816: 05/02/05 05:38:49 ID:???
「・・・いきなり、何?アスカ」
2月の午後3時過ぎ、おやつの時間にアスカは仁王立ちに握りこぶしで叫ぶ。
また何か思いついたんだろう、どうせ僕にとってろくな事じゃないんだ・・・とシンジは思う、
数ヶ月の付き合いだがこういう時はどうなるか彼はもう身にしみて分かっていた。
「乙女のステイタスとしてお菓子作りは欠かせないんじゃないかって思ったのよ!ノリが悪いわねえ・・」
「ふーん・・・」
シンジはプリンをつつきながら答えた、かぼちゃの選定から力を入れたパンプキンプリンだ
自信作と言っていい、これなら我侭お姫様もご満悦だろう、その証拠に姫の容器は空だ、よしよし
「だぁあー!もう!ちゃんと話しを聞きなさい!!」
「あっ!僕のプリン!!」
アスカはシンジのプリンを奪い取ると口に流し込んだ、所要時間1秒足らず。
「おんhdなむgsこにとくぁwせdrftgyふじこ!」
「・・・え?」
「女の子はやっぱりお菓子がつくれないとね!」
「・・ああ、うん、そうだね」
いやな予感がする、だからシンジはわざとそっけない返事をした。こうすれば『何よ、つまんない奴・・』
といった風に嵐が通り過ぎて行くかもしれないからだ、しかし現実は甘くない
「・・やっぱり、シンジもそう思うの?」
「あ、いや、一般的にそうかなあ、と思って」
「じゃあシンジはどう思う?」
「んー、よく分かんないけど、別に良いんじゃない?」
「ふーん、へー、ほー・・・・」
アスカは納得したのか何なのかよく分からない表情でうなずいている、シンジはさらにいやな予感を強めた
「えと・・・アスカ?」
「よし、それじゃあシンジ!あたしのチョコ作りを手伝いなさい!!」
新世紀エヴァンゲリオン 惣流・アスカ・ラングレー ~ゴスロリver.~:RE 1/7スケール PVC製 塗装済み完成品フィギュア

817: 05/02/05 05:40:49 ID:???
「・・・えーと、なんでそうなるの?」
「拒否権は認められてません!」
「いやだから、なんでそうなるのかなあ、って」
もう結構長い付き合いになるが、シンジはいまだにアスカのこういう突飛な発想について行けてなかった。
この辺りが彼女の言う天才と凡才の違いだろうか、ある種の尊敬すらシンジは感じていた。
「わかんないの?やっぱあんたバカねえ」
「いや、普通わかんないと思うよ・・・?」
アスカはやれやれ、といったふうに首を振る。シンジは怒ろうともしない、今は話を聞こう
「いーい?女の子としてはお菓子は作れたほうがいいでしょ?」
「あー・・・うん」
「可愛い娘から手作りのお菓子をもらったら感激するでしょ?」
「うん、そうだね」
どうもアスカは手作りのお菓子を作りたいらしい、でも何故チョコレートなんだろう?シンジは分からなかった
「まだ分かんないの?今は何月?」
「2月だね」
「2月っていったらどんなイベントがあるかしら!?」
「えーっと・・・ああ!!」
「やっと分かったみたいね・・そう!バレンタインデーよ!!」
ようやく合点がいった、つまりアスカはバレンタインデーに手作りのチョコを誰かに渡したいんだ。
「じゃあアスカ、バレンタインはチョコ手作りでいくんだね?」

・・・・・・・・でも、誰に?

818: 05/02/05 05:42:03 ID:???

・・・誰だろう、僕・・な訳ないよな、じゃあ、やっぱり・・・

「だ、誰に渡すの?」

・・・せめて隠してくれれば、少し期待できるけど・・・

「そんなの加持さんに決まってるじゃ~ん!おいしいチョコ、作ってあげないと!!」

・・ああ、やっぱりいやな予感は当たるもんなんだ、現実は甘くないなあ。


820: 05/02/05 05:45:47 ID:???
そういわれて正直シンジはむっとした、何で僕が自分の好きな娘が他の男に送るための
チョコを作るのを手伝わなけれならないのか、この想いは自分のものだけと分かっているが
やるせない気持ちになってしまう。
「・・・そういうのは、全部自分でやるから意味があるんじゃないかな・・・」
だから、シンジは気持ちを頃して言葉を紡いだ、
ここで表情に出せばきっと彼女は同情的な気持ちになって義理チョコを渡す、とか言うだろう。
そんなのは、いらない。みじめになるだけだから。
だから、今の僕はアスカに興味なんて、無い。シンジはそう思い込むことにした。
「だって、そうしたら絶対失敗するんだもん。調理実習覚えてるでしょ?」
「あー・・でもさあ・・」
「そりゃあたしだって最初っから最後まで自分でやりたいわよ?気持ちの入り方が違うもん。
本当に好きな人には一から全部自分で作ったチョコを渡したいの。でも、今のあたしじゃ無理
だから、手伝ってほしいの・・・」
アスカは少し落ち込んだ様子で話す、それだけ、それだけ真剣なのだ、彼女のこの想いは。
そんなアスカを突き放せるほど、シンジは冷酷な人間ではなかった。甘い、というべきか。
(まったく・・・加持さんの事となるとこんなに真剣なんだから、その顔には勝てないよ)
「分かった・・・いいよ、おいしいチョコ頑張って作ろう」
「ほんと!?ありがとうシンジ!!」
パッと、まるでつぼみだった花が急に咲いたように彼女は笑った。その笑顔はとても綺麗で、とても眩しくて
シンジは、目をそらした。

821: 05/02/05 05:46:45 ID:???
シンジの両手には大きなポリ袋がぶら下がっている。明らかに多い。
「ねえアスカあ、絶対買いすぎだってこれ」
シンジもわかっていたようで、不満を口に出す。
「うっさいわねー、失敗するのを見越して買ったの!あたしの計算に狂いはなぁい!」
「そうですか・・・」
買い物の行き帰りで作業の分担について話し合った結果
だいたい90%の工程をシンジが担当することになった、それでも失敗を見越しているらしい
悔しいから一回で完璧なものを作り上げて、残りは今後のお菓子作りに回そう。
シンジはそんなネガティブな決意をしていた。

手作りチョコを作るうえで決して欠かせない工程が、物によるがチョコを溶かすことである。
「へー、チョコってそうやって溶かすんだー」
無邪気につぶやくアスカを横目に、シンジは手伝ってよかった、と思った。
下手したら加持さんは病院送りだったかもしれない、これは言いすぎだとしても確実に
体に悪い物ができていただろう。
「ねえシンジ、やっぱり加持さんには大人の味にしたほうが良いと思うのよ」
そう言ってアスカはシンジから離れていった、きっと何かを入れるつもりだろう
「これなんかどうかしら?」
アスカが持ってきたのはブランデーだった、ミサトがちびちびと飲んでいるやつだ
「それ、確か加持さんが好きだって言ってたお酒だ、良いかもね」
「でしょ?やっぱあたしって着眼点とか、違うわねえ~」
もはやシンジは、良いチョコを作るためのこの時間のことしか考えないことにした。
そうすれば、今二人でいる時間を少しだけ幸せなものにできるから。
「それじゃあちょっと入れてみようか」

823: 05/02/05 05:49:21 ID:???
指だと気付いた時にはもうすでに舌は動いていた、思考が、灼熱する
「やん、くすぐったい・・・」
舐める、チョコを舐め取る、おいしい、おいしい!おいしい!!
でもチョコはすぐ無くなり、ちゅる・・・と音をたて指は離れていった。
光にさらされた指は妖しく光っている、明らかに、舐めすぎてしまった。
「どうだった、シンジ・・・?」
「え・・・?」
質問の意味がよく理解できない、何が?何がどうだったのか?
「チョコの味よ!あ・じ!」
ああ、そうか、そういうことか、だったら・・・
「すごく、おいしいよ、あすか・・・」
「やっぱりね!あたしってやっぱ天才かなぁ~」

うん、天才だよアスカ、こんな甘くておいしいチョコ作れるんだから・・・


そして結局一回失敗して、加持さんへのチョコは完成した。
「これなら加持さんのハートもいただきね!」
苦労(主に僕が)して作ったかいがあって、会心の出来だ。
「あ~、疲れた、肩こっちゃったよ・・」
これが加持さんの物になると考えると、ちょっと苦しいけど、今のアスカの笑顔が
見れただけでも良かったかもしれない。
「な~にじじ臭いこと言ってんのよ!」
そしてまた笑う、きっと僕も笑ってるだろう、君と出会えてから毎日がこんなに楽しい
楽しい世界を与えてくれた君、その君の笑顔をもっと見たい。出来れば僕だけに見せて欲しい
でもそれは出来ない、だから頑張ろう。
無理かもしれないけど、頑張って加持さんよりいい男になろう、強くなろう
同じエヴァパイロットなんだ、チャンスはある、だから頑張ろう
アスカが振り向いてくれるまで。

824: 05/02/05 05:50:44 ID:???

2月14日

            (略)
あと、今日アスカからチョコをもらった、質素な包装で義理かな?
と思って中を見たらどう見ても手作りの不恰好なチョコがごろごろ
していた、味も見た目どうりで、なんだかちょっと苦かった。
メッセージカードが入っていて、こんな事が書いてあった。

『バカシンジへ!これはあたしが腕によりをかけて一人で作った
チョコレートよ!結構がんばったんだから味わってたべること!
残したら、ぶっころすわよ!!』

残すわけないのにね。

827: 05/02/05 05:55:59 ID:???
フライング話題でごめんなさい、海より深くごめんなさい。
それでも修行を積みたいので、よろしければご指導ご鞭撻のほうお願いします

引用元: 落ち着いてLAS小説を投下するスレ 2