3: 2015/08/27(木) 03:11:13.239
魔道士「えぇー中止ィー⁉︎あたし結構、楽しみにしてたのにぃー」
ムチャクチャ不機嫌な感じで、憎たらしく文句を言ってる女。名は魔道士。色々となんやかんやあって縁が出来てしまった、俺の旅の連れである。
魔道士「ちょっと、どうしてくれんの?コレ」
冒険者「どうもこうも、中止なんだからしょーがねーじゃん」
グチグチ言うなよ。諦めろ。大体、俺はそんなに楽しみにしてた訳じゃないし。
魔道士「闘技大会が開催されてると思ったから、こんな辺境の島まで来たの!!どう責任取ってくれんの?」
ー聖なる武闘家の島ー
そこへ行けばどんな武闘家も強くなれるという幻の島
最強を目指す武闘家達の登竜門
神話の時代から続く歴代の拳聖達が眠る場所、などなど
ムチャクチャ不機嫌な感じで、憎たらしく文句を言ってる女。名は魔道士。色々となんやかんやあって縁が出来てしまった、俺の旅の連れである。
魔道士「ちょっと、どうしてくれんの?コレ」
冒険者「どうもこうも、中止なんだからしょーがねーじゃん」
グチグチ言うなよ。諦めろ。大体、俺はそんなに楽しみにしてた訳じゃないし。
魔道士「闘技大会が開催されてると思ったから、こんな辺境の島まで来たの!!どう責任取ってくれんの?」
ー聖なる武闘家の島ー
そこへ行けばどんな武闘家も強くなれるという幻の島
最強を目指す武闘家達の登竜門
神話の時代から続く歴代の拳聖達が眠る場所、などなど
4: 2015/08/27(木) 03:11:57.231
色々な噂の有る島なのだが、要するにド突き合いに命掛けてるバカ、もとい武闘家達のメッカであるこの地で、最強を決める大会がある。
そんな噂を耳にした俺たち2人は、はるばる海を渡って物見遊山にこの島へやって来たのだ。
冒険者「拳聖様が亡くなっちまったんだから、しょーがないだろ?そりゃ、大会どころじゃねーよ」
数日前に、第63代拳聖が没されたそうな。島中、どこもかしこも儀式やらなんやらで大忙し。
とても闘技大会が出来る様な有様ではなかった。しばらくは闘座も次代拳聖の伝承式やらなんやらで、大会は無期延期。
いつ、開催されるか、これもうわかんねぇな。
魔道士「じゃああたしが、とっておきの呪法でその拳聖とやらを蘇らせてあげるよ。それで良いじゃん!?この島の住民、全員の命と引き換えなら多分出来るよ」
冒険者「おい、バカ止めろ。島の住民皆頃しにして、一体誰が大会に出るんだよ?」
そんな噂を耳にした俺たち2人は、はるばる海を渡って物見遊山にこの島へやって来たのだ。
冒険者「拳聖様が亡くなっちまったんだから、しょーがないだろ?そりゃ、大会どころじゃねーよ」
数日前に、第63代拳聖が没されたそうな。島中、どこもかしこも儀式やらなんやらで大忙し。
とても闘技大会が出来る様な有様ではなかった。しばらくは闘座も次代拳聖の伝承式やらなんやらで、大会は無期延期。
いつ、開催されるか、これもうわかんねぇな。
魔道士「じゃああたしが、とっておきの呪法でその拳聖とやらを蘇らせてあげるよ。それで良いじゃん!?この島の住民、全員の命と引き換えなら多分出来るよ」
冒険者「おい、バカ止めろ。島の住民皆頃しにして、一体誰が大会に出るんだよ?」
5: 2015/08/27(木) 03:12:37.160
これが、他の奴ならデキの悪い冗談として、スルーするトコだが、こいつなら実際、それが出来てしまいそうだから困る。
かつて、こいつはその呪法で一つの国を滅亡させた、性悪腹黒陰険魔女。
こいつの気まぐれで島一つ滅ぼされるのは、俺も流石に寝覚めが悪い。
魔道士「じゃあ、せめて見学だけでもする。闘座とか修練場とか、あたし見てみたいし」
魔道士「せっかく、来たんだしさぁー良いじゃん、おねがーい」
などとブリっ子ポーズでおねだりされるが、全然、その気にならない。
そもそも、こいつは、あんな氏闘を繰り広げた相手に、そんな演技が通用すると、本気で思ってるのか?
冒険者「見学て、それもムリだろ。あっちこっちバタバタして、どう見ても部外者は立ち入り禁止だぞ?」
魔道士「大丈夫。大丈夫。そこは、この超絶可愛い、クラス感溢れる、高貴な魔道士様に任せなさい」
かつて、こいつはその呪法で一つの国を滅亡させた、性悪腹黒陰険魔女。
こいつの気まぐれで島一つ滅ぼされるのは、俺も流石に寝覚めが悪い。
魔道士「じゃあ、せめて見学だけでもする。闘座とか修練場とか、あたし見てみたいし」
魔道士「せっかく、来たんだしさぁー良いじゃん、おねがーい」
などとブリっ子ポーズでおねだりされるが、全然、その気にならない。
そもそも、こいつは、あんな氏闘を繰り広げた相手に、そんな演技が通用すると、本気で思ってるのか?
冒険者「見学て、それもムリだろ。あっちこっちバタバタして、どう見ても部外者は立ち入り禁止だぞ?」
魔道士「大丈夫。大丈夫。そこは、この超絶可愛い、クラス感溢れる、高貴な魔道士様に任せなさい」
6: 2015/08/27(木) 03:13:27.533
とか、言って。魔道士は堅そうな門を護る、屈強そうな門番の元へ駆けて行き、何やらお話か、お願いっぽい事をして……
またこちらに駆けて帰って来た。
魔道士「門番のおじさまに良くお願いしたら、中に入っても良いよって言われちゃったー」
魔道士「美しいって罪だね。テヘッ」
知らぬ事は罪よな。まあ、こいつと関わって命があるだけ儲け物かもしれん。
一生、魔道士の外面に騙されておくのが、長生きのコツだ。
外面だけは良いしな、外面だけは。こんなんでも、元亡国のお姫様だし。
魔道士「ん?なんかまた、失礼な事、考えてる?考えてない?」
魔道士「まあ、今更、何でも良いけど、早く行こうよ」
冒険者「おう、そうだな」
ここで、延々グチグチ言われるのも嫌だし、大人しく見学して貰って、こいつの気が済んだらさっさと帰ろう。
そうして、俺たち2人は『聖なる武闘家の島』の門を潜った
またこちらに駆けて帰って来た。
魔道士「門番のおじさまに良くお願いしたら、中に入っても良いよって言われちゃったー」
魔道士「美しいって罪だね。テヘッ」
知らぬ事は罪よな。まあ、こいつと関わって命があるだけ儲け物かもしれん。
一生、魔道士の外面に騙されておくのが、長生きのコツだ。
外面だけは良いしな、外面だけは。こんなんでも、元亡国のお姫様だし。
魔道士「ん?なんかまた、失礼な事、考えてる?考えてない?」
魔道士「まあ、今更、何でも良いけど、早く行こうよ」
冒険者「おう、そうだな」
ここで、延々グチグチ言われるのも嫌だし、大人しく見学して貰って、こいつの気が済んだらさっさと帰ろう。
そうして、俺たち2人は『聖なる武闘家の島』の門を潜った
7: 2015/08/27(木) 03:14:18.909
本来なら闘技大会が開催される筈だった、武闘家達が夢の舞台。
厳かな儀式の邪魔にならない程度に見学し、次は修練場でも見て回ろうかと歩いた。
とは言うものの、こんな大変な時に呑気に修練なんてやってる奴など居る筈も無く……
武闘家「アトゥー!!チャター!!ホゥワチャー!!」
修練場の外れ。こんな大変な時に、木人形相手に、修練に励む若い武闘家が居た。
年齢の頃なら17才位。短めの明るい髪に、ちょっと日焼けした健康的な体つき。珍しい、女性の武闘家だった。
俺たちの気配に気付いたのか、武闘家は修練を中断しこちらを向いた。
武闘家「ン?何だい?君達は……見学の人……かな?」
屈託の無い笑顔で武闘家は話す。……可愛い。どこかの性悪の意地悪な笑顔とは大違いだ。
本当に、心が癒される笑顔とはこういうものなんだろう。と言うか、ちょっと好みのタイプかも。
厳かな儀式の邪魔にならない程度に見学し、次は修練場でも見て回ろうかと歩いた。
とは言うものの、こんな大変な時に呑気に修練なんてやってる奴など居る筈も無く……
武闘家「アトゥー!!チャター!!ホゥワチャー!!」
修練場の外れ。こんな大変な時に、木人形相手に、修練に励む若い武闘家が居た。
年齢の頃なら17才位。短めの明るい髪に、ちょっと日焼けした健康的な体つき。珍しい、女性の武闘家だった。
俺たちの気配に気付いたのか、武闘家は修練を中断しこちらを向いた。
武闘家「ン?何だい?君達は……見学の人……かな?」
屈託の無い笑顔で武闘家は話す。……可愛い。どこかの性悪の意地悪な笑顔とは大違いだ。
本当に、心が癒される笑顔とはこういうものなんだろう。と言うか、ちょっと好みのタイプかも。
8: 2015/08/27(木) 03:15:20.542
魔道士「ごめんなさい。修行のお邪魔をしてしまって。」
魔道士「はじめまして。あたしは魔道士。『ツレ』の男は冒険者。あたし達、2人で旅行中なんですけど、ここの噂を聞いて見学に来たんです。」
武闘家「ホェ~やっぱりかぁ~お二人はどう見ても入門希望って感じじゃないもんな~」
武闘家「でも、良くあの堅物門番が通したなぁ~ウチって一応、門外不出の一門なんだけどなぁ~」
魔道士「お邪魔はしないって、門番さんとの約束だったんですけど、ごめんなさい。失礼致しました。」
と、邪悪に微笑む魔道士は俺の腕を引き、去ろうとするが
武闘家「あ、ちょっと待って。せっかく、わざわざ見学に来てくれたんだしさ~ゆっくりしていきなよ」
武闘家「独りで木人形、殴り続けるのもさ、いい加減退屈だったんだよね~実は。」
武闘家「見せるぜ~超魅せちゃうぜ~」
ん?さっき門外不出って言ったよね?
冒険者「良いんですか?そんな見ず知らずの俺たちなんかに見せちゃって」
武闘家「イイんだよ~グリーンだよ~自己紹介の代わりに私の必殺拳、とくとご覧に入れちゃうよ~」
武闘家「でも、危ないからね~ちょっち離れて見ててね~」
武闘家「んじゃ、いっくよ~」
魔道士「はじめまして。あたしは魔道士。『ツレ』の男は冒険者。あたし達、2人で旅行中なんですけど、ここの噂を聞いて見学に来たんです。」
武闘家「ホェ~やっぱりかぁ~お二人はどう見ても入門希望って感じじゃないもんな~」
武闘家「でも、良くあの堅物門番が通したなぁ~ウチって一応、門外不出の一門なんだけどなぁ~」
魔道士「お邪魔はしないって、門番さんとの約束だったんですけど、ごめんなさい。失礼致しました。」
と、邪悪に微笑む魔道士は俺の腕を引き、去ろうとするが
武闘家「あ、ちょっと待って。せっかく、わざわざ見学に来てくれたんだしさ~ゆっくりしていきなよ」
武闘家「独りで木人形、殴り続けるのもさ、いい加減退屈だったんだよね~実は。」
武闘家「見せるぜ~超魅せちゃうぜ~」
ん?さっき門外不出って言ったよね?
冒険者「良いんですか?そんな見ず知らずの俺たちなんかに見せちゃって」
武闘家「イイんだよ~グリーンだよ~自己紹介の代わりに私の必殺拳、とくとご覧に入れちゃうよ~」
武闘家「でも、危ないからね~ちょっち離れて見ててね~」
武闘家「んじゃ、いっくよ~」
9: 2015/08/27(木) 03:16:05.853
シャウッ!!
