17: 2012/07/21(土) 21:53:52.35
女の子「はい、私は未来から来たあなたの娘です」

まどか「え、えぇ!?」

始めまして! 鹿目まどかです! 現時刻は午後5時をちょっと過ぎたくらい。
学校も終わって家でのんびりしていた私は、パパにお使いを頼まれて、お醤油を買いに出かけていました。
そして、無事に買い物も終わり後は家路につくだけ。となった私の前に私の子供だと名乗る女の子が現れたのです!
その子は長い黒髪をツインテールにし、少し垂れ目のすごく可愛らしい女の子でした!

まどか「え、えぇと……。なんの冗談かな?」

あまりの突然の出来事に私は思わず、若干引きながらもそう聞き返してしまいました。
なにかの冗談であることを願いながらも。

女の子「冗談ではありませんよ。私は正真正銘、あなたの子供です」

はい。言い切られました。
なんなんでしょうかこの子は? 新手の詐欺でしょうか? 子供子供詐欺でしょうか?
こんな子供まで詐欺に手を染める時代なんでしょうか? 
あれでしょうか、そうしないと生きていけないのでしょうか? 不況のせいですねきっと。
嫌な世の中になったものです。

まどか(見たところ私と同じぐらいの年なのに……。
    詐欺なんてしないと生きていけないなんて……。可哀想に……)

19: 2012/07/21(土) 21:54:57.59
女の子「なにか失礼な事考えてませんか?」

まどか「え!? そ、そんなことないよー。ティヒヒ」

考えてることがバレた!? なんでしょうか最近の詐欺師は心を読めるのでしょうか。
嫌な世の中になったものです。

女の子「まぁ、いきなりこんなことを言っても信じてもらえないのは仕方がないですね。
    私だってそんなことをこんな道端で言われても宗教の勧誘か詐欺を疑いますから」

まどか「え、ぇー……」

女の子は今、まさしく私が考えていたことを言い当てるかのように言いました。
でも、自分でいいますか? ふつう……

女の子「しかし、あなたもすごいですね」

まどか「え、え? なにが?」

女の子「いきなり自分の子供だーなんて人が現れたら怖がって逃げますよ?
    少し危機管理能力が低いんじゃないですか?」

この子! 初対面でなんて失礼な!!

女の子「私ならその場で大声を出すか、鳩尾に一発決めてやりますよ?」

やだ、この子怖い!!

22: 2012/07/21(土) 21:57:44.38
まどか「え、えー。だっていきなり、そんなことできないよー。それにあなた女の子だし……」

私がそういうと女の子は汚物を見るような眼差しを私に向けました。
え? なにその目……。私なんか変なこといった?

女の子「はぁ……。そうでしたね。あなたはそういう人でした。
    甘いというかぬるいというか……。
    可愛い女の子に対しては特にそう……」

まどか「え、え?」

溜め息交じりに私の性格は昔から変わらないんだな。と、この子は呟きました。
っていうか自分で自分のこと可愛いって言ったよこの子……。

女の子「私は可愛いですよ?」

なにをバカなことを言ってるの? みたいな表情で女の子は私を見てきます。
っていうかまた心を読まれた!! なにこの子!

女の子「なんて言ったって私は世界一美人なママの子供ですからね」
聞いてもないのに女の子は勝手に自分の親の事について話し出します。
あれ? でもこの子の親ってこの子の中では私って話だよね?
つまりこの子の言ってるママは私ってことで、つまりそれは……。
世界一美人なママって私の事?

……いやぁ~/// なんか照れますな~///

まどか「ティヒヒ///」

女の子(なんか勘違いしてるな。まぁいっか)

私が照れて頭を掻く様子をひとしきり眺めた女の子は、それはそうと、っと言うと

女の子「親であるあなたに私に協力してほしい事があるんですが」

っと言った。
いきなりだね。君。

まどか「いやいや! 待ってよ! いきなりなに!? 私はあなたの親じゃないよ!!?」

女の子「えっ……」

私の言葉に女の子は世界の終末が来たとでもいうような顔をして俯きます。
いやいや! なになにこの空気! 私何も変なこといってないよね!?
なんだかすっごく悪いこと言ったみたいな感じだよ! これ!

女の子「そっか……。そうだよね……」

なに!? なにを一人で納得してるのこの子!?

女の子「私はいらない子だもんね。ぐすっ」

まどか「え!? え!!?」

なになに!? え? なにこの状況!! なんでこの子泣いてるの!? 私悪者みたいだよ!
こんなの絶対おかしいよ!

まどか「え!? ちょっと待って! 泣かないで!」

慌てて私はその子を泣き止ます為に動きます。
だってこんなところで女の子を泣かしたなんて世間体が悪すぎます。
私は世間体は結構気にする女の子です。

23: 2012/07/21(土) 21:58:31.95
女の子「私……。どうしたらいいんだろう……。親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で氏んでいくしか……。ぐすん」

まどか「え!? ちょっと! ごめん! ごめんなさい! 謝るからそんなこと言わないで!」

痛みます。私の心が痛みます。私は何も悪くないはずなのに心がズキズキします。

女の子「謝られたって……。あなたは私を認知してくれないんでしょう?」

認知ってなんですか。
まさか私の年で認知を迫られるとは思ってもみませんでした。

まどか「え、えー。だって……」

そりゃできませんよ、だって。ねぇ?

女の子「うっ……。やっぱり私は一人なんだ……。一人で氏んでいくしかないんだー!!」

今まで瞼という防波堤で止まっていたはずの涙という名の津波が一気に堰を切って流れ出しました。
なんでしょうこれ。完全に悪者です。私。
ワンワン泣く女の子に完全にパニックになった私はついうっかりと

まどか「あ、あー! わかったよ! 認める! 認めるから泣き止んで!」

っと言ってしまいました。
我ながらちょろいです。

女の子「そうですか」

まどか「えっ」

え? なに? この子今まで泣いてたよね? あれ? 私、幻でも見てた? ロッソファンタズマ?

まどか「あ、あれ? 泣いてたんじゃ?」

女の子「泣いてましたよ? 酷いことを言われたんで」

まどか「え、でも、あれ?」

女の子は私のキョトンとした表情を見てなにか察しがついたのか

女の子「あなたに一つ教えておきます」

っと人差し指を口の前に立てて。

女の子「涙は、女の武器ですよ?」

っとにやりと口角を吊り上げて言い放ちやがりました。


ママ、パパ。今日私は女の怖さを学んだよ――。

24: 2012/07/21(土) 21:59:04.47
まどか「……」ツーン

女の子「もー、いい加減に機嫌を直してくださいよー」

立場は一転。今度は女の子が私を宥める側にまわって数分。
私は騙された怒りから彼女の言葉を全て無視していました。

まどか怒りのスルーです。

女の子「別に騙してたわけじゃないんですよ? 泣いてたのは本当ですし」

違います。彼女の涙は本当の涙じゃありません。本当の涙っていうのは、なんかこう……。
……とにかく、彼女の涙は真の涙じゃないのです。
っていうかいい加減に心を読むのは止めてほしいです。

女の子「ごめんなさいー。許して下さいよー。
    私はあなたのママから教えられたことを実行しただけなんですからー」

まどか「え?」

今この子、なんていったの?
私のママ?

女の子「だから私はあなたのママ。私からしたらおばあちゃんですね。から教わったことをただやっただけなんですよ?
    詢子さんが言ったんですから」

女の子「女が自分の意見を通したいときは泣いてみるのも一つの手よ。って」

うわぁ……。確かにママならいいそー……。
だけど、この子どうしてママの名前を知ってるの……。
まさか本当に未来の……?
いやいや、名前くらいいくらでも調べようが……。
でも、なんで私の家族のことなんか調べて……。

まどか「……」

さすがの私もこの子の異質さに気づき、警戒心が芽生え始めました。
遅すぎるだろ。っとか言ってはいけません。

女の子「……なんか、本当に怖がられちゃったみたいですね」

女の子の方も、私の警戒を感じ取ったのか、態度を改めて私に対峙します。

まどか「あなた……。本当になんなの?」

まさか本当にヤバい子なのでしょうか。今までは私と年の近い女の子。
そして若干言葉に棘があるけれど、不思議と人を安心させるような雰囲気や、親近感のようなものを感じられたから危ない子ではないと考えていました。
だけど、これはいくらなんでも怪しすぎます。

女の子「……仕方ないですね。信じてもらう為です。どうせあなたには見てもらわないといけないんだし……」

女の子はそう呟くと、自分の左手を私に見えるようにかざしました。

まどか「な、なに?」

女の子「私の中指にある指輪、わかりますか?」

彼女の言葉に私はその指輪を注視する。
一見なんの変哲もない指輪に見えるけど、これがなんだというのでしょうか。

まどか「これが、なんなの?」

彼女の意図が読めず、私は彼女の顔を窺うように目を向けます。


25: 2012/07/21(土) 21:59:30.27
女の子「まぁ、見ていてください」

そういって彼女は手の平を空に向け、何か念じるような仕草をします。
すると、なんの変哲もなかったはずの指輪が光を放ち始めました。

まどか「な、なに!?」

一定の光を放ち続ける指輪。
間近で見ていた私はその光に少し目が眩みましたがそれもすぐに終わりを迎えました。
光が収束し、その発光を終えた時、いままで彼女の手の平にはなかったものが存在していました。
それは卵形の形状をした宝石のようなものでした。

まどか「な、なにこれ……」

私は今、目の前で起きたことが理解できずにただ呆然とするしかありません。
私が唖然としているのを見た彼女は私にこう説明しました。

女の子「これの名前はソウルジェムっていいます。
    まぁ本来の形が今の形状で、さっきの指輪の状態は普段持ち運ぶ時の為だとでも思って下さい」

あまり状況が読み込めない私に彼女は淡々と説明を続けます。
正直あまり飲み込めません。

女の子「これには色々と便利な機能があるんですがそれについては後で説明します。
    今は、それよりも知ってほしい事がありますから」

まどか「知って、ほしいこと?」

女の子「えぇ、それは……」

そういって彼女は私から3歩程離れます。
そしてソウルジェムを胸に抱きかかえるよう持つとまたなにかを念じるように、なにかを祈るように目を瞑ります。
すると今度は彼女自身を優しく覆うように光が広がり始めたのです。

まどか「な、なに!?」

今度の発光はさっきのものとは比べ物にならない程大きく、しかし私はその不思議な光景から目を離せずにいました。

まどか「……きれい……」

私は思わずそう呟き、眼前の光景に魅入ってしまいます。

しばらく続いた発光もやがて収束し、光の中からゆっくりと彼女の姿が現れ始めました。
しかし、再び現れた彼女の姿はさっきまでの彼女とは異なったもので、私はその事実に驚くのでした。

女の子「どうです? 驚きました?」

そう話しながら現れた彼女の顔はすごく優しげな笑顔で、いきなり驚かせたことに対する謝罪も含まれているようでした。

でも、なぜでしょうか。
私は目の前にいる少女が、その笑顔が、そのとても綺麗で優しげな笑顔が悲しんでいるように、そう感じたのでした――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

26: 2012/07/21(土) 21:59:57.29
女の子「以上で説明を終わります」

こんにちは! 鹿目まどかです! 私はパパのお使いで買い物に出かけたのです!
でも、その帰りにすごい女の子と遭遇! その子はなんと! なんとですよ!
私の子供だっていうじゃないですか!
ビックリ!! 

で、ですね、その子がなんかパーッと宝石みたいなのを出してですね、それでパーッと変身したんですよ!
で、それからなんか凄い話を聞かされちゃうんですよ!
なんでもですね。その宝石はソウルジェムって言って魔法少女になるためのアイテムで魔法少女はキュウべぇっていう
見た目が可愛らしい宇宙人と願いを一つ叶える代わりに魔女を倒すための契約を結んで日夜、魔女を倒すために戦うらしいんですよ!
ビックリ!!

まぁほかにもソウルジェムのこととか色々聞いたんですけど、その辺は魔法少女まどか☆マギカ 第二話でマミさんが説明したことを聞いた感じです。はい。
詳しく知りたい人は、DVDを“買って”確認してね! まどかとのお約束だよ!

まどか「ってマミさんって誰! DVDってなに!?」

女の子「!?」ビクッ

女の子「ど、どうしたんですか急に……」

私の急の叫びに女の子が驚きながら聞いてくる。

まどか「ご、ごめん。なんか言わなきゃいけない気がして……」

私の答えになってない答えに、怪訝なそうな顔をして女の子は話を続けます。
その顔はやめて! なんか傷つくから!!

女の子「で、ですね。私の話、信じてもらえました?」

そう問いかける女の子。
まぁ、正直まだ半信半疑なところはあるけど(私の子供だーとかね)さすがに未来から来たのは信じざるおえないかな。

まどか「だってあんなの見せられたらね……」

魔法少女に変身した女の子。
変身してまず私に見せたことが
時を操る能力。魔法少女になった時についてる盾を操作することで操れるんだって。
なんでも自分の身体に触れている人はその能力の制限を受けないみたいだから、私は女の子の手を握ってたんだけど。
ちなみにすっごい柔らかかった。
まぁそれはいいんだけど、で、実際に見せてもらったらこれが凄いのなんのって、まず、
時を止められる。

止まってるのみんな。
道路を走る車や空を飛んでる鳥。挙句の果てには今、塀から飛び降りたばかりの猫まで空中でストップ。
あまりのことに呆然。
で、なぜか私達だけは動けるの。
自由自在。


で、時を止めるだけじゃなくて進めることもできるの。
どんなものかを見せてもらったら、その辺にあったちょっと大きめの石を拾って投げたのその辺に。
投げられた石、すっごく早かったなぁ。
っていうか見えなかった。気づいたらその石が10メートルくらい先に落ちてた。投げるモーションをした瞬間に落ちてた。
詳しく聞いたら。対象の決められた行動を早送りしたんだって。しかもその対象のみに早送りが適応されるから本来の時間の流れは無視して進めることができるみたい。
なにそれすごい。つまり遅刻しそうな時にそれを使ったら遅刻しないで済むねって言ったら、その時は時を止めますだって。
ですよねー^^

で、次が一番すごい、時を戻す能力。
さっき飛んで行った石、気づいたら元の位置にあるの。
なにしたの? って聞いたら次は対象の決まってしまった行動を巻き戻しましただって。
半端ない。
じゃあ、あれだよね。テストで悪い点数取っても巻き戻せば完璧だねっていったら、
テストはいつも満点なんでその例えはよくわかりません。だって。
この野郎^^♯ 私の子供じゃないのかよ^^♯
っていうかその規模だと時間軸自体の巻き戻しになるので、そこまではできませんだって。
なにそれ実はそんなにすごくない。

まぁ、そんな感じで能力の説明をしてもらったんだけど、こんな不思議なことが目の前で起こったらさすがに信じるしかないというか、なんというか……。

27: 2012/07/21(土) 22:00:35.88
まどか「うん。信じるよ」

女の子「それは、どこまでですか?」

まどか「どこまでって……」

女の子「あなたが私の子供であるっていうことはまだ完璧に信じてもらえていないような気がするんですが」

私の心理を見透かしたかのように女の子は話し続ける。
鋭いなぁ……。実際、私が信じたのは彼女が魔法少女で、未来から来た。という話まで。
私の子供であるというのは半信半疑だ。

女の子「……」

じーっと私の目を見る女の子。
その目はとても真剣で、とても嘘をついてるようには見えません。

まどか「……」

……。そう、嘘をついているようには見えない。
それに私はなぜかこの子を一目見た時から妙に親近感が湧いていた。
この子は悪い子ではない。信頼できる子だと。心のどこかで感じていたんだ。

だからだろう。
普通なら身の危険を感じるであろう状況にをおいても逃げ出したりはしなかったのも、この子は私に危害を加えることはない。
むしろ守ってくれるだろうとまで考えたのは。

女の子「……」

少し、彼女の目に不安の色が陰っていることに気づく。
その目は悲しそうにも寂しそうにも見えた。、

その目を見た私は、彼女のさっきの言葉を思い出す。

『私……。どうしたらいいんだろう……。せっかく見つけた親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で氏んでいくしか……。ぐすん』

彼女が未来から来たという話が本当なら、この言葉は真実であるという事になる。
そう、彼女はこの時代において文字通り一人なんだ。
一人きりで、自分を知っている人間もいない現代で彼女が何をしようとしているのかはわからない。
でも、そんな中、彼女は“親”である私を頼り力を貸してほしいと私の前に現れたんだ。


まどか「……」

今度は私がじっと彼女を見つめる。

改めて、悪い子ではないと思う。
そして、私を頼ってくれた。それは間違いではないと思う。

それだけでいいかな。信じる理由はそれだけで。
彼女が本当に私の子供かどうか、それを証明する方法はないけれど、彼女が私の子供だというのなら、今日から彼女は私の子供だ。
子供の言うことを信じるのは親の務めなんだ。
なら、私の言うべき事は……。

まどか「信じるよ」

女の子「え?」

私の言葉に彼女はきょとんとした顔をする。
その顔からはさっきまでの生意気で大人びた彼女ではなく、年相応な、彼女の本当の姿を見られたような気にさせる。


まどか「あなたの話した事を全部、信じる」

私は彼女を安心させるように親が子供に語りかけるように、優しい声色で彼女への信頼を示した。

まどか「あなたは私の……娘、なんだね」

女の子「あ……」

まどか「あなたが、なんのためにこの時代にきたのかはわからないけど……。きっととても大変な事の為にやってきたんだっていうのはわかる。
    私なんかで役にたてるのかはわからないけど、親としてあなたのやることの力になれたら嬉しいな」

そう、親なら子供の力になるべきだ。なんにもできない私だけど、少しでもこの子の力になれるのなら……。

まどか「だからそんなに不安そうな顔をしないで? 私はあなたを信じるから。ね?」

笑顔で彼女に安心するように語りかける私。親なら、子供に不安を与えてはいけない。子供を安心させなくちゃいけない。
だって、私はこの子の母親なんだから。

28: 2012/07/21(土) 22:01:03.18
まどか「うん。信じるよ」

女の子「それは、どこまでですか?」

まどか「どこまでって……」

女の子「あなたが私の子供であるっていうことはまだ完璧に信じてもらえていないような気がするんですが」

私の心理を見透かしたかのように女の子は話し続ける。
鋭いなぁ……。実際、私が信じたのは彼女が魔法少女で、未来から来た。という話まで。
私の子供であるというのは半信半疑だ。

女の子「……」

じーっと私の目を見る女の子。
その目はとても真剣で、とても嘘をついてるようには見えません。

まどか「……」

……。そう、嘘をついているようには見えない。
それに私はなぜかこの子を一目見た時から妙に親近感が湧いていた。
この子は悪い子ではない。信頼できる子だと。心のどこかで感じていたんだ。

だからだろう。
普通なら身の危険を感じるであろう状況にをおいても逃げ出したりはしなかったのも、この子は私に危害を加えることはない。
むしろ守ってくれるだろうとまで考えたのは。

女の子「……」

少し、彼女の目に不安の色が陰っていることに気づく。
その目は悲しそうにも寂しそうにも見えた。、

その目を見た私は、彼女のさっきの言葉を思い出す。

『私……。どうしたらいいんだろう……。せっかく見つけた親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で氏んでいくしか……。ぐすん』

彼女が未来から来たという話が本当なら、この言葉は真実であるという事になる。
そう、彼女はこの時代において文字通り一人なんだ。
一人きりで、自分を知っている人間もいない現代で彼女が何をしようとしているのかはわからない。
でも、そんな中、彼女は“親”である私を頼り力を貸してほしいと私の前に現れたんだ。


まどか「……」

今度は私がじっと彼女を見つめる。

改めて、悪い子ではないと思う。
そして、私を頼ってくれた。それは間違いではないと思う。

それだけでいいかな。信じる理由はそれだけで。
彼女が本当に私の子供かどうか、それを証明する方法はないけれど、彼女が私の子供だというのなら、今日から彼女は私の子供だ。
子供の言うことを信じるのは親の務めなんだ。
なら、私の言うべき事は……。

まどか「信じるよ」

女の子「え?」

私の言葉に彼女はきょとんとした顔をする。
その顔からはさっきまでの生意気で大人びた彼女ではなく、年相応な、彼女の本当の姿を見られたような気にさせる。


まどか「あなたの話した事を全部、信じる」

私は彼女を安心させるように親が子供に語りかけるように、優しい声色で彼女への信頼を示した。

まどか「あなたは私の……娘、なんだね」

女の子「あ……」

まどか「あなたが、なんのためにこの時代にきたのかはわからないけど……。きっととても大変な事の為にやってきたんだっていうのはわかる。
    私なんかで役にたてるのかはわからないけど、親としてあなたのやることの力になれたら嬉しいな」

そう、親なら子供の力になるべきだ。なんにもできない私だけど、少しでもこの子の力になれるのなら……。

まどか「だからそんなに不安そうな顔をしないで? 私はあなたを信じるから。ね?」

笑顔で彼女に安心するように語りかける私。親なら、子供に不安を与えてはいけない。子供を安心させなくちゃいけない。
だって、私はこの子の母親なんだから。

29: 2012/07/21(土) 22:01:33.41
女の子「あ……」

彼女の瞳がにわかに潤みだす。

女の子「あ、あり……がとう」

少しづずつ滲み出した涙は、ポロポロと零れだす。それはさっきのような津波のようなものではなく、ゆっくりと湧き出す湧水のようで
私は彼女の本当の涙を見れたんだと少し嬉しく感じた。

まどか「うん。大丈夫だよ。もう一人じゃないからね」

私は泣いている彼女に近寄り、母親が子供にするように、優しくその体を抱きしめました。

女の子「あり、がとう……。ありがとう」

何度もお礼の言葉を繰り返す彼女を抱きしめながら私は彼女の力になろうと決心を固める。




まどか(そうだよ……。だって私はこの子の、ママなんだもん)

母親が自分の子供の力にならなくてどうするんだ。

女の子「ありがとう……。ありがとう」

そう、自分は母親なんだから。ギュッと抱きしめる腕に力をいれる。

女の子「ありがとう。信じてくれて」





女の子「お父さん」




そう母親な……ら……?





まどか「え?」

いまなんてった?

女の子「お父さんが信じてくれてよかった」

女の子「信じてくれなかったらどうしようって……」

女の子「すごく不安だったんだ……」

女の子「でもお父さんが信じて手伝ってくれるならもう安心。絶対にお母さんを助けることができるよ!」

彼女の言葉が理解できない私。

お父さん? お父さんってなに?
あれ? 私聞き間違えた?

まどか「ね、ねぇ。誰が信じてくれてよかったって?」

私は聞き間違えたであろう言葉を聞き返す。
こういうのはちゃんと聞かなきゃいけないからね。

30: 2012/07/21(土) 22:02:01.92
女の子「え? お父さんがだよ?」

うん。あー。うん。幻聴だね。うん。これは幻聴が酷いね。
今度病院にいかなきゃね。

まどか「えーと。うん! お母さんが手伝うから安心だよ!」

女の子「え?」

再びキョトンとする女の子。
何も私はおかしなことは言ってないのになんでだろうね!

女の子「……お父さんなに言ってるの?」

まどか「え? お母さんなにかおかしなこと言ったかな? そ、それよりあなたがしなきゃいけないことってなに? お母さんはなにを手伝えばいいのかな?」

幻聴をスルーして話を進めようとする私。だけどそんな努力は無駄で……。

女の子「なにか勘違いしてるようですけど……。あなたはお母さんじゃなくてお父さんですよ?」

まどか「」

淡々と衝撃的なことを口にする彼女。
幻聴であると、そうであってほしいと願っていた私の思いは無残に砕け散るのでした。







女の子「あ、そういえば私の名前をまだ言ってませんでしたね」

彼女はうっかりしていました、遅くなりましたが。
といい自身の名前を口にする。

女の子「私の名前は鹿目ほどか。父親であるあなた、鹿目まどかと、三日後に転校してくる母親である暁美ほむらの一人娘です」

にっこりと笑い自己紹介をする彼女。
そのとても美しい笑顔は夕日をバックにその美麗さをより一層輝かせ、その笑顔を見た私は、
この子に似ているほむらちゃんって子はすっごく綺麗なんだろうなー。っと場違いなことを考えてしまうのでした。

そして彼女の胸元で光る宝石。
そのピンクパープルに光るソウルジェムの輝きを見た私はこれから起こるであろう大変な出来事と、信じがたい現状に一人頭を悩ませるのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

31: 2012/07/21(土) 22:02:52.30
      ―― まどホーム ――


まどか「……」

ほどか「わぁ……。この料理すごくおいしいです。こんなにおいしい料理食べたことありません!」

知久「はは、そういってもらえると作った甲斐もあるな」

詢子「まだまだいっぱいあるからたくさん食べなよー。遠慮なんかいらないからな?」

ほむか「はい! いただきます!」

タツヤ「ほどかー!」

ほどか「あはは、タツヤおじちゃん口元汚れてるよ? ふきふきするね」フキフキ

詢子「おー、よかったなタツヤー。こんな美人な女の子に世話やいてもらって。この色男めー」

ほどか「そんな……。美人だなんて///]

詢子「はは、照れてる姿も絵になるじゃないか」

ほどか「か、からかわないでください///」

詢子「ははは。照れるな照れるな」




こんばんは! 鹿目まどかです!
無事? 買い物も終わり帰り道に出会った未来の私の娘と名乗る女の子、ほどかちゃんを家に連れてきた私。
で、ママ達に紹介して一緒にお食事ってなったんだけど……。

まどか(馴染みすぎだよ……)

そうです。すっごい馴染んでるの。とても初対面とは思えない程に。
いや、私の娘っていうんならほどかちゃんは初対面じゃないだろうし、そりゃそうなんだろうけど……。
でも、初対面なはずのママもパパもタツヤも馴染みすぎというか、普通の家族みたいというか……。

まどか(いや、悪いことじゃないんだけどね)

でも、さすがに驚きを禁じ得ないよ。これは……。
私としてはこの子を家族に紹介するのは結構緊張してたのに……。
なんていって紹介しようかとか、どう説明しようかとか。あんまりよくない頭を働かせて考えてたんだよ?
なのにこの子と来たら……。

ほどか「あぁ、私のことなら大丈夫ですよ。任せてください」

っていうから任せてみたら……。



詢子「いやー、まさかこんなに早く孫の顔を見ることができるとは、驚いたね」

知久「そうだね、最初聞いたときは信じられなかったけどね。でも、確かにまどかに似ているところもかなりあるしね」

ほどか「信じてくれてありがとうございます」

そうです。この子普通に全部ありのまま説明しやがったんです。
ご丁寧に魔法少女の事まで全部。

詢子「しっかし、そんな世界があるとはねー。長い間生きてきたけど全然気づかなかったわ」

ほどか「魔法少女は基本的には人にバレないように行動していますから……。やっぱり人目があると面倒ですし」

詢子「まぁそうだろうね。そんなもんが存在してるなんて知れたらみんな大騒ぎだ」

知久「まぁそのおかげで僕たちはこんなに早く孫の顔を見ることができたんだからラッキーなのかな?」

詢子「だね」

ラッキーで済ますんだ、この親は……。

え? っていうかそんなにあっさり信じていいもんなの? そりゃ魔法少女の事は目の前で見せられたら信じるしかないのはわかるけど……。
私の子供っていう事までそんなに簡単に信じちゃうの? しかも、しかもだよ?

32: 2012/07/21(土) 22:03:38.03
詢子「しっかし、まどかもやるじゃん。この子の顔を見るに母親の子はすっごい美人だよ。そんな子を落とすなんてさすがは私の子だ」

なんで私が父親だっていうことも信じてるの!!
なんで!? そこは信じられないよね普通!! っていうか娘の性別が変わるっていうのになんでそんなにあっさりしてるの!?

ほどか「はい、お母さんは凄く綺麗ですよ。まぁ私も写真でしか見たことないんですけどね」

詢子「たしかほどかが小さい頃に亡くなったんだっけ?」

ほどか「はい……。もともと体の弱い人だったらしくて、私を生んだ為に体に限界がきたみたいで……」

詢子「そう……」

ほどか「……私のせいで」

悲しそうな顔をして、そう呟くほどかちゃん。
なんだろうこの空気。私だけついていけてないよ……。



詢子「ほどか」

ほどか「なんでしょうか?」

詢子「辛い思いをしてきたんだね。でもね、これだけは覚えておけ。あんたの母親、
   ほむらって子は、あんたを生んで絶対に後悔なんかしてないよ。
   自分の体がどうなろうともあんたを生んだんだ。後悔なんかあるはずがない」

そういってママはほどかちゃんの頭に手を置きました。
そして頭を優しく撫でます。

詢子「だから私のせいでなんてあんたは絶対に口にしちゃいけない。
   その言葉はほむらの覚悟を裏切る言葉なんだから。
   ほむらはあんたのせいで氏んだんじゃなくて、あんたが産まれたおかげで幸せの中で氏ねたんだよ」

ほどか「あ……。そう、ですね。そうですよね……」

俯くほどかちゃんを優しく笑いながら撫で続けるママ。
普通なら感動的なシーンなのだろうけど私の心はそうはいかない。
だってその流れでいくと私がパパなのはもう確定事項として扱われているわけで。
私としてはそこにまだ納得いっていないというかなんというか……。

まどか「マ、ママ?」

いまだほどかちゃんを撫で続けるママに話しかける。





詢子「ん? どうした? まどか」

まどか「あのー。私がこの子の父親っていうの信じるのかなって」

詢子「え? だってこの子はまどかの子供なんだろ?」

まどか「えぇ、いや、それはそうなんだけど、その父親っていうのはちょっとおかしくないかなって……」

詢子「……? なにかおかしいとこある?」

知久「ないよね?」

詢子「ないみたいよ?」

まどか「あるよ!」

おかしいところだらけだよ!

まどか「だって、パパだよ!? パパ! 変でしょ!?」

自分の娘の性別が変わることになんでそこまで疑問を抱かないの!?

33: 2012/07/21(土) 22:04:25.59
詢子「変っていわれてもねー。……まどか、まさか」

急に真剣な顔になるママ。
え? なに? なんなの?

詢子「認知しないっていうの?」
 
出たよ認知! まさか一日で二度も認知って聞くとは思わなかったよ! しかも親から!

詢子「まどか」

ママは溜め息をつきながらなにかを私に伝えようとする。

詢子「男ならちゃんと責任を取らないとダメよ?」

まどか「私は女の子だよ!」

なにを言ってるのこの人は!



まどか「っていうかママとパパは私が男の子になることについてなにか疑問はないの!?」

詢子「疑問って、ある?」

知久「ないね」

おい、知久。知久、おい。即答か。

詢子「まぁ、魔法少女なんて存在してるんだし、女が男になるっていうのもありじゃないの?」

えぇー……。軽ぅ……。

ほどか「お父さんは私のお父さんは嫌ですか?」

ほどかちゃんが私の顔を覗き込みながら、上目使いでそう尋ねる。
……ホントに可愛いなこの子。

ほどか「あぅぅ……」

なに今の鳴き声。超可愛い。
じゃなくて、若干不安げなほどかちゃんの顔を見た私は、なんだか自分が父親であることを認めないのが悪いことな気がしてきたことと
このアウェーな空気により

まどか「……別に嫌じゃないよ」

っと彼女の頭を撫でながら言ってしまうのでした。





まどか(だってこんな可愛い顔で私のお父さんは嫌? って聞かれたら嫌とは言えないよ……)

だから決して私が押しに弱いとか可愛い子には弱いとかそんなことはないわけで……。

ほどか(パパちょろい)

詢子(我が子ながらちょろいわー)

知久(僕に似たんだね。これから苦労するよ、まどか)

なんか二名からは邪念が、一名からは憐みの眼差しを向けられているような気がするけどきっと気のせいだよね。
うん。気のせい。

まぁ、そういうわけでほどかちゃんはこんな風にあっさり我が家の一員になったのでした。

ちなみにほどかちゃんの生活費等は、家で払うことになりました。
ほどかちゃんは自分で出す。っと聞かなかったのですが、ママの

詢子『子供がんなこと心配すんな』

の一言と恐ろs、いえ、女神のような笑顔で納得してくれたようです。

ほどか(こ、恐かった……)

34: 2012/07/21(土) 22:04:57.69
―― まどルーム ――


まどか「でもこれからどうするの?」

夕食も済み、お風呂にも入った私達は今後の予定を話し合うことにした。
ちなみにお風呂に一緒に入ろうとしたところ

ほどか『お父さんのえOち! 変態!』

との御言葉により一緒には入れませんでした。

解せぬ。

ほどか「そうですね、これからのことを話す前に、まず私がなぜこの時代に来たのかを話しますね」

そういって椅子に腰かけ、私のぬいぐるみを抱きながらほどかちゃんは話し始める。
しかしぬいぐるみを抱く姿も絵になるねー。ティヒヒ。

まどか「たしか、お母さんを助けるとか言ってたよね? それと関係があるの?」

ママを助ける。
この言葉を考えるとなんだか物騒なことを連想してしまうけどどうなんだろう。




ほどか「はい。私のお母さん、つまりあなたの妻であるほむらさんが私が幼いころに亡くなったと話しましたよね?」

改めて妻とか言われるとなんだか違和感バリバリだけど、話が進まないのでとりあえず頷いておく。

まどか「体が弱かったからだよね」

ほどか「……実はそれは嘘なんです」

まどか「え?」

なんだか衝撃的な事を告げるほどかちゃん。
嘘って……。ならどうしてほむらちゃんは。

ほどか「体が弱いというのは嘘ではないんですけど、
    お母さんは魔法少女になってからは魔法の力で体は丈夫になっていたみたいですから、出産にも耐えられたはずです」

ほむらちゃんも魔法少女なんだ……。
なんだか親子揃って魔法少女とかすごいなー。

まぁそれはいいか。






まどか「じゃあどうしてほむらちゃんは……」

ほどか「……。いまから一か月後にワルプルギスの夜という大型の魔女が現れます」

まどか「ワルプルギスの夜?」

ほどか「はい。その魔女は凄く強力な魔女でお母さんはこの街を守るために戦ったんですが、その魔女との戦いで呪いを受けてしまったんです」

まどか「呪いって……。まさかそのせいで」

ほどか「はい……。
    ですから、私はお母さんがワルプルギスの夜との戦いの際に呪いを受けないように一緒に戦い、その呪いのせいで氏んでしまう未来を変えたいんです」

そこまで話すとほどかちゃんは一呼吸置く。
そして、

ほどか「それが、私が未来からこの時代に来た理由です」

っと、彼女は真剣な瞳でそう告げる。
その瞳は固い決意を宿していて、その目的を果たす為ならばどのような困難にも打ち勝ってみせるといわんばかりだった。

36: 2012/07/21(土) 22:05:23.80
まどか「……。うん。わかったよ」

彼女の決意を受け、私は自分がすべきこと出来ることをしようと考える。
だって、娘であるこの子がそんな大変なことに立ち向かってるのに親である私が逃げるわけにはいかないもん。

まどか「で、私はなにを手伝えばいいのかな? 今の話からだと私にできることってなさそうだけど……」

今の話を聞く限りだと、そのワルプルギスの夜っていう魔女との戦いでは私は役にたてそうにない。
だって私は魔法少女じゃないし、ほどかちゃんと一緒にほむらちゃんの為に魔女と戦うというのは無理だろう。
なら私は何をすればいいのか。

ほどか「それなんですが……。お父さんには私がお母さんと一緒に戦えるように仲を取り持ってほしいんです」

まどか「取り持つって……。なんでそんことを? 私に話したみたいにほむらちゃんにも自分があなたの娘だってことを言えばいいんじゃ……」

ほどか「いえ……。えーと、そのなんていうか自分でいうのもなんですけど、いきなりそんなことを言われてもお母さん信じてくれないと思うんですよ。
    それにお母さんはなんだか性格に難しいところもあったみたいで……。一匹狼気質というか、冷たいというか……」

えぇー……。なにそれ。私の奥さんってそんなに怖い人なの? なんか将来に不安が……。





ほどか「あっ、でもそんなお母さんが唯一心を許せる人がお父さんだったらしくて、そんなお父さんがお母さんに話しをしてくれたら大丈夫かなって」

えぇ、なにそれ。私ってそんな人の心を射止めたの? やるじゃん私。

ほどか「ですから、私がお母さんの子供っていうことは内緒で、うまく協力関係を結んでワルプルギスの夜を無事に倒すことが私の目的になります」

まどか「なるほどねぇ」

なんだか難しそうだけど……。
不安そうにこっちを見てくるほどかちゃんを安心させる為にもここは

まどか「うん。きっとうまくいくよ」

笑顔でこう答えるべきだよね。

まどか「ほむらちゃんがどんな子かは会ったこともないからわからないけど、優しい子だっていうのはわかるよ。
    だってこの街を守るためにそんなにすごい魔女と戦ってくれるんでしょ?
    みんなの為にそんなことをしてくれる優しい子なら、きっと協力してくれるよ
    だから大丈夫だよ。きっとほどかちゃんの願いは叶うよ」

その言葉に安堵の表情を浮かべるほどかちゃん。
うんうん。やっぱり子供には安心してほしいよね。





ほどか「そうですね。……私の願いは叶いますよね。未来は……」

ほどかちゃんはそう呟いて俯く。
表情は見えないが、きっと自分の望む未来が訪れるであろうことに安心しているのだろう。

ほどか「あ、そうです。お父さんにもう一つお願いが」

そういって顔を上げ、私にお願いがあることをほどかちゃんは告げる。
うんうん。なんでも言ってね。可愛い娘のお願いならなんでも聞いちゃうから。

まどか「なーに?」

ほむか「お父さんにも魔法少女の素質はあるんですが、魔法少女にはならないでください」

なんだそんなことか。
それならお安い御用だよ。私が魔法少女にならな、ってえぇ!?

