1: 2010/09/04(土) 09:18:04.44
きっかけはお弁当タイムの何気ない一幕
純「梓ってさ、なんか幸薄い感じがあるよね」
…突然何を言い出すのかな、純?
私は口に運ぼうとしていたタコさんウインナーを思わず箸から取り落としてしまった
憐れタコさんは床にダイブ!と思った瞬間
憂「えいっ!」
横合いから伸びた憂の箸が奇跡の空中キャッチ!
…相変わらず常人離れした技をいとも簡単に披露してくれる
憂「はい、梓ちゃん。あーん」
いつもの優しい笑顔で促す憂
…どこまで可愛いんだろう、まったく
梓「あーん」
幸薄い?誰が?
純「梓ってさ、なんか幸薄い感じがあるよね」
…突然何を言い出すのかな、純?
私は口に運ぼうとしていたタコさんウインナーを思わず箸から取り落としてしまった
憐れタコさんは床にダイブ!と思った瞬間
憂「えいっ!」
横合いから伸びた憂の箸が奇跡の空中キャッチ!
…相変わらず常人離れした技をいとも簡単に披露してくれる
憂「はい、梓ちゃん。あーん」
いつもの優しい笑顔で促す憂
…どこまで可愛いんだろう、まったく
梓「あーん」
幸薄い?誰が?
12: 2010/09/04(土) 09:44:41.33
3: 2010/09/04(土) 09:21:13.76
秋の日のヴィオロンの溜息沁みてひたぶるにうら悲し…
とかなんとか昔の人の詩が胸に沁みる秋の夜
しかしながら私にはギターしかない訳で
仕方がないので、ギターの弦を爪弾いてみたりする
特に決められた曲を弾く訳ではなく、胸の奥に秘めた想いを弦に乗せる
ふむ、雰囲気は出てる気がする
私には好きな人がいる、その人の名は…
母「梓、ご近所迷惑になるからギターもほどほどにね」
昔と違って、現代では気軽に想いを奏でる事も難しい
爪弾く指を止めて、軽く溜息
ふむ、確かにひたぶるにうら悲し、かも
とかなんとか昔の人の詩が胸に沁みる秋の夜
しかしながら私にはギターしかない訳で
仕方がないので、ギターの弦を爪弾いてみたりする
特に決められた曲を弾く訳ではなく、胸の奥に秘めた想いを弦に乗せる
ふむ、雰囲気は出てる気がする
私には好きな人がいる、その人の名は…
母「梓、ご近所迷惑になるからギターもほどほどにね」
昔と違って、現代では気軽に想いを奏でる事も難しい
爪弾く指を止めて、軽く溜息
ふむ、確かにひたぶるにうら悲し、かも
4: 2010/09/04(土) 09:24:58.20
ギターを壁に立て掛け部屋を後に、階段を降りてリビングの扉を開く
父と母がソファーに座って、レコードプレイヤーから流れるビリー・ホリデイの歌声に耳を傾けていた
娘のギターはご近所迷惑扱いなのに…なんて野暮な事は言わない
梓「ごめんなさい。つい興に乗っちゃってさ」
琥珀色の液体の入ったグラスを傾けた父が微笑む
父「愛しい人に捧げる曲…梓も大人になったものだね」
流石は我が父、私の即興の爪弾きに込められた想いを的確に掴み取っている
ちょっと照れるね
父と母がソファーに座って、レコードプレイヤーから流れるビリー・ホリデイの歌声に耳を傾けていた
娘のギターはご近所迷惑扱いなのに…なんて野暮な事は言わない
梓「ごめんなさい。つい興に乗っちゃってさ」
琥珀色の液体の入ったグラスを傾けた父が微笑む
父「愛しい人に捧げる曲…梓も大人になったものだね」
流石は我が父、私の即興の爪弾きに込められた想いを的確に掴み取っている
ちょっと照れるね
5: 2010/09/04(土) 09:27:31.37
氷の奏でる音色も涼やかなグラスを父から受け取り(奪い?)軽く喉を潤す
未成年の飲酒は法律で固く禁じられています
しかし今、私が父から受け取ったのは、フォアローゼスと言う名の麦茶、断じて麦茶だ
細かい事は気にしない
私も両親と席を同じくしてビリーの艶やかな歌声に酔い痴れてみたりする
母「アコースティックも雰囲気のある音色を奏でるようになったわね。そろそろムスタングは卒業かしら?」
母から思わぬ御墨付きを頂き少し驚き
私も少しは成長してるのかな
未成年の飲酒は法律で固く禁じられています
しかし今、私が父から受け取ったのは、フォアローゼスと言う名の麦茶、断じて麦茶だ
細かい事は気にしない
私も両親と席を同じくしてビリーの艶やかな歌声に酔い痴れてみたりする
母「アコースティックも雰囲気のある音色を奏でるようになったわね。そろそろムスタングは卒業かしら?」
母から思わぬ御墨付きを頂き少し驚き
私も少しは成長してるのかな
7: 2010/09/04(土) 09:31:05.79
私が飲んで減った分の琥珀色の液体を瓶から継ぎ足しながら父が続ける
父「僕もサキソフォーンで伴奏したくなる音色だったよ」
これまた驚き、父からも嬉しい言葉を頂いてしまった
因みに父はアルトサックスプレイヤー
我が父ながら、演奏する姿には惚れ惚れしてしまったりもする
あくまで演奏に、だけどね
父「しかし愛しい人が異性では無く同性なのは、父親としてはまだまだ安心していてよさそうだね」
…ギターの音色からそこまで分かるの?
ジャズマン恐るべし…
父「僕もサキソフォーンで伴奏したくなる音色だったよ」
これまた驚き、父からも嬉しい言葉を頂いてしまった
因みに父はアルトサックスプレイヤー
我が父ながら、演奏する姿には惚れ惚れしてしまったりもする
あくまで演奏に、だけどね
父「しかし愛しい人が異性では無く同性なのは、父親としてはまだまだ安心していてよさそうだね」
…ギターの音色からそこまで分かるの?
ジャズマン恐るべし…
8: 2010/09/04(土) 09:33:57.43
母「あら、例え相手が誰であれ、恋をするのはいい事よ」
梓「…これも恋と呼んでいいのかな」
以前の私なら「違うもん!そんなんじゃないもん!」なんて子供っぽい抵抗をしていただろう
でも今の私は違う
あの夏の終わりの河原で彼女とキスを交わした時から…私は少し大人になれた気がする
母「それで、梓は何を思い出して、そんなに頬を赤く染めているのかな?」
梓「にゃっ!ちっ違うもん!これはその、麦茶!麦茶で火照っただけだもん!」
自分が思う程に大人モードは長く続かなかった
いいもん!私はまだまだ子供だよ
梓「…これも恋と呼んでいいのかな」
以前の私なら「違うもん!そんなんじゃないもん!」なんて子供っぽい抵抗をしていただろう
でも今の私は違う
あの夏の終わりの河原で彼女とキスを交わした時から…私は少し大人になれた気がする
母「それで、梓は何を思い出して、そんなに頬を赤く染めているのかな?」
梓「にゃっ!ちっ違うもん!これはその、麦茶!麦茶で火照っただけだもん!」
自分が思う程に大人モードは長く続かなかった
いいもん!私はまだまだ子供だよ
9: 2010/09/04(土) 09:37:09.25
動揺する私を少し悪戯な笑顔を浮かべて見つめる母…いじわるっ!
母「それだけその人の事を一途に想えるという事は、それは立派に恋と呼べると思わない?」
梓「…うん」
さっきまでとは打って変わって、優しい母親の顔に戻って言葉を続ける
母「梓、たくさん恋をしなさい。女の子はね、恋をして自分を磨いていくの」
少し慌てた様子で父が割り込んできた
父「おいおい、母さん。あまり梓を焚き付けないでくれよ。僕はまだまだ梓を手放す気はないからね」
父親にとって、娘は永遠の恋人と言うけど…
母「それだけその人の事を一途に想えるという事は、それは立派に恋と呼べると思わない?」
梓「…うん」
さっきまでとは打って変わって、優しい母親の顔に戻って言葉を続ける
母「梓、たくさん恋をしなさい。女の子はね、恋をして自分を磨いていくの」
少し慌てた様子で父が割り込んできた
父「おいおい、母さん。あまり梓を焚き付けないでくれよ。僕はまだまだ梓を手放す気はないからね」
父親にとって、娘は永遠の恋人と言うけど…
11: 2010/09/04(土) 09:41:27.42
慌てる父を見て、母が少しおかしそうに微笑む
母「ふふっ、梓ももうすぐ17歳よ。恋の一つや二つをしてもおかしくはないわ」
父「…それはそうなんだけどね」
この勝負、どうやら母さんの貫禄勝ち
母「でもね、梓。恋をするのはいいけど、自分を安売りしちゃ駄目よ。貴女はそれだけの価値がある素敵な女の子なんだから」
梓「私にそんな価値があるとは思えないんだけど…」
これは謙遜でもなんでもない本音の言葉
彼女に比べれば私なんて…
母「ふふっ、梓ももうすぐ17歳よ。恋の一つや二つをしてもおかしくはないわ」
父「…それはそうなんだけどね」
この勝負、どうやら母さんの貫禄勝ち
母「でもね、梓。恋をするのはいいけど、自分を安売りしちゃ駄目よ。貴女はそれだけの価値がある素敵な女の子なんだから」
梓「私にそんな価値があるとは思えないんだけど…」
これは謙遜でもなんでもない本音の言葉
彼女に比べれば私なんて…
13: 2010/09/04(土) 09:45:53.94
そんな私の心の声が聞こえたかのように、母は驚く程アッサリとその名を口にする
母「ふむ、梓の想い人は平沢憂ちゃんかな?確かに彼女も素敵な女の子よね」
…なんで分かっちゃったの?
父「なるほど、憂ちゃんか。これは確かに手強い相手だな」
もう隠す必要も無いみたい。そう、私の恋の相手は平沢憂
透き通るような透明感と、誰よりも優しい心を持つ可憐な少女
ほんの些細な出来事から、様々な不安を抱えていた私が壊れそうになるのを救ってくれた大切な人
あの甘い香りが記憶の中から甦ってくる…
母「ふむ、梓の想い人は平沢憂ちゃんかな?確かに彼女も素敵な女の子よね」
…なんで分かっちゃったの?
