1: 2012/12/06(木) 12:27:04.33
女「バディスター」
男「いやだからなにそれ」
女「バディ……それは英語。兄弟、相棒の意」
男「そうだな。でスターは星や有名人を指す言葉だ。で、なにそれ」
女「……私も知らない」
男「……そうか」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354764424/
男「いやだからなにそれ」
女「バディ……それは英語。兄弟、相棒の意」
男「そうだな。でスターは星や有名人を指す言葉だ。で、なにそれ」
女「……私も知らない」
男「……そうか」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354764424/
2: 2012/12/06(木) 12:27:29.26
女「相棒の星、相棒は有名人、星の兄弟、芸能人が兄弟」
男「そん中だったら星の兄弟が一番好きかな」
女「星の相棒」
男「壮絶なドラマを思い起こさせるな」
女「……それで、バディスターって知ってる?」
男「だからなにそれ」
女「私も知らない」
男「そん中だったら星の兄弟が一番好きかな」
女「星の相棒」
男「壮絶なドラマを思い起こさせるな」
女「……それで、バディスターって知ってる?」
男「だからなにそれ」
女「私も知らない」
3: 2012/12/06(木) 12:28:28.33
男(なんだろうな。突然話しかけてきたかと思えば意味の解らん質問を……。
暇なのか? 暇つぶしか? ようし、それなら、俺も暇だ)
男「バディスターってのはもしかしたら俗称なのかもしれない」
女「俗称?」
男「うん。俗称……なんのかは知らないけど」
女「……西暦1765年から1767年、西の大陸インタラストで起こった殺人事件の、俗称?」
男「えらい具体的かつ物騒な話になったな。うん、まあそんな俗称かも」
女「どんな事件だった?」
男「うーん……もはや、伝説だった、とか?」
暇なのか? 暇つぶしか? ようし、それなら、俺も暇だ)
男「バディスターってのはもしかしたら俗称なのかもしれない」
女「俗称?」
男「うん。俗称……なんのかは知らないけど」
女「……西暦1765年から1767年、西の大陸インタラストで起こった殺人事件の、俗称?」
男「えらい具体的かつ物騒な話になったな。うん、まあそんな俗称かも」
女「どんな事件だった?」
男「うーん……もはや、伝説だった、とか?」
4: 2012/12/06(木) 12:29:48.03
女「伝説? どうして?」
男「そうだな……西の大陸インプタストの」
女「インタラスト」
男「そうそう、インタラスト。その辺境の町に語り継がれる旅人の話があるんだ、ろうな」
女「……神話?」
男「神話……イメージとしては民話だな。対して違いはないけど」
女「……言い伝え」
男「そうそう、それがしっくりくる」
男「そうだな……西の大陸インプタストの」
女「インタラスト」
男「そうそう、インタラスト。その辺境の町に語り継がれる旅人の話があるんだ、ろうな」
女「……神話?」
男「神話……イメージとしては民話だな。対して違いはないけど」
女「……言い伝え」
男「そうそう、それがしっくりくる」
5: 2012/12/06(木) 12:30:30.99
男「その言い伝えはこの殺人事件を元にしてるんじゃないか、ってのが民俗学者の一説」
女「類似する点……妖怪?」
男「妖怪とはちょっと違うかも。その殺人事件は人間の手によって行われたことに間違いなかったようだし」
女「……」
男「どうした?」
女「……心臓が高鳴ってる」
男「楽しいのか? そりゃよかった」
女「類似する点……妖怪?」
男「妖怪とはちょっと違うかも。その殺人事件は人間の手によって行われたことに間違いなかったようだし」
女「……」
男「どうした?」
女「……心臓が高鳴ってる」
男「楽しいのか? そりゃよかった」
6: 2012/12/06(木) 12:31:13.21
女「どんな言い伝え?」
男「だよな、そっから決めなくちゃな。んー……例えば、この学校にもそれっぽい話があるだろ?」
女「それっぽい?」
男「怪談話。ああ、学校の七不思議っていうのか」
女「……三階の女子トイレ、一番奥から二番目は放課後使用してはいけない」
男「それそれ。後はベタに銅像だったり、階段だったり、時計関連だったり、十年に一回自殺者が出たり、とな」
女「……十年に一度自殺者?」
男「らしいぞ。この学校、まだ開校してから二十年しか経ってないのに。
ともかく、そんな感じの言い伝え……があるんだろう」
女「……どんな?」
男「どんなのだと思う?」
男「だよな、そっから決めなくちゃな。んー……例えば、この学校にもそれっぽい話があるだろ?」
女「それっぽい?」
男「怪談話。ああ、学校の七不思議っていうのか」
女「……三階の女子トイレ、一番奥から二番目は放課後使用してはいけない」
男「それそれ。後はベタに銅像だったり、階段だったり、時計関連だったり、十年に一回自殺者が出たり、とな」
女「……十年に一度自殺者?」
男「らしいぞ。この学校、まだ開校してから二十年しか経ってないのに。
ともかく、そんな感じの言い伝え……があるんだろう」
女「……どんな?」
男「どんなのだと思う?」
7: 2012/12/06(木) 12:31:43.94
女「……旅人がいた」
男「ほう、旅人か。そりゃまた雰囲気が出るな。それで?」
女「旅人は彷徨っていた」
男「ふんふん」
女「お腹が空いて倒れた」
男「おお、そこで旅人を助ける者が」
女「現れず氏んだ」
男「……そりゃ言い伝えじゃなくて教訓だ」
女「お腹が空いたらご飯を食べましょう?」
男「旅をする時は入念に準備をしましょう、だな」
男「ほう、旅人か。そりゃまた雰囲気が出るな。それで?」
女「旅人は彷徨っていた」
男「ふんふん」
女「お腹が空いて倒れた」
男「おお、そこで旅人を助ける者が」
女「現れず氏んだ」
男「……そりゃ言い伝えじゃなくて教訓だ」
女「お腹が空いたらご飯を食べましょう?」
男「旅をする時は入念に準備をしましょう、だな」
8: 2012/12/06(木) 12:33:43.61
男「そこで誰かが現れて旅人を助けたとしよう」
女「うん」
男「旅人を助けたのは若い村娘だった。そんで、甲斐甲斐しく看病をされたこともあり、旅人は元気になった」
女「よかった」
男「いつしか二人の間には愛が芽生えていた」
女「えんだー」 男「えんだー」ハモッタ
女「……」
男「……//」
女「うん」
男「旅人を助けたのは若い村娘だった。そんで、甲斐甲斐しく看病をされたこともあり、旅人は元気になった」
女「よかった」
男「いつしか二人の間には愛が芽生えていた」
女「えんだー」 男「えんだー」ハモッタ
女「……」
男「……//」
9: 2012/12/06(木) 12:34:32.02
男「村は二人の愛を祝福した。けどそんな折、とても悲しい事件が起きた」
女「……」
男「村娘は盗賊に殺された」
女「酷い」
男「うん、けど酷いのはここからで、村娘が氏んだのは旅人のせいだと村人達は罵った」
女「どうして?」
男「元来、旅人というのは敬遠される存在だった。
どこの村でもそうだけど、部外者ってのは弾かれるもんなんだ。
それまでは良かった。村娘は誰が見ても幸せだったし、旅人も善人だったんだから。
でも、村娘は氏んでしまった。
旅人は災厄の元だと、村人達は旅人を迫害した」
女「……」ポロポロ
男「え!?」
女「……」
男「村娘は盗賊に殺された」
女「酷い」
男「うん、けど酷いのはここからで、村娘が氏んだのは旅人のせいだと村人達は罵った」
女「どうして?」
男「元来、旅人というのは敬遠される存在だった。
どこの村でもそうだけど、部外者ってのは弾かれるもんなんだ。
それまでは良かった。村娘は誰が見ても幸せだったし、旅人も善人だったんだから。
でも、村娘は氏んでしまった。
旅人は災厄の元だと、村人達は旅人を迫害した」
女「……」ポロポロ
男「え!?」
10: 2012/12/06(木) 12:35:07.29
男「な、泣くなよ。作り話だぞ?」
女「……旅人の無念が流れ込んできた。私はとても悔しい」
男「そ、そうか……止めにするか? これ」
女「だめ、続けて」
男「わかった……」
女「……旅人の無念が流れ込んできた。私はとても悔しい」
男「そ、そうか……止めにするか? これ」
女「だめ、続けて」
男「わかった……」
11: 2012/12/06(木) 12:35:45.85
男「迫害された旅人だけど、村人を恨むことはしなかった。
善人だから? 違う。理解者だから? 違う。
旅人の憎悪は盗賊にのみ注がれていた」
女「旅人、可哀想」
男「まあ、そうだな。民話にしろ民謡にしろ、悲惨なものが多いな」
女「つ づ き」
男「お、おう。
来る日も来る日も旅人は盗賊を探し歩いた。けれども一向に盗賊は見つからない。
食べる物もなく、飲む物もなく、愛する物も失って、旅人はいつかと同じように倒れて……
誰に助けられることもなく、氏んでしまった」
女「……誰も救われない?」
男「救われはしないが、ここで話は終わらない。
なにもかも失った旅人だけど、一つだけ燃え尽きない物があった。そう、憎悪だ」
善人だから? 違う。理解者だから? 違う。
旅人の憎悪は盗賊にのみ注がれていた」
女「旅人、可哀想」
男「まあ、そうだな。民話にしろ民謡にしろ、悲惨なものが多いな」
女「つ づ き」
男「お、おう。
来る日も来る日も旅人は盗賊を探し歩いた。けれども一向に盗賊は見つからない。
食べる物もなく、飲む物もなく、愛する物も失って、旅人はいつかと同じように倒れて……
誰に助けられることもなく、氏んでしまった」
女「……誰も救われない?」
男「救われはしないが、ここで話は終わらない。
なにもかも失った旅人だけど、一つだけ燃え尽きない物があった。そう、憎悪だ」
12: 2012/12/06(木) 12:36:34.28
男「下級の悪魔が旅人の魂に誘いを持ちかけた。
『魂を食わせろ。代わりに力をやる』
一もニもなく旅人は契約した。そして盗賊を探し出し、復讐した」
女「……よかった。それで、悪魔に食べられちゃったの?」
男「いや、食べられなかった」
女「どうして?」
男「旅人の魂が悪魔の力を上回ったから」
女「むね、あつ」
男「そうでもないと思う」
『魂を食わせろ。代わりに力をやる』
一もニもなく旅人は契約した。そして盗賊を探し出し、復讐した」
女「……よかった。それで、悪魔に食べられちゃったの?」
男「いや、食べられなかった」
女「どうして?」
男「旅人の魂が悪魔の力を上回ったから」
女「むね、あつ」
男「そうでもないと思う」
13: 2012/12/06(木) 12:37:02.89
男「風の噂で盗賊の氏が村にも伝わった。その後、旅人の呪いだと村人は怖がった。
でも、村人が呪われたことはその先もない」
女「旅人はどうなったの?」
男「未だに盗賊を探して世界を旅している」
女「盗賊は氏んだのに?」
男「盗賊が一人じゃなかったからな。それがとある村に伝わる民話」
女「うん……どうして旅人が悪魔と契約したことを村人が知ってるの?」
男「さあ? なんでだろうな」
でも、村人が呪われたことはその先もない」
女「旅人はどうなったの?」
男「未だに盗賊を探して世界を旅している」
女「盗賊は氏んだのに?」
男「盗賊が一人じゃなかったからな。それがとある村に伝わる民話」
女「うん……どうして旅人が悪魔と契約したことを村人が知ってるの?」
男「さあ? なんでだろうな」
14: 2012/12/06(木) 12:38:37.51
女「作り込みが甘い」
男「咄嗟の思いつきだから勘弁してくれ」
女「でも楽しかった」
男「ありがとう。まあ、バディスターってのはその言い伝えのことをそう呼んでるって話だな」
女「……バディ?」
男「おいこら」
女「あ、バディスター。うん、バディスター」
男「おいこら」
男「咄嗟の思いつきだから勘弁してくれ」
女「でも楽しかった」
男「ありがとう。まあ、バディスターってのはその言い伝えのことをそう呼んでるって話だな」
女「……バディ?」
男「おいこら」
女「あ、バディスター。うん、バディスター」
男「おいこら」
15: 2012/12/06(木) 12:39:12.38
女「……また聞かせてくれる?」
男「こういう話しか? こんなんで良ければ構わんけど」
女「そう。よかった」
男「いや、それよりさ。お前って何年何組なんだ?」
女「よかった」
男「っておい! 人の話を――」
女「」スゥー
男「……消え、た?」
男「こういう話しか? こんなんで良ければ構わんけど」
女「そう。よかった」
男「いや、それよりさ。お前って何年何組なんだ?」
女「よかった」
男「っておい! 人の話を――」
女「」スゥー
男「……消え、た?」
19: 2012/12/07(金) 01:17:40.14
■下駄箱
男(恐くなって逃げ出したはいいけど……なんだったんだ今の)
男(十年前に氏んだ幽霊? まさかな……)ゾクッ
男(うおっ、鳥肌立った)
男(きっとあれだ、俺の妄想だ。友達一人もいない俺の妄想に違いない!)
男「なーんだ妄想かー、あっはっはー!」
男(……それはそれで恐い)
男(もう陽も沈むな。帰ろ)
男(恐くなって逃げ出したはいいけど……なんだったんだ今の)
男(十年前に氏んだ幽霊? まさかな……)ゾクッ
男(うおっ、鳥肌立った)
男(きっとあれだ、俺の妄想だ。友達一人もいない俺の妄想に違いない!)
男「なーんだ妄想かー、あっはっはー!」
男(……それはそれで恐い)
男(もう陽も沈むな。帰ろ)
20: 2012/12/07(金) 01:18:16.27
男(ん? 校門に誰かいる? さっきの子、じゃないよな、はは……)スタスタ
男(さっさと帰って宿題やって――あれ、今日の宿題ってなんだっけ)
男(まあいいか。ってか、大柄な人だな。影が大きい)スタスタ
男(影が……大きすぎないか?)ピタッ
男(どう見ても校門よりでかいよな……2m超えてる)ソロソロ
男(2m……どころじゃない!?)ピタッ
「……」
男「……」ゴクッ
「――ガアアァァァァァアアア!」
男「うわあああああああああああああああああ!」クルッ ダッダッダッ
男(さっさと帰って宿題やって――あれ、今日の宿題ってなんだっけ)
男(まあいいか。ってか、大柄な人だな。影が大きい)スタスタ
男(影が……大きすぎないか?)ピタッ
男(どう見ても校門よりでかいよな……2m超えてる)ソロソロ
男(2m……どころじゃない!?)ピタッ
「……」
男「……」ゴクッ
「――ガアアァァァァァアアア!」
男「うわあああああああああああああああああ!」クルッ ダッダッダッ
21: 2012/12/07(金) 01:18:44.23
男(慌てて教室まで戻ってきちまったけど……まだいるのか?)
男(んー……窓から見る限りいないな。悪戯だったのか?)
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「っ!」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「……」ドキドキ
―――――――――ガラガラガラ
「ウガアアァァァァァアアア!」
男(きたああああああああああああ!)
男(んー……窓から見る限りいないな。悪戯だったのか?)
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「っ!」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「……」ドキドキ
―――――――――ガラガラガラ
「ウガアアァァァァァアアア!」
男(きたああああああああああああ!)
22: 2012/12/07(金) 01:19:11.06
―――――――――キョロキョロ
男(なんだよあれ人間じゃねえよ鬼だ鬼。角生えてるし北斗神拳使えそうな体してるし)
―――――――――ガシッ
男(教壇なんか掴んでどうす……片手で軽々と……)
―――――――――ブオンッ グシャァッ
男「ひっ」(産まれて初めて粉砕を目の当たりした……)
―――――――――ギロッ
男「あ」(見つかった)
男(なんだよあれ人間じゃねえよ鬼だ鬼。角生えてるし北斗神拳使えそうな体してるし)
―――――――――ガシッ
男(教壇なんか掴んでどうす……片手で軽々と……)
―――――――――ブオンッ グシャァッ
男「ひっ」(産まれて初めて粉砕を目の当たりした……)
―――――――――ギロッ
男「あ」(見つかった)
23: 2012/12/07(金) 01:20:07.97
男(逃げなきゃっ)
―――――――――ヒュンッ グシャアッ
男「~~!」
「グウウゥゥゥウウウ……」
男(やばいやばいやばい足が動かない!)
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男(食われるううううううううう!)
―――――――――ガラガラガラ
男(さっきの女子! 消化器!?)
女「」ブシャァァァァ
女「早く逃げて」
男「あ、足が……」
女「……はあ」
―――――――――ヒュンッ グシャアッ
男「~~!」
「グウウゥゥゥウウウ……」
男(やばいやばいやばい足が動かない!)
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男(食われるううううううううう!)
―――――――――ガラガラガラ
男(さっきの女子! 消化器!?)
女「」ブシャァァァァ
女「早く逃げて」
男「あ、足が……」
女「……はあ」
24: 2012/12/07(金) 01:20:35.48
女「こっち」ギュッ ダッダッダッダッ
男「お、おう」ダッダッダッダッ
■屋上
男「はあ、はあ……ありがとう」
女「……ビビり」
男「うっ……でもああいう場合はビビって普通というかなんというか……ごめん」
女「あれ」
男「ん?」
女「なんとかしなきゃ」
男「あんな怪物どうやって」
女「君ならできる」
男「お、おう」ダッダッダッダッ
■屋上
男「はあ、はあ……ありがとう」
女「……ビビり」
男「うっ……でもああいう場合はビビって普通というかなんというか……ごめん」
女「あれ」
男「ん?」
女「なんとかしなきゃ」
男「あんな怪物どうやって」
女「君ならできる」
25: 2012/12/07(金) 01:21:07.50
男「無理無理無理。俺普通の人間だから。特殊能力とかないから」
女「君にしかできない」
男「人の話聞けよ……あんな訳の解らない怪物どうしようもないだろ!?」
女「わからないはずがない」
男「はあ!?」
女「あれを産んだのは私と君だから」
男「……おいおいおい、まさかさっきのが"旅人"とか言うつもりかよ」
女「そう」
男「ありえねえ」
女「君にしかできない」
男「人の話聞けよ……あんな訳の解らない怪物どうしようもないだろ!?」
女「わからないはずがない」
男「はあ!?」
女「あれを産んだのは私と君だから」
男「……おいおいおい、まさかさっきのが"旅人"とか言うつもりかよ」
女「そう」
男「ありえねえ」
26: 2012/12/07(金) 01:21:39.44
女「どうして否定するの」
男「現実的に考えてありえないだろ、適当に作った話だぞ!?」
女「現実的に考えたら怪物は存在しない」
男「うっ」
女「現実的に考えたら私だって存在しない」
男「どういう意味だよ」
女「私は生きてない」
男「……お前、ほんとに……幽霊?」
女「違う。私の元になった者を私は知らない。私は二十年前に氏んだ女生徒の"噂"」
男「……なにそれ」
男「現実的に考えてありえないだろ、適当に作った話だぞ!?」
女「現実的に考えたら怪物は存在しない」
男「うっ」
女「現実的に考えたら私だって存在しない」
男「どういう意味だよ」
女「私は生きてない」
男「……お前、ほんとに……幽霊?」
女「違う。私の元になった者を私は知らない。私は二十年前に氏んだ女生徒の"噂"」
男「……なにそれ」
27: 2012/12/07(金) 01:22:30.62
女「二十年前に女生徒が自頃した。それから噂が流れた。その噂によって私は産まれた」
男「あー……凄く曖昧だけど、なんとなく解った。で、あの怪物もそれと同じ原理で産まれたと」
女「そう」
男「証拠なんてあるわけないだろうし、信じるしかないのか? あの怪物、俺を狙ってたみたいだし」
女「それは当たり前」
男「なんで?」
女「作り出した人が不幸なままにしたから。あの子は怒ってる」
男「んなこと言いだしたら世の中からあらゆる物語が消えそうだけど」
女「君は特別」
男「もっと違う特別がよかった……」
男「あー……凄く曖昧だけど、なんとなく解った。で、あの怪物もそれと同じ原理で産まれたと」
女「そう」
男「証拠なんてあるわけないだろうし、信じるしかないのか? あの怪物、俺を狙ってたみたいだし」
女「それは当たり前」
男「なんで?」
女「作り出した人が不幸なままにしたから。あの子は怒ってる」
男「んなこと言いだしたら世の中からあらゆる物語が消えそうだけど」
女「君は特別」
男「もっと違う特別がよかった……」
28: 2012/12/07(金) 01:22:56.94
男「じゃあどうすりゃいいんだ?」
女「あの子が幸福になれる結末を作ればいい」
男「んなこといったって……俺は芸術肌じゃないんだぞ」
女「センスなんていらない。あの子のことをただ想えばいい」
男「無茶ぶりだな……」
―――――――――ドガァンッ
男「……ほんと、無茶ぶりだ」
「ガアアァァァァアァアアア!」
女「あの子が幸福になれる結末を作ればいい」
男「んなこといったって……俺は芸術肌じゃないんだぞ」
女「センスなんていらない。あの子のことをただ想えばいい」
男「無茶ぶりだな……」
―――――――――ドガァンッ
男「……ほんと、無茶ぶりだ」
「ガアアァァァァアァアアア!」
29: 2012/12/07(金) 01:23:30.68
女「考えて」
男「直ぐにでも氏にそうなこの状況でか!?」
女「逃げ場はない」
男「そりゃ屋上なんかに連れてこられりゃな!」
女「ここしかこれなかった」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「ああもう意味わかんねええ!」
男「悪魔の力を上回って怪物になった旅人だったが、残りの盗賊も頃して憎しみは消えました! おしまい!」
「グガアアァァァアアアア!」
男「消えねえし怒り増してるし!」
女「それは話の本筋じゃない」
男「なんでもいいんじゃねえの!?」
―――――――――ブオンッ
男「あ」
男「直ぐにでも氏にそうなこの状況でか!?」
女「逃げ場はない」
男「そりゃ屋上なんかに連れてこられりゃな!」
女「ここしかこれなかった」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「ああもう意味わかんねええ!」
男「悪魔の力を上回って怪物になった旅人だったが、残りの盗賊も頃して憎しみは消えました! おしまい!」
「グガアアァァァアアアア!」
男「消えねえし怒り増してるし!」
女「それは話の本筋じゃない」
男「なんでもいいんじゃねえの!?」
―――――――――ブオンッ
男「あ」
30: 2012/12/07(金) 01:23:58.35
女「」ドンッ
男「お、いっ!」
―――――――――グシャッ
女「~~~~っ」
男「――っ、だ、大丈夫か!?」
女「……私は生きてないから氏ななっ」
男「めちゃくちゃ痛そうじゃねえかよ!」
女「幸福、な、結……未を、考……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「わかったわかったよくそ! なんでこんなことになってんだ!」
「ガアアァァァァァアア!」
男「お、いっ!」
―――――――――グシャッ
女「~~~~っ」
男「――っ、だ、大丈夫か!?」
女「……私は生きてないから氏ななっ」
男「めちゃくちゃ痛そうじゃねえかよ!」
女「幸福、な、結……未を、考……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「わかったわかったよくそ! なんでこんなことになってんだ!」
「ガアアァァァァァアア!」
31: 2012/12/07(金) 01:24:25.00
男「幸福な結末幸福な結ま」
―――――――――ブオンッ
男「うおおおおおおおおお!」スカッ
男「お、お前のハッピーエンド考えてやってるってのに!」
「グガアアァァァァァア!」キラッ
男「こいつ……泣いてる?」
「グガアァァアア! グガアアアアァッァァァアア!」ポロポロ
男「なんだ、こいつの叫び、妙に胸が苦しくなるっ」
男「怒ってる……悲しんでる……苦しんでる……助けを求めてる?」
「ウガアアァァァァァアアア!」
―――――――――ブオンッ
男「うおおおおおおおおお!」スカッ
男「お、お前のハッピーエンド考えてやってるってのに!」
「グガアアァァァァァア!」キラッ
男「こいつ……泣いてる?」
「グガアァァアア! グガアアアアァッァァァアア!」ポロポロ
男「なんだ、こいつの叫び、妙に胸が苦しくなるっ」
男「怒ってる……悲しんでる……苦しんでる……助けを求めてる?」
「ウガアアァァァァァアアア!」
32: 2012/12/07(金) 01:24:53.95
男「……そうだよな、そりゃ怒るよな。
遊び半分で生み出されて、適当な悲劇乗せられて、
その上最後まで考えて貰えずにいて……苦しいよな。ごめん」
男「なんつーアホなことしちまったんだろ……こんなことになると思わなかったなんて、無責任だよな」
「ウガアアァァァァアアア!」
―――――――――ブオンッ
男「うおっ!」ヒュンッ
男「考える、ちゃんと考えるよ。お前のために」
遊び半分で生み出されて、適当な悲劇乗せられて、
その上最後まで考えて貰えずにいて……苦しいよな。ごめん」
男「なんつーアホなことしちまったんだろ……こんなことになると思わなかったなんて、無責任だよな」
「ウガアアァァァァアアア!」
―――――――――ブオンッ
男「うおっ!」ヒュンッ
男「考える、ちゃんと考えるよ。お前のために」
33: 2012/12/07(金) 01:25:29.54
男(話の本筋? えっと、旅人は村娘を殺されて悪魔になったようなもんだから)
男(そうだ、さっきの結末には村娘のことが話されてない)
男(ってことは村娘が……どうなりゃいいんだ?)
男(氏んでから幸福に……いやそれじゃ現実離れしすぎ――ってアホか俺は。
悪魔やらでてきてんだからんなことはどうだって)
―――――――――ブオンッ
男「しまっ――~~~~っ!?」メキメキメキ グシャッ
男「ぐっあっ……」(息がっ……)
男(そうだ、さっきの結末には村娘のことが話されてない)
男(ってことは村娘が……どうなりゃいいんだ?)
男(氏んでから幸福に……いやそれじゃ現実離れしすぎ――ってアホか俺は。
悪魔やらでてきてんだからんなことはどうだって)
―――――――――ブオンッ
男「しまっ――~~~~っ!?」メキメキメキ グシャッ
男「ぐっあっ……」(息がっ……)
34: 2012/12/07(金) 01:25:59.86
男「あ……っぐ……」スゥー
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「化物になった、旅人は……残りの盗賊を、頃し回った……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「最後の一人を頃しても……旅人の心は癒されなかった……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「憎しみを散らすために旅人は……娘のいた村へと向かった……」
「グガアアァァァァアアアア!」
男「……自分を、迫害した村人に、手をかけようとした旅人の前に、村娘が現れた……」
―――――――――ブオンッ
男「村娘は涙を浮かべて、旅人の頬を張った……」
―――――――――ピタッ
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「化物になった、旅人は……残りの盗賊を、頃し回った……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「最後の一人を頃しても……旅人の心は癒されなかった……」
―――――――――ズシンッ ズシンッ
男「憎しみを散らすために旅人は……娘のいた村へと向かった……」
「グガアアァァァァアアアア!」
男「……自分を、迫害した村人に、手をかけようとした旅人の前に、村娘が現れた……」
―――――――――ブオンッ
男「村娘は涙を浮かべて、旅人の頬を張った……」
―――――――――ピタッ
35: 2012/12/07(金) 01:26:32.74
男「自分のために化物になることを村娘は望んでいなかった」
男「けれど反対に嬉しくもあって、涙が止まらなかった」
男「もう氏ねなくなってしまった旅人に村娘は言った」
男「永遠に傍にいる、と……」
「グウゥ……グガァァア!」
男「そして村にこんな民話ができた。バディスター……永遠の絆の物語」
「グウウゥゥゥ……」シュゥゥゥ
男「行きな……村娘が待ってるその場所へ……ごめんな」
「」シュゥゥゥゥ
男「……ふう」
男「けれど反対に嬉しくもあって、涙が止まらなかった」
男「もう氏ねなくなってしまった旅人に村娘は言った」
男「永遠に傍にいる、と……」
「グウゥ……グガァァア!」
男「そして村にこんな民話ができた。バディスター……永遠の絆の物語」
「グウウゥゥゥ……」シュゥゥゥ
男「行きな……村娘が待ってるその場所へ……ごめんな」
「」シュゥゥゥゥ
男「……ふう」
36: 2012/12/07(金) 01:27:02.92
男「おい……大丈夫か」
女「君よりは平気」
男「そうか……俺も生きてるのが不思議なくらいだ」
女「明日になったらまた会える」
男「噂だからか? はは、変な奴」
女「君ほどじゃない」
男「そうか……じゃ、また明日な」
女「うん、また明日」
女「君よりは平気」
男「そうか……俺も生きてるのが不思議なくらいだ」
女「明日になったらまた会える」
男「噂だからか? はは、変な奴」
女「君ほどじゃない」
男「そうか……じゃ、また明日な」
女「うん、また明日」
37: 2012/12/07(金) 01:27:30.72
■翌日、放課後
男「おーっ、やっとみつけた」
女「」チラッ
男「ったく……お前は知ってたのか? 俺のこと」
女「……なんとなく」
男「そうか……まあ、俺は納得がいったよ」
男「友達と話した覚えがないから友達がいないと思った。
宿題があるのにどんな授業だったのかも解らなかった。
とどめは、生きてんのが不思議な怪我だったのに、もう快調だ」
男「……なんで自頃しちまったんだろうな、二十年目の男子生徒は」
女「知らない」
男「おーっ、やっとみつけた」
女「」チラッ
男「ったく……お前は知ってたのか? 俺のこと」
女「……なんとなく」
男「そうか……まあ、俺は納得がいったよ」
男「友達と話した覚えがないから友達がいないと思った。
宿題があるのにどんな授業だったのかも解らなかった。
とどめは、生きてんのが不思議な怪我だったのに、もう快調だ」
男「……なんで自頃しちまったんだろうな、二十年目の男子生徒は」
女「知らない」
38: 2012/12/07(金) 01:28:07.17
男「お前はずっと一人だったのか?」
女「三階のトイレの花子さんはお茶友」
男「言われてみれば怪談も噂話だったな……」
女「でも、これからは君も一緒」
男「そうだな……それこそバディスターみたく、かな?」
女「私達は噂だから、いつかは消える」
男「なんか不安定な存在だな、俺達」
女「三階のトイレの花子さんはお茶友」
男「言われてみれば怪談も噂話だったな……」
女「でも、これからは君も一緒」
男「そうだな……それこそバディスターみたく、かな?」
女「私達は噂だから、いつかは消える」
男「なんか不安定な存在だな、俺達」
39: 2012/12/07(金) 01:28:36.60
女「ねえ……ディザルディアって知ってる?」
男「おいおい、その遊びはもう止めないか? 痛い目みたばっかりだ」
女「ちゃんと完結させれば問題ない」
男「ハッピーエンドで、だろ? どの道申し訳ないよ、俺のせいで右往左往させるなんて」
女「幸福になればその人にとっても幸福」
男「つってもな……」
女「いつか私達も幸福になれるかもしれない」
男「……はあ。折れないな」
女「それで、ディザルディアって知ってる?」
男「はあ……ディザルディア、ディザルディアなあ……」
男「おいおい、その遊びはもう止めないか? 痛い目みたばっかりだ」
女「ちゃんと完結させれば問題ない」
男「ハッピーエンドで、だろ? どの道申し訳ないよ、俺のせいで右往左往させるなんて」
女「幸福になればその人にとっても幸福」
男「つってもな……」
女「いつか私達も幸福になれるかもしれない」
男「……はあ。折れないな」
女「それで、ディザルディアって知ってる?」
男「はあ……ディザルディア、ディザルディアなあ……」
40: 2012/12/07(金) 01:29:10.13
男「もしかしたら、どこかの国の王女の名前なのかもしれないな」
女「……続けて」
終わり
41: 2012/12/07(金) 01:31:46.75
バッドエンドを書く人達はこんなリスクを背負って物語を紡ぐのであった。
なんてな。
読んでくれてありがとう。
43: 2012/12/07(金) 08:49:21.24
若干急展開ぎみだったけど面白かった。
乙
乙
44: 2012/12/07(金) 09:41:12.60
うーん、確かに結末を急ぎ過ぎたかも。
この手の題材なら男が噂であることとかももうちょい匂わしたり、他にも色々できたかなあ。
同じ題材で地の文軽目で書き直そうかな……いつか気分が乗ったらw
感想ありがとう。
僕は長編、書けないんだ。飽き性だから。
この手の題材なら男が噂であることとかももうちょい匂わしたり、他にも色々できたかなあ。
同じ題材で地の文軽目で書き直そうかな……いつか気分が乗ったらw
感想ありがとう。
僕は長編、書けないんだ。飽き性だから。
45: 2012/12/07(金) 14:04:43.60
面白かったよ
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