2: 2012/03/21(水) 19:24:17.37
澪「いい加減真面目にやれ律っ」ベチッ 律「くふっ!」
澪「わわわっ……やめろっ律!」ボスッ 律「ン゛ン゛ッ!」
澪「なっ律! 私のケーキだぞ! 食うな!」グリッグリッグリッ 律「あっあっあっ……!」
澪「来るなぁ! 来るなぁ!」ズドムッ 律「あおおーーっ!」
3: 2012/03/21(水) 19:24:59.18
唯「今日も澪ちゃんとりっちゃんは、仲いいよねぇ」
梓「そうですか……?」
梓「最近の律先輩はことあるごとにイタズラしてますし、澪先輩も必氏なのか手加減がなくなってきていますよ?」
梓「あっほら……今のなんてテンプルとらえました。律先輩の膝が笑っていますね」
唯「う~ん。でもたしかに、ちかごろのりっちゃんは、すこし変だよね。みょうに機嫌がいいっていうか」
梓「テンションがウザ高いですよね。おかげで澪先輩もたまったものではなさそうです」
4: 2012/03/21(水) 19:25:29.18
唯「あずにゃん、なにか知ってるかい?」
梓「解りませんが……まぁおおかた何か良いことでもあったんでしょう」
唯「ムギちゃんは?」
紬「………………」ボー
唯「ムギちゃん?」
梓「?」
紬「……え? ああっごめんなさい! お茶のおかわり淹れるわね!」
唯「んん?」
梓「ムギ先輩……」
5: 2012/03/21(水) 19:26:16.82
次の日
部室
紬「こんにちはー……あら誰も来ていないわ」
紬「今日は一番のりかしら……って物置から音がしてるわ。誰かいるのね」
紬「チラッ」
紬(りっちゃんだわ……何か探しているみたい。あっ今度は何やら考えこんでいるわ)
紬(夢中なのかしら? 私が部室に来てることも気付いてないようね。声かけてみようっと)
紬「りっちゃん」
6: 2012/03/21(水) 19:26:58.00
律「おひゃあっ!? むむむムギ!? いつからそこにっ?」
紬「ムムムムギです♪ 今来たところよりっちゃん」ニコリ
律「ふーびっくりしたー……心臓が止まるかと思ったぜー」
紬「ごめんねりっちゃん。何か探しものしてたの? 手伝おうか?」
律「いやーははは。いいんだムギ。ちょっとネタになるもの探してただけだから」
紬「ネタって?」
律「ん? ああ、澪をからかうためのネタさ。あいつ最近私のことガンガン殴るだろー? その仕返しさウッフッフ」
紬「……い」ボソッ
律「ん? どした?」
紬「ズルイ!」ズイッ
7: 2012/03/21(水) 19:27:30.97
律「…………へ?」
紬「りっちゃんばっかりズルイわ! 私も澪ちゃんに殴られたい!」
律「なっ……えっ……?」
律(なんだそれ。もしかしてムギも……なのかな?)
律「ええと……ムギ? 一応理由とかって聞いてもいいか?」
紬「うん……あのね、りっちゃんと澪ちゃんって叩いたり叩かれたりでスキンシップとってるじゃない?」
紬「私、ああいうのすごくいいな~って思ってて……」
律(うーんスキンシップねぇ、要は単にドツキ漫才に憧れてるって感じなのかな……)
律「じゃあムギ。いっちょ一緒に澪からかって殴られてみるか?」
紬「わあ……イエースイエース!」パァァ!
8: 2012/03/21(水) 19:28:49.96
部室前階段
唯「あ~っ、澪ちゃん!」
澪「ビクッ! ふう……なんだ唯か」
唯「どうしたの~? すっごい、つかれてるって顔してるよ?」
澪「ああ……ちょっと律のやつがな。知ってるだろ?」
澪「最近やたらと私に仕掛けてきててさ……正直気が休まる時がないんだ……」
唯「どうしたんだろうね~。今までは、こういうことってあったの?」
澪「いや……ここまではちょっと記憶にないよ」
澪「怒らせたりしたのかとも考えたけど、至って普通に悪ふざけする時のアイツなんだよな」
澪「もういったい……なにがなんだか……」ドンヨリ
9: 2012/03/21(水) 19:29:38.69
唯「澪ちゃんに、かまってもらいたいのかな。りっちゃんは」
澪「いや充分構っていると思うぞ」
唯「いっそ澪ちゃんを独占したい、とか」
澪「さ……寒気がするようなこと言うな唯!」
唯「う~ん……」
唯「やっぱり、りっちゃんに直接きくしかないかなぁ?」
澪「……ねぇ唯」
唯「うん?」
10: 2012/03/21(水) 19:30:24.17
澪「唯が聞いてくれないかな……それとなくさ」
澪「私もちょっと聞いてみたんだけど、アイツはぐらかすんだよ」
澪「『愛情表現~♪』とか『私と澪の仲じゃないか』とか言ったりしてさ……」
唯「そっか。うん、わかったよ。澪ちゃんが、こまってるもんね。私がりっちゃん隊員の暴走をとめてみせるよ!」フンスッ
澪「唯! ありがとう!」ガシッ
唯「エッヘッヘ……なんの、なんの」
唯「それじゃあ、部室入ろう。今日のおやつはなんだろな~♪」
澪(だ、大丈夫、かな……?)
11: 2012/03/21(水) 19:32:05.54
数分前
部室
律「おっ♪ いいもんみーっけ!」
紬「? それなあに?」
律「これはなぁ……ホラッ」
紬「うわぁー。結構リアル!」
律「フフン、どうしてこんなもんが軽音部にあるのかわかんないけど、今日はこの路線で行ってみるかー」
紬「私はどうすればいいかしら?」
律「そーだなー……よしこうしよう! 確か水性のマジックあったはず……」
律「あったあった、赤と黒。よーしムギ、ちょっと動くなよー♪」
紬「くすぐった~い」キャッキャッ
12: 2012/03/21(水) 19:32:49.62
律「多分もうすぐだな、澪が来るのは。これで後はこいつをかぶればでっきあっがり♪」
紬「はいっ!」
律「いいか、ムギ。手順はこうだ……」
律「――――――――」
律「――――――――」
紬「なるほど」
カチャリ……
律「来たか……! 準備はいいなムギ!」
紬「オーケーりっちゃん!」
13: 2012/03/21(水) 19:33:56.59
部室
唯「ちゃーす……おっ!?」
澪「どうした唯……ってうわっ」ビクッ
唯「りっちゃん? ムギちゃん? どうしたの、それ?」
律(ムッ、唯と一緒に来たか……だが作戦にかわりはないぞムギ!)
紬「唯ちゃん、澪ちゃん、いらっしゃ~い。ちょっと懐かしくってかぶってみたの~」
澪「頭だけ犬と猫だ……」
律「おお、ムギがどうしてもーって言うから、ちょっとふざけてたんだ」
澪「まったく……妙なことばっかりして」
14: 2012/03/21(水) 19:34:54.30
唯「なつかしいねー。私がにわとりで、澪ちゃんがうまだったよね」
澪「ははは。勧誘の時のアレは完全に逆効果だったよな」
紬「今お茶淹れるから座って座って」
律(私一人だったら変に警戒されるところだったろうな……ムギがいることで流れが随分スムーズだ)
紬「…………ううっ」カチャカチャ
唯「どうしたのー、ムギちゃん?」
紬「手元が見づらいわね」
唯「あはは……」
澪「そりゃそうだろ……」
紬「あら……しかも……なんだか、引っかかって、抜けない……」グッグッ
15: 2012/03/21(水) 19:35:53.90
紬「ごめんね澪ちゃん、ちょっと引っ張ってもらっていいかしら?」
澪「まったくしようがないなムギは……じゃあ引っ張るぞ?」グイッ スポッ
澪「なんだ、簡単にとれるじゃないか……ん?」
紬「ありがとう、澪ちゃん」ニコッ
澪「ひいいいいっ!!?」ガタタッ!
