1: 2012/04/12(木) 23:13:25.15
ほむら「ここ最近、なんだか不調続きね。時間もなかなか停められないし……」

ほむら「ソウルジェムに穢れは見られないけど、何がいけないのかしら」

ほむら「……まあ、風邪みたいなものでしょ。そのうち治るわよね」

ほむら「調子が悪いから、今度の時間軸はちょっと遊んじゃいましょうか」

ほむら「息抜きでも挟まなきゃやってらんないわ」

ほむら「まどかー♪」


2: 2012/04/12(木) 23:16:57.01
―教室―

和子「今日はみなさんに転校生を紹介します」


さやか「転校生だって。どんな子かなー」

まどか「女の子だったら、友達になれるといいね」


和子「じゃあ自己紹介いってみよう! ほらほら入ってらっしゃい」

ほむら「……」テクテク


まどか「わぁ、美人……」

さやか「うわぁ。転校生、歩きながらまどかのことめっちゃ見つめてる……」

3: 2012/04/12(木) 23:18:59.90
ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」


さやか「まどかずっとガン飛ばされてるけど、知り合い?」

まどか「ううん、知らないよ。全然」


ほむら(まどか……今回はいっぱい仲良くしましょうね)

4: 2012/04/12(木) 23:23:12.24
―休み時間―

ほむら「鹿目まどかさん。まどかって呼んでもいいかしら」

まどか「ふぇっ!? い、いいよ……えへへ。嬉しいな」

さやか「こぉら転校生、あたしの嫁にいきなり熱烈アプローチかーっ」

仁美「!」

ほむら「私のことはほむらって呼んでくれていいから」

まどか「ほむらちゃん……かっこいい名前だねっ」

さやか「聞こえてる? おーい」

仁美「まどかさんと暁美さん、出会って早々怪しい雰囲気ですわ……」

5: 2012/04/12(木) 23:25:53.18
―放課後―

さやか「転校生のやつ、てっきり一緒に帰ろうとか言い出すかと思ってたけど」

まどか「先に帰っちゃったね。用事でもあったのかな?」

仁美「残念ですわ。もっとお話をお聞きしたかったですのに」


―物陰―

ほむら(久々の下校デートはちょっと照れる……)

7: 2012/04/12(木) 23:28:45.00
まどか「なんか視線を感じる……」

さやか「あたしは何も感じないよ。ひょっとしてまどかにもついにストーカーが!?」

まどか「それはないよー。でもなんか、参観日の日にパパに後ろから見られてるみたい」

仁美「よく分かりませんが、視線の主に害意は無いとみていいですわね」

さやか「ていうか視線を肌で感じ取るなんて、まどかって実は裏社会の住人なんじゃないの~?」

まどか「違うよーっ」


ほむら(でも隠れてるだけじゃ、まどかと仲良しこよしになんてなれないわ)

ほむら(ここは思い切って……!)

8: 2012/04/12(木) 23:33:25.55
ほむら(さりげなく、偶然通りかかった風に……)

まどか「あ、ほむらちゃん!」

ほむら「まどか。奇遇ね」

さやか「いや、奇遇も何もあんた、今すごく不自然に通りかかったような……」

仁美「さやかさん。しー、ですわよ」

さやか「えっ、おしっこ?」

仁美「そのしーじゃありませんわっ!」

9: 2012/04/12(木) 23:37:38.35
まどか「あははっ」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「えっと……」

ほむら(ここは何を話せば? 話題が……)

まどか「ねっ、せっかくだしみんなで寄り道しない? 喫茶店とかさ」

ほむら「!」

さやか「賛成ーっ」

仁美「いいですわね。行きましょう」

まどか「てぃひひ。ほむらちゃん、行こ?」

ほむら「……うん。行きましょう」

ほむら(やった!)

11: 2012/04/12(木) 23:46:22.08
まどか「ほむらちゃんってクールな子かと思ったけど、意外と普通の女の子なんだね」

ほむら「そうかしら?」

まどか「そうだよー」

ほむら「私は……まどかのこと、最初からずっと、可愛くて優しい子だと思ってたわ」

まどか「えっ、あう、なんだか恥ずかしいな」

ほむら(言ってしまったわ。さりげなく口説いてしまった)

まどか「ほむらちゃんだってとっても可愛いよ! しかもかっこいいし」

ほむら(口説かれてしまったわ……)

さやか「ラブラブだね~」

12: 2012/04/12(木) 23:48:56.67
仁美「ところで暁美さんは、いつからまどかさんのことをご存じでらしたんですの?」

ほむら「え?」

さやか「そういや転校早々まどかに目をつけてたし、なんか不自然だよね」

まどか「私もほむらちゃんも、今日が初対面だったよね。どうして私の名前知ってたの?」

ほむら「それは……秘密」

さやか「あっ、ずるい!」

ほむら「女の子には秘密がいっぱいなの」

仁美「ふふふ、面白い方ですわね」

まどか「うーん……?」

13: 2012/04/12(木) 23:51:30.81
―夜―

まどか「遅くなっちゃったね」

さやか「やっば、もうこんな時間じゃん! 帰ったら怒られるかも……」

ほむら「まどか。今日はとても楽しかったわ」

まどか「うん、私も! てぃひひ」

さやか「そんじゃーあたし急いで帰るわ。ばいばーい!」

まどか「うん。また明日!」

ほむら「また明日」

ほむら(明日が待ち遠しい……)


ほむら「……ああもう、せっかくの楽しい気分が台無しよ」

QB「やあ。それは僕のせいだとでも言いたいのかい?」ヒョコッ

14: 2012/04/12(木) 23:54:49.82
QB「君が魔法少女なのは分かる。だけど僕には君と契約した覚えが無いんだ」

QB「君は一体何者だい?」

ほむら「鹿目まどかには近づかないで。ついでに、美樹さやかにも」

QB「彼女たちの素質についても、お見通しってわけかい」

ほむら「近づいたらただでは済まさない。いいわね」

QB「まあいいさ。要は君の目の届かないところで動けばいいだけの話」

バンッ バンッ

ほむら「させない」

15: 2012/04/12(木) 23:57:42.01
QB「酷いことするなぁ君は。銃でいきなりかい?」ヒョコッ

ほむら「まどかに少しでも近づいてごらんなさい。何度だって頃してやるわ」

QB「分かったよ。鹿目まどかには近づかない。これでいいだろう」

ほむら「ついでに、私の前にも現れないで。目障りだから」スタスタ

QB「やれやれ……」

16: 2012/04/12(木) 23:59:04.75
QB「暁美ほむらか。きっと君はあらゆる真実を知っているんだろうね。そんな気がするよ」

QB「でもその様子じゃ、あのことについてはまだ欠片も感知しちゃいないだろう」

QB「訊かれてないから、僕から君に話すことはないけどさ」

QB「ま、時間がいつまでもあるとは思わないことだね」

21: 2012/04/14(土) 00:17:02.14
ほむら(まどかがキュゥべえに騙されてしまわないよう、しっかり見張っていなければ)

―鹿目宅付近―

ほむら(ストーカー? そんなの関係無いわ。キュゥべえがまどかを狙っているんだもの)

ほむら(仕方のないことなのよ)

ほむら(仕方ないのよ!!)


まどか「あ~、今日は楽しかったなぁ」

まどか「新しい友達できたし。とっても仲良くなったし」

まどか「~♪」

22: 2012/04/14(土) 00:20:19.78
ほむら「まどか……」


まどか「ん……また視線を感じる」

まどか「参観日の日のパパみたいな、なんとなくそわそわさせられる視線」

まどか「変なの」


ほむら「うちのまどかはとっても可愛い」

23: 2012/04/14(土) 00:27:26.98
―翌朝―

詢子「まどか、昨夜は帰りが遅かったんだって?」ゴシゴシ

まどか「転校生の子と仲良くなって、一緒に寄り道してたら遅くなっちゃった」ゴシゴシ

詢子「あんまうるさいこと言うつもりないけどさ、遅くなるなら一報入れなよ」ゴシゴシ

まどか「うん……ごめんね」ゴシゴシ


ほむら「私も歯を磨かないとね」

ほむら「でも家になんて戻ってたら、キュゥべえに隙を与えてしまう……」


―鹿目家洗面所―

ほむら「し、仕方ないのよ」

ほむら「ここはまどかの歯ブラシでも借りないと、歯磨きできないんだもの……」

ほむら「仕方ないのよ!!」

24: 2012/04/14(土) 00:30:04.65
―通学路―

まどか「おはよ」

さやか「おっはよーう!」

仁美「おはようございます。昨日はあの後、どうでした?」

まどか「そういえば仁美ちゃんは途中で帰っちゃったんだっけ。お稽古があるって」

さやか「それが聞いてよ。ほむらのまどかラブっぷりが強烈でさー」

仁美「まあ、そうなんですの」


ほむら(そろそろ偶然を装って声をかけに行くべきかしら)

ほむら(その前に軽く身だしなみを整えて……あ、お風呂入ってない)

ほむら(なんてね。魔法を使えば体や服くらい簡単に清められるわ)

ほむら(……歯磨きの件は、その、別よ。歯は魔法じゃ綺麗にならないの。本当よ)

25: 2012/04/14(土) 00:34:30.48
ほむら「まどか!」

さやか「うわっ、木の陰から不自然に出てきた!」

仁美「見て見ぬふりですわさやかさん」

ほむら「まどか、おはよう」

まどか「えへへ。おはよっ」

さやか「朝っぱらからいい雰囲気だねぇ」

26: 2012/04/14(土) 00:39:20.38
さやか「でもまどかはあたしの嫁だから! そこんとこ忘れんなよっ」

仁美「まあ、お二人はそんなご関係でしたの!?」

さやか「え?」

仁美「存じ上げませんでしたわ……」

さやか「いや、ただの冗だ」

仁美「い、いいいいけませんわっ! だってそれは……禁断の、恋の形ですのよ~!」

さやか「だから違うって! てか待って仁美、バッグ忘れてるよー!」

27: 2012/04/14(土) 00:42:53.24
まどか「あー、二人とも行っちゃったね」

ほむら「行ってしまったわね」

まどか「禁断の恋だって。そんなんじゃないのにね」

ほむら「ええ」

ほむら(そう。私たちにはまだ、これ以上発展した関係は早過ぎる)

ほむら(そこから先は、ワルプルギスを撃退してからの話だもの……なんちゃって)

28: 2012/04/14(土) 00:47:28.69
ほむら「……っ!」

まどか「ほむらちゃん? どうかしたの」

ほむら「いえ、何も……」

ほむら(ソウルジェムが微妙に反応してる……少し遠いところに結界が出現した)

ほむら(これまでの時間軸では、この日のこの時間に魔女が出ることなんてなかったのに)

ほむら(……キュゥべえの仕業ね)

ほむら(薄々感づいてはいたけれど、孵化寸前のグリーフシードをばら撒いているのはやはりあいつか)

ほむら(だとすれば、奴の狙いはまどかから私を引き離すこと……)

ほむら「さ、私たちも早く行きましょう。遅刻してしまうわ」

まどか「うんっ」

ほむら(この街には巴マミが居る。私が行く必要は無い)

ほむら(その手には乗らないわ)

29: 2012/04/14(土) 00:53:51.93
―マンション屋上―

マミ「くっ、はぁ……」


魔女「――――」


マミ「なかなか、手強いんじゃない?」

QB「やめるんだマミ。もう逃げたほうがいい」

マミ「そんなことできるわけないでしょ」

マミ「今こいつをやっつけておかなきゃ、ここでは犠牲になる人が多過ぎる」

マミ「それにしても、魔法少女の住んでるマンションに現れるなんて」


魔女「クキキッ――」


マミ「あなたもついてないのね? 覚悟なさい」

QB「……」

30: 2012/04/14(土) 00:57:19.72
―教室―

ほむら(遠くだから僅かな反応しか示さないけど、ソウルジェムは未だに結界を感知している)

ほむら(巴マミ、少し手こずってるみたいね)

ほむら(……)

ほむら(まあどうせ、授業中はまどかもキュゥべえの相手なんてまともにしないだろうし)

ほむら(今なら加勢に行ってあげても問題ないわね)

ほむら「先生すみません、お手洗いに行かせてください」

31: 2012/04/14(土) 01:01:59.97
マミ「ティロ・フィナーレ!」


マミ「ふぅ、なんとか退治できたわ。今回は危なかったぁ」

QB「でも残念なことに、今の魔女はグリーフシードを持っていなかったみたいだよ」

マミ「え!? そんなっ、魔力は尽きかけているって言うのに……ううぅ」

QB「……」

ほむら「だったらこれを使うといいわ」

カランコロン

マミ「あら、これは……グリーフシード?」

32: 2012/04/14(土) 01:05:58.79
ほむら「頑張ったご褒美よ。特別にあげる」

マミ「あなたの制服、見滝原の生徒ね。どう見ても後輩にしか見えないのだけど?」

ほむら「何か気に障ったかしら」

マミ「……あなたの厚意は受け取っておくわ。ありがとう」

ほむら(それよりも)

QB「やあ」

ほむら(やっぱりキュゥべえの仕業……)

ほむら(まあいいわ。とりあえず今は学校に戻らないと)

ほむら「それじゃあ」

マミ「あっ、待って!」

33: 2012/04/14(土) 01:10:03.56
マミ「あなたの名前は?」

ほむら「名前?」

マミ「私は巴マミ。あなたと同じ見滝原の、3年生よ」

ほむら「……暁美ほむら。昨日見滝原に転校してきた、2年生よ」

マミ「転校生だったの。どうりで見ない顔だと思ったわ」

ほむら「私はもう戻るから。あなたは家で休んでなさい」

マミ「いいえ、私も学校に行くわ」

ほむら「そう。勝手にして。それじゃあ」

34: 2012/04/14(土) 01:13:22.20
マミ「待って!」

ほむら「私は何度待ってあげればいいのかしら?」

ほむら(早く戻らないと「お手洗い、大きいほうだったんだ」なんてまどかに誤解されてしまう……)

マミ「どうせなら一緒に行きましょう。それがいいわ。ねっ?」

ほむら「は?」

マミ「ほらほら、置いてっちゃうわよ。ふふっ」

ほむら(何かしら、巴マミのこの態度。かつてないほど馴れ馴れしい……)

35: 2012/04/14(土) 01:18:05.09
―移動中―

マミ「あなたはどんな願いで魔法少女になったの?」

ほむら「あなたに話す義理なんてないわ」

マミ「私はね……昔、事故に遭って氏にかけたことがあるの」

マミ「その時は生き延びたいってただひたすら願ったわ」

ほむら「誰も聞いてないのだけど」

マミ「願い方が悪かったせいで、生き残ったのは私だけ。それからというもの一人ぼっち」

マミ「あの時もう少し冷静になれていたら、家族全員助かったかもしれないのに……」

ほむら「よくもまあそんな重たい話、ペラペラと人に話せるわね」

マミ「ごめんなさい。でも、あなたには聞いてほしいって思ったから」

ほむら(何なの本当に……)

36: 2012/04/14(土) 01:21:56.50
―教室―

ほむら「すみません、戻りました」

教師「早く席に戻りなさい」

ほむら「はい……」


まどか「……」ニコニコ

さやか「……」ニヤニヤ


ほむら(同じ笑顔でも、美樹さやかのほうが圧倒的にムカつくのはどうして?)

37: 2012/04/14(土) 01:24:28.47
さやか「ほ~むら~。さっきトイレ長かったじゃん。んん?」

ほむら(ええい鬱陶しい)

まどか「そういうこと大声で言っちゃだめだよさやかちゃんっ」

仁美「そうです。私、今のさやかさんは好きじゃありませんわ」

さやか「分かった分かった、ごめんなさいっ。ほむら、ごめーんね!」

ほむら「ふん」

さやか「そっぽ向かれた!」

38: 2012/04/14(土) 01:28:29.24
まどか「ほむらちゃん、こんなさやかちゃんだけど、許してあげて?」

ほむら「まどかが言うなら、渋々……」

さやか「渋々かよっ」

仁美「よかったですわね、仲直りできて」

まどか「ほんと、よかったぁ」

ほむら「……」

ほむら(友達と、他愛もない話を繰り返して笑い合う)

ほむら(なんだか私、どこにでも居る普通の中学生みたい)

ほむら(普通の中学生って、こんな感じだったのね……)

42: 2012/04/14(土) 23:58:08.22
―放課後―

さやか「さー帰るとしますか」

ほむら「早く学校を出ましょう。ほら早く」

まどか「ほむらちゃん? どうして急いでるの」

ほむら「そ、そんなに急いでいるように見えるかしらっ?」

仁美「見えますわ。まるで会いたくない人に遭遇してしまうのを避けているかのような……」


マミ「暁美さーん、よかったら一緒に帰らない~?」


さやか「うわ、胸デカな先輩がほむらを呼んでるよ!」

まどか「綺麗な人だねぇ。ほむらちゃんの知り合い?」

ほむら(やっぱり。来ると思った……)

43: 2012/04/15(日) 00:03:44.41
マミ「あら、そちらの方々は暁美さんのお友達?」

マミ「私は三年の巴マミ。よろしくね」

まどか「ほむらちゃんがこんな美人さんと知り合いだったなんて、びっくり」

マミ「まあ美人だなんて。ふふっ」

ほむら「何しにきたの……」

仁美「ほむらさんたら、目上の方への言葉遣いには気を付けられたほうが」

マミ「気にしないで。私から一方的に迫ってるだけだから」

さやか「迫ってる……? ほむらと先輩はそっち系の人ってこと!?」

ほむら「違う。全然違う」

まどか「またまたびっくり……」

ほむら「違うのよまどか! 断じて違うの!」

仁美「いけませんわお二方っ。それは禁断の、恋の形ですのよ~!」

さやか「またかよ! てかバッグ忘れてるよーっ!」

44: 2012/04/15(日) 00:09:15.84
マミ「行ってしまったわね」

さやか「あちゃー。じゃあたし、仁美にバッグ届けるから先に行くね」

まどか「うん、またね~」

さやか「また明日!」

ほむら「明日は風邪でも引いて寝込んでるといいわ」

まどか「こらっ、ほむらちゃん!」

さやか「ううっ、ほむらに嫌われちゃったよ~。ていうか急がなきゃ」

さやか「待ってよ仁美~!」

マミ「なかなか賑やかで、いいお友達ね」

まどか「あはは……ちょっと賑やかすぎかも?」

45: 2012/04/15(日) 00:12:17.12
まどか「へー。それじゃあマミさんは、困ってたところを偶然通りかかったほむらちゃんに助けられて」

マミ「ええ。仲良くなれたらなぁって」

ほむら(くっ、巴マミさえいなければまどかと二人きりなのに……)

まどか「なんだか運命の出会いって感じですね」

マミ「暁美さんが男の子だったら、きっと一目惚れしていたでしょうね」

ほむら「やめてちょうだい……」

46: 2012/04/15(日) 00:15:21.22
マミ(でも私たちが魔法少女だってことは、二人だけの秘密ね)

マミ(そう、二人だけの秘密)

ほむら(勝手に念話してこないでほしいのだけど)

マミ(つれないのね。同じ街に住んでいるのなら、私たちはパートナーになるしかないのに)

ほむら(えー……)

マミ(今日から一緒に魔女退治しましょう。よろしくね♪)

ほむら(次は助けないから)

マミ(そんなこと言わないで~っ)

まどか「何だか二人とも、目配せばかりしてる……」

47: 2012/04/15(日) 00:20:05.06
「――ヒヘヘ」

まどか「……!?」

まどか「いっ今、なんか変な笑い声聞こえなかった?」

マミ(あら、いきなりお出ましね。人に害なす醜き存在、絶望の化身の端くれが)

ほむら(普通に使い魔って言えないの?)

「ハハ――ヒヘッ」

まどか「声が近づいてきたよ……」

48: 2012/04/15(日) 00:25:50.40
 「ヒヘヒヘヘ」「ハヒヒハハハ」
「ハヒヘヒヒヒ」「ヒハヘヘヘヘ」
 「フヒヒフヒヒ」「ヒフヒヒヒヒ」

まどか「ひいっ、ここなんか変だよっ。ほむらちゃん、マミさん、逃げなきゃ……」

マミ(いいえ、どうやらこれは使い魔ではないみたい)

ほむら(分身、もしくは分裂した魔女の群れ……)

マミ(これだけの数じゃ一人で相手するのは困難ね)

ほむら(だけど戦力が分散してる。私一人でも――って、まさかまどかの目の前で変身する気!?)

マミ「仕方ないじゃない? 鹿目さんを安全な所へ連れている余裕なんて無いわよっ」

まどか「あ、えっ。マミさんの服が変わった……?」

49: 2012/04/15(日) 00:31:47.80
マミ「さあ、始めるわよっ」

ほむら(ああもう……仕方ない)

ほむら「まどか、あなたは私から離れないで」

まどか「ほむらちゃんも服が!」

ほむら(時間操作の魔術は使えないから、ここは強化した中距離武器だけで……)

ほむら「爆音で鼓膜が破れてしまわないよう、耳をしっかり塞いでなさい」

まどか「あう~……」

50: 2012/04/15(日) 00:35:24.60
ドンッ ドカンッ

ほむら「巴マミ、そっちへ逃げたわ」

マミ「今ねっ。とどめのー、ティロ・フィナーレ!」


魔女「ヒイィィィィ――」


ほむら「……ふぅ」

マミ「どうやら、無事にやっつけられたみたいね」

マミ「チームプレイの勝利だと思わない?」

ほむら「勝手に言ってればいいわ」

まどか「なんかもう、いろいろすごい……」

51: 2012/04/15(日) 00:39:31.85
マミ「グリーフシードも手に入れたし、まさに大勝利ね」

ほむら「そうね」

まどか「何が何だかだよぉ……」

マミ「ごめんなさい。後で鹿目さんにもちゃんと説明するから」

マミ「それにしても、強力な魔女が一日に二匹も現れるなんて。変な日ねぇ」

ほむら(これで魔法少女のことがまどかに知れてしまった)

ほむら(まどかが魔法少女になりたがらなければいいのだけど……)

52: 2012/04/15(日) 00:47:20.89
―マミの部屋―

マミ「いらっしゃい。お茶、どうぞ?」

まどか「ありがとうございます……ううっ、まだ頭の中が混乱してるよ~」

ほむら「大丈夫? まどか」ナデナデ

まどか「ありがとうほむらちゃん。ちょっとだけ落ち着いてきたかも」

マミ「ずるいわ。私にも撫でさせて」ナデナデ

まどか「あう~」

53: 2012/04/15(日) 00:50:57.02
QB「やあマミ。帰ってたのかい?」ヒョコッ

ほむら「っ!」

まどか「あ、白い猫さんだーていうか喋った!」

マミ「キュゥべえ、丁度良かったわ」

ほむら「キュゥべえ……」

ほむら(まどかに近づけば始末すると言ったわよね)

QB(君は鹿目まどかと友好的な関係を築きたいのだろう。見てて気づいたさ)

QB(だったら、彼女の目の前で派手なことは出来ないよね)

QB(まあ身体の代わりなんていくらでもあるし、破壊してくれたって構わない。もったいないけどね)

ほむら(……大人しくしていなさい)

54: 2012/04/15(日) 00:55:50.77
まどか「ほむらちゃん、目が怖いよ……?」

ほむら「そうかしら。気のせいよ」

まどか「なんだか猫さんを睨んでるみたいだった……」

マミ「暁美さん、キュゥべえを責めないであげて?」

マミ「魔法少女として魔女と戦うという、決して軽くない使命を背負わされて、憎む気持ちが生まれるのも分かるけど」

マミ「その代わり、私たちは望みを叶えてもらったのだから。ね?」

QB「そうだそうだ」

ほむら(巴マミは何を勘違いしているのかしら。鬱陶しい……)

55: 2012/04/15(日) 00:58:24.88
ほむら(巴マミはキュゥべえに補足してもらいながら、まどかに魔法関係のことを説明した)

まどか「魔法少女になれば……私なんかでも、役に立てるのかな」

ほむら「まどか。あなたにとって、とても魅力的な話かもしれないけど」

ほむら「やめておきなさい」

まどか「でもっ」

ほむら「私も、巴マミだって、いつ魔女に敗れて氏んでしまってもおかしくない」

ほむら「それが魔法少女なの」

マミ「暁美さん……」

56: 2012/04/15(日) 01:01:51.74
まどか「それならなおさら、仲間は多いほうが!」

QB「そうだよ。グリーフシードの分け前は減るだろうけど」

QB「三人でチームワークを磨き上げれば、魔力の消費量は確実に節約できる」

QB「採算は取れるさ」

ほむら「違う。私が言っているのはそういうことじゃなくて」

ほむら(キュゥべえめ……っ)

マミ「……」

57: 2012/04/15(日) 01:06:21.58
マミ「鹿目さんは、人の役に立ちたいの?」

まどか「! は、はいっ!」

まどか「私ってどんくさくて、弱虫で、何の取り柄もないから」

まどか「だから、ほむらちゃんやマミさんみたいに、強い子になりたいんですっ」

ほむら(まどか、説得されてはだめ。あなたは魔法少女になってはいけない!)

マミ「鹿目さんのことは、今日初めて会ったばかりだからあまり知らないけど」

マミ「でも、何の取り柄もないなんてことは、ないと思う」

まどか「?」

58: 2012/04/15(日) 01:10:37.58
まどか「それってどういうことですか?」

マミ「暁美さんに訊いてみればいいんじゃない? ふふっ」

まどか「……う~ん」

ほむら(巴マミ、何を言っているの……)

マミ「さあ二人とも、今日は遅いから帰りなさい」

マミ「親御さんが心配するでしょ。ほらほら早く」

59: 2012/04/15(日) 01:14:18.76
ほむら(追い出されてしまった。何なのかしら、本当に)

ほむら(でもおかげで魔法少女の話を誤魔化せたわ)

まどか「ねえほむらちゃん、私の取り柄って何だろう?」

ほむら「そうね……まどかは可愛いし、優しいわ。それにとってもいい子」

ほむら「取り得なんて挙げだしたらキリがない」

まどか「そ、そんなことないよっ……もう~」

ほむら(また口説いてしまった)

60: 2012/04/15(日) 01:22:01.32
―1時間後・病院―

さやか「恭介、最近ますます元気無くなっちゃって……」

さやか「手の怪我なんか早く治ればいいのに」

さやか「はぁ。奇跡か魔法でもあれば、とっくに治ってるんだろうなぁ」

?「そう思うなら、奇跡でも魔法でも使って治してあげればいいじゃないか。恭介とやらの手の怪我を」

?「僕に願えば簡単に叶えてあげられるよ」

さやか「それができるならやってみてくださいよーって、誰だよ今の」

?「その代わり魔法少女になって魔女と戦うことになるけど、それでもいいかい?」

さやか「ええっ、何これ!? 猫が喋った!」

さやか「ていうか、魔法って……ええーっ!?」

63: 2012/04/15(日) 23:45:23.49
―翌日―

ほむら「おはよう」

まどか「おはよう、ほむらちゃん」

さやか「おっす、ほーむらっ」

仁美「おはようございます、暁美さん」

ほむら(今日もまどかと登下校。お邪魔な二人さえいなければ……)

さやか「ふんふんふん~♪」

まどか「あれ、さやかちゃんご機嫌だね」

さやか「そう?」

仁美「何かいいことでもあったんですの?」

さやか「にっしし。ひっみつっだよーん」

64: 2012/04/15(日) 23:47:36.39
―教室―

ほむら(授業中は退屈だわ)

ほむら(まどかの顔を眺めていたいけど、私の席は前のほうだし……)

ほむら「……!」

ほむら(ソウルジェムに強い反応が……学校のどこかで結界が出現したらしい)

ほむら(次から次へと、キュゥべえもよくやるわね)

ほむら(行くしかないか)

ほむら「先生、ちょっと――」

さやか「せんせー! ちょっとお手洗い行かせてくださーい!」

ほむら「――え?」

65: 2012/04/15(日) 23:51:46.45
和子「美樹さん、大声ではしたないわよっ。もう。早く行ってきなさい」

さやか「ごめんなさーい。すぐ戻って来ますんでー」

ほむら(ちっ、教室を抜け出す機会を失ったわ。今私もトイレに立てば怪しまれてしまう)

ほむら(まあいいわ。魔女の所へは巴マミが向かっているでしょうし、慌てなくたって)


―屋上―

マミ「来てはみたけど、肝心の魔女は……もうどこかへ移動してしまったみたいね」

マミ「魔力の痕跡が既に消えかけてる。魔女が自分で消していったのかしら」

マミ「厄介な相手ね。ここは僅かな痕跡を頼りに追いかけるしか……」

さやか「あれっ、昨日の先輩じゃないっすかー」

マミ「なっ!?」

66: 2012/04/15(日) 23:55:23.00
さやか「ひょっとしてサボりですか? だめですよー受験生なんだから」

マミ「あ、あなたはどうしてここへ?」

さやか「ちょっとトイレついでに、外の風に当たりたくなったっていうか……」

マミ「私もそんなところよ。早く教室に戻りましょう」

さやか「いや、あたしはもうちょっとここに居ます」

マミ「そう……長居しないようにね」

さやか「はーい」

67: 2012/04/15(日) 23:59:11.21
マミ「もうソウルジェムは何の気配も察知しない。痕跡を残さない上に素早いなんて……」

マミ「ここは暁美さんと一緒に、街へ出て捜索するしかない」

マミ「早くしないと犠牲者が……」

マミ(暁美さん、聞こえるかしら? 私よ。今から魔女を探しに行きたいのだけれど――)

68: 2012/04/16(月) 00:03:49.67
―隣町―

さやか「よーし、なんとか追いつめた」

さやか「いやぁ、見失わないように追いかけるのって案外大変だったなぁ」

さやか「さてと」


使い魔「アヒャハヒャヒャ」


さやか「あんたさ、ちょっと退治されてくんない?」

さやか「魔法少女さやかちゃんのデビュー戦、華々しく飾らせてよ!」

69: 2012/04/16(月) 00:09:45.74
使い魔「ヒャアハアアァァァ――」


さやか「なんかあっけなかったね。魔女じゃなくて使い魔ってやつだったのかな」

?「てめーっ、人の縄張りで何やってんだ!」

さやか「へ?」

?「しかも使い魔をやっちまいやがって、馬鹿かてめぇはっ」

さやか「な、何よいきなり。あんたも魔法少女?」

70: 2012/04/16(月) 00:14:58.72
QB「やあさやか。頑張ってるみたいだね」

さやか「キュゥべえ! なんでこんなところに」

?「ちっ、もしかしてこいつ新米かよ。どうりでアホな真似するわけだ」

さやか「アホ!?」

QB「杏子、さやかをあまり責めないであげてよ。使い魔を狩るのも大事なことだ」

杏子「でもさぁ……あーあ。やる気失せた。今日はついてないや」

71: 2012/04/16(月) 00:19:07.19
杏子「いいか、さやか。ああいう小規模な奴らは魔女じゃなくて、使い魔って言うんだ。グリーフシードは持っていない」

杏子「成長して魔女になるまで待ってから仕留めるんだ。分かったか」

さやか「何言ってんの。その使い魔が成長するのに必要な栄養が何なのか、知らないわけじゃないでしょ?」

さやか「多くの人が犠牲になんのよ!? それをあんた、グリーフシードのためだからって」

杏子「あんたこそ、食物連鎖って知らないわけじゃないよね」

さやか「あたしらは人間だ。魔女の犠牲になる人たちだって同じ人間。違う?」

72: 2012/04/16(月) 00:24:29.64
杏子「話になんねぇ。つーかさ、口の利き方がなってないよね。先輩に向かってさぁ」

さやか「同じ魔法少女として、あんたは少しお仕置きしてやらないとね!」

QB「やれやれ。会って早々喧嘩かい?」

杏子「あんたは黙ってな」

杏子「相手が新米だからって手加減はしない。……いくよっ!」

――ガッシャァン

杏子「あん? なんだ今の音は」


魔女「ヒャーハアハハッ」


さやか「なっ、こいつ!」

杏子「なるほどね。自身どころか結界の気配も消せるってわけか」

73: 2012/04/16(月) 00:27:44.02
さやか「使い魔をおとりにして、自分は今まで身を潜めてたってわけ?」

杏子「しゃあねー、一時休戦だ。さやかは黙って見てな」

杏子「新米のあんたに、ベテランの戦い方を見せてやる」

さやか「ふーん。そう言うんなら見せてもらおうじゃん」

さやか「まっ、安心しなよ。ピンチになったら加勢するからさ」

杏子「調子乗んな!」

74: 2012/04/16(月) 00:31:38.29
魔女「ヒャゲャアアアア――」


杏子「いっちょあがりっ」

さやか「やるじゃん」

杏子「当然。使い魔倒していきがってるあんたとは違うんだ」

さやか「……」

さやじゃ「さっきの話なんだけど、使い魔が成長するのを待てって言う」

さやか「あれ、やっぱあたしには分かんないわ。むしろ大反対」

杏子「あん?」

さやか「喧嘩する気も失せたし、今日はもう帰るけどさ……」


さやか「杏子だっけ? あんたそのままじゃ、絶対ろくな氏に方しないから」

75: 2012/04/16(月) 00:35:35.13
杏子「……ちっ。捨て台詞のつもりかよ。かっこつけが」

QB「どうやら君たちは徹底的に馬が合わないみたいだね。犬猿の仲とでも言うのかな」

杏子「……」

QB「追いかけないのかい?」

杏子「今はいいや」

杏子「でも今度はこっちから喧嘩売りに行くつもりだよ。やっぱあいつムカつくし」

QB「あまり感心しないけど、魔法少女同士の交流が全く無いよりはいいことだ」

QB「美樹さやかの活動範囲を教えてあげるよ。いつか訪ねてみるといい」

76: 2012/04/16(月) 00:39:52.37
ほむら「こっちでは見当たらなかったわ。そっちは?」

マミ「だめ。あちこち探し回ってはみたけどどこにも居ない。どこに行ったのかしら」

ほむら(おかしい。魔女に自分の気配を消すだけの能なんて無いはず)

ほむら(またキュゥべえが何かしているの……?)

マミ「これだけ探して見つからないとなると、既に見滝原を出ていった可能性が高いわ」

ほむら「もう他の町の魔法少女に任せるしかなさそうね」

マミ「うーん……それなら、とりあえず学校に戻る? そろそろお昼だし」

ほむら「!!」

ほむら「いけないっ、まどかとの楽しいランチタイムが減ってしまうわ。急ぎなさい!」

77: 2012/04/16(月) 00:42:46.17
まどか「ほむらちゃん、おかえり~」

ほむら「ただいま、まどか」

ほむら(間に合った……!)

さやか「遅いぞほむらー。どこ行ってたんだよっ」

ほむら「道に迷ってたのよ。この学校、無駄に広くて」

仁美「無理もありませんわ。まだ転校してきて日が浅いんですもの」

ほむら「そんなことより早くランチにしましょう。時間がなくなっちゃうわ」

78: 2012/04/16(月) 00:46:35.67
ほむら(退屈な授業はやたら長く感じてしまう)

ほむら(それを頑張って耐え抜いた私は、ついに待ち望んだ放課後を迎えた)

ほむら(今日は私のほうから、まどかを寄り道に誘ってみようかしら)

さやか「んー、終わったぁ」

ほむら(美樹さやかに付き合う建前でCDショップへ行くのもいいかもしれない)

ほむら(試聴スペースで一つのヘッドホンにまどかと耳を近づけ急接近、とか……)

ほむら「むふふ……」

さやか「うわっ、ほむらがにやけた!?」

79: 2012/04/16(月) 00:50:25.10
さやか「今日あたし病院寄ってくから、もう帰るね」

まどか「今日はCDは買ってかないの?」

さやか「んー」

ほむら(行くって言いなさい。行くって言いなさい)

さやか「いや、CDショップはもうあんまり行かないかも」

まどか「どうして?」

さやか「秘密! それじゃーまたなーっ」

まどか「あっ……行っちゃった」

仁美「さやかさん、どうされたのかしら」

ほむら(……まさか)

80: 2012/04/16(月) 00:53:43.43
ほむら(美樹さやかは契約後、かなりの確率で魔女に変化する)

ほむら(まどかを悲しませるばかりの不穏な存在……)

ほむら(ひとまず様子を見に行こう。まだ美樹さやかが契約したとは限らない)

ほむら「私も用事があるの。また明日ね」

仁美「あら、残念ですわ……」

まどか「ほむらちゃんまたね。明日は一緒に帰ろうねっ」

ほむら「ええ。もちろんよ」

81: 2012/04/16(月) 00:57:45.39
ほむら(巴マミ、聞こえる?)

マミ(暁美さん! 今からそっち行くから一緒に帰りま)

ほむら「まどかのこと、頼むわよ。絶対契約させないように見張ってて)

マミ(へ?)

ほむら(私は用事ができたから先に帰るわ)

マミ(何があったの? きちんと説明してちょうだい)

ほむら(うるさいわね。グリーフシードの貸しを忘れたわけじゃないでしょう?)

ほむら(そろそろ念話の圏外に出るわ。頼んだわよ)

マミ(待っ――)

ほむら「急がないと」

82: 2012/04/16(月) 01:00:57.30
―病室前―

ほむら「……居た」


さやか「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こ」


ほむら(遅かった……)

ほむら(二人が出てくるわ。とりあえずこの場を離れないと)

ほむら(物陰に隠れながら追跡しましょう)

83: 2012/04/16(月) 01:04:33.01
ほむら(魔法少女にとって絶望は底なし沼みたいなもの)

ほむら(一度気が滅入ると、ソウルジェムは途端に穢れを増していく)

ほむら(せめて美樹さやかのソウルジェムに穢れが溜まってしまわないよう、気を付けていないと)

ほむら「ああもう、面倒くさい」

QB「何が面倒くさいんだい? 浮かない顔してるけど」

ほむら「ッ、キュゥべえ……」

84: 2012/04/16(月) 01:08:20.18
QB「確かにさやかとの接触も止められていたけど」

QB「君はまどかさえ契約しなければそれでよかったんじゃないのかい」

QB「それほど怒ることでもないと思うんだが」

ほむら「私はまどかとの平穏な日常を守りたいだけ。それを脅かすようなことは断じて許さない」

QB「君はそう言うけど、まどかは自分が普通の女の子でしかないことに負い目を感じていたよ」

QB「それとも君は、自分さえ幸福を感じていられたらそれでいいのかい?」

ほむら「人間なんてそんなものよ。それとも、今ここで私の憂さ晴らしになりたいの?」

QB「やれやれ、本当に身勝手な生き物だね。君たち人間は」

QB「とりあえずここは去ることにするよ。またね」

ほむら(二度と来るな)

85: 2012/04/16(月) 01:11:31.87
さやか「……♪」


ほむら(美樹さやかは病院の屋上で、静かに上条恭介の演奏を聴いている)

ほむら(幸せそうな顔ね。ほんの少しだけ、可愛らしく思えてしまう……)

ほむら(まどかには敵わないけど)

ほむら(この様子なら、数日は放っておいても大丈夫そうね)

ほむら(まどかのところへ行こう)

88: 2012/04/17(火) 00:13:27.57
ほむら「まどか、まだ家に帰っていないなんて……」

ほむら「まさか巴マミと寄り道なんかしてるんじゃ」

ほむら「見張ってるだけでいいのにっ、ムカつく……!」


杏子「あーもうムカつく! んだよあのゲーセン。当たり判定絶対おかしいって!」


ほむら「!」

杏子「あん? 何だいあんた。何見てんだよ」モグモグ

ほむら(佐倉杏子……どうしてこの街に)

杏子「ああ、鯛焼き欲しいのか。食うかい?」

ほむら「え? あ、ありがとう」

杏子「丁度いいや。お前あたしの愚痴聞いてけ」

ほむら(えー……)

89: 2012/04/17(火) 00:15:51.34
杏子「あたしの縄張りに土足で踏み込んだくせに、そいつがムカつくこと言いやがんだ」

ほむら「何を言われたの?」

杏子「『絶対ろくな氏に方しない』……だったかな。くっそ、思い出しただけで腹立つ」

杏子「あたしだって、まともに生きてまともに氏にたかったさ」

杏子「何も知らないくせに……ちくしょお」モグモグ

ほむら(酔ってるのかしら)

90: 2012/04/17(火) 00:18:35.93
杏子「悪かったな、付き合わせて。礼に鯛焼き全部やるよ」

ほむら「どれだけ買ってきたのよ。こんなにどっさり」

杏子「甘いもんには目がなくてね」

杏子「あっ、そういやあんたさ、この辺に住んでる美樹さやかってやつ知らない?」

ほむら「え?」

杏子「さっき話したムカつく奴だよ。今度ケリつけてやろうと思ってね」

ほむら(厄介事が増えた)

ほむら(美樹さやか、あなたは本当に面倒くさい……!)

ほむら「喧嘩はやめたほうが……」

杏子「だって言われっぱなしなのも悔しいじゃん」

杏子「見つけたら絶対とっちめてやらぁ。……ん? あそこに居るやつって」


さやか「いやー、治って本当によかったなぁ。恭介ばんざーい!」


杏子「見つけたあああっ!!」

ほむら「ああもう……」

91: 2012/04/17(火) 00:23:04.42
杏子「見つけたぞてめぇ!」

さやか「ん? あんた誰だっけ」

杏子「ちっ。変身して見せないと分からない? どんだけ馬鹿なのさ」

さやか「変身って、まさか魔法少女……ああーっ!」

さやか「あんたさっきの、えーっと、なんて言ったっけ……あんこ?」

杏子「きょうこだっ! ちくしょうふざけやがって」

さやか「ていうかほむらも一緒って、どういうこと?」

ほむら「成り行きで」

杏子「なんだ、あんたら知り合いだったのか」

ほむら「ちょっとしたね」

さやか「まさか杏子、ほむらを人質にあたしを倒そうってつもり? はっ、小物はやることが小さいわ」

杏子「早とちりも大概にしろ。どんだけ脳味噌足りてないんだよアンポンタン」

さやか「んなっ、言ったわね……!」

杏子「間違ったことでも言ったか!」

ほむら「やめなさい二人とも」

92: 2012/04/17(火) 00:27:37.15
ほむら(面倒くさい。泣きたい)

さやか「杏子は初めて会った時から気に入らなかったんだよね……」

杏子「なら決まりだ。あたしらは魔法少女であり、互いを忌み嫌ってる」

杏子「戦うしかねえ!」

さやか「どうやら痛い目みないと気が済まないみたいね」

さやか「命までは取らないから安心しな!」

ほむら(二人は同時に変身した)

ほむら(止めに入ろうにも、最近不調が続いている私には爆頃することぐらいしかできない)

ほむら(こうなったら……)

93: 2012/04/17(火) 00:31:05.00
―路地裏―

さやか「ここまで来れば大丈夫かな。人居ないし」

杏子「急にどっか行っちゃうから、てっきり逃げ出したのかと思ったよ」

さやか「お生憎様。あたしは正義の味方、魔法少女さやかちゃんですから」

さやか「あんたみたいに人の痛みが分からない奴とは、考えることが違うんだ」

杏子「……あんた、本当にムカつくわ」

杏子「頃す」

94: 2012/04/17(火) 00:35:33.20
さやか「はぁ、はぁ……くっ、はぁ……」

杏子「っかしいな。全治三カ月ってくらいにはかましてやったのに」

さやか「全っ然、大したことないねぇ……」

杏子「だったら串刺しにしてやるよ」

杏子「らああぁぁぁぁっ!!」

シュルッ

杏子「!? なっ、なんだこりゃ」

杏子「黄色いリボン……?」


マミ「まったく。せっかく鹿目さんたちと楽しくお茶してたのに」

95: 2012/04/17(火) 00:38:53.32
マミ「人の縄張りで好き勝手やってくれるじゃない? 佐倉さん」

杏子「ちっ、忘れてた。そういやこの辺はもともとあんたの庭だったな」


マミ「危なかった……暁美さんがテレパシーで呼んでくれなきゃ、美樹さん氏んでたわ」

ほむら「それよりまどかとお茶してたって話、詳しく聞かせてくれないかしら」

マミ「志筑さんもいたのだけど……ちょっ、目が怖い!」

96: 2012/04/17(火) 00:42:00.27
さやか「まさかほむらもマミさんも魔法少女だったなんて……」

杏子「邪魔すんな。これはあたしらの喧嘩だ」

マミ「もう決着はついているでしょ。喧嘩は佐倉さんの勝ち。美樹さんの負け」

さやか「そんなっ! マミさん、あたしまだ戦えますよー!」

マミ「だーめ。そもそも魔法少女同士が頃し合いなんて間違ってるわ」

マミ「二人とも、仲直りしなさい」

97: 2012/04/17(火) 00:43:34.01
杏子「はんっ。こいつとは直る仲なんてもともと無かったね」

さやか「そうだそうだっ」

マミ「口答えばっかり。困った子たちねぇ」

ほむら「まるでガキね」モグモグ

マミ「暁美さんも、鯛焼きなんて食べてないで二人を説得してちょうだい」

98: 2012/04/17(火) 00:48:05.43
杏子「ほむらって言ったっけ。あんたはあたしの言い分に賛成だよな!」

さやか「ほむら、あたしたち親友だよね。味方してくれるよね!」

ほむら「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵」

ほむら「お分かり?」モグモグ

さやか・杏子「分かるか!!」

99: 2012/04/17(火) 00:51:38.27
ほむら「私のグリーフシードを分けてあげるから、今回は二人とも引き下がってちょうだい」

ほむら「これ以上争い続けるというのなら、巴マミの武力介入も厭わないわ」

マミ「私は厭うのだけど……」

杏子「……ちっ、分ぁったよ」

さやか「まっ、しょうがないっか」

杏子「思えばつまんねえことに時間使っちまった」

さやか「それはこっちの台詞。せっかくいい気分だったのにもう台無し」

杏子「いい気分って、何があったんだよ」

さやか「あんたには関係ないでしょ。友達の怪我が完治したってだけよ」

杏子「結局喋ってんじゃん」

さやか「あ、しまった……!」


マミ「この二人、案外仲良しになれたりするんじゃない?」

ほむら「だといいけどね」

ほむら「ところで、まどかは今どこに居るの」

100: 2012/04/17(火) 00:55:05.73
―喫茶店―

まどか「マミさん遅いなー」

まどか「仁美ちゃんはお稽古があるって帰っちゃったし」

まどか「……」

まどか「一人ぼっちだなぁ」

ほむら「それは違うわ」

まどか「!」

101: 2012/04/17(火) 00:59:32.94
ほむら「会いたかったわまどか」

マミ「鹿目さん、待たせてごめんなさい。志筑さんはもう帰っちゃったのね」

さやか「まどかー! あたし抜きで寄り道とはけしからん嫁だぁー!」

まどか「ほむらちゃん! それにマミさんも。さやかちゃんまで!」

杏子「ふーん、その子か。ほむらがべた惚れの相手って」

まどか「えっと……どなた?」

102: 2012/04/17(火) 01:02:29.79
ほむら「もう遅いから、みんなで帰るわよ」

まどか「う、うんっ」

まどか「みんなで……えへへ」

ほむら(まどかと一緒……えへへ)

さやか「本当は杏子だけ仲間外れにしてやりたかったけど、さやかちゃんは心が広いですから」

杏子「仲間外れだって別にいーし。マミがケーキくれるって言うからついてきただけだし」

マミ「こらこら、喧嘩しないのっ。もう」

103: 2012/04/17(火) 01:04:41.65
ほむら(巴マミに餌づけされた佐倉杏子は、少しの間だけ見滝原に留まることにしたようだ)

ほむら(思えば私たち五人がこれほど平和的に集結することなんて今まであったかしら)

ほむら(もしこのまま何事も無ければ、みんなでワルプルギスの夜を越えられるかもしれないけど……)

ほむら(高望みはやめておきましょう。まだまだどうなるか、分からないものね)

106: 2012/04/18(水) 23:54:01.36
―朝―

まどか「それでママが社長になっちゃえばって言ったら、ママがね」

仁美「ふふふ。相変わらず頼もしいお母様ですわね」

ほむら(朝っぱらからまどかは可愛いわ。朝日より眩いあなたの姿をいつまでも眺めていたい……)

まどか「あれっ、あそこにいるの上条くんじゃない?」

さやか「うそ、どこどこ?」


中沢「上条、もう怪我はいいのかよ」

上条「ああ。家にこもってたんじゃリハビリにならないしね」


さやか「あ、本当だ!」

107: 2012/04/18(水) 23:57:21.45
ほむら(危険なシチュエーションね)

ほむら(平和な日常もこれまで、か……)


さやか「おーい、恭介ー! おっはよー!」

上条「うわっ、さやか! びっくりするじゃないか」


まどか「あはは。さやかちゃん、走っていっちゃった」

仁美「相変わらず仲がよろしいですわね」

ほむら(……あれ?)

108: 2012/04/19(木) 00:02:52.64
さやか「びっくりしたのはこっちだよー。いくらなんでも学校に来るのはまだ早過ぎない?」

さやか「手が治ったのおとといじゃん」

上条「足のリハビリはもともと順調だったんだ。それなのにいつまでも寝込んでなんかいられないよ」

上条「医者に止められたけどね。学校に顔出したらすぐに病院に戻らないと」

さやか「そっか。まだちゃんと退院したわけじゃないんだね」

上条「それに何より……学校に来れば、さやかにも会えると思って」

さやか「なっ! え、ちょ、あははは何言ってんのっ! んもーっ」

中沢「チッ」


ほむら(本来なら美樹さやかはここで、上条恭介と距離を置くようになるはずだけど)

ほむら(どうして今回はやたら朗らかなの)

ほむら(いくつか理由は考えられるけど……まあいいか。結果オーライということで)

仁美「……やっぱり、さやかさんには敵いませんわね」ボソ

109: 2012/04/19(木) 00:11:58.98
―数日後―

ほむら「パジャマパーティー?」

まどか「うん。明日はお休みでしょ? だからみんなでお泊まり会しようってさやかちゃんが」

さやか「場所はマミさんち!」

仁美「私は外せない用事がありますので、残念ながら参加することはできませんが……」

110: 2012/04/19(木) 00:15:02.13
ほむら「随分急に決まったのね」

さやか「マミさんとこに杏子を置いておくのは心配でさー。たまには様子見ないと」

まどか「お泊まり会自体は前からみんなでしたいねって言ってたんだけど」

まどか「せっかくだから、杏子ちゃんがこの街に居る間がいいなって」

仁美「私も参加たかったですわ。でもお稽古を放りだすことなんてできませんし……」

さやか「あたしも仁美が来れなくて残念だよぉ。カムバーック仁美ー!」

仁美「そう言ってもらえて嬉しいですわっ」

まどか「ほむらちゃんは来られる?」

ほむら「もちろんよ」

111: 2012/04/19(木) 00:16:54.05
―授業中―

ほむら(いつまでものほほんとした、平和な世界)

ほむら(でも本当は、少しでも油断すれば、仲間が次々と消えてしまう危うい世界)

ほむら(この和やかな時間が、いつまでも続いてくれたらいいのに……)

マミ(楽しみよね、パジャマパーティー! 晩ご飯はごちそうにするから)

さやか(うんうん! いやぁ、これで杏子が居なくて仁美が来られたらなぁ)

マミ(そんなこと言っちゃだめよ。もう、美樹さんったら)

さやか(ごめんなさーい。てへっ)

ほむら(念話うるさい……)

112: 2012/04/19(木) 00:19:26.62
―ゲームセンター―

杏子「何がパジャマパーティーだ。ガキくせー」カチャカチャ

杏子「よーし。これで、とどめだ……っと!」

 YOU WIM!!

杏子「よっしゃ、今日はボロ勝ちだ! なっはっは」

QB「楽しそうだね」

杏子「あん?」

QB「てっきり君とさやかは命を奪い合うものだとばかり思っていたんだけど」

杏子「ああ、あんたか……ま、無駄な争いは馬鹿のやることだってね」

QB「よく言うよ。その言葉、ほむらの受け売りだろう?」

杏子「陰で見てたのかよ。趣味悪ぃ」

113: 2012/04/19(木) 00:21:35.56
QB「まあ僕としても、君たちが連携してくれると魔女狩りがはかどっていいけどね」

杏子「どこまでが本音なんだか」

QB「どういうことだい?」

杏子「あんたの後ろには、何かとんでもないものが蠢いてる気がする」

杏子「何を隠してる?」

QB「隠してるつもりはないんだけどね」

QB「何か腑に落ちないことでもあるのかい?」

114: 2012/04/19(木) 00:24:07.15
杏子「……まあいいよ。あたしにゃどうでもいいことさ」

杏子「魔法少女にしてもらったおかげで、こうして好きなだけ遊んでいられるしね」

QB「そうかい」

杏子「さーて、ゲームも飽きたし、魔女探しはだるいし」

杏子「どうすっかなぁ」

115: 2012/04/19(木) 00:27:06.11
―授業中―

さやか(やっと午後かー。あー待ちきれないよパジャマパーティー!)

ほむら(授業に集中なさい)

さやか(それができたらこんなにソワソワしてないって!)

ほむら(せめて念話してこないで。魔力の浪費よ)

さやか(いいじゃんいいじゃん、付き合ってよう)

ほむら(かつてないほど舞い上がってるわね……)

116: 2012/04/19(木) 00:29:21.47
ほむら(今のうちから盛り上がっていると、期待ほど楽しくなかった時に落ち込むわよ)

さやか(そうだね。残りのパワーは深夜のガールズトークにとっておかなきゃ!)

ほむら(全然分かってない)


杏子(なー、お前らの教室はどこだー?)


ほむら・さやか(!?)

117: 2012/04/19(木) 00:33:04.78
さやか(ちょっ、杏子!? 近くに居んの!?)

杏子(なんかガラス張りで気持ち悪いなぁこの学校。お、さやか見っけ)

杏子「おーい」

さやか「おーいじゃねーよ!」

和子「ひんっ!? み、美樹さんどうしたの……?」

さやか「あっいや、あのそのえっとですね」

ほむら「……」

ほむら「先生、あそこに不審者が」

杏子「誰が不審者だ!」

118: 2012/04/19(木) 00:36:16.28
ほむら(その後、私たちは揃って先生に怒られた)

杏子「暇潰しに来ただけなのに……なんであたしまで……」

さやか「それはこっちの台詞……」

ほむら(おかげで放課後がかなり潰れてしまった)

ほむら(まどかと一緒にいられる時間が……ついてないわ……)

119: 2012/04/19(木) 00:40:18.50
まどか「あ、ほむらちゃん。さやかちゃんに杏子ちゃんも」

さやか「やっと解放された~!」

ほむら「お待たせまどか。慰めて」

まどか「よしよし、こわかったねー」

さやか「いやぁ、久々に怒られたなぁ」

杏子「あーくそっ、すっげームカついた。今度お礼参りでもするっきゃねーな」

さやか「待て待て」

120: 2012/04/19(木) 00:43:03.25
まどか「マミさん、お買い物済ませて家に戻るって言ってたよ」

さやか「マミさんの手料理かぁ。うー、楽しみ楽しみ」

杏子「お先にっ」ダッ

さやか「杏子? なに走ってんのさー」

杏子「あんたらがマンションに着く頃にゃ晩飯は残ってないと思え!」

さやか「なんだとっ!? 待ちやがれこのー!」ダッ

まどか「さやかちゃん待って、お泊まりの道具持ってきてないでしょ!」

まどか「あー、行っちゃった……」

ほむら「まどかは準備万端なの?」

まどか「ううん。私も一度お家に帰らないと」

ほむら「ついて行っていいかしら。お喋りしながら歩きたいし」

まどか「うん、いいよっ」

ほむら(嬉しかな まどかと二人 通学路……ほむら心の俳句)

123: 2012/04/19(木) 22:56:48.47
―マミの部屋―

マミ「いらっしゃい。他の二人はもう来てるわよ」

ほむら(もう着いてしまった。もっとまどかと歩いていたかったのに……)

まどか「マミさん、今日はよろしくお願いします!」

マミ「うふふ。お構いなくっ」

124: 2012/04/19(木) 22:59:28.18
さやか「やっほ。まどかもほむらも遅かったじゃん」

まどか「さやかちゃん、パジャマとか持ってきてないでしょ」

さやか「あ!」

杏子「ぷっ。ばっかじゃねーのー」

さやか「あんただって持ってきてないでしょーがっ」

杏子「あたしはいつもマミから借りてるし」

マミ「美樹さんにも貸してあげる。だから喧嘩しないの」

さやか「えっ、マミさんのパジャマ? ……いい匂いしそう」グヘヘ

マミ「ひっ!?」

125: 2012/04/19(木) 23:04:44.47
―夜―

さやか「もうこんな時間かぁ。そろそろ行かなきゃ」

マミ「気をつけてね。危ないと思ったらすぐに呼ぶのよ?」

さやか「分かってますってー。それじゃ行くよ、ほむら」

ほむら「行くってどこに?」

さやか「ほら、当番制にするって決めたじゃん!」

ほむら「……あー、そうだったわね」

ほむら「これから魔女狩り、か……はぁあ、めんどくさい」

さやか「ほらほらテンション上げてっ」

ほむら「でも……」

まどか「ほむらちゃん、頑張ってね。無事に帰ってくるの、待ってるから」

ほむら「任せておきなさいっ!!」

さやか「振り幅でかくない?」

126: 2012/04/19(木) 23:14:30.06
さやか「とっとと街を見て回って、早くマミさんのごちそう食べようよ」

ほむら「そうね」

ほむら(佐倉杏子も含め、私たちは魔法少女四人で同盟を組んでいた)

ほむら(同盟内でグリーフシードの奪い合いは言語道断。そんな事態にならないようにするために)

ほむら(魔女捜索は当番制にし、毎日四人のうち二人で行動するようにしていたのだった)

さやか「今日は魔女出ないでほしいなぁ。せっかくパジャマパーティーしてるんだしっ」

127: 2012/04/19(木) 23:18:03.28
ほむら(ワルプルギスの夜を二週間後に控えた今も、この時間軸では未だに平穏が保たれている)

ほむら(……やっぱり、私はこの平和な世界を)

ほむら(いつまでも楽しいと思える時間を守りたい)

ほむら(そろそろ話しておくべきかしら。ワルプルギスの夜が来ることを、みんなに……)

128: 2012/04/19(木) 23:20:53.92
さやか「どうしたのほむら。俯いちゃってー」

さやか「やっぱまどかと一緒に居たかった? あんたまどか大好きだもんね」

ほむら「……」

さやか「そういやさ、まどかが不思議がってたよ。どうして自分なんかに優しくしてくれるのかって」

さやか「……ねえ、聞いてる?」

ほむら「美樹さやかは、魔法少女になってどう思った?」

さやか「!」

129: 2012/04/19(木) 23:23:29.72
ほむら「いくつもの魔女と命がけで戦って……そんな毎日が氏ぬまで続くのよ」

ほむら「後悔した?」

さやか「いんや」

さやか「あたしにはほむらもマミさんもいるし。杏子はおまけだけどっ」

さやか「街の平和を仲間と一緒に守ってるんだから、後悔なんてあるもんか」

ほむら「……」

さやか「ねえほむら。あたしの考え過ぎならそれでいいんだけど」

さやか「最近何か悩んでるよね」

130: 2012/04/19(木) 23:26:24.69
ほむら「えっ?」

さやか「顔とか見てりゃ分かるって。みんなも心配してた」

さやか「意地張ってないでさ、いつでも相談してくれたっていいんだぞー」

さやか「お節介かもしんないけど、あたしなら協力でも何でもするからさっ」

ほむら「どうして……」

さやか「そんなの決まってるよ」

さやか「あたしら、友達じゃん」

131: 2012/04/19(木) 23:32:35.69
ほむら「ふふっ」

ほむら「そうね。友達なんだから」

ほむら「協力でも何でもするって言ったこと、忘れないようにね」

さやか「うぐっ、なんか今すっごいヤな予感したんだけど!」

さやか「余計なこと言うんじゃなかったかなぁ」

ほむら「……ありがとう。さやか」

さやか「えっ? ちょ、ほむら今あたしのこと名前だけで……ってこら、先々歩くなー!」

132: 2012/04/19(木) 23:36:05.86
さやか「ただいまー。今日も魔女どもをあっさり退治してきましたよっと!」

マミ「お疲れさま。二人ともさすがね」

ほむら「……」

マミ「あ、暁美さん? どうしたの。落ち込んでるみたいだけど」

さやか「ほむらー、もう気にすんなって。誰だってヘマすることくらいあるし!」

マミ「あら」

ほむら(道に躓いて転ぶなんて、ついてない……)

マミ「晩ご飯食べて元気出しましょう。ねっ? いい子だから元気になって~」

ほむら(しかもさやかの前で……惨め……)

133: 2012/04/19(木) 23:42:25.28
ほむら「お風呂に入る順番を、ジャンケンで?」

マミ「ええ。うちの浴槽では一度に三人までが限界だから、二組に分けようと思うの」

マミ「公平にジャンケンで決めたらいいかなって」

さやか「賛成です! うまいことやればマミさんとお風呂で二人きりグヘヘヘ」

マミ「ひっ!?」

杏子「さやかとは絶対入りたくねー」

まどか「私は誰と一緒になるのかなぁ」

ほむら(負けてはならない……絶対に、まどかと二人で!)


さやか「準備はいい? グーとパーしか出しちゃだめだからね。いくよー」

さやか「ジャーンケーン」

全員「ポン!」

134: 2012/04/19(木) 23:45:15.20
カポーン

ほむら「まどかと一緒がよかった……」

杏子「気が滅入るやつだなぁ。また機会はあるって。そうしょげんなよ」

ほむら(今日はついてない……)

杏子「背中流してやるから元気出せ。なっ!」

ほむら「……え?」

135: 2012/04/19(木) 23:48:25.74
ゴシゴシ

杏子「綺麗な背中してやがる。普段外で走り回ったりしてないだろ」

ほむら「ずっと入院してたから」

杏子「入院? 何か病気でも持ってたのかい」

ほむら「別に何でもいいでしょ。魔法少女になってからは関係の無いことよ」

杏子「そうだけどよ」

杏子「あんたさぁ、もうちょっと手のうち見せてくれてもいいんじゃない?」

ほむら「……」

136: 2012/04/19(木) 23:50:40.48
杏子「……ま、いっか。そんなに話したくないならさ」

杏子「ほむらはどう転んだって、あたしの敵に回ることはなさそうだし」

ほむら「私なんかをそんなに信用してどうするの」

杏子「信用してるっつーか、何て言うか……」

杏子「どう言えばいいかなぁ……あ、背中流すぞ」

ザパーン

ほむら「ん……ありがと」

137: 2012/04/19(木) 23:53:36.85
杏子「ほむら、人には冷たい素振りばっか見せてるけど」

杏子「本当は優しいだろ」

杏子「分かるんだよ。あたしの親父も超がつくほどのお人好しだった」

杏子「そういう奴は大抵、どうにもできない孤独を抱えてるもんさ」

杏子「ほむらは、あたしの親父と同じで、寂しい目をしてる……」

ほむら「……よく、分からないわ」

杏子「あたしも何言ってるのか分かんね。のぼせちまったかなぁ」

杏子「そろそろ上がるか」

138: 2012/04/19(木) 23:54:12.78
ほむら「待って」

杏子「ん、どした?」

ほむら「えっと……」

ほむら「せ、背中っ、洗ってあげる」

杏子「そうかい。そう言うんなら、頼もうかな」

ほむら「任せておきなさい」

ほむら「……杏子だって、十分お人好しよ」ボソ

139: 2012/04/20(金) 00:00:54.21
―深夜・寝室―

さやか「そんで、その子が男子連中に言ったわけよ。『それ雲丹じゃないよ、プリンだよ』って」

杏子「マジかよ。ほっときゃいいのに馬鹿みてー」

マミ「勇気があるのねぇ。年下なのに私よりすごいわ」


まどか「うー……」

ほむら「まどか、眠いの?」

まどか「うーん……」

ほむら「私の隣でおやすみ」

まどか「うん……おやすみ、ほむらちゃん」

まどか「くぅ……」

ほむら(寝顔も可愛いわ)

140: 2012/04/20(金) 00:05:20.23
まどか「んぅ、ほむらちゃ……すぴぃ」

ほむら(思えば布団に入って寝るなんて久しぶりね)

ほむら(まどかを見守り、魔女を狩る毎日だったから)

さやか「あー、まどかもう寝ちゃった?」

ほむら「ええ。もうぐっすり」

杏子「あたしも寝るか。さやかの話つまんないし」

さやか「んなっ!」

141: 2012/04/20(金) 00:11:55.08
さやか「ぐぅ……きょうすけぇ」

杏子「さやかの、あほ……すぅ」

ほむら(他のみんなも、すっかり夢の中。幸せそう)

マミ「あら、暁美さんも眠れないの?」

ほむら「まだ起きてたの」

マミ「ふふ。みんながお泊りに来てくれたことが嬉しくて、興奮しちゃって」

マミ「しょうがないから、夜風にでも当たって来ましょうか」

ほむら「いってらっしゃい」

マミ「あなたも来るのよっ。起きてるなら付き合いなさい」

ほむら「……まあ、いいけど」

142: 2012/04/20(金) 00:15:23.73
―マンション屋上―

マミ「暁美さんとはここで初めて出会ったのよね」

ほむら「そうだったかしら」

マミ「あの時、暁美さんがグリーフシードを持ってきてくれなかったら今頃どうなってたことか」

ほむら「ただの気まぐれよ。あなたが予想以上に手こずってたから、様子を見にきただけ」

マミ「でも、助けてくれたことに変わりないわ」

143: 2012/04/20(金) 00:18:14.94
マミ「あの日の私、少しナーバスになっていたの」

マミ「気分が落ち込んでた。いつまでも一人で戦い続けることに、嫌気がさしていた」

マミ「魔女退治にも支障を来すぐらい、調子を崩していたの」

マミ「そんな時にあなたが現れて、助けてくれて……本当に嬉しかった」

ほむら「……そう」

マミ「魔法少女って普通、出会い頭から睨み合うのが普通でしょ? ライバルなんだから」

マミ「あなたは違ったけど」

ほむら「だからそれは気まぐれだって」

マミ「弱ってる魔法少女を見つけたら、普通はとどめを刺しに来るわ」

マミ「いくら気まぐれが働いたって、せいぜい無視して帰るだけよ」

144: 2012/04/20(金) 00:23:24.00
マミ「私はあなたに救われたの。だからこれだけは言わせて」

マミ「ありがとう」

ほむら「……」

マミ「これからもよろしくね。……ふぁあ、話してたら眠くなってきちゃった」

マミ「そろそろ戻りま――」

ほむら「感謝なんて、されたくないわ」

マミ「……えっ?」

145: 2012/04/20(金) 00:26:31.19
ほむら「先輩のくせに情けないこと言わないで」

ほむら「あなたは強がってかっこつけてるぐらいが丁度いいの」

ほむら「そのほうがあなたらしくて……私は好きよ。マミ」

マミ「まあ。ふふっ……後輩に言われちゃったなぁ」

マミ「私も、優しいくせにツンツンしてるあなたが好きよ」

ほむら「……ふん」

146: 2012/04/20(金) 00:31:22.24
マミ「すぅ……」

ほむら(マミも眠ったわね。未だに起きているのは私だけ)

ほむら(どうやって眠ればいいんだっけ)

ほむら「……今日は、楽しかったなぁ」

ほむら(こんなに幸せで満たされたのはいつ以来かしら)


ほむら(壊れてほしくない。いつまでも、この幸せを私のものにしていたい)

ほむら(戦いたい)

ほむら(まどかはもちろん、かけがえのない仲間たちも含めて……)

ほむら(みんなと笑い合える未来のために、戦いたい)

149: 2012/04/20(金) 23:51:34.71
―AM5:00―

ほむら「者ども、早く起きなさい」

さやか「まだねむい……」

杏子「朝飯までほっとけ……」

マミ「もう。この二人はしょうがないわね」

150: 2012/04/20(金) 23:54:22.97
ほむら「さやか、白馬に乗った王子様が迎えにきたわよ」

さやか「きょうすけー!」ガバッ

ほむら「杏子、早朝限定販売のスイーツを買いに行くわよ」

杏子「つれてけ!」ガバッ

さやか・杏子「……あれ?」

ほむら「まどろみに支配された人間は、欲望を突かれると飛び起きることがあるの」

マミ「言葉も出ないわ……」

151: 2012/04/20(金) 23:57:27.62
―リビング―

さやか「まだ5時じゃん。なんで起こすのさー」

マミ「暁美さんが、魔法少女だけで話したいことがあるみたいなの。鹿目さんには内緒でね」

杏子「ふーん。大事なことなのか?」

ほむら「ええ、とっても重要なことよ。それだけに心の準備をしてほしいのだけど」

さやか「心の準備ねぇ……とりあえず話してみてよ」

ほむら「ええ」


ほむら「二週間後、ワルプルギスの夜が来る」

152: 2012/04/21(土) 00:00:41.11
―寝室―

まどか「ん、さむい……ふとん~」

まどか「……あれっ、誰もいないや。どーして?」

QB「やあ。おはようまどか」

まどか「あ、キュゥべえ。おはよー」

QB「マミたちならリビングで魔法少女会議を開いているよ」

まどか「会議かぁ。私は魔法少女じゃないから、呼ばれなかったんだね」

まどか「ちょっと寂しいな」

QB「ほむらは相変わらず、君が魔法少女に関わることを良く思っていないみたいなんだ」

まどか「うん、知ってる……」

まどか「じゃあ会議が終わるまで二度寝してようかな。眠いし……ふぁあ」

QB「それもいいけど、まずは僕の話を聞いてくれないかい? とても重要なことなんだ」

153: 2012/04/21(土) 00:05:40.04
さやか「わるぷるぎす? 何だかぷるぷるした名前」

杏子「ばーか。魔女の名前だよ」

マミ「長い長い歴史の中で語り継がれてきた、恐ろしく強大な魔女のことよね」

マミ「そのワルプルギスが見滝原に来るなんて……」

ほむら「この地図を見て。出現予測は円で囲ってある範囲。一番確率が高いポイントは――」

さやか「待って待って、もうちょっとゆっくり話してよ。わけわかんないって!」

ほむら「……そうね。ごめんなさい」

154: 2012/04/21(土) 00:09:15.22
まどか「わるぷるぎす……そのとっても強い魔女がこの街に来るから、ほむらちゃんたちが作戦会議してるんだね」

QB「その通り。ワルプルギスが通り過ぎた地は大災害に見舞われ、一般人にも多大な被害をもたらすだろう」

まどか「でもキュゥべえはどうして、魔法少女でもない私にそんなこと教えてくれるの?」

QB「君もいつ契約することになるか分からないからね。知っておくべきだと思ったんだ」

QB「それに、相手が相手だ。四人がかりだって倒せないかもしれない」

まどか「え……」

155: 2012/04/21(土) 00:11:40.34
さやか「そんなに強いの?」

ほむら「何度も戦ったけど、いつもだめ。どれだけ氏にかけたか分からないわ」

杏子「おいおいちょっと待てよ。何度も戦ったって、あのワルプルギスと? お前何者なんだ」

マミ「どうして出現場所まで分かるの? ワルプルギスの行動なんてそう簡単に予測できないはずよ」

ほむら「それは……」

156: 2012/04/21(土) 00:19:54.63
まどか「私が魔法少女になったら、ほむらちゃんたちを助けることができるのかな」

QB「もちろんさ。君の願い次第では、ワルプルギスだってそれほどの脅威にもならないかもしれない」

まどか「どういうこと?」

QB「どうやら君はとてつもない魔力を秘めているみたいなんだ」

QB「契約すれば、少なくともここに集まった五人の中では最強の魔法少女になるだろう」

まどか「私が……?」

157: 2012/04/21(土) 00:24:08.51
杏子「ワルプルギスの夜が来るまでの一ヶ月間を、何度も繰り返してきた?」

マミ「なるほど……時間遡行者ってわけね」

さやか「じかんそこー? 何ですかそれ」

杏子「ほむらは今から二週間後の未来から来たってことさ」

さやか「ええー!?」

158: 2012/04/21(土) 00:27:46.95
QB「僕は今ここでまどかが契約し、魔法少女となって」

QB「きたるワルプルギスの夜に備えるのが賢明だと思うんだけど」

QB「無理強いはできない。全て君の判断に委ねるよ」

まどか「契約……」

まどか「キュゥべえ。私、魔法少女に――」

159: 2012/04/21(土) 00:34:47.99
ほむら「信じてもらえるとは思っていないけど……」

マミ「? 変な子ね。信じないわけないじゃない」

杏子「あたしら魔法少女だぞ。時間移動なんて全然不思議じゃねーさ」

さやか「てか、疑う理由なんかこれっぽっちも無いよ。親友だもんねー」

ほむら「みんな……」

ほむら(今までは誰も信じてくれなかった)

ほむら(けれどそれは、今までの私に信頼がなかったから、だったのね……)

ほむら(今度こそは越えられるかもしれない。ワルプルギスの夜を、みんなで)

160: 2012/04/21(土) 00:40:23.00
まどか「私、魔法少女にはまだならない」

まどか「せめてほむらちゃんが私を止める理由を知ってからじゃないと……」

QB「まどかはほむらのことを信頼しているんだね」

まどか「うんっ」

まどか「どうしてか自分でも分からないんだけど」

まどか「ほむらちゃんとは、ずっと昔から仲良しだったような気さえするんだ」

まどか「だから私、ほむらちゃんのことを信じる!」

QB「……それじゃあ、話したいことは話したし、僕はもう行くね」

QB「契約が必要になったらいつでも呼んでよ。どこだろうとすぐに駆けつけるから」

161: 2012/04/21(土) 00:45:04.07
さやか「とりあえず、今回の作戦会議はここまでにしない?」

杏子「そういやもう七時じゃん。マミ、朝飯ー!」

マミ「はいはい。今用意するわね」

ほむら「みんな、お願いがあるの」

ほむら「まどかは一般人。巻き込みたくない。だから……」

さやか「分かってるよ。ほむらがまどかをすっごく大事にしてるのは知ってるし」

マミ「安心して。なるべく巻き込まないようにするから」

ほむら「うん……ありがとう。本当に」

杏子「朝飯まだかよ」

162: 2012/04/21(土) 00:49:52.80
ガチャ

まどか「おはよー。みんな早いね……ふぁあ」

ほむら「おはようまどか。よく眠れた?」

まどか「うーん……まだ眠いや。あはは」

さやか「マミさんが朝ご飯作ってくれてるから、着替えて待ってよ」

まどか「うんっ」


ほむら(決戦は、二週間後)

163: 2012/04/21(土) 00:55:58.76
ほむら(今回は私の時間停止魔法が使用不可のため、仲間との連携が一番のカギとなる)

ほむら(私たちは魔女狩りの中で着実に実力を増していき)

ほむら(グリーフシードを蓄えながら、繰り返し作戦を練ってきた)

ほむら(備えは万全)


ほむら(……全てはまどかのためだった)

ほむら(だけど今は、私の希望を支えてくれる仲間たちがいるっ!)

165: 2012/04/21(土) 23:48:47.95
―決戦当日―

さやか「うっわー、すごい嵐」

杏子「こりゃ菓子食ってる場合じゃねーな」

マミ「スーパーセルね。あの雷雲の中に?」

ほむら「ええ、ワルプルギスの夜が居る」

ほむら「みんな、まずは奴のあらゆる部位を攻撃し、弱点を模索しながらダメージを与えていくのよ」

ほむら「決して無茶な真似はしないで。何を思いついても必ず念話で相談すること」

ほむら「先走ってはだめよ」

さやか「りょーかい、ほむら隊長っ!」

ほむら「……行きましょう」

166: 2012/04/21(土) 23:54:39.62
―二時間後・避難所―

まどか「外はすごい風だよ……戦いはもう始まってるのかな」

QB「だろうね。かつてないほど壮絶な戦いが繰り広げられているに違いない」

QB「全滅したっておかしくないよ」

まどか「ぜ、全滅……」

まどか「キュゥべえお願い。私、みんなのとこに行きたい」

QB「ああ、見届けてあげるといい。君がその目で確かめるんだ。彼女たちの結末を」

167: 2012/04/21(土) 23:59:33.48
さやか「うわ、やば……」

杏子「どうしたさやか。危ないって思うなら下がってなよ」

さやか「いや大丈夫。やれるよ」

杏子「そうかい」

杏子「そんじゃーあたしらの全力、あいつに見せてやっか」

さやか「もちろんっ」

168: 2012/04/22(日) 00:04:01.82
マミ「攻撃のほとんどが通用しない。やっぱり懐に潜り込んで至近距離の一発が手っ取り早いかしら」

ほむら「使い魔の群れや飛んでくる建物を掻い潜り、あいつに近づく手立てがあるの?」

マミ「まあね」

マミ「だから援護射撃をお願い」

ほむら「……絶対、氏なないで」

マミ「先輩に任せなさいっ」

169: 2012/04/22(日) 00:10:54.26
ほむら(ワルプルギスは強かった。ダメージなど微塵も感じていないかのようだ)

ほむら(それに加えて、あいつは本気なんてこれっぽっちも出していない)

ほむら(全ての攻撃が無駄に思えた)


ほむら(みんなが持てる限りの魔法を出し尽くした、その時だった)

ほむら(私たちのソウルジェムが、揃って陰りを見せ始めたのは)

170: 2012/04/22(日) 00:14:40.87
さやか「ごめん、杏子。実はあたし、もうグリーフシード持ってないんだ。使いきっちゃった……」

杏子「馬鹿、だったら変身を解け! あたしが安全なところまでつれてってやるから……」

さやか「無駄だよ。そんなことしたって何にもならない」

さやか「だったらせめて、やれるだけのことはやらないと」

杏子「さやかてめえ、まともに歩きもできねえくせに何言ってんだ」

さやか「気づいちゃったんだ、あたし」

さやか「ワルプルギスはずっと笑っているけど、心に響いてくるのは誰かの悲鳴」


さやか「魔法少女たちの悲鳴なんだ――」

171: 2012/04/22(日) 00:18:19.41
さやか「同じ魔女同士なら、あいつに少しでもダメージを与えられるかもしれない」

杏子「何を言ってるんだよ。お前おかしいぞ……おい、何する気なんだよっ!」

さやか「後始末は頼んだよ。あんたとは言い争ってばっかりだったけど」

さやか「最高の喧嘩友達だった」

杏子「さやか? おい、お前ソウルジェムが……」

さやか「 」

杏子「なっ……何だ、こりゃ」


OKTAVIA VON SECKENDORFF
「――――――――――――――」


杏子「さや、か」

杏子「この魔女が、さやかだって言うのか」

杏子「なあ、おい……?」

172: 2012/04/22(日) 00:19:50.98
ほむら「マミッ!」

マミ「あーあ、失敗しちゃった。魔力を集中すれば突貫できると思ったんだけど」

マミ「でもこれくらいの怪我、魔法で痛みを消してしまえば」

ほむら「やめて。一旦退却しましょう? 分があまりにも悪過ぎる」

マミ「諦めたらそこで終わりよ。きっと私たちに次なんて無い」

マミ「それに……後輩の前で、かっこ悪いところばかり見せられないじゃない?」

173: 2012/04/22(日) 00:21:42.78
マミ「魔法少女は希望を振り撒き、魔女は絶望を撒き散らす」

マミ「だったら、私たちがワルプルギスを超えるだけの希望を振り撒かないと」

マミ「一人だったらとっくに諦めていたでしょうね。だけど私にはあなたたちがいる」

マミ「もう一人ぼっちじゃない。何も怖くなんかない」

マミ「いくらでも頑張れるわ」

マミ「さようなら暁美さん。ありがと。あなたが居たから、私は――」

174: 2012/04/22(日) 00:23:30.91
杏子「さやか……初めて会った日、お前はあたしに好き勝手なこと言いやがったよな」

杏子「その言葉の一つ一つが胸にグサグサ刺さってよ、すげぇ痛かったんだぞ」

杏子「超が付くほどムカついて、終いには頃してやりてぇって思った」

杏子「……」

杏子「待ってろよ。今こそ、相打ちになってでもてめぇを頃す」

杏子「あたしがこの手で、その醜い姿を散らしてやるよ」


杏子「ごめんな、ほむら……あたしもいくわ」

杏子「愚痴とか聞いてくれて、あんがとな」

175: 2012/04/22(日) 00:27:10.82



ほむら「マミも、さやかも、杏子も、あの魔女に」

ほむら「ワルプルギスのために、みんな……」


さやか『お節介かもしんないけど、あたしなら協力でも何でもするからさっ』

さやか『あたしら、友達じゃん』


杏子『ああ、鯛焼き欲しいのか。食うかい?』

杏子『ほむらは、あたしの親父と同じで、寂しい目をしてる……』


マミ『つれないのね。同じ街に住んでいるのなら、私たちはパートナーになるしかないのに』

マミ『チームプレイの勝利だと思わない?』


ほむら「せっかく仲良くなれたのに」

ほむら「こんなのって、ないよ……っ」

176: 2012/04/22(日) 00:33:21.01
ほむら「結局は一人で戦うことになるのね」

ほむら「私のソウルジェムは、まだ穢れ切っちゃいない。グリーフシードも残ってる」

ほむら「あがくしかない。最後まで」


まどか「はぁっ、はぁっ……やっと見つけた」

まどか「見つけたよ、ほむらちゃん!」

177: 2012/04/22(日) 00:36:57.64
ほむら「まどか!? どうしてここに……」

QB「僕がつれてきたんだ。ひょっとしたらまどかなら、この状況を何とかできるかもしれないからね」

まどか「キュゥべえ、決めたよ。私あなたと契約――」

ほむら「だめよっ、そんなことは許さない!」

まどか「ほむらちゃん、今はそんなこと言ってる場合じゃ……」

QB「ほむら、君はいつまで意地を張っているつもりだい?」

QB「もう分かってるはずだよ。一人ではどうにもならないってことが」

178: 2012/04/22(日) 00:39:38.05
ほむら「そんなことはない」

ほむら「待っててまどか。私が絶対、みんなの仇を取ってみせるから……!」


まどか「え……?」

まどか「仇って、どういうことなの」

QB「他のみんなは倒されてしまったということだろうね。ワルプルギスの夜を相手にして」

まどか「そんな」

QB「君がもっと早くに契約していれば、こんなことにはならなかっただろうね」

まどか「っ、うぅ……」

179: 2012/04/22(日) 00:45:09.10
QB「まどか。君がどうしてもというのなら、特別に道を開いてあげよう」

QB「一人でも戦い続けるほむらの姿を見て、君が決断するんだ」

QB「僕と契約するかどうかを。何を願って魔法少女になるのかを」

まどか「うん……キュゥべえ、その道へ案内して」


まどか「ここは?」

QB「ここを道なりに進んでいくといい。その先のさらに奥を行けば、ほむらを見つけられるはずだ」

QB「僕は先に行っているからね」

まどか「うん、分かった」

まどか「ほむらちゃん……」

180: 2012/04/22(日) 00:51:42.90
ほむら「まどかにはあんなこと言ったけど、どう頑張ったって勝てっこないわ」

ほむら「やむを得ない……時間を巻き戻す」

ほむら「今回の経験があるから、きっと次もまた、みんなと仲良くなれるはず」

ほむら「だからもう一度、みんなに会いに」

ほむら「みんなに、会いに……」


ほむら「どうして」

ほむら「なぜ」

ほむら「どういうことよ……どうして!?」

181: 2012/04/22(日) 00:53:38.64
ほむら「どうして巻き戻らないの」

ほむら「いつもならちゃんと発動できるのに、なんでこんな時に!!」

QB「やっぱりね。予想した通りだよ」

QB「君のソウルジェムは限界だったんだ」

ほむら「キュゥべえ……」

QB「君が時間遡行者だということには気づいていたよ」

QB「だからもっと早くに忠告するべきだったかな」

ほむら「何のことよ……っ」

QB「やはり君は欠片も感知していなかったみたいだね」


QB「ソウルジェムに宿る自分の魂が、すっかり衰えてしまっていることに」

182: 2012/04/22(日) 00:57:21.35
QB「宇宙にだって寿命はあるんだ」

QB「長く生きていれば魔法少女も老いていき、やがて寿命を迎えてしまうのは当然だろう?」

QB「生きた時間が長ければ長いほど人間の精神は成長していく」

QB「第二次性徴期の頃の心は失われ、達観し、現実味の無い希望は抱かなくなる」

QB「魔法少女を支えるのは純粋な祈りの力なんだ。それが薄れるほど成長してしまった君は」

QB「終いには得意な魔法さえ使えなくなってしまったというわけさ」

183: 2012/04/22(日) 00:59:38.10
QB「僕たちはこの現象を衰えだと認識しているよ」

QB「こうなってしまうとエントロピーを凌駕することは難しいからね。劣化としか言いようがない」

ほむら「……」

QB「前兆はいくらでもあったはずだよ」

QB「例えば、さっきも言ったように魔法が使えなくなってしまったり」

QB「大切な人がひと際恋しくなったりね」

184: 2012/04/22(日) 01:02:19.80
まどか「ひどい……」

ほむら「まど、か……聞いてたの?」

QB「仕方ないよ。彼女一人では荷が重過ぎた」

ほむら「まさか」

ほむら「まどか、そいつの言葉に耳を貸しちゃだめえええええ!!」

QB「でも、彼女も覚悟の上だろう」

まどか「そんな、あんまりだよ。こんなのってないよ……」

QB「諦めたらそれまでだ」

185: 2012/04/22(日) 01:05:21.56
QB「でも、君なら運命を変えられる」

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい」

QB「そのための力が、君には備わっているんだから」

まどか「本当なの?」

まどか「私なんかでも、本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」

QB「もちろんさ」

QB「だから僕と契約して、魔法少女になってよ」


まどか「もう誰も氏なせたくない」

まどか「だから叶えて。私の願いは――」

186: 2012/04/22(日) 01:10:52.44
――――――
――――
――

ほむら「ぐっ、ううぅ……」

QB「目が覚めたかい?」

ほむら「あなた、は……ここは?」

QB「記憶が混乱しているみたいだね。無理もない」

QB「まどかの願いによって、君のソウルジェムはすっかり若返った」

QB「だけど困ったことに、君の魂に干渉した際、記憶がいくつか飛んでしまったみたいなんだ」

QB「まあそんなのは大した問題ではないよね。君は何度も同じ時間を繰り返してきたのだから」

QB「思い出の一つや二つ失ったところで、別に構わないだろう?」

187: 2012/04/22(日) 01:14:29.50
ほむら(随分長い間眠っていたような気がする)

ほむら(私は何をしていたんだっけ)

ほむら(そうだ……ぼんやりと思い出してきた)

ほむら(確か……)


ほむら(巴マミも、美樹さやかも、佐倉杏子も)

ほむら(私の言うことを信じないまま)

ほむら(絶望の沼に飲み込まれていった)

ほむら(私は一人でワルプルギスの夜に立ち向かい)

ほむら(そして、この有様)

188: 2012/04/22(日) 01:17:52.06
QB「君を若返らせたついでに、まどかはワルプルギスと戦ったよ」

QB「本当にものすごかったね、変身したまどかは」

QB「彼女なら最強の魔法少女になると予測していたけれど」

QB「まさかあのワルプルギスの夜を一撃で倒すとはね」

ほむら(私はまた、まどかを魔女にさせてしまった……)

189: 2012/04/22(日) 01:21:01.71
QB「ま、後は君たち人類の問題だ。僕らのエネルギー回収ノルマはおおむね達成できたしね」

ほむら「……」

QB「戦わないのかい?」

ほむら(まどか……たった一人の、私の友達)

ほむら「私の戦場は、ここじゃない」

QB「暁美ほむら。君は……」


ほむら(繰り返す。私は何度でも繰り返す)

ほむら(同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る)

ほむら「まどか。あなたのためなら、私は独りでも戦い続ける」

190: 2012/04/22(日) 01:23:47.07
QB「暁美ほむらのソウルジェムは若返り、また時間操作の魔術を操れるようになった」

QB「まどかが願ったおかげでね」

QB「つまり、暁美ほむらの存在はまどかの願い、まどかの因果によって延命されたわけだ」

QB「今まではほむらの祈りでまどかの因果が蓄積されていたみたいだけれど」

QB「次からはほむらとまどか、二人の祈りがまどかの因果を集束する」

QB「宇宙の法則さえ捻じ曲げかねない、途方も無い力がまどかに宿ることだろう」


QB「今となっては、ほむらの行動があらゆる運命を変えていくはずだ」

QB「君たちが望む未来だって、見つかるかもしれないね」



ほむら「大切な仲間たち」 おしまい

192: 2012/04/22(日) 01:29:08.21
おつおつー。

193: 2012/04/22(日) 06:38:47.52

実にいい意味でのスレタイ詐欺だった

194: 2012/04/22(日) 10:32:23.64

引用元: ほむら「大切な仲間たち」