まどか「えぇ!? 私にも魔法少女の素質があるの!?」

思わぬ言葉に大声を出してしまう私。
そんな私の叫び声にほどかちゃんは耳をふさぎながら。

ほどか「うるさいですおとうさん」

っと抗議の声を挙げる。

37: 2012/07/21(土) 22:05:54.39
まどか「ご、ごめん。ってそうじゃなくて私にも素質があるってほんとうなの!?」

ほどか「本当ですよ。しかも歴代の魔法少女の中でも一番の素質があるみたいです」

まどか「そ、そうなんだ」

私なんかがそんな凄い力を持ってるなんて……。俄かには信じられない話だ。

まどか「で、でもなんで私は魔法少女になっちゃだめなの? ワルプルギスの夜がすごい魔女なら一人でも多く戦える人がいたほうが……」

ほどか「うーん……。それについてなんですが、魔法少女になるとお父さんは男の人になれなくなるんですよね」

まどか「え?」

ほどか「魔法少女になると氏ぬまで永遠に魔法少女になるみたいです。
    ですから、お父さんが契約して魔法少女になってしまうと将来的に私が産まれなくなるので私の存在が消えてしまいます」

あっさりと凄いことを言ってのけるほどかちゃん。





ほどか「ですので、お父さんが魔法少女になるのはやめてほしいなぁって。
     まぁ私の存在を消してでも叶えたい願いがあるなら別にいいですけど」

まどか「そ、そんな願いないよ! ほどかちゃんを消してまで叶えたい願いなんて……」

私はその言葉を慌てて否定する。

ほどか「冗談ですよ。お父さんはそんな人じゃないって信じてますから」

ニコリと微笑みほどかちゃんはそう話す。
なんだかこの子には勝てないなぁー。
こんなことを言われたら、絶対に契約なんてしないぞ! って思っちゃう。

ほどか「……。このことはお母さんも忠告してくると思うんです」

まどか「え?」





ほどか「実を言うとお母さんも未来から今の時代に時を渡ってきているんです。
    まぁ、お母さんの場合はワルプルギスの夜が現れる一か月後からみたいですが」

まどか「それってどういう……」

ほどか「詳しい事情はわかりません。ですが、お父さんが魔法少女になることと関係があるみたいです」

まどか「……」

ほどか「お母さんはお父さんが魔法少女になってしまった未来を変えるために行動していたみたいです。
    たぶん、ワルプルギスの夜に殺されてしまうから、その未来を変える為とかだと思うんですが……」

まどか「そ、そんなに強いんだワルプルギスの夜って……」

ほどか「みたいです。でも安心してください。その点については問題ありませんから」

自信満々に胸を張るほどかちゃん。
ちなみに私よりも大きい。ほむらちゃんの血だろうか?

まどか「どういう意味?」

ほどか「私の存在が答えです」

38: 2012/07/21(土) 22:06:21.02
まどか「??」

彼女の言葉が理解できない私。
やめて! 頭はあまりよくないの……。

ほどか「えっと、つまりですね。
    私が存在しているということは、ワルプルギスの夜を倒した未来は存在しているということです。
    そして、未来からきた私はワルプルギスの夜の倒し方も知っているというわけです。
    だって、母親であるほむらさんが倒したわけですから」

そこまで言われてようやく理解する私。

まどか「じゃあほどかちゃんはワルプルギスの倒し方を知っているんだね!」

ほどか「だからそう言ってるじゃないですか」

う……。たまに冷たくなるよねこの子。

ほどか「ですから、ワルプルギスの夜については問題ありませんので安心してください。
    お父さんはお母さんの忠告を素直に聞いてお母さんを安心させてあげてくださいね?」

そういって念を押すほどかちゃん。
……。本当にこの子はほむらちゃんのことが好きなんだなぁ。
やってることや言ってることは全部ほむらちゃんの為。
若干、私に冷たい時があるけど、私に全部話してきたことも私の事を信頼してくれてるんだろうし……。





まどか(ほむらちゃん……。私達の娘は優しい子に育ってるよ。あなたとはまだ会ったことはないけど)

じっと慈愛の眼差しで我が娘を見る。
あぁこれが子供の成長を喜ぶ親の気持ちなんだね。

ほどか(なんか気持ち悪い目だなぁ)

ほどか「さて、私の目的を話したところで今後の予定ですが」

ほどか「まず、お母さんと協力関係を結び、その後は巴マミさんとも協力してもらうために話しをします」

まどか「巴マミさん?」

聞きなれない名前に首を傾げる私。
誰だろう……。その、首と胴体が着脱可能そうな名前の人は……。

ほどか「はい。私と同じ魔法少女でこの見滝原を守っている人です。年はお父さんの一個上ですよ。
    たしか、お父さんと一緒の中学に通っているはずです」





まどか「へぇー、そんな人がいるんだ。その人と協力するのはワルプルギスの夜の対策の為に?」

ほどか「はい。マミさんの力は必要ですから……」

まどか「うん。わかった。マミさんって人とも仲良くなればいいんだね?」

ほどか「仲良く……。まぁそうです」

要は友達を増やせばいいんだよね?
じゃあ簡単簡単。

まどか「他にはなにかないの?」

ほどか「そうですね……。あと一人協力したい人がいるんですが……。佐倉杏子さんって人なんですけど、まぁ今はいいです。
    今はお母さんとマミさんの二人と話をすることに集中してください」

まどか「んー。了解! 学校で話せばいいのかな? それとも家に呼んだ方がいい?」

ほどか「学校でいいですよ。時間がないようなら放課後に喫茶店でもいいですし」

39: 2012/07/21(土) 22:06:47.05
まどか「じゃあ喫茶店かな。だってほどかちゃんも一緒のほうがいいだろうし」

ほどか「そうですね。では放課後にみんなで一緒に喫茶店にでも」

まどか「じゃあ放課後になったら連絡するね?」

ほどか「? 連絡なら必要ありませんよ?」

まどか「え、でも連絡しないといつ家をでたらいいかわからないんじゃ……」

ほどか「え? ……あぁ、そういえば言ってませんでしたね」

ん? なにが? またこの子は大事なことを話してないのかな?

ほどか「私もお父さんと一緒の学校に通うことになってますから」

なん、だと?




まどか「え? えええええ!!? な、なんで!?」

ほどか「そっちのほうが効率がいいからですよ?」

まどか「え!? でも手続きとかは!?」

だってこの子の話だと今日この時代に来た感じだよね!?
じゃあ、そんな暇ないはず……。

ほどか「その辺は魔法で、あとは私の願いの余波とかでかな」

まどか「え、えぇ、なにそれ……」

便利すぎだろう魔法……。
チートじゃないか……。



ほどか「お父さんの親戚ってことになってますから、ちゃんと口裏を合わせて下さいね? 
    私はお父さんのことをまどかちゃんって呼びますから。おかしなことを言っちゃダメですよ?」

ほどかちゃんがつらつらと注意事項を述べていく。
でも、急展開に頭がついていかない。

ほどか「じゃあ、まぁ、というわけで。これからよろしくお願いしますね。まどかちゃん♪」

ニッコリ微笑みそう言う彼女の笑顔はとても可愛くとても悪魔的でした。

まどか(こういうのを小悪魔っていうのかな?)

こりゃ難儀な子ですね……。

まどか「はぁ……」

――――――――――――
――――――――――
――――――――


41: 2012/07/21(土) 22:08:49.29
>>40な。俺も書いてて違和感しかなかったわ。
なんど、名前間違ったか。


あと、ここいらでお詫びの意味も込めてお題募集します。

なんか適当にタイトルくれたら適当に消化します。



まどかとほどかの初夜

まどか「ねぇねぇ、ほどかちゃん」

ほどか「なんですか?」

まどか「せっかくだし、一緒に寝ない?」

ほどか「え」

まどか「未来のこととか……、いろいろ聞きたいし、お話ししながら寝ようよ」

ほどか「……」

まどか「ほどかちゃん?」

ほどか「お父さんのえOちー!!」

まどか「ちょ、ちょ! ぬいぐるみ投げないで!!」

ほどか「もう知りません! 部屋にもどります!」

まどか「え? え?」

まどか「……解せぬ」


43: 2012/07/21(土) 22:09:12.85
おはようございます! 鹿目まどかです!
未来からきた私の娘、ほどかちゃんと出会って今日で三日目の朝。
今はいつものメンバーで登校中なのですが、その登校風景にいつもは見ない姿が。

さやか「へぇー、まどかの親戚ねー。確かに似てるところはあるね」

仁美「えぇ目の辺りとかはまどかさんにそっくりです」

ほどか「よく言われるんですよー。あとは私のほうが大人っぽいとか」

さやか「あー、うん。そうだね。まどかがかわいい系っていったらほどかは綺麗系っていうの?
    いやぁー。仁美も美人だし、こんな子達に囲まれたたらますますさやかちゃんの存在が薄くなるよ!」

ほどか「さやかさんもすごく可愛いと思いますよ?」

さやか「くぅー。そんなに嬉しいことを言ってくれるとは! そんなに可愛いことをいうほどかは、私の嫁になるのだー!」

ほどか「きゃー! さ、さやかさんやめてくださいー!」

仁美「……こほん」

まどか「……」





まどか(相変わらず、馴染むのが早すぎるよ……)

なんなんでしょうか、みんなのほどかちゃんの受け入れ態勢の整い加減は。
今朝会って親戚の子で今日転校してくるって紹介したら二つ返事で受け入れてこれですよ。
いや、まぁなにも不審に思うこともないでしょうけど、ひと悶着くらいあるんじゃないかとか心配してた私はいったい……。

さやか「しかしほどかのそのリボン可愛いねー」

ほどか「派手じゃないですか? 私には似合わないような……」

仁美「そんなことはないです。よくお似合いかと」

さやか「そうだよ。まどかとお揃いでよく似合ってるよ!」

褒められて照れているほどかちゃんにニコニコしながら話しかける二人。
……騙されないで! その子猫被ってるから!

だって今朝――。

44: 2012/07/21(土) 22:09:41.26
―― まどホーム  ――

まどか『リボンどっちかな?』

詢子『ん』

まどか『えー 派手すぎないかな?』

詢子『それくらいでいいのさー』

詢子ほどか『女は外見でなめられたら終わりだよー』

ほどか『ですよね?』

まどか『え』

詢子『よくわかってるじゃないかー。さすが私の孫だね』

ほどか『えへへ』





詢子『そうだねー。ほどかもまどかとお揃いのリボンでいきな』

ほどか『そうですね。……んしょ。どうですか?』

詢子『うん! いいじゃーん。これならほどかの隠れファンもメロメロだ』

ほどか『そうですねー。えへへ』

まどか『いやいや、ほどかちゃんこの時代に知り合いいないでしょ。隠れファンなんているわけ……』

ほどか『いると思っておくんですよ。それが美人の』

詢子ほどか『ヒ・ケ・ツ』

詢子『だね』

ほどか『ですね』

まどか『……』

45: 2012/07/21(土) 22:10:08.55
まどか(ってことがあったんだから……)

思ったね。ほどかちゃんはママにそっくりだって。

さやか「しかし、ほどかは美人だねー。これは男子はだまっちゃいないよー」

ほどか「そんな……。私なんて全然……」

さやか「くー、なんて奥ゆかしさ!」

まどか(さやかちゃん騙されちゃだめ! その子の本性はそんなんじゃないから!)

さやか「私が男だったらほっとかないよ! きっと!」

まどか(それについては同意見だよ! でもさやかちゃんにはあげない!)

仁美(あらあら、私なんだか空気ですわ)

そんなこんなでさやかちゃん達とも打ち解けることができたほどかちゃん。
若干うまくいきすぎな気もするけど仲良しなのはいいことだよね。




まどか(次はほむらちゃんか……)

一番重要な人であるほむらちゃん……。どんな子なんだろう……。
あれ? そういえばほむらちゃんって私のお、お嫁さんになるんだよね……。
ど、どうしよう! 今更だけどなんか緊張してきたよ!
なにを話せばいいんだろ!? 式はいつあげるとか!? ハネムーンはどこがいいんだろう!? やっぱり熱海かハワイかな!?

まどか「あ、あわわわわ」アセアセ

さやか「ん? どうしたまどか、そんなあからさまに慌てて」

まどか「え!? な、なんでもないよ!」

さやか「えー、なんでもないようには見えないけどなー」

食い下がるねさやかちゃん……。
ここは空気を読んで流してほしいのに!





ほどか「……」ジー

あぁ! ほどかちゃんが可愛いお目目でこっちを見てるよ!
あの目は私が余計なことを言わないか危ぶんでる目だ!

まどか「も、もー! ほんとうになんでもないから! それより早く学校いこ! 遅刻しちゃうよ!」

さやか「げ、たしかにもうこんな時間」

まどか「ね! ほらほら早く! ほどかちゃんも!」

強引に押し切る私。かなり怪しいけどしょうがない。
遅刻しそうなのは本当だし。

さやか「あ、まってよ! まどか!」

ほどか「そんなに慌てると転びますよ?」

仁美「あらあら私に今後出番はあるのでしょうか?」

こうしてドタバタしながらも私たちの一日は始まったのでした。

46: 2012/07/21(土) 22:10:36.20
―― 学校  ――

和子「目玉焼きとは(ry

さやか「だめだったかぁ」

まどか「だめだったんだねぇ」

和子先生の破局を聞きながらついにこの時が来たと私は緊張する。

まどか(ついに私の嫁がみられるんだね)

思わず生唾を飲み込んでしまう……。
ほどかちゃんがあの外見ならほむらちゃんもきっと……!

和子「はい。あとそれから今日はみなさんに転校生を紹介します」

さやか「え、えぇ、そっちが後回しかよ」

まどか(きた!)

ついに私の嫁が!





和子「じゃ、鹿目さん、暁美さんいらっしゃーい」

さやか「え? 二人?」

転校生の登場にざわめく教室内。
そりゃそうだよね。転校生が二人。しかも同じ教室になんて普通はありえないもん。

さやか「うわ、ほどかもそうだけどもう一人の子もすげぇ美人……」

まどか「……」

さやか「ん? っていうかあの二人似てない……? 並んだら姉妹みたいだよ」

そりゃ親子だもん。似てるのは当たり前だよ。
っていうか……。

まどか(なにあれなにあれ! ほむらちゃんすっごく可愛い!! 本当にあの子が私の……///)




思わずじっとほむらちゃんを凝視してしまう私。
そして肝心のほむらちゃんは……。

ほむら「……」

ほどか「……」

ほどかちゃんをじっと、驚いたような顔で見つめているのでした。

まどか(あれ、なんか様子がおかしい……?)

その異様なふいんき(←なぜか変換できない)にみんなもさっきとまでは違ったざわめきを見せ始める。

和子「えーっと……。それじゃあ二人とも自己紹介いってみよー」

先生も困った様子で自己紹介を促す。

ほどか「……鹿目ほどかです。このクラスにいる、鹿目まどかさんとは親戚で、今日からみなさんとこの学校で共に学ぶことになりました。
    仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

笑顔でそう自己紹介をするほどかちゃん。
うん。客観的に見て、完璧な挨拶。あれならみんなにいい印象を与えたのは間違いないね。

48: 2012/07/21(土) 22:10:59.65
対してほむらちゃんはほどかちゃんの挨拶に驚きながらも

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

と、完璧なまでに無愛想な挨拶をしたのでした。

まどか(……確かに、なんだか難しそうな子だね……)

ほむら「……」

まどか(あ、こっち見た。っていうか睨まれた! なんで!?)

私、なにかしたかな? あ、未来でなにかしたからかな……。
……。なんだか、この先が一気に不安になってきたよ……。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

49: 2012/07/21(土) 22:11:28.19
HRも終わり、クラスの子達は珍しさから転校生、つまりほむらちゃんとほどかちゃんを囲んで質問攻めをしているのでした。
ほどかちゃんの方には親戚ということもあり私も一緒にいるんだけど、どうしようかな……。

まどか(ほむらちゃんと話さなきゃいけないんだよね)

大事な話は放課後にすればいいとしても、そのきっかけ作りにとにかく一回は話さないと。

モブ1「鹿目さんってどこからきたのー?」

モブ「あずにゃん! あずにゃん!」

ほどか「東京からです。実家は神戸にあるんですけど、親が転勤族で住むな所がころころ変わるんで
    あと、ほどかでいいですよ。鹿目さんだとまどかちゃんと紛らわしいですし」

モブ2「じゃあほどかちゃん! まどかちゃんの家に住んでるのはなんでなの?」

モブ4「あずにゃんぺろぺろ! あずにゃんぺろぺろ!」

ほどか「親が外国に転勤になりまして、むこうが落ち着くまではまどかちゃんの家にお邪魔することになったんです」




モブ3「えぇー。じゃあもしかしてまた転校しちゃったりするの?」

モブ4「あずにゃんもふもふ! あずにゃんもふもふ!」

ほどか「はい……。みなさんと仲良くなれそうなのに残念ですが……」

まどか「……」

この子、本当に凄いな……。
よくもまぁ、これだけ嘘をスラスラとつけるもんだよ……。
しかも表情もころころ変わって……。今の悲しげな表情とか本当に悲しそうだもん。
演技ってわかってるのに思わずなでなでしそうになったよ。
そういえばほむらちゃんのほうはどうなんだろう……。






モブ5「暁美さんって、前はどこの学校だったの?」

モブ4「ほむほむ! ほむほむ!」

ほむら「東京のミッション系の学校よ」

モブ6「前は部活とかやってた? 運動系? 文科系?」

モブ4「ほむほむくんかくんか! ほむほむくんかくんか!」

ほむら「やってなかったわ」

モブ7「すっごい綺麗な髪だよねー。シャンプーはなに使ってるの」

モブ4「ほむほむのサラサラヘアーほむほむ! ほむほむのサラサラヘアーほむほむ!!」

51: 2012/07/21(土) 22:12:00.44
まどか「……」

あっちはあっちで人気みたいだね。

仁美「不思議な雰囲気な人ですよねぇ。暁美さん……」

さやか「ねぇまどか。あの子知り合い? なんかさっき思いっきりがん飛ばされてなかった?」

まどか「え? うーん。うぇひひ……」

知り合いって言ったら知り合いなのかなぁ?
未来では仲良くしてるみたいだし……。

まどか(仲良く……///)

さやか「まどか?」




ほむら「ごめんなさい……。ちょっと緊張しすぎたみたいで気分が……。保健室にいかせてもらえるかしら」

モブ5「あ、じゃあ私が案内してあげる」

モブ6「あ、私もいくいく!」

モブ4「拙者もイクでござるー!!!」

ほむら「いえ、おかまいなく。係りの人にお願いしますから」

あ、こっち来た。
どどど、どうしよう。係りの人って私だよ!? 急にこんなの唐突すぎるよ!

ほどか「……」

慌てる私にほどかちゃんが目配せをする。
そ、そうだよね。いまからが本番だよね。気を引き締めないと……。
ぐっと拳に力をいれる私。そう……。私がやらなきゃいけないんだ……。





ほむら「鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保健委員よね」

まどか「え、えっと……」

ほむら「連れて行ってもらえる? 保健室」

まどか「え!? そ、そんな私達にはまだ早いよ!!」

ほむら「え?」

さやか「え?」

仁美「あらあら」

ほどか「はぁ……」

まどか「え? え?」

あれ私なにいって……。
ど、どうしよう……。なんだかすごい空気だよ……。
いったい誰のせいでこんなことに……。

52: 2012/07/21(土) 22:12:39.14
ほむら「……。鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保健委員よね」

まどか「え?」

さやか(あ、今の流して仕切りなおした)

ほむら「連れて行ってもらえる? 保健室」

まどか「あ、はい」

さやか(意外といいやつなのかな)

ほどか「あ、なら私もついて行ってもいいですか? 早めに校内のこととか知りたいですし」

ほどか「あなたも?」

ほどか「ぁ……。えと、だめ……、でしょうか……?」

ほむらちゃんの言葉にほどかちゃんはおどおどしながら同行してもいいか伺う。
なんだか、ほむらちゃんに対しては弱気……? なんでだろ……。

ほむら「……。私が許可を出すことでもないわ。そもそも私が拒否する資格はないもの
    案内してくれるのは鹿目まどかさんなのだから鹿目さんに聞くのが正しいんじゃないのかしら」

ほどか「ぁ、はい。そうですね……」






うわぁ、なんだかほむらちゃんもほどかちゃんに対して冷たいなぁ。
なんか、警戒してる感が半端ないよ。
ほどかちゃんもすっごく怖がってるし……。

まどか「え、えーと……。私は構わないよ! ほどかちゃんも一緒にいこ!」

私の言葉に安心したのかほどかちゃんはホッとした様子を見せる。
だけどほむらちゃんの

ほむら「よかったわ。私もあなたとは“じっくり”お話ししたかったし」

の言葉にまた萎縮してしまうのでした。

まどか(えぇ……。大丈夫なの? これ……)

不安すぎるよ……。

53: 2012/07/21(土) 22:13:41.59
まどか「……」

ほどか「……」

ほむら「……」

……。なんですか、この空気。

まどか(き、きまずい……)

ほどかちゃんとほむらちゃんを保健室に案内しているわけだけど、見事に会話がない。
会話がないだけならともかくほむらちゃんはほどかちゃんに対してなんだか、敵対心みたいなものを抱いていると私は感じた。

まどか(なんでだろう……。初対面のはずだよね?)

ほむらちゃんはほどかちゃんが自分の娘だとは知らないわけで、当然初対面のはず。

まどか(でも、明らかにほどかちゃんに対しては警戒しているんだよね)

他のクラスメイトに対しては無愛想ながらもちゃんと話してたし、敵愾心みたいなものは感じられなかった。
でも、ほどかちゃんに対してはなにか危険なものを見るような……。
自分が知らないものがそこに存在していることへの警戒というかそんなものが感じられた。

まどか(おかしいよね? 確かにほむらちゃんが未来からきたとしても……)

ここまで露骨に警戒する必要はないんじゃ……?



ほどかちゃんもほむらちゃんに警戒されていることからか元気がない。

まどか(ううん。これは警戒されていることよりも……)

せっかく会えた母親に嫌われているかもしれないという事実に悲しんでいるんじゃないか。

まどか(そうだよね……。ほどかちゃん、ほむらちゃんに会えるのすっごく楽しみにしてたもん)

実際にそういうことを本人の口から聞いたわけではないけど、昨日のほどかちゃんはなんだか落ち着きがなかった。
どこから持ってきたのかわからない制服を着ておかしくないか見ていたり、今朝だって、鏡の前で念入りに身支度をしていた。

まだあって間もないけどほどかちゃんがしっかりしている子だということは理解している。
礼儀作法はきっちりしてるし、浮かれたり無意味にはしゃいだりもこの子はしないんだろう。

タッちゃんの面倒も見てくれたりしてるし、パパのお手伝いも自分から進んでやってるみたいだったし……。
ママからどっちが親かわからない。なんて言われたっけ。

まどか(でもしょうがないよ。ほどかちゃん頭もいいし、気が利くし、私よりも大人だもん)

ママはそのことについて、難しい顔で

詢子『ほどかはどっちかというと根っこはまどかに似てると思うんだけどなー』

なんて言っていた。


まどか(私はほむらちゃんに似てると思うんだけどな)

実際にほむらちゃんに会ってみての感想だ。
この二人。本当にそっくり。
話し方や愛想とかは全然違うんだけど、ふとした時のしぐさや雰囲気なんかはうりふたつだ。

まどか(顔だってほむらちゃんにそっくりだしね)

この二人が一緒に歩いていると知らない人は姉妹と思うだろう。
現に教室から保健室に向かう間、他のクラスの子達からの注目をこの子たちは浴び続けている。

まどか(そりゃこんなにかわいい子たちが歩いてたら見ちゃうよ)

若干、少し……、大いに、自分との外見を比べたりをしてアンニュイな気持ちになりかける。
自分だって女の子だ。未来ではどうか知らないが、今は女の子だ。
そういう気持ちにだってなる。

でも、ふと、自分はこんなに世間の注目を集めるような子達の家族になれるのかと考える。
もっと言えば、この子達は私の……。

まどか(……私はバカなの? 今はそんな変なこと考えてる場合じゃ)

だいぶ脱線した気もするが、今やるべきことはほむらちゃんと話すこと。
そして、ほどかちゃんに対する敵対心を解くこと。

まどか(親子の仲が悪いなんて絶対おかしいもん)

54: 2012/07/21(土) 22:14:10.23
それにほどかちゃんの目的を考えればほむらちゃんとは仲良くしてほしいと思う。
せっかく奇跡のおかげで母と娘が会えたんだ。

まどか(ここは、パパがなんとかしないとね)

私の前を歩くほむらちゃん。
まぁ、さすがに未来からきただけあって、保健室の場所は知ってるみたいだね。

ほどかちゃんに私に任せてほしいというアイコンタクトを送り、私は話をするためにほむらちゃんの傍に近寄る。

まどか「えっと、ほむらちゃん」

ほむら「! ……。なにかしら」

ん? 今の表情はなんだろう? まぁいいや。

まどか「その、変わった名前だよね。あっ、変な意味じゃなくて、なんかさ、燃え上がれー、って感じでかっこいいなって」

とりあえず名前から褒めてみる。かっこいいと思ったのは本当のことだし。




ほむら「そ、そうかしら///」

あれ? 顔が赤い? もしかして……。

まどか「照れてる?」

ほむら「て、照れてなんかないわ」

まどか「えー、照れてるよね? 顔とかちょっと赤くなって……」

ほむら「照れてないわ!」

いやいや、照れてるよね。表情にあんまり変化はないけど。
うーん……。もしかしてほむらちゃんって……。

まどか「……。ほむらちゃんってさ、可愛いよね」

本心からそう思う。



ほどほむ「!」

ほむら「な、急になにを言いだすの、鹿目さん///」

おぉ、慌ててる。
なんだろ、なんか面白い。

まどか「最初はクールでかっこいい子だなって思ったけど、今の表情とか見てたらなんだかとってもかわいいなーって」

ほむら「だ、だから私は……」

必氏でごまかそうとするほむらちゃんかわいいなー。

まどか「ふふ。隠さなくてもいいのに」

ほむら「隠してなんか///」

そういって俯くほむらちゃん。
でも、俯いていてもわかる程に顔はもはや真っ赤だ。

55: 2012/07/21(土) 22:15:22.65
まどか「私は好きだよ? ほむらちゃんの照れた顔」

可愛いし、もっと見てたいなって思うくらいに。

ほむら「え!?」

驚いて顔をこっちに向けるほむらちゃん。そんなほむらちゃんに近づいて。

まどか「だからさ、もっとよく見せてよその可愛いお顔を」

ほむら「ひう/// あ、あの、その、鹿目さん……」

まどか「違うよ」

ほむら「え?」

まどか「まどかって呼んで?」


笑顔でほむらちゃんにそう告げる。
これから長い付き合いになるんだし、どうせなら名前で呼んでほしい。

ほむら「!!!!!!」

ボンッっていう音がしたかと思うとほむらちゃんの顔がこれまで以上に真っ赤になる。

ほどか「うわぁ……」

ほむら「あ、あああああああの! わ、私一人で保健室行きますね! そ、それじゃ!!」

そう言い残すとダッシュで保健室に向かうほむらちゃん。
そして、それを呆然と見送る私。

まどか「……」

あれ? 私やらかした?



ほどか「なに、娘の前で母親口説いてるんですか」

ほどかちゃんが心底呆れたようなような顔でこっちを見てくる。
やめてその顔! なんだか心に響くから!

ほどか「どうするんですか、お母さん走っていっちゃいましたよ」

まどか「あはは、どうしよっか」

これじゃあ話ができない。
どうしてこんなことに……。

ほどか「はぁ、本当にお父さんはいつの時代もお父さんなんですね」

まどか「えー……。なにそれ」

ほどか「いいんです。今はお母さんともう一度話すことを考えないと……」

まどか「そ、そうだね。保健室まで追いかける?」



ほどか「今お父さんが行ってもまた逃げられるだけですよ」

まどか「え? ……もしかして私、嫌われちゃった?」

少し馴れ馴れしすぎただろうか。でも、あのほむらちゃんを見ているとつい……。

ほどか「嫌われてることはないと思いますよ。むしろ逆……」

まどか「逆?」

どういう意味だろう?

ほどか「……はぁ。お母さん可哀想……。お父さんがこんなんじゃ苦労するよね……」

そういって私の方を向いて溜め息をつくほどかちゃん。
はは、傷つくね。

まどか「て、てぃひひ」

うん。笑ってごまかそう。このことについては余計なことを言ったら怒られそうだ。

56: 2012/07/21(土) 22:15:49.96
まどか「で、でもどうしよう? ほむらちゃんといつ話せば……」

こうなると話しにくい。このタイミングを逃したのは痛かったかな。

ほどか「うーん……。それについては大丈夫だと思います」

まどか「え? なんで?」

ほどか「保健室の場所を知っているのにわざわざお父さんに案内を頼んだことからも、
    なにか話があったんでしょうし、お母さんのほうからもう一度接触してくると思いますよ」

まどか「あ、そっか」

ほどか「今度は暴走しないでくださいね?」

別に暴走したつもりはないんだけどなー。

まどか「う、うん。わかった」

まぁ、一応頷いておこう。
さて、それはそれとして。



まどか「ほどかちゃん」

ほどか「はい? なんですか」

まどか「あんまり気にすることないからね?」

ほどか「なにをですか?」

まどか「ほむらちゃんがほどかちゃんに対してなにかあるのは間違いないと思う。
    それがなんなのかはわからないけど、ほむらちゃんの態度が冷たくっても気にしなくていいんだよ」

ほどか「……」

まどか「まぁでも、気にするなっていうのは無理があるよね。
    でも大丈夫。私がなんとかするから。ほむらちゃんとほどかちゃんが仲良くできるように、私がなんとかするから
    だから安心して? それに悲しいのを隠さなくてもいいんだよ?」

ほどか「別に、悲しくなんか……」

確かに表情には出ていない。でもわかる。
この子は。そういったことは顔に出さない。
自分の辛さや悲しみは絶対に人には見せない。悟られないようにする。




まどか(本当にそっくりだね)

ほむらちゃんもそうなんだろう。
あの照れて逃げて行ったほむらちゃんが本当のほむらちゃんなんじゃないかと思う。

まどか「とにかく私に任せて! それでほむらちゃんとほどかちゃんが仲良くなれてワルプルギスとか全部の問題が片付いたら一緒にお出かけしようよ」

この提案はなかなかいいと思う。
ほどかちゃんは母親、つまりほむらちゃんとの思い出は覚えている範囲ではないはずだ。
思い出づくりの意味を込めてもほどかちゃんの寂しさを埋める意味でもこの提案は我ながらいいと思う。

ほどか「お出かけ……」

まどか「うん。家族でお出かけ。そうなるように私頑張るから。だから、ね?」

ほどかちゃんの傍に寄り、そっと彼女を抱きしめる。

まどか「だから悲しいときや辛いときは私に頼ってくれていいんだよ」

頼ってほしい。なんにもできない私だけれど、一緒にいることくらいはできるから、その悲しさを、辛さを、少しでも
私が引き受けることはできるから。

57: 2012/07/21(土) 22:17:13.46
ほどか「……」

まどか「……」

穏やかな時が流れる。
とても心地よくてなんだか安心する。
なんだろう。今初めて家族としての時間を過ごせているって気がするな。
ふふ。ほどかちゃんも私の腕の中で幸せを感じてくれているんだろうな。

まどか(てぃひひ)

ほどか「お父さん」

腕の中にいるほどかちゃんから声があがる。
なんだろう? お礼とか? もしくは、パパ大好き! とか?

まどか(ウェッヒッヒ)

ほどか「いい加減離してください。セクハラです」

まどか「え」

ほどか「あと、加齢臭が……」

まどか「しないよ!? そんなの!!」

花の乙女になんてことを! 思わぬ言葉にほどかちゃんの拘束を止め自分の臭いを嗅ぐ。

まどか「臭いってなに!? なんかくさそうだよ!」

って臭くないよ! いい匂いだよ! ちゃんとお風呂にも毎日入ってるもん!

ほどか「冗談ですよ。お父さんはまだ臭くないです」

まどか「まだ!? まだってなに!?」

将来的にはあるの!? やだよ!!

ほどか「ふふふ。冗談ですよ冗談」

くすくす笑いながら冗談だというほどかちゃん。
なにが冗談だというのか、将来も臭くないということか。もしくは私が臭くないということが冗談なのか……。

58: 2012/07/21(土) 22:17:41.08
まどか「うぅ……」

ほどか「もぅ……。お父さんはいい匂いですよ? だからそんなに落ち込まないでください」

いつの間にか慰める側が変わっているような……。
どうしてこうなった。

ほどか「……まさか、お父さんに慰められるとは思っていませんでした」

ほどかちゃんは優しく微笑んでいる。

ほどか「まぁでもおかげでだいぶ楽になりました。ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げるほどかちゃん。

まどか「あ、いえこちらこそ」

思わず私も下げてしまう。

ほどか「……楽しみにしていますからね?」

まどか「え?」

ほどか「お・で・か・け、ですよ」

まどか「あ、う、うん! 任せといて!」

頼られているんだろうなと思った私は期待に応えるという意味を込めてVサインを送る。
ほどかちゃんはそれに満足したのか笑みを浮かべながら

ほどか「本当に楽しみ……。本当に」

と、呟くのでした。

まどか「絶対行こうね! どこがいいかなぁ。ピクニックとか? 遊園地もいいよねー」

ほどかちゃんが楽しみにしてくれていると、そう思ったらなんだか私もとっても楽しみになってきちゃうな。

ほどか「どこでもいいですよ。みんなが一緒なら」

まどか「もー。ほどかちゃんがいきたいとこがいいの!」

じゃないと意味ないもん。ほどかちゃんの為に行くんだから!

ほどか「それよりも、今は目前のことに集中しましょう。失敗したらお出かけもなにもないんですよ?」

うっ……。冷静だなほどかちゃん……。
まぁ、その通りなんだけどね。

まどか「うん。そうだよね」

ほどか「頑張りましょう。私達の未来のために」

まどか「うん! がんばろー!」

ニコニコしながら話すほどかちゃんを見て私は決意を新たにするのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――


59: 2012/07/21(土) 22:18:06.71
ぐっどいぶにんぐ! 鹿目まどかです!
あれからほむらちゃんとコンタクトをとることに成功した私達は親睦を深める意味も込めて放課後に喫茶店で話をしようと誘いました。、
ですが、ほむらちゃんにはやることがあるからと断られ、泣く泣く引き下がったのでした。

まどか(なぜか私に話しかけてくる時のほむらちゃんの顔が赤かったことが気になったけど……)

もしかして体調でも悪いのでしょうか? 少し心配です。

で、今はお昼休みなわけですが、この間に巴マミさんと協力するために三年生の教室に来ているわけです。

モブ4「マミ様ー! なにやら話があるという子等が来ておりますがー!」

そう呼ばれこっちにくる人。
少しタレ目で綺麗な髪を縦にロールした、美人な女の人。
落ち着いた雰囲気を放ち、大人の女性を感じさせる物腰は一つしか違わないはずの年齢を忘れさせ、私は思わずその人に目を奪われてしまうのでした。
しかも、いやがおうにも目につく自己主張した胸。

なぜ一つしか違わないのにこうも差がでるんでしょうか?
世の中って理不尽です。




マミ「私になにか御用かしら?」

小首を傾げて用を問う巨乳のマミさん。
こういう姿も可愛らしく世にいる男性はこの姿に騙されるのでしょう。
男の人は本当にバカです。

ほどか「えーと……。ここでは言い難いのですけど……。このことで、といったらいいでしょうか」

ほどかちゃんが自分がつけている指輪をマミさんに見せる。
するとそれを見たマミさんの顔は真剣なものに変わり、ほどかちゃんの顔をじっと見つめる。

マミ「……」

少し考えるそぶりを見せるマミさん。
そしてあまり時間をかけずに

マミ「わかったわ。なら屋上にいきましょうか」

と、切り出した。

61: 2012/07/21(土) 22:18:35.11
―― 屋上 ――

マミ「さて、聞かせてもらえるかしら。魔法少女である私になんの用があるのかを」

屋上についた私達。
自己紹介等は途中で済ませ、さっそく話を始めるわけだけど、なにやら剣呑な様子。
っといってもマミさんが一方的に警戒をしているみたいなのだけれど……。

まどか(なんでこんなに警戒されてるんだろう?)

私のそんな疑問に答えるかのようにほどかちゃんがマミさんに答える。

ほどか「最初にいっておくことがあります。
    私達は、と言っても魔法少女は私だけなのですが、あなたと争う気はありません」

マミ「……簡単に信じられるとでも?」

ほどか「魔法少女の間には縄張りがあるのは知っています。そしてそれを守るために争うことも」

まどか「!?」

そ、そんなこと知らないよ!?
魔法少女同士で争うなんて……。
魔法少女の敵は魔女じゃないの!?



ほどか「信じてくださいといっても無理があるかもしれません。ですが私からは信じてくださいとしかいえません。
    ですが、信じてもらえるように私なりに行動はするつもりです」

マミ「……。具体的には?」

ほどか「そうですね……。まずこれを」

そういってほどかちゃんはなにかを取り出す。

マミ「これは……」

ほどか「グリーフシードです。これを差し上げます」

手に持った物を、マミさんに渡すほどかちゃん。
グリーフシードってあれだよね? 魔女の卵でソウルジェムの穢れを取るっていう。

マミ「いいの? あなたも魔法少女ならグリーフシードの重要性を……」

ほどか「わかっています。これはあくまであなたと良い関係を築きたいという具体的な証です」

マミ「……」

自分の手にあるグリーフシードを眺めじっと考え込むマミさん。






ほどか「ですが、こんなものであなたの信頼を得ようなどとは思っていません」

マミ「……?」

ほどか「私がなぜあなたとの友好を築きたいかあなたを信頼しているか、それをお話しします」

まどか(あれ? なんだか私空気だよ?)

自身の存在意義について悩みだす私。

ほどか「私があなたを信頼している理由は、あなたの魔法少女としての行動の信念にあります」

マミ「……」

ほどか「多くの魔法少女が自身のためにしか魔女を狩らず、人を傷つける可能性がある使い魔を見逃し魔女に育つまで待つ。
    確かに本来ならばそれが普通でしょう。グリーフシードは魔女しか落とさないですし……。
    だから、自分の為に力を使い、自分の為に魔女を狩る。そして自分の縄張りを侵略しよう者がいるのならそれを葬る。
    それが正しく賢い生き方なのかもしれません」

まどか(えぇ!? 魔法少女ってそんなにシビアな世界なの!?)
    
