1: 2021/07/09(金) 18:16:13.177
教師「本日のミッションは立てこもり犯の狙撃だ」

教師「ある企業ビルに爆弾を巻いて立てこもっている。クビにされたことを根に持っての犯行だそうだ」

教師「もし爆弾が爆発すれば、立てこもってる1フロアは吹っ飛ぶだろう」

女「射頃してよろしいんですか?」

教師「いや、爆弾の入手経路が気になる。生かして捕えたい」

教師「よって、犯人が手に持ってるスイッチを狙撃してもらう。その後、部隊が突入する」

女「分かりました」

女「それじゃ行こうか!」

女友「うん!」

11: 2021/07/09(金) 18:19:19.638
女「あのビルね……」

女友「えー、人質の数20、犯人の右手にスイッチを確認」

女「距離と風は?」

女友「距離820m、風速北西に6m」

女「了解」

女友「かなり興奮してる。一弾で決めないと、確実に自爆されるよ」

女「分かってる」

15: 2021/07/09(金) 18:21:24.347
女「……」

女(ミッションの時はいつもそう。緊張する……心臓がドキドキする……)

女(だけど、外したら人質20人の人命が失われるかと思うと……不思議と震えが止まる)

女(プレッシャーで笑みすら浮かんでしまう……)

女(私ったらまだまだ未熟……)

女(今!)



犯人「うわっ!?」ビシッ!



隊長「今だ、突入ーっ!!!」

ドドドドド…

20: 2021/07/09(金) 18:24:31.440
女(今日は最近知り合った人とデート……)

男「この前、ミッション系の学校に通ってるって教えてくれたけど……」

女「うん」

男「ミッション系ってやっぱり厳しいんでしょ?」

女「まあね、厳しいよ」



教師「十発中九発命中か……全然ダメだ。腕立て伏せ100回!」

女「はいっ!」

22: 2021/07/09(金) 18:27:45.134
男「神様に祈ったりするんだ?」

女「うん。頼りきりはよくないけど、やっぱり最後は神様に祈っちゃう」



女「赤のコードか青のコードか……どちらが正解かは絞れない」

女(神様……)パチンッ

女「ふぅー、解除成功」




男「天国や天使が見えたことってある?」

女「あるよ!」

男「やっぱりそういうことってあるんだなぁ」



女友「大丈夫!?」

女「アハハ……生きてる。お花畑が見えたよ……」

23: 2021/07/09(金) 18:30:40.382
女「男君は普段どうしてるの?」

男「大学に通ってるよ。講義は休んだことない」

女「わっ、真面目なんだ」

男「そんなことないよ。講義中は妄想ばかりしてるし……」

女「どんな妄想?」

男「講義中にテ口リストが攻め込んできたらどうしよう……とか」

女「あ、私もそういうのよくやる!」

男「え、そうなの!?」

女(シミュレーションしておくのとしないのじゃ、ミッションの成功率が全然違うもの)

