1: 2012/11/13(火) 19:26:39.18
伊織「……暇ね」


私の名前は水瀬伊織
最近、デビューしたばかりの超大型新人アイドル!

なんて、見栄だけは立派に張っていたりする


伊織「はぁ……」


私はいま、水瀬グループのパーティに出席している
普段は参加しないけど、今日は私のデビューということでお披露目も兼ねているらしい

2: 2012/11/13(火) 19:27:10.10
伊織「……冷えるわよ、まったくもう」


辺りを見渡すもの、執事はいなかった
今日のパーティは屋外でしているから、少し寒い

私のお披露目と言うけれど、実際はグループの交流会みたいなもの
数多の人がお父様やお兄様を目当てに出席している

私に関しては誰も目を向けようとしない
ただ、デビューおめでとう、なんて挨拶がある程度


伊織「認めたくないけど、まだまだね……」


周りに誰もいない事を良いことに、小さく愚痴を零した

3: 2012/11/13(火) 19:27:42.30
私を中心として、いくつかの足跡があった
でも、そのほとんどは放射状に伸びていて、誰も私に関心を持たない

これだけ人がいるのに私は孤独だった


伊織「どうしようかしら、まったく」


別にこんなもの、どうでもいい
慣れっこよ


伊織「……つまらないわね」

???「へぇ、水無瀬のお嬢様がせっかくアイドルデビューした記念だというのに?」

伊織「だれ?」

4: 2012/11/13(火) 19:28:13.43
??「私のこと、忘れちゃったのかしら? 東豪寺麗華よ、魔王エンジェルのね」

伊織「……久しぶりね」

麗華「あら、それだけ? せっかく古い友人を訪ねにきたのにさ」

伊織「私より先にデビューしてたわよね。そんときは幸運エンジェルだっけ?」

麗華「さぁどうだったかしら」


こいつは東豪寺グループの会長にして1054プロダクションの社長
魔王エンジェルというユニットのリーダでありながらプロデューサーをしている

今、トップアイドルの座に君臨しようとしている唯一無二の女王、東豪寺 麗華

私は、今のこいつが大嫌い

5: 2012/11/13(火) 19:28:44.23
麗華「さっきまでオーディションだったのよ? 労ってくれてもいいじゃないのかしら」

伊織「はいはい、お疲れ様ね」

麗華「そんな程度なんだ。まぁいいけどね」

伊織「……勝ったの?」

麗華「……へ? ふふふ」



突然、麗華は笑い出した

6: 2012/11/13(火) 19:30:17.54
麗華「はーーはははは!! こ、この私に対して勝ったなんて聞くなんて、おもしろいわっ」

伊織「え?」

麗華「くくくっ、あー笑わせてもらったわ。ええ、楽勝よ。あの声がばかでかいチビが絶望してたわ」

伊織「……」

麗華「んー、やっぱり私たち魔王エンジェルは、色んな意味でトップに君臨しているわね」

伊織「……東豪寺グループ」

麗華「そういうこと。利用できるもんは何でも利用しないとね」

7: 2012/11/13(火) 19:32:26.57
伊織「……あんた」

麗華「何?」

伊織「なんでも無いわよ……」



裏で何かしたわね……



麗華「そう? でもまぁ伊織、デビューがかなり遅れたんじゃない?」

伊織「そうでもないわ。見てなさい、私の怒涛の進撃はこれからよ」

麗華「ふーん?」

伊織「私は実力であんたに勝つわ」

8: 2012/11/13(火) 19:36:50.84
麗華「へぇー! それは楽しみね! じゃあ待ってるわね、トップアイドルの座で!」

伊織「ええ待っていなさい。すぐにでも追いついてやるわ!」


これが私の遅すぎた始まり
古い友人との完全な決別

これから始まるたった独りの戦いだった

9: 2012/11/13(火) 19:42:25.49
そして気付けば、あのパーティから半年ほど経った

……私はオーディションに中々勝てなかった
ダンスでは転んで、唄では音程を外してしまう

周りのアイドルや審査員から苦笑や嘲笑をもらっていた


伊織「あ、あんたのせいよプロデューサー!!……というか、もういいんじゃないかしらアイドルなんて」


なんて、自分の失敗を誰かのせいにした
もちろんお門違いなんて分かっていた

こんな私だったから、ユニットなんて誰とも組もうと思わなかった

12: 2012/11/13(火) 19:49:10.08
P「でもなぁ伊織。お前ならきっとトップアイドルになれる!」

伊織「もう無理よ。私だって本気だけど、あれが限界なの!」

P「限界じゃないさ。でも……例え限界だとしても、アイドル続けたいだろ?」

伊織「……それは、その」


私の心はすっかり折れていた
ここまで上手くいかないなんて、思っていなかった


P「俺を伊織にアイドルを続けて欲しいと思っているぞ!」

伊織「ばかじゃないの?」

P「ははは」

13: 2012/11/13(火) 19:59:28.63
伊織「悔しいけど、私の限界はここよ」

P「限界なんて自分で決めるもんじゃないさ。それに伊織はもっと成長する、俺が保障する!」

伊織「なんの保障にもならないわよバカっ!」

P「そうかなぁ」

伊織「はぁ、なんでこんなのが伊織ちゃんのプロデュースをできるのかしら……」


こんなこと、言うつもりなんてない
でも言ってしまった

こいつだってがんばってるのに、知ってるじゃない私……

16: 2012/11/13(火) 20:08:29.73
P「なぁ、伊織はどうしてアイドルになりたかったんだ?」

伊織「……そんなの忘れたわよ」

P「それをもう一度、自分の胸に手を当てて自分に聞いてみてくれ」

伊織「そんなの意味無いわよ」

P「大丈夫だって! きっと答えが」

伊織「もういいわ、今日は帰ることにする。仕事もないものね」

P「お、おいっ……」


居た堪れない気持ちになった
だから私は逃げるように事務所を飛び出した

18: 2012/11/13(火) 20:14:48.81
考えたくなかった

どうして自分がアイドルを目指し始めたのか

そんなの、忘れたかった




麗華「こんにちわ! 魔王エンジェルでぇーす! 応援ありがとうございまぁーすぅ!」

伊織「えっ!?」


突然、麗華の声が聞こえた
うそ、近くにいるのかしら!?

19: 2012/11/13(火) 20:21:43.09
結論だけで言うと、麗華はいた
でもそれは、街頭のモニターの中のことだった


伊織「麗華……」


私は見上げていた
猫撫で声を上げて、ファンに媚びを売る彼女を見上げていた

どうやら、とあるオーディションの中継だったらしい
そのオーディションで麗華は選ばれていた



麗華『アイドルマスターグランプリを受賞することができましたぁー!』

麗華『ぐすん、ファンの皆さんのおかげですー!』



……とうとう登り詰めたのね、トップアイドルに

21: 2012/11/13(火) 20:32:01.01
麗華の存在が近いのに遠い
少しデビューが違うだけでこんなに差が出るものなの?

悔しい、認めたくない

彼女は画面の中でインタビューを受けていた



麗華『これからですかぁ? んーと、実は近々引退とか考えてたりします……』

麗華『普通の女の子に憧れちゃったりしてるんです……ごめんね?』



なによあれ、吐き気がするわ

伊織「……あれが、アイドル?」

24: 2012/11/13(火) 20:40:22.64
麗華『でもぉ、ある知り合いが私とアイドル勝負したいって言ってんですよー』

麗華『んー、次のアイドルマスターグランプリまでくらいは待とうかなぁって思ってます!』

麗華『それでですね! 引退するとき、私のとーっておきの秘密を言っちゃおうかなーって!』



ぞくりとした

麗華は言うつもりだ
自分がどんな手を使ってその地位に登り詰めたか、曝露するつもり?

そして私は試されている
私が勝たなければ、そのままアイドルという存在を地の底まで落とすつもりなのね

26: 2012/11/13(火) 20:48:03.17
……まさか、そんな

……わかった、いいわよ、やってやろうじゃないのよっ!!

ここまで試されて、逃げるような私じゃないわっ!!



伊織「待ってなさい麗華、あんたなんか泣かしてやるんだからっ」


小さなつぶやきと、大きな決意
私は、家に向けていた足を事務所へと向けた

28: 2012/11/13(火) 20:53:03.84
それからも、私は誰ともユニットを組まず
誰にも助けを求めず

独りで戦ってきた



伊織「……プロデューサー、次のオーディションは?」

P「あるにはあるが、そろそろ休んだらどうだ?」

伊織「お願いよ」

P「……ったく。わかった。次は――」



東豪寺麗華
彼女が何をしようとしているか、そんなの分かりきっていた

だからこそ、事務所の仲間たちに被害が被らないようにする必要があった

30: 2012/11/13(火) 21:01:20.49
私が選んだたった一つの方法は、あまり関わらないようにすることだった

もちろん、皆は近寄ってくる
それを払い除けることが苦痛で仕方なかった

それでも私は麗華を打ち負かさなければならなかった



伊織「負けてられないのよ」

P「どういうことだ?」

伊織「あんたには関係ないけど、そういうことなの」

P「少しは俺を頼ってくれよ」

伊織「……ふんっ、じゃあ少しは頼られるようになりなさいよねっ!」


頼らないんじゃなくて、頼れないだけよバカ……

31: 2012/11/13(火) 21:08:04.61
それからやっとのことでオーデョションにも勝てるようになってきた
でも、勝利は私にとって優しいものではなかった


そしてある日、オーディションに勝ち、帰宅のために通路を歩いていたときのこと




     アイドルA「どうせ水瀬伊織は水瀬グループだから……ああいうの、ムカつく」




どこにいても、水瀬という名前はついて回った

ああそうか、そうなのか
でも関係なんてない、私は麗華に勝たなくちゃいけないもの

33: 2012/11/13(火) 21:13:48.02
ただ一つの目的は、東豪寺麗華を打ち負かすこと
それもあと3ヶ月以内にだった

何故なら、次のアイドルマスターグランプは東豪寺グループによって設定されていた



P「伊織、どうして事務所の皆と交流しないんだ?」

伊織「まぁ、色んな理由があるわよ」

P「みんな、寂しがっているぞ?」

伊織「それこそまさかね」

P「しかしだな、やよいや春香達が」

伊織「……私は独りでじゃないと、本領発揮できないのよ。それくらい分かりなさいよねっ!?」



私は皆を守りたいのだろうか
それとも……信じられなくなってきているのだろうか……

36: 2012/11/13(火) 21:21:19.61
私はがむしゃらだった

ときどき思い出しそうになることを必氏で忘れようとした

私を守るものなんて何もなかった



伊織「やっほー! みんな、こんにちわー! スーパーアイドル、水瀬伊織ちゃんです!」



ライブも精力的に行ってきた
麗華に私が見えるように
私が少しずつあなたに近づいているとアピールするように

ちょっとでも、アイドルマスターグランプリの出場権を手に入れられるようにと

39: 2012/11/13(火) 21:27:14.27
???「見た目は子供!」

40: 2012/11/13(火) 21:27:44.92
私は精力的に活動した

移動中すらも歌詞を覚えたり、ダンスのイメージトレーニングをした
就寝ぎりぎりまで自分の映像を見たり、他のアイドルを研究したりした


伊織「日高舞……。伝説のアイドル。今でも時々テレビで見かけるわね」


伊織「音無小鳥……。まさかあの事務員までアイドルだったなんて……」


一世代前のアイドルすらも研究した

ただひたすら、頑張り続けた

43: 2012/11/13(火) 21:32:58.53
そして、ついに私はアイドルマスターグランプリに手を掛ける

このオーディションにさえ合格すれば、出場できる
そんな重要なオーディションだった



伊織「みんな、私を合格させなさいよねーっ! にひひっ!」



精一杯だった

45: 2012/11/13(火) 21:37:31.57
このオーディションだけは、と必氏になった



伊織「さぁもっと盛り上がってねー! どんどん行っちゃうわよー!!」



明らかに自分の許容範囲を超えていた
唄いながら意識を失いそうになったのなんて初めてだった

そして、今までに無いくらいの盛り上がりを見せた

私は勝利を確信した

46: 2012/11/13(火) 21:41:42.23
伊織「……うそでしょ?」







――結果だけを簡単に言うわ

私は、負けた

相手はレッドショルダー、1054プロダクションのユニット

49: 2012/11/13(火) 21:51:43.67
―――――――
――――
――



私は部屋に引きこもっていた

あれが最後のチャンスだった

もうどうしようもない



伊織「……ああっ、あ……」


悔しくて仕方なかった



うさぎのぬいぐるみを抱えて、嗚咽が零れないようにしていた

50: 2012/11/13(火) 21:58:51.43
伊織「……もういい」


私の心はもう氏んだ

独りでやってきて、頼れる人もいなくて
でもそうしたのは全て私の選択だった



伊織「……くやしい、くやしいわよっ」



誰もいない部屋で、私は叫んだ
叫ばすにはいられなかった

51: 2012/11/13(火) 22:04:40.41
伊織「なんでよっ!! おかしいでしょ、どうしてよ!!」


もう涙は止まらなかった



伊織「わ、私が目指したアイドルは、わたしがっ、わたっ……ああもう!!」



そうだ、私が目指したアイドル
私がなりたかったアイドル

それは偶像なんかじゃない! 嘘や偽りなんかじゃない!

52: 2012/11/13(火) 22:11:15.72
765プロのみんなや
他のプロダクションのアイドルたち

みんな、必氏に自分を輝かせて、夢や希望をふりまいている

あんな麗華みたいな、嘘と偽りでファンを手駒にするなんて絶対に違う


伊織「私は、私の実力で、麗華も、お父様もお兄様も見返してやるんだから!」

伊織「私は、水瀬伊織は、ここにいるって思い知らせてやるんだからっ!」

54: 2012/11/13(火) 22:15:44.51
もう忘れたふりは止めよう
私がアイドルになりたい本当の理由、それをしっかりと決意しよう

そのことを忘れて、ただがむしゃらに頑張って

私はアイドルとしての自分が大好き



伊織「ぜったい、ぜったいに負けない!」



私は震える手で携帯を取り出して、震える声であいつに電話をかけた

55: 2012/11/13(火) 22:16:18.66
伊織「プロデューサー、私、どうしてもアイドルマスターグランプリに出場したい!」

伊織「というか、このスーパーアイドル伊織ちゃんが出場しないなんておかしわよっ!!」



P『……そうか。ところで伊織、お前、まだアイドルを続けたいか?』



伊織「当然でしょ! もう大丈夫よ、心配かけたわね」



P『よしっ! じゃあ、いくか!』

61: 2012/11/13(火) 22:52:31.65
http://iup.2ch-library.com/i/i0784825-1352814705.jpg
――
――――
――――――――
「さぁ、アイドルマスターグランプリも大詰め!」
「次に出演していただくのは、前回グランプリの覇者! 魔王エンジェルー!!」



ともみ「ねぇ、これでいいの?」

麗華「構わないわ。私たちは、このトップアイドルっていう最果てから絶望を与える魔王だもの」

ともみ「……そう」

麗華「アイドルなんて、金と権力でどうにでもなる。簡単な仕事だったわ」

りん「出番だよ」

麗華「ええ、わかってるわ」



「と、その前になんと今回は特別審査員枠として出場するアイドルがいるぞー!」



麗華「え?」

63: 2012/11/13(火) 23:01:10.65
「日高舞が選んだアイドルだーーー!!」
「じゃあ頑張ってね、水瀬さん」






麗華「なによこれ? まさかっ!」

ともみ「どういうことかしら」

麗華「……おそらく日高舞の影響力よ。最後にやってくれたわね」

りん「……?」

麗華「……因果応報って奴かしら。でも、審査員のほとんどは東豪寺よ? どうするつもりかしら」

64: 2012/11/13(火) 23:06:35.94
そこに煌くステージがある

司会者が私の名前を読み上げる


水瀬伊織


水瀬家でもない、アイドルとしての


泣きそうになる
それでも、私のための合図だけは見逃さないようにただ耳を澄まして、目を凝らす

65: 2012/11/13(火) 23:10:57.04
伊織(……やっとここまで来た)

伊織(でも、今はもう勝ち負けなんてどうでもいいわ)

伊織(私はこのライブを精一杯唄い抜いてみせるだけっ!)

伊織(さぁ、煌くステージへ!)



伊織「みんなぁーーー!! 水瀬伊織ちゃんよーーーーー!!」

伊織「それじゃあさっそく聞いてください、DIAMONDです!!」




伊織(私はここにいる、ここで輝いているの)

66: 2012/11/13(火) 23:16:22.67
私は私だから、水瀬じゃなくて伊織だから

誰にも選ばれなくても、見てもらえなくても、一人ぼっちでも

私だけは私を選んであげたい

私という原石を私だけは見てあげたい

私は色んな私といっしょにいるんだもの




伊織「Shien 輝く為に生まれた」

67: 2012/11/13(火) 23:18:26.82
私の夢

そんな大きいものじゃないわ
ただ、輝く私を見て欲しいだけ

その夢が、叶うかどうかなんて悩む必要はない

叶えるまで頑張るだけだもの



伊織「この身体が抱きしめる ONLY1」






ワーワーワーワーワー
ワーワーワーワーワーワー
パチパチパチパチ

69: 2012/11/13(火) 23:24:05.71
アンコールアンコール
アンコールアンコール



麗華「何よこれ……」

りん「オーディションにアンコールなんてあるわけないじゃん」

ともみ「でも」




伊織「にひひっ! ありがとー!! じゃあ続けて!」

71: 2012/11/13(火) 23:31:14.17
麗華「……誰も彼女を止めないわね」

りん「止められないよ。止めたら、それこそこのオーディションのイメージダウンだもん」

麗華「そうね」

ともみ「見て、他のアイドル達もいっしょに出てきた」

麗華「……ええ」




伊織「さぁー! どんどんいくわよーっ!! にひひっ!」

73: 2012/11/13(火) 23:39:01.46
――――

――――

――――



麗華「見事ね」

伊織「あら、久しぶりじゃない麗華」

麗華「アイドルマスターグランプリは、前例を見ない終わり方をしたわ」

麗華「それも、オーディションだと言うのにまるでライブのように」

麗華「しかも勝敗もなく終わった」

麗華「……あんたがしたかったのは、こんなこと?」

伊織「……そうね、遠からず近からずよ」

74: 2012/11/13(火) 23:44:01.59
麗華「それにしてもまさか、日高舞を後ろ盾にするなんて思わなかったわ」

伊織「そんなくだらない事してないわよ。私はただ、番組ディレクターに私を選んで、とお願いしただけよ」

麗華「まさか」

伊織「本当よ。そこにたまたまいた日高舞が私を押してくれただけ」

伊織「どうせあんた、日高舞に喧嘩売る真似でもしたんじゃないの?」

麗華「否定はしないわ。彼女の娘をこてんぱんにしたもの」

伊織「それが原因?」

麗華「でもまぁ違うと思う。日高舞はそんなことで怒るたまじゃないもの」

75: 2012/11/13(火) 23:53:11.01
麗華「それで、最後のあれはなに?」

麗華「みんな仲良くお歌を歌っておわり? ふざけんじゃないわよ」

伊織「違うわよ。みんなが勝手に出てきただけよ」

麗華「それこそありえない。普通、オーディションでそんなことする訳ないじゃない」

伊織「……普通はね。でも、あの子たちは、ただファンを喜ばそうとしただけよ」

麗華「はぁ?」

伊織「そして、ファンを喜ばせられるのは自分だけと、皆が自分を選んできただけ」

麗華「なにそれ」

78: 2012/11/14(水) 00:02:32.98
伊織「あのときのファンのアンコールは、私だけじゃなくてアイドルみんなに向けられたものよ」

麗華「そんなはずないわ。アンコールってのはその人に向けられるものに決まってるじゃない」

伊織「……そうかもね。でも、私は、私たちはそう思ったからもう一度唄を唄っただけ」

麗華「……ばかみたい。」

麗華「ところで、あんたは晴れてトップアイドルという最果てに君臨した」

麗華「それも、誰もが暗黙に認める形でね?」

麗華「これからどうすんのよ」

79: 2012/11/14(水) 00:07:11.51
伊織「どうもしないわ。これまでと同じよ。それにここはアイドルの果てなんかじゃないわよ、なにそれ」

麗華「……ふーん。名誉と栄光を手に入れたのに?」

伊織「本当の名誉と栄光ってのはこんなんじゃないわ。まぁ、今のあんたには分かんないかもね」

麗華「……」

伊織「にひひっ! まっ、次は私があんたを待っててあげる!」

麗華「……はっ! いいわ、次こそは私が、私たち魔王エンジェルがあんたをぶっつぶしてやる」

伊織「ええ、待ってるわ。トップアイドルの座でね」

80: 2012/11/14(水) 00:09:31.62
私の戦いはこうして終わった

ううん、本当に終わったかどうかなんてわからない

でも、私はこれでよかったと思ってる


夢だってまだ続きの中だもの


私はもっと速く飛び続ける、それこそ光よりも速く
たったひとつの栄光を手に入れるまで



終わり

81: 2012/11/14(水) 00:10:02.32
こんなんでも見てくれた人がいるならありがとうです
でわー

82: 2012/11/14(水) 00:10:24.02
おついおりん

引用元: 伊織「たったひとつの」