1: 2013/02/27(水) 19:46:34.69
2: 2013/02/27(水) 19:48:41.32
新しいプロデューサーは若い男の人だ。
兄ちゃんとあんまり変わらないかな。
アイドルをちゃん付けで呼ぶ以外は至って兄ちゃんっぽい。
兄ちゃんのことは良く知っていて、彼の分まで任せてほしい、なんて言っていた。
亜美「双海亜美だよ! よろしくね、新兄ちゃん」
真美「で、こっちは真美だよっ! ヨロヨロ!」
新P「よろしく、亜美ちゃん、真美ちゃん。
髪を結んでいるのが亜美ちゃんで、下ろしているのが真美ちゃんだな」
3: 2013/02/27(水) 19:50:23.05
兄ちゃんは氏んじゃったけど、
お姫ちんの超パワーで時々亜美に取り憑いたり、話しかけてくることもある。
つーわけで、朝に急襲されることもあるのだ。
自室でふと、朝もやの雰囲気を感じて起きた時。
亜美「やっと起きたか」
あれっ、兄ちゃん?
亜美「おう、おはよう」
あ、うん、おはよ……じゃなくって!
亜美「ほら、今日竜宮小町とフェアリーは合同ライブだろ?」
そ、そうだよ? ……じゃなくって、オトメの寝ている身体に入んないでよ!
真美「んー……」
4: 2013/02/27(水) 19:52:54.22
亜美「いや、新しいプロデューサーも不慣れだろうからな。
亜美の助言って形でさ、俺のプロデュース計画を……」
ダメだよー、そんなんじゃ新兄ちゃん、成長しないよ。
亜美「だってヒマなんだよ。お前らのプロデュース計画ばっかり溜まっていってさ」
じゃあ、新兄ちゃんの身体を乗っ取る! とか。
亜美「なんで俺が男の身体に入んなきゃいけないんだよ」
…………兄ちゃん、まさか亜美の中に入ってくるのって。
亜美「え? あ、いや、違う。そういうことじゃなくてだな」
うわあああああん! 兄ちゃんのヘンターイ!
亜美「わっ、叫ぶなよ! 脳内でリフレインが凄いんだから!」
真美「んー……? あみ? どしたの?」
亜美「ああ、真美、おはよう」
真美「あれ、にいちゃんか」
5: 2013/02/27(水) 19:53:57.80
真美、兄ちゃんが亜美を食い物にしようとしてるよぅ!
亜美「そこで叫んだって真美には聞こえないぜ亜美さんや、げへへ」
真美「……?」
亜美「って、テンション低いな、真美」
真美「あたりまえだのビスケットだよー……今何時?」
クラッカーじゃなかったっけ。
亜美「そうだな、……あー、今は六時半だよ」
真美「早いよー……真美は今日オフなんだから、もうちょっと寝かせて……」
亜美「ばーか、竜宮とフェアリーのライブ見に行くって言ったのはどこの誰だ?」
真美「にいちゃんが真美に入って連れてってよー……」
6: 2013/02/27(水) 19:54:49.69
亜美「んなことしないって……じゃあ亜美、一旦出るぞ」
あれ? お姫ちん居なくても出れんの?
亜美「頑張れば」
そっか。じゃーね、兄ちゃん。
亜美「おう…………っとと、戻ってきた」
唇の自由が戻ってくる。
……なんだか、変な生活だなぁ、と思う。
そりゃ、氏人と会話ってだけで変だけどさ。
真美「ふにゅー……」
亜美「真美さんや、今日のライブは10時スタートだから亜美は8時に事務所につかなきゃならんのだよ」
真美「……何時にお家出るの?」
7: 2013/02/27(水) 19:55:51.18
二段ベッドの下段に亜美、上段に真美なので――顔は見えない。
亜美「えーっとね、ヨユーを持って7時15分ぐらいには」
真美「…………わかった」
ガタン、と上から音がする。ハシゴを使って下に降りた真美は、
目をこすりながら大あくびをして部屋を出た。
アイドルがしちゃあいけない顔だよ。
亜美「……さーて、と」
竜宮小町×プロジェクト・フェアリー合同ライブ。
765プロのみんなのお仕事が着々と増えてきている中、この2ユニットがついにライブをする。
場所は都内の広い公園の屋外ステージ。
亜美「……ワーイルドーよーりデーンジャーラースー♪」
歌ってみると、声は出ないし音程がメチャクチャだ。
朝だもん、仕方ないね。
8: 2013/02/27(水) 19:56:47.89
――
765プロに着くと、既に亜美と真美以外の参加者、全員が集まっていた。
新P「おはよ、亜美ちゃん、真美ちゃん。真美ちゃんは応援?」
真美「そーだよ→」
あずさ「真美ちゃんもステージにあがればいいのにねぇ」
響「そうだな。……真美、どう?」
真美「ううん、いいよ! だって、今日は竜宮とフェアリーのライブなんだからさ」
響「そうか、……でも、またいつかみんなでライブやろうな!」
真美「うんっ」
髪を下ろしてからの真美は、なんだか以前より大人になったような気がする。
亜美が子供なだけ? うーむ。
9: 2013/02/27(水) 19:57:44.26
運転席には新兄ちゃん、助手席にりっちゃん。
後は後ろにテキトーに……と、765プロ流アイドル輸送が完成するのです。
ワゴン車だけど人はギュウギュウ詰め。うーむ。
伊織「プロデューサー、よろしく」
新P「よし、じゃあ行くよ!」
ブロロロと、車は走りだす。目指せなんたら公園。
律子「じゃあ、今日のライブについて確認するわね。
プロデューサー、いいですか?」
新P「はい、お願いします」
律子「今日のライブは765プロ主催のゲリラライブよ。
竜宮小町とプロジェクト・フェアリーで、まずは一曲ずつ披露してもらうわ」
