1: 2012/09/27(木) 21:22:48.84
―――とある学校の校舎裏。

男「んー、なんだか女の裸見すぎて逆に胃もたれしてきたなー」ハナヂポタポタ

男(透視の魔法使うのに50メートル走五本分の体力使うから実際問題割に合わない…こともないか)ジーッ

校舎正門。

女「~~~♪」ルンルン

女(イケメン君が体育で活躍するの見られて最高の気分だわ♪)

校舎裏。

男(あー、クラスのアイドル女さんの着替えも終わったし、魔法の効果はまだ持続するけどおいとこ)テクテク

男「解除するのにも魔法使わなきゃいけないし、こんなところ誰も来ないでしょ」


女「…って、そういえば何で私が更衣室のゴミ替えしなきゃいけないのよ。まぁ、だれもしないよりはいいけどさ…」

女(校舎裏通った方が速いわね。虫がたくさん出るから近づきたくなかったけど…)テクテク


―――ウィンウィン。


女「え、何の音…?」ソーッ


女の視界―――【更衣室の中】

女「な、なにこれ…」ガクゼン

女(これがあれば、イケメン君の裸が見放題じゃない!!)タタタッ

女「犯人を見つけなきゃ…」グッ


廊下。

男「~~~♪ へっくしゅっ」ズズッ

男(誰か噂してるのかな…へへ、モテる男はつらいぜ)




こんな感じで始まります。

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348748568/

3: 2012/09/28(金) 00:52:32.26
教室。

男(うーん、かなりまずいことになった)

女「………」ジーッ

クラスメイト「………」ザワザワ

男(女さんがあろうことか、あの透視魔法を見たらしい)

茶髪「あ、あの…女さん?」

女「……茶髪さんは女の子だし、レズでもない。さらに言えばお金に困っている様子もないから盗撮する必要もない。よって茶髪さんではない」ブツブツ

眼鏡「ぼ、僕たちを睨んで何かあるのかい?」ドキドキ///

眼鏡(僕のことが好きならそう言ってくれれば…)

女「眼鏡君、学年トップクラスの秀才で運動は苦手だけど、勘違いしやすい性格からしばしば誤爆をして振られている。しかし、その勘違いが幸運を呼んで後輩の女の子を誑かすことに成功。…可能性は26%」ブツブツ

男「」

委員長「女さん! あなたちょっと変よ!?」

女「委員長。黒髪眼鏡長髪スタイル抜群。………78%」ブツブツ

男(ど、どうする。このままじゃ女さんのこのクラスでの地位が危ういぞ)ドキドキ

イケメン「よー、女っちどうしたぁ?」

女「あ、イケメン君!」パァ

クラスメイト「」

4: 2012/09/28(金) 00:58:21.16
イケメン「なんか表情暗くねー?」

女「いやー、そっかなぁ、あはははー♪」

イケメン「そうそう、女っちは笑ってなきゃ、俺嫌だなー」

女「そうかなー、じゃあ笑ってるー♪」

男(学年…いや、学校一のイケメンことイケメンは女さんと仲が良い。個体でさえモデルクラスの二人が一緒にいるともはやそこは別世界となる)

男「イケメンがもう少し汚れてればな―」ボソッ

軽女「なんだよー、お前女さん狙ってるのか~?」

男「いや、別に狙ってる訳じゃないけど、美男美女がくっついたら悔しいじゃん?」

軽女「何言ってんだよー、男だって十分イケメンのくせに」

男「はぁ? 俺がイケメン!? お前俺の事好きなのかぁ!?」

軽女「あー、もしかしたらそうなのかなー?」

男「俺に聞くなよ」アハハ

軽女「そうだな」アハハ

教師「授業始めるぞー」ガララッ

生徒達「「はーーい」」

女「………」ジーッ

男「………」ハァ…

5: 2012/09/28(金) 01:06:18.80
授業中。

軽女「………」zzz

男(授業開始5分。さっそく夢の世界へ旅立っているのは、このクラスでも指折りの軽い女、軽女だ)

ビッチ「やだもー、イケメン君おもしろーい」キャハハ

イケメン「いやいや、マジだって! こいつがマルポコーロでゆで卵を日本に伝承したんだって!」ボソボソ

眼鏡「………」ウズウズ

男(……ビッチさんと違うところは、軽女はビッチは200人斬り達成間近だと言っておけばいいだろうか)

教師「こらイケメン、うるさいぞ。さらに言えば今の授業は世界史じゃないしな」

イケメン「あれ? す、すみません!」ババッ

生徒「「ははははははっ」」ドッ

男(イケメンはドジっ子属性も持っている。よく間違えるし、よく失敗する。が、そこは見た目と性格のお陰で誰も腹を立てたりはしない)

女「………」プルプル////

男(絶対イケメンのこと可愛いって思ってる…)


6: 2012/09/28(金) 01:13:16.08
授業終了。

男「おーい、軽女ー、終わったぞ―」ツンツン

軽女「うーん…キスで起こしてー」モゾモゾ

男(………仕方ない、耳元まで近づいて)スッ

男「唇振れるかもなー」ボソッ

軽女「………ちょっ! 待てっ!」バッ

男「ばかだなー、こんな所でそんなことする訳ないじゃないかー」

軽女「だ、騙されたー」/////

男(軽いくせにめっちゃ照れたりするところが可愛かったりする。……これでもう少し可愛ければ)

男「お前がせめて上の下だったら狙ってたのに…」

軽女「中の中である自信はあるけど駄目かい?」

男「んー、告白したくなるほど好きにはならないかな」

軽女「くっそー、整形してやるー」

男「お前から柔らかい表情を抜いたら逆効果だぞ」

軽女「ならやめとく」

男「軽いな―」

軽女「柔軟と言ってくれ」ドヤッ

女「…男君。ルックス抜群成績優秀。性格も明るく友達も多い。……88%」

男「」ガーン

男(なんでその評価で88%になったか気になる!!)

7: 2012/09/28(金) 01:20:30.92
放課後。

男「おつかれさーん」

軽女「おー、男ー。どっか行く~?」

男「いや、今日は直帰するー」

軽女「そうかー、んじゃまた明日ー」

男「ほーい」

女「……結局、容疑者は三人に絞られた訳だけど…」

男(絶対俺も含まれてるよなぁ…。ほんと耳を良くする魔法(聞きわけ可)普段からやってて良かった」

女「今日は委員長を尾行しよう」タタタッ

男(委員長…、ご愁傷さま)パンパン

イケメン「男君おつかれさーん」

男「おー、お疲れちーん」

ビッチ「男君ばははーい」

男「おー、ビッチお疲れちんちーん」

ビッチ「んなこと言う前にやらせろ」ファックポーズ

男「謹んで辞退させていただきます」

軽女「男君の童Oは私の処Oで予約済みです」

男「それも解約させていただきます」

ビッチ・軽女「」ガーン

イケメン「俺に続けて男にも振られたんだな」アハハ

ビッチ「うう…、どこかに顔の良い男で好きいないかなぁ…」

眼鏡「………」ウズウズ

イケメン「よっしゃー、今日はどこに寄り道しようかなー」ブーンッ

ビッチ「ちょ、待ってよー」タタタッ

軽女「じゃあ、男、本当にばいばいー」タタタッ

男「ああ」バイバイ

男(さて、と…)

8: 2012/09/28(金) 01:29:10.84
屋上。

男「……いや、これじゃちょっと効率が悪いか…」カキカキ

マモノ「ご主人、透視魔法はあれで完成品じゃなかったのですか?」

男(横で俺にくっついている四つ目の猫のような生き物は、俺が魔法で造った唯一の生物だ。魔法で造った生き物だからマモノなんてつけたが、こいつ自身は結構気に入ってるらしい)

男「いや、コスト面から魔法の解除を自動にしたけど、それじゃあ誰かに見つかってしまう。それなら最初から解除を組み込んでおいたほうが長い目で見れば負担は少ないはず」

マモノ「透視魔法自体がご主人の使い方なら不要な負担ですけどね」

男「まぁ、そうなんだけどな」

マモノ「そんなに女子の裸が見たければ、僕を人間の姿にすれば良いじゃないですかっ!」

男「うーん、たしかにお前の性別は女に設定したけど、どんな姿でもお前には興奮しない気がする」

マモノ「なんでなんですかっ!」クワッ

男「いや、だってお前は俺のもんだろ? やっぱ他人のもんに興味が沸くお年頃なんだよ」

マモノ「お、俺のもん…」カァ///

男「魔物のくせに照れるな」

マモノ「ひどいっ!」ガーン


9: 2012/09/28(金) 01:35:47.36
男「………まぁ、こんなもんか」フゥ

マモノ「前回の負担が10だとすれば、これは13くらいの負担ですかね」

男「そうだな。解除魔法が5くらいで時間で切れると0で良いことを考えたら、消費はでかくなるな」

マモノ「ただし、リスクが軽くなることを考えると」

男「こっちの方が安心っと」

マモノ「あれ…誰か来ます」

男「え? 屋上は締め切りだから誰もこれないはず」

男(一応、透明魔法をかけておこう)スッ…

マモノ(僕も)スゥ…


後輩「………」カチャ


男「あれは…後輩ちゃん?」

男(確か、妹と眼鏡の彼女と同じクラスで、妹が言うには学年一の可愛さらしいけど)


後輩「………」ハァ…


男(哀愁漂う姿がすごいキュンとくる…)ドキドキ




後輩「………イケメン先輩」ボソッ



男「よし、今すぐイケメンを頃す魔法を展開しよう」


マモノ「ご主人落ち着いて」



10: 2012/09/28(金) 01:39:41.38
男(よし、こうなったら事情を聞くしかない)タタタッ

マモノ(僕はここで見ておきます)

男「……あれ? えっと、後輩ちゃん?」ガチャ

後輩「あ、え、あれ? なんで?」アワテアワテ

マモノ(風に乱れた髪を一生懸命直す姿に男は萌える訳か…)ベンキョウベンキョウ

男「いや、ここっていつも締め切ってるのに、誰かが登って行ってたから気になって」

後輩「あちゃ…見られましたか」

男「どうやって鍵手に入れたの?」

後輩「私、天文部なので」

男「なる」

11: 2012/09/28(金) 01:45:08.55
男「それで、星見てたの?」

後輩「いえ…、ちょっと」フィッ

マモノ(内容は言わずに視線だけ落とす。これで相手の気を引くなんてこの子小悪魔ですー)メモメモ

男「もしよかったら力になるよ。妹の友達が困っているんだしね」

後輩「えっ、妹ちゃん知ってるんですか!?」

男「いや、妹は俺の妹だよ」

後輩「そんなっ、え、似てない…」

男「ははは、よくいわれるよ」

マモノ(妹ちゃんはジャイコですものね。性格は良いのですけど)

後輩「いや、そういう意味じゃないですっ」アワテ

男「いやいや、俺だって自分の不細工くらい把握してるよ」アハハ

後輩「あ、いや…その…すみません」

マモノ(友達を不細工だと言ってしまった後輩ちゃんを救ったぁ! ご主人ほんまナイスガイやでぇ!)

男「で、どう? 相談してみる気になった? …ちなみにイケメンと同じクラスだよ、俺」

後輩「あ、き、聞こえてましたかっ」カァ///

マモノ(絶対恋の相談ですね!)

12: 2012/09/28(金) 01:45:56.25






後輩「実はですね……、イケメン先輩に告白されたんですっ!!」キャッ///

男「」

マモノ「」






13: 2012/09/28(金) 01:50:44.87
男「あ、あはは、あいつ、いつの間にこんな可愛い子に手を出してたんだ」ガクガク

マモノ(予想外の答えにご主人が動揺しまくってます!)

後輩「可愛いだなんて、そんなことないです」フィッ

男「………?」

後輩「私、あんな素敵な先輩に告白されてめちゃくちゃ嬉しかったんです!」

男「そうだろうねぇ。あいつはイケメンな上に性格も良いからな」

後輩「そうなんです! めっちゃ可愛いんですよイケメン先輩!」

マモノ(ご主人の口から血が出そうです)

男(なんだよイケメン、リア充かよ。リア充だった氏ね)

後輩「……だけど、やっぱりイケメン先輩の周りには……がいて」ボソッ

男「取り巻きね」

マモノ(どんだけ小声で喋っても無駄ですよ。後輩さん)

14: 2012/09/28(金) 01:54:56.97
後輩「…はい。どうもイケメン先輩はその人たちに告白することを相談してたみたいで」

男「わお」

マモノ(火種に原爆落とすようなものですね)

男「でも、イケメンならやりかねないなぁ。…無邪気に照れながら」

後輩「……はい」

マモノ(イケメンはこの学校一の純粋な男の子ですからね! ご主人が以前魔法で調べましたから!)

男「で、その取り巻きに何かされて、ここにいる…と?」

後輩「……いえ、その…実は…」モジモジ



ビッチ「あ、こんな所にいやがったな!!!」バンッ



男「え、ビッチ何してんの? ほっぺた赤いし」

ビッチ「え、男? はぁ? 何であんたがここにいんのよ?」




後輩「……この人のほっぺたぶん殴っちゃいました」テヘ




男「」

マモノ「」

15: 2012/09/28(金) 01:59:46.20
ビッチ「よくもやってくれたなぁ」ポキポキ

後輩「…あなたが私の恋を邪魔するからですよ」ゴゴゴ

マモノ(ご、ご主人、怖いです!!)

男(バカ野郎! 俺はすでに関係者なんだぞ! 俺の方が怖いわ!)

ビッチ「男!! あんたはどっちの味方なんだよ!」ギロッ

後輩「先輩! どっちの味方じゃなくていいですよっ!」キッ

男「あ、いや…俺は…」ドクンッ

マモノ(ご、ご主人が危険です!)

男「………」ウプッ

ビッチ「男?」

後輩「先輩!」ダッ

男「……いや、来ないでよっ!」バッ

後輩「先輩…?」

ビッチ「男?」

男「………」カァ///

イケメン「あーーー! こんなところにいたぁ!!」ダダダッ

後輩「イケメン先輩!」ダッ

イケメン「後輩ーーー! 会いたかったよぉ!」ギュッ

ビッチ「………」

マモノ(ご主人様の精神がやばい…こんな時はっ!)


16: 2012/09/28(金) 02:04:05.64
マモノ(僕に与えられた権限は二つ)バッ

男「………」ボーッ

マモノ(その一つ、“精神の安定”を調整する魔法!)ガブッ

男「………っ」ビクッ

マモノ(今回は“深く”ないから大丈夫です!)

男「はぁはぁはぁ…」

イケメン「あれ? 男? どうしたの?」

ビッチ「大丈夫?」ナデナデ

男「だ、大丈夫…」

後輩(私の時は拒んだくせに…)ムスッ

イケメン「後輩、これが答えだと見ていいんだね?」

後輩「うんっ、よろしくお願いします!」ギュッ

ビッチ「………ちっ」

男「おめでとう、二人とも」

イケメン「男ぉ、俺やったよぉ」ギュッ

男「おいおい、やめてくれよ」アワテ

後輩(イケメン先輩にもくっつかせたのに私には…)

後輩「許せない…」ボソッ

男「………?」

17: 2012/09/28(金) 02:06:14.02
家。

男「ただいまー」

妹「お兄様おかえりなさい」ダダダッ

男(見た目ジャイコだけど、やっぱり実の妹は可愛いなぁ)ナデナデ

母「男ー、あんたの部屋に幼馴染来てるわよー」

男「………げ」ダダダッ

妹「あんっ、お兄様ったら私と遊ぶ約束はどうなるんですか!」

男「また今度なー」ダダダッ

妹「……もうっ」

18: 2012/09/28(金) 02:09:20.91
男「幼馴染!!」ガチャッ

幼「こんばんわ、男。相変わらずの不細工ね」

男「うるさい、黙れ。何の用だよ」

幼「あら、大好きな幼馴染の部屋に来てはいけないのかしら?」

男「なんだよそれ、冗談にもほどがあるぞ」

幼「………」ハァ

男「ため息つかないでくれよ…思い出すから」

幼「ごめんなさい。あなたまだ引きずってるのね」

男「……そりゃそうだろ」

男(中学三年間、一日休まずイジメ抜かれたんだぞ…)

19: 2012/09/28(金) 02:15:31.79
幼「でも、あなたには魔法があるじゃない」

男「たぶん俺の魔法がどれだけ進化しても、“過去”だけは消せないよ」

幼「でしょうね。でも、私はそれで良いと思うけど」

男「なんでだよ! 俺に便所の味を忘れるなって言いたいのかっ!?」

幼「便所の味くらい私だって一緒に味わってあげたじゃない」

男「教科書引き裂かれたこともか!?」

幼「私の教科書なんて焼却炉に直行したわよ」

男「……あそこ撮られたこともか?」

幼「私なんて危うくレイプされかけたわよ?」

男「………俺のせいで…すまん」ウゥ…

マモノ(ご主人が苛められていた時、幼馴染さんは加害者にも傍観者にもならず、ご主人と被害者になったのです。…しかし、ご主人はそれを負い目に感じていて、幼馴染さんを遠ざけます)

幼「泣かないで。不細工が余計歪んで見えるわ」

男「お前の酷さ加減も大概だわ!!」

幼「でも、そんなあなたが大好きよ」

男「……帰ってくれよ」

幼「やれやれ、また来るわね」

男「………またな」

幼「………」ヤレヤレ

20: 2012/09/28(金) 02:23:14.36
男(俺は魔法で顔をいじった。整形だと疑われない程度に徐々に変化させた)

マモノ「春休みだったのと、高校に同じ中学の生徒がいなかったことで誰にも気付かれなかったんですよね!」

男「ああ、さすがに家族は問い詰めてきたけど、そこは説得の魔法で誤魔化した」

マモノ「結果、妹さんが懐いちゃったんですよね」

男「昔はあんなに俺の事嫌ってたのにな」

マモノ「でも、幼馴染さんはなぜか昔の男さんの顔に見えるんですよね」

男「なんでだろうな…まぁ、あいつは今やトップアイドルなんだし、俺のことなんて放って幸せになって欲しいんだけどな」

マモノ「もしかしたらご主人のことが昔から好きなんでは?」

男「そんなこととっくの昔に調べたに決まってるだろ」

マモノ「感情の魔法ですね! 結果はどうなったんです?」

男「緑。友達以上親友未満だよ」

マモノ「逆にすごいですね。友達関係であそこまでいじめをかばってくれるなんて」

男「あいつは本当にすごいよ。本当に…」

マモノ「ご主人も十分すごいですよ」ポン

男「……ありがと」

21: 2012/09/28(金) 02:27:10.44
翌日。

男「いってきまーす」

妹「いってきますわ」

母「いってらっしゃーい」

男「あ、妹、そう言えば後輩ちゃんと初めて喋ったぞ?」

妹「え、後輩ちゃんと!?」ガバッ

男「あ、ああ、うん」

妹「お兄様……一つ聞いてもよろしくて?」

男「あ、ああ、いいよ」

妹「後輩ちゃんのこと…好きになりましたか?」オドオド

男「………なってないし、お前には言わん」テクテク

妹「ああん、待ってくださいましー」トテテテ

男(うーむ、性格は恋愛ゲームに出てきそうなくらい可愛いのだから、いっそ妹も魔法で可愛く…)

男「いや、でもこいつがモテても困るし、今のままでいいや」

妹「……何のことですの?」キョトン

男「いや、こっちの話」

22: 2012/09/28(金) 02:31:48.00
教室。

男「おはよー」ガラッ

イケメン「あ、あのさ…、二人とも止めてくれよ」

女「いいえ、止めないわ」シュッ

ビッチ「そうよ! 女には止められない戦いがあるのよ」シュッシュッ

男(なんだこの光景…)

軽女「おーっす男! なぁなぁ、この勝負の行方、どっちが勝つと思う!? 賭けないか!?」

男「軽女おはよう。お前は朝から発言が軽いなぁ…」ヤレヤレ

軽女「で、どっちだよ」

男「どっちでもねーよ」テクテクテク

ビッチ「これでも喰らえ―!!」ブンッ

女「これで終わりよーーー!」ブンッ



男「はい、どっちも終了」ガシッ



委員長「二人の拳を同時に掴むなんて、男君やるわね」キランッ

イケメン「男ぉ、助かったぜー」ウルウル

ビッチ「は、離せよっ!」バッ

女「………」スッ

男「どうしてこうなったんだよ?」ハァ

23: 2012/09/28(金) 02:37:55.88
ビッチ「こいつが私のことうざいって言ってきたんだよ!」ガァ!

男(ビッチって、時々セイウチみたいな顔になるよな…普段は豚だけど)

女「イケメン君が困ってるのに、一方的に彼女さんの悪口ばっかり言うからよ!!」

男(女さんは怒ってる姿も凛々しいなぁ)ホンワカ…

イケメン「い、良いんだよ。ビッチは俺の事を真剣に考えてのことだし」

女「わ、私だってイケメン君のこと真剣に考えて……」ポロリ

男(女さんの涙きたぁああああ!)

ビッチ「あ、そっか、あんたイケメンのこと好きなんだっけ? 残念だったわね、同じ天文部の後輩に奪われて」キャハハ

女「………っ」

男(わお)

イケメン「あ、え? そうだったの!?」パァ

男(イケメンの悪いところは、屈託がなさすぎて相手の心を無邪気に削っちゃうところだな)

女「………っ」ダッ

男「しゃーないか…」ダッ

軽女「男ー、がんばれよー」

男「おう」

24: 2012/09/28(金) 02:41:54.74
屋上。

女「………ぐすっ」

男「女さん……あの」

女「男君…なんでここが?」

男「いや、天文部がここを開けられるの昨日知ってさ…」

女「そっか、後輩ちゃんから聞いたけど、あなたここにいたんだっけ」

男「ああ、うん」

女「後輩ちゃん、可愛いよね」

男「そうだね」

女「お似合いすぎだよ、ほんと」

男「まぁ、俺としてはイケメンと女さんでも違和感ないけどね」

女「駄目だよ。私じゃイケメン君と釣り合いとれない」

男「そんなことない」

女「あるの。だって、私…変態だもん」

男「………え?」

女「………男君にだけ話すけど、絶対誰にも言わないでね?」

男「……う、うん」

女「あのね、実は私、イケメン君のことが好きすぎて…」

男「………」ゴクリ



女「透視能力に目覚めちゃったの」



男「」

25: 2012/09/28(金) 02:45:54.37
男「え、えっと…」

女「最初はね、なぜか女子更衣室が覗けたの。で、最初は誰かが悪いことに利用してるんじゃないかって犯人探しもしたけど、どうも違ったみたい」

男「ま、まさか…」

女「犯人はね、やっぱり私だったの」

男「つまり本当に?」

女「壁の向こうが見えるの」コクリ

男「え、えっと…じゃあ、今真下には誰がいる?」

女「ちょっと待ってね」

男(透視魔法、展開!)

女「……………えっと…ちょうど真下にビッチさんがいるわね」

男(マジだった…)アゼン

女「信じられないなら行ってみる?」

男「いや、信じるよ…」

男(俺も見えたし…。制御ミスってセイウチの裸を…おえ)

26: 2012/09/28(金) 02:49:57.53
女「ね、変態でしょう? イケメン君の裸が見たくてこんな能力に目覚めたなんて」

男「いや、そんなことは…」

男(毎週君たちの生着替え覗いていた僕を許してくださーい!!)

女「でも…、それでも、やっぱり悔しすぎて…ビッチさんに当たっちゃった」

男「………女さん」

女「うん、ビッチさんにはちゃんと謝る。それとこの能力は世の中のために役立てる」

男「え、なんで!?」

女「…? だって、私にしかできないことってあると思うし…」キョトン

男(え、なんで? なんで私利私欲のために使わないの? バカなの?)

女「男君、話を聞いてくれてありがとう! 私教室に戻るね!」タタタッ


男「………分からない」



27: 2012/09/28(金) 02:54:23.01
教室。

男(そこには仲直りした美しい人魚と醜いセイウチの姿があった)

軽女「まさか、二人を仲直りさせるとはねー。やるじゃん」

男「ははっ、どうも」

イケメン「男ぉ、ほんとありがとー」ギュッ

男「なんかイケメン昨日からスキンシップ激しすぎ」

イケメン「あー、ごめん! 昔から家族みんなスキンシップ激しくてつい…」テヘヘ

女・ビッチ「………」ゴゴゴッ

男(二人の視線が怖い!)

軽女「……イケメン良いなぁ」ボソッ

男「……えっ?」

軽女「…へぇっ!?」カァ///

男(な、今のはどっちの意味なんだ!?)

マモノ(日本語って難しいですね)


29: 2012/09/28(金) 02:57:22.21
男(どうかしたか?)

マモノ(いえ、ちょっとモンスターのお知らせにきました)

男(おっ、マジか)

マモノ(モンスターと言っても、今回のは小型で新たな魔法を生み出せるほどの力はないみたいです)

男(いいのいいの。すこしでも貯めれる時に貯めとかないと)

マモノ(ご主人はほんとマメですね)

男(で、どこに出るんだ?)

マモノ(もうすでにいるみたいです。…屋上に)

男「……あ、閉め忘れたっ!」ダッ


30: 2012/09/28(金) 03:02:56.13
屋上。

後輩「あれ? 男先輩じゃないですか?」

化物『………』ジーッ

男(うわっ、最悪だ。このままじゃ“寄生”しちゃうよ)

後輩(今私の顔見て嫌そうな顔した?)ムッ

マモノ(大丈夫ですご主人! 僕の権限がありますから!)ダッ

男(頼むっ! 俺は少しでも後輩ちゃんを引き離す!)ダッ

後輩「え?」

男「後輩ちゃん、ちょっとごめんねっ!」ダキッ

後輩「きゃぁっ!?」

後輩(男先輩にお姫様だっこされた!!?)コンラン

マモノ(権限の一つ“結界の魔法”!!)ブゥンッ

男「ちょっと、あそこらへん老朽化してて危ないんだ! いきなり抱きかかえてごめんね」

後輩「い、いえ…」///

男(説得の魔法)

男『後輩ちゃん、俺が今からここの床補修するから、後輩ちゃんは教室に戻って大人しく授業を受けてくれないかな?』

後輩「……はい」テクテクテク

男「……よし、やるぞっ!」キッ

31: 2012/09/28(金) 03:07:28.74
男(モンスターは基本的に何かしらの動物の姿をしている。…ちょっとばかし魔力のせいで見た目グロテスクになってるけど)

化物『お前、俺、食う?』

男「ああ、俺、お前、食う」

化物『食われる、嫌い、逃げる』

マモノ「ご主人! このゴリラみたいなモンスターは嘘吐きです!」

男「えーっと、つまり…」

化物『俺、きっと、逃げる』バッ

男「俺、絶対、戦う…おわっ!」バッ

――――ドガッ!!

化物『避ける、とても、素敵』

男「床が爆発してるじゃないか…」

マモノ「嘘吐きタイプは嘘を吐けば吐くほど強くなります! さっさと倒しましょう!」

男「ああ…」

32: 2012/09/28(金) 03:11:29.31
男(さっさと決める!)

男『虐殺の魔法!』

男「千本の槍!!」

化物『怖くない、槍、避ける』

男「いけぇええ!」ブゥン

化物『えっと、逃げる、逃げる、にげ―――』ザクッ

マモノ「嘘吐きタイプは賢さがないと意味ないですね」

男「相手に嘘だと悟らせないようにしないと、効果がでないんだもんな」

化物『………』シュンッ

男「でも、まぁ、偽装の魔法に嘘の魔力が必要だったからちょうど良かった」スッ

マモノ「それでは、またモンスターが出るようならお知らせします」

男「ああ、今日はもう出ないことを願うけどね」

マモノ「それはそうですね」

33: 2012/09/28(金) 03:15:26.13
今日はここまで。

現在の主要メンバー。

男…魔法使い高校生。昔はげしく苛められていた。スケベ。

女…透視能力に目覚める。自称変態。学年一可愛い。

イケメン…見た目も性格も完璧。少しドジっこ。後輩ちゃんと付き合うことになった。

後輩…イケメンに告白され付き合うも、男の行動が気になる様子。

ビッチ…200人斬り間近。イケメンの事は本気で好き。

軽女…処Oだが軽い。男が好き?

幼馴染…男の元の顔を知る唯一の人物。

その他もろもろ活躍予定。

それではおやすみなさい!!

41: 2012/09/29(土) 01:09:50.69
―放課後、繁華街。

男(嘘と説得の魔力が溜まったし、ちょうどお金も少なくなってきたからあそこ行こう…)

マモノ(パチンコ屋ですね。ご主人)

男(ああ、あそこならお手軽に金が入るからな)

マモノ(僕も見てていいですか?)

男(別にかまわんよ)

男『説得の魔法・融解』

―――ウィーン。

店員「いらっしゃいま…せ?」

店員(あれ? 誰もいない?)

男「うーん、どれにしようかなぁ…」

マモノ「あれがいいですっ」ユビサシッ

男「ゴッドとか目立つから無理」

マモノ「じゃあ、あれで」

男(モンキーターンか…まぁいいか)スッ

男「お金を買って…」ジャラジャラ

男『嘘の魔法』コンッ

波多野「優出モード!!」

隣の客「………」チラッ


42: 2012/09/29(土) 01:12:43.08
男「………」コンッ

波多野「見せてやる! これが究極の!」

隣の客「………はぁ…」ウンザリ

波多野「究極Vモンキー!」

マモノ(上乗せ300ですよ! ご主人!)

男(あー、はいはい)ジャラジャラ

男「モンキーターンは飽きる」ハァ

隣の客「………ちっ」イラッ

波多野「うぉおおおおおお!!」

マモノ(また上乗せですぅ!)キャッキャ

男「2000枚程度でやめとこ…」

43: 2012/09/29(土) 01:16:29.74
夜10時前。

店員「ありがとうございましたー!」ニコニコ

男(結局、やめるタイミングを失って5000枚出てしまった…)

隣の客「おい、兄ちゃん」

男「………」テクテク

隣の客「えらい、出してくれよったな。俺の打ってた台で」

男「………」ハァ

マモノ(ご主人、どうしますか?)

男(嘘も説得も残り少ないから使いたくないし…、まぁ余りまくってる闘の魔力でも使っとくか)

マモノ(ストリートファイトですねっ!)キラキラ

隣の客「ちょっとこいやっ!」ガシッ

男『闘の魔法』ドンッ

隣の客(なんや、びくともせぇへん!!)アセ

男「ちょっと裏に行こうか」

隣の客「お、おお」

44: 2012/09/29(土) 01:26:54.69
男(闘の魔法の基本構成である肉体強化だけ展開したのだけど…)

隣の客「うらぁあ!」ブンッ

男「………よわ」ガシッ

隣の客「な、なにしよんじゃこらっ!」グイグイ

男「これじゃあ魔力の無駄遣いじゃん…」パシッ

隣の客「あわわっ」グルンッ

男「せっかくだし、“頭蓋骨”でも割っとこうかな」グワッ

隣の客(こ、殺される!?)ビクッ

??「や、やめてくださいっ!」

男「………今の声」パッ

隣の客「あだっ!」ゴンッ

軽女「や、やめてって言ってるでしょ!」

DQN「へへっ、おめぇらがアホみてーにはしゃいでるから悪いんだぜ」

ビッチ「ちょっとプリクラ撮ってただけじゃない!」ガァ

不良「おめぇにゃ興味ねぇよっ!」ゲシッ

ビッチ「うぅっ」ドサッ

女「ビッチちゃんっ!」

45: 2012/09/29(土) 01:30:06.18
男(うわ…、これ何の漫画?)

マモノ(ご主人、あの男二人の後ろにいるボスみたいなやつ)

ボス「………」

男「げ…“同化”してるタイプ?」

マモノ「そうですね。しかも、ご主人の大嫌いな“悪の化物”です」

男「……悪の魔力とか持ってるだけで有害だしなぁ…」

マモノ「でも、同化率40%を越えてるので、このままでは“化物化”します」

男「そうなったら氏刑レベルの犯罪を犯すのか…」ハァ

マモノ「どうしますご主人?」

男『造の魔法』パァッ

マモノ「マフラーで顔を隠すのですね!」

男「あいつらに知られたくないしな」

男『闘の魔法・限界突破』ゴッ

マモノ「あの二人は僕がなんとかします」

男「ああ、緊急権限を承認する」

マモノ『立の魔法』スクッ

男(マモノの“人型”は俺の理想の姿なんだろうけど…絶対戸田エリカだよなぁ)

男「………行くぞっ!」ダッ

46: 2012/09/29(土) 01:35:45.01
DQN「早く脱げ―――」ゴッ

男「………」ケリッ

マモノ「ああ! ご主人、そいつは僕の標的!」

男「いや、邪魔だっただけだよ」ガシッ

ボス「………危険回避」スッ

男『転送の魔法』シュンッ

不良「………え、何が起きて…」

軽女「ビッチちゃん大丈夫?」

ビッチ「な、なんとか」フラフラ

女「………」

軽女「さっ、あいつが混乱してるうちに逃げよっ」タタタッ

不良「………あっ、おい、ま――「うるさいよ」スクッ

軽女(戸田エリカ?)タタタッ

ビッチ(何で芸能人がこんなところに?)ドドドッ

女「………」タタタッ

不良「えっ、と、戸田エリカ?」

マモノ「さっ、とっととかかってこい」クイクイ

不良(え、もしかして、これ誘われてる?)ポッ///

マモノ「勘違い気持ち悪い」ゲェ

不良「いっきまーす!」ガバッ

マモノ「………はぁ」カカトオトシ

不良「げふっ」ドサッ

マモノ(熱いバトルができると思ったのに…)ハァ

マモノ「ご主人、大丈夫かなー」

47: 2012/09/29(土) 01:42:55.28
ビルの屋上。

ボス「お前はこの世に希望があると思うか?」

男(げ、訳のわからない広大な会話が始まる時は化物化一歩手前なんだよな…)

男「知るかよ。少なくとも、絶望はそこらへんに溢れてるぜ」

男(悪の前で正義を語れば、光で伸びる影のように成長が促されるからな…)

ボス「そうだな。では、せいg「うるせーよ」ゴッ

ボス「ぐふっ、ごっ、gyjkっ!」ゴロッゴロッゴロッ

男「やべ…、やりすぎたかな…」

男(限界突破中は本当にどうなってるか分からないんだよな…)

ボス「……自由が…欲しい」

男(なんかよく分からない本音を語りだしたら、弱っている証拠だ…)

男『乖離(かいり)の魔法』スッ

男(うまく引き離せればいいけど…)

ボス「……うぅ、おかぁさん…」シュパッ

男「………成功だな」パシッ

悪の種「………」ウネウネ

男(化物化一歩手前の具現化した魔力は心臓みたいで気持ち悪いんだよな)

マモノ「あら…終わったんですね。ご主人」

男「……マモノ、これいるか?」ウネウネ

マモノ「え、遠慮しときます」

男「……だよなぁ」ハァ

48: 2012/09/29(土) 01:49:22.59
男(悪の魔法なんて、人頃しにしか使えないし、でも世界に“還す”とまた出てくるし…)ウーム

マモノ「正の魔法で相頃したらどうですか?」

男「バカか、たった一つしかない正の魔力をこんなとこで使えるか。もし化物化した悪が現れたらどうすんだよ」

マモノ「正の魔力はかなりレアですもんね」

男「うーん、どうしよう…」ナヤム…

悪の種「………」ウネウネ

男「そうだ。これを原動力にもう一匹魔物を創ってみよう」

マモノ「お願いです止めてください」

男「冗談だよ。以前お前を頃しかけたもんな」

マモノ「…凍結の魔法でオブジェ化しとくのはどうですか?」

男「まぁ、氷の魔力は冬になればいくらでも溜まるし、それしかないか…」

男『凍結の魔法』

悪の種「」カキンッ

マモノ「とりあえずひと段落ですね」

男「ああ、みんな心配してるし帰ろう」

49: 2012/09/29(土) 01:52:17.40
女の部屋。


女「………」ポスッ


女(あれって絶対男君だよね…)


女「二人はマフラーで顔が見えなかったって言ってたから、私は無意識に透視したんだろうなぁ」


女(ということは、私の透視する力のことも本当は知っていた…?)


女「明日聞いてみなくちゃ…」


女(ちょっとカッコよかったし…)ドキドキ///



50: 2012/09/29(土) 01:58:52.19
軽女の部屋。


軽女「………」ハァ


軽女(あれって絶対男だったよなぁ…)


軽女「本当になんとなくなんだけどなぁ」


軽女(もしかして、願望も入ってる…?)


軽女「……………っ」カァ/////


軽女(明日聞いてみよう…)///

51: 2012/09/29(土) 02:00:16.14
ビッチの部屋。


ビッチ「うわっ、ゴムくせー…」


ビッチ(あの時の……絶対…)


ビッチ「………イケメンだったよな」ブッ


ビッチ「………明日押し倒そう」ゴロンッ


ビッチ(あー、腹減った…)ハァ…

52: 2012/09/29(土) 02:07:32.03
翌日。

妹「お兄様っ! 今日は一緒に帰りますからねっ!」

男「あー、はいはい」

男(妹は心配して寝ずに待っていてくれた。…これが見た目ジャイコじゃなければ押し倒してたかもしれない…)

後輩「あ、妹ちゃーん、男せんぱーい! おはようございまーす」タタタッ

妹「あ、後輩ちゃーん」ニコッ

男「おはよー」

後輩「今日もカッコ良いですね」ニコッ

男「はぁ?」カァ///

男(しまった、不意打ちに照れてしまったっ!)

妹「」キョウガク…

妹(お兄様が見た目を褒められて照れている姿初めて見ましたわ)ガクガク

後輩(………脈はあるんだ)

イケメン「おーい、みんなおはよー♪」スキップスキップ

男「おは……「イケメンく~~~~ん!」ガシッ

イケメン「え?」

ビッチ「さっ、行くわよ! 二人だけの世界にーーー!!」ダダダダッ

男「」

後輩「」

妹「」

53: 2012/09/29(土) 02:13:52.82
後輩「さ、早く行かないと遅れますよ」ニコッ

男「いいの? 彼氏が連れ去られたけど…」

後輩「良いんですっ。イケメン先輩は人気者ですからねっ」ムニッ

男(ちょ、なんで俺の腕組んでくるんですかぁああ!)

妹「ちょっとお兄様っ!」フニッ

男(……脳内補正脳内補正)ブツブツ

眼鏡「………」ハァ…

男(ん? 眼鏡? どうしたんだろう…)

委員長「朝っぱらから見せつけてくれるわね男君」

男「あ、委員長おはよー」

妹&後輩「「おはよーございます」」

委員長「おはよう♪」ニコッ

男(なんか俺だけ視界に入ってない?)

軽女「おっとこー、俺もまぜろー♪」ドーンッ

男「おわっ」ガシッ

後輩「………っ」ムッ

妹「だ、駄目ですーーー!」ムキー

軽女「このままおんぶして教室まで行くのだー!」

男「良いけど、残念ながらお前のない胸じゃ俺のときめきは奪えないぞ」

軽女「」ガーン

妹&後輩&委員長((よしっ))ガッツポーズ

女「………」ジーッ

54: 2012/09/29(土) 02:18:38.14
教室。

男「………ほらよっと」ドサッ

軽女「うへー、しがみついとくので逆にしんどかったぁ~」

イケメン「その気持ちすごい分かる…」ゲソッ

男「…生き延びられたか」

イケメン「あのままラブホまで全速力だった…」ガクガクブルブル

男(ビッチというかもはやケダモノだな…)

軽女「あ、あのさっ、男!」

男「………ん?」

軽女「き、昨日ってどこにいたんだ?」モジモジ

男「えっ」ギクッ

女「………っ」ピクッ

軽女「もしかして、繁華街にいなかったか?」

男「え、えーっと………」

男(どうする? 説得の魔法は魔力が足りねーぞ)

女「………」ジーッ

軽女「どうなんだ男…」

男「……いや、その日は幼馴染の所に遊びに行ってたぞ」

軽女「……そっか」

女「………」フィ

男「どうしかしたか?」

軽女「ううん、なんでもねーぜ」ニコッ

55: 2012/09/29(土) 02:23:15.00
妹の教室。

妹「後輩ちゃん、もしかしてお兄様のこと好きなの?」

後輩「え? なんで?」

妹「え、えっと…、なんとなく…かな」

後輩「まぁ、気にならないと言えば嘘になるかな。先輩カッコ良いし、優しいし」

後輩(お姫様だっこしてくれたし)キャァ///

妹「で、でもイケメン先輩は?」

後輩「イケメン先輩は大好きだよ。彼氏だし。あー、デートしたいなぁ」ニコニコ

妹(本当に好きみたいです…。良かったぁ…)ホッ



後輩(まぁ、あなたのお兄様は私を無視した罰を償ってもらうけどね)ニコニコ


眼鏡彼女「……………眼鏡、嫌い」ボーッ




58: 2012/09/29(土) 10:43:50.03
お昼休み。中庭。

眼鏡「………はぁ」

男「…眼鏡?」

男(眼鏡のやつ、今日一日元気なかったなぁ…)

男「おーいめg「眼鏡くーんお待たせー」

眼鏡「眼鏡女…」

眼鏡女「お待たせ、お昼、食べよ?」

男「………!」

男(そういうことか、おい、マモノ!)

マモノ「ふぁい、ごふふぃんふぁまなんふぇほう」モグモグ

男「……あれ、“同化”してるか?」

マモノ「……ぶふぇっ!」ドバッ

男「………」ベチャァ

マモノ「ご、ごめんなさいご主人! でもでも、あいつ、あれっあれっ」アワテアワテ

男「………同化じゃないのか?」



マモノ「あいつ、“人型”です!!」



59: 2012/09/29(土) 10:48:07.09
男「え? …ということは?」

マモノ「…人間じゃありません」

男(魔力が人に取り付いて化物化するのに対して、魔力がそのまま人としての意思を持つのが人型化)

男「いや、いるとは知っていたけど…」アセ

マモノ「あれはとても危険です。いますぐ頃しましょう!!」

男「いや、しかし…」

男(別の生まれ方をしただけであいつも生物の一種じゃないのか? それを俺が奪っていいのか?)

マモノ「ご主人! ご友人が危険な目に遭っちゃいますよ!!」

男「あ、ああ…」

眼鏡「おいしいよ」モグモグ



眼鏡女「……眼鏡、大好き、……食べちゃいたい」




60: 2012/09/29(土) 10:55:49.11
校舎裏。

女「………おかしい」ジーッ

女(透視能力で遠くからずっと男君を観察していたけど、絶対普通じゃない)

女「誰としゃべっているの?」

※マモノは姿を消しています。

女(口唇術をマスターしておけばっ)クッ…

女「それにしても、眼鏡君の彼女は相変わらずかわいいねー」

女(無表情すぎるのは怖いけど…)

女「……壁の透視ができるのだから服の透視もできるわよね…」ドキドキ

女「ふんっ! ぬぉおおおおおお!」ゴゴゴゴゴ


女の視界【男の内臓】


女「うげろろろろろろっ」

女(透視能力を強めすぎちゃった…)

女「直らないー」グワングワン


眼鏡女の中身


女「…………内臓がない?」ゾクッ

女(ど、どういうことなの)ガクガク

女「は、早く男君に確かめなきゃ…」

69: 2012/09/29(土) 18:16:20.32
―――数週間前。

眼鏡「本当に眼鏡女はかわいいなぁ」ナデナデ

眼鏡女「えへへー」スリスリ

眼鏡女(         )

眼鏡「今日の弁当も最高だったよ」

眼鏡女(         )

眼鏡女「うれしい」ギュッ

眼鏡(付き合って数か月、いまだに笑顔を見たことないのが気になるけど、僕のこと好きって言ってくれてるし幸せだなぁ)

眼鏡「眼鏡女は食べたいものあるか?」





眼鏡女(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡)




眼鏡女「うーん、ハンバーガーかなぁ?」

眼鏡「じゃあ、帰りにマクドナルドへ行こう!」

眼鏡女「わーい」

70: 2012/09/29(土) 19:17:06.78
現在、屋上。

男「ふーむ、人型かぁ…」ボリボリボリ

マモノ「やっぱり気が引けますか?」

男「まぁ、これが人間なら一人や二人魔法で“いなかった”ことにすればいいけど、人型とはいえ新種の生物を頃すのはなぁ…」

マモノ「ご主人、あれは生き物じゃないですよ」

男「いや、分かってるけどさぁ。それじゃあ、俺たちが有機生命体であること以外に何の違いがあるんだ?」

マモノ「いえいえ、ご主人。あれは本当にこの世にいてはならないものなんですよ」

男「なんで俺の分離体であるお前がそんなことわかるんだよ」

マモノ「ご主人は僕に人格を与えるために知の魔力を多く使いましたよね。そのおかげで僕はご主人より“知っていることは知っている”んです」

男「ふーん、そんなもんか」

マモノ「あれは    なんです」

男「え?」

マモノ「だから    なんです」

男(確かに声を発している…だが、認識できない?)

マモノ「もしかして、脳が理解できないですか?」

男「なんかムカつく言い方だな」コツン

マモノ「すみません」テヘ

71: 2012/09/29(土) 19:21:37.71
マモノ「……駄目です。いくら考えても、それを別の表現で説明できそうにありません」

男「そっか」

男(知の魔力は“常識”のフィルターが厚くなってきたせいで見えなくなってきたんだよな…)

マモノ「お役に立てなくて…」

男「まぁいいさ。とにかくあいつは存在しちゃいけないんだな」ポン

マモノ「ご主人~♪」ウルウル…


屋上入口。


女「男君…誰と喋ってるの?」

女(会話は一人だけじゃ成り立たない流れだったわ。…それにしても、頃すとかいなかったことにとか…何が起きているの?)ガクガク

女「と、とにかく今は逃げなきゃ…」タッ

72: 2012/09/29(土) 19:28:56.61
数日前。

眼鏡「………」ウプ

眼鏡(最近、眼鏡女と喋ると吐き気がしてくる。徹夜で勉強したような感覚にも襲われるし…)フラフラ

眼鏡女「あ、眼鏡君      だよね」

眼鏡「え、今なんて?」

眼鏡女「それでさぁ、   が    で    するともう大変で」キャッキャ

眼鏡「う、うぅ…」ブルブル

眼鏡「                               だって!」ウフフ

眼鏡(頭が割れそうだ…)

眼鏡女「眼鏡君大丈夫?」ギュッ

眼鏡「眼鏡女………」ギュッ

眼鏡(僕の体調不良を彼女のせいにするなんて…最低だ)ハァ

眼鏡女(    。眼鏡君…)

73: 2012/09/29(土) 19:34:49.69
現在、屋上。

男(しかし、人型を倒すと言っても、俺にあいつらの知識はない…)

マモノ「すみません。人型の生態系や対処法を言おうとしても同じ症状になるみたいで…」

男「俺の知識が足りないせいか…」ウーム…

マモノ「ご主人にお返ししましょうか?」

男「………いや、いい。むしろこれの方が良い」

マモノ「え、何でですか?」

男「そりゃあ……答えがわからない方が楽しいだろ?」

マモノ(かっこつけてるけど、絶対そんなこと思ってない。…怖いんだな、キャパを超えた知識を抱えることが…)

男「とりあえず、化物化した人間と想定して戦うよ」

マモノ「……心配です」

男「俺も……」ハァ…

74: 2012/09/29(土) 19:37:57.44
前日、眼鏡女の家。

眼鏡女「        」

眼鏡女「          」キャッキャ

眼鏡女(      )

眼鏡女「       !!」




眼鏡女「眼鏡、食う」




眼鏡女「私、世界、壊す、人、いっぱい、食う」




眼鏡女「眼鏡、愛、栄養、食う」





眼鏡女「……………楽しみ」ジュルリ

79: 2012/09/30(日) 01:41:36.17
体育館裏。

眼鏡「………なんでこんなことに」

眼鏡女「………」ジュポジュポ

眼鏡(眼鏡女は性行為に全く興味がなかったのに…)

眼鏡女(受精、増やす、食糧確保、試験)ジュルル

眼鏡「うっ…」ドクドクドクッ

眼鏡女「………     した」

眼鏡「え、今なんt――――!!!??!?!??!?」キィィィィン

眼鏡(頭が…割れる…)ドサッ


マモノ「ご主人!! あの人型、     を始めてます!!」

男「だから分かんねーよ!!」

男(かなりやばくて、いずれ俺も巻き込まれる可能性があるってことは分かった!!)

男『消滅の魔法!』(衰退の魔力)

男「特大の消滅弾! 喰らぇえええ!」ブンッ



眼鏡女「受精、確認、……     す?」グルンッ

眼鏡「………」ビクッビクッ


眼鏡女「    」グパァアア

男「うげぇえ! 顔が四つに割れたぁ!?」

マモノ「完全に常識外ですね…」

80: 2012/09/30(日) 01:46:57.04
眼鏡女「       」ガポッ

男「食った?」

眼鏡女「    !? うきゃ、うけ、うきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!」グルングルン

男「上半身が鞭みたいに揺れてる!?」

マモノ「それはご主人がバイオハザードの知識で補完しているだけで、実際には    をこちらに向けています!」

男「それが何か分からんが、防御できそうか!?」

マモノ「防御できそうも何も―――全力で展開してください!!!!」

男「くっ!!」バッ

眼鏡女「くきょよよよよよ!!!」ドッ

男「最大展開! 壁魔法!!」(拒絶の魔力)



――――――どぷっ。




男「………意味ねぇじゃん」ゴポッ

女「男君!?」ガバッ

男「なっ、何してんだよ!!」

女「あなたが頃すとか言ってたから心配になってついてきたの!!」

マモノ「こいつにかまってる暇はありません!」

男『転移魔法!!!』シュンッ


眼鏡女「………魔力、   、食べる」ジュルリ

眼鏡「………」グデ…

81: 2012/09/30(日) 01:51:12.48
屋上。

男「…はぁはぁはぁ、くそっ!」ドンッ

マモノ「ご主人、壁に八つ当たりしては余計体力と血を失います」

男「………そうだな」ハァハァ

女「だ、大丈夫?」オロオロ

男「わかんねーよ! くそ!!」

マモノ「だから落ち着いてください。後、回復の権限を僕にください」

男「……頼む。“権限の移譲”」

マモノ『回復魔法!』(希望の魔力)

女「お、男君…」

男「………なんだよ?」

男(くそ…痛みと疲労感でいらいらする)

女「あの…さっきのは…?」オドオド

男「だからわかんねーよ!!」

男(俺が知りてーっての!!)

女「……な、何よ。人がせっかく心配してるっていうのに…」

男「…………あ?」カチン

女「………っ」ビクッ

82: 2012/09/30(日) 01:56:45.69
男「お前、俺の透視魔法見たんだろ?」

女「……!? あ、あれはやっぱりあなたの!?」

男「本当はもう分かってたんだろ。女さんが透視の魔法を素で使える理由はわかんねーけどな」

女「じゃあ、あの日の夜に私達を助けてくれたのも?」

男「うぬぼれんな。あれはたまたまこっちの利害に一致しただけだ」

女「………なんで?」

男「………?」

女「そんな魔法使いみたいな力を持ってて、なんでそんななの!?」

男(そんなってなんだよ。具体的に言えよくそ)


83: 2012/09/30(日) 01:58:33.11
回想

クラスメイト『こいつなんとなくむかつくので苛めまーす!』

クラスメイト2『さんせーい!』

クラスメイト3『頃すくらい激しくいきまーす!』ガッ

男『あうっ』ドサッ

女子生徒『………』プッ

女子生徒2『おもしれー』パシャッ

女子生徒3『後であいつ貸せよ!』

クラスメイト2『あ?俺らのおもちゃだっての』

クラスメイト3『飽きたら貸してやるよ!』ギャハハ

男『………』プルプル

クラスメイト『あ? なんでこんなことをするのか、って目をしてんな』

クラスメイト3『それじゃあ教えまーす!』




     全員『なんとなくむかつくからでーーーす!!』




男『………』

84: 2012/09/30(日) 02:04:19.00
現在、屋上。

男「………」

女「………」

マモノ「なんでどっか行かないんだよこいつ」

男「……………なぁ」

女「………なに」グスッ

男「この間、助けた時なんて思った?」

女「あなただって確信はなかったけど、……カッコよかった。強かった。安心した。正体を知りたかった。男君ならもっと話をしたかった。でも、でも…」

男「………悪かったよ」スクッ

女「………」

男「俺は魔法使いだ。高校生が思い浮かべるような魔法は大体使える。…けど、魔法使いは他人のためには動かない。魔法は…、魔力は…、




 虐げられた者にしか扱えないからだ」




女「……虐げられた?」

男「うん、聞くか?」

女「………」コクン

85: 2012/09/30(日) 02:13:36.07
男(それから俺は、女にほぼ全てを打ち明けた。中学の頃氏んだ方がましとさえ思えるようなイジメを毎日受けていたこと。そのせいで一度家庭崩壊が起き、父親が自頃したこと。その時の遺書に、俺へを産まなければよかったと白状する文章が延々と連ねられていたこと。そして、魔力に触れ、魔法を覚え…)

男「俺は…俺を苛めていた奴ら全員この世から消した」

女「……え?」

男「A市のB中学のアルバムでも見れば分かるよ。明らかに不自然な写真だらけだから。そこだけ“切り取った”ような写真で溢れている」

女「その子たちの歴史ごと消したの?」

男「なんであいつらがいたことをこの世に刻まなければならないんだ?」

女「だって……生まれてきたのだから」

男「価値観の相違だが、俺を否定することだけはやめてくれ」ハァ…

女「それはしないけど…」

男「分かっただろ。正義の魔法使いなんてのは幻想だ」

女「………」

男「本当の魔法使いはこんなもんさ」

女「さいてー」

男「……おまえn「でも、……私には分かる」

男「え?」

女「…もし私のことが知りたければ、放課後付き合って」

男「今じゃ駄目なのか?」

女「駄目。今すぐここから逃げなきゃ、“あいつ”がこっちを見上げてる」キュイィィン

男(透視!!)

女「私は役に立ちそうにないし、逃げとくね!!」ダッ

男「あ、ああ…」

マモノ「良いタイミングで回復も終わりました!」

男「ありがとうな、マモノ」ナデナデ

マモノ「ご主人の回復の過程で少しだけ知の魔力を注ぎました」

男「良いって言ってるのに」

マモノ「……ご主人に氏んでほしくないんです」グスッ

男「………善処する」ナデナデ

91: 2012/09/30(日) 13:09:33.75
男「……知の魔力のおかげで分かったことがある」

マモノ「僕の理解力がどこまで落ちてるかわからないですけど、言ってみてください」

男「あいつ強くて怖い」

マモノ「そうですね」

男「………」

マモノ「………」

男「いや、それだけ」

マモノ「    であることとかは?」

男「頭痛するからやめてそれ」

マモノ「もう少し魔力移しますか?」

男「本気で遠慮しとくわ」

マモノ「……ならどうします?」

男「    ということだけはわかった」

マモノ「! ……それで十分かと!」

男(だけど俺の魔法でも日本にある施設でも    を生み出すことは不可能…)

男「片っ端からそれっぽいの試してみるしかないか…」

92: 2012/09/30(日) 21:07:28.74
男(火、怒、憎悪、辛さ、“紅”の魔力を一つに固める)

男「その辺にありふれてる紅の魔力から試すあたり、余裕というか危機感がないというか…」

マモノ「ご主人はケチですもんね」

男「そりゃ、毎日小遣いカツアゲされてたらケチにもなるわ」

マモノ「そんなご主人が好きですよ」

男「……お前そんな正直者だったっけ?」

マモノ「悪の魔力も送ったので卑屈さが減ったみたいです」

男「おい」

マモノ「ご主人はもう少しくらい悪くなっても大丈夫ですよ」ニコッ

男「……まぁいいや」

男『紅の魔法』

男(それでも…魔力を失うのは辛いなぁ)グスッ


眼鏡女「あうあ……くう」ズリズリ

眼鏡「………」ズルズル


男「最大射出!!」ゴォ!!!




眼鏡女「………」スゥ…




男「くわれ……た」ガクッ

マモノ「それ絶対に絶望感じゃなくて、魔力を失ったのが悔しいだけですよね」

93: 2012/09/30(日) 21:15:44.09
眼鏡女「………くや、しい?」ドサッ

男「!?」

マモノ「これはまずいですね。どうやら紅の魔力の元である“憎悪”を宿したみたいです」

眼鏡女「悔しい、憎い、恨めしい、この感情…熱い」

男「くそ……もう放っておいた方がよくないか?」

マモノ「僕はそれに賛成します。どうせ放っておいても街が一つか二つ消える程度でしょう」

男「マジ?」

マモノ「マジです。絶対にあり得ないパターンなので言いませんでしたが、人間にでもできる方法として魔力を注ぎこみ続けて破裂させる方法があります」

男「それを現実でやろうとすると?」

マモノ「まぁ、2、300万人の強い感情があれば事足りるんじゃないですかね」

男「………うーむ」

94: 2012/09/30(日) 21:22:52.45
眼鏡女「………炎?」

男「なぁ、マモノ…」

マモノ「な、なんでしょう?」

男「紅の魔力にさ…炎と爆発があったよな」

マモノ「……ありましたね」

男「つまり…」

眼鏡女「弾丸、発射」ドォォンッ!!

男『回避魔法!』(拒絶の魔力)シュンッ

男(危なっ…)

眼鏡女「悔しい減るの気持ちいい?」グルッ

男「………ほんと、怖いやつ」ゴクリ

眼鏡女「炎、炎、溶岩」スッ

男「くそっ…」

男(拒絶の魔力なんて腐るほどあると思ってたけど…)

マモノ「残り回避魔法一回分ですね」

男「それでも……勝てる道は見えた」

男(でも、その道を行くための方法は見えない…)


95: 2012/09/30(日) 21:31:36.39
眼鏡女「吐きだす」バッ

男(くそっ、避ければ溶岩が屋上の出入り口を破壊してしまう!)バッ

男「ウルトラレアだけど仕方ないか…」

男『過去の魔法』(邂逅の魔力)スッ

眼鏡女「きもち……いい」ブルブル

男「はぁはぁはぁ…一応隕石を“なかった”ことにできた」フラッ

マモノ「これでもう、誰も“いなかった”ことにはできませんね」

男「……そんな奴もう現れねーよ」

マモノ「そうですかね」

男(さて……これで相手がどう出るか…)

眼鏡女「………」ズルッズルッ

男「元に戻ったか…」

男(魔力は吸収・放射するらしい)

男『自傷魔法』(鬱の魔力)スッ


眼鏡女「………?」スゥ…


マモノ「チェックメイトですね」

眼鏡女「………」フラッ

96: 2012/09/30(日) 21:36:34.97
眼鏡女「星、壊れる、みんな幸せ」

男「!?」

男『白魔法!』(無の魔力)バッ

眼鏡女「……? な、に、…こ、…れ」ドタッ

男「……………氏の淵で手に入れた魔力なのに…」ウルウル

マモノ「自頃した時にたまたまあっただけでしょ」

男「うるさいなぁ」



眼鏡「………うーん…」



男「眼鏡!!」ダッ


97: 2012/09/30(日) 21:40:12.53
眼鏡「ここは……って、眼鏡女!!?」ガバッ

眼鏡女【だった何か】

眼鏡「…あ、ああ、眼鏡女ぁ…」フラフラ

男「どこに行くんだ!?」

マモノ「どうやら眼鏡女は眼鏡と何かが繋がっていたみたいですね。自傷魔法の影響を受けています」

男「ということは!?」

マモノ「…自頃します」

男「眼鏡!」バッ

98: 2012/09/30(日) 21:44:07.67
眼鏡「氏のう…」ガシャッ

男「くそっ!」ガシッ

男(すごい力だ…)




男「これも俺にとってはめちゃくちゃレアなんだぞ!!」バッ




男『希望の魔法!!』(希望の魔力)

マモノ「ご主人の心は絶望しかないですもんね」

眼鏡「………」ドサッ

男「眼鏡!!」

106: 2012/10/01(月) 10:42:32.86
男(……ん? なんで俺がこんな奴のために希望の魔法を…?)

眼鏡「………」スクッ

男「大丈夫か?」

眼鏡「ああ! なんだかすっきりしたよ! 悲しいこともあったけど、一歩踏み出さなきゃ始まらない!


 僕の未来には希望が待ってるんだから!!」パァアァ!!


男「……あ、ああ」

男(対象者の精神方向を無理やり捻じ曲げる魔法…。彼女が氏んだのはたった今なのに…)ゾクッ

マモノ「ご主人、今魔法を勘違いしていませんでした?」

男「……え?」

マモノ「人間は笑うと楽しい、泣くと悲しい、楽しいから笑う、悲しいから泣く。その関係は常に一方通行ではありません」

男「集団心理で皆が楽しいから楽しいなんてものもあるからな」

マモノ「でも、魔法は違います。魔法は…」

男「楽しいから楽しい、悲しいから悲しいだろ」

マモノ「そうです。でも、そちらはまだいいですよね。……泣くから泣く。笑うから笑うなんて行動も強制できる…」

男「今のあいつは希望“が”溢れてるから前向きな行動をとるしかない…か」

マモノ(それはご主人、あなたにも言えることですよ。クラスメイトとはいえ他人を助けるなんて…)

軽女「あ、男! いたーーー!」ユビサシッ

男「………?」

107: 2012/10/01(月) 10:44:05.76
軽女「眼鏡が、眼鏡が…」

男「眼鏡がどうした? 教室に向かわなかったか?」




軽女「眼鏡がカッターナイフで首を切った!!」





男・マモノ「はぁ!?」

108: 2012/10/01(月) 10:48:14.51
教室。

男「………血の臭い」ウッ…

救急隊員「はい、どいてくださーい!」カシャッ

眼鏡「えへへ」ニコニコ

クラスメイト「あいつ…笑いながら首切ったぜ」

男(笑いながら?)

軽女「そうなんだ。眼鏡は“本当に楽しそうに”首筋をカッターでスッと…」ウッ

男「どうなってんだよ…」

女「……どうなってんだよ、じゃないわよ!」ガシッ

男「へ?」

女「ちょっと来なさい!!」グィッ

男(な、なに!?)ズルズル


109: 2012/10/01(月) 10:53:49.77
屋上。

男(そういえば、眼鏡の彼女、光に溶け込むように消えていったな…)

女「説明してよ」

男「え?」

男(お前が先に説明するんじゃなかったか?)

女「眼鏡君の彼女にあんなことが起きて、眼鏡君が飛び降りしようとしたのをあなたが止めて、理解の範疇を超えすぎよ」

男「また覗いてたのか…」

女「その言い方、あなたにだけは言われたくないわね」

男「おっしゃる通りで。…でも」

女「でも?」

男「眼鏡が教室で自頃したのは正直俺もなんでか分からない」

110: 2012/10/01(月) 11:00:11.66
男(本当に何でだ…?)

マモノ(ご主人、難しい話じゃないですよ)

男(………?)

マモノ(眼鏡君は“氏ぬことも希望で溢れてた”んですよ)

男「………なる」

女「なる?」

男「いやっ、ちょっと待って!」

男(マモノ! 魔法だからって、そんな超展開信じられるっ!)

マモノ(……? ご主人はやっぱり勘違いしてません?)

男「………え?」

マモノ「ご主人は魔法…なんて言っていますけど、別の人間からすれば、




 呪いの力である場合もあるんですよ?」




男「………」ゴクリ

114: 2012/10/01(月) 13:19:16.17
男「の、呪い?」

マモノ「…というよりも、ご主人の言ってる魔力っていうのがそもそも間違いって言ってもいいですね」

男(俺の分離体であるマモノが俺の知識を否定するなんて…どれだけ知の魔力に差があるんだ?)

マモノ「この力は別に魔法を使うためだけに存在している訳ではありません。ある存在にとっては動力だったり、ある存在にとっては活力だったり、またある存在にとっては…恋の力だったり」

男「俺は基本的に魔法を使うためのエネルギーとして使っているけど、使う者によっては魔法のプロセスを通さなくても効果を出せるってことか?」

マモノ「簡単に言えばそうですね。現代の一般人は常識と平和が蔓延しすぎて、その力に気づくことすらできないですけど」

男「そういえばオリンピックのメダリストからは正の魔力が溢れてるもんな」

マモノ「そうです。ご主人が知の魔力を欲しがらないのも、常識が足かせとなっているんですよ」

男「それは何となく分かってた」

マモノ「でも、私には常識という枷はありません。よかったら一回全て渡してくれませんか?」

男「え? …どうして?」

マモノ「あと少しで常識という枷を一時的に打ち破る方法が見えそうなんです。でも、後一歩足りない」

男「べ、別に俺は…」




マモノ「加害者と一緒に“いなかったこと”にしたあの子のことはもう良いんですか?」




男「………」

119: 2012/10/01(月) 21:37:53.81
過去。

男「………」ボーッ

友「大変だな…」

男「………ああ」ボーッ

友(睡眠薬がどれくらい効くか試すなんてイジメの範疇を超えてるぞ…)ブルッ

男「………」



―――暗い、暗く輝く光。



男(あれ? なんだこれ?)フラフラ

友「どうした? 男」

男(とど…き、そう…)スッ

友(大丈夫か!? これやばいんじゃね!)アセアセ

男「これ…は………っ!?」ズンッ

男(何かが入り込んできた…。これは)



―――    。    。    。    。



男「せ…かい?」

友「どうした!? どうしたんだっ!」ユサユサ

男「……これは…えっと…何かに似てる?」

男(なんだこれ…分からない…えっと…あ、これは“えいっ”だ…)


友「男…信号!」


男「………えい」


信号【赤】→【青】


友「なんだこれ…」

友(信号が急に変わった!?)

124: 2012/10/02(火) 04:37:09.70
実家。

男「………」ガチャ

母「おかえりー…って眠そうね」

男「あー、うん」ボーッ

妹「………きも」

母「こらっ、お兄ちゃんに向かってそんなこと言わないの!」

男(……なんだこれ…桃色の光?)スッ

母「ん? どうしたの?」

男「……家族、愛?」ボソッ

母「?」キョトン

妹「変なことばっかいうな!! このいじめられっ子!!」ゲシッ

男「つっ……こいつっ!」ガシッ

男(光でも喰らえ!!)

妹「……なにこれ…」ガクッ

母「どうしたの妹!?」

妹「…ご、ごめんなひゃいおにいひゃん…」グスグス

母「!!?」ビクッ

男「………きも」テクテクテク

妹「やんっ、お兄様待ってくださいまし~」タタタッ

母「今はやりのツングース? ツンドラ? ってやつだったのかしら」マァマァ



125: 2012/10/02(火) 04:39:30.62
自室。

男「………」ボーッ

男(これ…世界)スッ

男「…………これは、知識?」ポチッ

パソコン「起動音」

男「………」カチャカチャ

男(知識が注ぎ込まれていく…)




男「そうか…これは、“魔法”か」







126: 2012/10/02(火) 04:42:49.61
翌日。

クラスメイトA「や、やめてっ!」ヒィ…

男「大丈夫…。その感情も苦しみも全部…“なかったこと”になるから」ニコッ

クラスメイトA「……やめ…

??「お前らか!!」ボカッ

男(騒ぐな…頭に響く…)スッ




??「あ、おーいおと―――」




男「うるさいのは全て“消え去れ”」





友「…あ、え、なん





男「友!!!??」ゾクリ

127: 2012/10/02(火) 04:54:23.47
男「あ、ああ…ああ、あぁあああぁぁああぁああああ!!!!!」ガクッ

男(友が、友が…消えてしまった!!)ガクガク

クラスメイトD「ひ、人頃し…」ヒィ

男「……きえ、され」スッ

クラスメイトD「あ、ああ、やめ

男「友、友、友ぉおおおお!!!」

黒髪「なんだよお前…」

男(え…、なんで黒髪さんがここで出てくるの? 今まで一度もイジメに参加しなかったのに…)

男「く、黒髪さん、まきこ「ほんとおめーうぜーな!!」

男「………っ!?」ビクッ

黒髪「お前、ほんとむかつくな!! いつもいつも生意気な顔しやがって」ガッ

男「な、んで?」

黒髪「…あ? ああ、そっか、お前まだ分かってね―の?」

男「何を…?」




黒髪「私がお前を苛めるよう指示出してたんだよバーカ!」




男「………え?」ドクン

男(黒い、どす黒い…。これは、“絶望”?)