24: 2021/07/09(金) 18:33:24.610
男「それで……今は漫画家を目指して漫画を描いてるんだ」

女「そうなんだ」

男「在学中のデビューを目指してて……今も新作を描いてる」

女「すごい、どんな漫画?」

男「主人公がテ口リストと戦うって話なんだけど……」

女「へぇ~」

男「よかったら読んでくれる?」

女「うん、ぜひ読ませて!」

25: 2021/07/09(金) 18:36:32.122
男「どう?」

女「とても面白いよ!」

男「ホント、ありがとう!」

女「ただ、素人さんがテ口リストと戦おうとするシーンはちょっといただけないかも」

女「やっぱりこういうのは専門家に任せた方が……」

男「なるほど」

女「それとここの発砲シーン、構え方が……」

男「ふむふむ……」

26: 2021/07/09(金) 18:39:31.113
男「ありがとう、とても参考になったよ!」

女「ご、ごめんなさい! 私ったらつい……」

男「なんだか本当にテ口リストと戦ったことあるような意見だったよ」

女「そんなことないってー(戦ったことあるなんてバレたらドン引きされちゃう)」

男「そういえば、女さんってよく見ると体引き締まってるよね」

女「そうかな?」

男「ひょっとしてジムに通ったりしてる?」

女「え、えーと……今度ジムに行く予定にはなってるかな」

男「スポーツもできるお嬢様ってステキだなぁ」

27: 2021/07/09(金) 18:45:59.372
トレーナー「入会希望者ですか?」

女「いいえ……ミッションをこなしに来たの」

トレーナー「は? ミッション?」

女「悪徳ジムのトレーナーを懲らしめるというミッションをね」

女「あなた、ジムに入会した女性にしょっちゅう暴行を働いてるようね」

トレーナー「おいおい、なにをいって――」

女「証拠もちゃんとあるわ。ほら、写真」

トレーナー「……!」

トレーナー「なるほど、嬢ちゃんも被害者の仲間入りしたいってか」

28: 2021/07/09(金) 18:47:40.835
トレーナー「いいだろう。一生男に恐怖するように“調教”してやるよォ!」ダッ

トレーナー「シッ、シシッ、シッ!」シュシュシュッ

女(速い……)

トレーナー「どうしたどうしたァ!」シュッ

女「さすが、ライセンスも持ってるだけあって、殴り合いは得意のようね」

女「だけど」

ガシッ!

トレーナー「ぐっ!?(首を……)」

女「頃し合いは慣れてないみたいね」ググッ…

29: 2021/07/09(金) 18:49:28.614
トレーナー「は、はな……せ……」メキメキ…

女「頃しはしない。ただし制裁の後、ブタ箱にブチ込まれる運命だけど」

女「ふんっ!」グッ…

トレーナー「ぐ、え……」ガクッ

ドサッ…

女「ミッション完了!」

31: 2021/07/09(金) 18:52:36.291
女「……」パァンッ! ビシッ

女「……」パァンッ! ビシッ

女友「ヒュウ、全弾命中」

女「腕立て伏せしないで済むよ」

女友「最近絶好調だね。なんだか生き生きしてる」

女「そうかな?」

女(もしかしたら、彼と知り合えたおかげかも)

女(彼とのデートが励みになって、ミッションにもいい影響をもたらしてる)

教師「腕を上げたな」ザッ

女「あ、先生」

33: 2021/07/09(金) 18:55:19.176
教師「さてはお前、恋をしているな?」

女「!?」ギクッ

教師「そう慌てるな。別に俺は恋愛を禁止したりしない。むしろどんどんやれ。俺にだって妻がいるしな」

教師「恋愛することによるモチベーションの向上は侮れん」

女「は、はい……」

教師「そして、子孫を作れ。増やせ。それが優れた素質を持つ者の義務だ」

女「もう、先生ったら……」

女友「この学校じゃなきゃ問題になってますよ」

教師「ハッハッハ」

35: 2021/07/09(金) 18:58:18.059
教師「話は変わるが、先日の立てこもり事件、爆弾の入手経路が分かった」

女「!」

女友「!」

教師「どうやら国内に巣食うテロ集団が、密かに横流ししていたようだ」

教師「逆恨みで自爆でもしてくれて、社会を混乱させてくれれば儲けもの、とな」

教師「近いうち、奴らは本格的なテロを起こすだろう。気を引き締めておけ!」

女「はいっ!」

女友「はいっ!」

37: 2021/07/09(金) 19:01:35.690
男「描き直してみたんだけどどうかな?」

女「すごくよくなったよ! 主人公の男の人、すごくかっこいいし……」

男「ありがとう」

男「ただ……」

女「?」

男「だけど何か足りないんだよな。今ひとつインパクトに欠けるというか」

男「それが分かれば、この作品でデビューするのも夢じゃない気もするんだけど……」

女(私の目からすれば十分面白いのに、自分に厳しい……自分で自分にミッションを課してる)

女(そこがステキ!)

