1: 2012/11/11(日) 21:17:03.06
男「またあの子は何か言ってるよ」
女「男君」
男「あ、はい」
女「私はちょっと保健室に行ってくるから先生に言っておいてくれないか」
男「おお、オッケーオッケー」
女「じゃあ頼むぞ」
男「女」
女「?」
男「頑張って」
女「…ありがとう」ニコッ
シュッ、ズダン


男「そして何故保健室に窓から飛び降りていく必要があるのか」
男「案の定足を挫いてしまったみたいだ。ここが二階でよかったね本当」



男「彼女はよくこうしてよく『右手が疼くっ!!』だとか『奴が…近づいてきてる…?!』とかいってよく教室を飛び出して行く」
男「まあよくある厨二病の一種なんだろうけど、ここまで徹底しているとなかなか見ていて面白いもので」
男「俺はこうして彼女と適度に接触しつつ観察を楽しんでいる」

5: 2012/11/11(日) 21:18:44.76
男「なあ女、その右手の包帯ってなんなの?」
女「これか?ん…機密事項なんだが男君には普段の礼もあるし教えよう」
男「おお、頼む」

女「これは包帯に見えるが、実は『悪戯な制約書〈トリッキー・リストリクション〉』っていって私の魔力を抑え付けてくれるものなんだ。
  これがないと私の魔力に中てられて生身の人間は消滅してしまう」
男「へーっ」

女「それにこれをつけていると妖が魔力の残り香を追ってきてしまうこともないから学校に霊が集まってくるって事も
  防ぐことができるんだ」
男「ほぉー」

女「特別な布で作られているから破れたり汚れたりすることもない」

男「でもお高いんでしょう?」
女「ところが今回は特別価格9,980円でのご提供です!」
男「今すぐこちらの電話番号にお電話を!」
女「オペレーターを増やして、お待ちしています!」

7: 2012/11/11(日) 21:19:51.93
男「ところで、いつも教室抜け出してどこに行ってるんだ?」
女「えっ、保健しt
男「嘘なんだろ?」

女「!」
男「窓から飛び降りれる程のアクティブさを持って、保健室で何を診てもらうというんだ。頭か?」
女「君もなかなか酷い物言いをするな…まぁ…その通りなんだが」
男「で、どこへ?」
女「いくら魔力を抑えていても偶然この領域に侵入してきた妖に微量の魔力を感じ取られてしまう可能性がある」
女「だから私は妖の邪気を感じた時点で、そいつの討伐に向かっている」
男「なるほど…ならそういって行きゃいいのに」
女「こんな話…君以外ならただの迷妄だと私が変人扱いされて終いだ」
女「君以外に理解してもらえる、なんて思っていないよ私は」
男「お…おぉ(ごめん女さん)」
男(と、いうかそこまでわかっているなら、やめりゃよくないかそのキャラ)


男「……女心は…わからねぇな」フッ
女「なにをいきなり」

9: 2012/11/11(日) 21:21:03.78
男「それ…何飲んでるんだ?」
女「これか?これは魔力補給剤」
男「十秒チャージのゼリー飲料に見えるのは俺の気のせいか?」
女「機密アイテムをおいそれと裸で持ち歩くわけにはいかないからな」
女「このようにカモフラージュしてるってわけだ」
男「へーっ」
女「ちなみに正式名称WIE-edr。通称『吸収する接吻〈ディープ・キス〉』だ
男「ほぉー」

女「10秒で魔力の大半を回復することができる」
男「それはすごい」

女「栄養バランスもきちんと整えられていて」

女「おまけに腹持ちもいい」

男「して価格は?」
女「今回は特別にもう1箱お付けして3箱36個入りを4,990円でご提供」
男「あ…ア○ゾンよりも安いだと…!?」
女「ウ○ダーinゼ○ーじゃないぞ」
男「あ、うん」

10: 2012/11/11(日) 21:22:31.01
女「はぁ…はぁ・・・っ、ぐっ…!」
男「おいおいどうしたんだ」
女「…大丈夫だから…心配しないで」
男「そんなこと言ってもほっとけないだろ」

女「…はぁ、大丈夫。落ち着いた」
男「どうしたんだ一体」
女「私の右腕が魔力の邪気に耐え切れなくなりつつある」
男「どういう」
女「私だって『継承者』とはいえ、生身の人間なんだ。魔力の使用は我が身すら蝕む」
女「その証拠にほら、普段魔力の放出に使っている右手はもう上げるのがやっとの状態さ」サッ

男「確かに…左と比べて細いな…」ピトッ
女「ひゃ…!誰も触っていいなんて言ってないっ!」サッ
男「あー悪い悪い」
女「もう…//」

男(かなり冷たかった…厨二病になりきるって大変な事なんだなぁ)


男「女…君は偉い。うん」
女「え?あ…ありがと」

13: 2012/11/11(日) 21:24:26.38
男「今までで苦労した体験談をひとつ」
女「そうだな…あれは1年前、まだ私が『能力』を継承して間もない頃だった」



女「はぁ…っ、はぁ…っ」
女(やばいぞ…魔力がもう無い)
女(どうすれば…)
妖「ヒャッハアアアアアアアアアアアアア」
女(来た!)
女「!」
女(あの湖に誘い込めれば…っ!)

女「…こっちだっ!」ダッ
妖「ヒャッハアアアアアアアアアアアアア」


女「ここで…っ!」クルッ
妖「ヒャッハアアアアアアアアアアアアア」

妖の頭ホールド

妖「!?」ドボン

女「おらおら沈めっ!そのまま窒息してしまえっ!」
妖「ビャッバアアアアアアアアアアアアア」バタバタ
女「沈めええええええええええええっっ」

14: 2012/11/11(日) 21:26:07.79
女「私は両手に残ったありったけの魔力を込め」
女「妖の頭を湖に押し付け窒息氏させた」


男「おいおいおいおいおい」
女「いやぁ、あれは今思い出しても無茶をしたと思うよ」

男「まず妖怪って呼吸してたんだな」
女「そういうことなるな」


男(なんつー爽快感皆無な妄想してんだこの子は)
男(ファンタジー物で相手を水で窒息させる)


男「楽しいかそれ」
女「楽しい訳ないだろ」

15: 2012/11/11(日) 21:28:06.12
屋上
男「おー女……なにしてんの?」
女「風の詩(コエ)を聴いている」
男「これはまた」
女「フッ…君にはわからないだろうな」
男「わかってたまるか」


女「大きな嵐が来る」
男「ほう…なぜそう思う?」
女「風が生ぬるくて塩気が多いし風も注意しあっている」
男「女!風言語がわかるのか?!」
女「わかると言った」
男「偶然の一致でしたか、じゃあ何で風を2回も言った」


女「今日は風が騒がしい」
男「でも少しこの風泣いています」
女「何故わかった!?」
男「ごめん、適当言った」

17: 2012/11/11(日) 21:30:57.80
下校中
男「なんだかんだで女と二人で下校って初めてな気がする」

女「今日は珍しく妖の気配が無いからな」
女「普段だと急に戦闘になったら君を巻き込んでしまうことになる」
男「さいですか」
女「むっ!男君!男君!ミ○ドで半額セールやってる!行こう行こう!」グイッ
男「ちょ待てよ、引っ張んなって!」



アリガトウゴザイマシター

男「……なにそれ、そんなに食うの?」
女「戦いにおいて糖分摂取は必要不可欠だからな」
男「俺でもそんなに食えねぇぞ」
女「甘い物はいくらでも入るんだ!私の体は」
男「あははっ、あ、そう」
女「笑うなー!女子を笑うなんて失礼この上無いぞ!」


男(こうして見ていると普通の可愛らしい女の子なんだよなぁ)

18: 2012/11/11(日) 21:33:31.98
男(外見に至っては申し分ないし、性格自体も問題は無い)
男(むしろ俺はすごく楽しい訳だ)
男(が)

女「マズイ!巨大な邪気が急速にこちらに向かってきている!」ガタッ

男(こういうところをなんとかしてくれ、まじで)

女「男君、逃げてくれ!」

男(まぁまぁ慣れてしまえば可愛いと思える節もあるんだけどな)

女「男君!」
男「なんだ、落ち着け落ち着け。どうし「見つけた」


男「た」

ザクッ





男「お…おいおいどういうことだよ…なんなんだよこれ…」
男「どうなってんだよ、おい。なぁ女」
男「女ァ!!」


女「」ドクドク

21: 2012/11/11(日) 21:37:29.81
妖「おやおや、ニンゲンのお友達守って負傷だなんて、腑抜けたものだねえ」クスクス

男「おい…なんなんだよ、誰だよテメェ!」


妖「おや、そこの小童、アタシが見えるのかい?珍しいこともあるもんだね」
妖「まぁいいさどちらにせよアンタはここで」


妖「氏ぬのさ」シュッ
男「!」


ガキン!


妖「!」
妖「おやおや」



妖「まだ生きてたかい小娘」


男「女!」
女「はぁはぁ…男君、無事でよかった…」

23: 2012/11/11(日) 21:40:09.56
男「刀!?どこから…いや、そんなことよりお前…腹が」
女「大丈夫、大したことはない」

女「それよりも早く逃げて」
男「そんなことできる訳」
女「あなたがいると戦いに支障が出る」
男「でも女を置いて一人で逃げるなんてできねぇよ!」
女「男君!」
妖「敵前で悠長に作戦会議とは随分と余裕だね」ビュン

女「くっ!」ガァン!


妖「ただでさえ劣勢なのに、この男を守りながら戦う余裕がどこにあるんだい?」シュッ
妖「見捨ててしまいなよ。そうすりゃ、アタシから逃げ切れるかもしれないよ」


妖「アンタが囮になって男を逃がしたところでもう遅い。男の匂いはもう覚えた」ヒュン
妖「アンタを頃した後に、すぐそっちに送ってやるさ」

25: 2012/11/11(日) 21:42:04.86
女「…させない」
妖「うん?」

女「私がいる以上、男君を、いいやこの街の人をアンタ達に殺させはしない!」

妖「ほほぉ、じゃあやってみるといいよ!」シュッ




男(ああ、本当だったんだ、女がやってきたことは全部)

男(嘘じゃなかったんだ。なのに俺)

男(おもしろがってあいつの後追っかけて)

男(あいつは俺のこと信じてくれていたのに)



女「…くっ!」ザッ
妖「そろそろ限界かい?じゃあ終わらせようかねぇ」


妖「絶望だけを抱いて消えな」ヒュッ

女「く…っそ…」

27: 2012/11/11(日) 21:45:39.90
男「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」タッタッタッ


男「うらああああああっ!!!!」ドンッ

妖「!」グラッ

男「女!」グイッ
女「お…とこく…ん?」


妖「ほぅやるねぇ…アタシの手に体当たりして照準をずらすたぁ、狙ってできることじゃぁないよ」
妖「その偶然に免じて1分間だけ時間をやるよ」
妖「その間に別れの挨拶でも交わしな」



男「はぁはぁ…よかった…」
女「ダメ…はやく…はやく逃げて」
男「お前だけ置いて逃げれるかよ」
女「そんなの…何で私なんか…」
男「俺もさ、今やっと気づいたんだ」


男「俺はお前のことが好きなんだ」
女「!え…私の…ことを…?」

男「ああ、きっとお前と出会ってからずっと」
男「俺は君のことをずっと見ていた」

29: 2012/11/11(日) 21:48:18.72
女「う…嬉しいなぁ、私のことをそんな風に思ってくれる人がいるなんて…」
男「だから、俺はお前を


女「…ごめん」
女「私は…その思いには応えられない」
女「だから逃げて」

男「えっ?」

女「もう一分か…ありがとう。お陰で随分回復した」
女「本当にありがとう。あなたは」


女「生きて」ダッ



男「…女…まさかお前…」

30: 2012/11/11(日) 21:51:36.91
妖「1分丁度だ。別れの挨拶は済ませたか?」
女「あぁ、済ませた」

妖「なぁに、心配することはない、また向こうですぐ会えるさ」
女「いや、会えないさ」
妖「何?」
女「ここで氏ぬのは…」


女「私と、お前だからだ!!!」

パアッ

妖「なっ!結界魔法だと!?いつの間に」ギギギ

妖「悪あがきを…この程度の結界30秒もあれば容易く破壊してみせるわ」

妖「その間にアタシを倒せる力がアンタにあるとは思えないけどねぇ」

31: 2012/11/11(日) 21:52:41.35
女「きっとお前は何か勘違いをしている。」

妖「何を、だ?」


女「私の魔力はまだ高まる」シュル


パサ…


妖「!!」

妖(ニンゲンにこれほどの魔力が備わっているなど考えられん)

妖(しかし所詮生身の身、これ程の魔力を身に纏えば魂ごとの消滅も免れん)

妖「まさか…」

妖「自分ごとアタシを消し去ろうと言うのかい?」


女「お前もこれだけの魔力をすべてぶつければ消滅するだろう」バチバチ

34: 2012/11/11(日) 21:54:39.76
女「ぐっ…はっ」ボタボタ
女「限界も近い…決着をつけようじゃないか」
妖「まっ…待て!そんなことしたらお前も 
女「そんなことは百も承知だ!」
妖「ま…っ


女「もう遅い」
女「絶望だけを抱いて消えな」ニヤッ



女「禁式零の参拾九『滅雷〈ディザイア・ライトニング〉』!!」

35: 2012/11/11(日) 21:56:40.61
「…ぉぃ、ぉんな、女!しっかりしろ!女」

女「…男君、よかった無事だったんだな」
女「本当に良かった…」キラキラ

男「女ぁ…お前…」
女「ごめん…男君。私はもうすぐ消えてしまう」
女「それがあの魔法の代償だ」
男「俺…お前に謝らなきゃダメなことがあって…っ」

男「俺本当は…っ」


女「わかってたよ」



女「君が私の話を本当は信じていなかった事は」

男「えっ…」

37: 2012/11/11(日) 21:58:43.30
女「私だって他人が言っていたら信じないさ、それが普通なんだ」
 
 「でも、それでも君は気持ち悪がらず私の話を聞いてくれた」
 
 「なによりいつだって私のそばにいてくれたんだ」
 
 「男君…君は言ってくれたよな」
 
 「私が教室から妖のところに行こうとしたとき」
 
 「『がんばれ』って」
 
 「本当は、すごくつらかったんだ」
 
 「魔力の才能を見出され、大人の言うままに継承の儀式を受け、妖討伐の任についてから」
 
 「周りのものすべてが180°形を変えた」

38: 2012/11/11(日) 22:00:36.56
 「友達も人並みにいたんだ、親友と呼べる人間もいた」
 
 「でも教室をいつも急に飛び出していく私を見て」
 
 「誰もが私のそばを離れていった」
 
 「きっと親も私に自分の子供を近づけたくなかったんだろう」
 
 「だから私は親友にだけ、秘密で妖のことを話した」
 
 「信じてくれると思っていたんだ。あの子は『親友』だからって」
 
 「次の日、学校の黒板には中二病の患者として私の名前が大きく書かれていた」
 
 「そして私は一人になった」
 
 「どうしようもなく苦しかった」 
 
 「皆を守るためにしていることで、皆に気味悪がられることが」
 
 「皆が私を敬遠する。妖退治なんて辞めてしまおうかと思ったこともあった」
 
 「そんなときに君が傍にきてくれた」
 
 「君は私の奇行に興味を持って近づいてきただけなんだろうが」
 
 「私にとっては君がこの街を何よりの『理由』になった」

39: 2012/11/11(日) 22:02:57.02
 「楽しかったよ、君と話していて。そして嬉しかった。こんな与太話に耳を傾けてくれて」
 
 「…だからよかったんだ、君が信じているか信じていないかは関係なく」
 
 「君がいてくれさえいれば、それだけで私は幸せだった」


男「女…」

女「少し…長く話し過ぎてしまったな」キラキラ
男「おい待て!消えるなよ!待ってくれ」

女「君を守ることができて本当によかった」

女「こうして消える時でさえも君はそばにいてくれる」

女「こんな幸せな事が…あるもんか」ポタッ

43: 2012/11/11(日) 22:05:26.75
女「あぁ…くそぅ、言わずに消えようと思っていたんだが抑えきれん」キラキラ


女「私は…君が」キラキラ




フッ




男「…女?おい、まだちゃんと聞いてねぇよ」

男「なぁおい、君が、なんなんだよ」

男「お前の…口から言ってくれなきゃわかんねぇよ…」

男「なぁ…」

男「ぁぁぁぁぁぁあああああああ…」

 




「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

44: 2012/11/11(日) 22:07:27.91
.



二か月後ーー



女が行方不明になったという話は教室内を駆け回り一時は騒然となったが
3日も経つと話題にすら上がらなくなった


女の気持ちを考えると憤りを感じるが
きっと俺自身も彼女との関わりが無かったらきっと級友と同じように
一時の話題の種とし、そして、跡形もなく忘れ去っていたのだろう

46: 2012/11/11(日) 22:09:14.65
女が光となりどこへ行ったかはわからない


けどいつかはまた会えると信じている


彼女と同じ道を辿って行けば



男「ん…この邪気は…近いな」
男「ちっ、行くっきゃないか」ガラガラ



いつか。また。



男「くっ…!右手が疼く…!!」


fin

49: 2012/11/11(日) 22:11:08.25

50: 2012/11/11(日) 22:12:55.70
以上です

勢いで書いたのでムズムズするのはしょうがない
辞書でかっこいい単語の英語探したのなんて中学以来だわ

いないとは思いますが質問等あったら答えます

見てくださった方どうもありがとうございました

52: 2012/11/11(日) 22:19:06.31
乙!!
力を男が受け継いだのか?

53: 2012/11/11(日) 22:25:05.11
>>52
普通の人間では妖に触れるどころか見ることすらできないことに加え
女の包帯解除後の魔力、妖の邪気に触れても消滅しないことから
元々魔力の才があったという脳内設定でした
おそらく女の家を訪ね理由を話しどこぞで継承の儀を受け、
女の任を引き継いだという感じでしょう

引用元: 女「くっ…!右手が疼く…!!」