2: 2012/06/26(火) 02:43:15.42
ガバッ

「ん~~~っ!!よく寝たっ!」

ぐーーーーーっと伸びをして朝の爽やかさを存分に表現します。

そこであれっと気付きました。

「ここ……どこだろう……?」

昨日の夜はちゃんと自分の部屋で寝たはずだったのに。
THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 03

3: 2012/06/26(火) 02:45:31.22 ID:y2b+cC05o
ベッドから部屋をぐるっと見回してみると、部屋の壁紙は気が狂いそうな程真っ白で何もありません。

ベッドも真っ白、掛け布団も真っ白です。

「うぅ……なんだか怖くなってきた……」

「涼さん……絵理さん……どこですかぁー……?」

じわっと涙が浮かんできました。

「うっ……ぐすっ……うわぁぁぁぁぁぁん!!!」

一度出始めた涙は止まるどころか量を増すばかりです。

4: 2012/06/26(火) 02:46:44.71
泣いている途中でふっと気が付きました。

「声が全然響かない……」

私はこんな風な場所を知っていた気がします。えっと、なんだったっけな……

「……そうだ、ボーカルレッスンとかレコーディングのお部屋だ……」

声が響かない事がこんなに怖いとは思いもよらない事でした。

「発見です!明日涼さんと絵理さんに教えてあげなきゃ!」

……この部屋から出られればの話ですが。

5: 2012/06/26(火) 02:48:41.05
とりあえずベッドから降りようとすると、足下に赤い靴が置いてあるのに気付きました。

「白くない……!!」

真っ白の中に、ひとつ違う色のものがある事がこんなに安心するものだとは。

これも発見です。

「この発見をおふたりに伝えたら、どんな反応をしてくれるかなぁ……」

そんなことを考えていると、ふっと寂しい気持ちが浮かんできました。

せっかく泣き止んだのに、また泣き始めてしまっては前には進めません。

ぐっとこらえて、動き出す覚悟を決めましょう。

6: 2012/06/26(火) 02:50:31.54
ベッドから降りて靴を履き、壁伝いに真っ白の部屋の中を探検してみる事にしました。

「あいたっ」

何かを蹴っ飛ばしたようです。

手でなでて確認してみると、それは、家にある勉強机のようでした。

「机……ということは、引き出しがあるかもっ!」

そこにこの状況を解決するヒントがないか、という期待を抱いて手探りで引き出しを探しました。

すると……

7: 2012/06/26(火) 02:52:34.20
「乾パンと……カルピス……?」

食べ物が出てきました。

残念ながら、手紙とかビデオレターなんてものは入っていませんでした。

グゥ~

食べ物を見たせいか、急にお腹が減ってきました。

空きっ腹に乾パンが「僕を食べて!」と呼びかけています。

あたしは乾パンに手を伸ばしました。

8: 2012/06/26(火) 02:54:53.74
「いつ出られるかわからないんだから、ちょっとずつ食べないとすぐなくなっちゃう!」

とは思ってもしょせんは乾パン。そんなにお腹には溜まりません。

「ご飯山盛り太郎くんがいいなぁ……ママぁ……どこにいるの……?」

さっきしまったはずの涙がまた浮かび上がってきそうになります。

またぐっとこらえて乾パンとカルピスを引き出しにしまいました。

「ここには机しか無いのかなぁ……」

9: 2012/06/26(火) 03:04:13.05
壁を伝って行くとまたも何かにぶつかりました。

今度は本棚のようです。

形を手で確認してみると、この形には何だか覚えがあります。

「そうか!この部屋はあたしの部屋にそっくりなんだ!」

机とベッドの位置関係やこの本棚は、長年連れ添ってきた部屋のものとそっくりなのです。

「! ということは……!!」

自分の部屋にそっくりならば、扉の場所も同じなはずです。

10: 2012/06/26(火) 03:06:36.29
「ここだーーーーっ!!」

どん!ばたっ

「痛い……」

扉があるはずの場所はただの壁でした。

「うぅ……出られると思ったのに……」

11: 2012/06/26(火) 03:08:39.58
することもなく結局ベッドに戻ってきました。

「暇だなぁ……」

「そうだ!ここならおっきな声出してもママに怒られない!!」

机やベッドに気をつければダンスだって大丈夫そうです。

目下の問題は曲がないことですが、

「あたしが歌えばいっか!レッスンするよーーーー!!」

12: 2012/06/26(火) 03:10:33.54
「ごーまいうぇー ごーまえへー」

即席ダンスレッスンの開始です。

でも、

「鏡ないと間違ってるかどうかわかんないよぉ……」

レッスンは第三者の視点がないとやっても意味がありません。

そんな時、

「右足、前に出過ぎ?」

13: 2012/06/26(火) 03:12:40.40
「へ?」

「愛ちゃん、そこいつも足開き過ぎだよ?」

「絵理さん!!」

いつの間にか、膝の上にノートパソコンを乗せた絵理さんがベッドに座っていました。

どこから入ってきたんだろうとか、いつからいたんだろうとか、そんなことはどうでも構いません。

この部屋に自分だけだった状況でなくなった事が、嬉しくて嬉しくてたまりません。

14: 2012/06/26(火) 03:15:00.24
「愛ちゃん、さっきのとこ、もう一度やって?」

「はい……はいっ!!」

絵理コーチによるレッスンが始まりました。

打倒ホシイミキ作戦の時以来です。

「そこ、もっと腕ぴしっと」

「愛ちゃん、やっぱりジャンプの高さ高すぎ?」

でも……なんか前よりも厳しいような……?

15: 2012/06/26(火) 03:17:15.76
「ハァハァ……絵理さん……ちょっと休憩させてください……」

「だめ。愛ちゃんはまだまだやることがある?」

「えぇ……」

今日の絵理コーチは鬼軍曹です。

すっごく厳しいプロデューサーで有名な、アキヅキリツコさんよりも厳しいかもしれません。

あれ、アキヅキ?

涼さんと名字が一緒です。

この部屋を出れたら涼さんに訊いてみなくっちゃ。

16: 2012/06/26(火) 03:20:02.33
「ほら愛ちゃん、休んでる、暇はない?」

「もう!今日の絵理さんは厳しすぎます!」

「愛ちゃん……」

「こんなこともできないようじゃ、この先アイドルやって行くのは、厳しい?」

「え……?」

絵理さん、今なんて……?

17: 2012/06/26(火) 03:22:51.04
「もう一度、言う?」

いやです……そんなこと、2度も言わないでください……

「愛ちゃんは、アイドルやめた方が良いかも?」

「絵理さんは……絵理さんはそんなこと言いません!!」

「あれ……」

下を向いている間に、絵理さんはいなくなってしまいました。

「絵理さんは……あんなひどいこと言いません……」

さっき泣かないと決めたばかりなのに、このパンチはなかなか辛いものがあります。

18: 2012/06/26(火) 03:25:48.11
そのままベッドに倒れ込んで、いつの間にか流れ始めていた涙を枕で拭きます。

「うぇぇぇ……」

最初とは違い、しくしくと涙は流れます。

「絵理さん……ひどいよ……」

19: 2012/06/26(火) 03:32:51.33
そのまま寝てしまっていたようでした。

「あれ……?あ、そっか。自主連してて、絵理さんがきて……それで……」

さっきのことを思い出すと、まだ涙が出そうになります。

「愛ちゃん、おはよう」

「え?」

涼さんが真後ろから話しかけてきました。

いっ、いつの間に……!?

20: 2012/06/26(火) 03:35:26.38
振り返ると、目の前に涼さんがいました。

というか、あれ?涼さんは男の人で、私は女で、こんな至近距離で私と涼さんがベッドに寝てて……

こここここれって、すっごくいけないことなんじゃ……!?

「愛ちゃん」

「ひゃい!?」

「僕じゃダメかな?」

ええええええええええええええ!?!?!?

21: 2012/06/26(火) 03:38:20.04
何が「ダメ」なんでしょうか!?

そもそもこれはどんな状況なんでしょうか!?

突然なシチュエーション どーしよ! (ドシロウト?)

あれはみんなが憧れのプリンセス……じゃなかった。プリンスじゃ~ん!

なんてDo-Dai歌ってる場合じゃなかった!!

しかもいつの間にか抱きしめられてます!!

いつもの涼さんじゃないみたいです……!!

22: 2012/06/26(火) 03:42:52.39
あれ?いつもの涼さんじゃない……?

さっきの絵理さんも、いつもの絵理さんじゃないみたいでした。

「涼さんじゃない……」

「え?」

「あなたは涼さんじゃありません!」

「涼さんはかっこよくてかわいいお兄ちゃんみたいな人だけど、あたしを好きになるはずがありません!」

23: 2012/06/26(火) 03:48:02.21
「そっか……振られちゃったか僕……」

そうぼそっとつぶやくと、涼さんは突然立ち上がってさっきあたしがぶつかった壁に向かって行きました。

涼さんが壁に触ると、壁が凹んで通れる様になっていました。

「それじゃ」

と言って、涼さんは部屋から踏み出て、

どこかへ落下して行ってしまいました。

24: 2012/06/26(火) 03:51:16.88
「!?」

驚いている間に壁の穴は埋まってしまいました。

涼さんが何処に落ちて行ってしまったのか確認する暇もありませんでした。

呆然としながら異世界への扉だった壁を見つめています。

あたしじゃ開かなかったのに、涼さんなら簡単に開いた……

もしかしたらあそこから出られるのかもしれない……

「でもさっきぶつかったときは開かなかったんだよなぁ」

25: 2012/06/26(火) 03:54:28.48
『押してダメなら押し破っちゃえばいいんです!!』

昔の自分がヒントをくれたみたいです。

「ぶつかってダメなら、もっと強くぶつかってみればいいんだ!」

思いついたらすぐ実行。

これが日高愛の良いところです。

「ママと戦う時みたいに……力を溜めて……」

26: 2012/06/26(火) 03:57:33.21
ひ~~~だ~~~か~~~~~~~!

「ミサーーーーーーーーーイル!!!」

ドカーン!!

27: 2012/06/26(火) 03:59:12.41
涼「うわっ!?」
絵理「ひぅ!?」

愛「ここは……事務所だ!」

涼「事務所の扉が……って、あれ?愛ちゃん」

愛「涼さん!絵理さん!おはようございます!!」

愛(うぅ……挨拶はいつも通り出来たけど、さっきまでのことがあるからなんとなく話しづらいよ……)

絵理「愛ちゃんも来たし、そろそろ、始める?」

涼「そうだね。じゃあ、せーので行くよ?」

愛「え?ちょ、ちょっと涼さん?絵理さん?」

28: 2012/06/26(火) 04:03:06.43
涼・絵理「愛ちゃん、誕生日おめでとう!!」パーン!

愛「へ……」

愛「あわわっ!忘れてました!ありがとうございます!!」

愛(起きてすぐあんなことがあったからすっかり忘れてたよーっ!!)

絵理「こちらにはケーキも準備?」

涼「なんと!あの天海春香さんの手作りだよ!」

29: 2012/06/26(火) 04:05:36.57
愛「えっ!?春香さんもいらっしゃるんですか!?」

涼「残念ながら春香さんはお仕事があって、ケーキだけ届けて帰っちゃったんだよね」

絵理「非常に、残念そうだった?」

愛「そうですか……でも嬉しいです!!」

30: 2012/06/26(火) 04:11:05.89
涼「そして、はい!」

絵理「私も……はい」

愛「わぁ……!!プレゼントですか!?」

涼「うん……ちょっと恥ずかしいから家で開けてね?…って、うわぁ!」ダキッ

愛「やっぱり涼さんはかっこよくてかわいくて優しいあたしの大好きなお兄さんです!!」

涼「あはは。ありがと、愛ちゃん」

31: 2012/06/26(火) 04:13:35.58
愛「絵理さんも大好きです!鬼軍曹はやっぱり偽物でした!!」

絵理「お、鬼軍曹!?」

愛「えへへ、こっちの話です!絵理さんも、えいっ!」グイッ

絵理「わわっ」ギュッ

愛「2人とも大好きです!!」



おわり

引用元: 愛「真っ白な部屋」