唯「ん? おおっ、口さけ女!」
紬「澪ちゃ~ん♪」ジリッ
澪「ひやあああああ!! 来ないでぇっ!!」カコッ 紬「オウ♪」パタリ
唯「澪ちゃん! ムギちゃん!」
律(右拳でアゴにかすらせるような打撃……ムギの奴笑った表情のままオチやがった……!)ゴクリッ
16: 2012/03/21(水) 19:36:42.47
澪「ゆ……ゆい、ゆいぃ~~!」ギュウッ!
唯「み、澪ちゃん……」
唯(か、かわいい……)ドキドキ
律「おいおい、大丈夫かよ、澪?」ポンポン
澪「うぅ、りつ……ふわあぁ――――」
唯「おお、のっぺらぼう」
澪「もう……いやぁーーーっ!」カポンッ! 律「ふぅっ」バターン
唯(ものすごい回し蹴り……澪ちゃんて、格闘家になれるんじゃ……)
澪「うわぁあぁん! やだよ! もうやだよぉゆい~」ギュウウッ!
唯「よ……よーしよしよしよし、もうこわくないよ。だいじょうぶだよ、澪ちゃん」ナデナデ
17: 2012/03/21(水) 19:37:20.70
ガチャッ
梓「すみません。遅くなりまし……」
梓「……………………」
澪「わーんわんわん!」
唯「よーしよしよし!」
律「……………………」
紬「……………………」
梓「……………………」
20: 2012/03/21(水) 21:07:14.38
帰路
澪「もう大丈夫だよ唯。ありがとう」
唯「だいじょうぶ? よかった、澪ちゃん」
澪「あー……それとその、ごめんな。派手に取り乱してしまった……」
唯「そんなの、いいよお。澪ちゃんがだきついてくるの、めずらしいからちょっとうれしかったよ」
澪「うう……恥ずかしい」
唯「あずにゃんにも、感謝しないとね」
澪「そうだな」
21: 2012/03/21(水) 21:07:57.13
※※※※※※※※※※※
梓『事情は解りました』
梓『律先輩とムギ先輩のことは私が様子を見ときますので、唯先輩は澪先輩送ってってあげて下さい』
梓『二人とも妙に満足そうに気絶してますし、まだちょっと目を覚ましそうにないですから』
※※※※※※※※※※※
22: 2012/03/21(水) 21:08:35.79
澪「……しかしムギまで加担するとは。これは一体どういうことなんだ」
唯「私はちょっと、りっちゃんたちの気持ちがわかったかな」
澪「どういうことだ?」
唯「やっぱり澪ちゃんは、かわいいからね~」ニコニコ
澪「なっ……そんなわけあるか!」
唯「いやいや~。泣きそうになったら、また私にとびこんできてね?」
澪「ゆーいー! 私の味方じゃなかったのかお前はー!」
唯「アッハハー。あっ、じゃあ澪ちゃん。また明日ねー」
澪「まったく……じゃあな唯ー!」
23: 2012/03/21(水) 21:09:39.73
部室
律「………………はっ」
紬「あっ、おはようりっちゃん」
梓「気がつかれましたか」
紬「私もちょっと前に起きたところなの」
律「ムギ……梓……」ボー
律「あれ? 澪と唯は……?」
梓「澪先輩の情緒が不安定になりましたので唯先輩に送ってもらいました」
梓「お二人ともお加減はどうですか? 頭がふらついたりしますか?」
律「私は慣れているから大丈夫だけど」
24: 2012/03/21(水) 21:10:39.72
律「ムギ、どうだ?」
紬「まさに天にも昇る気持ちね」
紬「私……一瞬で気持ちよくされちゃった……」カァッ
律「私もだ……澪のヤツ、日に日に強くなっていきやがる」
梓「……………………」
梓「あの、どうして最近律先輩はやたらと澪先輩にちょっかいを出すんです?」
律「あん?」
梓「とても執拗ですよね」
梓「屈折した愛情表現ですか?」
律「そうだなーなんていうかなぁ……」
律「気持ちいいんだよ、澪に叩かれると」
梓「……………………」
25: 2012/03/21(水) 21:12:05.80
律「嬉しいっていうかさ、生きてるって感じがするなー」
紬(わかる)
梓「やはり脳が……」
律「まあ聞け」
律「私も長いこと澪と付き合ってきて、よくバカやっては殴られてきたよ」
律「最初はやっぱり痛かったんだけど、おかげで澪もそれから私に言いたいこと言えるようになってきたんだ」
律「物怖じするのは今もだけど、昔に比べればだいぶマシになったと思う」
律「そういうのってやっぱり嬉しいし、それを思えば殴られるのだって悪くない」
26: 2012/03/21(水) 21:12:50.12
梓「それはまぁ、そうかもしれませんね」
梓「澪先輩の、律先輩だけへの遠慮の無さはそういう経緯をうかがわせます」
梓「しかし最近のはやり過ぎじゃないですか? 澪先輩も真剣に嫌がってるっぽいですが」
律「寂しかったんだ」
梓「はい?」
律「私だって毎日叩かれるってわけじゃない。叩かれない日だってたまにはある」
律「そんな時私はどうもスッキリしない、疼くような気持ちになる」
律「それを自覚してしまってからは我慢できなくなっていった」
27: 2012/03/21(水) 21:13:47.32
梓「変態ですね」
紬「フフ……」(暗黒微笑)
律「澪の顔、澪の声、澪の拳を想って堪らないんだ!」
梓「それを澪先輩に打ち明けたら二人の友情は粉々になる気がします」
梓「ムギ先輩はどうなんですか? やっぱりドMなんですか?」
紬「私は……」
紬「今ならりっちゃんの気持ちがよくわかるわ。始めはほんの軽い気持ちだった。だけど……」
28: 2012/03/21(水) 21:14:32.10
紬「まるで目が覚めるような一撃だったわ……こんなコミュニケーションもあるのね……」
紬「一歩踏み込んだ先にこんな世界があるなんて、今までは知らなかったの」
律「やっぱり! ムギには素質があると思ってたよ!」ガシッ
紬「りっちゃんのおかげよ♪」ガシッ
梓「むしろ私が殴ってやりたい」
律「ハイタッチ!」 紬「ターッチ♪」パン
梓「……お二人の主張はよく解りました。しかしですね」
29: 2012/03/21(水) 21:15:11.41
梓「澪先輩はオモチャじゃないんですよ。今日だってショックで生まれたての子鹿みたいなことになっていました」
律「うっ……」タジッ
紬「ううっ……」タジタジッ
梓「澪先輩を悲しませてまで、一方的に自分の欲望のはけ口にしてしまうんですか?」
律「たしかに……たしかに澪が悲しむのは本意じゃないさ……」
紬「そうね……澪ちゃんとは楽しく仲良くしていきたいもの……」
梓「そうでしょう」
律「本当は薄々わかっていたんだ……でも、やめられなかった」ガクッ
紬「りっちゃん……」
30: 2012/03/21(水) 21:16:12.75
梓「良い機会と言ってはなんですが、これを機に少し音楽の練習に打ち込んでみたらどうでしょうか」
梓「邪念も起こらないほど夢中になれば、きっとそのうち霧散するんじゃないですか?」
梓「澪先輩はしっかり練習できて嬉しい。律先輩ムギ先輩は妙な思い煩いが解消されて嬉しい」
梓「唯先輩だけは辛いかもしれませんが、合間合間にお菓子を与えれば何とかなるでしょう」
梓「反省の行為としては申しぶんないと思いますけどね」
紬「梓ちゃん……みんなのこと考えてくれてるのね」
律「すまねぇ、梓……そうだよな。部長の私がこんなんじゃダメだよな」
梓「わかっていただけましたか」
31: 2012/03/21(水) 21:17:00.74
律「ムギ! 明日一緒に澪に謝ろう」
紬「ええ! そうね!」
梓「良いことです」
律「そんでお詫びに澪にぶん殴ってもらってスッキリ許してもらおうぜ!」
紬「それがいいわね!」
梓「なんにもわかってないじゃないですか! それを我慢しようってことですよ!」
32: 2012/03/21(水) 21:17:35.79
律「今日はもう外も暗い。帰るぞー」
紬「梓ちゃんも一緒に帰りましょう♪」
梓「クッソ!」
律「梓ー。おいてくぞー?」
梓「あっ! それと言い忘れてました! ムギ先輩、顔洗ってから帰って下さい! 化け物ですよ!」
36: 2012/03/21(水) 23:08:24.33
平沢家
唯「ただいまぁ」
パタパタパタ
憂「おかえりお姉ちゃん。割と早かったね今日は」
唯「うん。ちょっとね」
憂「ごはん、まだなんだ。ちょっと待っててね」
唯「………………」
憂「うん? どうしたのお姉ちゃん?」
唯「うい~~!」ダキッ
37: 2012/03/21(水) 23:09:08.77
憂「ほ、ほねえちゃん!? ……もう、急にどうしたの」
憂(ありがとうございます! ありがとうございます!)