裂帛の気合いと共に、武闘家の鋭い手刀が木人形の首を跳ね飛ばす
魔道士「ワースゴーイ」
今…木人形に触れずに斬ったぞ……
武闘家「我が拳は風を友とし、風の中に真空を走らせる」
要するに、かまいたちの応用みたいなものか……
武闘家「なんてね。すごいっしょ?後は手から炎出す大道芸的な技とか色々あるよ~」
武闘家「ここじゃ危ないからやらないけどね~火事にでもなったら大変だ」
事も無げに武闘家は言う。
正直、剣か魔法でも使えば、俺でも同じ様な芸は出来る。けど、素手では流石にムリだ。
冒険者「いやぁ、凄い技ですね」
冒険者「お若いのに、大したものです。お見それしました」
魔道士「そりゃあ、皆、拳聖様が亡くなられて色々、大変そうなのに、一人こんなトコで修行なさってる様な方だし」
魔道士「よっぽどの修行マニアなんじゃなーい?あたしは知らねーけど」
と、いきなり素に戻る魔道士。毎度、ビックリするから止めて欲しい。
こいつはどうでも良い奴が相手だと、普段の猫かぶりを止めて素で話しだす。
そして、そういう相手は何故か同性が多い。
武闘家「フッフッフッ。人を見かけで判断しちゃ~いけねぇよ。こう見えても私は……」
武闘家「いや、なんでもねぇや。んーとねぇ。私的にはいつも通りに過ごす事が、師父への餞になるのかなー?なんて思ったりする訳で」
武闘家「まあ、ああいう重苦しいのも苦手だしねーテヘヘヘヘ」
この子の笑顔は何だか太陽みたいだ。見てると何だか、こっちまで気分が高揚する。
裂帛の気合いと共に、武闘家の鋭い手刀が木人形の首を跳ね飛ばす
魔道士「ワースゴーイ」
今…木人形に触れずに斬ったぞ……
武闘家「我が拳は風を友とし、風の中に真空を走らせる」
要するに、かまいたちの応用みたいなものか……
武闘家「なんてね。すごいっしょ?後は手から炎出す大道芸的な技とか色々あるよ~」
武闘家「ここじゃ危ないからやらないけどね~火事にでもなったら大変だ」
事も無げに武闘家は言う。
正直、剣か魔法でも使えば、俺でも同じ様な芸は出来る。けど、素手では流石にムリだ。
冒険者「いやぁ、凄い技ですね」
冒険者「お若いのに、大したものです。お見それしました」
魔道士「そりゃあ、皆、拳聖様が亡くなられて色々、大変そうなのに、一人こんなトコで修行なさってる様な方だし」
魔道士「よっぽどの修行マニアなんじゃなーい?あたしは知らねーけど」
と、いきなり素に戻る魔道士。毎度、ビックリするから止めて欲しい。
こいつはどうでも良い奴が相手だと、普段の猫かぶりを止めて素で話しだす。
そして、そういう相手は何故か同性が多い。
武闘家「フッフッフッ。人を見かけで判断しちゃ~いけねぇよ。こう見えても私は……」
武闘家「いや、なんでもねぇや。んーとねぇ。私的にはいつも通りに過ごす事が、師父への餞になるのかなー?なんて思ったりする訳で」
武闘家「まあ、ああいう重苦しいのも苦手だしねーテヘヘヘヘ」
この子の笑顔は何だか太陽みたいだ。見てると何だか、こっちまで気分が高揚する。
10: 2015/08/27(木) 03:17:07.440
その後、可愛いらしく、可憐な武闘家の演舞を、一日中、心行くまで、堪能した……かった。
が、残念ながら魔道士に足早に連れ去られ、2人で普通に食事して、残りの見学をして、宿まで来た。もう日も暮れた。
結局、あの後の魔道士は普段の2割増し位で不機嫌だったし、俺はもう疲れた。もう寝たい。
魔道士「あのさぁ、冒険者はショートのが好みなの?鼻の下伸ばしてデレデレしちゃってさー」
冒険者「鼻の下なんか伸ばしてねぇよ。デレデレもしてない」
魔道士「うっそだぁー。昼間の子、可愛いかったじゃん。冒険者、ずーっとイヤラシイ目で見てたよ」
冒険者「……気のせいだろ」
魔道士「ふぅーん。なら、あたしも髪切っちゃおうかなー?」
冒険者「バーカ。俺は長い髪のが好みなの。まあ、昼間の子は別として」
冒険者「男はみ~んな、女性の長い髪に幻想を抱いてるの。そーいうモンなの」
魔道士「ふぅーん。そーなんだァー。ヘェーじゃあさ、冒険者はあたしの長い髪にどんな、幻想を抱いてるのかな?」
冒険者「ZZZ」
魔道士「あたし、その辺り、よーく聞きたいなぁー」
冒険者「zzz」
魔道士「あぁ!?コラ。寝たフリすんな」
冒険者「……うるさい。今日は、一日中、お前に振り回されてクタクタなの」
魔道士「むぅ。なら、寝ればイイじゃん。あたしは勝手に喋るし。別に、返事してくれなくても良いですょーだ」
が、残念ながら魔道士に足早に連れ去られ、2人で普通に食事して、残りの見学をして、宿まで来た。もう日も暮れた。
結局、あの後の魔道士は普段の2割増し位で不機嫌だったし、俺はもう疲れた。もう寝たい。
魔道士「あのさぁ、冒険者はショートのが好みなの?鼻の下伸ばしてデレデレしちゃってさー」
冒険者「鼻の下なんか伸ばしてねぇよ。デレデレもしてない」
魔道士「うっそだぁー。昼間の子、可愛いかったじゃん。冒険者、ずーっとイヤラシイ目で見てたよ」
冒険者「……気のせいだろ」
魔道士「ふぅーん。なら、あたしも髪切っちゃおうかなー?」
冒険者「バーカ。俺は長い髪のが好みなの。まあ、昼間の子は別として」
冒険者「男はみ~んな、女性の長い髪に幻想を抱いてるの。そーいうモンなの」
魔道士「ふぅーん。そーなんだァー。ヘェーじゃあさ、冒険者はあたしの長い髪にどんな、幻想を抱いてるのかな?」
冒険者「ZZZ」
魔道士「あたし、その辺り、よーく聞きたいなぁー」
冒険者「zzz」
魔道士「あぁ!?コラ。寝たフリすんな」
冒険者「……うるさい。今日は、一日中、お前に振り回されてクタクタなの」
魔道士「むぅ。なら、寝ればイイじゃん。あたしは勝手に喋るし。別に、返事してくれなくても良いですょーだ」
11: 2015/08/27(木) 03:18:09.454
魔道士「冒険者はさぁ、あーいう、お気楽能天気系な子が好きなの?」
冒険者「……」
魔道士「でも、きっと冒険者には合わないと思うよ?」
魔道士「そーだなぁー冒険者に合うのはねぇ、あたしみたいにあなたと対等な関係を築ける子、だと思うよ」
魔道士「あたしが居なきゃあなたはダメだし。あなたが居なきゃあたしはダメ」
魔道士「ああいう子じゃきっと、あなたとそんな関係にはなれないよ。」
魔道士「……んーてか、あたしのカンだけど、あの子はお気楽で能天気なだけじゃ、なさそうだったけど」
魔道士「なーんかウラありそうだったよぉ?」
魔道士「そもそも、あんな程度の実力じゃあ、あなたと2人旅なんてムリだろうしねぇー」
魔道士「諦めろーあたしぐらいしか、あなたのパートナーは務まらないぞー」
魔道士「んー。もう寝た?じゃあ、あたしも寝ちゃおうかなー?」
魔道士「冒険者と、おんなじお布団で。もう、寝ちゃったんなら、嫌とは言えないよねー」
魔道士「はい。決まりーじゃーおやすみー」
冒険者「……」
魔道士「でも、きっと冒険者には合わないと思うよ?」
魔道士「そーだなぁー冒険者に合うのはねぇ、あたしみたいにあなたと対等な関係を築ける子、だと思うよ」
魔道士「あたしが居なきゃあなたはダメだし。あなたが居なきゃあたしはダメ」
魔道士「ああいう子じゃきっと、あなたとそんな関係にはなれないよ。」
魔道士「……んーてか、あたしのカンだけど、あの子はお気楽で能天気なだけじゃ、なさそうだったけど」
魔道士「なーんかウラありそうだったよぉ?」
魔道士「そもそも、あんな程度の実力じゃあ、あなたと2人旅なんてムリだろうしねぇー」
魔道士「諦めろーあたしぐらいしか、あなたのパートナーは務まらないぞー」
魔道士「んー。もう寝た?じゃあ、あたしも寝ちゃおうかなー?」
魔道士「冒険者と、おんなじお布団で。もう、寝ちゃったんなら、嫌とは言えないよねー」
魔道士「はい。決まりーじゃーおやすみー」
12: 2015/08/27(木) 03:18:59.646
とか、何とか。言いたい事を好き放題言った魔道士は勝手に人の布団に入ってきた。
まぁ、それは良いのだが。ひっつき過ぎだ。こいつは俺をベッドから押し出すつもりか?
と、言うか、朝起きたら魔道士に押し出されてベッドから転落してた事は何回もあったな……
………………それにしても好き放題言ってくれちゃって。
俺が魔道士との2人旅に文句を言った事など……まあ、ちょっとしか無い。
パートナー……ねぇ。もうとっくに諦めているよ。
『ホッホッホ。良く、あたしの不老不氏の夢を見事に打ち砕いてくれたね。この憤りは君の命で晴らすとするよ』
そう、こいつに言われたあの日から、俺は、俺の残りの人生を、全てこいつにやったつもりでいると言うのに。
まぁ、それは良いのだが。ひっつき過ぎだ。こいつは俺をベッドから押し出すつもりか?
と、言うか、朝起きたら魔道士に押し出されてベッドから転落してた事は何回もあったな……
………………それにしても好き放題言ってくれちゃって。
俺が魔道士との2人旅に文句を言った事など……まあ、ちょっとしか無い。
パートナー……ねぇ。もうとっくに諦めているよ。
『ホッホッホ。良く、あたしの不老不氏の夢を見事に打ち砕いてくれたね。この憤りは君の命で晴らすとするよ』
そう、こいつに言われたあの日から、俺は、俺の残りの人生を、全てこいつにやったつもりでいると言うのに。
13: 2015/08/27(木) 03:20:11.363
魔道士「で、どうしたの?まさか、緊張して、眠れないとか?」
魔道士「なぁーんだ。可愛いいトコあるじゃん」
冒険者「んな訳ないでしょ」
魔道士「あっそ。まあ、今更、添い寝位で緊張しないよねぇ」
確かに。今更、魔道士の添い寝位で緊張はしないが……
冒険者「お前は、こーんな状況でも、ゆったりリラックスして眠れるのか?」
先程から、この周囲の空気がビリビリと振動して居る様に感じる。
怒気だか覇気だか殺気だか知らないけど、この島の武闘家同士の果たし合いか何かか?
まあ、場所が場所だから、そーいうのも日常茶飯事なのかも知れないが、時間を考えて欲しい。
普通に近所迷惑だ、とかは思わないんだろうか?
魔道士「あたしは、こーんな状況でも、ゆったりリラックスして眠れるよー」
魔道士「けど、まぁ。ちょっと、面白そうだし、夜のお散歩にでも行かない?」
冒険者「行かないよ。何で、わざわざ自分からトラブルに首を突っ込まなきゃならんのだ」
そんな事する位なら、このまま我慢して、魔道士の腕にでも抱かれていた方がはるかにマシだ。
魔道士「なぁーんだ。可愛いいトコあるじゃん」
冒険者「んな訳ないでしょ」
魔道士「あっそ。まあ、今更、添い寝位で緊張しないよねぇ」
確かに。今更、魔道士の添い寝位で緊張はしないが……
冒険者「お前は、こーんな状況でも、ゆったりリラックスして眠れるのか?」
先程から、この周囲の空気がビリビリと振動して居る様に感じる。
怒気だか覇気だか殺気だか知らないけど、この島の武闘家同士の果たし合いか何かか?
まあ、場所が場所だから、そーいうのも日常茶飯事なのかも知れないが、時間を考えて欲しい。
普通に近所迷惑だ、とかは思わないんだろうか?
魔道士「あたしは、こーんな状況でも、ゆったりリラックスして眠れるよー」
魔道士「けど、まぁ。ちょっと、面白そうだし、夜のお散歩にでも行かない?」
冒険者「行かないよ。何で、わざわざ自分からトラブルに首を突っ込まなきゃならんのだ」
そんな事する位なら、このまま我慢して、魔道士の腕にでも抱かれていた方がはるかにマシだ。
14: 2015/08/27(木) 03:20:45.932
魔道士「えぇーつれないなぁ」
魔道士「あたしはさぁ、ちょっとでも冒険者との旅の思い出を作りたいんだよ」
魔道士「毎日、毎日、忘れられない今日にしたいなぁー、なんて思ってるんだけど……ダメ?」
冒険者「………」
魔道士「良いよ良いよ。だったら、睡眠の妨げになってる辺り一帯を、適当に、無造作に、無差別に破壊し尽くすだけだし」
魔道士「まあ、ちょっと二次被害とかあるかもしれないけど、静かにはなるでしょ」
冒険者「……はいはい、分かりましたよ。行けば宜しいんでしょう?お供致しますよ、お姫様。ちくしょう」
魔道士「わぁーい。ありがとー」
魔道士「やっぱり、あたしのワガママもなんだかんだ、付き合ってくれる。そんなあなたが、あたしは大好きだよ」
脅迫しといて、何を言ってるんだか、この女は。
ただ、まぁ悪い気はしない。良い気もしないけど。
魔道士「あたしはさぁ、ちょっとでも冒険者との旅の思い出を作りたいんだよ」
魔道士「毎日、毎日、忘れられない今日にしたいなぁー、なんて思ってるんだけど……ダメ?」
冒険者「………」
魔道士「良いよ良いよ。だったら、睡眠の妨げになってる辺り一帯を、適当に、無造作に、無差別に破壊し尽くすだけだし」
魔道士「まあ、ちょっと二次被害とかあるかもしれないけど、静かにはなるでしょ」
冒険者「……はいはい、分かりましたよ。行けば宜しいんでしょう?お供致しますよ、お姫様。ちくしょう」
魔道士「わぁーい。ありがとー」
魔道士「やっぱり、あたしのワガママもなんだかんだ、付き合ってくれる。そんなあなたが、あたしは大好きだよ」
脅迫しといて、何を言ってるんだか、この女は。
ただ、まぁ悪い気はしない。良い気もしないけど。
15: 2015/08/27(木) 03:23:03.533
そうこうして。結局、『おねだり』に屈した俺は、魔道士を連れて夜の散歩へと繰り出した。
魔道士「んーとねー。あぁ、そうだ。あたしさ、闘技大会楽しみにしてたじゃん?」
魔道士「だからさ、その代わりになるかなーって思って」
魔道士「たぶんさ、屈強な武闘家さん達が果たし合いか、何かやってるんだと思うんだよね」
魔道士「あたしたちは、物陰にでも隠れて、こっそり観戦しちゃうとか、良くない?どう?」
冒険者「あぁそう。良いんじゃない」
そんな微妙な言い訳をする位なら、最初から言わなきゃいいのに。
魔道士「えー何?怒ってんの?」
別に何も怒っちゃいないが、単なる果たし合いとかでは無い様な気配を感じる。
ま~た、何だか面倒くさい事に巻き込まれる様な、そんな気がする。
ゆえに、ちょっと用心した方が良いかな、位は思っているが、別にそれで機嫌が悪い訳では無い。
冒険者「別に。あぁ、でも観戦希望ならイイモノがあるよ」
