1: 2010/09/04(土) 21:16:56.46
唯「う、うい?」

憂「お姉ちゃん……来て」

唯「ほ、包丁置いてよ」

憂「なんで?」

唯「憂がおかしくなった…」

憂「おかしくないよ」

2: 2010/09/04(土) 21:18:39.05
唯「じゃあ包丁置いてよ」

憂「なんで?どうして?」

唯「怖いもん。危ないもん」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん。すぐ痛くなくなるよ」

唯「なにをする気…?」

憂「お姉ちゃんを食べるの」

唯「ひぃぃ……」

4: 2010/09/04(土) 21:20:56.68
憂「一生のお願いだから……お姉ちゃん」

唯「い、一生って、私の一生はどうなるの」

憂「お姉ちゃんは私の心の中で生き続けるよ」

唯「ひぃぃぃ……やだよ、普通に生き続けたいよ」

憂「……お姉ちゃん、だめなんだよ」

唯「な、なんで」

5: 2010/09/04(土) 21:23:13.70
憂「ほら、お外は変な人いっぱいいるから危ないし」

唯「へ、変なのは憂だよ」

憂「お姉ちゃんが変な人に食べられる前に私が食べるの」

唯「なにを言ってるの…?」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん。私は優しく噛んで食べる」

唯「和ちゃん助けて…」

憂「和ちゃん?」

6: 2010/09/04(土) 21:25:27.43
唯「もしもし、和ちゃん?」

憂「もしもし、お姉ちゃん?」

唯「ひいいい!?なんで和ちゃんの携帯を憂が持ってるの」

憂「なんでって……お姉ちゃんを食べる為に」

唯「落ち着け…落ち着け私」

憂「うん。落ち着いたらこっちに来てね」

唯「憂は一体なにを言ってるんだ」

7: 2010/09/04(土) 21:27:20.69
憂「お姉ちゃん……」じゅる

唯「う、うい、よだれが」

憂「あっ、ごめんね」

唯「憂が獣の目をしてるよぉ…」

憂「やめてよお姉ちゃん。私はいつも通りだよ」

唯「違うよっ!」

憂「違わないよ」

8: 2010/09/04(土) 21:29:30.32
唯「と、とりあえず早く包丁を置いてよ」

憂「お姉ちゃんがそこまで言うなら…」とん

唯「そ、そう、それでこそ憂だよ」

憂「うんっ!」

唯「じゃあ、憂、落ち着いてね」

憂「落ち着いてるけど早く食べたいの」

唯「何を」

憂「お姉ちゃん、ってさっきから言ってるじゃん」

9: 2010/09/04(土) 21:32:51.95
唯「えっと、とりあえず、今は無理だよ」

憂「なんでー?」

唯「だって、私、氏にたくないもん」

憂「氏なないよ?お姉ちゃんは」

唯「心の中じゃなくて、この世界で生きていたいの」

憂「どうして?どうしてそんなこと言うの?」

唯「だって生きていれば楽しいことがたくさんあるから」

憂「お姉ちゃん、それはね、うそ、だよ」

10: 2010/09/04(土) 21:36:23.53
唯「うそ、じゃないよ。実際楽しいもん」

憂「ううん、楽しくないよ。楽しいって、思い込んでるだけなの」

唯「どういうこと…?」

憂「実は楽しくないんだよ。お姉ちゃんはあまりの辛さに勘違いをしてる」

唯「勘違いなんてしてないよ。毎日が楽しいよ」

憂「ううん。だったらね、お姉ちゃん、もっと楽しい世界にいけるよ」

唯「もっと楽しい世界…?」

憂「そうだよ。悩み事とか、辛いこととか、何にもないの」

11: 2010/09/04(土) 21:38:46.07
唯「悩み事が無い世界…」

憂「そうだよ。そこに行けば、みんな仲良くもっと楽しく暮らせるよ」

唯「…」

憂「だからお姉ちゃん、こっちに来て、ね?」