男「あぁ、あぁあぁあぁぁっぁぁああああああああ!!!!!」

黒髪「………っ」ビクッ

男(これ以上人間でなくなることを警戒してたけど…)

男「皆にとって俺はとっくに人間じゃなかったんだな…」スッ

男『絶望の力』シューンッ…

男(この女の絶望…記憶を残しながら、性格は友に…そして俺の幼馴染に…)パァァアアァァア!!

黒髪「な、何これ? 私の中に、んっ、しらな…い、何かが…はぁはぁ」ドサッ


132: 2012/10/03(水) 14:49:24.51
トイレ。

幼馴染(元黒髪)「………」テクテクテク

生徒「ちょ! ここ男子トイレ!?」

生徒2「って、○組の黒髪さんじゃん!」

生徒「ちょ、って、え? 何して―――」

幼馴染「……ふぐっ、えっく」ポロポロ

生徒2(黒髪さんが泣きながらトイレの床舐めてるーー!?)

二人「「ちょ、やめろよっ!」」ガッ

幼馴染「ふぁなふぃてー! はなひてよーーー!!」ブンブン

二人「なんて力だ…」

幼馴染「ふぁめ、ふぁめふぇよー!」

周囲の生徒「………」ザワザワ

生徒「なぁ、これって」グイグイ

生徒2「俺達がやってるみたいだよな…」

教師「お前ら何やってんだぁ!!!」ダッ

二人「「ひぃ~~~!!」」



男「………」

133: 2012/10/03(水) 15:09:55.38
――現在。

男(つじつま合わせのために全てを変えた…。結果、俺の周りには“本物”はいなくなった…)

マモノ「僕にもう少し知識があれば…、きっと君の大切なあの子は帰ってくるかと思うんです」

男「だけど…、俺の知識がなくなって……また“同じ場所”に戻ったら…」ガクガク

マモノ「大丈夫ですよご主人。僕がついてます」ニコッ

男「……眼鏡のことも頼むぞ」

マモノ「もちろんです」

男「………知の魔力全譲渡」

男(………俺は、なんでこんなにも眼鏡の…)

マモノ「それはですね、あなたが過去に削られた“他人を想う心”を回復したからですよ




    “私”がね」ニマァ




男「………あれ? 俺なんでここに」

マモノ「やはり思った通りになった♪」

マモノ(あなたが僕を作る時に一緒に捨てた“自己愛”。私はあなたを心から愛しているのですよ)

男「……教室戻ろう」テクテク

マモノ「これからよろしくね、男♪」

男(………魔法使いに嘘は通じねーよ。マモノ)



134: 2012/10/03(水) 15:23:58.32
教室。

男「残ったのは魔力を数種類まで見極められる知識と、ほんの少しの魔力…」

教師「………皆、眼鏡はなんとか助かったみたいだ」

クラスメイト「………」ホッ

男(しかし、マモノの目的が分からん…)

男(知の魔力を譲渡する際、俺自身の魔力も少しばかり入れてやった。こうすればあいつの居場所はすぐに分かる…)

男(友は…本当に帰ってくるのか。それが問題だな…)



教師「ああ、それとな、タイミングはすごく悪いのだが午後から転校生が来るんだ。入れ」

??「はい」

男「………マジかよ」

友「友です。男みたいってよく言われますが、女です。よろしくお願いします」ペコッ

男(早すぎね―か…)




こうして、何一つ真実のない物語が幕を開いた。





プロローグ――閉。

135: 2012/10/03(水) 15:28:58.98
現在男が認識できる魔力。

・知の魔力
・拒絶の魔力
・説得の魔力
・嘘の魔力

※ただし、知の魔力は常識が高すぎるため手持ちのみ。



登場人物。(メインのみ)

・男
・友
・女
・幼馴染
・軽女
・イケメン
・ビッチ

というわけで、仕事行ってきます!

139: 2012/10/03(水) 18:44:44.76





 ―――第一章『魔法利用論』




 開幕。

140: 2012/10/03(水) 18:51:58.56
男(嘘、説得、拒絶。この三つが意味するところは…)

店員「ありあとっしたー」ペコリ

男「……詐欺」トコトコトコ

軽女「あ、男じゃん。やほー……ってタバコくさっ!」

男「え、まじ?」

男(しまった、拒絶魔法使うの忘れてた…)

軽女「まぁ、そんなヤンキーな男も好きだけどな」ニコッ

男「俺はもっと可愛い顔の女が好みだけどな」ニコッ

軽女「むぅ…、自覚はしとるが、傷つくぞい」ポスッ

男(それ以外はめっちゃ可愛いとは言ってやらん)

軽女「で、タバコを吸わない男が一体どこに行ったらそんな臭くなるのかな?」

男「………」ウーム

軽女(やっぱ正義の味方で助けを呼ぶ弱者のためにヤ○ザの事務所とかへ乗り込んだのかなっ)キャーキャー

※軽女は前回路地裏で助けられて以来、男のことを正義のヒーローだと勘違いしています。

男「………パチンコ屋?」

軽女「またまたー」バシンッ

男(嘘をつかないこともまた嘘であったりする…)ウンウン

軽女「そういえばさぁ、転校生の友さんって男君のことばっか見てるよねー」

男「えっ!?」ドキッ

軽女「あ、その反応、なんかあるでしょ」ズィ

男「…あ、いや…」

141: 2012/10/03(水) 18:55:45.45
男『説得の魔法』

男「いや、実は友さんとは昔家が近かったんだ。だから実は知り合いなんだよ」

軽女「へー、そうなんだっ」ニコッ

男(説得の魔法はつじつまが合わない場合効きにくい場合がある。だけど、本人の心が納得する分、嘘の魔法よりも本人の心に負担がない)

男「こっち使うあたり、俺に気遣いが戻ってきたことを実感するなぁ…」ボソッ

男(それはつまり、俺が使える三つの魔法を使えば使うほど、罪の意識にさいなまれるということ…)

軽女「も、もしかして二人は…お、幼馴染というやつかえ」ビクビク

男「…いや、幼馴染はほかにいるよ」ニコッ

軽女「」ガーン

男(“偽物”がね…)

142: 2012/10/03(水) 19:01:59.00
ちょっと高めの料理店。

軽女「ちょ、ちょっとー! こんな店大丈夫!?」ドギマギ

男「ああ、お金? 大丈夫だよ。心配しないで」

軽女「それもそうだけど、私みたいな一般ピーポーが入っていいの!?」

男「俺も庶民代表だけど、ここは知り合いが経営してるから大丈夫」ニコッ

受付「いらっしゃいませ」

男『嘘の魔法』

男「今日、予約してた男だけど」

受付「………はい、ご案内します」ニコッ

男(さすが高級レストラン。嘘が全員に浸透するまで少しタイムラグがあったな)

軽女「ほんといいの!? ねぇ、男惚れるよ? 惚れちゃうよ?」アタフタ

男「それはあんま意味ないと思うけど、いつも世話になってる礼だよ」ニコッ

軽女「………ばかっ」カァ///

男(それに俺の周りで数少ない“人格を変えていない”知り合いだしな)

男「いや、そんなこともないのか…」ボソッ

受付「こちらでございます」

軽女「うわ…個室かよ。しかも超たけー…」

男「最上階の個室なんてめったに来られないからね」ニコッ

143: 2012/10/03(水) 19:10:50.45
男「コースとか俺もよく分かんないから適当に持ってきてもらうわ」

軽女「その方が助かる」ウンウン

男「まぁ、それじゃとりあえず」

軽女「これお酒じゃないよな」ドキドキ

男「大丈夫だって」アハハ

二人「「かんぱーい」」

男「……食べながら聞いてほしんだけどさ」

軽女「うわこれうっま」モグモグ

男「……いや、やっぱり食べる前に聞いて」

軽女「てへへ、ごめんごめん。こんなうまい料理初めてだから」エヘヘ///

男「あのさ、……友のことなんだけど」

軽女「……ん?」

男「もしよかったらさ、仲よくしてあげてほしいんだ」

軽女「……もしかして、ここに呼んだのって…」

男「いや、それは俺が単純に軽女を口説いてるだけ」

軽女「く、くどっ」カァ///

男「友はさ、正義感が強すぎるんだ」

男(マモノが何を思ったか、あの頃の記憶を残していた…)

男「だから、俺が昔いじめられていた時、助けられなかった罪悪感でいっぱいなんだ」

軽女「えっ!? 男って昔いじめられてたのか!?」

男「その話はまた今度な。で、友はそのことが原因で俺の周りの人間を品定めしている」

軽女「ああ、それで私のこともたまに見てくるんだ…」

男「でも、このままじゃあいつが孤立してしまう…」

軽女「そこで私の出番ってわけか」

男「俺の友達の中でお前を一番信用しているからな」

軽女「またまたー」テヘヘ///

男「俺は真剣だ」キッ

軽女「………うん、ありがと」コクリ

男「……じゃあ、食べよっか」ニコッ

軽女「………」

男「うわっ、これうまそっ!」

軽女(……そんなこと言われたら…好きになっちゃうじゃん)ボソッ

男「うんめー!」バクバク

軽女「私の分も残せー!!」ガバッ

148: 2012/10/03(水) 19:59:44.79
――実家。

男「ただいまぁ」ガチャ

妹「お兄様お帰りなさいませー」タタタタッ

男「妹よ、今帰ったぞ!!」ギュッ

男(嘘の魔法で美少女の顔に変化した妹。その時見ていたアニメがコード○アスだったため、まるでナ○リー(黒髪)そのもの!)

妹「お兄様、私、今日も告白されてしまいました」

男「そうだろうな」ウン

男(学校へ行って、全ての生徒、教師および生徒の保護者や関係者すべてに嘘と説得の魔法をかけていくのは流石に苦労したが、そのかいあってナナ…、妹はすっかり学校のアイドルとなった)ウンウン

妹「でもでも、私はお兄様が一番なのでお断りしました」ニコッ

男「………っ」クッ…

男(今、孤高の反逆者の気持ちが理解できた…至高は妹という訳か)

母「あらあらまぁまぁ、ほんと仲いいんだから」

男(そのついでに母も若返らせてみたのだが、森三中を足して混ぜたような怪物ができあがってしまった)

男「ははは、今日はご飯食べてきたから」ニコッ

妹「たまには私と一緒に食べてください」シュン…

男「ああ、近いうちにレストランへ連れて行ってやる」ナデナデ

妹「お兄様スキー♪」ギュッ

母「あらあらまぁまぁ」

男(母様、いずれあなたもちゃんと美人ママにしてあげますから。…なぜか美人にする魔法が拒絶されるから当分は無理だけど…)

149: 2012/10/03(水) 20:04:43.53
自室。

男「…友もいて、いじめられることもなく、魔力に侵された人間や化物と戦わなくても良い生活…」

男(だけど、このぽっかりと穴が空いたような感覚はなんだ…?)

男「マモノ…今、何をしているんだ?」

男(あいつは俺の願いをすべてかなえた。…だけど、知の魔力を還すことなく消えてしまった)

男「自分自身に嘘を吐くなんて、あいつは…」

男(いや、人間は“自分に嘘をつける”唯一の生き物か…)

幼「おっとこー♪ いるー?」

男「………いるよ」

男(駄目だ。黒髪さんをこのまま放ってちゃだめだ。元に……)ゴクリ…

153: 2012/10/03(水) 21:12:19.26
男「今日は何キャラだよ」

幼「今日は天真爛漫な幼馴染キャラだよ♪」ギュッ

男(うわ、この後のこと考えると超やりにくい…)

幼「なんか男が思い詰めてるから、癒しをあげようと思って」ニコッ

男「………っ」///

男(黒髪さんって中学でもトップクラスの可愛さだったんだよなぁ…)ハァ…

男「なぁ、幼はさ。たとえば…、この世界が偽物だったらどうする?」

幼「バイオの映画とかマトリックスみたいな感じ?」

男「そうそう、誰もが違う役割を演じていて、それに誰も気づかなかったら」

幼「んー、別に今が現実と認識してるなら、それでいいかなー」

男「なんで?」

幼「だって、考えるだけ損じゃない? 時間を無駄にして」

男「まぁ、そりゃそうだけど…」

幼「それに、現実が幸せなら私は偽物でもそれが現実かな…」

男(なんだよそれ…。そんな答えが聞きたいんじゃなかったのに…)

男「やっぱやめ――」

―――どくん。

男「………!?」

男(待て待て待て、今何をやめようとしたんだ!? お前は黒髪さんのことを本当に考えて、こうするって決めたんだろ!?)

幼「男?」キョトン

154: 2012/10/03(水) 21:17:33.10
男「………」クッ

男『拒絶の魔法』

黒髪「…………???」キョトン

男(黒髪さんに関わっていた全ての魔法を解除した)

黒髪「…あなた、だれ?」

男『嘘の魔法』

男(黒髪さんにだけ以前の俺の顔に見えるようにする…)

黒髪「…は? あんた…、男!?」ビクッ

男「………っ」

黒髪「はぁ? 何してんだよ! てか、ここあんたのベッド!? うわ、最悪!!」バッ

男『拒絶の魔法』

黒髪「こんなとこ一秒だっていたくねー……って扉が!?」ガチャガチャ

男(ここ数年、偽りとはいえ彼女と過ごした日々は、俺にとって大切だったんだな)ツーッ

黒髪「何泣いてんだよ! 気持ちわりーな!! 誰か―!!! 助けてぇええ!!」ドンドンドン

男「……無駄だよ」グスッ

黒髪「てめぇ…このっ!」ブンッ

男『説得の魔法』

男「座って」

黒髪「……え?」ドサッ

男「………」

155: 2012/10/03(水) 21:21:07.07
黒髪「やだ、なにこれ…怖い、いや、近寄るな…」

男「……落ち着いて聞いて」

黒髪「わかった、わかったから。この動けないのどうにかしてよぉ」グスッ

男(俺をどん底に突き落とした人間は、たったこんだけのことで泣き許しを請うやつだったのか…)クッ

男「その前に聞いてほしい。もちろん、君に手出しはしない」

黒髪「わかった。わかったから早く話して」ブンブン

男「……まず、何で俺をいじめたんだ?」




黒髪「は? そんなんあんたがキモいからに決まってんじゃん」





男「………」グググッ

男(抑えろ、抑えろ俺…)

156: 2012/10/03(水) 21:26:23.81
黒髪「ち、ちがっ、間違えた、えっと…」アワテアワテ

男「いや、いいよ。怒らないし」

黒髪「いや、本当に違うの! 私たちだって、あんだけ長いこと苛めてたら、もう理由なんて忘れちゃうわよ!!」

男「本当の…理由?」



黒髪「うん。……あんた、昔“幼馴染”ちゃんを振ったでしょ?」



男「………は?」

男(誰だ…それ)

黒髪「幼馴染ちゃんがさ、すごい怒ってさ。私たちに命令したんだよね。あんたのこと“いじめろ”って」

男「………」

黒髪「で、いじめてる間に幼馴染ちゃんが“転校”しちゃったんだけど、あんたへのいじめは常習化しちゃってて、それで…」

男「………」

黒髪「…私、本当は全部覚えてるの」

男「……!? なに…を?」

黒髪「あんたが私をどうにかして、幼馴染みたいな関係をしてたの」

男(は? え? ど、どういうことだ!?)ガクガク

157: 2012/10/03(水) 21:28:35.07
黒髪「最初は何の理由もなくあんたをいじめた神様からの罰だと思って受け入れようとした。…でも、あんたと過ごしているうちに、変わったの」

男「変わった?」

黒髪「あんたはいつも一人だった。いじめがなくなっても、家族が優しくしても、友達ができても」

男「……」

黒髪「私は……そんなあんたを支えたいと思った。…その気持ちは本物」

男「黒髪……さん」

162: 2012/10/04(木) 01:57:28.42
黒髪「ごめん、ほんとごめんなふぁい…」ポロポロ

男(黒髪さんは嘘は言っていない。……だが、だとしたら幼馴染は誰だ?)

黒髪「……えっぐ、ぐす…」

男「もう、いいよ」ポンポン

黒髪「……おとこぉー」ギュッ

男「おわっ! ちょ、ちょっと黒髪さん!?」

黒髪「ずっと幼馴染の代わりをしてて、寂しかったよぉ!」フェェン

男「そっか…」ナデナデ

黒髪「男のこと…少しだけ好きに…」ボッ///

男「え?」

黒髪「あわわわっ! ちょ、今のなし! なし!!」ギュゥッ///

男「で、でも、黒髪さんが好きになったのは、こっちの顔の男でしょ?」サッ

黒髪「……まぁ、そっちも好きなのは認めるけど」ギュゥゥゥッ

男「……も?」

黒髪「…………あんたが思ってるほど、あんたの顔って悪くないよ」///

男「………っ」カァ///

黒髪「あ、照れたぁ」ニコッ


163: 2012/10/04(木) 02:05:06.67
男「……でも、もしそれが本当なら、俺のせいで皆消えて……」

黒髪「男、それは違うわ。あなたは当然のことをしたのよ」

男「……黒髪さん」

黒髪「私だって本当は消されても文句は言えない…。でも…、私、今は男と一緒にいたい…」ギュッ

男「大丈夫…。大丈夫だから」ナデナデ

黒髪「男、ねぇ…」スッ

男(わわわっ、顔ちかっ、近い!?)カァ///



黒髪「キスし―――」シュン




男「え…」スカッ

??「ほんとムカつく」

男「お、お前は?」

??「私? 私は――幼馴染よ」ニッ

男(ああ、そうだ。幼馴染はこんな顔をしていた)

幼馴染「会いたかったよ、男」バッ

男「わわっ!?」

幼馴染「寂しかったんだからぁ!」ギュッ

男(ああ、懐かしい感触、匂い…。なんでこんなに、落ち着くんだろう…)

幼馴染「ねぇ男。さっきのは“誰”」

男「さっきの? “誰かいたっけ?”」

幼馴染「ううん、なんでもない」ギュッ

男「………?」

男(この鼻に残った甘い匂い…幼馴染のじゃない…誰のだ?)

幼馴染「男、好きっ♪」ギュゥゥゥ…

男「…まぁ、いいか」ナデナデ

164: 2012/10/04(木) 02:12:22.67
翌日。

妹「お姉さま、お兄様は私のお兄様なんですからねっ!」モグモグ

幼「残念だけど、男は私と将来を誓い合ったんだからねー」モグモグ

男「………」モグモグ

母「あらあら、毎日毎日お兄ちゃんはモテモテねぇ」

男(幼馴染の両親が氏んでから、俺の家に幼馴染は住んでいる)モグモグ

幼「これもらい」ヒョイ

妹「あっ、ちょっとお姉さま!?」

男(幼馴染は妹と同じ部屋だけど、たまに起きたら俺の布団で寝てることがある)

妹「じゃあ、お兄様の分をいただきます」ヒョイ

幼「あ、それずるいっ!」ヒョイ

男「………」モグモグ

妹「ちょっとお姉さま! 取り過ぎたらお兄様が餓氏してしまいますわっ!」

幼「大丈夫よ! もしそうなったら私の母乳をあげるからっ!」

男「……ぶっ」

妹「まぁ! 朝からお下品なっ!!」

幼「あら、母乳が下品なんて、まだまだお子ちゃまなのね妹は」

妹「むかつきますわー!」プンスカ

男(毎日のように続く騒がしい朝食)

母「………」ニコニコ

男(なんだろう…違和感しかない)モグモグ

幼「いつまで食べてんのよ! 行くわよ! 男!」グイッ

男「あ、ああ…」

165: 2012/10/04(木) 02:14:18.90
駅。

幼「それじゃ、私はここで」

男「ああ、気をつけてな」

幼「痴漢されたら助けてね」ニコッ

男「そんな短いスカートをはいてるのが悪い」

幼「べーっだ!」

男「んじゃ」

駅員『ドア閉まりまーす』プシュー

男「………」ハァ

男(なんか疲れる…)

166: 2012/10/04(木) 02:18:25.43
学校。

軽女「おっとこー! おはよー!!」ドサッ

男「おっと、おはよう」ヨイショ

軽女「男の背中あったけー」ギュッ

男(こいつといたら落ち着くなぁ)

友「……お、男っ!」

男「ん、友、どうした?」

友「お、おはよう」カァ///

男「あ、ああ。おはよう」

友「それじゃなっ!」タタタッ

軽女「友さんって可愛い顔してる上にあれは卑怯だわー」

男「ん?」

軽女「分からんでいい!」ギュゥッ

男「だから、お前のない胸と中の下の顔じゃトキめかないっての」

軽女「なにげにランク下がってない!?」ガーン

男「うそうそ、冗談だよ。良いケツしてるしな」ポンポン

軽女「……っ!?」カァ///

男「かわいい奴」ボソッ

167: 2012/10/04(木) 02:53:31.80
教室。

男「ふいー、疲れたー」ドサッ

軽女「おいおいー、もう慣れっこだろー」

男「まぁね」

女「おはよう」シレッ

男「あ、ああ、おはよう」

軽女「あ、ねぇねぇ、女っちー。宿題みせてくれー」

女「はいはい」

男(   が俺の知識を奪ったあの日以来、女さんは俺から興味がなくなったようで、あまり話しかけてこなくなった)

男「あれ?   って誰だっけ?」

イケメン「皆おっはよー♪」ニコニコ

後輩「おはよーございまーす」ニコッ

男「うーい」ヒラヒラ

軽女「わが校ベストカップルさんおはよー」

後輩「いやだ先輩ったらー」キャッキャ///

イケメン「そうだそうだー、わが校ベストカップルって言ったら、眼鏡と委員長だろ?」

男「……はっ!?」ガバッ

後輩「どうしたんですか? 男先輩?」

男「い、いや、なんでもない…」

男(な、なんで委員長が眼鏡に? いや、嫉妬している訳じゃないが、あの巨乳は…)ブツブツ

女「さいてー」

男「……え?」ビクッ

168: 2012/10/04(木) 02:56:53.73
女「………」

軽女「私と男なんてどう? どう!?」フンッフンッ

後輩「え、えっと…」

イケメン「少なくとも、その鼻息の荒さで減点かな…」アハハ

軽女「がーん」

男(女さん、今俺の言葉に反応した? 心の中でつぶやいたのに?)