俺は懐から小さな薬品瓶を取り出した。中には『きえさりそう』とか言う魔草の粉末がぎっしりと詰まっている。
その名の通り、使うと一定時間、姿を消す事の出来る不思議な霊薬である。
以前、立ち寄った街の道具屋で、そこの看板娘に『オススメの看板商品だよ』などと勧められ、じゃあモノは試しと買ったは良いが、中々使う機会に恵まれずにいた。
魔道士「んーとねー。あぁ、そうだ。あたしさ、闘技大会楽しみにしてたじゃん?」
魔道士「だからさ、その代わりになるかなーって思って」
魔道士「たぶんさ、屈強な武闘家さん達が果たし合いか、何かやってるんだと思うんだよね」
魔道士「あたしたちは、物陰にでも隠れて、こっそり観戦しちゃうとか、良くない?どう?」
冒険者「あぁそう。良いんじゃない」
そんな微妙な言い訳をする位なら、最初から言わなきゃいいのに。
魔道士「えー何?怒ってんの?」
別に何も怒っちゃいないが、単なる果たし合いとかでは無い様な気配を感じる。
ま~た、何だか面倒くさい事に巻き込まれる様な、そんな気がする。
ゆえに、ちょっと用心した方が良いかな、位は思っているが、別にそれで機嫌が悪い訳では無い。
冒険者「別に。あぁ、でも観戦希望ならイイモノがあるよ」
俺は懐から小さな薬品瓶を取り出した。中には『きえさりそう』とか言う魔草の粉末がぎっしりと詰まっている。
その名の通り、使うと一定時間、姿を消す事の出来る不思議な霊薬である。
以前、立ち寄った街の道具屋で、そこの看板娘に『オススメの看板商品だよ』などと勧められ、じゃあモノは試しと買ったは良いが、中々使う機会に恵まれずにいた。
17: 2015/08/27(木) 03:23:35.070
魔道士「ゲェー何それ?超マズそう。何その色?ショッキングパープル?光ってんじゃん」
魔道士「それ、飲むの?毒薬?」
冒険者「飲まねーし、毒薬でも無い。てか、何でこのタイミングで毒薬出すんだよ。おかしいだろ。」
冒険者「これを体に振りかければ、たちまち透明人間になっちゃう素敵で不思議な魔法のお薬、らしいぞ?」
道具屋の娘に言われたセールストークをそのまま伝える。
冒険者「コレ使えばわざわざ隠れなくても、堂々と特等席で観戦出来るだろ?」
魔道士「うわーエッローい。スケベ。そんなイヤラシイ薬持ってたんだぁーへーぇー」
冒険者「は?何が?何を勘違いしてるのか知らないが、買ったっきりで、まだ使った事無いぞ?」
魔道士「ふーん。普通、透明人間になれるなら、あんな事やこんな事、試してみるもんじゃないの?」
冒険者「どんな事する気かは知らないが、普通、そんな下らない事に高価な霊薬なんて使わないんじゃ無いの?」
魔道士「へぇー。それ高いんだ?」
冒険者「まぁな。と言うか、霊薬とか魔法薬に関しては、お前のが詳しいだろ?」
冒険者「昔、怪しいの色々作ってたじゃねーか」
魔道士「んー。だって、そっち方面のは専門外だしー」
魔道士「それに、あたし透化呪文使えるしなー今まで特に必要無かったしなー」
冒険者「ああ、そう。なら、確かにわざわざコレ使わなくても良いか」
魔道士「ちょっと待って!!」
冒険者「ん?なんだよ」
魔道士「いやぁーせっかく、冒険者が、わざわざ、あたしの為に、用意してくれたアイテムだし」
魔道士「あたしとしては、ドバーッと顔にかけて貰うのも、やぶさかでない、と言うか……」
魔道士「むしろ、シて欲しいと言うか……何と言うか……」
はぁ、また訳の分からん事を。
冒険者「何だか知らないけど、使うなら使うで、良いからさっさと行くぞ」
魔道士「それ、飲むの?毒薬?」
冒険者「飲まねーし、毒薬でも無い。てか、何でこのタイミングで毒薬出すんだよ。おかしいだろ。」
冒険者「これを体に振りかければ、たちまち透明人間になっちゃう素敵で不思議な魔法のお薬、らしいぞ?」
道具屋の娘に言われたセールストークをそのまま伝える。
冒険者「コレ使えばわざわざ隠れなくても、堂々と特等席で観戦出来るだろ?」
魔道士「うわーエッローい。スケベ。そんなイヤラシイ薬持ってたんだぁーへーぇー」
冒険者「は?何が?何を勘違いしてるのか知らないが、買ったっきりで、まだ使った事無いぞ?」
魔道士「ふーん。普通、透明人間になれるなら、あんな事やこんな事、試してみるもんじゃないの?」
冒険者「どんな事する気かは知らないが、普通、そんな下らない事に高価な霊薬なんて使わないんじゃ無いの?」
魔道士「へぇー。それ高いんだ?」
冒険者「まぁな。と言うか、霊薬とか魔法薬に関しては、お前のが詳しいだろ?」
冒険者「昔、怪しいの色々作ってたじゃねーか」
魔道士「んー。だって、そっち方面のは専門外だしー」
魔道士「それに、あたし透化呪文使えるしなー今まで特に必要無かったしなー」
冒険者「ああ、そう。なら、確かにわざわざコレ使わなくても良いか」
魔道士「ちょっと待って!!」
冒険者「ん?なんだよ」
魔道士「いやぁーせっかく、冒険者が、わざわざ、あたしの為に、用意してくれたアイテムだし」
魔道士「あたしとしては、ドバーッと顔にかけて貰うのも、やぶさかでない、と言うか……」
魔道士「むしろ、シて欲しいと言うか……何と言うか……」
はぁ、また訳の分からん事を。
冒険者「何だか知らないけど、使うなら使うで、良いからさっさと行くぞ」
18: 2015/08/27(木) 03:24:50.034
魔道士とバカやってる間にも、事態は進展していたらしく、ぼんやりとしていた威圧感と言うか、緊迫感みたいな雰囲気も、はっきりくっきり、殺気に変わっていた。それも複数。
その殺気たるや、『押忍!!俺たち、今からココで頃しやります。ウッス』位の勢いだったから、現場まで、迷わずすぐに来れた。
思った通り、1対1の果たし合い。なんかではなく、怪しい黒装束が団体6名様でいらっしゃった。
黒装束その1「なぜ、今夜の集会に来なかった?」
黒装束その2「お前、式にも参列していないだろう?どこで、何をしている?」
黒装束その3「最近のお前の行動は目に余る。一体どうしたんだ?」
黒装束その4「お前は、自分の立場が分かっていない」
黒装束その5「いつも、のらりくらりと、躱して逃げるが、今回はそうはいかんぞ?」
1人を5人で取り囲み、何やら凄い剣幕で、糾弾していた。
何だこれ?イジメか?もう、返答次第では集団私刑に発展しかねない雰囲気である。
黒装束その6「もしかしてだけどぉ~もしかしてだけどぉ~私、疑われてる……のか?」
黒装束その1「…………ああ、そうだ。小娘」
黒装束その6「いやいやいや、ちょっと待ってよ。師父の事だったら、病氏なんでしょ?」
黒装束その1「不審な点が、全く無い訳では無い」
黒装束その3「お前が潔白だと言うなら、大人しく我らについて来い」
黒装束その5「弁明なら、後で幾らでも聞こう」
黒装束その6「いやいや、だからさ~仮に、なんか不審なトコがあったと、してさ」
黒装束その6「何で、私なのさ?私の腕で師父をどうこう…なんて出来っこないじゃん?」
黒装束その6「それくらいの事は、皆知ってるでしょ?」
その殺気たるや、『押忍!!俺たち、今からココで頃しやります。ウッス』位の勢いだったから、現場まで、迷わずすぐに来れた。
思った通り、1対1の果たし合い。なんかではなく、怪しい黒装束が団体6名様でいらっしゃった。
黒装束その1「なぜ、今夜の集会に来なかった?」
黒装束その2「お前、式にも参列していないだろう?どこで、何をしている?」
黒装束その3「最近のお前の行動は目に余る。一体どうしたんだ?」
黒装束その4「お前は、自分の立場が分かっていない」
黒装束その5「いつも、のらりくらりと、躱して逃げるが、今回はそうはいかんぞ?」
1人を5人で取り囲み、何やら凄い剣幕で、糾弾していた。
何だこれ?イジメか?もう、返答次第では集団私刑に発展しかねない雰囲気である。
黒装束その6「もしかしてだけどぉ~もしかしてだけどぉ~私、疑われてる……のか?」
黒装束その1「…………ああ、そうだ。小娘」
黒装束その6「いやいやいや、ちょっと待ってよ。師父の事だったら、病氏なんでしょ?」
黒装束その1「不審な点が、全く無い訳では無い」
黒装束その3「お前が潔白だと言うなら、大人しく我らについて来い」
黒装束その5「弁明なら、後で幾らでも聞こう」
黒装束その6「いやいや、だからさ~仮に、なんか不審なトコがあったと、してさ」
黒装束その6「何で、私なのさ?私の腕で師父をどうこう…なんて出来っこないじゃん?」
黒装束その6「それくらいの事は、皆知ってるでしょ?」
20: 2015/08/27(木) 03:25:23.397
黒装束その2「ふん。拳聖様は以前から、胸を患せておいだ」
黒装束その4「さよう。それに、もうかなりの高齢でいらっしゃった。」
黒装束その5「やり方次第では、どうとでも出来よう」
黒装束その1「もう、良い。大人しく、従うつもりが無いのなら、我らが力づくでも牢に繋ぐまで」
黒装束その6「そんなッ!!酷いじゃん。あんまりだョーーー
シュン
黒装束その6が、目にも止まらぬ早技で黒装束5人の間を駆け抜けた。
『ぐげぁあぉおお』
3人分位の声にならない悲鳴が響く。全員、全身をズタズタに切り裂かれて……うん、かなり痛そう。
首をはねられてる奴も居るが、楽に氏ねた分、まだ有情……なのか?
と言うか、この技、何か見覚えがあるなぁ。それも、つい最近。
黒装束その4「さよう。それに、もうかなりの高齢でいらっしゃった。」
黒装束その5「やり方次第では、どうとでも出来よう」
黒装束その1「もう、良い。大人しく、従うつもりが無いのなら、我らが力づくでも牢に繋ぐまで」
黒装束その6「そんなッ!!酷いじゃん。あんまりだョーーー
シュン
黒装束その6が、目にも止まらぬ早技で黒装束5人の間を駆け抜けた。
『ぐげぁあぉおお』
3人分位の声にならない悲鳴が響く。全員、全身をズタズタに切り裂かれて……うん、かなり痛そう。
首をはねられてる奴も居るが、楽に氏ねた分、まだ有情……なのか?
と言うか、この技、何か見覚えがあるなぁ。それも、つい最近。
21: 2015/08/27(木) 03:25:49.475
黒装束その6「バ~カ。痩せようが枯れようが病もうが、あんなバケモンどうこう出来るわきゃね~よ」
黒装束その6「それと、人を見掛けで判断しちゃ~いけね~よ。って、いっつも忠告してやってただルルォ?」
黒装束その6「私の気が長いって、勝手に判断して高を括るから、そ~いう手痛い目に合うんだぜ」
黒装束その6「けどまぁ、力量を見極める目も無い、気配も読めない、何より、5人掛かりで小娘相手に不覚を取る」
黒装束その6「そんなんじゃ甘いよ。君たちも、そう、思わないかな?」
黒装束はスルスルと頭巾を取り、その真っ直ぐな瞳で、こちらを向いた。
武闘家「フッフッフ。私の目は誤魔化されんよ。冒険者君と魔道士ちゃんでしょ?」
冒険者「おや、普通は見えない筈だが……やっぱり凄いですね、武闘家さんは」
武闘家「なんのなんの。こんくらい普通だって」
武闘家「それに、目って言ったけど見えてる訳じゃなくて、気配を感じるってだけだよ」
武闘家「それはそれとして、姿見せてくれないかな~?折り入って、お願いしたい事があるんだ」
冒険者「ああ、ちょっとお待ちを」
とは言っても、薬の効果時間はまだ少し残ってる筈だし……仕方ないな。
俺は、解呪薬が入った小瓶を懐から取り出した。
黒装束その6「それと、人を見掛けで判断しちゃ~いけね~よ。って、いっつも忠告してやってただルルォ?」
黒装束その6「私の気が長いって、勝手に判断して高を括るから、そ~いう手痛い目に合うんだぜ」
黒装束その6「けどまぁ、力量を見極める目も無い、気配も読めない、何より、5人掛かりで小娘相手に不覚を取る」
黒装束その6「そんなんじゃ甘いよ。君たちも、そう、思わないかな?」
黒装束はスルスルと頭巾を取り、その真っ直ぐな瞳で、こちらを向いた。
武闘家「フッフッフ。私の目は誤魔化されんよ。冒険者君と魔道士ちゃんでしょ?」
冒険者「おや、普通は見えない筈だが……やっぱり凄いですね、武闘家さんは」
武闘家「なんのなんの。こんくらい普通だって」
武闘家「それに、目って言ったけど見えてる訳じゃなくて、気配を感じるってだけだよ」
武闘家「それはそれとして、姿見せてくれないかな~?折り入って、お願いしたい事があるんだ」
冒険者「ああ、ちょっとお待ちを」
とは言っても、薬の効果時間はまだ少し残ってる筈だし……仕方ないな。
俺は、解呪薬が入った小瓶を懐から取り出した。
22: 2015/08/27(木) 03:27:03.543
武闘家「ん~どこから話したもんかな~」
魔道士「話を聞く前に……」
ゴウッ
魔道士が指を鳴らすと同時に、元黒装束だった肉が炎に包まれた。
魔道士「やる事やったら、ちゃんと証拠隠滅しなきゃね」
魔道士「まだ、息のある人も居たみたいだけど……」
魔道士「武闘家ちゃんって、人間相手だと、技に迷いが出るタイプ?」
煌々と、燃ゆる炎を瞳に揺らし、狂気の笑みを浮かべる魔道士。
あぁ、やっぱ悪役度はこいつのが一枚上手だな。
武闘家「かぁ~魔道士ちゃん、アンタすっげぇなぁ~」
冒険者「……まあ、こんなトコで立ち話もなんですし、話なら俺たちの宿ででも、ゆっくりお伺いしますよ」
魔道士「えぇー何か、すっげぇ面倒くさそうなんですけどぉー」
武闘家「ありがとう。すっげぇ助かるよ」
愚痴る魔道士は無視して、俺たちは元いた宿へと向かった。
魔道士「話を聞く前に……」
ゴウッ
魔道士が指を鳴らすと同時に、元黒装束だった肉が炎に包まれた。
魔道士「やる事やったら、ちゃんと証拠隠滅しなきゃね」
魔道士「まだ、息のある人も居たみたいだけど……」
魔道士「武闘家ちゃんって、人間相手だと、技に迷いが出るタイプ?」
煌々と、燃ゆる炎を瞳に揺らし、狂気の笑みを浮かべる魔道士。
あぁ、やっぱ悪役度はこいつのが一枚上手だな。
武闘家「かぁ~魔道士ちゃん、アンタすっげぇなぁ~」
冒険者「……まあ、こんなトコで立ち話もなんですし、話なら俺たちの宿ででも、ゆっくりお伺いしますよ」
魔道士「えぇー何か、すっげぇ面倒くさそうなんですけどぉー」
武闘家「ありがとう。すっげぇ助かるよ」
愚痴る魔道士は無視して、俺たちは元いた宿へと向かった。