唯「ういはあったかくて、やわらかいねぇ」
憂「お姉ちゃんだって……」ドキドキ
唯「じゃあうい。ごはんできたら、呼んでね」スッ
憂「わかったよ」
憂(えへへへへへへへへへへ……)
38: 2012/03/21(水) 23:09:41.11
トントントントン……パタン
唯「ふい~……」
唯(やっぱり、ちょっとちがうかなぁ)
唯(今までなかった感じかも)
唯「おつかれ、ギー太。って言っても、今日はそんなつかれてないか」
唯「あとでちょっと練習しようね」
唯「………………」ゴロン
唯(なんか、おちつかないな~)
唯「ふい~……」ゴロゴロゴロ……
39: 2012/03/21(水) 23:10:38.83
次の日
部室
律「すみま!」
紬「せんでしたぁっ!」
澪「お、おい……頭を上げてくれ二人とも」オロオロ
律「しかし!」
紬「しかし!」
澪「いや、むしろ私の方がやり過ぎたよ」
澪「大丈夫だったか? ごめんな……律、ムギ」
唯(なんだか、うまいこといってるみたいだね。よかった)
40: 2012/03/21(水) 23:11:23.37
律「くはぁっ!」
律「優しすぎるぜ澪! まるで菩薩のようだ!」
澪「いや……大袈裟だな」
律「だけどこのまま澪の優しさに甘えたら、私たちの気がおさまらないんだ」
紬「本当に悪かったわ」
澪「ん? だから別に私はそんなに怒ってるってわけじゃ……」
律「澪が良くても私らが良くない」
澪「そういうもんなのか?」
41: 2012/03/21(水) 23:12:08.88
紬「だからね、澪ちゃん」
律「私らを気のすむまで殴ってほしい!」
澪「は……はぁ!?」
澪「ムギはともかく、律の殊勝さは一体なんなんだ……?」
澪「いや、っていうかもういいから! そうやって謝ってくれただけで充分だよ!」
唯「澪ちゃん」ボソッ
唯「きっと、昨日あずにゃんがなにか、うまくやってくれたんじゃないかなぁ」ボソボソ
42: 2012/03/21(水) 23:12:54.75
澪「えっ?」
律「…………」
紬「…………」
澪(そうか、梓のはからいか。あらためて感謝だな……)
澪「わかったよ。じゃあ行くぞ、律、ムギ」
律「どんと!」ドキドキ
紬「こいです!」ワクワク
43: 2012/03/21(水) 23:13:35.88
ポスンッ ポスンッ
澪「はい。これでチャラだからな」
律「………………」
紬「………………」
澪「もうイタズラはほどほどにしてくれよ……ってなんだお前らその顔」
律「……うだろ」ボソッ
澪「ん?」
律「違うだろ、澪! そこはガツーンとかボカーンとか!」ズイッ
紬「ボコボコとかゴスッとかグチャリッとか!」ズイッ
44: 2012/03/21(水) 23:14:20.04
澪「ひっ!?」
唯「んんっ?」
律「ちょっとイイ話みたいな流れ作ってんじゃねーぞ!」
澪「なんなんだよ一体!」
律「やり直せ! 澪!」
紬「ワンスモアプリーズ澪ちゃん!」
澪「むっ、無理だ! 来るな!」ブルブル
45: 2012/03/21(水) 23:15:04.16
律「コノヤロー!」ガバッ
紬「わ、私も!」ガバッ
澪「うわああ!!!」ガタタッ
唯「み、澪ちゃん!」
律「私をなぐれえぇぇぇぇっ!!」
澪「うわあっよせ律! ひゃあっムギっ! 尻に頬ずりするな!」
46: 2012/03/21(水) 23:15:39.47
律「ほれほれほれほれ!」
紬「スリスリスリスリ!」
律「どうしたどうした!」
紬「グリグリグリグリ!」
澪「もうっ…………!」ゴスッ! 律「うぁんっ」バターン
澪「やだぁーーーー!」グチャッ 紬「ワオ♪」バタリ
澪「うわあああぁぁん!」
47: 2012/03/21(水) 23:16:05.74
ガチャッ
梓「すみません。遅くなりまし……」
梓「……………………」
澪「わーんわんわん!」
唯「よーしよしよし!」
律「……………………」
紬「……………………」
梓「……………………」
48: 2012/03/21(水) 23:17:11.07
1時間後
部室
律「………………はっ」
紬「おはようりっちゃん」
律(なんだろ……お菓子とお茶の良い匂いがするな。なにしてたんだっけ……)
梓「気がつかれましたか」
律「ん……ムギ、梓、それに……」
律(唯が澪に菓子食べさせてら……澪のヤツえらいニコニコしてんな)
律(なんかホッとする光景だな)
梓「ひとまず気つけにお茶でも飲んで下さい」
50: 2012/03/21(水) 23:18:02.66
紬「はい。りっちゃんどうぞ」
律「サンキュームギ。あー、落ち着くな」ズズッ
梓「落ち着かれましたか」
唯「りっちゃん、大変なんだよ! 子どもになっちゃったの!」
律「んー?」
紬「澪ちゃんがね……」
梓「幼児退行を起こしました」
51: 2012/03/21(水) 23:18:53.33
律「は? なにそれ?」
梓「言葉通り、見た通りです。見て下さい、澪先輩の様子を」
律「随分機嫌良さそうじゃん。こんな澪見るの久しぶりなくらいだ。おーい澪ー」
澪「?」ニコッ
律(んん!?)
律「みおー、みおー。りっちゃんでちゅよ~」
澪「……りっちゃん♪」ニコニコ
律「うおお! どういうことだ中野ぉ!?」ガタッ!