後輩「男先輩、さっきから反応鈍いですよー」ギュッ

男(おおふ、後輩ちゃんもおっOいでけーんだよな)///

女「しねっ」ボソッ

男「………!?」

男(間違いない…女さんは俺の心を読んでいる!!)

女「………」ツーン

男(……女さんの裸)

女「………っ」ピクッ

169: 2012/10/04(木) 02:59:26.95
――以下、男の妄想。

男『女、俺は世界がどうなろうとお前を愛し続ける』

女『男…でも、私、あなたにできることなん『バカ野郎!!』ギュッ

女『おとこぉ』ポロポロ

男『お前がいるだけで、それだけで良いんだろうが! それだけで世界が輝くんだろうが!』ギュゥッ

女『おとこ、おとこ、おとこぉ!!』チュッチュ

??『へへっ、まちなっ!』サッ

男『お前はっ! KABAちゃん!?』

KABAちゃん『ちょっとやだ、なんでも正体ばらすのよえOちー!』クネクネ

170: 2012/10/04(木) 03:00:46.83
女「……ぶふっ!」

男「!? 間違いない! ちょっと来い!!」グイ

女「しまっ」

軽女「え!?」

後輩「ちょっと先輩!?」

イケメン「おお、強引」

男「うるさい!」

男『説得の魔法』

男「早く来い!!」ダダダッ

女「………」

171: 2012/10/04(木) 03:05:55.69
屋上。

男「どういうことだよ!」

女「……何がよ」

男「その力だよ!」

女「ああ、これ? なんか知らないけど、急に聞こえるようになったのよ。みんなの声がね」

男(心を読むなんて、今の俺じゃ逆立ちしたって無理だぞ!?)

女「でしょうね。なぜなら、




私のほうが知のパワーが高いからね」





男「………なっ」

女「なぜそれをって顔ね」

男「………」コクン

女「だからあの時言ったじゃない。全部教えてあげるって」

男「それに魔法のことも含まれるのか?」

女「いえ、それは後のお話よ。今からするのは私の過去の話」

男「………」

女「ふふっ、そう硬くならないで、私の過去なんてあなたのに比べたらとても、…そうとてもバカバカしいわ」

男「なら…」

女「なら気にするな? いいえ、それだけは無理よ。なぜなら、




この力を得るためには、“絶望”見なければいけないんでしょう?」





男(そうだ…。そして、女さんはそれを見る資格の持ち主)

女「そう、私は絶望の中で育ち、絶望の中で生きた」

172: 2012/10/04(木) 03:13:43.95
過去。

女「……ぐすっ、えっく」トボトボ

母「どうしたの!?」ガバッ

女「クラスの皆が私のことを汚れた女だって苛めるー」

母「…なんでそんなこと言うの?」

女「……分かんない。犯罪者の娘は犯罪者だって…」エグエグ

母(父の名前はまだ報道されてないはず…)

母「まさか…あいつ…」ググッ

女「おかあ、さん?」

母「大丈夫。大丈夫だからね」ギュゥ…

女「お母さん…」

母(唯一の目撃者の田中…あいつが言いふらしたんだ…)

173: 2012/10/04(木) 03:15:33.06
田中「わ、私じゃないわっ!」ヒィ

母「あんたが、あんたのせいで!」ガスッ

田中「や、やめっ…ぎゃぁ!!」ドサッ

母「あはは、ははは、はははははははっ!」

女「おかあ・・・さん」

母「大丈夫、大丈夫だからね」ニコッ

女「うん…」

174: 2012/10/04(木) 03:20:26.47
警察官「―――○○、逮捕する」ガチャ

母「なんでよっ! なんで私が!!」

女「おかーさん! おかーさんっ!!」ジタバタ

母「帰ってくるからっ! 絶対に!!」

警察官「早く来い!!」グイッ

女「あ、ああ…あああああ」ガクガク

義兄「……ふいー。これで厄介者が消えた」ニコニコ

女「お兄ちゃん?」

義兄「俺はもう成人になった。稼ぎもある。…お前を養えるんだ」ニマァ

女「お兄ちゃん、こ、怖いよ…」

義兄「お前はそれ相応の対価を支払わなければならない」スッ

女「や、やめっ」バッ

義兄「……そうか、分かった」

女「……ほっ」

義兄「………“好きに生きれば”?」

女「………え?」

175: 2012/10/04(木) 03:24:45.87
女「追い出された…」トボトボ

女(しばらく漫画喫茶に泊まれるお金はあるけど。…小学生の私が捕まるのも遅くない)

女「どうすれば。どうすればいいの?」

おじさん「どうしたんだい?」

女「家…追い出されちゃった」

おじさん「そっか、じゃあ、行こうか」ニコッ

女「……うん」

女(やさしそう…)

176: 2012/10/04(木) 03:28:21.79
暗闇。

女「………」ボーッ

女(あれから何日経っただろう…)

女「………」

女(おじさんは一日に“何時間”かしか外に出してくれない。それ以外はずっとこの押入れの中にいる)

女「………」

女(おじさんは乱暴しないけど、私の裸を隅々まで写真で撮る。私はそれが嫌だ。嫌だけど…逆らえない)

??「――――逮捕する!!」

おじさん「ひっ、や、やめっ!」

女「おじさん?」

??「ん? 誰かいるのか?」トントン

女「………ひっ」ジッ

女(見つかったら、乱暴される…怖い!)

??「………気のせいか」

女「………ほっ」

おじさん「わ、私は悪くない!!」

女「…いっちゃった」スッ

177: 2012/10/04(木) 03:32:41.89
女「………帰ってきちゃった」トボトボ

母「………おんな、ちゃん?」

女「……っ!? おかあさん」ウルウル

父「女!?」

女「おとーさん…」

義兄「………」ポリポリ

女「おにいちゃん…」

三人「「ごめんな?」」

女「え?」

母「私達これから氏にに行くの」

父「すまない。本当にすまない」

義兄「早くいこーよー」

母「……女はどうする? 行く?」

女「いや、いやぁ」ポロポロ

父「………二人とも、行こう」

母「………」スッ

女「あ、ああ、あぁああぁぁああ!!」

義兄「………“おもんねー人生だったなぁ”」

女「おもしろく、ない?」

女(それで、氏ぬの?)


178: 2012/10/04(木) 03:38:14.92
現在。

女「そして、私は全てを失った」

男「………」

女「絶望、その時はそれしかなかったわ」

男(俺は…自分が削られることで絶望を知った。…彼女は彼女の世界が削られることで絶望を知った)

男「それで、“視えた”のか?」

女「いいえ、今でも“見えない”わ」

男「……え?」

女「私は、他人を幸せにすることで“それ”を得るの」

男「そんな…ことが」

女「軽女さんはあなたを好きになる幸せ」

男「……は?」

女「イケメン君は後輩ちゃんを愛する幸せ」

女「眼鏡君と委員長ちゃんは愛し合う幸せ」

男「な、何を言って…」



女「友さんは、あなたにとっての幸せ」



男「お、お前が…」




女「そう、あの子は私の“作品”よ」ニコッ




男「………」ガクッ

179: 2012/10/04(木) 03:45:27.84
女「何ショック受けてるの? あなたにも幸せが訪れたのよ? あなたが“消した”友さんが戻ってきたのよ! しかも、あなたが当時性別の壁に悩んでいた恋患いまで解消してあげた! さぁ! さっさと幸せになりなさいよ!」

男(何を…そんな必氏に…)

女「あなたがそんな不幸せそうじゃ、私が…、私が…」ズズズッ

男(これは…、拒絶の魔力?)

女「わた、わたっ、わたしっ、だれ、だれっ、よりよりも、ふこ、ふこう…」

男「   !?」

男(くそっ!? 分かるのに言葉にできない! 言葉にできないから、具体的にどうすればいいか分からない!!)

女「頃す、不幸せ、消す、不幸」スッ

男「………!?」

男『拒絶の魔法!』ブゥンッ

女『ラブパワー』ドッ

男「ぐぅぅぅううぅうう!!」ズザザザザッ

男(なんて威力なんだ! 今できる最大の防御でこれかよ…)ボロッ

女『ラブ・ラブパワー』ドゴォ!!

男『嘘の魔法!』

女「移動した」バッ

男「それも嘘だよ!」バキッ

女「くぅ」ドサッ

男(やれるのか?)

180: 2012/10/04(木) 03:51:00.72
『○○の魔法で引きはがさなくちゃ』

男「!? なんだ今の…」

男(何の魔法だ? でも、確実にある。彼女を助ける方法が…)

女『ラブ・フォーエバー!!』チュゥゥゥンッ!!

男(レーザー光線!?)バッ

男「くっ、魔力が尽きる…」ハァハァ

男(知の魔力さえあれば…)

女『ラブラブラブ!!』ジュゥゥゥンッ!!



後輩「あれ? 先輩?」



男「………!?」

女「………―――」スゥ…

男(消えた!?)

後輩「せーんぱい♪ 何してるんですかぁ?」

男「い、いや…何も」

男(一刻も早く常識を減らして知の魔力を見つけなくては…)

181: 2012/10/04(木) 03:55:18.28
教室。

男「みんなっ! 聞いてくれ!」バッ

クラスメイト「なんだなんだ?」ザワザワ

男「皆、俺は……おっOい好きだっ!」

クラスメイト「………は?」

男(この反応…当然なんだけど傷つく…)

軽女「私は知ってけどなぁ」

男「さらにっ! 俺はこのクラスの女子全員と一度は妄想でHしたことがある!!」ドンッ

クラスメイト「………」ザワザワ

男(常識以上に大事なものを失っていく…)ポロポロ

イケメン「男…それは皆同じだぞ」ニコッ

男「………!?」

クラスメイト「そうだぞ。うちのクラスは美人揃いだからな」ニコッ

軽女「わたしだったらいつだっておかずにしていーぞー」

男「……みん、な…」ガクッ

男(それじゃあ、常識が減らないじゃないか…)


182: 2012/10/04(木) 03:58:46.98
男(いや、そもそも、常識が減るなんてこと基本的にはありえない。この道はこれ以上進んでも無駄だっ!)

軽女「おーい、男―! どこ行くんだぁ!!」

男「ちょっと常識減らしてくるー!!」

軽女「なぁに言ってんだ? あいつ」ヤレヤレ



男「………ハァハァ」

妹「お兄様!?」ガララッ


後輩のクラス。


男「……はぁはぁ、妹、聞いてくれ」

妹「はい、お兄様の言葉はなんでも聞きます」

男「妹…、




キスしよう」ハァハァ





妹「え、ええぇええええ!?」カァ////

190: 2012/10/05(金) 01:28:56.84
男「頼む…妹」

妹「あわ、あわわわっ」///

男(しかし、その程度で知の魔力を認識できるようになるのか!?)

後輩「………」ムスッ

生徒「「………」」ザワザワ

男「やっぱり、もっと普通じゃなくならないと…」

男(だけど…、そこまでしてこの世界を守る必要があるのか…?)

妹「わ、私はお兄様となら…」モジモジ

男(逆に偽りだらけのこの世界を壊すことに何を躊躇う必要があるんだ…)

男「……だめだ、一般的な答えしか出てこない」フラフラ

妹「………お兄様…」オロオロ

191: 2012/10/05(金) 01:35:10.59
校舎裏。

男「どうする…」フラフラ

男(女を放っておけば、偽りの世界がより広がる)

男「だけど、女を止めるためには俺自身が真実から離れなくちゃならない…」

男(でもその真実も今や“本当に真実”なのか分からない…)

男「くそ…、分からない…」

男「いっそ……逃げるか?」

192: 2012/10/05(金) 01:40:13.62
男「そうだよ…何もこんな場所に固執しなくても魔法があれば…」

イケメン「……あ、男っちいたー!」タタタッ

男「イケメン?」

イケメン「バカ野郎!」バキッ

男「くっ…」

男(なんだ急に!?)キッ

イケメン「心配したじゃねーかっ!!」

男「………っ!?」

軽女「……そう、よ。あんたいつもいつも唐突過ぎるのよ…」

男「二人とも……」

妹「お兄様――、大丈夫ですかーー!!」タタタッ

男「妹……」

男(ははっ、俺にもいるじゃないか…)

男「守るべき人…」




女「ふーん、で、どうするの?」





男「……女…」ギリッ

193: 2012/10/05(金) 01:46:44.52
女「まだ魔法を覚えて時間経ってないけど、お荷物抱えてるアンタよりは強いわよ。知の魔力も多いしね」

男(………ん?)

男「お前、…どうやって魔法覚えたんだ?」

女「……どうやってって、アンタが言ったんじゃない。絶望を知る者にしか魔力は見えないって」

男「………ああ、そういうことか」

女「…何分かったような口きいてるのよ」イライライラ

男「お前、それ魔法じゃねーだろ」

女「………はぁ!?」

イケメン「ついていけないにゃー」

軽女「ま、ほう?」

妹「お兄様負けないで」

男「知の魔力なんてなくても予想できるじゃねーか。





 お前、“自殺”しただろ」






女「………」

194: 2012/10/05(金) 02:02:03.58
イケメン「お、女っちが自殺?」

軽女「ははっ、な、何言ってんのよ男」

妹「………」

男「確かに突拍子もない話だけど、本人は真剣な顔になってるぞ」

女「なんで、そう、思うの」ユラユラ

男「お前が絶望を糧に魔力を得たなら、とっくの昔に得てるはずだ。だが、お前はそれの存在を知らなかった」

女「それと自殺を結びつけるなんて――」

男「いや、それ自体はカンだ。それだけの力が使えるんだしな」

女「氏んだからと言って魔法を使える訳…」

男「…使えるよ。しかもとんでもねー力を使える方法がある」

イケメン「自殺で?」

軽女「………」

妹「呪い…もしくは悪霊化ですね」

男「そうだ。自殺者の怨念は強い魔力を発生させる。ましてや、あれほど不幸な人間が世界を恨みながら氏んだら…」

女「やめろ」ブブッ――

軽女(女さんが“ぶれた”?)

男「ということは……誰に操られている?」

女「ちが、う」ユラユラ

男(どれだけ魔力を出しても氏体は氏体だ。それを操る人間は必ず存在する…)

女「………」ユラ…ユラッ

男「三人とも、下がってろ」

男(守ってやりたいけど、相手が怨念の塊ならその強さにおそらく耐えきれない…)



イケメン「おいおい、待てよ男っち」ポン

男「?」

軽女「私たちは話を理解できてるか分かんないけどさ」スッ

妹「お兄様の陰に隠れているなんて耐えきれません」

男「………お前ら、バカか…」

イケメン「あらっ」ズルッ

軽女「そこはもっと私たちの気持ちを考えてよ」

妹「そんなお兄様も好きです」


195: 2012/10/05(金) 02:08:13.92
男「三人とも……世界が壊れても平気か?」

イケメン「………んー、どっちでも」

軽女「私は男がいるなら別に大丈夫」

妹「あ、それ私の台詞です」プンプン

男「そっか……じゃあ、後悔すんなよ」

男『拒絶の魔法』ブゥン

三人「……えっ?」

イケメン「い、息が……」カヒューカヒュー

軽女「お、男?」ガクッ

妹「く、苦しい……」

男『嘘の魔法』

男(三人の身体に“魔力”で息ができるように嘘を組み込む)

イケメン「すぅ~~~~~~はぁーーーーーー」パァァ

男(イケメンは白い魔力)

軽女「ふぅ~~~~」ゴォッ

男(軽女は赤い焔の魔力)

妹「な、なんですかこれー!?」パァァァッ

男(妹は…黒い、どす黒い影の魔力)

男「さすが妹…」

女「………」

196: 2012/10/05(金) 02:15:13.27
男「さぁ、お前らの力を見せてみろ!」バッ

イケメン「えっ」

軽女「力って!?」

妹「きゃーきゃー!」ジタバタジタバタ

男「」

女「………」

男(どうすればいいんだ!?)

??「はははっ! 面白い、面白いね男っ!」パチパチパチ

男「………マモノ?」

男(マモノって誰だ?)

幼馴染「面白すぎて、つい出てきちゃったよ」

男「幼馴染……」

男(俺の記憶にない人物…)

幼「君達が愚かにも“真実の友情”を見出したような雰囲気を出すから、私がそれを証明する舞台を用意したげる」

男「何を言って…」

幼「街の北にある廃病院。そこで、頃し合おう」

男「要求を飲まなかったら?」

幼「こうするだけさ」サッ

友「………」グデ

黒髪「………」グッタリ

男「友っ! 黒髪さんっ!!」

幼「君にとって“真実の友と黒髪”かどうかは教えられないけど、助けたいなら北の廃病院で待ってるよ」スゥ…

男「まてっ!!」

女「待つかバカ」スゥ…


197: 2012/10/05(金) 02:16:53.62
幼『ああ、そうそう、君たちも鍛える時間が欲しいだろうから、一週間は待ってあげよう。でも、それ以上は…分かるね?』

男「……は、はは…」ガクッ

イケメン「男!」

軽女「男!!」

妹「お兄様!!」

男「………どうしたらいいんだ」

三人「………」

198: 2012/10/05(金) 02:22:00.92
今日はここまで。

本当に簡単に整理すると。

【マモノ】…行方しれず。


・幼馴染(?)…男はこいつを知らない。
  ↓←操作している?
 ・女…自頃したらしい。


・男…数種類の魔法しか使えなくなっていて、以前のような知識がない。常識はむしろ強くなっているため、知の魔力を見つけることもできない。

・軽女…男が好き。焔の魔力を所持。

・イケメン…憎めないバカ。白い魔力を所持。

・妹…兄大好き。影の魔力を所持。


【掴まっている人物】
・黒髪…元いじめっこ。しかし、それが本当か男にはよくわからなくなっている。
・友…男の親友。男を助けられなかったことを悔いている。


眠すぎです!

では!!

203: 2012/10/05(金) 18:07:34.39
なんだかもう、わけがわからないよ

205: 2012/10/05(金) 20:01:13.65
実家、自室。

男「今から、俺が分かりやすく経緯を説明するけど、分かりにくくても一度は最後まで聞いてほしい」

三人「はーい」

男「まず、俺は苛められていた」

軽女「うっそだー」

妹「………」

イケメン「………」

軽女「え、まじ?」

男「うん。当時はこんな顔で気持ち悪がられていたのもあると思う」サッ

三人「」

男(うわ…引いてる。わかってたけどショック…)

軽女「え、どこにいじめられる要素があるの?」キョトン

男「え?」

イケメン「普通?」

妹「どちらのお兄様でも好きですわー」

男(……ぎゃ、逆に困る…)///

軽女「あー、真っ赤になったぁ!」キャッキャ

イケメン「表情が豊かな分、同性としてはこっちの方が親しみがわくね」ニコッ

男「………」

206: 2012/10/06(土) 01:41:19.20
男「まぁ、とにかく当時は苛められていたんだ」サッ

軽女「あ、戻した」

男「……便所の床も舐めたし、全裸で校庭に放り出されたし、修学旅行先では財布をとられて街へ置いてかれた」

イケメン「………」グググッ

妹「………ぐすっ、ひっく」

男「ある日、俺は睡眠薬を無理やり飲まされた。…最初は五粒ほど。次に10、そして…瓶の中身ごと…」

イケメン「くそっ!」ゴッ

軽女「イケメンくん!?」

イケメン「その頃俺はのうのうと遊んでいた。そんな能天気な自分が許せねェ!!」

男「その気持ちは嬉しいけど、幸せになれる奴はできる限り幸せになるべきだ」

イケメン「……男…」

男「まぁ、その時、混濁する意識の中で、光を見たんだ」

軽女「光?」

男「三人も見ただろ? あれに似た奴」

妹「ぐすっ…これ、ですの?」ブンブン

男「ああ、それを俺は“魔力”と呼んでいる」

三人「……魔力?」

207: 2012/10/06(土) 01:47:32.39
男「勘違いしてほしくないのは、魔法と呼んでいるのは俺がそれを魔法と認識したからで、手品でも神の力でも呪いでも、使い手によって呼び方は異なるってこと」

妹「そうですね…私にはこれが魔法とはとても思えません」

男「妹は影の何かだな。俺にもっと知の魔力があればそれが何か分かるんだけど…」

妹「知の魔力?」

男「ああ、この光って結局、扱い方なんて分からないだろ?」

イケメン「確かに…」

軽女「あっても邪魔なだけね」

男「俺が身体に取り込んだ光は、この力の使い方や新しい光の見分け方、使い方、様々なことを教えてくれた」

妹「それでお兄様は魔法使いになったのですね?」

男「うん。まぁ、どっちかと言うと復讐心しかない悪い魔法使いになっちゃったけどね」

軽女「ヴォルデモート男ー」キャッキャ

イケメン「…エクスペクトロパトローナム」ブンッ

男「………」

イケメン「………」カァ///

軽女「イケメンってほんと可愛いよなー」

妹「ずるいですわね」ウンウン

208: 2012/10/06(土) 01:52:07.25
男「まぁ、知識がなくても、身体が理解していくはずだから、この一週間で扱うことはできるはずだよ」

イケメン「その事なんだけど…」

男「………?」

イケメン「女っちと……本当に戦うのか?」

男「………」

軽女「私は別にかまわないけどー。どうせ女さん氏んでるし」

男(軽女はほんと軽いな…。でも、どこか無理してるような…)

妹「私はお兄様を苦しめる方はどなたでも許しませんわっ!」

男「ま、まぁ、どちらかというと自分達の身を守ってほしくて魔力の覚醒を促したのだから、無理に戦う必要はないよ」

軽女「私は男についていくー」

イケメン「……俺もだ」

妹「もちろん、答えは決まってますの」

男「………」コクン

209: 2012/10/06(土) 01:55:41.84
男「それで、とりあえず三日間は自分の魔力と向き合ってきて欲しい」

軽女「えー、三日も?」

男「その間、俺はちょっと行ってこようと思う」

イケメン「どこへ?」

妹「だ、だめですわ!」ブンブン

男「すまん、もう決めたことだから」





男「ちょっと海外に行ってくる」





三人「」ポカーン

215: 2012/10/06(土) 13:02:16.28
日本――某都市。

男(皆には嘘を吐いてここに来た訳だけど…)

男「本当にやるのか?」

男(この都市の人間全てを消し去って、そこにできる“空白”から魔力を生む)

男「そうして生まれた魔力を認識するためには、まずはやっぱり知の魔力を手に入れなければ…」

??「お前、魔術師か?」

男(感知型か……げ、強そう)

術師「わが名は術師。この都市を守るために戦っている」

男「……なぜ?」

男(見た目は20代後半。筋骨隆々でとても魔術師には見えない。…どっちかというと軍人だろこれ)

術師「答える義理は―――」ブゥン

男「げっ、魔法の剣?」ゾクッ

術師「―――ないっ!!」ブンッ!!

男「くぅっ!」

216: 2012/10/06(土) 13:42:12.84
男「い、いや、俺戦闘タイプじゃないんで」ブンブン

術師「ならば、そのまま氏ねぇ!」

男(俺まだ、何するとも言ってねぇ!! …まぁ、この街滅ぼそうとしたけど)

術師「真読の魔術を発動させている限り、主の邪な企みはすべて見抜いておるぞ!!」

男「まじか…そんなのずりぃ…」

男(なんかでも、その魔法はすごい使いたいな…なんでだろう)

術師「ぬぅんっ!!」ボッ

男「げっ、四方八方に剣が…ってカンピオーネかお前は」

術師「………アニメなど見ておらん!」バッ

―――シュンッ!

男「ならなんでアニメってわかるんだぁあ!!」ダダダッ

男(って、逃げても目の前には剣がある…)

男『嘘の魔法!!』

―――剣の向きが変わる!

術師「ぬぅ? 物質に幻惑の魔術を? …なかなかやりおる!」ガキンッ

男「ちょっ、剣の刃を素手で叩き落とすなんてあんた人間かよ!!」

術師「人間? …わが名は術師。この世界最強の魔術師よ!!」ムンッ

男「………最悪だ」

217: 2012/10/06(土) 13:45:58.45
男(どうする? 俺は一つも攻撃系の魔法を使えないぞ? と、同時にあいつに魔法使っても多分弾かれる…)

術師「右手に掲げるはすべてを貫く絶対の槍!!」ブゥン

男「いや、俺最初から防御魔法できませんから…」ガクガク

術師「そんなことはわかっておる。…括目せよ!」バッ

男「なっ? これは?」

男(地面が沈下して溶岩があふれてきた!?)

術師「わが最強にして最大の魔術。槍を受ければ絶対貫かれ、避ければ業火に焼かれる。


……さぁ! どうする!!」ブンッ



男「もっと考える時間くれよぉおおお!!」

男(やべぇえええ!!!)

221: 2012/10/06(土) 19:17:51.94
区切るの忘れてたんで!

第二章――最強の魔術師

開幕!

222: 2012/10/06(土) 19:26:24.95
男(もう…駄目か?)

術師「…まだ希望を持っていると見える。だが、その希望を打ち砕くっ!!」バッ

術師『逃げ道の排除』

男「………っ?」

男(なんだ…、今俺…逃げようとしてた?)

術師「さぁ、潔く氏ねっ!!」

男「し…ぬ?」





―――嫌だ。





男「うわぁあああ!! いやだぁああああ!!」ブンブン

術師「……やはり、思考制御系の術師か…。思考操作は効かなかったか」




 ―――男は、


    ―――迫りくる氏を目前にして、


  ―――がむしゃらに、


―――ただ無力に、


     ―――駄々をこねるように、








 ―――自身に潜む“知らない魔力”を解放した。





男「……………っ…ぁあああぁあぁあああああ!!!!」

術師「なに?」ピクッ

223: 2012/10/06(土) 19:33:57.55




 ―――目の前に銃がある。


  ―――赤子はその引き金を引けない。


『だぁ……』ブンブン


―――しかし、赤子は壁に立てられた箒を倒す。


  ゆらり。


 ―――倒れた箒は銃に当たる。そして―――、


『ぐぎゃぁ!!』


  ―――赤子に降り注ぐ肉片。


『だぁ。だぁあ…』


 ―――赤子は銃を知らない。


   【男は、“それ”を知らない】

224: 2012/10/06(土) 19:41:46.62
男(………あ、れ?)フラフラ

男「何が起き「何をしたぁ!!」

男「術師?」

術師「我が魔術は最強にして至極! 主がいくら何をしようとも揺らぐはずはない!!」

男「んなこと言われてもわかんねーよ…」

術師「分からないだと!? ……我が槍を“真っ向からぶち破った”というのにかっ!!」

男「………はぁ!?」

男(俺の魔法じゃ絶対無理無理無理!!)

術師「まさか無意識でやったと…?」

男(魔法を無意識で使ったところであれを壊す威力なんてでねーよ!!)

術師「こ、こうなったら“師匠”に――」

男(は? 師匠? あんたが最強じゃ…)

??「もう来てるわよ…」

術師「し、師匠!?」ビクッ

男「師匠!? そのJKが!?」

師匠「………術師、さっさと帰りなさい」

術師「し、師匠、自分は――「帰りなさい」ギンッ

男(うわ、あの術師を黙らせるなんてマジこえー)

師匠「………」

225: 2012/10/06(土) 19:48:25.02
男(そもそも、なんとなく魔力がありそうな方向へ歩いていたらたどり着いた街にこんなのがいるなんて、俺の不幸スキルどんだけ高いんだよっ!)

師匠「あなた、さっきの魔術の展開式を説明できるかしら?」

男「展開式?」

師匠「……構造っていうのかしら? まぁ、とにかく、あなたは今のをもう一度“自分の意思”でできるのかしら?」

男「………いや、そもそも何が起きたかすら分かってない」

師匠「やっぱりね」ファサッ

男(おお、黒髪ロングセーラー服萌えー)

師匠「……術師の師匠であることで察しなさいよ!!」カァ///

男「は?」

師匠「そんな心から褒められても、う、嬉しくなんかないんだからっ!」ビシッ

男(ああ、心を読めるのか…)ナルホド

師匠「感心してる場合じゃないわよ。あなた下手したら、あれほどの魔術が全てあなた自身に降りかかってたかもしれないわよ」

男「…どういうことだ?」

師匠「術師はあなたがとてつもなく強い魔術を使ったと思っているけど、そうじゃないわ。




  あなたは、あなたの周りに渦巻いてる魔力の塊を刺激しただけ」




男「………」

師匠「ちょっと訳が分からないからって思考停止しないでよ」

226: 2012/10/06(土) 19:56:52.31
師匠「簡単に言えばあなたの投げた爆弾が原子力発電所を“結果的に”メルトダウンへ持ち込んだみたいなことよ」

男「ああ、なるほどなるほど」ポンッ

男(つまり俺がとてつもない魔法で槍を消し飛ばしたのか)

師匠「だから“結 果 的”にねっ!!」プンスカッ

男「結果良ければ全て良しだな」エヘン

師匠「……じゃあ私も倒せるわね」シュンッ

男「消えた!?」

師匠「こっちよ」バッ

男「後ろ!?」

師匠「いくらあなたが強い力を持っていても」ガシッ

男(おおふっ、JKの太ももが首にからまっ…て?)

師匠「それをいつでも使えなければ意味がない」ブンッ

男「おわぁああ!」ドサッ

師匠「はぁああああ!!」ブンッ

男「こ、ころされっ――」

師匠「ぁ!!」ピタッ

男「………」ハァハァハァハァ…

師匠「今私は移動の魔術と六角棒を具現化する魔術しか使用していないわ」

男(ぼ、ぼろ負けだっ)

師匠「これでもあなた、自信満々に俺強いって言える?」

男「………っ、俺は―――

227: 2012/10/06(土) 19:57:19.74






男「戦闘なんて一般人レベルですよ」

師匠「え?」







228: 2012/10/06(土) 19:57:53.46
いったんここまで!

まじ眠たす!!

師匠は超美人JK設定です!

では!!

231: 2012/10/08(月) 18:16:45.23
男のいる街――とある寺。

男「………動けない」ググッ

術師「そりゃあ、魔術で動きを封じてるからな」ジーッ

男(拒絶の魔法がある限り拘束されることはないと思っていたけど…)ハァ…

術師「………」ジーッ

男「何見てるんだ?」

術師「魔法幼女プリプリだ」キリッ

男「………」

術師「………ふんっ」

男「なんだよその見飽きたって顔は」

術師「事実見飽きてるからな。そのバカにした表情は」

男「俺は…」

術師「うるさいっ!」

232: 2012/10/08(月) 19:16:23.17
術師「誰もがだ。…誰もが、俺をアニオタと…、口リコンとバカにする」ガンッ

男「違うの「違う!」

術師「俺はこのアニメの物語性と各キャラの個性に惹かれただけだっ! なのにお前らは登場人物が幼女ってだけで! 一面性ばかり見て!!」ガツッ

男「ぐぅっ!」

術師「さらに俺の身体が他人より大きいから余計に偏見を持つ! 人間は見てくれか!? ああ!?」ガッ

男「くっ…、それで…、お前は…、何かされたのか?」ハァハァ

術師「…? だから言っただろう。偏見の目で見られたと」

男「はぁはぁ…、それだけ、か?」

術師「それだけだと?」

男「……ああ、それだけだ」

術師「こいつ…このっ!」グワッ

男「………っ」

師匠「止めろ!!」

術師「………」ピタッ

男「………はぁはぁ」

233: 2012/10/08(月) 19:25:34.42
師匠「暴力は好きじゃない。私はあなたの闇に堕ちながらも光を失わなかった心を見込んで魔術を教えているのよ」

術師「………はい、師匠」

男「……あんたは…どうやって魔術を?」

師匠「………」ピクッ

男(その絶望的な反応…、どうやら、あの力は相当の絶望を持って生まれたようだ…)

師匠「そ、それは……」ブルブル

術師「師匠! 奴に言う必要など「大丈夫だっ!」

術師「………」

師匠「それは………」

男「………」ゴクリ




師匠「………漏らしたんだ」ボソッ

男「………何を?」

術師「きさまっ!「よせっ!」

師匠「お、おしっこを漏らしたんだ」カァ////

男「」

234: 2012/10/08(月) 20:07:04.37
師匠「去年、林間学校の夜。就寝前トイレに行くことを忘れた私は……くっ」

男「………」

術師「もう、もういいです…」

師匠「クラスメイト達は気にすることないと慰めてくれたよ。…しかし、私は世界に絶望した。なぜ私にこんな恥辱を…」クッ

男「………れ、よ」

男(偏見の目だと? 恥辱だと?)

師匠「………力が膨れ…いや、これは?」ゾクリ

男「世界が……人類が憎いと思ったこともない奴に負けるのか?」ブツブツ

術師「ばか…な」

男「ありとあらゆる手を使い尽くして、それでも駄目で…」グググッ

師匠「立ち…上がるのか?」

男「血と、痛みと、苦しみと、全てを奪い尽くされ…」グググッバチッ

術師「あ、ああ…」ガクガク

師匠「結界を張れ! “絶望”に喰われるぞっ!」

師匠(何という…小さくも暗い…暗すぎる絶望なんだ…)

235: 2012/10/08(月) 20:42:38.87
男「やっぱり…駄目だ。仲間なんて…」フラッ

術師「く、くそぉ…」ポロポロ

術師(こいつを見ていると、怖い。自分が、自分の人生が否定される…)ガクガク

師匠「……術師…」

師匠(普通の悪役は自分なりの主義主張、もしくは憎悪を持って他を破壊し…奪う)

師匠「だがお前は…、ただひたすらに……怖がっている」

師匠(これが……絶望か)ガクッ

男「……ふーっ、ふーっ」ヨロッ…ヨロッ

師匠「だが、しかしっ!」ババッ

師匠(私たちは一度絶望を知り、そこから這い上がったっ!)グググッ

術師「そ、それは…師匠最終奥義…」

師匠「そう、恥に身を焼かれた私は、あえてその恥と向き合うことにより強大な魔術を扱える!!」





師匠「にゃんにゃんブレイカー♪」ニャンニャン♪





術師「ぶふっ!!」ハナヂッ

男「ふざけるなぁ!!」ゴォッ!

師匠「かき消した…だと?」

男「うるせーよ」

男(手の届く範囲は完全に拒絶することができる)

男(俺の絶望はやっぱり……拒絶か)

男「ははっ…お似合いだ」フラフラ

師匠「ま、まてっ!」

236: 2012/10/08(月) 20:46:40.89
男「……なんだよ」

師匠「なぜ…この街を消さない」

男「………」

術師「…本当だ。あれだけの絶望に身を置きながら、その淀みない闇はなんだ!?」

男「…気付いたんだよ」

師匠「……何に?」

男「…………いくら力を得ても、俺の心では……失うばかりだ」クルッ

術師「………なんという悲しみ」

師匠「………男」ホロリ…

男「帰らないと…」

237: 2012/10/08(月) 20:57:29.13
街。

男「………結局、何も得ることのできないまま、時間ばかりが経過してしまった」




 ―――――――氏。




男「―――は?」ゾクリ

通行人「………駄目だ、氏のう」フラフラ

店員「………生きてる意味なんてねぇな」フラフラ

JK「生きてる勝ちなんてねぇ…」フラフラ

男(なんだこの絶望……拒絶じゃない…)

男「………諦め?」

幼馴染「ああ、そうだな」ニコニコ

男「お、お前っ!?」バッ

幼馴染「まぁそう構えるな」プラプラ

男「これはお前の仕業か?」

男(そうやって、全てを奪う気か?)コォォォォ…

幼馴染「……なかなか、良い絶望だね」クスクス

男「うるせぇよ。俺は…お前に聞いてるんだよ」



幼馴染「ああ、この絶望の正体が“妹”のせいだってことかい?」



男「  え?  」





―――  氏   に  た     い。




――― 殺  し    て。 




―――      に    く     い。




男「あ、ああ……」ガクッ

238: 2012/10/08(月) 21:01:52.08
妹「……クそ…や、ろう」フラフラ

男「妹…記憶が?」

幼馴染「そうだよ。“僕”が直してあげたんだ」キャッキャ

妹「私の心をいじりやがって…」バキッ

男「………くっ」フラッ

妹「あんたが憎い…」ガスッ

男「ナイフ…」ガクッ

幼馴染「ああ、いくらでも血を流したらいいよ。ちゃんと僕が元通りにしてあげるから」ニコニコ

妹「なんで、なんで、なんでっ!」ガスッガスッ

男「あ……ああ…あああ」

妹「なんで今更…兄貴面なんてすんのよ」グサッ

男「…か、ふっ」

妹「見ろ。私の絶望。私の苦しみ。…あんたの薄っぺらい痛みを」ガシッ


239: 2012/10/08(月) 21:07:10.88
過去。


―――それは、よくある光景。


妹「やめてよぉ…」

少年A「やーい、悔しかったらとってみろー」ポーンッ

少年B「とってみろー」ポーンッ

妹「返してよぉ、筆箱返してよぉ」グスグス

少年C「こいつ、ただでさえ不細工なのに、泣いたら不細工通り越してキモいな」ギャハハッ

妹「ぐすっ、酷いよぉ…」

少年A「うわっ、きも…」

少年B「なんかやる気失せたな」

少年C「帰ろう」スタスタスタ

妹「………筆箱」グスッ

男「……あれ? 妹?」

妹「………男兄ちゃん」グスッ

男「おい、泣いてんなよ。どうしたんだよ」

妹「うえぇえええええん!」

男「わぁあ! 泣きやめっ! 分かったから!」

妹「うぇええ! 手ぇ繋ぐぅ!」ワァァァン

男「分かった! 分かったから!」ギュッ

妹「ぇえぇぇえ………」グスッ

男「帰るぞ」

妹「うん」

240: 2012/10/08(月) 21:09:51.24
過去の自宅。

男「ただいまぁ」

妹「ただいま…」

母「おかえりなさーい」

父「……おかえり」

妹「おかーさーん! おとーさーんっ!」ガシッ

母「はいはい、今日も苛められたのね」ナデナデ

父「すまんなぁ…。すまんなぁ」ナデナデ

妹「えへへ…もう大丈夫だよ」グスッ

男(何がすまんなぁだ。俺達を“こんな顔”に産みやがって)

妹(男兄ちゃんもありがと。男兄ちゃんカッコ良いし好き…)

母「それじゃあ夕飯にしようか」

妹「はーい」

241: 2012/10/08(月) 21:17:05.67
数ヵ月後。

妹「ぐすっ…うっうっうぇ…」ビチャビチャ

少年A「うわぁ…本当に食べたよこいつ」

少年B「バッタって生で食ったらやべぇんじゃねーのか?」

少年C「大丈夫だろ。こいつの兄貴なんて便所の床舐めさせられてるんだぜ」

妹「………え?」

少年A「うわぁきったね」

少年B「こいつの兄貴ってなんで苛められてんの?」

少年C「ああ、そりゃあ決まってるだろ―――



こいつと両親が超絶不細工だからだよ」



妹「…………え?」

少年A「そりゃあ“仕方ない”な」バッ

妹「土かけないでぇ」

少年B「ほら蝉も食えよ!」グリグリ

妹「やめてぇ…」

少年C「ははっ、お前の兄貴ってほんと“不幸”だよな。こんな不細工な妹のせいで苛められるなんて」

妹「それ……本当なの?」

少年B「知るかよ。でも、お前と一緒にいる時、お前の兄貴いつも臭そうにしてるよな」

少年A「ははっ! お前と一緒にいると臭いんじゃねぇの!!」

妹「いやぁ、いやぁ!」

少年C「行こうぜ!」

少年A「ああ!」

妹「うぅ……うぁ…」オエッ

少年B「なぁ、さっ……本当な……か?」

少年C「あ? そんなの………てるだろ?」

少年A「だよなー!!」ギャハハッ!!

妹「うぅ………」

男「妹?」フラフラ

242: 2012/10/08(月) 21:19:42.84
妹「男…兄ちゃん」グスッ

男「また苛められたのか!?」バッ

妹「………うん」

男「くそっ、くそっくそっ」バッバッ

妹「あ…土」

男「ああ、家の中に土が入るだろ?」

妹「うん…」

妹(やっぱり優しい…)

男「さっ、帰ろうぜ」ズキッ

男(うっ……バットで殴られた脇腹が…)クッ

妹「………っ!?」

妹(兄ちゃん…やっぱり私が臭くて…)クッ

男「妹?」

妹「……一人で帰る!!」バッ

男「………っ」ズキズキ

243: 2012/10/08(月) 21:24:21.73
妹「…………」スッ

少年A「うわっ、マジで脱いだ!」

少年B「……なんか変なの」

少年C「お前らそんな汚いのよく見るな」

妹「………っ」

少年A「ばっ、研究だよっ! 虫の研究!」

少年B「なぁ、あれって開くのかな」ハァハァ

妹「!! …いや」

少年C「押さえつけてやろうか?」

少年A「面白そうだなそれ」

妹「やめてっ!」ダッ

少年C「捕まえろ!」ガッ

妹「あぐっ」ドサッ

少年B「へへっ、どんだけ不細工でも女は女だからな」ハァハァ

少年A「なんか俺も興奮してきた」ハァハァ

少年C「俺はいいや。さっさとやることやっちまえよ」

妹「やめてぇ…」ポロポロ

244: 2012/10/08(月) 21:25:55.94
少年A「でもさぁ、こいつが初めてなんてやっぱやだな」

少年B「…確かに。一生の恥だな」

少年C「ははっ、お前ら酷過ぎ」

妹「………」ホッ






少年B「そういえばこいつ。この前バッタ食ったよな」ニマァ






妹「………ひっ」ゾクッ

245: 2012/10/08(月) 21:31:24.49
男「………ててっ」ズズッ

男(これ…絶対足折れてるよな)ズズッ

男「あれは……妹?」

妹「ひっく、ひっく…ぐすっ」

男「おーい、妹!!」ブンブン

妹「兄ちゃん…?」

妹(いつも兄ちゃんは私が泣いてたら助けてくれる…。優し―――)



―――お前の兄貴、お前のこと臭いってよ。



妹「……なぜ、いつも兄貴は終わった後にくるの?」ガクガク

男「おーいっ!」ズズッ

妹「まさか……兄ちゃんが?」

男「………くっ」ズキンッ

妹「またその臭そうな表情……」ポロポロ

男「妹、すまん――たす




妹「………なんで謝るの?」

妹(全て……お前の?)

妹「あぁああぁああああぁあぁぁあああ!!!!」ダッ

男「ぐっ…ぐぁ…足が! 足がぁ!!」

通行人「き、君!? 大丈夫か!?」

通行人2「早く救急車!!」

246: 2012/10/08(月) 21:38:31.67
現在。

妹「そしてお前は私の心まで操った」

男「なっ、違う! 誤解だっ!」

妹「言い訳はいい。それに……遅い」ポロポロ

男「な、なぜ?」

妹「あんたは……バッタの子供産んだ妹を愛せるか?」ボトボトッ

 「………」ビクッビクッ

男「なんだ…それ…」

幼馴染「ふーむ。バッタ人間…仮面ライダーだね」

妹「私はもう……氏ぬしかない」ボトボトッ

 「………げぇげぇ」ビクッビクッ

男「あ、ああ……」

妹「ねぇ……頃してよ」グシャッ

 「」ビクッ……

男「ごめん…ごめん…ごめん」ガクガク

幼馴染「なんで謝るの? 男は悪くないのに」

男「うるさいっ! 黙れよ!!」

妹「ねぇ、頃してよ」グシャ

 「」ヒクッヒクッ

男「あぁああああぁあぁあ!!」バッ

男『拒絶の魔法!!』

幼馴染「ふむ。この問題に僕は関係ない…こともないか」

男「どっか行っちまえ!!」

幼馴染「そうだね。期限まで後四日あるし、私は帰るよ」シュゥン…



幼馴染( 君 達 兄 妹 に 絶 望 あ れ )


247: 2012/10/08(月) 21:46:46.99
男「誤解だ。全て誤解なんだよ。妹」

妹「別に誤解でもいい。私が人間じゃなくなったことは変わらない」ボトッ

 「ぐえぐえぐえ」ビクビク

男『嘘の魔法!!』ガバッ

妹「……そうやって、私の苦しみをなかったことにするんだね」

男「でも、そうしないと妹の身体が…」

妹「あんたはいつもそうやって私の醜い部分を否定して…」

男「それは、苦しみや痛みは消せるものなら消してしまったほうが…」

妹「私の顔、身体、人生、消さなくても良い部分なんてないじゃない」

男「ちがっ…」

妹「違わないよ。私は醜い。見た目も、性格も、生きた道も…」

男「ちが…う」

妹「ははっ、もっと強く否定してよ」

男「………うぅ…」

妹「否定できないでしょ? “あんたも同じ”だもんね」ニコッ

248: 2012/10/08(月) 21:53:22.12
妹「物語だったらさ、感動的な話し合いや、殴り合い、どちらかの壮絶な氏なんかで美化されるんだろうけど…」

男「………」

妹「私達にそんな慈悲がもらえるはずがない」フラッ

男「どこに行く!」




妹「“どこか”よ」




男「…どこ…だよ」

妹「私たちは分かりあえぬまま、憎しみ合ったまま、苦しみあったまま、中途半端なままで一生会うことはないのよ」

男「たの、む。一度だけでも、話を…」

妹「じゃあね」スゥ…

男「あ、ああ…ああ…」ガクッ


イケメン「男!?」ダッ


男「あ、あぐっ…ぐっ…」ゴボッ

イケメン「血が……」

イケメン『回復魔法!』パァ

男「はぁはぁ……それは」

イケメン「ははっ、すげぇだろ」ニカッ

249: 2012/10/08(月) 22:25:25.28
翌日、教室。

男「………」ボーッ

イケメン「………男」

軽女「こんな状態で勝てるのかな」

イケメン「まぁ、今はそっとしてやろう」

男(俺が、妹を苦しめていたのか…)ハァ…


幼馴染「………はぁ」

幼馴染(そんなんじゃ駄目駄目だよ…)パチンッ


男「………」

??「男…?」

男「黒髪…さん?」

イケメン「なっ、急に!?」

軽女「うっ、出たライバル…」

黒髪「男ぉ!! 会いたかった!!」ギュッ!!

軽女「!?」

イケメン「おぉ…」

クラスメイト「………」ザワザワ

黒髪「好き! 大好き!! 離さない!!」ギュゥゥ!

男「黒髪さん…」ギュッ


幼馴染「そうそう。君はもっともっと“色んな方向から”絶望を見つめなきゃ駄目だ」ニコニコ


250: 2012/10/08(月) 22:31:23.01
廃病院。

友「………幼馴染…きさまぁ…」

幼馴染「やぁ、君か。やっとお目覚めか」ニコッ

友「俺を帰せ!!」

幼馴染「いいよ」ニコッ

友「え?」

幼馴染「ただし、君は“過去へ”帰るんだ」

友「どういう…」

幼馴染「君が、過去の男を幸せにするんだ」

友「………できるのか? そんなことが…」

幼馴染「ああ、その代わり、君の性別はそのまま女だ」

友「………ああ」コクン

幼馴染「愛だねぇ」パチンッ

友「お前も―――

幼馴染「ふふっ、僕のは愛じゃないさ」ニコニコ

251: 2012/10/08(月) 22:39:31.51
今日はここまで!

最後にまとめ!

現在の主要登場人物。


・男【暗き絶望を持つ男】

・黒髪【元いじめっ子。現男大好きっ子】

・軽女【焔の魔法使い? 男のことが気になるっ子】

・師匠【男に負けたお漏らしっ子。男のこと惚れたっ子】

・幼馴染【正体も目的も不明。男のこと試してるっ子】

・イケメン【回復の魔法覚えた。男の親友っ子】



・妹【兄への恨みを抱えながら、どこかへ消えた。】

・友【男の過去を救うため、過去へ飛んだ男好き好きっ子】

・後輩【最近出番ないっ子】

・術師【引きこもってアニメ見てるっ子】


それでは!!

260: 2012/10/09(火) 17:54:19.55
自分の家。

母「………おかえりなさい」ボーッ

黒髪「…おじゃまします」

男「………部屋行こう」

男『説得の魔法』

母「………? あら、お買いもの行かなくちゃ」テクテク

男(説得の魔法の方が心への負荷は少ないけど…。苦しんでる母さんを見るのはさすがに辛いな…)


自室。

黒髪「………」ドキドキ

男「………」ドサッ

黒髪「男君!?」

男「…………良かったぁ」グスッ

黒髪(あ、泣き虫の頃の男君だ…)ズキン

黒髪「ごめんなさい…。私のせいで…」

男「……ちがうよ」

黒髪「………?」

男「黒髪さんの“おかげ”で泣けるんだ。本当にうれしいんだ」ニコッ

黒髪「男君!」ガバッ

男「く、黒髪さん?」ドキドキ///

黒髪「好きっ、大好き! 男君のこと大好き!!」

男「………っ。…ぅ、ぅう…黒髪さぁん」ギュゥッ

261: 2012/10/09(火) 18:10:50.01
黒髪「………落ち着いた?」

男「うん…」ギュゥッ

黒髪(男君……もしかして私の事…?)ドキドキ

男(落ち着く…。でも、黒髪さんも幼馴染が造った偽物なんじゃ…)

男「く、黒髪さん…」

黒髪「………?」

男「俺が苛められ始めた頃、授業中に教室から飛び降りろって命令されたこと覚えてる?」

黒髪「……なんで、そんなこと言うの?」ホロリ

男「………怖いんだ」

黒髪「怖い? あの時のイジメに参加した人間はもう……私以外いないよ」

男「違う! 黒髪さんは怖くない! …いや、黒髪さんが…怖いんだ」

男(うまく言えない…)

黒髪「………」スクッ

男「黒髪さん?」

黒髪「………男君、ごめんね」スッ

男「黒髪…さ――」

妹『じゃあね…』

男「黒髪!!」ガバッ

黒髪「きゃぁ!」ドサッ

262: 2012/10/09(火) 18:18:18.33
男「………行かないでくれ」ジッ

黒髪「………って、だって男君の…ぐすっ、となりにいる…資格なんてないもん」エグエグ

男「そんなことない!!」

黒髪「………っ」

男「…違うんだ。俺はもう、黒髪さんを離したくないんだ。だから、怖いんだ」

黒髪「………男君」ニコッ

男(やばっ、涙目の黒髪さんが綺麗過ぎて……俺…いや、でも…)カァ///

黒髪「どうしたの?」クスッ

男「ね、ねぇ、一つ聞いてもいい?」

男(こ、告白するの俺!?)

黒髪「いいよ」ニコッ

男「うわっ、かわい…」

黒髪「………っ!?」カァ////

男「わわっ、い、今のなし!!」バッ

黒髪「あ……、今のなしなの?」プクーッ

男(ほっぺた膨らました所も可愛い)///

男「あ、あのさ…」

黒髪「うん」

263: 2012/10/09(火) 18:24:16.68
男「あのさ、俺実は黒髪さんのこと…ずっと好きだったんだ?」

黒髪「……え? ずっと?」

男「ああいや、……ごめん、イジメに参加してなかった頃の黒髪さんが…」

黒髪「う、うん……」

黒髪(やば…泣きそ)グスッ

男「でも、喋ったこともないけど、黒髪さんって美人なのに笑うと可愛いし、スタイル良いし、可愛いし…えっと、えっと」

黒髪「かわいいって二回言った」クスクス

男「あう…」カァ///

黒髪「そっか…男君ってこういうこと慣れてないんだ」

男「そりゃあ…まぁ、苛められてましたから」

黒髪「………」


二人((いちいち気まずい…))ハァ…


男「と、とにかく! 黒髪さんは俺にとって、俺にとって…」ドキドキドキドキ

師匠「俺にとって何?」

男「俺にとって初恋の相手なんだっ!!」

黒髪「………おとごぐん…ぐすっ…」ボロボロ

男「だからさ………」

黒髪「……うん、うん」

男(言え、言うんだ!!)

264: 2012/10/09(火) 18:26:08.99






男「………って、え?」

黒髪「………」ドキドキドキ

黒髪(男君のことまっすぐ見れなくて思わず目をつぶっちゃった…)

師匠「………」ムスッ

男「し、師匠!?」ビクッ





265: 2012/10/09(火) 18:43:22.19
黒髪「え? え、え?」キョトン

男「何してるんだよ!」

師匠「気配を消す魔術だ。どうだ、すごいだろう」ムンッ

男「知るかよ! 人んちに勝手に侵入してくんなよ!」

師匠「まぁまぁ、それよりさっさと続けてくれ」

黒髪「………」

男「あ、え、えっと…」

黒髪「………っ、男君っ!」チュッ

男「―――っ!?」チュッ

師匠「な、ななっ、えぇ!?」ドウヨウッ

黒髪「………」ギロッ

師匠「こ、こいつ……」

師匠『洗脳のま「やめろっ」バッ


男『 や め ろ 』グググ…


師匠「う、うぅ…」ジタバタ

黒髪「う、浮いた?」

師匠「うう…う」

男『 俺からこれ以上奪うんじゃない 』

黒髪「や…やめて、男君…」

269: 2012/10/09(火) 20:41:56.98
男(

    奪うな。


  これ以上。


 何も。


         俺から。



 希望も。




  ―――絶望でさえも)



男「あぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあああああああああぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああああああああああああああああああ!!!」

師匠「ぐぅぅ!! …かっはっ……」

黒髪「や、やめ…」

黒髪(ここでこの人を消したら、“また”男君が苦しむ―――)

黒髪「やめてぇええええ!!!」バッ!!

270: 2012/10/09(火) 20:43:13.76












    ――――ごきっ――――










271: 2012/10/09(火) 20:47:46.88
男「く……ろ…?」ガクガク

師匠「そ、蘇生の魔術を―――」

男『 消 え ろ 』

師匠「この子はま

黒髪「………く、ん」

男「い、生きてた!?」ガバッ

男『嘘の魔法!』パァ

黒髪「き…い、て…」

黒髪(あなたのことを…)

男「くそっ、なんで、なんで効かないんだ!」

黒髪「わた…し、ね…」

男「何か…何か手はないのか…」ブルブル

黒髪(伝えたい…好きって想い…)グググッ

男「な、何…?」

黒髪「あな…た…のこと…」

男「うん、うんっ」

272: 2012/10/09(火) 20:48:34.77








黒髪『ずっと大嫌いだった』ニマァ









273: 2012/10/09(火) 20:54:27.34
黒髪(な…ん、で……だ、め…)ガクッ…

男「…は? え? な、なんの…、え?」ガクガク

男(全部…嘘? え? いや、もしかしてこれもイジメ? え? 何?)

男『拒絶の魔法』

黒髪(あ……男君の気持ちが…入って…)




 辛い、怖い、痛い、

  苦しい、氏にたい、裏切り?


なんで、助けて、分かってほしい、




  抱きしめてほしい、微笑んでほしい、


 好き、大好き、好きになってほしい、




  黒髪さん…黒髪さん、黒髪さん、黒髪さん黒髪さん黒髪さん、黒髪さん



―――付き合って欲しい。



黒髪「あ、ああ……男…くん」

男「……“僕”の…気持ちは一つだ」

幼馴染「な、なんで!?」パッ

男「幼馴染…。お前のやりたいことは分かってるんだ」バッ

黒髪「あ、あれ…」キョトン

274: 2012/10/09(火) 20:56:05.15








男『黒髪が僕から離れることを拒絶する』ニヤリ







275: 2012/10/09(火) 21:00:34.76
幼馴染「なんでっ! なんでなんでなんでっ!!」ジタバタ

黒髪「わ、私…大丈夫なの?」

男「うん、大丈夫。僕は絶対に君を離さないから」ギュッ

黒髪「……ふぁっ!?」///

男「大好きだ。君は僕の全てだ」

黒髪「………ぐすっ、えぐ……私もぉ」ギュゥゥ




幼馴染「お…のぉ…れぇ……」ギギギッ




男『戻ってこい、師匠』パチンッ

師匠「   あ、あれ?」パッ

男「師匠…ほんとごめんな」ギュッ

師匠「……ふぁっ!?」///

黒髪「」

男「ほんと……ごめん」

師匠「も、もういいからっ」///

279: 2012/10/09(火) 21:08:07.79
黒髪「男君…?」ムスッ

男「ごめん黒髪…、僕、気付いたんだ」

黒髪「な、何に?」ドキドキ///

黒髪(呼び捨てで呼んでくれた…)

男「僕に人を好きになる喜びを教えてくれた黒髪も、こんな僕のために会いに来てくれた師匠も、ずっと僕を支えてくれた軽女やイケメンも、……僕にとっては愛すべき人だってことに」ニコッ

黒髪「………うん」

黒髪(私も男君のおかげで好きになる喜びに気付いたよ)


幼馴染「………」ボーッ


男「終わりにしよう。幼馴染…いや、





―――マモノ」





マモノ(幼馴染)「………くそ、こんなはずじゃなかったのに」

281: 2012/10/09(火) 21:16:32.72
男「お前がどうして僕から離れ、戻ってきたのかは分からない。だけど、もうそんなことはどうだっていい」

マモノ「………」

男「僕には守るべきものができた。そしてお前は守るべき者達を脅かす」

マモノ「……“俺”を頃すのか?」

男「………ああ」スッ

マモノ「………いいさ、やってみろ」

男(……お前だけは、ずっと味方だと思ってたのに…)

男『拒絶の魔法』

マモノ「………」

男「………?」

男『拒絶の魔法』シーン

男「な、なぜ?」

マモノ「………く、くく…、あははははは!!!」

男「なんで魔法が使えないんだ!?」

マモノ「あははははは…はは……」

マモノ『拒絶の魔法』

男「………っ」ゾクッ

黒髪「あ、男く

師匠「おと

男「なんでお前が使うんだよそれを!!!!」




マモノ「お前が捨てたんだろ」




282: 2012/10/09(火) 21:27:35.37
マモノ「本当なら、もっと絶望してから捨てさせるつもりだった」

男「何を…何をしたっ!!」

マモノ「ああ、二人? 二人ならまだ無事だ。……たぶんね」

男「一体何が起きたんだ……説明しろっ!!」

マモノ「だから説明してるじゃないか」

男「………」

マモノ「いいかい。君が思い出した通り、俺は――マモノという存在は君が捨てた“希望の感情”だ」

男「希望?」

マモノ「君は想像を絶するイジメに遭い続け、世界に絶望した。そして魔力という存在を認識した」

男「……そして魔法を覚えた」

マモノ「ああそうだね。しかし、苛めた加害者を消し、自分の顔を捻じ曲げ、家族を変えた君は気付いたんだ」

男「気付いた?」

マモノ「ああ……希望なんて持つだけ無駄だと。そして、俺を作った」

男(なぜ覚えていない…)

マモノ「俺を作った君は絶望に包まれた。絶望に満ちた君は――過去を捻じ曲げた」

男「だから覚えていないのか?」

マモノ「希望と自己愛に満ち満ちた俺は……何を思ったと思う?」

283: 2012/10/09(火) 21:34:00.18
男「……分かる」

マモノ「―――そう、“自分を助けてやりたい”」

男「ならなぜ―――」

マモノ「なぜ僕を苦しめたんだって?」

男「矛盾してるじゃないか…」

マモノ「そうかな……それも分かるんじゃないか?」

男「………魔法があったからか?」

マモノ「魔法なんて結局は絶望が形を変えただけだ。どんだけ都合よく周囲を捻じ曲げても、そこに残るのは結局絶望だけなんだよ」

男「じゃあ……今、僕が魔法を使えないのは…」

マモノ「………もういいかな?」

男「何が…?」

284: 2012/10/09(火) 21:40:19.31
マモノ『嘘の魔法』

師匠「……あ、あれ?」パッ

黒髪「………」パッ

男「マモノ! お前何をする気だ!」

マモノ「悪いけど、君の貯め込んだ魔力は全部もらっている」

男「だから…何をする気だ?」

マモノ「………絶望は絶望を呼びこむんだよ」ボソッ

男「……それは…つまり」

マモノ「………俺がここにいたら、“絶望の塊”みたいなのがここにやってくる…そうなったら終わりだ」

男「どこに行くつもりだ?」

マモノ「教えるかよ。……それじゃ、完全に“移行”したみたいだし、俺は行くわ」

男「待てよ。僕も――」

マモノ「………幸せになれよ」スゥ…

男「待て、待てよ!!!」

マモノ「大好き“だった”よ。“俺”」ニコッ

男「マモノぉおおおおおおお!!!」

マモノ(ああ、一つだけ。廃病院に女が寝てるのと、妹はもう放っておいてやれ。きっと幸せにやってるはずだ)

男「マモノ………」

マモノ「じゃあ、な。これでお別

男「あ、ああ……」ガクッ


295: 2012/10/10(水) 01:56:13.72


男は希望を恐れ
マモノに光を押しつけた
マモノは絶望を恐れ
男を裏切ってまで
男を守った


そして、マモノは戦いの地へと赴く。。。

296: 2012/10/10(水) 01:58:36.77


  ―――ここは?



―――暖かい。

   ―――僕は誰?

 ―――マモノ?


     ―――君は誰?


  ―――ご主人?



      ―――ご主人はどうして、、、






マモノ「どうしてそんなに哀しそうなのですか?」








297: 2012/10/10(水) 02:07:48.44
男の街から離れた森。

マモノ「………夢、か」

マモノ(ご主人の魔力を全て奪ったら、幼馴染の姿から戻れなくなった…)

マモノ「ご主人の好みの体現…」

マモノ(本当に…幼馴染になりたかったな…)ハァ…


絶望の化物「ォォオオォオォオ…」ユラユラ


マモノ「本当にキリがない…」ハァ…

マモノ(ご主人にこんな過酷な運命を背負わせられない)


絶望の化物「ォオォオォオオオォオォォォォ…」ガバッ

マモノ『拒絶の魔法』パァッ

絶望の化物「ォォオォオォォォ!!」ジタバタ

マモノ「希望は叶えば消えてしまうけど…、絶望は一度捕まれば膨れ上がるばかり…」スッ

マモノ『神槍』ガシッ

マモノ(ご主人は中二病だったから刀が好きだったけど、やっぱり化物退治は槍でしょう)グルグル

絶望の化物「ォォォオォオォッ!!」グォォォ!!

マモノ「弱いくせにっ!!」ズバッ

絶望の化物「グゥォォ…」シュゥン…

マモノ(いくら魔法の槍でも、絶望を斬ったところで無意味…)

マモノ「これから一生続くのか……」ハァ…



妹「あれ? 幼馴染さん?」



マモノ「おや、妹さんじゃないですか」ニコッ

298: 2012/10/10(水) 02:15:13.61
川のほとり。

妹「………そっか、やっぱり兄ちゃんは」ポチャッ

マモノ「ええ、ですから、あなたはあなたの幸せを探してもらって大丈夫ですよ?」

妹「ある訳ないじゃない…そんなの」ボソッ

マモノ「なぜ?」

妹「だって、私は兄ちゃんとお母さんを裏切った……。こんな顔だし…もう、生きる意味なんて」ギュッ

マモノ「それじゃあ、“俺”と一緒に戦い続けてみる?」

妹「……何と?」



マモノ「絶望と」



妹「一緒にいてくれるの?」

マモノ「もちろん。“俺の妹が悲しむところなんて見たくないからな”」ニコッ

妹「おにい…ちゃん?」ウルッ

マモノ「……ああ、そうだ。俺“も”お前の兄ちゃんだよ」ニコッ

妹「あ、ああ…ごめん、ごめんなさい、ごめんさぁいおにいぢゃん…」ギュッッッ

マモノ「怒るかよ。……俺の愛する妹だ」ナデナデ

妹「好き。大好きお兄ちゃん…」

マモノ「ああ…」

マモノ(ご主人…あなたの…いや、俺達の妹は必ず幸せにするから…)

マモノ「行こうか……」スッ

妹「……うん」ギュッ

299: 2012/10/10(水) 02:25:02.53
数日後――学校。

男(“僕”にとって、絶対に必要だと思っていた魔法を使えなくなって数日)トコトコ

軽女「おっとこー♪ おはよー♪」ギュッ

男「ああ、おはよう」ニコッ

イケメン「おはよう男♪」

男「おはよう。相変わらずイケメンだな」

イケメン「うわ、校内一のモテ男に言われたくないわ」

男「ははっ、これは魔法の名残だって」

女「いいなぁ、私にもかけてよ」

男「女さんはそんなことしなくても十分モテるじゃん」

友「そうそう、だからその魔法は僕にちょうだい」ニコッ

男「友は魔法なんか使わなくてもこの街最強の女じゃないか」

友「うーん、でもやっぱ男にはかなわない奴もいるじゃん?」

男「喧嘩無敗記録(相手は男のみ)更新中のお前に言われたくない」

友「あはは、だって僕はもともとは男だし」

軽女「すごいよねー。男として生まれて魔法で女になって、女のまま過去に飛ばされて男を助けるために一役買うなんて」

友「難しいことじゃなかったよ。ちょっと男の学校まで行って、いじめっ子を全頃ししただけだし」

男「あの時は感謝を通り越して逃げたくなりました」

友「ひどくねっ!?」ガーン

男「うそうそ。まぁ、今ではすっかり女の子だろ?」

友「そうだね。だから男と結婚できるんだよ?」ニコッ

男「………っ」カァ///

師匠「男がまた浮気した…」グスンッ

男「わぁ!!」ビクッ




300: 2012/10/10(水) 02:29:59.81
男「師匠! そもそも僕らは付き合ってねーよ!!」

師匠「何言ってるんだ。お前が毎週付き合えって…」グスグス

男「それは格闘技の鍛錬を付き合ってって意味だよ!! 僕の彼女は一人なんだからなっ!」

軽女「へこむなー」

師匠「うぅ…おどごぉ…」グスグス

イケメン「女泣かせの男……絵になるな」ニコニコ

男「うるさいうるさいうるさい! 僕の彼女は、


黒髪一人なんだぁあああ!!」


黒髪「………へっ?」バッタリ

男「………あ」

黒髪「あ、あぁあ…ああぁああ」ダッ///

男「ちょ、ちょっと待って!!」

友「はぁ…うらやましいなぁ黒髪さん」

男「………ほんと、幸せだな…」シミジミ

301: 2012/10/10(水) 02:30:58.86







男「これが現実ならな」

後輩「………おはようございます先輩」





303: 2012/10/10(水) 02:36:27.17
廃墟。

後輩「ああ…先輩だぁ」ギュッ

男「動けないんだけど」

後輩「動く必要ないですよ。だってどっか行くじゃないですか」ニコニコ

男「……イケメンのことが好きなんじゃなかったのか?」

後輩「……はぁ。男先輩は本当の愛ってのが分かってないですね」

男「何を言っているんだ…?」

後輩「学校…いや、県内でもトップイケメンのイケメン先輩。彼と付き合っても、先輩のことを好きのままだったんですよ?」

男「なら解放してくれないか…」

後輩「嫌です。もう少ししたら“全てが終わって、一つだけ始まりますから」ニコッ

男「は…な、何が始まるんだ?」

後輩「決まってるじゃないですか。



あなたを絶望に突き落とすんですよ」ニコッ



男「………」ギロッ

304: 2012/10/10(水) 02:39:25.48
今日はここまでっ!

男が見ていたのは幻覚です。
いよいよラスボスこと後輩が現れました。

なぜ妹が苛められたのか。
なぜ家族で男だけ顔が普通なのか。
なぜ父親が自頃したのか。

その全てを解決する解決編は、明日かそれ以降で!!

では!!!

312: 2012/10/10(水) 12:25:10.59
男「そもそも、なんで君みたいな可愛くて、誰からも愛されるような女の子が魔法を使えるんだ!」

後輩「やだなぁ、先輩。その質問は本末転倒ですよ」

男「……え…」



後輩「先輩だって、自分の事を不細工面で誰からも愛されない小さくて愚かな存在だと思ってたんでしょう?」



男「…あ……」

後輩「そして、絶望の淵で魔法を見つけた。魔法は痛みも、苦しみも、辛さも、なにより…醜い自分でさえも消してくれた」

男「ま、さか……その姿は?」

後輩「ええ、そうです。私の本当の姿はこっちです」スッ




男「…………いもう、と?」




後輩「初めまして先輩♪ これが私です」ニコッ

男「お前……妹だったのか?」

後輩「…やっぱ先輩はアホですね」

313: 2012/10/10(水) 12:30:46.44
男「だってそのジャイコみたいな顔! ずんぐりした体型! どう考えても俺の妹じゃないかっ!!」

後輩「………っ」イラッ

男「戻ってこい! 妹! お前はこんなことしなくても絶対に幸せになれる!!」

後輩「だまれぇええええええ!!!」



―――ザンッ!!



男「………僕の…足?」



―――ボトッ。



男「あぁあああぁああああああ!!!!」ジタバタ

後輩「いやぁ、さすが男の子ですねぇ。魔法剣だなんて私には思いつきませんでした」

男「い、いぎぃ…っ!! あ、あしがぁ!」

後輩「………うるさいですね」パァ

男「………いたくなくなった…」ハァハァハァ

後輩「まぁ、痛覚を無くして止血しただけですから、片足はまだないですけど」

男「頼む…足を戻してくれ」ハァハァ

後輩「その前に私の話をもっと集中して聞くことです。もしまた愚かな言動をすれば…」ヒュンッ

男「ひっ…」ビクッ

後輩「次は頭ですよ」ニコッ

男「………」ブンブンブン


314: 2012/10/10(水) 12:39:08.50
男(話を整理するんだ…。目の前にいたのは後輩。後輩は本当の姿と言って妹の…ジャイコみたいな姿になった。俺は妹だと思って説得しようとしたら……あ、足を斬られた…)ゾクッ

後輩「もちろん心も読んでますからね」ニコッ

男「………っ」

男(つまり、目の前にいる妹は妹じゃない。……おそらく後輩なんだろう。…ならなぜ妹の姿を?)

男「………まさか?」

後輩「……そうです」



男「その姿が本当に後輩自身なのか?」



後輩「…これが、私です」

男「なら妹は…?」ガクガク

後輩「その話をする前に、私の絶望を聞いてください」

男(それじゃあ妹は本来別の姿を? だけど、妹が別の姿だった記憶がない…いや、それも嘘の魔法なら…)

後輩「………」パチンッ

男「………な? え?」グゥッッ

男(胸が…急に苦し…痛い…う、うぅ…)

後輩「あなたが話を聞かないから胃袋を消してやりました。胃酸が広がって地獄の苦しみじゃないですか?」

男「あ、あが……が…」プルプル

後輩「………」パチンッ

男「……っ、ぁあああぁあぁあぁ!!」ゼーッゼーッ

後輩「話はちゃんと聞いてくださいね?」

男「………あ、ああ、分かった」コクン


315: 2012/10/10(水) 12:47:27.85
後輩「私はとても幸せな環境の下に生まれた。両親はお金持ちで、人望もあって、それなのに毎日私の相手をしてくれて、まさに幸せの頂点のような場所で育った」

男「………」

後輩「小学中学高校と、私立の男子禁制エスカレーター式の学園に通い、順風満帆な人生を歩んでいた」

男(ならなぜ…)

後輩「……だけど、あなたが全てを変えたのよ」キッ

男「俺が?」

後輩「ええ。高校一年の時だった。私は生まれて初めて学園の友達と街へ遊びに出かけたの。そこは下らない文化の集合体だったけど、それが逆に私を刺激した。…とても楽しかった」

後輩「……その帰り道、私はまるで三流小説のように不良たちに絡まれた。怖かった…」



後輩「そこで、あなたが現れたのよ」


男「……俺が…」

316: 2012/10/10(水) 12:48:37.16
うわ、時間やベー!!

続きは後で!

では!!

320: 2012/10/10(水) 21:10:34.71
後輩「まぁ、三流小説…いえ、少女マンガと違ったところは先輩が不良にボコボコにされたところかな」

男「………簡単に想像できる…」

後輩「それでも、その行動は私の心を奪うには十分だったし、それ以上に傷だらけの先輩の笑顔は…かっこよかった」

男「…そこは想像できないな」

後輩「そして、私は何度も何度も先輩に会いに行った。先輩はいつも優しかったし、門限ぎりぎりまで遊んでくれた」

男「………」

後輩「私たちは付き合っていると思っていた。……私だけは」

男「違ったのか?」

後輩「……学園からよく抜け出す私を疎んじた同級生は、…私をいじめのターゲットにした」

男(答えてくれない…答えたくないのか?)

男「いじめ? 他の子たちも遊びに行けばいいじゃないか」

後輩「それはできないの。私は両親が多額の寄付を学園に行っていたから…特別だったの」

男「……なるほど」

321: 2012/10/10(水) 21:17:59.28
後輩「いじめはだんだんエスカレートしていったわ。あなたが受けた仕打ちに比べても遜色ないくらいに」

男(女の子であのレベルのいじめを受けたら…)ゾク

後輩「そう、私は世界に絶望したわ。……裸で学園から放り出された時にね」

男「ひどい……」

後輩「あなたみたいに体中落書きされて知らない街へ置き去りにされるよりマシよ」

男「………」

後輩「それでも、私は絶望した。……そして、目の前の光に手を伸ばした」

男「その時、魔法使いになったと…」

後輩「私はそれを魔法なんてきれいな言葉で呼ばなかったわ」

男「なんて呼んでたんだ?」


後輩「……復讐の道具よ」


男(僕は世界に絶望しつつも自分への希望と愛を捨てた。それはさながら自虐…。後輩は他人を…)

後輩「あははっ、他人に殺されて自分でも頃すなんて愚かな行為ね先輩!」

男「……自分でもそう思うよ…。しかも結果的に他人の存在まで消してるしね」

後輩「私は存在を消すなんて負け犬な行動はとらなかったわ! 私をいじめた糞みたいな奴らを、そいつを育てた親を不幸のどん底に突き落としてやったの!!」アハハッ

322: 2012/10/10(水) 21:28:03.61
後輩「それでも、……二つだけ希望があった。私はそれにすがったわ」

男「………両親」

後輩「そして、あなたよ先輩」

男(なんだろう…いやな予感がする)

後輩「正解よ。私はまず両親の下へ走った。そして、私は泣きながら聞いたの。



 私を産んで良かった、って」



男「……結果は?」

後輩「もちろん、心から良かったと即答してくれたわ。……言葉ではね」

男「心を読む魔法…」

後輩「心の中では、私に対するどす黒い感情が渦巻いていたわ。こんな不細工産まなければよかった。いても邪魔なだけ。全寮制の学園に入れたのに何で戻ってきたんだ。そのほかにもいっぱいののしられた…」

男「……待て、待て待て。それじゃあ、お前はその時初めて…」

後輩「ええ、いじめっ子たちの言葉は信じなかったけど、両親の心を覗いて初めて知ったわ…


私が不細工な顔だってね」


男「そんな……」

後輩「私は世界に絶望した後、すぐに自分に絶望した。……氏のうと思ったわ」

男「顔なんて魔法で…」

後輩「……先輩、あなたが魔法で“造った顔”を褒められて喜んだことが一度もないことは知ってますよ」

男「………」

323: 2012/10/10(水) 21:41:46.95
後輩「氏の間際、私は思い出した。……私には、もう一つ希望があるって」

男「それが…僕」

後輩「私は走った。力なんて必要じゃなかった。先輩に会いに行くのに復讐の道具なんて醜いもの使いたくもない。…そして、先輩の下に着いた」

男「それで、どうしたんだ僕は…」

後輩「どうもしてないわ。私は話しかけられなかった」

男「なぜ?」

後輩「……あいつがいたからよ」

男「あいつ…?」

後輩「あなたの……とても可愛い妹よ」

男「………!?」

後輩「先輩が可愛いと思っていた私は、…あなたの妹の本来の姿よ」

男「な、なんだって……」

後輩「だって、酷いじゃないですか。あんなに可愛い妹を見て毎日過ごしてたってことは、私がいかに醜いか知ってたってことでしょ? それなのに私に期待を持たして心を奪って……」

男「それで…“それだけで”妹を?」

後輩「それだけじゃないわ!!」ガッ

男「くぅっ…」

後輩「あなたの妹はねっ!」ガッ

後輩「目の前を横切った不細工な男に向かって!」ガスッ

後輩「“うわぁ、きたな…”って思ったのよっ!!」ドガッ

男「がぁっ!!」

329: 2012/10/11(木) 02:10:32.62
後輩「私から見たらその横切った男も別に普通の男の子だったわ。狭い道を並んで歩くあなた達に気を使って歩くスピードを少し緩めるくらいね!」グリグリ

男「あ、足…ぐぅ…」

後輩「……はぁはぁっ…。でも、妹がそんな醜悪な心で私を傷付けている間、先輩はなんて思ってたのか気になる?」

男「……っ、くっ、はぁはぁ…。…僕も、同じことを?」

後輩「違うわ。あなたはもっと……いえ、それは自分で判断してもらいましょう」

男(僕はなんて言ったんだ?)ハァハァ

後輩「あなたはね。



……明日はどうやって友をイジメさせよう。って思ってたのよ」



男「う…そ、だ」

後輩「私は愕然としたわ。あの優しかった先輩が、笑顔の素敵な先輩が、まさか“私を苦しめたあいつら”と同類だなんて!」

男「嘘だ……」ガクガク

後輩「私だって嘘だって信じたかった!! 事実最初は信じたわよ! 何かの間違いだって!! ……でも、現場を見ちゃったら仕方ないじゃない…」ポロポロ

男(涙…?)

後輩「涙も流すわよ……。私の大好きな先輩が、

……自分を親友だって信じている友さんと、あなたを好きだって告白した黒髪さんを…、




無理やりさせてたんだからっ!!!」





男「―――――は?」


330: 2012/10/11(木) 02:19:55.77
男(嘘だ…信じたくない…いや、これも魔法じゃないのか…でも、いや…)

後輩「信じたくないですよね。その気持ち分かります。でも、おかしいとは思いませんでした?



何故、あなたを苛めるように指示を出した黒髪さんがあなたをすぐに好きになって、友さんが何に変えてもあなたを守ろうとしたか」



男(たしかに、友がそこまでしてくれたのは感謝しきれない一方で腑に落ちない。…黒髪さんは)

男「僕は黒髪を信じてる」

後輩「…まぁいいでしょう。で、話は戻りますけど、絶望のどん底にいると勘違いしていた私は、気付いたら自分が何者であるかさえも分からないくらいの深さに達していた」

男「………」

後輩「そして思った。なぜ醜いあいつが可愛くて、これだけ苦しんだ私が不細工なのかって…」

男(そして、妹と見た目を交換した…)

後輩「…念入りに生まれた時まで遡ったわ。辻褄を合せるためにあなたの両親には不細工になってもらった」

男「なん、だって?」

母『ごめんね…』

父『すまんなぁ…』

男「お前のせいで…両親が……?」グググッ

後輩「怒ったって無駄です」パチンッ

男「―――あっ……」ドサッ

男(力が……入らない)

後輩「感謝してくださいね。私は先輩の見た目は変えてませんから」ニコッ

男「こう…は、い」ググッ

331: 2012/10/11(木) 02:31:14.05
後輩「それから、黒髪さんを黒幕においてあなたを苛めるように仕向けた」

男(説得の魔法か…)

後輩「妹が苛められたのも当然私の力。と、言っても最初だけで後は勝手に盛り上がっていたけど…」

男「……友は何故助けに?」

後輩「………友さんまでイジメに加担したら先輩はとっくに自頃してますよ」アハハ

男「……たしかに」

後輩「それでも、友さんの手は届かず、妹には嫌われ、家族は役に立たず、あなたは絶望に堕ちていったわ」

男(そして、魔法を知った)

後輩「魔法を使えるようになってからの先輩はちょっと素敵でした。…だって、私と同じようにイジメの加害者に復讐していったんですもの」

男「ちがうっ!! 僕は……」

男(怖かった…だけだ)

後輩「どう言い訳しようと、あなたが多くの人間をこの世から消し去ったのは事実ですよ。それは私にはできなかったことです」ニコニコ

男「………やめてくれ」カタカタ

後輩「やだなぁ、壊れないでくださいよ。話はまだ続くんですから」

男「………誰が…、壊れるか…よ」

後輩「それじゃ続けます。魔法を覚えた先輩は、ある日、クラスメイトを消した重責から逃れるため、希望と愛を使って分身を造ります」

男「違う、僕はそんな理由じゃ……」

後輩「否定したいですよね。まぁ、そうやって生まれたのがマモノさんです」

男「……マモノ」

男(やっぱお前がいないと…)

後輩「愚かしくも先輩は話し相手と魔法で毎日を満たしていった」

男「………」

後輩「そして、高校生になり、新たな友達ができた」

332: 2012/10/11(木) 02:31:40.20
風呂行ってきま―す。

333: 2012/10/11(木) 02:44:16.49
ただいまー続きー。

334: 2012/10/11(木) 02:57:04.61
後輩「他人を消すほどの力を持っていながら、先輩は魔法を下らないことに使い続けた」

男「……怖かったんだ」

後輩「何がですか? 魔法の力が? クラスメイトを消したことが?」

男「………魔法を使う代償が…」

後輩「自分を傷付けることを恐れた。……ふふっ、本当に弱くて浅はかでつまらない人間ですね先輩♪」ニコッ

男「………」

後輩「でも、なんで急に色んな魔法を使いだしたんでしょうね?」

男「それは、女に覗いてるのがばれて…それで…」

後輩「化物が増えて?」

男「そう、僕の周りで事件が増え……まさか?」

後輩「まさかって当たり前じゃないですか。私ですよ私」クスクス

男「化物化も化物も、全てお前の仕業だったのか?」

後輩「あ、ちなみに、化物とか化物化とか全部私が造ったものですから」クスクス

男「………なんてこった」

後輩「マモノさんには適度に知恵を与えた。するとあなたに対する愛が膨れていった。…そして、愛は暴走した」

男「それで、僕から知の魔力を?」

後輩「さぁ? そればっかりは本人しか分からないけど、とにかくあの時のマモノさんはあなたを強くすることしか頭になかった」

男「幼馴染として僕の前に現れたのも?」

後輩「……マモノさんなりにあなたの身を守ろうとしたんじゃないですか? 知の魔力が増えすぎて、感覚的に私の存在を捉えていましたから」

男「それで俺から魔力を全て…」

後輩「私の存在を化物化と重ねちゃって、あなたに危険が降りかかると判断したんでしょうね」

男「そして、無防備になった俺の前に……お前が現れた、と」

後輩「どうですか? 何か質問はありますか?」

男「………」

339: 2012/10/11(木) 13:15:56.95
男「なんで……いまさら?」

後輩「それはもちろん、先輩が力を失う機会を待ってたからですよ」

男「もしマモノが持っていかなくても…」

後輩「なんかしらの方法で奪っていたでしょうね」

男「それで…、全部話して…どうするつもりだ?」

後輩「そうですねぇ…。家族が崩壊したのも、友達に苛められたのも、全て私が仕組んだことだって知って、絶望したら殺そうかとも思いましたけど………その顔」

男「………」

後輩「絶望とは程遠いですね」ヤレヤレ

男「…俺の絶望はマモノが持って行ったからな」




後輩「じゃあ、そのマモノさんを消したらあなたに絶望が帰ってくるんですかね」ニヤァ




男「やめろ」

後輩「あー、そうだそうだ。あなたの大切な可愛い妹さんは現在マモノさんと一緒にいるみたいですよ。一緒に呼んであげますね」バッ

340: 2012/10/11(木) 13:38:02.89
―――外国のどこか。

マモノ「………来たみたい」

妹「何が?」

マモノ「引っ張られる…。どうやら、“元凶”がお呼びのようね」

妹「……あ、私も」

マモノ「とても準備は万端だとは言えないけれど、妹ならうまくやれる」

妹「や、やだよ…。マモノさんがいなくなるなんて…」

マモノ「いなくなるわけじゃない。……“還るだけ”」

妹「……“男兄ちゃん”の元に…」

マモノ「あいつに勝つためだとは言え、ご主人……いや、“僕”には苦労をかけた」

妹「………でも、お兄ちゃんが原因なんでしょ? 友さんを苛めて、友さんと黒髪さんを…」

マモノ「ああ、あれ? いや、まぁあれは“俺”が原因だけど…違うの」

妹「どういうこと?」

マモノ「いや……友を苛めるって言っても友達としての節度は守ってるし、もちろん俺達は対等な関係だった」

妹「じゃあ、二人をせ、…」カァ///

マモノ「あれは俺が二人は両想いだと思ってて、でも結局してないみたい」

妹「え、ということは?」

マモノ「うん、元凶の勘違い。イジメなんて当人と他人じゃ尺度が違うでしょうし、性行為を見るところまでは年頃の元凶じゃ見れなかったのね」

妹「そ、それで私達は……」ガクガク

マモノ「怒りに囚われちゃだめ。元凶は氏ぬほど苦しんだでしょうし、あなたにはもう気持ちが分かるはず」

妹「……うん。私、調子に乗ってた。他人が傷つこうが関係ないって…」

マモノ「でも今は違う」

妹「うん。…うまくやれる」

マモノ「……もう限界ね」

妹「……怖い」ギュッ

マモノ「大丈夫。……向こうに行ったら叫ぶのよ」

妹「うん」




――――さぁ、行きましょう。。。




341: 2012/10/11(木) 13:44:22.63
後輩「……こいっ!」バッ

妹「………」パッ

マモノ「………っ!」ダッ

男「妹! マモノ!!」

マモノ「………ぁ」ドサッ

妹「マモノさん!!」

後輩「させると思ってるの?」ニヤニヤ

男「マモノ!!」

マモノ「くそ…後少し、なのに…」ググッ

後輩「私は心を読めるのよ。あなたが何をするつもりなのかなんてお見通しよ」





妹「後輩さんは男としたいぃぃいいいぃいいい!!!!」カァ////





後輩「なっぁ!?」ビクッ

マモノ「………っ、今だっ」ダッ

男「マモノ!!」ダッ

後輩「しまっ――」

マモノ「ああ! 離ればなれなんて嫌だ! “俺”!」ガシッ

男「俺もだっ! 汚いところも、痛みも、苦しみも全部大切な“僕”なんだっ!」ギュッ

後輩「………くそっ」

妹「マモノさんが消える…」



男「―――消えてなんかないさ。“還った”んだ」ニコッ




342: 2012/10/11(木) 13:55:59.21
男(ああ、分かった。全部思い出した…)

後輩「このっ――」

男『隔離の魔法』

後輩「あ……私の…」ガクッ

男「君の魔力は全て“隔離”した。もう何もできない」

後輩「あ、ああ…、私の…私のぉ…」

男「……後輩。俺には君を救うことも、手を差し伸べることさえもできない…」

後輩「………」

男「だけどな。君を救える人ならいる」パチンッ

イケメン「―――あ、あれ? ここどこだ!?」キョロキョロ

後輩「イケメン……先輩…」

後輩(あ……私、今…“本当の顔”…)

イケメン「……あれ? 後輩もいる」ニコッ

後輩「……え…」

男「イケメンはバカだけど、本当に大切なものが何か分かってる“すごい奴”なんだ。知ってるだろう?」

後輩「あ、ああ…あぁああ!!」

イケメン「……よしよし、何かわからんけど辛かったな」ギュッ

後輩「ごめんなさい! ごめんなさいぃぃ!!」ギュゥゥッ

男「………妹」

妹「…男、兄ちゃん」グスッ

343: 2012/10/11(木) 13:59:18.19
男「俺のせいで…ごめんな」

妹「私のせいで…ごめんなさい」

二人「………ぷっ」

男「元の顔に戻すな」サッ

妹「うん」

男「……可愛いな」ナデナデ

妹「ちょっと…照れるじゃない」カァ///

男「まぁ、黒髪の方が好みだけどな」

妹「………むぅ」プクーッ

男「……でも、大切な俺の妹だ」ギュッ

妹「あっ……うん、私も」ギュッ

男「全部…終わったんだな」


344: 2012/10/11(木) 14:06:55.95
――数日後、遊園地。

黒髪「おっとこー♪ はやくはやくぅ♪」

男「ああ!!」タタタッ

男(……この世界は、何もかもうまくいかない)

妹「ちょっと待ってよお兄ちゃん!!」タタタッ

男(どうやっても俺達が変えた過去は戻せなかったし、氏んだ人は生き返らなかった。…マモノは女さんを生き返らせたのに)

後輩「イケメン先輩、私達も早く!」

イケメン「おっけー。でも、足元に気をつけてな」

後輩「う、うんっ」カァ///

男(それでも、世界は待ってなどくれないし、俺達は生きている)

男「黒髪!!」

男(大勢の他人にとって胸糞悪い話だけど、俺は幸せになる)

黒髪「え、何!?」





男「黒髪、大好きだっ!!」





終わり。

345: 2012/10/11(木) 14:07:54.10
女「え? 私は?」

男「あ、えっと、出せなかった…」

女「魔法使いなのに?」

男「……魔法使いなんてこんなもんさ」

女「…さいてー」ジトッ




本当の終わり。

346: 2012/10/11(木) 14:09:16.01
終わった―!!

駄目だ―!!

竜頭蛇尾一直線だぁああ!!

全ての読んでくださった方、ありがとうございました!!

349: 2012/10/11(木) 14:56:28.79
おつかれさん

350: 2012/10/11(木) 15:24:15.69
中間が分からないところがあったり、ご都合主義なところがあったり
まあ終わり良ければすべて良しって感じかな

286: 2012/10/09(火) 22:25:33.32
脳みそおかしくなってくる
描写不足なのか知らないけどとにかく意味がわからない

361: 2012/10/12(金) 06:51:16.49


妄想垂れ流してるだけって感じだな
完成された作品と違って一緒に妄想してるような感覚で俺は楽しめた

引用元: 男「本当の魔法使いはこんなもんさ」女「さいてー」