24: 2015/08/27(木) 03:27:37.338
魔道士「ほーら、やっぱ面倒な話だったじゃん?どーすんのよ?」
冒険者「元々、面倒な話にクビ突っ込んだのはお前だろ?諦めろ。だから俺は最初に止めたろ。」
武闘家「お願いだよ~もう頼れるのは、お二人しかいないんだよ~」
武闘家「天涯孤独、孤立無援、絶対絶命って感じで、マジヤバイんだって~頼むよ~」
武闘家の話をまとめると、こんな感じ。
数日前、第63代拳聖様が亡くなられた件で、何らかの関与を疑われ……
『新しい拳聖様にとって、私の存在は邪魔なんだ。だから、この機に私を消すつもりなんだ……』
と、武闘家は濡れ衣を主張するが……
はてさて、どうしたものかな?先程、あっさりと数人虐頃した彼女の言葉を、どこまで信じていいものか。
まあ、少なくとも、人を生きたまま燃やして炭化させる様な外道でない事は確かだが……
武闘家「もう、この島には居られない。私は、濡れ衣で粛清されるなんてヤダよ」
武闘家「冒険者君は、海を渡って来たんでしょ?だから、帰りに同伴させて欲しいんだ。私を島から出して欲しい」
ん~そうだなぁ。まあ、結構可愛い子だしなぁ。いっちょ助けてみるのも、やぶさかでないな。
面倒臭い事になったらなったで、それも楽しい旅の思い出って事で、魔道士には納得して貰おうかな。
冒険者「解りました。引き受けましょう」
魔道士「あたしは、ヤだけど」
冒険者「武闘家さんがお困りでいらっしゃる。助けて差し上げろ」
冒険者「後は、まあ、何だ。旅の思い出……なんだろ?」
魔道士「……まあ、冒険者がそう言うんじゃ仕方ないよね」
魔道士「ハァ。結局、こーいうとき折れるのはあたしの方なんだよなぁーこれが惚れた弱みってやつかな?もう慣れたけど」
冒険者「元々、面倒な話にクビ突っ込んだのはお前だろ?諦めろ。だから俺は最初に止めたろ。」
武闘家「お願いだよ~もう頼れるのは、お二人しかいないんだよ~」
武闘家「天涯孤独、孤立無援、絶対絶命って感じで、マジヤバイんだって~頼むよ~」
武闘家の話をまとめると、こんな感じ。
数日前、第63代拳聖様が亡くなられた件で、何らかの関与を疑われ……
『新しい拳聖様にとって、私の存在は邪魔なんだ。だから、この機に私を消すつもりなんだ……』
と、武闘家は濡れ衣を主張するが……
はてさて、どうしたものかな?先程、あっさりと数人虐頃した彼女の言葉を、どこまで信じていいものか。
まあ、少なくとも、人を生きたまま燃やして炭化させる様な外道でない事は確かだが……
武闘家「もう、この島には居られない。私は、濡れ衣で粛清されるなんてヤダよ」
武闘家「冒険者君は、海を渡って来たんでしょ?だから、帰りに同伴させて欲しいんだ。私を島から出して欲しい」
ん~そうだなぁ。まあ、結構可愛い子だしなぁ。いっちょ助けてみるのも、やぶさかでないな。
面倒臭い事になったらなったで、それも楽しい旅の思い出って事で、魔道士には納得して貰おうかな。
冒険者「解りました。引き受けましょう」
魔道士「あたしは、ヤだけど」
冒険者「武闘家さんがお困りでいらっしゃる。助けて差し上げろ」
冒険者「後は、まあ、何だ。旅の思い出……なんだろ?」
魔道士「……まあ、冒険者がそう言うんじゃ仕方ないよね」
魔道士「ハァ。結局、こーいうとき折れるのはあたしの方なんだよなぁーこれが惚れた弱みってやつかな?もう慣れたけど」
25: 2015/08/27(木) 03:29:05.113
かくて、俺たちの『聖なる武闘家の島脱出計画』は始まった。
魔道士「あのさぁ、これどこ向かって走ってんの?」
武闘家「すまねぇ、魔道士ちゃん。けど、善は急げって言うじゃろ?」
魔道士「いや、そうじゃなくって。何で、あたしたち島の中心に向かってんの?島から脱出するんでしょ?」
武闘家「すまねぇ、すまねぇ。でも、流石に手ぶらで脱出するのはちょっと……」
武闘家「荷物位は取らせてくれぃ。ワシにも生活があるんじゃ~」
魔道士「どーでも良いけど。それが命取りになっても知らないよ?」
武闘家「頼りにしてるぜ~用心棒さん」
冒険者「そうだぞ。良かったじゃないか。こんな奥の奥まで見学出来て。立ち入り禁止エリアだぞ」
魔道士「もう、どーでも良い。やっぱあたしの呪法で島民皆頃しにするか、島ごと吹き飛ばそうよー」
魔道士「その方が、絶対早いってー後腐れも無いよー」
冒険者「却下だ」
武闘家「ウヘェ~頼もし過ぎるぜ~とっつあ~ん。けど、それは流石に勘弁してくれ~」
武闘家「こんな私でも、故郷はやっぱ大事なんだよ」
武闘家はここで足を止め、いつもの屈託の無い、太陽の様な明るい笑みでこちらを振り向いた。
魔道士「あのさぁ、これどこ向かって走ってんの?」
武闘家「すまねぇ、魔道士ちゃん。けど、善は急げって言うじゃろ?」
魔道士「いや、そうじゃなくって。何で、あたしたち島の中心に向かってんの?島から脱出するんでしょ?」
武闘家「すまねぇ、すまねぇ。でも、流石に手ぶらで脱出するのはちょっと……」
武闘家「荷物位は取らせてくれぃ。ワシにも生活があるんじゃ~」
魔道士「どーでも良いけど。それが命取りになっても知らないよ?」
武闘家「頼りにしてるぜ~用心棒さん」
冒険者「そうだぞ。良かったじゃないか。こんな奥の奥まで見学出来て。立ち入り禁止エリアだぞ」
魔道士「もう、どーでも良い。やっぱあたしの呪法で島民皆頃しにするか、島ごと吹き飛ばそうよー」
魔道士「その方が、絶対早いってー後腐れも無いよー」
冒険者「却下だ」
武闘家「ウヘェ~頼もし過ぎるぜ~とっつあ~ん。けど、それは流石に勘弁してくれ~」
武闘家「こんな私でも、故郷はやっぱ大事なんだよ」
武闘家はここで足を止め、いつもの屈託の無い、太陽の様な明るい笑みでこちらを振り向いた。
26: 2015/08/27(木) 03:29:32.835
武闘家「んじゃ、すぐ戻ってくるからココで待っててね~」
武闘家「あ、そだ。お礼って訳じゃ無いけど、この辺りに色々あるモノ何でも好きなだけ持って行って良いよ~」
とか言って、武闘家は再び廊下を駆けて行った。
今、俺たちが居るのは大きな楕円形のホール。聖堂、とか言ってたかな?
何か色々、国宝的なモノも安置されてる様だが…さて。
冒険者「だ、そうだが。どうする?」
魔道士「んーあたしは欲しいモノ無いなぁー。冒険者は?」
冒険者「んーどうすっかなー俺もなー」
国宝的なモノって捌くのが中々難しいんだよな。闇市でも買取拒否されたり、値が付かなかったたりして……
ん~とりあえず、個人的に使えそうなモノでもちょっと、拝借しておくか。
武闘家「あ、そだ。お礼って訳じゃ無いけど、この辺りに色々あるモノ何でも好きなだけ持って行って良いよ~」
とか言って、武闘家は再び廊下を駆けて行った。
今、俺たちが居るのは大きな楕円形のホール。聖堂、とか言ってたかな?
何か色々、国宝的なモノも安置されてる様だが…さて。
冒険者「だ、そうだが。どうする?」
魔道士「んーあたしは欲しいモノ無いなぁー。冒険者は?」
冒険者「んーどうすっかなー俺もなー」
国宝的なモノって捌くのが中々難しいんだよな。闇市でも買取拒否されたり、値が付かなかったたりして……
ん~とりあえず、個人的に使えそうなモノでもちょっと、拝借しておくか。
27: 2015/08/27(木) 03:30:22.234
武闘家「いや~お待たせ」
武闘家「あれ?何も取らなくて良いのかい?」
冒険者「いえ、使えそうなアイテムを少々頂きましたよ」
魔道士「あたしは欲しいモノないからパース」
魔道士「あたしが欲しいのは、例え何百年生きようとも、得難い様な充実感」
魔道士「モノじゃ、あたしは満たされないの」
武闘家「そっか~。私もここ出たら、そんな人生を送ってみるのも悪くないかな~」
冒険者「きっと出来ますよ。武闘家さんなら」
武闘家「ありがとう。冒険者君は、優しい人だね」
魔道士「けっ。善人ヅラしちゃってさー」
魔道士「前から思ってたけど、あたしと武闘家ちゃんとで、態度違い過ぎじゃね?」
冒険者「そんな事は……あるな」
魔道士「やーい、偽善者ー多重人格者ー人格破綻者ー」
冒険者『反射呪文』
ピキィーン
俺と魔道士の間に呪文を反射する、薄い光の膜が生まれる
魔道士「なっ!?何よそれ?皮肉のつもり?」
武闘家「あれ?何も取らなくて良いのかい?」
冒険者「いえ、使えそうなアイテムを少々頂きましたよ」
魔道士「あたしは欲しいモノないからパース」
魔道士「あたしが欲しいのは、例え何百年生きようとも、得難い様な充実感」
魔道士「モノじゃ、あたしは満たされないの」
武闘家「そっか~。私もここ出たら、そんな人生を送ってみるのも悪くないかな~」
冒険者「きっと出来ますよ。武闘家さんなら」
武闘家「ありがとう。冒険者君は、優しい人だね」
魔道士「けっ。善人ヅラしちゃってさー」
魔道士「前から思ってたけど、あたしと武闘家ちゃんとで、態度違い過ぎじゃね?」
冒険者「そんな事は……あるな」
魔道士「やーい、偽善者ー多重人格者ー人格破綻者ー」
冒険者『反射呪文』
ピキィーン
俺と魔道士の間に呪文を反射する、薄い光の膜が生まれる
魔道士「なっ!?何よそれ?皮肉のつもり?」
28: 2015/08/27(木) 03:31:01.067
冒険者「ああ、そうだよ。お前だけには言われたくねぇ」
魔道士「なにをー。バーカバーカ。冒険者のバーカ」
魔道士「くっだらねぇー事にわざわざ魔力消費してんじゃねーよ」
武闘家「まぁまぁまぁ。お待たせしてなんだけど、痴話喧嘩は後でゆっくりしておくれ~」
冒険者「ああ、すみません。それじゃ、そろそろ行きましょうか。こいつの機嫌は、後で何とかしときますんで」
武闘家「タハハ。な~んかお二人ってさ~長年連れ添った熟年夫婦って感じだよね」
武闘家「なんつ~の?只ならぬ関係っつ~の?」
冒険者「まぁ……そうですね。夫婦ではありませんが。深い縁には違い無いですよ」
冒険者「なぁ?」
魔道士「……知らないもーん」
プイっと、視線を逸らす魔道士。今更、照れる事もあるまいに。
武闘家「そっか~何だか妬けるぜ、ちくしょう」
冒険者「……。まあまあ、さっさと島から脱出しちゃいましょう。でないと、何も出来ませんよ」
武闘家「ん。そだね。じゃ、行こっか」
そう言うと、三度、武闘家は駆け出した。
魔道士「なにをー。バーカバーカ。冒険者のバーカ」
魔道士「くっだらねぇー事にわざわざ魔力消費してんじゃねーよ」
武闘家「まぁまぁまぁ。お待たせしてなんだけど、痴話喧嘩は後でゆっくりしておくれ~」
冒険者「ああ、すみません。それじゃ、そろそろ行きましょうか。こいつの機嫌は、後で何とかしときますんで」
武闘家「タハハ。な~んかお二人ってさ~長年連れ添った熟年夫婦って感じだよね」
武闘家「なんつ~の?只ならぬ関係っつ~の?」
冒険者「まぁ……そうですね。夫婦ではありませんが。深い縁には違い無いですよ」
冒険者「なぁ?」
魔道士「……知らないもーん」
プイっと、視線を逸らす魔道士。今更、照れる事もあるまいに。
武闘家「そっか~何だか妬けるぜ、ちくしょう」
冒険者「……。まあまあ、さっさと島から脱出しちゃいましょう。でないと、何も出来ませんよ」
武闘家「ん。そだね。じゃ、行こっか」
そう言うと、三度、武闘家は駆け出した。
29: 2015/08/27(木) 03:31:53.538
武闘家「天への歩道。島から脱出するにあたって、大きな障害が一つあるんだ」
目の前には巨大な門がある。あぁ、魔道士が門番誑かして、進入出来たあの門か。
武闘家「ここの門番はさ、それはそれは頭の固いやつでさ」
武闘家「よっと」
武闘家が仰々しい扉の取っ手を両手で掴み
ガシャンッ ギギギ
『なるほど、きさまであったか。納得したわ』
門の中から声が聞こえる。
目の前には巨大な門がある。あぁ、魔道士が門番誑かして、進入出来たあの門か。
武闘家「ここの門番はさ、それはそれは頭の固いやつでさ」
武闘家「よっと」
武闘家が仰々しい扉の取っ手を両手で掴み
ガシャンッ ギギギ
『なるほど、きさまであったか。納得したわ』
門の中から声が聞こえる。
30: 2015/08/27(木) 03:32:17.860
『フフフ…伝承者以外には道を開かぬ筈の、天への歩道を通り抜け』
『なんの予告もなく正面から、この、黄泉比良坂に入り込んでくる不穏な気配が三つ』
『なるほどな。きさまなら当然ここへも入れる訳だ』
『壱式と呼ばれた、偉大なる伝承者。武闘家よ!!』
武闘家「下らない冗談はやめてよ」
武闘家「私はもう、伝承者なんかじゃない。」
武闘家「でも、やっぱり……と、言うかなんと言うか、ここの番人は、相変わらず君なんだね」
門番「当然だ。それが天よりこの私。参式に託された、未来永劫の使命」
姿を見せた門番は、最初に見た時とは違い、黒い鏡の様な鎧で完全武装していた。
武闘家「どうやら本気みたいだ…」
参式「かつては、きさまと良く、ここで闘ったな」
参式「仲間として…」
武闘家「そして今は敵として…か」
参式「神代からの黄泉比良坂の番人として、きさまをこの先に通す訳にはいかない!」
参式「だから、壱式。いや、武闘家よ。今日が私ときさまの闘い納めだ!!」
『なんの予告もなく正面から、この、黄泉比良坂に入り込んでくる不穏な気配が三つ』
『なるほどな。きさまなら当然ここへも入れる訳だ』
『壱式と呼ばれた、偉大なる伝承者。武闘家よ!!』
武闘家「下らない冗談はやめてよ」
武闘家「私はもう、伝承者なんかじゃない。」
武闘家「でも、やっぱり……と、言うかなんと言うか、ここの番人は、相変わらず君なんだね」
門番「当然だ。それが天よりこの私。参式に託された、未来永劫の使命」
姿を見せた門番は、最初に見た時とは違い、黒い鏡の様な鎧で完全武装していた。
武闘家「どうやら本気みたいだ…」
参式「かつては、きさまと良く、ここで闘ったな」
参式「仲間として…」
武闘家「そして今は敵として…か」
参式「神代からの黄泉比良坂の番人として、きさまをこの先に通す訳にはいかない!」
参式「だから、壱式。いや、武闘家よ。今日が私ときさまの闘い納めだ!!」
31: 2015/08/27(木) 03:32:54.234
ドォオオン
参式「ゴバァ~~ッ!」
ガシャン!!
参式の黒い鏡の鎧は……その中の肉体ごと、粉々に爆ぜた。
下手人は……
魔道士「さっきから、人の事、無視してんじゃねーよ」
かざした両の掌からは煙を上げて。悪魔が乗り移ったとしか思えない恐ろしい笑み。
粉々に砕け散った哀れな参式を一瞥する魔道士。
どうせ、極大爆裂呪文でも使ったのだろう。手取り早いが、相変わらず空気を読まない奴。
武闘家「嘘…」
信じられない。と言った様子で呆然とする武闘家。まあ、そりゃそうだろう。
武闘家「参式のあの鎧は、全ての魔法を弾く最強の鎧の筈なのに……ってか、魔道士ちゃん、今、呪文なんか唱えてたっけか?」
魔道士「あぁ、いるいる。そーいうの。どんな魔法も効かない最強の鎧?」
魔道士「良く聞くフレーズだけど、今まで、あたしの呪文に耐えた鎧は見たこと無いなぁー」
魔道士「みーんなあんな風に砕けちゃうんだよねーなんでかなー不思議だなー」
参式「ゴバァ~~ッ!」
ガシャン!!
参式の黒い鏡の鎧は……その中の肉体ごと、粉々に爆ぜた。
下手人は……
魔道士「さっきから、人の事、無視してんじゃねーよ」
かざした両の掌からは煙を上げて。悪魔が乗り移ったとしか思えない恐ろしい笑み。
粉々に砕け散った哀れな参式を一瞥する魔道士。
どうせ、極大爆裂呪文でも使ったのだろう。手取り早いが、相変わらず空気を読まない奴。
武闘家「嘘…」
信じられない。と言った様子で呆然とする武闘家。まあ、そりゃそうだろう。
武闘家「参式のあの鎧は、全ての魔法を弾く最強の鎧の筈なのに……ってか、魔道士ちゃん、今、呪文なんか唱えてたっけか?」
魔道士「あぁ、いるいる。そーいうの。どんな魔法も効かない最強の鎧?」
魔道士「良く聞くフレーズだけど、今まで、あたしの呪文に耐えた鎧は見たこと無いなぁー」
魔道士「みーんなあんな風に砕けちゃうんだよねーなんでかなー不思議だなー」
32: 2015/08/27(木) 03:33:27.683
実のところ、魔道士の呪文を防ぐ術は無いでも無い。
魔法力自体をゼロにするか、吸収するか、跳ね返すか、そういう防ぎ方なら防げるのだ。
ただ、今みたいに『どんな魔法も耐えられる』みたいなタイプのやつはムリだ。耐えた試しがない。
要は魔道士の圧倒的の魔力が、その耐魔性能を突き破ってしまうのだ。
俺も、その昔下手な呪文の防ぎ方をして、痛い目をみたもんだ。
あと、魔道士は、基本的に呪文は唱えない。
普通、人間が呪文を発動させるには『詠唱』が必要である。が、魔道士はその圧倒的な魔力を以って、詠唱を破棄して無理矢理、呪文を発動させている。
要するに、魔道士が頭で戦略を考えた次の瞬間には、もう呪文が炸裂してるって寸法だ。なんという危険人物。
魔法力自体をゼロにするか、吸収するか、跳ね返すか、そういう防ぎ方なら防げるのだ。
ただ、今みたいに『どんな魔法も耐えられる』みたいなタイプのやつはムリだ。耐えた試しがない。
要は魔道士の圧倒的の魔力が、その耐魔性能を突き破ってしまうのだ。
俺も、その昔下手な呪文の防ぎ方をして、痛い目をみたもんだ。
あと、魔道士は、基本的に呪文は唱えない。
普通、人間が呪文を発動させるには『詠唱』が必要である。が、魔道士はその圧倒的な魔力を以って、詠唱を破棄して無理矢理、呪文を発動させている。
要するに、魔道士が頭で戦略を考えた次の瞬間には、もう呪文が炸裂してるって寸法だ。なんという危険人物。
33: 2015/08/27(木) 03:33:51.436
武闘家「あの『鉄壁の門番』参式が、あんなあっさりヤられるなんて……」
武闘家「魔道士ちゃんて、一体……」
魔道士「んー。あたしはタダの旅の魔道士。あと、この人のがあたしより強いよー」
こらこら。何万回も闘って、最後に一回勝っただけだろ。まぐれだまぐれ。人を指差すでない。
武闘家「ホェ~。もしかして、どこかで魔王とか…してらっしゃったんですかね?」
冒険者「いいえ。俺も魔道士も、タダの一人の人間ですよ」
ニッコリと、答える俺だったが…
武闘家の少し怯えた様な目が、何故だか少しだけ哀しかった。こう言う目には、もう慣れたつもりだったが…
『そこまでです』
声は上から聞こえた。
武闘家「魔道士ちゃんて、一体……」
魔道士「んー。あたしはタダの旅の魔道士。あと、この人のがあたしより強いよー」
こらこら。何万回も闘って、最後に一回勝っただけだろ。まぐれだまぐれ。人を指差すでない。
武闘家「ホェ~。もしかして、どこかで魔王とか…してらっしゃったんですかね?」
冒険者「いいえ。俺も魔道士も、タダの一人の人間ですよ」
ニッコリと、答える俺だったが…
武闘家の少し怯えた様な目が、何故だか少しだけ哀しかった。こう言う目には、もう慣れたつもりだったが…
『そこまでです』
声は上から聞こえた。
34: 2015/08/27(木) 03:35:00.239
冒険者「よっと」
イヤな予感がして。俺は横にいた魔道士の手を引き、その場から後ろへ大きく距離を取った。
ズンッ!!
元いた場所は、突如上から降ってきた青年に踏み抜かれていた。
魔道士「ありがとー。あたしの事、庇ってくれたんだ?」
冒険者「バカ言え。お前は別に、放って置いても大丈夫だろ?今のは無意識に身体が動いただけだ」
魔道士「ふーん。素直じゃないやつ」
降ってきた青年は、武闘家と同年代か、やや下くらい。
武闘家が最初に会った時に着ていた闘着と、色こそ違うものの同じデザインのモノを身に付けていた。
武闘家「弍式ッ!そうかアンタが居たかッ」
弍式「流石に上手く避けるモノですね。今ので、どちらかお一人は仕留めたかったのですが……」
弍式「はじめまして。僕は弍式と言います」
弍式「こうなっては仕方がありませんね。少々、骨が折れますが、お二人同時にお相手致しましょう」
スッーーと、構える弍式と名乗る青年は……なるほど、並みの使い手では無いらしい。
そう思える程には、その構えは隙が無かった。
魔道士「ウフフ。あたしたちを先に狙うなんて、中々分かってるじゃん。さっきの人よりは期待出来そうだねぇッ」
イヤな予感がして。俺は横にいた魔道士の手を引き、その場から後ろへ大きく距離を取った。
ズンッ!!
元いた場所は、突如上から降ってきた青年に踏み抜かれていた。
魔道士「ありがとー。あたしの事、庇ってくれたんだ?」
冒険者「バカ言え。お前は別に、放って置いても大丈夫だろ?今のは無意識に身体が動いただけだ」
魔道士「ふーん。素直じゃないやつ」
降ってきた青年は、武闘家と同年代か、やや下くらい。
武闘家が最初に会った時に着ていた闘着と、色こそ違うものの同じデザインのモノを身に付けていた。
武闘家「弍式ッ!そうかアンタが居たかッ」
弍式「流石に上手く避けるモノですね。今ので、どちらかお一人は仕留めたかったのですが……」
弍式「はじめまして。僕は弍式と言います」
弍式「こうなっては仕方がありませんね。少々、骨が折れますが、お二人同時にお相手致しましょう」
スッーーと、構える弍式と名乗る青年は……なるほど、並みの使い手では無いらしい。
そう思える程には、その構えは隙が無かった。
魔道士「ウフフ。あたしたちを先に狙うなんて、中々分かってるじゃん。さっきの人よりは期待出来そうだねぇッ」
35: 2015/08/27(木) 03:35:33.938
ゴウッ
業火の波が弍式を襲う。
おいコラ。密室で閃熱呪文なんか、ブッ放すんじゃねぇよ。
ズバッ
弍式の手刀が真空を生み、炎の波を切り裂いた。
弍式「思ったより、凄い呪文だ。やっぱり僕ひとりじゃキツイかな?」
シュッ!
弍式「ッと……」
弍式は器用に宙返りで、その身に背後から迫り来る真空波を避けた。
武闘家「私も居るんだよ。魔道士ちゃんじゃね~けど、よくも私を無視してくれたモンだ」
弍式「別に無視なんてして居ませんよ?相変わらず大袈裟だなぁ、姉さんは」
弍式「ただ、ちょっと。僕が進入者二人を始末するまで、待っては貰えませんか?」
武闘家「ダメだね。それに進入者は二人じゃない。三人だよ」
弍式「どうあっても…考えは変わりませんか?」
武闘家「変わらない。それに、私がこの島を出なきゃいけなくなったのは、アンタのせいじゃん」
弍式「それは誤解ですよ。アレは僕の周りが色々、勝手にやっている事で、僕の本意ではありません」
弍式「本当です。信じて下さい。」
弍式「姉さんが、このまま素直に戻って来てくれるのなら、僕から皆に説明しますから」
武闘家「……。イヤだね。私は島を出るッ」
弍式「ふぅー。3対1か。コレは、いくら僕でもちょっとキツイな」
業火の波が弍式を襲う。
おいコラ。密室で閃熱呪文なんか、ブッ放すんじゃねぇよ。
ズバッ
弍式の手刀が真空を生み、炎の波を切り裂いた。
弍式「思ったより、凄い呪文だ。やっぱり僕ひとりじゃキツイかな?」
シュッ!
弍式「ッと……」
弍式は器用に宙返りで、その身に背後から迫り来る真空波を避けた。
武闘家「私も居るんだよ。魔道士ちゃんじゃね~けど、よくも私を無視してくれたモンだ」
弍式「別に無視なんてして居ませんよ?相変わらず大袈裟だなぁ、姉さんは」
弍式「ただ、ちょっと。僕が進入者二人を始末するまで、待っては貰えませんか?」
武闘家「ダメだね。それに進入者は二人じゃない。三人だよ」
弍式「どうあっても…考えは変わりませんか?」
武闘家「変わらない。それに、私がこの島を出なきゃいけなくなったのは、アンタのせいじゃん」
弍式「それは誤解ですよ。アレは僕の周りが色々、勝手にやっている事で、僕の本意ではありません」
弍式「本当です。信じて下さい。」
弍式「姉さんが、このまま素直に戻って来てくれるのなら、僕から皆に説明しますから」
武闘家「……。イヤだね。私は島を出るッ」
弍式「ふぅー。3対1か。コレは、いくら僕でもちょっとキツイな」
36: 2015/08/27(木) 03:35:56.989
ジリッ
再び弍式はその隙の無い構えを取る。
武闘家「安心しなよ。アンタとは私が1対1で闘ってやんよ」
魔道士「ちょっと。武闘家ちゃん横取りする気?」
武闘家「ごめん。魔道士ちゃん」
武闘家「けど、コイツは…コイツだけは私ひとりでやらせて欲しい」
武闘家「コイツは新しい、第64代拳聖。私の弟なんだ」
弍式「まだ、拳聖ではありませんよ。伝承式が終わるまでは、僕は弍式です」
武闘家「言ってろ。姉より優れた弟など存在しねぇ」
武闘家「お姉ちゃんの恐ろしさ。思い出させてやる」
再び弍式はその隙の無い構えを取る。
武闘家「安心しなよ。アンタとは私が1対1で闘ってやんよ」
魔道士「ちょっと。武闘家ちゃん横取りする気?」
武闘家「ごめん。魔道士ちゃん」
武闘家「けど、コイツは…コイツだけは私ひとりでやらせて欲しい」
武闘家「コイツは新しい、第64代拳聖。私の弟なんだ」
弍式「まだ、拳聖ではありませんよ。伝承式が終わるまでは、僕は弍式です」
武闘家「言ってろ。姉より優れた弟など存在しねぇ」
武闘家「お姉ちゃんの恐ろしさ。思い出させてやる」
37: 2015/08/27(木) 03:37:01.071
武闘家「この私の速い突きが躱せるか~ッ」
ププッ
突きに行くと見せ掛けて、武闘家は灯魚竜の様に頬を膨らませ、何か細い針の様なモノを3本吹き付けた。
って、格好良い事を言っておいて、いきなり騙し打ちかよ!?
弍式「毒針…ですか?変わらないなぁ姉さんは」
スッと立てた4本の指で、弍式は武闘家の放った毒針をあっさりと防いだ。
弍式「不意打ち、闇討ち、騙し討ち。相手が、正々堂々と闘ってくれると思うな」
弍式「修行時代に姉さんが良く教えてくれた、教訓ですよね」
弍式「あとは…何をしようが勝てばいい。それが全てだ。でしたっけ?」
武闘家「ああ、そ~だよッ!!」
ププッ
突きに行くと見せ掛けて、武闘家は灯魚竜の様に頬を膨らませ、何か細い針の様なモノを3本吹き付けた。
って、格好良い事を言っておいて、いきなり騙し打ちかよ!?
