1: 2012/05/18(金) 23:47:23.44
律「よし! 練習はこれくらいにして、そろそろお茶にするか!」
梓「お茶の前に練習するようになったのは進歩ですけど
結局練習時間よりお茶の時間の方が長いじゃないですか~」
紬「じゃあ、すぐに用意するわね!」
唯「ムギちゃん、なんだか最近練習よりお茶淹れる方が張り切ってるね」
梓「ムギ先輩……」
梓ちゃんには悪いけど、私はこのティータイムが部活の時間で何よりも楽しみ
何故なら……
澪「ムギ、今日のお茶も美味しいな」
ティータイムの時
私の隣には痩せてるくせにボイン……
澪「ん、なにムギ? そんなに私の方ジロジロと見て。なにか私変?」
紬「え? ううん、なんでもないの」
標準体型のボインが座ってくれるから!
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337352443/
梓「お茶の前に練習するようになったのは進歩ですけど
結局練習時間よりお茶の時間の方が長いじゃないですか~」
紬「じゃあ、すぐに用意するわね!」
唯「ムギちゃん、なんだか最近練習よりお茶淹れる方が張り切ってるね」
梓「ムギ先輩……」
梓ちゃんには悪いけど、私はこのティータイムが部活の時間で何よりも楽しみ
何故なら……
澪「ムギ、今日のお茶も美味しいな」
ティータイムの時
私の隣には痩せてるくせにボイン……
澪「ん、なにムギ? そんなに私の方ジロジロと見て。なにか私変?」
紬「え? ううん、なんでもないの」
標準体型のボインが座ってくれるから!
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337352443/
2: 2012/05/18(金) 23:49:26.86
ちょっと前までは仲の良いただの友達でしかなかった
でも今は違う
とあることがきっかけで友達以上の感情が芽生えてしまった
きっと澪ちゃんも同じ気持ちを抱いていると思う
そうであってほしい
なんだか一度そんな意識をしちゃうと、普段の学校生活で
澪ちゃんの近くへ行くにはなんだか変に緊張しちゃって勇気がいる
だから、気兼ねなく澪ちゃんの隣に座れるティータイムは私にとって大変貴重な時間となった
だけど、そんな恋に障害はつきもの
律「ムギは、澪がそんなに飲んで食べてするから『澪ちゃん最近太ったなぁ』
って感じでジロジロと見たんだよ、きっと」
澪「なっ! なんだとぉ~!」
律「ひゃん! こわ~い」
澪「可愛く怖がっても駄目だ!」ペチン!!
律「いでっ! 私の可愛いおでこがっ!!」
このデコが私とボインの間に立ちふさがる
澪「ムギはそんなこと思ってないよな」
紬「え? うん……」
澪「いや、もうちょっと強く肯定してもらわないと……」
でも今は違う
とあることがきっかけで友達以上の感情が芽生えてしまった
きっと澪ちゃんも同じ気持ちを抱いていると思う
そうであってほしい
なんだか一度そんな意識をしちゃうと、普段の学校生活で
澪ちゃんの近くへ行くにはなんだか変に緊張しちゃって勇気がいる
だから、気兼ねなく澪ちゃんの隣に座れるティータイムは私にとって大変貴重な時間となった
だけど、そんな恋に障害はつきもの
律「ムギは、澪がそんなに飲んで食べてするから『澪ちゃん最近太ったなぁ』
って感じでジロジロと見たんだよ、きっと」
澪「なっ! なんだとぉ~!」
律「ひゃん! こわ~い」
澪「可愛く怖がっても駄目だ!」ペチン!!
律「いでっ! 私の可愛いおでこがっ!!」
このデコが私とボインの間に立ちふさがる
澪「ムギはそんなこと思ってないよな」
紬「え? うん……」
澪「いや、もうちょっと強く肯定してもらわないと……」
4: 2012/05/18(金) 23:50:48.29
律「ほらほらぁ~、ムギだってそう思ってるってことじゃん」
デコというのは勿論、我が軽音部部長のりっちゃん
りっちゃんは高校生のくせにおデコなんか出しちゃって
最初会ったときは正直ギャグかと思った
あんなに積極的におデコを出すなんて私には考えられないし
少なくとも私には出来ない
律「いやぁ~、ムギを見てると昨日の私を見るようだ」
澪「どういうことだよ」
律「昨日、私も同じようなこと思ってたから」
澪「律っ!!」
律「ムギも、お淑やかなのはいいけど、ちゃんと言いたいこと言わなきゃ
私のようになれないぞ」
梓「律先輩のようになっても……」
律「おいおい、それはどういうことかな、中野よ」
デコというのは勿論、我が軽音部部長のりっちゃん
りっちゃんは高校生のくせにおデコなんか出しちゃって
最初会ったときは正直ギャグかと思った
あんなに積極的におデコを出すなんて私には考えられないし
少なくとも私には出来ない
律「いやぁ~、ムギを見てると昨日の私を見るようだ」
澪「どういうことだよ」
律「昨日、私も同じようなこと思ってたから」
澪「律っ!!」
律「ムギも、お淑やかなのはいいけど、ちゃんと言いたいこと言わなきゃ
私のようになれないぞ」
梓「律先輩のようになっても……」
律「おいおい、それはどういうことかな、中野よ」
5: 2012/05/18(金) 23:51:27.48
澪「ムギ……本当に、そう思ってたの……?」
紬「ち、違うのよ澪ちゃん」
律「じゃあ、どのような思いで澪を見てたのかなぁ~?」
紬「えっと……澪ちゃん、今日も綺麗だな、って」
澪「えっ!? あの……えっと……。あ、ありがとう」
唯「あらあら」
梓「まぁまぁ」
律「おいおい、なに甘い空気漂わしてるんだよ……」
そう、私が澪ちゃんに対して特別な想いを抱き始めたのは
3年生になってから間もない頃
軽音部のみんなでお花見に行ったあの日……
紬「ち、違うのよ澪ちゃん」
律「じゃあ、どのような思いで澪を見てたのかなぁ~?」
紬「えっと……澪ちゃん、今日も綺麗だな、って」
澪「えっ!? あの……えっと……。あ、ありがとう」
唯「あらあら」
梓「まぁまぁ」
律「おいおい、なに甘い空気漂わしてるんだよ……」
そう、私が澪ちゃんに対して特別な想いを抱き始めたのは
3年生になってから間もない頃
軽音部のみんなでお花見に行ったあの日……
6: 2012/05/18(金) 23:52:09.27
~ ~ ~ ~ ~
律「じゃあ、明日の休みの日は軽音部で花見な!」
唯「わーい!」
さわ子「飲むわよー!」
梓「先生も来るんですか……」
さわ子「当たり前じゃない! 私だって軽音部の顧問なんですもの」
澪「あんまり羽目を外しすぎないで下さいね」
さわ子「それはシラフの私に言われても保証できないわね」
澪「はぁ……」
唯「で、昼間にするの? それとも夜?」
律「そりゃあ、花見と言ったら夜桜だろ」
紬「あの……ごめんなさい。私、その日は家のことで夕方から予定があって……」
律「じゃあ、明日の休みの日は軽音部で花見な!」
唯「わーい!」
さわ子「飲むわよー!」
梓「先生も来るんですか……」
さわ子「当たり前じゃない! 私だって軽音部の顧問なんですもの」
澪「あんまり羽目を外しすぎないで下さいね」
さわ子「それはシラフの私に言われても保証できないわね」
澪「はぁ……」
唯「で、昼間にするの? それとも夜?」
律「そりゃあ、花見と言ったら夜桜だろ」
紬「あの……ごめんなさい。私、その日は家のことで夕方から予定があって……」
7: 2012/05/18(金) 23:53:37.40
律「あ、そうなんだ……」
唯「じゃあ、来週にする?」
梓「でも、今週逃すときっと来週には葉桜になっちゃってますよ」
紬「だったら私抜きでやってもらっても」
澪「そういう訳にもいかないだろ、昼間にやればいいじゃないか
それだったらムギも来れるだろ?」
紬「うん。ごめんね夜桜見物じゃなくなって」
律「いやいや、いいって! 昼間だろうが夜だろうが桜の綺麗さは関係ないし!」
唯「そうそう、お弁当の美味しさは昼でも夜でも変わらない!」
梓「花より団子を包み隠さない唯先輩はさすがです」
さわ子「昼間っから酔っ払うってのも乙なもんよね~」
唯「じゃあ、来週にする?」
梓「でも、今週逃すときっと来週には葉桜になっちゃってますよ」
紬「だったら私抜きでやってもらっても」
澪「そういう訳にもいかないだろ、昼間にやればいいじゃないか
それだったらムギも来れるだろ?」
紬「うん。ごめんね夜桜見物じゃなくなって」
律「いやいや、いいって! 昼間だろうが夜だろうが桜の綺麗さは関係ないし!」
唯「そうそう、お弁当の美味しさは昼でも夜でも変わらない!」
梓「花より団子を包み隠さない唯先輩はさすがです」
さわ子「昼間っから酔っ払うってのも乙なもんよね~」
8: 2012/05/18(金) 23:54:30.28
お花見当日
さわ子「ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
紬「先生、大丈夫ですか!?」
さわ子「わたしゃ酔っ払ってませんよぉ~」
梓「なんか出来上がってる……」
律「この中で一番自制心を保ってなきゃいけない立場なのにな」
澪「うぅ……。周りの花見客の人の注目を集めまくってる」
さわ子「いや~、しっかしこのお弁当すごく美味しいわね」
唯「憂が持たせてくれたんだ」
さわ子「羨ましいわねぇ~。いっそのこと私も平沢家の子になろうかしら」
唯「さわちゃんと姉妹になっちゃうなんて、この世で一番最悪なことだよねぇ~」
さわ子「それもそっか! あ~っひゃっひゃっひゃっひゃ!」
さわ子「って、何あんた達黙ってるのよ! もっと盛り上がっていかないとっ!」
軽音部一同「……」
さわ子「ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
紬「先生、大丈夫ですか!?」
さわ子「わたしゃ酔っ払ってませんよぉ~」
梓「なんか出来上がってる……」
律「この中で一番自制心を保ってなきゃいけない立場なのにな」
澪「うぅ……。周りの花見客の人の注目を集めまくってる」
さわ子「いや~、しっかしこのお弁当すごく美味しいわね」
唯「憂が持たせてくれたんだ」
さわ子「羨ましいわねぇ~。いっそのこと私も平沢家の子になろうかしら」
唯「さわちゃんと姉妹になっちゃうなんて、この世で一番最悪なことだよねぇ~」
さわ子「それもそっか! あ~っひゃっひゃっひゃっひゃ!」
さわ子「って、何あんた達黙ってるのよ! もっと盛り上がっていかないとっ!」
軽音部一同「……」
9: 2012/05/18(金) 23:55:17.59
さわ子「まぁ~ったく……こんな良き日だっていうのにぃ……」
律「面倒くせぇなぁ……」
紬「今年の花見はいつにも増して楽しいわ」
梓「ムギ先輩の楽しいと感じる基準を詳しく知りたいです」
さわ子「私だってねぇ、PTAと学校の板挟みで大変なのよ」
さわ子「だから、こんな時くらい羽目外したっていいじゃないのよ!」
唯「大変な職についたねぇ、偉いねぇ」
梓「でも、生徒に対してはちゃんと教師らしく振舞ってもらわないと」
さわ子(ちっ! そっちがそうなら、無理矢理にでも盛り上げて……)
さわ子「あなた達、もうコップが空っぽね。さぁさぁ、先生が飲み物入れてあげるわね」
さわ子(にひひ……)トクトクトク...
さわ子「ほら、このカルピスソーダは誰が欲しい?」
澪「あ、じゃあ私がもらいます」
さわ子「ほい、澪ちゃんね。沢山飲むのよぉ」
さわ子「他の子は?」
律「面倒くせぇなぁ……」
紬「今年の花見はいつにも増して楽しいわ」
梓「ムギ先輩の楽しいと感じる基準を詳しく知りたいです」
さわ子「私だってねぇ、PTAと学校の板挟みで大変なのよ」
さわ子「だから、こんな時くらい羽目外したっていいじゃないのよ!」
唯「大変な職についたねぇ、偉いねぇ」
梓「でも、生徒に対してはちゃんと教師らしく振舞ってもらわないと」
さわ子(ちっ! そっちがそうなら、無理矢理にでも盛り上げて……)
さわ子「あなた達、もうコップが空っぽね。さぁさぁ、先生が飲み物入れてあげるわね」
さわ子(にひひ……)トクトクトク...
さわ子「ほら、このカルピスソーダは誰が欲しい?」
澪「あ、じゃあ私がもらいます」
さわ子「ほい、澪ちゃんね。沢山飲むのよぉ」
さわ子「他の子は?」
10: 2012/05/18(金) 23:56:13.44
唯「私、炭酸系苦手だからムギちゃんの持ってきてくれた紅茶でいい」
紬「魔法瓶に沢山作って持ってきたから、いくらでも言ってね」
梓「私も、ムギ先輩の紅茶がいいです」
律「春とはいえまだ少し肌寒いから温かいものが嬉しいよな」
澪「あ、だったら私もムギの紅茶の方が……」
さわ子「澪ちゅわ~ん! 私の入れた酒……じゃなくて
カルピスソーダが飲めないっていうのぉ!?」
澪「ひっ! わ、わかりました。飲みます、飲みますからあんまり絡まないで下さい」
さわ子(うっひっひ。せめて澪ちゃんだけは道連れに)
紬「魔法瓶に沢山作って持ってきたから、いくらでも言ってね」
梓「私も、ムギ先輩の紅茶がいいです」
律「春とはいえまだ少し肌寒いから温かいものが嬉しいよな」
澪「あ、だったら私もムギの紅茶の方が……」
さわ子「澪ちゅわ~ん! 私の入れた酒……じゃなくて
カルピスソーダが飲めないっていうのぉ!?」
澪「ひっ! わ、わかりました。飲みます、飲みますからあんまり絡まないで下さい」
さわ子(うっひっひ。せめて澪ちゃんだけは道連れに)
11: 2012/05/18(金) 23:56:53.14
… … …
さわ子「で、その男とはそれっきりってことよ」
律「へ~」
梓「ほうほう」
唯「すごいね~」
紬「先生も苦労なさってるんですね」
さわ子「その苦労が人生のスパイスになってるのよ」
唯「だとしたらスパイス効き過ぎな激辛人生だよね」
律「何がすごいってさわちゃんの恋愛遍歴のほぼ全てが片思いに始まり
恋に発展することなく終わっていくってとこだよな」
さわ子「ちょっと! 馬鹿にしないでもらえる!?」
澪 ポ~ッ
さわ子「で、その男とはそれっきりってことよ」
律「へ~」
梓「ほうほう」
唯「すごいね~」
紬「先生も苦労なさってるんですね」
さわ子「その苦労が人生のスパイスになってるのよ」
唯「だとしたらスパイス効き過ぎな激辛人生だよね」
律「何がすごいってさわちゃんの恋愛遍歴のほぼ全てが片思いに始まり
恋に発展することなく終わっていくってとこだよな」
さわ子「ちょっと! 馬鹿にしないでもらえる!?」
澪 ポ~ッ
12: 2012/05/18(金) 23:58:10.46
紬「あ、ちょっと私お手洗いに……」
梓「場所わかります?」
紬「うん、大丈夫」
さわ子「ったく……あなた達みたいな小便臭い小娘よりかは
私のほうがいくらか経験も豊富だし、魅力溢れてるわよ」
律「でも、私たち女子高だし。出会いとかないし」
さわ子「私だって桜高の生徒だったのよ!」
さわ子「でも、あなた達くらいの頃には好きな他校の男子に告白したりしてたし
恋愛に対して一切妥協はしてなかったわよ!」
唯「その結果メタルに走ることになってしまうとは当時のさわちゃんも思ってもみなかっただろうね」
さわ子「そういう軽口は男子とキスでもしてから叩きなさい。私なんてそれ以上のことも……
ウヒッ、ウヒヒヒヒヒ」
律「まだ昼間ですよ~」
澪「キス……トキメキとスキ」
梓「どうしたんですか? 澪先輩」
梓「場所わかります?」
紬「うん、大丈夫」
さわ子「ったく……あなた達みたいな小便臭い小娘よりかは
私のほうがいくらか経験も豊富だし、魅力溢れてるわよ」
律「でも、私たち女子高だし。出会いとかないし」
さわ子「私だって桜高の生徒だったのよ!」
さわ子「でも、あなた達くらいの頃には好きな他校の男子に告白したりしてたし
恋愛に対して一切妥協はしてなかったわよ!」
唯「その結果メタルに走ることになってしまうとは当時のさわちゃんも思ってもみなかっただろうね」
さわ子「そういう軽口は男子とキスでもしてから叩きなさい。私なんてそれ以上のことも……
ウヒッ、ウヒヒヒヒヒ」
律「まだ昼間ですよ~」
澪「キス……トキメキとスキ」
梓「どうしたんですか? 澪先輩」
13: 2012/05/18(金) 23:59:41.98
澪「なぁ、梓……キスってどんな感じかな……」
梓「えっ? えっと……残念ながら私も経験がないのでなんとも……」
澪「数奇な運命で好きになり 奇数の数だけキスをした」
梓「澪先輩!? 急にどうしたんですか!?」
律「ああ、いつもの発作だろ。にしてもこれはいつもの歌詞より酷いな」
澪「鱚がKISSして海に帰す」
唯「さすがの私でもこれは手放しで褒められない」
さわ子「澪ちゃん、そこは『鱚とFU●K』くらいにした方が勢いつくんじゃない?」
律「この公園のゴミ箱どこにあったっけ?」
梓「えっ? えっと……残念ながら私も経験がないのでなんとも……」
澪「数奇な運命で好きになり 奇数の数だけキスをした」
梓「澪先輩!? 急にどうしたんですか!?」
律「ああ、いつもの発作だろ。にしてもこれはいつもの歌詞より酷いな」
澪「鱚がKISSして海に帰す」
唯「さすがの私でもこれは手放しで褒められない」
さわ子「澪ちゃん、そこは『鱚とFU●K』くらいにした方が勢いつくんじゃない?」
律「この公園のゴミ箱どこにあったっけ?」
14: 2012/05/19(土) 00:01:14.82
紬「ただいま~」
唯「おかえりムギちゃん」
さわ子「ううっ、私もおトイレ」ブルッ
律「そのまま便器にでもはまってきて下さい」
紬「お手洗い結構混みだしてきてたから、もしあれだったら
みんなも早めに済ませちゃった方がいいかも」
唯「だったら、私もいってこようかな」
梓「私もです」
律「じゃあ、私も」
澪 ポ~ッ
律「澪は?」
澪「わたしはらいじょうぶ」
律「ん? そうか。じゃあムギと澪でお留守番よろしく」
紬「わかった~」
唯「おかえりムギちゃん」
さわ子「ううっ、私もおトイレ」ブルッ
律「そのまま便器にでもはまってきて下さい」
紬「お手洗い結構混みだしてきてたから、もしあれだったら
みんなも早めに済ませちゃった方がいいかも」
唯「だったら、私もいってこようかな」
梓「私もです」
律「じゃあ、私も」
澪 ポ~ッ
律「澪は?」
澪「わたしはらいじょうぶ」
律「ん? そうか。じゃあムギと澪でお留守番よろしく」
紬「わかった~」
15: 2012/05/19(土) 00:01:53.89
紬「ねぇ、澪ちゃん。このお花見会場って露店もあるしなんだかお祭りみたい」
紬「りんご飴とか綿菓子とか帰りに買っていこうかしら」
澪「ねぇ、ムギ」
紬「なぁに」
澪「ムギはキスしたこと、ある?」
紬「私は……そういうことはまだ……かな」
澪「キスってどんな感じかな」
紬「ん~、イメージでは甘酸っぱいとか?」
澪「なんだかよくわからない」
紬「まぁ、いずれ私たちだって恋をして……」
そう私が言った時、一陣の風が吹いた
紬「りんご飴とか綿菓子とか帰りに買っていこうかしら」
澪「ねぇ、ムギ」
紬「なぁに」
澪「ムギはキスしたこと、ある?」
紬「私は……そういうことはまだ……かな」
澪「キスってどんな感じかな」
紬「ん~、イメージでは甘酸っぱいとか?」
澪「なんだかよくわからない」
紬「まぁ、いずれ私たちだって恋をして……」
そう私が言った時、一陣の風が吹いた
16: 2012/05/19(土) 00:03:09.26
私はその風で髪の毛が乱れないようにしっかりと手で抑える
近くで「キャッ」と幼い女の子が小さな悲鳴を上げる
どうやらさっきの風に驚いて持っていたキャラクターものの風船を離してしまったみたいだ
きっと露天でお母さんに買ってもらったものだろう
桜の木の枝の間を縫って空へ舞い上がっていく
私は風船がその枝のどれかに引っ掛かればいい
そうすれば木登りが得意な、そう例えばりっちゃん
りっちゃんなんかはきっと木登りが得意だろうから
どれかの枝に引っ掛かればきっとその風船はまた女の子の元に戻るんじゃないか
そう思いながらじっとその風船の動向を見ていた
澪「ねぇ、ムギ」
不意に澪ちゃんに呼ばれて目が合う
どういう訳か彼女の顔は私の顔のすぐ近くにあった
これ以上近づけばきっと私と澪ちゃんは……
そう思った瞬間、また風が吹いた
近くで「キャッ」と幼い女の子が小さな悲鳴を上げる
どうやらさっきの風に驚いて持っていたキャラクターものの風船を離してしまったみたいだ
きっと露天でお母さんに買ってもらったものだろう
桜の木の枝の間を縫って空へ舞い上がっていく
私は風船がその枝のどれかに引っ掛かればいい
そうすれば木登りが得意な、そう例えばりっちゃん
りっちゃんなんかはきっと木登りが得意だろうから
どれかの枝に引っ掛かればきっとその風船はまた女の子の元に戻るんじゃないか
そう思いながらじっとその風船の動向を見ていた
澪「ねぇ、ムギ」
不意に澪ちゃんに呼ばれて目が合う
どういう訳か彼女の顔は私の顔のすぐ近くにあった
これ以上近づけばきっと私と澪ちゃんは……
そう思った瞬間、また風が吹いた
17: 2012/05/19(土) 00:04:21.59
さっきの風よりは幾分穏やかな風
だけど私はその風に対してなんの抵抗もしなかった
いえ、出来なかった
ただ風が吹くままに髪が乱れる
その乱れた髪が私と澪ちゃんの触れ合う部分を覆い隠す
まるで二人だけの秘密を守るように
どれくらいの間そうしていたのだろうか
きっと私の頭の中はいまだかつて無い濃厚で凝縮された経験のために
処理が追いつかなくなりオーバーロードをしていたのだろう
なので、私にはその時間を正確に把握することはできなかった
ふと気づくとすでに澪ちゃんは私から離れていた
唇にはまだ微かに感触が残っている
もう一度女の子が離してしまった風船を見る
2度目の風が吹く前とさほど変わらない高度を漂っている
そこで初めてさっきの出来事はほんの一瞬のことだったのだと悟った
私はどういう訳かその風船がどの木の枝にも引っかからずに
大空へ舞い上がって欲しいと願った
女の子には悪いけど、なぜだかそう願わずにはいられなかった
だけど私はその風に対してなんの抵抗もしなかった
いえ、出来なかった
ただ風が吹くままに髪が乱れる
その乱れた髪が私と澪ちゃんの触れ合う部分を覆い隠す
まるで二人だけの秘密を守るように
どれくらいの間そうしていたのだろうか
きっと私の頭の中はいまだかつて無い濃厚で凝縮された経験のために
処理が追いつかなくなりオーバーロードをしていたのだろう
なので、私にはその時間を正確に把握することはできなかった
ふと気づくとすでに澪ちゃんは私から離れていた
唇にはまだ微かに感触が残っている
もう一度女の子が離してしまった風船を見る
2度目の風が吹く前とさほど変わらない高度を漂っている
そこで初めてさっきの出来事はほんの一瞬のことだったのだと悟った
私はどういう訳かその風船がどの木の枝にも引っかからずに
大空へ舞い上がって欲しいと願った
女の子には悪いけど、なぜだかそう願わずにはいられなかった
18: 2012/05/19(土) 00:05:07.05
唯「ふわぁ~、さっきすごい風だったね」
律「ほんと、Hな風だったわん」
梓「さわ子先生には幻滅しました」
さわ子「うひひっ、梓ちゃん白だったわね~」
梓「最低です」
唯「そういうさわちゃんは毛糸の赤いパンツだったね」
さわ子「い、いいじゃない。まだ肌寒いし暖かいのよこれ」
律「ババ臭っ」
梓「そんなんだから彼氏できないんですよ」
さわ子「ぐぬぬ……」
紬「……」ポケ~ッ
澪「……」ポ~ッ
律「って2人とも、ぼ~っとしてどうした?」
律「ほんと、Hな風だったわん」
梓「さわ子先生には幻滅しました」
さわ子「うひひっ、梓ちゃん白だったわね~」
梓「最低です」
唯「そういうさわちゃんは毛糸の赤いパンツだったね」
さわ子「い、いいじゃない。まだ肌寒いし暖かいのよこれ」
律「ババ臭っ」
梓「そんなんだから彼氏できないんですよ」
さわ子「ぐぬぬ……」
紬「……」ポケ~ッ
澪「……」ポ~ッ
律「って2人とも、ぼ~っとしてどうした?」
19: 2012/05/19(土) 00:05:46.73
紬「えっ!? あっ!? な、なんでもないの!」
律「ん? そうか?」
紬「あの、私そろそろ帰らないと!」
梓「もうそんな時間なんですか?」
紬「え、えっと……う、うん、ごめんね」
さわ子「まだまだこれからなのにぃ~」
紬「私のことは気にせずに続けてください」
唯「そっか~、残念だなぁ」
紬「じゃあ、またね!」
澪 ポ~ッ
律「ん? そうか?」
紬「あの、私そろそろ帰らないと!」
梓「もうそんな時間なんですか?」
紬「え、えっと……う、うん、ごめんね」
さわ子「まだまだこれからなのにぃ~」
紬「私のことは気にせずに続けてください」
唯「そっか~、残念だなぁ」
紬「じゃあ、またね!」
澪 ポ~ッ
20: 2012/05/19(土) 00:07:11.57
あんなことがあった後だったのでなんだかいたたまれなくなって
その場から逃げ出すように帰途に着く
少し歩いて冷静になると慌ててあの場を出てきてしまったことに後悔した
なにより澪ちゃんには何も言わずに来ちゃったから
でも戻ることなんて出来そうにない
紬「別れの挨拶くらいはしときたかったな」
もちろんさっきの行為に対しての「ごめんなさい」という返答ではなく
ただ「じゃあね」とか「またね」といった類のもの
ふと先程のことを思い返すと、顔がほのかに熱くなる
思ってもみなかったまさかの出来事、だけど嫌じゃない
むしろ……
私は来た道を振り返り軽音部が陣取っていた場所を探した
だけどここからじゃ人ごみに紛れて澪ちゃん達を判別できない
空にはさっきの風船がフワフワと浮かんでいる
紬「どこにも引っ掛からなかったのね。あの女の子かわいそうに」
その言葉とは裏腹に私はなんだか嬉しくなってしまった
私はさっきの素敵な出来事を何度も何度も思い返し
ゆっくりゆっくりと家路に着いた
~ ~ ~ ~ ~
その場から逃げ出すように帰途に着く
少し歩いて冷静になると慌ててあの場を出てきてしまったことに後悔した
なにより澪ちゃんには何も言わずに来ちゃったから
でも戻ることなんて出来そうにない
紬「別れの挨拶くらいはしときたかったな」
もちろんさっきの行為に対しての「ごめんなさい」という返答ではなく
ただ「じゃあね」とか「またね」といった類のもの
ふと先程のことを思い返すと、顔がほのかに熱くなる
思ってもみなかったまさかの出来事、だけど嫌じゃない
むしろ……
私は来た道を振り返り軽音部が陣取っていた場所を探した
だけどここからじゃ人ごみに紛れて澪ちゃん達を判別できない
空にはさっきの風船がフワフワと浮かんでいる
紬「どこにも引っ掛からなかったのね。あの女の子かわいそうに」
その言葉とは裏腹に私はなんだか嬉しくなってしまった
私はさっきの素敵な出来事を何度も何度も思い返し
ゆっくりゆっくりと家路に着いた
~ ~ ~ ~ ~
21: 2012/05/19(土) 00:08:08.10
澪「お~い、ムギ。どうしたんだ? なんかぼーっとして」
紬「えっ? いや、なんでもないの」
だけど、私と澪ちゃんの関係は
そのお花見の時にキスして、それからは何も無い
澪「そうか?」
紬「ちょっと、みんなとお花見したことを思い出してて」
唯「あー、そういえば今年のお花見はみんなでやったんだっけ」
梓「なんだかあまり良い思い出にはならなかった気が……」
律「さわちゃん酔っ払うしさぁ~、それに澪が……」
澪「わーっ! わーっ!」
紬「?」
22: 2012/05/19(土) 00:08:54.95
ムギの帰ったあと…
唯「なんかムギちゃん慌ててたね」
梓「家の用事って結構重要なものだったのかもしれないですね」
唯「遅れちゃったら大変なことになっちゃうとか?」
律「時間も無いのに私たちに付き合ってくれてたって訳か」
唯「なんだか悪いことしちゃったね」
律「今度はもっとムギの余裕のあるときにみんなで集まりたいな」
さわ子「本当よね~」
律「さわちゃん抜きでっ!」
さわ子「除け者にしないでよ~、ねぇ~」
律「あ~も~うっぜ」
唯「教師らしからぬ酔っぱらいっぷりだよね」
梓「反面教師としては立派に役目を成していると思います」
さわ子「もう私、これからはその方向性でいくわ」
律「いくな」
唯「なんかムギちゃん慌ててたね」
梓「家の用事って結構重要なものだったのかもしれないですね」
唯「遅れちゃったら大変なことになっちゃうとか?」
律「時間も無いのに私たちに付き合ってくれてたって訳か」
唯「なんだか悪いことしちゃったね」
律「今度はもっとムギの余裕のあるときにみんなで集まりたいな」
さわ子「本当よね~」
律「さわちゃん抜きでっ!」
さわ子「除け者にしないでよ~、ねぇ~」
律「あ~も~うっぜ」
唯「教師らしからぬ酔っぱらいっぷりだよね」
梓「反面教師としては立派に役目を成していると思います」
さわ子「もう私、これからはその方向性でいくわ」
律「いくな」
23: 2012/05/19(土) 00:09:39.68
澪「ねぇ~りつぅ~」
律「ん?」
澪「チュ~しようよ~」
律「は?」
澪「チュ~」
律「なんだよ突然、嫌だよ」
澪「小学生の頃はしたことあっただろ~」
律「あんなん遊びだろ」
澪「酷い! 私とは遊びだったなんてっ!」
律「なんで澪まで酔っ払いみたいに……」
澪「あたしゃ酔っ払ってませんよぉ~」
律「はいはい、酔っ払いはみんなそう言う……って、澪本当に酔っ払ってるのか?」
律「ん?」
澪「チュ~しようよ~」
律「は?」
澪「チュ~」
律「なんだよ突然、嫌だよ」
澪「小学生の頃はしたことあっただろ~」
律「あんなん遊びだろ」
澪「酷い! 私とは遊びだったなんてっ!」
律「なんで澪まで酔っ払いみたいに……」
澪「あたしゃ酔っ払ってませんよぉ~」
律「はいはい、酔っ払いはみんなそう言う……って、澪本当に酔っ払ってるのか?」
24: 2012/05/19(土) 00:11:02.16
唯「りっちゃん隊員! 澪ちゃんが飲んでいたカルピスソーダから、ほのかにお酒の匂いがします!」
梓「ほ、本当ですね。言われてみればそんな気がします」
澪「ううっ……律が私に冷たい」
律「ってことは澪がこんなことになったのも……」
さわ子「さぁみんな! 遊んでばかりいないで勉強もしないとね!
そろそろお花見もお開きよ!」
律「ちょっと待て」
さわ子「いや、ほんのいたずら心で……」
律「教師が生徒に酒盛ってどうすんだよ!」
さわ子「いやっ! 生徒に犯されるっ!」
律「黙ってろ!」
さわ子「助けて~……。って、ああっ!? アンパンマンが助けに来てくれた!」
唯「本当だ! でも首だけで飛んでるね」
梓「あれ風船ですよ。近くの露店で売ってるの見ました」
梓「ほ、本当ですね。言われてみればそんな気がします」
澪「ううっ……律が私に冷たい」
律「ってことは澪がこんなことになったのも……」
さわ子「さぁみんな! 遊んでばかりいないで勉強もしないとね!
そろそろお花見もお開きよ!」
律「ちょっと待て」
さわ子「いや、ほんのいたずら心で……」
律「教師が生徒に酒盛ってどうすんだよ!」
さわ子「いやっ! 生徒に犯されるっ!」
律「黙ってろ!」
さわ子「助けて~……。って、ああっ!? アンパンマンが助けに来てくれた!」
唯「本当だ! でも首だけで飛んでるね」
梓「あれ風船ですよ。近くの露店で売ってるの見ました」
25: 2012/05/19(土) 00:12:02.44
律「さっきの風にビックリして、誰か離しちゃったんだろうな」
カァーッ カァーッ
唯「あっ! アンパンマンがカラスに襲われてるっ!」
さわ子「がんばれ! アンパンマン!」
パァン!!
律「あ~割れちゃった」
唯「やっぱり顔だけじゃただのアンパンなんだね」
梓「いや、そういう問題じゃ」
女の子「うわ~ん! あたしのアンパンマンがー!」
お母さん「ほらほら、新しいの買ってあげるから」
女の子「うん……ぐすん」
お母さん「今度は離しちゃだめよ」
────────────
────────
────
カァーッ カァーッ
唯「あっ! アンパンマンがカラスに襲われてるっ!」
さわ子「がんばれ! アンパンマン!」
パァン!!
律「あ~割れちゃった」
唯「やっぱり顔だけじゃただのアンパンなんだね」
梓「いや、そういう問題じゃ」
女の子「うわ~ん! あたしのアンパンマンがー!」
お母さん「ほらほら、新しいの買ってあげるから」
女の子「うん……ぐすん」
お母さん「今度は離しちゃだめよ」
────────────
────────
────
26: 2012/05/19(土) 00:13:02.00
律(なんてこともあったっけなぁ)
澪「ほら、もう休憩は終わり」
澪「練習するぞ」
そう、これが彼女の口癖
でも、こう言うと必ず
律「え~っ、もっとお茶しようよぉ~」
りっちゃんは部長のくせに練習もしないで遊びたがる
澪「だ~め! もう学祭まで日もないんだから」
律「私と練習どっちが大事なの!?」
嫌な予感というのは、的中するもので……
きっとりっちゃんも澪ちゃんを狙っていることは間違いない
と、思う
いや、と言うよりも私自身、あの出来事があるまで
この2人をそういう目で見てしまっていた節もあった
それはそれで楽しくはあったのだけれども
私をこういう気持ちにさせたボインにおデコが手を出しているとなると
やはり、いい気はしない
私も結構身勝手なものだと思う
澪「ほら、もう休憩は終わり」
澪「練習するぞ」
そう、これが彼女の口癖
でも、こう言うと必ず
律「え~っ、もっとお茶しようよぉ~」
りっちゃんは部長のくせに練習もしないで遊びたがる
澪「だ~め! もう学祭まで日もないんだから」
律「私と練習どっちが大事なの!?」
嫌な予感というのは、的中するもので……
きっとりっちゃんも澪ちゃんを狙っていることは間違いない
と、思う
いや、と言うよりも私自身、あの出来事があるまで
この2人をそういう目で見てしまっていた節もあった
それはそれで楽しくはあったのだけれども
私をこういう気持ちにさせたボインにおデコが手を出しているとなると
やはり、いい気はしない
私も結構身勝手なものだと思う
27: 2012/05/19(土) 00:14:57.09
唯「あ、そーだ。私、その学祭に向けて新しい歌詞書いてきたんだ」
梓「唯先輩がですか!?」
唯「なんか突然降りてきたんだよね」
律「へー。どんなの?」
唯「タイトルは『作詞家と生徒会と妹と後輩』だよ」
律「どれどれ?」
『いつもお世話になっています 私は作詞家です
今日は歌詞の作り方を みんなに教えましょう
大好きな人への秘めた思いと 楽しい事と悲しい事
可愛い擬音を入れれば完璧 さっそくなりきろう
いつもお世話になっています 私は生徒会です
今日は唯のあしらい方を みんなに教えましょう
戯言を抜かす幼馴染の 出鼻を挫く有効策
魔法の一言 「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
いつも姉がお世話になってます 妹の憂です
今日は煮物の作り方 皆さんにお教えします
手頃なお鍋に 適当な具材を入れて
お姉ちゃんへの想いと お姉ちゃんへの愛
それらをトロ火でじっくり みんなで待ちましょう
いつもお世話になっています 私はあずにゃんです ニャンニャン
今日は愛される後輩になる方法教えます ニャンニャン
最初はちょっと生意気に見せて 徐々に態度を軟化させ ニャン!
抱きつかせてやれば唯先輩の 天使になれるでしょう ニャニャニャ~ン』
律「……」
澪「……」
紬「……」
梓「……唯先輩、マジすか?」
唯「マジだ、にゃん」
梓「唯先輩がですか!?」
唯「なんか突然降りてきたんだよね」
律「へー。どんなの?」
唯「タイトルは『作詞家と生徒会と妹と後輩』だよ」
律「どれどれ?」
『いつもお世話になっています 私は作詞家です
今日は歌詞の作り方を みんなに教えましょう
大好きな人への秘めた思いと 楽しい事と悲しい事
可愛い擬音を入れれば完璧 さっそくなりきろう
いつもお世話になっています 私は生徒会です
今日は唯のあしらい方を みんなに教えましょう
戯言を抜かす幼馴染の 出鼻を挫く有効策
魔法の一言 「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
いつも姉がお世話になってます 妹の憂です
今日は煮物の作り方 皆さんにお教えします
手頃なお鍋に 適当な具材を入れて
お姉ちゃんへの想いと お姉ちゃんへの愛
それらをトロ火でじっくり みんなで待ちましょう
いつもお世話になっています 私はあずにゃんです ニャンニャン
今日は愛される後輩になる方法教えます ニャンニャン
最初はちょっと生意気に見せて 徐々に態度を軟化させ ニャン!
抱きつかせてやれば唯先輩の 天使になれるでしょう ニャニャニャ~ン』
律「……」
澪「……」
紬「……」
梓「……唯先輩、マジすか?」
唯「マジだ、にゃん」
28: 2012/05/19(土) 00:15:54.77
澪「色々と駄目だろ」
唯「え~、結構イケてると思うけどなぁ」
紬「でも、これじゃあ煮物の作り方がよくわからないわ」
律「あえてそこにツッコミを入れるムギがわからないな」
梓「それより、どう考えても私の部分が……」
唯「せっかく和ちゃんと憂が手伝ってくれたのにぃ」
律「とにかくさ、私たちの曲になるんだから、せめて私たちのことじゃないと」
澪「和や憂ちゃんのこと歌ってもな」
唯「ふっふっふ。そう言われるだろうと思ってもう1作あるんだ」
唯「私たち自身のことを綴った、タイトルはずばり『HTT』!」
紬「放課後ティータイムね」
唯「各々の住所と携帯番号を激しいバンドサウンドに合わせて歌うんだよ!」
澪「却下」
律「馬鹿か」
梓「呆れました」
唯「え~」
紬「……」
どうやら唯ちゃんは今日も元気です
唯「え~、結構イケてると思うけどなぁ」
紬「でも、これじゃあ煮物の作り方がよくわからないわ」
律「あえてそこにツッコミを入れるムギがわからないな」
梓「それより、どう考えても私の部分が……」
唯「せっかく和ちゃんと憂が手伝ってくれたのにぃ」
律「とにかくさ、私たちの曲になるんだから、せめて私たちのことじゃないと」
澪「和や憂ちゃんのこと歌ってもな」
唯「ふっふっふ。そう言われるだろうと思ってもう1作あるんだ」
唯「私たち自身のことを綴った、タイトルはずばり『HTT』!」
紬「放課後ティータイムね」
唯「各々の住所と携帯番号を激しいバンドサウンドに合わせて歌うんだよ!」
澪「却下」
律「馬鹿か」
梓「呆れました」
唯「え~」
紬「……」
どうやら唯ちゃんは今日も元気です
29: 2012/05/19(土) 00:17:33.48
そんな日常も学園祭に向けてだんだんと慌ただしくなってくる
文化部の日頃の活動の発表の場でもあり
クラス単位でなんらかの催しをする場でもある
特に私たち3年生にとっては高校最後の学祭
クラスのみんなも俄然ヤル気になっている
そんな学祭の出し物を決めるHRで
我が3年2組は迷うこと無く舞台劇を選んだ
講堂は主に文化系のクラブの発表の場でもあるのでクラス発表に時間を割く割合が少なくなって
結果限られたクラスしか舞台を使うことが出来ない
慣例として3年生のクラスが講堂の舞台を優先的に使用できるということなので
毎年恒例のように全て3年のクラスで講堂の枠は埋まった
教室で喫茶店やお化け屋敷、校庭で模擬店などは1、2年生のときに恐らく全員が経験しているだろう
なのでやはり高校最後の学園祭というこで特別な思い出に残るであろう
舞台劇を選ぶのは当然のことだったし、私やクラスの皆もそれを望んでいた
澪「舞台発表か……。出来れば裏方がいいな」
ただ一人を除いては
文化部の日頃の活動の発表の場でもあり
クラス単位でなんらかの催しをする場でもある
特に私たち3年生にとっては高校最後の学祭
クラスのみんなも俄然ヤル気になっている
そんな学祭の出し物を決めるHRで
我が3年2組は迷うこと無く舞台劇を選んだ
講堂は主に文化系のクラブの発表の場でもあるのでクラス発表に時間を割く割合が少なくなって
結果限られたクラスしか舞台を使うことが出来ない
慣例として3年生のクラスが講堂の舞台を優先的に使用できるということなので
毎年恒例のように全て3年のクラスで講堂の枠は埋まった
教室で喫茶店やお化け屋敷、校庭で模擬店などは1、2年生のときに恐らく全員が経験しているだろう
なのでやはり高校最後の学園祭というこで特別な思い出に残るであろう
舞台劇を選ぶのは当然のことだったし、私やクラスの皆もそれを望んでいた
澪「舞台発表か……。出来れば裏方がいいな」
ただ一人を除いては
30: 2012/05/19(土) 00:18:08.02
和「では演目を決めたいと思います。何かリクエストがあれば」
紬「はいっ」
和「琴吹さん」
紬「ロミオとジュリエットがいいと思います」
教室がにわかに色めき立つ
唯「はいっ」
和「平沢さん」
唯「トムとジェリーがいいと思います」
教室が笑いに包まれる
紬「はいっ」
和「琴吹さん」
紬「ロミオとジュリエットがいいと思います」
教室がにわかに色めき立つ
唯「はいっ」
和「平沢さん」
唯「トムとジェリーがいいと思います」
教室が笑いに包まれる
31: 2012/05/19(土) 00:20:01.39
… … …
和「投票の結果、3年2組のクラス発表舞台劇の演目は
ロミオとジュリエットに決定しました」
私の提案したロミオとジュリエットは
拍手で以ってクラスに迎え入れられた
和「では、そろそろ時間なので配役やその他裏方は明日の朝のホームルームから順次決めたいと思います」
私はここぞとばかりに手を挙げる
和「琴吹さん?」
紬「あの、私に脚本書かせてもらえませんか?」
私の胸は積もり積もった澪ちゃんに対する想いで一杯だった
この気持ちを何処かで発散させたい、何らかの形にして吐き出したい
ロミオとジュリエットは家の為に許されない恋
私は同性の為に許されない恋
シェイクスピアには失礼かもしれないけど
そんな立場を重ねて想う
和「あ、立候補? そういうのは明日にしようと思ってたんだけど」
紬「え、あ……。えっと……」
さわ子「別にいいんじゃない? 特にそういうのは時間がかかるだろうし
早い内に決めちゃった方が」
和「それもそうですね」
和「じゃあ、他に脚本の立候補はありますか?」
和「……では、琴吹さんに任せてもいいと思う人は挙手をお願いします」
和「満場一致で3年2組版ロミオとジュリエットの脚本は琴吹さんに決定しました」
和「投票の結果、3年2組のクラス発表舞台劇の演目は
ロミオとジュリエットに決定しました」
私の提案したロミオとジュリエットは
拍手で以ってクラスに迎え入れられた
和「では、そろそろ時間なので配役やその他裏方は明日の朝のホームルームから順次決めたいと思います」
私はここぞとばかりに手を挙げる
和「琴吹さん?」
紬「あの、私に脚本書かせてもらえませんか?」
私の胸は積もり積もった澪ちゃんに対する想いで一杯だった
この気持ちを何処かで発散させたい、何らかの形にして吐き出したい
ロミオとジュリエットは家の為に許されない恋
私は同性の為に許されない恋
シェイクスピアには失礼かもしれないけど
そんな立場を重ねて想う
和「あ、立候補? そういうのは明日にしようと思ってたんだけど」
紬「え、あ……。えっと……」
さわ子「別にいいんじゃない? 特にそういうのは時間がかかるだろうし
早い内に決めちゃった方が」
和「それもそうですね」
和「じゃあ、他に脚本の立候補はありますか?」
和「……では、琴吹さんに任せてもいいと思う人は挙手をお願いします」
和「満場一致で3年2組版ロミオとジュリエットの脚本は琴吹さんに決定しました」
32: 2012/05/19(土) 00:23:17.38
琴吹家
紬「♪~♪~」
菫「紬お嬢様、何か良いことでもあったのですか?」
紬「もう、そんな呼び方は止めてって言ってるでしょ?」
菫「で、でも……一応使用人って立場ですし……」
紬「ダ~メ。私は使用人より一人の妹の方を欲しているし、菫が本当の妹であればよかったとも思ってるのよ?
菫はそんな私のささやかな願いを無視するの?」
菫「うん、わかったよ、お姉ちゃん」
紬「それでよし」
菫「でも、私の立場もわかってくれると嬉しいんだけど……」
紬「と、言うと?」
菫「おじいちゃんが幼少期はまだしも小学校を卒業後もお嬢様とタメ語で話すとは使用人としては言語道断だって」
紬「はぁ……斎藤が言いそうなことね」
紬「わかったわ、私から斎藤にはキツく言っておくわ」
菫「そ、そんなことしちゃったら、それこそ大問題だよ!」
菫「お嬢様をダシに使用人たる自分の立場も弁えずにけしからん!」
菫「って雷が落ちるに決まってるよ」
紬「♪~♪~」
菫「紬お嬢様、何か良いことでもあったのですか?」
紬「もう、そんな呼び方は止めてって言ってるでしょ?」
菫「で、でも……一応使用人って立場ですし……」
紬「ダ~メ。私は使用人より一人の妹の方を欲しているし、菫が本当の妹であればよかったとも思ってるのよ?