39: 2021/07/09(金) 19:04:42.862
……

タッタッタ…

女「……」

女友「はぁ、はぁ、はぁ」

女「……」

女友「ゴ~ル。あ~、疲れた……」

女「……」

女友「ちょっと、さっきからどうしたの?」

女「ああ、考え事してて(彼の漫画に足りないもの……)」

女友「考え事しながら平然と10kmも走らないでよ」

ジリリリリリリ…

女「あ、呼び出しだ」

40: 2021/07/09(金) 19:07:30.365
教師「本日のミッションはテ口リストの掃討だ。連中がついに動き出したようだ」

女「はい」

教師「テログループはある大学の一角を占拠している」

教師「講義を受けていた学生も人質にされている。くれぐれも慎重に行動してくれ」

女「分かりました!」

女(大学か……まさかね)

41: 2021/07/09(金) 19:10:27.315
リーダー「いいか、大学のこのエリアは我々が占拠した!」

リーダー「氏にたくなければ、大人しく従ってもらう!」ジャキッ

テ口リストA「……」ジャキッ

テ口リストB「……」ジャキッ



男(まさか、日頃の妄想が現実になるなんて……)

ザワザワ…

「なにこれ?」 「なんかのイベント?」 「講義中だったのに……」

男(あまりの事態に、現実を受け入れられない学生も多い)

42: 2021/07/09(金) 19:13:11.893
リーダー「いっておくが……これはジョークやイベントなどではない」パァンッ!

パリィンッ!



ザワザワ… キャーッ!

男(本物だ……! 本物の銃だ……!)

学生「へっ、なにがテ口リストだ!」

学生「俺はレスリングやってんだ……あんな連中ぐらい……」

男「!」

43: 2021/07/09(金) 19:16:51.169
男「やめた方がいい」

学生「なんでだよ!」

男「こういう時は素人が戦っちゃダメだ」

学生「俺は素人じゃねえよ! 高校からレスリングをやってて……」



女『素人さんがテ口リストと戦おうとするシーンはちょっといただけないかも』



男「いや……彼らからすれば君だって素人だ。大人しく専門家が来るのを待とう」

学生「……分かったよ」

44: 2021/07/09(金) 19:20:18.929
テ口リストA「リーダー、警察と無線が繋がってます」

リーダー「よし、我々の要求は……」

リーダー「この大学を狙ったのは優秀な学生が多くいて、社会的影響も大きいから……」



男(警察と本格的な交渉が始まった。どうやら今の国政に不満があるようだ)

男(だけど、本当に僕には何も出来ないのだろうか?)

男(何か出来ることはないだろうか……)



テ口リストA「泣いてんじゃねえぞ、ガキ! 一人ぐらい撃ち頃したっていいんだ!」

女学生「は、はい……」ヒック



学生「クソがッ……!」

男(緊張がピークに達してる……このままじゃ誰かが暴走しかねない)

46: 2021/07/09(金) 19:23:13.441
男(よし……)

男「あ、あの……」

テ口リストA「なんだぁ?」

男「僕、趣味で漫画を描いてまして……」

テ口リストB「漫画?」

男「よかったら読んでくれませんか?」

リーダー「戦いは長丁場になるかもしれん。読んでみようじゃないか」

男「ありがとうございます」

男(流石にテ口リストと戦うやつはまずいから、前描いた他のやつを……)

47: 2021/07/09(金) 19:26:21.064
リーダー「ほう……」

テ口リストA「なかなか面白いなこれ!」

テ口リストB「ああ、どのキャラもイカしてる」

ワイワイ…

男「ありがとうございます!」

リーダー「なんならお前だけ解放してやろうか?」

男「いえ、そういうのは求めてません」

学生「お前いい奴だなぁ……」

48: 2021/07/09(金) 19:29:18.453
女(この中に犯人グループがいる……)ササッ

女(音で中の様子を確認……)

ハハハ… ワハハハ…

女(笑い声……? 和んでる……。警戒が解かれてる……。これはチャンス!)