弍式「毒針…ですか?変わらないなぁ姉さんは」
スッと立てた4本の指で、弍式は武闘家の放った毒針をあっさりと防いだ。
弍式「不意打ち、闇討ち、騙し討ち。相手が、正々堂々と闘ってくれると思うな」
弍式「修行時代に姉さんが良く教えてくれた、教訓ですよね」
弍式「あとは…何をしようが勝てばいい。それが全てだ。でしたっけ?」
武闘家「ああ、そ~だよッ!!」
38: 2015/08/27(木) 03:37:31.835
それから、双方激しい拳法の撃ち合いで……勝負は長引くかに見えた。
武闘家「ゼェゼェゼェ」
弍式「もう、そろそろ限界ですか?」
武闘家「まだまだッ!」
弍式「フヒューッ!」
武闘家が片足を上げジャンピングキックを見せれば、弍式もそれが分かっていたかの様にジャンピングキックを放つ。
先程から、二人は合わせ鏡の様に同じ攻撃を激突させている。
弍式「奥義。体躯鸚鵡返し。どうですか?自分自身との闘いなんて、ちょっとした問答でしょう?」
武闘家「ゼェゼェ…ヘヘ。それで、私の真似のつもりだったのか……キレもコクも……全然、足りないね」
弍式「そうなんですよね。コクはともかく、今日の姉さんの技には、いつもキレが、全く無い。」
弍式「同じ技を同じ威力で繰り出せば、あとはお互いに体力勝負の根競べ」
弍式「壱式と呼ばれる姉さんと、技量で勝負するのはどうかと思って、体力勝負を仕掛けてみたものの…」
弍式「こんな程度なら、普通に勝負してあげれば良かったかな?」
弍式「それとも、もしかして姉さんん、僕相手だからって手加減してます?」
弍式「ヤダなぁ。僕たちの間で遠慮なんてしなくていいのに。ほらほら、本気でかかって来て下さいよ」
武闘家「ざっけんなぁ~~~~ッ!!!」
武闘家「ゼェゼェゼェ」
弍式「もう、そろそろ限界ですか?」
武闘家「まだまだッ!」
弍式「フヒューッ!」
武闘家が片足を上げジャンピングキックを見せれば、弍式もそれが分かっていたかの様にジャンピングキックを放つ。
先程から、二人は合わせ鏡の様に同じ攻撃を激突させている。
弍式「奥義。体躯鸚鵡返し。どうですか?自分自身との闘いなんて、ちょっとした問答でしょう?」
武闘家「ゼェゼェ…ヘヘ。それで、私の真似のつもりだったのか……キレもコクも……全然、足りないね」
弍式「そうなんですよね。コクはともかく、今日の姉さんの技には、いつもキレが、全く無い。」
弍式「同じ技を同じ威力で繰り出せば、あとはお互いに体力勝負の根競べ」
弍式「壱式と呼ばれる姉さんと、技量で勝負するのはどうかと思って、体力勝負を仕掛けてみたものの…」
弍式「こんな程度なら、普通に勝負してあげれば良かったかな?」
弍式「それとも、もしかして姉さんん、僕相手だからって手加減してます?」
弍式「ヤダなぁ。僕たちの間で遠慮なんてしなくていいのに。ほらほら、本気でかかって来て下さいよ」
武闘家「ざっけんなぁ~~~~ッ!!!」
39: 2015/08/27(木) 03:38:00.118
猛る武闘家の突きをヒラリと躱し、カウンター気味に放たれた弍式の裏拳が武闘家の脇腹に突き刺さる
武闘家「うぐわぁ~~~ッ!!!」
武闘家の可憐な表情が、苦痛に歪む。まあ、痛いは痛いだろうが、あの痛がり方はちょっと、尋常じゃないな。
脇腹を押さえ、蹲る武闘家。何とか立ち上がろうともがいてはいるが…すぐに立ち上がる事は難しそうだ。
弍式「あれあれ?ちょっと軽くカウンターでいなしたくらいのつもりだったのに」
弍式「姉さん、本当に調子が悪かったんだね」
弍式「けどまぁ、相手にウィークポイントがあれば、そこを攻めるのが定石って言うし……」
弍式「申し訳ないけど。次でトドメかな?」
弍式「安心してよ。もちろん、姉さんを頃したりなんかしないから」
弍式「そうだなぁ。利き腕一本だけ貰っておこうかな?」
弍式「利き腕が無くなれば、拳法なんて出来ないし、あとは普通に暮らして、普通の幸せを感じて、普通に氏のうよ」
武闘家「………………」
ジリジリと、蹲る武闘家に迫る弍式。…確かに、もう、限界だな。
武闘家「うぐわぁ~~~ッ!!!」
武闘家の可憐な表情が、苦痛に歪む。まあ、痛いは痛いだろうが、あの痛がり方はちょっと、尋常じゃないな。
脇腹を押さえ、蹲る武闘家。何とか立ち上がろうともがいてはいるが…すぐに立ち上がる事は難しそうだ。
弍式「あれあれ?ちょっと軽くカウンターでいなしたくらいのつもりだったのに」
弍式「姉さん、本当に調子が悪かったんだね」
弍式「けどまぁ、相手にウィークポイントがあれば、そこを攻めるのが定石って言うし……」
弍式「申し訳ないけど。次でトドメかな?」
弍式「安心してよ。もちろん、姉さんを頃したりなんかしないから」
弍式「そうだなぁ。利き腕一本だけ貰っておこうかな?」
弍式「利き腕が無くなれば、拳法なんて出来ないし、あとは普通に暮らして、普通の幸せを感じて、普通に氏のうよ」
武闘家「………………」
ジリジリと、蹲る武闘家に迫る弍式。…確かに、もう、限界だな。
40: 2015/08/27(木) 03:38:53.149
ギィン
迫る手刀を、俺は剣で弾き返した。
弍式「んな!?いきなり現れた?」
先程まで、俺は少し距離を置いて、二人の闘いを観戦していたが、武闘家の余りのやらっれっぷりに、見兼ねて割り込んでいた。
自慢じゃ無いが、俺はこの部屋の隅から隅位の距離なら、空間を割って移動が出来る。
もう既に滅亡した魔法都市の、失われた技術なのだが。俺は、旅の中で運良くそれを、習得する機会があったのだ。
冒険者「同感だな。武闘家には普通に暮らして、普通に幸せを感じて、普通に氏んで欲しいと、俺も思うよ」
冒険者「ただ、腕は両方あった方が、俺は良いかな?」
冒険者「つー訳で。ここは俺が引き受けた」
武闘家「ガ…グク……。待ってよ、冒険者君…私はまだ……」
冒険者「いや、負けでしょ。残念だけど」
冒険者「もし、武闘家さんがこのままヤられたら、次は俺たちの番でしょう?順番なんて、誤差みたいなモンですよ」
弍式「そうですね。良いですよ。僕は最初からそのつもりでしたし」
弍式「元より、思い上がった下等な皆さんを、絶望の淵に叩き落としたあげく粛清する」
弍式「それが、僕らのお仕事ですから。フフフ。これほど、ゾクゾクする遊びはありませんよ」
迫る手刀を、俺は剣で弾き返した。
弍式「んな!?いきなり現れた?」
先程まで、俺は少し距離を置いて、二人の闘いを観戦していたが、武闘家の余りのやらっれっぷりに、見兼ねて割り込んでいた。
自慢じゃ無いが、俺はこの部屋の隅から隅位の距離なら、空間を割って移動が出来る。
もう既に滅亡した魔法都市の、失われた技術なのだが。俺は、旅の中で運良くそれを、習得する機会があったのだ。
冒険者「同感だな。武闘家には普通に暮らして、普通に幸せを感じて、普通に氏んで欲しいと、俺も思うよ」
冒険者「ただ、腕は両方あった方が、俺は良いかな?」
冒険者「つー訳で。ここは俺が引き受けた」
武闘家「ガ…グク……。待ってよ、冒険者君…私はまだ……」
冒険者「いや、負けでしょ。残念だけど」
冒険者「もし、武闘家さんがこのままヤられたら、次は俺たちの番でしょう?順番なんて、誤差みたいなモンですよ」
弍式「そうですね。良いですよ。僕は最初からそのつもりでしたし」
弍式「元より、思い上がった下等な皆さんを、絶望の淵に叩き落としたあげく粛清する」
弍式「それが、僕らのお仕事ですから。フフフ。これほど、ゾクゾクする遊びはありませんよ」
41: 2015/08/27(木) 03:39:29.176
ガギィン ギィン
触れたら色々ヤバそうな弍式の手刀を俺は丁寧に捌く。
うーん。武闘家がボロボロにやられただけあって、やっぱり強いわコイツ。
先程も今も、俺はコイツの手をブッタ斬るつもりで、剣を振るっているが……
斬れぬどころか、やや押されて居るのは俺の方。仕方ないな。ちょっと本気だすか。
俺は剣を上段に持ち替えた。『秘剣・魔人斬り』
コレもまた、俺の技では無く、以前に果たし合いをした剣士の技なんだが……
中々、使い勝手が良さそうだったので、ありがたく技を頂いた。
弍式「おや?中々、雰囲気出てますね。一撃必殺の大技みたいだ」
弍式「なら、僕も奥義で迎え討とうかな?」
弍式も構えを変えた。右腕を上方に、左腕を下方に。
その一部の隙も無い構えは、さながら顎を大きく開き、獲物を屠る魔獣の様だが…
弍式「奥義、天地の構え。さて、地に沈むのはどちらかな?」
さて、あの構えに突っ込んでいくのは、中々、勇気が要るな……
弍式「あれ?怖気づきました?」
弍式「言っておきますが、この場面で一撃必殺に賭ける考えは、僕も正しいと思いますよ?」
弍式「勝敗は……別としてね」
そうかな?普通に適当な呪文で構えを崩すとか、色々あるよな?
……え~い。まぁ良いや。いっちゃえ、いっちゃえ。ソードマスターとか言う奴が使ってた技だし、なんとかなるだろう。
触れたら色々ヤバそうな弍式の手刀を俺は丁寧に捌く。
うーん。武闘家がボロボロにやられただけあって、やっぱり強いわコイツ。
先程も今も、俺はコイツの手をブッタ斬るつもりで、剣を振るっているが……
斬れぬどころか、やや押されて居るのは俺の方。仕方ないな。ちょっと本気だすか。
俺は剣を上段に持ち替えた。『秘剣・魔人斬り』
コレもまた、俺の技では無く、以前に果たし合いをした剣士の技なんだが……
中々、使い勝手が良さそうだったので、ありがたく技を頂いた。
弍式「おや?中々、雰囲気出てますね。一撃必殺の大技みたいだ」
弍式「なら、僕も奥義で迎え討とうかな?」
弍式も構えを変えた。右腕を上方に、左腕を下方に。
その一部の隙も無い構えは、さながら顎を大きく開き、獲物を屠る魔獣の様だが…
弍式「奥義、天地の構え。さて、地に沈むのはどちらかな?」
さて、あの構えに突っ込んでいくのは、中々、勇気が要るな……
弍式「あれ?怖気づきました?」
弍式「言っておきますが、この場面で一撃必殺に賭ける考えは、僕も正しいと思いますよ?」
弍式「勝敗は……別としてね」
そうかな?普通に適当な呪文で構えを崩すとか、色々あるよな?
……え~い。まぁ良いや。いっちゃえ、いっちゃえ。ソードマスターとか言う奴が使ってた技だし、なんとかなるだろう。
42: 2015/08/27(木) 03:39:59.738
…結論から言うと、どうにもならなかった。
俺の技の威力は受ける弍式の左腕で相殺され、残る右の手刀をまともに喰らうハメになった。
結果、1500Gもした俺の剣は砕け散り、胸を袈裟斬りにされた俺は地にねじ伏せられた。
冒険者「………」
弍式「あれれ?思ったより、手応えが浅かったな。あのタイミングなら、普通は必殺なのに」
弍式「けど、まぁ。無傷って訳でもないんでしょ?悪いけど、追撃させて貰うよ」
言う程、致命的なダメージでも無いが……痛い事は痛い。このまま闘い続けるには、ちと分が悪いな。なら…ええい仕方がない。
俺は懐から握り拳くらいの玉を取り出し。弍式目掛けて投げつけた。
この角度なら、己が身に直接当る事は無いと思ったのだろう。弍式は警戒こそしている様だが、玉を避けようとはしない。
……そんなんじゃ甘いよ。くらえッ
ピカッ!!
俺の技の威力は受ける弍式の左腕で相殺され、残る右の手刀をまともに喰らうハメになった。
結果、1500Gもした俺の剣は砕け散り、胸を袈裟斬りにされた俺は地にねじ伏せられた。
冒険者「………」
弍式「あれれ?思ったより、手応えが浅かったな。あのタイミングなら、普通は必殺なのに」
弍式「けど、まぁ。無傷って訳でもないんでしょ?悪いけど、追撃させて貰うよ」
言う程、致命的なダメージでも無いが……痛い事は痛い。このまま闘い続けるには、ちと分が悪いな。なら…ええい仕方がない。
俺は懐から握り拳くらいの玉を取り出し。弍式目掛けて投げつけた。
この角度なら、己が身に直接当る事は無いと思ったのだろう。弍式は警戒こそしている様だが、玉を避けようとはしない。
……そんなんじゃ甘いよ。くらえッ
ピカッ!!