唯「いやだよ」

憂「どうして?」

唯「そんな世界、行きたくない」

13: 2010/09/04(土) 21:41:43.43
憂「どうして分かってくれないの…」

唯「憂、目を覚ましてよ。今なら戻れるよ、憂、ねえ」

憂「なにを言ってるの…?」

唯「憂、よく考えて。そんな世界があるって、どうして分かるの?」

憂「どうして分かるか?知っているからだよ」

唯「どうやって知ったの?」

憂「そんなの……覚えてないよ」

唯「ふ~…。まだ戻れるから、憂。目を覚まして」

14: 2010/09/04(土) 21:45:09.26
憂「お姉ちゃん?どうして意地悪するの…?」

唯「意地悪?私は憂が変な事を言ってるから」

憂「変じゃないもん!!お姉ちゃん!!」

唯「う、憂、落ち着いて」

憂「お姉ちゃん、来て。一緒に幸せになろう。ね?」

唯「お願いだから、憂。もうやめてよ」

憂「お姉ちゃん、本当はこんなことしたくなかったけど」

唯「憂、ほ、包丁を置いて」

憂「しょうがないよね、お姉ちゃん」

16: 2010/09/04(土) 21:47:27.51
唯「分かった!分かったよ、憂」

憂「え?」

唯「分かったから。憂の言われた通りにするから」

憂「お姉ちゃん……ありがとう」

唯「うん、いいよ。で、私は何をすればいいの?」

憂「ここに来て、このマットの真ん中に正座してね」

唯「この模様はなに?」

憂「秘密の呪文だよ、お姉ちゃん」

17: 2010/09/04(土) 21:50:21.89
唯「憂はなにをするの?」

憂「お姉ちゃんを滅多刺しにして頃してから煮て食べるの」

唯「えっと」

憂「分かったら早く正座して?ね?」

唯「憂、本気?」

憂「そういうのやめてよ、お姉ちゃん」

唯「私を頃すの?ほんとに?ねえ、憂」

憂「頃す、うーん。頃す、というか、違う世界に送ってあげる、というか」

18: 2010/09/04(土) 21:53:48.42
唯「憂、ねえ、憂。もうやめようよ」

憂「どうして?お姉ちゃんは茨の道を進みたいの?」

唯「茨の道?生きることが茨の道?」

憂「さっきから言ってるじゃん。早く楽になろうよ」

唯「憂はどうするの?茨の道を進むの?」

憂「ありがとうお姉ちゃん。私も誰かに送ってもらうよ」

唯「誰か?」

憂「そうだね、例えば和ちゃんとか」

19: 2010/09/04(土) 21:57:00.83
唯「和ちゃん?どうして和ちゃんなの?」

憂「だって、和ちゃん幼馴染だし」

唯「幼馴染だといいの?」

憂「うん。仲がいい人に食べてもらうのが、一番の近道なんだよ」

唯「仲がいい…」

憂「そう。だから私がお姉ちゃんを食べてあげる。お姉ちゃんを一番楽にさせてあげる」

唯「……そしたら、憂。それは無理だよ」

憂「どうして?」

21: 2010/09/04(土) 21:59:44.97
唯「私、憂のこと大嫌いだから」

憂「え?」

唯「憂のこと本当に嫌い。大っ嫌い」

憂「お姉ちゃん…?」

唯「いつもいい子のフリしてさ、実は凄い腹黒いんでしょ、憂」

憂「え……」

唯「だからごめんね、憂。私は憂のこと大嫌いだから」

憂「…」

唯「私が楽になる為にも、憂は私を頃しちゃだめだよ。食べちゃだめだよ」

22: 2010/09/04(土) 22:02:59.74
憂「えへへ……別にいいよ」

唯「憂?なんでマットに座るの?」

憂「あのね、お姉ちゃんが私を嫌いでも、私はお姉ちゃんが大好きなんだよ」

唯「憂……」

憂「だからお姉ちゃん、私、先に行くから、お願いだから頃して?ね?」

唯「いやだよ、憂」

憂「…だから嫌なんだよ」

唯「憂?」

憂「だから!!だからこの世は嫌なんだよ!!!」

23: 2010/09/04(土) 22:06:29.87
唯「憂、どうしたの……」

憂「やっぱりそうだった!私は誰からも好かれてなかった!!」

唯「そんなことは」

憂「そうだよ!!お姉ちゃんなら私を認めてくれてると思った!でも違った!」

唯「う、憂、落ち着いて」

憂「早く頃して!!もういやだよ!こんな世界、もう!いやだ!」

唯「憂、だからね、目を覚まして」

25: 2010/09/04(土) 22:09:25.29
憂「氏ぬ……!絶対に氏ぬ…」

唯「う、憂。手を引っ張らないで」

憂「早く刺して」

唯「嫌だよ」

憂「なんでよっ!どうして意地悪するの!!私が何をしたっていうの!」

唯「憂はなにもしてないよ」

憂「なら、どうして刺し頃してくれないの…」

唯「そんなのはウソだって、私は信じてるからだよ」

27: 2010/09/04(土) 22:13:03.72
憂「え…?」

唯「そんなことをして氏んじゃっても、そんな世界には行けないって」

憂「いけるもん。絶対にいけるもん」

唯「行けないよ。絶対にいけるなら、もうみんな行ってるよ」

憂「そうだよ。皆は知らないだけ」

唯「そんなことないよ」

憂「あるよ。これを知れた私とお姉ちゃんは選ばれた人なんだよ。勝者なんだよ」

唯「例え、そうだとしても、私は絶対に憂を殺さない」

29: 2010/09/04(土) 22:17:31.39
憂「なんでっ。どうしてそんなに酷いの」

唯「簡単だよ。だってね、憂、憂は分かってないだけだから」

憂「何を?私だって本読んだりしていろいろと調べて、考えてきたよ?私なりに」

唯「だと思うよ。だから分からなかったんだよ」

憂「何を言ってるの?私が分からなかったこと?」

唯「うん。それはね、私が憂のことがほんとーっに大好きだってことだよ」

憂「…え?」

唯「憂が大好き。本当だよ」

30: 2010/09/04(土) 22:20:45.13
憂「で、でも、さっきはお姉ちゃんは」

唯「そうだよ。ウソをついたの」

憂「どうして?どうして私にウソをついたの?」

唯「どうしてか?だって、憂と2人で生きていたいから。この世にいたいから」

憂「お姉ちゃん…」

唯「憂、分かってくれた?憂がどうなろうと、私は憂の味方だよ」

憂「うぅ……」

唯「それに憂のことはみんな大好きだよ。憂がいくら嫌われたとしても、私はずっと憂の隣にいるよ」

31: 2010/09/04(土) 22:23:58.38
憂「お姉ちゃん…私は」

唯「今のことは全部忘れるよ、憂。そういう時、誰にだってあるよ。私にだって」

憂「そう、だよね……」

唯「そうだよ。憂、私憂のこと、本当に大好きだからね。本当に」

憂「ありがとう、お姉ちゃん…」

唯「憂、こちらこそ、いつもありがとう」

憂「ううん、いいんだよ。ごめんね、お姉ちゃん」

33: 2010/09/04(土) 22:26:12.61
ぐさ

唯「え……?うそ…」

憂「えへへ~…。お姉ちゃん、ありがとう!本当にありがとう!」

唯「う、う…い……」

憂「大好き!!私もお姉ちゃん大好き!!」

ぐさ、ぐさ

唯「……ぁ…」

憂「おめでとう!お姉ちゃん!!先に楽しんでてね!!!」

ぐさ、ぐさ、ぐさ

唯「」

34: 2010/09/04(土) 22:28:18.26
憂「よし、終わったね」

唯「」

憂「かわいいなぁ。お姉ちゃん。私のお姉ちゃん」

唯「」

憂「頭を切り取って、冷凍庫にいれておくんだよね」

憂「じゃあお風呂に持って行こうかな」

憂「よいしょっと。軽いや。お姉ちゃん」

36: 2010/09/04(土) 22:33:12.56
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

律「み、澪?」

澪「どうした?律」

律「そ、その包丁はなんだよ?」

澪「なんだよって、包丁は包丁だよ」

律「そりゃ分かるよ、な、なんで包丁持ってきたんだよ」

澪「今日は誰もいないんだろ?」

律「だ、だったらなんだよ」

37: 2010/09/04(土) 22:35:24.66
澪「律、こっちに来てよ」

律「はぁ?」

澪「ここのマットの真ん中に正座して、目を閉じるだけ」

律「み、澪?正気か?何をする気だ?」

澪「律を刺し頃して煮て食べるんだよ」

律「……」

律「は?」

38: 2010/09/04(土) 22:38:14.24
澪「は? じゃなくて。早くしてくれ」

律「ば、馬鹿。何を考えてるんだよ澪」

澪「律を天国に送ってやるんだよ」

律「な、なにを言ってるんだ!?澪!!おい!!」

澪「うるさいぞ、律。私も後から行くから。早くしろよ」

律「ははは、澪~。そんな冗談私に通用すると思って」

澪「本気だよ!」

39: 2010/09/04(土) 22:41:28.18
律「頭おかしくなったか…?澪」

澪「おかしくなんてない。気付いたんだよ」

律「何に気付いたんだよ。自分のおかしさにか?」

澪「律!!律のことを想って……やってやるのに」

律「私のことをおもって?」

澪「そうだよ。この儀式は親しいものに執り行われるほど、楽になれる」

律「…いいか、澪。落ち着けよ」

澪「落ち着くべきは律だろ」

40: 2010/09/04(土) 22:44:30.57
律「澪。冷静に考えてみろ。自分が何をしようとしてるか、分かってるのか?」

澪「ああ。律には感謝してるから。だから律には楽になってもらいたいんだ」

律「あのな澪。私はそんなことされなくても楽だから」

澪「だから、もっと楽になれるんだって」

律「これ以上楽にならなくていいから。私は」

澪「そう?」

律「そうだよ」

41: 2010/09/04(土) 22:46:40.30
澪「なら、仕方ないな」

律「ああ。包丁は床においておくんだ」

澪「そうするか」とん

律(あきらかに狂ってる……。どうすりゃいいんだ)

澪「律ー、トイレ借りるぞ~」

律「はいはい」

律(包丁はとりあえず隠しておこう)

42: 2010/09/04(土) 22:48:59.07
律(どこに隠しておくかな~)

澪「律!!?」

律「わ、わ、なんだよ、トイレはどうした」

澪「なんで包丁持ってるんだよ!?なあ!?」

律「え、え?」

澪「返してくれ!」

律(やばい……)

律「え?あぁ、まだ、いいだろ」

澪「早く返せ!!」

43: 2010/09/04(土) 22:51:30.19
律「な、なにをする気」

澪「返せっ!!!」どん

律「いてぇ…」

律(包丁が……澪のもとに)

澪「ったく……。人の包丁で遊ぶな」

律「遊んでなんかないって」

澪「もうやるか、律」

律「な、なにを」

44: 2010/09/04(土) 22:54:01.04
澪「儀式だよ。座れ」

律「ばかっ、誰がやるかよ、んなもんっ!」

澪「律…」

律「おかしい、おかしいぞ澪、狂ってる!!」だっ

澪「あ、おい!律!!待て!」

律(分からん、わけが分からん、一旦逃げよう…)

46: 2010/09/04(土) 22:56:53.37
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

律(聡もまだ帰ってこないはず……)

律(澪が追ってくるかもしれない、一旦誰かの家に隠れよう)

律(唯の家でいいや)

憂「あっ、律さん!」

律「ああ、憂ちゃん」

憂「そんな汗かいてどうしたんですか…?」

律「た、大変なんだ、ちょっとお邪魔していい!?」

憂「は、はぁ…」

47: 2010/09/04(土) 23:00:01.08
律「ふ~…」

憂「どうしたんですか…?」

律「あ、あぁ、ちょっと待って、まずは警察だ」

憂「?」

律「澪が包丁振り回してんだ、人の家で」

憂「えっ!?」

律「なんかトチ狂ったみたいな目してて、あんな澪は見たことない、おかしい」

憂「な、なにそれ…」

律「あ、もしもし…」

49: 2010/09/04(土) 23:03:01.10
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

憂「澪さん、どうしますか?」

澪「ん~…、憂ちゃん、やってくれ」

憂「でも……」

澪「もう私、誰も頼る人がいないからさ……」

憂「でも私ももう…」

澪「梓は?」

憂「処理済みです」

澪「そうか…」

50: 2010/09/04(土) 23:06:08.60
憂「じゃあ、澪さん、いきますよ」

澪「ふ~……」

憂「3、2、」

澪「ま、待って!」

憂「どうしたんですかー?」

澪「心の準備がまだ、ね」

憂「早くしてくださいね」

澪「う、うん…ごめん」

51: 2010/09/04(土) 23:08:51.32
憂「じゃあ行きますよ」

澪「う、うん」

憂「5、4、」

澪「…」

憂「3」

ぐさ

澪「は…」

ぐりぐり

憂「分かってたら痛いじゃないですか~」

澪「ぁ……」

憂「突然の方がすぐ終わって楽ですよ」

澪「」

53: 2010/09/04(土) 23:17:05.00
憂「なんだかんだでやっぱり私が最後じゃん」

憂「酷いと思わない?ねえ」

憂「結局みんな自分のことしか見えてないんだよ」


憂「でも私は知ってる」

憂「あなたは私を見ていてくれたってね」

憂「ここまで読んでくれた貴方になら、色んな私を知ってくれた貴方になら任せられる」

憂「さぁ、お願いします、その手で」

憂「この悲惨で無意味な世界から、私を解放してください」


おわり

54: 2010/09/04(土) 23:17:35.81

引用元: 憂「食べさせてね」唯「」