1: 2015/01/17(土) 19:23:36.90
「また、会え...しら...」
「ぼく......ないよ...」
「......で...」
「ぜった...会...」
..........
................
......................................
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421490216
「ぼく......ないよ...」
「......で...」
「ぜった...会...」
..........
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......................................
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421490216
2: 2015/01/17(土) 19:31:05.75
「...ん」
ここは...どこだ
やけに天井が低い...
「って、朝か...」
ああ、ここは僕の部屋だ
三角形の窓から朝日が差し込んでいる
今日は曇りと言っていたはずなのに
天気予報もあてにならないな
窓の外を泳いでいくサメを横目に
僕は大きなあくびをした
ここは...どこだ
やけに天井が低い...
「って、朝か...」
ああ、ここは僕の部屋だ
三角形の窓から朝日が差し込んでいる
今日は曇りと言っていたはずなのに
天気予報もあてにならないな
窓の外を泳いでいくサメを横目に
僕は大きなあくびをした
4: 2015/01/17(土) 19:36:41.50
「なんだか悲しい夢だったな...」
そう、ぼくはさっきまで夢を見ていた
なにか悲しい夢を
「だれかが泣いていたような...わらっていたような...」
歯を磨きながら夢の内容を思い出そうとするが
意識がはっきりしていくと同時に...
「だめだ。思い出せない」
さっきまでは全部覚えていたはずなのに
僕は言いようのない悲しさに包まれながら、口をゆすいだ
そう、ぼくはさっきまで夢を見ていた
なにか悲しい夢を
「だれかが泣いていたような...わらっていたような...」
歯を磨きながら夢の内容を思い出そうとするが
意識がはっきりしていくと同時に...
「だめだ。思い出せない」
さっきまでは全部覚えていたはずなのに
僕は言いようのない悲しさに包まれながら、口をゆすいだ
5: 2015/01/17(土) 19:43:28.02
「いってきます」
僕は朝食もとらずに家を飛び出した
「うわっ、熱いな」
そう、暑いではなく、熱い
もう十一月だというのに、日差しで皮膚が焼けてしまいそうだ
現に道端には、ところどころ溶けてしまった人たちがちらほら転がっている
「かわいそうに。日焼け止めを塗らないからだ」
かく言う僕もさすがに長時間この日差しにあてられるのはきつい
僕は学校への道を急いだ
僕は朝食もとらずに家を飛び出した
「うわっ、熱いな」
そう、暑いではなく、熱い
もう十一月だというのに、日差しで皮膚が焼けてしまいそうだ
現に道端には、ところどころ溶けてしまった人たちがちらほら転がっている
「かわいそうに。日焼け止めを塗らないからだ」
かく言う僕もさすがに長時間この日差しにあてられるのはきつい
僕は学校への道を急いだ
6: 2015/01/17(土) 19:51:57.91
学校へ着くと、僕はようやく日光の魔の手から逃れられた
だが、なにかおかしい
「あれ?誰もいないじゃないか」
そうか、きょうは修学旅行だ
全校生徒、教師、ハゲの校長、筋肉の教頭
もう誰もこの学校にはいない
もぬけの殻だ
しまった。冷や汗が頬を伝う
僕は昇降口に呆然と、ただただ立ち尽くしていた
だが、なにかおかしい
「あれ?誰もいないじゃないか」
そうか、きょうは修学旅行だ
全校生徒、教師、ハゲの校長、筋肉の教頭
もう誰もこの学校にはいない
もぬけの殻だ
しまった。冷や汗が頬を伝う
僕は昇降口に呆然と、ただただ立ち尽くしていた
7: 2015/01/17(土) 19:56:31.51
「おい、にぃちゃん」
どれくらいそこにいただろう
「おい、聞こえてねえのか?」
僕は誰かに呼ばれた気がしてあたりを見渡す
人影はない
「僕のことですか?」
そうは聞いてみたものの、僕が話しかけられていることは分かっていた
この学校には僕しかいないのだから
どれくらいそこにいただろう
「おい、聞こえてねえのか?」
僕は誰かに呼ばれた気がしてあたりを見渡す
人影はない
「僕のことですか?」
そうは聞いてみたものの、僕が話しかけられていることは分かっていた
この学校には僕しかいないのだから
8: 2015/01/17(土) 20:38:40.79
「お前以外にだれがいるんだよ」
そういいながら下駄箱の裏から出てきたのは
紅いテントウムシだった
宝石のようにきらきらと光りながら飛んできたそれは
僕の周りをぐるりと回って、僕の肩にとまった
「にぃちゃん、こんなところでなにやってんだよ」
見た目はきれいなのに、言葉遣いはきたないなぁ
そう思った
そういいながら下駄箱の裏から出てきたのは
紅いテントウムシだった
宝石のようにきらきらと光りながら飛んできたそれは
僕の周りをぐるりと回って、僕の肩にとまった
「にぃちゃん、こんなところでなにやってんだよ」
見た目はきれいなのに、言葉遣いはきたないなぁ
そう思った
9: 2015/01/17(土) 20:54:26.20
「べつに。ぼーっとしていただけです」
嘘をついた
遅刻した。と素直に言うのが恥ずかしかったからだ
「そうか。お互い大変だなぁ」
テントウムシはそういうと、僕の肩から飛び去ってしまった
きらきらときらめきながら飛ぶテントウムシを見ていると
少し気が楽になった
これからどうしようか
外はまだ熱そうだ。夕方まで時間をつぶさなくては
とりあえず、教室にでも行こう
僕はテントウムシに手を振った
嘘をついた
遅刻した。と素直に言うのが恥ずかしかったからだ
「そうか。お互い大変だなぁ」
テントウムシはそういうと、僕の肩から飛び去ってしまった
きらきらときらめきながら飛ぶテントウムシを見ていると
少し気が楽になった
これからどうしようか
外はまだ熱そうだ。夕方まで時間をつぶさなくては
とりあえず、教室にでも行こう
僕はテントウムシに手を振った
10: 2015/01/17(土) 21:01:20.06
教室に向かって歩き出した途端、僕はおどろいた
廊下がシャボン玉でいっぱいなのだ
「誰がこんなことを...」
廊下を歩いていくと、煙管を持ったペンギンをみつけた
「...あつい」
彼はそうつぶやくと、煙管を咥えた
彼がぷーっと息を吹き込むと、雁首からシャボン玉が飛び出した
廊下がシャボン玉でいっぱいなのだ
「誰がこんなことを...」
廊下を歩いていくと、煙管を持ったペンギンをみつけた
「...あつい」
彼はそうつぶやくと、煙管を咥えた
彼がぷーっと息を吹き込むと、雁首からシャボン玉が飛び出した
11: 2015/01/17(土) 21:07:46.96
「なにをしているんですか」
僕はペンギンにむかって問いかけた
ペンギンは僕には目もくれず、またシャボン玉を吹いた
「...血」
「え?」
血?いったい何のことだろう
聞き返そうとして、やめた。きっと彼には彼のペースがあるのだろう
僕は彼の言葉をだまって待つことにした
「...」
「...」
「.........」
「.........」
「............気を付けて」
「っ!あ、はい」
あぶない。寝てしまうところだった
僕はペンギンにむかって問いかけた
ペンギンは僕には目もくれず、またシャボン玉を吹いた
「...血」
「え?」
血?いったい何のことだろう
聞き返そうとして、やめた。きっと彼には彼のペースがあるのだろう
僕は彼の言葉をだまって待つことにした
「...」
「...」
「.........」
「.........」
「............気を付けて」
「っ!あ、はい」
あぶない。寝てしまうところだった
12: 2015/01/17(土) 21:15:32.36
ぺたぺたと足音を立てて
ペンギンはどこかへいってしまった
彼の言いたかったことは分からなかったけど、大したことじゃないだろう
僕は勝手にそう決めつけた
ぷかぷかとシャボン玉が浮いている
僕は何の気なしにシャボン玉をつついた
パチン、と音がして目がくらんだ
「うわっ!?」
目の前が真っ白に.........
ペンギンはどこかへいってしまった
彼の言いたかったことは分からなかったけど、大したことじゃないだろう
僕は勝手にそう決めつけた
ぷかぷかとシャボン玉が浮いている
僕は何の気なしにシャボン玉をつついた
パチン、と音がして目がくらんだ
「うわっ!?」
目の前が真っ白に.........
13: 2015/01/17(土) 21:17:46.46
ここは...どこだ...
僕の知らない学校のようだ
僕がいる...この光景は...
そうだ、今朝の夢で見た光景だ...
僕は屋上に向かっている...
...どうして...........................
僕の知らない学校のようだ
僕がいる...この光景は...
そうだ、今朝の夢で見た光景だ...
僕は屋上に向かっている...
...どうして...........................
14: 2015/01/17(土) 21:25:01.96
気が付くと教室の前まで来ていた
さっきのはなんだったんだろう。そう考えながら扉を開ける
教室には先客がいた
教室のど真ん中にキャンバスを立てて、その少女は何かを描いていた
かわいいな。それが第一印象だった
「こ、こんにちは」
僕は声をかけてみた
彼女はびくりと肩を震わせ、こちらをみた
15: 2015/01/17(土) 21:31:28.80
「...何しに来たのかしら。こんなところに」
こちらをキッと睨みながら、彼女はそう言った
しかし、少し声が震えている
こわがられているんだ。と思うと少し傷ついた
くそう。すこしからかってやる
「お前を食べるためさ!」
彼女はキャンパスの裏にすっかり隠れてしまった
どれだけ臆病なんだ
19: 2015/01/18(日) 13:30:15.26
このままでは埒が明かないな
そう思った僕はサメの被り物を脱いだ
お気に入りだったのだけれど、しかたない
「驚かせてごめん。ここは僕の教室なんだけど」
そういうと、彼女はキャンパスの陰から顔を出した
「...あら。あなただったの」
「僕を知っているんですか?」
「...いいえ。知らないわ」
そういうと彼女はまた絵を描き始めた
そう思った僕はサメの被り物を脱いだ
お気に入りだったのだけれど、しかたない
「驚かせてごめん。ここは僕の教室なんだけど」
そういうと、彼女はキャンパスの陰から顔を出した
「...あら。あなただったの」
「僕を知っているんですか?」
「...いいえ。知らないわ」
そういうと彼女はまた絵を描き始めた
20: 2015/01/18(日) 13:37:07.66
「何を描いているの?」
「なんだと思う?」
はっきり言って、わからない
彼女のキャンパスは真っ赤に、乱暴に塗りつぶされているだけのように見えた
「その絵、完成するまで見ていてもいいかな」
「...いいわ」
彼女は散らばっていた椅子を一つつかむと、壁際に置いた
「...少し遠すぎないかな」
「邪魔されたくないもの」
邪魔するつもりはないんだけどなぁ
「なんだと思う?」
はっきり言って、わからない
彼女のキャンパスは真っ赤に、乱暴に塗りつぶされているだけのように見えた
「その絵、完成するまで見ていてもいいかな」
「...いいわ」
彼女は散らばっていた椅子を一つつかむと、壁際に置いた
「...少し遠すぎないかな」
「邪魔されたくないもの」
邪魔するつもりはないんだけどなぁ
21: 2015/01/18(日) 13:43:06.92
ただ見ているだけだとつまらないや
とりあえず褒めてみよう
「きれいな赤だね」
「そうでしょう。これ、人の血が入っているの」
聞きたくなかったなぁ
「...自分の血を入れているの?」
「いいえ。そこらへんから採ってきてるわ」
「...その絵の具が足りなくなったら...」
そう言いかけてやめた
今はただ、この絵が完成することを祈ることしかできない
とりあえず褒めてみよう
「きれいな赤だね」
「そうでしょう。これ、人の血が入っているの」
聞きたくなかったなぁ
「...自分の血を入れているの?」
「いいえ。そこらへんから採ってきてるわ」
「...その絵の具が足りなくなったら...」
そう言いかけてやめた
今はただ、この絵が完成することを祈ることしかできない
22: 2015/01/18(日) 13:48:40.72
次第に、空がオレンジに染まってきた
もう帰らなければ。...帰らせてくれるだろうか
「あの...僕そろそろ」
言いかけて、目を奪われた
彼女のキャンパスが、真っ赤だったそれが
夕焼けに染まる街を美しく、荒々しく映し出していた
「きれいだ...」
おもわず、つぶやいた
「...きれいでしょう?オレンジ色の夕焼けは」
「そうだね...」
「夕焼けがオレンジ色じゃなかったら?」
「え?」
もう帰らなければ。...帰らせてくれるだろうか
「あの...僕そろそろ」
言いかけて、目を奪われた
彼女のキャンパスが、真っ赤だったそれが
夕焼けに染まる街を美しく、荒々しく映し出していた
「きれいだ...」
おもわず、つぶやいた
「...きれいでしょう?オレンジ色の夕焼けは」
「そうだね...」
「夕焼けがオレンジ色じゃなかったら?」
「え?」
23: 2015/01/18(日) 13:55:50.07
「夕焼けは、オレンジ色だから美しいの?」
「そりゃあ...そうだよ」
僕は想像した。水色の夕焼け、緑色の夕焼け、それに照らされる町並み
きれいとは、思えない
「夕焼けは、オレンジ色だから、美しい」
僕はそう断言して見せた
「...そうね。でももし夕焼けが水色でも白でも、あなたは美しいと言ったわ」
「今のあなたならね」
なにを言っているんだろう...心理テストかな
「気づいて...思い出すの」
「何を?」
「あなたがなぜ、ここにいるのか」
「そりゃあ...そうだよ」
僕は想像した。水色の夕焼け、緑色の夕焼け、それに照らされる町並み
きれいとは、思えない
「夕焼けは、オレンジ色だから、美しい」
僕はそう断言して見せた
「...そうね。でももし夕焼けが水色でも白でも、あなたは美しいと言ったわ」
「今のあなたならね」
なにを言っているんだろう...心理テストかな
「気づいて...思い出すの」
「何を?」
「あなたがなぜ、ここにいるのか」
24: 2015/01/18(日) 13:57:30.57
..................
...............................
..............................................................
25: 2015/01/18(日) 14:01:05.62
「...ん」
僕はベッドの上で大きく伸びをした
「ここは...」
言うまでもなく、僕のベッドの上だ
「なにか夢をみていたような...」
いや、あれは夢じゃない。昨日確実に起こったことなんだ
それがどれだけ、でたらめなことでも
僕は歯も磨かずに、学校に向かった
26: 2015/01/18(日) 14:07:00.64
「パジャマで登校するなんて、おかしいのね」
彼女はくすくすと笑っていたけれど、僕はそれどころじゃなかった
「いつから...こんなことになっていたんだ」
今は十一月だ。こんなに暑いわけがない
暑さで人が溶けるなんて、もってのほかだ
「こんなことって、どういうことかしら」
「十一月に、暑さで人が溶ける世界さ。どう考えてもおかしい」
「...それだけ?」
彼女は少しがっかりしたようだった
何に?それはわからない
彼女はくすくすと笑っていたけれど、僕はそれどころじゃなかった
「いつから...こんなことになっていたんだ」
今は十一月だ。こんなに暑いわけがない
暑さで人が溶けるなんて、もってのほかだ
「こんなことって、どういうことかしら」
「十一月に、暑さで人が溶ける世界さ。どう考えてもおかしい」
「...それだけ?」
彼女は少しがっかりしたようだった
何に?それはわからない
27: 2015/01/18(日) 14:13:02.19
僕が彼女の次の言葉を待っていると、彼女はくるりと踵を返してしまった
「この絵、完成したの」
僕にはそんなことは関係ない
僕は彼女の対応に、怒りと、焦りを感じていた
「何か知っているんだろ。教えてくれよ」
彼女は寂しそうな顔をした
どうして?僕には彼女のしたいことがわからない...
「夕焼けは、きれいよ。もともと、オレンジ色だもの」
「でもあなたは?今のあなたは、元からのあなたかしら」
「この絵、完成したの」
僕にはそんなことは関係ない
僕は彼女の対応に、怒りと、焦りを感じていた
「何か知っているんだろ。教えてくれよ」
彼女は寂しそうな顔をした
どうして?僕には彼女のしたいことがわからない...
「夕焼けは、きれいよ。もともと、オレンジ色だもの」
「でもあなたは?今のあなたは、元からのあなたかしら」
28: 2015/01/18(日) 14:22:37.02
「何を言って...」
不意に、彼女の絵が目に入った
この町とよく似ていて、まったくちがう、不思議な世界
サメが...いない
「ちがう...サメはいない」
今も窓の外を泳ぐサメは、存在しないものなのだ
もとは...そう...飛行機?
意識がはっきりしていく...まるで...
夢から覚めていくように
不意に、彼女の絵が目に入った
この町とよく似ていて、まったくちがう、不思議な世界
サメが...いない
「ちがう...サメはいない」
今も窓の外を泳ぐサメは、存在しないものなのだ
もとは...そう...飛行機?
意識がはっきりしていく...まるで...
夢から覚めていくように
29: 2015/01/18(日) 14:29:39.78
「飛行機...よく二人で見た...屋上で」
誰だったかは、思い出せない
「いつもマイペースで...周りからおいて行かれていた」
誰だったかは、思い出せない
「赤い髪留めをあげたんだ」
誰だったか...
「涼しい顔をして、僕にひどいことを言うんだ」
「ぜんぶ君だったんだね」
全てを、思い出した
誰だったかは、思い出せない
「いつもマイペースで...周りからおいて行かれていた」
誰だったかは、思い出せない
「赤い髪留めをあげたんだ」
誰だったか...
「涼しい顔をして、僕にひどいことを言うんだ」
「ぜんぶ君だったんだね」
全てを、思い出した
30: 2015/01/18(日) 14:31:22.36
..........
......................
.............................................
31: 2015/01/18(日) 14:50:08.31
僕たちはよく、屋上で昼ご飯を食べていた
「やっぱり、外で食べたほうがおいしいわ」
彼女はそういうけど、僕には違いがわからない
僕にとってここは、飛行機を眺める場所なのだ
「見てよ!ボーイング747だ。-300SR型だっけ?かっこいいなぁ」
飛び立って間もない飛行機が、はっきりと見える
「騒音でしかないわ。あんなもの」
そういいながらも、彼女は僕と同じ方向を見ている
「あの飛行機、ここから外国まで飛ぶんだよ。...ハワイ...いや、ホノルルだっけ」
眺めるのは好きだけど、どうも覚えるほうは苦手だった
「やっぱり、外で食べたほうがおいしいわ」
彼女はそういうけど、僕には違いがわからない
僕にとってここは、飛行機を眺める場所なのだ
「見てよ!ボーイング747だ。-300SR型だっけ?かっこいいなぁ」
飛び立って間もない飛行機が、はっきりと見える
「騒音でしかないわ。あんなもの」
そういいながらも、彼女は僕と同じ方向を見ている
「あの飛行機、ここから外国まで飛ぶんだよ。...ハワイ...いや、ホノルルだっけ」
眺めるのは好きだけど、どうも覚えるほうは苦手だった
32: 2015/01/18(日) 14:56:10.93
「私たちも、あれに乗るのかしら」
「違う...と思うよ」
もうすぐ修学旅行だった
海のきれいなところへいくんだ
「十一月に海に入れるなんて、変なカンジね」
僕たちは、遠い南の海に思いを馳せていた
いまでは、むしろ置いて行ってくれたほうがよかったのになんて思うけれど
「違う...と思うよ」
もうすぐ修学旅行だった
海のきれいなところへいくんだ
「十一月に海に入れるなんて、変なカンジね」
僕たちは、遠い南の海に思いを馳せていた
いまでは、むしろ置いて行ってくれたほうがよかったのになんて思うけれど
33: 2015/01/18(日) 15:01:15.85
「早く行こうよ。時間がもったいないし」
「うるさいわね。男なら文句ひとつ言わずレディを待つものよ」
僕たちはあの日、まぶしい太陽の元、きらめく海のなか
なにかにおそわれてしまったのだろう
海が赤に染まる...君が赤に染まる...
きっとその時僕たちは...
............
.......................
.................................................
「うるさいわね。男なら文句ひとつ言わずレディを待つものよ」
僕たちはあの日、まぶしい太陽の元、きらめく海のなか
なにかにおそわれてしまったのだろう
海が赤に染まる...君が赤に染まる...
きっとその時僕たちは...
............
.......................
.................................................
34: 2015/01/18(日) 15:06:32.82
「天国なのかな?ここは」
教室で、僕は君に話しかける
「知らないわ。でも、走馬灯みたいじゃない」
記憶の断片が、思い出が、この世界にはあふれている
随分雑な走馬灯だなと、僕は思った
だったら...
「君は本物なの?それとも、僕の思い出の一部?」
「失礼なことを言うわね」
彼女はキャンパスの前に立って言った
「あなたの脳ミソだけで、こんな素晴らしい絵が描けると思うの?」
どうやら彼女は彼女のようだ
教室で、僕は君に話しかける
「知らないわ。でも、走馬灯みたいじゃない」
記憶の断片が、思い出が、この世界にはあふれている
随分雑な走馬灯だなと、僕は思った
だったら...
「君は本物なの?それとも、僕の思い出の一部?」
「失礼なことを言うわね」
彼女はキャンパスの前に立って言った
「あなたの脳ミソだけで、こんな素晴らしい絵が描けると思うの?」
どうやら彼女は彼女のようだ
35: 2015/01/18(日) 15:16:17.86
「...僕さ、思い残していたことが一つあるんだ」
「かわいそうに。未練を持って氏ぬのね。あなたは」
「まだ、間に合うかもしれないけどね」
洒落たセリフを考える時間はない
当然だ。僕は焦っていたからだ
彼女の体がだんだん薄くなっていることに、気づいたから
だから...ただ、こう言った
「君のことが、好きだ」
「かわいそうに。未練を持って氏ぬのね。あなたは」
「まだ、間に合うかもしれないけどね」
洒落たセリフを考える時間はない
当然だ。僕は焦っていたからだ
彼女の体がだんだん薄くなっていることに、気づいたから
だから...ただ、こう言った
「君のことが、好きだ」
36: 2015/01/18(日) 15:21:26.32
彼女はあまりうれしそうじゃなかった
「そう...そうね」
それだけ言って、にじんでいく
風景の中に、ゆっくりと、着実に
「あなたももう、未練はないでしょう?」
「これで、二人そろってあの世に行けるわ」
今度はうれしそうに笑った
僕は、笑えなかった
「そう...そうね」
それだけ言って、にじんでいく
風景の中に、ゆっくりと、着実に
「あなたももう、未練はないでしょう?」
「これで、二人そろってあの世に行けるわ」
今度はうれしそうに笑った
僕は、笑えなかった
37: 2015/01/18(日) 15:27:28.35
「君は...どうなんだよ」
女々しいな、と思いながらも、聞かずにはいられなかった
「僕のこと、好きとか、嫌いとか、その...どう思ってるのさ」
「どうしたの?急に」
「あまり...うれしそうじゃなかったからな」
彼女はため息を一つついて、語りだした
「...言葉って、そんなものよね」
「ここにきて...氏にかけて、気づいたの」
「今までどれだけ薄っぺらいことをしてきたか」
彼女の眼はどこか遠くを見つめている
女々しいな、と思いながらも、聞かずにはいられなかった
「僕のこと、好きとか、嫌いとか、その...どう思ってるのさ」
「どうしたの?急に」
「あまり...うれしそうじゃなかったからな」
彼女はため息を一つついて、語りだした
「...言葉って、そんなものよね」
「ここにきて...氏にかけて、気づいたの」
「今までどれだけ薄っぺらいことをしてきたか」
彼女の眼はどこか遠くを見つめている
38: 2015/01/18(日) 15:37:46.53
「言葉なんて所詮記号だもの」
「思いとはまた別のものよ」
「それなのに、その『記号』を発音しただけで思いのすべてを伝えたつもりになって...」
「馬鹿らしいとおもわないかしら」
「...」
僕は言葉を失っていた
何も言い返すことができなかった
「私はあなたを好きだとは言わないわ」
「でも...そうね。こっちに来ればわかるわよ」
「あなたの走馬灯はもう終わった。未練だってないはずよ」
「なのにどうして」
「どうして消えそうにないのかしら」
「思いとはまた別のものよ」
「それなのに、その『記号』を発音しただけで思いのすべてを伝えたつもりになって...」
「馬鹿らしいとおもわないかしら」
「...」
僕は言葉を失っていた
何も言い返すことができなかった
「私はあなたを好きだとは言わないわ」
「でも...そうね。こっちに来ればわかるわよ」
「あなたの走馬灯はもう終わった。未練だってないはずよ」
「なのにどうして」
「どうして消えそうにないのかしら」
39: 2015/01/18(日) 15:43:33.53
自分でもわからなかった
たしかに未練はないはず...僕ももう消えてなくなるはず
なのに...
僕の体は、まだはっきりと、そこにあった
「...僕はまだ、氏にたくないんだ」
自分でもよくわからない、何かが僕を突き動かす
「僕たちはまだ、帰れる。元の現実に帰れるはずだ」
根拠はなかった。でも、たしかにそう思った
「一緒に帰ろう...目を覚ますんだ」
彼女は冷めた目でこちらをみている
「きっと君もまだ、走馬灯の途中にいる」
なぜなら君の絵が...
まだ完成していないのだから
たしかに未練はないはず...僕ももう消えてなくなるはず
なのに...
僕の体は、まだはっきりと、そこにあった
「...僕はまだ、氏にたくないんだ」
自分でもよくわからない、何かが僕を突き動かす
「僕たちはまだ、帰れる。元の現実に帰れるはずだ」
根拠はなかった。でも、たしかにそう思った
「一緒に帰ろう...目を覚ますんだ」
彼女は冷めた目でこちらをみている
「きっと君もまだ、走馬灯の途中にいる」
なぜなら君の絵が...
まだ完成していないのだから
40: 2015/01/18(日) 15:50:42.30
「君の描いた絵にはまだ小さな余白がある」
見慣れた校舎と、その屋上
そこに何か描こうとして、消した跡があった
「そこには元から何もないわ」
そういう彼女の声は、いつかみたいに震えていた
「元から、いたじゃないか」
「いつもその屋上に、僕たちはいたじゃないか」
「元の世界を描き出したはずの絵に、僕たちがいないはずがない...そうだろ」
..............
.......................
...............................................
見慣れた校舎と、その屋上
そこに何か描こうとして、消した跡があった
「そこには元から何もないわ」
そういう彼女の声は、いつかみたいに震えていた
「元から、いたじゃないか」
「いつもその屋上に、僕たちはいたじゃないか」
「元の世界を描き出したはずの絵に、僕たちがいないはずがない...そうだろ」
..............
.......................
...............................................
41: 2015/01/18(日) 15:54:18.37
あなたはいつも隣にいた
小さいころからずっと、そばにいた
あなたとは幼馴染だった
いつからあなたのことが好きだったのか、もう覚えていない
もしかしたら初めからかもしれない
それくらい昔から、好きだったのだ
小さいころからずっと、そばにいた
あなたとは幼馴染だった
いつからあなたのことが好きだったのか、もう覚えていない
もしかしたら初めからかもしれない
それくらい昔から、好きだったのだ
42: 2015/01/18(日) 16:05:14.88
だからこそ、思いを伝えることはできなかった
この関係が壊れてしまうかもしれない
いや、どう転んでも、この関係は確実に壊れる
振られて、他人になってしまうのか
気まずいまま、友達同士として過ごしていくことになるのか
一度悪い方向に転がりだした想像は、もう止められなかった
どうすることも、できなかった
この関係が壊れてしまうかもしれない
いや、どう転んでも、この関係は確実に壊れる
振られて、他人になってしまうのか
気まずいまま、友達同士として過ごしていくことになるのか
一度悪い方向に転がりだした想像は、もう止められなかった
どうすることも、できなかった
43: 2015/01/18(日) 16:09:18.44
あなたのことを疑い始めたのは、最近のことだ
優しいあなたは、今も無理して私といるのかもしれない
あなたの優しい言葉も、嘘かもしれない
そう、嘘なんていくらでもつけるのだから
言葉なんて信用ならない
言葉なんて
だったら.........
..........
...................
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優しいあなたは、今も無理して私といるのかもしれない
あなたの優しい言葉も、嘘かもしれない
そう、嘘なんていくらでもつけるのだから
言葉なんて信用ならない
言葉なんて
だったら.........
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44: 2015/01/18(日) 16:17:39.55
「だったら、うやむやにしてしまいましょう」
「あなたの本当の気持ちなんて知らない」
「でも、このまま氏んでしまえば、嘘も真実も闇の中...」
「だから二人で氏ぬのよ」
「いい考えだと思わない?」
「...おもわないよ」
なんで...
「僕の気持ちは本当なんだ...だからふたりで――」
うそをつかないで...
「あなたにはまだ未練がある...だから消えないんでしょう?」
「さっきの言葉は嘘だったんでしょう」
私のことが好きだなんて
あなたの優しさから出た嘘にすぎないのに.........
「あなたの本当の気持ちなんて知らない」
「でも、このまま氏んでしまえば、嘘も真実も闇の中...」
「だから二人で氏ぬのよ」
「いい考えだと思わない?」
「...おもわないよ」
なんで...
「僕の気持ちは本当なんだ...だからふたりで――」
うそをつかないで...
「あなたにはまだ未練がある...だから消えないんでしょう?」
「さっきの言葉は嘘だったんでしょう」
私のことが好きだなんて
あなたの優しさから出た嘘にすぎないのに.........
45: 2015/01/18(日) 16:24:35.22
「たしかに...僕の未練は君に告白できなかったことじゃない」
「...そう」
泣いてしまいたかった。でも、涙は出ない
何も感じない
私は...このまま消えるのだろうか
「僕の本当の未練は」
「君に僕の気持ちを伝えることだ」
...え?
「...そう」
泣いてしまいたかった。でも、涙は出ない
何も感じない
私は...このまま消えるのだろうか
「僕の本当の未練は」
「君に僕の気持ちを伝えることだ」
...え?
46: 2015/01/18(日) 16:38:00.24
気が付くと、抱きしめられていた
どこにも行かせないと言わんばかりに、強く
体も実体を取り戻していた
いつの間にか夕焼けが教室を包んでいた
キャンパスがまばゆい光を放っている
「君に信じてもらえなくちゃ、意味がないんだ」
あなたは言う
「きっと今、君は混乱しているんだ」
「この訳の分からない走馬灯の中で」
そうかもしれない。そう思えてきた
夕日のせいだろうか...君のせいだろうか
心が温かく感じる
どこにも行かせないと言わんばかりに、強く
体も実体を取り戻していた
いつの間にか夕焼けが教室を包んでいた
キャンパスがまばゆい光を放っている
「君に信じてもらえなくちゃ、意味がないんだ」
あなたは言う
「きっと今、君は混乱しているんだ」
「この訳の分からない走馬灯の中で」
そうかもしれない。そう思えてきた
夕日のせいだろうか...君のせいだろうか
心が温かく感じる
47: 2015/01/18(日) 16:43:49.40
私はうなずいた
君は微笑んでくれた
君に手を取られ、キャンパスの前に立つ
「この絵の中に飛び込もう。それで、この絵は完成する」
「完成させて...私たちはどうなるの?」
「現実に戻れる。きっと僕たちは、病院のベッドで目を覚ますんだ」
「確証がないのだけど」
「大丈夫。僕を信じてくれ」
答えになっていないよ
そう思って、つい笑ってしまった
君は微笑んでくれた
君に手を取られ、キャンパスの前に立つ
「この絵の中に飛び込もう。それで、この絵は完成する」
「完成させて...私たちはどうなるの?」
「現実に戻れる。きっと僕たちは、病院のベッドで目を覚ますんだ」
「確証がないのだけど」
「大丈夫。僕を信じてくれ」
答えになっていないよ
そう思って、つい笑ってしまった
48: 2015/01/18(日) 16:50:25.03
このおかしな世界じゃ、この先どうなるのかなんて見当もつかない
本当に現実で目を覚ますのか、あの世に行ってしまうのか
またこの世界に迷い込むのか
「.........」
「また、会えるかしら...」
「ぼくが会いに行く。心配ないよ...」
「......でも...」
「絶対会いに行くから。たとえこの先に何があっても」
「きみのためなら、どこ ま で m
..........
................
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本当に現実で目を覚ますのか、あの世に行ってしまうのか
またこの世界に迷い込むのか
「.........」
「また、会えるかしら...」
「ぼくが会いに行く。心配ないよ...」
「......でも...」
「絶対会いに行くから。たとえこの先に何があっても」
「きみのためなら、どこ ま で m
..........
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......................................
49: 2015/01/18(日) 16:53:16.77
「...ん」
ここは...どこだ
やけに天井が低い
「っ!いててて...」
ああ、ここは―――
fin
ここは...どこだ
やけに天井が低い
「っ!いててて...」
ああ、ここは―――
fin
引用元: きみのためなら、どこまでも
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