43: 2015/08/27(木) 03:40:25.756
俺が投げたのは閃光玉。投げると空中で破裂し、強烈な閃光を放つ手投げ玉。この凄まじい閃光によって対象の目をくらませ、その動きを制限する事を目的としている。
ショックに反応して電光を放つ習性を持つ蟲。特に絶命の瞬間にはとりわけ強烈な閃光を発する光蟲を材料に作製されるこの玉は、冒険の必需品。
主に、大型モンスターに遭遇した時なんかに使用するのだが……勿論、人間相手でも効果は覿面。
弍式「うぐぅ…」
うむ。我が愛しの閃光玉ちゃんは、しっかりと弍式の眼を灼いてくれた様だ。では。行こうか。
シュン
ショックに反応して電光を放つ習性を持つ蟲。特に絶命の瞬間にはとりわけ強烈な閃光を発する光蟲を材料に作製されるこの玉は、冒険の必需品。
主に、大型モンスターに遭遇した時なんかに使用するのだが……勿論、人間相手でも効果は覿面。
弍式「うぐぅ…」
うむ。我が愛しの閃光玉ちゃんは、しっかりと弍式の眼を灼いてくれた様だ。では。行こうか。
シュン
44: 2015/08/27(木) 03:41:47.279
武闘家「ぐわぁ~目がぁ~目がぁ~」
ここは聖堂。初めて弍式が見せた隙を突いて、俺は武闘家と魔道士を対象に、この聖堂へ空間転移を行った。
魔道士「うわー。あんだけカッコ付けて出ておいて、結局逃げの一手かよ。超ダッサァーイ」
逃げた訳ではない。戦略的撤退というやつだ。
むしろ、こんな事もあろうかと、事前にこの聖堂を『ルラムーン草』を調合した秘薬でマーキングしておいた、俺の準備の良さを褒めて欲しいものだ。
俺の移動術も万能では無いんだから。
魔道士「あっそう。でも、別に勝てない相手でも無かったじゃん?」
魔道士「そんな面倒な事しなくても、あのまま一気にカタを付けちゃえば良かったのに」
冒険者「ムリ言うな。あの野郎、結構強かったわ」
冒険者「それに…な」
俺は、ちらりと武闘家に目をやる。
武闘家「うぉ~目が~焼ける~ヒィ~」
ある程度、俺が影になったものの、閃光玉はしっかりと武闘家の眼も灼いていた。魔道士?あぁ、あいつなら、炸裂の瞬間、しっかり目を両手で覆っていたよ。
前に魔道士の眼を潰した時は、それはそれは大層、お冠だったが、こいつも成長したものだ。感心。感心。
武闘家「うひぃ~」
右手で目を、左手で脇腹を抑えてジタバタもがいて居る武闘家。
着ているものが黒装束だった為に分かり辛かったが、脇腹を抑える左手は真っ赤に染まっている。
かなりの出血だ。このままにしておくと命に関わる。
ここは聖堂。初めて弍式が見せた隙を突いて、俺は武闘家と魔道士を対象に、この聖堂へ空間転移を行った。
魔道士「うわー。あんだけカッコ付けて出ておいて、結局逃げの一手かよ。超ダッサァーイ」
逃げた訳ではない。戦略的撤退というやつだ。
むしろ、こんな事もあろうかと、事前にこの聖堂を『ルラムーン草』を調合した秘薬でマーキングしておいた、俺の準備の良さを褒めて欲しいものだ。
俺の移動術も万能では無いんだから。
魔道士「あっそう。でも、別に勝てない相手でも無かったじゃん?」
魔道士「そんな面倒な事しなくても、あのまま一気にカタを付けちゃえば良かったのに」
冒険者「ムリ言うな。あの野郎、結構強かったわ」
冒険者「それに…な」
俺は、ちらりと武闘家に目をやる。
武闘家「うぉ~目が~焼ける~ヒィ~」
ある程度、俺が影になったものの、閃光玉はしっかりと武闘家の眼も灼いていた。魔道士?あぁ、あいつなら、炸裂の瞬間、しっかり目を両手で覆っていたよ。
前に魔道士の眼を潰した時は、それはそれは大層、お冠だったが、こいつも成長したものだ。感心。感心。
武闘家「うひぃ~」
右手で目を、左手で脇腹を抑えてジタバタもがいて居る武闘家。
着ているものが黒装束だった為に分かり辛かったが、脇腹を抑える左手は真っ赤に染まっている。
かなりの出血だ。このままにしておくと命に関わる。
45: 2015/08/27(木) 03:42:18.146
俺も、治癒呪文はそこそこ使える。弍式と決着を付ける前に、先にこっちを治しておくとするかな。
魔道士「ちょい待ち。そのイヤラシイ手つきで何するつもり?」
スッ、と。魔道士が悶える武闘家の側に腰を落とす。
冒険者「何って…治療だよ」
魔道士「へぇー冒険者のヘッタクソな治癒呪文でぇ?」
魔道士「あたしがやる。女の子の肌はデリケートなの。雑にやって傷痕でも残したら、どう責任取る気?」
冒険者「はいはい。分かりましたよ。なら、お前に任せる」
魔道士「りょーかい。冒険者は自分の傷でも、治しときなよ」
冒険者「そうだな。そんな大した傷でも無いが」
武闘家「魔道士ちゃん。私もそんなに大した傷じゃないから、大丈夫だって。全然」
魔道士「ふーん。そうなんだぁー」
魔道士「大した事無いんなら、その傷に火炎草でも塗り込んじゃおうかなー良いよね?大した事無いなら?」
目が本気だ。良い訳あるかよ。本当に軽傷でも、そんな事されたら普通、氏ぬわ。
武闘家「ひぃ。……うぅ。分かりました。普通に治して下さい。お願いします」
魔道士「最初っから、素直に頼みなさい。全く、手間がかかるんだから」
だから、お前が言うなよ…
魔道士「じゃあ、ちょっと服、捲るね」
魔道士「ちょい待ち。そのイヤラシイ手つきで何するつもり?」
スッ、と。魔道士が悶える武闘家の側に腰を落とす。
冒険者「何って…治療だよ」
魔道士「へぇー冒険者のヘッタクソな治癒呪文でぇ?」
魔道士「あたしがやる。女の子の肌はデリケートなの。雑にやって傷痕でも残したら、どう責任取る気?」
冒険者「はいはい。分かりましたよ。なら、お前に任せる」
魔道士「りょーかい。冒険者は自分の傷でも、治しときなよ」
冒険者「そうだな。そんな大した傷でも無いが」
武闘家「魔道士ちゃん。私もそんなに大した傷じゃないから、大丈夫だって。全然」
魔道士「ふーん。そうなんだぁー」
魔道士「大した事無いんなら、その傷に火炎草でも塗り込んじゃおうかなー良いよね?大した事無いなら?」
目が本気だ。良い訳あるかよ。本当に軽傷でも、そんな事されたら普通、氏ぬわ。
武闘家「ひぃ。……うぅ。分かりました。普通に治して下さい。お願いします」
魔道士「最初っから、素直に頼みなさい。全く、手間がかかるんだから」
だから、お前が言うなよ…
魔道士「じゃあ、ちょっと服、捲るね」
46: 2015/08/27(木) 03:42:51.083
武闘家の捲られた脇腹は、普段から日焼けしない部分なのだろう。
その顔や腕とは対照的に、キメ細かく、雪のように白い繊細な肌だった。
だが、その雪原には痛々しい真っ赤に花が咲いていた。
かなりの深手だが…今し方付いた様な傷では無い。恐らく、もっと前に付いた傷を雑に縫ってあったのだろう。
赤黒い糸が何本か見える。当然、そんなんで完治する訳も無く、さっきの弍式の一撃で、傷がパックリ開いたのだろう。
……ん?待てよ。つまり、武闘家は初めて出会った時から、こんな傷を抱えて、今の今まで動き回っていたのか…
成る程、つまり武闘家の技にコクやらキレやら無かったのは…もっと言えば、黒装束5人の内、数人を仕留め損なっていたのは、なるほど、そう言う事か。
実のところ、武闘家って壱式とか言われてる割にあんまり凄く無い様な…とか、ちょっと思っていたのだが…合点がいった。
魔道士「エッロイ目でこっち見ないでくれる?脇腹フェチなの?なら、後であたしの見せてあげるから」
魔道士「冒険者は、さっさと自分の傷治しなさいよ」
冒険者「ヘイヘイ。分かりましたよ。」
その顔や腕とは対照的に、キメ細かく、雪のように白い繊細な肌だった。
だが、その雪原には痛々しい真っ赤に花が咲いていた。
かなりの深手だが…今し方付いた様な傷では無い。恐らく、もっと前に付いた傷を雑に縫ってあったのだろう。
赤黒い糸が何本か見える。当然、そんなんで完治する訳も無く、さっきの弍式の一撃で、傷がパックリ開いたのだろう。
……ん?待てよ。つまり、武闘家は初めて出会った時から、こんな傷を抱えて、今の今まで動き回っていたのか…
成る程、つまり武闘家の技にコクやらキレやら無かったのは…もっと言えば、黒装束5人の内、数人を仕留め損なっていたのは、なるほど、そう言う事か。
実のところ、武闘家って壱式とか言われてる割にあんまり凄く無い様な…とか、ちょっと思っていたのだが…合点がいった。
魔道士「エッロイ目でこっち見ないでくれる?脇腹フェチなの?なら、後であたしの見せてあげるから」
魔道士「冒険者は、さっさと自分の傷治しなさいよ」
冒険者「ヘイヘイ。分かりましたよ。」
47: 2015/08/27(木) 03:43:16.677
魔道士「ところでさ、剣折られちゃったけど…どうすんの?」
冒険者「あぁ、アレな。1500Gもしたのにな」
思い出すと、何か腹が立ってきた。
魔道士「え?それって市販の『はがねのつるぎ』じゃん」
冒険者「ん?そうだが?」
魔道士「えぇー今まで、そんなの使ってたの?」
冒険者「見りゃ分かるだろ?普通の剣だったじゃねーか」
魔道士「いや、見た目は確かに普通そのものだったけどさ」
魔道士「冒険者が使ってるんだから、何か特別な凄いやつなのかなーって」
冒険者「何でそう思ったの?」
魔道士「いや、だってさ。初めて会った時は、何か太くてイカツイ凄そうな剣、振り回してたじゃん」
冒険者「あぁ、あのお前に破壊されたやつな」
魔道士「そうそう。アレ。壊すの結構、骨だったし。あんな丈夫な剣、初めてだったしさー」
魔道士「だから、武器には拘りあるのかなーって、思ってたんだけどなー」
拘り、ねぇ。確かに、昔は色々、伝説の剣とか魔剣とか聖剣とか使ってたけど…結局、本気で振ったら破損する様なのばっかりで…
じゃあ、もう切れ味は鈍で良いから耐久重視の大剣で、って思ったら、それも結局、壊されて。
以後、武器は手頃な奴で済ませる様になってたんだよなぁ
魔道士「だったら、今度、武器探しでもする?」
冒険者「それも良いな」
魔道士「ん。なら早いとこ、こんな島からサヨナラしなきゃね」
冒険者「だな。次の旅の目的も出来た事だし。さっさと決着付けて来ますか」
冒険者「あぁ、アレな。1500Gもしたのにな」
思い出すと、何か腹が立ってきた。
魔道士「え?それって市販の『はがねのつるぎ』じゃん」
冒険者「ん?そうだが?」
魔道士「えぇー今まで、そんなの使ってたの?」
冒険者「見りゃ分かるだろ?普通の剣だったじゃねーか」
魔道士「いや、見た目は確かに普通そのものだったけどさ」
魔道士「冒険者が使ってるんだから、何か特別な凄いやつなのかなーって」
冒険者「何でそう思ったの?」
魔道士「いや、だってさ。初めて会った時は、何か太くてイカツイ凄そうな剣、振り回してたじゃん」
冒険者「あぁ、あのお前に破壊されたやつな」
魔道士「そうそう。アレ。壊すの結構、骨だったし。あんな丈夫な剣、初めてだったしさー」
魔道士「だから、武器には拘りあるのかなーって、思ってたんだけどなー」
拘り、ねぇ。確かに、昔は色々、伝説の剣とか魔剣とか聖剣とか使ってたけど…結局、本気で振ったら破損する様なのばっかりで…
じゃあ、もう切れ味は鈍で良いから耐久重視の大剣で、って思ったら、それも結局、壊されて。
以後、武器は手頃な奴で済ませる様になってたんだよなぁ
魔道士「だったら、今度、武器探しでもする?」
冒険者「それも良いな」
魔道士「ん。なら早いとこ、こんな島からサヨナラしなきゃね」
冒険者「だな。次の旅の目的も出来た事だし。さっさと決着付けて来ますか」
48: 2015/08/27(木) 03:44:07.354
冒険者「さーて。どうやって突破してやろうかね」
弍式「そうですねぇ。なんにせよ、もう出し惜しみは無しにした方が、良いと思いますよ」
弍式「お互いにね」
カツン カツン
足音が、廊下に響く。
冒険者「おやおや、仕事熱心な奴だ。待っててくれれば、こちらから出向いたのに」
弍式「それは解らないでしょう?確かに、この島の出入り口は、あの黄泉比良坂だけですが…」
弍式「あんな術が使えるなら、ズルして他の場所から出ちゃうかも?」
今回は、堂々と正面から姿を現した弍式だったが、その両の瞳は未だ閉ざされたままだった。
冒険者「おや、まだ視力は回復して無いのかな?」
冒険者「これは俺も、随分と、甘く見られたもんだ」
弍式「いえいえ、お気遣い無く。視力くらいは、丁度良いハンデですよ」
弍式「と、言いたいトコロですが……」
弍式「生憎と、僕は視力に頼らなくても、気配などは感じられるので」
弍式「ハンデは差し上げられません」
弍式「そうですねぇ。なんにせよ、もう出し惜しみは無しにした方が、良いと思いますよ」
弍式「お互いにね」
カツン カツン
足音が、廊下に響く。
冒険者「おやおや、仕事熱心な奴だ。待っててくれれば、こちらから出向いたのに」
弍式「それは解らないでしょう?確かに、この島の出入り口は、あの黄泉比良坂だけですが…」
弍式「あんな術が使えるなら、ズルして他の場所から出ちゃうかも?」
今回は、堂々と正面から姿を現した弍式だったが、その両の瞳は未だ閉ざされたままだった。
冒険者「おや、まだ視力は回復して無いのかな?」
冒険者「これは俺も、随分と、甘く見られたもんだ」
弍式「いえいえ、お気遣い無く。視力くらいは、丁度良いハンデですよ」
弍式「と、言いたいトコロですが……」
弍式「生憎と、僕は視力に頼らなくても、気配などは感じられるので」
弍式「ハンデは差し上げられません」
50: 2015/08/27(木) 03:45:12.955
ザッ シュビッ
弍式は両腕を交差させ、空を十字に斬った。生じた真空の刃が襲いかかる
冒険者『鋼鉄変化呪文』
ビィィン
味方、または術者自身を鉄の塊にし、無敵になれる呪文。
もちろん一方的に無敵になれるなど美味しい話は無く、こちらからも攻撃ができなくなる。
簡単に言うと『攻撃を一切受け付けない代わりにこちらも一切行動できない』呪文である。
当然ながら、俺の身体に直撃した真空波は綺麗に霧散した。
弍式「へぇ。なら、こういうのはどうかな?」
弍式は、そのまま逆立ちなり、腕の力だけで跳躍し、此方へ回転しつつ急降下
スカッ
当然、そんな大技をマトモに受けてやる義理もない。普通に躱すが、今のは技が外れた音ではない。
俺が避けた為に、背後にあった高価そうな石像の胸が、気持ちいい位スッパリ貫通していた。
わーお。避けて正解だったぜ。
弍式「あれ?今のは防御呪文で受けないんですか?」
冒険者「受けるか、避けるかは、俺のこの目で判断する」
弍式「フフフ。楽しいですねぇ。何だか、貴方とはずぅっと闘っていたいですねぇ」
弍式「己の使命も何もかも忘れて、未来永劫、闘い続けたいものですねぇ」
弍式は両腕を交差させ、空を十字に斬った。生じた真空の刃が襲いかかる
