2: 2012/09/16(日) 15:38:04.67

――ある時代ある場所、乱れた世の片隅――



『……待てーっ!』

「…はっ…はっ…」


3: 2012/09/16(日) 15:39:01.21

『……ちくしょう!どこ行きやがった!』

『あっちか!?』

『かもしれんな!行くぞ!』

『今度こそ引っ捕らえてやる!』

「……」


4: 2012/09/16(日) 15:39:55.87

杏子「……もう大丈夫だな」

杏子「だいたいお前らみたいな温室育ちの大人になんか捕まるかよ。あたしは生きるために必氏なんだ」

杏子「……」

杏子「……ふん。さてと、とりあえず飯だ飯だ」


5: 2012/09/16(日) 15:41:04.32

~~

杏子「食い物はどうにかなっても寒さはどうしようもないんだよな…。まぁ屋根があるだけましか」

杏子「……」

杏子「……あたしの生活、いつかはましになる時が来るのかな…」

杏子「もうどこでもいいさ…少しでも楽になれるなら…」


6: 2012/09/16(日) 15:42:22.92

~~

杏子(…そろそろ通る頃だな……来た)

さやか「え~私がおかしいのこれ!?」

『うん…普通はそんなことしないかな?』

さやか「そんな~。あははっまぁいいや!」


7: 2012/09/16(日) 15:43:37.86

杏子「ここが通学路なんて珍しいよなあいつら…」

杏子(……なんで毎日毎日あいつらの事見ちゃうんだろ…。そんなことしてもあたしにはなんの意味も無いのに…)

杏子「あいつら…同じ年くらいだよな…」

杏子「……」

杏子「……『人は皆平等』……笑わせんなよな…」



8: 2012/09/16(日) 15:44:53.67

~~

杏子「今日はパンが大量だなぁ!あいつら勘違いしてるけど人が多い日の方が実は逃げやすいんだよなあ~」

杏子(……ん?…あいつは…)


9: 2012/09/16(日) 15:46:00.75

『ここは人が多いから少し隠れようか』

さやか「……うん」

杏子(あいつ…まさか!)

杏子「…止めにいくか」


10: 2012/09/16(日) 15:47:19.41

さやか「本当に腕は…」

『大丈夫。彼の腕は動くようになるよ』


杏子(…人のために契約する気か?バカかあいつは!)

杏子「……」


11: 2012/09/16(日) 15:48:29.74

杏子「待てよ!」

『……』

さやか「……誰?」

『君の先輩になる人かな』

さやか「て事はあんたも…」


12: 2012/09/16(日) 15:49:40.84

杏子「ああ。…何があったかは知らないけど、人のためになんて辞めとけ。そんなことしてもさやか「うるさい!」

杏子「っ!……」

さやか「いきなり出てきて私の何が分かるの!関係ないでしょ!」

杏子「なっ!私はあんたのためを思っさやか「うるさいっつってんでしょ!」

杏子「……」


13: 2012/09/16(日) 15:50:49.49

さやか「……邪魔が入ったね。場所変えよ?」

『そうだね』

杏子「待てよっ!」

さやか「付いてくるな!」

杏子「……」


14: 2012/09/16(日) 15:51:33.45

さやか「…行こう?」

『うん』

杏子「……なんだよ。勝手にしろ…」


15: 2012/09/16(日) 15:53:13.20

~~

杏子(……あいつは大切なヤツの腕を治してもらおうとしてたんだな。結局契約しちまうし…)

杏子「バッカじゃねぇの?この世の中で人の事を気にかける余裕なんかないだろ」

杏子「……」

杏子「……あぁちくしょー!なんかイライラする!」


16: 2012/09/16(日) 15:54:44.88

~~

杏子「よお」

さやか「……またあんた?いい加減しつこいんだけど。だいたい私はもう契約したの知ってるでしょ?」

杏子「あぁ」

さやか「じゃあなんの用?」


17: 2012/09/16(日) 15:55:21.48

杏子「……ちょっと話しないか?」

さやか「話…?」

杏子「あぁ…」


18: 2012/09/16(日) 16:02:24.47

~~

さやか「…ここがあんたの家?」

杏子「家って言うよりは隠れ家だけどな」

さやか「……で、話って?」

杏子「……あたしの生い立ちと、止めた理由」

さやか「……」


19: 2012/09/16(日) 16:03:40.82


……

さやか「……そっか。あんた…そんな事があったんだね」

杏子「まあね…」

さやか「……まだなにか話ある?」

杏子「あぁ……お前が言ってたヤツの腕、もう大丈夫なんだよな?」

さやか「変な事聞くね……おかげさまでね」

杏子「……良かったな」


20: 2012/09/16(日) 16:05:04.92

さやか「……ホントに変なの。また文句でも言うかと思ったのに」

杏子「しょうがないだろ。なっちまったもんにはもう何を言おうが意味はないからさ…」

さやか「……」

杏子「……ならないに越した事はないけど…あたしにはお前を止められる力も無かったし、お前の考え方はあたしと違うんだ。結局はお前の自由なんだよ」


21: 2012/09/16(日) 16:07:05.89

さやか「……自由…か」

杏子「どうした?」

さやか「……私たまにこう考えるんだ。私が契約したのは私の自由に見えるけど…実は神様とかそういうのがさ、私が契約するしかない状況を作ったんじゃないかって…」

杏子「……」

さやか「……私は結局誰かの思い通りの道を歩かされているだけなんじゃないかって…」


22: 2012/09/16(日) 16:08:24.02

杏子「お前…」

さやか「あ、勘違いしないで。悩んでるとかじゃないから」

杏子「……」

さやか「確かに大変だけど……私が頑張る事で誰かが笑ってくれるなら…それってとても素敵な事だと思うから」


23: 2012/09/16(日) 16:09:49.54

杏子「…ホント甘いなお前は」

さやか「あんたが一人に慣れすぎてるだけよ…」

杏子「…うるせぇよ…誰がなりたくてなるか…」

さやか「あ…ごめんそんなつもりじゃ…」

杏子「…怒ったんじゃないよ……自分が情けなくなったんだ…」


24: 2012/09/16(日) 16:11:16.57

さやか「……またここに来てもいい?」

杏子「いつでも来いよ。……一人だとさ、たまに寂しくなるんだ…」


25: 2012/09/16(日) 16:12:45.33

~~

さやか「ヤッホー!」

杏子「お、来たかさやか!」

さやか「ほら!今日はハンバーグだよ!」

杏子「やったあ!いつも悪いな」

さやか「杏子にもう盗みなんてさせるわけにはいかないからね」

杏子「大丈夫だって!もうしてないからさ!」

さやか「あはは!じゃあ食べようか」

杏子「いっただっきまーす!」


26: 2012/09/16(日) 16:14:08.44

~~

さやか「昔と変わったよね杏子」

杏子「そう?」

さやか「うん。…言い方は悪いけど、昔の杏子は誰も信じないって目をしてた」

杏子「実際そう思ってたんだよ…。さやかのおかげであたしは救われたんだ」

さやか「ふふっありがと!…いいもんでしょ?仲間って」

杏子「自分で言ってどうすんだよ……」

さやか「あははっ!」


27: 2012/09/16(日) 16:15:09.72

~~

さやか「……」

杏子「……元気出せよ」

さやか「……馬鹿みたい私。結局好きな人は友達に取られて…しかも私の身体は…」

杏子「……」


28: 2012/09/16(日) 16:16:36.33

さやか「……ごめん…もう帰るね」

杏子「…分かった」

さやか「……」

杏子「また来てくれるよな?」

さやか「……うん」

杏子(……約束だぞ?)

さやか(ありがとう……)


29: 2012/09/16(日) 16:17:52.70

~~

杏子(さやか…もう何日も来てないな。大丈夫か?……つうか腹減ったなぁ…)

杏子「あーあ。でももう盗みはしないって約束したしな~」


30: 2012/09/16(日) 16:19:06.62

『やぁ』

杏子「……いきなりなんの用だ?お前が来ると大抵ろくな事にならないんだよ」






『魔女が現れたよ』


31: 2012/09/16(日) 16:21:15.10

~~

杏子「はっ…はっ…あのバカヤローっ!なに魔女なんかにっ…」

杏子「うわっ!…と…。だいたいなんで山の上なんだよ…。空腹のあたしに坂道はきつすぎるだろ…」

杏子「…あぁもう!待ってろ今助けて……」


32: 2012/09/16(日) 16:22:45.56

杏子(助ける?……どうやって『助ける』んだ?…どうなったら『助かる』んだ?…)

杏子「……」

杏子「……くそっ!…とにかく行くしかないんだ…」


33: 2012/09/16(日) 16:30:02.93

~~

杏子「うらああぁぁっ!」

『キィー…』

杏子「だあああぁぁっ!」

『ガー…』


34: 2012/09/16(日) 16:31:02.08

杏子「はぁっ…はぁっ……どこだよさやかは!?…あっちか!?…………あ…」

『……』


35: 2012/09/16(日) 16:32:24.88

杏子「…さやかだよな……なんで…なんでそんな姿になってるんだよっ…」

『……杏コ?』

杏子「!…良かった!まだ意識はあるんだな!待ってろ今『ム駄ダよ…』


36: 2012/09/16(日) 16:34:29.14

杏子「…なに言ってんだよ!」

『……分カるの。いマはまだ意シキガあッてももウすぐ…』

杏子「…諦めんな!」

『…じャあどウやッてわタしヲ助ケルの…?』

杏子「……それは…」


37: 2012/09/16(日) 16:35:49.21

『…ね?…ダかラオ願い…わタシを……』

杏子「そんなの……出来るかよっ!」

『オネがイキョウ子…私はダレモ傷つケタクないカラ…』

杏子「……」


38: 2012/09/16(日) 16:37:10.54

『…オネガイ…』

杏子「……」

杏子「っ……ちっくしょおおおおぉぉぉーーー!!」






―ザンッ―


39: 2012/09/16(日) 16:38:41.78

~~

杏子「……」

さやか「良かった……最後くらいは…人間の姿に……」

杏子「もう喋るな……助けを呼ぶから…」

さやか「…ありが…とう…杏子……」

杏子「……うん」


40: 2012/09/16(日) 16:39:48.13

さやか「……なんだったんだろうね…私の……人…せ……」

さやか「……」

杏子「……さやか?」

さやか「……」

杏子「……」


41: 2012/09/16(日) 16:42:01.28

杏子「……あたしにも分かんねぇよ。人の為に生きたお前がなんで……」

さやか「……」

杏子「…なんでさやかなんだよ…あたしをまた一人にしないでよ……」

さやか「……」


42: 2012/09/16(日) 16:43:11.41

『キィーキィー』

杏子「……まだ残ってた」

杏子「……」


43: 2012/09/16(日) 16:44:10.57

杏子「……もういい。あたしも疲れた……来いよ」

『キィー!』


44: 2012/09/16(日) 16:45:10.72

杏子「…………」







杏子「……お腹空いたな」


45: 2012/09/16(日) 16:45:48.27


―ドッ―



46: 2012/09/16(日) 16:46:51.23


――お話は、ここで終わり。ある時代のある場所の物語――



47: 2012/09/16(日) 16:47:49.64
これで終わりです。ありがとうございました。
元の話はポルノグラフィティの「カルマの坂」という曲です。
まどか☆マギカで書いたのは初めてなので設定を間違えているかもしれません。すいません…。

48: 2012/09/16(日) 16:55:00.24
お、おう…

49: 2012/09/16(日) 18:08:35.76
たしかに色々と状況が似てるよな

引用元: 杏子「カルマの坂」