待っててくれ、今フォークを持ってくるから」スクッ

千早「……待ってください」

P「どうした?」

千早「あなたの使ったフォークで食べたいです……」

P「えっ、でも……自分からあーんとか言っておいてあれだけど、汚いだろ」

千早「あなたの唾液がついたフォークが汚いわけありませんから」

P「千早ってそういうの気にするタイプかと思ってたんだけどな……」

44: 2012/10/12(金) 03:36:50.30

P「じゃあ……ほら、フォーク」

千早「……」

P「あれ? 受け取ってくれよ、食べないのか?」

千早「……あの……えっと、その……」

P「ん? どうしたどうした」

千早「だから、さっきみた……――!」

ぐ~

P「……」

千早「……」カァァ

P「……さっき?」

千早「……」

千早「さっきみたいに、あーんって、してください……」

45: 2012/10/12(金) 03:41:47.82

P「……子どもだってバカにされてると思わないか?」

千早「……」アーン

P「いやあ……こうやって改めて待機されると、なんだか恥ずかしいものがあるな」

千早「……」アーン

P「わ、わかったわかった! そんな目で見ないでくれ」

P「はい、あーん……」

千早「」パクッ


モグモグ ジュルジュルジュルル……


P「あはは、そんなにフォークにしゃぶりつくなんて、みっともないぞ」

千早「」ジュボボボボボ

P「千早って案外、子どもっぽいところもあるんだな……」

千早「……モグモグ……ひ、引きませんか……」

P「また新たな一面が見れて嬉しいって思うよ」

千早「!」

48: 2012/10/12(金) 03:46:39.06

P「ふぅ……ごちそうさま。美味しかったよ、ありがとな」

千早「ふふ……私も、とっても美味しかったです……」

P「あはは、それは自画自賛だぞ!」

千早「特に……フォークが。ふふふ……」

P「フォークに味なんてないだろうに。変わった子だなぁ」

千早「……プロデューサー」

P「ん?」

千早「お風呂、沸いています。入ってください」

P「おお、そうか! いやあ、気が利くじゃないか」

千早「……熱めにしておきました。私の気持ちにも負けないくらい、グッツグツに……」

P「それはいいな! 最近寒くなってきたし、さっそく入らせてもらうよ」

50: 2012/10/12(金) 03:53:48.23

カポーン

P「ふぅ……」

P「千早がこんなに世話焼きさんだとは知らなかったな……」

P「最初見たときはビックリしたけど、きっとあの子は良い嫁さんになるぞ」


P「しかも、ちゃんと風呂掃除もしてくれてる……」

P「帰ってきたときは全部の部屋が真っ暗だったから、風呂を沸かしたあとに電気を消してスタンバイしてたんだろう」

P「ご飯もちゃんとあたためられていたし、レンジも使ったんだろうな……」

P「機械オンチな千早が頑張ってる姿を想像すると……うん、いいなぁこういうの」

P「すべては、俺をビックリさせるために……可愛いところもあるじゃないか」

P「さて……」ザバッ

ガララッ

千早「プロデューサー」

P「!? ち、千早!?」

千早「お背中、流ししますね……ふふふ」

52: 2012/10/12(金) 03:58:34.09

P「ちょ、ちょっと待ってくれ」ザバッ

千早「どうしたんですか? また湯船に潜っちゃって……」

P「いやだって、俺の股間のエンジェルちゃんを見られるわけには」

千早「……見たこと、ありますよ」

P「ええ!?」

千早「あなたが事務所のソファで昼寝しているときに……ふふ」

P「参ったな……俺としたことが、寝ぼけてたのか……」

千早「……」

P「と、とにかく! 出ていってくれ、年頃の女の子と一緒に風呂なんて……」

千早「私は、気にしませんから」

P「俺が気にするんだ! どうしてもって言うなら、その……タオルか何か巻いてくれよ」

千早「ありのままの私を見てください」

P「やめてくれ!! お、俺だって男だぞ、そんなことしたら……」

千早「そんなことしたら?」

P「ど、ドキドキしてしまうじゃないか……」ドキドキ

54: 2012/10/12(金) 04:04:27.10

千早「……」ザバッ

P「!?」

千早「ふふ……」

P「ち、千早……あのさ、もしかして……」

千早「なんですか?」

P「……湯船に入った?」

千早「ええ。こっちを見てください、プロデューサー」

P「そんなわけにはいかないだろ! み、見えてしまうじゃないか……」

P「というかもう、背中に何かほのかに当たってる気が……かすかな感蝕だから気のせいかもしれないけど」

千早「……見てもいいんですよ」

P「でも……!」

千早「……ドキドキするって言いましたよね。それって、興奮するってことですか?」

P「当たり前だろう! 千早はこんなに可愛いんだから!」

千早「!」

P「あ、いや……すまん、なんでもない……」

56: 2012/10/12(金) 04:11:09.00

千早「……私なんかの貧相な体で、興奮するんですか?」

P「ひ、貧相とかそういう風に言うなよ……」

千早「……」

P「……他でもない、千早の体だから、興奮するんだ」

千早「!」

P「だからさ、その……」

千早「……私のこと、かわいいって……」

P「……うん。そう思ってるよ」

千早「!!」

P「何を考えているかわからないけど……いや、千早のことだから親切でやってるんだろうけど、こんなことしないでくれ」

P「何度も言うように、俺だって男だ。千早に、その……いやがることをしてしまうかもしれないだろ」

千早「……あなたにされていやなことはありません」

P「俺がいやなんだよ……千早の悲しい顔を見たくない」

千早「悲しくなんて……ならないですから」

P「……」

57: 2012/10/12(金) 04:16:25.83

P「千早……今度こそ、言わせてもらう」

千早「……なんですか?」

P「あまり自分を安売りするんじゃない」

千早「安売りなんて……」

P「千早は女の子だ。そういうことは……いつか、大切な人が出来たらするものなんだよ」

千早「私にとってプロデューサーは、大切な、かけがえの無い人です」

P「もちろん俺だってそうだ。でもな、きっとそれは、今俺が言った『大切』っていうのとは、少し違うんだよ」

千早「……」

P「……もう俺、上がるな」

ザバァ

千早「あ……待ってください、プロデューサー!」

P「いや、待たない」

千早「どうして……!」

P「千早を大切にしたいからだよ」

千早「!」

58: 2012/10/12(金) 04:20:09.37

千早「……プロデューサー……」

P「……」ガララ





フキフキ

P「……なんて、言ってみたはいいものの……ちょっと、カッコつけすぎただろうか」

P「いやしかし、あのときチラっと見えた千早の体……」

P「……」ゴクリ

P「綺麗だったな……いかんいかん、また血のめぐりが良くなってしまう」

P「プロデューサーとして、アイドルとそういう関係になるわけにはいかないからな……」

59: 2012/10/12(金) 04:24:50.46

ガララ

千早「……」

P「おお、上がったか……って、おい!」

千早「なんですか?」

P「ふ、服を着てくれ! 目のやり場に困るだろう」

千早「私は家ではいつもこうですから」

P「そうなのか……知らなかったな」

千早「……でも、プロデューサーがそういうなら」

P「あ、ああ……」

千早「……」

シュルシュル


P「千早……」

P「やっぱり、言えばわかってくれる子なんだな……」

60: 2012/10/12(金) 04:28:04.09

千早「服を着ました」

P「あれ? それ俺のワイシャツ……」

千早「……ふふふ……」

P「よく在り処がわかったな」

千早「あなたが帰ってくる前に物色してましたから……」

P「そっか……まぁ、汗をかいた服をもう一回着るのもいやだろうしな」

千早「もらっていきますね」

P「安売りのシャツだぞ?」

千早「関係ありません。さっきも言ったように、プロデューサーのものは私のものなんです」

P「あはは、とんだジャイアニズムだ!」

61: 2012/10/12(金) 04:30:41.77

P「送っていくよ。もうこんな時間だし」

千早「何を言っているんですか? 泊まっていきます」

P「いやでも、もう親御さんも心配し……」

千早「……」

P「……ごめん、本当に悪かった」

千早「いえ……」

P「とにかく、女の子を泊めるわけには……」

千早「……」ギュッ

P「……千早?」

千早「離れたくないんです」

P「まったく……甘えん坊さんだな……」

63: 2012/10/12(金) 04:34:47.26

P「しかたないな……今日だけだぞ」

千早「!」

P「俺はソファで寝るから、寝室のベッドは千早が自由に使ってくれ」

千早「……」

P「それじゃ、おやすみ……」

モゾモゾ

千早「お邪魔します」

P「な、なんでソファに」

千早「あなたがいるからですよ」

P「……千早……」

千早「……」ギュー

P「……ひとりでは寝れないタイプなのか? もしかして、いつもは抱き枕とか使ってたりして」

千早「……は、はい……」

P「そうか……それならしかたないな」

65: 2012/10/12(金) 04:38:38.40

P「そうと決まったら、ベッドに行こうか」

千早「!」

P「こんなところで寝たら疲れも取れないだろうしな」

千早「……」ギュー

P「おいおい、立ってくれよ」

千早「抱きながら連れてってください」

P「ええ!? もうおねむなのか?」

千早「そのとおりです……」

P「しかたないな……」

ヒョイ

千早「! お、お姫様だっこ……」

P「軽いな……もっとちゃんとしたもの食べろよ」

千早「……プロデューサーがそういうなら、意識します……」

66: 2012/10/12(金) 04:41:18.01

P「さて……着きましたよ、お姫様」

千早「……」

ポフン

千早「……」

P「あはは、まるで借りてきた猫みたいだ」

千早「……」

P「ふわ~あ……それじゃ、おやすみ……」

パチン

千早「……」

P「……千早」

千早「なんですか?」

P「足を絡ませないでくれ……」

67: 2012/10/12(金) 04:46:16.31

千早「こうしないと、落ち着かないんです」

P「そっか……」

千早「……プロデューサー、聞いてください」

P「ん……?」

千早「今日は、驚くことがたくさんありました」

P「俺もだよ。帰ってきてドアを開けたら、10センチくらいの距離に満面の笑みの千早がいたからな……」

千早「いやじゃなかったですか?」

P「いやなわけないだろう。さっきも言ったようにさ、千早の気遣いが嬉しかったんだ」

千早「……あの、プロデューサー」

P「今度はどうした?」

千早「私、本当はもっと……凄いことを、しようとしてたんです」

P「凄いこと?」

千早「……それは……」

70: 2012/10/12(金) 04:58:54.12

千早「あなたの衣類や日常品をもっとたくさん盗ったり、
いやがるあなたを拘束して無理矢理抱きついたり……
あっ、もちろん縛るものだって用意しました、これです。春香のリボン……
これであなたを椅子の上に縛って、ひたすら耳元で蒼い鳥を歌ってやろうかと思っていたんです。
他にも、いつも萩原さんが事務所でやっているように、あなたの湯のみに私のを入れてお茶を淹れたり、
律子から借りた護身用スタンガン(改造済)で動けなくしたあなたの下の世話をしたり、
あなたの体を生クリームで塗りたくってケーキを作ったり、
あとは……」

P「ち、千早!」

千早「なんですか?」

P「色々言いたいことはあるが……少し過激すぎないか?」

千早「……」

P「ちょっとしたイタズラとはいえ、さすがの俺もいきなりそんなことをされたら少々驚いてしまうぞ」

千早「……でも、結局私は、それらをしませんでした」

P「話を聞いてくれ……」

73: 2012/10/12(金) 05:05:20.61

千早「私がそれをしなかった理由……なぜだか、わかりますか?」

P「……いや、すまん……わからないよ」

千早「……あなたが、いやがらなかったからです」

P「……」

千早「私が企てていた計画は、そのほとんどが、あなたがいやがることを想定していたものです」

P「うん……そうみたいだな」

千早「でも、プロデューサーは私を受け入れてくれました」

P「受け入れるっていうか……そこまで意識したつもりもなかったんだけど」

千早「だから私は……どうしたらいいか、わからなくなってしまったんです」

P「……なあ、千早」

千早「はい……」

P「どうして、そんなことを考えたんだ? いつもの千早らしくないじゃないか」

千早「……」

P「悩みがあるなら言ってくれ。俺はさ、少しでもお前の力になりたいんだ」

75: 2012/10/12(金) 05:08:33.11

千早「それは……」

P「……」



千早「あなたのことを、愛しているから」

P「!」



千早「この気持ちを、抑えられなかったから……」

千早「プロデューサーのモノ、だけじゃない。プロデューサー自身も、私のモノにしたかったんです」

P「……ち、千早……!」ジーン

76: 2012/10/12(金) 05:14:40.37

P「……グスッ……」

千早「……どうして、泣いているんですか……?」

P「そ、そんなの、決まっているだろう!」

千早「……」

P「……千早にそう言ってもらえて、嬉しかったからさ……!」

千早「!?」

P「千早にこんなにも想ってもらえて、嬉しくない男がこの世にいるもんか……!」

千早「……ぷ、プロデューサー……」

P「はは、ははは……なあ、今更だけど、ほ、本気で言ってるのか? それってヤバイ意味じゃないだろうな?」

千早「本気も本気です。この気持ちは決してヤバくなんてありません」

P「そうか……そ、そうだよな。千早は冗談なんて言えない子だ……」

千早「……本気で、あなたのことを愛しています。プロデューサーは……どうですか?」

P「……俺は……」

78: 2012/10/12(金) 05:19:53.22


P「俺だって、千早のことは愛してる」

千早「!!!!」


P「いつからだろうな……」

P「気が付いたら、千早のプロデュースをしていくうちに、俺は千早のことを特別な目線で見るようになっていたんだ」

千早「……ほ、本当ですか……?」

P「ああ。だから今日、甲斐甲斐しく世話をしてくれて……俺はその場を誤魔化すためでもなんでもなく」

P「嬉しかったんだ……ただ純粋に、千早が俺のために何かしてくれるっていうことが、嬉しくてしかたなかった」

千早「……ふふ、ふふふ……!」

P「……なあ、千早」

千早「な、なんですか……グスッ……」


P「結婚しようか」

千早「!!!?」

79: 2012/10/12(金) 05:23:19.52

P「あ、いやすまん! ちょっと飛ばしすぎた……今のは違くて、そのな」

千早「え、ええ……」

P「……今すぐっていうのは難しい。今千早は、一番良い時だからさ」

千早「……」

P「でも……これから何年も先の話だけど、いつか千早が、引退する頃になったら……」

P「その時になったら、俺の嫁になってくれ」

千早「!!!」

P「……それまで、待ってもらえるか?」

千早「……」


千早「待てません……」

80: 2012/10/12(金) 05:28:33.30

千早「ふふ、ふふふ……」

P「千早……?」

千早「私とあなたで、この想いが同じなら……もう遠慮はいりませんよね……」

P「あ、ああ。そういうことに、なる……のかな?」

千早「それじゃあ……」


シュルシュル