冒険者『鋼鉄変化呪文』
ビィィン
味方、または術者自身を鉄の塊にし、無敵になれる呪文。
もちろん一方的に無敵になれるなど美味しい話は無く、こちらからも攻撃ができなくなる。
簡単に言うと『攻撃を一切受け付けない代わりにこちらも一切行動できない』呪文である。
当然ながら、俺の身体に直撃した真空波は綺麗に霧散した。
弍式「へぇ。なら、こういうのはどうかな?」
弍式は、そのまま逆立ちなり、腕の力だけで跳躍し、此方へ回転しつつ急降下
スカッ
当然、そんな大技をマトモに受けてやる義理もない。普通に躱すが、今のは技が外れた音ではない。
俺が避けた為に、背後にあった高価そうな石像の胸が、気持ちいい位スッパリ貫通していた。
わーお。避けて正解だったぜ。
弍式「あれ?今のは防御呪文で受けないんですか?」
冒険者「受けるか、避けるかは、俺のこの目で判断する」
弍式「フフフ。楽しいですねぇ。何だか、貴方とはずぅっと闘っていたいですねぇ」
弍式「己の使命も何もかも忘れて、未来永劫、闘い続けたいものですねぇ」
51: 2015/08/27(木) 03:46:13.122
冒険者「やめろ、気持ちの悪い。俺は御免だ」
冒険者「未来永劫闘い続ける相手は、うんと可愛い美人にしてくれ。それなら考えないでもない」
弍式「ハハハ。僕も別に同性愛しゃではありませんよ。ご安心下さい。」
冒険者「なら良かった。じゃあ、申し訳ないが、こっからは一方的に攻めさせて頂くよ」
冒険者『極大電離呪文』
魔界より召喚された地を這う極大な雷が全てを破壊する。
荒れ狂う稲妻が嵐となって、文字通り一切合切、全てを破壊した。
冒険者「未来永劫闘い続ける相手は、うんと可愛い美人にしてくれ。それなら考えないでもない」
弍式「ハハハ。僕も別に同性愛しゃではありませんよ。ご安心下さい。」
冒険者「なら良かった。じゃあ、申し訳ないが、こっからは一方的に攻めさせて頂くよ」
冒険者『極大電離呪文』
魔界より召喚された地を這う極大な雷が全てを破壊する。
荒れ狂う稲妻が嵐となって、文字通り一切合切、全てを破壊した。
53: 2015/08/27(木) 03:48:05.213
そこへ行けばどんな武闘家でも強くなれると言う、通称『聖なる武闘家の島』
しかし、その威光もいまはないーーー
武闘家「うひゃ~たまげたなぁ、これはまた、随分と派手にやってくれましたなぁ~」
冒険者「面目無い。何せ、久しぶりに撃ったもんだから、加減を誤りました」
俺が弍式相手に放った『極大電離呪文』は、まさかの大暴走を起こし島を半壊させてしまった。
弍式がどうなったかは、知らないが……まあ無事ではなかろう。
対岸の火事。他に氏傷者や二次被害も出たと思うが、島民皆頃しや、島ごと吹き飛ぶ様な事態よりはマシだと思って頂くしかない。
武闘家「冒険者君さ、私たちの事も失念してたよね?あの瞬間は、アイツしか目に入って無かったよ。絶対」
冒険者「いえいえ、そんな事は……無いですよ」
冒険者「あんな事になるとは思わず……」
冒険者「まあ、ちょっと位は巻き込むかな~?とは思いましたが…」
冒険者「あの場は魔道士と一緒に居ましたし…まあ、コイツなら何とかするだろうと」
と、今は俺の膝でスヤスヤと寝息を立てる魔道士の顔を除き込む。
武闘家「ふ~ん。信頼してるんだね、魔道士ちゃんの事」
冒険者「ええ、とても」
実際、魔道士はあの荒れ狂う雷の中、魔力を放出し続け…自分と武闘家の身を守り切った。
その後、崩壊する聖堂から何とか脱出し、島の対岸まで海の上を飛行呪文で渡ってきた。
流石に本当に疲れたらしく、今は眠っているが。
しかし、その威光もいまはないーーー
武闘家「うひゃ~たまげたなぁ、これはまた、随分と派手にやってくれましたなぁ~」
冒険者「面目無い。何せ、久しぶりに撃ったもんだから、加減を誤りました」
俺が弍式相手に放った『極大電離呪文』は、まさかの大暴走を起こし島を半壊させてしまった。
弍式がどうなったかは、知らないが……まあ無事ではなかろう。
対岸の火事。他に氏傷者や二次被害も出たと思うが、島民皆頃しや、島ごと吹き飛ぶ様な事態よりはマシだと思って頂くしかない。
武闘家「冒険者君さ、私たちの事も失念してたよね?あの瞬間は、アイツしか目に入って無かったよ。絶対」
冒険者「いえいえ、そんな事は……無いですよ」
冒険者「あんな事になるとは思わず……」
冒険者「まあ、ちょっと位は巻き込むかな~?とは思いましたが…」
冒険者「あの場は魔道士と一緒に居ましたし…まあ、コイツなら何とかするだろうと」
と、今は俺の膝でスヤスヤと寝息を立てる魔道士の顔を除き込む。
武闘家「ふ~ん。信頼してるんだね、魔道士ちゃんの事」
冒険者「ええ、とても」
実際、魔道士はあの荒れ狂う雷の中、魔力を放出し続け…自分と武闘家の身を守り切った。
その後、崩壊する聖堂から何とか脱出し、島の対岸まで海の上を飛行呪文で渡ってきた。
流石に本当に疲れたらしく、今は眠っているが。
55: 2015/08/27(木) 03:48:40.903
『バッカじゃねーの、バッカじゃねーの、バッカじゃねーの。あんな雷出しちゃってさ、破壊神かってーの。あたし以外だったら氏んでるトコだよ?』
などと、悪態を付いていた奴と同一人物とはとても思えない程、可愛らしい寝顔である。
武闘家「一つ聞いても良いかな?」
武闘家「少し、気になっていたんだけど……お二人はどういう肉体関係?いつ知り合ったの?」
冒険者「……肉体関係は…無いアルよ。」
武闘家「無いのか、アルのか、どっちなのさ?」
冒険者「いや、まぁ。知り合ったのはつい『最近』です」
冒険者「最近知り合って、ずっと永らく一緒に居ます」
武闘家「……複雑そうだ」
冒険者「ええ、コイツ素直じゃないですから」
武闘家「うんにゃ。冒険者君の事だよ?」
冒険者「俺…ですか?俺はかなりの正直者だと自負していますが?」
武闘家「嘘ばっかり。私はさ、なんとなくだけど…言葉にしなくても、人の心が読めるんだ」
……それはマズイ。と、言うことは、俺が武闘家に抱いている劣情がバレてしまうでは無いか。
せっかく、築いた信頼が崩れてしまう。軽蔑されてしまうでは無いか。
などと、悪態を付いていた奴と同一人物とはとても思えない程、可愛らしい寝顔である。
武闘家「一つ聞いても良いかな?」
武闘家「少し、気になっていたんだけど……お二人はどういう肉体関係?いつ知り合ったの?」
冒険者「……肉体関係は…無いアルよ。」
武闘家「無いのか、アルのか、どっちなのさ?」
冒険者「いや、まぁ。知り合ったのはつい『最近』です」
冒険者「最近知り合って、ずっと永らく一緒に居ます」
武闘家「……複雑そうだ」
冒険者「ええ、コイツ素直じゃないですから」
武闘家「うんにゃ。冒険者君の事だよ?」
冒険者「俺…ですか?俺はかなりの正直者だと自負していますが?」
武闘家「嘘ばっかり。私はさ、なんとなくだけど…言葉にしなくても、人の心が読めるんだ」
……それはマズイ。と、言うことは、俺が武闘家に抱いている劣情がバレてしまうでは無いか。
せっかく、築いた信頼が崩れてしまう。軽蔑されてしまうでは無いか。
56: 2015/08/27(木) 03:49:06.665
武闘家「冒険者君はさ、私の事、色々良く言ってくれるけどさ……」
武闘家「実のトコロ、その心にあるのは、魔道士ちゃんの事だけ」
冒険者「…………。ふぅ。バレましたか」
武闘家「フッフッフッ。バレバレだって」
冒険者「そうなんですよ。俺は生涯の伴侶をコイツと、心に決めているのに」
冒険者「なのに、コイツと来たら、俺を試す様な事ばかり」
武闘家「冒険者君の気持ちは、ちゃ~んと魔道士ちゃんに伝わってると思うよ」
武闘家「それでも、色々勘繰るのが女心ってやつなのさ」
武闘家「今度は、魔道士ちゃんが起きてる時にちゃんと言葉に出して言ってあげなよ」
冒険者「……考えておきます」
冒険者「では、俺からも一つ、聞いても良いですか?」
武闘家「ん?何だい?」
冒険者「その脇腹の傷…どうしたんですか?」
冒険者「壱式と呼ばれていた、武闘家さんが傷を負う相手は……」
武闘家「ん?フッフッフッ。やっぱり冒険者君には敵わないな」
武闘家「実のトコロ、その心にあるのは、魔道士ちゃんの事だけ」
冒険者「…………。ふぅ。バレましたか」
武闘家「フッフッフッ。バレバレだって」
冒険者「そうなんですよ。俺は生涯の伴侶をコイツと、心に決めているのに」
冒険者「なのに、コイツと来たら、俺を試す様な事ばかり」
武闘家「冒険者君の気持ちは、ちゃ~んと魔道士ちゃんに伝わってると思うよ」
武闘家「それでも、色々勘繰るのが女心ってやつなのさ」
武闘家「今度は、魔道士ちゃんが起きてる時にちゃんと言葉に出して言ってあげなよ」
冒険者「……考えておきます」
冒険者「では、俺からも一つ、聞いても良いですか?」
武闘家「ん?何だい?」
冒険者「その脇腹の傷…どうしたんですか?」
冒険者「壱式と呼ばれていた、武闘家さんが傷を負う相手は……」
武闘家「ん?フッフッフッ。やっぱり冒険者君には敵わないな」
57: 2015/08/27(木) 03:49:42.941
ニッコリと微笑みながら武闘家は脇腹をさすっている。
武闘家「魔道士ちゃんがね~綺麗に治してくれたよ~見る?」
武闘家「なんつって。壱式の私が傷を負う相手なんて、弍式を除けば、あの島には零式……要は私の師父しか居ないじゃん」
武闘家「そう言う事でしょ?冒険者君が言いたいのは」
冒険者「はい。では、やっぱり貴女が?」
武闘家「フッフッフッ。師父は間違い無く病氏だぜ?」
武闘家「けどまぁ、症状が悪化したのは私のせいかな?」
武闘家「あのハゲさぁ、私にトドメ刺す直前に血ィ吐いて、胸を押さえてくたばったんだ」
武闘家「お察しの通り、あの傷はその時、師父にやられた傷なんだよ」
冒険者「どうしてそんな……」
武闘家「それは私が女だからさ。察しの良い冒険者君の事だから、もう気付いてるんでしょう?」
武闘家「私たちの一門は、拳法家じゃない。暗殺拳の一門だって事」
武闘家「一子相伝の暗殺拳。なら、正統な後継者に選ばれ無かった方の伝承者がどうなるか……君なら解るでしょ?」
武闘家「私は、拳を封じられるのも、殺されるのもまっぴら御免だ」
と言う武闘家の表情は、今まで見た太陽な様な笑顔では無く、どこか儚げで、今にも消え入りそうだった。
俺は思う。武闘家に求められたものは、暗殺拳では無く、普通の幸せだったのだろう。
しかし、武闘家が望んだ幸せは普通では無かった。そして、彼女には才能があった。
それが、悲劇の種だったのだろう。
武闘家「魔道士ちゃんがね~綺麗に治してくれたよ~見る?」
武闘家「なんつって。壱式の私が傷を負う相手なんて、弍式を除けば、あの島には零式……要は私の師父しか居ないじゃん」
武闘家「そう言う事でしょ?冒険者君が言いたいのは」
冒険者「はい。では、やっぱり貴女が?」
武闘家「フッフッフッ。師父は間違い無く病氏だぜ?」
武闘家「けどまぁ、症状が悪化したのは私のせいかな?」
武闘家「あのハゲさぁ、私にトドメ刺す直前に血ィ吐いて、胸を押さえてくたばったんだ」
武闘家「お察しの通り、あの傷はその時、師父にやられた傷なんだよ」
冒険者「どうしてそんな……」
武闘家「それは私が女だからさ。察しの良い冒険者君の事だから、もう気付いてるんでしょう?」
武闘家「私たちの一門は、拳法家じゃない。暗殺拳の一門だって事」
武闘家「一子相伝の暗殺拳。なら、正統な後継者に選ばれ無かった方の伝承者がどうなるか……君なら解るでしょ?」
武闘家「私は、拳を封じられるのも、殺されるのもまっぴら御免だ」
と言う武闘家の表情は、今まで見た太陽な様な笑顔では無く、どこか儚げで、今にも消え入りそうだった。
俺は思う。武闘家に求められたものは、暗殺拳では無く、普通の幸せだったのだろう。
しかし、武闘家が望んだ幸せは普通では無かった。そして、彼女には才能があった。
それが、悲劇の種だったのだろう。
58: 2015/08/27(木) 03:50:15.371
武闘家「な~んてね、いくら悔やんでも、時間は戻らないし」
武闘家「何より、私は後悔なんてしていない」
武闘家「さぁ、君達は剣探しの旅に出るんでしょ?良かったら、私も仲間に入れておくれ」
武闘家「魔道士ちゃんには悪いけど、私も、冒険者君という人に興味が湧いたよ」
冒険者「そうですか。……なら、魔道士の友達になってやって下さい。」
冒険者「コイツはずっと独りだったから」
そう言って、俺は、愛しい姫の頭を優しく撫でてやる。まだ、起きてる時にしてやる勇気は持てそうに無いが……
これからいくらでも時間はある。いつかきっと。
武闘家「フッフッフッ。魔道士ちゃんはどう思ってるか、知らないけど」
武闘家「私は既に親友のつもりだぜッ」
武闘家「それに、冒険者君も。だから、さん付けと敬語は、もう禁止なッ」
スッ
武闘家に握手を求められる。
冒険者「あぁ。よろしく。武闘家」
武闘家「ふふ。こちらこそ」
武闘家の笑顔は屈託の無い、太陽の様な、俺の好きな顔だった。
武闘家「何より、私は後悔なんてしていない」
武闘家「さぁ、君達は剣探しの旅に出るんでしょ?良かったら、私も仲間に入れておくれ」
武闘家「魔道士ちゃんには悪いけど、私も、冒険者君という人に興味が湧いたよ」
冒険者「そうですか。……なら、魔道士の友達になってやって下さい。」
冒険者「コイツはずっと独りだったから」
そう言って、俺は、愛しい姫の頭を優しく撫でてやる。まだ、起きてる時にしてやる勇気は持てそうに無いが……
これからいくらでも時間はある。いつかきっと。
武闘家「フッフッフッ。魔道士ちゃんはどう思ってるか、知らないけど」
武闘家「私は既に親友のつもりだぜッ」
武闘家「それに、冒険者君も。だから、さん付けと敬語は、もう禁止なッ」
スッ
武闘家に握手を求められる。
冒険者「あぁ。よろしく。武闘家」
武闘家「ふふ。こちらこそ」
武闘家の笑顔は屈託の無い、太陽の様な、俺の好きな顔だった。
59: 2015/08/27(木) 03:50:27.348
おしまい
60: 2015/08/27(木) 03:54:29.772
おつ
61: 2015/08/27(木) 03:56:01.250
ダラダラ書かずに一気に書きだめ投下したのは評価に値します
62: 2015/08/27(木) 04:00:54.484
ストーリーはかなり恥ずかしいけど投下テンポの良さとか北斗の小ネタで最後まで読めた
63: 2015/08/27(木) 04:11:00.502
屑も役立たずもいなかったわけだが
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります