1: 2010/05/29(土) 00:53:47.44
綺麗に片付いた部屋。

その入り口でぽかんと立ち尽くす。もうこの部屋が使われることはないかもしれないな。

物置にでもなるのだろうか。

ぼんやりしながら、すっきりとした家具の無い部屋に入ってみた。

物音一つしない。何も無いし、何も聞こえない。ただの空室。




何度も遊びに来たこの部屋がこんなに殺風景になってしまうとは。

部屋の主が明るすぎた分、物悲しく感じる。




これからはもうこの部屋に来ることもないだろう。




二ヶ月前のあの日から、今日まで早かったと感慨に浸る。

3: 2010/05/29(土) 00:55:19.66
―――――――――――――――――――――――

二ヶ月前。


唯「うう~、裏切られたぁ」

梓「まさか先輩が二番目くるとは、意外です」

澪「だよな、私もそう思う」

紬「結婚しても私たちのこと、忘れないでね……」

律「なーに言ってんの!当たり前だろー」


卒業してから5人は別々の道を歩いていた。
唯は音大、私と律は普通の大学、ムギや梓は親の手伝いをしている。
たまに5人集まってこの喫茶店に来るときは、いつも気軽な話で盛り上がっていた。

だが今日は気軽な話ではない。それが律の報告だった。

5: 2010/05/29(土) 00:56:51.37
梓「まさか澪先輩の次が律先輩とは……やはり意外です」

唯「りっちゃんは私とビリを競い合うと思ってたんだけどなぁ……」

紬「ふふ、梓ちゃんの言ったとおり、意外ね」

律「お前ら意外意外言い過ぎだっての!」

澪「律が普段サバサバしてるからだろ」


私はすでに聞いていたからさほど驚かない。
でも他の3人は驚きつつも嬉しそうに会話に花を咲かせている。
けれどやっぱり、今回の話の主役である律が一番、嬉しそうな顔をしていた。

6: 2010/05/29(土) 00:59:00.62
唯「それで?どんな人なの!?」

梓「どんな経緯でここまできたんですか?」

律「え、別にいいじゃんそんな事聞かなくてもさー」

澪「学生時代の友達だよな」

紬「あら、素敵ね♪」

律「み、澪ぉー!」


律は赤くなっている。大学を経て私もだいぶ強くなり、律をいじる立場になることも度々あった。
今もこうして律を照れさせるという偉業を成し遂げていた。





唯「ほうほう、それで?他にはどうなのりっちゃん!」




律「う……」


7: 2010/05/29(土) 01:01:04.65
澪「優しい人なんだよな?」

梓「へぇ……もっと詳しく聞きたいです」

律「澪……後で覚えてろよ!」

紬「それでそれで?」

律「う、えーと、まぁ、澪が言ったとおり同じサークルだった奴でさ。その……優しいかな」

梓「それはさっき聞きました。他はどうなんです?」

律「えーと……ちょっとヘタレみたいな奴で……この5人には当てはまらない感じ」

紬「りっちゃんとは違うタイプね」


色々なことを聞かれ、赤くなりつつも律は旦那について説明している。
私はその人のことを知っているから、微笑ましく傍観していた。

8: 2010/05/29(土) 01:05:14.80
私と律は大学で同じサークルに入った。
音楽系のサークルにしようという話もあった。
けれども交流目的のサークルにしようと律が提案し、私もついて行った。


律「まぁこんな感じ。もーいいだろっ!」

梓「なんか……悔しいです」

唯「悔しいよねあずにゃん!そういえばこの間言ってた人、どうなの?」

紬「あら、何かあったの?」

澪「私も知らないぞ!」

梓「あの男は違ったです。しょせん体目当てだったのでフってやったです」


この日は5人で心ゆくまでまで話した。他愛も無い、職場や私生活の話や、
時間が空いたらムギのツテを借りてライブしようとか。


9: 2010/05/29(土) 01:06:59.69
あっという間に店の閉店時間になり、ぞろぞろと店を後にする。


唯「わー、まだちょっと寒いね!」

紬「春とはいえ肌寒いわね……梓ちゃん寒そうだけど大丈夫?」

梓「はい、この後近くのライブハウスでお父さんたちと合流するので暖をとります」

澪「じゃあ早く行こうか。私は車で来たけど……」

唯「私あずにゃんといっしょだから大丈夫」

紬「私も、迎えが来てるから……」

律「私も今迎え呼んだし大丈夫」

唯「おっ、熱いですなー」

10: 2010/05/29(土) 01:08:15.02
律「うっさい!ほらほら、風邪引くから早く行ったほうがいいぞー」

澪「みんな、またな」

唯「あ、りっちゃん待って!」

紬「まだちゃんと言ってなかったから……」

梓「別れ際で申し訳ないですが」

唯梓紬「りっちゃん(律先輩)結婚おめでとー!(ございます)」

律「は、恥ずかしいって…………でも、ありがと!」


最上の笑顔で3人と別れる。
ちょうど隣に止まった車に乗り込む律と別れの挨拶をして、私も自分の車に乗り込んだ。


12: 2010/05/29(土) 01:13:11.86
―――――――――――――――――――――――

律「おーい、澪ー?」

律の声がした。
振り返ると、律が不思議そうに私を見ている。


律「どうしたんだ?もう何も運ぶものないよな?」

澪「あ、うん。ちょっとボーっとしてた」

律「疲れた?いつもの喫茶店でも行くか」

澪「大丈夫だって。それよりいいのか?待ってるんじゃないのか」

律「まぁそうだけど……手伝ってもらっちゃったし、なんか奢るよ?」

澪「いいっていいって。心配してるだろうから行ってやんなよ」

律「まぁ確かに、澪にあんま迷惑かけるなって怒られそうだし行くよ。今日はありがとな」


外でトラックが走り出す音がする。
引越しのトラックが発車したのだろう。それに続いて律を呼ぶ声。

13: 2010/05/29(土) 01:15:15.08
澪「ああ、また集まって話でもしよう」

律「もちろん!みんなの予定聞いておかなきゃな」


一緒に玄関まで行って彼と律の家族に挨拶した後、私も自分の家に戻るため車へ向かう。
昔この家に来てたときは、こっちに帰ってたっけ。
新居に引っ越してからは反対方向に帰る。

車のロックを解除して乗り込もうと思ったとき、不意に呼び止められた。


澪「どうしたんだ?」

聡「すいません……ちょっとこれからお時間ありますか?」


久しぶりに見る顔。それはここ最近律の口からその名を聞いていない、彼女の弟だった。

14: 2010/05/29(土) 01:17:25.73
―――――――――――――――――――――――
喫茶店!


聡「すいません、お疲れのところ」

澪「いや、平気だよ。それよりどうしたんだ?久しぶりだな」

聡「人妻の澪さんを呼び出すのもどうかと思ったんですけど、聞いておきたいことがあって」

澪「はは、たぶん平気だと思うよ。それで、話っていうのは何だ?」

聡「ええと……」

澪「…………」

澪「律のこと?」

聡「え、何で……」

17: 2010/05/29(土) 01:19:57.05
澪「聡くんが私に聞くことなんて、律のことくらいしかないだろ?」

聡「まぁ、そうですよね。実は、姉ちゃ……姉の大学時代のことについて教えていただきたいんです」

澪「律の大学時代?」


聡から突然呼び出されたものだから、律の話かとは思っていた。
でも、今になって大学時代のことなんて……どうしたのだろう。


聡「お願いします」

澪「いいけどさ。まず、同じ学部に行ったっていうのは知ってるよな」

聡「はい、コースだけ違ったというとこまで」

澪「うん。授業も結構被ってたんだけど、相変わらずすぐ友達が出来る奴だったよ」

聡「ああ……」

19: 2010/05/29(土) 01:25:36.83
律は外向的で親しみやすく、明るくて誰からでも好かれやすい性格だ。
中・高でそうだったのだから、開放的な大学では尚更だった。
それに対し私は、相変わらず内気で恥ずかしがり。

いつも律のそばで、楽しそうな様子を見ていた。


澪「律のことは律よりもよく覚えてるよ。そうだな……あいつ、度々告白されてた」

聡「え!あの姉ちゃんがですか」

驚いて思わず素になってしまったらしい。
聡くんは咳払いをして言い直したが、ちょっと可笑しくて思わず笑ってしまった。


聡「……」

澪「すまん、悪かったよ。だけど、私の前だしいつもの聡くんで良いよ」

20: 2010/05/29(土) 01:27:04.10
聡「ありがとうございます……でも、俺も大人なので」


まぁそういうことにしておこう。
とにかく、大学時代の律は結構モテていた。
元々明るくて気遣いの出来る奴だ。モテるのは当たり前だろう。


澪「だけど私は面白くなかったかな」

聡「え、でも澪さんだって相当告られたりしてそうですけど」

澪「うーん、まぁそうだけど、そっちじゃなくて」

澪「律が取られちゃうみたいでさ」


でも律はそんな私の心境を知ってか知らずか、彼氏を作ったりはしなかった。

22: 2010/05/29(土) 01:29:01.32
なぜ誰とも付き合わないのか聞いたところ、

『だってこうやって澪と遊んでた方が楽しいじゃん!』

との事だ。大学生になっても律はまったく変わってないんだと知った。


聡「相変わらずだったんですね」

澪「多少……ごく多少落ち着きを覚えたみたいだけどな」

聡「大方変わらなかった、と」


交流メインみたいなサークルにいても、律は律だった。
いつもみたいに私をからかったりして、周りの笑いを誘う。
そうしていつの間にか私も輪に入ってる。
最初は気が進まなかったサークルも、次第に楽しくなっていった。
人とうまく喋れるようになった。

23: 2010/05/29(土) 01:30:04.71
私にも友達が増えていった。


澪「律ってさ、本当他人への些細な気遣いとか上手いよな」

澪「軽くてサバサバしてそうで、他人のことによく気づくんだ」

聡「……わかります」

澪「やっぱり律はすごいと思ったよ。律に出会えたから私はここまで来れたと思う」

っていうのはちょっと褒めすぎかな。
本人が聞いたら調子に乗りそうだから、内緒だよと聡くんに言っておく。

26: 2010/05/29(土) 01:33:09.00
聡「心配しなくても、もう姉とはしばらく話してないですから……大丈夫ですよ」

澪「聡くん……」


聡くんが高校に入ってからだろうか。
律はときおり、あまり弟と喋らなくなったと零していた。
あの元気な律が心なしか寂しげに。

高校生の弟といえば多感な時期だ。
仕方ないとなだめても、寂しげな表情は消えなかった。


澪「聡くんはなんで律と喋らなくなったんだ?前は一緒に遊んでたじゃないか」

聡「……何ででしょう」


とぼけるような返事ではない。
律のことが嫌いになったわけではなさそうだ。

27: 2010/05/29(土) 01:34:47.32
聡「まぁガキの頃は兄弟ですし、遊んだりもしました」

聡「ですが、まぁ高校生にもなると……とくに男子ってのは、姉を避けたりするんですよ」


どうやら、私が思った通りらしかった。
確かに男子高生だと、姉と一緒に出かけたりするというのは恥ずかしいのかもしれない。


聡「何回か出かけようと誘われましたが……断っているうちにだんだん喋らなくなりました」

澪「そうか……」

澪「でも嫌いになったわけじゃなかったんだろ?」

聡「……いい姉だって言うのはわかってますから」

29: 2010/05/29(土) 01:40:16.71
ふと思う。
律の、あの性格に惹かれて好きになったのは私だけじゃないのではないかと。


澪「聡くんさ、律のこと、実は結構大好きだろ」

聡「えっ何でですか」

澪「大好きだからどう接したらいいかわからないし、照れたりするんだろ」


私も律が大好きだ。だが、友人として接するには何も問題ない。
だが、聡くんみたいに、弟が姉を慕うというのは中々認めたくないだろうし、
戸惑ったりするのかもしれない。


聡「そうなのかもしれませんね」

30: 2010/05/29(土) 01:43:42.55
澪「やっぱりそうか」

聡「俺が高校生のころ、ある日友達が、姉のことを可愛いって言ったんです」

澪「……おやまぁ」

聡「前はそんなことなかったのに。姉が高校卒業してから、結構そう言う奴が増えてきて」

聡「俺は姉を避けるようになりました。姉と俺の友達をあまり会わせたくなかったからです」

澪「お前も結構……アレだな。憂ちゃんの素質あるよ」


聡くんの本音は私の予想の斜め上だった。
というか、これはいわゆる……

31: 2010/05/29(土) 01:44:43.90
澪「シスコンか」

聡「そうですね。今になって思えば俺は姉離れできていなかったんです」

澪「今もだろ」

聡「澪さんも結構言いますね」

澪「当たり前だ。お前馬鹿だろ?もう律とはあまり会えなくなるんだぞ。このまま別れてもいいのか?」


律の悩みがただのすれ違いなら、私はそのズレを戻してやりたい。
あいつが何の悩みもなく嫁げるように、不安をなくしてやりたい。
ってなんだか母親みたいだな。

32: 2010/05/29(土) 01:50:31.59
いや逆か。
今まであいつに世話になっていたのは私のほうなのだから。


聡「俺、姉が高校卒業してからどんな事をして、どんな大学生活をしていたのかも知らなかったんです」

澪「だから今日私に聞いたのか」

聡「お時間いただいてすみません。あと一つ聞きたいんです。姉の旦那になる人は、どんな人なんですか?」


まるで母親のように心配しているのは私だけではないらしい。

澪「どんなって言われてもな。いい奴だと思うよ。大学時代から律の傍にいた奴だしな」


だが、彼は律に告白したりしなかった。ただ傍で律を見ていた。
そして、律が無理をしたりわざと明るく振舞っている様子を見抜き、支えていた。

37: 2010/05/29(土) 01:58:58.37
正直、私のポジションが奪われた気がして悲しくなった。
それでも、彼と一緒にいる律はとても楽しそうで。


澪「お似合いだと思ったよ。なよなよしたヘタレっぽい奴だけどな」

聡「ちょっと自分と被って胸が痛いです」

澪「ヘタレだけど、いい奴だよ。聡くんみたいにな」


大学を卒業して、律も彼も私も就職した。
そして彼が順調に社会人として成長した後、律に告白をしたのだった。


澪「そんないい奴のことだ。大丈夫だよ。じゃなきゃ私が結婚なんて認めてない」

40: 2010/05/29(土) 02:08:09.99
聡「澪さん……人のこと言えませんね」

澪「はは、うるさいぞ」

聡「澪さんのおかげで色々区切りがつきました。今日はありがとうございます」

澪「いいって。私もお前と律のことは気になってたからな。何とかなりそうでよかった」

聡「では、失礼します。明日もうちにくるんですか?」

澪「律が来いって言ってたからな。たぶん聡くんやご両親も一緒に、食事でもするんじゃないか」

聡「そうですか……わかりました」


外に出ると夕暮れが広がっていた。
聡くんを送り届けた後、私も帰宅する。
明日が終われば律としばらく会えなくなるだろう。
何とかなればいいと思いながら、シルバーの車体を走らせた。

44: 2010/05/29(土) 03:05:21.56
―――――――――――――――――――――――
次の日!


澪「ご馳走様です」

律「どういたしまして」

澪「お前の料理じゃないだろっ」パチン

律「痛ぁ!」

いつものやりとり。ご両親の前だから拳骨ではなくデコピンにしておく。
そんなやりとりを、みんな笑って見ていた。


澪「すいません、家族の団らんにお邪魔して」

律「何言ってんの!私が呼んだんだからいいんだよ!」

澪「でも彼は呼ばなくてよかったのか?」

律「いいのいいの。今日が終わったら中々会えなくなると思うからさ。旅立ちの晩餐?みたいな」

45: 2010/05/29(土) 03:11:18.87
ご両親と話をして、しばらく過ごす。
そんな中、聡くんが何も言わずに出て行った。
律は一瞬悲しそうな顔をした後、また笑顔に戻った。

何をしているんだ、あいつは。


澪「ちょっと電話してくるな」

律「あっ、ごめん時間だいじょぶ?」

澪「大丈夫だよ。ただの連絡だから」


二階に上がって、昨日居た部屋の隣をノックする。


澪「何やってるんだよ」

聡「澪さん……」

47: 2010/05/29(土) 03:14:42.21
澪「昨日はもう心配ないなと思ったのに、どうしたんだ?」

聡「……」

澪「律、悲しそうにしてたぞ」

聡「……」

聡「俺、やっぱり嫌です」

澪「?」

聡「明日から姉がいなくなるのは……嫌です」


まったく、このシスコンは。

48: 2010/05/29(土) 03:17:46.45
澪「お前な……律の幸せを願ってやれないのか?それに、今までずっと一緒にいただろ」

澪「たぶん聡くんも頭では分かってるんだろ?私だってそうだ。律が引っ越して、あまり会えなくなるのは嫌だよ」

聡「はい」

澪「今までお前も私も、律に助けられてきたじゃないか」


私も聡くんも、気が弱い性格だ。
気が弱い性格というのは、気が強い人間にいじめられやすい。
律も気が強かったが、私をいじめようとはしなかった。

それどころか、守ってくれた。

そして、守られていたのは聡くんも同じだ。

49: 2010/05/29(土) 03:20:49.52
澪「もう卒業……か」

聡「え?」

澪「お前も私も、そろそろ卒業するべきだよ。まぁ私は結婚してからマシになったけどな」

聡「姉を……ですか」

澪「そうだ。私は律に頼ってばかりな性格を、お前はシスコンを。そろそろ卒業しなきゃ」

聡「…………」


人は、誰かといつも傍にいることはできない。
友達も、恋人も、家族も、長い間傍にいることはあっても常に傍にいることはできないのだ。

50: 2010/05/29(土) 03:23:15.49
聡「そうですね……俺も卒業しなきゃな」

聡「すいません、昨日といい今日といい」

澪「いいって。さ、行こう」

聡「ありがとうございます」


下に降りると、律がバッグを持って玄関を出るところだった。
何でも、引越し作業が難航しているためもう戻ったほうがいいのだそうだ。


律「じゃあまたな!父さん、母さん、また来るから」

律の両親は涙ぐみつつ声援をおくる。


律「澪もまたな!遊び来てよね!」

51: 2010/05/29(土) 03:25:21.33
結婚式でもないのに私まで涙ぐみそうになった。
こんなときにも律は笑顔で、これからその笑顔があまり見れなくなると思うと寂しかった。


律「聡も……元気で!」


ぎこちなく笑った後、立て付けの悪い戸を開ける。
そのまま律が出て行こうとして、私が「おい聡、話が違うぞ」と思った時だった。


聡「ね、姉ちゃん!」

律「!!」

聡「えっと……元気で」

律「うん……聡も」


二人して黙る。この時初めて、似てる兄弟だなと思った。

52: 2010/05/29(土) 03:30:29.32
聡「姉ちゃん、幸せになってね」

律「聡……」

聡「結婚おめでとう!!たまにはうちにも帰ってきてよ!」

律「うん……!ありがと!!」


寂しげだった律の笑顔が、曇りのない笑顔になった。
いつも私を支えてくれた、私の大好きな笑顔。

律は見ているこっちまで幸せそうに笑いながら、今度こそ家を出た。

54: 2010/05/29(土) 03:39:42.63
きっと迎えに来たのであろう彼と律の楽しそうな声がドア越しに聞こえてくる。
次いで、車が走り去る音。
昨日と同じ、でも昨日みたいに次の日に会うことはもうできない。

見ると、聡くんは少しだけ涙ぐんでいた。

私はその肩をぽんと叩く。


聡「…………」

澪「卒業おめでとう」

聡「……澪さんも」

澪「……うん」

聡「色々ありがとうございました」

澪「私のほうこそ。じゃあまたな」

澪「お邪魔しました」

55: 2010/05/29(土) 03:43:35.79
ご両親に挨拶して私も律の家を出る。

車のロックを解除して乗り込もうと思ったとき、不意に呼び止められた。


澪「もう……びっくりした」


シルバーの車。その隣には私を迎えに来た人。
律の旦那とは違って少し意地の悪い彼を追いかけながら、助手席に乗り込んだ。










おわり

57: 2010/05/29(土) 03:47:58.06
投下というのが初なんで読みづらい部分があると思うがすまん
支援とかありがとうございました

59: 2010/05/29(土) 04:58:31.40
なかなか面白い作品

60: 2010/05/29(土) 07:04:17.97
乙です
こうゆう雰囲気の作品好きだよ

69: 2010/05/29(土) 13:42:59.07
>>66
うん、歩きで行ったよ

引用元: 澪「もう卒業・・・か」