父「なるほど、憂ちゃんか。これは確かに手強い相手だな」
もう隠す必要も無いみたい。そう、私の恋の相手は平沢憂
透き通るような透明感と、誰よりも優しい心を持つ可憐な少女
ほんの些細な出来事から、様々な不安を抱えていた私が壊れそうになるのを救ってくれた大切な人
あの甘い香りが記憶の中から甦ってくる…
15: 2010/09/04(土) 09:50:41.25
…ヤバいヤバい!ここで回想モードに入ると、また赤面して母さんに茶化される
慌てて思想の方向を変えてみる
今の会話を聞くまでも無く、憂は私の両親にも非常に評判が良い
よく家にも遊びに来るので、必然的に両親とも親しくなっている
いつだったか、コンビニに買い出しに出かけた私と入れ違いで憂が来た日なんて、もう傑作だった
両親と仲良くリビングにいただけならまだしも、何故か父さんのサックスと母さんのギターを伴奏に、憂がその透明な歌声を披露していた
帰ってきた私が唖然としたのは言うまでもない
慌てて思想の方向を変えてみる
今の会話を聞くまでも無く、憂は私の両親にも非常に評判が良い
よく家にも遊びに来るので、必然的に両親とも親しくなっている
いつだったか、コンビニに買い出しに出かけた私と入れ違いで憂が来た日なんて、もう傑作だった
両親と仲良くリビングにいただけならまだしも、何故か父さんのサックスと母さんのギターを伴奏に、憂がその透明な歌声を披露していた
帰ってきた私が唖然としたのは言うまでもない
16: 2010/09/04(土) 09:53:47.20
母「で、また梓は愛しの憂姫の事を思い浮かべて赤面してるのかしら?」
…結局茶化されるんじゃん、私
梓「だから違うもん!麦茶のせいだもん!」
父「麦茶で火照るかな?」
…まさかの夫婦コンビネーション攻撃
梓「父さんは娘の飲酒を黙認しているとでも?」
父「…麦茶だな、麦茶」
苦笑いを浮かべて琥珀色の液体の入ったグラスを揺らす父
ささやかな反撃が決まった今がチャンス!
私は急いでリビングを後にする
途中少しよろけたのも麦茶のせいだ、決して動揺していたからじゃないもん!
…結局茶化されるんじゃん、私
梓「だから違うもん!麦茶のせいだもん!」
父「麦茶で火照るかな?」
…まさかの夫婦コンビネーション攻撃
梓「父さんは娘の飲酒を黙認しているとでも?」
父「…麦茶だな、麦茶」
苦笑いを浮かべて琥珀色の液体の入ったグラスを揺らす父
ささやかな反撃が決まった今がチャンス!
私は急いでリビングを後にする
途中少しよろけたのも麦茶のせいだ、決して動揺していたからじゃないもん!
17: 2010/09/04(土) 09:55:16.08
よろける足を叱咤激励して階段を昇る
…父よ、今日の麦茶はいつもより濃くなかった?娘を酔わせてどうするつもりだ!
などと考えつつ、部屋の扉を開く
薄闇の室内からは微かな甘い香りが出迎えてくれた…憂の香り
あの日貰ったクチナシの押し花の紙包みは、今でも私の宝物
「私は幸せ」と言う花言葉どおりに、私を幸せな気分にしてくれる
部屋の灯を点けると、さっき爪弾いたウッドギターに視線を向ける
両親から音色を褒められた事は素直に嬉しかったりする
…父よ、今日の麦茶はいつもより濃くなかった?娘を酔わせてどうするつもりだ!
などと考えつつ、部屋の扉を開く
薄闇の室内からは微かな甘い香りが出迎えてくれた…憂の香り
あの日貰ったクチナシの押し花の紙包みは、今でも私の宝物
「私は幸せ」と言う花言葉どおりに、私を幸せな気分にしてくれる
部屋の灯を点けると、さっき爪弾いたウッドギターに視線を向ける
両親から音色を褒められた事は素直に嬉しかったりする
18: 2010/09/04(土) 09:57:19.52
ちょっぴり睡魔の誘惑を感じたので、パジャマに着替えてベットに身を横たえる
梓「…憂もそろそろオヤスミの時間かな」
そんな事をぼんやり考えていると枕元で携帯が着信を告げた
梓「もしかして、憂かな!?」
はやる気持ちを押さえきれずに携帯を手に取る
梓「…純じゃん」
乙女の期待を裏切りおって…なんて純に八つ当たりはしない
純も私の大切な親友だよ、うん
梓「もしもし、寝てるよ」
それでもちょっぴり意地悪してみる
すかさず電波の向こうから威勢のいいツッコミが届く
純「起きてんじゃん!」
梓「…憂もそろそろオヤスミの時間かな」
そんな事をぼんやり考えていると枕元で携帯が着信を告げた
梓「もしかして、憂かな!?」
はやる気持ちを押さえきれずに携帯を手に取る
梓「…純じゃん」
乙女の期待を裏切りおって…なんて純に八つ当たりはしない
純も私の大切な親友だよ、うん
梓「もしもし、寝てるよ」
それでもちょっぴり意地悪してみる
すかさず電波の向こうから威勢のいいツッコミが届く
純「起きてんじゃん!」
19: 2010/09/04(土) 10:00:40.57
梓「ナイスツッコミだよ、純」
純「私はあんたのなんなのよ」
しばし小考…
梓「…道化師?」
純「…あんた、それ本気で言ってるでしょ?」
電波の向こうで純の癖っ毛が音を立ててハネたような気がする…
梓「冗談だよぉ。それでなんの御用かな、我が親友殿」
純「なんか嘘クサいぞ」
あはは、そんな事無いって。ホントのホントだよ…多分ね
純「まぁいいや。それで明日なんだけどさ、部活終わった後になんか用事ある?」
ふむ、明日は土曜日か、ならばこれで行こう
梓「明日は彼氏とデートだよ」
純「私はあんたのなんなのよ」
しばし小考…
梓「…道化師?」
純「…あんた、それ本気で言ってるでしょ?」
電波の向こうで純の癖っ毛が音を立ててハネたような気がする…
梓「冗談だよぉ。それでなんの御用かな、我が親友殿」
純「なんか嘘クサいぞ」
あはは、そんな事無いって。ホントのホントだよ…多分ね
純「まぁいいや。それで明日なんだけどさ、部活終わった後になんか用事ある?」
ふむ、明日は土曜日か、ならばこれで行こう
梓「明日は彼氏とデートだよ」
20: 2010/09/04(土) 10:04:19.00
しばしの沈黙…電波の向こう側では更に純の癖っ毛が…って、これはもういいか
純「マジでぇー!?」
…どんだけ声が大きいんだ、鼓膜がやぶれちゃうよ、親友
梓「マジで」
更なる沈黙、そして再び大声攻撃!は、来なかった
純「あんた、いつの間に彼氏なんて出来たのよ?」
梓「純には今まで黙ってたけど、実は夏フェスでナンパされちゃってさぁ」
純「また夏フェス!?あー、羨ましいっ!」
ここまで見事にノッてくれると楽しくて仕方がない
なので、更に悪ノリしてみたりする
純「マジでぇー!?」
…どんだけ声が大きいんだ、鼓膜がやぶれちゃうよ、親友
梓「マジで」
更なる沈黙、そして再び大声攻撃!は、来なかった
純「あんた、いつの間に彼氏なんて出来たのよ?」
梓「純には今まで黙ってたけど、実は夏フェスでナンパされちゃってさぁ」
純「また夏フェス!?あー、羨ましいっ!」
ここまで見事にノッてくれると楽しくて仕方がない
なので、更に悪ノリしてみたりする
21: 2010/09/04(土) 10:06:39.47
梓「ちょうど良かったよ。私もその事で純に電話しようと思ってたんだよぉ」
ちょっぴり甘えた猫撫で声なんか出してみたりする
我ながら女優だ、うん
純「なんなのよ?まぁ、私に出来る事なら協力はするけどさ」
…あんたって子は…なんていい奴なんだ
でも悪戯はやめないもん
乙女の期待を裏切った天罰だ(しっかり根に持ってんじゃん、私)
梓「実はさぁ、明日の夜は彼氏とお泊まりしたいんだぁ」
純「…どけんばしよっとぉ!?」
…どこの地方の人だよ、親友
ちょっぴり甘えた猫撫で声なんか出してみたりする
我ながら女優だ、うん
純「なんなのよ?まぁ、私に出来る事なら協力はするけどさ」
…あんたって子は…なんていい奴なんだ
でも悪戯はやめないもん
乙女の期待を裏切った天罰だ(しっかり根に持ってんじゃん、私)
梓「実はさぁ、明日の夜は彼氏とお泊まりしたいんだぁ」
純「…どけんばしよっとぉ!?」
…どこの地方の人だよ、親友
22: 2010/09/04(土) 10:10:04.18
梓「それでさぁ、明日の夜から純の家に泊まりがけで遊びに行くって事にしてくれないかなぁ、お願いっ!」
…言ってて我ながらドキドキしてきた
なんかいきなり罪悪感…ゴメンね、憂。私は憂一筋だからね
そんな事とは露知らず、電波の向こうで純の癖っ毛が更に…は、もういいよね
純「…ねぇ、梓」
突然シリアスな声色、少しやり過ぎてバレたかな?
梓「なに?」
純「私は梓の事、親友だと思ってるよ。あんたも同じように思ってくれてると信じてるし」
…泣かせる台詞を言ってくれるじゃないか、親友
…言ってて我ながらドキドキしてきた
なんかいきなり罪悪感…ゴメンね、憂。私は憂一筋だからね
そんな事とは露知らず、電波の向こうで純の癖っ毛が更に…は、もういいよね
純「…ねぇ、梓」
突然シリアスな声色、少しやり過ぎてバレたかな?
