1: 2011/06/04(土) 15:13:43.10
ほむら「あなたは、なんであなたはいつだって、そうやって自分を犠牲にして」

ほむら「いい加減にしてよ。あなたを失えばそれを悲しむ人がいるって、
どうしてそれに気づかないの」

ほむら「あなたを守ろうとしてた人はどうなるの!」

ほむら「いいわ。自分が役に立たないとか、意味が無いとか、そんなに風に思っているなら」

ほむら「その幻想をぶち頃してあげるわ!」

2: 2011/06/04(土) 15:14:30.07
まどか「ほむらちゃん、その台詞は、どこかで……」

まどか「どこかで聞いたことあるよ? 今の」

ほむら「そっ、それは……」

まどか「ごめん……私、さやかちゃんを探さないと」

ほむら「待って。美樹さやかは、もう」

まどか「ごめんね」

ほむら「待って、まどかぁ!」

3: 2011/06/04(土) 15:15:38.19
杏子「やっと見つけた」

さやか「悪いね、手間かけさせちゃって」

杏子「なんだよ、らしくないじゃんかよ」

さやか「うん。別にもう、どうでもよくなっちゃったからね」

さやか「結局あたしは、一体何が大切で、何を守ろうとしてたのか、もう何もかも
分けわかんなくなっちゃって」

さやか「そんなとき、あいつが現われたの」

4: 2011/06/04(土) 15:16:13.13
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

がむしゃらに使い魔を狩っていた私に、あいつはこう言ったわ。

ほむら「どうして分からないの。ただでさえ余裕が無いのだから、魔女だけを狙いなさい」

さやか「うるさい、大きなお世話よ」

ほむら「もうソウルジェムも限界のはずよ。今すぐ浄化しないと」

さやか「今度は何を企んでるのさ」

ほむら「いい加減にして。もう人を疑ってる場合じゃないでしょう。
あなた、氏ぬわよ」

さやか「あたしが氏ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなったときだけだよ。
それってつまり用済みって事じゃん。なら良いんだよ。
魔女に勝てないあたしなんて、この世界には要らないよ」

ほむら「ふざけないで!」

さやか「?」

5: 2011/06/04(土) 15:28:26.34
ほむら「あなたはそうやって、何もかも諦めたような事を言って」

ほむら「勝手に自滅して、まどかを悲しませて、それで満足なの?」

さやか「まどかは関係無いでしょ」

ほむら「関係無い? そう。あなたにとっては関係無いのね。
もちろんクラスメートも、あの男の子も、関係無いのでしょうね」

さやか「! 関係無いって言ってるでしょ!?」

ほむら「嘘ね」

6: 2011/06/04(土) 15:38:12.22
ほむら「あなた何も諦めてない。口では空っぽな事を言って、心の中では
ずっと助けを欲しがってる。後悔してる」

さやか「うるさい、うるさい、うるさい!」

ほむら「皆あなたを助けようとしてるのに。なのに、あなたは
勝手に全部敵に回して、恨んで、一番大切なものまで壊そうとしてるわ」

さやか「だったら、何だって言うのよ!?
あんたこそ一体なに? わざわざお説教しに来たの?」

9: 2011/06/04(土) 15:51:36.34
ほむら「別に私はあなたを助けたいわけじゃない。ウジウジしてるあなたが気に食わないだけ。
あなた本当はまだ氏にたくないのに――」

さやか「違う。私はもう氏んでるもの。未練なんて無い」

ほむら「そんな目をしながら言う台詞かしら。悲しくて、悔しくて、仕方が無いのに、
人間と何が違うと言うの」

さやか「黙れ……黙りなさいよ」

ほむら「黙らないわよ。何度でも言ってあげる。あなたはまだ氏にたくない、
あの男の子のことも諦めてない。
後悔してるのに何もしないで氏んでいくなんて、そんな悲劇のヒロインを気取っているなら」

ほむら「まずはその幻想をぶち頃してあげるわ」

さやか「黙れえええ!」



それで私、大声あげながら、アイツに突っ込んでいって……
ホント情けないよね、相手は丸腰だったのに、綺麗なクロスカウンターもらって
気絶しちゃったんだ……。

12: 2011/06/04(土) 16:05:22.16

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さやか「それで、なんかもう、どうでもよくなっちゃった、というか」

