1: 2010/03/06(土) 19:49:22.19


早朝の峠に2台のバイクのエキゾーストが響き渡る
前を走るはAprilia RS125
125cc でありながら34psを叩きだす
軽量なボディと相成って上位クラスを突付けるほどのポテンシャルを秘めている
高回転型のエンジンは誰しもがじゃじゃ馬と形容し、乗りこなすのは至難の業であると言われる

対するはHONDA CBR250RR
レッドゾーンが19,000rpmからという超高回転型のエンジンを搭載しているが
決してじゃじゃ馬などでは無く、誰しもが速く走る事の出来る、HONDAお得意の味付けがされて有る
1992年モデルなので45psと言うのも魅力的である


やがて前方を走るCBRがハザードを焚きエスケープゾーンへとバイクを止める
後ろを走っていたRSもそれにならう

そして二人はバイクから降り、ヘルメットを外す

2: 2010/03/06(土) 19:50:09.61


唯「ぷはぁ~、りっちゃんはやっぱり早いなぁ、勝てる気がしないや」

律「嘘つけっ、余裕ぶっこいてたじゃんか」

そして二人同時に笑いあう



律がシートカウルの小物入れから水筒を出す

律「ほら、お茶飲むか?暖かいぞ」

唯「ありがと~、やっぱり早朝は特別冷えるねぇ…あちっ!」

律「ほらほら、そんなに慌てるなって」

唯「えへへ、美味しい」

二人がたわいも無い話をしていると
またバイクの音が近づいてくる


律「お、やっと来たな」

3: 2010/03/06(土) 19:50:49.81
バイクは3台

HONDA VTR250
HONDA VTシリーズの最新車種で有る
信頼のVTシリーズの血を受け継いでおり、その確かな信頼性
Vツイン特有の車幅の細さ、それに伴なう軽量ボディ
250ccらしからぬ低速トルクで中々に侮れない相手で有る


HONDA GB250クラブマン
250cc 単気筒ながら当時の最新技術を投入し、30psを発揮する
先述のVTR以上の軽量ボディに加え、単気筒特有の軽快なパルス感や加速で気軽に走りを楽しめるバイクで有る


YAMAHA セロー225
223cc、20psと、少々非力に見えるが、脚付きの良さ、軽量ボディ、悪路での走破性
それらを全て総合すると相当なコストパフォーマンスを誇る
街乗りでの使い勝手はもちろんのこと、酷道ではその進化を発揮する
また、うまく立ち回れば峠では中々に早いので油断できないオフローダーで有る

5: 2010/03/06(土) 19:52:26.09


その三台のバイクもエスケープゾーンの2人を見つけハザードを焚き停車する
そして三台とも先の2人に倣い降車しヘルメットを外す


澪「律!唯!とばし過ぎだぞ、危ないじゃないか」
VTRから降りた澪が非難する

紬「まぁまぁ、きちんと安全マージンもとってたみたいだし」
GBから降りた紬がそれを宥める

梓「でもやっぱり危ないですよ、くれぐれも事故なんて起こさないでくださいよ?」
そしてセローから降りた梓は心底心配そうに呟く


律「悪い悪い、唯が飛ばしだすからさ、つい熱くなっちゃって」

唯「だってぇ~、RSが飛ばせ飛ばせって急かしてくるんだもん」
そう言って唯は頬を膨らまし抗議する

そして5人になり、また他愛も無い話が始まる…

7: 2010/03/06(土) 19:54:56.23
ここ最近の軽音部の面々は毎朝近場の峠に出向き軽く走ってから登校するのが日課となっている
と行っても毎度々々、律と唯のコンビがかっ飛ばして、残りは置いてけぼりを食らうのだが…
ただ他の面々も早朝以外は走る時間があまり作れないので特に不満も無く峠を走り
いつものエスケープゾーンで登校までの時間を他愛も無い話をしながら過ごすのだった


余談ではあるが、この早朝の習慣のお陰で律と唯の遅刻癖が治ったのであった

9: 2010/03/06(土) 19:55:43.36


授業もつつがなく終わり部活の時間が始まる


律「唯~、最近めきめき上達してるじゃないか」

唯「ありがと、真面目に練習してるもんね」

澪「そういう律こそ、最近走り癖がなくなってきたんじゃないか?」

律「そうか?まぁ私は素質の塊だからな!」

澪「調子にのるなっ」

紬「ふふ、仲が良いわね」ウットリ

梓「でも皆さん、本当に凄いです!私ももっと練習しないとですね」

律「唯~?梓にこれ以上練習されたら追い越されちゃうんじゃないかぁ?」

唯「ひっど~い」プクー

そして、5人の笑い声が部室にこだまする

10: 2010/03/06(土) 19:56:27.06
そして部活も終わり、5人そろって家路につく

すると律が口を開く

律「なぁ、私ら、もうすぐ卒業だろ?
梓はまだだけどさ」

他の部員達はどうしたんだろうと思いながら肯定の趣の返事をする

律「だからさ、みんなでツーリングでも行かないか?」

唯「わ~~、スゴクいいねっ、やろうやろう!」

澪「いいんじゃないか、良い記念になりそうだ」

梓「素敵ですね~、私もやりたいです」

紬「いいんじゃいかしら、もし良ければまた別荘を手配させようか?」

11: 2010/03/06(土) 19:57:07.49
>>8
小刀!!
たしかにそっちの方が合ってるな…

12: 2010/03/06(土) 19:58:12.05
どうやら皆乗り気のようだ
その様子を見た律は満足そうに話しだす


律「だろだろ?で、行き先なんだけどさ
白川郷なんてどうだろう」


唯「しらかわごー?どこなの?そこ」

律「あれだよ、ひぐらしのなく頃にの舞台の」

唯「あ~ひぐらし見てた見てた~
あそこに行くの?」

律「そうだよ、ひぐらしだったら幸い皆アニメ見てたしさ
のどこかなところらしいから丁度いいかと思って」

13: 2010/03/06(土) 19:58:54.26
唯「しらかわごー?どこなの?そこ」

律「あれだよ、ひぐらしのなく頃にの舞台の」

唯「あ~ひぐらし見てた見てた~
あそこに行くの?」

律「そうだよ、ひぐらしだったら幸い皆アニメ見てたしさ
のどこかなところらしいから丁度いいかと思って」

15: 2010/03/06(土) 20:04:21.62


澪「結構遠いんじゃないのか?岐阜だろ?」

律「うーん、300km弱って所かなぁ、まだきちんとは調べてないんだよな」

澪「どんな日程なんだ?さすがに日帰りは無理だろ?」

律「行きは2日弱で、向こうに1日滞在、帰りも二日弱
1週間くらいの予定は空けといて欲しいな」

澪「まぁ順当な感じだな、お前が幹事なんだから
ちゃんと計画たてろよ!」

律「まけせとけって!ばっちり計画立てとくよ!」

澪「信用できないんだよなぁ…」

17: 2010/03/06(土) 20:07:50.89


律「とにかくだ!日程とかは私に任せとけ!
またちゃんと決まったらメールするよ」

澪「まぁ期待しないで待っとくよ」

律「期待しろよ!親友の事信用しろよ!」

澪「前科があるからな、難しいことを言うじゃない」

律「ひでぇ…」

紬「まぁまぁ、みんなで計画立てるのも楽しそうじゃない
いざとなったら、ね?」

澪「ま、そうだな、たぶんそうなるけど」

律「まだ言うか!!」

28: 2010/03/06(土) 20:20:58.27


皆で笑いあいながら各々の家路に就く


家に帰った律は地図とにらめっこをしている

律「距離はだいたい270km位かぁ
私だけだったら高速使って一日で行けそうだけど」

律「梓や澪もいるからなぁ
二日にきっちり分けた方が良いだろうな」

律「てことは1日で135km、高速使えばすぐだけど、どうすっかなぁ
下道でとことこ行くのも楽しいだろうしなぁ」

律「うーん…難しいな…
長引くとテスト休みオーバーしちゃうし…」

29: 2010/03/06(土) 20:27:19.99


律「この辺は明日皆に聞いた方が良いかもしれないな
あとは宿だ、野宿も楽しそうだけど、この時期は風邪ひきそうだな」

律「だとすればビジネスホテルか、135km地点あたりで検索っと」

律「なになに?1泊素泊まりで2人部屋が8000円か
ここでいいだろ」

律「宿の予約は計画がきちんとたってからだな」

律「どっちにしろ明日皆の意見を聞こう
じゃないとなんにも始まらないや」

30: 2010/03/06(土) 20:28:21.48
高速乗ったら捕まるのが1台おられるな

31: 2010/03/06(土) 20:28:53.17
>>30
完璧に忘れてた

37: 2010/03/06(土) 20:35:33.62


翌日の部室にて律が皆に意見を聞いている

律「日程なんだけど、1日で135km
唯が125ccだから高速は無しだ、景色とかも楽しみたいしな」

部員一同が頷く

律「んで、少しおおめに見積もって5時間くらいだ、休憩も込でな」

律「宿は適当に検索したら良さげなのがあったからそこで」

律「んで二日目で白川郷到着、適当に観光、次の日も適当に観光、帰りは行きと一緒の日程にしようと思う」

律「…どうした…?」
律が怪訝そうにするのも仕方がない
部員全員が口を半開きにしてあっけに取られているからだ

38: 2010/03/06(土) 20:39:33.78

律「な…なんだよ…」

澪「いや、なんかちゃんとやってるなって…」

梓「私も正直驚きです…」

唯「ワタシハシンジテタヨ」

律「嘘つけ!棒読みなんだよ!」

澪「それにしても律、見直したぞ、やれば出来るじゃないか
ちょっと適当な所もあるけどほとんど予定たってるじゃないか!」

律「やれば出来るんだよ、やればな」

律意外(つねにやってくれよ…)

44: 2010/03/06(土) 20:50:47.04


律「まぁ冗談は置いといてだ
細かいところは皆と相談した方が良いと思って」

律「どうだろう、この予定で、梓とか体力的に大丈夫か?」

梓「大丈夫だと思います、休憩も入れてもらえるみたいですし」

澪「私も特に異論はないな、みんなは?」

皆首を横にふる、異論はないようだ

律「あとは、さわちゃんから許可が降りるかどうかだ
黙って行っちゃうと流石にまずいと思うんだ」

唯「そうだよね、なにか有ったとき怖いもんね」

律「よしっ、さわちゃんの所に行くぞ~」

46: 2010/03/06(土) 20:57:21.83


さわちゃん「なるほど、卒業記念にツーリングに行きたいと」

律「うん、だめ…かな…」

さわちゃん「う~~ん、さすがにツーリングはねぇ」

律「そこをなんとか!!」

さわちゃん「そうねぇ、私もついて行こうかしら
それならいざと言うときの対処も出来るだろうし」

律「さわちゃん!バイク持ってるの!?」

さわちゃん「一応ね、最近は乗る時間が無いから週に一回エンジン掛けてあげるだけだけど
久しぶりに走らせてあげないとね」

律「とにかくありがとう!!
むこうについたらムギの別荘でのんびりできるからね!」

さわちゃん「はいはい、そんじゃあ期待しとくわね
またきちんと予定が決まったら教えて頂戴、添削くらいはしてあげるわ」

50: 2010/03/06(土) 21:06:24.93



~~~細かい予定は省略、わかんないんだもん~~~



律「さわちゃん、予定たったよ!これでどう?」

さわちゃん「ふむふむ、まぁいいんじゃないかしら
これなら余程のことが無い限りテスト休み中に帰ってこれるでしょ」

さわちゃん「わたしも1週間有給とって有るわ」

律「恩に着ます!姐さん!」

さわちゃん「誤解をまねくようなことを言わないで頂戴
(おしとやかで通してるんだから)ボソボソ」

律「とにかく、1週間後の今日朝の7時に集合です、お願いね!!」

さわちゃん「わかったわかった、んじゃまたね」

律「ばいばーい」

53: 2010/03/06(土) 21:11:50.12


律「と、言うわけでさわちゃんの許可もおりたし、予定もたった
あとは各々1週間後にむけて英気を養うように」

澪「最初はどうなることかと思ったけど
結構うまく話が進んで良かったよ、見直したぞ、律」

唯「楽しみだねー、わくわくするよ~」

紬「そうですねぇ、こんな経験初めてですし、私もワクワクしてきちゃった」

梓「ゼッタイ良い思い出になりますよ、いえ、しなきゃダメです!」

律「それじゃあ今日はかいさ~~ん」


57: 2010/03/06(土) 21:22:55.64


そして時は流れツーリング前日


唯は自宅でチェーンの洗浄をしている
その様子はギターを弾いている時と同じくらい楽しいそうだ
まるで自分の子供をお風呂に入れているように優しい表情で必氏に歯ブラシで磨いていた

憂「お姉ちゃん、まだ寝ないの?明日早いんでしょ?」

唯「これだけ終わったら寝るよ~先に寝てて~」

憂「無理しちゃ駄目だよ?おやすみ」

唯「わかってるよ~、おやすみ、憂」

憂(あんなに必氏になって、余程好きなんだね、バイクが…ちょっと嫉妬しちゃいそう…)

60: 2010/03/06(土) 21:33:08.77


他の部員達もやはりバイクの整備をしている

皆、オイルをちょっと良いのに替えて上げたり、チェーンの振れ幅なども徹底的に調整している
梓は明日にそなえオンタイヤを履かせて上げているようだった


さわこ先生は自慢のCBX1000をこの一週間で完璧に整備していた
プラグにもイリジウムを付けてやったりでかなりの出費になったみたいだ
それでもさわ子先生は楽しそうだ

さわちゃん「ツーリングなんて何年ぶりかしら、楽しみだわ」

63: 2010/03/06(土) 21:39:28.59

よくじつ!


いよいよツーリング当日で有る
時刻はまだ6時半だがすでにさわちゃん以外は全員もう出揃っている


律「さわちゃんまだかなぁ~、なに乗ってるんだろうなぁ
聴いてみても「当日のお楽しみね♪」つって教えてくんなかったし」

唯「イメージ的にはハーレーとかじゃないかな~」

紬「案外CBR1000RRとかかもしれないわよ?」

梓「いえ、XR650とかかもしれないです」

律「梓は本当にオフ車が好きだな~」

梓「オールマイティですからね!オフ車は正義です!」

65: 2010/03/06(土) 21:50:03.16


各々の勝手な想像を話しあっていると遠くからバイクの排気音が聞こえてきた


律「あれじゃないか?」

梓「単気筒ではなさそうですね」

澪「Vツインでもなさそうだぞ」

律「パラツインとかでもなさそうだし4発マルチともちょっと違うような…なんだ…?」


6発という独特な、ジェット機のようだと評されるCBX1000にまたがりさわ子先生はさっそうと現れた

さわちゃん「おまたせ~、遅れてはないわよね?」

律「ささささわちゃん!!!そっそれ、CBX1000じゃん!!!」



あ~~筆と言うか指が進まねぇ…

68: 2010/03/06(土) 22:00:43.82


さわちゃん「流石は詳しいわね、あと知ってるのは…梓ちゃんくらいみたいね」

梓「もちろん知ってますよ、それにしても綺麗に乗ってますね
古いバイクなんで維持が大変じゃないですか?」

さわちゃん「大変なんてもんじゃ無いわよ~
パーツなんて殆どでないんだもん、もし壊れたとしたらオクでその部分丸々変えちゃう気で居ないと」

律「こだわってますなぁ~
男絡みかな~~?」

さわちゃん「……やっぱり今日、帰ろうかしら……」

70: 2010/03/06(土) 22:06:30.58


律「わーわーっ!冗談だよ冗談!ごめんなさい!」

澪「一言多いんだよバカ律!」

さわちゃん「まぁ良いわ、とりあえず全員集合したみたいだし
少し早いけど出発しましょうか?」

律「よっしゃああ!みんな行くぞぉぉおお!」

オーーーーー!!!!


74: 2010/03/06(土) 22:13:42.72


そうして軽音部員+顧問は走り出した
6つのバイクが綺麗な合奏をしながら進みだして行く

そして少し走ると太い国道にでた
速度は60km/h前後みんなまったりトコトコ走っている、律を除いては…
いまだにかっ飛ばしては居ないが、ずっとメットの中で独り言をつぶやいている

律「車も居ないし道も広いし、最高速アタックしたいなぁ~」

律「さわちゃんさえ見てなければアクセル全開で…」

律「道だって一直線だしちょっとくらいなら…」

80: 2010/03/06(土) 22:19:47.23


律「よっしゃぁあああぁああ!いったらんかぁぁああああいい!!!」

律が突然叫んだかと思うとギアを3つほど落とした後、急加速!
レブリミットの19500rpmまでキッチリ回しつつ軽快に加速して行く
まるでF1の様な音を出しながらどんどんスピードが上がっていく

律「これこれこれ!この感覚だよ!!」

律「Gが気持ちいぃぃぃ~」

82: 2010/03/06(土) 22:23:42.89


律「まだまだ~、まだ上がるぞ~」

なんてご機嫌の律だが、そんな幸せもつかの間

目の前にはいつの間にかCBX1000が立ちふさがって居た

律「うげぇ…さわちゃん怒ってるっぽいなぁ…」

当然である、目の前のCBXはジェスチャーで路肩に止まれと言っているようだ

律「止まりたくねぇ…このまま逃げたい…」

そういうワケにも行かないので律は渋々それにしたがう
後ろから追いついた部員たちも同じように路肩に寄せる

86: 2010/03/06(土) 22:30:18.47


さわちゃん「あなた!何考えてるの!」

律「ごめんなさい…つい…」

さわちゃん「つい…じゃないわよ!
ツーリングは団体行動なの、貴方みたいなことしてると迷惑がかかるだけなのよ?」
さわちゃん「そんなことがしたいなら、マスツーじゃ無くて独りでやってなさい」

唯「まあまあ、さわちゃん先生、りっちゃんもわるぎg」
律「唯、良いんだ。先生、本当にごめんなさい…」

さわちゃん「まぁ…反省してるなら良いわ
でもね、次にこんなことしたらツーリングは即刻中止にするから」

88: 2010/03/06(土) 22:36:30.69


それからは律も大人しく法定速度を守って走っていた
すると律はウィンカーを出しながら路肩を指さした
おそらく一旦路肩に止まれと言うことなのだろう

みんなもすぐに理解して全員路肩に止まる

澪「どうしたんだ?」

律「琵琶湖!琵琶湖見てこうよ!」

さわちゃん「ん~?時間は…まだ大丈夫そうね、それじゃあ休憩がてら見に行きましょうか」

律「いぇ~~い!」

澪「なんでそんなに琵琶湖でテンション上ってるんだ?」

律「だってさ!ネッシー的な物とか居るかも知れないじゃん!」

95: 2010/03/06(土) 23:08:46.92


律「湖だな…」

澪「湖だな…」

梓「湖ですね…」

唯「でっかい水たまりだ~」

紬「大きいですね~」

律「ネッシー居ないな…」

澪「そうだな…」

律「そろそろ行こうか…」

澪「うん…」

96: 2010/03/06(土) 23:10:36.26
律達はなんとも微妙な顔をしている
そりゃそうだ、琵琶湖はただのデカイ湖、観光する場所では無い
律の希望通りネッシー的なものでもいたら面白いのだろうが

部員たちはまた走り出す、出発してから4時間程だろうか、やっと半分ほど進んだようだ
なぜこんなに遅れているかというと、面白そうなものを見つけてはその度に止まり
その結果は全て大した収穫もなくまた走り出す、要は無駄な事が多いと言うことだ

98: 2010/03/06(土) 23:17:31.71

律「諸君!良く聞き給え、我々は大幅に予定が狂っておる」

澪「律のせいだろ…」

律「う゛っ…それは、言うな…
とにかく!遅れを取り戻すためにこれから寄り道は無しだ!」

梓「律せんぱいg
律「しゃらぁぁぁぁっぷっ!!!

律「法定速度は守るが急ぐぞ!
しゅっぱ~つ!」

100: 2010/03/06(土) 23:21:40.31

そうして6人は走り出す
朝方は少し寒かったが今は日が照ってきいて走っていて気持ちが良い
第一チェックポイントはもうそろそろだろうか
そんなことを梓が考えていると律が前方のビジネスホテルを指さしている
…可もなく不可もなくといった感じの至極普通のホテルだ

律「今日泊まるホテルはここだ、予定より1時間ほど遅れてしまったが
連絡は入れて有る、問題は無いそうだ」

梓「思ってたより綺麗です、もっとボロっちいのを覚悟してました」

律「抜かりはないっ!」
適当に検索して1番最初に出てきたやつに適当に決めた癖にどの口が言うのか…

101: 2010/03/06(土) 23:25:34.38


さわちゃん「とにかくチェックインするわよ、少しおしりが痛いわ」

唯「わたしも~、RSってシートが硬いんだもん」

律「私のだって硬いよ!贅沢言うんじゃない!」

唯「ぶー」
唯が漫画のキャラクターの様に頬を膨らます

さわちゃん「じゃあ、チェックイン済ませてくるわね」

102: 2010/03/06(土) 23:32:25.62

さわちゃん「はい、部屋は202、203、204よ
部屋割りはどうするの?」

律「あ…部屋割りまで考えてなかったな
…じゃあアミダくじで決めよう」


……………

202 唯×梓
203 律×澪
204 紬×さわちゃん


唯「あずにゃんと一緒だ~
ねぇねぇ、一緒に寝ようよ~」

梓「い、嫌です///
独りで寝てください///」

唯「あずにゃんのケチンボ~」

103: 2010/03/06(土) 23:35:19.74


律「一緒の部屋だな、澪
今日は二人で語り明かそうぜ!」

澪「やだよ、明日も早いんじゃないのか?
早く寝ないとしんどいぞ」

律「ちょっとくらい平気だって~」


紬「先生、同じ部屋ですね、よろしくお願いします」

さわちゃん「ん、よろしくね~」

109: 2010/03/06(土) 23:46:37.15
各々は自分の部屋に行き荷物を置くと
自然と202号室に集まって居た

律「さて、あしたの予定だけど、9時チェックアウトだから
だいたい16時くらいまでにはひなm、白川郷につきたいと思う
向こうの宿は18時チェックインにしてるから今日みたいに遅れることはないと思う」

それから皆は他愛も無い会話を楽しんだ

夜になり、部員たちは各々の割り当てられた部屋に戻っていった

110: 2010/03/06(土) 23:47:44.78

~~202号室~~

唯「ん~、あずにゃんはぁ、ちっちゃくて柔くて暖かくて可愛いね~」

梓「もう、離れてください、一緒に寝ないって居いたじゃないですか」

唯「あずにゃんは、私のこと嫌いなの…?」

梓「そんなこと無いです!なんでそんなこと聞くんですか」

唯「だってぇ…頭だてたり、抱きついたりしたらやめてって言うんだもん
やっぱり嫌なのかなぁ…」

梓「・・・zかしいからです・・・」

唯「え?」

梓「はずかしいからですっ!」

唯(萌え萌えキュン!!!)

唯「あずにゃ~~~~~ん!」ギュー

梓「もう、好きにしてください…///」

118: 2010/03/07(日) 00:02:10.21

~~203号室~~

律「なぁ澪?」

澪「ん?どうした?」

律「今度さ、HONDAからCB1100Rでるじゃん?あれどう思う?」

澪「んー、私の趣味じゃないからなぁ、アレは紬が欲しがりそうじゃないか?」

律「あー、確かにクラシックな感じ好きそうだもんな、ロケットカウルもついてるし」


119: 2010/03/07(日) 00:02:51.14
律「それとさ」

澪「ん?」

律「どうしたらそんなに胸が大きくなるんだ?」

澪「なっ!」

律「なぁ~、教えてくれよ~」

澪「なんもしてないよ!!」

律「じゃあなんでこんなに不公平なんだよ~」

澪「知らないっ!もう寝る!」

律「おーい澪~?澪~?」

澪「もう寝た!」

律「ちぇっ」

123: 2010/03/07(日) 00:11:51.22


~~204号室~~


紬「あの、先生」

さわちゃん「どうしたの?」

紬「先生は良く、コスチューム持ってきますよね」

さわちゃん「そうねぇ、人に着せるのが面白いからね、軽音部はかわいい娘揃いだし」

紬「すごく同意します!!もっとどんどん持ってくるべきだと思います!!」

さわちゃん「貴方とは気が合いそうね、今度から協力してもらうわよ?

紬「ええ、もちろん・・」


夜は更けて行く…

128: 2010/03/07(日) 00:27:15.06


律「清々しい朝だぞ~、今日は一気に白川郷まで駆け抜けるぞ!」

梓「まぁ前日の遅れはりt
律「shut up!!!!!!」

律「後半は道も空いてる予定だから早く着くはずだ」

澪「まぁ律がまた寄り道しなければ、だけどな」

律「そこ、うるさいぞー、寄り道もツーリングの醍醐味なんだよ電子の世界のお友達もさっき言ってたよ」

澪「それで遅れちゃったら元も子もないじゃないか、大誰だよ、その友達とやらは」

律「細かいことはいーの、とりあえず皆ガソリン入れたら出発だぞ~」

梓「私はまだまだ平気ですけどね、やはりオフ車が最強なんです」

唯「なんだと~、2stレプリカが最強だい」プンプン

さわちゃん「はいはい、喧嘩はしない、おいてくわよ~」

131: 2010/03/07(日) 00:36:39.74

後半は律もあまり寄り道すること無く順調に進んだ
そのおかげ?で時間に余裕があるので休憩を多く取れ
前日より皆の顔に疲れが浮かばなかった

それでもやはり唐突に海の方角へ進路を変え
寒い海辺でご飯を食べるなどの全くの無意味なこともさせられていた

律「いやー、海辺で食べるご飯は美味しいなー」ガクガクブルブル

澪「無理するな、めちゃくちゃ震えてるぞ、お前」

律「…ごめん…」

134: 2010/03/07(日) 00:45:04.24

律「さぁ!あとちょっとだぞ!もう一頑張りだ!」

澪「あとどれくらいなんだ?」

律「え~と、だいたい20km弱ってところか」

唯「ほんとにあとちょっとだね~」

梓「時間的にも予定どおりですね」

紬「白川郷ってどんな所なのかしら」

さわちゃん「ビールが飲みたいわぁ、居酒屋くらいは有るでしょうね」

135: 2010/03/07(日) 00:51:32.64

律「着いたぞおおおおおおぉぉおお」

澪「あんまり大声だすなよ、恥ずかしい」

梓「ここが白川郷ですか本当に雛見沢村のモデルに使われてるんですね、そっくりです」

紬「まるでひぐらしの登場人物になったみたいね」

律「演技でも無いこと居うなよ、なぁ澪?」

澪「ナニモキエナイナニモキコエナイ」ガクブル

137: 2010/03/07(日) 00:54:25.80

律「み~お~?なんか足音一歩分多くないか?ちょっと歩いてみろよ」

澪「やだっ!」

律「じゃあ置いてくぞ?」

澪「それも嫌だ!」

律「じゃあ歩いてくれよ、旅館に入れないじゃないか」

澪「やだっ!」

139: 2010/03/07(日) 01:01:43.34


律(脅かしすぎたか…結局私がおぶって行くことになってしまった…)

律「ほら、ホテルの中入ったら絨毯敷いてるから足音聞こえないぞ」

澪「…」グスッ

律「悪かったって、そろそろ降りてくれよ、さすがに疲れた」

澪「……わかった…」

律(ふぅ…宥めるのも大変だな…)

145: 2010/03/07(日) 01:11:16.42

律「今度の部屋は大部屋で皆で雑魚寝だ!
まぁ女同士だから問題ないよな?」

唯「わたしあずにゃんの横ね~~」

梓「もう、唯先輩は…ほんとに仕方ないんですから…」

律「お?梓も満更じゃなさそうだなぁ」

梓「あ、諦めただけです!」

律「ま、そういうことにしといてやるか」

梓「ホントですよ!?」

唯「照れなくていいんだよ~」ナデナデ

梓「///」

148: 2010/03/07(日) 01:18:47.54

さわちゃん「さぁさぁ、じゃれ合ってるのも良いけどそろそろ晩ご飯よ」

唯「わたしがあずにゃんの横~」

律「いつにもまして梓にベッタリだな、何か有ったのか~?」

梓「なにもn
唯「あずにゃんがね~、「もう好きにしてください」って言ったんだよ~」

紬「あらあらまあまあ」ウットリ

律「梓ぁ、中々大胆な事言うなぁ~」

梓「いいい言ってないです!」

唯「言ったよ~、ぎゅってしたら「もう、好きにしてください」って」

紬「まぁ」ポー

律「はいはい、ごちそうさん、もう良いから飯食うぞ~」

梓「ちょ、ちょっt!」

150: 2010/03/07(日) 01:25:15.21

唯「はい、あずにゃん、あ~ん」

梓「はむ、もう、一人で食べれます…」

唯「やっぱり、あずにゃん、私のこと…」ウルウル

梓(そんな目で見られたら…もう…)

梓「あっあの」

唯「グスッ、なあに…?」

梓「や…やっぱり…食べさせて…ください…」

唯「あずにゃん!!」パァーー

さわちゃん「熱いわねぇ~、暖房効きすぎてるんじゃない?」

151: 2010/03/07(日) 01:31:48.42

律「さ~て、恒例の怖い話やろ~ぜ」

澪「ぜーーーーーーったいにやだっっ!」

律「そんな事言うなよ、とりあえずあの掛け軸めくってみようぜ、お札とか有るかも!」

澪「やめろやめろやめろ!」ボカッ!

律「ってぇ!何も本気で殴るこた無いだろ!?」

澪「もしお札とか有ったらどうするんだよ!!」

律「燃やす」

澪「そんなことしたら呪われる!」

律「じゃあどうすんだよ」

澪「他の部屋に…」

律「他の部屋にも貼って有ったら?」

澪「この旅館から出てく…」

律「そうしたら足音が…」

澪「ヒィッ!」

律(かわいいなぁ…)

154: 2010/03/07(日) 01:43:46.55


唯「ねぇねぇあずにゃん」ボソボソ

梓「どうしたんですか?眠れないんですか?」

唯「あずにゃんはぁ、私のこと好き?」

梓「いきなり何言ってるんですか!」

唯「嫌い…?」

梓「嫌いなわないじゃないですか」

唯「普通…?」

梓「ど…どちらかと…いえb…」

唯「え?聞こえないよ」

梓「好きですっ!」

唯「あずにゃん」キューーン

梓「だから…抱きつかないでください…」///

157: 2010/03/07(日) 01:50:08.61

よくじつ!

律「よーし、観光するぞ~」

律「まずは古手神社だ!」

律「みんなバイクに跨れ~」

梓「え?バイクで行くんですか?」

律「当たり前だろ~?バイクと一緒にじゃないと意味ないだろ?」

澪「でも、階段有ったんじゃないか?」

律「その階段だけでも一緒に写真とるんだよ!」

律「とにかく行くぞ!」

160: 2010/03/07(日) 02:02:24.38

律「ここが古手神社かぁ~、ほんとにそのまんまだなぁ」

律「あ、あそこにバイク2台置いて写真とろうぜ、梨花ちゃんと沙都子みたいに!」

律「みお~、一緒に撮ろうぜ~」

澪「よいしょっと、こんな感じか?」

律「いい感じいい感じ!唯っ、シャッター押してくれ!」

唯「良いよ~、笑って~、いちたすいちは~?

澪「にっ」ニコ
律「ちゅ」ホッペニチュッ

澪「なななななにするんだよ!!!」

律「へへへ~、照れてやんの~」
律(やべぇ、澪可愛すぎる)

164: 2010/03/07(日) 02:17:32.24

律「次は階段登って神社見るぞ~」
オーーー

律「ってあれ?さわちゃんは?」

梓「先生だったら良い飲み屋が有ったからいっぱいひっかけてくるって言ってました」

律「おいおい…引率でついてきたんじゃないのかよ…」

律「でもこりゃあ好都合だなぁ、おい唯!後で一っ走りしに行こうぜ!」

唯「良いねぇ~、きのうからRSちゃん走りたいよ~走りたいよ~って言ってたんだ~」

律「その前に古手神社だ!」

律「階段のぼるの競争しようぜ、最下位がトップの言う事聞く、な」

律「スタート!」

澪「あ、ずるいぞ!」

~~~~~~~~~~~~~

1位 唯 2位 律 3位 紬 4位 澪 最下位 梓

168: 2010/03/07(日) 02:25:03.77

唯「じゃぁねぇ」

梓「お手柔らかにお願いしますよ?」

唯「さっきりっちゃんがやったみたいに
ほっぺたにちゅうして欲しいなぁ」

梓「えっ?ままマジですか?」

唯「えらくマジです」

梓「…一瞬だけですよ…」チュ

唯「ほんとに一瞬だけだぁ~、今のじゃわかんない~」

梓「ダメです、ちゃんとやりました、これで終りです

172: 2010/03/07(日) 02:32:27.26


律「これが生古手神社かぁ~、風情が有りますな~」

唯「さすがにお弁当とか食べたらダメだよね~」

澪「やっぱり怒られるだろうなぁ」パシャパシャ

律「よし、次は
唯!走りに行くぞ!」

唯「待ってました~、行こう行こう」

175: 2010/03/07(日) 02:42:42.87
ペーーーーーン ファーーーーーン

2stと4stの排気音が混ざり合って官能的な音を醸し出している

唯と律は近くで丁度いいワインディングを見つけ、コースを覚えるために3回ほど往復している
頂上近くのエスケープゾーンで律がバイクを止めて唯に話しかける


律「コースは覚えた?」

唯「ばっちし!小石ひとつまで覚えたよ!」

律(唯の場合、あり得そうだからこわいんだよなぁ…)

律「OK、じゃあ私が先行するするから追い抜けるならおい抜いて良い
もし追い抜けなかったら先行を交代してスタート、どっちかが追い抜くまでのサドンデスだ」

180: 2010/03/07(日) 03:13:23.23
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
唯「りょーかい」

律「言い忘れてた、追い抜いたらそのまま先行でもういっかい走る
それで先行を氏守できなければサドンデスは続行だ、OK?」

唯「おっけーおっけー、ちゃんと覚えたよ~」

律「じゃあ、この空き缶を投げるから、地面に付いた瞬間にスタートだ
…フライングすんなよ?」

唯「あはは~、りっちゃんこそ~」

律「うっせぇ、じゃあ…行くぞ」

そういうと律は空き缶を宙に放り投げた

182: 2010/03/07(日) 03:16:12.67
空き缶が宙を舞う、そして地面たたきつけられた瞬間
CBRとRSがスタートする、どちらのスタートも完璧だった

先行のCBRのおしりをRSが睨みつける
そして一つ目のコーナー、二つのバイクが素早く、かつ落ち着いて車体を倒して行く

ふたりともシートからわずかにお尻をずらす
その瞬間二人の膝のあたりから摩擦音が響きだす

第一コーナーでは僅かかにRSの方がはやかった
ストレートで少しさが出来ていたのが僅かに縮まる

183: 2010/03/07(日) 03:20:30.36
第二、第三コーナーを抜ける度にほんの僅かずつではあるがRSが差を縮める

律「やっぱり、唯は早いな…頭のネジが飛んでんじゃないのかよ…」

唯「やっぱりりっちゃんは早い…後追いだからつていけてるけど…」

律「次のコーナー、地元の得意なコーナーに似てるんだよな、ここで離して見せる!!」

コーナーにさしかかる、律が得意なコーナーだ
律はぎりぎりまでブレーキを我慢してコーナーに突っ込む

律「思わず目つぶっちゃいそうだ…」

185: 2010/03/07(日) 03:26:54.50
車体が最も寝た瞬間、律の膝では無くステップから火花が散る
いくらバックステップは入れてないとは言えCBRのステップをこするほどのベタ寝かせ
大型だとこの乗り方は遅いらしいが、250cc程度のバイクではこうでもしないと早く走れない

律「正直、腰抜けるほど怖いよ…ったく…」

唯「早すぎる…!ステップから火花散っちゃってるよ…
流石に真似できないなぁ」
唯も律もこころの中で愚痴る

ふたりともそんなことを思いながらも
顔は心底楽しそうだ
こんな状況を楽しめるとは、生まれ持ってのスピード狂なのか…

187: 2010/03/07(日) 03:35:06.93
唯「あんなの見せられると、自信なくすよねぇ…」
唯の口元が苦笑いに歪む

律「どうよ!私のスーパーコナーリング!!」
逆に律の顔は楽しそう、から嬉しそうな顔に変化している

唯「でも負けてらんない、RSちゃんも怒ってるみたいだし
CBRにできてワタシに出来ないわけ無いでしょって、もっと…信用してあげなきゃ!」

唯の目がキッと鋭くなる…口元はやはりにや付いたままなのだが…

190: 2010/03/07(日) 03:39:23.60
その後も一進一退の攻防を繰り広げながら
律と唯はギリギリの精神状態でバトルを続けている
今回に限り二人の頭の中に安全マージンなんてものは欠片も無い

口うるさい澪も居ないし、監視のさわちゃんも今はいない
車なんて存在するのかすら怪しい村だ
実際車を見たのは道端に路駐して昼寝をしていた小此木園芸のバンしかみていない

193: 2010/03/07(日) 04:01:47.49

残りのコーナーは4つ
この時点でも唯は諦めていない
後ろに張り付き、律にプレッシャーを与え続け、チャンスを虎視眈々と狙っている

唯「あと4つかぁ…次のコーナーで仕掛けてみる…!」
フッと唯の口元から微笑が消える

コーナーに差し掛かる
律は極限の状態で車体をコントロールする
律「インにつかないと仕掛けられるな…」
しかしその瞬間CBRのフロントタイヤ小石を踏む
大きさで言えば直径2ミリ~3ミリ程度だろう
こんな状態じゃなければ気づくかどうかすら怪しい障害物だ

194: 2010/03/07(日) 04:04:50.60
しかしこの状態では大きすぎる
CBRが30センチほどアウトに膨らむ

唯「きたっ!」
まってましたとばかりに鼻先を突っ込む
唯のヘルメットと岩壁との隙間は5センチほどだろうか
そんなことはお構いなしで唯は突っ込んで行く
律も鼻先を突っ込まれてしまってはインに寄れない

そしてコーナーからの立ち上がり
ふたりのポジションは律がタイヤ半個程のリードだった
唯「いけ!RS!!!!」
唯は思わず叫びながらアクセルを全開にする
当然律もアクセル全開

唯「頑張って…!RS…」
数少ないストレート、ふたりともアクセル全開で突っ走る
ひぐらしの鳴き声など、CBRのF1を彷彿させる音と
2st特有の甲高いエキゾーストノートに寄ってかき消される

195: 2010/03/07(日) 04:07:43.18

ポジションの差がタイヤ4分の1ほどになったとき
ジリジリとRSが後退を始める
正確に言えばRSが速度を緩めているわけではない
CBRの馬力勝ちだ、律は命拾いしたとも言えるかもしれない

律「難は逃れたか…でも、まさかあんな狭い所に突っ込んでくるなんて
やるようになったじゃない…!」

残りのコーナーは律の堅実な、それでありながらアグレッシブな走りによって
唯はチャンスを見いだせぬまま終わった。

196: 2010/03/07(日) 04:14:06.37
そして折り返し地点、次は唯の先行で有る

律「さっきはやられっぱなしだったからね
きっちり仕返しはさせてもらうよ」
律はつぶやきながら走り出す
次はCBRがRSのお尻を睨みつける番だ
一般的に後追いの方が心に余裕が生まれ有利だと言われている
だからこそプレッシャーをかけ相手のミスを狙う

唯と律の実力は完全に拮抗している
そうなれば相手のミスをつつき抜き去るしか手はない

199: 2010/03/07(日) 04:23:12.35
第一コーナー、唯は完璧なライン取りでコーナーを抜けて行く
後ろからはトリコロールカラーのCBRが唯の隙を探し、食らいつこうと迫っている

唯「やっぱり後ろに付かれるのは苦手だなぁ…」
そうは言ってもここで逃げ切らなければ仕方がない
唯は自分に出来ることの全てをコーナーにぶち撒ける

体力温存なんて言葉は二人の頭の片隅にも浮かんでこない
全てのコーナーを全力でクリアして行く
今にも胃のものが逆流してきそうな程体力も精神もすり減っている
たった一周目が終わってこれなのだ、もし長引き10週なんて行けば
律と唯は走りながら気絶してしまうかもしれない、しかし、そんなことは考えない
二人に見えているのは目の前のコーナーと後ろから迫るライバルだけだ

200: 2010/03/07(日) 04:28:51.46
唯「…いま何周目だろう…わかんなくなって来ちゃった…」
唯が一人呟く
ちなみにいまで13週目だ
いまや二人の精神力はボロボロだ
一瞬でも気を抜けば気絶してしまいそうだ
アクセルひねるのも多大な体力を使う作業に思えてくる
それでも二人絶対に手を抜かない
こんな勝負、勝ってもなんの得も無い
賞金が出るわけでもないし、負けたからと言って罰金が有るわけでもない
ただ、手を緩めるのは相手に失礼だから、ただそれだけの理由で二人は勝負し続けている


201: 2010/03/07(日) 04:36:59.28
またコーナーに差し掛かる
その瞬間、先行の律の意識が一瞬途絶える
ほんとに一瞬だった0.1秒も有ったかどうかも怪しい
しかし後ろから目を凝らしていた唯にはそれで十分だった
先程より少し大きくインが開く
「ここしかない!!」
またも唯は鼻先を突っ込む
そして立ち上がり、形成は逆転、RSがCBRを抜いていた
「くっっそぉぉぉ!!!」
律は自然と怒鳴っていた
それは意識を途絶えさせてしまった自分の精神力の弱さにだ
条件は唯だって同じ、その状態で私は精神力で、負けてしまったのだ
もう勝てる気がしない、でも諦めちゃ唯に失礼だ
ここまで本気で戦ってきたんだ、手を抜いたりなんかしたら1秒で気づかれちゃう

202: 2010/03/07(日) 04:41:34.22
その後の律は付いて行くだけでやっとだった
ただでさえ意識が朦朧としている
一回途切れたのがきっかけで何度も何度も途切れそうになるのを必氏に抑える
そんな状態で唯についていけてる事自体がすでに奇跡的だと思うのだが…

そしてゴール
前に居たのは当然RS
二人はゴールした途端、バイクから降りて地面に突っ伏す
足腰がもう立って居られないほど疲労している
それもそうだ、シートに座ってる時間なんて殆どなかったんだから
二人は寝転んだまま革ツナギをはだけさせ
体から湯気を立ち上らせ満面の笑みで会話していた

203: 2010/03/07(日) 04:49:47.46
律「ゆ、い、おまえ、はや…すぎだよ」

唯「り…り、りっちゃん、こそ」
ふたりとも呼吸が乱れすぎてしゃべりづらそうだ

そして二人は意味も無く大笑いをしていた
ひとしきり馬鹿笑いをしていると
澪のVTRらしき音が近づいてくる

澪は地面に仰向けで寝転んでる二人を見て呆れた顔で近づい来る

澪「あーあー、もう、ボロボロじゃないか…ほら、帰るぞ?」

澪が二人に手を差し伸べる
ふたりはその手に飛びつく、たぶん澪が来てくれなければ
もう2時間位は立つことが出来なかったであろうからだ

204: 2010/03/07(日) 04:53:23.96
澪に手伝ってもらい
なんとかバイクに乗せてもらう
そして先程とは打って変わってのローペースで宿へと帰るのだった

208: 2010/03/07(日) 05:03:45.34
そして、先程の感動はどこに消えたのか
ふたりはさわ子先生にこってりと絞られている

さわちゃん「あのねぇ…バイクは部品変えれば治るけど
人間の体はそんな簡単なものじゃないのよ?
バイクで氏んで行った人だって何人も見てきたし
バイクで下半身不随になった"友達"だって居たわ」
さわちゃん「バイクに乗るなとは言わないわ、バイクは楽しいもの
バイクとの一体感、空気の壁を体験するのも気持ち良いわ
でもね、それで不幸になっちゃ元も子もないでしょ?
こんな遊びはこれっきりにしなさいね」

209: 2010/03/07(日) 05:05:02.28
二人はそれに一切反論しない
二人が考えている事は同じ
「もう一生分峠を攻めた、あとはまったりバイクに乗ろう、峠で遊ぶのは今日限り終り」
さわ子先生の言うことも尤もだ、バイクは楽しんで乗るもの
命を削ってまで乗るものでは無い

210: 2010/03/07(日) 05:11:23.41
その晩、律と唯はひたすら喋っていた
あのコーナーの突っ込みは最高だったとか
あの時の立ち上がりの時のアクセルオンタイミングは世界一だったよとか
あのコーナーだけならロッシにも勝ててたんじゃないかとか
一瞬スペンサーと重なって見えたよとか
とにかくお互いを褒め合っていた

そして、峠で攻めることをやめることを二人で誓い
でもたまには流しに行きたいよね
などと語り合っているうちにどちらともなく眠りに付いた…

212: 2010/03/07(日) 05:18:33.34

律「朝だぞ~~皆起きろ~~~」
昨日の氏闘の疲れは何処へ消えたのか
律は朝から元気そうだ

唯「ん~~、なんでりっちゃんそんな元気なの?
わたし全身筋肉痛だよぅ…」

律「はっはっはっは、ドラムで鍛えた筋肉を舐めるな!!
あんなのへでも無いわ!!」
腰が抜けて唯と地面に寝転んでた癖にどの口が言うのか
でも、本当に元気そうだ

唯「ふ~~ん」チョンチョン
唯が律のフクラハギをつついてみる

律「いってぇ!なにすんだこ!ばか!」

唯「やっぱり筋肉痛になってるじゃん」
そう言って唯がカラカラと笑う
それに釣られて律も笑い出す

そのこえで他の面々続々と目を覚ます

213: 2010/03/07(日) 05:23:52.43

梓「ふたりとも朝から元気ですね、昨日は倒れる寸前って感じだったのに」

澪「まぁ律は元気"だけ"が取り柄だからな」

紬「唯ちゃんも、唯ちゃんが元気じゃなかったら唯ちゃんじゃないわ」

律「こら澪!"だけ"とはなんだ"だけ"とは!
掛け軸の裏がそんなに見たいのか!」

澪「なっ!卑怯だぞ律、見損なった!」

律「なんとでも言え!さーて、何が貼って有るのかなぁ…」

澪「ちょ、ちょっと待て、悪かった、私が悪かったよ!」

律「ま、わかればよろしい」

214: 2010/03/07(日) 05:29:40.89


律「さて、朝飯くったら帰る準備だぞ~、ちゃちゃっと済ませて帰ろうぜ
もうクタクタ」

澪「そりゃあお前と唯はな、こっちはまったり雛見沢観光してたから全然疲れて無いよ」

梓「そう言えば沙都子さんと梨花さんそっくりの女の子が居ましたね」

紬「可愛かったわねぇ、二人で追いかけっこしてて、将来はこんな所に住みたいわ」


律「さぁさぁ、ムダ話は終りにしてご飯食べに行くぞー」

215: 2010/03/07(日) 05:36:27.38


律「よーし、ご飯も食ったしあとは帰るだけだ!
それでだな、帰りは一気に帰ろうと思うんだが
梓、澪、大丈夫そうか?きついなら初日と同じにするけど」

澪「私は大丈夫だと思うぞ、行きでも結構体力余ってたしな」

梓「私も大丈夫だと思います、体力は林道や酷道で鍛えてますから」

律「唯は…聞かなくても大丈夫だよな、昨日のアレ見てると
あと、さわちゃんも大丈夫だよね」

さわちゃん「え~?わたし体力ないから無理かも~」

律「はいはい、冗談は良いとして、それじゃしゅっぱ~つ」

さわちゃん(冗談?ピキピキ

220: 2010/03/07(日) 05:51:58.50
帰りはできるだけ海の見えるルートで帰った
やっぱり律が寒い海辺でお弁当を食べていた、なにか拘りでもあるんだろうか

そしてほぼ予定通り5時前に家のあたりに着けたので合格点と言えるだろう

そして帰ってきた翌日からも早朝のバイクでの集会は再開された

だが律も唯も峠で攻めることは一切しなくなった

澪(ある意味それが一番の収穫かもな…)
などと澪は考えていたのだった

222: 2010/03/07(日) 06:01:02.96
澪「お~い、この前の写真できたぞ~」

律「おー、見せろ見せろ~、お、結構いっぱい撮ってたんだなぁ」

律「おい梓、この写真、宝物にしろよ」ニヤニヤ

梓「?…どれですか?」

律は「これだよこれ」と言いながら唯のほっぺにキスしてる写真を差し出した

梓「澪先輩!なんでこんなの撮ってるんですか!」

澪「わ、わたしじゃ無いぞ?たぶん紬が…!」

紬「ふふ、つい撮っちゃいました」

唯「いや、ムギちゃんGJだよ、澪ちゃん、それ私にも焼き増ししといてね!!」

澪「はいはい」

澪は若干呆れ顔で返事をする
梓の顔は写真を見つめながらまだ真っ赤だ

223: 2010/03/07(日) 06:01:43.13
澪(卒業したらどうなるかなんて今はまだ分からないけど
軽音部は今日もこんなに平和で幸せなんだ
これが壊れるなんてあり得ないよな、あれこれ考えるのはやめよう
とにかく卒業までは放課後のティータイムでまったり過ごして行こう…)


-----第一部・完!-----
>>1の次回作にご期待下さい

224: 2010/03/07(日) 06:03:11.43
>>223
一晩感想乙ー
おもしろかった。

225: 2010/03/07(日) 06:04:30.12
>>221
ほんとにありがとう!!
かなり励まされたよ!!


あとSS初挑戦のこんな駄文に支援してくださったみなさん
本当にありがとうございました!!!!

227: 2010/03/07(日) 06:08:43.81
乙!

引用元: 律「ツーリング行こうぜ!」