梓「なに?」
純「私は梓の事、親友だと思ってるよ。あんたも同じように思ってくれてると信じてるし」
…泣かせる台詞を言ってくれるじゃないか、親友
23: 2010/09/04(土) 10:12:08.08
純「そのあんたが選んだ人なんだから、悪い奴じゃないとも信じたい」
…駄目だ、完全にシリアスモード突入。困ったぞ、これは
純「だから、あんたがそう言うなら私は協力するよ。でも、本当にそれでいいの?」
…弱った、完全に弱った。心なしか目頭が熱くなって来たじゃないか
純「ねぇ、梓?」
…どうする、私?
こうなったら…あっさりネタばらしっ!
梓「実は全部ウソだったりして、テヘ」
純「…マジで?」
梓「マジでウソなのはマジ」
純「…マジでウソなのはマジでウソじゃなくマジ?」
…駄目だ、完全にシリアスモード突入。困ったぞ、これは
純「だから、あんたがそう言うなら私は協力するよ。でも、本当にそれでいいの?」
…弱った、完全に弱った。心なしか目頭が熱くなって来たじゃないか
純「ねぇ、梓?」
…どうする、私?
こうなったら…あっさりネタばらしっ!
梓「実は全部ウソだったりして、テヘ」
純「…マジで?」
梓「マジでウソなのはマジ」
純「…マジでウソなのはマジでウソじゃなくマジ?」
24: 2010/09/04(土) 10:15:35.53
なんか収拾がつかなくなってきた
…こうなったら、素直に謝る作戦に変更っ!
梓「つまり私はウソをついてしまいました。ごめんなさい」
純「…」
ヤバい、ヤバい…これは相当怒ってるのかも
どうしよう…身から出た錆とは言え、正に大ピンチ、私!
純「…良かったあー」
…にゃっ!?
純「もぉー、心配させないでよっ、全くぅ」
…純、あんたってどこまでいい奴なのよ
ホントに泣いちゃいそうだよぉ
梓「…ゴメンね、純」
…こうなったら、素直に謝る作戦に変更っ!
梓「つまり私はウソをついてしまいました。ごめんなさい」
純「…」
ヤバい、ヤバい…これは相当怒ってるのかも
どうしよう…身から出た錆とは言え、正に大ピンチ、私!
純「…良かったあー」
…にゃっ!?
純「もぉー、心配させないでよっ、全くぅ」
…純、あんたってどこまでいい奴なのよ
ホントに泣いちゃいそうだよぉ
梓「…ゴメンね、純」
25: 2010/09/04(土) 10:17:23.62
純「なんか安堵感が先に来ちゃって、怒る気にもなれないよ」
梓「ホントにゴメン、純」
純「もういいよ、そんなに謝らなくても」
梓「…でも」
純「それによく考えたらさ、あんたのキャラじゃないじゃん。彼氏とお泊まり、なんて」
にゃっ!それはそれでちょっぴり傷つくかも
純「だいたいさぁ、夏フェスに来る男で、あんたをナンパするってさぁ、どんだけ口リコンよ」
梓「…口リ」
純「だってあんたって、プールで中学生にナンパされそうになってたじゃん!」
…グッ…痛い所を…
梓「ホントにゴメン、純」
純「もういいよ、そんなに謝らなくても」
梓「…でも」
純「それによく考えたらさ、あんたのキャラじゃないじゃん。彼氏とお泊まり、なんて」
にゃっ!それはそれでちょっぴり傷つくかも
純「だいたいさぁ、夏フェスに来る男で、あんたをナンパするってさぁ、どんだけ口リコンよ」
梓「…口リ」
純「だってあんたって、プールで中学生にナンパされそうになってたじゃん!」
…グッ…痛い所を…
26: 2010/09/04(土) 10:19:31.85
純「それが夏フェスでナンパなんて有り得ないじゃん!」
…実は怒ってないか、親友?
ここは軽音部名物?の餌付け作戦っ!
梓「まぁまぁ、明日ドーナツでも奢るからさぁ」
純「…チョコレートパフェも食べたい」
くっ、人の足元を見おって…仕方がない、これも自業自得だよ、私
梓「分かりました、純様」
純「じゃあ許す!」
許すって…やっぱり怒ってたんじゃないか、親友
純「あっ、そうだ。電話したのは明日部活が終わったら一緒に駅前の楽器屋に行かないかと思ってさ」
…実は怒ってないか、親友?
ここは軽音部名物?の餌付け作戦っ!
梓「まぁまぁ、明日ドーナツでも奢るからさぁ」
純「…チョコレートパフェも食べたい」
くっ、人の足元を見おって…仕方がない、これも自業自得だよ、私
梓「分かりました、純様」
純「じゃあ許す!」
許すって…やっぱり怒ってたんじゃないか、親友
純「あっ、そうだ。電話したのは明日部活が終わったら一緒に駅前の楽器屋に行かないかと思ってさ」
27: 2010/09/04(土) 10:22:55.59
梓「うん、いいよ」
純「それじゃ明日部活が終わったら誘いに行くよ」
梓「了解、それじゃ明日ね」
純「ドーナツとパフェをお忘れなくぅ」
梓「…それも了解」
純「やっほー、それじゃおやすみー」
梓「はいはい、おやすみなさい」
ハァ、今月もまたお財布がピンチだ…
なんか私が幸薄いのってさ、純、あんたのせいじゃない?ハァ…
ふむ、落ち込んでも仕方ない
ベットの枕元に憂から貰ったクチナシの紙包みを置いてみたりする
せめて夢の中では、憂と…なんか凄く乙女だ、私
純「それじゃ明日部活が終わったら誘いに行くよ」
梓「了解、それじゃ明日ね」
純「ドーナツとパフェをお忘れなくぅ」
梓「…それも了解」
純「やっほー、それじゃおやすみー」
梓「はいはい、おやすみなさい」
ハァ、今月もまたお財布がピンチだ…
なんか私が幸薄いのってさ、純、あんたのせいじゃない?ハァ…
ふむ、落ち込んでも仕方ない
ベットの枕元に憂から貰ったクチナシの紙包みを置いてみたりする
せめて夢の中では、憂と…なんか凄く乙女だ、私
28: 2010/09/04(土) 10:25:48.90
翌日の放課後、舞台はいつもの軽音部
お茶とお菓子と時々楽器
今は学園祭ライブも終わり、すっかりいつものまったり空間
しかし、私はちょっぴりブルー
原因は今朝、登校してきた憂に放課後の純との約束を話して憂も誘ってみたんだけど…
憂「ごめんね、今日はちょっと先約があるから」
…敢え無く玉砕、そりゃブルーにもなるよ
そんな私の心を知ってか知らずか、今日も今日とて…
唯「あずにゃん、今日はなんだか元気がないねぇ」
梓「もう唯先輩、抱きつかないでって何度言ったら分かるんですか!」
お茶とお菓子と時々楽器
今は学園祭ライブも終わり、すっかりいつものまったり空間
しかし、私はちょっぴりブルー
原因は今朝、登校してきた憂に放課後の純との約束を話して憂も誘ってみたんだけど…
憂「ごめんね、今日はちょっと先約があるから」
…敢え無く玉砕、そりゃブルーにもなるよ
そんな私の心を知ってか知らずか、今日も今日とて…
唯「あずにゃん、今日はなんだか元気がないねぇ」
梓「もう唯先輩、抱きつかないでって何度言ったら分かるんですか!」
29: 2010/09/04(土) 10:28:30.99
律「相変わらず唯は梓が大好きだな」
紬「本当に仲が良くて羨ましいわ」
ほっこりしてないで、少しは助けてくれないかな…まぁ、いつもの事だからもう諦めてるけど
唯「だぁって最近あずにゃん、私を除け者にして憂とばっかり遊んでるんだよぉ」
…何を言い出すつもりなのかな、この人は
律「なんだ唯、憂ちゃんにヤキモチ焼いてるのか?」
紬「憂梓!憂梓なの!?」
ムギ先輩、あなたはその可愛いポワポワフェイスの裏にどんなドス黒い獣を隠してるんですか…
けど…憂梓…なんていい響き
紬「本当に仲が良くて羨ましいわ」
ほっこりしてないで、少しは助けてくれないかな…まぁ、いつもの事だからもう諦めてるけど
唯「だぁって最近あずにゃん、私を除け者にして憂とばっかり遊んでるんだよぉ」
…何を言い出すつもりなのかな、この人は
律「なんだ唯、憂ちゃんにヤキモチ焼いてるのか?」
紬「憂梓!憂梓なの!?」
ムギ先輩、あなたはその可愛いポワポワフェイスの裏にどんなドス黒い獣を隠してるんですか…
けど…憂梓…なんていい響き
30: 2010/09/04(土) 10:29:58.84
澪「おまえら遊ぶのもいいけど、少しは受験生だって自覚も持とうな」
まともなのは澪先輩だけだよ、全く
梓「そうですよ、皆さん受験生なんですから、もっと勉強しなくちゃダメなんじゃないですか?」
特に唯先輩と律先輩に言ったつもりなんだけど…
律「大丈夫だって、息抜きも必要だっしー」
…息抜けっぱなしじゃないですか、律先輩
唯「私は本番に強いから問題ないよ、あずにゃん」
それって根拠のない自信って言うんじゃ…
唯律「私達はやる時はやるのだっ!」
梓「はぁ」
付き合ってられません
まともなのは澪先輩だけだよ、全く
梓「そうですよ、皆さん受験生なんですから、もっと勉強しなくちゃダメなんじゃないですか?」
特に唯先輩と律先輩に言ったつもりなんだけど…
律「大丈夫だって、息抜きも必要だっしー」
…息抜けっぱなしじゃないですか、律先輩
唯「私は本番に強いから問題ないよ、あずにゃん」
それって根拠のない自信って言うんじゃ…
唯律「私達はやる時はやるのだっ!」
梓「はぁ」
付き合ってられません
31: 2010/09/04(土) 10:31:37.94
澪「梓、心配する気持ちは分かるけど、こいつらも一応勉強はしてるからさ」
すかさすフォローする澪先輩が健気でならないよ…
唯「そうだよ、あずにゃん。心配してくれてありがとうね。キュッ」
…さり気なく抱きつくのはやめてくれませんか
しかも口でキュッなんて擬音付きで
律「唯ばっかりずるいぞ!よし中野、私の胸にも飛び込んでこい!チューしたるっ」
その中野って言うのマイブームなんですか?
絶対流行りませんから、それ
梓「氏んでもお断りします」
律「いやぁん、イケズゥ」
…気持ち悪いです
すかさすフォローする澪先輩が健気でならないよ…
唯「そうだよ、あずにゃん。心配してくれてありがとうね。キュッ」
…さり気なく抱きつくのはやめてくれませんか
しかも口でキュッなんて擬音付きで
律「唯ばっかりずるいぞ!よし中野、私の胸にも飛び込んでこい!チューしたるっ」
その中野って言うのマイブームなんですか?
絶対流行りませんから、それ
梓「氏んでもお断りします」
律「いやぁん、イケズゥ」
…気持ち悪いです
32: 2010/09/04(土) 10:33:06.58
紬「えーっ、梓ちゃんたら勿体ないのー」
梓「…ムギ先輩さえ良ければ、遠慮なく私の代わりにどうぞです」
紬「うーん、私は律梓が見たいだけなの」
…最近ますます壊れっぷりに拍車がかかってませんか、ムギ先輩
唯「今日も私は帰ったら和ちゃんと勉強するんだよ」
梓「そうなんですか?」
唯「うん。あずにゃんは今日も憂と遊ぶんでしょ、いいなぁ」
梓「え?」
唯「受験生の私に遠慮して隠さなくてもいいんだよ、あずにゃん」
…遠慮はしてませんけど…え?
梓「…ムギ先輩さえ良ければ、遠慮なく私の代わりにどうぞです」
紬「うーん、私は律梓が見たいだけなの」
…最近ますます壊れっぷりに拍車がかかってませんか、ムギ先輩
唯「今日も私は帰ったら和ちゃんと勉強するんだよ」
梓「そうなんですか?」
唯「うん。あずにゃんは今日も憂と遊ぶんでしょ、いいなぁ」
梓「え?」
唯「受験生の私に遠慮して隠さなくてもいいんだよ、あずにゃん」
…遠慮はしてませんけど…え?
33: 2010/09/04(土) 10:34:40.63
唯「今日は映画を観に行くんでしょ、いいなぁ」
梓「…え、ええまぁ」
唯「受験が終わったら私も仲間に入れてね、あずにゃん」
梓「は、はぁ」
正直頭の中は?マークだらけで、思考停止状態です…
澪「そう言えば和が、最近は時々憂ちゃんに生徒会の仕事を手伝って貰えて助かるって言ってたな」
律「全くよく出来た子だよなぁ。姉とは偉い違いだ」
紬「あら、でも憂ちゃんって家事で忙しいんじゃなかったの?」
…映画?憂と?誰が?
梓「…え、ええまぁ」
唯「受験が終わったら私も仲間に入れてね、あずにゃん」
梓「は、はぁ」
正直頭の中は?マークだらけで、思考停止状態です…
澪「そう言えば和が、最近は時々憂ちゃんに生徒会の仕事を手伝って貰えて助かるって言ってたな」
律「全くよく出来た子だよなぁ。姉とは偉い違いだ」
紬「あら、でも憂ちゃんって家事で忙しいんじゃなかったの?」
…映画?憂と?誰が?
34: 2010/09/04(土) 10:36:42.09
唯「最近はお母さんが家にいる事が多いんだよ」
律「なるほど、憂ちゃんもやっと唯の介護から解放された訳だな」
唯「そうなんだよ」
律「…悪口を言われてる事を理解出来る程度の語学力は身につけような、唯」
唯「へ?」
紬「うふふ。でもその鷹揚な所も唯ちゃんの魅力よね」
澪「…魅力かな?」
…憂が家事で忙しくない?
突然、朝の憂の言葉が記憶の中から浮かび上がる
確か「先約がある」と憂は言わなかった?
…おーい、呼吸してるか、私?
律「なるほど、憂ちゃんもやっと唯の介護から解放された訳だな」
唯「そうなんだよ」
律「…悪口を言われてる事を理解出来る程度の語学力は身につけような、唯」
唯「へ?」
紬「うふふ。でもその鷹揚な所も唯ちゃんの魅力よね」
澪「…魅力かな?」
…憂が家事で忙しくない?
突然、朝の憂の言葉が記憶の中から浮かび上がる
確か「先約がある」と憂は言わなかった?
…おーい、呼吸してるか、私?
35: 2010/09/04(土) 10:38:46.75
取り敢えず呼吸!呼吸をしよう、私!
先輩方に怪しまれない様に、こっそり深呼吸
灰色の脳細胞に新鮮な酸素が供給されて、ゆっくりながらも思考能力が回復していく
一度これまでの状況を脳内で整理してみる
・母親の在宅で以前に比べて、憂が家事に束縛される時間が減っている
・そして今日は映画を観に行くらしい、相手は私?
・けど、私はそんな約束はしていない
・今朝、憂を誘った時は「今日は先約があるから」と誘いを断られた
…つまり、私をスケープゴートにして、憂は誰かと映画を観に行くという事?
また呼吸が止まってないか、私?
先輩方に怪しまれない様に、こっそり深呼吸
灰色の脳細胞に新鮮な酸素が供給されて、ゆっくりながらも思考能力が回復していく
一度これまでの状況を脳内で整理してみる
・母親の在宅で以前に比べて、憂が家事に束縛される時間が減っている
・そして今日は映画を観に行くらしい、相手は私?
・けど、私はそんな約束はしていない
・今朝、憂を誘った時は「今日は先約があるから」と誘いを断られた
…つまり、私をスケープゴートにして、憂は誰かと映画を観に行くという事?
また呼吸が止まってないか、私?
36: 2010/09/04(土) 10:40:33.69
いつものまったり空間で、一人茫然自失状態
誰かに気取られる前になんとか体裁だけでも繕おうとするが…無理だよ
憂…どうしちゃったの、憂?
頭の中はただこの一事で埋め尽くされていく
…目頭が熱くなるのが止められない
…ダメだ、泣いちゃダメだ、私!
誰か、誰かこの状況をなんとかして
そんな私の願いが天に通じたように、救いの手が舞い降りる
部室の扉が開き、ジャズ研の終わった純がやってきた
ナイスタイミングだよ、親友!
誰かに気取られる前になんとか体裁だけでも繕おうとするが…無理だよ
憂…どうしちゃったの、憂?
頭の中はただこの一事で埋め尽くされていく
…目頭が熱くなるのが止められない
…ダメだ、泣いちゃダメだ、私!
誰か、誰かこの状況をなんとかして
そんな私の願いが天に通じたように、救いの手が舞い降りる
部室の扉が開き、ジャズ研の終わった純がやってきた
ナイスタイミングだよ、親友!
38: 2010/09/04(土) 10:46:01.26
純「梓ぁ、お茶の時間は終わったぁ?」
この空気を読まないある意味暴言紛いの発言が、追い込まれた私を平静に戻してくれた
それについては感謝するけど、お茶の時間って…
まぁ、あながち否定は出来ないのが悲しい
ともかくこの機を逃さす部室からの脱出を図る
梓「すいません、今日は部活が終わった後に純と出かける約束がありまして」
唯「へぇー、それじゃ今日は憂と純ちゃんと3人でお出かけなんだぁ、いいなぁ」
…普段はアレな癖に、なんでこんな時だけは脳の回転が早いんだ、全く面倒臭い人だ
この空気を読まないある意味暴言紛いの発言が、追い込まれた私を平静に戻してくれた
それについては感謝するけど、お茶の時間って…
まぁ、あながち否定は出来ないのが悲しい
ともかくこの機を逃さす部室からの脱出を図る
梓「すいません、今日は部活が終わった後に純と出かける約束がありまして」
唯「へぇー、それじゃ今日は憂と純ちゃんと3人でお出かけなんだぁ、いいなぁ」
…普段はアレな癖に、なんでこんな時だけは脳の回転が早いんだ、全く面倒臭い人だ
39: 2010/09/04(土) 10:47:25.16
純「あれ?憂は確か朝誘ったけど断られたんじゃ?」
…空気を読めっ!て、状況を理解してないのに無理か
梓「それが憂も来れる事になったんだよ」
咄嗟に憂を庇う私
…何故か分からないが、とにかく今はこの方が良いと本能的に判断する
律「そっか。それじゃ今日はお開きにすっかぁ」
澪「帰っても、ちゃんと勉強するんだぞ、律」
律「ぶーっ、分かってるってぇの」
唯「それじゃ私も生徒会室に和ちゃんの様子でも見に行こうかなぁ」
なんとかこの場は切り抜けられそうだ
でも…憂…本当にどうしちゃったのよ
…空気を読めっ!て、状況を理解してないのに無理か
梓「それが憂も来れる事になったんだよ」
咄嗟に憂を庇う私
…何故か分からないが、とにかく今はこの方が良いと本能的に判断する
律「そっか。それじゃ今日はお開きにすっかぁ」
澪「帰っても、ちゃんと勉強するんだぞ、律」
律「ぶーっ、分かってるってぇの」
唯「それじゃ私も生徒会室に和ちゃんの様子でも見に行こうかなぁ」
なんとかこの場は切り抜けられそうだ
でも…憂…本当にどうしちゃったのよ
40: 2010/09/04(土) 10:48:48.63
先輩方に怪しまれない程度に、それでも迅速に純と共に部室を後にする
校門をくぐってやっと歩く速度を緩めた
純「ちょっと梓!あんた何慌ててんのよ?」
隣で息をきらせる純を尻目に、私は憂の事で頭が一杯だった
昨日の夜の純との電話での悪戯が、私の頭をよぎる…
「彼氏とデートだよ」
「今夜は彼氏とお泊まりしたいんだぁ」
…これって女子高生としては特別珍しい話でも無い
まさか、憂が…でも、状況は明らかに怪しいと告げている
ダメだ…また泣きそうになってしまう
校門をくぐってやっと歩く速度を緩めた
純「ちょっと梓!あんた何慌ててんのよ?」
隣で息をきらせる純を尻目に、私は憂の事で頭が一杯だった
昨日の夜の純との電話での悪戯が、私の頭をよぎる…
「彼氏とデートだよ」
「今夜は彼氏とお泊まりしたいんだぁ」
…これって女子高生としては特別珍しい話でも無い
まさか、憂が…でも、状況は明らかに怪しいと告げている
ダメだ…また泣きそうになってしまう
41: 2010/09/04(土) 10:50:01.54
純「…ねぇ、梓。何かあった?」
暗い思考に捕らわれていた私は、辛うじて純の呼び掛けに答える
梓「…実はさぁ」
取り敢えず純には黙っておく訳にもいかずに、今までの経緯を歩きながら説明する
純「なるほどね…それにしても憂が私達にも隠し事をしてるなんて、俄かには信じがたい話なんだけど」
梓「そう…かな?」
純「なんて言うか、唯先輩の早トチりなんじゃ無いの?あの人ってそそっかしいしさ」
純、あんたって子は本当に…その存在には毎度救われるよ、全く
暗い思考に捕らわれていた私は、辛うじて純の呼び掛けに答える
梓「…実はさぁ」
取り敢えず純には黙っておく訳にもいかずに、今までの経緯を歩きながら説明する
純「なるほどね…それにしても憂が私達にも隠し事をしてるなんて、俄かには信じがたい話なんだけど」
梓「そう…かな?」
純「なんて言うか、唯先輩の早トチりなんじゃ無いの?あの人ってそそっかしいしさ」
純、あんたって子は本当に…その存在には毎度救われるよ、全く
42: 2010/09/04(土) 10:51:23.23
梓「唯先輩なら確かに有り得るわ」
純「でしょ?大体梓はさ、普段はクールぶってる癖に、憂の事になると途端にダメダメになっちゃうんだから」
…なんだ、その意味深なニヤけ顔は
全く誰かさんに似て、変な時だけは鋭い奴め
純「そんなに気になるんなら電話でもしてみたら?」
梓「…それもそうだね」
純「梓、ダメダメすぎ」
これみよがしに大袈裟な溜息をつくフリをする純を無視して、憂の携帯をコール
梓「…つながんない」
純「きっと家にいて、携帯は部屋にでも置きっ放しなんだよ」
梓「…そうかな」
純「でしょ?大体梓はさ、普段はクールぶってる癖に、憂の事になると途端にダメダメになっちゃうんだから」
…なんだ、その意味深なニヤけ顔は
全く誰かさんに似て、変な時だけは鋭い奴め
純「そんなに気になるんなら電話でもしてみたら?」
梓「…それもそうだね」
純「梓、ダメダメすぎ」
これみよがしに大袈裟な溜息をつくフリをする純を無視して、憂の携帯をコール
梓「…つながんない」
純「きっと家にいて、携帯は部屋にでも置きっ放しなんだよ」
梓「…そうかな」
43: 2010/09/04(土) 10:52:44.97
いつまでも引き摺る訳にも行かないので、当初の予定通り、純と楽器屋へ
その後、これまた予定通りに純の好きなドーナツ店に行き、約束のドーナツとパフェをたかられたりする
そうしてる間にも結局、憂から電話がかかってくる事もなく、ドーナツとパフェを堪能した純と別れる
純「ゴチになりましたぁ」
梓「はいはい、お粗末様でした」
純「そんじゃまた月曜日に」
梓「うん、ばいばい」
純「あぁ、そうそう!」
梓「なに?」
純「あんまり眉間に皺寄せてるとホントに幸薄くなっちゃうよ」
…一言多いよ、親友
その後、これまた予定通りに純の好きなドーナツ店に行き、約束のドーナツとパフェをたかられたりする
そうしてる間にも結局、憂から電話がかかってくる事もなく、ドーナツとパフェを堪能した純と別れる
純「ゴチになりましたぁ」
梓「はいはい、お粗末様でした」
純「そんじゃまた月曜日に」
梓「うん、ばいばい」
純「あぁ、そうそう!」
梓「なに?」
純「あんまり眉間に皺寄せてるとホントに幸薄くなっちゃうよ」
…一言多いよ、親友
44: 2010/09/04(土) 10:54:04.66
純を見送り、ポケットから携帯を取り出す
待受画面の中には、あの夏の終わりの風景
戸惑い気味な、それでも最高の笑顔を浮かべた私を挟んで両頬にキスする憂と純
梓「…憂」
突然、手の中の携帯が着信を告げる
着信通知は…憂!
急いで通話キーを押そうとして、思わず携帯を落としそうになったりする
さっきの純の言葉通り…ダメダメだ、私
憂「梓ちゃん?…あれ、聞こえてないのかな?」
梓「あ、ごめん。聞こえてるよ」
いつも通りの憂の声に思わず安堵の息を漏らす
憂「今どこかな?」
待受画面の中には、あの夏の終わりの風景
戸惑い気味な、それでも最高の笑顔を浮かべた私を挟んで両頬にキスする憂と純
梓「…憂」
突然、手の中の携帯が着信を告げる
着信通知は…憂!
急いで通話キーを押そうとして、思わず携帯を落としそうになったりする
さっきの純の言葉通り…ダメダメだ、私
憂「梓ちゃん?…あれ、聞こえてないのかな?」
梓「あ、ごめん。聞こえてるよ」
いつも通りの憂の声に思わず安堵の息を漏らす
憂「今どこかな?」
47: 2010/09/04(土) 10:55:27.07
どうやら憂もこの辺りにいるらしい
取り敢えず互いの位置を確認しあい、近くの喫茶店で待ち合わせる
ちょうど同じくらいに到着する様に、お互いの中間辺りに位置する場所を選んだのに、何故か小走りに駆けてしまう
なんだか最近乙女すぎないか、私?
それでもなぜか店に着くと、憂のほうが早かったりする
よく見ると憂も少し息が切れてる気がする
…私に比べればほんの少しだけど
梓「ごめん、お待たせ」
憂「ううん、私も今着いたところだから」
いつもの優しい微笑み、これだけで全ての不安が吹っ飛んだりする
取り敢えず互いの位置を確認しあい、近くの喫茶店で待ち合わせる
ちょうど同じくらいに到着する様に、お互いの中間辺りに位置する場所を選んだのに、何故か小走りに駆けてしまう
なんだか最近乙女すぎないか、私?
それでもなぜか店に着くと、憂のほうが早かったりする
よく見ると憂も少し息が切れてる気がする
…私に比べればほんの少しだけど
梓「ごめん、お待たせ」
憂「ううん、私も今着いたところだから」
いつもの優しい微笑み、これだけで全ての不安が吹っ飛んだりする
48: 2010/09/04(土) 10:57:10.08
憂「ごめんね、梓ちゃん。マナーモードがサイレントになってて、着信に気付くのが遅くなっちゃった」
梓「あ、うん。平気だよ、全然気にしてないから」
相変わらず素直じゃない、私
さっきまであんなに気にしてたのに…
憂「ん?」
私の顔を見て、小さく小首を傾げる
こんな仕草一つでもドキッとするほど憂は可愛い
そして軽くテーブルに身を乗り出す感じで、私の瞳をまっすぐ見つめてくる
憂の澄んだ瞳に吸い込まれそうだよ…
憂「梓ちゃん、何か隠してる」
…やっぱり憂にはかなわない
梓「あ、うん。平気だよ、全然気にしてないから」
相変わらず素直じゃない、私
さっきまであんなに気にしてたのに…
憂「ん?」
私の顔を見て、小さく小首を傾げる
こんな仕草一つでもドキッとするほど憂は可愛い
そして軽くテーブルに身を乗り出す感じで、私の瞳をまっすぐ見つめてくる
憂の澄んだ瞳に吸い込まれそうだよ…
憂「梓ちゃん、何か隠してる」
…やっぱり憂にはかなわない
49: 2010/09/04(土) 10:58:25.50
梓「なんのこと、かな?」
それでも少しだけ抵抗
やっぱり素直じゃないよ、私
憂「素直じゃないなぁ、梓ちゃんは」
はい、自分でも自覚してます
そんな私を見つめる憂の瞳に悪戯な色が浮かぶ
憂「ふむ、また素直になれるおまじないが必要なのかな?」
梓「…え?」
あの夏の終わりの記憶が鮮やかに甦る
憂の柔らかい唇の感触…
て、ダッ、ダメだよ!ここって喫茶店だよ?他のお客さんもたくさんいるんだよ!?
私は慌てて今日の一部始終を説明する
…ちょっぴり、いや、かなり残念な気分
それでも少しだけ抵抗
やっぱり素直じゃないよ、私
憂「素直じゃないなぁ、梓ちゃんは」
はい、自分でも自覚してます
そんな私を見つめる憂の瞳に悪戯な色が浮かぶ
憂「ふむ、また素直になれるおまじないが必要なのかな?」
梓「…え?」
あの夏の終わりの記憶が鮮やかに甦る
憂の柔らかい唇の感触…
て、ダッ、ダメだよ!ここって喫茶店だよ?他のお客さんもたくさんいるんだよ!?
私は慌てて今日の一部始終を説明する
…ちょっぴり、いや、かなり残念な気分
50: 2010/09/04(土) 10:59:52.80
私の説明を聞いた憂は軽く溜息
憂「ハァ、お姉ちゃんたら、相変わらずそそっかしいんだから」
そう言って憂は鞄から2枚の映画のチケットを取り出す
憂「お父さんに貰って、明日の日曜日に梓ちゃんを誘おうと思ってたんだよ」
梓「…明日?」
憂「そう、明日」
…やっぱり唯先輩の早トチりだ
本当に憂と姉妹なのか疑いたくなってくるよ
梓「でも、唯先輩と行かなくていいの?」
憂「タイトルを見れば答えが分かると思うよ」
そこに書かれていたのは、明らかに恋愛映画のタイトル
…速攻で寝るよね、唯先輩
憂「ハァ、お姉ちゃんたら、相変わらずそそっかしいんだから」
そう言って憂は鞄から2枚の映画のチケットを取り出す
憂「お父さんに貰って、明日の日曜日に梓ちゃんを誘おうと思ってたんだよ」
梓「…明日?」
憂「そう、明日」
…やっぱり唯先輩の早トチりだ
本当に憂と姉妹なのか疑いたくなってくるよ
梓「でも、唯先輩と行かなくていいの?」
憂「タイトルを見れば答えが分かると思うよ」
そこに書かれていたのは、明らかに恋愛映画のタイトル
…速攻で寝るよね、唯先輩
51: 2010/09/04(土) 11:01:32.83
その後、憂と別れて帰宅した夜
私は上機嫌でテルテルボウズなんか作ったりして
明日の憂とのデー…お出かけが待ち遠しいよ
…て、ちょっと待った、私
確かお財布がピンチだったような
慌ててお財布の中身を確認
…やっぱり私が幸薄いのは純のせいだと改めて確信
梓「映画のお礼にせめてお昼とお茶代くらいは…となると、答えは一つ」
こんな時にも私を支えてくれる相棒がいる
時計を見ると、時刻は20時を示していた
梓「いい頃合の時間だ」
思い立ったら即行動だ、私
私は上機嫌でテルテルボウズなんか作ったりして
明日の憂とのデー…お出かけが待ち遠しいよ
…て、ちょっと待った、私
確かお財布がピンチだったような
慌ててお財布の中身を確認
…やっぱり私が幸薄いのは純のせいだと改めて確信
梓「映画のお礼にせめてお昼とお茶代くらいは…となると、答えは一つ」
こんな時にも私を支えてくれる相棒がいる
時計を見ると、時刻は20時を示していた
梓「いい頃合の時間だ」
思い立ったら即行動だ、私
52: 2010/09/04(土) 11:02:43.51
ウッドギターをケースにしまい、背負って部屋を後にする
梓「母さん、ちょっと出かけて来る」
玄関で靴を履いていると、リビングから母が顔を出した
母「ふむ、今月もお財布がピンチなのかね?我が愛しの娘は」
梓「まぁ、そんなとこ」
母が少し眩しそうな表情で私を見たのが少し不思議だった
母「あまり遅くならないようにね。それと…」
皆まで言われなくても分かってるよ
あなたの娘を信じなさい
梓「自分を安売りするな、でしょ?」
母「ふふっ、分かってるならOK」
梓「母さん、ちょっと出かけて来る」
玄関で靴を履いていると、リビングから母が顔を出した
母「ふむ、今月もお財布がピンチなのかね?我が愛しの娘は」
梓「まぁ、そんなとこ」
母が少し眩しそうな表情で私を見たのが少し不思議だった
母「あまり遅くならないようにね。それと…」
皆まで言われなくても分かってるよ
あなたの娘を信じなさい
梓「自分を安売りするな、でしょ?」
母「ふふっ、分かってるならOK」
54: 2010/09/04(土) 11:03:58.63
靴を履き終えドアノブに手を掛けた私に母は笑顔で付け加える
母「そうそう、演奏料は安くてもいいわよ。あなたのギターはまだまだだし」
…昨夜は褒めてくれたのに、意外とイジワルだ
梓「了解。それじゃ、行って来まーす」
玄関を出て夜の街へと歩き出す
軽く深呼吸すると、秋の夜の空気が胸に沁みて少し爽快感
梓「演奏者なんてどこか壊れてるって言うけど、やっぱり私も壊れてる人なのかもね」
これも両親の血を受け継いでる証拠だよ
母「そうそう、演奏料は安くてもいいわよ。あなたのギターはまだまだだし」
…昨夜は褒めてくれたのに、意外とイジワルだ
梓「了解。それじゃ、行って来まーす」
玄関を出て夜の街へと歩き出す
軽く深呼吸すると、秋の夜の空気が胸に沁みて少し爽快感
梓「演奏者なんてどこか壊れてるって言うけど、やっぱり私も壊れてる人なのかもね」
これも両親の血を受け継いでる証拠だよ
55: 2010/09/04(土) 11:05:09.58
梓「こんばんは」
少し馴染みのある小さなバーを訪れた私
カウンターの中でグラスを拭いていた初老の男性、店のマスターが優しく微笑んで迎えてくれた
「お久し振りですね、梓ちゃん」
梓「学園祭やなんかでちょっと忙しかったんですよ」
「学生も色々大変ですね。今日は弾いていけますか」
梓「はい、少し場所を借りますね」
店内はカウンター席とテーブルが3つあるだけの落ち着いた雰囲気
まばらに座るお客様に軽く会釈しながら店の奥に向かい、壁際に置いてある椅子に腰掛けてギターを取り出した
少し馴染みのある小さなバーを訪れた私
カウンターの中でグラスを拭いていた初老の男性、店のマスターが優しく微笑んで迎えてくれた
「お久し振りですね、梓ちゃん」
梓「学園祭やなんかでちょっと忙しかったんですよ」
「学生も色々大変ですね。今日は弾いていけますか」
梓「はい、少し場所を借りますね」
店内はカウンター席とテーブルが3つあるだけの落ち着いた雰囲気
まばらに座るお客様に軽く会釈しながら店の奥に向かい、壁際に置いてある椅子に腰掛けてギターを取り出した
56: 2010/09/04(土) 11:06:17.41
ありきたりなフレーズをいくつか並べて指の感触を確かめてみる
梓「調子が良すぎるのも、少し複雑かも」
憂への想いを考えるとは無しに考えながら、弦を爪弾く
意識してか無意識なのかも分からないままに奏でるメロディーは「禁じられた遊び」
我ながら…なんてバッドチョイス
それでも悪くない旋律に、少し黒い愉悦に浸る自分もいる
やっぱり演奏者なんて碌なもんじゃない、と少し苦笑い
ふむ、今日の締めには更に自虐的にレフトアローンでも弾いてみようかな
梓「調子が良すぎるのも、少し複雑かも」
憂への想いを考えるとは無しに考えながら、弦を爪弾く
意識してか無意識なのかも分からないままに奏でるメロディーは「禁じられた遊び」
我ながら…なんてバッドチョイス
それでも悪くない旋律に、少し黒い愉悦に浸る自分もいる
やっぱり演奏者なんて碌なもんじゃない、と少し苦笑い
ふむ、今日の締めには更に自虐的にレフトアローンでも弾いてみようかな
57: 2010/09/04(土) 11:07:53.28
♪~Left Alone 私は一人取り残されて
弾きながら、散々に乱れる心を感じる
もしこの想いが憂に通じたとしても、どうにもならない事は分かっている
同性に対する恋なんて、所詮は少女時代の幻想みたいなもの
♪~分かっているけど今はそれでいい
♪~ただ自分の想いに素直でいたいだけ
最後のフレーズを弾き終えると、いつの間にか増えていたお客様達から暖かい拍手を頂いて少し驚き
マスターが集めてくれた予想を上回る心付けを受け取り、店を後にする
なんか凄い満足感、うん
弾きながら、散々に乱れる心を感じる
もしこの想いが憂に通じたとしても、どうにもならない事は分かっている
同性に対する恋なんて、所詮は少女時代の幻想みたいなもの
♪~分かっているけど今はそれでいい
♪~ただ自分の想いに素直でいたいだけ
最後のフレーズを弾き終えると、いつの間にか増えていたお客様達から暖かい拍手を頂いて少し驚き
マスターが集めてくれた予想を上回る心付けを受け取り、店を後にする
なんか凄い満足感、うん
58: 2010/09/04(土) 11:09:11.92
梓「父さん?」
店を出ると、目の前に小さく拍手をする父の姿
父「母さんから電話をもらってね。仕事帰りにこの辺りかと思って寄ってみたんだよ」
梓「よくこの店だって分かったね?」
父「梓の立ち寄る店は大体把握してるよ」
よく考えればこれは当然
この店だって初めて訪れた時は父と一緒だったし
父「それに表までギターの音色が聞こえてきたしね。娘の演奏を聞き間違える僕だと思うかい?」
梓「だよね。私の演奏どうだったかな」
父「昨日もいっただろう。いい音色を奏でるようになったね」
店を出ると、目の前に小さく拍手をする父の姿
父「母さんから電話をもらってね。仕事帰りにこの辺りかと思って寄ってみたんだよ」
梓「よくこの店だって分かったね?」
父「梓の立ち寄る店は大体把握してるよ」
よく考えればこれは当然
この店だって初めて訪れた時は父と一緒だったし
父「それに表までギターの音色が聞こえてきたしね。娘の演奏を聞き間違える僕だと思うかい?」
梓「だよね。私の演奏どうだったかな」
父「昨日もいっただろう。いい音色を奏でるようになったね」
60: 2010/09/04(土) 11:10:42.69
嬉しい言葉だけど、父の表情には少し寂しそうな色
出かける時に見せた母の眩しそうな表情を、ふと思い出す
梓「ふむ、私も少しは成長してるのかな」
私のギターケースを手に取り、軽く背負って父が歩きだす
父「僕としては、あまり急いで大人にならないで欲しいけどね」
娘は永遠の恋人、か…父親も辛いね
仕方ない、今日だけ特別だよ
私は父と腕を組んで、家路につく
父「あまり成長してない所もあるみたいだけどね」
それは貴方の肘に当たる私の身体の一部を指しているのかな?
…やってやるです!
出かける時に見せた母の眩しそうな表情を、ふと思い出す
梓「ふむ、私も少しは成長してるのかな」
私のギターケースを手に取り、軽く背負って父が歩きだす
父「僕としては、あまり急いで大人にならないで欲しいけどね」
娘は永遠の恋人、か…父親も辛いね
仕方ない、今日だけ特別だよ
私は父と腕を組んで、家路につく
父「あまり成長してない所もあるみたいだけどね」
それは貴方の肘に当たる私の身体の一部を指しているのかな?
…やってやるです!
61: 2010/09/04(土) 11:11:50.19
翌日は爽快なまでの秋晴れの空
お財布も元気になったし、私は上機嫌で家を出る
いつも通りに待ち合わせの場所には、先に着いて待っている憂の姿
梓「ごめーん、お待たせ」
憂「ううん、今日は時間通りだよ」
なんだかいつも私が遅刻してるみたいじゃないか
…否定は出来ないけど
憂「それじゃ行こっか」
梓「うん」
二人並んで秋の街を歩きだす
もう少し寒ければ、自然にもっと近くに寄り添えるのに…ちょっと残念
天気が良すぎるのも考えものだよ、全く
お財布も元気になったし、私は上機嫌で家を出る
いつも通りに待ち合わせの場所には、先に着いて待っている憂の姿
梓「ごめーん、お待たせ」
憂「ううん、今日は時間通りだよ」
なんだかいつも私が遅刻してるみたいじゃないか
…否定は出来ないけど
憂「それじゃ行こっか」
梓「うん」
二人並んで秋の街を歩きだす
もう少し寒ければ、自然にもっと近くに寄り添えるのに…ちょっと残念
天気が良すぎるのも考えものだよ、全く
62: 2010/09/04(土) 11:12:58.31
映画館で招待券を引き換えると、上映時間までは少し間があるので、先にお昼を摂る事にする
昨夜のうちに調べておいたお店は、憂も気に入ってくれたみたいで先ずは順調
ネットの利用方法は怪しいグッズを通販するだけでは無いのだよ
それも否定はしないけど
その後はオープンテラスのあるカフェで他愛もないおしゃべりをしながら時間を過ごす
因みにこちらは憂のお気に入りのお店らしい
…誰と来てるのか、気になるじゃないか
そう言えば昨日の先約の相手が誰だったのかも聞き出せてなかったりする
全くダメダメだ、私
昨夜のうちに調べておいたお店は、憂も気に入ってくれたみたいで先ずは順調
ネットの利用方法は怪しいグッズを通販するだけでは無いのだよ
それも否定はしないけど
その後はオープンテラスのあるカフェで他愛もないおしゃべりをしながら時間を過ごす
因みにこちらは憂のお気に入りのお店らしい
…誰と来てるのか、気になるじゃないか
そう言えば昨日の先約の相手が誰だったのかも聞き出せてなかったりする
全くダメダメだ、私
63: 2010/09/04(土) 11:15:30.98
時間も頃合になり、映画館へ向かう
上映中の館内では、銀幕で繰り広げられるロマンスに見入る憂の横顔を時々盗み見てちょっぴり溜め息
憂って睫毛長いな…
しかし、見た目だけならかなり似ている平沢姉妹なのに、どうしてこうも違って見えるのか少し不思議
透き通るような透明感溢れる雰囲気の憂
対する姉の唯先輩は…なんだろう、上手く表現出来なかったりする
強いて言えば…子供の落書きみたいな雰囲気、かな
なかなか上手い表現に行き着いて少し満足
…我知らず吹き出したりしてないだろうな、私?
上映中の館内では、銀幕で繰り広げられるロマンスに見入る憂の横顔を時々盗み見てちょっぴり溜め息
憂って睫毛長いな…
しかし、見た目だけならかなり似ている平沢姉妹なのに、どうしてこうも違って見えるのか少し不思議
透き通るような透明感溢れる雰囲気の憂
対する姉の唯先輩は…なんだろう、上手く表現出来なかったりする
強いて言えば…子供の落書きみたいな雰囲気、かな
なかなか上手い表現に行き着いて少し満足
…我知らず吹き出したりしてないだろうな、私?
64: 2010/09/04(土) 11:16:43.83
憂「素敵だったね」
梓「うん」
やっぱり憂も映画みたいな恋に憧れたりするのかな
…ちょっと寂しいかも
そんな私の雰囲気を察したのか、悪戯な微笑みを浮かべた憂が続ける
憂「梓ちゃん、映画の途中で少し考え事をしてたでしょ」
…バレてるし
梓「な、なんのことかな?」
憂「ごまかしても無駄だよ。ちょっぴりほくそ笑んでたでしょ」
梓「…ちょっとだけ、ね」
憂「うふふ、素直でよろしい」
梓「憂の前では素直じゃない私なんていないのかも」
憂「それはちょっぴり残念、かな」
…なんで?
梓「うん」
やっぱり憂も映画みたいな恋に憧れたりするのかな
…ちょっと寂しいかも
そんな私の雰囲気を察したのか、悪戯な微笑みを浮かべた憂が続ける
憂「梓ちゃん、映画の途中で少し考え事をしてたでしょ」
…バレてるし
梓「な、なんのことかな?」
憂「ごまかしても無駄だよ。ちょっぴりほくそ笑んでたでしょ」
梓「…ちょっとだけ、ね」
憂「うふふ、素直でよろしい」
梓「憂の前では素直じゃない私なんていないのかも」
憂「それはちょっぴり残念、かな」
…なんで?
65: 2010/09/04(土) 11:17:55.23
しかしなんでバレたんだろう
そんなに笑ってたのかな、私?
そんな心の声が通じたのか、振り返りもせずに憂が囁く
憂「私も梓ちゃんの事を見ていたから、だよ」
…私も?
思わず隣りを歩く憂の顔に視線を向ける
憂「ん?」
そこにあったのは、もういつもの柔らかい微笑み
…やっぱり憂にはかなわないよ
憂「ねぇ、梓ちゃん!あれって結婚式かな?」
憂の視線の先には街中の小さな教会
表に停まった装飾の施された真っ赤なオープンカーまで届きそうにない少し短い人の列が見える
そんなに笑ってたのかな、私?
そんな心の声が通じたのか、振り返りもせずに憂が囁く
憂「私も梓ちゃんの事を見ていたから、だよ」
…私も?
思わず隣りを歩く憂の顔に視線を向ける
憂「ん?」
そこにあったのは、もういつもの柔らかい微笑み
…やっぱり憂にはかなわないよ
憂「ねぇ、梓ちゃん!あれって結婚式かな?」
憂の視線の先には街中の小さな教会
表に停まった装飾の施された真っ赤なオープンカーまで届きそうにない少し短い人の列が見える
66: 2010/09/04(土) 11:19:02.23
憂「行ってみよう、梓ちゃん」
ごく自然に私の手を取り、小走りに駆け出す憂
あの日と同じ温かくて柔らかい憂の手
ずっとこのままでいられたらいいのに…
教会に辿り着くと、新郎新婦の友人らしき女性が声をかけてきた
「良かったら一緒に祝ってあげてくれないかしら」
少し遠慮する私達に小さな花の入ったバスケットが手渡される
梓「いいのかな?」
憂「私達以外にもいるみたいだし、いいんじゃないかな?」
よく見ると、確かに私達以外にも急遽参加したと思しき人が結構いたりする
ごく自然に私の手を取り、小走りに駆け出す憂
あの日と同じ温かくて柔らかい憂の手
ずっとこのままでいられたらいいのに…
教会に辿り着くと、新郎新婦の友人らしき女性が声をかけてきた
「良かったら一緒に祝ってあげてくれないかしら」
少し遠慮する私達に小さな花の入ったバスケットが手渡される
梓「いいのかな?」
憂「私達以外にもいるみたいだし、いいんじゃないかな?」
よく見ると、確かに私達以外にも急遽参加したと思しき人が結構いたりする
67: 2010/09/04(土) 11:20:10.58
梓「…もしかして、周囲にあまり祝福されてない結婚なのかな?」
憂「そんな事ないよ。だって、あんなに幸せそうな笑顔だし」
教会の扉を開け、小さな階段の踊り場に現われた新郎新婦を見上げて憂が言った
どうして憂には私の心の声が聞こえるんだろう
そんな私を見て憂がちょっぴり苦笑いを浮かべる
憂「ダメだよ、梓ちゃん。今のは声に出てたよ」
…またやっちゃったよ。悪い癖だよ、全く
しかし、今のは?
だったら普段はどうして分かるのかな?
憂「ほら、梓ちゃん。お花の準備をしないと」
梓「うん」
憂「そんな事ないよ。だって、あんなに幸せそうな笑顔だし」
教会の扉を開け、小さな階段の踊り場に現われた新郎新婦を見上げて憂が言った
どうして憂には私の心の声が聞こえるんだろう
そんな私を見て憂がちょっぴり苦笑いを浮かべる
憂「ダメだよ、梓ちゃん。今のは声に出てたよ」
…またやっちゃったよ。悪い癖だよ、全く
しかし、今のは?
だったら普段はどうして分かるのかな?
憂「ほら、梓ちゃん。お花の準備をしないと」
梓「うん」
68: 2010/09/04(土) 11:21:10.90
花のシャワーを浴びて目の前を通り過ぎていった幸せそうな新郎新婦
今は車の前で親しい友人達からの祝福を受けている
私達同様、急遽祝福の列に加わった人々も口々に祝福の声をかけて教会を後にする
なんとなく立ち去りがたく、少し遠巻きに見ていた私達の前では花嫁のブーケトス
秋の空に高く舞い上がったブーケは花嫁の友人達の頭上を遥かに通り越して…って、花嫁気合い入れすぎだよ
やっと舞い降りたブーケは見事に憂の手に収まってたりする
一昨日は私のタコさんウインナー、今日は花嫁のブーケ
…偉い違いだよ
今は車の前で親しい友人達からの祝福を受けている
私達同様、急遽祝福の列に加わった人々も口々に祝福の声をかけて教会を後にする
なんとなく立ち去りがたく、少し遠巻きに見ていた私達の前では花嫁のブーケトス
秋の空に高く舞い上がったブーケは花嫁の友人達の頭上を遥かに通り越して…って、花嫁気合い入れすぎだよ
やっと舞い降りたブーケは見事に憂の手に収まってたりする
一昨日は私のタコさんウインナー、今日は花嫁のブーケ
…偉い違いだよ
69: 2010/09/04(土) 11:22:18.15
まだ結婚式の余韻の残る教会の庭先に佇む私達
憂「ねぇ、梓ちゃん。礼拝堂を見てみない?」
梓「いいよ」
まだ夕焼けには少し早い、それでも茜色を秘めた午後の陽光がステンドグラスを通して降り込む、今はもう誰もいない礼拝堂
手の中のブーケを見ていた憂が、ポケットから白いハンカチを取り出す
憂「少し小さいけどね」
穏やかな笑みを浮かべながら、広げたハンカチを髪に飾り、ブーケで口元を隠す憂
梓「花嫁みたい…だね、憂」
それはそう遠くない未来の憂の姿かも知れない
そう考えると少しほろ苦いね
憂「ねぇ、梓ちゃん。礼拝堂を見てみない?」
梓「いいよ」
まだ夕焼けには少し早い、それでも茜色を秘めた午後の陽光がステンドグラスを通して降り込む、今はもう誰もいない礼拝堂
手の中のブーケを見ていた憂が、ポケットから白いハンカチを取り出す
憂「少し小さいけどね」
穏やかな笑みを浮かべながら、広げたハンカチを髪に飾り、ブーケで口元を隠す憂
梓「花嫁みたい…だね、憂」
それはそう遠くない未来の憂の姿かも知れない
そう考えると少しほろ苦いね
70: 2010/09/04(土) 11:24:29.20
憂「中野梓」
梓「にゃっ?」
ほろ苦い想いに浸っていた私は、突然の呼び掛けに思わずマヌケな声を上げてしまう
…でも、中野梓って?
憂「ダメだよ、梓ちゃん。返事ははい、だよ」
梓「…はい」
梓「にゃっ?」
ほろ苦い想いに浸っていた私は、突然の呼び掛けに思わずマヌケな声を上げてしまう
…でも、中野梓って?
憂「ダメだよ、梓ちゃん。返事ははい、だよ」
梓「…はい」
71: 2010/09/04(土) 11:26:36.89
憂「それでは改めて」
…これってなんなのかな?
憂「中野梓」
梓「はい」
憂「あなたは健やかなる時も、病める時も」
…あれ、これって
憂「富める時も、貧しき時も変わる事無く」
…ホントに?
憂「平沢憂に永遠の愛を誓いますか?」
それは全く自然に口をついて出た想い
梓「誓います」
…これってなんなのかな?
憂「中野梓」
梓「はい」
憂「あなたは健やかなる時も、病める時も」
…あれ、これって
憂「富める時も、貧しき時も変わる事無く」
…ホントに?
憂「平沢憂に永遠の愛を誓いますか?」
それは全く自然に口をついて出た想い
梓「誓います」
72: 2010/09/04(土) 11:27:46.13
憂「それでは誓いの口づけを」
ブーケを胸元に降ろし、瞳を閉じる憂
梓「…」
憂の唇に静かに唇を重ねる
憂との二度目のキスは私からの…続くはずの無い永遠を誓うキス
この想いはきっと少女時代の淡い幻想
そう考えると、私はやっぱり幸薄いのかも知れない…
それでも、この一瞬だってきっと永遠
だから今は素直に思う
私は幸せです
ブーケを胸元に降ろし、瞳を閉じる憂
梓「…」
憂の唇に静かに唇を重ねる
憂との二度目のキスは私からの…続くはずの無い永遠を誓うキス
この想いはきっと少女時代の淡い幻想
そう考えると、私はやっぱり幸薄いのかも知れない…
それでも、この一瞬だってきっと永遠
だから今は素直に思う
私は幸せです
73: 2010/09/04(土) 11:28:47.85
永遠を誓った小さな教会を後に、今は茜色に染まったいつもの河原の道を並んで歩いている
初めて憂とキスを交わしたあの日は、少し秋の気配を含んだ夏の風
今はほんの少し木枯らしを秘めた秋の風
隣りを歩く憂の足元に小さな子犬が戯れついている
しゃがみ込んで優しく子犬の頭を撫でる憂
憂「可愛いね、梓ちゃん」
梓「そ、そうだね」
実は犬や猫はちょっぴり苦手
なぜかあまり懐かれた試しがない…
私に懐いてくれるのは、あずにゃん2号くらいだよ
それにしてもワンコくん、そんなに尻尾を振ると千切れちゃうぞ
初めて憂とキスを交わしたあの日は、少し秋の気配を含んだ夏の風
今はほんの少し木枯らしを秘めた秋の風
隣りを歩く憂の足元に小さな子犬が戯れついている
しゃがみ込んで優しく子犬の頭を撫でる憂
憂「可愛いね、梓ちゃん」
梓「そ、そうだね」
実は犬や猫はちょっぴり苦手
なぜかあまり懐かれた試しがない…
私に懐いてくれるのは、あずにゃん2号くらいだよ
それにしてもワンコくん、そんなに尻尾を振ると千切れちゃうぞ
74: 2010/09/04(土) 11:29:45.99
少し離れた場所からの飼い主の呼び掛けに応じて、憂の元から駆け去るワンコくん
憂「行っちゃったね」
梓「よく尻尾を振る子犬だったね」
立ち上がった憂はワンコくんの後ろ姿に小さく手を振る
憂「あのね、犬の幸せの数え方って、一生にシッポを振った回数だけ幸せなんだって」
梓「そうなんだ」
いつもの柔らかい微笑みを浮かべる憂の横顔を見て、ふとした思い付きを聞いてみる
梓「人の幸せの数え方もあるのかな?」
憂「うーん、それは少し難しい問題だね、梓ちゃん」
…だよね
憂「行っちゃったね」
梓「よく尻尾を振る子犬だったね」
立ち上がった憂はワンコくんの後ろ姿に小さく手を振る
憂「あのね、犬の幸せの数え方って、一生にシッポを振った回数だけ幸せなんだって」
梓「そうなんだ」
いつもの柔らかい微笑みを浮かべる憂の横顔を見て、ふとした思い付きを聞いてみる
梓「人の幸せの数え方もあるのかな?」
憂「うーん、それは少し難しい問題だね、梓ちゃん」
…だよね
75: 2010/09/04(土) 11:30:47.59
少し進んだ先で芝生の斜面に並んで腰掛ける
あの日と同じ、二人重ねた掌が心地よくて
だから昨日の疑問を素直に聞ける私がいる
梓「ねぇ、憂。昨日の事なんだけど…」
憂「ん?昨日は一人でウインドウショッピングをしたり、お茶したりしてた、かな」
梓「あれ?だって先約があるって言わなかった?」
不意に憂がソッポを向いて小さく呟く
憂「だって、梓ちゃん。純ちゃんとの約束のついでに私を誘うんだもん」
梓「…え?」
憂「そんなの…ひどいよ」
あの日と同じ、二人重ねた掌が心地よくて
だから昨日の疑問を素直に聞ける私がいる
梓「ねぇ、憂。昨日の事なんだけど…」
憂「ん?昨日は一人でウインドウショッピングをしたり、お茶したりしてた、かな」
梓「あれ?だって先約があるって言わなかった?」
不意に憂がソッポを向いて小さく呟く
憂「だって、梓ちゃん。純ちゃんとの約束のついでに私を誘うんだもん」
梓「…え?」
憂「そんなの…ひどいよ」
76: 2010/09/04(土) 11:31:58.21
あれ?これって…嘘!
憂がヤキモチを妬いてる!?
…え?ホントに?
梓「ちっ、違うの、憂!私は決してそんなつもりじゃ」
慌ててソッポを向いた憂の方へ回り込んだ私
しかしそこに見たのは、いつもの透き通るような瞳では無く、悪戯な色を浮かべた瞳とちょっぴり意地悪な笑顔の憂
…まさか
梓「…あの、憂?」
憂「エヘヘ、ウ・ソ・だよ」
…やっぱり憂にはかなわないよ、全く
憂「ごめんね、梓ちゃん。怒ってる?」
梓「…ううん、私の負け。怒ってないよ」
憂がヤキモチを妬いてる!?
…え?ホントに?
梓「ちっ、違うの、憂!私は決してそんなつもりじゃ」
慌ててソッポを向いた憂の方へ回り込んだ私
しかしそこに見たのは、いつもの透き通るような瞳では無く、悪戯な色を浮かべた瞳とちょっぴり意地悪な笑顔の憂
…まさか
梓「…あの、憂?」
憂「エヘヘ、ウ・ソ・だよ」
…やっぱり憂にはかなわないよ、全く
憂「ごめんね、梓ちゃん。怒ってる?」
梓「…ううん、私の負け。怒ってないよ」
78: 2010/09/04(土) 11:32:58.00
憂「昨日はお父さんの会社に届け物を持って行って、その時に今日の映画のチケットも受け取ってきたんだよ」
梓「それで夕方に駅前にいたんだ」
憂「うん。因みにこの事はお姉ちゃんも朝聞いてたはずなんだけどね」
梓「ハァ、またも唯先輩か…」
私が幸薄いのは純だけでは無く唯先輩のせいでもある、と今更ながらに確信
そんな溜め息混じりに複雑な表情の私を見て、小さく苦笑いを浮かべていた憂が突然なにかを思い付いたかのように呟く
憂「…そっか」
なんなのかな?
梓「それで夕方に駅前にいたんだ」
憂「うん。因みにこの事はお姉ちゃんも朝聞いてたはずなんだけどね」
梓「ハァ、またも唯先輩か…」
私が幸薄いのは純だけでは無く唯先輩のせいでもある、と今更ながらに確信
そんな溜め息混じりに複雑な表情の私を見て、小さく苦笑いを浮かべていた憂が突然なにかを思い付いたかのように呟く
憂「…そっか」
なんなのかな?
79: 2010/09/04(土) 11:34:03.08
憂「あのね、梓ちゃん。さっきの答えが分かった気がする」
梓「さっきの?」
憂「人の幸せの数え方」
梓「え!本当に?」
憂「うん、ちょっといいかな?」
そう言って憂が私にもう少し近寄るように促す…耳打ちするような答えなの?
梓「なに?」
応じて近寄った私に憂が囁く
憂「あのね、きっと大好きな人と交わしたキスの回数、だよ」
そう囁いた憂の唇が私の唇にそっと触れる
梓「…あ」
なるほど、すると今の私の幸せは憂とのキス3回分の幸せな訳か
これって世界一幸せなんじゃない?
お し ま い
梓「さっきの?」
憂「人の幸せの数え方」
梓「え!本当に?」
憂「うん、ちょっといいかな?」
そう言って憂が私にもう少し近寄るように促す…耳打ちするような答えなの?
梓「なに?」
応じて近寄った私に憂が囁く
憂「あのね、きっと大好きな人と交わしたキスの回数、だよ」
そう囁いた憂の唇が私の唇にそっと触れる
梓「…あ」
なるほど、すると今の私の幸せは憂とのキス3回分の幸せな訳か
これって世界一幸せなんじゃない?
お し ま い
80: 2010/09/04(土) 11:36:52.14
乙
82: 2010/09/04(土) 11:57:21.19
おつ。憂ちゃんかわいい
他の人と絡む憂ちゃんも見たいなぁ~
他の人と絡む憂ちゃんも見たいなぁ~
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります