892: 05/02/08 18:49:42 

『いい加減そこをどきなさいよ!』


病院内に響き渡る若い女性の元気な大声。
発声主は赤茶の長い髪に透き通るようなブルーの瞳。
今年で16歳になろうとするその女性はモデルのように美しく、
また周りの空気を活発なものへと変える魅力的な雰囲気を纏っていた。

ここは第3新東京市の国際病院。
先のサードインパクトの後に被災者を収容するために設けられた、
リハビリセンターを兼ね備えている病院である。

入院患者数はここ1年ほどで随分と減っていた。
サードインパクトは地表を削り、建物を吹き飛ばしていたが
何故か怪我人は少なかったのだ。

患者の多くは精神的な部分を患い、短期間で退院していった。
問診を受ける人々に共通していたのは、ちょっとした記憶障害。
サードインパクト前後の記憶が曖昧なのだ。



894: 05/02/08 18:50:24 ID:???
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あの日、気付けば荒れ果てた第3新東京市で“殆ど無傷のまま”人々は倒れていた。
そして家族を探し、家を探し、記憶を辿り、少し落ち着いてから病院を探した。
全ての、或いは一部の原因を知るネルフと呼ばれた組織の者たちは、
日本政府と国連に被災者への支援を要求。
再度の情報操作に踊らされた日本政府と国連は、莫大な予算と人的資源を用いて
第3新東京市の復興を支援した。その一部がこの病院である。

現在の第3新東京市は、仮設マンションと広すぎる第1から第6まである公園が土地の殆どを占めていた。
1年前の荒れ果てた状態から、今では学校施設まで稼働中である。

第3新東京市復興に最も貢献したのが“ネルフの大人たち”。
彼らにも多少の記憶障害はあったものの、赤い海で顔半分だけ残っていた巨人が
“あの少女”であった事から、何が起きたのかを想像するのはそう難しくはなかったのだ。
>>

碇ゲンドウはすぐさま国連と日本政府に連絡を入れ、戦自と休戦(後に和解)、
補完計画とゼーレという組織の説明、第3新東京市の復興要請、職員が混乱するのも
許さないようなスピードで指示を出し、尽力した。
補完計画の内容は見事なまでの隠蔽工作と情報操作であったが。

今でもネルフは健在である。
人類を破滅から救ったという名目、サードインパクトの解析という大義名分のもと。

葛城ミサト、赤城リツコ、加持リョウジの3名はゲンドウと冬月に呼ばれ、
丸3日間の会議の後に再び力を貸す事を決めた。
(会議の最中に約1名の罵声や怒号が飛び交っていたというのは
 ネルフ職員達の間で噂になっていたが)
会議の後で化粧が剥げ落ちたミサトと、その美貌に一縷の隙も無いリツコから
話を聞いた伊吹、日向、青葉の3人もまた、ネルフの新しい役割に力を貸す事を決めた。
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895: 05/02/08 18:51:15 ID:???
「何故、どかなければいけないの?」
水色の髪の少女は表情一つ変えずに聞き返す。

『アンタが居るとシンジのお見舞いが出来ないじゃない!』
青い瞳の少女は眉を吊り上げながら再び怒鳴る。

「大きな声出さないで、碇くんが起きちゃう」
『起こそうとしてんのよ!シンジからアンタにどけって言ってもらうのよ!』
701病室、三度入り口から少女が怒鳴る。

「なに?よく聞こえない」
同じく701病室、室内にあるベッドの横にちょこんと置かれた椅子から少女が聞き返す。
ざわざわと廊下が慌しくなり、室内へと怒鳴る少女に院内の人々は目を見張る。

『嘘おっしゃい!さっきまで聞こえてたじゃない!
 なんで都合の悪い事だけ聞こえなくなんのよ!』

「音を、遮断してるから」

『だから遮断すんなっつーのよ!私を中に入れなさいよ!』

「入ってくれば、良いのに」

897: 05/02/08 18:51:57 ID:???
そうだよ、入ればいいのに、そう思う者は見物人の中に居なかった。
やれやれまたか、といった感じで廊下には溜息と苦笑が溢れていく。
つまりこの2人の少女は、入院患者にとっては顔馴染み、そして喧嘩する光景すら馴染みのあるものなのだ。
喧嘩の場所となる701病室の入り口には“いつものように”半透明なオレンジ色の壁らしきものがある。

『入れたら怒鳴ってないわよ!なんなのよこの壁は!』

「A.T.フィールド、何人にも侵されざる聖なる領域」

『アンタ分かってて言ってんでしょ!それを無くせって言ってんのよ!』

「なに?よく聞こえない」

『・・・・・・・こ・・・のっ・・・・・・・・・・!!!』

いつの間にか廊下の見物人は居なくなっていた。
これから始まる赤髪鬼の暴走に巻き込まれたくないからだ。

廊下にある長いベンチ、消火器、果ては公衆電話まで凶器と化して
701病室に投げ込まれていく。その度に弾き返されながら。

もはや青い瞳は焦点を失い、赤い髪は重力を失ったように天井付近で踊っている。
美しく整った顔は狂気と歓喜に満ちた表情で見る影も無い。
しっとりとした唇からは声にならない声で殺戮を意味する言葉が紡ぎ出されている。

899: 05/02/08 18:52:44 ID:???
一通り投げ終わり(全て弾き返されているが)、疲れたのか少女は肩で息をしながら
再び室内を覗き込む。
と、そこには先程と全く変わらぬ、いや何か嬉しそうにも見える表情で
赤い瞳の少女がお茶を啜っている。
大きく息を吐きながら青い瞳で覗き込む少女を一瞥して、ゆっくりと口を開く。

「静かにして、碇くんが起きちゃう」

------ブチッ!

何かが切れた音、それと同時に青い瞳の鬼は持っていた学生鞄に手を入れると
スライド式の拳銃を取り出し、何の躊躇いも無く701病室に向けて指先に力を込める。

その刹那、少女の手の中から拳銃が消える。

--『加持さん!』

「アスカ、何があったか分からないが病院内で発砲はマズイんじゃないか?」

加持はアスカがトリガーを引く寸前に銃を奪っていた。
もう一方の手には腰を抱えられながらアスカを睨みつける黒髪の鬼が居た。

900: 05/02/08 18:53:36 ID:???
「離して加持くん!私がしようとしてる事は体罰じゃないわ!昇華よ!」
「・・・やれやれ、アスカ、もし撃っていたら今頃別の病室に入院してるトコだぞ」

加持の腕の中で必氏にもがくミサトの顔にいつもの子供っぽさは微塵も無く、
桃太郎さえも食い頃すかのような怒りが満ちていた。
だが青い瞳の少女はその鬼に目を向ける事無く、加持を見上げて

『だって!ファーストがシンジのお見舞いの邪魔をするんだもの!』

「なんだ、また喧嘩してたのか。まぁ廊下の荒れ具合を見れば想像は付く、、
 が、話せば分かってくれるさ、レイにとって今やシンジくんは大事な家族だ。
 不安なのさ、アスカに取られちゃうんじゃないか、ってね。」

「そうよアスカ、肺炎なんて2週間も入院しないのよ?
 ちょーっと我慢してればシンジくんは家に帰ってくるのよ?
 お見舞い出来ないぐらいで護身用の銃を怒りに任せて使用するのはダメよ!
 ここは一般の人達も居るし、何よりシンジくんやレイに当たったらどうすんのよ」
加持の腕から解放されたミサトが豊満なバストを前に突き出して、
腰に手を当てながらアスカを睨みつける。

902: 05/02/08 18:54:24 ID:???
『・・・・・・・的は外さないわよ』(ボソっと

「なんか言ったぁぁぁあぁ?」

『なんでもないわよ!それよりミサトや加持さんからファーストに言ってやってよ!
 あの子、生身でA.T.フィールド使えるからって病室に入れてくれないのよ!』

廊下を片付けながら加持が701病室を覗く。
そこには静かな寝息をたててベッドに横たわる少年を、椅子に座って
じっと見つめる水色の髪の妖精が居た。

「よっ、毎日大変だな、レイ」

加持が声を掛けると、レイはゆっくりと視線を廊下に送る。
そして少し顔を赤らめると目を逸らして俯く。

「ほらアスカ、こんなに可愛い子だ。アスカが怖い顔してたからフィールドを使ったんじゃないのかい?」

少し笑いながら加持がアスカの方を見る。
そして自分に向けられたアスカの殺気に固まり、目だけでミサトに助けを求める。

903: 05/02/08 18:55:09 ID:???
「レイ、シンちゃんの具合はどーぉ?今日はずっと寝てるの?」
ミサトが慌てて入り口から室内へと語りかける。

「弐号機パイロットを早く追い返してくれって、、」
ほんの少し口の端が上がったようにも見えた。。

--スチャッ

ミサトのジャケットの内側から引き抜かれる拳銃、ほぼ同時にその手首を掴む加持。

「アスカ!今本気で撃つ気だったろ!」
「ア~ス~カ~!!」

『違う!違うの!ファーストだけよ!標的は!』

--パコーーン

ミサトの拳がアスカの頭部を引っ叩いてから2分後、3人は“半透明な壁”の無くなった病室へと入った。

904: 05/02/08 18:55:55 ID:???
「アスカ、今日も来てくれたんだ!ミサトさんも加持さんも、忙しいのにわざわざすいません」
3人が病室に入ってスグに目を覚ましたシンジは嬉しそうに微笑む。

風邪をこじらせても家事をして、大丈夫だと言い続けたシンジは
38度の熱を出してから1週間後に肺炎に至り、入院していた。

「でも、元気になってきて良かったわ。この前より随分顔色良いみたいだしぃ」

「葛城もな。シンジくんが入院した時はこの世の終わりみたいな顔で泣いてたから、
 シンジくんが元気になるって事は、みんなの顔色も良くなるって事かな」

「ちょーっとぉ、泣いてないわよ。なんで肺炎で泣かなきゃいけないのよぉ」
顔を赤らめながらミサトが弁解する。

『シンジ!ファーストになんか言ってやってよ!アタシを病室に入れないのよ?
 お見舞いさせないつもりなのよ?アンタそれで良いの!?』

「何?碇くん。そう、、私もよく聞こえないの」

『アンタに言ってないのよ!シンジも何も言ってないじゃない!
 勝手に代弁しないでよ!』

905: 05/02/08 18:56:41 ID:???
「碇くんの心は分かるわ。だって、溶け合ったもの」

『アタシも一緒に溶け合ったじゃない!アンタあの時はちょっと優しかったのに
 なんで今はアタシを敵視してんのよ!』

「あの時の事は、よく覚えてないもの」

『じゃーなんでシンジの心は分かるのよ!』

「ちょっとどいて、トイレ」

--キラッ!

アスカがベッドの横に置いてある果物ナイフを手に取るより一瞬早く、
ミサトがナイフを取り上げてアスカの額に切っ先を当てる。

「アスカ~、アンタは口喧嘩に凶器を持ち込むなっつーのよ」

906: 05/02/08 18:57:25 ID:???
レイは静かに立ち上がると、入り口へと歩いていく。
アスカが恨めしそうに目をやると、レイは立ち止まり、少しだけ横を向く。
口の端がほんの少し吊り上る。今度はハッキリと。

『上等!!』
「アスカッ」
いざ立ち上がろうとするアスカの肩をミサトが掴んで止める。
シンジと加持は笑いを堪えながら視線を下に落とし、苦しそうにしていた。


「さて、ちょっと飲み物でも買いに行こうか、葛城」
半べそをかいたアスカの頭を撫でながら加持が立ち上がる。

「そーねぇー。アスカ、2人っきりにしてあげるけど、私達よりレイが
 先に帰ってきても喧嘩しちゃダメよ!」
ミサトは叱りながらもからかった様な口調でアスカを撫でる。

「えっ、ミサトさん達、、その、、2人で行くんですか?」

「そーよぉ。2人の時間を少しでも作ってあげようとする、親心じゃなーい」

907: 05/02/08 18:58:08 ID:???
「・・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・』

アスカとシンジは顔を見合わせ、逸らし、赤くなり、下を向く。
その様子を見て優しく微笑みながら加持とミサトは病室を後にする。

少しの沈黙の後、シンジが口を開いた。

「あっ、あのさっ、レイが林檎を持ってきてくれたんだ。食べるでしょ、アスカ」
先程凶器になる寸前であった果物ナイフを手に取りシンジが林檎を剥こうとする。

『“レイ”、、ねぇ。ちょーっと前までは「綾波」だったのに、急に親しくなってない?』
林檎は否定せず、シンジの言葉尻を捕らえて睨む。

「だっ、だって、家族、、なんだから、もう、、「綾波」じゃないし」

909: 05/02/08 18:58:52 ID:???
サードインパクト後、復興が軌道に乗ってきて、幾らか落ち着いた頃にレイはひょっこり現れた。
無表情のまま、無言のまま、だけどどこか恥ずかしそうにネルフ本部へと入ってきたのだ。
服装は中学校の制服、身体に変化は見られなかった。
赤い海に顔半分だけ残っていたはずの彼女が現れた事に誰もが呆然とし、
かける言葉も無く、静まり返ったその中を、ゲンドウが駆け寄り、子供のように
泣きながら抱きしめる姿はその場に居合わせた全ての人間の心を虜にした。

--「すまなかった、すまなかった」

搾り出すように繰り返される言葉以外、そこに音は無かった。
レイは抱きしめられるまま立ち尽くしていたが、いつの間にか
目からは涙が流れていた。無表情のまま。
初めて見たゲンドウとレイの涙に、ネルフ職員の中には
泣き崩れる者もあった、「狂気の時は過ぎ去ったのだ」と。

レイは戸籍上ゲンドウの娘、シンジと“双子の兄妹”という肩書きになった。
穏やかな表情を覗かせるようになったゲンドウに“不可能”という言葉は無かったからである。

ゲンドウが“超”多忙であった為、レイはミサトと住む事になった。
アスカとシンジはレイを見た瞬間から10分ほど固まり、少しだけ泣いた。
(シンジは丸1日泣き続けていたが)

910: 05/02/08 18:59:40 ID:???
「気付いたらあそこに向かっていたの、その前は、分からない」

その言葉の真偽など誰も確かめようとは思わなかった。
もう良いのだ、大人達は守るべき未来、守るべき街、守るべき子供達を
これからも見続けていけるのだから。

シンジはレイが自分の双子の妹だと電話で父親から聞き、
「我々は家族だ」という言葉に涙し、力強く「絶対に守ってみせる」と言葉を返した。

一方、アスカは最初こそレイの帰還を素直に喜んでいたのだが、
レイがなにかとシンジと一緒に居たがるのを見て、腹の中は煮えていくものがあった。

アスカにとってシンジという少年は、全てを見せ合い、曝け出し、そして理解できた唯一の人間だった。
赤い液体の中で溶け合い、心を見られ、見てやった。
拒絶に恐怖し、承認に安堵する、それでも拒絶が怖いから、孤独に走る。同属嫌悪だった。
でも、、拒絶は怖いけど、孤独はもっと嫌だ、そんな願いがアスカを人の形に戻し、
赤い海の畔へと寝そべらせたのだ。

911: 05/02/08 19:00:28 ID:???
『(この少年はまだ拒絶を怖がるんだ、、でも、そうよね。私も怖いもの)』
首を絞められた時は意識が朦朧としていた。苦しくはない、悲しかった。
『(これから生きていくけれど、ずっとこうやって拒絶に恐怖するんだわ)』
“氏ぬ”という意識は無かった、どこか麻痺していたのだろう。
『(いつか“助けて”って言ってたわよね、助けてみようかしら)』
そっと伸ばした手を、シンジの頬にあてる。
そうする事が“助ける”事であるかのように。
顔の上に落ちてくる涙、首の圧迫感が緩む、嗚咽するシンジ。
『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・キモチワルイ』
『(なんて人間みたいなの、こんな感情昂ぶらせて、なによコイツ)』
『(・・・・・コイツ!私を殺そうとしたの!?)』
蘇る意識、高まる感情。

--バキッ!

そこからはアスカの私刑ショーだった。
殴る蹴る、投げる、物をぶつける、“氏なない程度に”

『こんのっ(バキッ)、よくもっ(ドカッ)、アタシをっ(ブーンッ)、殺そうとっ(ドスッ)』
「いたっ、アスッ、カッ、痛い!」
『アンタねぇ~アタシを殺そうとしたわねぇ?アタシはアンタを助けてやろうとしたのに!』
“助け”がシンジの“頃す”を止めたわけだが、アスカは何も考えず喋る。

912: 05/02/08 19:01:25 ID:???
『なっんっでっ(ボスッx3)、このアタシがっ(ドゴッ)、アンタなんかに~~(投げっぱなしジャーマン)』
『やり返したいなら、アンタは“パー”でやんなさいよ!アタシは“グー”で。女の子だからね』
「、、、、女の子が、、投げっぱなしジャーマン、、、する、かよ、、、」
『うるっさいわね~、アンタに殺されてたらアタシ氏ぬトコだったのよ?
 ちょっと投げたって良いじゃないよ!』

その後20分にも渡る暴行が止んだのは、シンジの一言だった。
『アンタ、またそうやって他人を拒絶するわけ?』
「、、、、、、、、もう、しない、、」
『信じられないわね!』
「、、全ての人が怖くなくなるなんて、無理かもしれない。
 でも、アスカだけは、もう、、しない」
『なんでよ!』

「アスカが居なくなるのが、、考えられない、、考えると怖い。
 ずっと、ずっと一緒に生きて欲しいんだ!僕と!」

それからレイが来るまでの半年間、お互いの気持ちを言葉にする事は一度も無かった。
1日1回のキス、寝る為にお互い別の部屋に入る、その10秒前に、1回だけ。
毎晩の1回だけのキスは、時にはミサトに見られてニヤニヤもされたが、
半年もすれば「おやすみー」という挨拶代わりになっていた。
その挨拶は喧嘩した時でさえ、怒った表情のまま必ず行われた。

913: 05/02/08 19:02:17 ID:???
『(これって付き合ってんのかな)』
そう考える事はあったが、深くは考えなかった。
シンジもまた、あの“暴行”を受けた日の自分の言葉を思い出して
勇気を出そうとするが、今はこれで良いとも思っていた。

そして、レイが来てからというもの、毎晩の“挨拶”は減っていたのだ。
流石にレイに見られるのは恥ずかしいアスカとシンジ。
一緒に暮らすうちにレイとは多少仲良くなったアスカだが、
仲良くなれば喧嘩もする。1日1回、挨拶のように。

そのうち喧嘩も慣れて、『(これも、まぁいっか)』などとアスカが
考えるようになった頃、シンジは肺炎で入院したのである。
学校が終わるとヒカリ、レイ、アスカの3人は一緒に下校したが、毎日お見舞いに行くのはレイとアスカ。
そしてヒカリやトウジ、ケンスケが居ないとレイはA.T.フィールドでアスカを病室に入れないのだ。

そんな時は疲れたアスカが家でレイを待ち構えて喧嘩になるのだが、
レイはA.T.フィールドを使わない。アスカを病室に入れない為だけに使うのだ。

914: 05/02/08 19:03:03 ID:???

 数日前にアスカが鍵を掛けてレイを家に入れなかった時、
 レイは平然とドアをすり抜けてきた。流石のアスカも唖然とした、しかし数秒後、、
 しかし唖然とした後に、

 『ちょっと!そんなの卑怯よ!』

 「鍵を掛けるのは卑怯じゃないの?」

 『病室にA.T.フィールド張って、入れなくするのは卑怯じゃないってーの!?』

 「何?よく聞こえない」

 『大丈夫、スグ何も聞こえなくなるから』

 こんな感じで喧嘩が始まったのは言うまでもない。

そして今日はアスカがいい加減ブチ切れた為にあわや発砲という事態になったのだ。
------------------------

915: 05/02/08 19:03:53 ID:???
『“家族”ねぇー、アタシはどうなのよ?一緒に暮らしてんだから家族でしょ。
 なんでファーストばっかり庇うのよ』

「、、だって、アスカが本気出したら、レイは氏んじゃうよ」

『なぁーに言ってんのよ、女の子よ、アタシ』

「、、、、、、、、投げっぱなしジャーマン、、、」(ボソッ

--シュパッ

シンジの右眉の一部がタオルケットにハラリと落ちる。
林檎を剥いていた右手からは果物ナイフが消えて、アスカの右手に握られていた。

「あ、、、あれ、、? ははは、、、」
状況が掴めないシンジは微かに残る感触を確かめるように右眉に手を伸ばす。
眉毛の1/3が無くなり、自分にかかっているタオルケットの上に落ちている事を理解する。

「(いつか、加減を間違って、この美少女は僕を頃すだろうな、、それまでで良い、傍に居よう、、)」
泣き笑いの顔で決心を固め、アスカに目をやる。
アスカは得意そうな顔をしてナイフをシンジの手に握らせて、鼻で続きを剥くように指示する。

916: 05/02/08 19:04:36 ID:???
『ねぇー、それよりさぁ。今晩もアタシは帰って寝るわけよ。
 今のうちに“おやすみ”をしておいた方が良くなーい?』
少しだけ照れながらアスカはシンジを焚きつける。

「えっ、、う、うん。僕も、、今日寝るから、、」

当たり前の事だが、何か理由を付けたい、まだそんな関係だった。
2人の距離が縮まり、少しずつ瞼も閉じていく。

『(はぁ、、苦労した甲斐があったわ。。今日はちょっと長めにしとこ)』

『(・・・・・・・・・・あれ?なかなかくっつかない・・・・・)』

『(ちょっとシンジぃ、、早くしないとファーストがトイレから・・・・)』

917: 05/02/08 19:05:21 ID:???
--ハッ!

目を開けるアスカ。
眼前には目を閉じてアスカを待っているシンジ。
その一歩手前に半透明のオレンジ色の壁。
キッと病室の入り口にアスカが目をやると、仁王立ちしたレイが入り口に立っている。

「A.T.フィールド、何人にも侵されざる聖なる領域」

『上等だわ、今息の根を止めてあげるから』

シンジは大きく溜息をつくと、止めるのを諦めて林檎の皮むきを再開した。

2人の恋路を邪魔するA.T.フィールドは、馬に蹴られたぐらいでは揺らぎそうもない。

------------------- fin -------------------

920: 05/02/08 19:16:11 ID:???
乙でした。ほのぼのして癒されますた。
実は漏れも『』で、なにかオチがあるのかと勘ぐってヒヤヒヤしますたw
 
例:実はアスカは幽霊で、自分が氏んだと気付いていない

引用元: 落ち着いてLAS小説を投下するスレ 3