私が想像してたのと違う……。
なんかもっと、日曜の朝にやってる感じとか、可愛いマスコットキャラを従えてカードを封印する為に日々奮闘する感じな、
そんなファンシーな世界を思い描いていたよ。

62: 2012/07/21(土) 22:19:02.93
ほどか「ですが、そんな中あなたは、その力を他人の為に使い大勢の人を救ってきた。
    グリーフシードを落とさない使い魔ですらも人に危害を加えることを恐れ狩っていますよね。
    一般的な魔法少女ならばあなたのやり方は馬鹿みたいに甘く、理解できないでしょう」

マミ「……」

ほどか「でも、そんな甘いあなただからこそ、馬鹿なあなただからこそ、私はあなたを信じるんです。
    そしてあなたの力になりたいと思うんです。
    他の魔法少女に理解されなくても自分の信念、誇りの為に一人きりで戦うあなたに協力したいんです。
    そして、私を助けてほしい……」

マミ「……」

ほどか「これが私があなたとの協力関係を望む理由です」

まどか「ほどかちゃん……」

ほどか「お願いします。私と協力してもらえませんか」

そう言ってほどかちゃんは頭を下げる。
私も同じように頭を下げる。

まどか「お、お願いします! ほどかちゃんの力になってあげてください!」




マミ「……」

どれくらい時間が経っただろう、いや、実際にはそこまでの時間が経過していることはないんだけど
待ってる時間というものは凄く長く感じるもので……。
私は頭を下げながらマミさんがどう答えてくれるかを戦々恐々として待っていた。

マミ「……これは返すわね」

マミさんから帰ってきた言葉は、拒絶を示すもの。

ほどか「……」

ほどかちゃんの手にグリーフシードが戻る。

まどか「そ、そんな! どうして!」

断られてしまった。その事実に私はパニックになり慌ててマミさんに理由を問い詰める。

まどか「だって今の話を聞く限りではマミさんは正義の味方で人の為に戦ってるんですよね!?
    なら同じような理由で戦うほどかちゃんとは仲良くできるはずじゃ!」

ほどか「まどかちゃん」

慌てる私をほどかちゃんは手で静止する。




まどか「ほどかちゃん……」

そんな私達を見つめていたマミさんがおもむろに口を開く。

マミ「勘違いしないで。協力しないわけではないわ」

まどか「え?」

マミさんの言葉が理解できずぽかん、っと口を開いてしまう。

マミ「なぜ、あなたがここまで私のことについて知っているのかはわからないわ。
   どう考えてもあなたとは初対面なはずだし」

でも、っと付け加え

マミ「あなたが私の助けを必要としているのはわかるわ。
   だから、協力してあげる」

そう言ってマミさんは少し考え、

マミ「うーん……。なんか違うわね……。
   そう、そうね、お互いに助け合いましょう」

そう言い直しほどかちゃんに手を差し出すのでした。

63: 2012/07/21(土) 22:19:44.79
ほどか「あ、ありがとうございます!」

その手を握り、感謝の言葉を述べるほどかちゃんの顔はとても嬉しそうで、
そしてそんな彼女の顔を見た私もとても嬉しくて、私はおもわずほどかちゃんに飛びついてしまうのでした。

まどか「よかったね! ほどかちゃん! マミさん本当にありがとうございます!」

ほどか「きゃ!? ちょっとパ、まどかちゃん! 苦しいよ!」

私の抱擁を嫌がるほどかちゃん。だけど私はそんなことにはおかまいなしで抱き着く力を強める。
だってすっごく嬉しいんだもん!

まどか「ふふふー。本当は嬉しいくせにー。ほどかちゃんは可愛いなー」

ほどか「ちょ、ちょっとまどかちゃん気持ち悪い! 本当に離して!!」

まどか「やーだよ。可愛いほどかちゃんが悪いんだもん!」

ほどか「なにそれ!? もう! 怒るよ!?」

マミ「あらあら。あなた達って仲がいいのね」

私達の仲睦まじい様子を見て微笑を浮かべるマミさん。
この人の笑顔って凄いなー……。包容力がハンパない。





ほどか「いえ、そんなに仲はよくないです」

まどか「ひどいよほどかちゃん!?」

私はこんなにあなたの事を想っているのに!
あんまりの仕打ちに打ちひしがれる。

まどか「ひどいよ……。こんなのってあんまりだよ……」

ほどか「あーもう。拗ねないでください」

まどか「だって、ほどかちゃんは私のことが嫌いなんでしょ?」

うるうると瞳を潤ませほどかちゃんを見る。
そんな私にほどかちゃんは溜め息を吐きながら、

ほどか「もぅ……。嫌いなら一緒にいたりはしませんよ」

っと嬉しいことをいってくれるじゃありませんか!



まどか「ほどかちゃーん!! 大好きだよー!!」

ほどか「だから抱き着かないでくださいよー!」

マミ「あらあら」

うふふと笑うマミさん。
そうです。マミさんが仲間になってくれたのです。
なんだかとっても大人で優しくて、頼りになりそうなマミさんが仲間に……。
これから先、まだまだ不安なことはたくさんあるけれど、ほどかちゃんとマミさんが協力すればどんな困難にも負けない。
私は強くそう思ってしまうのでした。

マミ(ふふ。本当に仲がいいわね。
   ……。鹿目ほどかさん、この子がなにを考えているのかはよくわからないところがあるけど
   鹿目まどかさん。この子が懐いてる姿を見る限りでは悪い子じゃないっていうのはわかるわ。
   その事もこの子をを信じる一つの理由)

マミ(……気になるのは……
   この子が助けてほしいと言ってきた時のあの目……。
   あれは……)

マミ(まぁ、私の気のせいね。
   ふふ。でも、あなたの力になりたい。っか……
   同性ながら少しドキッっとしたわ。この子凄く美人だし、あんなこといわれたら、ね?)

64: 2012/07/21(土) 22:20:10.25
―― 屋上付近 時計塔 ――


ほむら「鹿目ほどか、あなたはいったい何者なの?」

今までのループには存在しなかったはずの人間。
調べる必要があると考え、尾行した先には魔法少女である巴マミと現時点ではまだ魔法少女ではない鹿目まどかがいた。
ここだけを見ても異様だと感じる。今までのループにおいても巴マミとまどかがこの時点で接触することはなかったはずだ。
そもそも、巴マミとまどかが接触するにはインキュベーターの勧誘。もしくは魔女空間に入り込んでしまったまどかとさやかの救出。
その二つの内どれか、もしくは両方の条件が必要なはず――。

ほむら「まさか、こんなにも早くまどかが魔法少女と接触することになるなんて……」

できればまどかと魔法少女との接触は避けたかった。
今回のループではまどかが出会うであろう魔女を先回りし撃退。
そしてインキュベーターとの接触を断つように立ち回ろう、と考えた矢先の出来事。

ほむら「いえ、接触するだけならば問題ないわ」

その方法はどの道無理があることは理解していた。
ただ今の自分には少しでも可能性があるのならばそれに賭け、失敗ならばそれを次に生かすしかないのだ。

ほむら「次、だなんて……。私はどれだけの罪を犯せばいいのかしら」

次に生かす。それはつまり今を頃すことである。
それは比喩的な意味でなく、文字通り、現実的な事象を持ち現れる。





ほむら「私はあと、何人のまどかを――」

自身の感情に気づき、それを無理やり払う。



――彼女自身は気づいていない。彼女が頃しているものは彼女の大切な人だけではなく彼女自身でもあることに。
そして、その結果がなにをもたらすのかについても。
もし、彼女がそれに気づくことができれば、この無限に続くループをある意味においては終わらせることができるのかもしれない――。




ほむら「……。次のことより今ね。鹿目ほどか……」

今まで存在しえなかった。イレギュラー。
しかも一部始終を見聞きする限りでは彼女も魔法少女だとわかった。

65: 2012/07/21(土) 22:20:37.41
ほむら「美国織莉子のようにまどかを頃すことが目的というわけではなさそうだけど……」

仲のよさそうな二人の様子を見る限り、あの二人は信頼を築いていることが窺える。
ならば、あのイレギュラーがまどかに対して危険な事をするとは考えにくいか……?
だが、魔法少女が傍にいるということは常に爆弾を抱えて行動しているようなもの。

ほむら「そのくらいのことはあの子ならばわかりそうなものだけど……」

現時点ではあのイレギュラーの考えは読めない。
しかし現段階ではあのイレギュラーがまどかに危害を加えることはないだろう。

だが、もし――

ほむら「あなたがまどかにとって有害な存在だとわかれば、その時は――」


――私があなたを頃すわ。


そう呟き、暁美ほむらはその場から姿を消した。

去る際、仲睦まじくじゃれ合う二人の愛らしい少女に、片方には母が子に向けるような慈愛の眼差しを送り。
もう片方には、本来ならば自身がいるべきはずである場所を奪った憎き敵を見るように、
そして、彼女の傍に自分が存在する等、もはや叶うはずのない未来だと考え、最近よく訪れるようになった感情をまた振り払うのであった。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

66: 2012/07/21(土) 22:22:25.66
ほむらとまどか

      ―― 保健室 ――
 
ほむら(な、なんなのよあのまどかは!)

まどか『だからさ、もっとよく見せてよその可愛いお顔を』

ほむら(///)

ほむら「はっ」

ほむら(恥ずかしがってる場合じゃないわ……。私にはやるべきことが……!)

まどか『まどかって呼んで?』

ほむら「」ボン




保険医「暁美さん、だいじょう、って顔がすごい赤いわよ!? どうしたの!?」

ほむら「あ、だ、大丈夫です! なんでもありません!」

保険医「いや、大丈夫って……。とでも大丈夫そうには見えないわよ……。早退したほうが……」

ほむら「本当に大丈夫です! お世話になりました!」

保険医「あ。ちょっと暁美さん! 暁美さん!! 行っちゃった……」

保険医「……。あ、なるほど。あれは……恋ね」

ほむら(マドカー! マドカー!)


67: 2012/07/21(土) 22:22:52.71
グッドアフターヌーン! 鹿目まどかです!
さてさて、無事! マミさんを仲間にした私達は、放課後にさやかちゃんに誘われてCDショップに来ているのでした。

まどか「さやかちゃんも頑張るねー」

さやかちゃんの目的は幼馴染である上条君のためにクラシックのCDをプレゼントすること。
その上条君は事故で入院しているのでさやかちゃんはわざわざ病院まで行くのです。

まどか「さやかちゃんもなんだかんだで可愛いよね」

好きな男の子のために頑張ってるんだもん。

ほどか「そうですね」

ほどか(さやかさんは恭介さんのことが好きだったんだ。あれ? じゃあなんで杏子さんと……?)

ほどかちゃんが頭に疑問符を浮かべて、なにかを考え込んでいる。
なんだろう? なにか気になることでもあるのかな?






まどか「あ、そうだ。ほどかちゃんは未来から来たんだよね?」

ほどか「はい。そうですよ」

まどか「じゃあじゃあ、未来でさやかちゃんと上条君がどうなったのかとか教えてよ」

さやかちゃんの親友としてはこのことについては聞いておきたい。
いや、決して下世話な下心からとかではなく純粋に親友の恋路が気になるのであって、
それを知って今後のさやかちゃんに対して心理的なアドバンテージを取りたいとか頑張るさやかちゃんを見てニヤニヤしたいとかではなく……。

まぁ気になるよね?

まどか「ねぇねぇ、どうなの?」

ほどか「……」

じーっと私を見つめるほどかちゃん。
やだ、そんなに可愛い瞳で見ないで、照れちゃう///





ほどか「お父さんって……。サイテーですね」

まどか「はぅあ!!」

サイテー。
なんと心苦しい響きでしょうか。
友達どうしで言われるのならまだしも、実の娘から言われるとこんなにも辛いとは……。

まどか(あれ、でもちょっと嬉しかったかも)

ほどかちゃんがじとーっとした目で詰ってきた瞬間、凄い苦しみとほんの一握りの快感が……。

まどか(いやいや、なに考えてるの私)

ぶんぶんと首を振りなにやらイケナイ考えを追いやる私。
そんな私に対してほどかちゃんはおかしな人を見るような目をし、話を続けます。

68: 2012/07/21(土) 22:23:20.28
ほどか「確かに私は未来のことを知っていますよ。ですがそれはあくまで一つの可能性としての未来です
    本来、未来というものは各個人に平等に与えられたものなんです。自分自身の考えと行動の結果がその人の未来となって得られるんです」

そこで一呼吸置いて、だからといい。

ほどか「ですからさやかさんの今の未来はさやかさんが自分自身で掴み取るまではまだ訪れていません。
    可能性の一つとして私の知っている未来を教えることはできますがそれはあくまで数ある未来の中の一つです。
    そんなことを知ることに意味がありますか?」

まどか「うぅ……」

なんだかすごく怒られてる……。でもでも、やっぱり知りたいよ!

まどか「じゃあその可能性の未来でいいから教えてほしいなー。なんて」

その言葉にほどかちゃんは溜め息を吐く。
あぅ、なんか私呆れられてばかりな気が……。

ほどか「私がお父さんをサイテーといったのはですね。
    お父さんが下世話な下心でさやかさんの未来を知ろうとしているからですよ?」

まどか「ぎくぅ!!」





ほどか「そんな下種な理由で人の恋路をからかおうなんて馬に蹴られますよ?」

なにそれ。でもなんとなくこれ以上踏み込んだらほどかちゃんに愛想を尽かされそうな気がするからここは引き下がろう。

まどか「ごめんなさい」

ほどか「もぅ……。ダメですよ?」

メッと私に怒るほどかちゃん。
正直、これはこれで、いいよね。

まどか(てぃひひ)

ほどか(……第一。結果を認めずに過去に来た私なんかの未来に得るものなんて……)

ん? なんかほどかちゃん辛そう? 見た目に変化はないけど最近この子の感情とかがなんとなくわかるようになってきた私。

まどか「……ほーどかちゃん」

そういって抱き着く。

69: 2012/07/21(土) 22:23:46.97
ほどか「わ! な、なんですか。今日のお父さんはセクハラが多いですよ」

口では嫌がってるけど身体は正直なもので、追い払おうとはしないほどかちゃん。

まどか(ホントに嫌なら強引に払うよね。そもそも魔法少女のほどかちゃんのほうが力は強いんだし)

今日の体育の授業でもそれはわかった。
だって色んな種目でことごとく県内記録を塗り替えるほどかちゃんを見たら力では敵わないって思うよ。

まどか(まぁ頭でも敵わないんだけど)

ちなみに記録はほむらちゃんの次にほどかちゃんが並ぶって感じでどの種目もほむらちゃんのほうが凄かった。

まどか(でもあれはほどかちゃんが遠慮してる風にも見えたなー)

ほむらちゃんに対してはどこか引いた態度があるほどかちゃん。

まどか(やっぱり時間が必要だよね)

二人が仲良くできるように頑張るけど、結局は二人次第だもんね。
押し付けになりすぎると余計拗れたりするし。でも助けがないと二人の仲が進展しないのも事実だし。

まどか(その辺は私がうまく調整しないとね)




そんな風にこれからについて考えていると私の腕の中でほどかちゃんが抗議をあげる。

ほどか「もー……。いい加減に離してくださいよ」

さすがに抱き着きすぎたかな。
ほどかちゃん自慢のツインテールもなんだかぐったりしてるような……。

まどか「ごめんごめん。ね。あっちで一緒になにか聴こうよ」

ほどかちゃんの手を引っ張り視聴コーナーに連れて行く。

ほどか「……お父さん元気すぎです……」

はぁっと溜め息を吐きながらもほどかちゃんは私に従う。
なんだかんだで素直だね。この子は。

まどか(ほむらちゃんとも、いつかこんな風にできたらいいのにな)

なんだか幸せな、とってもかけがえのないこの日常をいつかほむらちゃんとも……。
ううん。必ず一緒に感じようと。私は自分の大切な存在の温もりを手に感じつつ願うのでした。

70: 2012/07/21(土) 22:24:13.80
まどか「♪ ~♪」

『――――まどか』

まどか「……?」

『――――まどか! 助けて!』

まどか(誰? 誰なの?)

急にどこかから声が聞こえだす。
ほどかちゃんが呼んだのかと隣を見るも歌に集中しているようで私に呼びかけたような気配はない。

『――――まどか! 僕を助けて!』

まどか「!」

ほどか「……? どうかしました?」

私の異様な気配に気づいたのかほどかちゃんが声をかけてくれる。





まどか「声が、聞こえるの……」

ほどか「……」

私に助けを求める声が聞こえた、そう話すとほどかちゃんは少し思案し、

ほどか「たぶん、キュゥべぇですね」

と、私の疑問に答える。

まどか「キュゥべぇって魔法少女に契約を持ちかけるっていう……」

ほどか「はい。キュゥべぇが助けを求めているんですか?」

まどか「うん……。そうみたい」

ほどか「それはどこからか、わかりますか?」

真剣な表情のほどかちゃん。
助けを求められたことといいなにやら悪いことが起こっている。そんな気がした。





まどか「え、っと……。上の階からだと思う」

ほどか「上……。確か今は工事中でしたね」

そういうと歩き出すほどかちゃん。

まどか「ど、どこにいくの!?」

ほどか「キュゥべぇが危機に陥っているというのなら助けないと」

まどか「え、で、でも」

危険じゃないか。そう言おうとするのがわかったのかほどかちゃんは笑顔で

ほどか「大丈夫ですよ。だって私は魔法少女なんですよ?」

そう言うのでした。


71: 2012/07/21(土) 22:24:40.57
まどか「そ、そうだけど」

納得のいかない私は、それでもほどかちゃんの足を止めようと考える。

ほどか「もー。大丈夫ですよ。こう見えて私、とっても強いんですよ?」

いつもの調子でそういうほどかちゃん。だけど心配なのは心配で、一人で危険な場所に行くなんていうのは
なんだか私には許せなくて。
だから……。

まどか「私もいくよ」

そう伝える。

ほどか「ダメですよ。魔女の気配はしませんけど、危険な状況であることには変わらないですし」

私の申し出を拒否するほどかちゃん。でも、そんなことは百も承知で。

まどか「危険なのはほどかちゃんも変わりないよね?」

ほどか「私は魔法少女です」




まどか「でも、だよ。魔法少女でも戦いで命を落とすことはある。マミさんが言ってたよね」

屋上で私達のこと。ほどかちゃんが何者でなにが目的なのか。そういったことを話した時にマミさんが言っていた。

魔法少女の戦いは過酷で一瞬でも気を抜けば命を落とすこともある。っと。

これは魔法少女になったばかりのほどかちゃんに向けての忠告でもあり、親である私に対しての覚悟を問う言葉でした。
事実、私はそんなことを一切考えてはいなかったのです。なので当然覚悟なんて言うものはありません。

ほどかちゃんが氏ぬ。

そのことは私には受け入れがたく、絶対に容認できないことでした。
しかし、普通に考えれば戦いの中で命を落とすなんていうことはありえる話で、覚悟しておかなければいけないこと。
ほどかちゃんがあまりにも戦いのことに関して普通だったので、そんな当たり前のことを私は想像もしていなかったのです。

まどか(ホント。嫌になるよね、そういう自分の甘いところは)

今、ほどかちゃんが一人で危険な場所に出向こうとしている。
私なんかがついていっても邪魔になるだけかもしれない。
いや、足を引っ張るだけだろう。





まどか(でも、本当にこの子が危ないときは――)

弾除けの盾になってでも守り抜く。

そんなことを言ったらきっと彼女はすごく怒るだろう。

まどか(だから私のこの覚悟は言わないよ)

言ったら連れて行ってもらえないだろうしね。
だから私は、ただじっと彼女の瞳を見つめる。
絶対にあなたを一人ではいかせないと決意を持って。

ほどか「……はぁ、しょうがないですね……」

折れたのはやはりほどかちゃん。
この子は押しに弱いのだ。

まどか(てぃっひっひ。勝った)

73: 2012/07/21(土) 22:25:01.68
ほどか「一つ、絶対に私から離れない。二つ、勝手な行動はとらない。三つ、危なくなったら私を置いてでも逃げる」

三本指を立てて条件を一つずつ述べていくほどかちゃん。そして

ほどか「守れますか?」

っと締めくくる。

まどか「守るよ。絶対」

二と三以外はね。

心で一部を拒否しながら頷く。
嘘にはならないよ。だって、全部守るとは言ってないもん。
ほどかちゃんとは離れないっていうのは守るって私は誓ったんだもん。
しっかり確認をとらないほどかちゃんが悪いんだよ?

ほどか「はぁ……。おとうさんはこうなったら頑固なんだもん……」

なにやらブツブツと呟くほどかちゃん。
その様子から渋々ながらも納得してくれたようだ。

いぇーいwwwwまどかちゃん大勝利wwww

まどか(てぃっひっひ。さすがは私)



ほどか「じゃあ行きますよ。絶対に離れないで下さいね?」

まどか「らじゃー!」

ほどか「もぅ! 絶対ですからね!?」

まどか「わかってるわかってる」

心配するほどかちゃんに手をひらひらさせ応える。
さてさて、気を引き締めないとね。

まどか(ほどかちゃんの危険は、私が全部取り払うんだから)

そう、なにが相手でも――。




さやか「ん? まどかとほどか、どこにいくんだろ……?」

74: 2012/07/21(土) 22:25:27.91
―― 工事中のフロア ――


QB「はっはっ――」

何者かはわからない。
だけど今、僕は攻撃を受けている。
この力は魔法少女のものだ。

なら僕は今、魔法少女から攻撃を受けていることになる。

QB「はっはっは――」

何度目かになる攻撃を避け、ただひたすら逃げる。
本当はもっと簡単に逃げることもできる。が、そうもいかない。

QB「はっはっ――」

なぜならこの危機は、っといってもこの個体が破壊されたところで別の個体があるのだから危機とも呼べないけれど、
なんにせよこの危機はチャンスだ。

QB『まどか! まどか!』

鹿目まどか。今、僕が呼びかける少女。
この少女は途方もない程の力、魔法少女としての才能を持っている。



QB『助けて! まどか!』

テレパシーを用いまどかに救難信号を送り続ける。

普通ならば気のせいで済ませられるか怖がって逃げるだろう。
しかし、鹿目まどかはそのどちらでもない。
彼女は自身に求められる助けの声を拒んだりはしない。

QB「っく!」

徐々に苛烈を極める攻撃をギリギリのところでかわしながら、僕は鹿目まどかに呼びかけ続ける。
僕の、僕達の目的を大幅に進行させるために。

QB「っ!!」

ついに避けきれず攻撃に当たってしまう。
だが、これでいい。

鹿目まどかはもう僕の傍にいる。この状態の僕を発見すれば彼女はきっと僕にたいして同情を抱くだろう。
僕達にはわからないモノだが、僕達に有利に働くのならばそれを利用しない手はない。

しかし、気になるのは鹿目まどかと共にあるもう一人の存在。
どうやら彼女も魔法少女のようであるが、いったい彼女は何者なんだ。

少しずつ薄れていく意識の中で僕はイレギュラーである。二人の魔法少女の事について考え続けた。

75: 2012/07/21(土) 22:25:54.36
まどか「ほどかちゃん! あれ!」

キュゥべぇのことを助けに工事中のフロアにきた私達は、キュゥべぇであろうと思われる生物を発見する。

まどか「ひどい……」

傷だらけで横たわるキュゥべぇを抱きかかえ、どうしようかと考える。
とにかく治療をしないと!
動物病院でいいのかな!? それとも110番!?

ほどか「落ち着いてください。この状態なら私の魔法で治せます」

まどか「魔法ってそんなこともできるの!? 便利!」

魔法の便利さに舌を巻く私。
こんなに便利なら一家に一人魔法少女だね!

ほどか「まぁ私の場合は治すというより戻すですが」

そういって魔法少女の姿になるほどかちゃん。
やっぱり何度見ても可愛いなー。ミニスカートとかかなり似合ってるし。
でも、なにかを思い出すんだよね。ほどかちゃんの衣装って。

ほどかちゃんがキュゥべぇを治そうと近づいた瞬間、ジャラジャラと鎖の音がしたかと思うと
あるはずのない、いや、あってほしくない姿が私達の目の前に現れるのでした。



まどか「ほむらちゃん……」

ほどか「……」

ほむら「そいつから離れて」

彼女の第一声はそれ。
だけど言葉としての意味は理解できても状況としての意味は理解できない。

まどか「だってこの子、ケガしてる……」

そして一瞬遅れて事態を理解する。
キュゥべぇを襲っていたのはほむらちゃんだ。ということに。

まどか「だ、だめだよ! ひどいことしないで!」

キュゥべぇを庇うように抱きかかえる。

ほむら「あなたには関係ない」

少しずつ近寄るほむらちゃんに私はなぜか恐怖のようなものを感じた。

76: 2012/07/21(土) 22:26:21.82
まどか「だってこの子私を呼んでた! 聞こえたんだもん! 助けてって!」

ほむら「そう……」

私の前に立ち止まりじっと私を見つめるほむらちゃん。

まどか(どうして!? どうしてほむらちゃんがキュゥべぇを!?)

予想外な出来事にパニックになる。
ほどかちゃんならなにか知っているのではないかと、隣にいる彼女の顔を見る。
だけど、そのほどかちゃんも難しい顔をしながらほむらちゃんの顔を見つめているだけだった。

ほどか「あの、」

ほどかちゃんがなにかを言いかけた瞬間、その声を打ち消す大きな音と煙がほむらちゃんに襲いかかった。
突然の出来事に驚く私を聞き慣れた声が呼ぶ。

さやか「まどか! ほどか! こっち!」

声をした方を見るとさやかちゃんが消火器を使いながら私達を呼んでいた。
条件反射でさやかちゃんの方に向かう。




まどか「さやかちゃん! ほどかちゃん、早く!」

驚いているほどかちゃんの手を掴みこっちに来るように促す。

ほどか「で、でもお母さんが……」

まどか「いいから早く!」

ほむらちゃんのことが気になるらしい。
だけど、事態は切迫しているんだ。
煙に飲まれたほむらちゃんの方を向いたまま立ち止まるほどかちゃんを強引に引っ張りその場から連れて行く。

さやか「えい!」

さやかちゃんが空になった消火器をほむらちゃんのいる方に投げる。

まどか(さすがにやりすぎだよさやかちゃん!)

でも助けに来てくれた手前、それは言わずにおこうと考えるのでした。

77: 2012/07/21(土) 22:26:57.10
―ほむら―

ほむら「っく……」

ガスを魔法で振り払い、辺りを見回す。
まどか達はどうやらこの場から去ったようだ。

ほむら(……。すぐに追えば間に合うわね)

魔法少女である私ならばすぐに追いつくであろう。

ほむら(鹿目ほどか、本当に魔法少女だったのね)

魔法少女の姿を見て確信を強める。
だが、いまさらそんな情報はどうでもいい。
問題は。

ほむら(あの子の様子からすると、あの子はインキュベーター側のようね)




魔法少女の真実を知らない。
だから、インキュベーターの味方をするのだろう。

ほむら(できれば敵対したくはなかったのだけど)

私の目的を邪魔するのなら仕方がない。
なにより、あの子はまどかの信頼を得すぎている。
あの子がまどかに魔法少女になってほしいと願えば、まどかはすぐに契約してしまうだろう。

ほむら(なら、その前に)

そう考え、まどか達を追おうとする。
すると周りの景色が、いや空間が歪みだした。

ほむら「こんな時に……」

78: 2012/07/21(土) 22:27:30.66
―まどか―

さやか「はぁ! はぁ! なによあいつ! 今度はコスプレで通り魔かよ!
    ってほどかもなにその恰好!? 流行ってんの!?
    っつか、なにそれ? ぬいぐるみじゃないよね? 生き物?」

矢継ぎ早に質問してくるさやかちゃん。
どうしよう……。なんて説明したらいいのかな……。

ほどか「……説明は後でします。それより今はここから逃げましょう」

少し元気のないほどかちゃんがさやかちゃんに走りながらそう告げる。

まどか(やっぱりまずかったかな……。ほむらちゃんにあんなことしちゃって……)

しかも逃げてきちゃったし……。

後悔しながら逃げ続けるという矛盾に頭を抱える私。
そんな私の悩みを増やす事態がまたひとつ。




さやか「あれ!? 非常口は!? どこよここ!?」

まどか「変だよ、ここどんどん道が変わってる……」

ほどか「こんな時に……」

ほどかちゃんが少し焦ったように呟く。
まさか、これって……。

さやか「あーもう! どうなってんのさ!!」

さやかちゃんが苛立たしげに吐き捨てる。

まどか「な、なにかいる!」

ほどか「二人とも! 私の傍から離れないでください!!」

ほどかちゃんが大声で叫ぶ。
もしかしなくてもこれって……。

まどか(魔女ってやつ!?)


79: 2012/07/21(土) 22:27:58.99
使い魔「♪ ~♪」

なにかを歌いながら、私達の周りに増えていくモノ。
そのあまりの異常な状況に私とさやかちゃんはお互いを抱きしめ合います。

まどか(だ、だめだよ! 怯えてる場合じゃ、ほどかちゃんを守らないと!)

そうだ、私がほどかちゃんを守るんだ。

でも、さやかちゃんの体が震えていることに気づいた私はその腕を解くことができずにいました。

さやか「冗談だよね? 私、悪い夢でも見てるんだよね? ねえ! まどか!」

まどか「さやかちゃん……」

ほどか「大丈夫です! あなたたちは私が守る! その為に私は……!」

ほどかちゃんが自分の盾からなにかを取り出します。
え? あれって……。

まどか「銃?」

よく映画で見るようなその黒々とした鉄製の物体は紛れもなく、敵を撃ち倒し、その生命を奪う物でした。
私はそんな、女の子が持つには不似合いな物を両手に一つずつ持つほどかちゃんに少し驚きました。





さやか「ちょ、ちょっとほどか! あんたなんでそんなもの!」

ほどか「説明は後できっちりします! とりあえず今はこの中にいて下さい」

ほどかちゃんが手をかざすと私達の周りに淡く優しく光るドーム状の粒子が広がります。

まどか「これは……」

ほどか「結界です。この中にいれば安全ですから」

さやか「あーもう! 絶対に説明してよね!」

さやかちゃんが横で叫ぶ。
でも震えは止まったようで、ほどかちゃんに任せれば安心だと思ったのでしょうか。

ほどか「はい。……ごめんなさい。怖い思いをさせてしまって……」

そう私達に謝ってほどかちゃんは周りにいるモノに向かっていきます。

80: 2012/07/21(土) 22:28:30.45
―ほどか―

ほどか(この子達は魔女じゃなくて使い魔……)

左手に持つ銃はマシンピストル。普段は折りたたまれているそれを素早く展開し周りにいる使い魔に打ち続ける。

ほどか(魔女は結界の奥深くにいるってところかな)

撃ちもらし反撃に出ようと迫ってくる子達には右手に持つマグナムで確実に仕留める。

本来ならば、訓練をしていない私がこれらの銃を扱うことは体の負担からいって難しいだろう。
だけど魔法少女になった私は身体能力が並の人間とは比べ物にならない程、飛躍している。
それに、とある事情により、銃器の扱い方は知識としても経験としても備わっている。
だから、ただ戦う分には支障はない。

だけど……。

ほどか(この魔女はたいしたことはない。けど、……)

ちらりとパパ達のいる結界を見る。

ほどか(どれだけ弱い魔女でも油断は禁物。パパ達がいる今、戦えるのが私だけじゃ魔女と戦うのまでは避けた方がいい……)

ならば、今私がすべきことは……。

ほどか(魔女が恐れて逃げるような派手な攻撃を仕掛ける!)

そう考え、盾に収納しているノートパソコンを取り出す。




ほどか(できれば魔力はあんまり使いたくはないのだけど)

今はそうもいっていられない。
パソコンを開き画面に写るレーダーを見る。
レーダーに写る多数の赤い点。ちょうど円状にまとまって広がるそれの中心に、カーソルを合わせそこに向けてエンターキーを押す。

押した直後に上空から聞こえる落下音。

私は急いで自身の周りに結界を張り、遠からず訪れる衝撃に備える。

ほどか(ごめんね……。あなた達に恨みはないけど……)

二秒ほど経っただろうか、使い魔達は意志を持たないのか、自身に迫りくる危険にもあまり関心を示さず、ただ、歌い続ける。

そしてそれから一秒後。




――辺りに爆音が広がった。

81: 2012/07/21(土) 22:29:40.41
―まどか―

まどか「あ、あれって……」

さやか「ミサイル……だよね……」

自分の目の前で起きたことが信じられない。
ほどかちゃんが盾からパソコンを取り出しそれを操作すると上空からなにかが落ちてくる音が聞こえた。
上に目を向けるとそこには戦争映画等でしか見たことのないものがあって、それが今までほどかちゃんが戦っていた物達の下へ落ちていったのだ。

さやか「は、はは。なにこれ。ミサイルって」

ほどか「正式な名称はヘルファイアミサイルです。まぁ大層な名称ですがミサイルの中ではそんなに威力はないですね。
    それでも、威嚇としては十分でしょうが」

周囲の景色がもとに戻る中、ほどかちゃんがこっちに戻りながら、そう説明する。

さやか「いや、威力はないって……。あの爆発はそうは見えないよ……」

さやかちゃんに同意。
だってあれだけたくさんいたのが一瞬で……。




まどか(ほどかちゃんって本当に強いんだね……)

呆然として彼女を見る。これは親子喧嘩とかしたら絶対に勝てないな。
怒ったほどかちゃんに上からミサイルを落とされるとかシャレにならないもん。

まどか(この子は絶対に怒らせないようにしよう)

ほどか「それよりキュゥべぇを……」

まどか「あ」

すっかり忘れてた。

まどか「そうだよ! 早く治療しないと!」

今更ながら慌てる。
もう随分と時間が経ったけど大丈夫かな。





「じゃあ私の出番ね」

急に後ろから声がしたので、驚いて振り向くとそこには

まどか「マミさん!」

マミさんが魔法少女らしき衣装を身にまとい、そこにいた。

さやか(だれ?)

まどか「どうしてここに?」

マミ「魔女の気配がしたものだから来たのだけど……。
   どうやらもう終わったみたいね」

ほどか「すいません……。肝心の魔女は逃がしてしまいました」

申し訳なさそうにほどかちゃんは謝る。
魔女ってさっきのじゃないんだ……。

82: 2012/07/21(土) 22:30:07.36
マミ「あなたの責任じゃないわ。まどかさん達を守る為なんでしょう?」

まどさや「え?」

ほどか「……ずっと見てましたね?」

まどさや「え?」

マミ「ふふ。ごめんなさい。でも、これから戦う仲間としてあなたがどう動くかは見ておきたかったから」

ほどか「はぁ。これで合格ってわけでしょうか」

ヤバい話についていけない。

マミ「えぇ。本当にごめんなさいね? でも、あなたの話はあまりに突拍子もなかったから」

ほどか「いえ、自分がマミさんなら同じようなことをすると思うので」

マミ「そう。ありがとう。その言葉で少し楽になれたわ」

さて、と呟きなにもないはずの空間に目をやるマミさん。

マミ「あなたもこれでわかったのではないかしら、暁美ほむらさん?」

しかしそれは私の勘違いで、そこにはほむらちゃんがいた。




ほむら「……」

さやか「あいつ……!」

さやかちゃんがほむらちゃんに食って掛かろうとする。

まどか「待って! さやかちゃん!」

そんなさやかちゃんを静止し、ほむらちゃんに向けて話す。
そう、ほむらちゃんがなんでキュゥべぇを狙うのかその理由を聞かないといけない。

まどか「ほむらちゃん! どうしてあなたはキュゥべぇを!」

ほむら「さっきも言ったようにあなたには関係ないわ」

同じ返事を返すほむらちゃん。
そんなほむらちゃんにマミさんが反論する。

マミ「関係ない、ということはないんじゃない? キュゥべぇは私のお友達だもの。
   それにあなたにとってもまどかさんは特別なんじゃないの?」

ほむら「!」

83: 2012/07/21(土) 22:31:22.41
マミさんのその言葉に明らかに動揺した素振りを見せるほむらちゃん。
っていうかマミさん! それ以上は!
焦りながらマミさんの方を向く。だけどマミさんは、任せて。とでも言いたげにウインクをして話を続ける。

マミ「どうなのかしら? 未来からきた魔法少女。暁美ほむらさん?」

ほむら「!! ……どうして、それを……」

マミ「さて、どうしてかしらね?」

警戒を最大限にし考え込むほむらちゃん。
そして、目線を私達に合わせる。そして、その場にいる私達を順々に眺める。
その順番がほどかちゃんに移った時、っというよりもほどかちゃんが身に着けている盾を見た時に
なにかを納得したかのような顔に変わる。

ほむら「そう……。鹿目ほどか、あなたが原因のようね」

静かに、しかし冷たさを持った声色でほどかちゃんにそう言い捨てる。
その声の冷たさに少し怯える仕草を見せたほどかちゃんを庇うように私は前に立つ。

マミ「自分から煽っておいてなんだけど、今はそんなことは問題ではないんじゃないかしら」

緊迫した空気の中、マミさんだけが同じ調子で話し続ける。

ほむら「どういうこと?」

マミ「今、重要なのはその子がまどかさんを守ったという事実。
   そして、それはあなたがやろうとしていることと利害が一致している。
   そうじゃない?」

ほむら「! ……そこまで知っているのね」

今の言葉で大よそのことを理解したのか、ほむらちゃんはまた考え込む。

マミ(あなたならここまで言えばだいたいは理解できるでしょう。
   キュゥべぇを狙った理由もあなたがまどかさんを魔法少女にしたくないと思うがゆえの行動だとすれば納得はいく。
   まぁ、やり方は気に食わないけどね)

まどか(だ、大丈夫かな……)

マミさんの意図が読めずにただおろおろするだけの私。
ほどかちゃんはなにかを察したのか黙って成り行きを見守っている。
さやかちゃんは空気だ。

マミ(さぁ、どうするの暁美さん。ここまで言ったのだから私達が敵でないことと私達にあなたに対する敵意はないのはわかったはず。
   あなたの目標の一つにワルプルギスの夜の撃破があるのなら、ここで私達と手を組むのが最善なのは理解できるでしょう?)
   
考えがまとまったのかほむらちゃんが口を開く。

ほむら「どうやらあなた達と争うのは賢明ではないようね」

まどか「ほむらちゃん!」

この流れはもしかして! さすがマミさん! これを狙ってたんだ!

マミ「なら……」

ほむら「えぇ、私に協力してもらえないかしら。
    私の目的のために。そして見滝原のために」

まどか「や、やった! やったよ! ほどかちゃん!!」

やった! ほむらちゃんが私達に協力してくれる!
凄いよ! マミさん凄いよ!! だってあの状況からほむらちゃんを仲間に引き込むんだもん!
やっぱりマミさんは頼りになるよ!
さやかちゃんは空気だけど。

まどか「ねぇ! やったね! ほどかちゃん! これで……」

これで私達、親子三人揃ったんだ!

ほどか「……よかった……」

俯くほどかちゃん。……。
なんとなく察した私は彼女に優しく抱き着いて、そして優しく、優しく頭を撫でてあげるのでした。

マミ(よかった。なんとかうまく言ったようね)

マミさんも安堵したのか優しく微笑んでいる。
さやかちゃんは空気だ。

84: 2012/07/21(土) 22:31:51.17
―ほむら―


ほむら(……)

巴マミ達と協力。これは紛れもない僥倖でありワルプルギスの夜のことを考えれば戦力が大幅に増えたことは間違いない。
だが、

ほむら(鹿目ほどか、やはり危険すぎる……)

彼女がなぜ私と同じ時を渡る能力を持っているのか。
その答えは願いが時間に関係するようなことだったのであろう。だが、彼女は知りすぎている。

ほむら(どこで調べたのかはわからないけど、ワルプルギスの事、そして私の事)

あの様子ではまどかの才能の事まで知っているのではないだろうか。

ほむら(……まどかに近づいたわけはそこにあるの?)

キュゥべぇを助けたこともわからない。
あの子の知識から考えるに、魔法少女の真実についても知っていると思うのだけれど。
なら、あの子にとってもキュゥべぇは敵ではないのか。

ほむら(まさかまどかの才能を使ってなにかしようというんじゃ……)

彼女の魔力の強さも気になる。
さっきのヘルファイアミサイルを召喚した時の様子から見ても彼女はまだまだ力を隠し持っているはず。
本人はうまく隠しているようだが、ベテランである私から見れば隠しきれるものではない。




ほむら(巴マミもそのことには気づいているはずなのだけど……)

マミはなにも感じなかったのだろうか……。
それともわかったうえで黙っているのか。

ほむら(まぁ、どちらにしろ協力関係を結べたのはいい傾向だわ)

今後の魔女退治もやりやすくなるし、まどかの契約阻止も本人が事情を知っているのなら容易だろう。

ほむら(その上で鹿目ほどかに怪しい動きがあれば……)

私が始末すればいい――。

さやか「いや、あのー。説明してほしいんだけど」

QB「……」

――――――――――――
――――――――――
――――――――

85: 2012/07/21(土) 22:32:18.26
―― まどホーム ――


グッドイブニング! 鹿目まどかです!
今日はとってもいい日でした!
マミさんと協力できるようになったし、なによりほむらちゃんと仲良くなれたんですよ!!!
いやっほーい!! やったねまどちゃん! 家族が増えるよ!

そのせいかほどかちゃんも上機嫌!
さやかちゃんにマミさんの家で色々と説明して(ほむらちゃんも一緒だよ!)家に帰宅。
そして、いつも通りパパのお手伝いをしていたのですが、お手伝い中も鼻歌なんかを歌っちゃたりなんかしてその機嫌のよさが窺えます。

まどか(そりゃ嬉しいよね。ずっと会いたかったママに会えて、仲良くなれたんだもん)

私もパパとして嬉しいです! 嬉しさのあまりほどかちゃんがお風呂に入ってる時に乱入したら悲鳴をあげられて叩き出されました!!
今は反省の意味を込めて正座中です! 足が痺れました!!

まどか(そういえばさやかちゃん驚いてたなー)

話を聞いたさやかちゃんは驚きのあまりなんだかおもしろい顔になってました。




まどか(一応、マミさんの家からの帰り道、ほむらちゃんがいなくなってから私とほどかちゃんとほむらちゃんの関係については説明したけど……。
    すっごい顔してたなー)

さやかちゃんの、未来から嫁と娘が来るってどんな工口ゲだよ。っていう言葉が忘れられません。

まどか(でも、これですっごく前進したよね)

そうです。どうなるかと思っていたことが実現したのです。
しかもマミさんは優しいし、ほむらちゃんもなにを考えてるのかはわからないところはあるけどなんだかんだで優しい。

まどか(だって、なんだか私を見る目は優しいんだよね)

だって私がバカなことをやった時の、ほどかちゃんが私を見る目と同じだもん。

まどか(やっぱり親子だねー)

今となっては疑いようもないこととして私の中にある事実。
ほどかちゃんが私とほむらちゃんの娘であるということ。

86: 2012/07/21(土) 22:32:46.59
まどか(ほむらちゃんも私の家で住めないのかな? 聞いたところによると一人暮らしみたいだし)

そうしたら親子で暮らすことになるんだし……。その方がいいよね?

まどか(そうすれば、ほむらちゃんもほどかちゃんに対して優しくなってくれるはず……)

なんとなくだけど、ほむらちゃんはまだほどかちゃんに対して思うところがあるような気がする。
少し疑ってるっていうのかな。心底信用してるって感じはしないんだよね。

これはマミさんの家で感じたことだ。
ほどかちゃんがほむらちゃんに世間話的なことをふってもほむらちゃんは当たり障りのないことしか言わなかった。
ほどかちゃんはそれでも母親と話せた嬉しさからか気にしてなかったみたいだけど……。

まどか(どっちも表情からは読めない子だけど、バレバレだよね)

ほどかちゃんが作った感情で本心を隠す子なら、ほむらちゃんは感情を頃すことで本心を隠す子。
違うようで全く同じなんだよねあの二人。

まどか(まぁ、バレバレなんだけどね)

まだまだわだかまりはあるみたいだけどその辺は

まどか(私が頑張るしかないよね)



明日も学校! 今日、みんなで明日のお昼を一緒に食べることを約束した。
そしてみんな手作りのお弁当を持ってくること! っていうことも伝えたし

まどか(うん! 明日が楽しみだね。てぃひひ)

ほどか「お父さん、お風呂空きましたよ?」

私の前にお風呂からあがったばかりのほどかちゃんがいた。

まどか(おぉ……。色っぽい)

まさに神が与えた奇跡です。
私は今すごく感動しています。

ほどか「……っていうかなんで裸にバスタオルを巻いて正座してるんですか?」

まどか「いや、これはちょっとね」

自らの罪を反省していたとは言わずに口を濁す。

87: 2012/07/21(土) 22:33:25.84
ほどか「もぅ……。バカな事してないで早くお風呂入ってください。明日も学校ですよ?」

まどか「あ、うん」

ほどかちゃんに促され立ち上がろうとする。

まどか「あ」


はい、お約束です。
足の痺れからうまく立ち上がれない私。
そして倒れこむ私。
倒れた先にはほどかちゃんがいて。
まぁ、押し倒す形になったわけで。
それで、うまいこと巻いてたバスタオルがこう、はらりと、ね?

でも、今は私は女の子。
つまりなにも問題ないわけです。
女の子が女の子を押し倒しても問題ないわけです。
ましてや同年代。そこにはなんの罪も生まれません。
男の子がほどかちゃんを裸で押し倒していたとかなったら問題ですよ?
そんな現場を見たら私の怒りにより鹿目家に代々伝わり、封印されし鋼鉄の処Oがその長き眠りから目覚めます。
目覚めます。それはもう凄い勢いで。
でも私は女の子! えOちなことをしても許されるというスキルを持った女の子!
だから大丈夫なのです!!

だから普通に謝れば大丈夫!!
あ、ごめん/// ケガしなかった?
とか/// この記号を付けて可愛く謝れば許されるに決まっている!
そうだそうに違いない!! ///← この記号は優秀なんだ!! 基本困ったらこれをつければ許される!!!
なら早く謝ろう! 手遅れになる前に!!

まどか「ふひひ/// だ、大丈夫でござるか? ほどか殿、いい匂いでござるね/// フォカヌポゥ///」

よし! いける!!

ほどか「……」

無言で私を押しやり、そのままなにも言葉を発さずに立つほどかちゃん。

まどか「あ、あの……」

なんだかすごくまずい、汗が止まらない。
お風呂に入る前でよかった。

まどか「ほどかちゃん……?」

ほどか「……ふふふ」

にこっと笑うほどかちゃん。その慈愛に満ちた笑顔を見た私は思った。

まどか(あ、これダメなやつだ)

と。

ほどか「先に寝ますね? 早くお風呂に入らないとダメですよ?」

じゃあと自分の部屋のドアを開け最後に私に向けてもう一言。

ほどか「おやすみなさい。まどかさん」

と言ってバタンッとドアを閉めるのでした。

まどか「……」

や、やばいよ……。
あれガチなやつだよ……。

この受け入れがたい絶望に解決案を出せぬまま私の夜は更けていくのでした。

88: 2012/07/21(土) 22:33:57.35
―ほむら―

―― とある場所 ――


ほむら「こんなところに呼び出してなんの用かしら?」

まどか達と別れ数時間後。
夜も更け、街も静寂が支配を深めようとする中、私は呼び出しを受けこの人気の無い場所に単独やってきた。

マミ「あなたに少し聞きたいことがあるのよ」

巴マミ。さっき別れたばかりの彼女が質問を投げかけてくる。

マミ「あの場ではまどかさんと美樹さんがいたから、詳しくは聞けなかったわ」

ほむら「……」

鹿目まどかと美樹さやかがいたから――。巴マミがその二人の名前しか出さないということは。

マミ「あなたもわかっているのでしょうけど、ほどかさんのことよ」

やはり。巴マミも気づいていたのか。




ほむら「あの子が何かを隠しているということなら私もそれは気づいているわ」

あらかじめ聞かれるであろうことを先に言っておく。話はスムーズに進めたい。

マミ「そう。あの子が力を隠していることについても?」

ほむら「ええ」

だが、それを私に聞いてどうするというのか、私がその理由を知っているわけはないのだから。

マミ「……。暁美さん、私はあの子を信じているわ」

ほむら「え?」

急にわけのわからないことを言いだす巴マミの意図がわからず戸惑う。

マミ「あの子がさっき魔女空間でまどかさん達を守ったという事実は覚えているわよね?」

当たり前だ。そんな最近のことを忘れるわけがない。
鹿目ほどかは使い魔からまどか達を守った。
あの子がどのような目的を持っているにせよその事実だけは変わらないことだ。




ほむら「それがなんだっていうの?」

相変わらず理解できないことを話すマミに若干の苛立ちを込め聞き返す。

マミ「怒らないで。私が言いたいのはあの時あの子にはそれが全てだったんじゃないかってことよ」

ほむら「……」

マミの怒らないで、の言葉に少し冷静さを失っていた自分に気づく。
すぐに平静になるように努め、彼女の真意をはかる。

マミ「あの子は賢いわ。私達への立ち振る舞いといい、戦い方といい。しっかり考えた上で行動している」

それはわかる。迂闊な行動には出ない。感情のまま行動しない。
魔法少女になったばかりだというのにあの立ち回り方は、あの子の頭の良さからくるものであろう。

だからこそ、気をつけなければいけないのではないかとも言える。


89: 2012/07/21(土) 22:34:36.95
マミ「その賢い彼女があなたが近くにいて、目立つ力を使えば自分の力量がバレてしまう。そんな状況下であんな力を使うかしら?
   そもそもあの場面であんな派手な力を使う必要はあったかしら?」

ほむら「……」

マミ「本当に隠したいのならばあのまま地道に使い魔を倒し続ければよかった。それは十分できたはずよ」

確かに、そうだろう。
あの程度の使い魔ならばそう時間もかからずに殲滅できたはずだ。

マミ「でも彼女は力を使った。それもかなり目立つ形でね」

なぜかしら? と私に問う巴マミ。

そんなことはわかりきっている。

ほむら「魔女をあの場から遠ざけたかったからでしょうね」

その私の答えに満足したのか巴マミは、そう。っと呟き。

マミ「そこまでわかっているならいいわ。ごめんなさいね? こんな遅い時間に呼び出したりして」

そう言って立ち去ろうとする。


ほむら「待ちなさい! 言いたいことはそれだけなの!?」

マミ「ええそうよ。……そうね強いて付け加えるなら、あの子がそうした理由は凄く単純な理由で
   あの子の優しさからきたのでしょうね。ってところかしら?」

ほむら「っ!」

なんだか全てを見透かされていたような気がする。
巴マミ。あなたはやはり厄介ね……。

ほむら「私にあの子を信じろ、と?」

マミ「あら? 信じてないの? 私達は仲間でしょう?」

なにをバカなことを? とでもいいたげな顔をして私に聞き返す。

だけど、私はその言葉に返事をすることが出来なかった。

マミ「まぁいいわ。これからよろしくね。暁美さん。明日のお昼、楽しみにしているわ」

もう話すことはないと言いたげに歩を進めるマミ。
だが急に足を止めこちらを振り返る。

マミ「そうそう、言い忘れていたのだけど……」

ほむら「なに?」

マミ「私は、暁美ほむらさん。あなたも信じているから」

そういって今度は足を止めずに歩き、夜の闇に消えていった。

ほむら「……」

それを見送り、呆然と立ち尽くす私。

ほむら「信じろと……? 今更、私に何を信じろというの……」

信じては、裏切られる、その繰り返しの中にいる私に今更なにを……。

ほむら「あなたも信じている、か……。裏切った本人であるあなたがよくいえたわね」

しかし、それも全て自分の責任。
私が今までうまくできなかったのがいけないのだ。
私が彼女達を裏切らざる負えない状況に追い込んだのだ。
全て自分が……。

ほむら「巴マミ。やはりあなたとは考えが合わないみたいね」

また、あの感情が襲ってくる。
ただ無心にそれを排除する。

ほむら「なぜなら私は――」

私が一番信じられないわ――。

少し、左手の甲が放つ輝きが薄れたような気がした。

90: 2012/07/21(土) 22:35:07.42
―QB-

―― 同時刻 別の場所 ――


QB「やぁ、早かったね」

この夜更けに僕をテレパシーで呼ぶ者。
それは今日知り合った人物で話を聞く限りでは僕達にとっては敵に該当する存在。

QB「鹿目ほどか、いったい僕になんの用だい?」

ほどか「……」

この子の用がなんなのか。それは僕にはわからない。
だけど、彼女の目的に鹿目まどかの契約の阻止が含まれているなら彼女にとって、僕達は敵になるということになる。

QB「僕としては、君と話すよりもまどかの契約を遂行するための策を考えたいところなんだけどね」

彼女のおかげで鹿目まどかとの契約は絶望的なものになった。
鹿目まどかが悩んでいた、人の役に立ちたい。という悩みも彼女の存在によりすでに解消されてしまっている。

QB「まったく、想定外だよ。ほむらのこともそうだけど君は本当に余計なことをしてくれた。
   まさかこんなことがおこるなんてね」

お手上げのポーズをする。
僕に感情はないがこういう時にこういう風な仕草をするということは知識としてある。






ほどか「そのことで話があるの……」

今まで無言だった彼女が唐突に口を開く。

QB「そのこと……っていうのはなんだい? 主語を明確にしてくれないとわからないよ」

この星に住む人類は意志の疎通に相手の判断に委ねることに頼りすぎている。
その結果いらない誤解を生み。争いあう。
まったくわけがわからないよ。

ほどか「ごめんね。話っていうのはまどかちゃんの契約のことについて」

まどかの契約。その言葉が彼女の口から僕に向けて出るのは意外だった。

QB「どういうことだい。契約はしないでほしいってことかい? だったら無駄だよ。僕達はまどかに契約を迫り続ける。
   例え、どれだけ勝算が薄くてもね」

あれだけの才能だ。諦めろというのは無理がある。

91: 2012/07/21(土) 22:35:33.38
ほどか「うん。そういうと思った」

あなた達はそういう人たちだもんね。っといい彼女は僕の答えをわかっていたかのように話す。

QB「わけがわからないよ。君はこんなわかりきった答えを聞きにきたのかい?」

本当にわけがわからない。どうしてそんな無駄な事を。

ほどか「待って。話は終わりじゃないよ。私が本当に話したいのは――」

そう言って彼女が話したことは驚くべきことだった。
繰り返していうが僕達には感情がない。
だけど、その話は感情があったのなら驚くに値するものだろうと考えられる。




ほどか「今のが私のお話。たぶんあなたなら信じられると思う」

QB「……信じがたい話ではあるけどね」

だが、信じるしかない話ではある。

QB「……これが本当なら君は……」

ほどか「うん。覚悟はできてるよ」

笑顔でそう答える彼女。

ほどか「でさ、お願いなんだけど、パパに契約を迫るのはやめてほしいんだ」

さっきと同じ話だ。
さっき僕が出した答えは拒否。
だが今回は……。

QB「わかったよ。まどかにはもう契約を迫らない」

受諾。




QB「そもそも、拒否する理由がないね。君の話が真実ならまどかの力はもう必要なくなったんだから」

そう。必要ない。来たるべき日が来れば全ての問題は一気に解決する。

QB「むしろ、僕達は君にお礼を言うべきなのかもね。ほどか」

彼女のおかげで全てが無事に解決するんだ。ならばお礼を言うべきだろう。

ほどか「いいよ、お礼なんて。あなた達はあなた達のやるべきことをやっただけだもんね」

そういって照れくさそうにはにかむ彼女。

QB「へぇ……。普通の人間は僕達のやってることに対して怒りを抱くはずなんだけど……」

彼女は魔法少女の真実を知っている。それはもう確定事項だ。
にもかかわらず、怒るわけでもなく悲しむわけでもなくむしろ賛辞を投げかけるとは。

ほどか「あ、勘違いしちゃダメだよ? あなた達のやり方には賛成できないもん」

ただ、と続け。

ほどか「なんにでも犠牲はつきものだもんね。ただそれが大きいか小さいかなだけ……」

そう告げる彼女。
それは僕に言っているというよりは自分に言い聞かせているみたいだった。

92: 2012/07/21(土) 22:36:03.37
ほどか「とにかく、約束だからね?」

念を押すほどか。

QB「大丈夫だよ。僕達は嘘はつかない」

ほどか「大切なことを言わないまま事を進めるのは嘘に含まれるんだよ?」

痛いところを突いてくる。
だがそれなら……。

QB「君も嘘つきじゃないか」

彼女の言う通りならそうなる。

ほどか「いいんだよ。私は嘘つきだから」

そうくるか。

QB「成程ね。君は賢いね」

純粋にそう思う。

ほどか「そりゃ私は世界一頭のいいママの娘だもん」

そうやって胸を張る彼女。
そういう仕草をする彼女はとても重い決意をしているような人間ではなく一人の少女に見えた。

ほどか「じゃ、私帰るね。あんまり夜に出歩いてパパにばれたりしたらうるさいから」

うんざりしたようにそう言う彼女だが、心の底から嫌ではないんだろうと感じた。
むしろ、そういうことが嬉しく幸せなのだろう、となぜか思えた。

QB「そうかい、じゃあ僕も行くよ」

ほどか「うん。バイバイ。またね」

僕に手を振る彼女。お返しにとばかりに僕は耳を振る。

彼女と別れて少し経った。

QB「まさか、こんなに嬉しいイレギュラーとはね」

こんなことなら大歓迎だ。




QB「……」

覚悟はできている。彼女はそう言った。

QB「それも嘘だね。鹿目ほどか」

いや、厳密には嘘ではなく彼女は本気で覚悟し、この時代に来たのだろう。

だが、

QB「今の君はとても幸せそうだよ」

その幸福感は君の覚悟とは相反するものじゃないのかい?

QB「……」

空を見上げる。月が雲にその半身を隠され淡い光を放っている。

QB「僕達らしくないんだろうけど……」

祈ろう。彼女の幸せを。そう遠くない未来に消え去るであろう彼女の幸福を。

QB「感情がなくても祈るくらいはできるさ――」

いつのまにか月はその全てを覆い隠され、その淡い光さえも、もう見えなくなっていた。

――――――――――――
――――――――――
――――――――




93: 2012/07/21(土) 22:36:29.96
マミがほむらと密会をし、別れたその帰り道。

マミ「……」

マミ『……。暁美さん、私はあの子を信じているわ』

マミ「うふ、うふふふ」

マミ「やばいわ……。私やばいわ……」

マミ『私は、暁美ほむらさん。あなたも信じているから』

マミ「ふふふふふ。カッコよすぎるわ、私」

マミ「精神的に未熟な後輩を導く頼りになる先輩っていうのかしら」





マミ「よかったわ。バラバラな仲間をまとめる、頭のいいクールな先輩を妄想しといて」

マミ「そうね。今の私はさしずめ……」

マミ「スピリット・コネクター(数多の意思を束ねし指揮者)といったところかしら」

マミ「うふふふ。うふふふふふ」

マミ「おーっほっほっほっほっほ!!!」

おっさん「こんな夜中にうるせーぞ!!」

マミ「ひっ! ごめんなさい!!」

94: 2012/07/21(土) 22:36:56.18
―― まどホーム ――


まどか「ねぇねぇほどかちゃん」

ほどか「なんですか?」

まどか「ほどかちゃんの魔法少女の衣装を見てて思ったんだけどさ」

ほどか「はい」

まどか「あれって初音m「お父さん」」

まどか「え?」

ほどか「それは言っては駄目です。絶対に」

まどか「え」



ほどか「ふぅ……。世の中には触れてはいけないことがいっぱいあるんですよ」

まどか「え、うん」

ほどか「では、私はお風呂に入りますので」

まどか「あ、うん」

まどか「……」

まどか「……」

まどか(今度ネギ持って戦ってくれないかなー)

95: 2012/07/21(土) 22:37:34.51
―まどか―

―― 屋上 ――


こにゃにゃちは! 鹿目まどかです!
今日も今日とて学校! 
みんな仲良く登校したり授業受けたり宿題を忘れて怒られたりと、そんないつも通りの日常を送っている私です!

まどか(だって昨日色々あって宿題のことなんてすっかり忘れてたんだもん)

っと言い訳しますがそれはやっぱり言い訳で、ほどかちゃんとほむらちゃんはしっかり宿題をやってきてる辺りさすがだなーっと思ってしまうのでした。

まどか(父親としての威厳が……)

でも大丈夫。未来の私はほどかちゃんという立派な女の子を育てているのです。
それはつまり、勉強なんてできなくても立派な大人になれるということなのです。

まどか(ほむらちゃんも、そんな私に恋しちゃったのかもしれないし)

この人には私がいないとダメだから……。

っとダメダメな私に同情してくれたという感じでしょうか?
まぁ若干不名誉な気もしますが、それでほむらちゃんを落とせるなら問題なしです。




まどか(さてさて、今は昨日のメンバーで屋上にてお昼ご飯なわけですが)

昨日のメンバーとは、私、ほどかちゃん、ほむらちゃん、マミさん、さやかちゃんなわけです。

そして! ついにやってきました私の作戦を実行する時が!

まどか(名付けて! お弁当のおかずを交換しあって好感度を上げちゃおう作戦!)


説明しよう!! お弁当のおかずを交換しあって好感度を上げちゃおう作戦とは!!!

まず、みんなのお弁当を褒め、場がいい感じになったところでお弁当のおかずを交換しようと提案!
そしてうまいことほむらちゃんのおかずをほどかちゃんに食べさせる!
おふくろの味に感激したほどかちゃん感涙!!
その様子を見たほむらちゃんが





ほむら『もう、どうしたの? 急に泣いたりして……』

ほどか『だ、だって……。お母さんのごはん、おいしくて……』

ほむら『そんなことくらいで泣くだなんて……。鹿目ほどか、あなたはなんて愚かなの』

ほどか『ご、ごめんなさい……』

ほむら『ほら、涙を拭きなさい。そんなことじゃこれから毎日泣くことになるわよ?』

ほどか『……え?』

ほむら『これからは毎日、私の料理を食べることになるんだから、ね?』

ほどか『ママ……』

ほむら『ほどか……』

96: 2012/07/21(土) 22:38:02.47
っとこんな感じになることを狙ったあざとい作戦なのだ!!!

ほどかちゃんとほむらちゃん。母娘であるにも関わらずどこかよそよそしい(一方的にほむらちゃんが距離を置いている感じだけど)この二人。
まぁ、ほむらちゃんにはほどかちゃんが娘だって言ってないんだけどね。

ちなみにさやかちゃんには厳重に口封じをしています。

まどか(ばれるならさやかちゃんからだろうし)

感情に任せて行動する子だから、ついうっかりとかもありえるし……。

それはいいんです。
とにもかくにも、あまり仲がよろしくないこの二人。
父親である私はそれを良しとしません。このまま放っておくのはダメです。

まどか(だからとりあえず、お弁当のおかずでも交換して親睦を深められないかなーっと)

だから、こんな作戦を思いついたわけで、、、。




今、私達が座ってる位置関係はこんな感じ↓

        マミ
     ほむら  ほどか
      さやかまどか

ほむらちゃんとほどかちゃんは向かい合って座っています。
マミさんはいつも通りニコニコ。ほむらちゃんは無表情。ほどかちゃんはほむらちゃんの方をチラチラ見ながらいつも通りニコニコ。
さやかちゃんは空気です。





まどか(ここまでは計算通り)

事前にマミさんにメールでこのことは伝えています。
マミさんはかなり乗り気でぜひ協力したいっと言ってくれました。

まどか(さすがマミさんは頼りになる)

マミさんが味方についたならもう大丈夫。
後は作戦の狼煙をあげるだけ……!

まどか(マミさん……)チラ

マミ(ええ)コク

マミ「あら、みんなのお弁当よくできてるわね」

始まった!!!




さやか「そうdまどか「そうですか? 私は普段自分で作ったりしないからあんまり自身ないですよ」ティヒヒ

さやか「いyマミ「そんなことないわよ? まどかさんもすごく上手よ」

さやか「まどか「そういってもらえると嬉しいです/// でも、マミさんのお弁当凄いなー」

まどか(なんで重箱なんだろう?)

若干の疑問は浮かぶがそこはまぁいいや。

さやkマミ「ありがとう。一人暮らしが長いからかしらいつのまにかね?
      でも、暁美さんのお弁当も可愛らしくていわね。すごくおいしそうだし」

さyまどか「うんうん! なんかまさに女の子! って感じだね!」

97: 2012/07/21(土) 22:38:30.49
ほむらちゃんのお弁当はシンプルながらもしっかりと色彩、栄養のバランスが考えられたお弁当で、これこそ女の子のお弁当といいたげに光り輝いている。

まずは卵焼き。
その黄金色に輝く姿は見る物の食欲を刺激させ空腹を助長させる。

そして小さく作られたハンバーグ。
キチンと整えられた形は市販のものかと見紛う程であるがその色艶といい少しついた焦げ目といい、
そこから推察するに彼女の手作りであろうことが窺える。

次に可愛らしい、それぞれピンクと紫色の串に刺されたアスパラベーコン巻。
可愛らしい動物を形どって作られたその串にまず心癒され、
そして食べればその美味に下を癒されるれ、
お腹に入れば空腹を癒される。という一粒で三度おいしいまさに珠玉の一品。

さらに二つあるおにぎり。
三角に作られたそれは一つは海苔で巻かれもう一つはふりかけを使って作ったのであろう、基本的なおにぎりではあるが、
角は少し丸まっており、その丸みから彼女自身の手によって作られたことを見るだけで理解させてくれる。
もう一度言おう。彼女自身の手で、だ。
それだけで、そのおにぎりががコンビニ等で売られているような大量生産大量消費を目的とされたような安価な物ではなく、
それ一つでダイヤにも勝る価値があるものであることが御理解頂けると思う。
理解できない奴は夜道に気をつけろ。

彩りの面では季節に合った野菜をうまく使い、華やかに、かつ目に優しくと彼女らしいマメな性格を感じさせるものになっている。




ほむら「そ、そうかしら///」

おぉ、照れてらっしゃる。

まどか(かわいいのぅwwかわいいのぅww)

マミ「ほどかさんも凄くいいわね。なんだか動物園みたいだわ」

まどか「うん。正直びっくりした。食べるのがもったいなくなるよね」

ほどか「あ、ありがとうございます/// はりきっちゃいました///」

ウヒョー!! こちらも照れてらっしゃる。

まどか(眼福よのぅ)

98: 2012/07/21(土) 22:39:01.04
ほどかちゃんのお弁当はなにやら凄まじい。

まずタコさんウインナーにリンゴはうさぎさん。
これは料理の嗜みがある人ならば容易く作れることが出来、そしてお弁当のおかずに少しの遊び心を乗せたい方ならば誰でもするだろう。
だが、彼女の遊びはこれでは終わらない。

なんと、チキンライスをクマが寝ているように作り、その上から卵をタオルケットのように被せるという一風変わったオムライスを彼女は作ったのだ。
そして、オムレツを枕のようにクマの頭に引いているのも好ポイントであると言えよう。

さらに、草原で寝ているのをイメージさせているのか、周りには綺麗に数種類の野菜を使い彩豊かで見る物を楽しませるように出来ている。
そして、寝そべるクマの周りに先程のタコさんウインナーにうさぎさんが仲良く集まると、
種族の垣根を越えた共存をお弁当という箱の中に見事、現出してみせたのだ。

そんな遊び心に富んだ彼女のお弁当はもはや、遊びの域を超え芸術作品にさえ昇華してみせたといえるのではないかと思う。





ほむらちゃんのお弁当が慎ましくかつ強かであり芯の強い、
一見地味に見えるが観察すれば観察するほどその魅力に惹かれ虜になる大和撫子タイプなものであるとしたら、
ほどかちゃんはエレガントかつ優美。
その美麗さから傲岸そうで近寄りがたいが仲良くなればその胸の内に秘められた優しさを見せてくれる。そんなツンデレ御嬢様タイプといえるであろう。

まどか(しかし二人ともここまで料理がうまいとは。未来の私はお料理しなかったのかな?)

自身の未来に不安を抱きつつも作戦を実行する。

まどか「ねね。せっかくだしおかず交換しようよ!」

さあ! ここからが本番だ!

マミ「あらいいわね。そうしましょうよ」

マミさんがここぞとばかりにアシストしてくる。
ナイスです! マミさん!

さやか「あー。それいいね。やろうよ」

今までいたのかどうかわからなかったさやかちゃんも同意する。
これで過半数の賛成は取れた! さぁ! 後は押し通すだけ……!




ほむら「いいわよ。はい、どうぞ」

ほむらちゃんがお弁当を差し出す。

きた! きたきた!! この時が!!!

まどか「わー、ありがとうー。でも、なにたべるかまよっちゃうなー」

マミ(まどかさん、ビックリするほど棒読みだわ)

マミ「そうね、ぜんぶおいしそうだものね」

まどか(マミさん、ビックリするほど棒読みだよ)

まどか「ねえねえ、ほどかちゃんはどれが食べたい?」

ここ! ここが大事!!

99: 2012/07/21(土) 22:39:26.41
ほどか「え、えっと……」

突然話をふられて焦るほどかちゃん。

まどか(いい! いいよ! その初々しい感じ! 大好物だよ!)

初めての母親の料理を目の前にして躊躇っている彼女の顔は、
戸惑いながらも視線はお弁当に釘付けで、どうしても食べたいであろうことが把握できる。

まどか(うん、卵焼きだね! 卵焼きが食べたいんだね!)

視線は卵焼きに一直線。今すぐにでも食べたいのだろう。
だが、母親に対する遠慮か、なかなか手を出せずにいる。

マミ(頑張って! ほどかさん頑張って!!)

マミさんもこの緊迫した空気に手を握りじっと見守る。
あと少し、あと少しなのだ。

まどか(あと少しでほどかちゃんの可愛いお口にほむらちゃんの卵焼きが……!)

ほどか「じゃ、じゃあこの卵焼きを……」

意を決したように卵焼きに箸を伸ばそうとするほどかちゃん。





まどマミ(きた!!!)

ついに、ついにこの時が!!!

後、もうほんの少しでほどかちゃんの箸が届く。
そう絆を深める黄金色のアーティファクト、卵焼きに!

まどか(生きてきた! 私はこのために生きてきた!)

作戦は成功。これで私達の目的は達成された。
そう確信した私。

だが

さやか「この卵焼きうまそうだよねー。もらい」

成功は一人の悪魔によって握りつぶされた。

ほどか「あ……」

まどマミ「」

100: 2012/07/21(土) 22:40:02.50
さやか「おぉー。うまい! ほむらってば本当に料理うまいじゃん!」

ほむら「そう? そう言われると嬉しいわ」

さやかああああああああああああああああああああああああああんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
貴様あああああああああああああああああああああああああんんんんあああああ!!!!!!!!!!!!!!!
なにして、なにをしてええええええええええんんんんんああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

まどか(なにしてるのさやかちゃん!!! ほんと……なにして!!!)

バカなの!? この子バカなの!!?
空気読めないってレベルじゃないでしょ!!!
え!!? ……バカなの!!?

マミ(美樹さんが卵焼きを取ったっていうんなら頃すしかないじゃない!)

マミさんもあまりの事態に怒りを露わにしてるよ!!!
そりゃそうだよ!! 怒るよ!! 

ほどか「あぅ……」

うわああああああああ!!!!!!???? ほどかちゃんがしょぼんとしてる!!
すっごく落ち込んでるよ!!!!




まどか(どうしようどうしよう!! こんなの想定外だよ!)

なにか、なにか解決案を!! ダメだ! 思いつかない!

まどか(この状況を打開する方法なんて学校で習ってないよ!!)

ふざけないでよ!! なんの為の学校なの!?
困った時には全然役にたたないじゃない!!

まどか(腐ってる! この国の教育は腐ってる!!)

私はこの国の教育に怒りを隠しきれませんでした。
この国は粛清されるべきだとも思いました。

まどか(ゴメン……。ほどかちゃん……。この国のせいで……)

ほどかちゃん。彼女もまたこの国の腐敗(さやかちゃん)の犠牲者なのです。




ほどか「……」

しょんぼりするほどかちゃん。見ていて心を抉られるような痛みを覚えます。

さやか「あ、あれ? 私なんかやらかした?」

今更空気を読んだのかこの異常な雰囲気に気づくさやかちゃん。

まどか(いまさらなにを!! さやかちゃんはいつもそうやって終わってから気づくんだ!!)

本当にいまさらどうしようもありません。
もう手遅れです。もう誰にもこの状況を覆すなんて……。

私が全てに絶望し諦めかけたその時でした。

ほむら「はい。食べなさい」

この腐敗した世界に神が舞い降りました。

101: 2012/07/21(土) 22:40:28.55
ほどか「……え?」

ほむら「欲しかったんでしょう?」

ほむらちゃんがほどかちゃんのお弁当にポンッと置いたその光り輝く黄金色の宝石。
それは、この暗く澱んだ世界に差す一筋の光明。
まさに神の救いそのものでした。

ほどか「あ、あの……」

ほむら「全く、卵焼き一つでそこまで落ち込むだなんて……。鹿目ほどか、あなたはなんて愚かなの」

ほどか「あぅ……」

今度は怒られてしょんぼりするほどかちゃん。するとそれを見たほむらちゃんは

ほむら「食べないのかしら?」

っと卵焼きを取り上げようと箸を伸ばす。





ほどか「あ! 食べます!! とらないでぇ!」

慌てて卵焼きを隠し、食べる意志があることを告げるほどかちゃん。

ほむら「そう。なら早く食べなさい。時間もあまりないんだから」

ほどか「は、はい」

そう言われ急いで卵焼きを口にするほどかちゃん。
一口、二口と口に運び咀嚼をし、それを飲み込んだ彼女は今まで見たこともないようなへにゃっとした、だらしない笑みを浮かべ

ほどか「おいしいです……。すごく、おいしいです」

っと言った。




ほむら「そう」

その言葉にそっけなく返事を返すほむらちゃんでしたが、なんだかその顔は満更でもないように見えました。

まどか(よかった……。よかったよぉ……)

マミ(いい話だわ……)

思わぬ感動のシーンに思わず涙を浮かべる私とマミさん。
全米が泣くこと間違いなしでしょう。

さやか「あー。なんか丸く収まった感じ?」

空気でありながら空気を読めない子がなにかのたまっています。
とりあえず、私はその子に笑顔で近寄り

まどか「さやかちゃん」ニコニコ

さやか「あ、なに? まどか」

まどか「お前だけは絶対に許さん」

っと優しくいってあげるのでした(・ω<) テヘペロ

さやか「」

――――――――――――
――――――――――
――――――――

102: 2012/07/21(土) 22:40:54.16
ぐーてんたーく! 鹿目まどかです!
一波乱あったお昼ご飯も、ほむ神様の救いのほむほむにより和やかに終わり、今は時間をすっ飛ばして放課後!
本当は放課後ティータイムに洒落込んでバンド活動でも始めようかと思ったのですが魔法少女はそうもいかない。

マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に魔女探しは足頼みよ。
   こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿っていくわけ」

昨日の工事現場に集まり、マミさんが自分のソウルジェムを使い魔女を探す。
そう、ほどかちゃんが私達を守るために逃がした魔女を今日はやっつけようというのだ。

さやか「意外と地味ですね……」

なぜ、さやかちゃんがいるのかというと

さやか『私も気になるしついていくね』

っと強引についてきたのでした。

ほどかちゃんとほむらちゃんはさやかちゃんが来ることに反対していたけれど(私がついていくことにも反対みたいだったけど、そこは、ほら、ね)

さやか『魔法少女が三人もいたら大丈夫っしょ』

っとの言葉とマミさんの

マミ「まぁここまで巻き込んでしまったのだし、
   こっそり後をつけられるよりかは最初から一緒に行動していたほうが守りやすいんじゃないかしら」

っとの言葉に渋々納得する二人でした。






まどか(っていうかバレバレだったんだね)

置いて行かれたら後をつけるっていうの。
さやかちゃんも同じだったらしく、その言葉に苦笑していた。

さやか「光、全然変わらないっすね」

しばらく歩いてみるが一向に魔女が見つかる気配は無し。

マミ「取り逃がしてから一晩経っちゃったからねー……。足跡も薄くなってるわ」

まどか「あの時、すぐ追いかけていたら……」

その私の言葉に申し訳なさそうな顔をするほどかちゃん。

ほどか「ごめんなさい……。私の責任です……」

まどか「あ、そ、そういう意味じゃなくてね」

失言だった。自分の迂闊な言葉に反省する。

103: 2012/07/21(土) 22:41:22.48
マミ「仕留められたかもしれなかったけど、あなた達を放っておいてまで優先することではなかったわ。
   だからほどかさんの判断は正しかった。あの状況なら私だって同じように行動していたもの」

そういって顔だけを後ろに向け

マミ「暁美さんもそう思うでしょ?」

っとほむらちゃんに話しかけるマミさん。

ほむら「そうね。一般人がいる以上その選択が正しいわ」

そのほむらちゃんの答えに満足げに笑顔で頷き、

マミ「ね、気にすることじゃないわよ」

ほどかちゃんに微笑むのでした。

ほどか「ありがとうございます」

そして笑顔に笑顔で返す。




まどか「……ごめんなさい」

自分が足手まといだということを改めて痛感する。
彼女達の行動を狭めているのだと。

マミ「ふふ、いいのよ」

そんな私の気持ちを受け取ったのか私にも微笑んでくれるマミさん。

さやか「うーん! やっぱりマミさんは正義の味方だ!」

だね。
優しくて、大人で人の為に頑張っているマミさんは正義のヒーローみたいでかっこいい。

まどか(私もマミさんみたいになれたらなー……)

そしたら、ほむらちゃんとほどかちゃんも私のことをもっと頼ってくれるんだろうな。





さやか「ねぇマミさん……。魔女のいそうな場所せめて目星とかはつけられないの?」

それからしばらく歩き続け、魔女は見つかる気配もなく、焦れたさやかちゃんがそう質問した。

マミ「魔女の呪いの影響でわりと多いのは……。交通事故や傷害事件よね。
   だから大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと……」

マミさんがある程度、魔女が出現しそうな場所を説明してくれる。

マミ「後は、自殺に向いてそうな人気のない場所。
   それから、病院なんかに憑りつかれると最悪よ」

病院の言葉に反応するさやかちゃん。

マミ「ただでさえ弱っている人達から生命力を吸い上げられるから。目もあてられないことになる」

そこまで言い切るとマミさんのソウルジェムに反応があった。

マミ「かなり強い魔力の波動だわ」

その言葉に一気に臨戦態勢になるほむらちゃんとほどかちゃん。

マミ「近いかも……」

104: 2012/07/21(土) 22:41:54.94
―― 廃ビル ――


魔力の痕跡を辿り、着いたのはもう使われていないであろうビル。

マミ「間違いない。ここよ」

ここに魔女がいる。
緊張感から少し汗をかく私。
いよいよ魔女との戦いが始まるんだ。

さやか「マミさんあれ!」

さやかちゃんがビルの屋上を指差し私達に注意を促す。

さやかちゃんが差した方を見るとそこには今にも飛び降りようとする人影が――。

まどか「きゃああ!!」

私達がその人影を捉えた瞬間、その人は屋上から飛び降りる。
まさか人の自殺の現場を見るとは思わず叫び声を上げる私。

そんな中、マミさんがいち早く変身し前に飛び出す。




マミ「はっ!」

マミさんが手をかざすと黄色に光る帯状のものが現れ、飛び降りた人。
今でははっきりわかるが、OLであろう落下する女性の体をクッションとなって優しく支える。

支えられ落下のスピードを弱めたその人の体はゆっくりと下降し安全に地面に着地する。

マミさんがその人の体を観察し、首元にあるマークに気づくと一言。

マミ「魔女の口づけ……」

と呟き。

マミ「やっぱりね」

っと言った。




私達は急いでマミさんに近寄り女性の安否を確かめる。

まどか「こ、この人……」

マミ「大丈夫。気を失っているだけ」

その言葉に、ほっと一息つく私達。

マミ「いくわよ」

そういってマミさんはビルの中へ。いつの間にか変身を終えていたほむらちゃんとほどかちゃんもそれに続くのでした。

105: 2012/07/21(土) 22:42:48.24
――ビル内 エントランス ――


ビルの中に入り私達は辺りを確認する。
すると階段の上にマークが浮かびあがった。

マミ「今日こそ逃がさないわよ」

そう告げた後にさやかちゃんが持ってきていたバットに触れる。
マミさんに触られたバットは淡い輝きを放ち変化した。

さやか「うわわわわ」

まどか「すごい……!」

マミ「気休めだけど……、それで身を守るくらいの役にはたつわ。絶対に私達の傍を離れないでね」

私達に忠告すると、マミさんとほむらちゃん階段を先に上る。





ほどか「後、これを渡しておきます」

ほどかちゃんがなにか小さいトロフィーのような形をしたストラップを渡してくれる。

さやか「なにこれ?」

ほどか「トロフィーシステムという、戦車等に襲いかかるミサイルやロケットを迎撃するための防衛システムを
    魔女戦ように魔法で変化させたものです」

なにやら物騒なことを口走るほどかちゃん。
戦車て、ミサイルて……。

ほどか「私の魔法で魔女や使い魔の攻撃は自動で迎撃するようになっているので、これで防御の面は安全だと思います」

さやか「はぁー。魔法って本当にすごいねぇ……」

そんなことまで出来るとは……。
魔法恐るべしだね。




まどか「うん、ありがとう!」

やっぱり魔法少女が三人もいると頼もしい。無敵感がハンパないね。

ほどか「でも、絶対に油断しないでくださいね?
    魔女の結界内ではなにが起きるかなんてわからないんですから」

心配そうに私達の顔を見るほどかちゃん。
それだけ危険な場所なんだろう。

まどか「うん。わかってる。絶対にほどかちゃん達の傍からは離れない」

あなたを守るためにも。

ほどか「……。わかりました」

私の言葉に少し目を細めほどかちゃんは頷いてくれる。
その目からはなにがあっても私達は守ってみせるという意思を感じられる。

マミ「話はすんだ? いくわよ!」

まどさや「はい!」

106: 2012/07/21(土) 22:43:22.70
―― 魔女結界内 ――


魔女の結界内に入り魔女のもとへと急ぐ私達。
主にマミさんが先頭で使い魔を葬り、ほむらちゃんがその援護。
ほどかちゃんが私とさやかちゃんの周りを固めるように守るといったふうに進んでいる。

さやか「なんか楽勝って感じだね」

隣で魔法のバットを振るいながら私に話しかけるさやかちゃん。

まどか「うん。マミさんもそうだけど、ほむらちゃんも凄いもん」

マミさんは戦国時代にあった火縄銃のようなものでだいたいの敵を一掃し、零れた敵はほむらちゃんが拳銃で的確に撃ち倒す。
その二人の連携は見ていてとても頼りになるもので、これならどんな敵がきても怖くないとそう思えた。

マミ(……やっぱり、私と暁美さんは共に戦ったことがあるようね。
   私が行動しやすいように的確に援護をしている)

マミ(おかげでとてもやりやすいわ)

ほむら「……」




さやか「うん。なんかあの二人息ばっちりだよね。阿吽の呼吸っていうの?
    なんか夫婦みたい」

まどか「ああん!!?」

さやか「ひ!? ま、まどか?」

まどか「なに? さやかちゃん」

さやか「え、あれ? 今すごい顔……」

まどか「なに言ってるの? 寝ぼけてる場合じゃないよ」

さやか「う、うんそうだね」

全くさやかちゃんは……。
なにをバカなことを。
ほむらちゃんは私のだよ? 教えたでしょ?

まどか(ほんとにもう)




ほどか「二人とも緊張感がなさすぎますよ」

私達のゆるさを咎めるほどかちゃん。

まどか「ごめんね。さやかちゃんが変なこというから」

さやか「私のせいかい!」

ほどか「はぁ……。まぁいいです。お二人は私が守りますから」

そういってほどかちゃんは以前とは違った銃で私達に迫る敵を撃ち続ける。

さやか「今度のほどかの銃ってあれだよね。007の使ってるやつだよね」

さやかちゃんがボソボソとほどかちゃんの銃のことについて説明する。

まどか「そういえば、あんな感じだったね」

それよりも私はほどかちゃんの守りますからの一言に感動が収まらない。

まどか(本当にいい子に育って……)

抱きしめたくなるね。ホント。

ほどか(なんだろう、無性にパパに向けて撃ちたい)


107: 2012/07/21(土) 22:43:57.83
―― 最深部 ――

そんなこんなで奥深くまで危なげなく進んだ私達。
そして遂に。

マミ「見て、あれが魔女よ」

魔女のもとに辿り着いたのでした。

さやか「う、グロイ……」

まどか「あんなのと戦うんですか……?」

ほむら「……」

ほどか「……」

始めてみる魔女は想像よりもとっても恐ろしくて、今までの楽勝ムードを一気に消してくれたのです。

マミ「大丈夫。負けるもんですか」




そう言ってさやかちゃんのバットを地面に突きつける。
すると私達の周りにほどかちゃんが張ってくれた結界と似たようなものができたのです。

さやまど「わぁ……」

マミ「下がってて、行くわよ暁美さん。ほどかさんはまどかさん達をお願い」

ほむら「えぇ」

ほどか「はい!」

ほどかちゃんに私達の守りを託し、
魔女の前に降り立つマミさんとほむらちゃん。





さやか「ね、ねぇ本当に大丈夫なの?」

それをさやかちゃんは心配そうに見守る。
正直、私も心配だ。

あの魔女の姿を見てしまうと、人が勝てるのかと思ってしまう。
それ程に魔女の姿は異様で奇怪だった。

ほどか「大丈夫ですよ。マミさんとお母さんはとっても強いですから」

信頼しているのだろう。自信を持ってそういうほどかちゃん。
その自身に満ちた声に私達も安心し、ただ黙って見守ることにした。

ほどか(……ごめんね)

ただ、なぜかほどかちゃんが魔女の方を辛そうに見ていることだけが気になったけれど――。




ほむら「まずは私が相手の注意を引き付けるわ。巴マミ。あなたはその隙を狙って」

単純な攻撃力は巴マミのほうが上。しかし彼女の技は隙が多い。
ならば小回りの利く私が相手の注意を集めて隙を作るのがいいだろう。

ほむら(そう、あなたから教わったのだし)

ちらりと巴マミの方を見る。
私の言うことがわかっていたのか最初からそのつもりだといわんばかりに攻撃の準備をする。

マミ「わかったわ、くれぐれも私の攻撃に巻き込まれないでね?」

そう忠告するマミだが、その顔からはそんな下手はうたないけど。っと言いたそうに見える。

ほむら「あなたがそんなミスをするわけないじゃない」

その言葉を送りさっそく魔女のもとへ向かう。

マミ「ふふ。私のことを良く知ってるみたいじゃない」

108: 2012/07/21(土) 22:44:55.72
―ほむら―

ほむら「まずは私が相手の注意を引き付けるわ。巴マミ。あなたはその隙を狙って」

単純な攻撃力は巴マミのほうが上。しかし彼女の技は隙が多い。
ならば小回りの利く私が相手の注意を集めて隙を作るのがいいだろう。

ほむら(そう、あなたから教わったのだし)

ちらりと巴マミの方を見る。
私の言うことがわかっていたのか最初からそのつもりだといわんばかりに攻撃の準備をする。

マミ「わかったわ、くれぐれも私の攻撃に巻き込まれないでね?」

そう忠告するマミだが、その顔からはそんな下手はうたないけど。っと言いたそうに見える。

ほむら「あなたがそんなミスをするわけないじゃない」

その言葉を送りさっそく魔女のもとへ向かう。

マミ「ふふ。私のことを良く知ってるみたいじゃない」

ゲルトルート「ぉぉぉぉぉぉぉ……」

ほむら「……大きい図体の割にはすばしっこい」

この空間内をすばやく動き回る魔女にたいして、サブマシンガンを使い相手の動きを制限するように撃ち続ける。

ほむら(そういえばあの子も実銃を使っていたわね)

チラリとまどか達の傍にいる魔法少女、鹿目ほどかの顔を見る。

ほむら(あの子がそんなものを必要としているとは思えないのだけど)

彼女の力ならそんなものに頼らずとも魔法の武器を使えばいいはずだ。
現にまどか達に渡したトロフィー等は魔法で作り出したはず……。

ほむら(あくまで力を見せたくはないということかしら)

理由はわからないが、そういうことだろう。

ほむら(まぁいいわ、いずれ必ず化けの皮を剥いであげる)

今はまどかを守ってくれるあの子の存在は有難い。
まどかに危害を加えないというのなら、その時まで利用すればいいだけの話なのだから。



ほむら(……今すべきなのは)

この魔女を葬り去る。ただそれだけ。

ほむら(だいぶ弱ってきたようね)

私の攻撃はあまり当たっていないが、マミの攻撃は今のところ全て命中している。

ほむら(狙い通りね)

基本的に魔女の戦い方はワンパターンであり思考も単純なもの。
目先の危機にばかり捉われて行動するせいで隙ができ、相手の本当の狙いを避けるまでには至らない。

ほむら(マミもそれをわかって私が牽制しやすいように敵を攻撃している……)

魔女が私に反撃しないように、反撃の素振りを見せるとすぐに相手の動きを止めるように攻撃。
おかげで私は自分の役割を果たしやすい。


ほむら(まさか、あなたとこうして戦える日がまたくるなんてね)

こんなことは思いもしなかった。

ほむら(その点においてもあなたには感謝しているのよ)

鹿目ほどかの方をもう一度見る。
相変わらず彼女はまどか達を守ることに専念しているようだ。

ほむら(まぁ、それとあなたを信頼するかはまた別の話だけれど……)

一定の攻撃を受けた魔女。もうそろそろ終わりかと思えた直後、マミのいる方から声が聞こえた。


109: 2012/07/21(土) 22:45:21.49
ほむら「!」

マミ「っ!」

さやか「あ!」

そちらを見ればマミが使い魔に足を絡め捕られ、魔女の触手により体の自由を奪われていた。

マミ「くっ!」

魔女は縛ったマミをそのまま壁に打ち付ける。

空間内に轟音が鳴り響き、壁に打ち付けられたマミが苦しげな表情を浮かべる。
しかし、魔女の攻撃は止まずそのままマミを逆さに宙づりにし、持ち上げる。

ほむら「巴さん!」

助けなければ。
そう思いマミに近寄ろうとするが、それは意外にもマミ本人に止められる。

マミ「大丈夫。これから共に戦い続ける仲間に、あんまりかっこ悪いところは見せられないものね!」

そう告げたマミ。
その瞬間地面から無数の糸が出現し、今度は魔女の方が拘束される。




マミ「惜しかったわね」

魔女の拘束から逃れたマミが胸元のリボンを外し、降下。
マミの周囲を舞ったリボンはそのままマミの手に戻り、その姿を変質させた。

マミ「暁美さん下がって!」

ほむら「!」

その言葉に急いでその場から離れる。
私が離れた頃には、マミの両手には超巨大のマスケット銃が存在し、魔女にその砲口を向けていた。

マミ「ティロ――」

そのまま、その巨大な銃を抱え落下するマミは、魔女が聞くであろう最後の言葉を解き放つ。

マミ「フィナーレ――!!」

その瞬間、マミの持つマスケット銃は咆哮を上げ魔女に対し超強力な一撃を浴びせかけるのであった。

雷鳴のような響きの後に残るのは静寂。今まで私達が戦っていた魔女はその存在を葬り去られ、
後には、着地したマミがどこかから出した紅茶を啜っている姿が残っていた。

110: 2012/07/21(土) 22:45:49.28
まどか達の方を振り返り笑顔だけで終わったことを告げるマミ。

さやか「か、勝った……?」

まどか「すごい……」

空間が歪みもとの世界に戻る。
マミは魔法少女の変身を解き、魔女が落としたグリーフシードを拾う。

まどか「それって……」

マミ「えぇ、グリーフシードよ」

さやか「魔女の卵ってやつ?」

ほむら「そうよ。……キュゥべぇいるのでしょう?」

QB「ここにいるよ」

今までどこにいたのかインキュベーターが姿を現す。





マミ「じゃあさっそく使いましょうか」

ほどか「今回は私はいいです。ソウルジェムも穢れてませんし、マミさんとほむらさんで使ってください」

鹿目ほどかが自身のソウルジェムを見せ穢れの無いことを告げる。

マミ「そう? じゃあ遠慮なく……」

マミがグリーフシードにソウルジェムの穢れを吸わせる。

マミ「はい、暁美さんも」

そして私にグリーフシードを渡す。

ほむら「えぇ」

それを受け取り、同じように穢れを吸わせる。

ほむら「これ以上は無理みたいね」

ソウルジェムの穢れを全て吸い、
真っ黒になったグリーフシード見てそう呟く。





マミ「そうみたいね」

さやか「あの、それってそのまま放っといたらどうなるの?」

さやかが真っ黒になったグリーフシードを指差しそう質問してくる。

ほむら「魔女になるわ」

さやか「うえぇ!? やばいじゃん! それ!」

マミ「大丈夫よ。そのためにキュゥべぇがいるんだから」

マミが私の手のひらにあるグリーフシードを掴みキュゥべぇに向かって投げる。

QB「よっと」

それを取り込み処理するインキュベーター。
そんな様子を見ていたさやかは

さやか「なんか……。グロ……」

っと引いていた。

111: 2012/07/21(土) 22:46:15.61
―まどか―

―― 廃ビル前 ――


OL「ここは……? あれ? 私は?
   い、やだ、私……。なんで、そんな、どうして、あんなことを!」

ビルの前に気絶していた女性の介抱をするために戻ってきた私達。
ちょうど彼女は起きたばかりで状況を理解し、パニックになる彼女をマミさんが優しく抱き留めていた。

マミ「大丈夫、もう大丈夫です。ちょっと悪い夢を見ていただけですからね」

さやか「一件落着ってとこかな」

まどか「うん……」

怯える女性を宥めるマミさんを見ていると、無事に魔女を倒し、本来なら氏んでいたはずの人を助けることができたんだと、
なんだかとても誇らしげな気分になってきました。
そして、みんなで協力して魔女を倒したという事実がこれから起こる苦難に対してもみんなで頑張れば乗り越えられる。
みんなで力を合わせれば達成できると確信させてくれて、きっと私達の未来は幸せで笑顔に満ち溢れてるんだろうって、
甘い考えかもしれないけど、もしそうなら、それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――



112: 2012/07/21(土) 22:46:47.06
美樹さやかはある部屋の前で壁に背を預け立っていた。

――上条恭介。

その部屋の主の名前がネームプレートによって伺い知ることができる。


はぁ――。


なにか、大事な覚悟を決めるように美樹さやかはひとつ溜息を吐く。
そして意を決したのか、少し真面目な顔になった彼女は部屋の中に入ろうと足を動かす。

部屋の住人である上条恭介は清潔さを保ったベッドに横たわり、
その視線を開かれた窓の外に向けていたが、来訪者であるさやかに気づくと少し微笑みながら


やぁ――。


っと挨拶をする。

そしてその挨拶に笑顔で答えるさやか。

そのことから二人が浅からぬ関係であることが読み取れる。




さやかは彼の傍に近寄りベッドの近くにあった椅子に腰かけた。


はいこれ――。


さやかが恭介に以前購入したであろうCDを渡す。

それを見やり相変わらず微笑を浮かべながら恭介は素直にそれを受け取る。


わぁ――。いつも本当にありがとう。レアなCDを見つける天才だね――。


そして、彼女の贈り物に対し最大限の賛辞を贈る。

その賛辞に彼女は普段友人には見せないような照れを顔に浮かべ、


はは、そんな運がいいだけだよ、きっと。


はにかみながらもその賛辞を受け取る。

113: 2012/07/21(土) 22:47:15.75
恭介は近くのポータブルレコーダーを手に取り、
今贈られたばかりのCDをセットし自分の耳にイヤホンをかけながらさやかに話す。


この人の演奏は本当に凄いんだ。さやかも聞いてみる?


そう言いながらさやかに片方のイヤホンを差し出す。


い、いいのかな――。


その申し出にさやかはさっきよりも照れながら、イヤホンを受け取る。


本当はスピーカーで聞かせたいんだけど、病院だしね――。


恭介の言葉によりここが病院であり、数ある中の一病室であることがわかる。

片方のイヤホンを分け合ってつけたさやかと恭介は少しお互いを近づける。
その行為にさやかの心はまた揺れ動くのであるが、決して嫌な素振りを見せることはない。

そう――。美樹さやかはこの少年に対し恋心を抱いていた――。




ゆっくりと綺麗な音色が流れ出す。

その音色にリラックスしたのか、
さやかは目を瞑り自分が恭介に淡い思いを抱くきっかけになった、昔の光景を思い出す。

時が流れ、さやかが音色に聞惚れていると、
ふと、恭介の方から鼻をすする音が聞こえる。

さやかはその音が気になり、恭介の方に顔を向ける。

恭介の顔は最初部屋にはいった時のように外に向けられていた。

ただ、違う点を挙げるとすれば、彼の体が震えていたことであろうか。

さやかはその姿を見、彼が泣いていることに気づいた。が――。

彼が泣く理由を理解している彼女は慰めの言葉をかようと考えるが、なにも言えなかった。
ただ寂しげな、苦しげな表情を浮かべ、彼の涙に気づかないふりをするしか方法がないのであった――。


114: 2012/07/21(土) 22:47:43.51
 ―― とある公園 ――


マミ「ティロフィナーレ!」

ぶおなせら! 鹿目まどかです!
今日も今日とて魔女退治! いつものメンバーで魔女をあっさり片づけてほっと一息。

さやか「いやー、やっぱマミさんってかっこいいねー」

バットを担いださやかちゃんがマミさんを褒めながら近寄る。

マミ「もう……。見世物じゃないのよ?」

そう言いながら電灯の上から降り変身を解くマミさん。

マミ「危ないことしてるって意識は忘れないでいてほしいわ」

そのマミさんの忠告をバットを天に掲げ

さやか「イエース!」

っとさやかちゃんは元気に答える。





ほむら「はぁ……」

ほどか(さやかさん本当にわかってるのかな)

そして、同じように変身を解いて私達のもとに近寄るほむらちゃんとほどかちゃん。

まどか「あっ、グリーフシード落とさなかったね」

そういえば魔女を倒せばあるはずのものがない。

QB「今のは魔女から分裂した使い魔だからね。グリーフシードは持ってないよ」

まどか「魔女じゃなかったんだ」

さやか「なんか、ここんとこはずればっかだね」

さやかちゃんが最近の不発ばかりに気落ちしたような声を出す。
確かに、結構倒したりしてるのになー。でも、使い魔ばっかりみたい。





マミ「使い魔だって放っておけないのよ、放っておけば分裂元と同じ魔女になるんだから」

ほどか「そうですね。それに使い魔が人間を襲うこともありますし」

さやか「それマジ!?」

マミ「本当よ、だから使い魔もできるだけ倒しておかないと」

ほむら「……」

ほどか「あの、ほむらさん、お疲れでしょうか……?」

さっきから無言のほむらちゃんにほどかちゃんが心配そうに声をかける。

ほむら「あなたには関係ないわ」

だけどそれを突っぱねるほむらちゃん。

ほどか「ご、ごめんなさい……」

冷たくあしらわれ落ち込むほどかちゃん。

115: 2012/07/21(土) 22:48:58.18
はぁ……。また、か……。

まどか(やっぱり、なんかほどかちゃんには冷たいんだよね……)

最近、一緒に行動するようになって、
私はともかくマミさんやさやかちゃんに対しても徐々に心を開いてくれるようになったと思う。
でも、

まどか(ほどかちゃんにだけは相変わらず変化なしなんだよね……)

お弁当の一件以来、あれで態度も軟化するかと思ったけどそうでもない。
ほどかちゃんはほどかちゃんなりにほむらちゃんに対してなにかと気を使ったり話しかけたりしてるんだけど。

まどか(肝心のほむらちゃんがあれじゃあね……)

ほむら「まどか、怪我はない?」

そうやってあれこれと考えていると、ほむらちゃんが私に声をかけてくれる。

まどか「え? あ、大丈夫だよ! ほどかちゃんが守ってくれてるし」

私とさやかちゃんはほどかちゃんが身を挺して守ってくれている。
だから怪我などはするはずがないのだ。

まどか(むしろ怪我をしているのは……)

ほどかちゃんをちらっと見る。

彼女は隠しているつもりだろうけど、
今日もバッドを振り回しながら戦うさやかちゃんに近寄る使い魔の攻撃から守って傷を負ったはずだ。

まどか(本人はかすり傷だから大丈夫って言ってたけど……)

確かに傷は浅いみたいだけど、それでも大切な娘が傷を負ってまで戦うのは我慢できない。

まどか(とりあえず、後でさやかちゃんには制裁を加えるとして)

この二人の仲はなんとかしないとね。

マミ「じゃあいきましょうか」

マミさんがそう言って帰宅しようと促す。

さやか「そういえば、魔法少女になる時って魔法少女になる代わりに願い事を叶えてもらえるんだよね」

帰り道。さやかちゃんが唐突にそんなことを言いだした。

マミ「ええ、そうよ。大体のことなら叶えてもらえるわ」

そうよね? っとキュゥべぇに目配せするマミさん。

QB「そうだね。まぁそのあたりはその人間の持つ才能によるところが多いけどね」

キュゥべぇがマミさんの説明に補足をいれ説明する。

さやか「そっかー……」

なにか考え込むさやかちゃん。

マミ「なに? なにか叶えてほしい願い事でもあるの?」

さやか「いや、そんなにたいしたことじゃないんだけどね! ちょっとね……」

そう言って誤魔化すさやかちゃんだが明らかに様子がおかしい。

ほむら「やめておきなさい」

今まで黙っていたほむらちゃんが急に声をあげる。

さやか「え?」

ほむら「魔法少女になんかなるものではないわ。特にさやか、あなたのような人間は」

さやか「な、なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのさ!」

ほむらちゃんの言葉にさやかちゃんは少しムキになる。

まどか(あー。また始まったよ)

この二人、決して仲は悪くないのだけど、些細なことで言い合いになる。
大体はさやかちゃんのバカな発言にほむらちゃんが鋭い、っというか冷たいツッコみをいれて始まるのだけど、

116: 2012/07/21(土) 22:49:58.72
まどか(でも、今日のはほむらちゃんの方が……)

あんな言い方をされた誰だって怒るに決まってるよね。

ほむら「あなたも見てきたでしょう? 魔法少女の戦いは常に危険と隣合わせ、いつ氏ぬかもわからない状況下での戦いを強いられるのよ」

そこで一息ついて話を続ける。

ほむら「あなたのように感情に流されやすいような人は魔法少女には向かないわ」

だからやめておきなさい。そう締めくくる。

一見さやかちゃんのことを心配してそういったようにも聞こえる。
だけど、さやかちゃんは頭に血が昇っているのかそんなことには気づかない。

さやか「そりゃあたしはマミさんみたいに落ち着いてもないし、ほどかみたいに器用じゃないけどさ!」

でも、っと声を荒げ

さやか「そんな言い方ってないんじゃないの!? 本当にほむらって冷たいよね!!
    もう少し言い方ってものを考えた方がいいんじゃない!!」

完璧にお怒りモードに変わってしまった。




まどか(あー。どうしよう……)

ほどか「あぅ……」

ほどかちゃんもおろおろしている。
基本的にほむらちゃんの味方なほどかちゃんだから、
こんなふうにほむらちゃんが悪い場合はどう仲裁したらいいのかわからないみたいだ。

マミ「はいはい、ケンカはやめましょうね。もう夜も遅いのだし、近所迷惑よ」

マミさんが喧嘩両成敗と二人の頭をコツンっと優しく叩き、場を収める。

ほむら「ほむ!」

さやか「うっ……。だってほむらが!」

怒りの収まらないさやかちゃんが今度はマミさんに食って掛かる。

マミ「でも、暁美さんの言う通りだと思うわよ?」

マミさんがほむらちゃんの言葉を肯定しさやかちゃんの怒りを宥めにかかる。

さやか「マミさんまで!」

117: 2012/07/21(土) 22:50:24.32
マミ「魔女との戦いは本当に危険なことなの。私だって今まで何回も氏にかけたことはあるわ」

そう語るマミさんの表情は真剣そのものだ。
さやかちゃんも何かを感じたのか黙ってその言葉を聞いている。

マミ「それに、実際に魔女との戦いで命を落とした魔法少女も見たことある。
   暁美さんの言う通り魔法少女の戦いは常に危険と隣り合わせなの」

だから、と言葉を続け

マミ「暁美さんは暁美さんなりにあなたを心配して魔法少女になるべきではないと言ったんだから、
   少しはその意図を組んであげてもいいんじゃないかしら」

そう言ってニッコリ微笑むマミさん。
その笑顔にすっかり毒気を抜かれたさやかちゃんは渋々ながらも頷くのでした。

マミ「それと、暁美さん?」

ほむら「な、なによ」

マミ「あなたも心配なのはわかるけどもう少し言い方を考えなさい。
   あんな言い方じゃケンカを売っているようなものよ?」

メッとほむらちゃんにもお説教をする。





ほむら「べ、別にさやかが心配だから言ったわけじゃ……」

プイッとそっぽを向くほむらちゃん。怒られて心外なようだ。

さやか「怒られてやんの」プププ

そうやってほむらちゃんをからかうさやかちゃん。
そんなさやかちゃんに腹がたったのかほむらちゃんは

ほむら「いい度胸ね美樹さやか。覚悟しなさい」

銃を構えるのでした。

さやか「うわあああ!! あんたそれは反則でしょ!?」

まさかの展開に驚いて逃げ回るさやかちゃんを追い掛け回すほむらちゃん。

ほむら「安心しなさい。サイレンサーはついてるから騒音はでないわ」

さやか「そういう問題じゃなーい!!」

118: 2012/07/21(土) 22:50:58.01
マミ「はぁ……」

そんな二人を溜め息を吐きながら捕まえるマミさん。
そして今度は強めにゴンッと頭を叩くのでした。

ほむら「ほむ!!」

さやか「いだ!!」

マミ「二人とも? あんまりおいたが過ぎると……」

ティロフィナるわよ?

っとなんだか凄く怖い笑顔でマミさんはそう言い捨てる。
そんなマミさんに二人は……。

ほむさや「ご、ごめんなさい」

っと素直に謝るのでした。




ほどか「……」

そんな様子をぼけーっと眺めるほどかちゃん。

まどか「ほーどかちゃん」

そんなほどかちゃんに抱き着く。

ほどか「わわ。な、なんですか」

急に抱きしめられたので驚くほどかちゃんだけど、相変わらず拒みはしない。

まどか「別にあの二人は本気でケンカしてたわけじゃないからね?」

ほどか「え?」

まどか「あの二人にとってはあれがコミュニケーションみたいなものなの」

かなり迷惑なものではあるけど。





まどか「だから、心配しなくても大丈夫だよ?」

ほどか「……」

きっとほどかちゃんはお母さんが友達とケンカをしているのを見て不安に思ったのだろう。
優しい子で凄くお母さんが大好きな子だから、友達と仲良くしてほしい。
単純にそう考えたんだろうな。

まどか「困ったママだね。可愛い娘にこんなに心配させて」

よしよしと頭を撫でる。
本当にほむらちゃんには困ったものだ。
可愛い私達の娘にここまで苦労させるんだから。

ほどか「お母さんは悪くありません」

そう言いながらほどかちゃんはマミさんに怒られて正座しているほむらちゃんを見ている。

ほどか「だって、お母さんはお母さんですから」

まどか「ふふ、なにそれ」

理由になってない理由を言うほどかちゃん。
でも、その言葉でお母さんが大好きなのは伝わってきて私はなんだか幸せな気持ちになるのでした。

119: 2012/07/21(土) 22:51:26.43
まどか「そういえばマミさんはどんな願い事をしたんですか?」

一騒動あった帰り道。
ふと、私は気になった疑問を口にする。

まどか(ほむらちゃんとほどかちゃんの願い事はだいたい知ってるんだけどマミさんのは聞いたことないんだよね)

すると、今までほどかちゃんと談笑していたマミさんの足が止まる。

まどか(あ、あれ。なんか空気が……)

まずいことを聞いたかもしれない。

まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて」

焦りながらも迂闊な質問をしたことを後悔しながら取り繕う。
私の焦りを察したかこの空気をなんとかする為か、マミさんが困ったような表情をしながら私の質問に答えてくれる。

マミ「私の場合は……」

目を瞑り何かを思い出すかのように話し続けるマミさん。




マミ「考えてる余裕すらなかったってだけ……。
   後悔してるわけじゃないのよ? 今の生き方はあそこで氏んじゃうよりはよっぽどよかったって思ってる」

でもね、っと言い閉じていた目を開けるマミさん。

マミ「ちゃんと選択の余地がある子にはキチンと考えた上で決めてほしいの」

ちらりとさやかちゃんの方を見て、また歩き出すマミさん。
少し、辛そうなその姿に私達はなにも言わずただついていくだけだった。

マミ「私にできなかったことだからこそ、ね……」

マミさんの過去になにがあったのかはわからない。
でもマミさんの言葉は重くて軽々しい気持ちで魔法少女にはなってはいけない。
そう私は思うのでした。

まどか(ほむらちゃんもほどかちゃんも、魔法少女になった時はどんな想いだったんだろう……)

彼女達の願いは知っている。だけど、その時の想いまでは知らない。
大切な人だからこそ私はその想いがとても気になるのでした。




さやか「……」

まどか「さやかちゃん、もしかして上条君のこと……?」

さっきの質問といいさやかちゃんの今の様子といい、多分、さやかちゃんは叶えたい願いがあるのだろう。
そして、さやかちゃんが今、一番叶えたいということとは……。

さやか「うえ!? な、そんなことは!」

あ、当たりか。

さやか「いや、さ。私なんかよりもそういう奇跡を必要とする人がいるんなら、その人のために使うのはって考えただけだから」

ほむら「さやか……」

ほむらちゃんがなにかを言おうとするがマミさんがそれを手で静止する。

マミ「あまり関心できた話じゃないわ」

マミさんがさやかちゃんの考えについて自分の意見を述べる。

マミ「他人の願いを叶えるのならなおの事、自分の望みをはっきりさせておかないと」

そういってさやかちゃんの方に体を向けるマミさん。

120: 2012/07/21(土) 22:52:15.13
マミ「美樹さん。あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

まどか「マミさん……」

マミ「同じことでも全然違うことよ、これ……」

マミさんらしからぬ突き放した言い方。
でも、言ってることは正しくてなんだかそれが凄く悲しかった。

さやか「その言い方はちょっとひどいと思う」

俯いてマミさんにそう反論するさやかちゃん。
でもきっとさやかちゃんもマミさんの言ってることの正しさは理解しているから強く言い返せないんだと思う。

マミ「ゴメンね、でも今の内に言っておかないと……。そこを履き違えたまま先に進んだらあなたきっと後悔するから」

いつもの優しい笑顔でマミさんは謝罪する。
そしてそんなマミさんの言葉にほむらちゃんとほどかちゃんも思う所があるのか何かを考えているようでした。

さやか「……。そうだね、私の考えが甘かった。ゴメン」

さやかちゃんも笑顔で謝り、場は少し柔らかい空気になるのでした。




まどか(……履き違えたまま先に進んだら)

ほむらちゃんとほどかちゃんは後悔していないのでしょうか。
二人とも言ってしまえば自分の為ではなく他の人の為に願い魔法少女になったんだ。

まどか(もし、少しでも後悔があるのなら……)

私は二人になにができるのでしょうか。

まどか(大切な人なのに……)

でも、きっと私にはなにもできないんだなって。
私はその時になってもウジウジしているだけなんだろうなって。そう思えてしまう。
そんな、なにも出来ない自分が腹立たしくて、嫌で、思わず私は手を強く握ってしまうのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

121: 2012/07/21(土) 22:52:40.27
―― 病院 ――


ボンジュール! 鹿目まどかです!
今日はさやかちゃんの付き添いでほむらちゃんと一緒に上条君が入院している病院に来ています!
ほどかちゃんはマミさんと一緒に魔女探し。
少し心配だけどマミさんが一緒なら問題はないと思います!

さやか「はぁ……。よぉ、お待たせ」

ほむらちゃんと談笑しつつさやかちゃんを待っていたのですが予想よりも早く戻ってきました。

まどか「あれ? 上条君会えなかったの?」

さやかちゃんの気落ちした表情を見るに目的の人物とは会えなかったことが察せられました。





さやか「うん。なんか今日は都合悪いみたいでさー」

仕方がないので帰る準備をする私達。
さやかちゃんは会えないことが悔しいのか外に出てからも文句をいっています。

さやか「わざわざ会いに来てやったのに失礼しちゃうわよねー」

ぶつぶつと不満を言い続けるさやかちゃん。

まどか(都合が悪いんなら仕方ないと思うけどな)

まぁ、さやかちゃんもその辺はちゃんと理解しているんだろうけど。

まどか(でも、自分の感情を口に出さずにはいられない子だからねー)






まどか「ん?」

今まで隣で歩いていたほむらちゃんがいません。

まどか「あれ?」

後ろを見るとほむらちゃんがじっと何かを見つめていました。

まどか「ほむらちゃん?」

何を見ているのか気になり、私も同じようにほむらちゃんが見ている方を見ます。
すると、そこには

まどか「あれって……」

さやか「ん? どうしたの?」

私達の様子に気づいたさやかちゃんも同様に私達の視線の先を追います。

122: 2012/07/21(土) 22:53:08.23
さやか「あれ、グリーフシードじゃん!」

魔女の卵であるものが柱に刺さっていました。

ほむら「孵化しかかってるわ」

ほむらちゃんの言葉に驚く私達。

まどか「嘘!? なんでこんなところに!」

さやか「どうするの!? こんなところで孵化したら……!」

さやかちゃんが病院を見上げながらそう言った。

まどか(そうか、ここは!)

マミさんが言っていたことを思い出す。

――病院なんかに憑りつかれると最悪よ。
ただでさえ弱っている人達から生命力を吸い上げられるから。目もあてられないことになる――。

まどか「早くなんとかしないと!」




ほむら「落ち着いて。私がなんとかするわ」

冷静にそう言い、私達を宥めるほむらちゃん。

さやか「だ、大丈夫なの?」

さやかちゃんはほむらちゃんにそう尋ねる。
顔は不安でいっぱいだった。

ほむら「えぇ。あなた達は今の内に逃げて」

まどか「逃げるって! ほむらちゃん一人で行くつもり!?」

ほむら「当然でしょう? あなた達は魔法少女ではないのよ。
    今はマミ達もいないのだし」

確かに、そうだけど!! 




さやか「そ、そうだ! とりあえずマミさん達に連絡を!」

慌ててマミさんにさやかちゃんは連絡を取ろうと携帯を取り出す。
でもそんな、さやかちゃんをほむらちゃんが

ほむら「それには及ばないわ」

っと押しとどめる。

さやか「な、なんでさ!」

なぜ止めるのかわからず、さやかちゃんはその理由を聞き出そうとする。
私も意味がわからない。
この状況でマミさん達を呼ばないなんて。

ほむら「この魔女は――」

そして、そんな問いにほむらちゃんが答えようとした直後、当たりを眩い光が包むのでした。

ほむら「しまっ――!」

まどか「きゃあ!?」

さやか「うわ!?」

123: 2012/07/21(土) 22:53:36.68
―ほむら―

 ―― 魔女結界内 ――


ほむら「……っ」

迂闊だったわ、まさかこんなに早く孵化するなんて……。
今までのループならばもう少し時間があったはずなのだけれど……。
こんなことなら無理矢理にでもまどか達を避難させるべきだった。

まどか「こ、ここって……」

怯えながら辺りを見回すまどか、その表情は不安そのもので、彼女のそんな顔を見ていると胸が痛む。

さやか「まさか、もう孵化した感じ……?」

さやかも同様に辺りを見回し、不安気な顔をする。

ほむら「そのようね。でも安心して、あなた達は私が守るから」

そう彼女達に告げ変身を済ませる。
その言葉に一応の安心はしてくれたようだった。




ほむら(でも、正直厳しいわね)

状況はかなり悪い。
二人を守りながら、この結界を抜けなければならないのだから。

ほむら(私の能力では守りながら戦うには少し無理があるわね……)

時を止める能力も無限ではない。
自分だけの身を守るならまだしも。

ほむら(せめて一人ならば問題なかったのだけれど……)

ちらりと二人を見る。
相変わらず落ち着きなく周りを見ている二人を見て、一人で二人を守ることの難しさを想像する。

ほむら(いや、守ってみせるわ)

守って見せる。せっかくここまではうまく事が運んでいるんだ。
まどかだけでなく、さやかも救えるかもしれないという今回のループ。




ほむら(こんなところで躓いてたまるものか……)

救いたい人を救える。それは今の自分の頑張りで達成できるかもしれない。

ほむら(こんなチャンスそうそうないのだから)

決意し前方を見やる。
魔女を倒さなければいけない。
この魔女は自分が、
なぜなら――。

救いたい人の中には巴マミも含まれているのだから――。

124: 2012/07/21(土) 22:55:56.72
―マミ―


ほどか「!」

マミ「どうしたのほどかさん?」

共に魔女を探しているほどかさんが急に驚いたように振り返る。
その様子はとても焦ったように見え、なにか悪い出来事が起こったのではないかと思わせる。

ほどか「どうやらお父さん達が魔女の結界内に閉じ込められたようです」

マミ「どうしてわかるの?」

私にはまったくその気配はしなかった。

ほどか「実はお父さんには小型の発信機を付けてるんです。その発信機の信号が途絶えたので恐らく……」

なにやら可愛い顔でとんでもないことを話すほどかさんに、さすがの私も狼狽する。

マミ「ええーっと……。それはまどかさんは知ってるのかしら?」

ほどか「知らないですよ?」

この子。何気に凄いわね。

マミ「そ、そう。でも発信機なら圏外の場所にいるから途切れたとかもありえるんじゃ」

ほどか「それはありえません。
    私の魔法で作っているので、異質な空間に閉じ込められない限りは遮断されるようなことはないですから」

成程ね……。この口ぶりから察するとこういう事態も想定していたということね。

マミ(この子、一体どこまで考えて行動しているのかしら)

あまりにも先を見据えた行動をする彼女に少し恐怖に似た感情を覚える。

ほどか「マミさん。急ぎましょう。魔女の結界内にいるとしたら、お父さん達が危険です」

その通りね……。
今は彼女の本当の目的がなにか、なんてことよりまどかさん達の救出に向かうのが先決。

マミ「そうね。場所はわかるの?」

ほどか「病院です。今日はさやかさんの付き添いでそこに行くといってましたから」

信号が途絶えた時間的にも間違いはないです。っと付け加え魔法少女に変身する彼女。
私も変身を済ませ、急いで向かうことにする。

ほどか「魔女の結界内に入れば発信機も機能を取り戻します。急ぎましょう」

なにやらいつもの落ち着きがない彼女。若干焦っているのだろうか。

マミ(まぁ、両親が危機に陥っているというのだから当たり前よね)

少し、昔を思い出す。
自分は救えなかったから……。

マミ(あの時、もう少し願い事をよく考えていたら……)

今更だが常に後悔してきたことだ。
あの時、私がよく考えて行動していたら。

マミ(パパとママは――)

先を走る彼女を見る。
その必氏な顔から早く自分の大切な人を助けたい。そう考えているのだろう。

この子には私のような後悔はしてほしくない。
そう強く思えた。

そしてこの子がそんな後悔をしないためにも。

マミ(私が助けてあげなくちゃ、ね」

そう考えるのであった。

125: 2012/07/21(土) 22:56:24.88
―ほむら―


ほむら「はぁ……はぁ……」

まどか「大丈夫……? ほむらちゃん……」

まどかが心配そうに私の顔を覗き見る。

ほむら「心配はないわ。大丈夫よ」

問題がないことを告げ、また先に進む。

ほむら(思いのほか数が多いわね……)

ここまでくる間、多くの使い魔を倒した。
が、奥に進むにつれ数を増やして襲い来る使い魔には正直手を焼いていた。

一人で先に進むにはこの程度の敵、問題はない。
しかし、今は二人を守りながら先に進まなくてはいけない。

魔法少女でない二人は当然身体能力の面でも一般的な少女と変わらず、
そんな二人のスピードに合わせ、守りながら先に進むというのは精神的にも肉体的にも辛いものがあった。





さやか「ゴメン……。私等、足手まといだよね……」

珍しくさやかが私に謝る。

ほむら(本当に珍しいわ、こんなこと今までのループでも……)

あまりの出来事におもわず笑ってしまう私。

ほむら「ふふふ」

さやか「な、なにがおかしいのさ!」

そんな私が気味が悪いのか狼狽するさやか。

ほむら「まさかあなたが私に謝るとは思わなかったから」

そう告げると、少し顔を赤らめいつもの口調で

さやか「な、人が心配してるっていうのになによそれ!!」

そういってそっぽを向くさやか。
あのさやかが私の事を心配して……?
ふふ、本当に今回のループはおかしなことが続くのね……。





ほむら「ごめんなさい。でも本当に大丈夫よ。
    少し疲れただけだから」

でも、その疲れももうなくなった。
私には心配してくれる人がいるのだから。

ほむら(こんなところでへばってはいられないわね)

心が少し暖かくなるのを感じ、私は先を見据える。
そして改めて、最深部へ向かうべく私達は再び走りだした。

126: 2012/07/21(土) 22:56:52.11
―マミ―


マミ「ここね」

魔女の結界がある。どうやら本当にまどかさん達は魔女の結界内にいるようだ。

マミ「全く、連絡くらいしなさいよ……」

これではなにかあった時のために連絡先を交換した意味がないではないか。

ほどか「行きましょう」

結界内に足を踏み入れるほどかさん。やはり少し焦っているようだ。

マミ(……少し、マズいわね)

焦りは冷静な判断をくだせなくなる。
命が関わってくる戦いにおいてそれは避けた方がいい感情だ。

マミ(なんだか、嫌な予感がするわ……)

無性に胸騒ぎがする。この戦いでなにか、悪いことが起きそうな……。そんな予感。

マミ(杞憂だといいのだけど――)

そう願いながら私も結界内に足を踏み入れた。

127: 2012/07/21(土) 22:57:18.43
―ほむら―


ほむら「ここね……」

多数の使い魔を退け、ただひたすらに最深部を目指し、ようやく辿りついた場所。

ほむら(この魔女だけはマミと戦わせるわけには……)

今までのループの中でも、マミがこの魔女にやられる確率は非常に大きい。
その大きな理由として単独でこの魔女に挑んだ。というものが挙げられるが――。

ほむら(私達の援護があるとはいえ、少しでも可能性があるならば……)

それは潰しておくに限る。

ほむら(少し、臆病になりすぎかしら……?)

今のところ今回のループは最高の形で進んでいる。
まどかもさやかも魔法少女にはならないだろうし、マミとも信頼関係を結んでいる。
後はワルプルギスを倒せば自分の目的は達成される。




ほむら(いいえ、臆病なくらいがちょうどいいわ)

少しでも甘さを出せば足元を掬われるかもしれない。
潰せる可能性は先に潰しておくに限るのだ。

ほむら(あとは……)

鹿目ほどか、彼女をどうするか――。
イレギュラーであり、不穏分子でもある彼女。

どういった考えを持っているのかもわからず、なにをするかもわからない。
ある意味では一番危ういと感じる存在。

それをどうするか――。

彼女に対する対策を考えつつ、魔女のもとへ近づく。

ほむら「今日は手早く済まさせてもらうわ」

私の前にいる。見た目は可愛らしい魔女に対しそう言い放つ。
理解しているのかはわからないが、そんなことはどうでもいい。
どうせすぐに消す存在だもの――。


128: 2012/07/21(土) 22:57:44.14
―マミサイド―


ほどか「……」

マミ「……」

やはり焦っている。
襲いかかる使い魔を倒しながらそう考える。

マミ(いつもの彼女ならもっとスマートに決めるもの)

なぜだかわからないが彼女は使い魔に対しても、魔女に対しても一撃で相手の息の根を止めるように戦う。

マミ(……、敵に対して情けはかけない、ましてや魔女や使い魔は人に仇なす害あるもの。
   かける情けなどない)

それゆえに一瞬で命を絶つ。そう考えるのが普通なのだろう。

マミ(だけど彼女は……)

できるだけ苦しめたくないから。その理由からそんなふうに戦っているように思える。




マミ(それがなぜだかわからない、彼女の優しさからくるものなのかもしれない)

でも、それだけではないような気もする。

マミ(でも、今日の彼女の戦い方は……)

できるだけ攻撃は最小限に留め、あくまで先を急ぐことを念頭に置いている。
だから、その攻撃は牽制。相手の足を止めるようなものに限られている。
でも、本来の精彩さはない。

マミ(この判断は正しい。だけどなぜかしら。この子らしくない戦い方がこうも焦っているように見えるのは)

親が危機なのだから焦る気持ちはわかる。だけど、戦いにおいて焦りは……。

マミ「ほどかさん」

先を走る彼女に話しかける。

ほどか「なんでしょう」

こちらに振り向かず声だけで要件を聞く彼女。




マミ「少し、焦りすぎではないかしら」

宥めるような声色でそう告げる。

マミ「あなたらしくないわよ。そんなことじゃ戦う前にバテてしまうわよ」

ほどか「でも急がないと……」

相変わらずこちらを振り向かずに答える彼女。

マミ「確かに状況は切迫しているわ。でも救援に行くものが冷静さを欠いてどうするの?」

私達は救援。現場の状況次第で動きを変える。冷静な判断力が必要なのだ。

マミ「それに暁美さんは優秀な魔法少女よ? 彼女ならそう無茶なことはしないはずだわ」

その言葉に少し速度を緩める彼女。そしてこちらに顔を向け。

ほどか「すいません……。少し冷静さを欠いていました」

そういって申し訳なさそうに謝るのであった。

129: 2012/07/21(土) 22:58:11.66
マミ「わかってくれたのならいいわ」

よかった。どうやら落ち着いたようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、これなら大丈夫かと安心する。

ほどか「マミさんがいてくれてよかった……」

マミ「え?」

速度は変えずにそんなことを言う彼女に私はその意図が掴めずに聞き返す。

ほどか「私だけなら、きっとなにもできずにいました」

マミ「……」

ほどか「マミさんが協力してくれたから、お母さんを説得できたし、今もこうして冷静に戦うことができる」

マミ「……」

ほどか「マミさんが魔法少女の先輩として私達を見ていてくれるから私達は安心して戦える」

だから、と言いながらこちらを振り向き

ほどか「マミさんは私の憧れです。」

少し照れながら私にそう告げる彼女。
そんな彼女の言葉に思わず立ち止まってしまう私。





ほどか「マミさん?」

急に立ち止まる私を変に思ったのか彼女も立ち止まり、こちらに体ごと向き直る。

マミ「憧れる程のもんじゃないわよ……。私……」

ほどか「……」

マミ「無理してかっこつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり」

今まで無理して隠してきたものが溢れる。

ほどか「あ……」

マミ「魔法少女であるあなたならわかるでしょ? いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」

ずっと。思ってきたことだ。そして誰にも言えなかったこと。
私の醜い部分。誰にも見せたくなかった部分。

俯き。何も言わない私に彼女が近づいてくる。

ほどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」

笑顔で私に語りかける彼女。




ほどか「お父さんがいるし、お母さんがいる。さやかさんもマミさんのことを尊敬してるんですよ?」

それに……。っといいながら彼女は私の顔を覗き見て。

ほどか「私だって、いるんですから」

彼女の笑顔が私の瞳に映る。
とても安心できる笑顔だ。

ほどか「マミさんが怖い時は一緒にいますし、辛い時はその辛さをわけてください。泣きたい時は私も共に泣きます
    だから、マミさんは一人じゃない。私が、みんながマミさんを守ります」

マミさんが私達にそうしてくれたように……。

マミ「……」

その言葉に瞳が潤む。彼女の笑顔が眩しい。

131: 2012/07/21(土) 22:59:05.08
マミ「わかってくれたのならいいわ」

よかった。どうやら落ち着いたようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、これなら大丈夫かと安心する。

ほどか「マミさんがいてくれてよかった……」

マミ「え?」

速度は変えずにそんなことを言う彼女に私はその意図が掴めずに聞き返す。

ほどか「私だけなら、きっとなにもできずにいました」

マミ「……」

ほどか「マミさんが協力してくれたから、お母さんを説得できたし、今もこうして冷静に戦うことができる」

マミ「……」

ほどか「マミさんが魔法少女の先輩として私達を見ていてくれるから私達は安心して戦える」

だから、と言いながらこちらを振り向き

ほどか「マミさんは私の憧れです。」

少し照れながら私にそう告げる彼女。
そんな彼女の言葉に思わず立ち止まってしまう私。





ほどか「マミさん?」

急に立ち止まる私を変に思ったのか彼女も立ち止まり、こちらに体ごと向き直る。

マミ「憧れる程のもんじゃないわよ……。私……」

ほどか「……」

マミ「無理してかっこつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり」

今まで無理して隠してきたものが溢れる。

ほどか「あ……」

マミ「魔法少女であるあなたならわかるでしょ? いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」

ずっと。思ってきたことだ。そして誰にも言えなかったこと。
私の醜い部分。誰にも見せたくなかった部分。

俯き。何も言わない私に彼女が近づいてくる。

ほどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」

笑顔で私に語りかける彼女。




ほどか「お父さんがいるし、お母さんがいる。さやかさんもマミさんのことを尊敬してるんですよ?」

それに……。っといいながら彼女は私の顔を覗き見て。

ほどか「私だって、いるんですから」

彼女の笑顔が私の瞳に映る。
とても安心できる笑顔だ。

ほどか「マミさんが怖い時は一緒にいますし、辛い時はその辛さをわけてください。泣きたい時は私も共に泣きます
    だから、マミさんは一人じゃない。私が、みんながマミさんを守ります」

マミさんが私達にそうしてくれたように……。

マミ「……」

その言葉に瞳が潤む。彼女の笑顔が眩しい。

132: 2012/07/21(土) 23:00:46.19
そうか、そうなんだ。
私には……。

マミ「そうね、そうなんだよね……」

彼女の手を握る。
とても温かく凄く安心する。

マミ「本当にこれから私を守ってくれるの? 傍にいてくれるの?」

涙が零れる。でもそれを拭わず彼女の手を握り続ける。
彼女は私の行動に驚いた顔をしたが、すぐにもとの笑顔に戻り。

ほどか「はい。私なんかでよかったら」

そう私の懇願に応えてくれるのであった。

マミ「まいったな、まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのにな……」

照れ隠しにそんなことを言いながら、彼女の手を離し涙を拭う。
我ながら恥ずかしいところを見せてしまった。

マミ「やっぱり私、ダメな子だ」

笑いながらそう言う。

ほどか「マミさん」

そんな私に彼女も笑顔で返してくれる。

マミ「少しムダに話し過ぎたわね、こんな時に」

苦笑し、今の状況下でなんてことを話していたのかと反省する。

マミ「ごめんなさいね。急ぎましょう」

改めて先に進む。彼女も同じように苦笑し歩き始める。


マミ「本当にありがとう、かっこわるいとこ見せちゃったね」

ほどか「いえ、そういうマミさんも可愛いですよ?」

笑顔でそんなことをいう彼女に少し赤面する。

マミ(こ、この子は素でそんなことを……)

マミ「そ、そうだこの魔女をやっつけたらみんなでパーティーしない?
   仲間になってからそういうことしてないし、記念ってことで)

感情を誤魔化すためにそんなことを提案する。

ほどか「いいですね。 マミさんがケーキとか作ってくれるんですよね?」

マミ「え、ええ。まぁ」

ほどか「楽しみです!」

とびっきりの笑顔でそにう彼女。
そして、またまた赤面してしまう私。

マミ(も、もお。なんなのよこの子は……)


ほどか「使い魔が!!」

マミ「任せて! 今日という今日は速攻で片づけるわよ!!」

並み居る使い魔に猛攻を加える。


133: 2012/07/21(土) 23:01:24.55
マミ(体が軽い……)

使い魔を倒しながらそう思う。

いつも感じる重さがない。解放された気分だ。

マミ(こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて……!)

傍にいるほどかさんを見る。
彼女も、自身の武器を使い使い魔を倒していく。





マミ(もぅ何も怖くない!)

そう、怖くない。

なぜなら――。

マミ(私、一人ぼっちじゃないもの!)

周りにいる使い魔を一掃し終える。
そんな私にほどかさんは驚きの声をあげる。

ほどか「す、すごい……」

使い魔を片づけ、彼女の手を取り再び走り出す。
そう。私は一人じゃない。今の私は誰にも負けない!

マミ(待っててね、みんな!!)

134: 2012/07/21(土) 23:01:53.80
―ほむら―

ほむら「はっはっ」

あと少し、そんなところまで魔女を追い詰めることができた私。

ほむら(この魔女の本体はこいつじゃない。でもそろそろ……)

出てくるはずだ。こちらの猛攻に耐えその攻撃が止んだ時、そいつは姿を現す。

ほむら(これで、これでマミは氏なずに済む)

なんとか無事に済みそうだ。
その安心からか今までの疲労も重なり、少し気を抜いてしまった。

だが、それがいけなかった。

ほむら「っ!?」

まどか達が数体の使い魔に狙われたいることに気づくのが一瞬遅れてしまったのだ。

ほむら「しまっ!」

結界は張っている。だけど私の魔法少女としての才能はあまり高くない。
だからあまり強力な結界は張れない。




ほむら(くっ!!)

急いで時を止めまどか達のもとへ向かう。

結果、まどか達を守ることはできた。
しかし、安心したのも束の間。

ほむら「ぐぅ!!?」

腹部に強い衝撃。
時が動いた瞬間。隙ができていた私を魔女が見逃すはずはなく私は魔女の攻撃をモロに受けてしまった。

まどか「ほむらちゃん!!」

さやか「ほむら!!」

二人の叫び声。
攻撃を受けた私はそのまま壁に叩きつけられ、そのまま地面に落下。俯せに倒れる。
意識が朦朧とする。

ほむら(ま、まずい……。二人を守らないと)

二人のもとに使い魔達が再度近寄る。
このままでは二人が危ない。

135: 2012/07/21(土) 23:02:24.78
ほむら(っつ! 思ったよりダメージが大きい……)

急ごうとするが体が思い通りに動かない。
二人を守らないといけないのに……。

まどか「あ、あぁ……」

さやか「こ、こっちくんな! あっちいけ!!」

さやかが腕を振り使い魔を退けようとするがそれも無駄。

徐々に近寄る使い魔。
そして遂にその内の一体が襲いかかる。

ほむら「ダ、ダメ!!」

使い魔がさやかに喰らいつこうとし、もう駄目かと思ったその時、

ドン! っという発砲音がしたかと思うとまどか達に襲いかかった使い魔が消え去る。
そして発砲音が続き、まどか達の近くにいる使い魔は次々と倒される。

「どうやら間に合ったみたいね」

声がした方に目を向けると人影が二人。

ほむら「あ……」


マミ「まぁ、主役は遅れてくるのが王道よね!」

ほどか「まどかちゃん! さやかさん!」

マミがマスケット銃を魔女の前で構え牽制。その隙に鹿目ほどかがまどか達を庇うように立ち、二人に結界を張る。

ほどか「怪我はないですか!?」

まどか「私達は大丈夫! それよりほむらちゃんが!」

その言葉に私の方を見る鹿目ほどか。
その表情はひどく狼狽しているようだ。

ほどか「マ、ほむらさん!!」

急いで私に近づく彼女。
そして私の傍で盾を操作する。

ほどか「今すぐ傷を治します!」

その彼女の行動を押し留め彼女に今やるべきことを伝える。

ほむら「私はいいからそれよりマミを! あの魔女は――!!」

ほどか「え!?」




マミの方を見る。
魔女に猛攻を加え、今まさに止めをさすところに見えた。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

魔女を撃ち抜くマミの必殺技。

まどかもさやかも勝利を確信したのか喜んでいるように見える。

マミ(やった!)

マミもこれで終わったと緊張を解いたようだ。

だが、しかし――。

倒したと思った魔女の口から、本体が出現し高速でマミのもとへ接近。
そしてその巨大な口を大きく開き、その鋭い牙で今まさにマミを噛み砕かんとしていた――。

マミ「あっ――」


そして、肉と骨が噛潰される、ぐちゅ、ぐちゃっ、っという聞き慣れない音が辺りに響いた――。

136: 2012/07/21(土) 23:03:02.91
まどか「ひっ――」

さやか「う、嘘――」

ブチブチ! と皮が切れるような音が聞こえた。
そしてなにかが噴き出す音――。

辺りに漂う、鉄の、臭い。

まどか「い、いやああああああああああああああああ!!!!!!!!」

そして、まどかの絶叫――。






まどか「ほ、ほどかちゃーーん!!!」





鹿目ほどかの名前を叫び、腰が抜けたのかまどかは地面にへたりこむ。
気を失いかけているようだった。

マミ「あ、あぁ……」

マミの前で吹き荒れる血しぶき。
それはマミの全身を濡らし、彼女を赤く染める。

そう……。結果を言えば、マミは助かった。

しかし。

ほどか「くっ……」

苦しげに呻く鹿目ほどか。
当然だろう。彼女の右腕からは、いや……。
今はもう存在しない右腕があった場所からは血が噴いているのだから。




ほむら『私はいいからそれよりマミを! あの魔女はマミを頃した魔女よ!!』

ほどか『え!?』

その言葉を聞いた彼女はそれだけで状況を察知、急いでマミのもとへ急行した。

その結果、マミは彼女に救われた。

しかし、代償は大きく。
マミの命を救った引き換えに彼女は自身の右腕を失った。

ほどか「つぅ……!」

目の前の光景に呆然とするマミを安全な場所に移動させ、急いで自分の服を破り、止血をする彼女。

137: 2012/07/21(土) 23:03:30.45
ほどか「ぐぅ……」

苦悶の表情を浮かべる彼女は、しかしすぐにその顔を笑顔に変え

ほどか「大丈夫ですかマミさん?」

っとマミを気遣うのであった。

マミ「だ、大丈夫って、あなたのほうが……!」

その言葉に少し気を取り戻したのか、だがそれでも狼狽しながら答えるマミ。

ほどか「私なら大丈夫です」

平気そうな顔を作りマミを安心させるためにそう答える彼女だが、その額には大粒の汗をいくつも浮かべている。




マミ「そ! 大丈夫なわけ!! どうして私を庇って!」

相変わらず錯乱するマミ。その顔は真っ青だった。

ほどか「だって、いいましたよね? マミさんは私が守るって」

無理矢理だろう。激痛を堪え、再び笑顔でそうマミに告げる。
そして彼女はこう言った。

ほどか「待っててください。すぐにあの魔女をやっつけちゃいますから」

そして魔女のもとへ向かう彼女。

そんな彼女を止めるマミの声。

マミ「ま、待ちなさい! そんな怪我じゃ……!」

そのマミの静止を振り切り、でも、一つだけ言葉を残す。

ほどか「大丈夫ですよ。私、結構強いんですよ? 早く終わらせてマミさんのケーキ、食べたいですし」

そう言い残し、魔女の前に立つ鹿目ほどか。
魔女も彼女の腕を喰らい終え、眼下に立つ彼女を見据える。

138: 2012/07/21(土) 23:03:57.53
ほどか「あなたに恨みはないけど、みんなの為にも、私の為にも……。倒します!」

キッと魔女を睨みつける彼女。
そんな彼女に、その全てを喰らおうとする魔女の牙が迫る。

さやか「あぁ!!」

彼女の体はそのまま飲み込まれたかのように見えた。
そのことにさやかが叫ぶ。

だが、彼女は無事で、少し離れた場所に立っていた。

ほどか(助ける時も、時を止めればよかったのにな。そこまで頭がまわらなかったや。
    焦るなってマミさんに言われたばかりなのに……。私のバカ)

なぜ、避けられたのかわからない魔女はもう一度、彼女を喰らおうとするがやはり無駄で……。

ほどか(ごめんね、痛いと思うけどこうするしかないの)




何度か喰らおうと迫り、それを避けられを繰り返す魔女。

ほどか(恨まないで。とは言わない。でも、私も必ず報いは受けるから)

だから、ごめんね――。

っと彼女の呟く声が聞こえた気がした。



そして、辺りに響く爆音。




自身の攻撃を避けられ続ける魔女はなぜかわからず、しかし、他に方法がないのか相変わらずの攻撃を繰り返していた。
そして、ついに鹿目ほどかの反撃を受けたのであった。

おそらく、爆音の正体はC4だろう。
それを噛み付かれる瞬間に魔女の体、そして最後に口内に取り付け、仕留められる量を仕掛けたら起爆。
魔女はその爆発に耐えられずにその体を四散させた。

ほどか「ふぅ……」

爆煙が晴れた後、そこには鹿目ほどかの立つ姿だけが残り、今度こそ本当に戦いが終わったことを告げる。

さやか「終わった、の……?」

終わった。
だが、勝利の代償は消えない傷跡となって、彼女の体に残した。


139: 2012/07/21(土) 23:04:23.61
ほどか「……」

さやか「ほどか!」

戦いが終わり、安心したのか、彼女は倒れこむ。

さやか「ほどか! ほどかってば!!」

さやかが彼女の名前を何度も呼び続ける。
しかし、完全に気を失っているのか、彼女はなんの返答もよこさない。





ほむら「このままでは危ないわ」

血を失い過ぎている。
血はまだ止まっていないのだろう、彼女が止血するために用いた服を今も赤く染め続けている。

ほむら「マミ」

今も呆然と座っているマミに呼びかける。
この傷を治せるのは、といっても無くなってしまった腕の再生までは無理だろうが。
しかし、とりあえずの傷を治すことができるのはマミしかいない。

ほむら(まぁ、魔法少女はソウルジェムさえ無事なら氏にはしないのだけど)

だが、このままにしておくのはまずい。
明らかに生命活動を続けるには難しい出血をしたにも関わらずにも生きている彼女を見れば、みんなが不審に思ってしまう。

ほむら(それは避けたい。魔法少女の真実を知られるわけには……)

マミは相変わらず放心状態だ。無理もないが、それでは困る。




ほむら「マミ! 何をしているの! この子を治すことが出来るのはあなたしかいないのよ?」

命の恩人を見捨てるつもり?

そういった直後、マミがやっと動き彼女の体を泣きながら癒し始める。

マミ「ほどかさん! ごめんなさい! ごめんなさい!!」

ほむら(これでいい)

本来ならばこの子にはここで氏んでもらうのが望ましいけど――。

ほむら(でも、この状況で見捨てるような真似は、ね)

そんなことをすればまどか達の反感を買ってしまうだろう。

ほむら(それは避けたい。せっかくここまでうまくいってるんだから)

それに、彼女を救う為にまどかに契約されでもしたら困る。

ほむら(それはあなたも本意ではないでしょう?)

意識のない鹿目ほどかに対し、そう問いかける。
当然、返答はない。

140: 2012/07/21(土) 23:04:49.51
ほむら(……)

彼女を一瞥し、マミと同じく放心状態のまどかのもとに近寄る。

ほむら「まどか、大丈夫?」

まどかにそう声をかける。
可哀想に……。怖かったのね。こんなに震えて……。

ほむら「もう大丈夫よ、もう怖い魔女はいないわ」

努めて優しくまどかにそう語りかける。

まどか「あ、あ……。ほどかちゃんが……」

相変わらず彼女の心配をするまどか。
彼女なら氏んではいないというのに……。





ほむら「大丈夫よ、彼女は今、マミが治療しているわ」

まどか「腕は!? ほどかちゃんの腕は治るの!!?」

まどかがそう叫ぶ。
よかった。気は取り戻したようね。

ほむら「残念だけど、腕の再生までは無理ね。彼女の能力はあくまで癒し。なくなったものを作ることは無理よ」

まどか「そ、そん……な……」

その言葉を聞きまた放心するまどか。
まったく、命はあると言っているのに。

やっぱりこの子は優しすぎるわね。

でも、これは利用できるかしら。

ほむら「まどか。これが魔法少女として戦うということよ」

さっきまでとは違い、少し強めの口調でまどかに語りかける。

141: 2012/07/21(土) 23:05:16.59
ほむら「こんな風に傷つき、いつ命を失うかわからない戦いを続けるのが魔法少女の宿命」

そう、それが魔法少女というもの。
テレビ等で見るような幼い少女が憧れる甘い世界とは違う。

ほむら「今回はまだ運がいい方よ。腕だけで済んだんだから」

そうまどかに告げた時、


待ちなよ――。


っという声がこの空間にあがった。




さやか「運がいい? 腕だけで済んだ?」

さやかが語気を荒げながら私に近づく。

ほむら「えぇ、そうよ。命があっただけマシ。もしかしたら命を失っていてもおかしくはなかったのよ?」

その通りだろう。少し運が悪ければ彼女の命は……。
そんな私の言葉に怒りが臨界点を突破したのか、さやかが私の胸倉を掴み睨みながら叫ぶ。

さやか「あんったは! あれを見てなんとも思わないの!? ほどかは! ほどかの腕は!!!」

なんだというのか。確かに私の言い方は冷たいかもしれない。

だけど、

ほむら「私は、事実を、言った、までよ」

胸倉を掴むさやかの腕を掴み強引に離そうとする。
私は何も間違ったことは言ってはいない。

さやか「そんなことを言ってるんじゃない!! 
    あんたには! あんたにはほどかが傷ついたことを悲しむ心はないの!!?」

私の反抗に負けじと掴む手に力を入れるさやか。

142: 2012/07/21(土) 23:05:42.94
なぜ、私があの子のことで悲しまないといけないのか。
だがそれを言うわけにはいかない。
信頼を失ってしまう。

ほむら「悲しいとは思うわ。当然じゃない。仲間だもの」

本当は仲間とは思ってはいない。
むしろ彼女は敵だ。
そう思っている。

さやか「嘘だね……。あんたはほどかのことを仲間とは思っていない……! 
    あんたの目は! あの子を、敵だと言ってるね!!」

相変わらず、人の感情には鋭いことを言うさやか。

ばれているのなら仕方がない。

ほむら「えぇ、そうよ……。私はあの子を仲間とは思っていない……! 
    むしろ敵だと認識しているわ!」

そう言って、さやかの拘束を解きその体を突き放す。





さやか「あんたは!! あんたはあぁぁ!!!」

バチン!! っと何かをはたく音が聞こえた。





いや、叩かれたのだ。
私が、まどかに。





まどか「……」

いつの間にか立ち上がり私の前に無表情で立つまどか。


143: 2012/07/21(土) 23:06:12.01
さやか「まど、か……」

マミ「まどか、さん……」

ほむら「あ……」

じんじんと痛む右頬を抑え、私はあまりの出来事に呆然と立ち尽くす。

ほむら(たたかれ、た……?)

わた、しが、まどかに……?

まどか「ほむらちゃん……」

依然、無表情で、感情のこもらない声色でまどかは私に話しかける。
だけど、何も感じられないはずのその声には確かな迫力があった。

まどか「ほむらちゃんはほどかちゃんを仲間だとは思ってないの?」

今さっき言った言葉をまどかは聞いているのだろう。
だから、その言葉をもう一度、ただもう一度言えばいい。

だけど……。

ほむら「あ、私は……」

言えない。
まどかの迫力に。そして、言ってしまえば全てが終わる気がして。
私は、何も言えなかった――。





まどか「わかったよ」

なにがわかったというのか、沈黙は肯定と受け取ったのか。
まどかは諦めた表情をして、二度、首を振り、私に、こう宣言した。

まどか「ほむらちゃんは、ほどかちゃんを仲間だと思っていない」

ううん。違うね
っと言い。

まどか「ほむらちゃんは、ほどかちゃんを敵だと思ってる」

そう言って私をキッと睨み付け。

まどか「なら、ほむらちゃんはほどかちゃんの敵。つまり――」




私の敵だよ――。




私にとってなによりも恐れる。でも、想像だにしなかった言葉を投げかけた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

144: 2012/07/21(土) 23:06:38.91
―まどか―

どうも。鹿目まどかです。
今、私は自宅にいます。

本当は学校にいなければいけない時間なのだけれど、事情があり休みました。

まどか「はい、ほどかちゃん」

ベッドに腰掛けるほどかちゃんに、うさぎの形に切られたリンゴを差し出す。

ほどか「……」

ほどかちゃんはそれを無言で首を振ることによって、食べる意志が無いことを告げる。

まどか「おとついからなにも食べてないでしょ? ダメだよ何か食べなきゃ」

ほどかちゃんが右腕を失ってからあれから二日。
マミさんの治療の甲斐あってか、なんとか一命を取り留めたほどかちゃん。
すぐに意識を取り戻し、私達はそのことにほっと胸を撫で下ろした。

145: 2012/07/21(土) 23:07:20.68
―― 二日前 病院 ――


ほどか「ん――」

まどか「ほどかちゃん! よかった! 意識が……」

マミ「よかった……。本当に、よかった……」

さやか「ったく! 心配かけさせんなっての!!」

意識を取り戻したほどかちゃんに抱き着く。
ほどかちゃんは状況を把握できていないみたいでボーっとしていたけど、意識がはっきりしてきたのか

ほどか「ママ! ママは!? ママは無事なの!?」

辺りにいないほむらちゃんに気づき、そう尋ねる。

その言葉に暗い顔をするマミさんとさやかちゃん。
その表情に勘違いしたのかほどかちゃんは慌てて





ほどか「ま、まさか、ママになにか!?」

ほむらちゃんを探そうと立ち上がる。
だけど血を失いすぎたのか、今まで気絶していたのに急に立ち上がったせいか、貧血を起こし、また倒れる。

マミ「ダメよ! 治療したとはいえ、まだ安静にしてないと!!」

ほどか「でもママが! ママが!!」

ほどかちゃんらしくなく酷く狼狽、錯乱する。
そして抑えつけようとするマミさんを払いのけようと暴れる。

まどか「安心して。暁美さんは無事だから」

落ち着かせる為に暁美さんの無事を伝える。
その言葉にほどかちゃんは安心したのか、全身の力が抜け、マミさんの体にもたれかかる。

だけど、なにかに気づいたのか、私の顔を驚いた顔をして見上げる。





まどか「どうしたの?」

ほどか「パパ、ママのこと……」

まどか「暁美さんがどうかした?」

ほどか「な、んで……」

なにが起きたのかわからない。
といった顔をするほどかちゃんに私は一つ息を吐き、さっきあったことを説明することにした。

まどか「さやかちゃん、マミさん。ごめん。
    この子と二人っきりにして」

その言葉にさやかちゃんが声をあげる。

さやか「!? まどか!」

146: 2012/07/21(土) 23:08:57.21
そんなさやかちゃんをマミさんが声で静止する。

マミ「美樹さん。ここはまどかさんの言う通りに……」

さやか「で、でも……」

納得できないと言いたげにするさやかちゃんに、マミさんは今度は強めに

マミ「美樹さん!」

さやか「っ!」

その声にビクッっと体を震わせ、そして素直に言うことを聞き、そのままマミさんと一緒にこの場から去る。
去り際にほどかちゃんに向けて、すごく申し訳なさそうにしていたさやかちゃんの顔が印象に残った。





まどか「……」

ほどか「……」

二人が去ったこの場所で私は今、ついさっき起きたことを話した。
真実をありのままに――。

ほどか「それで、お母さんは……」

しばらく沈黙が続きほどかちゃんは暁美さんがどこに言ったのかを聞いてきた。

まどか「知らないよ」

後を追ったわけではない。
だから私が暁美さんの居場所を知っているはずがない。





ほどか「そう、ですか……」

ほどかちゃんは私を責めなかった。

責めずに、ただ、ただ悲しそうに、泣きそうな顔で俯いていた――。

私を責めたらどれだけ楽になれただろう。
涙を流せばどれだけ楽になれただろう。

でも彼女はただ黙って、事実を受け入れ、一人悲しむのだった。

147: 2012/07/21(土) 23:09:24.53
―― 現在 ほどルーム ――


まどか「一口だけでもいいから食べて? お願いだから……」

このままではほどかちゃんの体が持たない。
でもほどかちゃんはただ無言で、リンゴを一瞥すらせずに俯いていた。

まどか「……。りんご、ここに置いておくね。気が向いたらでいいから食べて?」

ほどかちゃんの近くにリンゴの入った容器を置く。

まどか「体を拭くタオルを持ってくるね? 汗、かいたでしょ?」

タオルを持ってくる為に部屋を出ようと立ち上がる。

ドアの前で振り返り、彼女の右腕を見る。
可愛らしいピンクのパジャマを着た彼女の右腕は、そこにあるはずのものがなく、
換気の為に開けた窓から入る風に、その薄い布をゆらゆらと揺らすのでした。




まどか「待ってて?」

できるだけ陽気にそう言って部屋を出る。

バタン。
ゆっくり閉めたはずのドアの音が嫌に大きく聞こえる。

まどか「……」

洗面所にあるタオルを取りに、階段を降りたところで声をかけられる。

知久「まどか、ほどかの様子は……」

その問いに無言で首を振る。
それで全てを察したのか、溜め息を吐くパパ。





知久「何があったのか詳しくは聞かない。まどか達が話す気になるまではね」

でも、と付け加えパパは話を続ける。

知久「僕もママもタツヤもまどかを、ほどかを心配している」

それだけはわかってるね? っとパパは言ってくれる。

まどか「うん。ありがとう」

嬉しいよ。といい私は洗面所に向かう。

実際にありがたいことだった。
魔法少女の存在もほどかちゃんが戦っていることも知っているパパ達。
二日前に右腕を失ったほどかちゃんを連れて帰ってきた時も、なにも聞かず、
ただ黙って私達を受け入れてくれた。

でも、その時の表情はとても痛々しいもので、私は今もその時のパパ達の顔が忘れられない。

148: 2012/07/21(土) 23:09:52.92
ほどか「ママ……」

誰もいない部屋でただ後悔する。

ほどか「私の、せいだ」

私があの時、魔女の攻撃をしっかり避けていれば。

私があの時、マミさんをあの場所に連れて行かなければ。

ほどか「私のせいで、ママとパパは……」

もっと私が考えて行動していれば、こんなことには……。

ほどか「ごめん……なさい」

誰かがいるわけではない。だけど謝らずにはいられない。




ほどか「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」

痛い思いをさせていまった、頃してしまった魔女さんにごめんなさい。
怖い思いをさせてしまったマミさんにごめんなさい。
嫌な後景をみせてしまったさやかさんにごめんなさい。
心配をかけてしまったおじいちゃん、おばあちゃん、タツヤおじちゃんにごめんなさい。
酷いことを言わせてしまったパパにごめんなさい。

そして。

ほどか「ママ、ごめんなさい」

悲しい思いをさせてしまったママに、ごめんなさい――。





ほどか「私が、弱いから……。バカ、だから……」

みんなに辛い思いをさせてしまった。

ほどか「こんなんじゃ、こんなことじゃ……」

誰を救うことも――。

ほどか「もっと、強くならなきゃ、もっと、強く――」

じゃないと、誰も守れない。

いつのまにか流れていた涙を拭い、立ち上がる。
そして、今はもう無い右腕を見る。

149: 2012/07/21(土) 23:10:34.72
ほどか「とりあえず……」

この状態ではこれからの戦いで不便だ。

ほどか「……」

魔法少女に変身し対策を講じる。

ほどか「これでよし」

右腕に確かな質量を感じる。
質感はないがこれで武器は持てるだろう。

ほどか「慣れるまで時間はかかるだろうけど。仕方ないよね」

本当は右腕が切断されただけとかならばなんとかなったのだけど……。




ほどか「全部食べられちゃったもんね」

これじゃ時間を戻しても復活はできない。

ほどか「対象がないとさすがに無理だもん」

意外と不便な能力だな。そう思う。

ほどか「まぁ、私が悪いよね」

油断したのは私だ。
魔女戦が命がけなのは重々理解していたはずなのに。





ほどか「命があっただけ運がいいんだよ」

きっとそう。

ほどか「よし。みんなにもう大丈夫だって言わないと」

そして、ママとパパに仲直りしてもらわないとね。

ほどか「喧嘩中のパパとママの仲直りは娘の私にお任せ! だね」

笑顔で右腕を上げる。
うん。大丈夫、私は笑顔だ。

だからきっと、大丈夫。

150: 2012/07/21(土) 23:11:02.56
―まどか―

まどか「はぁ……」

用意を終えて、ほどかちゃんのもとに戻ろうとする。
するとパパ達がいるリビングから声が聞こえた。

「寝てなくて大丈夫なのかい!?」

「大丈夫です! 御心配をおかけしてごめんなさい。この通り! 私は元気ですから」

「ほどかー!」

まどか「え? ほ、ほどかちゃんの声!?」

私が今、一番聞きたい声が聞こえ、私は慌ててリビングに戻る。

まどか「ほどかちゃん!!」

ドタドタと廊下を走る。
そしてリビングに入るとそこには。

ほどか「あ、ダメですよ、お父さん。廊下は走っちゃ」

そういって右腕を使い私の頭に優しくメッとするほどかちゃんがいた。





まどか「あ、ご、ごめん。って右腕!! なんで!?」

なんであるの!? さっきまでは……!

ほどか「生えました!!」

そう言って、ほどかちゃんは右腕をぶんぶん振る。

いやいや!! 生えたって!! いやいやいや!!!

まどか「生えないよ!! 腕だもん!!」

そうやって否定する私にほどかちゃんは急に真剣な顔をして

ほどか「実はですね……」

なにやら秘密の話をするようにほどかちゃんは私に耳打ちするように話す。

151: 2012/07/21(土) 23:11:29.07
まどか「え? なになに」

凄く真剣な表情の彼女におもわず身を乗り出してしまう。

ほどか「私は、頭さえ無事なら体を再生できるんです」

そ、そっか。そうなんだ……。それは凄い!

まどか「って! んなわけないでしょ!!」

再生できるんなら今までやらない必要ないじゃん!!

ほどか「お、おぉ……。お父さんにしては鋭いツッコみ」

なにやら感心するほどかちゃんだけど、バカにされてるようにしか感じない。




まどか「ほ~ど~か~ちゃ~ん?」

さすがの私も怒るよ?

ほどか「あー、ごめんなさいごめんなさい! 怒らないで!」

降参っとお手上げのポーズをしてなぜ右腕があるのかの説明するほどかちゃん。

ほどか「実はですね」

こういうことです。っと右腕を外すほどかちゃん。

まどか「ちょ」

驚く私。

まどか「え!? なに!? どうして!?」

なにこれ!! 
え!? 右腕とれ!!? え!?




ほどか「あー。義手ですこれ」

まどか「ぎしゅ?」

聞きなれない単語だ。

ほどか「要は人工の腕ですよ」

そういってそれを私に渡す。

まどか「わわ。……ほんとだ」

触ってみたらわかる。
これ、作り物だ。

ほどか「わかってくれました?」

そう言って私から義手を取りまた右腕があった場所に填める。

まどか「……」

152: 2012/07/21(土) 23:12:20.81
ほどか「それよりお腹が空きました。リンゴは食べたんですけどまだ足りないみたいです」

そういうと空の容器を見せ。お腹を押さえる。

ほどか「おじいちゃん、すいませんけど何か食べさせてくれたら嬉しいです」

そういってお腹を押さえながらパパにそう伝える。

知久「え? う、うん。ちょっと待っててね」

一連のやりとりをボーっと見ていたパパはそう言われ慌ててキッチンにはいる。

知久「なにかリクエストでもあるかい?」

ほどか「じゃあオムライスがいいです!」

腕をあげ、そう答えるほどかちゃん。

タツヤ「おむらいすー!」

その声に一緒になって腕をあげるタツヤ。




ほどか「タツヤおじちゃんも一緒に食べましょうねー。
    おじいちゃんのオムライスはとってもおいしいですから!」

そう言ってタッちゃんを右手で撫でようとする。
けど、一瞬躊躇った顔をした後、左手に変え笑顔で撫でる。

まどか「っ!」

私はそんなほどかちゃんを抱きしめる。
強く強く、絶対に離さないように。

ほどか「わわ! どうしたんですか! 急に抱き着かれたら危ないですよ!」


私は病み上がりなんですよ?


そう抗議の声をあげるほどかちゃんだが、そんなことはどうでもいい。




まどか「やめてよ……」

ほどか「え?」

まどか「やめてよ……。無理するのはやめて!」

おもわず大声になってしまう。
でも、もう止まらない。

まどか「なんでそんなに無理するの!? 辛いんでしょ! 悲しいんでしょ!!」

なら! なら!!

まどか「私にそれをぶつけてよ!! これじゃ! これじゃあ!!」


私はなんのためのパパなの!!?


そう言うと場は静寂に包まれた。

そして、しばらくしてからほどかちゃんの


ごめんなさい――。


その言葉がかすかに、聞こえた。

251: 2012/07/25(水) 06:13:12.76
―ほむら―

―― ほむホーム ――


ほむら「……」

暗い暗い場所で彼女は膝をかかえ座り込んでいた。

ほむら「……」

いつからこうしているのだろうか。
彼女の顔を見るとかなりやつれているだ。
そのことから、食も取らず、睡眠も取らずにずっとこうしているのではないかと思わせる。

ほむら「……」

彼女の瞳は無そのものであり、
なにも映していないかのように暗く澱んでいる。

ほむら「……」

そんな彼女のもとに来訪者が訪れる。




QB「暁美ほむら」

インキュベーター。
暁美ほむらが敵と認識し毛嫌いする生物が彼女になんのようだろうか。

ほむら「……」

答えはない。
だが、それでも構わないとインキュベーターは語りかける。

QB「どうやら、まどか達と仲違いをしたみたいだね」

最近のマミ達の様子がおかしく、なにがあったのかを聞いた彼はこの場に来た。

QB「なら君はすぐにまどか達と話し合い関係を修復したほうがいい」

その言葉に少し暁美ほむらが反応する。

ほむら「どういう風の吹き回し?」

非常に聞き取りづらい声量で彼女は敵であると認識している者に問う。




QB「君にこのままでいられると困るんだ」

困る。彼はそういった。

何が困るのか。

鹿目まどかの契約を阻止する自分は邪魔な存在のはず。
ならば、彼女から遠ざかっている今が彼等にとって最大のチャンスでは。

そうほむらは考え、インキュベーターに再度問う。

ほむら「なにを……企んでいるの?」

もはや自分の考え以外は信じられない彼女は全てを疑い、
そして一人、堕ちていく。

QB「企む。それは僕等が鹿目まどかの契約をする為、なにかを企んでいる。
   そう捉えていいんだね?」


その通りだ。お前等にはそれしかないだろう。


そう言いたげに目の前でペラペラと話すインキュベーターを睨み付ける暁美ほむら。
252: 2012/07/25(水) 06:15:02.51
QB「それなら心配はないよ。僕等は鹿目まどかから手を引いた」

ありえない言葉を聞きおもわず目を見開くほむらであったがすぐにもとの無表情に戻る。

QB「信じられない。と言いたい顔だね」

当たり前だ。無言のまま、表情だけで告げるほむら。

QB「確かにそれを証明する手立てはない、だから信じてくれとしかいえない」


こいつ等らしくもない。発言
一体なんなのだこのループは。
どうしてこうまで狂って――。


ほむらは今までのループと比べ、あまりにも異常な今回のループについて考える。
いったい、なにが原因でこうなったというのか、と。





QB「とにかく君にはほどか達と協力してワルプルギスの夜を倒してもらわなくては困るんだ」

ほどか。

その言葉にほむらは少し笑みを浮かべる。

そうだ、ほどか。

鹿目ほどか彼女の存在だ。

ほむら「そっか、そうだったのね」

ふふふ。っと笑うほむらにインキュベーターは怪訝な表情を浮かべる。

QB「どうしたんだい。暁美――」


ほむら。


そこまで言い切る前に。彼は、といっても数多ある同個体の一つのだが――。
ともあれ、彼はその命の灯を消した。




いや、消されたというの方が正しい。

そう彼は暁美ほむら、その少女の持つ命を奪うことを目的とした、
人によって作られ、今も改良を重ねられている兵器にその生命を絶たれた。

ほむら「あの子が全ての原因――」

あの女がいたから、このループはこうも歪んでしまった。

狂ってしまった。

ほむら「せっかくうまくいっていたのに」

本来ならばこのループで私の旅はハッピーエンドを迎えるはずだった。

ほむら「でも、あの女が邪魔をしたせいで」

全ては壊された。

253: 2012/07/25(水) 06:15:41.81
ほむら「あの女がいたから」

そうだ、今までのループもあの女が裏で糸を引いていたに違いない。

ほむら「だから、うまくいかなかったのね」

そうよ、その通りだわ。そうに違いない。

ほむら「本当の敵は――」

あの魔女。

鹿目ほどか。

ほむら「そう、そうよ魔女よ。あれは魔女」

みんなあの魔女に騙されているんだ。

あの悪い魔女に。






ほむら「ふふふ、待っててまどか」

私が救ってあげる。

ほむら「だって約束したもの」

まどかと約束。

ほむら「まどかをまもってあげるって」

わたしがまもるのまどかをまじょから

そう、しかめほどか、まじょから

まじょから――。

いつの間にか彼女の部屋にはインキュベーターだったものしか残っていなかった。

暁美ほむらはどこへ消えたのか。それはわからない。

ただ、彼女が消えた部屋はその闇を少し和らげた。

そう感じた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

255: 2012/07/25(水) 06:17:52.23
時刻は夕暮れ。
美樹さやかは上条恭介の病室にいた。

なにを聴いてるの――?

亜麻色の髪の乙女。

いつもの彼らしくもなく、
無愛想にそう答える恭介。

あぁ、ドビュッシー? 素敵な曲だよねー。

さやかはそう明るく話しかける。
だが恭介は無言だ。

……。私ってほら、こんなだからさー。クラシックなんて聞くがらじゃないだろってみんなが思うみたいでさー。
たまに曲名とか言い当てたらとすっごく驚かれるんだよねー。意外過ぎて尊敬されたりしてさ――。

恭介が教えてくれたから、でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聞こうと思うきっかけ、多分一生なかっただろうし――。

さやかはさぁ――

なーに――?

さやかは僕をいじめてるのかい――。


なんでまだ、僕に音楽なんて聞かせるんだ――!

嫌がらせのつもりなのか――。

だって、恭介、音楽好きだから――。

もう聞きたくなんかないんだよ! 自分で弾けもしない曲! ただ聴いてるだけなんて――!!


そう叫び手を振り上げる恭介。


僕は! 僕は――!!


そして自身が今も使っている、ポータブルレコーダーにその手を振り下ろす。

ガシャンっという音が部屋に響き、ベッドに血しぶきが舞う。

そんな恭介の暴挙に驚き、慌ててその行為を止める為にさやかは立ち上がる。


動かないんだ。痛みさえ感じない! こんな手なんて――!


そう泣きながら話す恭介にさやかは。


大丈夫、きっと、なんとかなるよ! 諦めなければ、きっといつか!


そう慰める。


諦めろって言われたのさ――


もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって――。

僕の手はもう二度とうごかない。奇跡か魔法でもない限り治らない――!


あるよ――

――え?

奇跡も魔法もあるんだよ――!


窓の外では夕日がその姿を隠そうとしていた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

256: 2012/07/25(水) 06:40:12.40
―ほどか―

今晩は。鹿目ほどかです。
今日はパパとマミさんの三人で魔女探し。

夜中の繁華街を中心に探索しています。

マミ「大丈夫ほどかさん? 傷は痛まない?」

ほどか「大丈夫です」

まどか「無理はしないでね?」

ほどか「はい。ありがとうございます。……あれ?」

パパ達の言葉に感謝を述べ、ふと前方を見やると見慣れた姿が。

まどか「どうしたの?」

ほどか「あれって仁美さんじゃないですか?」

まどか「あ、ほんとだ。こんな夜に一人でどうしたんだろう?」

ほどか「仁美さん!」

仁美さんのもとにかけより声をかける。
御稽古の帰りだろうか?

ほどか「仁美さん?」

返事がないな。
それに少し様子がおかしいような……。

ほどか「……! マミさん!」

ほどか「仁美さんの首に魔女の口づけが!」

マミ「!」

まどか「仁美ちゃん!」

パパが慌てて仁美さんの傍により声をかける。

まどか「ねえ! 仁美ちゃんってば!」

仁美さんの肩を掴み二、三揺さ振り声をかけ続ける。
その呼びかけにボーっととしていた仁美さんの意識が気が付く。

仁美「あらぁ、まどかさんごきげんようー」

まどか「どうしちゃったの? ねぇ、どこいこうとしてたの?」

仁美「どこってそれは」

そこで少し笑い、仁美さんは言葉を続ける。

仁美「ここよりもずっといい場所、ですわ」







ほどか「マミさん……」

マミ「マズイわね、完璧に操られてるわ」

マミさんは顎に手をやり思考する。

そして

マミ「とりあえず彼女についていきましょう」

その先に魔女がいるはずよ。

と言いパパに仁美さんと一緒に目的の場所へ誘導してもらうことを告げる。

ほどか(……魔女がいる場所へいけばママも現れるはず)

そう考え、仁美さんを救うためにも、ママとパパのためにも私は仁美さんの後についていくのでした。

257: 2012/07/25(水) 06:40:57.03
―― 工場 ――


仁美さんの後をつけ、ついた先には寂れた工場。
そこには大勢の人達が魔女の口づけによりここまで誘い込まれていた。

ほどか「これは……!」

マミ「危なかったわね」

少しでも遅けれこの人達は全員……。

ほどか(よかった……)

助けることができそうだと胸を撫で下ろしほっと一息つく私。

まどか「あれ!」




パパが指差す方向では女の人が塩素系洗剤と酸性系の洗剤をバケツに混ぜていた。

ほどか「っ!」

急いでそれを奪い取り、工場の窓の外に投げる。
ガシャーンっとガラスの割れる音が工場内に響く。
そして、外に向けて放り出されるバケツ。

なんとか、間に合ったみたい……。

ほどか「はぁ、はぁ」

そんな私の行動に操られている人達が襲い来る。
その姿はまるでゾンビみたいで、少しだけ恐怖を覚えた。

ほどか「くっ!」

魔法少女である私ならばただの人であるこの人達に負けるわけもないが……。

ほどか(この人たちは操られているだけ、そんな人たちに危害を加えるわけには!)

この人達は被害者だ。
そんな人達に力を使って万が一にも怪我を負わせてしまうわけにはいかない。





なにか打開策を練る。
だけど、いい考えは浮かばず壁際に徐々に追い詰められる。
そんな私を呼ぶ声がした。

マミ「こっちよほどかさん!」

マミさんに呼ばれ、その方向を見ると扉を開け手を振りそちらに誘導するマミさんとパパの姿が映る。

ほどか「!」

走り、すぐにその先へ滑り込む。

その直後バタンっと乱暴に扉を閉める音が聞こえる。
荒れる息を整える私にマミさんが声をかけてくれる。

258: 2012/07/25(水) 06:41:22.30
マミ「大丈夫? 怪我は……」

ほどか「大丈夫です。それより……」

マミ「えぇ、いるわね」

まどか「え? え?」

私達の周囲には使い魔。
そして、

ほどか「結界。いきましょう」

マミ「えぇ」

ほどか「お父さんはここで待っていてください。すぐに戻ってきますから」

パパにはここで待機してもらい、変身し結界内に入り込む私達。

259: 2012/07/25(水) 06:42:01.44
―― 魔女結界内 ――
 

異質な空間。
ふわふわと浮かぶその感覚からここに重力というものが存在していないことを想像させる。
そして、周囲には多くのモニターがあり、それを使い魔達が一つずつ抱えている。

そして、モニターにはある映像が映っていた。

マミ「なにかしら……? 大人の、男性と女の子?」

マミさんが映像を注視し、呟く。

その言葉が気になり私もモニターに映る映像を見る。

ほどか「……!」



それが間違いだった――。




ほどか「っ! やめて!!」

突如大声をあげる私に驚いたマミさんがこちらを向き何事かと問いただす。

マミ「ど、どうしたのほどかさん……」

頭を押さえ、座り込む私の肩を抱き、落ち着くように宥める。

だが、今の私にはその声が聞こえず。

ほどか「やめて! やめてよ!! わかってる! わかってるから!!」

映像に映し出されるのは、ピンクの髪をした成人男性。
その男性は、年は私達ぐらいの女の子に話しをしている。
いや、口論している。っと言った方がいいだろうか。
だが、なにやら険悪な雰囲気が音声の無い映像からも見て取れる。

我慢の限界か、女の子の頬を勢いよく叩く男性。
その行動にショックを受けたのか泣きそうになりながらその場から走って立ち去る女の子。





ほどか「いや!! あれは私が!! 私が悪いの! そんなことはわかってる! わかってるから!!」

相変わらず叫び続ける私をマミさんが落ち着かようと抱きしめる。

マミ「ほどかさん! 大丈夫よ!!大丈夫だから!」

だがそんな声が聞こえるわけはなく。

そして。

映像に黒い綺麗な長髪をした美しい女性が映し出される。

そしてさっきの男性がその女性に向け黒い、無機質な、日本では一部の人しか持つことを許されないモノを使い。

涙を流しながら何かを男性に語りかける、その女性の生命を





絶った――。

260: 2012/07/25(水) 06:42:55.11
―マミ―

ほどか「いやあああ!!!!!!!!!!」

絶叫。
モニターに映る映像を見たほどかさんは、完全に錯乱し、叫び声をあげる。

マミ「ほどかさん! ダメ! 落ち着いて!!」

そんな彼女をなんとか落ち着かせようとするが、突き飛ばされてしまう。

そして、彼女は自分の持つ盾から銃を取り出し所構わずに乱射し始めた。

マミ「!! ほどかさん!!」

ほどか「うわああああああああああ!!!!!! やめろ!!!!!! やめろおおおおおお!!!!!!」

このままでは危険だと思い、なんとか彼女に近づこうとするが、
こう乱射されては近づけない。




マミ「くっ! どうすればいいの!?」

こんな時、暁美さんならば時を止め彼女を助けることができるのだろう。

マミ(このままじゃほどかさんが!)

そして数体の使い魔が混乱状態にある彼女に近寄り、攻撃を仕掛けようとする。

マミ「ほどかさん!」

使い魔達が隙だらけの彼女に対して攻撃をしかけようとしたその時。





青い閃光が使い魔達を掻き消し、そして彼女を苦しめるモニターを消滅させた。


261: 2012/07/25(水) 06:43:21.49
マミ「あ……」

私の眼前に立つ。白いマントをつけたビスチェ風のトップと左右非対称なスカートを穿いた一人の少女。

無言で立つ彼女はほどかさんの頭を一つ撫で、


もう大丈夫だから――。


そう笑いかけるのであった。

マミ「み、美樹さん!」

美樹さやか。その少女がこの場所にいる。
なぜか。理解はできない。
だが一つわかることは、彼女のその着ている衣装。

それは――。




マミ「あなた、どうして!」


魔法少女に――!


その言葉に、無言で私に笑いかけることだけで返答し、眼前にいる魔女に向き直る彼女。

さやか「……」

その手にはいつの間にか剣が握られており、彼女はそのまま魔女に飛び掛かる。

さやか「はあ!」

剣を振り、使い魔、魔女に無数の斬撃を浴びせかける。
そして勢いよく魔女を空中に弾き飛ばし自身も跳躍。




さやか「これで――!」

魔女よりも少し高く飛び右手に掴む剣を突き立てるように刺す彼女。

さやか「とどめっだああああぁあぁ!!!!」

そしてそのまま落下のスピードを利用し、魔女を剣で突いたままもの凄い勢いで急降下。

地面に激突した瞬間。吹き荒れる魔女の黒い血の雨。

そして、その雨が止んだかと思うと、空間は崩壊し始める。

262: 2012/07/25(水) 06:44:00.03
さやか「いやぁ、ごめんごめん、危機一発ってところだったねぇー」

まどか「さやかちゃん……。その恰好……」

鹿目さんが美樹さんの衣装に疑問を投げかける。
その問いに美樹さんが頭を掻きながら答える。

さやか「ん? いやぁ、はっはっはっ! なに、心境の変化ってやつかなぁ」

そう言う美樹さんに心配そうな目を向けるまどかさん。

さやか「大丈夫だって! 初めてにしてはうまくやったでしょ私」

へらへら笑いながら、私に目で同意を求める。

マミ「え、えぇまぁ」

あの時、美樹さんがこなければ危なかったのは事実。

だけど。





マミ「本当にいいの? あなた、これでもう……」

私の質問の意味を理解したのか美樹さんは笑いながらこう答える。

さやか「いいんですって! その辺は覚悟済みです。それより……」

ちらりと目を離れたところに向ける。

そこには気絶したほどかさんが寝ていた。

さやか「ほどかの方が……」

彼女は魔女の空間が崩壊するとともに安心したのか気絶。
そして今も眠り続けている。

マミ「大丈夫。気を失っているだけのようだから……」

まどか「ほどかちゃん……。マミさん、結界内でいったいなにが……」

そう私に問いかけるまどかさん。
だけど、あれを言ってもいいものか……。

263: 2012/07/25(水) 06:44:37.69
マミ「……魔女の攻撃から私を庇ってね、それで……」

美樹さんに目配せし、話を合わせるように促す。
その私の意図を察したのか美樹さんも話を合わせる。

さやか「そうそう! そこにピンチのマミさんとほどかを救う為にさやかちゃんが颯爽と参上! 
    並み居る使い魔と魔女をばったばったと倒したってわけ!」

まどかさんはその話に納得したのかほどかさんの傍に近寄り眠る彼女の顔を撫でる。

まどか「そう、ですか……」

顔を撫でる彼女の瞳はとても悲しそうで、自分の無力を嘆いているようにも見えた。

さやか『ねぇマミさん』

美樹さんからテレパシーが送られてくる。

さやか『実際なにがあったの? 私は途中からだからよくわかんないんだけど、あれは……』

ほどかさんの錯乱を見た美樹さんはあの状況が明らかに異常であったと話す。




マミ『後で話すわ』

そう答え。
先に魔女に操られた人達の介抱を始める。

マミ(あれは……。あの映像は……)

さっき見た映像を思い出す。

ある男性がある女性を撃ち頃す場面。

そしてそれを影から見つめる女の子。

マミ(ほどかさん、あなたの目的はまさか――)

安らかに眠る彼女の愛らしい顔を見ながら、私は頭に浮かんだ考えを首を振り掻き消すのであった。

264: 2012/07/25(水) 06:45:06.54
―― 電波塔 ――


「で、わざわざこんなところに呼び出して、アタシに話しってなに?」

手に持つ棒状の菓子を齧りながら赤い髪をした少女は語りかける。

ほむら「あなたに協力してほしいことがあるの」

暁美ほむらはその赤髪の、自身とそう変わらないであろう年齢の少女にそうきりだす。

「きょーりょく?」

ほむら「二週間後この街にワルプルギスの夜が来る」

その言葉に少し眉を顰めほむらの真意を図るように顔を見る少女。

「なぜわかる……」


そのような気配は感じられない。そもそも噂通りならばワルプルギスの夜はその気配すら感じさせず顕現するはず。
それをこの女はなぜ知っている。

そう考え、この少女が何者であるかを探る。




ほむら「それは秘密」

長い髪を手でたなびかせそう答えるほむら。

そして

ほむら「ともかくそいつさえ倒せたら私はこの街を出ていく。後はあなたの好きにすればいい」

と赤髪の少女にそう告げる。

俯き考える少女。

「ふーん……。ワルプルギスの夜ねぇ……」

そう言い再びほむらの顔を見る。

「確かに一人じゃ厳しいが、二人ががりなら勝てるかもなぁ」

そしてにやつきながたもう片方の手に持つ、菓子の箱をほむらに差出し。

杏子「食うかい?」

そういうのであった。

佐倉杏子。
また、一人の魔法少女が見滝原に現れるのであった――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

265: 2012/07/25(水) 06:45:35.64
――病院 屋上 ――


さやかは上条恭介が入院する病院の屋上にいた。
そこには数人の人影があり、上条恭介その人もいた。

屋上には少しぎこちない、だが優しい綺麗な音色が響く。

さやかはその音色を聴き、微笑みながらその音色が発せられる場所を見る。

その音色は上条恭介が発していた。
正確には上条恭介が奏でる、ヴァイオリンから。

さやかは恭介を見、そして目をつむる。

さやか(私の願いは叶ったんだ)

上条恭介の手は、もう動かない。
そう医師に宣言されていたはずだ。

にも関わらず彼の手は音を奏でる。







それはさやかの願いによるものだ。
さやかが魔法少女になる代償に、叶えられる願い。

本来ならば、自身のために使うはずの願いを彼女は恭介のために使った。

恭介の手を治すために。

一般的な魔法少女ならば、その行為を否定するだろう。
そしてそれが正しいのだろう。

だがさやかの顔は満足気で、かつ幸せそうに見えた。

後悔なんてあるわけない――。

そう言いたそうに見える彼女の顔は夕焼けに照らされ、とても美しいものに見えた。

そして彼女の左手の中指には指輪が填められ、輝いていた。

266: 2012/07/25(水) 06:46:13.47
―― 街 ――


ブエナスタルデス! 鹿目まどかです!

ほどかちゃんを危険な目に合わせた魔女を倒した日から一日経った夕方。
今日はマミさん、さやかちゃん、そしてほどかちゃんの四人で行動しています。

まどか(本当はほどかちゃんは置いてきたかったけど)

相変わらず無理矢理ついてくるほどかちゃん。
最近傷つくことが多く、危ない目にばかり合っている彼女。

彼女のパパとしてはもうこんなことは止めてほしい。
と思いながらも、彼女の頑固さに押し負けて結局流されてしまうのでした。

まどか(無理なんだろうけど、この子には普通の女の子として暮らしてほしい……)

彼女の目的を忘れたわけではありません。
そして私がすべきことも。

でも、

まどか(ここまで傷つかないと果たせないのなら……)

いっそ、諦めて私と一緒に――。







そこまで考えて首を振る。

まどか(違う。わかってる)

そんな事を彼女が望んでいないことくらい。

まどか(でも、でも、それでも)

もう……。この子が傷つく所は見たくない。

まどか(勝手だよね……)

勝手だ。結局私は、自分のことしか考えていない。

まどか(私、嫌な子だ……)

自己嫌悪に嵌り、心が苦しくなる。
最近、こんなことを考えてばかりだなー……。




マミ「ここね」

マミさんがソウルジェムを持ち、魔女の気配を感じる場所を探し当てる。
その瞬間結界が開かれ、周囲の雰囲気が変わる。

ほどか「この結界の感じは使い魔ですかね」

ほどかちゃんが結界を見ながらそう告げる。

さやか「楽にこしたことないよ。こちとらまだ初心者なんだし」

マミ「使い魔とはいえ油断は禁物よ? 今日は美樹さん一人で戦うんだから」

そうです。今日は魔法少女になったばかりのさやかちゃんを鍛えるためにも極力さやかちゃん一人で戦います。
マミさんとほどかちゃんは後方で戦い方の指示とか危ないときは援護とか、、、まぁ、そんな感じです。

さやか「わかってます」

そう元気に答えるさやかちゃん。
ちゃんと今回の主旨は理解はしているようだ。

267: 2012/07/25(水) 06:47:37.56
使い魔「ぶううううーーん!! ぶううーーん!」

さやか「あれが……!」

まどか「逃げるよ!」

なにやらやたらテンションの高い使い魔を発見。

さやか「任せて!」

そういい変身するさやかちゃん。

そしてたくさんの剣を召喚し使い魔に対し攻撃をしかける。





使い魔「ぶ、ぶううううーーん!! ぶううーーん!」

なかなかすばしっこく避ける使い魔。
そして一本の剣が使い魔に今、当たろうとした時


邪魔が入りました。








さやか「!」

杏子「ちょっとちょっと、なにやってんのさ、アンタ達」

突然の来訪者。
それに驚く私達を尻目に使い魔はその隙に逃げてしまいます。

さやか「誰よあんた!」

空間がもとに戻り、路地裏に変わる。
そして、突如現れた人物に向けてそれぞれ反応を返します。

マミ「佐倉、さん……!」

ほどか「杏子さん……?」

まどか「え? 杏子って確か……」

ほどかちゃんが力を借りたいって言ってたあの?

私達の反応を見て、少し首を傾げる杏子と呼ばれた女の子。

268: 2012/07/25(水) 06:48:09.33
杏子「マミは久しぶりだね。でも」


アンタは誰だい?


そういって手に持つ槍をほどかちゃんに向ける杏子ちゃん。

ほどか「……」

その問いにほどかちゃんは無言になる。
なんと言えばいいのか考えているふうにも見える。

杏子「ん? あんた、ほむらに似て……? あぁ、あんたが……」

そういう杏子ちゃんに今度はほどかちゃんが質問する。

ほどか「ほむらさんを知ってるんですか!?」

杏子「あぁ、まぁちょっとね」




ほどか「ほむらさんは、あの人はいまどこに!」

ほどかちゃんの剣幕に少し押されたのか、若干引きつつも杏子ちゃんは素直に質問に答えます。

杏子「さぁ? そこまでは知らないよ」

ほどか「そ、うですか……」

まどか「……」

暁美さんと仲違いしてから、私達は暁美さんとは会っていない。
学校にも登校はしてこない。
そんな暁美さんにほどかちゃんは何回も連絡を取ろうとしているようだが、電話は繋がらず、メールにも返信はないみたいだ。

夜な夜なあけみさんがいそうな場所を探したりもしているようだがそれも効果はない。

杏子「はぁ……、なんかよくわからないけど、まっいいや」

杏子ちゃんは溜め息交じりにそう言うと、ほどかちゃんに向けていた槍を今度は近くにいたさやかちゃんの首筋に突きつける。




杏子「ところで、あんたさ見てわかんないの? あれ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」

さやか「だって、あれほっといたら誰かが殺されるのよ!?」

そう反論するさやかちゃん。
その言葉に杏子ちゃんはもう片方の手に持っていたたい焼きを齧りながら。

杏子「だからさー、4、5人ばかり食って魔女になるのを待てっての。そうすりゃグリーフシードもちゃんと孕むんだからさー」

そう言ってさやかちゃんの首筋に当てる槍を引く。

杏子「あんた、卵産む前の鶏絞めてどうすんのさ」

さやか「魔女に殺される人達をあんた……! 見頃しにするっていうの!?」

その言葉に杏子ちゃんは少し呆れた顔をした。そして、ぷっと吹き出し。

杏子「なるほどねー。マミ、あんたいい仲間を見つけたんだ」

そうマミさんに言い放つ。

269: 2012/07/25(水) 06:48:50.45
杏子「甘い考えのあんたに似た、甘い考えのバカがさ」

そう言ってバカにしたようにけらけらと笑う。
さやかちゃんは杏子ちゃんのその態度が気に食わなかったのか、怒気を露わにし、つっかかる。

さやか「あんたは……」

そんなさやかちゃんに杏子ちゃん自分の方から近づく。

杏子「やっぱりほむらの言った通りだね。あんた等は甘い。そんなんじゃワルプルギスの夜には勝てない」

ほどマミ「!」

杏子「私が、それをわからせてあげる」

そういうとさやかちゃんに攻撃を仕掛けようとする。





マミ「ほどかさん!」

ほどか「は、はい!」

さやかちゃんを助けようと、そして戦いを止めようとマミさんとほどかちゃんが変身する。

さやか「二人はさがってて!」

でも、さやかちゃんは助けようとしてくれたほどかちゃん達を止める。
その表情には怒りが張り付いていて、感情が爆発してしまったことが窺える。

さやか「こいつだけは! こいつだけは許せない!!」

そう言うと杏子ちゃんに剣戟を浴びせる。
だが杏子ちゃんはそれを軽く受け止め、

杏子「あんたさー。なんか大元から勘違いしてんじゃない?」

そういって剣戟を受けながらも余裕の表情で話す。




杏子「食物連鎖って知ってる? 学校で習ったよね?」

そして鍔迫り合いの形になり笑いながらさやかちゃんに顔を近づける。

杏子「弱い人間を魔女が食う。その魔女を私達が食う……」

そして急にふっと力を抜き後ろに少し下がる。
そのせいでさやかちゃんはバランスを崩し、前のめりに倒れそうになる。

杏子「これが当たり前のルールでしょ。そういう強さの順番なんだから」

結果としてさやかちゃんは前方に倒れこむことはなかった。
なぜなら杏子ちゃんの足によりお腹を支えられ、くの字に曲がりながらも寸でのところで地面に激突することはなかったから。

270: 2012/07/25(水) 06:49:18.93

さやか「くっ!!」

すぐに態勢を立て直し杏子ちゃんに剣を振るう。
しかし、その攻撃は一瞥もされず避けられ、そして空を斬る。

杏子「やれ人助けだの正義だの、そんなおちゃらけた甘い考えで契約するから」

そういってほどかちゃんの方を見る。

杏子「だから、あいつは腕を失ったんじゃないの」

そういって、またけらけらと笑う。
ほどかちゃんはその言葉に自身の右腕を触り、俯く。

さやか「あんたは!! あんたってやつはー!!!」

その言葉に本気で怒り、さやかちゃんは剣を振るい続ける。
しかし、杏子ちゃんはそれを全て微動だにせず受けとめる。





杏子「ちょっとさ、やめてくれない……」

手に持つたい焼きを食べながら呆れた顔をする杏子ちゃん。

杏子「遊び半分で首突っ込まれるのってさぁ、」


ホントむかつくんだわ――。


そういうと杏子ちゃんを勢いよく弾き飛ばす。






さやか「うわあぁ!!」

杏子ちゃんに弾き飛ばされたさやかちゃんは、
そのまま錐揉み状に回転し壁に激突し、その衝撃で壊れた水道管から流れる水を頭からかぶる。

杏子「ふん。とーしろが、ちっとは頭冷やせっての」

つまらなさそうにそう言い捨てると、くるりと振り返り立ち去ろうとする。

だけど……。

杏子「……。おっかしいな、全治三か月ってくらいにはかましてやったんだけど」

さやかちゃんに背を向けたままそう腹立たしげに告げる。

さやか「あんただけは許さない! あんたみたいなやつがいるから……!」

よろけながらも立ち上がるさやかちゃん。
そんなさやかちゃんに対し杏子ちゃんは改めて向き直る。





杏子「うぜぇ」

そう言い放ち槍を構える。

杏子「超うぜえ!」

そして、さやかちゃんに飛び掛かる。

杏子「つーかなに? そもそも口のきき方がなってないよね。先輩に向かってさー!」

さやか「黙れー!!」

そして、二人の魔法少女の本気の戦闘が始まった。

271: 2012/07/25(水) 06:50:19.20
まどか「ねぇどうして! 魔女じゃないのに! どうして味方同士で戦わなければならないの!?」

マミ「どうしようもないわ、お互いに譲るつもりがないもの……」

マミさんが諦めたように首を振る。

まどか「でもこんなのってないよ……」

ほどか「とにかく止めましょう! このままじゃさやかさんが!」

戦いを見る限りさやかちゃんの防戦一方だ。このままではいずれやられてしまうだろう。

マミ「そうね、美樹さんには悪いけど」

そういってマスケット銃を構え杏子ちゃんの動きを止めようとするマミさん。

そして狙いもつけ、後は発砲するだけとなったところで。



「それには及ばないわ」



辺りに、凛とした声が響いた。








杏子ちゃんがさやかちゃんに止めをさそうと跳躍。
そして、回避行動をとれないまでに追い詰められたさやかちゃんにそのまま槍を突き立てようとした。

でもそれは叶わず、槍は地面を抉るだけに留まった。

杏子「え――!?」

さやか「あ――」

まどか「!!」

マミ「あれは――」

ほどか「!」

272: 2012/07/25(水) 06:50:47.51
―ほどか―

さっきの水道管により出来た水溜りが水しぶきをあげる。

それはそこに降り立った人により出来たもので、
水飛沫はかすかに路地裏に入り込む夕焼けにより輝く。
そして飛沫はそこに降り立った人までも輝かせ、その光景はまるで天使が地上に降り立ったかのように連想させた。

ほむら「……」

そう、その人こそ暁美さんその人で、私達とは決別した、私の母親、その人だった。

ほどか「マ、ママ……」

誰にも聞こえない程度の声で呟く私。
ママが、あれだけ会いたかったママがいま私の目の前にいる。

おもわず、かけつけそうになる。
だけど、走りだしそうな足を押さえ私はただ、その光景を見守る。

完全に着地したママは、自身の髪を手でたなびかせ無言で立つ。

その姿はとても綺麗で私はその光景に状況も忘れ見惚れてしまった。





マミ「暁美さん……」

杏子「ほむら……」

まどか「……」

パパが私に近づき私の前に庇うように立つ。
その目はママを睨むように見ていて、私はそんなパパの姿を見て悲しい気持ちになるのだった。

ほむら「……」

少し、私の方を見たママ。
だけど、その瞳からはなにも感じられず。
でも、私はその瞳になぜか体を強ばらせてしまう。

杏子「なんのつもりだ? 邪魔をするなんて」

なぜその必要があるのか、そう問いただす杏子さん。
そんな杏子さんにママは視線を向ける。

ほむら「あなたが馬鹿なことをしているからよ」








杏子「はぁ? でもあんたとの協力の条件には……」

そこまで言う杏子さんを睨みつけることで黙らせるママ。

協力? 条件? なんのことだろう。

ほむら「さやかを頃すことは条件に入っていないわ」

頃す。

ママの言葉から信じられない言葉が出てきて驚く。
そして、その言葉の意味を少し考える。

なら、なにを頃すことは条件に入るのか――。

まどか「……!」

なにかを察したのかパパの警戒は一層強くなり、ママに私が見えないように立ちはだかる。
そんなパパを相変わらずなにも映さない瞳で見、そしてもう一言。

ほむら「それに、その役目は私のモノよ」

そう、パパを見たまま宣言するかのように言い放つ。

273: 2012/07/25(水) 06:51:26.75
マミ「暁美さん!」

マミさんがママに詰め寄る。

マミ「あなたは勘違いしているわ! 話し合えばすぐに解決する誤解を!」

そう叫ぶマミさんを一瞥するママ。

ほむら「勘違いをしているのはあなた達の方」

そして、


いずれわかるわ――。


そう告げ杏子さんに、行きましょう。
と言い、変身を解きこの場を立ち去ろうとする。

杏子さんは渋々といった感じで同じように変身を解きママについていく。





ほどか「待って! ほむらさん!」

そう言ってママを止める私。

だけど、ママは私の声に反応することもなく歩き続け。
大通りの方へ消えていった――。

慌てて追いかけようとする私をパパが凄い力で押し留める。

ほどか「はな、して! ママを、お母さんを追いかけなきゃ!」

だけど、無言で私を抱きしめ絶対に行かせないと、押し留めることで意思表示するパパ。

まどか「……」

ほどか「どう、して……」

パパの意図がわからず、もう追い付けないことを悟った私は地面に座り込む。

274: 2012/07/25(水) 06:51:56.66
―杏子―

杏子「なぁ、いいのか? 目的の奴ってあいつなんだろ?」

先を歩くほむらにそう質問する。

ほむら「えぇ、そうよ」

こちらを振り向かずに答えるほむら。

杏子「なら今ここで――」

そこまで言った私にほむらが冷静に反論する。

ほむら「今は無理よ。マミもいるし、さやかもいる」

さすがにあの二人がいる中、目的を果たすのは無理よ。

そう言ったほむら。




杏子「まぁ、そうだろうけどさ」

嘘だと思う。

杏子(こいつの能力なら相手の人数は関係ないだろ)

時を止める能力。
私の信頼を得るためにこいつは自分の能力を話した。

杏子(まっそれだけなんだけど)

でも、それだけでだいたいのことはわかった。

時を操るということはこいつの願いは時間に関係する願いだったんだろう。
つまりこいつは未来から来たと考えられる。
それなら、ワルプルギスの夜の情報をこいつが知っていたことにも辻褄が合うしな。

杏子(どのくらい未来から来たのかはわからないけど)

でも、こいつの口ぶりからそう遠い未来ではないだろう。





杏子(まぁ今はそんなことはどうでもいいか)

今はこいつの目的を果たすのはその能力を使えば容易いはずだということ。

杏子(たしか、鹿目ほどかを頃すだっけ)

なぜこいつがそんなことを考えるのかはわからない。

杏子(一応、理由は聞いたけどさ……)

納得はいかないものだ。

いや、さっき本人を見るまではどうでもよかったから納得していたことだっけな。

杏子(ほどかって奴がこの世界を滅ぼすために鹿目まどかって奴の才能を利用しようとしてる。だっけ)

荒唐無稽のない話だ。
バカらしくもある。
だけどこいつはそう信じているみたいだ。

275: 2012/07/25(水) 06:52:24.79
杏子(だいたいそんなことをしてほどかって奴になんのメリットがあるんだよ)

自分の住むとこがなくなったら困るだろ。

杏子(それに今日見た限りではそんなことを考える奴には見えなかった)

世界を滅ぼすどころか世界を救うことを願うような甘ちゃんに見えた。

杏子(どーも、話がおかしいみたいだね)

なにか、どこかでズレてしまったのではないか。
些細なことがきっかけで、事態はおかしくなってしまったのではないか。

そう感じる。




杏子(っていうかアタシもなにを熱くなってんだか)

本当は今回の目的はほむらの言う、この街の魔法少女を見にいっただけだ。

杏子(あの、さやかって奴)

あいつを見ていたら無性に腹が立った。
あいつの甘い考えを聞いていたら嬲り頃したくなった。

杏子(……。あいつの願いはなんだったんだろう)

ふと、あのバカの願いが気になり、そんなことを考える。

杏子(ま、私には関係ないけど)

そう結論付け、でも、少しだけ調べてみようかなっと思いながら、目の前を歩くほむらを見る。




杏子(なんにせよ、こいつは信じすぎないほうがいいね)

正直こいつが一番得体が知れない。
なにを考えているのか、全く読めないのだ。

杏子(これならむしろ、バカなぶんあいつらのが信じられるよ)

そう考える。
そして、ほむらの後姿を眺めながら、こいつも悲しいやつだよなー。っと思う。

杏子(きっと、こいつは誰も信じていないんだから――)

――そう自分、さえも。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

276: 2012/07/25(水) 06:52:52.93
―― 病院 ――  


美樹さやかは胸にCDを抱え、病院の廊下を走る。

顔は笑い、一刻でも早く彼女は彼女の想い人に会いたい。
そう感じさせる。
しかし、彼女が上条恭介の病室に辿り着き、
その部屋を見た時、目的の人物はいなかった。

怪訝な顔をし、部屋のなかを見回すさやか。
その後ろを看護師である女性が通る。

それに気づいた彼女はさやかのことを知っていたのか、上条恭介のことについて話す。

あら、上条さんなら昨日退院したわよ――。

その言葉に驚いた顔をするさやか。

リハビリの経過も順調だったから予定が前倒しになって――。

そう話す彼女にさやかは、

そうなんですか――。

っと返す。その表情はさっきの浮かれたような顔とは違い、少し傷ついたようにも見えた。

277: 2012/07/25(水) 06:53:23.39
―― 上条家 門前 ――


さやかは上条恭介の家の前に立っていた。
そして呼び鈴を押そうと指をインターホンに近づけた瞬間、彼の家から聞き慣れた音色が聞こえる。

その音にはっとし、呼び鈴を押そうと近づける指を止めるさやか。
そして、少し微笑を浮かべ帰ろうと門に背を向ける。

杏子「会いもしないで帰るのかい? 今日一日追い掛け回したくせに」

さやかの後ろにはガードレールにもたれかかる、杏子がいた。

さやか「お前は……」

杏子「知ってるよ、この家の坊やなんだろ? あんたがキュゥべぇと契約した理由って」

杏子「まったく、たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねーことに使い潰しやがって」

苦々しげにさやかに言い捨てる。





さやか「お前なんかになにがわかる!」

その言葉に杏子は語尾を荒げ、さやかに諭すように話す。

杏子「わかってねーのはそっちだバカ! 魔法ってのは徹頭徹尾、自分だけの望みを叶えるもんなんだよ!
   他人のために使ったってろくなことにはならないのさ!」

そこで区切り、もう一言を添える。

杏子「巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」

腹立たしげに杏子を睨むさやか。

杏子「惚れた男をものにするならもっと冴えた手があるじゃない。せっかく手に入れた魔法でさぁ」

そう厭らしく笑いながら話す。
そんな彼女を気味悪く思ったのかさやかは少したじろぐ。

さやか「な、なによ……」






杏子「今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないくらいに潰してやりな」

さやか「!!」

杏子「あんた無しではなにもできない体にしてるんだよ。そうすれば今度こそ坊やはあんたのモンだ! 身も心もぜーんぶね」

続けざまにそういう杏子。

杏子「気が引けるっていうなら、あたしが代わりに引き受けてもいいんだよー? 同じ魔法少女のよしみだ。お安い御用さ」

さやか「絶対に……。お前だけは絶対に許さない……! 今度こそ必ず……」

にやにやと笑いながら挑発めいたことを話す杏子に、
怒りからか震えるさやか。

杏子「場所変えようか?」

そんなさやかにそう提案し

杏子「ここじゃ人目に付きそうだ」


278: 2012/07/25(水) 06:54:01.30
―まどか―

―― まどホーム ――


まどか「……」

昨日あった、暁美さんの言葉を思い出す。


――さやかを頃すことは条件に入っていないわ。


この言葉、この意味を考えると……。

まどか「まさか、あなたは……」

あの時のほどかちゃんに向けた暁美さんの目。
何も考えず、何も映さない。そう見えたその瞳。

だけど、感じるものがあった。

まどか「あの時、暁美さんは確かに……」

ほどかちゃんを頃す気だった――。





頭を抱える。

まどか「きっと、これは私のせいだ」

あの時、暁美さんを叩いたから、突き放したから――。

まどか「私、なにをやってるの……?」

ほどかちゃんは、暁美さんは私を救う為に未来から過去に戻ったと言っていた。

まどか「そんな子を私は……」

でもあの時は、ほどかちゃんが大怪我をしているのに酷いことを言う暁美さんにかっとなって……。
気づいたら叩いていた。

まどか「でも、あれじゃ駄目だったんだ……」

そうだ、本当はあの時、暁美さんにちゃんと事情を説明するべきだったんだ。




まどか「まだ、まだ間に合うよね?」

そうだ。まだ全ては終わっていない。まだ、やり直せる。

まどか「ほむらちゃんに謝ろう。そして全部話そう。そしたら――」

今度こそ本当の意味で私達は家族になれるから――。

マミ『まどかさん! ほどかさん! 聞こえる!?』

急にマミさんの声が聞こえた。
突然のことに驚く。

まどか「え、マ、マミさん?」

279: 2012/07/25(水) 06:54:27.28
ほどか『聞こえます。どうしたんですか?』

自室にいるであろうほどかちゃんの声も聞こえますます慌てる。

まどか「え、なにこれ……」

その疑問にマミさんが答えてくれる。

マミ『突然ごめんなさい。これはキュゥべぇに頼んで、テレパシーをあなた達に送ってもらってるの』

キュゥべぇってそんなことまで出来るんだ……。

マミ『それより大変なの! 美樹さんが――!』

マミさんがさやかちゃんの身に危険が迫っていることを告げる。
その話に、私は急いで出かける準備をする。

まどか(もしかしたら、ほむらちゃんに――)

出来れば会えることを祈り私はほどかちゃんと共に外に飛び出した。

280: 2012/07/25(水) 06:56:06.98
―三人称―

―― 歩道橋 ――

杏子「ここなら遠慮はいらないよね。いっちょ派手にいこうじゃない」

そういい変身する杏子。
それに対しさやかも変身しようとするが、

まどか「待って! さやかちゃん!」

まどかの静止が入る。

さやか「み、みんな!? 邪魔しないで!」

まどか「だめだよこんなの! 絶対おかしいよ!」

そのまどかの声に杏子は笑いながら槍を構える。

杏子「ふん! ウザい奴にはウザい仲間がいるもんだねー!」

そう言って今にも飛び掛かろうとする。





ほむら「じゃああなたの仲間はどうなのかしら」

そんな杏子の背後にいつの間にかほむらが立っていた。

杏子「ほむら……」

ほどか「ほむらさん!」

マミ「暁美さん!」

ほむら「話が違うわ、さやかには手を出すなと言ったはずよ」

ち、っと舌打ちして杏子は憎々しげにほむらを睨む。

まどか「ほむらちゃん!」

ほむらの名を呼ぶまどか。
だがそんなまどかをほむらは無視し杏子と話し続ける。





杏子「あんたのやり方じゃ手ぬるすぎるんだよ! どの道向こうはやる気だぜ?」

そういって少し笑う杏子にほむらはこう告げる。

ほむら「なら私が相手をする。手出ししないで」

そういうほむらに、少し考える素振りを見せ、

杏子「ふん。じゃあこいつを食い終わるまで待ってやる」

っと、自分の口に咥えた菓子を指差す。

ほむら「充分よ」

ほむらそう言いうとさやかのもとに近づく。
その態度が気に食わないのか、挑発と捉えたのか苛立たしげに

さやか「なめるんじゃないわよ!」

そう言って変身しようとソウルジェムを掲げるさやか。

281: 2012/07/25(水) 06:56:34.50
まどか(ダメ! いま、戦いになったらほむらちゃんと話すことが出来なくなる!!)

そう考たまどかはさやかのもとに走り、彼女の手のひらからソウルジェムを奪う。

そして――。

まどか「さやかちゃん! ごめん!」

なぜか道路にそれを投げ捨てるまどか。
そしてそれはトラックの荷台に乗り猛スピードで持ち主であるさやかから離れてしまうのであった。

ほむら「!?」

ほどか「な!?」

そのことに反応する二人。
そして急いで、トラックを追うべく時を止める。





さやか「まどか! あんた、なんてことを!!」

まどかの奇行に文句を言うべく近寄るさやか。

まどか「だって、こうしないと!」

すると、まどかに近づいたさやかが電池が切れたように倒れかかる。
まどかはそんなさやかを倒れないように支える。

まどか「さやかちゃん……?」

マミ「さやかさん!? いったいどうして……」

マミも急に起こった出来事が理解できず。さやかに近づく。

QB「今のはまずかったよ、まどか……」

キュゥべぇが、まどかの行為に対し非難の声をあげる。

杏子も近寄り、体の力が抜けきったさやかの首を掴み、そのまま持ち上げる。





まどか「やめて!」

マミ「佐倉さん!」

まどかとマミが突然の杏子の蛮行に驚く。
しかし、そんな声にも耳をかさず依然さやかを持ち上げる杏子。
すると彼女は焦ったような声をあげる。

杏子「どういうことだ、おい……!」

そのまま額に数滴の汗を流しながら言葉を続け、

杏子「こいつ、氏んでるじゃねぇかよ!」

衝撃の事実を告げた――。

まどマミ「え――」

282: 2012/07/25(水) 06:57:07.24
幾許かの時間が経った。
その間にキュゥべぇはさやかがなぜ氏んでいるのか、その話をまどか達にした。

場にはまどかの泣き声。

そして苛立たしげにキュゥべぇを掴む杏子。

顔面蒼白で地面に座り込むマミがいた。

ほどか「……」

ほむらとほどかがさやかのソウルジェムを拾い終え戻ってくる。





ほむら「……」

ほむらがそっとさやかの傍にソウルジェムを置く。

すると今までなんの反応を示さなかったさやかがビクンっと動き、青白かった顔に血色が戻る。
そして意識を取り戻したさやかは上体だけを起こす。

状況がまったく掴めず、ただぼんやりと周囲の人間の顔を見回すさやか。

さやか「なに? なんなの?」

だが彼女達は、さやかのその声に答えることはなかった――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

283: 2012/07/25(水) 06:57:36.76
―まどか―

―― マミホーム ――


……。鹿目まどかです。
衝撃の事実をキュゥべぇから告げられ、あの歩道橋にいた全員は今、マミさんの家にいます。

まどか「……」

場の空気は重く、さっきから誰も言葉を発しようとはしません。

そんな中、さやかちゃんが口を開きます。

さやか「騙してたのね、私達を……」

QB「結果的にはそうなるね」

さやかちゃんのその言葉に、キュゥべぇは否定もせず言い訳もせずそう告げた。

さやか「あんた! これがどういうことかわかって!」

声を荒げ、キュゥべぇに掴みかかるさやかちゃん。そんなさやかちゃんをほどかちゃんが止める。

ほどか「やめてください! さやかさん!」

でもその静止には耳も貸さず、さやかちゃんはキュゥべぇを掴んだまま、
近づくほどかちゃんを睨む。




さやか「あんたも、知ってたんだよね!」

その声にビクッと肩を震わし、俯くほどかちゃん。

さやか「知ってて言わなかったんだ。なんでよ!」

ほどか「そ、それは……」

煮え切らない態度のほどかちゃんに益々怒気を増し、叫び続ける。

さやか「あんたもこいつと同じだ。あんたも私達を騙していた!」

まどか「さやかちゃん! それは違うよ!」

怒鳴られるほどかちゃんを庇うように前に立ち、ほどかちゃんに非はないことを伝える。

さやか「なにが違うっていうの!? そいつは知ってて黙ってたんだよ!? こんなことを!」

こんな大事なことを……! っといい座り込むさやかちゃん。

静寂――。

その場にいる誰もが何も話さなかった。

284: 2012/07/25(水) 06:59:26.63
―― 学校 ――

まどか「いい天気だねー」

そう言って空を見る。
時刻は昼。いま私は昼食を食べに屋上に来ている。

ほどか「そう、ですね」

私の声にほどかちゃんは元気無くそう答える。
どうやら、相当まいっているようだ。

昨夜、魔法少女の真実を聞かされ、重い空気の中解散となった私達。

その結果、夜が明けた今日、ショックからかさやかちゃんとマミさんは欠席。
ほむらちゃんは来ているがお昼になるとどこかへ行ってしまった。

そして、杏子ちゃんはなにかを考えながらそのまま消えてしまい、
私は落ち込むほどかちゃんを慰めながら今に至るというわけだ。

まどか(我ながら強くなったね)

前まででの私ならばこんなことがあれば、落ち込んだままなにも手をつけなかっただろう。
だけど、今は。

まどか(この子のおかげかな)

隣で元気のなさげなほどかちゃんを見やり、そう考える。

まどか(本当は私もショックだけどいつまでも落ち込んではいられない)

だって、私はこの子を守ると決めたんだから。
私しかこの子を守れる人はいないんだから。

まどか(とにかく、ほむらちゃんともお話ししないとね)

さやかちゃん達のことも気がかりだけど、今はほむらちゃんと仲直りするのが先決だよね。
昨日見たほむらちゃんはなんだかやつれてたようにも見えたし……。

まどか(私のせいだよね……)

私があんなことをしたから。

ほむらちゃんを叩いた手のひらを見つめる。
今、思えば人を叩いたのなんて初めてだったな。


285: 2012/07/25(水) 07:00:28.19
まどか(嫌だな。すごく嫌な気分)

よく叩かれた方より、叩いた方が痛いなんていうけど、あれは違うね。
叩かれた方が痛いに決まってるよ。

それでも、私がこんなに辛いのは。

まどか(あんな方法しか選べなかった自分の無力さを嘆いてるんだよね)

結局、自分のことしか考えてないんだ。
最悪だよ、そんなの。

ほむらちゃんは私のために頑張ってくれてるのに。
それに、ほどかちゃんだって……。




まどか(ごめんね、ほどかちゃん。私、約束を破るよ)

ほむらちゃんに全部伝えよう。
そして仲直りするんだ。
じゃないといつまでもみんなバラバラなままだ。

まどか(なら、私がなんとかしないと。だよ)

私はパパだ。パパは家族の中で一番強くないといけないんだ。
そう決意して、私の隣に座り空を眺めるほどかちゃんの頭を撫でる。

ほどか「どうしたんですか……」

そんな私の行為を不思議がる彼女。

まどか「えー? ほどかちゃんは可愛いなーってね」

ほどか「なんですか、それ」

急になにおかしなことを言ってるの? そんな顔をする彼女だけど、私の手を払いのけたりはしない。
それが今の私にはすごくありがたかった。

まどか(ごめんね、ほどかちゃん。私に勇気をちょうだい。みんなを守り抜くことができる勇気を)

286: 2012/07/25(水) 07:01:06.34
―三人称―

―― 教会 ――

古ぼけた教会がある。

もう随分使われていないのだろう。
ところどころが老朽化のせいかぼろぼろになり、本来の機能を果たすことは叶わず、
もはや雨露をしのぐ場所としか呼べない。
そんな誰も立ち入ることはないであろう場所にて話し声が聞こえる。

馬鹿野郎――! 

普段は静寂の身が支配するであろう教会に怒鳴り声が響く。

怒鳴り声の主である佐倉杏子はこの日、自宅にて落ち込むさやかを連れ、
自身の元、自宅であるこの場所に彼女を連れてきた。

この場所にて杏子は自身の過去について話、落ち込むさやかを励まそうとした。
争いあう仲であるはずのさやかを想いその行動にでたことは彼女なりの優しさなのだろう。
もしくは、自身と似た境遇にいたさやかにシンパシーを感じたのかもしれない。





杏子はさやかに対し、自分がこれまでしてきた生き方を勧め、魔法少女の能力を自身の為にのみ使うことを勧める。

だが、さやかはそれに対し自分の考えは曲げないことを告げる。

その返答に杏子は激昂したのだ。

杏子「ッ!」

教会から出ようと階段を降りるさやかを睨みつける杏子。

そんな杏子にさやかは振り返ることなく、自分が邪魔になるというのなら前のように頃しにくればいいと告げる。
そして、そのことを恨んだりもしないと。

言いたいことは全て言ったとばかりに教会からでる。

そんなさやかの態度に杏子は自分の手に持っていたリンゴに荒々しく齧り付き見送るのであった。

287: 2012/07/25(水) 07:01:33.15
 ―― ほむホーム ――

ほむら「急に話がしたいだなんてどうしたのかしら」

まどか「ごめんね、どうしてもほむらちゃんに話したいことがあったから」

放課後。
ほどかちゃんには用事があると告げ一先ず別れた。
そして私は単身、私達を避けるように帰ろうとするほむらちゃんを捕まえ、
話をするべくほむらちゃんのお家にお邪魔したのです。

まどか「まずは……。ごめんなさい!」

ほむら「なんのことかしら」

出会ってすぐ、急に頭を下げる私の意図が読めないのだろう。ほむらちゃんは少し困惑気味だ。

まどか「この前は、ほむらちゃんを叩いちゃって……。ほむらちゃんは私のために頑張ってくれてるのに」

ほむら「あぁ、あのことならもういいわ。私も悪かったのだし」

まどか「本当に?」

ほむら「えぇ、もう大丈夫よ」





まどか「……。なんでだろう、私。ほむらちゃんのこと信じたいのに、嘘つきだなんて思いたくないのに……。
    全然、大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんが言ってることが本当だって思えない」

ほむら「……」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。あなたはどうしてほどかちゃんが……。憎いの?」

ほむら「……、別に憎くなんて……」

まどか「嘘だよね」

嘘だ。短い間だけど一緒に過ごしてほむらちゃんのことはよくわかった。
この子は自分の事に関しては嘘つきだ。

特に自分の感情に対しては頑なに偽り続ける。

まどか「ほむらちゃんはほどかちゃんのことを憎い。たぶん、頃したい。そう思ってるんじゃないかな」

まっすぐほむらちゃんを見つめる。
悲しいことだけど、ほむらちゃんの本心を聞かないと始まらない。

まどか「それがなんでかはわからないけどね」



288: 2012/07/25(水) 07:02:06.50
ほむら「……だとしたらどうだっていうの」

……。やっぱりね。

まどか「だとしたら私はほむらちゃんのその考えが間違いだって言うよ。
    ほむらちゃんはほどかちゃんのことを誤解してるって言う」

ほむら「誤解……?」

まどか「うん。ほどかちゃんはほむらちゃんが思うような子じゃない。
    ほむらちゃんが憎く思うような子じゃないよ」

ほむら「なにを根拠にそんな……」

まどか「ほむらちゃんこそ、なにを根拠にほどかちゃんのことをそんなに目の敵にするの?」

ほむら「それ、は……」

まどか「ほどかちゃんは今まで私達を守ってくれたよね。
    マミさんのことだって片腕を失ってまで守った」

ほむら「……それは、あの子の演技で……」

まどか「演技? どうしてそんなことをする必要があったの?
    氏ぬかもしれなかったんだよ」




ほむら「それは……。まどかに信頼されるために。私達を騙すために……」

まどか「なんでほどかちゃんが私達を騙さないといけないの?」

ほむら「あの子の目的にそれが必要だから……」

まどか「目的? ほむらちゃんが考えるほどかちゃんの目的ってなに?」

ほむら「それは……。あの子はまどかの魔法少女の才能を利用して……」

まどか「利用して?」

ほむら「世界を自分のものにしようと……」

……。驚いた。まさか、そんなことを考えていたなんて。
世界を自分のものに? そんなのあるわけないのに……。

まどか(ここまで追い詰められてたなんて……)







ほむら「あの子は魔女だから……。悪い魔女だから、だからみんな騙されて……」

うわ言のように、自分に言い聞かせるようにぽつぽつとほむらちゃんは話し続ける。
その姿は病的で、私のせいでここまで追い詰めてしまったのだと、改めて自分の行いを後悔する。

まどか「違うよほむらちゃん。ほどかちゃんは魔女なんかじゃない」

ほむら「でも、あの子は私からまどかを奪った……。まどかの傍にいれるのは私のはずなのにあの子がそれを奪ったから……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「だから、あの子は敵。まどかを脅かす敵だから……。私はまどかを守らないといけないから……」

そうだ、ここまでほむらちゃんを追い詰めたのは私だ。
未来で魔法少女になったせいでほむらちゃんはどうしようもなく追い詰められてしまった。

まどか(ごめん。ごめんねほむらちゃん)

まだなにかを言い続けるほむらちゃんを抱きしめる。

289: 2012/07/25(水) 07:03:06.10
まどか「ほむらちゃんごめんね」

ほむら「まどか……?」

まどか「私のせいだよね。私が魔法少女になったせいでほむらちゃんはこんなに追い詰められて……」

ほむら「まどかのせいじゃ」

私の言葉をすぐさま否定するほむらちゃん。
だけど、これは私の責任なんだ。

まどか「ううん、私のせい。本当ならほむらちゃんに恨まれるのは私のはずなのに……」

ほむら「私がまどかを恨むなんて……」

まどか「ほむらちゃんは優しいもんね」

こんなに優しい子を私は……。
でも、嘆いてばかりはいられない。

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。私のいうことなんて信じられないかもしれない。
    でもお願いだから信じて? ほどかちゃんは敵じゃない」

ほむら「……」

これだけはわかってもらわないといけない。
じゃないといつまでも二人の気持ちはすれ違い続けることになる。

まどか「ほむらちゃんは未来から来たんだよね」

ほむら「……、えぇ、そうよ」

まどか「その目的は私を魔法少女にしないため」

ほむら「えぇ」

まどか「どうして私がそれを知っていると思う?」

ほむら「それは、あの子が教えたから……」

まどか「うん、そうだよ。ほどかちゃんが教えてくれたから。
    じゃあさ、なんでほどかちゃんはそんなこと知ってると思う?」

ほむら「それは、どこかで調べて……」

まどか「どこで? そんなことを知ってるのはほむらちゃんや私達だけだよね?
    そもそも、私の才能を利用する為だけなら別にそんなの知らなくてもいいよね」

ほむら「それは……」

一つずつ一つずつ、丁寧にほむらちゃんの誤解を解いていく。
冷静になって考えれば、きっとほむらちゃんもわかってくれるはずだから。

まどか「これから話すことはほむらちゃんにとって信じられないことだと思う。
    それにそのことを証明する証拠もない。でも、信じてほしい」

そして、最も重要な事実を告げる。
本当はほどかちゃんには止められているけれど、こうなってしまえば言う他ないんだ。

ほむら「……?」

私がなにを言いだすのか、見当もつかないほむらちゃんは小首を傾げる。
そんな、姿を見た私は、そんな姿も可愛いな。と場違いなことを考えてしまう。


慌てて雑念を振り払い、
話に集中するべく、覚悟を決めるべく、深呼吸を一つ。

まどか「ほどかちゃんがほむらちゃんのことを知っている理由。
    そして、未来から来た理由。それはね……」

また、一つ息を吐く。

そして――。


彼女がほむらちゃんの子供だからなの――。


ほむらちゃんにとって衝撃的な真実を告げた。

290: 2012/07/25(水) 07:03:37.22
まどか「これが、ほどかちゃんが未来からきた目的だよ」

ほむらちゃんの誤解を解くために私は今まで黙っていたことを全て話した。
これで、ほむらちゃんが信じてくれるかはわからないけど、信じるしかない。

まどか「だから、ほどかちゃんが私達の敵なんてことはありえないよ。
    だってあの子は私達の娘なんだもん」

ほむら「……そんな事って……。あなたはそれを本当に信じられるの?」

まどか「うん。私はほどかちゃんを信じるよ」

ほむら「そんな、そんな話……」

まどか「でも、そう考えたら全部の辻褄は会うよね」

ほむらちゃんのこと。ワルプルギスのこと。魔法少女の事。
ほどかちゃんとほむらちゃんの姿が似ていることも、そう考えれば辻褄が合う。




ほむら「でも、それじゃあ、あの子は……」

事実を伝えられたほむらちゃんが眉間に皺をよせ、深く考え込む。
そんなほむらちゃんに、私はどうしてもあの子を信じてほしくて話し続ける。

まどか「ほむらちゃんお願い。ほどかちゃんを信じてあげて。
    あの子はほむらちゃんのために未来から……」

ほむら「少し黙って!!」

まどか「!」

苛立たしげに声を荒げるほむらちゃんに驚いてしまう。
そして、私の狼狽に気づいたほむらちゃんは、怒鳴ってしまったことについて謝罪する。

ほむら「あ、ごめん、なさい……」




まどか「ううん。こっちこそごめん」

少し、焦りすぎたかもしれないかな。
ほむらちゃんだって、急にこんなことを言われたら混乱するよね。

ほむら「……。しばらく一人にしてもらえるかしら。考えをまとめたいの」

まどか「わかった。またくるね」

ほむらちゃんの言葉に頷き彼女の家から出る。
私が出来るのはここまでかな。

後は……。

まどか(信じてるからね、ほむらちゃん)

――――――――――――
――――――――――
――――――――

291: 2012/07/25(水) 07:04:27.79
―― まどホーム ――


まどか「……」

ほどか「……。どうしたんですか。出会いがしらにいきなり土下座なんて」

時刻は8時。
ほむらちゃんの家から帰宅し、
私を出迎える為に玄関に出てきたほどかちゃんに出会った私は史上稀にみる土下座を決行していました。

まどか「真に申し訳ございません」

ほどか「いや、話が読めないんですけど……」

まどか「実は……。ほむらちゃんに、ほどかちゃんが娘であることを伝えてしまいました」

ほどか「!? ……!!?」

うわっちゃー。めちゃくちゃ驚いてるよ……。
これは私氏んだかな……。





ほどか「ちょ、え? それ、本当ですか?」

まどか「本当です。ごめんなさい」

ほどか「どどどどうして」

まどか「その、あの、ほむらちゃんと仲直りするために……」

ほどか「そ、そうですか」

まどか「はい……」

ほどか「……」

まどか「……」

沈黙、、、





まどか(ヤバい、どうしよう。この沈黙が怖い。
    もしかして、ほどかちゃん魔法少女に変身したりしてないよね)

それで、前みたいにミサイル落とそうとしてたりとか……。

まどか(すっごい気になる。でも、今顔を上げるわけには……)

ほどか「……。あの、顔を上げて下さい」

まどか「へ?」

ほどか「気にして、ませんから……」

まどか「え??」

ほどか「いえ、むしろ私が悪いんです。本来なら、お母さんにも伝えるべきことでしたから」

まどか「??」

なんか状況がいまいち読めないな。
とりあえず、ほどかちゃんが怒ってないことだけはわかるけど……。

292: 2012/07/25(水) 07:04:53.94
ほどか「私が最初に内緒になんて言うからこんなややこしいことになったんですよね……」

まどか「えーっと。それって、ほむらちゃんにほどかちゃんのことを黙ってたことだよね」

ほどか「はい……」

まどか「でも、それはほむらちゃんが信じてくれるかどうかわからないから仕方ないって……」

ほどか「ですが、伝えるべきことです……」

まどか「……」

ほどか「私が臆病だったから……」

うーん。なんか話の内容が掴めないな……。

まどか「臆病って?」

ほどか「実は……。私がお母さんに黙っていた本当の理由は……」





まどか「怒られるのが怖かったから!?」

ほどか「はい」

まどか「え、えー……」

ほどかちゃんが言うには、ほむらちゃんは魔法少女の真実を知っている。
そんなほむらちゃんに自分が娘だと言えば、そんな愚かな行動をした自分を軽蔑するのではないかと恐れたからだという。

まどか「まさか、そんな理由で……」

ほどか「ごめんなさい……」

しゅんっとうなだれるほどかちゃんを見る。
まさか、そんな子供じみた理由で黙っていたなんて……。

まどか「うーん……」

でも、考えて見れば、この子はまだ中学二年生の子供なんだよね。
普段の落ち着いた振る舞いや大人びた表情から、ついつい忘れてしまいそうになるけど……。





まどか(しかも、究極のお母さんっ子)

だから、ほむらちゃんに嫌われるようなことは避けたかったのかもしれないな。
まぁ、普通は怒られたからってそれが嫌われることには繋がらないんだけど……。

まどか(ほどかちゃんはほむらちゃんのことになると、常識がなくなるからなー……)

それに、嫌われるだけが理由じゃないだろうし。
たぶん、本当の理由は……。

まどか(心配させたくなかったっていうのが一番の理由かな)

娘が魔法少女の残酷な運命を背負っているなんてほむらちゃんが知ったら、すごく悲しみそうだもんね。
あの子のことだから、自分の責任だって自分を責めそうだし……。

まどか(やっぱりほむらちゃんに似てるなー)

自分だけで背負っちゃうところとか、自分で自分を追い詰めるところとかそっくり。

まどか(そんなとこ似なくてもいいのに……)

293: 2012/07/25(水) 07:05:19.38
まどか「ねぇほどかちゃん」

ほどか「……はい」

まどか「今回のことはほどかちゃんは悪くないよ」

ほどか「……でも」

まどか「だって、子供なら自分の親に嫌われたくないって思うのは当たり前だし、
    心配かけさせたくないっていうのもわかるよ」

この子の場合は、その気持ちが強すぎるのが難点なんだけど。

まどか「ほむらちゃんのことを考えて黙ってたんでしょ?」

ほどか「……はい」

まどか「じゃあほどかちゃんは悪くないよ。ううん、誰も悪くない。
    ただ少し、間違っちゃったんだよ」

どこかでみんなの気持ちがズレて、それで間違った。
すごく曖昧でふわふわとした理由だと思うけど、今回のことに関してはそうしておこう。




まどか「でも、間違いは正せるんだよ。
    それに気づくことが出来たら、人は間違いを正すことが出来る」

ほどか「……」

まどか「だからさ、今度は一緒に間違えないように考えよう?
    一人より、二人。二人より三人で考えた方がきっといい考えが浮かぶよ。それにさ、」

私達は親子なんだから。

そう締めくくって、ほどかちゃんの頭を撫でる。

ほどか「そう、ですね……。一人で考えて行動しても……」

そこで言葉を終えて、ほどかちゃんは俯く。
なにを言いたいのかは正確にはわからないけど、ほどかちゃんもきっと私の気持ちに気づいてくれたんだと思う。





まどか「……」

彼女の頭を撫でながら祈る。

まどか(お願い、ほむらちゃん。後はあなたが信じてくれれば……)

そうしたら、私達は……。
今度こそ本当の家族に……。

まどか(信じるしか、ないよね……)



叶うなら、みんなが救われますように……。


294: 2012/07/25(水) 07:05:45.49
さやか「……」

まどか「さやかちゃーん! おはよう」

おはようございます! 鹿目まどかです!
ほむらちゃんに真実を告げた日から明けて次の日。

いつも通りほどかちゃんと仁美ちゃんと登校中に昨日は休んださやかちゃんを見かけました。

さやか「!」

仁美「おはようございます、さやかさん」

ほどか「おはようございます」

やっぱり、ほどかちゃんまだ引きずってるみたいだね。
さやかちゃんと顔を合わすのは辛そうだ。

さやか「あ、あぁー。おはよう!」

さやかちゃんの方もおかしい。
いつも通り元気に振舞おうとしてるけど、その元気が空回りなのはすぐわかった。





仁美「昨日はどうかしたんですの?」

さやか「ちょっとばかり風邪っぽくてねー」

まどか「さやかちゃん……」

さやか『大丈夫だよ。もう平気、心配いらないから。
    ほどかもごめんね。この前は酷いこと言って。あんたのことだから黙ってたのにはわけがあるんでしょ?』

ほどか『さやかさん……』

さやか「さーって今日もはりきって……」

いつも通り、掛け声をあげようとするさやかちゃんだったけど、その言葉は途中で不自然に止められた。
さやかちゃんの目はある方向を見つめていて、気になった私達はその方角へと目をこらす。
するとそこには……。




仁美「あら、上条君退院なさったんですの……」

さやか「……」

まどか「……」

仁美ちゃんの言葉に、なにも返さいさやかちゃん。
そんないつもとは違ったさやかちゃんが気になり、ちらりと顔を伺う。

さやかちゃんの上条君を見る目はどことなく寂しそうだった。



372: 2012/07/25(水) 08:17:20.25
すいません。出かける時間が来たのでここで区切らせてもらいます。

色々と問題ばかりの僕ですけどあと少しだけお付き合い願えたら助かります。

とにかく完結は絶対させます。

ごめんなさい。

559: 2012/08/01(水) 00:56:32.29

577: 2012/08/01(水) 16:31:16.30
乙乙、次回作も楽しみに待ってます。
まどか「未来から来た私の子供!?」【後編】

引用元: まどか「未来から来た私の子供!?」