29: 2010/11/03(水) 00:50:29 ID:???
葛城ミサト29歳、花の独身。それも後わずかな時間。本部の食堂でリツコ博士と昼食中。
「結婚式は挙げないの?」「そんなもん面倒だからやだ」リツコはミサトの左手にキラキラ輝く指輪を見た「あなたが人妻ねえ。世も末だわ」ミサトはフンっとリツコを軽く睨みながらガツガツとご飯を食べた。
「おいおい、太るぞ」
肩をポンと叩かれる「だいたい今までその食生活で太らなかったのが不思議だよな」
「うっさいわねえっ!」
加持が背後に立っていた。「あらあら。愛しのフィアンセ登場ね」
「・・・リツコ、恥ずかしいからやめてちょうだいっ!」
そうなのだ。ミサトはもうすぐ加持と結婚する。最近はみんなにからかわれて赤面する日々。特に大学からの友人であるリツコを筆頭に。
「婚約者に対して冷たいなあ」加持はミサトの肩に手を回す「やめてよっ!こんなトコで」周囲のニヤニヤした視線に囲まれる。リツコも加持も真っ赤になるミサトを見て楽しんでいる。「私、仕事に戻る」プリプリして食堂を後にした。
「全くあのコは恋愛に関してはウブねえ」リツコは呆れた顔をした「リョウちゃんはそんな所も好きなんでしょ」加持は微笑んだ。
「そうだな。苦労した分、守ってやりたいと思うよ」
「結婚式は挙げないの?」「そんなもん面倒だからやだ」リツコはミサトの左手にキラキラ輝く指輪を見た「あなたが人妻ねえ。世も末だわ」ミサトはフンっとリツコを軽く睨みながらガツガツとご飯を食べた。
「おいおい、太るぞ」
肩をポンと叩かれる「だいたい今までその食生活で太らなかったのが不思議だよな」
「うっさいわねえっ!」
加持が背後に立っていた。「あらあら。愛しのフィアンセ登場ね」
「・・・リツコ、恥ずかしいからやめてちょうだいっ!」
そうなのだ。ミサトはもうすぐ加持と結婚する。最近はみんなにからかわれて赤面する日々。特に大学からの友人であるリツコを筆頭に。
「婚約者に対して冷たいなあ」加持はミサトの肩に手を回す「やめてよっ!こんなトコで」周囲のニヤニヤした視線に囲まれる。リツコも加持も真っ赤になるミサトを見て楽しんでいる。「私、仕事に戻る」プリプリして食堂を後にした。
「全くあのコは恋愛に関してはウブねえ」リツコは呆れた顔をした「リョウちゃんはそんな所も好きなんでしょ」加持は微笑んだ。
「そうだな。苦労した分、守ってやりたいと思うよ」
30: 2010/11/03(水) 00:51:29 ID:???
(リツコめ)ミサトは溜め池を吐いて書類を整理する。「葛城部長、お疲れのようですね」マヤまでニマニマして見ている(リツコに似てきたわね)
(あー、もうっ!恥ずかしいったらありゃしない)
周りの野次は無視無視。仕事に集中する事にした。おかげで久しぶりに定時に上がれそうだ。
「たっだいまー」コンフォート17。やっぱり家は落ち着くわあ「ミサトさん、お帰りなさい」シンジは勉強していたみたいだ。
「感心感心。シンちゃんも受験生だもんねえ。アスカは?」
「ドイツに帰る前に日本を堪能するって。友達と遊んでるみたい」
「そっかあ。あんまり遅くならないように言っとかないと」ミサトはアスカにメールを送ろうとした。
「あ、ミサトさん」シンジに声をかけられて動きが止まる。シンジは最近寂しそうだ。無理もない。アスカもミサトももうすぐこの家を離れる。シンジは一人になってしまう。
「僕、邪魔ですか?」シンジは悲しそうに問いかけた「何言ってんの。シンちゃんもアスカも私の大事な大事な家族よ」ミサトはシンジの手を握ってポンポンと叩いた。
「結婚してもしょっちゅう里帰りしちゃうわよん」
(あー、もうっ!恥ずかしいったらありゃしない)
周りの野次は無視無視。仕事に集中する事にした。おかげで久しぶりに定時に上がれそうだ。
「たっだいまー」コンフォート17。やっぱり家は落ち着くわあ「ミサトさん、お帰りなさい」シンジは勉強していたみたいだ。
「感心感心。シンちゃんも受験生だもんねえ。アスカは?」
「ドイツに帰る前に日本を堪能するって。友達と遊んでるみたい」
「そっかあ。あんまり遅くならないように言っとかないと」ミサトはアスカにメールを送ろうとした。
「あ、ミサトさん」シンジに声をかけられて動きが止まる。シンジは最近寂しそうだ。無理もない。アスカもミサトももうすぐこの家を離れる。シンジは一人になってしまう。
「僕、邪魔ですか?」シンジは悲しそうに問いかけた「何言ってんの。シンちゃんもアスカも私の大事な大事な家族よ」ミサトはシンジの手を握ってポンポンと叩いた。
「結婚してもしょっちゅう里帰りしちゃうわよん」
31: 2010/11/03(水) 00:56:44 ID:???
「でもミサトさんが結婚するなんて驚きましたよ」
夕飯を食べながらシンジはぽつりと言った。
「そうねえ。自分でも驚いてるわー」
「シンちゃんのご飯が食べられないのは悲しいわ」
一体全体、加持とミサトが結婚したら部屋はどうなるんだか。
ミサトの携帯が鳴る。
「もしもし?へ、あした?別にいいけど・・・」
電話の相手は加持らしい。シンジは気を使って食器を片付け出した。
(なんかモヤモヤする)
シンジは最近いつもこんな感じ。ミサトさんがまさか居なくなっちゃうなんて考えもしなかったのに。
平和な世の中になったせいかミサトは最近ぽけーっとしていた。反発した事もあったし、ミサトの態度に理解出来ない時もあった。
でも今は優しい言葉、微笑みを思い出す。シンジをからう時の笑顔。本気で心から心配してくれた事。
(僕はミサトさんに甘えていたのかな)
一ヶ月程前。ミサトは加持と飲んでいた。
「最近気が抜けてるな」
「だぁってさー、私の役目はもう終わったのー!」
完全に出来上がっていた。ミサトはため息をついた。「シンちゃん達には無理させちゃったしー今はねえ、普通の中学生としてえ、楽しんで幸せにさあ、なって欲しいのよー」
グタグタ言い続ける。
「そうゆーコトでぇ、私はなーんにもないのー」
ミサトはビールを流し込んだ。
「葛城」黙って聞いていた加持が言葉を遮る。
「それじゃ、俺と幸せになってみないか?」
ミサトはトロンとした目で目の前の男をみつめた。
「言ってる意味が分からないんですけどー」
加持はポケットから指輪を取り出した。プラチナで真ん中に大きなダイヤモンドが埋めてある。左右には一回り小さいダイヤモンドが入っていてとても綺麗だ。「結婚して欲しい」
加持は真剣な顔をしてる。「まーたまたぁ、ヘンテコなコト言ってさー・・・」「本気だよ」
「べっつにいいわよー。出来るモンならしてみせろ!」指輪はミサトの薬指に滑り込んだ。
夕飯を食べながらシンジはぽつりと言った。
「そうねえ。自分でも驚いてるわー」
「シンちゃんのご飯が食べられないのは悲しいわ」
一体全体、加持とミサトが結婚したら部屋はどうなるんだか。
ミサトの携帯が鳴る。
「もしもし?へ、あした?別にいいけど・・・」
電話の相手は加持らしい。シンジは気を使って食器を片付け出した。
(なんかモヤモヤする)
シンジは最近いつもこんな感じ。ミサトさんがまさか居なくなっちゃうなんて考えもしなかったのに。
平和な世の中になったせいかミサトは最近ぽけーっとしていた。反発した事もあったし、ミサトの態度に理解出来ない時もあった。
でも今は優しい言葉、微笑みを思い出す。シンジをからう時の笑顔。本気で心から心配してくれた事。
(僕はミサトさんに甘えていたのかな)
一ヶ月程前。ミサトは加持と飲んでいた。
「最近気が抜けてるな」
「だぁってさー、私の役目はもう終わったのー!」
完全に出来上がっていた。ミサトはため息をついた。「シンちゃん達には無理させちゃったしー今はねえ、普通の中学生としてえ、楽しんで幸せにさあ、なって欲しいのよー」
グタグタ言い続ける。
「そうゆーコトでぇ、私はなーんにもないのー」
ミサトはビールを流し込んだ。
「葛城」黙って聞いていた加持が言葉を遮る。
「それじゃ、俺と幸せになってみないか?」
ミサトはトロンとした目で目の前の男をみつめた。
「言ってる意味が分からないんですけどー」
加持はポケットから指輪を取り出した。プラチナで真ん中に大きなダイヤモンドが埋めてある。左右には一回り小さいダイヤモンドが入っていてとても綺麗だ。「結婚して欲しい」
加持は真剣な顔をしてる。「まーたまたぁ、ヘンテコなコト言ってさー・・・」「本気だよ」
「べっつにいいわよー。出来るモンならしてみせろ!」指輪はミサトの薬指に滑り込んだ。
35: 2010/11/03(水) 20:58:33 ID:???
「シンジくんアスカ、悪いね」ミサトを抱えた加持が家に来た。本人は潰れている。
「全くいい歳してミサトは・・・」ブツブツ言いながらもアスカは寝室のドアを開けた。
「ちょっと失礼するよ」
加持はミサトを抱えたまま靴を脱いだ。
ベッドにミサトを寝かせて加持は戻って来た。
「ごめんごめん。ちょっと飲ませ過ぎたかな」
シンジはイライラした。軽々とミサトを抱く加持。大人なんだな、と嫉妬心を感じた。
「じゃ、後は宜しく」
(頭イタ・・・)ふらつきながらミサトは目覚まし時計のしつこい音を消した。多分シンジがセットしてくれたのだろう。
リビングには朝食と、胃薬まで用意されている・・・(全く良く出来た子だわ)
後でなんかお礼しないとなあ。アスカにも。コーヒーを入れて一息ついた。ふと左手に違和感を覚えて視線を送った。
(あら?)
指輪が、はまっている。しかもかなり高級品なのが一目で分かる。
(あわわわ・・・まさか酔っぱらってトンデモない失態を・・・)頭を抱えてうろうろした。
(そういえばこれ、加持くんがくれたような?)
あ!意識が覚めた。ミサトは急いで本部に向かった。
「ありがと?」
おめでとう、と言われてつられて言葉を返す。
視線がミサトの左手に集まる。
「素敵ーっ!似合ってますよ!」
加持が隣に現れた。
「そういうコトなのでどうぞ宜しく」
(やっぱり現実だったのね)
加持とは気心が知れてるし一緒にいてラクだ。正直、ドキドキしたりハラハラするのはもう御免だ。
(こういう形の結婚もあるわよね)
もしかしたら逃げているのかも知れない。でもミサトは決めたのだ。加持と生きて行く、と。
「全くいい歳してミサトは・・・」ブツブツ言いながらもアスカは寝室のドアを開けた。
「ちょっと失礼するよ」
加持はミサトを抱えたまま靴を脱いだ。
ベッドにミサトを寝かせて加持は戻って来た。
「ごめんごめん。ちょっと飲ませ過ぎたかな」
シンジはイライラした。軽々とミサトを抱く加持。大人なんだな、と嫉妬心を感じた。
「じゃ、後は宜しく」
(頭イタ・・・)ふらつきながらミサトは目覚まし時計のしつこい音を消した。多分シンジがセットしてくれたのだろう。
リビングには朝食と、胃薬まで用意されている・・・(全く良く出来た子だわ)
後でなんかお礼しないとなあ。アスカにも。コーヒーを入れて一息ついた。ふと左手に違和感を覚えて視線を送った。
(あら?)
指輪が、はまっている。しかもかなり高級品なのが一目で分かる。
(あわわわ・・・まさか酔っぱらってトンデモない失態を・・・)頭を抱えてうろうろした。
(そういえばこれ、加持くんがくれたような?)
あ!意識が覚めた。ミサトは急いで本部に向かった。
「ありがと?」
おめでとう、と言われてつられて言葉を返す。
視線がミサトの左手に集まる。
「素敵ーっ!似合ってますよ!」
加持が隣に現れた。
「そういうコトなのでどうぞ宜しく」
(やっぱり現実だったのね)
加持とは気心が知れてるし一緒にいてラクだ。正直、ドキドキしたりハラハラするのはもう御免だ。
(こういう形の結婚もあるわよね)
もしかしたら逃げているのかも知れない。でもミサトは決めたのだ。加持と生きて行く、と。
36: 2010/11/03(水) 21:14:36 ID:???
「やっぱりここか」
シンジは屋上で一人ぽつんと座っていた。
「アスカ、何?弁当不味かったかな」ガコッ!アスカの蹴りを喰らう。
「痛いなあ、突然何するんだよ」シンジは元気なく答える。
「弁当の話してる場合じゃないでしょ。ミサトが結婚すんのよ」アスカはシンジの前に座った。
「・・その話はやめ・・」バキッ!左肩に痛みが走る。顔やみぞおちを狙わないのがアスカのせめてもの優しさか。
「好きなんでしょ?」
シンジはパッと赤面した。「もうホントに勘弁・・」アスカは言葉を遮った。
「あのねシンジ。男はねえ【絶対に意地を張らないといけない】時と【絶対に張っちゃいけない】時が一生に何度か訪れるのよ」
・・・アスカ、誰からそんな言葉を・・まあいいや。「今はどっちか分かるわよね」
「・・・好きだけじゃどうにもならないよ」
シンジはポツリと呟いて慌てて口を塞いだ。アスカにしてやったり顔で猛攻撃を受けるのを覚悟した。
「そうね。それなら、指加えて見てたら?」
アスカは立ち去った。
(いつからかな。ミサトさんを意識したのは)シンジは部屋に籠っていた。
(最初からかも知れない)
ミサトが「け、け、結婚、するの」と真っ赤になって言い出した。
その時に何とも言い難い亀裂が身体を走った。はっきり気付いたのはその時だと思った。
(僕は学生。ミサトさんと加持さんは地位も名誉もある社会人。同じ土俵に立つ事すら許されないんだ)
まあ、シンジだってエヴァのパイロットとして地球を救った、最大のヒーローとして周りは一目置いている。気付いて無いだけだ。
(ミサトさんが幸せならいいよ)
シンジは強引に自分の淡い想いを押し頃してそう考える事に撤していた。
シンジは屋上で一人ぽつんと座っていた。
「アスカ、何?弁当不味かったかな」ガコッ!アスカの蹴りを喰らう。
「痛いなあ、突然何するんだよ」シンジは元気なく答える。
「弁当の話してる場合じゃないでしょ。ミサトが結婚すんのよ」アスカはシンジの前に座った。
「・・その話はやめ・・」バキッ!左肩に痛みが走る。顔やみぞおちを狙わないのがアスカのせめてもの優しさか。
「好きなんでしょ?」
シンジはパッと赤面した。「もうホントに勘弁・・」アスカは言葉を遮った。
「あのねシンジ。男はねえ【絶対に意地を張らないといけない】時と【絶対に張っちゃいけない】時が一生に何度か訪れるのよ」
・・・アスカ、誰からそんな言葉を・・まあいいや。「今はどっちか分かるわよね」
「・・・好きだけじゃどうにもならないよ」
シンジはポツリと呟いて慌てて口を塞いだ。アスカにしてやったり顔で猛攻撃を受けるのを覚悟した。
「そうね。それなら、指加えて見てたら?」
アスカは立ち去った。
(いつからかな。ミサトさんを意識したのは)シンジは部屋に籠っていた。
(最初からかも知れない)
ミサトが「け、け、結婚、するの」と真っ赤になって言い出した。
その時に何とも言い難い亀裂が身体を走った。はっきり気付いたのはその時だと思った。
(僕は学生。ミサトさんと加持さんは地位も名誉もある社会人。同じ土俵に立つ事すら許されないんだ)
まあ、シンジだってエヴァのパイロットとして地球を救った、最大のヒーローとして周りは一目置いている。気付いて無いだけだ。
(ミサトさんが幸せならいいよ)
シンジは強引に自分の淡い想いを押し頃してそう考える事に撤していた。
39: 2010/11/04(木) 00:46:05 ID:???
【惣流・アスカ・ラングレーの一人言】
(人間っていつまで経っても大人になりきれないモノよね)
アスカはぬいぐるみを抱きしめた。
(結婚したって子供生んだって大人になんて成れないんだから)
古い、ほつれたぬいぐるみをみつめた。
(そうよね。ママ)
アスカは目を閉じた。
(シンジはバカ、ホントにバカ。だけどもっとバカなのはミサトよ!)
ごろん、と寝返りをうつ。(シンジ、好きってだけで十分じゃん。ミサト、自分の気持ちに気付かないなんて鈍感な人!)
そして呟いた。
「ミサト、私もアンタが嫁に行くなんて寂しいのよ!いつまでもココは私の本当の家だと思ってたのに!」ワガママなのは分かってる。けどアスカはアスカでミサトを本当の家族だと思っているのだ。
【加持リョウジの一人言】(強引だったよなあ)
ウイスキーのグラスを手にしてぼんやり考えた。
(あんな手段で結婚を申し込むなんて反則だよな)
茶色い液体を喉に流す。
(・・・ああでもしないと絶対に断られたよな)
煙草に火を点ける。
(昔振られた女に・・・情けないよな)
フーッと天井に向かって煙を吐いた。
(取られたく無かったんだよ)そして呟いた。
「シンジくんにね」
ミサトはシンジを気にしている。本人は分かっていないだけだ。シンジも想いを寄せている。
(本当に情けない話だ)
(人間っていつまで経っても大人になりきれないモノよね)
アスカはぬいぐるみを抱きしめた。
(結婚したって子供生んだって大人になんて成れないんだから)
古い、ほつれたぬいぐるみをみつめた。
(そうよね。ママ)
アスカは目を閉じた。
(シンジはバカ、ホントにバカ。だけどもっとバカなのはミサトよ!)
ごろん、と寝返りをうつ。(シンジ、好きってだけで十分じゃん。ミサト、自分の気持ちに気付かないなんて鈍感な人!)
そして呟いた。
「ミサト、私もアンタが嫁に行くなんて寂しいのよ!いつまでもココは私の本当の家だと思ってたのに!」ワガママなのは分かってる。けどアスカはアスカでミサトを本当の家族だと思っているのだ。
【加持リョウジの一人言】(強引だったよなあ)
ウイスキーのグラスを手にしてぼんやり考えた。
(あんな手段で結婚を申し込むなんて反則だよな)
茶色い液体を喉に流す。
(・・・ああでもしないと絶対に断られたよな)
煙草に火を点ける。
(昔振られた女に・・・情けないよな)
フーッと天井に向かって煙を吐いた。
(取られたく無かったんだよ)そして呟いた。
「シンジくんにね」
ミサトはシンジを気にしている。本人は分かっていないだけだ。シンジも想いを寄せている。
(本当に情けない話だ)
40: 2010/11/04(木) 00:48:54 ID:???
「アスカ、最近帰りが遅いわね」ミサトはうろうろとリビングを往復していた。「まさか変な男に引っ掛かってたり・・・」
またうろうろ。
「あのコに限って、無いわ。アスカは賢い娘だし」
その賢い娘にバカバカ言われているなんて考えてもいないミサトだ・・・。
「ミサトさん、落ち着いて」シンジがコーヒーを渡してくれる。最近の日課だ。濃い目のアメリカン。何とも微妙なコーヒーだけどミサト好みの味にシンジが編み出した、絶品なのだ。
「ありがと、シンちゃん」ブラックですする。
「美味しいわー。さっすがシンちゃんね」
いつもの味。美味しいだけでなく落ち着くのよねえ。シンジはにっこりした。ミルクを少し入れてシンジもコーヒーを飲む。
ミサトはシンジの横顔を盗み見した。
(いつから、だっけ?)
【葛城ミサトの一人言】
肌を露出した服をシンジの前で着なくなった。風呂上がりはバスタオル一枚で部屋に直行出来なくなった。
(恥ずかしいのよね)
短期間で背丈が伸び、ミサトの目線と同じ位置になったからか。昔のように冗談交じりで胸に抱いたり、おでこにキスしたりするのはためらった。
「大人のキスよ。帰って来たら、続きをしましょう」ミサトはバスタブに浸かりながらずっこけた。
(まさか、生きてるなんてね)
パシャンッ!両手でお湯を救って上に投げる。
(シンちゃんにキスされた事もあったな)
ある日。ミサトは疲れてうたた寝をしていた。
「ミサトさん、風邪引きますよ」シンちゃんの声がした。背中が温かくなった。何かかけてくれたみたい。気持ち良く寝ていたので動きたくない。
(・・・?)
唇に何かが触れた。ほんの一瞬だけど。あの時と同じ感覚だ。シンジの唇だと気付いた。
ミサトはそれが不思議と嬉しくて、そのまま寝ているフリを続けた。
(夢だったのかな)
自分に言い聞かせた。その翌朝からコーヒーを入れてくれるのが習慣になったのは覚えている。
「好き、かも」
ミサトは呟いた。そしてハッとしてその言葉を胸の中に抑え込んだ。
(バカな考えだわ。それにハラハラしたりドキドキするのは疲れた、わ)
またうろうろ。
「あのコに限って、無いわ。アスカは賢い娘だし」
その賢い娘にバカバカ言われているなんて考えてもいないミサトだ・・・。
「ミサトさん、落ち着いて」シンジがコーヒーを渡してくれる。最近の日課だ。濃い目のアメリカン。何とも微妙なコーヒーだけどミサト好みの味にシンジが編み出した、絶品なのだ。
「ありがと、シンちゃん」ブラックですする。
「美味しいわー。さっすがシンちゃんね」
いつもの味。美味しいだけでなく落ち着くのよねえ。シンジはにっこりした。ミルクを少し入れてシンジもコーヒーを飲む。
ミサトはシンジの横顔を盗み見した。
(いつから、だっけ?)
【葛城ミサトの一人言】
肌を露出した服をシンジの前で着なくなった。風呂上がりはバスタオル一枚で部屋に直行出来なくなった。
(恥ずかしいのよね)
短期間で背丈が伸び、ミサトの目線と同じ位置になったからか。昔のように冗談交じりで胸に抱いたり、おでこにキスしたりするのはためらった。
「大人のキスよ。帰って来たら、続きをしましょう」ミサトはバスタブに浸かりながらずっこけた。
(まさか、生きてるなんてね)
パシャンッ!両手でお湯を救って上に投げる。
(シンちゃんにキスされた事もあったな)
ある日。ミサトは疲れてうたた寝をしていた。
「ミサトさん、風邪引きますよ」シンちゃんの声がした。背中が温かくなった。何かかけてくれたみたい。気持ち良く寝ていたので動きたくない。
(・・・?)
唇に何かが触れた。ほんの一瞬だけど。あの時と同じ感覚だ。シンジの唇だと気付いた。
ミサトはそれが不思議と嬉しくて、そのまま寝ているフリを続けた。
(夢だったのかな)
自分に言い聞かせた。その翌朝からコーヒーを入れてくれるのが習慣になったのは覚えている。
「好き、かも」
ミサトは呟いた。そしてハッとしてその言葉を胸の中に抑え込んだ。
(バカな考えだわ。それにハラハラしたりドキドキするのは疲れた、わ)
43: 2010/11/04(木) 21:52:21 ID:???
「婚約パーティー?」
「そうですよ。葛城部長ったら結婚式も披露宴もしないんですもの」
ミサトはマヤの話を黙って聞いていた。
「私達からの今までの感謝の気持ちもあるんで」
「あ、ありがたいけどマヤちゃん。みんな忙しいし」ミサトはそういった催しは苦手である。
「そんなに大袈裟な物じゃないんですよー。ほんのささやかな感じですから」
マヤは嬉しそうだ。
「滅多にないコトですし。みなさん張り切ってますよ。楽しみにしていて下さいね」マヤはウキウキと言った。ミサトも一応大人だ。「ありがとね・・・」
と(ひきつった)笑顔を返した。
「ああ。リッちゃんから聞いたよ」加持は煙草を手に答えた。
「ありがたいな」
グラスを手に話を続ける。「区切りでも無いとこのまま一生入籍に至る事が出来なそうだし」
ミサトは怪訝な顔をした。「女に二言はないわよっ!するったらす・る・の!」ビールを喉に流し入れた。(やれやれ。変わらないな)「・・・ねえ加持くん」
帰り道。二人は繁華街を歩いていた。加持は優しく聞く「なんだい?」
ミサトは意を決して聞いてみた。
「何故私と結婚するの?」加持は笑い出した。
「俺が貰わないと葛城は一生一人だと思ったからさ」(コイツ・・・!)ミサトは反射的に手を上げた。しかし軽く避けられ、手首を掴まれた。「冗談だよ」そのまま手をギュッと握りしめられる。「一緒にいたいと思った。それだけさ」
【ミサトの三ヶ条】
その一、「もし」「たら」「れば」は言わない。
その二、後悔しない。
その三、女に二言はない。使徒との戦い後に無事生還してから(一人で)決めたこと。そしてもう一つ決めた。今はオマケの人生だ。無かった筈の命。
(難しく考えないで生きて行こ・・・)
ミサトは無意識に自分の心に牽制球を送った。
【アスカのポリシー】
「バカバカバカ!」「アスカ、103回目」
ヒカリは呆れ顔で呟いた。「何がよ?」「バカって言ったの」「数えてたの?アンタもバカね!」104回目のバカを吐き出した。
(自分の気持ちに嘘はつかないのっ!)
「あんなバカ二人と暮らしてたらボヤキたくもなるわよっ!」「ひゃくご・・・」キッ!とアスカに睨まれてヒカリは言葉を止めた・・・。
「そうですよ。葛城部長ったら結婚式も披露宴もしないんですもの」
ミサトはマヤの話を黙って聞いていた。
「私達からの今までの感謝の気持ちもあるんで」
「あ、ありがたいけどマヤちゃん。みんな忙しいし」ミサトはそういった催しは苦手である。
「そんなに大袈裟な物じゃないんですよー。ほんのささやかな感じですから」
マヤは嬉しそうだ。
「滅多にないコトですし。みなさん張り切ってますよ。楽しみにしていて下さいね」マヤはウキウキと言った。ミサトも一応大人だ。「ありがとね・・・」
と(ひきつった)笑顔を返した。
「ああ。リッちゃんから聞いたよ」加持は煙草を手に答えた。
「ありがたいな」
グラスを手に話を続ける。「区切りでも無いとこのまま一生入籍に至る事が出来なそうだし」
ミサトは怪訝な顔をした。「女に二言はないわよっ!するったらす・る・の!」ビールを喉に流し入れた。(やれやれ。変わらないな)「・・・ねえ加持くん」
帰り道。二人は繁華街を歩いていた。加持は優しく聞く「なんだい?」
ミサトは意を決して聞いてみた。
「何故私と結婚するの?」加持は笑い出した。
「俺が貰わないと葛城は一生一人だと思ったからさ」(コイツ・・・!)ミサトは反射的に手を上げた。しかし軽く避けられ、手首を掴まれた。「冗談だよ」そのまま手をギュッと握りしめられる。「一緒にいたいと思った。それだけさ」
【ミサトの三ヶ条】
その一、「もし」「たら」「れば」は言わない。
その二、後悔しない。
その三、女に二言はない。使徒との戦い後に無事生還してから(一人で)決めたこと。そしてもう一つ決めた。今はオマケの人生だ。無かった筈の命。
(難しく考えないで生きて行こ・・・)
ミサトは無意識に自分の心に牽制球を送った。
【アスカのポリシー】
「バカバカバカ!」「アスカ、103回目」
ヒカリは呆れ顔で呟いた。「何がよ?」「バカって言ったの」「数えてたの?アンタもバカね!」104回目のバカを吐き出した。
(自分の気持ちに嘘はつかないのっ!)
「あんなバカ二人と暮らしてたらボヤキたくもなるわよっ!」「ひゃくご・・・」キッ!とアスカに睨まれてヒカリは言葉を止めた・・・。
44: 2010/11/04(木) 22:00:55 ID:???
(くっ・・・ね、眠い)
久しぶりの夜勤でミサトはくたくたに疲れていた。
(全く歳は取りたくないモノだわ)このまま寝てしまいたいけど身体がベタベタで気持ち悪い。なんとか風呂場までたどり着く。
(うーん、最高)
熱めのお湯が心地よく疲れた身体を打ちつける。何とも言えない気分だ。
脱衣場の時計見て現実に戻される。
(げっ・・・もう昼過ぎ)
六時には又出勤しなくてはならない。慌てふためいてドアを勢い良く開けた。
どすっ・・・!!!
何かにぶつかる。
「うわっ・・・!」
シンジがしりもちを着いて倒れていた。勢い余って吹っ飛ばしてしまったらしい「し、シンちゃん!大丈夫?・・・って、学校は?」「へ、平気です・・僕がぼんやりしてたから。今日はテストで昼には帰るって、メモ、置いて・・・」
シンジの言葉が止まった。顔を真っ赤にして呆然とミサトを見上げている。
あっ!!!風呂上がり、つまり全裸の自分に気付いた。慌ててタオルで身体を隠した。
「ご、ごめんね、シンちゃん、本当に大丈夫?」
手を取って助け起こそうとした。が、
「ぎゃっ!!!」ズドン!「あたた・・・」今度はミサトが滑って転ぶ。シンジが覆い被さる体勢になってしまった。
二人は顔を真っ赤にしたまま見つめ合う。硬直して身動きが取れなくなってしまう。ミサトは我に返ってシンジの身体から身を引こうとした。
「・・シンちゃん?」シンジがミサトの肩を強く掴み、自分へ引き寄せた。少年の身体は微かに震えている。「シンジくん、止めなさい」ミサトは声を抑えて言った。シンジはそのまま身体を離さない。
「シンジくん、止めて」
悲鳴に近い声を上げた。自分がどうなってしまうのか怖かった。
シンジは離してくれない。「・・・お願い、離して」ミサトは懇願した。
「・・・ごめんなさい、何もしません。でも、でも」シンジは泣いている。自分の右の頬にシンジの涙が伝っている。
「もう少しだけ、もう少しだけでいいから・・・」
ミサトは動けなかった。
「このままでいさせてください」ミサトはただその言葉に従っていた。
久しぶりの夜勤でミサトはくたくたに疲れていた。
(全く歳は取りたくないモノだわ)このまま寝てしまいたいけど身体がベタベタで気持ち悪い。なんとか風呂場までたどり着く。
(うーん、最高)
熱めのお湯が心地よく疲れた身体を打ちつける。何とも言えない気分だ。
脱衣場の時計見て現実に戻される。
(げっ・・・もう昼過ぎ)
六時には又出勤しなくてはならない。慌てふためいてドアを勢い良く開けた。
どすっ・・・!!!
何かにぶつかる。
「うわっ・・・!」
シンジがしりもちを着いて倒れていた。勢い余って吹っ飛ばしてしまったらしい「し、シンちゃん!大丈夫?・・・って、学校は?」「へ、平気です・・僕がぼんやりしてたから。今日はテストで昼には帰るって、メモ、置いて・・・」
シンジの言葉が止まった。顔を真っ赤にして呆然とミサトを見上げている。
あっ!!!風呂上がり、つまり全裸の自分に気付いた。慌ててタオルで身体を隠した。
「ご、ごめんね、シンちゃん、本当に大丈夫?」
手を取って助け起こそうとした。が、
「ぎゃっ!!!」ズドン!「あたた・・・」今度はミサトが滑って転ぶ。シンジが覆い被さる体勢になってしまった。
二人は顔を真っ赤にしたまま見つめ合う。硬直して身動きが取れなくなってしまう。ミサトは我に返ってシンジの身体から身を引こうとした。
「・・シンちゃん?」シンジがミサトの肩を強く掴み、自分へ引き寄せた。少年の身体は微かに震えている。「シンジくん、止めなさい」ミサトは声を抑えて言った。シンジはそのまま身体を離さない。
「シンジくん、止めて」
悲鳴に近い声を上げた。自分がどうなってしまうのか怖かった。
シンジは離してくれない。「・・・お願い、離して」ミサトは懇願した。
「・・・ごめんなさい、何もしません。でも、でも」シンジは泣いている。自分の右の頬にシンジの涙が伝っている。
「もう少しだけ、もう少しだけでいいから・・・」
ミサトは動けなかった。
「このままでいさせてください」ミサトはただその言葉に従っていた。
50: 2010/11/06(土) 00:33:45 ID:???
ミサトは忙しい日々を過ごしていた。急に夜勤も増え、睡眠もろくに取れていなかった。
(全く、人使い荒いわね)
フラフラしながらパソコンに向かう。でも仕事をしていれば集中出来る。逆に考えりゃありがたい。
(シンちゃんのコーヒーが飲みたい・・・)
あの日、シンジとは勿論何も無かった。震える肩、頬を伝う涙。思い出すと心を鷲掴みにされるような、切なさが込み上げる。
(・・・考えちゃダメ)
ミサトは自分の顔に張り手を喰らわせた。
(い、いたた・・・)やりすぎた、本気で痛い。
(・・・私って馬鹿力ね)
しかし本当に激痛が走り続けてるのは心の方だった。
「加持さん?」下校時間。校門の所に見慣れた男が立っていた「やあ、シンジくん。ちょっといいかい?」高い背丈。程好い筋肉の付いた逞しい身体。男から見ても格好良い。
(ミサトさんとは本当に釣り合ってるな)
「男同士で話さないか?」僕に何の用だろう。家に帰っても仕方ないし、好奇心もある。
「別にいいですよ」シンジは加持の車に乗り込んだ。
(全く、人使い荒いわね)
フラフラしながらパソコンに向かう。でも仕事をしていれば集中出来る。逆に考えりゃありがたい。
(シンちゃんのコーヒーが飲みたい・・・)
あの日、シンジとは勿論何も無かった。震える肩、頬を伝う涙。思い出すと心を鷲掴みにされるような、切なさが込み上げる。
(・・・考えちゃダメ)
ミサトは自分の顔に張り手を喰らわせた。
(い、いたた・・・)やりすぎた、本気で痛い。
(・・・私って馬鹿力ね)
しかし本当に激痛が走り続けてるのは心の方だった。
「加持さん?」下校時間。校門の所に見慣れた男が立っていた「やあ、シンジくん。ちょっといいかい?」高い背丈。程好い筋肉の付いた逞しい身体。男から見ても格好良い。
(ミサトさんとは本当に釣り合ってるな)
「男同士で話さないか?」僕に何の用だろう。家に帰っても仕方ないし、好奇心もある。
「別にいいですよ」シンジは加持の車に乗り込んだ。
51: 2010/11/06(土) 00:35:01 ID:???
「急に悪かったね」加持は運転しながら話出す。
「いいえ。テストも終わったし」「煙草吸ってもいいかい?」シンジは返事の代わりに置いてあったライターを渡した。
(気が利くなあ)加持は信号待ちの時、シンジの横顔をを盗み見た。少年らしい線の細い身体。整った顔立ち。後5、6年もすればとても素敵な青年になるだろう。「シンジくん、ごめんな」「な、な、何がですか?」「大事な『ミサトさん』を取っちゃって」
・・・どういうつもりなんだろう。シンジは何も答えなかった。
「好きなんだろ」いつもは気にならない煙が鼻につく。挑発に乗るべきか。
(・・・そんな事しても虚しいだけだ)シンジは感情を抑えた。そうすればラクだし。色々考えて悩むのはもう沢山だよ。
「加持さんとミサトさんは本当にお似合いです」
シンジは半分ヤケになって答えた。
「ミサトさんを幸せに出来るのは加持さんだと思います」加持は黙って煙草に火を点けた。
(こっちにも意地っ張りがいるなあ)
「話はそれだけですか?」「まあ、そんなとこだけど」「じゃ、これで」
シンジは車から降りようとした。
「駅までだいぶあるぞ。送るよ」加持が引き止める。「歩いて行くから平気です。それじゃあ」
シンジはドアを閉めて走って行った。
(・・・やれやれ、だな)
「いいえ。テストも終わったし」「煙草吸ってもいいかい?」シンジは返事の代わりに置いてあったライターを渡した。
(気が利くなあ)加持は信号待ちの時、シンジの横顔をを盗み見た。少年らしい線の細い身体。整った顔立ち。後5、6年もすればとても素敵な青年になるだろう。「シンジくん、ごめんな」「な、な、何がですか?」「大事な『ミサトさん』を取っちゃって」
・・・どういうつもりなんだろう。シンジは何も答えなかった。
「好きなんだろ」いつもは気にならない煙が鼻につく。挑発に乗るべきか。
(・・・そんな事しても虚しいだけだ)シンジは感情を抑えた。そうすればラクだし。色々考えて悩むのはもう沢山だよ。
「加持さんとミサトさんは本当にお似合いです」
シンジは半分ヤケになって答えた。
「ミサトさんを幸せに出来るのは加持さんだと思います」加持は黙って煙草に火を点けた。
(こっちにも意地っ張りがいるなあ)
「話はそれだけですか?」「まあ、そんなとこだけど」「じゃ、これで」
シンジは車から降りようとした。
「駅までだいぶあるぞ。送るよ」加持が引き止める。「歩いて行くから平気です。それじゃあ」
シンジはドアを閉めて走って行った。
(・・・やれやれ、だな)
52: 2010/11/06(土) 00:40:49 ID:???
家の鍵を開けた途端ミサトは玄関に倒れこんだ。
(ね、眠・・限界・・・)
冷たい床が心地良い。久しぶりに楽しい、不思議な夢を見た。
夢の中でミサトは自分を空から見下ろしている。ミサトは中学生だった。アスカが呆れ顔で言う「アンタ達、ほんっとに仲がいいわね」
どうやらシンちゃんと付き合っているみたい。夢の中でもシンジは照れ屋で可愛い、現実のままのシンジ。私は笑顔だった。あの頃の自分には無かった顔。
シンちゃんが真っ赤な顔をしてそっと手を差し出す。私も赤くなって軽く手に触れた。
【初めて手を繋いだカップルって感じね】ミサトは二人を見てクスッと笑った。お父さんがいる。
「学生らしい付き合いをするんだぞ」ムスッとしている「あなたったら。ミサトがお嫁に行く時は大変ね」「・・そんな話はするな」お父さんはむくれている。お母さんは笑っている。
「ミサトさん」シンちゃんが放課後の教室で部活が終わるまで待っていてくれた「誕生日おめでとう」
はにかみながら小さな袋を渡された。
「ありがとう、シンちゃん!開けてもいい?」
シンジはソッポを向いて頷いた。
【ははは。可愛いわねえ】中にはクロスのペンダントが入っていた。
「ありがとう!シンちゃん。大切にするね。ずっとずっと着けてるね」
シンジはようやくにっこり笑った。シンジがミサトに顔を近付け、ぎこちないキスをした。二人はますます赤くなってお互いに俯いていた。
【さ、さすがに夢とはいえこんな自分を見るのは照れるわねえ】
「シンちゃん、同じ高校に受かって嬉しい」
「僕はギリギリだったから・・・ホッとしたよ」
「私だって自信なんてまるで無かったわ」制服の下に隠れているペンダントを取り出した。
「これのおかげかな」
【・・・。】
次々と場面は移る。大学の卒業式らしい。シンジは素敵な青年になっていた。
「ミサトさん」シンジは真顔だった。
「なあに、シンちゃん」
意を決した表情だ。
「僕と結婚して下さい」
嬉しそうに笑うミサト。
(ね、眠・・限界・・・)
冷たい床が心地良い。久しぶりに楽しい、不思議な夢を見た。
夢の中でミサトは自分を空から見下ろしている。ミサトは中学生だった。アスカが呆れ顔で言う「アンタ達、ほんっとに仲がいいわね」
どうやらシンちゃんと付き合っているみたい。夢の中でもシンジは照れ屋で可愛い、現実のままのシンジ。私は笑顔だった。あの頃の自分には無かった顔。
シンちゃんが真っ赤な顔をしてそっと手を差し出す。私も赤くなって軽く手に触れた。
【初めて手を繋いだカップルって感じね】ミサトは二人を見てクスッと笑った。お父さんがいる。
「学生らしい付き合いをするんだぞ」ムスッとしている「あなたったら。ミサトがお嫁に行く時は大変ね」「・・そんな話はするな」お父さんはむくれている。お母さんは笑っている。
「ミサトさん」シンちゃんが放課後の教室で部活が終わるまで待っていてくれた「誕生日おめでとう」
はにかみながら小さな袋を渡された。
「ありがとう、シンちゃん!開けてもいい?」
シンジはソッポを向いて頷いた。
【ははは。可愛いわねえ】中にはクロスのペンダントが入っていた。
「ありがとう!シンちゃん。大切にするね。ずっとずっと着けてるね」
シンジはようやくにっこり笑った。シンジがミサトに顔を近付け、ぎこちないキスをした。二人はますます赤くなってお互いに俯いていた。
【さ、さすがに夢とはいえこんな自分を見るのは照れるわねえ】
「シンちゃん、同じ高校に受かって嬉しい」
「僕はギリギリだったから・・・ホッとしたよ」
「私だって自信なんてまるで無かったわ」制服の下に隠れているペンダントを取り出した。
「これのおかげかな」
【・・・。】
次々と場面は移る。大学の卒業式らしい。シンジは素敵な青年になっていた。
「ミサトさん」シンジは真顔だった。
「なあに、シンちゃん」
意を決した表情だ。
「僕と結婚して下さい」
嬉しそうに笑うミサト。
53: 2010/11/06(土) 00:42:43 ID:???
【・・・夢って分かってるだけ質が悪いわ】
現実には絶対にありえない。時間はどんなに頑張っても戻らない。
【何て罪な夢なんだろう】二人を見下ろすミサトは泣いていた。
【私を喜ばせる為に神様が見せてくれたのね。逆効果よ】
次々に涙は止めどなく頬を伝う。幸せそうな二人を見下ろしながら。
「玄関の鍵開いてたぞ。無用心だな」玄関にミサトが倒れてる。
「おいっ!大丈夫か?」
肩を揺さぶる加持。
「・・・シンちゃん、好き、大好きよ」
(・・・。)
まだ夢の中だった。今度はちょっと場面が違う。シンジがどんどん離れて行ってしまう。
「行かないで!シンちゃん!行かないで!!!」
シンジは少し振り向いて寂しそうな笑顔を見せた。
「いや!私を置いて行かないで!」
走っても走っても追い付かない。
「行かないで・・・」
「葛城!葛城!しっかりしろ」激しく肩を揺さぶられた。
「シンちゃん?帰って来てくれたの!」
ミサトはようやく夢から目覚めた。加持がやれやれ、とした表情でミサトを見ていた「か、加持くん・・」「夢の中でも完敗か」
加持は黙って部屋を後にした。
数週間が過ぎた。あれ以来加持とは会社ですれ違う位だ。酷く加持を傷つけた。(なんて事をしてしまったんだろう)全部、自分が悪い。謝罪の言葉を探しても探しても見つからない。
シンジにも会う訳にはいかない。ずっと本部に泊まり込んでいた。
(情けない、本当にバカだ)誰も傷つけたくない、幸せになって欲しいなんて自分のエゴだ。何一つ昔と変わっていない。
ミサトは意を決して電話を取った。その途端に鳴り出す電話。加持だった。
「今日、ちょっと話さないか」
現実には絶対にありえない。時間はどんなに頑張っても戻らない。
【何て罪な夢なんだろう】二人を見下ろすミサトは泣いていた。
【私を喜ばせる為に神様が見せてくれたのね。逆効果よ】
次々に涙は止めどなく頬を伝う。幸せそうな二人を見下ろしながら。
「玄関の鍵開いてたぞ。無用心だな」玄関にミサトが倒れてる。
「おいっ!大丈夫か?」
肩を揺さぶる加持。
「・・・シンちゃん、好き、大好きよ」
(・・・。)
まだ夢の中だった。今度はちょっと場面が違う。シンジがどんどん離れて行ってしまう。
「行かないで!シンちゃん!行かないで!!!」
シンジは少し振り向いて寂しそうな笑顔を見せた。
「いや!私を置いて行かないで!」
走っても走っても追い付かない。
「行かないで・・・」
「葛城!葛城!しっかりしろ」激しく肩を揺さぶられた。
「シンちゃん?帰って来てくれたの!」
ミサトはようやく夢から目覚めた。加持がやれやれ、とした表情でミサトを見ていた「か、加持くん・・」「夢の中でも完敗か」
加持は黙って部屋を後にした。
数週間が過ぎた。あれ以来加持とは会社ですれ違う位だ。酷く加持を傷つけた。(なんて事をしてしまったんだろう)全部、自分が悪い。謝罪の言葉を探しても探しても見つからない。
シンジにも会う訳にはいかない。ずっと本部に泊まり込んでいた。
(情けない、本当にバカだ)誰も傷つけたくない、幸せになって欲しいなんて自分のエゴだ。何一つ昔と変わっていない。
ミサトは意を決して電話を取った。その途端に鳴り出す電話。加持だった。
「今日、ちょっと話さないか」
59: 2010/11/07(日) 00:31:57 ID:???
加持はミサトに気付いて車の中から軽く手を振った。「ごめんね、遅くなって」助手席に座った途端、加持は切り出した。
「葛城、君とは結婚出来ない」加持と視線が合う。二人は突然、初めて出会った頃を思い出していた。
最初は軽い男だな、と軽蔑していた。しつこく口説かれているうちに段々と恋に落ちていった。
軽い浮気はあったと思う。気付かないフリをしていただけ。どんなに遅くなっても、必ず加持はミサトの元へ帰って来た。
そうしていつもより優しい態度で誤魔化される。ただ一度を除いて。
朝まで帰らない男。電話もない。ミサトは我慢の限界だった。荷物をまとめて家を出た。
「葛城遅くなってごめん」ミサトはいなかった。人の気配がしない。部屋がすっきりしている。
荷物が無くなっていた。加持は項垂れた。
一週間以上探し回った。真面目な彼女が講義にも顔を出さない。
自暴自棄になりかけていた時、ある場所を思い付いて慌てて向かった。
ミサトは一人でぽつんと海を見ていた。綺麗な横顔だった。側にはミサトが育った施設がある。
(良かった・・・)生きていてくれた。
「・・・葛城」ミサトがぼんやりと振り向く。
「加持くん・・・」
隣に腰を降ろした。ミサトは視線を海から外さないで口を開いた。
「私より大事な人がいるなら、いいよ」他人に話すような口調だった。
「その人の所に行きなよ」加持は自分の行動に後悔した。ミサトを守っているのは自分だと自惚れていた。自分がミサトを必要としていて甘えていたのだ。
「そんなヤツ世界中の何処にもいないよ」
「俺には葛城、君だけだ」ミサトはまだ視線を向けてくれない。
「頼むから帰ってくれ」
ミサトは必氏に涙を堪えていた。
「・・・これが最後だからね」堪えていた涙が次々に溢れ落ちた。加持はミサトを抱き寄せた。
「ごめん、ごめんな」
「葛城、君とは結婚出来ない」加持と視線が合う。二人は突然、初めて出会った頃を思い出していた。
最初は軽い男だな、と軽蔑していた。しつこく口説かれているうちに段々と恋に落ちていった。
軽い浮気はあったと思う。気付かないフリをしていただけ。どんなに遅くなっても、必ず加持はミサトの元へ帰って来た。
そうしていつもより優しい態度で誤魔化される。ただ一度を除いて。
朝まで帰らない男。電話もない。ミサトは我慢の限界だった。荷物をまとめて家を出た。
「葛城遅くなってごめん」ミサトはいなかった。人の気配がしない。部屋がすっきりしている。
荷物が無くなっていた。加持は項垂れた。
一週間以上探し回った。真面目な彼女が講義にも顔を出さない。
自暴自棄になりかけていた時、ある場所を思い付いて慌てて向かった。
ミサトは一人でぽつんと海を見ていた。綺麗な横顔だった。側にはミサトが育った施設がある。
(良かった・・・)生きていてくれた。
「・・・葛城」ミサトがぼんやりと振り向く。
「加持くん・・・」
隣に腰を降ろした。ミサトは視線を海から外さないで口を開いた。
「私より大事な人がいるなら、いいよ」他人に話すような口調だった。
「その人の所に行きなよ」加持は自分の行動に後悔した。ミサトを守っているのは自分だと自惚れていた。自分がミサトを必要としていて甘えていたのだ。
「そんなヤツ世界中の何処にもいないよ」
「俺には葛城、君だけだ」ミサトはまだ視線を向けてくれない。
「頼むから帰ってくれ」
ミサトは必氏に涙を堪えていた。
「・・・これが最後だからね」堪えていた涙が次々に溢れ落ちた。加持はミサトを抱き寄せた。
「ごめん、ごめんな」
60: 2010/11/07(日) 00:38:33 ID:???
それからの加持は誠心誠意を持ってミサトに尽くした。時間がある限り一緒にいてくれた。
他愛ない会話、憎まれ口を叩き合う二人。楽しかった、幸せだった。それも遠い過去の話だった。
「最後に言わせてくれ」
ミサトは無言で加持の顔を見た「愛してるよ。昔も、今も。ずっとね」
ミサトは泣き崩れた。
「どうして八年前に言ってくれなかったの」
頭をポンポンと叩いた「ごめんな、タイミングが悪いのは生まれつきみたいだ」
「で、例の祝賀会なんだけど」「あ・・・!」
三日後にはみんなが企画してくれた婚約祝のパーティーがある。
「穏便に終わらせて、徐々に周りに事情を伝えて行くのが一番いい」
「・・・自分だけ悪役にならないでよ」ミサトは呟いた「悪いのはあた・・・」加持は遮った。
「頼む、最後位カッコつけさせてくれ」
「お互いに一世一代の演技をするぞ」加持は吹っ切れたように笑顔を見せた。ミサトには無理しているのが分かった。
「だから、全部悪いのは・・・」また遮られる。
「バカだなあ、葛城。男女の別れにどちらかが一方的に悪いってのは無いんだ」加持は続けた。
「さっきも言った通り、全てタイミングの問題なんだよ。どちらも悪くない」
ミサトは真っ直ぐに視線を加持に向けた。言いかけて言葉を止めた。
(私も心から好きだったわ)
【祝賀会前日の碇シンジ】(僕がもし大人だったら)
シンジは考えずにはいられなかった。
(ミサトさんは僕を見てくれたかな)
虚しい考えだ。でも考えずにはいられなかった。
恋愛は心と心が通じ合ったら嫌でも始まる事をシンジは分かっていなかった。
(ミサトさん・・・。)
シンジは浅い眠りに入った。小さな心は砕けそうだった。明日は行きたくない。でも心配かけたくない。
(結局僕は周りに流されて生きている。何も変わってないよ)
実際はその反対でサードインパクト後、シンジは良く笑うようになってから友人も沢山出来た。
元から人を惹き付ける魅力は十分にあるのにシンジは気付いていないだけ。
それに(かなり)悩まされている女性がいる事実を知らないだけであった。
他愛ない会話、憎まれ口を叩き合う二人。楽しかった、幸せだった。それも遠い過去の話だった。
「最後に言わせてくれ」
ミサトは無言で加持の顔を見た「愛してるよ。昔も、今も。ずっとね」
ミサトは泣き崩れた。
「どうして八年前に言ってくれなかったの」
頭をポンポンと叩いた「ごめんな、タイミングが悪いのは生まれつきみたいだ」
「で、例の祝賀会なんだけど」「あ・・・!」
三日後にはみんなが企画してくれた婚約祝のパーティーがある。
「穏便に終わらせて、徐々に周りに事情を伝えて行くのが一番いい」
「・・・自分だけ悪役にならないでよ」ミサトは呟いた「悪いのはあた・・・」加持は遮った。
「頼む、最後位カッコつけさせてくれ」
「お互いに一世一代の演技をするぞ」加持は吹っ切れたように笑顔を見せた。ミサトには無理しているのが分かった。
「だから、全部悪いのは・・・」また遮られる。
「バカだなあ、葛城。男女の別れにどちらかが一方的に悪いってのは無いんだ」加持は続けた。
「さっきも言った通り、全てタイミングの問題なんだよ。どちらも悪くない」
ミサトは真っ直ぐに視線を加持に向けた。言いかけて言葉を止めた。
(私も心から好きだったわ)
【祝賀会前日の碇シンジ】(僕がもし大人だったら)
シンジは考えずにはいられなかった。
(ミサトさんは僕を見てくれたかな)
虚しい考えだ。でも考えずにはいられなかった。
恋愛は心と心が通じ合ったら嫌でも始まる事をシンジは分かっていなかった。
(ミサトさん・・・。)
シンジは浅い眠りに入った。小さな心は砕けそうだった。明日は行きたくない。でも心配かけたくない。
(結局僕は周りに流されて生きている。何も変わってないよ)
実際はその反対でサードインパクト後、シンジは良く笑うようになってから友人も沢山出来た。
元から人を惹き付ける魅力は十分にあるのにシンジは気付いていないだけ。
それに(かなり)悩まされている女性がいる事実を知らないだけであった。
64: 2010/11/08(月) 00:13:13 ID:???
「ただいま・・・」
久しぶりの家だ。アスカはずっとヒカリの家に泊まっている。鍵を開けた音でシンジがダダッと走って来た「ミサトさん」
「ごめんね、暫く忙しくて。ほったらかしにして」
シンジは無理に笑顔を作った「いえ、お疲れさまです」リビングに歩いて行くと机に何枚か用紙があった。「これ、保護者の印鑑が必要なんです」
ミサトは頭を抱えこんだ。(保護者としても失格ね)
「ミサトさん?」
机に突っ伏しているミサトの肩は震えている。
「何かあったんですか」
(シンジくんに負担をかけたらいけないわ)ミサトはバシッと自分の頬を叩いた「なーんでも、ないの。シンちゃんは心配しなくていいのよん」
シンジはいぶかしげにミサトを見た。
「さってと、これ、目を通しておくわね。シンちゃんはもう寝なさい」
用紙を手に自室へ向かう。シンジはミサトの腕を取った。驚いてシンジの顔に視線を向けた。
「ミサトさん、もし、もしも僕が・・・」シンジは目を赤くして一人言のように話している。
「もっと大人だったら、」もう片方の腕も取られる。「ミサトさんは・・・」
シンジは今にも泣きそうだった。次の言葉は言わせてはいけない。やんわりと腕を離した。
「あのねシンジくん。人生に『もし』とか『たら』は通用しないの」シンジの両頬を優しく包む。
「それにシンちゃんは十分に大人よ。分かるわよね」ミサトはそのままリビングを後にした。
(・・・あればいいんだけどね)
シンジはそれ以上何も言えなかった。
シンジは自分の暗い部屋でミサトの部屋の壁に寄りかかっていた。ミサトも同じようにシンジの部屋の壁に寄りかかっていた。
(ああ、こんな境なんて無ければいいのに)ミサトは自虐的に笑う(偉そうな事言っておいて自分がこれだもの)
(僕は何を言おうとしてたんだ)声を漏らさないように泣いていた。
(僕は大人なんかじゃない)そう言ってすがり付けばミサトはもしかしたら、ここに残ってくれたかも知れない。でもそれは自分勝手な事だ。
(また『もし』って考えちゃった・・・バカだなあ)二人は一睡もしないで夜が明けた。
久しぶりの家だ。アスカはずっとヒカリの家に泊まっている。鍵を開けた音でシンジがダダッと走って来た「ミサトさん」
「ごめんね、暫く忙しくて。ほったらかしにして」
シンジは無理に笑顔を作った「いえ、お疲れさまです」リビングに歩いて行くと机に何枚か用紙があった。「これ、保護者の印鑑が必要なんです」
ミサトは頭を抱えこんだ。(保護者としても失格ね)
「ミサトさん?」
机に突っ伏しているミサトの肩は震えている。
「何かあったんですか」
(シンジくんに負担をかけたらいけないわ)ミサトはバシッと自分の頬を叩いた「なーんでも、ないの。シンちゃんは心配しなくていいのよん」
シンジはいぶかしげにミサトを見た。
「さってと、これ、目を通しておくわね。シンちゃんはもう寝なさい」
用紙を手に自室へ向かう。シンジはミサトの腕を取った。驚いてシンジの顔に視線を向けた。
「ミサトさん、もし、もしも僕が・・・」シンジは目を赤くして一人言のように話している。
「もっと大人だったら、」もう片方の腕も取られる。「ミサトさんは・・・」
シンジは今にも泣きそうだった。次の言葉は言わせてはいけない。やんわりと腕を離した。
「あのねシンジくん。人生に『もし』とか『たら』は通用しないの」シンジの両頬を優しく包む。
「それにシンちゃんは十分に大人よ。分かるわよね」ミサトはそのままリビングを後にした。
(・・・あればいいんだけどね)
シンジはそれ以上何も言えなかった。
シンジは自分の暗い部屋でミサトの部屋の壁に寄りかかっていた。ミサトも同じようにシンジの部屋の壁に寄りかかっていた。
(ああ、こんな境なんて無ければいいのに)ミサトは自虐的に笑う(偉そうな事言っておいて自分がこれだもの)
(僕は何を言おうとしてたんだ)声を漏らさないように泣いていた。
(僕は大人なんかじゃない)そう言ってすがり付けばミサトはもしかしたら、ここに残ってくれたかも知れない。でもそれは自分勝手な事だ。
(また『もし』って考えちゃった・・・バカだなあ)二人は一睡もしないで夜が明けた。
65: 2010/11/08(月) 00:18:47 ID:???
(・・・こじんまり?)
リツコが車を滑り入れたのはバカでかい高級ホテルの正面玄関だった。
「ちょっとリツコ・・・マヤちゃんの話と何か違うような・・・」
「いいから黙って着いて来なさい」洗練された雰囲気の初老の男性がドアを開けてくれる。
強引に手を取られ、まるで引きずられる感じでホテルに入って行った。リツコが男性に鍵を渡した。
そのままエレベーターに押し込まれ、何故か一室に通される。
「待ってました!」
アスカ、マヤちゃんと黒いスーツの女性がミサトを出迎える「あの、リツコこれは・・・」ミサトは嫌な予感がした。
「いいから黙ってて」
ただならぬ雰囲気に押されミサトは茫然とするしかなかった。
「葛城部長、私達からの婚約祝いです♪」
「さあ、座った座った!」アスカが鏡の前の椅子にミサトを座らせる。
黒いスーツの女性二人が背後に回った。
顔を弄られる。もう一人の女性は髪を触り出す。
「どのようななさいますか」「えっ?」ミサトの言葉を女性三人が遮る。
「そうねえ。ダウンも新鮮でいいかしら」
「えーっ!冒険したスタイルがいいわよ」
「やっぱりドレスにはアップがいいですね」
ミサトは恐る恐る尋ねた。「あの、これは一体・・」アスカは意地悪そうに笑った「だーかーらー」三人は一斉にミサトに視線を送った「そんな服装じゃカッコつかないでしょう」
ミサトは地味な紺色のスーツ姿である。
「綺麗になってもらわなきゃ」三人は楽しそうだ。その笑顔を見て心が傷んだ。ダメだ。騙せない。口を開いた「みんなごめん、実はね・・」涙で声が詰まる。
リツコが車を滑り入れたのはバカでかい高級ホテルの正面玄関だった。
「ちょっとリツコ・・・マヤちゃんの話と何か違うような・・・」
「いいから黙って着いて来なさい」洗練された雰囲気の初老の男性がドアを開けてくれる。
強引に手を取られ、まるで引きずられる感じでホテルに入って行った。リツコが男性に鍵を渡した。
そのままエレベーターに押し込まれ、何故か一室に通される。
「待ってました!」
アスカ、マヤちゃんと黒いスーツの女性がミサトを出迎える「あの、リツコこれは・・・」ミサトは嫌な予感がした。
「いいから黙ってて」
ただならぬ雰囲気に押されミサトは茫然とするしかなかった。
「葛城部長、私達からの婚約祝いです♪」
「さあ、座った座った!」アスカが鏡の前の椅子にミサトを座らせる。
黒いスーツの女性二人が背後に回った。
顔を弄られる。もう一人の女性は髪を触り出す。
「どのようななさいますか」「えっ?」ミサトの言葉を女性三人が遮る。
「そうねえ。ダウンも新鮮でいいかしら」
「えーっ!冒険したスタイルがいいわよ」
「やっぱりドレスにはアップがいいですね」
ミサトは恐る恐る尋ねた。「あの、これは一体・・」アスカは意地悪そうに笑った「だーかーらー」三人は一斉にミサトに視線を送った「そんな服装じゃカッコつかないでしょう」
ミサトは地味な紺色のスーツ姿である。
「綺麗になってもらわなきゃ」三人は楽しそうだ。その笑顔を見て心が傷んだ。ダメだ。騙せない。口を開いた「みんなごめん、実はね・・」涙で声が詰まる。
66: 2010/11/08(月) 00:20:25 ID:???
「やだぁっ!ミサトが泣いてるぅーそんなに嬉しかった?でもメイクが崩れるから我慢よ」
「さ、服脱いで。時間が無いわ」リツコとマヤに無理矢理脱がされた。
「ちょ、待って!待って!だから、じ、実は・・・」「ほらっ!」アスカが部屋に備え付けられたクローゼットを開けた。
「こ、こ、これ・・。」
そこには白いドレスが入っていた。
「えへへ。綺麗でしょ。三人で選んだのよ」
ミサトは言葉を失った・・・再び涙が溢れる。
半ば茫然としてるミサトは三人と係員によって下着を変えられ、ドレスを着せられた。
「葛城部長・・・」マヤは目を輝かせた。
「馬子にも衣装ね」と、言いつつアスカは今までに見せた事が無い程可愛く笑った。
「ミサト、本当に綺麗だわ」あろうことか、リツコが泣いている。ミサトは結局何も言えなかった。
「よう。」加持が軽く手を上げる「似合ってるじゃないか」
「な、なんだか凄いコトになってるような」
ミサトは罪悪感で半分パニックだった。
「ま、今着ないと一生着れないかも知れないし、いいんじゃないか」
(・・・うっ。)
「ほら、ここは上手くやろう。それが一番だろ」
加持はあっさりしている。「人の噂も七十五日、さ」ちらりと隙間から会場を覗いて見た(・・・え?)
「ま、マヤちゃん、何だか人がたくさんいるんだけど・・・」マヤの元へ走り出す「会社の行事ですから。みーんな来たいって言うんで」笑顔のマヤ。
(大丈夫なのかしら・・・)ミサトは青ざめた。
「シンジ!お通夜みたいな顔してんじゃないの!」
アスカが肘で小突く。シンジは無言だった。
「女なんて星の数程いるじゃない」「・・・ちょっと黙っててくれる?」
(うーん、上手く行くのかな)アスカは腕を組んで天を仰いだ。
「さ、服脱いで。時間が無いわ」リツコとマヤに無理矢理脱がされた。
「ちょ、待って!待って!だから、じ、実は・・・」「ほらっ!」アスカが部屋に備え付けられたクローゼットを開けた。
「こ、こ、これ・・。」
そこには白いドレスが入っていた。
「えへへ。綺麗でしょ。三人で選んだのよ」
ミサトは言葉を失った・・・再び涙が溢れる。
半ば茫然としてるミサトは三人と係員によって下着を変えられ、ドレスを着せられた。
「葛城部長・・・」マヤは目を輝かせた。
「馬子にも衣装ね」と、言いつつアスカは今までに見せた事が無い程可愛く笑った。
「ミサト、本当に綺麗だわ」あろうことか、リツコが泣いている。ミサトは結局何も言えなかった。
「よう。」加持が軽く手を上げる「似合ってるじゃないか」
「な、なんだか凄いコトになってるような」
ミサトは罪悪感で半分パニックだった。
「ま、今着ないと一生着れないかも知れないし、いいんじゃないか」
(・・・うっ。)
「ほら、ここは上手くやろう。それが一番だろ」
加持はあっさりしている。「人の噂も七十五日、さ」ちらりと隙間から会場を覗いて見た(・・・え?)
「ま、マヤちゃん、何だか人がたくさんいるんだけど・・・」マヤの元へ走り出す「会社の行事ですから。みーんな来たいって言うんで」笑顔のマヤ。
(大丈夫なのかしら・・・)ミサトは青ざめた。
「シンジ!お通夜みたいな顔してんじゃないの!」
アスカが肘で小突く。シンジは無言だった。
「女なんて星の数程いるじゃない」「・・・ちょっと黙っててくれる?」
(うーん、上手く行くのかな)アスカは腕を組んで天を仰いだ。
71: 2010/11/09(火) 00:57:10 ID:???
(リツコ、アスカ、マヤちゃん、みんな・・・)
ミサトは自分の右にいる男に視線をチラッと移した(そして加持くん、本当にごめんなさい)
罪悪感で一杯だった。もう何がなんだか分からなくなっていた。
「キャーーーーーー!!」「綺麗ーーーーーー!!」ハッと気付いたら既に大勢の人の前に立っていた。
「皆様お忙しい中、私共の為にこのような会を開いて頂いたお心遣いに大変感謝致します」
わぁぁぁーーーーー!!!「素敵ーーーーー!!!」「おめでとうございまーーーーー!!!」
沸き上がる歓声と拍手。忙しい日々を送る職員は非日常的な催しを楽しんでいたのだ。ただ一人、その場に居るのが苦痛で吐き気さえする、シンジを除いて。
「この場を借りて重大なお知らせがございます」
更に沸き上がる場内。
「まさかパパになるんですかーーーーー!!!」
「羨ましいですーーー!」ミサトは目眩がしてきた。(なんなの、こ、この異様な盛り上がりは・・・)
ミサト同様シンジも目眩がしていた。隣でキャーキャー騒ぐアスカとヒカリが憎らしくさえ思った。
勿論彼女達に罪はない。むしろ、アスカは色々と味方(?)になってくれていたのに。
まだキャーキャー騒がしい場内。司会の青葉がそれを制した。
「みなさまー、御静粛にお願いします」
・・・・・ざわめきが消え失せシーンと静まり返る。加持は余裕綽々な笑顔を見せた。場内の人々の視線が一斉に加持に集まった。
「私、加持リョウジは」
みんなが胸をときめかせて次の言葉を待った。
「ここにいる葛城ミサトさんと」
更に静まる、会場。シンジは視線をそむけた。
「結婚を・・・」
(ごくっ!)人々が息を飲んだ。
「や め ま し た」
ミサトは自分の右にいる男に視線をチラッと移した(そして加持くん、本当にごめんなさい)
罪悪感で一杯だった。もう何がなんだか分からなくなっていた。
「キャーーーーーー!!」「綺麗ーーーーーー!!」ハッと気付いたら既に大勢の人の前に立っていた。
「皆様お忙しい中、私共の為にこのような会を開いて頂いたお心遣いに大変感謝致します」
わぁぁぁーーーーー!!!「素敵ーーーーー!!!」「おめでとうございまーーーーー!!!」
沸き上がる歓声と拍手。忙しい日々を送る職員は非日常的な催しを楽しんでいたのだ。ただ一人、その場に居るのが苦痛で吐き気さえする、シンジを除いて。
「この場を借りて重大なお知らせがございます」
更に沸き上がる場内。
「まさかパパになるんですかーーーーー!!!」
「羨ましいですーーー!」ミサトは目眩がしてきた。(なんなの、こ、この異様な盛り上がりは・・・)
ミサト同様シンジも目眩がしていた。隣でキャーキャー騒ぐアスカとヒカリが憎らしくさえ思った。
勿論彼女達に罪はない。むしろ、アスカは色々と味方(?)になってくれていたのに。
まだキャーキャー騒がしい場内。司会の青葉がそれを制した。
「みなさまー、御静粛にお願いします」
・・・・・ざわめきが消え失せシーンと静まり返る。加持は余裕綽々な笑顔を見せた。場内の人々の視線が一斉に加持に集まった。
「私、加持リョウジは」
みんなが胸をときめかせて次の言葉を待った。
「ここにいる葛城ミサトさんと」
更に静まる、会場。シンジは視線をそむけた。
「結婚を・・・」
(ごくっ!)人々が息を飲んだ。
「や め ま し た」
72: 2010/11/09(火) 00:59:09 ID:???
ワーーーーーー!!!・・・・・あ?????あっ?ポカンと口を開けて、動きが止まる。暫しの沈黙。青葉が場を取り繕う。
「か、加持さんも冗談が過ぎますねえ、さ、ここで乾杯の・・・」
加持が笑顔で遮る。
「皆さん、申し訳ないけどそういうコトで」
場内の人々同様、ポカンとしているミサトの左手の薬指から指輪をすっと抜き取る。
シーン・・・・・・・・。沈黙が続く。誰もが何が起きているのか理解不能。
シンジも固まっていた。苛々したアスカが背中を蹴り挙げようとした瞬間、シンジは飛び出した。
「ふざけるな!!!」
加持の胸ぐらを掴んだシンジ「何を言ってるんですか!気でも狂ったんですか!」パシッ!!!
渾身の右ストレートが加持の左頬に決まった。
「おー、痛いなあ。少しは手加減・・・」パシッ!もう一発、左頬を殴った。
「ミサトさんの、ミサトさんの・・・」シンジはもう何を言っているのか分からなくなってきた。
「気持ちを・・・」涙で声が詰まる。
「ちょっと、シンちゃん・・・」ミサトはおろおろとシンジに手をかけた。本来自分が言うべき事を加持は引き受けて悪役になってくれたのだ。何故時期が早まったのか、理由は判りかねるけれど。
「ミサトさん!」
シンジは顔を真っ赤にして真っ直ぐにミサトを見た。
「ミサトさんは、僕がもらいますっ!」シンジはキッ!と加持を睨んでミサトの手を取った。
「行きましょう!」
(・・・へ?)シンジはミサトの腕を引っ張って走り出した。
「か、加持さんも冗談が過ぎますねえ、さ、ここで乾杯の・・・」
加持が笑顔で遮る。
「皆さん、申し訳ないけどそういうコトで」
場内の人々同様、ポカンとしているミサトの左手の薬指から指輪をすっと抜き取る。
シーン・・・・・・・・。沈黙が続く。誰もが何が起きているのか理解不能。
シンジも固まっていた。苛々したアスカが背中を蹴り挙げようとした瞬間、シンジは飛び出した。
「ふざけるな!!!」
加持の胸ぐらを掴んだシンジ「何を言ってるんですか!気でも狂ったんですか!」パシッ!!!
渾身の右ストレートが加持の左頬に決まった。
「おー、痛いなあ。少しは手加減・・・」パシッ!もう一発、左頬を殴った。
「ミサトさんの、ミサトさんの・・・」シンジはもう何を言っているのか分からなくなってきた。
「気持ちを・・・」涙で声が詰まる。
「ちょっと、シンちゃん・・・」ミサトはおろおろとシンジに手をかけた。本来自分が言うべき事を加持は引き受けて悪役になってくれたのだ。何故時期が早まったのか、理由は判りかねるけれど。
「ミサトさん!」
シンジは顔を真っ赤にして真っ直ぐにミサトを見た。
「ミサトさんは、僕がもらいますっ!」シンジはキッ!と加持を睨んでミサトの手を取った。
「行きましょう!」
(・・・へ?)シンジはミサトの腕を引っ張って走り出した。
73: 2010/11/09(火) 01:08:35 ID:???
シンジとミサトは走り去って行く(何?何が起きた?)固まり続ける場内。
(・・・やった!)
アスカとヒカリは両手を取り合って飛び上がってはしゃぐ。
(全くあのバカ娘は)リツコはすまして笑っている。
「追いかけろーーーーー」ハッ!!!誰が叫んだのか知らないが、これを合図に皆が一目散に二人を目掛けて走り出した。
「おっと、いけない」
加持も後に続いた。
「し、シンちゃん、ちょっと・・・」ゼイゼイしながらミサトは走り続けている「いいから僕に付いてきてください!」ミサトはヒールで上手く走れない。
「つ、ついてくって何処へ・・・」ミサトは靴を脱ぎ捨てた。
「分かんないけど、いいですから!」はて、連れ去ったのはいいが何処へ行くのかシンジも考えていなかった。でも・・・
「全く考えてないですけど、僕はもう後悔しないって決めたんです!」
ミサトは現実を受け止めた。そうだ。もう走り出してしまっている。シンジと一緒に。自分の頭で、足でしている行動が事実なんだ。踏み出したら止まる事はしてはいけないんだ。あれ?「シンちゃん、何かみんな(ゼイゼイ・・・)つ、ついてくるん、だけど」
後ろを振り返ると、凄い勢いで人の固まりが追いかけてくるのが目に入った。
(・・・やった!)
アスカとヒカリは両手を取り合って飛び上がってはしゃぐ。
(全くあのバカ娘は)リツコはすまして笑っている。
「追いかけろーーーーー」ハッ!!!誰が叫んだのか知らないが、これを合図に皆が一目散に二人を目掛けて走り出した。
「おっと、いけない」
加持も後に続いた。
「し、シンちゃん、ちょっと・・・」ゼイゼイしながらミサトは走り続けている「いいから僕に付いてきてください!」ミサトはヒールで上手く走れない。
「つ、ついてくって何処へ・・・」ミサトは靴を脱ぎ捨てた。
「分かんないけど、いいですから!」はて、連れ去ったのはいいが何処へ行くのかシンジも考えていなかった。でも・・・
「全く考えてないですけど、僕はもう後悔しないって決めたんです!」
ミサトは現実を受け止めた。そうだ。もう走り出してしまっている。シンジと一緒に。自分の頭で、足でしている行動が事実なんだ。踏み出したら止まる事はしてはいけないんだ。あれ?「シンちゃん、何かみんな(ゼイゼイ・・・)つ、ついてくるん、だけど」
後ろを振り返ると、凄い勢いで人の固まりが追いかけてくるのが目に入った。
74: 2010/11/09(火) 01:10:58 ID:???
「捕まえろーーーーー!」また誰かが叫ぶ。
「ミサトさん、とにかく走りますよ!」
ドドドドドッッッッ!!!足音が近くなってきた。先頭に加持がいた。
「葛城ーーー、婚約破棄の慰謝料だ。受けとれ!」
加持が何かを投げた。ミサトは咄嗟に受け取った。
(鍵?)「そこの角を右だ」言われるままに曲がると、バイクが置いてある。一息ついてキーを差し込むとエンジンがかかった。
「これに乗れってこと?」ご丁寧にブーツとヘルメットも置いてある。
(・・・加持くん、そっか)
「シンちゃん、乗って」
急いでブーツを履いた。
「これじゃ運転できない・・・くっ」ミサトはドレスの裾を縛りあげた。
すぐそこまで二人を追う声が聞こえる。
「行くわよ!」ブォーン、と言う音と共に二人は走り去った。
「あーあ、行っちゃった」だんだん小さくなるバイクを見ながら人の固まりはゆっくり止まった。
「本当にこれで良かったの」リツコが話しかけた。加持はポケットから煙草を取り出して火を点けた。
「ああ。全てはシナリオ通りさ」フーッと煙を吐く。「会場使用料はどうしますか」マヤが尋ねた。
「そうだな。それ位は葛城に払ってもらうか」ニヤニヤしながら加持は言った。「了解でーす。お給料から天引きにしますね」
「シンちゃん、何処に向かえばいいのーーーーー?」ミサトは運転しながら聞いた。風の音で遮られる。
「良く聞こえないですよーーー」シンジは叫んだ。
「ど こ に 向 か うーーーー」ミサトも叫んだ。
シンジは考えた。
「ミサトさーーーん、お腹減ってないですかーー」
ミサトは一瞬ポカンとしたが、次の瞬間笑顔で答えた「滅茶苦茶空いてるわー」シンジも笑った。
「最高に美味しいご飯を作りますよーーーーー」
背後からミサトを抱く手に力を込めた。ミサトは少し振り向いてシンジのヘルメットをコツンと叩いた。
「食後にコーヒーもよろしくねーーー」
さらば、愛しのフィアンセ。お わ り
「ミサトさん、とにかく走りますよ!」
ドドドドドッッッッ!!!足音が近くなってきた。先頭に加持がいた。
「葛城ーーー、婚約破棄の慰謝料だ。受けとれ!」
加持が何かを投げた。ミサトは咄嗟に受け取った。
(鍵?)「そこの角を右だ」言われるままに曲がると、バイクが置いてある。一息ついてキーを差し込むとエンジンがかかった。
「これに乗れってこと?」ご丁寧にブーツとヘルメットも置いてある。
(・・・加持くん、そっか)
「シンちゃん、乗って」
急いでブーツを履いた。
「これじゃ運転できない・・・くっ」ミサトはドレスの裾を縛りあげた。
すぐそこまで二人を追う声が聞こえる。
「行くわよ!」ブォーン、と言う音と共に二人は走り去った。
「あーあ、行っちゃった」だんだん小さくなるバイクを見ながら人の固まりはゆっくり止まった。
「本当にこれで良かったの」リツコが話しかけた。加持はポケットから煙草を取り出して火を点けた。
「ああ。全てはシナリオ通りさ」フーッと煙を吐く。「会場使用料はどうしますか」マヤが尋ねた。
「そうだな。それ位は葛城に払ってもらうか」ニヤニヤしながら加持は言った。「了解でーす。お給料から天引きにしますね」
「シンちゃん、何処に向かえばいいのーーーーー?」ミサトは運転しながら聞いた。風の音で遮られる。
「良く聞こえないですよーーー」シンジは叫んだ。
「ど こ に 向 か うーーーー」ミサトも叫んだ。
シンジは考えた。
「ミサトさーーーん、お腹減ってないですかーー」
ミサトは一瞬ポカンとしたが、次の瞬間笑顔で答えた「滅茶苦茶空いてるわー」シンジも笑った。
「最高に美味しいご飯を作りますよーーーーー」
背後からミサトを抱く手に力を込めた。ミサトは少し振り向いてシンジのヘルメットをコツンと叩いた。
「食後にコーヒーもよろしくねーーー」
さらば、愛しのフィアンセ。お わ り
75: 2010/11/09(火) 02:46:29 ID:???
GJ!
ありがとう。
ありがとう。
76: 2010/11/09(火) 07:13:22 ID:???
ドラマの最終回みたいな終わり方GJ!
シンジもいいが、自分が女だったらこれで加持に惚れるかもw
シンジもいいが、自分が女だったらこれで加持に惚れるかもw
引用元: ミサトシンジの小説投下スレ
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