女「ただいまより突入します」

教師『了解』

女(煙幕も用意したけど使わない。このまま突っ込む!)

バァンッ!!!

50: 2021/07/09(金) 19:32:02.373
女「全員動くな!」ジャキッ



リーダー「!」

テ口リストA「!」

テ口リストB「!」

ザワッ…

51: 2021/07/09(金) 19:34:46.513
テ口リストA「く、くそぉっ!」ジャキッ

女「無駄よ」

パァンッ!

テ口リストA「――あぐっ!」

女「警戒を解いてしまった時点であなたたちの負けは決まったの。大人しくして」

リーダー「……」

リーダー「投降する」ガシャッ

女「!」

リーダー「なかなか面白い漫画を読めた……シャバに未練はないさ。俺たちはあの学生に負けたようなもんだ」

女「漫画……?」

52: 2021/07/09(金) 19:37:14.812
女「!」ハッ

男「……」

男(顔を隠してても分かる……彼女は――)

女「……!」

女「ごめんなさい。このことについては後で説明するね」

…………

……

54: 2021/07/09(金) 19:40:13.050
男「そうだったのか……。ミッションっていうのは“任務”の意味だったんだね」

女「うん……。かなり実戦的な学校で、今のうちから任務をこなすの」

女「ごめんね、ちゃんと話せてなくて……」

女「お嬢様だと思ったら、正体はこんな野蛮な女で……引いちゃったでしょ」

男「そんなことないよ、素敵だよ!」

女「え……!」

56: 2021/07/09(金) 19:43:19.643
男「確かに驚いたけど……テ口リストや犯罪者と戦うなんてすごいことじゃないか」

女「ありがとう」

男「僕が君のために出来ることは少ないけれど……」

男「これからも彼氏として応援させて欲しい!」

女「うん、嬉しい……! 私、頑張る!」

男「それと……どうか氏なないで」

女「約束は出来ないけど、努力する!」

57: 2021/07/09(金) 19:46:56.903
……

男「新作ができたよ」

女「見せて見せて!」

女「あれ? ちょっと雰囲気変わったね」

男「主人公をかっこいい女の子にしてみたんだ」

女「この女の子のモデルってひょっとして……」

男「うん……君なんだ」

女「ありがとう!」

女「へえ~、射撃は私より上だね。私にはこの距離当てられないし」

女「あ、だけど格闘能力は私の方が上かも! 私ならこの打撃はかわせるし――」

女「この子をライバルだと思って、私も訓練に励まなきゃ!」

男(漫画のキャラと自分を冷静に比較してる……さすがだ)

59: 2021/07/09(金) 19:49:25.424
……

男「例の漫画、持ち込んだら編集さんも褒めてくれてさ」

男「デビューが決まったよ!」

女「やったね、おめでとう!」

男「お互い忙しくなるけど、これからも君と交際を続けさせて欲しい」

女「うん。私は任務、あなたは漫画。一筋縄じゃいかないミッションだけど、乗り越えていこうね!」

60: 2021/07/09(金) 19:52:58.755
教師「本日のミッションは、ある密輸組織の壊滅だ」

教師「敵もかなり武装している。お前たち二人は、狙撃で本隊をサポートしてくれ」

女「分かりました」

女友「それじゃ行こうか!」

女「うん、ミッションをこなして、この国の平和を守ろう!」







―おわり―

61: 2021/07/09(金) 19:57:26.559

教師はメチャクチャ強いんだろうな

62: 2021/07/09(金) 19:58:38.118
面白かった乙

引用元: 女「ミッション系の学校に通ってて……」男「へえ、お嬢様なんだ」