P「どうしたんだい、春香のリボンを持ち出して」

千早「結婚はたしかに今すぐは出来ないでしょう」

P「話を聞いてくれないか……」

千早「私だって聞き分けのない子どもじゃありません。だから結婚については待てます。でも……」

P「でも……?」

千早「……あなたが私のモノになる、ということに……プロデューサーは反対しないんですよね?」

P「……当たり前だろ。俺は千早のことを愛しているんだから」

千早「ふふっ、ふふふふふふふふふふ!」

82: 2012/10/12(金) 05:33:10.26

P「千早、その……め、目がこわい……」

千早「今までずっと我慢してきました」

P「え……」

千早「言ったでしょう? 私にはあなたしかいませんから、って」

P「……うん。あ、いや、でもな? 想いが通じたからと言って俺がお前に手を出すわけには――」


ぶっちゅーうっうー


P「――!?」

千早「……ぷは……もう、そんなことは、聞きません……」

P「え、あの、その……」

千早「あなたは私のモノ」

P「……」

千早「そうですよね?」

P「……」

P「はい……そのとおりです……へ、へへ……」

85: 2012/10/12(金) 05:37:57.14

三日後……


P「……あ、おーい千早」

千早「どうしたんですか? あ・な・た」

P「じ、事務所でそういう呼び方はやめてくれよ……照れるだろ」

千早「……ふふ……」

P「ごほん! それより春香のリボンさ、もういい加減に返してやらないと」

千早「……確かに、随分汚れてしまいましたからね」

P「次は響のとかにしておいてやろう」

千早「そうですね」

86: 2012/10/12(金) 05:45:29.70

雪歩「あの……プロデューサー……」

P「雪歩か。どうしたんだ?」

雪歩「えへへ……お、お茶を淹れたんですけど……いかがですか?」

P「おお、ありがとう! それじゃあ遠慮なく……」

千早「待って、萩原さん」

雪歩「え……?」

千早「……」スッ

ゴクゴク

雪歩「ど、どうして千早ちゃんが飲んじゃうの!?」

千早「……プロデューサー。このお茶は出来損ないです、飲めません」

P「な、なんで?」

千早「赤いですから」

P「そっか……赤いのは確かに不自然だな」

千早「三分待っていてください、私が本当のお茶をあなたに出してみせますよ」

雪歩「ひぃ~ん! 千早ちゃん、最近イジワルですぅ!」

87: 2012/10/12(金) 05:51:15.11

小鳥「ふふっ。千早ちゃんとプロデューサーさん、最近仲良しですね?」

P「音無さん。あはは、そう見えますか?」

千早「……ふふ……」

小鳥「何かあったんですか? ふたりの関係を変えるようなナニか……うふふ」

P「とは言っても……なあ、千早?」

千早「ええ。特別なことは、ナニもありませんでしたよ。今となってはアレも、すべてが日常です」

小鳥「でも、それにしては……」

P「俺達は、ただ、このことに気付いただけなんです」

小鳥「このこと?」

千早「そうです。それは……」

88: 2012/10/12(金) 05:55:40.51


千早「私には、この人しかいない」
P「俺には、千早しかいない」


千早「ということに、です。ふふふ……♪」

小鳥「……?」

P「音無さんもきっと、いつか気付けますよ」

千早「そうですね」

小鳥「な、なんですかもう、ふたりして! 年上のお姉さんをバカにしてっ」


アハハ……
     アハハハハ……


P(――こんな風に、俺達の日常は続いていく)

P(そう、何も変わらない。俺と千早はこれからも……)

P(ふたりで手を取り合いながら、二人三脚で一歩ずつ一歩ずつ……ゆっくりと歩いていくんだ)

P(ずっとずっと、一緒に頑張ろうな……千早……!)

終わり

89: 2012/10/12(金) 05:56:56.44
乙で御座います

92: 2012/10/12(金) 06:00:02.44
おわりです。読んでくれた方ありがとう
もっと病ませたかったけど難しかった

引用元: 千早「私にはあなたしかいませんから」