梓「ですから」
52: 2012/03/21(水) 23:19:27.29
梓「幼児退行です。直面した精神的負荷から逃避するべく、自身の非常に純粋だった頃へと退行したのではないでしょうか」
梓「この場合の精神的負荷とは、最近律先輩が継続的に与えつづけたストレスと」
梓「律先輩ムギ先輩タッグの暴走行為によって引き起こされたものと見て間違いないでしょう」
唯「かわいい~♪」ナデナデ
澪「えへへ……」
紬「澪ちゃん澪ちゃん、これも食べて~」
澪「ありがとう、ムギおねえちゃん!」
紬「わぁ……うわぁ!」ドキドキ
53: 2012/03/21(水) 23:20:23.20
律「なんてこった……」
律「でも梓、私の知ってる澪はあんなに子供時代従順で明るい感じじゃなかったぞ?」
梓「さて……律先輩が知らないほど幼い頃に戻ったか」
梓「もしくは心のタガがはずれて、周囲に対する引っ込み思案や恐怖心もなくなったか……」
梓「もちろん私は医者ではないので、全て推測なのですが」
律「澪の演技ってことはないのかよ?」
梓「それはわかりません。むしろそういうのは律先輩が一番判るんじゃないかと思います」
54: 2012/03/21(水) 23:21:11.19
澪「…………」モジモジ
紬「? どうしたの澪ちゃん?」
澪「お、オシッコ……でそう……」
紬「まあまあまあまあまあ!!」
唯「わ、私、トイレまでつれていくよ!」
紬「私も行くわ。絶対、行くわ」
唯「さっ、澪ちゃん。こっち、こっち」
パタパタパタパタ……
55: 2012/03/21(水) 23:21:52.60
律「………………」
梓「………………」
律「絶対演技じゃねーよ、梓……」
梓「私もいささか見てはいけないものを見てしまった気がしています」
律「……どうしよう? 割とマジで」
梓「昨日、注意しておいたのに……」
律「うふぁーん! すいましぇん!」
梓「ふー……」
56: 2012/03/21(水) 23:22:58.81
梓「まぁまず思い浮かぶのは医者でしょう。心療内科とか精神科? そういったところに診せるべきなんでしょうかね」
律「うーん、おおごとだな」
梓「ですね」
梓「ですが、いざこれがなかなか回復しないとなると澪先輩は授業にすら出られないでしょう」
梓「記憶自体はきちんと残っているようですが、情緒や判断力、危機管理などの面で不安があります」
梓「そうなると誰かが付きっきりになる必要がありますよ」
梓「親が子どもから片時も目を離さないように」
57: 2012/03/21(水) 23:23:40.06
律「親……そういや、澪の両親になんて説明したらいいんだ……」
梓「律先輩……」
梓「……また一方でこれは非常に楽観的な考えなのですが」
梓「案外、一晩眠ればコロッと治ってしまうってこともあるかもしれません」
梓「ほんの一時的な症状なのかも……」
律「そうかな……?」
梓「一日様子見をして、明日治っていなければしかるべきところへ相談に行きましょうか」
梓「澪先輩には今日外泊してもらうのです」
58: 2012/03/21(水) 23:24:26.05
紬「ただいま~♪」
律「おかえり。どうだ? 澪の様子」
紬「ウフフフフフフフ……」
律「………………」
唯「だいじょうぶだよ。ちょっと手伝ったけど。ちゃんとできたよ」
澪「ただいま、りっちゃん! あずさおねえちゃん!」
梓「………………」
59: 2012/03/21(水) 23:25:30.29
梓「……で、宿泊先ですが私の家を提案します」
律「なに?」
唯「なになに、なんの話?」
梓「様子見のために澪ちゃんを今日一日泊めるという話ですよ。唯先輩」
紬「ええっ!?」
律「なんでだよー梓! 順当に考えれば、何度も来たことある私んちが澪も落ち着くはずだぞ!」
紬「わ、私の家なら美味しいお菓子もいっぱい出せるわ。澪ちゃんも喜ぶんじゃないかしら!」
梓「ダメですよ」
60: 2012/03/21(水) 23:26:06.45
梓「もともとの原因を考えて下さい。ストレスへの防衛反応の結果として今の状態ですよ」
梓「ストレスの元となった人のそばでは治るものも治らない可能性があります」
梓「そんなわけでお二人はダメなのです」
律「ぐっ……!」
紬「ぐっ……!」
律「相変わらず弁が立ちやがる中野コンチクショウ……」
61: 2012/03/21(水) 23:27:02.58
梓「……それに、私は責任を感じています」
梓「昨日お二人をなんとしてでも止めていれば、こんなことにはならなかったかもしれません」
梓「そういうわけで澪ちゃんの面倒は付きっきりで私が見ます!」
澪「…………?」
唯「ね、ねぇ……あずにゃん」
梓「なんです?」
唯「その……私の家じゃ……だめかな?」
62: 2012/03/21(水) 23:27:45.11
梓「……ダメということはないですがね」
梓「何か理由でもあるんですか?」
唯「私ね、澪ちゃんに相談されてたんだ、りっちゃんのこと」
唯「でも、結局なんにもしてあげられなかったよ……」
律「唯……」
63: 2012/03/21(水) 23:28:28.79
唯「私、ふだんから澪ちゃんに頼ることおおかったけど、逆ってほとんどなかったから、うれしかったんだ」
紬「唯ちゃん……」
唯「こんな私でも、まだ頼ってくれるんだったら、こんどこそ何か力になりたくて……」
梓「………………」
64: 2012/03/21(水) 23:29:08.91
梓「……確かにそうですね」
律「何がだ?」
梓「さっきから見ていたんですが、澪ちゃんは唯先輩から離れようとしないんです」
梓「唯先輩がくっついているんだと思っていましたが、どうもそうじゃないみたいですね」
唯「うん……さっきから、私のことつかんだままなんだ……」
紬「まるで唯ちゃんのこと、お母さんかお姉さんだと思っているみたいね……」
梓「ははあ、なるほどそうかもしれません」
梓「退行が起こった時に抱きしめていた唯先輩に対して、軽い刷り込みが生じたのかもです」
65: 2012/03/21(水) 23:29:40.53
律「そっか……じゃあ、もう異論はないな」
律「澪を一晩、唯に任せよう」
紬「ええ、それが一番良さそうね!」
梓「仕方ないです」
唯「みんな……」
唯「私、がんばるよ!」
澪「?」
67: 2012/03/22(木) 01:03:52.64
帰路
澪「♪」テクテク
梓「澪ちゃんはしゃいでますね。お泊りが嬉しいんでしょうか」
律「澪ー。澪のお電話ちょっと借してもらっていいかー?」
澪「お電話……うん、いいよー」ゴソゴソ……
澪「はい。りっちゃん」
唯「どうするの?」
68: 2012/03/22(木) 01:04:36.95
律「ん、ああ。澪の母さんにメール打っとくんだ。さすがに喋ったらバレるだろうしなー」
律「一応、泊まるのは私んちってことにしておくよ。ウチなら今更澪の母さんも遠慮したりしないからな」
律「ほい送信っ。サンキューな、澪」
梓「………………」
梓「あの、すみませんでした、律先輩。ムギ先輩も」
律「あーん?」
紬「どうして?」
69: 2012/03/22(木) 01:05:10.93
梓「ストレスの原因だとか、治るものも治らないなどと言って」
律「いやー、事実だしなー、それ」
紬「私達、ちょっと行き過ぎてしまったわね」
律「そうだな。今の澪見てたら、なんかスッカリ毒気抜けちゃったよ」
紬「私も」
梓「そうですか……」
律「ごめんな……澪……」ポン
澪「うん? どうしたの?」」
70: 2012/03/22(木) 01:05:47.62
紬「ごめんなさいね、澪ちゃん……」
澪「????」
唯「りっちゃん、ムギちゃん……」
澪「………………」
澪「!」ピーン
澪「じゃあ……あくしゅ!」
紬「握手?」
澪「なかなおりのあくしゅ!」
澪「ねっ♪」
律「澪……」キュッ
紬「澪ちゃん……」キュッ
澪「えへへっ」
71: 2012/03/22(木) 01:06:15.76
平沢家前
律「さて……」
梓「なんだかんだで……」
紬「みんなしてここまできちゃったわね」
唯「あははっ。みんな、お茶でも飲んでいく?」
澪「みんなでおとまり!」
律「いやー、ははは……ここでいいや」
梓「もう夕食どきですからね。憂もビックリするでしょうし」
72: 2012/03/22(木) 01:06:54.15
紬「唯ちゃん、何か困ったことがあったら連絡してね。すぐに飛んでいくから」
唯「ありがと~、ムギちゃん!」
澪「?」
律「じゃあ、私ら帰るわ。唯……澪のこと頼むな」
唯「まかせて、りっちゃん!」
梓「唯先輩なら大丈夫だと思います。子どもの相手とか得意そうですし」
唯「うへへ……あずにゃんにほめられちゃったよ」
73: 2012/03/22(木) 01:07:46.92
澪「……かえOちゃうの?」
律「………………」
紬「………………」
梓「………………」
律「……あー、澪。また明日、遊ぼうな」
澪「あした……」
74: 2012/03/22(木) 01:08:33.14
律「唯の家じゃ、おとなしくするんだぞ?」ポンポン
『――私は子どもか! 律!――』
澪「うん! りっちゃん!」ギュッ
75: 2012/03/22(木) 01:09:10.44
紬「澪ちゃん、また明日」ナデナデ
『――ああ、また明日な。ムギ――』
澪「ムギおねえちゃん!」ギュッ
76: 2012/03/22(木) 01:09:40.54
梓「私も。また明日ね、澪ちゃん」ギュッ
『――気をつけて帰れよ。梓――』
澪「またあした! あずさおねえちゃん!」ギュッ
77: 2012/03/22(木) 01:10:11.79
唯「………………」
唯「じゃあ、みんな。また明日!」
澪「じゃあね!」
律「おう」
紬「ええ」
梓「はい」
ギィィ……バタン
78: 2012/03/22(木) 01:10:47.54
律「……なんかなぁ」トボトボ
律「今、澪の声が聞こえた気がしたんだよ。あー、もやもやする!」
紬「りっちゃんも? 私も!」ニコッ
梓「私にも聞こえましたね。いつもの澪先輩の声が」
律「お前らもか……」
梓「……治るといいですね。澪先輩」
紬「きっと大丈夫よ」
律「そうだな。唯がいてくれるしな」
律「明日にはいつもの澪がやって来るさ」
79: 2012/03/22(木) 01:11:48.29
梓「………………」
梓「あの、たい焼きでも食べて帰りませんか?」
律「ああ? どした急に?」
紬「珍しいわね。梓ちゃんがそういうこと言い出すのって」
紬「でもいいかも~。ちょうどお腹もすいていたし」
80: 2012/03/22(木) 01:12:34.95
律「おいおい~、夕食が入んなくなるぞ?」
梓「一つくらい平気でしょうよ」
紬「賛成~♪」
律「やれやれ……よしっじゃ、梓のおごりな!」
梓「そうそう私のおごりで……ってふざけんにゃ!」
81: 2012/03/22(木) 01:13:02.61
律「………………」
紬「………………」
梓「………………」
82: 2012/03/22(木) 01:13:46.99
律「プッ……ハハハハハッ!」
紬「クスクスクスクスプフーッ!」
梓「アハハ、アハハハハッ!」
85: 2012/03/22(木) 20:37:58.31
平沢家
唯「ただいまぁ」
パタパタパタ
憂「おかえり、お姉ちゃん……あっ、澪さんこんばんは」
澪「こんばんは。おじゃまします!」ニコッ
憂(あれ? 澪さんってこんな感じの人だったっけ?)
憂「お姉ちゃん、また勉強でも教えてもらうの?」
唯「ううん。ただのお泊りだよ」
86: 2012/03/22(木) 20:38:36.95
唯「はっ! ういに電話するの、わすれてた!」
唯「ごめんねうい~、晩ごはん、もう一人分あるかな~」
憂「あるよ。いつも料理はちょっと余るくらいの分量で作ってるし……」
唯「よかったぁ。じゃあ澪ちゃん、私の部屋いこっか」
澪「うん。ゆいおねえちゃん」
トントントントン……
憂「………………」
憂「なんだと」
87: 2012/03/22(木) 20:39:21.41
バタンッ
唯「ふい~……今日はいろいろ、あったなぁ」
唯「あっ、荷物はこのへんにおくといいよ。澪ちゃん」
澪「ゆいおねえちゃんの、へや……」
唯「えへへ、前はいっしょに勉強したね」
唯「ギー太ぁ~、今日はエリザベスといっしょだよ~」
唯「さて。じゃあ、ごはん食べにいこうか!」
澪「うん♪」
88: 2012/03/22(木) 20:40:07.04
平沢家ダイニング
憂「………………」
唯「はい澪ちゃん、あーん」
澪「あーん」パクッ
唯「ようく噛んで、食べるんだよ」
澪「」コクコク
唯「おつぎは……うい特製ロールキャベツだよ!」
澪「おいしそう!」
唯「熱いよ、気をつけて」
澪「あーん」パクッ
89: 2012/03/22(木) 20:40:55.30
澪「おいひい!」
唯「ふふ~。作ったの私じゃないけど、なんかうれしいよ」
澪「あ、そうか! おいしいよ、ういおねえちゃん!」
憂「あ……ありがとう、ございます……?」
憂(どうしよう……リアクションに困るよ~……)
唯「うい」
憂「えっ、あっ、うん、なに、お姉ちゃん?」
唯「澪ちゃんね、子どもになっちゃったんだ……」
憂「えっ」
唯「それでね、みんなで話しあって、今日私のうちにとまることになったんだよ」
憂「う……うん」
憂(どうしよう……もっとリアクションに困るよ~)
90: 2012/03/22(木) 20:41:29.11
憂(……あっ!!)
憂(そっかぁ~~~!! きっとそういうプレイなんだ! 軽音部って、一体どうなってるんだろう!?)
憂(どっちの趣味なのかなぁ……お姉ちゃん? 澪さん?)
憂(どっちにしても、ここは協力してあげた方がいいのかな)
憂「じゃ、じゃあお姉ちゃん。私も澪ちゃんって呼べば、いいのかな?」
澪「なーに? ういおねえちゃん!」ニコッ
憂「あはは。澪ちゃん、こっちも美味しいよ。たべてみて」ニコッ
唯(うい……ありがとう)
91: 2012/03/22(木) 20:42:29.51
平沢家バスルーム
唯「澪ちゃんの髪、すごいきれい。ツヤツヤだね!」
澪「キャッキャッ!」
唯「洗うの、時間かかるねぇこりゃあ」
憂(ああ~~~、お風呂まで一緒に入っちゃったよ!!)
憂(どこまですすんでるんだろ……あの二人)
唯「せなかゴッシゴシ~♪」
澪「ゴシゴシ~♪」
憂(私もあんな風に子どもの真似すれば、お姉ちゃん一緒に入ってくれるのかな……)
92: 2012/03/22(木) 20:43:02.01
※※※※※※※※※※※
憂『おねえちゃんおねえちゃぁん』
唯『よしよし。ういはお姉ちゃんいなかったらなんにもできないね~』
憂『ひとりであらえないよ~』
唯『お姉ちゃんがういの体、すみからすみまであらってあげるね』
憂『おねえちゃ~ん』
※※※※※※※※※※※
93: 2012/03/22(木) 20:43:35.86
憂「ハァハァ……」
唯「う~い~」
憂「おねえちゃんおねえちゃん!」
唯「うい?」
憂「……はっ、えっ、あっ、どどどどうしたのお姉ちゃん!?」
唯「お風呂、もうでるよ。ごめんね。待たせちゃって」
憂「あっ、ああ! うん! いいよ、全然気にしてないよ!」
憂(洗面所に潜んでたのバレてた……)
94: 2012/03/22(木) 20:45:24.65
唯の部屋
唯「澪ちゃんには小さいかなって思ってたけど、だいじょうぶそうだね。私のパジャマ」
澪「ゆいおねえちゃんのにおいがする!」
唯「に、においかいだら恥ずかしいよ……」
澪「もうねるの?」
唯「そだよ~。早寝早起きしないとね~」ゴロン
唯「おいで、澪ちゃんや」ポスポス
澪「うん!」ゴロン
唯「冷えたらいけないから、くっついて寝よう」ギュー
95: 2012/03/22(木) 20:45:51.43
唯「あったかあったかだねぇ」
唯(なんでも言うこときくなぁ……)
唯(すごく良い子)
唯(……でも、私があの時感じたのは、こういうんじゃなくて……)
澪「……あの、ゆいおねえちゃん」
唯「ん? なになに?」
澪「おうた……うたってほしいな」オズオズ
唯「うた? ……歌かぁ」
96: 2012/03/22(木) 20:46:33.10
唯(ねんねんころりは……うーん、とちゅうまでしか歌詞、しらないな)
唯(澪ちゃんのよろこびそうな歌といえば……そうだ、あの歌をスローテンポにしたら……)
唯「オッケー澪ちゃん。じゃあ、いくね」
唯「いち、にい、さん、し」
唯「きみをみてると~……いつもはあとどきどき~」
澪「わあ……」
唯「えへへ……ゆれるおもいは ましゅまろみたいにふ~わふわ」
澪「………………」ニコニコ
97: 2012/03/22(木) 20:47:13.47
唯「い~つもがんばる~ ――――――――」
唯「――――――――」
唯「――――――――」
澪「………………」
・
・
・
唯「ああ か~みさ~まどおして すきに~な~るほど~ どりいぃむないとせつな~いの~……」
唯「……ん? 澪ちゃん?」
澪「スー……スー」
98: 2012/03/22(木) 20:47:53.06
唯「寝ちゃったね……かわいい」
唯「私も……ねむ」
唯(澪ちゃん。こうしてると、いつもの澪ちゃんなのにね……)
唯「おっとっと……めざましセットしとかないと……」カチッ
唯「ふぅー、おやすみ、澪ちゃん」
唯「………………」
唯「ふわふわたぁいむ ふわふわたぁいむ ……ふわふわ……」
唯「――――――」
憂(なんにもきこえなくなった……)
憂(おやすみ、お姉ちゃん……)
憂(澪さんとかわりたい)
110: 2012/03/23(金) 19:26:44.88
真夜中
唯の部屋
唯「ぐぅぐぅ」
澪「スースー」
唯「……んがっ、ぐっ」ゴテンッ ベチッ
澪「ぐぁっ」
澪「…………?」
澪「………………んっ」
111: 2012/03/23(金) 19:27:47.50
澪「……唯?」ボー
唯「シュピー」
澪「へっ? 唯?」
唯「むおぉ……」
澪「……?」
澪(唯の部屋……か? うん、あの変なヌイグルミは唯のだな)
澪(なんで私……あ、ギー太とエリザベス……)
澪(んっ? なんか思い出してきたような……)
112: 2012/03/23(金) 19:28:23.20
※※※※※※※※※※※
『ゆいおねえちゃん』『りっちゃん』『むぎおねえちゃん』『あずさおねえちゃん』
『おじゃましまーす!』
『あーん』
『なかなおり』
『オシッコでそう』
『おしっこ』
『お し っ こ』
※※※※※※※※※※※
113: 2012/03/23(金) 19:29:15.20
澪(ああああああああああっ!!)
澪「~~~~~~~~~ッッ!」
唯「んむっ? ……澪ちゃん?」ゴソゴソ
澪「ヒッ!」ガバッ
唯「え? え? 澪ちゃん?」
唯「ど、どうしたの……?」オロオロ
澪「~~~~~~~~ッ」
唯「どうしたの、澪ちゃん! なにかあったの!?」
114: 2012/03/23(金) 19:29:56.26
澪「……見ないでくれ、私を見ないでくれ! 唯!」
唯「えっ?」
澪「モウコノママキエテシマイタイ……」プルプル
唯「みっ……澪ちゃん? 澪ちゃんなの?」
澪「もうダメだ。私はもうダメ」ガクガク
唯「落ち着いて澪ちゃん! だいじょうぶだよ!」
澪「うう……」
115: 2012/03/23(金) 19:30:45.05
平沢家ベランダ
唯「戸はそーっとね」カラカラ……
唯「風にあたったら落ち着くと思ったんだけど、どうかな、澪ちゃん?」
澪「ふふふ……」
澪「私は明日からどんな顔して軽音部に行けばいいのやら」ドンヨリ
唯「そのままでだいじょうぶだよ~」
唯「みんな、すごく心配してるんだよ?」
澪「そりゃあ、心配だろうさ……」
116: 2012/03/23(金) 19:31:54.27
澪「だからこそ、恥ずかしくて氏にそうだよ……」
唯「………………」
唯「澪ちゃん、私、毛布もってきてるんだ。寒いからいっしょに入ろう」ガバッ
澪「唯……」
澪「ありがとう……私、色々思い出してきたんだけど、唯には特に世話になったみたいだ」
唯「子どもの時って、どんな感じだったの?」
澪「ん? ああ、その時は正直私もよくわからないな。自分だけど自分じゃないというか」
澪「気付いたら唯と寝てて……後になってワッと自分のしたことを思い出してきたよ」
117: 2012/03/23(金) 19:32:45.02
澪「クッ……思い出したらまた……」ワナワナ……
唯「………………」ギュッ
澪「わっ、わっ、唯!?」ジタバタ
唯「逃げたら、ダメ」ギュゥゥ
澪「うっ……うう」
唯「………………」
澪「………………」
澪「……なんか変だ。唯にこうされると、不思議なくらい落ち着く」
澪「子どもの時の記憶のせいなのかな」
118: 2012/03/23(金) 19:33:43.80
唯「私は、うれしいよ……?」
澪「えっ?」
唯「澪ちゃんが帰ってきてくれて……」
唯「澪ちゃんもかわいかったけど、澪ちゃんにもどらなかったら、どうしようって思った」
唯「みんなも、ぎっとおんなじなんだよ。だがら……」
唯「ほんどうに……良がっだよ゛!」ポロポロ
119: 2012/03/23(金) 19:34:28.89
澪「ゆっ、唯……!」
澪「お前っ、なにも、泣かなくても……」
唯「うう、な゛んが、なんが、でぢゃって……」ズビッ
唯「安心じだら、気がぬけじゃったの゛がな……」
澪「ごめん。ごめんね。唯。もう大丈夫だから……心配かけて、ごめん」
唯「う゛……うん……うん……」
澪「ほら……涙拭いてやるから」コシコシ
唯「ん……ん……」
120: 2012/03/23(金) 19:35:17.37
澪「ああ、鼻水まで出てるよ」コシコシ
唯「ふがが……」
澪「あっ!」
澪「……ゴメン、よく考えたらこれ唯のパジャマだった……」
唯「…………ふっ」
澪「…………ふふっ」
唯「ふふふ、あはははっ!」
澪「ははははっ……っと静かに静かに、唯」
唯「う、うん、ふっくっくっく……」
唯「あのね、あのね……思えばさっきまで、私が澪ちゃんにいろいろしてあげてたのに」
唯「もう逆になっちゃってるの。それが、おかしくって……くっく」
澪「唯……」
121: 2012/03/23(金) 19:35:51.17
・
・
・
122: 2012/03/23(金) 19:36:27.61
澪「しかし今日は恥ずかしいところ唯にいっぱい見られてしまった」
唯「おあいこだよ。私も、泣いちゃったし」
澪「……そうかな」
唯「あんまり、つりあってないかな……?」
澪「唯は結構、人前で泣くからな」
澪「その点、私の方は大恥だ。1年の学園祭以来さ」
唯「ええー……なんども言うけど、かわいかったんだよ?」
唯「澪ちゃんは、自分を過小評価してるよ」
123: 2012/03/23(金) 19:37:32.41
澪「え? うーん。どっちかと言うと、ただ目立ちたくないだけなんだけどね」
唯「もったいないよ。ファンクラブまであるのに」
澪「む~……」
唯「でもね」
澪「?」
唯「それでも、まだ澪ちゃんがはずかしいって言うんなら……」
唯「澪ちゃんを、ひとりにさせないよ」
唯「私もいっしょに澪ちゃんとおんなじくらい、はずかしくなるよ!」フンスッ
澪「? おかしなこと言うんだな唯。どうやってなるって言うんだ?」
124: 2012/03/23(金) 19:38:20.58
唯「それはね……」
唯「澪ちゃん!」ギュウッ
澪「わっ! ま、またか、唯!?」ビクッ
澪「ず、ずるいよ、唯……私、なんだか唯に逆らえなくなってるんだぞ……」
唯「………………」ギュゥゥ
澪「そ、それにっ……これじゃあ恥ずかしいのはむしろ私の方なんじゃっ……」
唯「……やっぱり、そうだ」
125: 2012/03/23(金) 19:39:28.64
澪「えっ?」
唯「澪ちゃんって、あったかくて、やわらかいんだけどね」
唯「なんかね、私のおなかの奥も、あったかいんだ……」
澪「え? え?」
唯「胸がきゅーって、くるしくって」
唯「こんなことはじめてで……どうしたらいいか、わからないよ……」
澪「う……あ」カアァ
唯「どうかな……澪ちゃん」
澪「なっ、何が……!?」
唯「私、今、すごくはずかしいよ……」
唯「顔があつい」
唯「こ、これで、澪ちゃんと……おんなじくらいかな?」
澪「……あ! うっ、うん。お……同じくらいだと、思う」ワタワタ
126: 2012/03/23(金) 19:40:57.66
唯「ほんと? ……よかった」
唯「これで澪ちゃんは、ひとりじゃないよね……」
唯「がんばった甲斐があったよ」
唯「……だから澪ちゃん、ごほうび、ほしいな」
澪「うぇっ!? ……な、なに?」
唯「もうすこし、このままでいい?」
澪「う、うん。うん……」コクコク
唯「やったぁ。澪ちゃんって、やさしいから大好き」
澪「ゆ……唯」
唯「あったか~い。あ、見て見て、月がきれいだね~」
127: 2012/03/23(金) 19:41:34.85
澪(冗談……なんかじゃないよな)
澪(だって唯の鼓動……すごく伝わってくるよ……)
澪(じゃあ、じゃあ、唯が私のことを?)
澪「………………」
135: 2012/03/24(土) 21:36:11.37
・
・
・
136: 2012/03/24(土) 21:37:00.24
澪「唯、唯……」
唯「…………はっ!」クワッ
唯「寝ちゃってたよ、私!」
澪「だと思ったよ。なんせどんどん力が抜けていってたもんな」
唯「ご、ごめんね澪ちゃん。そろそろもどろっか? 冷えちゃいけないし」アセアセ
澪「………………」
澪「……唯はさ」
唯「うん?」
澪「唯はさ、軽音部の夢とかってみるか?」
137: 2012/03/24(土) 21:37:58.42
唯「え? 夢? うん、たまにみるよ~」
唯「夢の中でも、みんなとしゃべれて、お菓子たべて、得した感じだよね!」ニコッ
澪「夢の中でも練習より食べ物か……唯らしいな」クスッ
唯「へへへ、もうしわけない……」
澪「私もたまにみるよ」
澪「まぁ、もっとも私だってそんな練習の夢なんてみるわけじゃないんだけどな」
唯「澪ちゃんは、どんな夢?」
澪「多分、唯とそんな変わらないよ。のんびりした場面だったり、ふざけあってたり」
唯「澪ちゃんもかぁ~……じゃあ、みんなもそんな感じなのかな」
澪「ふふっ、そうかもしれないな」
138: 2012/03/24(土) 21:38:48.01
澪「でもな、中でも印象に残っている夢があるんだ」
唯「へぇ」
澪「唯の夢」
唯「………………」
唯「えっ? わ、私?」
澪「うん。そう」
唯「そ……ソロで?」
澪「うん。ソロで」
唯「ど、どんな内容? まさか、夢の私、なんか変なことしでかすんじゃ……」
澪「あはは、夢だろ? どうして現実の唯が怖がるんだよ」
139: 2012/03/24(土) 21:39:51.11
唯「だって、澪ちゃんの夢の私だよ~。とんでもない子だったら、ちょっとショックだよ」
澪「安心しろ。至って普通だよ。むしろ私の方が少し変だったかな」
唯「ムム、それで、どんな夢だったの? 興味ある」
澪「部室でな、私と唯と、二人だけでいるんだ」
唯「ふたりだけ……」
澪「曲の内容は思い出せないけど、唯は何か歌いながら演奏してたよ」
澪「私はベースを忘れでもしたのか、何も持ってなくて、ただイスに座って唯を眺めてるだけ」
唯「………………」
澪「窓からの陽にあたってキラキラしてすごく楽しそうで、羨ましい、みたいなことを思ってた気がする」
澪「ああ、そう言えば今思ったけど、初めて行った合宿の時の唯みたいな感じだったかな」
140: 2012/03/24(土) 21:41:06.53
唯「合宿? 私、なにしたっけ……?」
澪「花火をバックにして、ステージに見立てたろ? あれだよ」
唯「あー、あー、懐かしいね~。あれは楽しかったよ」
澪「それでな、唯を見てるうちに、何もできない自分が無性に悲しくなってきて……」
澪「でも、目をそらすこともできなくて」
澪「私は泣いてしまうんだ」
唯「………………」
澪「そしたら、唯はふと演奏を止めて、私に笑いかけてくれて」
澪「右手を差し伸べてくれたんだ……」
澪「そこで夢は終わってしまったよ」
唯「………………」
141: 2012/03/24(土) 21:42:19.55
澪「あっ、す、スマン、唯。夢の話なんてされても、困るよな……!」
澪「つっ、つまり……なんていうかっ」
澪「私のために、は、恥ずかしい思いしてくれただろ? だから私も絶対誰にも話さない秘密を話したというか……!」
澪「そ……それだけだから、あはは。さぁ、もう寝よう寝よう!」
唯「澪ちゃんっ!」ギュウッ
澪「ひゃっ!」
澪「ま、またか、唯……」
唯「……私でも、きっとおんなじことやるよ」
澪「えっ?」
142: 2012/03/24(土) 21:43:01.43
唯「さっきのお話……楽器がなかったら、ふたりでいっしょに歌おうよ」
澪「ただ一緒に歌うだけか……それは思いつかなかったな……」
唯「そこに澪ちゃんがいるっていうことが大事なんだよ」
澪「唯……」
唯「ああ、なんかすっごい演奏したいって気になってきたよ!」
澪「……そうだな。私も早く部活したい気分だ」
澪「寝ようか、唯。明日が待ち遠しくなってきた」
唯「うん、寝ちゃおう!」
143: 2012/03/24(土) 21:44:13.17
唯の部屋
澪「はー、今日はなんだか、すごい1日だったよ……」ゴロン
唯「………………」
澪「……唯?」
澪「!! ご、ゴメン、唯! よく考えたらなにももう一緒に寝なくてもいいよな……!」
澪「な、なに私、当たり前みたいに唯のベッドに寝転んでんだろ……」
澪「ゴメンな、唯。予備の布団か何かあるかな? なんなら毛布だけでもいいんだけど」
唯「ち、ちがうの、澪ちゃん……」
唯「私はいっしょに寝るの、ぜんぜん構わないよ。むしろいっしょに寝たいんだけど」
144: 2012/03/24(土) 21:45:32.20
唯「お、おかしいな……なんか、き、緊張してきちゃって……」カァァ
澪「きんちょう? 緊張って……」
澪「………………」
澪「!!」ボッ
澪「えっ、あっ、だって、緊張って……あれだけ抱きついてきたりしたのに……」
唯「じ、実は、あれもけっこう勇気だしてました……」
唯「えへへ……」
澪「唯……」
澪(唯でもこんな風に緊張すること、あるんだな……)
澪(しかも私に、だ)
澪(私は、唯に……唯に……)
145: 2012/03/24(土) 21:46:37.48
澪「……唯。一緒に寝よう」
唯「あっ……う」
澪「ほら……こっちに」
唯「……いいの? 澪ちゃん?」
澪「いいよ」
澪「唯が恥ずかしそうだから、私だって唯を一人にさせない」
唯「ほんとう?」
澪「ああ」
146: 2012/03/24(土) 21:48:01.05
唯「てっ、手をつないでもっ?」
澪「……いっ、いいよ」
唯「抱きついて寝てもっ?」
澪「う、うん。いい……かな」
唯「む、胸にさわってみても……」
澪「ゆーいー! 緊張してたんじゃなかったのか、お前は!」
唯「あははははっ! 澪ちゃーん!」ゴロン
澪「やれやれ……」
唯「……いまさっき、聞いたことないくらいやさしい声してた、澪ちゃん」
澪「え? そ、そうだったか?」
唯「こわいの、どっか行っちゃったよぉ」ギュッ
澪「ん……」ギュッ
147: 2012/03/24(土) 21:49:17.15
唯「………………」
唯「………………」ムラムラ
唯「………………」プニッ
澪「いっ!?」ビクッ
唯「ぷにぷに~♪」
澪「ほっ、ホントに触るな、バカぁ……」
唯「ふふ、おやすみ澪ちゃん」
澪「うう……おやすみ唯……」
唯「………………」
澪「………………」
唯「ふわふわたぁいむ♪ ふわふわたぁいむ♪ ふわふわ……」
澪「早く寝ろ……」
149: 2012/03/25(日) 18:08:02.65
朝
平沢家
憂「あっ、おはようございます。澪さん」
澪「お、おはよう。憂ちゃん……」
澪「その、昨日のことは……」
憂「はい。正直最初はビックリしました。けど……」
憂「そういうのもアリかなって思います。私には澪さんの気持ちがよくわかりますので」
澪「えっ?」
憂「これからもお姉ちゃんのこと、よろしくお願いしますね」ニコッ
澪「えっ、えっ?」
150: 2012/03/25(日) 18:08:56.02
憂「あっ、お姉ちゃん。おはよう」
唯「ふぁ……おはよ~、うい~……」
憂「ほら、もう、しっかりしないとダメじゃない。澪さんだって見てるんだよ」
唯「おお~」
憂「それじゃあ私は先に出ます。軽音部の皆さんにもよろしくお伝え下さい」
澪「う、うん。いってらっしゃい。憂ちゃん」
憂「あんまりノンビリしすぎちゃダメだよ? お姉ちゃん」
唯「うん。ういも、気をつけてねー」
バタン……
澪「………………」
澪「憂ちゃんに何かを誤解されてる気がする……」
唯「ういは気をつかってくれたのかもしれないね~」
澪「う、うん。それはそうなんだけど、なんていうかもっと違う部分で……」
唯「?」
151: 2012/03/25(日) 18:10:07.69
通学路
唯「澪ちゃん、まだ少しこわい?」テクテク
澪「ん? まぁ、怖いというか、まず何と言おうか考えてる」テクテク
唯「う~ん、そうだね~……あっ」
澪「どうしたの、唯?」
唯「しまった……みんなに澪ちゃんのこと伝えなきゃ……」
澪「今からメールでも打つか?」
唯「………………」
唯「……ううん。澪ちゃん。走ろっか」グイッ
152: 2012/03/25(日) 18:10:59.08
澪「わわっ、ゆ、唯……急にひっぱるな……! どうしたんだよ」タタッ
唯「なんかね、たぶん、こっちのほうが、はやい、きがするんだ!」タッタッ……
澪「えっ、はやいって、どういう……」タッタッ……
唯「澪ちゃん!」タッタッ
澪「は、はいっ!」タッタッ
唯「わたしが、『おーい』って、いったら、ハァハァ、『おーい、みんな』って、いって!」タッタッ
澪「なっ、なんだ、それは」タッタッ
唯「おっきなこえでね!」タッタッ
澪「………………ッ」タッタッ
澪「わ、わかった!」タッタッ
153: 2012/03/25(日) 18:11:40.68
通学路
律「特に示し合わせたわけでもないのに……」
紬「みんなでここに集まっちゃったわね」
梓「律先輩は流石の一番乗りでしたね」
律「まーなー……夕べも何度か唯にメールしようかと思ったんだが」
律「なーんか訊けなかったわ。『澪どうだ?』って』
紬(りっちゃんもかなり不安なのね……)
梓「……朝になっても唯先輩から連絡が来ないのは、やはりそういうことなのでしょうか」
律「ま……まぁ! そうだったらそうだったで、私が澪のやつを朝一で病院に連れていくさぁ!」
律「ちゃちゃっと行ってきて、澪もすぐ元通りだ」
154: 2012/03/25(日) 18:12:40.33
梓「律先輩……」
梓「私も行きましょう。律先輩だけでは不安があります」
律「なにぃー?」
紬「私も行くわ。りっちゃん」
律「梓……ムギ……」
律(へへ……)
律「そ……そんなに私一人じゃ不安なのかよー!」
梓「ふふ、まぁ、みんなで行きましょうよ。きっと唯先輩も行くって言いますよ」
紬「軽音部全員でサボタージュね」
梓「ロックですね」
梓「……んっ?」
155: 2012/03/25(日) 18:13:34.37
梓「唯先輩と澪先輩じゃないですか? あそこから走ってきてるの……」
律「あっ……」
紬「ホントだわ……」
梓(唯先輩が手を引いてる……やっぱり一晩じゃ治らなかったんだ……)
律「………………」
紬「………………」
唯「お~~~~い!」
澪(!!)
澪「おーーーい、みんなーーー!!」
律「!!」 紬「!!」 梓「!!」
156: 2012/03/25(日) 18:14:24.54
律「……澪だ」
紬「……澪ちゃん?」
梓「……澪先輩?」
律「コノヤロー!!」ダッ!
梓「あっ、律先輩!」
紬「私達も走りましょう、梓ちゃん!」ダッ!
梓「あっあっ、待って下さいよ!」ダッ!
唯「はぁはぁ……ぜぇぜぇ……」
澪「ひっ……! ゆ、唯! みんな全力でこっちに走ってくるぞ……!」
唯「ふぅふぅ……それじゃあ澪ちゃん、まずカバンとエリザベスを下ろそうか……!」
澪「う、うん?」
157: 2012/03/25(日) 18:15:39.43
唯「つぎに、両腕をまっすぐ真横にのばして」
澪「えっ? こ……こうか?」
澪「な、なんで背中にしがみつくんだ……唯?」
唯「きっと、支えがいると思うよ!」
律「うおおおおおお!! いい度胸だ澪ぉおおおお!!」ドドド
紬「澪ちゃん! いくわよ~!!」ドドド
梓「澪せんぱ~~~い!!」ドドド
澪「なっ、なぁ唯……? これって、つまり、もしかして……」
唯「私が支えてるからだいじょうぶ!」フンスッ
澪「う、う、うわっ……うわああああ!!」
158: 2012/03/25(日) 18:17:05.01
律「受っけとっめろぉーーーー!!」ガバッ
澪「ぐぁっ……!!」
紬「え~~い♪」ガバッ
澪「むぎゅぁっ……!!」
梓「快気祝い……っ!!」ガバッ
澪「ぐぇぇっ……!!」
唯「ふー……たえた! かなりの圧力だったけど、がんばったよ、澪ちゃん!」
159: 2012/03/25(日) 18:18:09.87
澪「………………」
律「……澪?」
紬「……澪ちゃん?」
梓「……澪先輩?」
唯「み……澪ちゃん?」
澪「……お・ま・え・ら~~~」
澪「私を頃す気か!! ショックであやうくまた子ども還りしてしまうところだ!」
梓「あ、そしたら今度こそ私の家に来て下さいよ」
律「私んちだろー! 部長だぞー!」
紬「私、一度澪ちゃんと髪の洗いっこしてみたかったの~♪」
唯「ええ~、また私の家だよ~」
澪「ああ、もう! 学校行くぞ、学校!!」
160: 2012/03/25(日) 18:18:50.05
律「うっしゃ! 行くか!」
梓「今日はちゃんと部活できそうですね」
紬「あっ、今日のおやつは期待しててね~」
唯「ホント、ムギちゃん!?」
澪「今日は練習だぞ!」
律「へへっ……じゃあ、今日も放課後になったら至急部室に集合ー!」
「「「「おーー!」」」」
161: 2012/03/25(日) 18:19:17.93
・
・
・
162: 2012/03/25(日) 18:20:21.66
澪「唯……唯……」クイクイ
唯「んっ?」
澪「……ありがとう」ボソッ
唯「……うんっ」ニコッ
オワリ
163: 2012/03/25(日) 18:21:57.38
以上で終わります。
お読みくださって本当にありがとうございました。
また、多くの方を不快にさせてしまって申し訳ありません。
お読みくださって本当にありがとうございました。
また、多くの方を不快にさせてしまって申し訳ありません。
168: 2012/03/26(月) 05:29:07.42
乙
引用元: 澪「コラ律っ」ゴチンッ 律「いてー!」
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