菫はそんな私のささやかな願いを無視するの?」
菫「うん、わかったよ、お姉ちゃん」
紬「それでよし」
菫「でも、私の立場もわかってくれると嬉しいんだけど……」
紬「と、言うと?」
菫「おじいちゃんが幼少期はまだしも小学校を卒業後もお嬢様とタメ語で話すとは使用人としては言語道断だって」
紬「はぁ……斎藤が言いそうなことね」
紬「わかったわ、私から斎藤にはキツく言っておくわ」
菫「そ、そんなことしちゃったら、それこそ大問題だよ!」
菫「お嬢様をダシに使用人たる自分の立場も弁えずにけしからん!」
菫「って雷が落ちるに決まってるよ」
33: 2012/05/19(土) 00:24:39.25
紬「そうね、じゃあこうしましょ。斎藤がいる前では菫は敬語を使う」
紬「だけど、それ以外は私と菫は姉妹」
菫「お姉ちゃんがそれでいいなら」
紬「ふふっ。なんだかごっこ遊びをしているみたいね」
菫(姉妹ごっこ……かな……)
紬「斎藤の前では知られちゃ駄目よ。私と菫がお嬢様と使用人ごっこをしてるってことを」
菫「お姉ちゃん……。うん、わかった!」
紬「なんだかそう考えると楽しくなってきちゃうわ」
菫「そういえばお姉ちゃんなんだか嬉しそうだよね」
紬「え? わかる?」
菫「うん、学校で何かあったの?」
紬「実はね、今度の学園祭、クラスでロミオとジュリエットを演ることになったんだけど
その脚本に私が選ばれたの」
菫「へぇ~、すごいね!」
紬「早速今日から書き始めて、ロミオとジュリエットを私色に染めてみせるわ」
菫「もし、夜遅くなるようだったら、お夜食でも作ろうか?」
紬「本当? 嬉しいわ」
紬「だけど、それ以外は私と菫は姉妹」
菫「お姉ちゃんがそれでいいなら」
紬「ふふっ。なんだかごっこ遊びをしているみたいね」
菫(姉妹ごっこ……かな……)
紬「斎藤の前では知られちゃ駄目よ。私と菫がお嬢様と使用人ごっこをしてるってことを」
菫「お姉ちゃん……。うん、わかった!」
紬「なんだかそう考えると楽しくなってきちゃうわ」
菫「そういえばお姉ちゃんなんだか嬉しそうだよね」
紬「え? わかる?」
菫「うん、学校で何かあったの?」
紬「実はね、今度の学園祭、クラスでロミオとジュリエットを演ることになったんだけど
その脚本に私が選ばれたの」
菫「へぇ~、すごいね!」
紬「早速今日から書き始めて、ロミオとジュリエットを私色に染めてみせるわ」
菫「もし、夜遅くなるようだったら、お夜食でも作ろうか?」
紬「本当? 嬉しいわ」
34: 2012/05/19(土) 00:26:01.94
斎藤「お嬢様、よろしいですか?」コンコン
紬「どうぞ」
斎藤「失礼いたします」
斎藤「本日のご夕食の献立表で御座います」
紬「ありがとう。そこに置いておいて」
斎藤「かしこまりました」
紬「じゃあ、菫。さっきの件、よろしく頼むわね」
菫「はい、かしこまりました。でもお嬢様もあまり無理をなさらぬように」
紬「ええ」
斎藤「菫、お前もそろそろ夕食の準備を手伝うように」
菫「はい。お嬢様のお着替えが済み次第、そちらに」
斎藤「うん。それではお嬢様」
紬「ご苦労様」
紬「どうぞ」
斎藤「失礼いたします」
斎藤「本日のご夕食の献立表で御座います」
紬「ありがとう。そこに置いておいて」
斎藤「かしこまりました」
紬「じゃあ、菫。さっきの件、よろしく頼むわね」
菫「はい、かしこまりました。でもお嬢様もあまり無理をなさらぬように」
紬「ええ」
斎藤「菫、お前もそろそろ夕食の準備を手伝うように」
菫「はい。お嬢様のお着替えが済み次第、そちらに」
斎藤「うん。それではお嬢様」
紬「ご苦労様」
35: 2012/05/19(土) 00:26:44.67
紬「……もう行ったわね」
菫「それではお夜食はおにぎりとサンドイッチのどちらがよろしいですか? お嬢様」
紬「ふふふっ。なんだか笑いを堪えるので精一杯だったわ」
菫「上手くいったみだいだね、お姉ちゃん」
紬「とても上手だったわよ、使用人さん」
菫「お嬢様こそ」
紬「ふふふっ」
菫「ふふっ」
36: 2012/05/19(土) 00:30:53.12
次の日、私は遅くまで脚本を書いていたことが祟って
寝坊してしまい屋敷を出るのが遅れてしまった
学校へ着くとすでに朝のHRは終わっていてクラスメイトは1限目の授業の準備を始めていた
どういう訳だか澪ちゃんとりっちゃんは二人とも机に突っ伏している
唯「ムギちゃんおっはよ~。珍しいね遅刻なんて」
紬「うん、ちょっと夜遅くまで脚本を書いてて」
唯「ムギちゃん気合入ってるねぇ」
紬「ところで澪ちゃんとりっちゃん、どうしたの?」
突然 忍び寄る
和「あ、そのことなんだけどムギ」
怪しい 赤メガネ
和「さっきの朝のHRでね、とりあえず主役の配役決めて」
悪魔の プレゼント
和「まぁ、澪と律は嫌だって言ってたんだけど」
無理矢理
和「この2人に決まったから、主役」
3年2組の 過酷な舞台劇
和「特に立候補もいなかったし」
この悲しみをどうすればいいの?
和「とりあえず推薦してもらって、投票の結果ね」
誰が私を救ってくれるの?
和「澪がロミオ、律がジュリエット」
こいつは正に
澪律「大迷惑だっ!!」
寝坊してしまい屋敷を出るのが遅れてしまった
学校へ着くとすでに朝のHRは終わっていてクラスメイトは1限目の授業の準備を始めていた
どういう訳だか澪ちゃんとりっちゃんは二人とも机に突っ伏している
唯「ムギちゃんおっはよ~。珍しいね遅刻なんて」
紬「うん、ちょっと夜遅くまで脚本を書いてて」
唯「ムギちゃん気合入ってるねぇ」
紬「ところで澪ちゃんとりっちゃん、どうしたの?」
突然 忍び寄る
和「あ、そのことなんだけどムギ」
怪しい 赤メガネ
和「さっきの朝のHRでね、とりあえず主役の配役決めて」
悪魔の プレゼント
和「まぁ、澪と律は嫌だって言ってたんだけど」
無理矢理
和「この2人に決まったから、主役」
3年2組の 過酷な舞台劇
和「特に立候補もいなかったし」
この悲しみをどうすればいいの?
和「とりあえず推薦してもらって、投票の結果ね」
誰が私を救ってくれるの?
和「澪がロミオ、律がジュリエット」
こいつは正に
澪律「大迷惑だっ!!」
37: 2012/05/19(土) 00:32:15.32
和「仕方ないじゃない、クラスの投票で決まったんだから」
舞台上で展開される私の思いの丈を体現するのは澪ちゃんとりっちゃんで
君をこの手で抱きしめたいと澪ちゃんに抱き寄せられるのがりっちゃんで
君の寝顔を見つめていたいと澪ちゃんに囁かれるのがりっちゃんで
澪「ムギはどう思う? 私がロミオなんておかしいよな」
律「私のジュリエットの方がおかしいし!」
紬「2人が主役なら脚本大幅に書き直さなきゃ……」
唯「おおっ! どうやらムギちゃんもやる気のようですな!」
澪律「な、何をする気だ!?」
和「じゃあ、そういうことで脚本もよろしくね」
唯「ムギちゃん昨夜は遅くまで脚本書いてたみたいでね
だから遅刻したんだって」
和「じゃあ期待できるわね」
帰りたい……帰りたい……帰りたい……帰りたい……
舞台上で展開される私の思いの丈を体現するのは澪ちゃんとりっちゃんで
君をこの手で抱きしめたいと澪ちゃんに抱き寄せられるのがりっちゃんで
君の寝顔を見つめていたいと澪ちゃんに囁かれるのがりっちゃんで
澪「ムギはどう思う? 私がロミオなんておかしいよな」
律「私のジュリエットの方がおかしいし!」
紬「2人が主役なら脚本大幅に書き直さなきゃ……」
唯「おおっ! どうやらムギちゃんもやる気のようですな!」
澪律「な、何をする気だ!?」
和「じゃあ、そういうことで脚本もよろしくね」
唯「ムギちゃん昨夜は遅くまで脚本書いてたみたいでね
だから遅刻したんだって」
和「じゃあ期待できるわね」
帰りたい……帰りたい……帰りたい……帰りたい……
50: 2012/05/26(土) 00:49:11.45
紬「ただいま……」
斎藤「これは紬お嬢様、おかえりなさいませ」
紬「ええ……」
斎藤「本日はいつもよりお早いおかえりで御座いますが
どうかなされたので?」
紬「ちょっと体調がすぐれなくて……部活はお休みさせてもらったの」
斎藤「なんと!? 今すぐ医者をお呼びいたします!」
紬「ちょっと寝不足で気分が悪いだけだから、そこまでしなくても大丈夫よ」
斎藤「左様でございますか……。しかしお電話でもいただければお迎えに上がりましたのに」
紬「ちょっと、一人で考えたいこともあったから……」
斎藤「はぁ。それは昨夜遅くまでされていたことと何か関係が?」
紬「……」
斎藤「申し訳ありません。余計な詮索をしてしまいました」
紬「いえ、いいのよ。別に隠すようなことでもないから」
紬「でも、今はちょっと一人にさせてもらえる?」
斎藤「お嬢様……」
51: 2012/05/26(土) 00:50:34.68
菫「ただいま帰りました」
斎藤「おお、菫。いいところへ」
菫「どうしたの?」
斎藤「うむ、紬お嬢様のことなんだが」
菫「おね……お嬢様がなにか?」
斎藤「先程お帰りになられたのだが、気分がすぐれないと部活もお休みになられてな」
菫「寝不足だらかなんじゃ」
斎藤「それとは別に、何か深刻に悩んでおられる様子でな」
斎藤「帰ってくるなり、一人になりたいと仰られたり」
菫(脚本のことで頭が一杯なんだろうなぁ)
菫「大丈夫だと思うけど」
斎藤「何が大丈夫なものか。お前はお嬢様が心配でないのか!?」
菫「だから、大丈夫だって」
菫(私はお姉ちゃんが何で悩んでるのか知ってるし
でも、それを言いふらしていいのかどうか……)
斎藤「ああ、なんてことだ……。やはり幼少期から一緒だったのがいけなかったのだ
だから、こんなにもお嬢様のことを軽く考えるようになってしまって」ブツブツ
菫「……」
斎藤「おお、菫。いいところへ」
菫「どうしたの?」
斎藤「うむ、紬お嬢様のことなんだが」
菫「おね……お嬢様がなにか?」
斎藤「先程お帰りになられたのだが、気分がすぐれないと部活もお休みになられてな」
菫「寝不足だらかなんじゃ」
斎藤「それとは別に、何か深刻に悩んでおられる様子でな」
斎藤「帰ってくるなり、一人になりたいと仰られたり」
菫(脚本のことで頭が一杯なんだろうなぁ)
菫「大丈夫だと思うけど」
斎藤「何が大丈夫なものか。お前はお嬢様が心配でないのか!?」
菫「だから、大丈夫だって」
菫(私はお姉ちゃんが何で悩んでるのか知ってるし
でも、それを言いふらしていいのかどうか……)
斎藤「ああ、なんてことだ……。やはり幼少期から一緒だったのがいけなかったのだ
だから、こんなにもお嬢様のことを軽く考えるようになってしまって」ブツブツ
菫「……」
52: 2012/05/26(土) 00:53:02.05
紬「はぁ……」
紬「自分から立候補しといて、今更やっぱり無理ですなんて言えないわよね」
紬「どうしようかしら……」
コンコン
紬「誰?」
菫「菫です」
紬「……入ってらっしゃい」
菫「失礼します」
紬「どうしたの?」
菫「ごめんね、お姉ちゃん」
紬「どうして謝るの?」
菫「さっき、帰ってきた時一人になりたいって言ってたって、おじいちゃんに聞いたから」
紬「いいのよ。菫だけは特別」
菫「お姉ちゃん……ありがとう」
紬「自分から立候補しといて、今更やっぱり無理ですなんて言えないわよね」
紬「どうしようかしら……」
コンコン
紬「誰?」
菫「菫です」
紬「……入ってらっしゃい」
菫「失礼します」
紬「どうしたの?」
菫「ごめんね、お姉ちゃん」
紬「どうして謝るの?」
菫「さっき、帰ってきた時一人になりたいって言ってたって、おじいちゃんに聞いたから」
紬「いいのよ。菫だけは特別」
菫「お姉ちゃん……ありがとう」
53: 2012/05/26(土) 00:54:19.00
菫「あとね、おじいちゃんがすごく心配してたよ」
紬「斎藤が? そうね、そんな振る舞いもしてしまったかもね」
菫「私はお姉ちゃんが何で悩んでいるのか知っているけど
知らない人から見たらちょっと心配になっちゃうだろうね」
紬「菫は私の悩みの種を知っているの!?」
菫「うん。でもそれを他の人にも言っていいかどうかもわからないし」
紬(もしかして、菫も私と同じ悩みを!?
学校の誰かが好きになって、しかもその誰かが女の子ってことで……)
菫「舞台の脚本なんて書くの大変そうだもんね。クラスの皆の期待も背負ってるし
悩んじゃうのもわかるよ」
紬「……ええ、そうね」
菫「でも、あまりにもおじいちゃんが心配しちゃって
だからお姉ちゃんが実は脚本を書くのに悩んでいるって教えてあげてもいい?」
菫「それなら安心すると思うから」
紬「ええ。斎藤にはいらぬ心配をさせて悪かったわ」
菫「まぁ、心配するのも仕事みたいなところもあるけどね」
紬「ふふっ、そうね」
紬「斎藤が? そうね、そんな振る舞いもしてしまったかもね」
菫「私はお姉ちゃんが何で悩んでいるのか知っているけど
知らない人から見たらちょっと心配になっちゃうだろうね」
紬「菫は私の悩みの種を知っているの!?」
菫「うん。でもそれを他の人にも言っていいかどうかもわからないし」
紬(もしかして、菫も私と同じ悩みを!?
学校の誰かが好きになって、しかもその誰かが女の子ってことで……)
菫「舞台の脚本なんて書くの大変そうだもんね。クラスの皆の期待も背負ってるし
悩んじゃうのもわかるよ」
紬「……ええ、そうね」
菫「でも、あまりにもおじいちゃんが心配しちゃって
だからお姉ちゃんが実は脚本を書くのに悩んでいるって教えてあげてもいい?」
菫「それなら安心すると思うから」
紬「ええ。斎藤にはいらぬ心配をさせて悪かったわ」
菫「まぁ、心配するのも仕事みたいなところもあるけどね」
紬「ふふっ、そうね」
54: 2012/05/26(土) 00:55:33.75
菫「今から脚本の続き書くんでしょ?」
紬「ええ。今日もお夜食をお願いしようかしら」
菫「でも、寝不足でしょ? 今日は早めに寝たほうがいいんじゃ」
紬「だって、脚本が無いとお稽古も進まないもの」
菫「だからって、そんなに無理したら本当に体壊しちゃうよ」
紬「壊れられるものなら壊れてしまいたいわ……」
菫「何か言った?」
紬「いいえ。菫の言う通りね。今日は早めに寝るわ」
菫「そうだよ。今日だって部活休んじゃうなんて。軽音部の皆さん心配したんじゃない?」
紬「そうね、心配させて気を引こうなんて卑怯よね」
菫「え? う、うん」
紬「斎藤にも心配するなって言っておいて。心労がたたって倒れられても困るから」
菫「わかった。それじゃ」
紬「ねぇ、菫」
菫「なに?」
紬「私ね、安易な考えで脚本担当になったこと後悔してるわ……
本当に……後悔してる……」
菫「おねえ……ちゃん……?」
紬「ええ。今日もお夜食をお願いしようかしら」
菫「でも、寝不足でしょ? 今日は早めに寝たほうがいいんじゃ」
紬「だって、脚本が無いとお稽古も進まないもの」
菫「だからって、そんなに無理したら本当に体壊しちゃうよ」
紬「壊れられるものなら壊れてしまいたいわ……」
菫「何か言った?」
紬「いいえ。菫の言う通りね。今日は早めに寝るわ」
菫「そうだよ。今日だって部活休んじゃうなんて。軽音部の皆さん心配したんじゃない?」
紬「そうね、心配させて気を引こうなんて卑怯よね」
菫「え? う、うん」
紬「斎藤にも心配するなって言っておいて。心労がたたって倒れられても困るから」
菫「わかった。それじゃ」
紬「ねぇ、菫」
菫「なに?」
紬「私ね、安易な考えで脚本担当になったこと後悔してるわ……
本当に……後悔してる……」
菫「おねえ……ちゃん……?」
55: 2012/05/26(土) 00:59:00.62
菫「――ってことで、学園祭の舞台の脚本で頭が一杯だから悩んでたって訳
だから、あまり心配するなって紬お嬢様が」
斎藤「なるほど……。ところでその舞台の演目は?」
菫「ロミオとジュリエットだったかと」
斎藤「やはり……お嬢様もお年頃というわけか」
菫「やっぱり、ロミオとジュリエットっていったら歴史もあるし、演劇を越えてもはや芸術みたいなもんだもんね
お嬢様があれだけ悩んでいらっしゃるのも納得っていうか、なんか悩み過ぎな気もするけど……」
斎藤「確かに脚本を書くことで悩んでおられるのは間違いないだろうが
菫はお嬢様がただ脚本のことで悩んでいらっしゃると思っているのか?」
菫「え? 違うの?」
斎藤「お嬢様は今、恋をなさっている」
菫「こ、恋!?」
斎藤「紬お嬢様はこの琴吹家の一人娘。すなわちこの家を継ぐ身
そうなれば、将来選ばれる相手も琴吹にそれ相応の男性ということになる」
菫「それと脚本を書くことにどういう繋がりが……」
斎藤「菫もロミオとジュリエットがどういう話かも知らぬ訳じゃあるまい」
菫「……あ」
56: 2012/05/26(土) 01:01:09.06
斎藤「おそらく、お嬢様の意中の男性は琴吹家には似つかわしくない者なのだろう
お嬢様は自分をジュリエット、相手の男性をロミオに当てはめ物語を紡いでいる」
斎藤「しかし、あくまであれは創作物。実際に家を捨てる覚悟が自分にはあるのか
例え紬お嬢様にそんな不退転の決意があろうとも相手はどうだろうか」
斎藤「そんな現実とフィクションとの境にお嬢様は心を苦しめられていらっしゃるのだろう」
菫「そ、そう言われると、そんな気もしないでもないけど……。
でも、本当にそうなのかな……」
斎藤「もしかしたら、このような名のある家などに産まれてくるべきじゃなかったと
思われているのかもしれない……」
斎藤「ああ! おいたわしや! 紬お嬢様っ!!」
斎藤「この斎藤、お嬢様の苦しみを少しでも和らげることができたならっ!」
菫(ダメだ……さっきよりもっと心配し始めちゃったよ)
斎藤「こうしてはおられん! 行くぞ! 菫よ!」
菫「ええっ!? 行くってどこに!?」
お嬢様は自分をジュリエット、相手の男性をロミオに当てはめ物語を紡いでいる」
斎藤「しかし、あくまであれは創作物。実際に家を捨てる覚悟が自分にはあるのか
例え紬お嬢様にそんな不退転の決意があろうとも相手はどうだろうか」
斎藤「そんな現実とフィクションとの境にお嬢様は心を苦しめられていらっしゃるのだろう」
菫「そ、そう言われると、そんな気もしないでもないけど……。
でも、本当にそうなのかな……」
斎藤「もしかしたら、このような名のある家などに産まれてくるべきじゃなかったと
思われているのかもしれない……」
斎藤「ああ! おいたわしや! 紬お嬢様っ!!」
斎藤「この斎藤、お嬢様の苦しみを少しでも和らげることができたならっ!」
菫(ダメだ……さっきよりもっと心配し始めちゃったよ)
斎藤「こうしてはおられん! 行くぞ! 菫よ!」
菫「ええっ!? 行くってどこに!?」
57: 2012/05/26(土) 01:02:04.99
紬「はぁ……」
紬「こんなことで落ち込んでるのも馬鹿らしいかも……」
紬「本当に澪ちゃんとりっちゃんがロミオとジュリエットになるわけじゃないんだし」
紬「でも、私が頑張れば頑張るほどあの2人の仲が深まる気もするし」
紬「……ただの我儘なのかな」
紬「でも、そんなに簡単に切り替えることが出来ない」
紬「私……どうすれば……」
「そのお悩み、わたくしめにお任せ下さい!!」
紬「だ、誰っ!?」
「おと! なの!」
紬「恋なら!?」
「キャリ! アが!」
紬「必要!?」
「その! 名も!」
紬「服部!?」
斎藤「斎藤でございます」
紬「そうね」
菫(このやりとりはいったい……)
紬「こんなことで落ち込んでるのも馬鹿らしいかも……」
紬「本当に澪ちゃんとりっちゃんがロミオとジュリエットになるわけじゃないんだし」
紬「でも、私が頑張れば頑張るほどあの2人の仲が深まる気もするし」
紬「……ただの我儘なのかな」
紬「でも、そんなに簡単に切り替えることが出来ない」
紬「私……どうすれば……」
「そのお悩み、わたくしめにお任せ下さい!!」
紬「だ、誰っ!?」
「おと! なの!」
紬「恋なら!?」
「キャリ! アが!」
紬「必要!?」
「その! 名も!」
紬「服部!?」
斎藤「斎藤でございます」
紬「そうね」
菫(このやりとりはいったい……)
58: 2012/05/26(土) 01:09:58.20
紬「急にどうしたって言うの?」
斎藤「この斎藤。紬お嬢様に大切なお話があり参上いたしました」
紬「話?」
斎藤「はい。宜しければ、少しの間お耳を傾けて頂ければと」
紬「今はそんな気分じゃないんだけど……」
斎藤「今のお嬢様のお悩みなどは、楽勝、ラクショー、私にかかれば、でございます」
紬「……わかったわ。話してごらんなさい」
斎藤「ありがとうございます」
紬「で、どんな話なの?」
斎藤「旦那様と奥様のことでございます」
紬「お父様とお母様の?」
斎藤「旦那様と奥様とのご結婚の際に大旦那様が大反対されたことはご存知でしょうか?」
紬「お祖父様が? いいえ……知らないわ」
斎藤「大旦那様は伝統を重んじ、先祖代々続いてきた琴吹という家を守ろうとしていらっしゃった方でした
しかし、逆を言えば時代遅れであったのは否めません」
斎藤「この斎藤。紬お嬢様に大切なお話があり参上いたしました」
紬「話?」
斎藤「はい。宜しければ、少しの間お耳を傾けて頂ければと」
紬「今はそんな気分じゃないんだけど……」
斎藤「今のお嬢様のお悩みなどは、楽勝、ラクショー、私にかかれば、でございます」
紬「……わかったわ。話してごらんなさい」
斎藤「ありがとうございます」
紬「で、どんな話なの?」
斎藤「旦那様と奥様のことでございます」
紬「お父様とお母様の?」
斎藤「旦那様と奥様とのご結婚の際に大旦那様が大反対されたことはご存知でしょうか?」
紬「お祖父様が? いいえ……知らないわ」
斎藤「大旦那様は伝統を重んじ、先祖代々続いてきた琴吹という家を守ろうとしていらっしゃった方でした
しかし、逆を言えば時代遅れであったのは否めません」
59: 2012/05/26(土) 01:13:46.18
紬「それで、お父様とお母様が結婚する際に何かあったと?」
斎藤「はい。旦那様がたまたま日本へ観光にやってきた一般女性。後の奥様ですが、その方に一目惚れして
屋敷にお連れされ、すぐにでも結婚すると仰ったのです」
斎藤「しかし当時、旦那様には大旦那様がお決めになられた許嫁がいらっしゃいました
家柄というしがらみによって決められた許嫁が」
斎藤「もともと些細なことで衝突しあっていたお二人でしたので、当然大喧嘩になりました」
斎藤「大旦那様はこの家の誇りある歴史を守らずしてどうすると詰め寄ると
旦那様は守ることも大事だが己の手で切り開き
自らが範となり後世へ残すことも大切だと反論なさいました」
斎藤「さすがの大旦那様も思うところがあったのでしょう」
斎藤「歴史や伝統を重んじるあまりに時代の変化に取り残され没落していく」
斎藤「皮肉にもその当時バブル景気に湧いていた日本経済に対して
どういう訳か伸び悩んでいた経営のことも重なった」
斎藤「結局そのまま旦那様が押し切る形となり旦那様と奥様はご結婚なされたのです」
斎藤「その後は旦那様の仰った通り、琴吹という伝統を守りながらも柔軟な発想から事業を展開し
世界に名だたる企業にまで発展させ、親子の仲も紬お嬢様がお生まれになってからは修復されました」
紬「そんなことが……。でも、それと私の悩みとどういう関係が……」
斎藤「はい。旦那様がたまたま日本へ観光にやってきた一般女性。後の奥様ですが、その方に一目惚れして
屋敷にお連れされ、すぐにでも結婚すると仰ったのです」
斎藤「しかし当時、旦那様には大旦那様がお決めになられた許嫁がいらっしゃいました
家柄というしがらみによって決められた許嫁が」
斎藤「もともと些細なことで衝突しあっていたお二人でしたので、当然大喧嘩になりました」
斎藤「大旦那様はこの家の誇りある歴史を守らずしてどうすると詰め寄ると
旦那様は守ることも大事だが己の手で切り開き
自らが範となり後世へ残すことも大切だと反論なさいました」
斎藤「さすがの大旦那様も思うところがあったのでしょう」
斎藤「歴史や伝統を重んじるあまりに時代の変化に取り残され没落していく」
斎藤「皮肉にもその当時バブル景気に湧いていた日本経済に対して
どういう訳か伸び悩んでいた経営のことも重なった」
斎藤「結局そのまま旦那様が押し切る形となり旦那様と奥様はご結婚なされたのです」
斎藤「その後は旦那様の仰った通り、琴吹という伝統を守りながらも柔軟な発想から事業を展開し
世界に名だたる企業にまで発展させ、親子の仲も紬お嬢様がお生まれになってからは修復されました」
紬「そんなことが……。でも、それと私の悩みとどういう関係が……」
60: 2012/05/26(土) 01:15:54.65
斎藤「わたくしは、お嬢様のことを心の底より慕い、お仕えしております」
斎藤「そのお嬢様がお選びになった方も、わたくしは無条件で信頼し
この身が果てるまでお尽くしする所存です」
斎藤「それが、お嬢様に対するわたくしの忠誠でございます」
紬(……きっと何か勘違いをしているのね)
斎藤「身分違いの恋であろうと、それがお嬢様の決めた道ならば
この身でいばらを切り裂いて先陣を行きましょうぞ!」
紬(違いじゃなくて、同じってところに悩んでるんだけど……)
斎藤「どのようなことがありましても、この斎藤がお味方いたします!」
紬(ここで、実は好きな人は女性なのって言ったらそれこそ泡を吹いて倒れちゃうかも……)
菫(なんかお姉ちゃん困ってるような……)
紬「わ、わかったわ。ありがとう斎藤。とても気分が楽になったわ」
斎藤「いえ、主人の悩みを解決するのも執事の勤め」
紬「あなたこそ執事の鏡だわ」
斎藤「勿体なきお言葉。それではお嬢様、そろそろご夕食の準備が整う頃でございます」
菫「あ! まだ私、食器の準備とかぜんぜん出来てない! すぐ行ってきます!」
紬「菫、ちょっと待って!」
菫「はい?」
紬「あの、ちょっとお話があるんだけど」
菫「えっと、でも……」
斎藤「菫、お嬢様のお相手をして差し上げなさい。準備は私がしておくから」
菫「は、はい。わかりました」
斎藤「では、お嬢様」
紬「ええ、ご苦労様。ありがとう」
斎藤「そのお嬢様がお選びになった方も、わたくしは無条件で信頼し
この身が果てるまでお尽くしする所存です」
斎藤「それが、お嬢様に対するわたくしの忠誠でございます」
紬(……きっと何か勘違いをしているのね)
斎藤「身分違いの恋であろうと、それがお嬢様の決めた道ならば
この身でいばらを切り裂いて先陣を行きましょうぞ!」
紬(違いじゃなくて、同じってところに悩んでるんだけど……)
斎藤「どのようなことがありましても、この斎藤がお味方いたします!」
紬(ここで、実は好きな人は女性なのって言ったらそれこそ泡を吹いて倒れちゃうかも……)
菫(なんかお姉ちゃん困ってるような……)
紬「わ、わかったわ。ありがとう斎藤。とても気分が楽になったわ」
斎藤「いえ、主人の悩みを解決するのも執事の勤め」
紬「あなたこそ執事の鏡だわ」
斎藤「勿体なきお言葉。それではお嬢様、そろそろご夕食の準備が整う頃でございます」
菫「あ! まだ私、食器の準備とかぜんぜん出来てない! すぐ行ってきます!」
紬「菫、ちょっと待って!」
菫「はい?」
紬「あの、ちょっとお話があるんだけど」
菫「えっと、でも……」
斎藤「菫、お嬢様のお相手をして差し上げなさい。準備は私がしておくから」
菫「は、はい。わかりました」
斎藤「では、お嬢様」
紬「ええ、ご苦労様。ありがとう」
61: 2012/05/26(土) 01:17:44.45
菫「あの、お姉ちゃん。やっぱりおじいちゃんが言ってたことは見当違いなんじゃ……」
紬「いえ、ほぼ合ってるわ」
菫「ええっ!? じゃあ、こ、こ、こ、恋をしてるってこと!?」
紬「まぁ、根本が間違ってるんだけど」
菫「どういうこと?」
紬「もう自分一人で抱え続けるのも限界だし、菫だから話すんだけど」
菫「う、うん」
紬「あのね、驚かないでほしいんだけど」
菫「わかったよ」
紬「私、殿方より女性の方が好きかもしれないの」
菫「え……」
紬「もちろん恋愛感情でよ」
菫「あー。うん」
紬「今日ね、好きな人がロミオ役に選ばれて
で、目下私の恋のライバル的な人がジュリエットになっちゃったの」
紬「それなのに悲劇とはいえ、私がそんな二人の愛の物語を書かなくちゃいけないなんて」
紬「もし時間が戻るなら私もジュリエット役に立候補すればよかったって」
紬「本当に浅はかだったわ」
菫「へー、大変だね」
紬「あまり驚かないのね?」
菫「なんて言うか、昔からお姉ちゃんがそっち方面に興味があるってのは
なんとなくわかってたから」
紬「そう?」
紬「いえ、ほぼ合ってるわ」
菫「ええっ!? じゃあ、こ、こ、こ、恋をしてるってこと!?」
紬「まぁ、根本が間違ってるんだけど」
菫「どういうこと?」
紬「もう自分一人で抱え続けるのも限界だし、菫だから話すんだけど」
菫「う、うん」
紬「あのね、驚かないでほしいんだけど」
菫「わかったよ」
紬「私、殿方より女性の方が好きかもしれないの」
菫「え……」
紬「もちろん恋愛感情でよ」
菫「あー。うん」
紬「今日ね、好きな人がロミオ役に選ばれて
で、目下私の恋のライバル的な人がジュリエットになっちゃったの」
紬「それなのに悲劇とはいえ、私がそんな二人の愛の物語を書かなくちゃいけないなんて」
紬「もし時間が戻るなら私もジュリエット役に立候補すればよかったって」
紬「本当に浅はかだったわ」
菫「へー、大変だね」
紬「あまり驚かないのね?」
菫「なんて言うか、昔からお姉ちゃんがそっち方面に興味があるってのは
なんとなくわかってたから」
紬「そう?」
62: 2012/05/26(土) 01:18:49.10
菫「あ、でも、お姉ちゃん自身が女性に対して恋愛感情を抱いていたってのは
ちょっとビックリかも」
紬「どうして?」
菫「あくまで第三者として観察してるのが好きなんだと思ってたから」
紬「まぁ、それも好きだけど」
菫「でも、そういうのが好きってことは素養もあるってことだし
そうなるもの別に不思議じゃないけどね」
紬「気持ち悪いって思わないの?」
菫「全然」
紬「そう、よかったわ」
菫「私だって、例えお姉ちゃんが想像を絶する変態でもずっと本物の姉のように慕っていく所存です」
紬「変態は心外だわ」
菫「ご、ごめん」
紬「ふふっ。ああ、なんだか菫に話を聞いてもらったら一気に気が楽になったわ」
菫「よかった」
紬「本当に、私は良い執事と良い妹を持ったわ」
菫「えへへ」
菫「じゃあ、そろそろ私も夕食の準備のお手伝いしてくるね」
紬「ええ、お願いね」
ちょっとビックリかも」
紬「どうして?」
菫「あくまで第三者として観察してるのが好きなんだと思ってたから」
紬「まぁ、それも好きだけど」
菫「でも、そういうのが好きってことは素養もあるってことだし
そうなるもの別に不思議じゃないけどね」
紬「気持ち悪いって思わないの?」
菫「全然」
紬「そう、よかったわ」
菫「私だって、例えお姉ちゃんが想像を絶する変態でもずっと本物の姉のように慕っていく所存です」
紬「変態は心外だわ」
菫「ご、ごめん」
紬「ふふっ。ああ、なんだか菫に話を聞いてもらったら一気に気が楽になったわ」
菫「よかった」
紬「本当に、私は良い執事と良い妹を持ったわ」
菫「えへへ」
菫「じゃあ、そろそろ私も夕食の準備のお手伝いしてくるね」
紬「ええ、お願いね」
63: 2012/05/26(土) 01:20:27.26
食堂
紬父「菫、紬はまだか?」
菫「あ、もうそろそろいらっしゃるかと」
紬「遅くなりました」
紬父「では、いただこうか」
紬母「スミレチャン ハ イッショニ 食ベヘンノ?」
菫「私は使用人の身ですので、後ほどいただきます」
紬母「コノ前マデ イッショニ 食べヨッタノニ」
紬父「さしずめ斎藤の教育方針なんだろう」
紬父「紬のことも、もうお姉ちゃんとは呼ばなくなったからな」
紬「斎藤が厳しすぎるのよ」
紬母「ドゲンカセントイカン!」
紬父「まぁ、斎藤にも主従関係の線引きというのがあるんだろう
こと、そういうものに関しては彼に一任しているし
執事というものの斎藤なりの美学があるんだろ
やり過ぎはいけないが、そこも理解してやらんとな」
紬「そうね。わかります、お父様の言うこと」
紬母「ジャケン 寂シイノォ……」
紬父「菫、紬はまだか?」
菫「あ、もうそろそろいらっしゃるかと」
紬「遅くなりました」
紬父「では、いただこうか」
紬母「スミレチャン ハ イッショニ 食ベヘンノ?」
菫「私は使用人の身ですので、後ほどいただきます」
紬母「コノ前マデ イッショニ 食べヨッタノニ」
紬父「さしずめ斎藤の教育方針なんだろう」
紬父「紬のことも、もうお姉ちゃんとは呼ばなくなったからな」
紬「斎藤が厳しすぎるのよ」
紬母「ドゲンカセントイカン!」
紬父「まぁ、斎藤にも主従関係の線引きというのがあるんだろう
こと、そういうものに関しては彼に一任しているし
執事というものの斎藤なりの美学があるんだろ
やり過ぎはいけないが、そこも理解してやらんとな」
紬「そうね。わかります、お父様の言うこと」
紬母「ジャケン 寂シイノォ……」
64: 2012/05/26(土) 01:27:32.73
紬「ところで、お父様。ちょっとお聞きしたいことが」
紬父「ん? なんだ、言ってみなさい」
紬「お父様とお母様の出会いについて」
紬父「ふふっ、そうか。紬もそんな年頃か」
紬母「アナタ 恋愛ニ 年齢ハ 関係アリマヘーン」
紬父「それもそうだな。恋に年齢制限は無いな」
紬「実は先程斎藤にお父様とお母様が結婚するにあたって
お祖父様と喧嘩なさったと聞いて」
紬「それほどまでにお父様を突き動かすものが何なのか気になって」
紬父「んん、そうだな。私はどちらかと言えば直感で動くタイプだったからな」
紬父「恋というのは予告もなしに突然はじまるが
予感というものは漠然とあるような気がする」
紬父「あれはまだ車も電話もないような時代だったか」
紬母「イツノ 時代ノ 話ダッチャ」
紬父「もとい、電気自動車も携帯電話もまだ普及してないような頃だ」
紬父「私はいつものように港の埠頭で海の男ごっこをして暇を潰していた」
紬「……本当にお暇だったんですね」
紬父「いや、これが父の日課だったのだ」
紬「そうですか……」
紬父「ん? なんだ、言ってみなさい」
紬「お父様とお母様の出会いについて」
紬父「ふふっ、そうか。紬もそんな年頃か」
紬母「アナタ 恋愛ニ 年齢ハ 関係アリマヘーン」
紬父「それもそうだな。恋に年齢制限は無いな」
紬「実は先程斎藤にお父様とお母様が結婚するにあたって
お祖父様と喧嘩なさったと聞いて」
紬「それほどまでにお父様を突き動かすものが何なのか気になって」
紬父「んん、そうだな。私はどちらかと言えば直感で動くタイプだったからな」
紬父「恋というのは予告もなしに突然はじまるが
予感というものは漠然とあるような気がする」
紬父「あれはまだ車も電話もないような時代だったか」
紬母「イツノ 時代ノ 話ダッチャ」
紬父「もとい、電気自動車も携帯電話もまだ普及してないような頃だ」
紬父「私はいつものように港の埠頭で海の男ごっこをして暇を潰していた」
紬「……本当にお暇だったんですね」
紬父「いや、これが父の日課だったのだ」
紬「そうですか……」
65: 2012/05/26(土) 01:29:36.21
紬父「もやい抗に片足を乗せていつものように気取っていると
向こうの方に船が入ってくるのが見えた」
紬父「私はなんだかあの船には大切な何かがあるような、そんな気がしてな
気づけばその船に向かって駆けていたんだ」
紬父「結果その予感は当たっていた。私にとっての黒船来襲といったところだ
船には便利なものやもしかしたら危ないものも乗っていたかもしれない
しかし、その中でもひときわ輝いていたのが彼女だった」
紬父「ブロンドの長い髪、透き通るような白い肌、ブルーの澄んだ瞳」
紬父「私は目を奪われ一歩も動けなかった」
紬父「それに気づいた彼女が私に向かって笑顔でこう言った」
紬母「コンニチワ」
紬父「その不思議ななまりが入った挨拶はまさに文明開化の音がしたものだ」
紬父「そして続け様にこう言った」
紬母「キシリトール」
紬父「私は瞬時に彼女がフィンランド人だと理解した
と、同時に結婚も申し込んでいた」
紬父「それもそうだろう、ニッコリと笑う彼女の歯は真珠のように美しかった
さすがはキシリトールを産みだしたフィンランド人だけはある」
紬「いきなりですね」
紬父「それほど当時は魅力的だったのだ。いや、もちろん今も魅力的だがな」
紬母「抱キシメテモ ヨカデスカ!」
紬父「ははっ! 紬が見ているぞ」
紬「……」
向こうの方に船が入ってくるのが見えた」
紬父「私はなんだかあの船には大切な何かがあるような、そんな気がしてな
気づけばその船に向かって駆けていたんだ」
紬父「結果その予感は当たっていた。私にとっての黒船来襲といったところだ
船には便利なものやもしかしたら危ないものも乗っていたかもしれない
しかし、その中でもひときわ輝いていたのが彼女だった」
紬父「ブロンドの長い髪、透き通るような白い肌、ブルーの澄んだ瞳」
紬父「私は目を奪われ一歩も動けなかった」
紬父「それに気づいた彼女が私に向かって笑顔でこう言った」
紬母「コンニチワ」
紬父「その不思議ななまりが入った挨拶はまさに文明開化の音がしたものだ」
紬父「そして続け様にこう言った」
紬母「キシリトール」
紬父「私は瞬時に彼女がフィンランド人だと理解した
と、同時に結婚も申し込んでいた」
紬父「それもそうだろう、ニッコリと笑う彼女の歯は真珠のように美しかった
さすがはキシリトールを産みだしたフィンランド人だけはある」
紬「いきなりですね」
紬父「それほど当時は魅力的だったのだ。いや、もちろん今も魅力的だがな」
紬母「抱キシメテモ ヨカデスカ!」
紬父「ははっ! 紬が見ているぞ」
紬「……」
66: 2012/05/26(土) 01:30:37.21
紬父「あとはその勢いで親父に彼女との結婚の許しを請うために家に帰った」
紬父「それが二人の出会いだ」
紬「へぇ」
紬父「親父はろくに日本語も喋れない奴と結婚とは何事だと怒鳴った」
紬父「私は、なぜ今までと今しか見ないんだ、これからいくらでも日本語は覚えると反論した」
紬父「その証拠に今では日本人顔負けの流暢な日本語を喋っている」
紬母「ゼッコウチョー! ヨロコンデー!」
紬「ええ、本当に」
紬父「それが二人の出会いだ」
紬「へぇ」
紬父「親父はろくに日本語も喋れない奴と結婚とは何事だと怒鳴った」
紬父「私は、なぜ今までと今しか見ないんだ、これからいくらでも日本語は覚えると反論した」
紬父「その証拠に今では日本人顔負けの流暢な日本語を喋っている」
紬母「ゼッコウチョー! ヨロコンデー!」
紬「ええ、本当に」
67: 2012/05/26(土) 01:32:10.86
紬父「親父は旧態依然のやりかたに囚われ、変わることに臆病になっていた」
紬父「もちろん家の重圧もあっただろう。だが伝統を守るばかりじゃ駄目だ」
紬父「私はとにかくこの家に嫌気が差していた。だからぶっ壊してやりたかったんだ」
紬父「もしかしたら、親への反発という部分も大多数を占めていたかもしれない」
紬「はい、その辺りのことは斎藤から聞きました
琴吹の歴史を重んじるお祖父様に対して己の力で時代を切り拓くのだとお父様が反論なさったと」
紬父「そうだ。結果良い方向へいったがそれも運がよかっただけかもしれない」
紬父「しかし、あのままだと遅かれ早かれ確実にこの家は破滅に向かっていただろう」
紬父「今頃はどこかの企業の傘下になっていたに違いない」
紬父「確かに歴史を守るのは大事なことだ
しかし後世の人から見れば今この瞬間瞬間が歴史を紡いでいる時なのだ」
紬父「何も成さずにいてはその他の歴史の波に埋もれ誰からも認識されないかもしれない」
紬父「だが、何か行動を起こして、例えそれが失敗に終わったとしても
失敗した歴史として認識してもらえる」
紬「ですが、その今まで築いてきた歴史が潰えてしまうかもという重圧は無かったのですか?」
紬父「もちろん家の重圧もあっただろう。だが伝統を守るばかりじゃ駄目だ」
紬父「私はとにかくこの家に嫌気が差していた。だからぶっ壊してやりたかったんだ」
紬父「もしかしたら、親への反発という部分も大多数を占めていたかもしれない」
紬「はい、その辺りのことは斎藤から聞きました
琴吹の歴史を重んじるお祖父様に対して己の力で時代を切り拓くのだとお父様が反論なさったと」
紬父「そうだ。結果良い方向へいったがそれも運がよかっただけかもしれない」
紬父「しかし、あのままだと遅かれ早かれ確実にこの家は破滅に向かっていただろう」
紬父「今頃はどこかの企業の傘下になっていたに違いない」
紬父「確かに歴史を守るのは大事なことだ
しかし後世の人から見れば今この瞬間瞬間が歴史を紡いでいる時なのだ」
紬父「何も成さずにいてはその他の歴史の波に埋もれ誰からも認識されないかもしれない」
紬父「だが、何か行動を起こして、例えそれが失敗に終わったとしても
失敗した歴史として認識してもらえる」
紬「ですが、その今まで築いてきた歴史が潰えてしまうかもという重圧は無かったのですか?」
68: 2012/05/26(土) 01:33:09.03
紬父「そこで今までのものが潰えてしまっても、所詮はその程度のものだったのだということだ」
紬父「全てのケースがそうとは言えないが、ときにはそんな割り切りも必要なのかもしれないな」
紬「ただ待っているだけでは何も変わらない」
紬父「そうだな、時には自分から変えてみる事も必要だろう」
紬父「それに例えその時は上手くいかなくても、どうにかなるものだ」
紬父「それはこの父が保障しよう」
紬「ええ、私もお父様のように生きたいと、そう思います」
紬父「ああ、時には琴吹の名を忘れて無茶をしてみればいい」
紬父「この家だってそんなにヤワじゃない。今まで紡がれてきた歴史がそう言ってる」
紬「無茶をしてきた本人がそう仰るならそうなんでしょうね」
紬父「ふふっ、そうだな」
紬「ありがとう、お父様。私なんとかやっていけそうです」
紬父「それはよかった」
紬父「全てのケースがそうとは言えないが、ときにはそんな割り切りも必要なのかもしれないな」
紬「ただ待っているだけでは何も変わらない」
紬父「そうだな、時には自分から変えてみる事も必要だろう」
紬父「それに例えその時は上手くいかなくても、どうにかなるものだ」
紬父「それはこの父が保障しよう」
紬「ええ、私もお父様のように生きたいと、そう思います」
紬父「ああ、時には琴吹の名を忘れて無茶をしてみればいい」
紬父「この家だってそんなにヤワじゃない。今まで紡がれてきた歴史がそう言ってる」
紬「無茶をしてきた本人がそう仰るならそうなんでしょうね」
紬父「ふふっ、そうだな」
紬「ありがとう、お父様。私なんとかやっていけそうです」
紬父「それはよかった」
69: 2012/05/26(土) 01:34:16.72
紬「ところで、プロポーズの言葉などはなかったのですか?」
紬父「もちろんあった」
紬「聞きたいわ!」
紬母「恥ズカシイどすぇ」
紬父「まぁいいじゃないか」
紬父「俺のために毎朝キシリトールを作ってくれ」
紬父「これがプロポーズの言葉だ」
紬母「キャー///」
紬父「それに対しての返事が」
紬母「サンタクロース」
紬父「こうして二人は結ばれた」
紬「菫、ご馳走様でした。いつも後片付けありがとうね」
菫「いえ、とんでもございません」
紬父「おい、まだ続きがあるんだぞ」
紬「すみません、私には成さなければならないことがあるのです」
紬父「そ、そうか」
紬父「もちろんあった」
紬「聞きたいわ!」
紬母「恥ズカシイどすぇ」
紬父「まぁいいじゃないか」
紬父「俺のために毎朝キシリトールを作ってくれ」
紬父「これがプロポーズの言葉だ」
紬母「キャー///」
紬父「それに対しての返事が」
紬母「サンタクロース」
紬父「こうして二人は結ばれた」
紬「菫、ご馳走様でした。いつも後片付けありがとうね」
菫「いえ、とんでもございません」
紬父「おい、まだ続きがあるんだぞ」
紬「すみません、私には成さなければならないことがあるのです」
紬父「そ、そうか」
70: 2012/05/26(土) 01:37:56.81
数日後・放課後
紬「ど、どうかな?」
和「……また思い切ったことをしたわね」
紬「他と同じじゃつまらないと思って。それに破壊からの新生というのもあると思うの」
和「まさかムギの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ」
和「それにしても、ロミオとジュリエットが最後まで出会わなくて
ロミオはタク家のアンって人と結婚、ジュリエットは生涯独身を貫きましたって」
和「ロミオとジュリエットを根本から覆しちゃったわね」
和「それにこのロミオの結婚相手は元々のお話にはいないから配役してないし……」
紬「あ、あの。私がやってもいいけど」
和「う~ん……。どうしてもムギはこれで行きたいの?」
紬「やっぱり……駄目かな?」
和「だったら、いっそのことコメディにしてみる?
ロミオとジュリエットが出会いそうで出会わないみたいな」
紬「悲劇から喜劇へ?」
和「でも、正直なところ時間もないし、なによりクラスの皆がどう言うか」
紬「だよね……」
和「そのムギのたまには変化球で攻めてみようっていう姿勢は評価するけど
きっと周りは直球勝負を期待してると思うのよ」
紬「うん」
和「悪けど、今回は途中まで出来上がっているやつみたいに原作に沿った形の脚本でお願いできないかしら?」
紬「わかった。ごめんね和ちゃん」
和「いいのよ」
紬「はぁ……」
紬「やっぱりいきなり変えるたってそう上手くはいかないわよね」
紬「難しい……」
紬「ど、どうかな?」
和「……また思い切ったことをしたわね」
紬「他と同じじゃつまらないと思って。それに破壊からの新生というのもあると思うの」
和「まさかムギの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ」
和「それにしても、ロミオとジュリエットが最後まで出会わなくて
ロミオはタク家のアンって人と結婚、ジュリエットは生涯独身を貫きましたって」
和「ロミオとジュリエットを根本から覆しちゃったわね」
和「それにこのロミオの結婚相手は元々のお話にはいないから配役してないし……」
紬「あ、あの。私がやってもいいけど」
和「う~ん……。どうしてもムギはこれで行きたいの?」
紬「やっぱり……駄目かな?」
和「だったら、いっそのことコメディにしてみる?
ロミオとジュリエットが出会いそうで出会わないみたいな」
紬「悲劇から喜劇へ?」
和「でも、正直なところ時間もないし、なによりクラスの皆がどう言うか」
紬「だよね……」
和「そのムギのたまには変化球で攻めてみようっていう姿勢は評価するけど
きっと周りは直球勝負を期待してると思うのよ」
紬「うん」
和「悪けど、今回は途中まで出来上がっているやつみたいに原作に沿った形の脚本でお願いできないかしら?」
紬「わかった。ごめんね和ちゃん」
和「いいのよ」
紬「はぁ……」
紬「やっぱりいきなり変えるたってそう上手くはいかないわよね」
紬「難しい……」
71: 2012/05/26(土) 01:39:13.19
和「小道具はどんな感じ?」
エリ「もうばっちし!」
アカネ「順調だよ」
姫子「木役の人の寸法も測ったし、あとは作るだけだね」
唯「皆がんばれ!」
和「で、唯はなにそこでのんびりとしてるのよ」
唯「失礼な! 私だって今必氏でやってるのにぃ。絶賛営業中だよ!」
和「開店休業の間違いじゃないの? 私には何もやってないように見えるんだけど」
唯「何もしないが私のお仕事なんだよ」
和「それでいて軽音部に行くとお菓子と紅茶ばっかりでしょ」
唯「いや~、誘惑が多くて~。嬉しい限りですが」
和「ニート一直線ね」
唯「ひどいっ! 和ちゃんが私にジッとしてる練習しときなさいって言ったのにっ!」
和「時と場所を考えなさい」
唯「ああ言えばこう言うんだからぁ」
和「どっちがよ……」
エリ「もうばっちし!」
アカネ「順調だよ」
姫子「木役の人の寸法も測ったし、あとは作るだけだね」
唯「皆がんばれ!」
和「で、唯はなにそこでのんびりとしてるのよ」
唯「失礼な! 私だって今必氏でやってるのにぃ。絶賛営業中だよ!」
和「開店休業の間違いじゃないの? 私には何もやってないように見えるんだけど」
唯「何もしないが私のお仕事なんだよ」
和「それでいて軽音部に行くとお菓子と紅茶ばっかりでしょ」
唯「いや~、誘惑が多くて~。嬉しい限りですが」
和「ニート一直線ね」
唯「ひどいっ! 和ちゃんが私にジッとしてる練習しときなさいって言ったのにっ!」
和「時と場所を考えなさい」
唯「ああ言えばこう言うんだからぁ」
和「どっちがよ……」
72: 2012/05/26(土) 01:41:23.46
律「お~い澪、もうちょっと大きな声出さないと」
澪「だ、だって……恥ずかしい」
律「クラスメイトの前でそんなんじゃ、いざ舞台に立ったらどうなるんだよ……」
澪「な、慣れてないんだからしかたないだろ」
律「いつになったら慣れるのやら」
澪「うぅ……。やっぱり私には荷が重すぎるよ……」
律「むぅ……」
律「和!」
和「なに?」
律「ちょっと私たち二人だけで特訓してくる!」
澪「ええっ!?」
律「澪は皆が見てるから出来ないんだろ?」
澪「ま、まぁ。そうかな」
律「だったらとりあえず私と二人だけで完璧に仕上げて自信をつけてからだとどうだ?」
澪「う、うん。律と二人だけだったらなんとかなりそうな気がする」
紬「え? ちょっと、あの、二人っきりって……」
澪「だ、だって……恥ずかしい」
律「クラスメイトの前でそんなんじゃ、いざ舞台に立ったらどうなるんだよ……」
澪「な、慣れてないんだからしかたないだろ」
律「いつになったら慣れるのやら」
澪「うぅ……。やっぱり私には荷が重すぎるよ……」
律「むぅ……」
律「和!」
和「なに?」
律「ちょっと私たち二人だけで特訓してくる!」
澪「ええっ!?」
律「澪は皆が見てるから出来ないんだろ?」
澪「ま、まぁ。そうかな」
律「だったらとりあえず私と二人だけで完璧に仕上げて自信をつけてからだとどうだ?」
澪「う、うん。律と二人だけだったらなんとかなりそうな気がする」
紬「え? ちょっと、あの、二人っきりって……」
73: 2012/05/26(土) 01:42:47.69
和「そうね、このままじゃどうしようもないし
可能性があるのならそれにこしたことはないわ」
律「ってわけで、ちょっと軽音部の部室でやってくるから!
梓も今日はクラスで学祭のことやるから来れないって言ってたし」
紬(ただでさえ幼馴染っていうアドバンテージがあるのに
さらに二人っきりで特訓なんてされちゃもう……)
紬「わ、私も連れて行って!」
律「なんでムギが?」
紬「え、えっと……一応脚本だし」
澪「ムギは自分の仕事がまだあるだろ?」
和「そうね、脚本の残りも早めに仕上げてもらわないと」
紬「……うん」
律「それじゃ!」
澪「おい! そんなに引っ張るな!」
紬「……」
可能性があるのならそれにこしたことはないわ」
律「ってわけで、ちょっと軽音部の部室でやってくるから!
梓も今日はクラスで学祭のことやるから来れないって言ってたし」
紬(ただでさえ幼馴染っていうアドバンテージがあるのに
さらに二人っきりで特訓なんてされちゃもう……)
紬「わ、私も連れて行って!」
律「なんでムギが?」
紬「え、えっと……一応脚本だし」
澪「ムギは自分の仕事がまだあるだろ?」
和「そうね、脚本の残りも早めに仕上げてもらわないと」
紬「……うん」
律「それじゃ!」
澪「おい! そんなに引っ張るな!」
紬「……」
74: 2012/05/26(土) 01:44:42.87
… … …
和「小道具はなんとかなりそうだし、衣装も先生が作ってくれてる
ここまではなんとか順調ね」
和「問題は主役と」
和「ムギ、脚本はどう?」
紬「……」
和「ムギ?」
紬「あ、ごめん。なんだった?」
和「どうしたのよ、ぼーっとして」
紬「う、うん。なんでもない、大丈夫」
紬(あの二人が気になって仕方がないなんて言えないし……)
和「ちょっと疲れてるんじゃない?
一生懸命にやるのはいいけど、根を詰めすぎると良くないわ」
紬「そうね」
和「やっぱり誰かに脚本手伝ってもらう? 場面ごとに区切って」
紬「ううん。原作をなぞるだけだし」
和「そう。でも無理そうなら早めに言ってね」
紬「ありがとう。だけど平気だから心配しないで」
和「だったらいいけど」
姫子「ごめん、委員長。そろそろ私バイトの時間で」
和「あ、そうね。もうこんな時間だし、今日は上がりにしましょうか」
和「えっと、じゃあ澪と律を呼んでこないと」
紬「わ、私が呼んでくる!」
和「あ、じゃあお願いできるかしら」
紬「うん!」
和「……やけに張り切ってたわね」
和「小道具はなんとかなりそうだし、衣装も先生が作ってくれてる
ここまではなんとか順調ね」
和「問題は主役と」
和「ムギ、脚本はどう?」
紬「……」
和「ムギ?」
紬「あ、ごめん。なんだった?」
和「どうしたのよ、ぼーっとして」
紬「う、うん。なんでもない、大丈夫」
紬(あの二人が気になって仕方がないなんて言えないし……)
和「ちょっと疲れてるんじゃない?
一生懸命にやるのはいいけど、根を詰めすぎると良くないわ」
紬「そうね」
和「やっぱり誰かに脚本手伝ってもらう? 場面ごとに区切って」
紬「ううん。原作をなぞるだけだし」
和「そう。でも無理そうなら早めに言ってね」
紬「ありがとう。だけど平気だから心配しないで」
和「だったらいいけど」
姫子「ごめん、委員長。そろそろ私バイトの時間で」
和「あ、そうね。もうこんな時間だし、今日は上がりにしましょうか」
和「えっと、じゃあ澪と律を呼んでこないと」
紬「わ、私が呼んでくる!」
和「あ、じゃあお願いできるかしら」
紬「うん!」
和「……やけに張り切ってたわね」
75: 2012/05/26(土) 01:46:00.32
唯「ねぇ、和ちゃん」
和「ん? なに唯」
唯「私、心を入れ替えるよ」
和「な、なによ急に」
唯「なんだか私だけジッとしてるのが申し訳なくなってきて」
和「そう……。今日はもう終わりにするつもりだし
出来ればもうちょっと早くに心を入れ替えてほしかったけど」
唯「まぁ、私にもそれなりの準備が必要だし」
和「そうね……」
唯「ちょうど明日から土日で学校休みだし、この腐りきった心と体を鍛え直すために決めたことがあるんだ」
和「決めたこと?」
唯「明日はまず8時に起きて、公園をジョギングして
部屋の掃除のあとは和ちゃんちにも行くもんね」
和「いや、別に家に来なくてもいいけど……」
唯「和ちゃんちにも行くもんね!」
和「まぁ、来たければ来てもいいけど……」
唯「うん!」
和「ん? なに唯」
唯「私、心を入れ替えるよ」
和「な、なによ急に」
唯「なんだか私だけジッとしてるのが申し訳なくなってきて」
和「そう……。今日はもう終わりにするつもりだし
出来ればもうちょっと早くに心を入れ替えてほしかったけど」
唯「まぁ、私にもそれなりの準備が必要だし」
和「そうね……」
唯「ちょうど明日から土日で学校休みだし、この腐りきった心と体を鍛え直すために決めたことがあるんだ」
和「決めたこと?」
唯「明日はまず8時に起きて、公園をジョギングして
部屋の掃除のあとは和ちゃんちにも行くもんね」
和「いや、別に家に来なくてもいいけど……」
唯「和ちゃんちにも行くもんね!」
和「まぁ、来たければ来てもいいけど……」
唯「うん!」
86: 2012/05/27(日) 18:48:04.53
紬「なんだか勢い良く教室から出てきちゃった」
紬「和ちゃんに変に思われちゃったかな」
それでも、私はとりあえずの今の心配の種である
デコとボインのプライベート空間を打ち破るべく立ち上がらずにはいられなかった訳で
紬「もし、私が澪ちゃんと二人っきりになったら……」
いらぬ想像をしてしまい頭を軽くふる
だって状況的には今は澪ちゃんはりっちゃんと……
そんなことを考えるだけで気が滅入る
そろそろ軽音部の部室だ
私はなぜだか部室に近づくにつれ足音をたてないよう無意識のうちに静かに歩いていた
息を頃してドアノブに手を掛けたとき、どうして自分がこんなにも慎重になっているんだろう
と少し可笑しくなって笑がこぼれた
紬「そんなことは、あり得ないだろうけど」
だけど、その言葉とは裏腹に、ドアを開ける前にガラス窓から部室の様子を確かめる
二人はただ劇の練習をしているだけ、そうに決まってる
それなのに、私の目に飛び込んできたものは、やけに距離を詰めた
今にもキスをしてしまいそうな二人だった
87: 2012/05/27(日) 18:48:55.32
律「澪……」
澪「律……お願い……早く、して」
同じ中学で幼馴染 なんだそのえらそうなデコ
律「じっとしてて……」
澪「……うん」
私の見てる目の前で
澪「……んっ」
ボインに手を出した
何かがおかしい何かが
あなたのようになりたいが
部活とはなんだ人生とは何だ
デコトボイン ワタシ ハ ボイン ノホウガ スキデス
……ハイ
澪「律……お願い……早く、して」
同じ中学で幼馴染 なんだそのえらそうなデコ
律「じっとしてて……」
澪「……うん」
私の見てる目の前で
澪「……んっ」
ボインに手を出した
何かがおかしい何かが
あなたのようになりたいが
部活とはなんだ人生とは何だ
デコトボイン ワタシ ハ ボイン ノホウガ スキデス
……ハイ
88: 2012/05/27(日) 18:49:42.40
私は、なるべく音をたてないようその場を離れて
階段を降り、最初の踊り場で駆け出した
梓「あ、ムギ先輩。部室に何か用事だったんですか?」
すぐ誰かに声をかけられたような気もしたけど
そんなことはお構いなしにとにかく走った
目に焼きついた二人のキスシーンを頭から振り払うために
梓「え!? あ、あの!? どこに行くんですか!?」
梓「???」
梓「ムギ先輩、どうしたんだろ?」
梓「こんにち……」ガチャ
梓「って!? うわっ!? 何やってんですか!?」
律「!?」
階段を降り、最初の踊り場で駆け出した
梓「あ、ムギ先輩。部室に何か用事だったんですか?」
すぐ誰かに声をかけられたような気もしたけど
そんなことはお構いなしにとにかく走った
目に焼きついた二人のキスシーンを頭から振り払うために
梓「え!? あ、あの!? どこに行くんですか!?」
梓「???」
梓「ムギ先輩、どうしたんだろ?」
梓「こんにち……」ガチャ
梓「って!? うわっ!? 何やってんですか!?」
律「!?」
89: 2012/05/27(日) 18:50:33.46
逃げるように駆け出したはいいけど
行くあても無いので結局教室へ戻らざるを得なかった
でも、平静でいられるわけもなく
和「あ、ムギ。お帰り」
和「って、澪と律は?」
紬「え、えっと……ちょっと……」
今、その名前を出さないで
和「え!? ちょっと!? どうしたのよムギ!?」
なぜか慌てふためく和ちゃん
唯「あ~、和ちゃんがムギちゃん泣かした~
いーややこややー せーんせにゆーたろー」
気づかない内にどうやら私は泣いていたらしい
紬「なんでもない、なんでもないの」
和「え、で、でも……」
紬「放っておいて!」
自分の席に座り机に突っ伏す
行くあても無いので結局教室へ戻らざるを得なかった
でも、平静でいられるわけもなく
和「あ、ムギ。お帰り」
和「って、澪と律は?」
紬「え、えっと……ちょっと……」
今、その名前を出さないで
和「え!? ちょっと!? どうしたのよムギ!?」
なぜか慌てふためく和ちゃん
唯「あ~、和ちゃんがムギちゃん泣かした~
いーややこややー せーんせにゆーたろー」
気づかない内にどうやら私は泣いていたらしい
紬「なんでもない、なんでもないの」
和「え、で、でも……」
紬「放っておいて!」
自分の席に座り机に突っ伏す
90: 2012/05/27(日) 18:52:28.60
唯「ムギちゃん、どうしたの?」
さっきまで和ちゃんに茶々を入れていた唯ちゃんが
尋常じゃない私の状況を察したのだろう
優しく声をかけてくれる
和「どこか具合でも悪いの?」
私は顔を伏せ、ただ駄々っ子のように頭を振ることしかできない
教室中が騒然とする
こんなことをしていたってどうにもならない
でも、どうにもならないからこうすることしかできない
ただこうやって顔を伏せて時が過ぎるのを待つしかないのか
ただ時に身を任せることしか出来ないのか
いずれ澪ちゃんたちが教室に戻ってくるだろう
そのとき私はいったいどうすればいいんだろう
来るべき時の不安で頭の奥がチリチリする
きっと唯ちゃんや和ちゃん、他のクラスメイトも今私に対して
何かしらの言葉をかけていてくれているだろう
だけど当の私にはその声は届かない
教室のドアがガチャリと開く
きっと澪ちゃん達だ
私は……もう……
さっきまで和ちゃんに茶々を入れていた唯ちゃんが
尋常じゃない私の状況を察したのだろう
優しく声をかけてくれる
和「どこか具合でも悪いの?」
私は顔を伏せ、ただ駄々っ子のように頭を振ることしかできない
教室中が騒然とする
こんなことをしていたってどうにもならない
でも、どうにもならないからこうすることしかできない
ただこうやって顔を伏せて時が過ぎるのを待つしかないのか
ただ時に身を任せることしか出来ないのか
いずれ澪ちゃんたちが教室に戻ってくるだろう
そのとき私はいったいどうすればいいんだろう
来るべき時の不安で頭の奥がチリチリする
きっと唯ちゃんや和ちゃん、他のクラスメイトも今私に対して
何かしらの言葉をかけていてくれているだろう
だけど当の私にはその声は届かない
教室のドアがガチャリと開く
きっと澪ちゃん達だ
私は……もう……
91: 2012/05/27(日) 18:53:24.17
梓「ムギ先輩!」
予想に反して教室にやってきたのは梓ちゃんだった
唯「あずにゃんどうしたの?」
梓「すみません、ちょっとムギ先輩に」
唯「あのね、今ムギちゃんちょっと……」
梓「ムギ先輩、大事な話があるんです」
紬「……」
梓「さっき、のことです」
紬「!?」
梓「さぁ、立って下さい」
紬「嫌よ!」
梓「すみません」
そう梓ちゃんが言うと私は無理矢理に引っ張られた
その小さな体から出ているとは思えないほどの力で
紬「ちょ、ちょっと」
梓「ごめんなさい、ちょっとムギ先輩をお借りします」
和「え? あ、ええ」
唯「あずにゃん、どうしたんだろ?」
予想に反して教室にやってきたのは梓ちゃんだった
唯「あずにゃんどうしたの?」
梓「すみません、ちょっとムギ先輩に」
唯「あのね、今ムギちゃんちょっと……」
梓「ムギ先輩、大事な話があるんです」
紬「……」
梓「さっき、のことです」
紬「!?」
梓「さぁ、立って下さい」
紬「嫌よ!」
梓「すみません」
そう梓ちゃんが言うと私は無理矢理に引っ張られた
その小さな体から出ているとは思えないほどの力で
紬「ちょ、ちょっと」
梓「ごめんなさい、ちょっとムギ先輩をお借りします」
和「え? あ、ええ」
唯「あずにゃん、どうしたんだろ?」
92: 2012/05/27(日) 18:54:51.46
私は梓ちゃんに人気のない所へと連れだされた
最初はビックリしたし、さっきの話というのも部室でのことだろうから
そんなことは聞くのも嫌だったけど
もはや自分ではどうすることも出来ない状況から
無理矢理とは言え、梓ちゃんが抜け出させてくれたことに少しホッとした
紬「ね、ねぇ梓ちゃん。いったいどうしたっていうの?」
梓「澪先輩と律先輩のことです」
紬「……あまり聞きたくないわ」
梓「キスなんてしてませんよ」
紬「……え?」
梓「ただ澪先輩のまつ毛が抜けて目に入りそうになってたのを
律先輩が取ろうとしただけです」
梓「部室の入り口からの角度だと二人が重なってキスしてたように私も見えました
でも実際は違います」
梓「だから、安心して下さい」
紬「そ、そっか……」
なんだか不思議な気持ちになる
そして同時に疑問も浮かぶ
紬「どうして、梓ちゃんが私にそんなことを?」
梓ちゃんは間違っていたらすみません、と前置きをして言った
梓「ムギ先輩、澪先輩のことが好きなんじゃないのかなって思いまして」
最初はビックリしたし、さっきの話というのも部室でのことだろうから
そんなことは聞くのも嫌だったけど
もはや自分ではどうすることも出来ない状況から
無理矢理とは言え、梓ちゃんが抜け出させてくれたことに少しホッとした
紬「ね、ねぇ梓ちゃん。いったいどうしたっていうの?」
梓「澪先輩と律先輩のことです」
紬「……あまり聞きたくないわ」
梓「キスなんてしてませんよ」
紬「……え?」
梓「ただ澪先輩のまつ毛が抜けて目に入りそうになってたのを
律先輩が取ろうとしただけです」
梓「部室の入り口からの角度だと二人が重なってキスしてたように私も見えました
でも実際は違います」
梓「だから、安心して下さい」
紬「そ、そっか……」
なんだか不思議な気持ちになる
そして同時に疑問も浮かぶ
紬「どうして、梓ちゃんが私にそんなことを?」
梓ちゃんは間違っていたらすみません、と前置きをして言った
梓「ムギ先輩、澪先輩のことが好きなんじゃないのかなって思いまして」
93: 2012/05/27(日) 18:55:47.37
紬「……うん。ごめんね」
梓「なぜ謝るんです?」
紬「だって……」
梓「大丈夫ですよ。私も同じなので」
紬「え!? もしかして、梓ちゃんも澪ちゃんのことが!?」
梓「いえ、趣向というか……そういうものがという意味です」
紬「梓ちゃんも、女の子のことが」
梓「はい」
紬「そっか……」
梓「あれはまだ私が小学生だったころです」
梓ちゃんは私が何も聞いてもいないのに急に語り出した
きっと自分がなぜこうなってしまったかを喋りたいのだろう
ただ私も興味があったので黙って聞いた
むしろ興奮した
梓「なぜ謝るんです?」
紬「だって……」
梓「大丈夫ですよ。私も同じなので」
紬「え!? もしかして、梓ちゃんも澪ちゃんのことが!?」
梓「いえ、趣向というか……そういうものがという意味です」
紬「梓ちゃんも、女の子のことが」
梓「はい」
紬「そっか……」
梓「あれはまだ私が小学生だったころです」
梓ちゃんは私が何も聞いてもいないのに急に語り出した
きっと自分がなぜこうなってしまったかを喋りたいのだろう
ただ私も興味があったので黙って聞いた
むしろ興奮した
94: 2012/05/27(日) 18:58:40.55
梓「私がギター始めたのは4年生だって以前も言いましたよね」
紬「ええ、そうね」
梓「親の影響があったとはいえ女子で小4からギター始めるなんて
すごく珍しいことだったんだと思うんです」
梓「だからちっこいくせにギターなんて生意気だって男子からいじめられて」
梓「それでも私はギターに夢中だったんで、そんな声は無視してたんです」
梓「中学に上がってもいじめとは言えないまでも、相変わらず男子からはチョッカイを出されてて」
梓「だけど、そのくらいの時期になってくるとギターに興味を持つ男子もいて
だから、家からギターを持ってきて見せたりもしたんですけど
力任せに私のギターを扱われたりして、傷がついちゃったり……」
梓「私にとってみればそれだけで男子という存在は邪魔なものでした」
梓「だけど女子から見るとそれが男子と仲良くしてるって映ってたみたいで」
梓「ちょうど異性を意識し始める時期ですし、今度は女子からそれが生意気だっていじめられて
どちらかと言えばそっちの方が辛かったですね」
梓「だから中学時代は私にとって思春期というのは無いといっていいものでした」
梓「女の子たちは強すぎだし、男の子たちは意地悪」
梓「だけど、軽音部の皆さんはとても優しくて親切で」
梓「とりわけ私にとっては唯先輩が……」
そう言うと梓ちゃんは赤くなって黙った
私はこんな身近にお仲間がいたという事実に嬉しくなり
自分という存在が孤独じゃないということに少し安心した
いや、むしろ興奮した
紬「ええ、そうね」
梓「親の影響があったとはいえ女子で小4からギター始めるなんて
すごく珍しいことだったんだと思うんです」
梓「だからちっこいくせにギターなんて生意気だって男子からいじめられて」
梓「それでも私はギターに夢中だったんで、そんな声は無視してたんです」
梓「中学に上がってもいじめとは言えないまでも、相変わらず男子からはチョッカイを出されてて」
梓「だけど、そのくらいの時期になってくるとギターに興味を持つ男子もいて
だから、家からギターを持ってきて見せたりもしたんですけど
力任せに私のギターを扱われたりして、傷がついちゃったり……」
梓「私にとってみればそれだけで男子という存在は邪魔なものでした」
梓「だけど女子から見るとそれが男子と仲良くしてるって映ってたみたいで」
梓「ちょうど異性を意識し始める時期ですし、今度は女子からそれが生意気だっていじめられて
どちらかと言えばそっちの方が辛かったですね」
梓「だから中学時代は私にとって思春期というのは無いといっていいものでした」
梓「女の子たちは強すぎだし、男の子たちは意地悪」
梓「だけど、軽音部の皆さんはとても優しくて親切で」
梓「とりわけ私にとっては唯先輩が……」
そう言うと梓ちゃんは赤くなって黙った
私はこんな身近にお仲間がいたという事実に嬉しくなり
自分という存在が孤独じゃないということに少し安心した
いや、むしろ興奮した
95: 2012/05/27(日) 19:00:11.33
紬「そうだったの」
梓「はい」
梓ちゃんが唯ちゃんに対する態度と唯ちゃん以外に対する態度とは明らかに違う
今まで注意深く2人の動向を見守り続けていた私だから
正直、そんな事だろうとは思っていたので特に驚きはしなかった
紬「でも、私が澪ちゃんのことが好きだってよくわかったわね」
梓「なんだかそんな気がしてたんです」
紬「同じ物の見方をする者同士だからかしら?」
梓「どうでしょう。ただ学年が上がってからなんだかムギ先輩と澪先輩がやけに
よそよそしくなったっていうか、2人だけで話したりすることもあまり無くなりましたし」
梓「けど、だからと言って仲が悪くなったとは思えなかったので
もしかしてと思って注意深く動向を見守り続けていたんです」
えっ……。動向を見守り続けられてたなんて気持ち悪……
いや、間違いなく私も彼女と同類だった
梓「はい」
梓ちゃんが唯ちゃんに対する態度と唯ちゃん以外に対する態度とは明らかに違う
今まで注意深く2人の動向を見守り続けていた私だから
正直、そんな事だろうとは思っていたので特に驚きはしなかった
紬「でも、私が澪ちゃんのことが好きだってよくわかったわね」
梓「なんだかそんな気がしてたんです」
紬「同じ物の見方をする者同士だからかしら?」
梓「どうでしょう。ただ学年が上がってからなんだかムギ先輩と澪先輩がやけに
よそよそしくなったっていうか、2人だけで話したりすることもあまり無くなりましたし」
梓「けど、だからと言って仲が悪くなったとは思えなかったので
もしかしてと思って注意深く動向を見守り続けていたんです」
えっ……。動向を見守り続けられてたなんて気持ち悪……
いや、間違いなく私も彼女と同類だった
96: 2012/05/27(日) 19:00:57.92
梓「いつから澪先輩のことを好きになったんですか?」
紬「うふふ、聞きたい?」
梓「あ、いえ。ご迷惑なら」
紬「ううん。梓ちゃんも過去を教えてくれたから、今度は私」
梓「はい」
紬「今年の春にお花見したじゃない」
紬「あの時にね、私と澪ちゃんキスしたの」
梓「ええ!? き、キスですか!」
紬「もう、声が大きいわよ」
梓「あ、すみません」
紬「それからかしら、私が澪ちゃんのことを意識するようになったのは」
梓「こう言っちゃなんですけど、なんだか順番が逆ですね」
紬「え? ええ、そうね」
紬「でも、恋っていうものは予告もなしに始まるものだし」
梓「まぁ、それもそうですね」
紬「うふふ、聞きたい?」
梓「あ、いえ。ご迷惑なら」
紬「ううん。梓ちゃんも過去を教えてくれたから、今度は私」
梓「はい」
紬「今年の春にお花見したじゃない」
紬「あの時にね、私と澪ちゃんキスしたの」
梓「ええ!? き、キスですか!」
紬「もう、声が大きいわよ」
梓「あ、すみません」
紬「それからかしら、私が澪ちゃんのことを意識するようになったのは」
梓「こう言っちゃなんですけど、なんだか順番が逆ですね」
紬「え? ええ、そうね」
紬「でも、恋っていうものは予告もなしに始まるものだし」
梓「まぁ、それもそうですね」
97: 2012/05/27(日) 19:02:28.41
紬「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
梓「なんです?」
紬「梓ちゃんはこれから先、唯ちゃんに対してどうするつもりなの?」
梓「私は、今までどうりの関係で充分だと思っています」
紬「だけど、気持ちは伝えないの?」
梓「その気持ちを伝えてどう思われるのかが怖いですし」
梓「なにより今までのこの関係を無くしたくないんです」
梓「それに結局、将来的には私だって誰かと結婚すると思いますし」
紬「え? ええ? ちょっと待って。結婚? って男とってこと? え? え?
唯ちゃんはどうな、え? 何言ってんの? 意味わかんない」
梓「お、落ち着いて下さい」
紬「ご、ごめんなさい。今の今まで夢の世界にいたのに、急に現実が攻めてきたから」
梓「そんなに私が将来的に結婚するって言ったのが意外でしたか?」
紬「だ、だって、男の人は苦手だから唯ちゃんが好きになったんじゃないの?」
梓「正直、意地悪な女も嫌いです。でも女だからじゃなくて唯先輩だから好きなんです」
紬「そ、そっか……」
梓「なんです?」
紬「梓ちゃんはこれから先、唯ちゃんに対してどうするつもりなの?」
梓「私は、今までどうりの関係で充分だと思っています」
紬「だけど、気持ちは伝えないの?」
梓「その気持ちを伝えてどう思われるのかが怖いですし」
梓「なにより今までのこの関係を無くしたくないんです」
梓「それに結局、将来的には私だって誰かと結婚すると思いますし」
紬「え? ええ? ちょっと待って。結婚? って男とってこと? え? え?
唯ちゃんはどうな、え? 何言ってんの? 意味わかんない」
梓「お、落ち着いて下さい」
紬「ご、ごめんなさい。今の今まで夢の世界にいたのに、急に現実が攻めてきたから」
梓「そんなに私が将来的に結婚するって言ったのが意外でしたか?」
紬「だ、だって、男の人は苦手だから唯ちゃんが好きになったんじゃないの?」
梓「正直、意地悪な女も嫌いです。でも女だからじゃなくて唯先輩だから好きなんです」
紬「そ、そっか……」
98: 2012/05/27(日) 19:04:05.24
梓「そりゃ、唯先輩と一生一緒に居れるっていうなら素敵ですけど
それは唯先輩の都合ですし、唯先輩こそ誰かと結婚しちゃうかもしれないし」
梓「両親にも孫の顔を見せるくらいの親孝行もするべきじゃないかなって
今はまだそんなことは思いませんけど、きっといずれは」
紬「そういうものかしら……」
梓「ムギ先輩だって、大きな家の一人娘ですし、将来はどなたかお婿さんを迎えるんじゃないんですか?」
梓「もしかして、許嫁とか家が用意した人とかいたりして」
紬「そんなものはいないけど……。でもそうよね、将来的にはそうなると思うわ」
梓「それが普通なんですよ」
でも……。あれ? なんかさっきまで唯梓いちゃこらイメージで
白飯何杯でもいけるって感じだったのに……。
なんでこんなことに……。あれ?
紬「でも、ずっとこのままで辛くはないの?」
梓「いいんです。好きになったのは私の勝手ですし
それに唯先輩にマスコット的に扱われているとしても
それは唯先輩にとっての特別ってことですし
私にとってはそんなんでも人生は上々だって思えます」
紬「割り切ってるのね。梓ちゃんは強いわ」
梓「そんな」
それは唯先輩の都合ですし、唯先輩こそ誰かと結婚しちゃうかもしれないし」
梓「両親にも孫の顔を見せるくらいの親孝行もするべきじゃないかなって
今はまだそんなことは思いませんけど、きっといずれは」
紬「そういうものかしら……」
梓「ムギ先輩だって、大きな家の一人娘ですし、将来はどなたかお婿さんを迎えるんじゃないんですか?」
梓「もしかして、許嫁とか家が用意した人とかいたりして」
紬「そんなものはいないけど……。でもそうよね、将来的にはそうなると思うわ」
梓「それが普通なんですよ」
でも……。あれ? なんかさっきまで唯梓いちゃこらイメージで
白飯何杯でもいけるって感じだったのに……。
なんでこんなことに……。あれ?
紬「でも、ずっとこのままで辛くはないの?」
梓「いいんです。好きになったのは私の勝手ですし
それに唯先輩にマスコット的に扱われているとしても
それは唯先輩にとっての特別ってことですし
私にとってはそんなんでも人生は上々だって思えます」
紬「割り切ってるのね。梓ちゃんは強いわ」
梓「そんな」
99: 2012/05/27(日) 19:05:24.78
紬「でも、私は自分の気持ちを押し込めておくなんて出来そうにないわ」
梓「ムギ先輩……」
紬「こう言っちゃ悪いけど、唯ちゃんはもしかしたらその気はないかもしれない
だけど、私は確かに澪ちゃんとキスをしたの、その事実があるの」
梓「はい」
紬「確かに今まで通りの仲の良い親友っていうのも悪くわないわ」
紬「だけど、ただ時の流れに身を任せるだけじゃなくて
私自身が動いて私の未来を作る」
梓「運命は自分で切り拓くってことですか?」
紬「たとえ勝てはしないゲームかもしれない」
紬「でも、どうにかなるの!」
梓「あ。ムギ先輩どこへ?」
紬「体育館裏!」
梓「どうしてです?」
紬「梓ちゃんとお話ししてて、なんだか勇気が湧いてきたの!
今から澪ちゃんに告白してくるわ!」
梓「ええっ!?」
紬「私、ちょっと面かせやって言って体育館裏に誰かを呼びつけるのが夢だったの!」
梓「ムギ先輩! そのシチュエーションは告白とは正反対ですよ!」
梓「って……行っちゃった」
梓「ムギ先輩……」
紬「こう言っちゃ悪いけど、唯ちゃんはもしかしたらその気はないかもしれない
だけど、私は確かに澪ちゃんとキスをしたの、その事実があるの」
梓「はい」
紬「確かに今まで通りの仲の良い親友っていうのも悪くわないわ」
紬「だけど、ただ時の流れに身を任せるだけじゃなくて
私自身が動いて私の未来を作る」
梓「運命は自分で切り拓くってことですか?」
紬「たとえ勝てはしないゲームかもしれない」
紬「でも、どうにかなるの!」
梓「あ。ムギ先輩どこへ?」
紬「体育館裏!」
梓「どうしてです?」
紬「梓ちゃんとお話ししてて、なんだか勇気が湧いてきたの!
今から澪ちゃんに告白してくるわ!」
梓「ええっ!?」
紬「私、ちょっと面かせやって言って体育館裏に誰かを呼びつけるのが夢だったの!」
梓「ムギ先輩! そのシチュエーションは告白とは正反対ですよ!」
梓「って……行っちゃった」
108: 2012/06/03(日) 00:32:25.08
律「たっだいま~」
唯「あ、りっちゃん」
律「いや~、澪のやつもさっきと比べたらかなり上達したぞ」
澪「って、なんか教室の雰囲気おかしくないか?」
和「ムギとは会わなかったの?」
澪「いや、会ってないけど」
律「何かあったのか?」
唯「実はね、ムギちゃん、りっちゃん達を呼びに行ってくれたんだけど
教室に帰って来たら澪ちゃんとりっちゃんを連れてきてなくて
そしたら、なんか泣いちゃって、机に伏せてヤダヤダーってしてたら
さっきあずにゃんに連れて行かれちゃって……」
律「すまん、さっぱりだ……。唯に聞いた私が馬鹿だった」
澪「和?」
和「えっと、もうそろそろ時間だからムギに澪達を呼びに行ってもらったんだけど
なぜか2人を連れ戻さずに教室に帰ってくるなり泣いちゃって
机に突っ伏して駄々っ子みたくしてたら、梓ちゃんが来て無理矢理連れて行って……」
律「いったいどうなってんだよ……」
和「いや、私たちもさっぱりなのよ……」
109: 2012/06/03(日) 00:33:26.25
唯「部室で何かあったの?」
律「劇の練習の他は、梓が昨日部室にチューナー忘れたからって取りに来ただけだな」
澪「そう言えば、梓もやけに慌てて部室から出てったな」
和「気になるわね……」
律「しゃーない、もう一回部室見てくるわ
もしかしたら、ムギいるかもしれないし」
和「ええ、お願いね」
澪「私も行こうか?」
律「いいって。それより澪は特訓の成果を皆に見せてやれよ」
澪「ええっ!? う、うん……わかった」
律「じゃあ、がんばれよ」
律「劇の練習の他は、梓が昨日部室にチューナー忘れたからって取りに来ただけだな」
澪「そう言えば、梓もやけに慌てて部室から出てったな」
和「気になるわね……」
律「しゃーない、もう一回部室見てくるわ
もしかしたら、ムギいるかもしれないし」
和「ええ、お願いね」
澪「私も行こうか?」
律「いいって。それより澪は特訓の成果を皆に見せてやれよ」
澪「ええっ!? う、うん……わかった」
律「じゃあ、がんばれよ」
110: 2012/06/03(日) 00:34:43.38
澪「えっと、じゃあ、どうしよっかな……」
澪「あの……でも特訓したって言っても、それは律と2人だったし
やっぱり皆の前でやるのはちょっと恥ずかしいって言うか」
澪「私、小学校の頃から劇は照明係とか舞台の幕を上げ下げする係とか
そういう裏方やらせたら結構評判良かったんだけど
いきなり演じる側でしかも主役っていうのはちょっとどうかなって」
澪「い、いや! 別にやる前になんとかしてハードル下げとこうって魂胆じゃないし
やるからには全力で取り組むつもりだし
だけど、失敗しても選んだ皆の責任もちょっとくらいは……」
唯「澪ちゃん本当に特訓したの?」
和(大丈夫かしら……)
紬「澪ちゃん!」ガチャ!!
澪「ひぃっ! ごめんなさい! もう言い訳しません! がんばります!」
唯「ムギちゃん帰ってきた!?」
和「ムギ、さっきは一体どうしたっていうのよ」
紬「ちょっと面かせや!」
澪「え、ええっ!?」
澪「あの……でも特訓したって言っても、それは律と2人だったし
やっぱり皆の前でやるのはちょっと恥ずかしいって言うか」
澪「私、小学校の頃から劇は照明係とか舞台の幕を上げ下げする係とか
そういう裏方やらせたら結構評判良かったんだけど
いきなり演じる側でしかも主役っていうのはちょっとどうかなって」
澪「い、いや! 別にやる前になんとかしてハードル下げとこうって魂胆じゃないし
やるからには全力で取り組むつもりだし
だけど、失敗しても選んだ皆の責任もちょっとくらいは……」
唯「澪ちゃん本当に特訓したの?」
和(大丈夫かしら……)
紬「澪ちゃん!」ガチャ!!
澪「ひぃっ! ごめんなさい! もう言い訳しません! がんばります!」
唯「ムギちゃん帰ってきた!?」
和「ムギ、さっきは一体どうしたっていうのよ」
紬「ちょっと面かせや!」
澪「え、ええっ!?」
111: 2012/06/03(日) 00:35:31.80
梓「はぁ、ムギ先輩の行動力には驚かされるなぁ」
梓「上手くいくといいけど」
梓「でも、もし駄目だったら軽音部かなりヤバい雰囲気にならないかな……」
梓「いや、でもキスしたって言ってたし」
梓「……」
梓「でも、なんか引っかかるなぁ」
梓「う~ん……」
ブーッ!! ブーッ!!
梓「あ、携帯。律先輩?」
梓「もしもし?」
梓「え? 私のカバン? あ、そういえば部室に置きっぱなしでしたね」
梓「すみません、今取りに行きます」
112: 2012/06/03(日) 00:36:54.37
澪(こ、こんな誰も居ない体育館裏で私は何をされるのだろう……)
紬「き、急にごめんね、澪ちゃん」
澪「い、いや。私もちゃんとロミオを演じるよ」
澪「だ、だから、お願いだから、殴ったりしないで」
紬「殴るだなんて……。そんなことするわけないじゃない」
澪「そ、それもそうだよな
いや、ムギが一生懸命脚本書いてたの知ってたから
それなのに、私ったら何時まで経っても恥ずかしいって言って全然上達しないし
ムギにボコボコにされても文句は言えないって思ってるけど
さすがに暴力とは無縁そうなムギなんだからそれはないよな」
紬「澪ちゃんヒドイわ」
澪「でも、いきなり体育館裏に呼び出すムギも悪いんだぞ?」
紬「え? 体育館裏って恋が芽生えちゃいそうなロマンス溢れる場所じゃないの?」
澪「いや、聞いたこと無いな……。そういうのは伝説の樹の下とかじゃないか?」
紬「そ、そうなんだ」
澪「どこで知ったかはしらないけど……」
紬「ご、ごめんね。こんな場所で悪いけど
私、澪ちゃんに聞いて欲しいことがあるの」
澪「聞いてほしいこと?」
紬「うん」
113: 2012/06/03(日) 00:38:19.29
紬「あ、あのね」
紬「私ね」
紬「澪ちゃんのことが……」
紬「好き、なの」
澪「……」
紬「えっと……澪ちゃん?」
澪「わ、私も。好き、だよ」
紬「ほ、本当に!?」
澪「う、うん」
紬「結婚前提!?」
澪「い、いや。そこまでは……」
紬「え?」
澪「でも、ムギは好きだよ。きっと律だって唯だって梓だって
軽音部の皆、ムギの事が好きだと思うけど」
紬「何そのハーレム。だったらまとめてめんどう見ちゃうわよ。清らかな百合交際」
澪「ハーレム? ってか、いったい何言ってるの?」
紬「じゃなくて、私が言ってるのはloveの方なのよ?」
澪「ら、ラヴって。私たちは女同士だし、そういうのはちょっと……」
ど、どういうことなのかしら……。
もしかして恥ずかしがってる?
ここは澪ちゃん的にも、もうひと押し欲しいのね!
紬「私ね」
紬「澪ちゃんのことが……」
紬「好き、なの」
澪「……」
紬「えっと……澪ちゃん?」
澪「わ、私も。好き、だよ」
紬「ほ、本当に!?」
澪「う、うん」
紬「結婚前提!?」
澪「い、いや。そこまでは……」
紬「え?」
澪「でも、ムギは好きだよ。きっと律だって唯だって梓だって
軽音部の皆、ムギの事が好きだと思うけど」
紬「何そのハーレム。だったらまとめてめんどう見ちゃうわよ。清らかな百合交際」
澪「ハーレム? ってか、いったい何言ってるの?」
紬「じゃなくて、私が言ってるのはloveの方なのよ?」
澪「ら、ラヴって。私たちは女同士だし、そういうのはちょっと……」
ど、どういうことなのかしら……。
もしかして恥ずかしがってる?
ここは澪ちゃん的にも、もうひと押し欲しいのね!
114: 2012/06/03(日) 00:39:53.19
紬「あ、あのね。私ってば自分で言うのもなんだけどルックスはノーマルだし
スタイルはモデルさんとかとは比べ物にならない中肉中背って感じだけど
逆にそっちの方が愛嬌もあるかもとか思っちゃったり」
紬「それに、子供も好きだし、夜遊びもしないし」
澪「う、うん」
紬「おまけになんといっても、私の家、すごくお金持ちなの!」
澪「そ、それってパパは金持ちってことか!?」
紬「そう! パパもママも私もおか~ね~もっち!」
澪「うん……知ってるけど」
紬「そ、そうよね……」
私ったら、お金で釣ろうなんて……
最悪な人間だわ……
紬「じ、じゃあ、ミドリガメあげようか?」
澪「いや、いらないけど……」
そんな!?
あんなに可愛いミドリガメでもダメだなんて
澪ちゃんは私にこれ以上いったい何を望んでいるというのか
じゃなくて……
紬「ごめんなさい。私ったら変なこと言っちゃって……」
澪「い、いや。別にいいけど」
でも、どうして? 澪ちゃん
あのお花見の日に交わした口づけ
あれで、私をその気にさせといて……
紬「ねぇ、澪ちゃん」
澪「な、なに?」
紬「どうして、澪ちゃんは……。あの日私とキスしたの?」
スタイルはモデルさんとかとは比べ物にならない中肉中背って感じだけど
逆にそっちの方が愛嬌もあるかもとか思っちゃったり」
紬「それに、子供も好きだし、夜遊びもしないし」
澪「う、うん」
紬「おまけになんといっても、私の家、すごくお金持ちなの!」
澪「そ、それってパパは金持ちってことか!?」
紬「そう! パパもママも私もおか~ね~もっち!」
澪「うん……知ってるけど」
紬「そ、そうよね……」
私ったら、お金で釣ろうなんて……
最悪な人間だわ……
紬「じ、じゃあ、ミドリガメあげようか?」
澪「いや、いらないけど……」
そんな!?
あんなに可愛いミドリガメでもダメだなんて
澪ちゃんは私にこれ以上いったい何を望んでいるというのか
じゃなくて……
紬「ごめんなさい。私ったら変なこと言っちゃって……」
澪「い、いや。別にいいけど」
でも、どうして? 澪ちゃん
あのお花見の日に交わした口づけ
あれで、私をその気にさせといて……
紬「ねぇ、澪ちゃん」
澪「な、なに?」
紬「どうして、澪ちゃんは……。あの日私とキスしたの?」
115: 2012/06/03(日) 00:41:45.12
律「おー。来た来た」
梓「すみません」
律「鍵掛けちゃうところだったぞ」
律「ところで、ムギと一緒だったんだって?」
梓「あ、はい」
律「なんか教室帰ったら騒然としててさ。梓がムギを連れ去ったって」
梓「連れ去っただなんて」
律「いったい何があったんだよ」
梓「まぁ、その……秘密です」
律「なんだよ、それ」
梓「いいじゃないですか」
律「で、我らがムギ姫は無事に返してくれたんだろうな」
梓「王子様のところへ行きましたよ」
律「王子様?」
116: 2012/06/03(日) 00:43:10.34
梓「なんでもないです」
律「んまっ! じゃあ私ことジュリエットも愛しのロミオが待つ教室まで帰ろうかしら~」
梓「あの、律先輩がジュリエットってこと思い出す度に笑っちゃうんで
ちょっとそういうの控えてもらってもいいですか?」
律「なんだと~!」
梓(それに、今のジュリエットの配役はムギ先輩だし)
梓(お花見の時にキスまで進んでるくらいなんだから上手くいくだろうけど
でも、何か忘れてるような……)
律「おい、何考えこんでるんだよ」
梓「いえ、ちょっと今年のお花見したこと思い出してて」
律「あー。酔っ払い澪が見れて面白かったよな」
律「まぁ、私は澪の親にバレないように私の部屋で澪の酔いが醒めるまで
相手しなきゃいけなかったから大変だったけど」
律「あいつ、酔っ払うとベタベタしてきてウザイのなんのって」
律「で、寝て起きたら全然覚えてないでやんの」
梓「さわ子先生にも困ったものですよね。生徒を酔わせるなんて」
梓「でも、確かに酔っ払った澪先輩は結構レアで……」
梓「……あ」
律「んまっ! じゃあ私ことジュリエットも愛しのロミオが待つ教室まで帰ろうかしら~」
梓「あの、律先輩がジュリエットってこと思い出す度に笑っちゃうんで
ちょっとそういうの控えてもらってもいいですか?」
律「なんだと~!」
梓(それに、今のジュリエットの配役はムギ先輩だし)
梓(お花見の時にキスまで進んでるくらいなんだから上手くいくだろうけど
でも、何か忘れてるような……)
律「おい、何考えこんでるんだよ」
梓「いえ、ちょっと今年のお花見したこと思い出してて」
律「あー。酔っ払い澪が見れて面白かったよな」
律「まぁ、私は澪の親にバレないように私の部屋で澪の酔いが醒めるまで
相手しなきゃいけなかったから大変だったけど」
律「あいつ、酔っ払うとベタベタしてきてウザイのなんのって」
律「で、寝て起きたら全然覚えてないでやんの」
梓「さわ子先生にも困ったものですよね。生徒を酔わせるなんて」
梓「でも、確かに酔っ払った澪先輩は結構レアで……」
梓「……あ」
117: 2012/06/03(日) 00:44:28.27
紬「……え? 覚えてないの?」
澪「ご、ごめん」
紬「そんな……」
澪「さわ子先生にお酒飲まされてたらしくてさ
なんかジュースみたいだったから気づかなくて」
澪「でも、どういう訳かすごく美味しかったから結構グイグイいっちゃって……」
澪「気づいたら律の部屋のベッドの上でさ」
紬「!?」
澪「律にも、澪は酔っ払ったらすぐチューとか迫ってくるって言われて」
紬「じゃあ、私とキスしたのも」
澪「ご、ごめん。謝って済む問題じゃないけど、本当にごめん」
あれだけはしゃいで、悩んで、苦しんで
なのに……それなのに……
澪「あ! ムギ待って!」
紬「来ないで!」
澪「うっ!」
こんな惨めな涙なんて見せたくない
見られたくない
118: 2012/06/03(日) 00:45:06.22
梓「ムギ先輩!」
澪「あ、梓!?」
梓「澪先輩! ムギ先輩は!?」
澪「い、今走っていっちゃって……」
梓「何やってんですか!」
澪「え」
梓「早く追いかけて下さい!」
澪「……わかった!」
119: 2012/06/03(日) 00:46:01.85
律「ったく……」
唯「あ、りっちゃんお帰り。そのカバンは?」
律「梓のだよ。部室閉めるってのにまたほっぽって出ていきやがって
仕方ないから持ってきてやった」
律「って、今度は澪がいない……」
唯「澪ちゃんならムギちゃんに『面かせや!』って体育館裏に連れてかれた」
律「いったい今日はどうなってんだよ……」
120: 2012/06/03(日) 00:51:46.96
紬「はぁはぁ!」
私は何かを振り切るために走った
素敵な思い出やキラキラした気持ちや
そして今まで勘違いをしていた自分の感情
そんなものは汗や涙と共に流れ出てくれればいいのに
でも、とりあえずのところは
澪「待って! ムギ!」
澪ちゃんから逃げなくては
澪「話を聞いてくれ!」
紬「嫌ぁっ!」
嘆き叫び怒り裏切り
負の感情が爆発して
今、澪ちゃんに捕まっちゃったら
私はどうなるかわからない
もしかしたら、澪ちゃんに酷いことを……
だから、澪ちゃんから逃げなきゃ
だけど、こんなに一生懸命走っているのに
澪ちゃんとの距離はみるみるうちに縮まっていく
自分の体力の無さを呪った
もう澪ちゃんに捕まってしまう
そう思った瞬間
けたたましいブレーキ音が響いた
澪「ムギ! 危ない!」
121: 2012/06/03(日) 00:53:21.75
「だ、大丈夫か!?」
紬「はぁ……はぁ……」
「お、おい。君」
紬「す、すみません……」
「どこにも当たらなくてよかったけど……」
紬「ごめんなさい、急いでいたもので」
澪「おい、ムギ! 平気か!?」
紬「!?」
澪「トラックじゃなくて自転車でよかったな。トラックだったら確実に氏んでたな」
紬「あの! この自転車貸していただけませんか!?」
「え? あの、ちょっと」
澪「お、おい。もう追いかけっこはここまでにしよう」
紬「ううぅ……膝が……」シクシク
澪「え!? 怪我したのか!? 血とか怖い!」
紬「怯んだ隙に、今だっ!」シャー
「あ! 俺のお気に入りの自転車!」
紬「必ず返しますので!」シャー
「コラ~! 自転車泥棒ー!!」
紬「今、手持ちがこれだけしかないんですけど
とりあえずこれで許して下さい!」ブァサッ
「さ、札束!?」
澪「しまった! 膝をすりむいて泣いた振りをして逃げられた!」
紬「速い! この自転車なら澪ちゃんを振り切れるわ!」シャー
澪「くっ! 本気で追いかけてるのに置いてけぼりだ」
紬「はぁ……はぁ……」
「お、おい。君」
紬「す、すみません……」
「どこにも当たらなくてよかったけど……」
紬「ごめんなさい、急いでいたもので」
澪「おい、ムギ! 平気か!?」
紬「!?」
澪「トラックじゃなくて自転車でよかったな。トラックだったら確実に氏んでたな」
紬「あの! この自転車貸していただけませんか!?」
「え? あの、ちょっと」
澪「お、おい。もう追いかけっこはここまでにしよう」
紬「ううぅ……膝が……」シクシク
澪「え!? 怪我したのか!? 血とか怖い!」
紬「怯んだ隙に、今だっ!」シャー
「あ! 俺のお気に入りの自転車!」
紬「必ず返しますので!」シャー
「コラ~! 自転車泥棒ー!!」
紬「今、手持ちがこれだけしかないんですけど
とりあえずこれで許して下さい!」ブァサッ
「さ、札束!?」
澪「しまった! 膝をすりむいて泣いた振りをして逃げられた!」
紬「速い! この自転車なら澪ちゃんを振り切れるわ!」シャー
澪「くっ! 本気で追いかけてるのに置いてけぼりだ」
122: 2012/06/03(日) 00:54:23.00
カンカンカンカンカンカン
紬「……」
澪「はぁはぁ……。や、やっと追いついた……」
紬「踏切憎しっ!」ギリッ
澪「な、なぁムギ」
紬「来ないで……」
澪「そういう訳にはいかないんだ」
紬「嫌! 嫌よ!」
澪「ムギ!」
紬「離してっ!」
澪「ムギ! ちょっと落ち着いて」
「お待ち下さい!」
紬「!?」
澪「だ、誰!?」
「おと! なの!」
紬「恋なら!」
「キャリ! アが!」
紬「必要!」
「むて! きの!」
紬「服部!」
斎藤「斎藤でございます」
紬「そうね」
澪(こ、このやりとりはいったい……)
紬「……」
澪「はぁはぁ……。や、やっと追いついた……」
紬「踏切憎しっ!」ギリッ
澪「な、なぁムギ」
紬「来ないで……」
澪「そういう訳にはいかないんだ」
紬「嫌! 嫌よ!」
澪「ムギ!」
紬「離してっ!」
澪「ムギ! ちょっと落ち着いて」
「お待ち下さい!」
紬「!?」
澪「だ、誰!?」
「おと! なの!」
紬「恋なら!」
「キャリ! アが!」
紬「必要!」
「むて! きの!」
紬「服部!」
斎藤「斎藤でございます」
紬「そうね」
澪(こ、このやりとりはいったい……)
123: 2012/06/03(日) 00:57:14.49
斎藤「お迎えに上がりました」
紬「……ありがとう」
斎藤「こちらの自転車は持ち主様へ返却しておきます」
紬「お願いね」
澪「え? ちょっと待って!」
斎藤「秋山 澪 様でいらっしゃいますね」
澪「あ、は、はい」
斎藤「わたくし、琴吹家に仕えております、斎藤と申します」
斎藤「紬お嬢様が何者かに追われていると屋敷に連絡があり参上いたしました」
斎藤「秋山様がお嬢様を追い回していたということでお間違いはありませんか?」
澪「いや、その、追い回していたっていうか……」
斎藤「ご安心下さい。その何者かが秋山様であると確認したいだけなのです」
澪「そういうことなら。はい、そうです」
斎藤「では、何も事件性はないと」
澪「は、はい」
斎藤「撤収!」
「「「「「はっ!」」」」」
澪「うわっ! な、なんか気づかない内に囲まれてた!?」
紬「……ありがとう」
斎藤「こちらの自転車は持ち主様へ返却しておきます」
紬「お願いね」
澪「え? ちょっと待って!」
斎藤「秋山 澪 様でいらっしゃいますね」
澪「あ、は、はい」
斎藤「わたくし、琴吹家に仕えております、斎藤と申します」
斎藤「紬お嬢様が何者かに追われていると屋敷に連絡があり参上いたしました」
斎藤「秋山様がお嬢様を追い回していたということでお間違いはありませんか?」
澪「いや、その、追い回していたっていうか……」
斎藤「ご安心下さい。その何者かが秋山様であると確認したいだけなのです」
澪「そういうことなら。はい、そうです」
斎藤「では、何も事件性はないと」
澪「は、はい」
斎藤「撤収!」
「「「「「はっ!」」」」」
澪「うわっ! な、なんか気づかない内に囲まれてた!?」
124: 2012/06/03(日) 00:58:30.26
斎藤「お騒がせして申し訳ありません。それでは」
澪「あ、あの! ムギと……紬さんとお話させて下さい」
紬「斎藤! 早く車を出しなさい!」
澪「ムギ!」
斎藤「秋山様。申し訳ありませんがお嬢様はご覧のように少々興奮気味で御座います」
斎藤「少しお嬢様にもお時間を頂き、落ち着いてからというわけには参りませんでしょうか?」
澪「で、でも……」
斎藤「大丈夫でございます。必ず後日、お話の場は設けさせていただきますことを
この斎藤がしかと約束させていただきます」
斎藤「なので今日のところはお引き取り願います」
澪「わ、わかりました」
斎藤「ありがとうございます。それでは」
澪「……ムギ」
澪「あ、あの! ムギと……紬さんとお話させて下さい」
紬「斎藤! 早く車を出しなさい!」
澪「ムギ!」
斎藤「秋山様。申し訳ありませんがお嬢様はご覧のように少々興奮気味で御座います」
斎藤「少しお嬢様にもお時間を頂き、落ち着いてからというわけには参りませんでしょうか?」
澪「で、でも……」
斎藤「大丈夫でございます。必ず後日、お話の場は設けさせていただきますことを
この斎藤がしかと約束させていただきます」
斎藤「なので今日のところはお引き取り願います」
澪「わ、わかりました」
斎藤「ありがとうございます。それでは」
澪「……ムギ」
130: 2012/06/07(木) 01:18:11.19
車の中で私は涙が止まらなかった
斎藤がいるのだから抑えようとは努力してみたけど
抑えようと思えば思うほど後から後から涙が溢れ出た
でも、斎藤は私に何も言わずに黙って運転をしている
屋敷に着くなり、私は急いで車を降り部屋に向かおうとした
しかし、お嬢様と呼ぶ声に止められる
斎藤「本日のご夕食は、いかがなさいますか」
紬「……いらないわ」
斎藤「承知いたしました」
それ以上は何も言わずに、いつものようにお辞儀をして下がる
彼は察しが良いからきっと私と澪ちゃんとの間で何があったのかはお見通しなのだろう
部屋に入り、服も着替えずにベッドに倒れ込む
今はもう何も考えたくなかった
ただ、そう思っていても頭は勝手に何かしら思い描いている
私の頭なのに自身の意志とは関係なしに
さっきから思い出したくもないことばかりが頭に浮かんでくる
頭にスイッチがあってそれを切れば一切の思考が止まれば便利なのに
私はただ目を瞑って
意地悪な私の脳みそと戦っていた
131: 2012/06/07(木) 01:21:11.23
気づいた時には部屋は真っ暗だった
さすがの私の頭も私自身の苦悩には耐え切れずに睡眠をとることで
スイッチを切ったのだろう
ベッドに倒れこんでそのままだったはずなのに掛け布団が被さっている
きっと菫だ
明かりを付けて時計を見ると3時を指している
少し寝て頭がスッキリした気もした
もしかしたら夢だったんじゃないかと思ったが
鏡に映る赤く腫れぼったい目が今日のことは現実だと教える
部屋にあるテーブルの上にはラップに包まった少し大きめのおにぎりが2つあった
脚本を書いていた時に夜食として菫に作ってもらう際
普通のサイズより大きめの方がおにぎりとして存在感があって好きだ
と私はそうリクエストしたことがあった
なのでこの大きめのおにぎりも菫が用意してくれたものだろう
しかし、菫には悪いが今は何も食べる気にはなれなかった
私の為に握ってくれたのに何も手を付けられていないおにぎりを見て菫は何を思うだろうか
外は雨が降っている。雨音は強めだった
この強さならきっと、朝になっても降り続いているだろう
この雨が私をより一層感傷的にさせる
132: 2012/06/07(木) 01:23:08.72
紬「私の為に降ってくれてるのかしら……
だったら、何もかも流れ出てくれればいいのに」
そう呟いたとき
私は、私中心に物事が進めばいいと思っていたことを知る
雨は誰が頼んだわけじゃなく降っている
もしかしたら、この雨のせいでどこかの家族のお出かけが中止になるかもしれないし
どこかの誰かが朝からジョギングしようという決意が揺らいでいるかもしれない
それなのに私は、この雨が私の為だけに降ってくれている
だなんて自分勝手に考えてしまった
私はとりあえず、おにぎりを無理矢理にでも食べた
噛む元気さえ出なかったが、なんとかひとくち頬張る
これが心配をかけたであろう菫に対するせめてもの罪滅ぼしだ
でも、さすがにふたくちめを口にすることは出来なかった
その後、私はまたベッドに入り寝ようと試みる
何かを考えて起きているより
意識が途切れている方が楽だったから
わからず屋の脳みそも私のその意志を尊重したのだろうか
意外とすんなりと眠りに入ることができた
だったら、何もかも流れ出てくれればいいのに」
そう呟いたとき
私は、私中心に物事が進めばいいと思っていたことを知る
雨は誰が頼んだわけじゃなく降っている
もしかしたら、この雨のせいでどこかの家族のお出かけが中止になるかもしれないし
どこかの誰かが朝からジョギングしようという決意が揺らいでいるかもしれない
それなのに私は、この雨が私の為だけに降ってくれている
だなんて自分勝手に考えてしまった
私はとりあえず、おにぎりを無理矢理にでも食べた
噛む元気さえ出なかったが、なんとかひとくち頬張る
これが心配をかけたであろう菫に対するせめてもの罪滅ぼしだ
でも、さすがにふたくちめを口にすることは出来なかった
その後、私はまたベッドに入り寝ようと試みる
何かを考えて起きているより
意識が途切れている方が楽だったから
わからず屋の脳みそも私のその意志を尊重したのだろうか
意外とすんなりと眠りに入ることができた
133: 2012/06/07(木) 01:26:19.07
再び目覚ると、酷く喉が渇いていた
私はとりあえず何か飲み物をもらってこようと部屋を出た
厨房に向かう道すがら
お父様の部屋から明かりが漏れていて
何やら話し声が聞こえた
斎藤「旦那様、上手くいきました」
紬父「ああ。これほど上手くいくとはな」
斎藤「はい。これで紬お嬢様は一生誰のものにもなりません」
紬父「そうだ。私の大切な一人娘を男に渡すわけにはいかん」
何を、言ってるの?
斎藤「お嬢様の幼少の頃より殿方ではなく女性を好きになるよう暗示をかけ続けた甲斐がありました」
そ、そんな……
私がこうなったのは、全て仕組まれたことだったなんて……
紬父「ん? 誰かそこにいるのか!?」
!?
斎藤「これは、これは。紬お嬢様
こんなところで何をなさっていらっしゃるので?」
紬父「なに? 紬か」
斎藤「どうぞ、お嬢様。中へお入り下さい」
紬父「さぁ紬。ここに座って、催眠術ごっこをしようじゃないか」
紬父「実は父は魔術師なのだ。そ~ら、アブラカタブラ」
いけない
このままでは、より一層強い暗示をかけられるかもしれない
そう思った次の瞬間
134: 2012/06/07(木) 01:33:28.61
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてヒヒヒヒ~ン!」
私の目の前を一頭の白馬が駆け抜ける
紬父「な、なんだ!?」
斎藤「旦那様!」
その白馬が大きく後ろ足を蹴りあげると
父と執事はお星様になった
「大丈夫かい?」
あなたは?
「キミを助けにきたよ」
私を?
「ああ。キミはとても苦しんでいるからね」
そうなの。すごく苦しい
「どうして苦しいんだい?」
失恋しちゃって
でも、それは私の勘違いで
本当は何も始まってもいなかったの
「なぜ勘違いをしちゃったんだい?」
キス
「キス?」
そう。キスしたから
私の目の前を一頭の白馬が駆け抜ける
紬父「な、なんだ!?」
斎藤「旦那様!」
その白馬が大きく後ろ足を蹴りあげると
父と執事はお星様になった
「大丈夫かい?」
あなたは?
「キミを助けにきたよ」
私を?
「ああ。キミはとても苦しんでいるからね」
そうなの。すごく苦しい
「どうして苦しいんだい?」
失恋しちゃって
でも、それは私の勘違いで
本当は何も始まってもいなかったの
「なぜ勘違いをしちゃったんだい?」
キス
「キス?」
そう。キスしたから
135: 2012/06/07(木) 01:34:31.45
「そうか。でも、キスする前はどうだったんだい?」
キスする前?
「軽音部でずっと一緒だったんだろ?」
うーん
仲の良い友達だったと思う
「でも、キスしてスキになっちゃったんだ」
うん
あることがキッカケで恋が始まるなんてよくあることでしょ?
私の場合はそれがキスだったってだけ
「じゃあ、もし澪ちゃんと本当に付き合うことになったらどうなってた?」
すごく嬉しい
「りっちゃんはどう思うかな?」
意地悪
どうしてそんなこと聞くの?
「だって、避けて通れないことだよ」
そうだけど……
「元々キミは澪ちゃんが好きになる前はその2人をそういう目で見ていて
熱くなっていたはずだよ」
だからと言って
はい、そうですか。って簡単に譲れないわ
「実は澪ちゃんとりっちゃんは既に良い関係になっているかもよ」
え?
キスする前?
「軽音部でずっと一緒だったんだろ?」
うーん
仲の良い友達だったと思う
「でも、キスしてスキになっちゃったんだ」
うん
あることがキッカケで恋が始まるなんてよくあることでしょ?
私の場合はそれがキスだったってだけ
「じゃあ、もし澪ちゃんと本当に付き合うことになったらどうなってた?」
すごく嬉しい
「りっちゃんはどう思うかな?」
意地悪
どうしてそんなこと聞くの?
「だって、避けて通れないことだよ」
そうだけど……
「元々キミは澪ちゃんが好きになる前はその2人をそういう目で見ていて
熱くなっていたはずだよ」
だからと言って
はい、そうですか。って簡単に譲れないわ
「実は澪ちゃんとりっちゃんは既に良い関係になっているかもよ」
え?
136: 2012/06/07(木) 01:35:52.64
「お花見の日。酔っ払った澪ちゃんをりっちゃんは自分の部屋で介抱したんだってね
澪ちゃんが酔っ払っているんだから2人っきりの部屋で何があってもおかしくない」
そ、そうかも
きっと色々なことがあったに違いな……
やだ、私ったら変な想像を
「あれ? なんで少し嬉しそうな顔してるの?」
だ、だって……
「梓ちゃんが唯ちゃんのことを意識してるってはっきりしたときも
キミはキミの中で熱く滾る何かを感じていたよね」
それはもはやライフワークだから
「だったら、澪ちゃんとりっちゃんのこともそういう方向で受け入れたらどうだい?」
嫌よ
例えキスがきっかけでも
そのキスが澪ちゃんが酔っ払ってたのが原因で
澪ちゃん自身にそのつもりがなかったとしても
好きになった感情はきっと本物だし
そのお花見の後から今まで本当に世界が煌めいて見えていたもの
「そっか」
ええ
「でもさ。本当にキスしたの?」
え?
「お花見のときにさ」
したわよ
澪ちゃんが酔っ払っているんだから2人っきりの部屋で何があってもおかしくない」
そ、そうかも
きっと色々なことがあったに違いな……
やだ、私ったら変な想像を
「あれ? なんで少し嬉しそうな顔してるの?」
だ、だって……
「梓ちゃんが唯ちゃんのことを意識してるってはっきりしたときも
キミはキミの中で熱く滾る何かを感じていたよね」
それはもはやライフワークだから
「だったら、澪ちゃんとりっちゃんのこともそういう方向で受け入れたらどうだい?」
嫌よ
例えキスがきっかけでも
そのキスが澪ちゃんが酔っ払ってたのが原因で
澪ちゃん自身にそのつもりがなかったとしても
好きになった感情はきっと本物だし
そのお花見の後から今まで本当に世界が煌めいて見えていたもの
「そっか」
ええ
「でもさ。本当にキスしたの?」
え?
「お花見のときにさ」
したわよ
137: 2012/06/07(木) 01:37:14.89
「誰か見た人は?」
えっと……
あの時は風が強く吹いて
それで、髪の毛が邪魔になって
「じゃあ、キミ自身もちゃんとキスしたかどうかわからないの?」
でも、確かに唇に何かが当たったんだから
「そっか」
キス以外のなにものでもないわ
「でもさ、その唇に何が当たったかは確認できてないんでしょ?」
え? ええ、そうね
「ここでキミの考えるキスの定義についてだけど」
「唇同士だったら間違いなくキスだよね」
もちろん
「じゃあ、唇以外だったら? 例えばほっぺたとか」
……何が言いたいの?
「風が吹いて、酔っ払って平衡感覚が怪しい澪ちゃんがちょっとバランスを崩してキミに倒れ掛かってくる」
「直前まで澪ちゃんがキスのことを話していたことも相まってキミはそれがキスだと思い込む」
「それでキミはまんまと恋に落ちる」
例えそうでも……
好きであることには変わりないわ
えっと……
あの時は風が強く吹いて
それで、髪の毛が邪魔になって
「じゃあ、キミ自身もちゃんとキスしたかどうかわからないの?」
でも、確かに唇に何かが当たったんだから
「そっか」
キス以外のなにものでもないわ
「でもさ、その唇に何が当たったかは確認できてないんでしょ?」
え? ええ、そうね
「ここでキミの考えるキスの定義についてだけど」
「唇同士だったら間違いなくキスだよね」
もちろん
「じゃあ、唇以外だったら? 例えばほっぺたとか」
……何が言いたいの?
「風が吹いて、酔っ払って平衡感覚が怪しい澪ちゃんがちょっとバランスを崩してキミに倒れ掛かってくる」
「直前まで澪ちゃんがキスのことを話していたことも相まってキミはそれがキスだと思い込む」
「それでキミはまんまと恋に落ちる」
例えそうでも……
好きであることには変わりないわ
138: 2012/06/07(木) 01:38:22.01
「じゃあ、こういうのはどうかな?」
「キスをされたから好きになったんじゃなくて
好きになろうとしてそれがキスだと思い込もうとした」
どういうことだか、話がわからないわ
「だからね。キミは澪ちゃんを、そもそも女性を恋愛対象とは見てないのに
どういうわけか好きにならなきゃいけないと思い込んでいた」
???
「今日、梓ちゃんとお話したよね?」
ええ。したわ
「梓ちゃんが将来的には男性と結婚するって言った時
やたらと動揺してたよね?」
……うん
「それはなぜだい?」
だって、女の子同士がイチャイチャするほうが見てて美しいんだもの
「じゃあ、キミ自身は?」
私?
「そう。キミは男性と結婚することに抵抗がある?」
「琴吹の一人娘という立場で、将来はお婿さんを迎えることに抵抗はある?」
……特に、ないわ
「だったら、おかしいよね」
「キミは将来幸せな家庭を築くつもりがあるのに
なぜか他人にはそうなって欲しくないって思ってる」
……
「キスをされたから好きになったんじゃなくて
好きになろうとしてそれがキスだと思い込もうとした」
どういうことだか、話がわからないわ
「だからね。キミは澪ちゃんを、そもそも女性を恋愛対象とは見てないのに
どういうわけか好きにならなきゃいけないと思い込んでいた」
???
「今日、梓ちゃんとお話したよね?」
ええ。したわ
「梓ちゃんが将来的には男性と結婚するって言った時
やたらと動揺してたよね?」
……うん
「それはなぜだい?」
だって、女の子同士がイチャイチャするほうが見てて美しいんだもの
「じゃあ、キミ自身は?」
私?
「そう。キミは男性と結婚することに抵抗がある?」
「琴吹の一人娘という立場で、将来はお婿さんを迎えることに抵抗はある?」
……特に、ないわ
「だったら、おかしいよね」
「キミは将来幸せな家庭を築くつもりがあるのに
なぜか他人にはそうなって欲しくないって思ってる」
……
139: 2012/06/07(木) 01:39:39.45
「結婚なんてものはまだまだ先のことだろうけど
年頃の女の子なんだから、ちょっとしたことで
誰か男とお付き合いを始めてしまうかもしれない」
「だけど、出来れば、ずっと澪ちゃんとりっちゃん
唯ちゃんと梓ちゃんで百合分を供給され続けたい
間に男が入るだなんてとんでもない」
「そう考えている」
私は……
「他人にはそうであって欲しいという気持ちがありながら
自分はただはたから楽しくそれを見てるだけ」
「でも、キミはそんな自分が卑怯だと思い始めた」
私……そうやって自分が許せないからって……
「だから、自分も女性と恋愛することで、そういう意味でも仲間になろうって考えたんだ」
そう……かも……
「あのお花見の時にそういうことになって
それをきっかけにして無理矢理にでも女性を好きになろうって」
好きになったって思い込んでいた……?
「本当は、澪ちゃんとりっちゃんで一生を添い遂げてほしいくらいの
幻想を抱き続けていたのに」
私はただ傍観者でいることに満足していた
私は私の中でそれを他人に押し付けていたにも関わらず
だから、私は……
「別にそれでいいんじゃない?」
え?
年頃の女の子なんだから、ちょっとしたことで
誰か男とお付き合いを始めてしまうかもしれない」
「だけど、出来れば、ずっと澪ちゃんとりっちゃん
唯ちゃんと梓ちゃんで百合分を供給され続けたい
間に男が入るだなんてとんでもない」
「そう考えている」
私は……
「他人にはそうであって欲しいという気持ちがありながら
自分はただはたから楽しくそれを見てるだけ」
「でも、キミはそんな自分が卑怯だと思い始めた」
私……そうやって自分が許せないからって……
「だから、自分も女性と恋愛することで、そういう意味でも仲間になろうって考えたんだ」
そう……かも……
「あのお花見の時にそういうことになって
それをきっかけにして無理矢理にでも女性を好きになろうって」
好きになったって思い込んでいた……?
「本当は、澪ちゃんとりっちゃんで一生を添い遂げてほしいくらいの
幻想を抱き続けていたのに」
私はただ傍観者でいることに満足していた
私は私の中でそれを他人に押し付けていたにも関わらず
だから、私は……
「別にそれでいいんじゃない?」
え?
140: 2012/06/07(木) 01:40:49.10
「そもそも、本当に澪ちゃんと付き合えるとしても
キミが周りに気を遣わずにいれるとは思えないし」
ずっと考えずにいたけど
そうね、きっとそうだわ
「せっかく軽音部っていう素晴らしい環境にいるんだ」
「幼馴染。先輩と後輩」
「完璧なシチュエーションじゃないか」
ゾクゾクしてくるわ
「うん。だから無理しなくていいんじゃないかな?」
「そりゃ、いずれは結婚するだろうけど
だからといって自分を曲げてまでそんな仲をかき回さなくてもいいじゃないか」
「むしろ傍観者でいる幸せを噛み締めるべきだね」
本当に、いいと思う?
「当然だよ。確かにキミは澪ちゃんが好きなんだろうけど
それはあくまで親友としてだし
それ以上に律澪、唯梓が好きなはずだよ」
そういう目でただ楽しく見ることを許してくれる?
「もちろん」
こんな私でも軽音部の皆は友達として見てくれる?
「澪ちゃんも言ってたじゃないか。皆キミの事が好きだって」
うん
キミが周りに気を遣わずにいれるとは思えないし」
ずっと考えずにいたけど
そうね、きっとそうだわ
「せっかく軽音部っていう素晴らしい環境にいるんだ」
「幼馴染。先輩と後輩」
「完璧なシチュエーションじゃないか」
ゾクゾクしてくるわ
「うん。だから無理しなくていいんじゃないかな?」
「そりゃ、いずれは結婚するだろうけど
だからといって自分を曲げてまでそんな仲をかき回さなくてもいいじゃないか」
「むしろ傍観者でいる幸せを噛み締めるべきだね」
本当に、いいと思う?
「当然だよ。確かにキミは澪ちゃんが好きなんだろうけど
それはあくまで親友としてだし
それ以上に律澪、唯梓が好きなはずだよ」
そういう目でただ楽しく見ることを許してくれる?
「もちろん」
こんな私でも軽音部の皆は友達として見てくれる?
「澪ちゃんも言ってたじゃないか。皆キミの事が好きだって」
うん
141: 2012/06/07(木) 01:41:33.07
「もう大丈夫だね?」
ありがとう
「もうキミの気持ちに嘘をついちゃいけないよ」
わかったわ
私は律澪、唯梓を愛で続けるわ
「さぁ、早く起きなきゃ。皆が心配してる」
ええ、そうね
白馬はこちらをチラリと振り返り
「じゃあね」と言い残し飛んでいく
その白馬には額から一本角が生えていた
あれは伝説上の生き物の……
そう、確か一角獣ユニコーン
ありがとう
「もうキミの気持ちに嘘をついちゃいけないよ」
わかったわ
私は律澪、唯梓を愛で続けるわ
「さぁ、早く起きなきゃ。皆が心配してる」
ええ、そうね
白馬はこちらをチラリと振り返り
「じゃあね」と言い残し飛んでいく
その白馬には額から一本角が生えていた
あれは伝説上の生き物の……
そう、確か一角獣ユニコーン
142: 2012/06/07(木) 01:46:53.37
目が覚めた私はカーテンを開け外を見た
庭の花や草木が雫を携え太陽の光でキラキラと輝いている
きっとさっきまで雨は降っていたのだろう
だけど、今は気持ちいいほどの青空が広がっていた
テーブルの上のおにぎりはもう片付けられている
そういえば、ひとくちしか食べていない
携帯を確認すると何件かメールがあった
軽音部の皆からだ
澪ちゃん梓ちゃんからは核心に触れる内容
唯ちゃんりっちゃんはなぜ何も言わずに帰っちゃったのか?
といった内容のメールが
どちらにしても私を心配してくれているのはその文面からヒシヒシと伝わってきた
紬「澪ちゃん、2人に何も言ってないんだ」
それも当然だろうと思う。とてもデリケートな問題だから
澪ちゃんなりに最大限の気遣いをしてくれているのは
澪ちゃんのメールからも伺えた
特に「責任をとる」という一文に
私はその言葉に少しも揺れ動かなかった
だって、私が本当に望んでいるのは……
そもそも澪ちゃんだって私に対するキスをした責任感からこう言っているだけだろうというのは
容易に想像がつくし
だからといって、真面目な澪ちゃんが恐らくすごく悩んで出した結論だろうから
それを責める気はまったく無かった
紬「それはそうと、早くメールを返さないと」
皆の心配の度合いの大きさに比例して返信するメールの内容に頭を悩ます
だけど、とりあえずは……
143: 2012/06/07(木) 01:47:34.66
コンコン
紬「誰?」
菫「私です」
紬「どうぞ」
菫「お、おはよう。お姉ちゃん
って言っても、もうお昼だけど」
紬「そうなの、どうりで」
菫「あ、あの。昨日は……」
紬「ねぇ、菫」
菫「な、なに?」
紬「お腹空いたわ。おにぎり残ってる?」
紬「誰?」
菫「私です」
紬「どうぞ」
菫「お、おはよう。お姉ちゃん
って言っても、もうお昼だけど」
紬「そうなの、どうりで」
菫「あ、あの。昨日は……」
紬「ねぇ、菫」
菫「な、なに?」
紬「お腹空いたわ。おにぎり残ってる?」
144: 2012/06/07(木) 01:52:38.65
休み明け。私はいつもと変わりなく学校へ行った
和「あんたね。来るって言ってたから待ってたのに」
唯「仕方ないよ。雨降ってたし」
和「電話かけたら『あーあー。わかりました。すみませんでした』なんておざなりな返事で」
唯「だって眠かったんだよね」
和「いかんともしがたいわね」
唯「和ちゃんだって私の言い訳聞く前にすぐ電話切ったじゃん」
和「当たり前でしょ」
紬「おはよ」
唯「あ、ムギちゃん。おはよ~」
和「ムギ、大丈夫なの?」
紬「うん。なんだか心配させちゃったみたいでごめんね」
和「いいのよ」
唯「そうだよ。ムギちゃんが元気ならそれでいいんだよ」
紬「うふふ、ありがと」
145: 2012/06/07(木) 01:53:36.25
律「おっす~」
紬「りっちゃん、おはよ」
律「お、ムギ~。元気でなによりだ」
紬「りっちゃんも心配させちゃってごめんね」
律「いいって、いいって」
紬「ところで、澪ちゃんは一緒じゃないの?」
律「澪のやつはなんか下駄箱に手紙が入ってたらしくて
それを見てどっかいっちゃった」
唯「ええっ!? それって……」
律「まぁ、あいつはファンクラブがあるくらいだしな」
和「大変ね」
紬「あ、ちょっと私お手洗いに行ってくるね」
律「途中で漏らさないように気をつけてな~」
和「下品よ」
唯「そうだよ、りっちゃん。ちゃんとお漏らしあそばせないようになさって下さい
って丁寧に言わなきゃ」
和「もう唯は黙ってた方がいいわよ」
紬「ふふっ。じゃあね」
紬「りっちゃん、おはよ」
律「お、ムギ~。元気でなによりだ」
紬「りっちゃんも心配させちゃってごめんね」
律「いいって、いいって」
紬「ところで、澪ちゃんは一緒じゃないの?」
律「澪のやつはなんか下駄箱に手紙が入ってたらしくて
それを見てどっかいっちゃった」
唯「ええっ!? それって……」
律「まぁ、あいつはファンクラブがあるくらいだしな」
和「大変ね」
紬「あ、ちょっと私お手洗いに行ってくるね」
律「途中で漏らさないように気をつけてな~」
和「下品よ」
唯「そうだよ、りっちゃん。ちゃんとお漏らしあそばせないようになさって下さい
って丁寧に言わなきゃ」
和「もう唯は黙ってた方がいいわよ」
紬「ふふっ。じゃあね」
146: 2012/06/07(木) 01:54:52.39
そう。澪ちゃんの下駄箱に手紙を入れたのは私
私はちゃんと澪ちゃんに自分の気持ちを伝えるために例の体育館裏へ呼び出していた
澪「や、やぁムギ」
紬「澪ちゃん2人っきりね」
澪「うん」
澪ちゃんは一呼吸置いて話しだした
澪「なぁムギ。私もすごく悩んで考えたんだ
でも、わからなかった。いったいどうすればいいのか。好きってなんだろうって」
澪「だけど、ずっとムギのことを考えていてなんだか不思議な気持ちになったって言うか……」
澪「これから先。もしかしたら、ムギに対してこんなチャンス滅多にないかもって思って」
澪「だから、こんな私で良ければ、よろしくお願いします!」
紬「ごめんなさい」
澪「あはは、そうだよな。付き合って欲しいって言われた相手に告白して振られるとか当たり前……」
澪「って、ええっ!?」
紬「本当にごめんね、澪ちゃん」
澪「え? なんで? どうして私が振られてるの……?」
私はちゃんと澪ちゃんに自分の気持ちを伝えるために例の体育館裏へ呼び出していた
澪「や、やぁムギ」
紬「澪ちゃん2人っきりね」
澪「うん」
澪ちゃんは一呼吸置いて話しだした
澪「なぁムギ。私もすごく悩んで考えたんだ
でも、わからなかった。いったいどうすればいいのか。好きってなんだろうって」
澪「だけど、ずっとムギのことを考えていてなんだか不思議な気持ちになったって言うか……」
澪「これから先。もしかしたら、ムギに対してこんなチャンス滅多にないかもって思って」
澪「だから、こんな私で良ければ、よろしくお願いします!」
紬「ごめんなさい」
澪「あはは、そうだよな。付き合って欲しいって言われた相手に告白して振られるとか当たり前……」
澪「って、ええっ!?」
紬「本当にごめんね、澪ちゃん」
澪「え? なんで? どうして私が振られてるの……?」
147: 2012/06/07(木) 01:55:28.16
紬「だって、澪ちゃん私に気を遣って付き合ってくれるって言ってるんでしょ?」
澪「そ、そんなこと……」
紬「本当に? だったら今から皆に私たちが付き合うことになったって自慢してきてもいい?」
澪「そ、それは……。2人だけの秘密にしないか?」
紬「嫌だって言ったら?」
澪「ううっ……」
紬「ふふっ。意地悪なこと言ってごめんね」
紬「でも、本心から私と付き合っていいって思ってるの?」
澪「……」
澪「そ、そんなこと……」
紬「本当に? だったら今から皆に私たちが付き合うことになったって自慢してきてもいい?」
澪「そ、それは……。2人だけの秘密にしないか?」
紬「嫌だって言ったら?」
澪「ううっ……」
紬「ふふっ。意地悪なこと言ってごめんね」
紬「でも、本心から私と付き合っていいって思ってるの?」
澪「……」
148: 2012/06/07(木) 01:56:43.14
紬「ねぇ、澪ちゃん。私色々と自分を勘違いしていたの
私が本当に望んでいたのは別のところにあってね」
澪「勘違い? 本当に望んでいること?」
紬「澪ちゃんが私のことを本当の親友だって思っているなら
自分の思っている真実のところを話してほしいの」
澪「……わかった」
澪「私はムギにキスをしてしまった義務感から逃げるために付き合うっていう選択肢を選んだ」
澪「私は最低な奴だ」
紬「ありがとう、澪ちゃん。私は澪ちゃんが本当に私のことを考えて悩んでその結論に至ったんだってわかってる」
紬「だから、最低なんかじゃないわ」
澪「……ムギ」
紬「私はそんな真面目な澪ちゃんが好き。でもきっとそれは親友として」
紬「りっちゃんも、唯ちゃんも、梓ちゃんも同様に好き」
澪「私も一緒だよ。ムギとの友情は一生のものだって思ってる」
紬「今の私にはそれで充分なの。皆が仲良くしてさえいてくれれば」
私が本当に望んでいたのは別のところにあってね」
澪「勘違い? 本当に望んでいること?」
紬「澪ちゃんが私のことを本当の親友だって思っているなら
自分の思っている真実のところを話してほしいの」
澪「……わかった」
澪「私はムギにキスをしてしまった義務感から逃げるために付き合うっていう選択肢を選んだ」
澪「私は最低な奴だ」
紬「ありがとう、澪ちゃん。私は澪ちゃんが本当に私のことを考えて悩んでその結論に至ったんだってわかってる」
紬「だから、最低なんかじゃないわ」
澪「……ムギ」
紬「私はそんな真面目な澪ちゃんが好き。でもきっとそれは親友として」
紬「りっちゃんも、唯ちゃんも、梓ちゃんも同様に好き」
澪「私も一緒だよ。ムギとの友情は一生のものだって思ってる」
紬「今の私にはそれで充分なの。皆が仲良くしてさえいてくれれば」
149: 2012/06/07(木) 01:58:14.72
澪「でも、ムギこそ無理してないのか?」
紬「だから言ったでしょ? 私の望むところは別にあるって」
澪「う~ん……。よくわからないけど」
紬「それよりも、もし私と澪ちゃんとが本当に付き合うってなったら
りっちゃんどう思うかな?」
澪「な、なんでそこで律なんだよ」
紬「気にならないの?」
澪「た、確かに。律のことだからムギと付き合うってなったら
なんで親友の私に相談も無しに付き合ってるんだよ
とかうるさそうだけど」
紬「澪ちゃんも、りっちゃんが澪ちゃんに黙って誰かと付き合うことになったらどうなるかしら?」
澪「なっ!? 駄目駄目! お付き合いはお互い成人してからだな」
澪「そもそも律みたいなやつに言い寄ってくる人がいるとは思えないけど」
紬「そう? 男の子にも人気がありそうな気がするけど」
澪「え? そうなのかな……」
紬「安心して澪ちゃん。きっとりっちゃんだって澪ちゃんと同じ気持ちだと思うわ!」
澪「同じ気持ちって……。お互いに黙って誰かと付き合ったりしないってこと?」
紬「そうね。むしろお互いよく知ってる人と付き合っちゃったりして」
澪「なんだよそれ」
紬「うふふ」
紬「だから言ったでしょ? 私の望むところは別にあるって」
澪「う~ん……。よくわからないけど」
紬「それよりも、もし私と澪ちゃんとが本当に付き合うってなったら
りっちゃんどう思うかな?」
澪「な、なんでそこで律なんだよ」
紬「気にならないの?」
澪「た、確かに。律のことだからムギと付き合うってなったら
なんで親友の私に相談も無しに付き合ってるんだよ
とかうるさそうだけど」
紬「澪ちゃんも、りっちゃんが澪ちゃんに黙って誰かと付き合うことになったらどうなるかしら?」
澪「なっ!? 駄目駄目! お付き合いはお互い成人してからだな」
澪「そもそも律みたいなやつに言い寄ってくる人がいるとは思えないけど」
紬「そう? 男の子にも人気がありそうな気がするけど」
澪「え? そうなのかな……」
紬「安心して澪ちゃん。きっとりっちゃんだって澪ちゃんと同じ気持ちだと思うわ!」
澪「同じ気持ちって……。お互いに黙って誰かと付き合ったりしないってこと?」
紬「そうね。むしろお互いよく知ってる人と付き合っちゃったりして」
澪「なんだよそれ」
紬「うふふ」
150: 2012/06/07(木) 01:59:20.61
澪「なぁ、ムギ」
紬「なに?」
澪「ムギが言う通り私は真剣に悩んで、その上でムギと付き合ってもいいかなって思ったんだ」
澪「確かにキスをした責任をとるっていう体裁もあったけど」
澪「だけど、ムギはこれで本当にいいのか?」
澪「自分の気持ちを押し込めてやしないのか?」
紬「もしそうだとしても、澪ちゃんはキスした責任感で私と付き合うってことよね」
澪「それは……」
紬「好きも嫌いも相手次第だし
それに私の本当の気持ちに気づいたし
勘違いの恋だったけど恋愛を体験できて今は良かったって思うわ」
澪「その勘違いさせた原因は私にあるんだよな」
紬「酔っ払っていたから仕方ないわよ」
澪「でも、そのせいでムギは苦しんで……」
紬「もう、気にしないで」
澪「いや、何か私に罪滅ぼしをさせて欲しいんだ」
紬「そう言われても……」
澪「そうじゃないと、私の気がすまない」
紬「まぁ、そういうことなら」
澪「私に出来る事ならなんでも」
紬「そうね。だったら」
澪「なにかあるのか?」
紬「ええ。これは澪ちゃんにしか出来ないこと」
澪「そ、それは?」
紬「それは────」
紬「なに?」
澪「ムギが言う通り私は真剣に悩んで、その上でムギと付き合ってもいいかなって思ったんだ」
澪「確かにキスをした責任をとるっていう体裁もあったけど」
澪「だけど、ムギはこれで本当にいいのか?」
澪「自分の気持ちを押し込めてやしないのか?」
紬「もしそうだとしても、澪ちゃんはキスした責任感で私と付き合うってことよね」
澪「それは……」
紬「好きも嫌いも相手次第だし
それに私の本当の気持ちに気づいたし
勘違いの恋だったけど恋愛を体験できて今は良かったって思うわ」
澪「その勘違いさせた原因は私にあるんだよな」
紬「酔っ払っていたから仕方ないわよ」
澪「でも、そのせいでムギは苦しんで……」
紬「もう、気にしないで」
澪「いや、何か私に罪滅ぼしをさせて欲しいんだ」
紬「そう言われても……」
澪「そうじゃないと、私の気がすまない」
紬「まぁ、そういうことなら」
澪「私に出来る事ならなんでも」
紬「そうね。だったら」
澪「なにかあるのか?」
紬「ええ。これは澪ちゃんにしか出来ないこと」
澪「そ、それは?」
紬「それは────」
151: 2012/06/07(木) 02:00:52.56
学園祭 ロミオとジュリエット公演日
律『ああ、ロミオ。あなたはなぜロミオなの?』
澪『あの天使のような声は』
和「ここまでは順調ね」
紬「ええ」
律『なぜここに? 屋敷の石垣は高くて簡単には登れないのに』
澪『高い石垣など、恋の軽い翼で飛び越えてみせましょう』
律『ああ、ロミオ』
澪『ジュリエット』
和「ここで2人が抱き合う」
紬「山場ね」
律『ああ、ロミオ。あなたはなぜロミオなの?』
澪『あの天使のような声は』
和「ここまでは順調ね」
紬「ええ」
律『なぜここに? 屋敷の石垣は高くて簡単には登れないのに』
澪『高い石垣など、恋の軽い翼で飛び越えてみせましょう』
律『ああ、ロミオ』
澪『ジュリエット』
和「ここで2人が抱き合う」
紬「山場ね」
152: 2012/06/07(木) 02:01:40.49
澪「……」
律「お、おい、澪。続きの演技」
澪「あ、ああ」
律「抱き合うのは恥ずかしいだろうけど我慢な」
澪「わかってる……」
澪(すまん律。これもムギのたっての願いなんだ)
澪『ジュリエット』
律『ロミ……むぐっ!?』
和「ええっ!? ちょ、ちょっと!? キスしちゃったわよあの2人!」
紬「キマシタワー」
律「お、おい、澪。続きの演技」
澪「あ、ああ」
律「抱き合うのは恥ずかしいだろうけど我慢な」
澪「わかってる……」
澪(すまん律。これもムギのたっての願いなんだ)
澪『ジュリエット』
律『ロミ……むぐっ!?』
和「ええっ!? ちょ、ちょっと!? キスしちゃったわよあの2人!」
紬「キマシタワー」
153: 2012/06/07(木) 02:02:34.81
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!! 私の澪たんがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」バタッ!!
「ちょっと! 誰か奇声を上げて倒れたわ!」
「しかもしれっと『私の澪たん』とか言いやがったわ!」
「そんなことより早く救急車呼べ! 救急車!」
和(確認しなくても誰が倒れたのかわかる自分が憎い……)
これこそ求めていた世界
私の「すばらしい日々」が今始まる
おしまい
「ちょっと! 誰か奇声を上げて倒れたわ!」
「しかもしれっと『私の澪たん』とか言いやがったわ!」
「そんなことより早く救急車呼べ! 救急車!」
和(確認しなくても誰が倒れたのかわかる自分が憎い……)
これこそ求めていた世界
私の「すばらしい日々」が今始まる
おしまい
154: 2012/06/07(木) 02:04:09.19
このくだらないSSの犠牲になった
とても素晴らしい楽曲
ヒゲとボイン(ヒゲとボイン)
PTA~光のネットワーク~(おどる亀ヤプシ)
アナマリア(スプリングマン)
音楽家と政治家と地球と犬(スプリングマン)
CSA(ケダモノの嵐)
大迷惑(服部)
服部(服部)
車も電話もないけれど(ヒゲとボイン)
開店休業(ヒゲとボイン)
風(ヒゲとボイン)
人生は上々だ(服部)
おかしな2人(服部)
君達は天使(服部)
パパは金持ち(服部)
初恋(おどる亀ヤプシ)
薔薇と憂鬱(スプリングマン)
自転車泥棒(ケダモノの嵐)
風Ⅱ(ヒゲとボイン)
シンデレラ・アカデミー(PANIC ATTACK)
いかんともしがたい男(ケダモノの嵐)
すばらしい日々(スプリングマン)
たぶんこれで全部だと思います
その曲のタイトルや歌詞をただ引用しただけのものや
曲そのものの展開やイメージで書いたものもあったり
なので特に統一感はないので
その点は気にしないで下さい
曲はどれも古臭さを感じさせないとても素晴らしいものなので
気になった方はタイトルでググるなりして聞いてみて下さい
とても素晴らしい楽曲
ヒゲとボイン(ヒゲとボイン)
PTA~光のネットワーク~(おどる亀ヤプシ)
アナマリア(スプリングマン)
音楽家と政治家と地球と犬(スプリングマン)
CSA(ケダモノの嵐)
大迷惑(服部)
服部(服部)
車も電話もないけれど(ヒゲとボイン)
開店休業(ヒゲとボイン)
風(ヒゲとボイン)
人生は上々だ(服部)
おかしな2人(服部)
君達は天使(服部)
パパは金持ち(服部)
初恋(おどる亀ヤプシ)
薔薇と憂鬱(スプリングマン)
自転車泥棒(ケダモノの嵐)
風Ⅱ(ヒゲとボイン)
シンデレラ・アカデミー(PANIC ATTACK)
いかんともしがたい男(ケダモノの嵐)
すばらしい日々(スプリングマン)
たぶんこれで全部だと思います
その曲のタイトルや歌詞をただ引用しただけのものや
曲そのものの展開やイメージで書いたものもあったり
なので特に統一感はないので
その点は気にしないで下さい
曲はどれも古臭さを感じさせないとても素晴らしいものなので
気になった方はタイトルでググるなりして聞いてみて下さい
155: 2012/06/07(木) 02:13:41.24
乙でした~
面白かったよ!
面白かったよ!
156: 2012/06/07(木) 02:59:22.12
ユニコーンは最高だな
引用元: 紬「デコとボイン」
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