さやか「気が付いたらあいつは居なくなってて、目の前にグリーフシードが置いてあって」

杏子「使ったのか?」

さやか「……うん。ほら、見て」

杏子「ん、本当だ。ちゃんと浄化されてる……良かった、ひやひやしたぜ」

さやか「? あんたまで心配してくれるの?」

杏子「! ばか野郎、そんなんじゃねえ!」

さやか「フフ、ありがとね」

13: 2011/06/04(土) 16:15:07.94
杏子「勘違いしてんじゃねぇぞ! あたしはただ……」

さやか「いいからいいから」ニコニコ

杏子「…………」

さやか「あたし達のこと同類って、いつだったかあんた言ってたよね。
今ならそれ、よく分かるよ」

さやか「あいつに思い切り殴られて……あたし変になっちゃったのかもしれない。
なんだか妙にスッキリしちゃって」

さやか「浄化したソウルジェムが、凄く綺麗に見えて」

さやか「これが私の魂なんだ、って思ったらね。以前はあんなに嫌だった、この体も、
魔法少女の事も、嫌じゃない」

さやか「あたし、やり直すよ。あんたとも、恭介の事も、全部やり直したい」

15: 2011/06/04(土) 16:26:37.18
まどか「さやかちゃん! さやかちゃん、大丈夫!?」

さやか「まどか……?」

まどか「さやかちゃん、良かった……私、さやかちゃんが心配で。なんだか、さやかちゃんが遠くへ行っちゃうような気がして」

さやか「まどか、ごめん」

まどか「えっ」

さやか「私、まどかに酷い事言ったよね。謝っても謝りきれないけど、ごめん」

まどか「そんな、どうして?」

さやか「どうして、って」

まどか「私さやかちゃんが大変だって分かるから。辛い思いしてるの分かるから、
酷い事言われたなんて、そんな風に思わないよ」

まどか「もし、さやかちゃんまで氏んじゃったら、私……」

さやか「まどか、ごめんね。本当にごめん」

17: 2011/06/04(土) 16:38:26.73
~ほむホーム~

まどか「入っていいかな?」

ほむら「…………」

さやか「おっ、来たな、まどか」

杏子「また首突っ込みに来たのかい?」

マミ「ちょっとあなたたち……まどかさんには内緒の集まりだったはずよ」

まどか「えっ」

ほむら「あなたは関わるべきじゃないわ、まどか」

まどか「でも……」

マミ「私も暁美さんに賛成よ。これは魔法少女の戦いだもの」

杏子「まあ、いいじゃねーか。来ちまったもんは仕方ねー。話だけでも聞いてきな」

マミ「ちょっと、佐倉さん……」

さやか「まあまあまあまあ、私からもお願いします」

マミ「なぜ鹿目さんは今日の集まりを知ってたのかしら」

さやか「それは、えっと……えへへ」

マミ「まったく、もう」

18: 2011/06/04(土) 16:50:49.57
まどか「これが、ワルプルギスの夜?」

まどか「一人で倒せないほど強い魔女をやっつけるために、ずっとここで準備してたのね」

ほむら「今までの魔女と違って、こいつは結界に隠れて身を守る必要なんて無い。
ただ一度具現しただけでも何千人という人が犠牲になるわ」

杏子「心配すんな、まどか。あたしたち四人が負けるはずねぇ」

まどか「でも……」

ほむら「信じて、まどか。私たちは負けない。
それに、あなたが契約してしまったら、それこそあいつの思う壺よ」

マミ「鹿目さん、お願い。暁美さんを信じてあげて」

マミ「今の私があるのも、暁美さんが居たからよ。だから私は暁美さんの事、信じてる。
だから、鹿目さんにも信じてほしい」



――そう、あの時の私は、ずっと一人で戦い続けて、寂しいって、そんなことばかり思ってたのよね。

21: 2011/06/05(日) 00:30:01.39

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あれは、そう、病院に魔女が出た時だったわね。
結界を進む私と、鹿目さんを追って、彼女が現われて。

マミ「言ったはずよね。二度と会いたくないって」

ほむら「今回の獲物は私が狩る。あなた達は手を引いて」

マミ「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」

ほむら「その二人の安全は保証するわ」

マミ「信用すると思って?」

ほむら「!?」

氏角から回り込んだリボンで敵を拘束。不意打ちのようでちょっとズルイかもしれないけど
お互いを傷つけずに前に進むには、これしか無かったのよね。

ほむら「ば、馬鹿。こんなことやってる場合じゃ」

マミ「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」

22: 2011/06/05(日) 00:35:49.11
ほむら「待ちなさい。巴マミ、あなたは卑怯よ」

マミ「なんですって?」

ほむら「あなたには力がある。苦も無く魔女を倒せるあなたが、
どうして魔法少女を増やそうとするの」

マミ「私はただ、彼女達に魔法少女がどういうものか、知ってもらいたいだけよ」

ほむら「本当にそうかしら。レクチャーなら、もう十分に済んだでしょう」

マミ「…………」

まどか「ほむらちゃん。魔女退治に付いていくのは、私達からお願いしてる事なんだよ」

ほむら「あなたがどう思おうと、決めるのは巴マミの意思よ」

23: 2011/06/05(日) 00:37:36.44
マミ「鹿目さん、行きましょう。急がないと美樹さんが」

ほむら「レクチャーなんて建前。あなたは都合の良い面ばかり見せて、
結局は二人を魔法少女にしたいだけ」

マミ「……いい加減にしなさい。そんな風に決め付けないで。
都合の良い面ばかりなんて、そんな事無いわよ」

ほむら「誰もがあなたのように魔女に勝ち続けられるわけじゃない。
力の無い魔法少女の末路がどんなものか、知らないわけじゃないでしょう?」

ほむら「そういう事を教えずに、あなたが余裕たっぷりに魔女退治したって
何も教えたことにならないわ」

24: 2011/06/05(日) 00:39:17.05
マミ「鹿目さんには才能がある。私だって手伝うもの。悲惨な結末になんて、させないわ」

ほむら「そういう事じゃないでしょう? 彼女達には叶えたい願いさえ、無い。
ロクにリスクも教えないまま、ただ何となく契約させて、魔法少女に仕立て上げる。
あなたのしてる事って、そういう事よ」

マミ「…………」

ほむら「あなたには力があるのに。いったいあなたは、何のために戦ってるの?
あなたの力は彼女達のような何も知らない子を、守るためにあるのではなかったの?
今のあなたは、自分の力も、彼女達の気持ちも、利用しようとしてるだけ」

ほむら「道連れほしさに、まどか達を利用してるなら――」

マミ「うっせぇんだよ! ド素人がァ!」

25: 2011/06/05(日) 00:41:27.50
まどか「マミさん!?」

私、頭に血がのぼってしまって。
マスケット銃を振り回して、暁美さんをめった打ちにしてしまったの。
途中でリボンの拘束は解けたけど、構わず銃を振り回したわ。

マミ「知った風な口をきかないでよ! 私が今までどんな気持ちで戦ってきたと思ってるの!」

ほむら「うぐ!」

まどか「やめて! マミさん、もう!」

マミ「あなたは、願いと引き換えだからって諦めてるんでしょうけど。
でも、私は最初から、生きるために契約するしかなかった。
家族も失って、ずっと一人で、知らない誰かのためだけに、誰にも知られず戦うだけ。
それが、私の気持ちが、あなたなんかに分かるの!?」

マミ「私だってがんばった。がんばったのよ!
それでも、もう耐えられない。
一人で戦い続けるなんて、もう不可能よっ!」

26: 2011/06/05(日) 00:44:07.61
ほむら「……ふざけないで」

マミ「!?」

ほむら「そんなもの、あなたの勝手な理屈でしょ。まどかの事なんて、一瞬も考えてないじゃない」

ほむら「あなたの孤独のツケをまどかに押し付けないで」

ほむら「一人で戦うのが怖かったら。
何も知らない子を契約させてまで、仲間にするぐらいなら。
他の魔法少女を頼ればいい。たったそれだけのことじゃない」

ほむら「あなたは力があるから、仕方なく人を守ってるの?
違うでしょ。そうじゃない。
守りたいものがあるから、戦ってるんでしょう?」

ほむら「だったら、何をやってるのよ。なぜ、鹿目まどかを――」


さやか「キャアアア!!」


「!?」

27: 2011/06/05(日) 00:52:28.11
まどか「さやかちゃん!?」

ほむら「しまった!」

ほむら「巴マミ、私に捕まりなさい!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さやか「…………」

魔女「…………」

私と暁美さんが駆けつけると、大口を開けた魔女が今まさに、
美樹さんに噛り付こうという瞬間だったわ。

マミ「あなたの能力が無ければ、間に合わなかったわね」

マミ(私、自分を見失ったばかりに、もう少しで取り返しの付かない事に……)

ほむら「……私の魔力も限界よ。あとをお願い」

マミ「ええ。任せて」

美樹さんを安全な場所に運んで、時間停止を解除。
銃の狙いをつけて――

さやか「え? なに? なんなの?」

ほむら「動かないで」

さやか「あんたが助けてくれたの?」

ほむら「礼なら後にして」

28: 2011/06/05(日) 00:56:00.41
マミ「ティロ・フィナーレ!」

トドメ、のつもりだったのだけれど。
魔女はリボンをすり抜けて、恐ろしい速さで私に迫ったわ。あの大口を開けて。

マミ「……!?」

ほむら「ぼーっとしてないで、次の銃を撃ちなさい」

氏を覚悟した私は、またしても暁美さんの時間停止に救われた。
不思議と恐怖は無くて、体が軽く感じたわね。

マミ「言われなくても、ちゃんとやるわよ!」

29: 2011/06/05(日) 00:57:18.03
マミ「今度こそ、食らいなさい!」

魔女「!?」

さやか「やった!」

マミ(倒した。結界が元に戻る……)

ほむら「…………」

まどか「みんな! 無事だったんだね。さやかちゃんも」

ほむら「まどか、あなたも」

マミ「途中で置き去りにしちゃったものね」

30: 2011/06/05(日) 00:59:28.52
さやか「いっやー、さっすがマミさん。私、ちょっと氏ぬかと思ったけど
大事な時にはちゃんと駆けつけてくれるんですよね。もう、感動しちゃった」

マミ「さやかさん……」

さやか「転校生、あんたにも一応感謝してあげる。ありがとね」

ほむら「結構よ。好きで助けたわけじゃないもの」

さやか「なにいい?」

マミ「やめて、美樹さん。全部彼女のおかげなのよ。
私は感謝される資格なんて無い。私のエゴで、もう少しで、あなたを失うところだった」

マミ「暁美さん、ごめんなさい。あなたの言うとおりね。
私、自分のために、鹿目さんも美樹さんも犠牲にするところだった」

さやか「マミさん……」

マミ「ごめんね。魔法少女体験コースも今日で終わりにしましょう。
あなた達を巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」

さやか「そんな! 私達まだマミさんの格好良いところ見たいです」

まどか「さやかちゃん、ダメだよ」

さやか「ええっ?」

31: 2011/06/05(日) 01:02:08.51
マミ「それで、その、暁美さん。お願いがあるんだけど……」

ほむら「何かしら」

マミ「あなたの言うとおり、私はパートナーが欲しかったの。もし良ければ、その」

ほむら「いいわ」

マミ「え」

ほむら「一緒に戦いたいんでしょ? おやすい御用よ」

マミ「本当に、これから私と一緒に戦ってくれるの?傍にいてくれるの?」

ほむら「言ったでしょ。他の魔法少女を頼ればいいって。それだけのことよ」

マミ「ありがとう……」

さやか「マミさん、私達も一緒ですよ。いざとなったらいつでも戦う用意は出来てますから」

まどか「さやかちゃん、それはダメだって」

32: 2011/06/05(日) 01:08:09.94

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さやか「そういえばそんな事もあったねー」

マミ「だからね、鹿目さん。どうか暁美さんのこと、信じてあげて」

まどか「うん……」

マミ「物言いは冷たくても、誰よりもあなたのことを心配してるの。わかるでしょ?」

ほむら「ちょっと、そんな言い方は」

まどか「……私、信じるよ。皆も、絶対勝つために、こうやって集まってるんだよね」

ほむら「そうよ。私達が力を合わせれば必ず倒せる。そのために作戦が必要なの」

35: 2011/06/05(日) 11:57:38.68
ほむら「確かにワルプルギスの夜は、桁違いに強力ね。
あいつが本気で攻撃を始めたら、私達四人でも無事では済まない」

さやか「そんな」

ほむら「事実よ」

マミ「でも、暁美さんには勝算があるのでしょう?」

ほむら「ええ。ワルプルギスは、常に人間を襲うわけじゃない。自然災害と同じこと。
あいつが災厄を振り撒く場所に、そこにたまたま人間がいるから、被害が出るだけ」

ほむら「つまり、ワルプルギスが目的のポイントに到着するまで、
それまであいつは何もしてこない。こちらから攻撃をしかけない限り、ね」

36: 2011/06/05(日) 12:08:49.72
杏子「でもよ、結局は攻撃しなきゃ倒せないだろ」

ほむら「そうね。だから、攻撃の仕方を考えなくてはダメよ。
あいつに反撃の暇を与えないように、私達の持てる限りの魔力を、全て、
一度のチャンスに叩き込むの」

ほむら「そのために、私達の攻撃位置・順序・タイミングまで、最大限効果的に威力を
発揮できるように、全て計画しておく必要があるわ」

さやか「ふーん。なるほどねぇ」

ほむら「異存はあるかしら? 良ければ次に進みたいのだけど」

ほむら「無いようね。それじゃ、まず攻撃開始の位置から――」

38: 2011/06/05(日) 12:19:44.60

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ほむら「こんな……こんな事って」

何度も同じ時間を繰り返し、その度にワルプルギスの夜と戦った私も、
ここまで充実した戦力であいつに挑むのは初めてのことだった。

ワルプルギス「アハハハハh」

ほむら「どうして、どうしてなの? 何度やっても、あいつに勝てない!」

杏子「オイ、しっかりしろ! まだ終わってねーじゃんかよ」

ただ頭数を揃えただけではない。綿密な計画通りに、持てる魔力の全て、火器の全てを
一瞬に注ぎ込んだ。この地上、この時間において、これ以上の攻撃力は存在しないと言い切れる
――まどかが魔法少女にならない限りは。

39: 2011/06/05(日) 12:30:16.43
これで倒せなければ、もう認めるしかない。まどか以外には倒せない存在だと。

ほむら「それじゃ……それじゃ私は、今まで何のために」

マミ「暁美さん、諦めないで! ここは一旦退きましょう。
魔力を回復しないと、私達も長くはもたないわ」

ほむら「…………」


さやか「きゃあっ!」

杏子「……しまった!」

40: 2011/06/05(日) 12:42:09.70
さやか「う……くっ」

杏子「さやか、あぶねえっ!」

杏子「!?」

杏子がとっさに防御壁を張ったけれど、
ワルプルギスの放った光線は杏子のソウルジェムを貫いてしまった――

さやか「杏子!? 杏子! そんな……」

さやか「う、ぐっ!? なに、これ、どうして?
……ア゛アアーーー!!」

マミ「美樹さん!? 嘘……」

魔力の消耗が著しかったさやかは、堰を切ったように魔女化。
一部始終を目撃したマミは呆然として、動きを止めている。
投擲されたビルには、気付いていない。

ほむら「マミ!」

マミ「あ……」

41: 2011/06/05(日) 12:54:51.45
~避難所前~

ほむら「ハァッ、ハァッ……」

ほむら(結局、逃げ延びたのは私一人。おしまいね)

ほむら(もう時間停止は使えない。私一人魔力を回復したところで、あいつを倒す手段は無い)

ほむら(また同じ時間を繰り返したとしても……)

まどか「ほむらちゃん!」

42: 2011/06/05(日) 13:07:28.69
ほむら「まどか? あなた、何故ここに」

まどか「ごめんね。私どうしても不安で。何か凄く嫌な感じがしたの。だから」

ほむら「まどか、お願い。私と一緒に逃げて」

まどか「えっ」

ほむら「もうすぐここにワルプルギスの夜が来る。もう誰にもあいつを止められない」

まどか「そんな! マミさん達は? まだ戦ってるの?」

ほむら「巴マミも、佐倉杏子も、ソウルジェムを砕かれて氏んだわ」

まどか「嘘……嘘よね?」

ほむら「美樹さやかも、魔女を生んで、消滅した……もうおしまいなの」

まどか「そんな……どうして? あんまりだよ。そんなのって、ないよ」

ほむら「まどか、逃げましょう。もう私には戦う術が無い。ここに居ても氏ぬだけよ」

まどか「ダメだよ! 避難所にはまだ沢山人がいるんだよ? パパもママも、タツヤも」

ほむら「まどか……」

QB「皆を守りたいのかい? まどか」

43: 2011/06/05(日) 13:20:05.66
ほむら「消えなさい、キュゥべえ。まどかは絶対に契約させない」

QB「それは変だよ、暁美ほむら。君達はもう契約するしかない。
まどかはここを見捨てて逃げるなんて、できない」

QB「かといって、このままここに残っても氏ぬしかない。
まどかが氏ぬのは君にとっても本望じゃないだろう?」

ほむら「…………」

ほむら(まどかが魔女になれば人類そのものが危うい。
でも、もし、やつを倒しても魔女にならずに済むなら……)

まどか「キュゥべえ。さやかちゃんが魔女になったって、本当なの」

QB「そうみたいだね」

まどか「じゃあ、あなたはみんなを魔女にするために、魔法少女に?
……私達を騙してたんだね」

QB「魂を差し出してまで、叶えたい望みがあったんだろう?
僕はきちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど」

まどか「あなたの言ってる事、ついていけない。全然納得できない」

44: 2011/06/05(日) 13:33:44.12
まどか「マミさんも、杏子ちゃんも、みんなあなたのせいで氏んだようなものじゃない」

QB「祈りから始まり、呪いで終わる。これまで数多の魔法少女達が繰り返してきたサイクルだ。
彼女達を裏切ったのは僕達でなく、むしろ自分自身の祈りだよ。
どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる。
やがてそこから災厄が生じるのは当然の節理だ。
そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも願い事なんてする事自体が間違いなのさ」

QB「でも、愚かとは言わないよ。そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、
今の君達の暮らしは成り立っているわけだし。
それを正しく認識するなら、どうして今更、たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」

まどか「バカ言わないで!」

まどか「ずっと皆を見守りながら、あなたは何も感じなかったの? 皆がどんなに辛かったか、
分かってあげようとしなかったの?」

QB「それが僕達に理解できたなら、わざわざこんな星まで来なくても済んだんだけどね」

まどか「……もういい。あなたが私達を騙して当然だと思ってるなら。
どんな希望も絶望で終わるのが当然だなんて言うのなら。
そんな馬鹿げた幻想、私がこの手で、ぶち壊してあげる」

45: 2011/06/05(日) 13:47:43.09
QB「?」

まどか「いいよ、契約してあげる。でもね、ただの契約じゃないよ」

ほむら「まどか……!」

QB「どういうことだい?」

まどか「私が魔法少女になる代わりに、キュゥべえ、あなたも私と契約するの」

まどか「もし私が出来なくても、あなた達インキュベーターが皆を救うのよ。
もうこんな悲しい事を繰り返さないで済むように、皆を助けてあげるの」

QB「僕に出来ることなら、何でもするよ、出来る範囲でね。
君が契約さえしてくれれば、それ以上何も言う事は無い」

まどか「約束だからね」

QB「おやすい御用さ。さあ、鹿目まどか。その魂を代価にして、君は何を願う?」

まどか「私は……」

まどか「私は、あなた達インキュベーターに、人と同じ感情を与えたい。全ての宇宙、過去と未来で、
あなた達は優しい心を持って魔法少女を助けるの。一つの例外も無く」

QB「その祈りは――」

まどか「さあ、叶えてよ。インキュベーター!」

46: 2011/06/05(日) 14:02:43.65
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

先生「はいっ。それじゃあ自己紹介いってみよう」

杏子「佐倉杏子だ。よろしくな」



まどか「杏子ちゃんが転校してくるなんて、びっくりしちゃった」

ほむら「どういう風の吹き回し?」

杏子「いやー、キュゥべえのやつがうるさくて、仕方なくね」

QB「学校に行くなんて、当たり前じゃないか。もう盗みや悪さはしないって、約束しただろう?
だから、これからはちゃんと将来の事も考えなくちゃね」

まどか「おおおー」

さやか「さすがキュゥべえ」

杏子「ったく、調子狂うよな、ホント……」

47: 2011/06/05(日) 14:17:04.81
さやか「それにしても同じクラスに来るなんてね~。これはもう決まりだ。前世の因果だわ。
あたし達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ」

杏子「バカ、クラスぐらいで何言ってんだ」

さやか「あんた、来たばっかりで学校の事わからないでしょ? あたし案内してあげるよ」

~放課後~

まどか「じゃあ、さやかちゃん。私たち先に帰るね」

さやか「オッケー。杏子の事は任せて」

杏子「だから、あたしは別に」

さやか「いいからいいから、部活見に行くんでしょ。沢山あるからサクサク回らないと」

杏子「オイ、さやか……ったく、しゃーねぇなあ」

まどか「行こう。ほむらちゃん」

ほむら「ええ」

48: 2011/06/05(日) 14:29:23.80
ほむら「たしかに、ちょっと調子狂うわね」

まどか「何が?」

ほむら「杏子たちは覚えてないようだけど、私とまどかは世界が改変される前の記憶が残ってる。
あの冷徹なインキュベーターを知っている者としては、今の姿はどこか、こう、薄ら寒いわね」

まどか「ええー、そんなことないよ」

QB「酷いよ、ほむら|||」

まどか「ほら、キュゥべえ落ち込んじゃったよ。ほむらちゃん、謝って」

ほむら「やめなさい、キュゥべえ。感情豊かなあなたを見てると、なんだかイライラするわ」

QB「ひどい……|||」

ほむら「言う事を聞きなさい。蜂の巣にされたいの?」

QB「ヒィッ!!」

まどか「ほむらちゃん、やめてあげてよ」

ほむら「…………」

49: 2011/06/05(日) 14:48:34.32
QB「でも、君達の言うように、世界が書き換えられてしまったのだとしても、
今の僕にそれを確かめる手段なんて無いわけだし」

ほむら「記憶を持ち越しているのは私だけじゃない。まどかも同じなのよ。
それでも夢扱いできるのかしら」

QB「それはそうだけど」

QB「まあ確かに、君達が魔女になる時のエネルギーはとてつもない規模だ。
それを収集しようとする考え方も分からなくはないけれど」

ほむら「けど?」

QB「そんな酷い事、僕達がするわけないじゃないか!」

ほむら「……はぁ」

QB「宇宙全体のためなら、少数を犠牲にしていいなんて、誰が決めたんだい?
そんなのまるで、神に唾吐く、鬼畜生の仕業じゃないか」

QB「だいたい、宇宙を改変するほどの力を持つまどかを、エネルギーほしさに契約させるなんて
馬鹿げてるよ。効率ばかり追求して、リスク管理を綺麗さっぱり忘れてる。
目先の欲に目が眩んだ証拠だね」

まどか「さすがキュゥべえ」パチパチ

ほむら「前の世界のあなた達に聞かせたいわね」

50: 2011/06/05(日) 15:01:33.07
~巴マミ宅~

マミ「あら、いらっしゃい」

まどか「お邪魔しまーす」

ほむら「お邪魔するわ。さやか達は後で来るから」

マミ「あらそう。ふふ、キュゥべえも相変わらずね」

QB「僕はもうずっと、まどかに付きっ切りだからね」

まどか「私としては、そろそろ契約させてくれると嬉しいんだけどなぁ」

QB「ダメだよ! それは絶対ダメだ」

ほむら「だったらまどかに付きまとうのはやめなさい」

QB「そういうわけにもいかないよ。もし、僕のいない隙に悪いインキュベーターが現われて
まどかと契約してしまったら、大変な事になるからね」

まどか「悪いインキュベーターなんて居るの?」

QB「僕が知る限り、いないね。でも万が一にも有っちゃいけない事だから」

マミ「インキュベーターが人に悪さをした話なんて、聞いたことないわ」

QB「当然さ。僕達は魔法少女のために存在するんだからね。
まどか、僕の目が黒いうちは絶対に君を契約させないよ」

まどか「ええー?」

51: 2011/06/05(日) 15:07:27.75
ほむら「それで、ワルプルギスの夜の事だけど」

マミ「ええ。だいたいの事は聞いてるわ」

QB「魔法少女が戦いで氏んだり、魔女になるなんて、滅多に無い事なんだけど、
この世界のどこかではそんな悲しい結末を迎える子がいるのも、事実だ」

QB「そういう子の魂を集めるのがワルプルギスの夜。悲しい魂が多ければ多いほど
力が強くなる魔女だけど、今なら君達が協力すれば、安全に撃退する事ができるよ」

まどか「QBがそう言ってくれると、なんだか安心感あるなぁ」

ほむら「……出現するのは二週間後で良いのよね?
場所を詳しく教えてくれるかしら」

QB「うん。僕の予想ではおそらく――」

52: 2011/06/05(日) 15:08:25.46

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ほむら「まどか、覚えてる? 以前ワルプルギスと戦おうとした時、
あなた全然安心してくれなくて。なだめるのに凄く苦労したのよ」

まどか「うん。えへへ……ごめんね。でも今度はきっと大丈夫。
魔女は怖いけど、みんなと仲良くなれて、私とっても嬉しいんだ」

ほむら「結局、私はあなたに守られっぱなしだったわね」

まどか「ええっ、そんなことないよ!
今だってほむらちゃんは、私や皆を守るために戦ってくれるんでしょ?」

ほむら「いいえ、私を守ってくれるのはいつもあなたよ、まどか。
あなたがいるから私は戦える。今までも、これからも」

QB「ほむら、そろそろワルプルギスが来る。他のみんなは持ち場についたよ」

ほむら「ええ。それじゃあ、行ってくるわね、まどか」

まどか「うん……あのね、ほむらちゃん」

ほむら「なに?」

まどか「がんばってね」

ほむら「フフ…………ええ、任せて」



FIN

53: 2011/06/05(日) 15:16:53.88
以上で終わります。初SSなので感想もらえると超嬉しいです。

以下あとがき。
見ての通り、まどかマギカのキャラを説教して改心させるのがコンセプトでした。
彼女らは大抵「ちょっとした心の問題」に引っ張られて、それを解消できないまま悲劇に陥るわけですが、
あの世界に上条さんがいれば、片っ端からそげぶして一件落着してくれたに違いない。
というわけでほむらさんに憑依していただきました。
終わってみればテンプレ通りにそげぶできたのは、さやかぐらいでしたが、あの辺が書いてて一番気持ちよかった。

54: 2011/06/05(日) 15:23:09.62
乙。
たしかに後半は上条さんどっかいってしまってたね

55: 2011/06/05(日) 15:24:33.17
マミさんの説教中、キャラ崩壊が発生してますが、そこまで悪者でもないマミさんが
半ば無理やり説教されるのを見かねて、神裂さんが憑依してしまったようです。スマソ

「説教パンチ食らわせたいキャラ」でアンケートとったら、QBがダントツ1位に輝くと思うんですが
こいつにテンプレそげぶを食らわせる野望は叶いませんでした。だって感情無いんだもん……無理ゲー。

他、若干の説教しそびれたキャラがいるのは悔いが残るところで
「原作準拠のほむら」と「当麻じゃないほうの上條」をそげぶしたら、さぞかし気持ち良かったでしょう。

とりあえず完走できて良かったです。最後まで読んでくれてありがとう。ではまた

56: 2011/06/05(日) 15:31:24.76
乙ー

引用元: ほむら「その幻想をぶち殺す」