5: 2010/08/22(日) 17:34:21.63
梓「唯先輩…」

唯「え?どうしたの?みんな」

澪「うん……なんというかさ」

律「まぁ…」

唯「弟か妹欲しいな~」

紬「…」

梓「…」

6: 2010/08/22(日) 17:36:10.57
唯「りっちゃんの弟欲しいな~聡くん?」

律「…あげないよ」

澪「唯……つらいのも分かるけど」

唯「何が?」

澪「憂ちゃんだよ」

唯「ういちゃん?」

梓「…」

紬「…」

8: 2010/08/22(日) 17:42:55.16
・・・・・・

一年前、商店街

唯「憂と2人でお買い物~♪」

憂「お姉ちゃん、ちゃんと前向いて…」

唯「わかってるよ~♪」

憂「あはは…」

キキーッ

ワーッ ワーッ

唯「どうしたんだろ~」

9: 2010/08/22(日) 17:48:01.56
憂「お姉ちゃんあぶないっ!!」ばんっ

唯「わぁ!!」

憂がわたしを押し飛ばしてくれたおかげで、私はあの殺人トラックに轢かれずに済んだ。
憂もなんとか無事だった。その時は。

「トラックがぶつかって止まったぞ!!」

唯「ういー!!」

憂「お姉ちゃん、足が…痛くて」

唯「動かないで、今行くから」


ガチャン

悪魔は包丁を片手にトラックから降りてきた。

11: 2010/08/22(日) 17:51:00.65
唯「うそ…」

憂「おね…」

そいつは憂に馬乗りになって…。
そこから先は見ていない。覚えていない。
次起きた時には病院のベッドの上にいた。

お母さんが呆然とした顔でわたしを見ていた。怖かった。

唯「憂は…?」

母「…」

唯「え…?」

12: 2010/08/22(日) 17:54:26.38
唯「お母さん?」

母「…」

お母さんは何か言っていた気がする。
だけど聞こえなかった。何も聞こえなかった。

唯「…」

唯「…なんでそんな顔してるの」

母「…」

お母さんはわたしに抱きついて泣いていた。
わたしはもう何も言えなかった。

13: 2010/08/22(日) 18:00:12.70
気がついたらわたしは自分の部屋のベッドの上にいた。
何も記憶が無いんだ。何も考えずに天井を見つめていた。

唯「…」

唯「ういは…?」

唯「うーーいーーー!!!」

母「どうしたの…?」

憂はどうしたんだろう?憂と一緒だったはずなのに。
憂を呼んだのに、わたしの部屋には入ってきたのは、何故かお母さんだった。

唯「ういは?」

母「…やめてよ唯」

唯「なに?どういうこと?」

15: 2010/08/22(日) 18:09:29.25
母「憂にはもう会えないの…」

唯「なんで?」

母「分かって……唯」

唯「なんで憂には会えないの?」

母「唯…もう絶対離さないわ…」

唯「お母さん、憂は…」

母「…」

唯「…」

お母さんは何も答えない代わりに、わたしをずっと抱きしめてくれた。
気づいたらわたしは泣いていた。不思議と冷静だった。

18: 2010/08/22(日) 18:24:32.83
後から聞いた話だと、お通夜とお葬式の間わたしは笑顔だったらしい。
覚えていないんだ。
憂が氏んだということも、正直よく分かっていなかったのかもしれない。

母「唯ー!ご飯よー!!」

唯「はーい!!」

朝ごはん。憂が居なくなってから、お父さんとお母さんは家にいる。
お父さんは普通に朝会社に行って、夜帰ってくる。
お母さんは家で家事をしている。
どこにでもある、普通の家庭。

家族で朝ごはんを食べるようになった。

唯「いただきまーす!」

父「いただきます」

母「召し上がれ!」

22: 2010/08/22(日) 18:30:53.37
父「うん、お母さんの味だ!」

母「他になんの味があるのよ~」

唯「…」

母「…唯?」

お母さんの作ってくれた味噌汁を飲むとき、
お母さんの作ってくれた卵焼きを食べるとき、
わたしはどうしても泣いてしまう。
わたしはどうしても涙が出てしまう。

唯「うい…」

お父さんとお母さんも苦しいのに。
明るく振舞ってくれてるのに。
泣きたくないのに。

23: 2010/08/22(日) 19:14:06.88
父「唯…」

母「…ごめんね……」

わたしの一言で暗くなる食卓。
わたしがお父さんとお母さんに謝りたいぐらいなのに、
お母さんはごめんねって言いながらわたしを抱きしめる。
「ごめんね」って、お母さんは何も悪いことしてないじゃん。


唯「いってきまーす」

母「いってらっしゃい」

1人で登校するのが辛くて、和ちゃんが毎朝うちの前まで来てくれる。

和「いきましょ、唯」

母「いつもありがとうね、和ちゃん」

和「いえいえ、私も唯と一緒に登校できて…」

唯「…」

24: 2010/08/22(日) 19:21:28.34
お弁当。似てるんだよ、お母さん。憂。勘弁してよ。
楽しいはずのお弁当の時間が、凄く辛いんだよ。

律「でさー!澪のやつったら!」

澪「こら、律ー!」

唯「…」

律「…」

唯「…ごめん」

律「…なんのことだぁ?なぁ、澪~」

私のせいで、皆のお弁当もまずくなっちゃうかな。
それでも、普段通り接してくれる皆の優しさがつらい。
私なんか無視してくれればいいのに。なんて。

25: 2010/08/22(日) 19:29:01.35
部活の時間はわたしのオアシスかも。
みんなでお茶する時間、練習する時間。
嫌なことを忘れさせてくれる時間なんだ。

ずっとここに居たい。帰り道ですら辛い。
1人になると、すぐに憂が出てくる。忌々しい。

唯「ただいまー」

母「おかえり」

家に帰るとすぐに自分の部屋に戻る。
そしてボーっとしてる時間は作らない。絶対に。
思考を止めると憂のことを考え始めてしまうから。

26: 2010/08/22(日) 19:34:39.28
母「ご飯よー!」

唯「はーい!」

お夕飯が始まるぎりぎりまで自分の部屋にいる。
お夕飯が終わったらすぐに部屋に戻る。
アイスは食べない。
ギー太の練習はリビングではしない。


わたしは逃げることにした。
憂と会う機会が無いだけなんだ、って。

29: 2010/08/22(日) 19:42:42.52
唯「お母さん、朝はパンがいいな」

母「そう?別に構わないけど」

大丈夫。

唯「お母さん、お昼は購買で買うよ」

母「うーん……分かったわ」

大丈夫。

唯「いってきまーす…」

母「いってらっしゃい」

和「いきましょ、唯」

唯「うん…」

なんとか。

30: 2010/08/22(日) 19:45:49.08
律「あ、唯今日は購買か?」

唯「うん…」

澪「やっぱりお弁当は…」

唯「うん…」

紬「元気出してっ唯ちゃん」

唯「……元気!元気だよぉ!」

紬「ふふ♪」

よしよし。

31: 2010/08/22(日) 19:49:51.17
律「もうすぐクリスマスだな~」

澪「ああ」

律「今年はどうする?クリスマス会」

澪「受験生だろ…私たちは」

律「一日くらいへっちゃらだろ~!なぁ唯!」

唯「うん!」

紬「わたしも賛成~♪」

澪「くっ…」

やっぱりみんなと居れる時間がわたしのオアシスだ。

33: 2010/08/22(日) 20:01:11.83
律「どこでやる?」

澪「うーん…」

律「今年も唯んちとか…」

唯「どうかなー?」

澪「…」

紬「えーと…」

唯「…あっ」

律「あ!ムギの家はどう?」

唯「ごめん、ちょっとおトイレ…」


…やっぱりだめだった。
この世に憂はもういない。

わたしが憂に頼りきりだったから、やっぱり逃げられなかった。

35: 2010/08/22(日) 20:07:57.77
でもよく考えてみるよ。

憂がいないと何もできない?

今はお母さんがいるもんね。

私だってやればできるし。

憂なんていなくても平気だから。

憂なんていなくてもみんながいるから。

憂なんていなくても楽しいから。

憂なんていなくても生きていけるから。


なんだ、憂なんていなくても全然平気じゃん。

36: 2010/08/22(日) 20:20:14.32
だけど今でも、
憂のことを思い出す度に、わたしは泣きたくないのに泣いてしまう。

そうやって憂はわたしを苦しめ続ける。

憂がわたしを泣かせるせいで、みんなも迷惑する。


こんな迷惑な妹もういらない。

いらない?
わたしの心に入ってくることさえ図々しいよ。

昔から居なかったんだよ。

そう、憂、じゃなくて、妹、わたしに妹なんて居なかったんだ。

38: 2010/08/22(日) 20:27:59.13
唯「お母さん、わたしの隣の部屋、片付けないの?」

母「唯の隣の部屋…?ああ、憂の部屋のこと?」

唯「…片付けないの?」

母「唯は片付けたいの?」

唯「ていうか、誰も使ってないのにあれじゃおかしいじゃん」

母「誰もいなくないわ、憂がいるもの」

唯「なにいってんの?やめてよ、そういうの」

母「唯…」

39: 2010/08/22(日) 20:42:00.55
私の部屋のコルクボードに知らない人の写真が貼ってあったので剥がした。

なぜか私と一緒に写ってる写真もあったけどそれも剥がした。

家の本棚にあった知らない人のアルバムは全部捨てた。

隣の部屋の机の上に、私と知らない人が写った写真があった。
気持ち悪かったので捨てた。

隣の部屋の机に私宛の手紙があったけど、気持ち悪かったので読まないで引き裂いて捨てた。

隣の部屋にあった服を貰おうとしたけど、知らない人の匂いがついてたので捨てた。

隣の部屋にあった知らない人のノートや教科書は捨てた。

隣の部屋のドアについていた「ういのへや」っていう謎のプレートも捨てた。

全部わたしが勝手に捨てた。
目障りだから。

43: 2010/08/22(日) 20:58:31.29
「お姉ちゃんいつもありがとう」

誰。なにが。

「私、お姉ちゃんの妹で良かったって」

妹?いませんから。

「お姉ちゃんがくれたホワイトクリスマス、嬉しかったなぁ」

なにいってんだか。

「お姉ちゃんにどうやっておかえしできるかな」

知らない人のおかえしなんて。

「お姉ちゃんかわいいから…ほっとけなくて」

気持ち悪い。

「私ね、お姉ちゃんがいるから頑張れるんだぁ」

勝手にしてれば。

44: 2010/08/22(日) 21:01:06.23
「お姉ちゃんやめて」

なにを。

「お姉ちゃん辛い」

で。

「お姉ちゃん、私はお姉ちゃんが大好きだったのに」

来るな。

「お姉ちゃん、助けて」

こっち来ないで。

46: 2010/08/22(日) 21:04:09.53
唯(ここは…?)

「ナイフ持ってるぞ!早く警察を…」


「お姉ちゃん、足が…痛くて」

「動かないで、今行くから」

唯「早く!早く逃げて!!」


「うそ…」

「おね…」


唯「あ…あ」

49: 2010/08/22(日) 21:09:42.54
「お姉ちゃああん!!助けて!!!」

「…」

唯「やだ…やめて」

「いたい!!!やめて!!」

「やあああああ!!!!」

唯「やめてよ!!」

「いたい!!!やだぁ!!!」

唯「やぁ!!見せないで!!!」

「ぉうぇ……おっ…っ……」

唯「やだ…やだ……」

「おね…ちゃん…」

「…」

唯「いやあああああああああああ!!!!!!!」

50: 2010/08/22(日) 21:13:18.20
父「唯!?どうした!!?」

母「唯!?」


はぁ…はぁ…


母「よしよし…」


怖い…怖い…


父「…」


怖い…


母「大丈夫だから…大丈夫だから…」

52: 2010/08/22(日) 21:15:49.33
母「お母さんと一緒に寝よう?ね?」

唯「うんっ……っ…」

母「無理もないわ……」

父「……」

母「わたしはここで寝るわ…」

父「…それがいいね」


母「大丈夫よ~唯~」

唯「お母さん…」

54: 2010/08/22(日) 21:21:43.33
「…ねぇお姉ちゃん」

来ないで…

「なんで…?わたしはお姉ちゃんが…」

やめて!来ないで!

「お姉ちゃん…」

こっちを見ないでっ!

「…ういだよ、お姉ちゃん、お姉ちゃんの妹だよ」

知らないっ!!そんなの知らないっ!!

「お姉ちゃん……っ…ぅ…」

泣くなっ!!来るなっ!!

55: 2010/08/22(日) 21:25:28.20
「…ありがと…お姉ちゃん……大好きだった…」

どっかいって!!

「うん……ごめんね…本当にごめんなさい…」

早くいけっ!!

「もう…戻れないんだね……っ…」

うるさいっ!!

「っ……お姉ちゃん…」

ああああっ!!!消えろっ!!

「……っ……」

よし…

57: 2010/08/22(日) 21:31:30.92
・・・・・



母「憂のお部屋…片付けようか…」

父「…ああ、早く忘れたいもんな…唯も」

母「そうよね…」

母「憂、ごめんね…ごめんね…」

父「…憂……」

父「まだ…生きたかったよなぁ…なぁ……」

母「……」

父「頃したいよ……仇を…」

母「……」

母「…ゆっくり眠ってね…憂……」

父「うぅぅ……ういぃ……」

58: 2010/08/22(日) 21:38:40.28
・・・・・

隣の部屋は物置になった。
誰も使ってないんだから当然のことだよね。

今日もいい天気だなぁ。

母「唯ー!ご飯よー!」

唯「はーい!!」

59: 2010/08/22(日) 21:42:31.40
唯「おはよー!お父さん」

父「おはよう!」

母「元気ねぇ!唯」

唯「いつも元気だよ!」

母「それもそうね」

わたしたち家族は全く普段通りの生活をしている。
何も変わらない。昔からずっと同じ。
このままが一番いいんだってわたしは知ってる。

母「ねぇ、唯?」

60: 2010/08/22(日) 21:45:34.19
母「今日は何も予定入ってないよね?」

唯「なんで?」

母「ほら、憂のお墓参り行くって話だったでしょ?」

唯「…ごめん、わたしはパス」

父「ま、まぁ、予定があるならしょうがないな」

母「憂も喜ぶと思うんだけどな~」

唯「…」

父「しょうがないよ、お母さん、2人で行こう」

母「…そうね」

61: 2010/08/22(日) 22:08:27.10
知らない人のお墓なんて参ってもしょうがないよね?
知らない人にとっても迷惑だし、わたしも面倒だし。
喜ぶわけないのにね。お父さんもお母さんも変なの。


明日は大学のみんなとスタジオでみっちり練習!
大学のみんなって言っても、HTTの5人なんだけどね。
今日はギー太としっかり個人練しておかないと。


唯「リビングで練習するよ~ギー太~♪」

唯「~♪」

62: 2010/08/22(日) 22:13:25.38
・・・・・

夕食後

母「唯、買い置きのアイス食べちゃって?」

唯「はいはーい」


父「年季はいってきたな~このギターも」

唯「そお?」

父「ちゃんと手入れとかしてるの?」

唯「もちろんだよ~」

父「ふぅ~ん」

63: 2010/08/22(日) 22:24:41.85
母「なんか弾き語りしてよ」

唯「え~…そうだねぇ」


古いアルバム めくり ありがとうってつぶやいた

いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ

晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔

想い出 遠く 褪せても

おもかげ探して よみがえる日は 涙そうそう


唯「どお?」

母「唯…っ…」

唯「な、なんで泣いてるの!?」

64: 2010/08/22(日) 22:27:58.88
父「うまい、うん、うまい」

唯「そうかなぁ//えへへ~…」

母「明日も練習?」

唯「そだよ」

母「楽しそうね」

唯「楽しいよ~高校のときの皆と一緒だし」

父「みんな一緒のところに進めて良かったな」

唯「うんっ!」

65: 2010/08/22(日) 22:36:53.92
翌日、スタジオ


律「いやー大変だよ」

澪「いつも大変そうに見えるけどな」

律「ってそれどういう意味だよー」

紬「うふふ♪」

梓「そろそろやりましょうよ!」

律「唯来たらなー」

梓「はい!準備はしておきましょう!」

紬「まあまあ♪」

梓「…全く唯先輩は」

67: 2010/08/22(日) 22:41:57.75
唯「やぁ!」

梓「遅いですよ!遅刻です!」

唯「ごめん…乗り遅れちゃって」

律「唯~」

唯「どうしたりっちゃん」

律「兄弟がいる良さも辛さも知ってるのは私と唯だけだよな…」

唯「え?私は一人っ子だよ??」

68: 2010/08/22(日) 22:42:51.81
おわり

70: 2010/08/22(日) 22:49:16.57
えっ

72: 2010/08/22(日) 22:52:09.99
>>5に戻る

74: 2010/08/22(日) 22:53:41.55
無限ループって怖くね?

79: 2010/08/22(日) 23:02:39.77
このような結果になり誠に遺憾です

80: 2010/08/22(日) 23:03:15.36
いかんいかん

82: 2010/08/22(日) 23:04:52.51
遺憾はこっちのせりふじゃコラ

87: 2010/08/22(日) 23:19:36.61
いのち を守りたい
そう思うのです

いのち を守れなかった
その点が誠に遺憾

89: 2010/08/22(日) 23:26:32.67
律「…この話題はおいといて!」

律「今度やる曲はどうするよー?」

澪「思い切って新曲無しで行ってみないか?」

梓「澪先輩がそんな…」

唯「別にいいと思うよ~」

紬「私も賛成~♪」

梓「私も反対はしませんが…」

律「私もべつにいいけど…なんで?」

澪「いや…ほら、わたしたちのこれまでのまとめ!みたいな感じでさ」

92: 2010/08/22(日) 23:35:52.59
律「ふぅ~ん…澪もなんか変わったな~」

澪「そうか?」

紬「じゃあ曲、決めよう?」

梓「はい!とりあえず今までの私たちの曲は…

ふわふわ時間
カレーのちライス
ふでペン ~ボールペン~
私の恋はホッチキス
ぴゅあぴゅあはーと
ごはんはおかず
U&I

ですね」

94: 2010/08/22(日) 23:40:17.71
唯「私ふわふわやりたい!」

律「定番だな~」

澪「はい!」

律「…はい、澪さん」

澪「U&Iやろう!」

律「なっ…それ唯作詞なのにか?」

澪「だから…じゃなくて、作詞が誰かなんて関係無いだろ?」

律「まぁそうだけどさ…」


唯「え~…それもういいよぉ」

95: 2010/08/22(日) 23:45:27.80
紬「どうして?」

唯「だってなんかさぁ…」

澪「なんか?」

唯「ん~ふふ、わかんないや」

律「なんだそれ」

96: 2010/08/22(日) 23:46:17.44
澪「じゃあ決定か?」

律「まてぃ、梓、ムギ、なんかある?」

梓「先輩方にお任せにします」

紬「私もどれでも~」

律「曲数は時間的に3曲ぐらいだからーその2つは決まりかな」

97: 2010/08/22(日) 23:56:42.42
・・・・・

U&I。
部室が使えるとか、無くなって分かるものの有り難みを書いたんだよね。
こんな歌詞よく書けたなぁ昔の私。昔っていってもちょっと前だけどね。

帰ったら練習しようかな。

唯「ふ~」

澪「唯、U&I、歌えるのか?」

唯「なんで?」

澪「なんでって……あんなこと言って、憂ちゃん悲しんでると思わないのか?」

唯「ういちゃんってだから誰?」

澪「唯…ほんとに言ってんのか?それ」

99: 2010/08/23(月) 00:07:42.80
澪「唯の気持ちも分かるけど…私はそれはダメだと思う」

唯「澪ちゃん…ごめん、何を言ってるのかさっぱり分からないよ」

澪「唯……」

澪「…いや、こちらこそごめん。私が無理に言う話じゃなかったな。気にしないでくれ」

唯「?」

澪「じゃあ、また今度」


変な澪ちゃん。

澪ちゃんは詩を書くのが好きで、たまに私にもよく分からないようなことを話す。
でも澪ちゃんの書いた詞は歌になると途端に可愛くなる。ふわふわも同じ。

それに比べて私の歌詞は一体…

100: 2010/08/23(月) 00:18:02.74
・・・・・

『キミがいないと 何も できないよ』
何もできない────ねぇ。
寝たきり老人じゃないんだから。
って、まさかそのままの意味じゃないよね。


『キミのごはんが 食べたいよ』
分からない。ごはんが食べたいって…
それに「キミ」っていうからには、やっぱり男の子の視点なのかな?


「次は~桜が丘~お出口は左側です」


そろそろ駅だ。
考える時間は家に帰ってからにお預け!

114: 2010/08/23(月) 10:07:32.39
唯「ただいまー」

母「おかえり」

家に入るとすぐに自分の部屋に戻る。
うーん、なんだろうこの感覚は。

歌詞の解読作業を進めよう。

115: 2010/08/23(月) 10:11:16.45
キミがいないと 何も できないよ

キミのごはんが 食べたいよ

もし キミが 帰ってきたら とびきりの笑顔で 抱きつくよ

キミがいないと 謝れないよ

キミの声が 聞きたいよ

キミの笑顔が見れれば それだけで いいんだよ

キミがそばにいるだけで いつも勇気 もらってた

いつまででも 一緒にいたい

この気持ちを 伝えたいよ

晴れの日にも 雨の日も

キミはそばに いてくれた

目を閉じれば キミの笑顔 輝いてる

116: 2010/08/23(月) 10:17:50.59
やっぱり分からない。

私は何を考えていたんだろう?
何を思って書いたんだろう?

これはどういう意味なんだろう?

何か重要な意味を持っているようなのに分からないので、お母さんの力を借りることにした。

唯「この歌詞、どういう意味だと思う?」

母「これって唯が作詞してたのね」

唯「うん……そうなんだけどさ」

母「U&Iって…ゆーあんどあい……うい……」

唯「うい?」

117: 2010/08/23(月) 10:22:19.29
みんなが言う。

うい。ういちゃん。

誰だか分からないのに、何故か思い出すのが怖い。

母「唯から憂への曲?なのかなー?」

唯「…」

母「君がいないと何もできないってねぇ…」

唯「もういいや、ありがとう、お母さん」

母「?」

118: 2010/08/23(月) 10:27:15.23
物置にある知らない人の仏壇。
知らない人の写真がおいてある。

誰?なんで?

私に兄弟なんていなかった。姉妹なんていなかった。
なのになぜ?

私は何か重要なことを忘れてるのかもしれない。

母「そろそろご飯よー」

唯「はーい」

119: 2010/08/23(月) 10:31:20.59
母「ねえ、唯……」

唯「なぁにお母さん」

母「こんな時に言うのもなんだけど、行ってあげてよ……」

父「…」

唯「どこに?」

母「憂のお墓よ…」

唯「だからぁ~ういって誰?」

母「……唯の妹じゃない…」

唯「妹なんていないよ?」

母「うん……」

126: 2010/08/23(月) 11:42:12.91
・・・・・

ある日のスタジオ

律「やっぱ一回やった曲だといい感じだなー!」

澪「律が走り気味なのは相変わらずだけどな…」

律「そ、そう?」

紬「唯ちゃんのボーカルもすっごくいい…」

梓「ですね……それは私も思います」

唯「そお?えへへ~…」

澪「うん!……憂ちゃんも喜んでくれると思う」

唯「うい……」

律「澪……」

127: 2010/08/23(月) 11:49:01.91
本番が近づくにつれて、私はまた変な夢を見るようになった。


「ナイフ持ってるぞ!早く警察を…」


「お姉ちゃん、足が…痛くて」

「動かないで、今行くから」


これは……


「うそ…」

「おね…」


見たことある…

129: 2010/08/23(月) 11:52:55.27
「お姉ちゃああん!!助けて!!!」

「…」

これは何?

「いたい!!!やめて!!」

「やあああああ!!!!」

女の子が刺される。

「いたい!!!やだぁ!!!」

そこにいる「私」は下を向いてる。

「ぉうぇ……おっ…っ……」

血まみれの女の子が倒れてる。

「おね…ちゃん…」

「…」

130: 2010/08/23(月) 11:57:58.81
「ういぃ……うい………」

お父さんもお母さんも泣いてる。

「…」

そこにいる「私」は下を向いてる。

「…っ……」

親戚のおじさん、おばさん。
軽音部のみんなもいる。
みんな泣いてる。

私の知らない人の大きい写真が置いてある。

133: 2010/08/23(月) 13:14:35.01
「唯ちゃん……気を落とさないで…」

「なんで?」

「大丈夫よ……憂ちゃんは唯ちゃんを見守ってくれてるから」

「どゆこと?」


「痛々しくて見てられないわ…」
「気の毒ね……」


「?」

「唯……もう唯は離さない……から…」

「お母さん?」

「ういっ……うい……っ…」

「お父さん…」

134: 2010/08/23(月) 13:19:52.79
「唯……」

「なんで泣いてるの…?」

「ゆい……憂はもう……」

「……」


「みんな…?」

「唯……っ…ずっと一緒だから…」

「え?…う、うんっ」

「唯ちゃん……私たちもいるからっ…」

「ムギちゃん…」

「憂…」

「あずにゃん…」

135: 2010/08/23(月) 13:25:41.51
そうだ……


氏んだんだ……私の妹は、憂は、氏んだんだね…



憂――


「お姉ちゃん!」




唯「憂っ!?」

唯「夢……」


憂は殺されたんだね……

136: 2010/08/23(月) 13:29:44.09
いやだ……うそだ……


憂!!!


憂を探さないとっ!
憂はどこに…


母「唯!?こんな時間にどうしたの…」

唯「憂がいないのっ!!」

母「唯…」


唯「どこ!?どこにいるの!?」


母「…」

お母さん…?そこは物置で――

137: 2010/08/23(月) 13:32:53.18
「お姉ちゃん」


ういっ!

憂!!私だよ!お姉ちゃんだよ!!


母「唯……お仏壇…壊れちゃうわ…」


憂!なんで…

なんでずっと笑ってるの!!?


憂!?


憂!!返事してよお!!憂!!!


母「もうやめて…唯…」

父「どうしたんだ…」

139: 2010/08/23(月) 13:41:37.11
憂!!!


なんでようい!!!!

どうしてっ………


待ってよ………


母「唯……」



憂には……もう…会えないんだね……


いやだ…やだ……


いやぁ…

140: 2010/08/23(月) 13:46:05.35
そうだ


今会いに行くようい


「唯!!!」


簡単だったんだ


「唯!!やめなさい!!」


離して、お父さん


「目を覚ませっ!!!」

141: 2010/08/23(月) 13:49:53.40
いたい……


「なんで分かってくれないの唯…!」


お母さん…?


「唯……もうやめてよ…」


分からないの…


「憂はもういないんだよ」



142: 2010/08/23(月) 13:55:49.39

・・・・・

しばらく経った日の朝


母「今日は本番なのよね?」

唯「そだよ~」

父「ごめんな……見にいけないんだ」

唯「いいよお!全然へーき!!」

母「大丈夫?」

唯「ばっちりだよっ!」


お父さんとお母さんにも見せてあげたかった、聞かせてあげたかったけど。

今、一番に聞かせてあげたいのは、憂なんだ。私の想いを。

143: 2010/08/23(月) 14:05:31.75
母「やっと前に進めそうね」

唯「ずっと進んでたよ~?」

母「ふふっ、そうかもね」

唯「変なお母さん」


初めて憂のお墓に来た。私はもう逃げないって決めたから。
憂が氏んじゃったのは事実で、それはもう変えられないから。

もちろんあの記憶は忘れられない。絶対に忘れられない。

そして多分、憂は私を許してくれない。
だってあんなに酷いことをしたんだから。

でも、だから、何もしない、っていうのはやっぱり 逃げ だと思った。
今私ができる精一杯のことをして、精一杯生きていく。

それが憂へのお供物で、私から憂へのお礼になればいいなぁ…って。

144: 2010/08/23(月) 14:16:04.95
憂―

ごめんなさい。

そして、何度お礼しても足りないぐらい、感謝してます。
これから憂へのお礼を私なりの方法で贈ります。


自分勝手だよね。わがままだよね。


そう思われてもしょうがないのは承知です。
でも、もしよかったら聞いてくれるとうれしいなぁ…


唯「…よし」

母「じゃあ、頑張ってきなさい!」

唯「うんっ!!」


私のせいで、殆ど無くなってしまった、憂が生きていた証。

憂はどんな想いで私を見ていたんだろう。

145: 2010/08/23(月) 14:24:23.95
「それでは最後の曲。聞いてください!」


分かってた

最初からわかってたんだよ、私

自分の気持ちにふたをして逃げていただけで

澪ちゃんは分かってくれてた


そしてこれは紛れもなく、憂のために作った詞

憂のために考えた詞、憂への感謝をこめて作った詞だったんだ


「U&I!」

146: 2010/08/23(月) 14:28:00.27
キミがいないと 何も できないよ

キミのごはんが 食べたいよ

もし キミが 帰ってきたら とびきりの笑顔で 抱きつくよ

キミがいないと 謝れないよ

キミの声が 聞きたいよ

キミの笑顔が見れれば それだけで いいんだよ

キミがそばにいることを 当たり前に思ってた

こんな日々が ずっとずっと 続くんだと思ってたよ

ごめん 今は 気づいたよ

当たり前じゃないことに

まずは君に 伝えなくちゃ

ありがとうを

148: 2010/08/23(月) 14:30:21.30
君の胸に 届くかな

今は自信 無いけれど

笑わないで

どうか聞いて

想いを歌に込めたから

ありったけの ありがとう

歌に のせて 届けたい

この気持ちは ずっとずっと

忘れないよ

想いよ 届け

151: 2010/08/23(月) 14:34:32.13
おわり

181: 2010/08/23(月) 22:37:06.09
乙でした!!

引用元: 唯「え?私は一人っ子だよ??」