あずさ「聞いてます~」
10: 2013/02/27(水) 19:58:43.65
律子「竜宮小町がまず『七彩ボタン』、フェアリーが『ヴァンパイアガール』を歌うわ」
伊織「鬼軍曹の指導の通り踊るわよ」
律子「もう、誰が鬼軍曹よ! ……で、二曲目はそれぞれの歌を交換。
フェアリーが『SMOKY THRILL』、竜宮が『オーバーマスター』を歌って終わり」
亜美「楽しみだなー、お姫ちんが『恋どろぼOh!』って歌うとこ」
貴音「はて? それは別の歌では?」
響「貴音、SMOKY THRILLの歌詞……解ってる?」
貴音「もちろんです。『きみがふれーたーからー♪』」
新P「それ、七彩ボタンじゃないかな」
貴音「なんと!」
アハハハハハ
美希「…………」
11: 2013/02/27(水) 19:59:27.87
律子「まあ、これはみんな踊れると思うけど、アンコールで『READY!!』をやる予定だから覚えておいて」
伊織「『The world is all one !!』の方がいいんじゃない?」
律子「私も迷ったけど、プロデューサーがどうしても『READY!!』ってね」
新P「あはは」
あずさ「プロデューサーさん、どうしてなんですか?」
響「自分はどっちの曲も好きだけど……理由があるのか?」
新P「なんとなく、オーバーマスターでかっこいい空気になったあとは、
おもいっきり元気な曲がいいなって思ったんだよ」
亜美「なるほろ!」
12: 2013/02/27(水) 20:00:42.18
――
朝8時40分、車は公園の駐車場に着いた。
みんな、車から降りてまず最初にするのは背伸び。気持ちはわかる。
新P「さーて、行こうか!」
屋外ステージだから、リハーサルは出来ない、と言われた。
ゲリラライブってのもあるのかな。リハーサルやると気づかれちゃうんだろうね。
響「なあ美希、さっきから全然喋ってないけど……大丈夫か?」
美希「…………うん、平気なの」
貴音「美希、熱でもあるのでは?」
美希「だいじょーぶ、だいじょーぶなの」
律子「ちょっと、美希?」
ミキミキの顔色が随分と悪いのに気づいたのは、控え室に入った後。
一番後ろの席に乗っていたミキミキは、いおりんの横でずっと眠っていたらしい。
寝るのは、いつものことなんだけど。動きもフラフラ気味だった。
13: 2013/02/27(水) 20:01:45.50
新P「美希ちゃん、顔赤いぞ」
真美「ミキミキ、辛いなら真美がかわりに」
美希「いいのっ」
ミキミキは「ステージに立つ」と言って聞かなかった。
美希「ほら、早く衣装を着るの!」
律子「じゃあ、私とプロデューサーは外で待ってるわね」
新P「俺も行きます、律子さん。……美希ちゃん、何かあったらすぐに呼んでな」
美希「なんもないの!」
ガチャン
14: 2013/02/27(水) 20:02:37.61
衣装は、フェアリーが金色の、竜宮は紫のいつものやつだ。
着替え中、お姫ちんがふと呟いた。
貴音「それにしても……本日のライブは、いつもと違って変わっていますね」
伊織「変わってる?」
貴音「屋外ステージを使うなど、事務所単体ではありませんでした」
あずさ「確かに、そうねぇ。アイドルジャムとかの企画では歌ったりしたけれど……」
美希「これはね」
貴音「?」
美希「これはね、ハニーが企画してた、最後のライブなの」
あずさ「プロデューサーさんが?」
15: 2013/02/27(水) 20:03:20.92
美希「ハニー、ミキに話してくれてたの」
響「……このライブのことをか? 自分、これを聞いたのは今のプロデューサーが来てからだぞ」
伊織「私も」
美希「……律子と一緒に、頑張るんだーって。ミキも出てくれるよな? って聞かれたの。だから」
横を向くと、真美と目が合った。
兄ちゃんってホント、罪作りな男だよね。
美希「ミキ、このステージは……このステージだけは、出なきゃいけないの」
亜美「……だからそんなに無理してるの?」
真美「でも、にいちゃんだってそんなミキミキは見たくないよ!」
美希「…………ミキ、ステージで歌って踊って、ハニーに見守られながら氏ねたら、満足なの」
16: 2013/02/27(水) 20:04:32.94
貴音「……そんなことを言ってはいけません、美希」
美希「でも――――」
響「っ美希!」
ミキミキが膝から崩れ落ちた。
ひびきんとあずさお姉ちゃんが支える。ミキミキの息は荒い。
あずさ「大変、早くプロデューサーさんと律子さんを呼んできて!」
真美「う、うんっ」
バタン
伊織「美希、美希っ!」
いおりんがミキミキの身体をゆすり、名前を呼ぶと、突然に。
スッと、ミキミキが身体を起こした。「いてて」と頭を抑えながら。
美希「…………こいつ、こんな状態で……」
17: 2013/02/27(水) 20:05:36.46
伊織「……み……き…………?」
一瞬で気がついた。これは、あの時と似ている。お姫ちんと顔を見合わせた。
「わたくしではありません」って目だね。
美希「伊織、手ぇ貸してくれ」
伊織「……? アンタいま、伊織って……はい」
美希「ああ、悪い。……貴音、悪いな」
貴音「…………いえ……あなた様、なのですね?」
お姫ちんがそう言った瞬間、みんなが一斉に声を出す。
あずさ「プロデューサーさん!?」
響「プロデューサーなのか!?」
伊織「…………プロデューサー?」
18: 2013/02/27(水) 20:06:13.81
亜美「兄ちゃん、どうしてミキミキに?」
美希「倒れたから、俺が代わりにステージに出る、なんて一瞬思ったんだけど……。
この身体じゃ無理だな。多分、あんまり俺も入っていられないし」
ミキミキの身体の息は荒い。全身が呼吸を求めているように。
そのままソファに横になって、水を飲んだ。
貴音「ええ……15分程度しか、入っていられないでしょう」
伊織「本当に……プロデューサー、なのね」
美希「ああ…………にしても、頭が痛い。身体もあついし」
あずさ「あの、プロデューサーさん。もうすぐ、律子さんと今のプロデューサーさんが」
ガチャ
りっちゃんと新兄ちゃんが駆け足で入ってきた。
新兄ちゃんは、一連の流れを知らない。
新P「美希ちゃん、大丈夫か!?」
美希「……あんまり。…………なの」
兄ちゃんは、思い出したように『なの』と言った。
19: 2013/02/27(水) 20:08:56.24
律子「やっぱり、美希は出さないほうが……いいのかもしれないわね」
新P「ええ、顔が真っ赤だ。……美希ちゃん、病院行くか」
美希「え、それは……ちょっと。…………なの」
兄ちゃんは俯いて、病院に行くことを拒んだ。
貴音「プロデューサー、すみませんが少し退室していただけませんか?」
新P「どうして?」
貴音「わたくしに、考えがあるのですが……殿方には少し、ですので」
新P「……分かった」
新兄ちゃんが部屋を出て行き、ドアが閉まる。
貴音「…………さて、あなた様。美希の意識はありますか?」
20: 2013/02/27(水) 20:13:50.92
律子「えっ?」
亜美「りっちゃん、いまミキミキの中には兄ちゃんが居るんだよ」
真美「……にいちゃんが?」
りっちゃん達と一緒に入ってきた真美も驚いている。
美希「…………いや、全然反応がない」
貴音「そうですか…………」
律子「ね、ねえ。大丈夫なの?」
美希「……律子」
律子「は、はい? 何ですか、プロデューサー」
美希「…………美希がな、すっごく今日のステージに立ちたがってるんだ」
律子「……そう、なんですか?」
21: 2013/02/27(水) 20:16:09.80
美希「だからさ」
律子「はい……」
美希「せめて、『星井美希』って身体だけでも、ステージに立たせてやりたいんだよ」
律子「……え?」
美希「俺が、美希の代わりにステージに立つよ」
響「ええっ!?」
伊織「アンタ何言ってるの!?」
あずさ「あの、プロデューサーさんはダンスを覚えていらっしゃるんですか?」
美希「そりゃあ、プロデューサーですからね。踊れるかどうかは分かりませんが……」
真美「でも、ミキミキの身体は熱なんじゃ……」
22: 2013/02/27(水) 20:17:56.69
美希「そこで、律子におつかい、頼んでいいか」
律子「え?」
美希「頭痛薬、頼むよ」
律子「は、はいっ! 買ってきます!」
バタン
亜美「ねえ、兄ちゃん……それでミキミキはいいのかな?」
美希「え?」
亜美「ミキミキがステージに立った、ってことにはならないよね?」
美希「…………それは、分からない。だけど、何もしないよりはマシだろ」
23: 2013/02/27(水) 20:20:56.64
あずさ「美希ちゃんの身体にも、いろいろと負担がかかるんじゃ」
貴音「……意識が戻るまでは、大丈夫だと思います」
美希「……だそうです」
伊織「じゃあせめて、ステージの順番を変更させて」
響「え?」
伊織「アンタ達じゃなくて、私達」
いおりんは亜美とあずさお姉ちゃんを交互に見た。
なるほど。
伊織「竜宮小町が先に歌う」
いおりんはセットリストの書かれている紙を一枚壁からはがして、
ボールペンを使って矢印を書き加えた。
24: 2013/02/27(水) 20:26:06.26
伊織「先に私達が『七彩ボタン』と『オーバーマスター』を歌うわ」
亜美「おっけー!」
あずさ「えっと、今の時間は……まだ40分近くもあるわね」
伊織「それだけあれば、ステージ効果も調整し直せるわね! よし、行くわよ!」
セットリストを持ったいおりんが、あずさお姉ちゃんと亜美を連れて楽屋の外へ。
新兄ちゃんにそれを渡して、言った。
伊織「今から構成を変えて」
新P「……フェアリーを後ろに?」
伊織「美希をステージに立たせるわ」
新P「そんな、無茶だ! あんな状態のアイドルを出せるわけ……」
あずさ「お願いします、プロデューサーさん」
亜美「ミキミキ、どうしても立ちたがってるんだよ!」
25: 2013/02/27(水) 20:28:18.09
新P「分かったよ」
あずさ「じゃあ――」
新P「でも…………途中で何かアクシデントがあれば、絶対に病院に行かせる」
亜美「それでもいいよ!」
新P「美希ちゃんに頭痛薬でも飲ませてくれ」
伊織「もう律子に買いに行かせたわ」
新P「そうか……。なあ、伊織ちゃん」
伊織「なに?」
新P「こんな時、前のプロデューサーならどうしてた?」
伊織「――――前の?」
26: 2013/02/27(水) 20:31:10.05
あずさ「そう、ですねぇ」
亜美「……兄ちゃんなら、きっと」
伊織「アイツなら、美希の意思を尊重して、そしていろんな対策をしてたわね」
新P「美希ちゃんの、意思か……」
伊織「…………それ、よろしくね」
新P「ああ、分かった」
新兄ちゃんはバックステージに駆けていく。
いおりんがぎゅっ、と拳を握った。
27: 2013/02/27(水) 20:35:52.60
控え室に戻ると、兄ちゃんはブランケットを羽織って、音楽プレーヤーで何かを聞いていた。
美希「…………♪」
伊織「何を聞いてるの?」
響「ヴァンパイアガールだよ。一応ね」
貴音「それと、伊織。立ち位置なのですが……」
伊織「本来の予定は、美希がセンターよね。変える?」
貴音「はい、ヴァンパイアガールは響、SMOKY THRILLはわたくしで……」
伊織「それじゃあ、プロデューサーに伝えてくるわ」
いおりんが再び外へ出る。
真美「ねえ、にいちゃん」
美希「?」
亜美「……まだ、ミキミキからなんにもないの?」
美希「……ああ」
28: 2013/02/27(水) 20:40:34.21
真美「真美も、それ聞きたかったんだ」
美希「……本当に、意識がないのか、ただ眠ってるだけなのか……わかんないな」
亜美「ミキミキ、大丈夫だといいけど……」
あずさ「プロデューサーさん」
あずさお姉ちゃんが兄ちゃんを呼んだ。
美希「はい、なんでしょう……?」
あずさ「まだ、息が荒いみたいですけど……歌えます?」
美希「……どうでしょう…………会話で精一杯かもしれないですね」
貴音「でしたら、わたくしと響が美希の分まで歌います」
響「そ、そうだよ! 自分、踊って歌うときに息が切れないのがアピールポイントだからな!」
美希「ありがとな、二人共」
29: 2013/02/27(水) 20:46:33.73
何分か後。
りっちゃんが戻ってきて、頭痛薬を手渡した。
走ってきたみたいで、息が切れている。
律子「水で……飲んで……下さい……」
美希「ありがとな、律子。助かるよ……」
伊織「……律子、変更点があるから、プロデューサーのところに行って確認して」
律子「…………わかった…………」
またドアが閉まる。
…………バックステージが騒がしい。そろそろだ。
伊織「さ……先に竜宮小町の出番ね」
あずさ「本番まで、10分前…………よーし!」
亜美「兄ちゃん、待っててね!」
美希「おう、頑張ってこい!」
貴音「よろしくお願いします」
響「みんな、ありがとう!」
真美「めっちゃ応援するよ→!」
30: 2013/02/27(水) 20:51:03.72
亜美「会場のにーちゃーん、ねーちゃーん! 今日はありがとー!」
あずさ「今日は、フェアリーの3人との合同ライブですよ~!」
伊織「みんなー、元気ー?」
ワアアアアアアアア!
伊織「元気ねー! じゃあ、1曲目!」
伊織・あずさ・亜美「『七彩ボタン』!」
――
あずさ「私の『あず散歩』、見てくれている方は手をあげて下さ~い!」
ワアアアアア
あずさ「うふふ、ありがとうございます~! では、この間の裏話を~!」
――
あずさお姉ちゃんのMCで時間を稼ぎ、2曲目へ。
兄ちゃんが2曲分歌って、踊れる体力を貯めるために。
31: 2013/02/27(水) 20:53:51.18
伊織「これは、プロジェクト・フェアリーの曲のカヴァー!」
亜美「精一杯歌うよ~!」
あずさ「ワイルドよりデンジャラスな私達を、楽しんで下さい~!」
伊織・あずさ・亜美「『オーバーマスター』!」
ワアアアアアアア!
32: 2013/02/27(水) 20:58:00.65
――
大歓声を背に、バックステージへ戻る。
フェアリーの3人はまっすぐ、真剣な顔で待っていた。
あずさ「プロデューサーさん、頑張って」
亜美「兄ちゃん、ここで待ってるからね!」
伊織「……無理、しないでよ!」
美希「ああ、分かってる」
響「さっ、行こう。プロデューサー、貴音」
貴音「……ええ」
33: 2013/02/27(水) 21:00:04.64
3人の登場とともに、会場の盛り上がりは最高潮になった。
響「みーんなー! お待ちどうー!」
貴音「本日は、わたくし達も精一杯歌います」
美希「…………みんな! ミキ達の歌、精一杯聞いてね!」
響「よーし、じゃあ行くぞ! 『きゅんっ!』」
貴音「ヴァン……」
美希「ヴァンパイアガールっ!!」
ワアアアアアアアア!
貴音「あなた様……」
34: 2013/02/27(水) 21:03:01.91
バックステージで様子を見ていると、真美が何かを持って駆け足でやってきた。
亜美「なにそれ?」
真美「ブランケットだよ! 駅伝の選手みたいに、ミキミキの身体を抱えようって」
あずさ「うーん、ちょっと重いんじゃないかしら?」
伊織「それにしても…………ダンス、すごいわね」
ひびきんが真ん中で踊り、ミキミキ……兄ちゃんは観客から見て左側。
ここから一番近い位置だった。
亜美「すごいなぁ、兄ちゃん」
あずさ「……でも、辛そうね」
兄ちゃんは歌っていない。さっきからずっと、ボーカルはひびきんだった。
35: 2013/02/27(水) 21:08:08.29
曲が終わる。横につきだした手が異常に震えている。
それでも、兄ちゃんは観客に手を振った。
美希「ありがとー! …………なのー!」
お姫ちんのMCは数十秒で終わった。
律子「……貴音、プロデューサーのためにMCをあんなに早く……」
貴音「今回はわたくしがセンターをつとめます!」
響「曲名はっ!」
美希「…………」
響「プ……美希?」
ミキミキが動かない。ひびきんが少し近寄ると、
思いっきり顔を上げて、笑顔で叫んだ。
美希「……『SMOKY THRILL』! みんな、よろしくなの!」
ワアアアアアアアア!
36: 2013/02/27(水) 21:12:17.75
――そして、ライブは終わった。
バックステージに戻るといきなり、兄ちゃんは倒れてしまったけれど。
身体の力が抜けちゃった、んだってさ。
ちゃんと真美のブランケットが役に立った。
新兄ちゃんが病院に連れて行くと言い、タクシーを電話で呼んでいた。
りっちゃんと挨拶に行っている時、控え室で唐突に兄ちゃんが言った。
美希「……美希?」
亜美「!」
美希「……美希か」
真美「あれ、亜美」
亜美「ん?」
真美「ミキミキはにいちゃんがこうやって幽霊になってること、知らないんだよね?」
37: 2013/02/27(水) 21:14:28.87
亜美「知らないよ?」
真美「パニックになっちゃうんじゃ」
伊織「……あんたねえ、美希を見て来なかったの?」
真美「え?」
伊織「美希なら、パニックになんてならないわ」
響「そうだな。プロデューサーとまた話せるようになって、嬉しいかも」
美希「…………あれ」
亜美「どしたの?」
美希「……寝ちゃったみたいだな、すぴぃって聞こえる」
貴音「……ということは、もう大丈夫ですよ」
38: 2013/02/27(水) 21:18:57.90
美希「そっか、じゃあ俺はそろそろ」
亜美「ねえねえ、兄ちゃん。その前に」
美希「どうした?」
亜美「……困ったときとか、みんなに何か伝えたい時は、亜美の身体借りてね」
あずさ「あっ、プロデューサーさん、私も大丈夫ですよ!」
響「じ、自分も!」
美希「みんな、ありがとな」
そう言って笑うと、ミキミキはゆっくりと目を閉じて、
横に倒れた。
伊織「っ」
いおりんが支える。兄ちゃんが抜けたんだなーとミキミキの顔を見ると、
安心しきって眠っていた。まだちょっと顔が赤いけれど。
39: 2013/02/27(水) 21:25:30.43
結果的に、兄ちゃんが最後に企画したこの合同ゲリラライブは大成功だった。
ピヨちゃんの話をあとで聞くと、ネットでの情報がとても多かったらしい。
これでまた、竜宮小町とプロジェクト・フェアリーの仕事が増え始めた。
事務所に行く時間も減って、真美の話を聞いてみんなの近況を知るぐらいだ。
でも、亜美は気づいちゃったんだ。
ミキミキと新兄ちゃんが抱える問題に。
テレビ局で一緒のスタジオで仕事をすることになって、
りっちゃんと新兄ちゃんが脇に並んで収録風景を見ていた。
収録が終わると、ミキミキは一目散へ新兄ちゃんの元へ駆けて行って、
美希「ハニー!」
なんて言い出すのだ。
新兄ちゃんは、ミキミキが兄ちゃんをハニーって呼んでいたことを知らないから、
急に呼び方が変わって驚いているようだけど。
40: 2013/02/27(水) 21:28:03.81
りっちゃんと亜美で、最近のミキミキの言動を思いつくだけ言ってみると、
一つの結論が出てきた。
それは――、
――――ミキミキが新兄ちゃんを前の兄ちゃんだと思い込んでいる。
ミキミキにとって「ハニー」は1人、前の兄ちゃんだけ。
新兄ちゃんをハニーと呼ぶことは有り得ないし、
呼ぶことにした、としても時間が早すぎる。
…………兄ちゃん、どうしよう。
43: 2013/03/01(金) 23:12:39.02
夕方、亜美と真美はりっちゃんと新兄ちゃんに頼んで、
時間を取ってもらった。
ミキミキは「ハニーに送ってもらうの」なんて言っていたけれど、
新兄ちゃんは困った笑いを返した。
……前の兄ちゃんの時より、ミキミキの依存が悪化しているような。
律子「……じゃあ、私と亜美で考えた美希の状況を、教えますね」
新P「は、はいっ」
44: 2013/03/01(金) 23:13:30.43
夕日が窓からさしている。
律子「まず、プロデューサー。以前のプロデューサーについて知っていることは?」
新P「話したことはありませんが、前にお見かけしたことはあります。
前の事務所に務めていた時にいろいろと」
律子「前の事務所?」
新P「あれ、社長が話されていたと思ったんですが……。俺、前も芸能プロダクションで
プロデューサーもどきをしてたんですよ」
律子「その時に、以前のプロデューサーを見ていたと?」
新P「はい。新米の間では、理想的な先輩でしたよ。
アイドル何人も抱えて、ライブもテレビも大成功させるし、何よりアイドルに慕われてて」
真美「にいちゃんはすごい人だもんね」
45: 2013/03/01(金) 23:14:53.21
新P「だから、それぐらいしか」
律子「……美希が以前のプロデューサーを『ハニー』と呼んでいたことは?」
新P「えっ……?」
亜美「多分、ミキミキは新兄ちゃんと前の兄ちゃんを重ねてるんだよ」
新P「そんな、いつから」
律子「……ライブの日から、様子がおかしかったんですが」
ミキミキがおかしくなったのは、あのライブの次の日から。
新P「……俺は、以前のプロデューサーだと思われているんですね。美希ちゃんに」
46: 2013/03/01(金) 23:15:27.96
律子「……はい」
新P「……どうすればいいんでしょうか」
律子「…………美希はずっと、以前のプロデューサーに好意を表現していました。
それが仕事への活力でもあったんです」
キラキラできて、ハニーとも一緒になれて、最高なの! って、言ってたもんね。
律子「……プロデューサーが亡くなってから、あの娘かなり無理してるっていうか。
仕事の目標を失って、その疲れなのかな……」
新P「……ライブも、絶対にステージにって聞かなかった…………くそっ、気づかなかったなんて」
亜美「仕方ないよ。新兄ちゃんはまだ入ったばっかりだから」
新P「…………じゃあ、俺は……前のプロデューサーになりきればいいのか?」
47: 2013/03/01(金) 23:16:24.95
亜美が前、真美にやったような事を言い出した。
真美「それは違うと思うよ」
新P「えっ?」
真美「そんなことしても、ミキミキは幸せになれないからさ」
律子「…………」
真美「だからさ、亜美と一緒に真美がなんとかするよ!」
亜美「……えっ?」
真美「新にいちゃん、ミキミキのオフっていつ?」
亜美を置いてけぼりにして真美が勝手に話を進めている。
48: 2013/03/01(金) 23:17:46.05
新P「最近は忙しくなってきたから…………どうだろうな」
真美「作って!」
新P「えぇ?」
律子「ちょっと、真美。何を考えてるのかは知らないけど、そんなこと無理に決まってるでしょ?」
新P「いや……作れるかもしれません」
真美、一体何をする気なんだろう?
新P「明日の予定だった美希ちゃんのTV収録、明後日にズレたんです。そうなると雑誌の取材だけで……。
雑誌の取材なら、記者さんに無理を言えばずらしてもらえます」
律子「…………本当に?」
新P「はい。……少し、電話しますね。
…………あ、もしもし。お世話になっております、善澤さん。765プロの……」
新兄ちゃんは無人の社長室に入っていく。
亜美「ねえ、真美」
49: 2013/03/01(金) 23:19:02.90
真美「ん?」
亜美「何するの?」
律子「えっ、亜美何するか知らないの?」
亜美「真美が勝手に言い出したんだもん」
真美「んっふっふ~、これはこの間の亜美やお姫ちんから思いついたアイデアだよん」
この間って……、兄ちゃんのフリをしてた時のことか。
真美「つまりー、ミキミキが新にいちゃんをにいちゃんだと思ってるなら……。
そう思えないぐらいに、にいちゃんのイメージを強くすればいいんだよ!」
律子「……イメージを強く? もしかして、またプロデューサーを美希の身体に」
真美「いや、それはやんないよ」
50: 2013/03/01(金) 23:19:33.16
真美はりっちゃんに理由を尋ねられると、俯いた。
真美「だってさ……ミキミキがおかしくなったのは、にいちゃんが身体に入ってからっしょ?」
律子「まあ、そうね」
真美「にいちゃんがミキミキの身体に、強い影響をなんか与えてるんじゃないかなーって思ったんだ」
亜美「……兄ちゃんが身体に入ったから、ミキミキの中で兄ちゃんの印象が強くなって……。
氏んじゃったことを忘れちゃった、ってこと?」
真美「たぶんね」
律子「……なんていうか、あんたたち、随分と成長したわね」
亜美「そかな?」
真美「どーだろーね」
51: 2013/03/01(金) 23:20:06.58
真美「……えーっと、つまり。真美は、亜美とミキミキと3人で、
『にいちゃん思い出ツアー』をやりたいなって」
亜美「思い出ツアー?」
真美「ミキミキとにいちゃんの思い出の場所を巡って、ミキミキに思い出してもらうんだよ!」
亜美「兄ちゃんのことを、だね!」
律子「なるほど……。確かに、今のプロデューサーとの思い出はあんまりないかもね」
社長室のドアが開く。
新P「明日の取材、延期にできた。明日、美希ちゃんはオフだ」
亜美「よーし、じゃあ新兄ちゃん、ミキミキ借りるよ!」
真美「3人でいっちゃおー!」
律子「いや、それは無理よ……」
52: 2013/03/01(金) 23:21:01.45
亜美「えっ?」
律子「亜美、あんた明日が何の日か覚えてる?」
亜美「……あっ」
真美「へ?」
律子「『Song on the wave』の竜宮小町特集、収録日よ」
新P「えっ、そんなデカい仕事とれたんですか!?」
律子「はい。……悪いけど、これだけは落としたくないの。だから、真美」
真美「え?」
律子「亜美の分まで、美希を頼める?」
亜美「りっちゃーん……」
53: 2013/03/01(金) 23:23:46.08
真美「……いいよ!」
亜美「まみー……」
いや、この流れで亜美がいかないって、ないっしょ!
真美「真美にまかせてよ!」
新P「えっと、何をするんだ……?」
真美「新にいちゃんには秘密! 全部終わったら、話すよ」
新P「…………話してくれるんだな、真美ちゃん」
真美「待っててね」
亜美「えっと、真美……」
ミキミキのこと、絶対なんとかしてね。
亜美「…………よろしく」
絶対なんて、真美にプレッシャーはかけられない。
真美「りょーかい!」
54: 2013/03/01(金) 23:28:55.32
――
朝、事務所。
亜美は既に出かけて行って、事務所はピヨちゃんと真美のふたりきり。
ミキミキに早速電話をかける。
美希『…………もしもーし、ミキだよー』
真美「あ、ミキミキ? おっは→!」
美希『…………まみー? ミキ、せっかくのお休みだから思いっきり寝てたの。
用事なら、早く済ませてね』
真美「ミキミキ、遊びに行こう!」
美希『えー……』
真美「にいちゃんとのデートだと思ってさ、いろんな場所に行こうよ!」
美希『ハニーとのデート?』
幸せそうな声だなぁ。
55: 2013/03/01(金) 23:33:09.94
美希『うーん、いいよ! でも、ちょっと待って欲しいの!』
真美「うん、じゃあ事務所で待ってるよん!」
美希『はーいなの! じゃーね!』
電話が切れた。早いなぁ、ミキミキ。
真美「さーて、と」
カバンから一枚の紙を取り出す。
今日の予定表。
回る場所は、もう決めてある。
ミキミキとにいちゃんの思い出が分からなかったから、
ちょーっとだけ聞いちゃったけどね。
……亜美に取り憑いてもらって。
56: 2013/03/01(金) 23:38:20.12
それから30分ぐらいで、ミキミキは事務所にやってきた。
美希「おはよーなの!」
小鳥「美希ちゃん、おはよう」
真美「おはおは→!」
美希「早速行くの~!」
真美「じゃあピヨちゃん、行ってくるね!」
事務所の外は冷たい印象の壁。
その前ではしゃぐミキミキは、なんとなく寂しそうに見えた。
59: 2013/03/03(日) 19:21:04.00
――
亜美『うーん……そうだな、それぐらいしか思いつかないな』
真美『そっかー……』
亜美『あとは……エキサイトホールとか?』
真美『あのさにいちゃん、ミキミキと2人きりの思い出ってないの?」
亜美『2人きりの思い出……? あっ!』
――
60: 2013/03/03(日) 19:22:55.92
最初に歩いたのは、にいちゃんと一緒にプリクラを撮ったり、
買い物をしたという繁華街。
美希「そうそう、ここでハニーがね! この服を……」
真美「ほうほう! にいちゃんってすごいねぇ!」
ミキミキは、とても嬉しそうににいちゃんとの思い出を話してくれる。
美希「今度また、ハニーと来たいの!」
ただ、それはにいちゃんの氏を忘れているからだ。
61: 2013/03/03(日) 19:25:24.59
美希「ねえねえ真美、これ似合う?」
真美「え? あ、うん! メッチャ似合ってるよ→!」
美希「なーんか、上の空だね」
真美「ご、ごめん!」
美希「もう……今日は、真美がミキのハニーなんだよ?」
ぎゅっ、と手を握られて、少し顔が赤くなった。
真美「あはは……」
美希「で、どう? 似合う?」
真美「モチのロンだよ! あ、でも……もうちょっとミキミキ、深い色の方が似合うよ」
62: 2013/03/03(日) 19:27:49.42
美希「あはっ!」
真美「え?」
美希「ハニーとおんなじ事言ったの。ハニーもね?」
ミキミキの持ってきた服よりも、別の服の方がミキミキらしいって言ったんだっけ。
真美「そ、そなんだ!」
美希「じゃあ、どんどん行くの!」
真美「りょーかい!」
ミキミキは服を置いて、店の外へ……出ようとして、
美希「どうしよう……やっぱり買っちゃおうかな」
真美「あ、だったら……」
やっぱり買うみたいだね。
63: 2013/03/03(日) 19:30:56.72
――
亜美『その後、ゲーセンに入って……』
真美『ほうほう』
――
美希「撮ろっ?」
真美「んっふっふ~、言っとくけど真美のデコ力は強いかんね!」
美希「なーんか、デコちゃんみたいなの!」
プリをいっぱい撮って、ひとつひとつデコレーション。
美希「なっ、なにそれ! あはは!」
真美「ミキミキ、すごすぎるよ! あははっ!」
64: 2013/03/03(日) 19:35:23.44
”ハニー”との思い出を、ひとつひとつ辿っていく。
屋台でクレープを食べて、もっと服を見て。
魚を見て。
そして――公園の池に行き着く。
美希「おしえてはーにぃー♪」
カモ先生、という鴨がいるらしい。
ミキミキはごきげんに歌っている。
真美「今日はありがとね、ミキミキ。付き合ってくれて」
美希「なーんか、ハニーみたいな巡り方だったね」
真美「え?」
ミキミキは振り返って笑った。
美希「ハニーに聞いたの?」
65: 2013/03/03(日) 19:38:06.38
真美「な、何を?」
美希「ミキとのデートコース、なの」
まあ、聞いたけど。
にいちゃん、最初はみんなで行った村とか、そういう話ばっかり思い出すんだもん。
真美「……うん」
美希「誰とデートするのかにもよるけど、参考にならないって思うな」
真美「そ、そうかなー?」
美希「だってこれは、ハニーとミキしか楽しめないコースなの。
真美、あんまり楽しそうじゃないもん」
そんなことない。
真美「そんなことないよっ」
66: 2013/03/03(日) 19:41:56.82
美希「…………もしかして、真美、ミキが悩んでること知ってて、
励ましてくれたの?」
真美「えっ?」
美希「……ミキね、最近変な夢を見るの。
とっても、とってもかなしい夢」
真美「…………夢」
美希「そ。ハニーが氏んじゃうんだ」
真美「なっ……」
夢じゃないよ、ミキミキ。
それが夢だったら、どんなにいいか……。
美希「でも、ミキはハニーに喜んで欲しいから、頑張ってお仕事するの。
……そうやってると、ハニーが化けて出てきてね」
67: 2013/03/03(日) 19:44:06.46
美希「『もう休め』って言うんだ」
真美「……え?」
美希「もう充分だ、って。どうしてこんなに悲しい夢を見るのかな」
真美「…………ミキミキ」
美希「なに?」
ミキミキ、泣きそう。
真美「にいちゃんはね」
美希「?」
68: 2013/03/03(日) 19:46:35.43
真美「氏んじゃったんだよ」
美希「……冗談でも、言っていいことと」
真美「冗談じゃ、なくて」
ミキミキの顔を見られずに、俯いた。
真美「にいちゃんの顔を最後に見たのは、いつ?」
美希「……昨日の」
真美「だったら」
雲で太陽が少し隠れた。
真美「いま、にいちゃんの顔を、ハッキリと想い出せる?」
美希「……うん。髪が短くて、目が少しぱっちりしてるの」
真美「…………眼鏡は?」
69: 2013/03/03(日) 19:48:22.18
美希「…………え」
真美「にいちゃん、眼鏡をかけてたよね」
美希「…………」
真美「……思い出せない?」
美希「……」
真美「…………あのね、ミキミキ」
美希「…………?」
真美「にいちゃんは、そんなに目はぱっちりしてないよ」
美希「ぇ……」
真美「それは、今の新しいにいちゃんなんだよ」
70: 2013/03/03(日) 19:50:41.52
美希「…………そう、なのかな」
真美「……ミキミキはね」
美希「……?」
真美「にいちゃんが企画した最後のライブに出たかったんだ」
美希「…………」
真美「フェアリーと竜宮小町の、ゲリラライブ」
美希「あっ……」
真美「でもね」
美希「…………その日は」
71: 2013/03/03(日) 19:52:39.80
そうだ。
美希「朝から、熱が…………」
真美「ミキミキはそのライブに出る直前、倒れちゃったんだよ」
美希「休んだはずなの……」
真美「そこに、氏んだにいちゃんが取り付いてね」
美希「……」
真美「ミキミキの姿で、ステージに立ったんだ」
美希「…………ミキは」
真美「あの日」
美希「……ミキは」
真美「にいちゃんと、ミキミキは歌ったんだよ」
72: 2013/03/03(日) 19:55:08.05
美希「――――あぁ」
真美「…………だから、にいちゃんはもう居ないの」
美希「そう、だね。ミキ……お葬式で」
ミキミキは膝から落ちる。
真美「っ、ミキミキっ!」
美希「……四十九日、貴音と一緒に…………」
真美「……」
にいちゃんの氏に関する全てを、思い出しているのかな。
美希「…………ハニー、大好きなのって……卒塔婆に……」
真美「……そんなことしたの?」
美希「……うん」
73: 2013/03/03(日) 19:57:15.36
ミキミキを支える真美の腕は、あまり支えにならない。
グラグラと身体が揺れてしまう。
美希「…………そっか、そうだね」
真美「……」
美希「ハニーは、居ないんだね」
真美「……うん」
美希「せめて、もう一度」
真美「えっ?」
美希「…………大好きって、言いたかった」
真美「……そっか」
74: 2013/03/03(日) 19:58:47.51
真美には見えないけど、多分にいちゃんはここにいる。
ここにいるまま、真美に取り憑かないのは…………。
真美「ミキミキ」
美希「……?」
顔を上げたミキミキは、目を真っ赤にしていた。
真美「にいちゃんは、きっとここにいるよ」
美希「え……」
真美「だから、言いなよ」
美希「……?」
真美「大好き、って」
美希「…………うん」
75: 2013/03/03(日) 20:01:27.16
美希「ハニー」
ミキミキは空へ、話しかけ始める。
美希「ミキね、ドラマの主演決まったんだよ」
やがて、手で雲をつかむように。
美希「だから、ほめて」
涙を流して。
美希「ハニー」
最後は、声もほぼ出ない中。
美希「だいすき……なの……っ!」
絞り出した声で、ゆっくりと。
にいちゃんに、思いを伝えた。
その後、真美に抱きついてミキミキはずーっと泣いていた。
76: 2013/03/03(日) 20:03:39.52
――
美希「プロデューサー、おはよーなの!」
新P「おはよ、美希ちゃん」
美希「ぶー、まだちゃん付け?」
新P「あはは、これは俺のポリシーみたいなもんだから」
ミキミキは元気だ。それはもう、この間のデートが嘘みたいに。
そう亜美に言うと、苦笑いで「でも、それがミキミキっしょ」って返された。
そうかもしれない。
77: 2013/03/03(日) 20:06:09.46
貴音「……美希は、一体どうやってプロデューサーの氏を思い出したのでしょう?」
お姫ちんがお茶を飲みながらポツリ。
真美「本当は、自然に思い出すのが一番だったんだけどね」
亜美「真美、言っちゃったんだってさ」
貴音「……ふふっ」
真美「わ、笑わないでよう!」
貴音「ふふっ……! 真美、あなたはとても優しい」
真美「え?」
78: 2013/03/03(日) 20:08:23.07
貴音「真美がふさぎこんでいた時は、亜美が。
そして美希がプロデューサーを混同してしまった時は、亜美と真美が」
亜美「お姫ちん……?」
貴音「ふたりの力があれば、765プロの皆が……困難を乗り越えられるのかもしれませんね」
お姫ちんは優しく微笑む。
真美「うーんとね。お姫ちん」
貴音「はい?」
真美「真美は、亜美と真美で、みんなをこうやって笑わせることが出来ればいいなーって」
亜美「……笑わせる?」
真美「そそ」
79: 2013/03/03(日) 20:11:41.76
真美「だってさ。真美と亜美のふたりが笑ってれば、みんなも笑ってくれるっしょ?」
貴音「そうですね……ふたりは、皆を優しく笑顔にしてくれます」
真美「だったら!」
亜美の目を見る。「なるほど」と亜美は言って、
亜美「ふたりが笑ってみんなが悩みを忘れて幸せになれればいい、ってことだね!」
真美「そう!」
貴音「……亜美、真美…………」
真美「ふたりが笑って、みんなが悩みも苦しみも乗り越える。
そんなアイドル、最高だよね→!」
亜美「ね→!」
にいちゃんの「おう」って声が、なんとなく聞こえた気がした。
この空が、いつも真美たちのことを見守ってる。強く、励ましてくれる。
だから、怖くない。まっすぐ、進んでいけるんだ。
おしまい
80: 2013/03/03(日) 20:12:23.65
これで終わりです。お読みいただきありがとうございました。
81: 2013/03/03(日) 20:40:26.92
おつ、よかった!
引用元: 亜美「ふたりが笑って、乗り越える」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります