1: 2014/02/21(金) 21:56:23.62
事務所。

P「なぁー律子」

律子「はいはい、なんです」

P「この後開いてる?」

律子「何でですか?」

P「いや、夕飯でも!ってさ」

律子「ほー、良いですねぇ」

律子「…へ?」

7: 2014/02/21(金) 22:02:53.51
律子「私ですか?」

P「あ、仕事中にごめん」

律子「わた…そうですよ、仕事中です」

P「です」

律子「二人きりだからって、なぁに調子乗ってるんですか。ほら、まだスケジュール組み終わってないじゃないですか」

P「すみません」

律子「明日も早いんですし、今外食したらお酒入れるでしょう」

P「入れるでしょうね」

律子「だから、考えときます」

P「イェッサー」

9: 2014/02/21(金) 22:09:44.70
よし、竜宮のスケジュールはまとまった。
空になったマグカップを持つと、私はデスクを離れて給湯室に。

律子「プロデューサーも、なんか飲みます?」

P「お願いします、お任せで」

インスタントのコーヒーパックに熱湯が入っていくのを眺めながら、私は視界の端のプロデューサーをちらりと見る。

律子(私にぃ…?)

あの朴念仁が?
日夜現役のアイドルにあの手この手のアプローチを受けてるでしょうに。

律子(ないない…)

13: 2014/02/21(金) 22:16:41.76
美希「ハニー!おはようなの!」

毎朝のような美希の熱烈なアタック。
ハグやらボディタッチは御手の物、あれで落ちない男なんているのかしら?

春香「プロデューサーさん!今日はドーナツ作ってきました!」

たまのオフには甘いものを拵えてくる春香。

真「プロデューサー、早く撮影行きましょうよ!」

真だって、撮影の合間にいろんな所に引っ張りまわしていると聞いている。

貴音「もし、新しいらぁめんのお店が…」

貴音がたまに、こっそりランチに誘っているのも知っている。

14: 2014/02/21(金) 22:24:47.35
美希はともかく、最近は皆、思うところのありそうな行動が目立ってきている。

P「悪い、また今度な。あ、そろそろ時間だ!」

それらの猛攻をやんわり回避し、プロデューサーは仕事に走る。
私だって気の回る方ではないが、彼が意図的にそう立ち回ってるのは何となく分かる。

律子「やっぱりねぇ」

だから、私もそういうのは止めようと思ったのだ。

15: 2014/02/21(金) 22:31:46.56
律子「早とちりしすぎか」

だいたい、ちょっと夕飯に誘われただけではないか。
なぜ事務所の皆の内心を思い浮かべるんだか…。

律子「おまたせしました」

コーヒーをデスクに置く。

P「ありがとうー、もうちょいなんだよ…」

パソコンの画面と手帳とをプロデューサーの顔が往復する。
覗いてみると雪歩のスケジュールだろうか?

P「もうちょい待ってて、もうちょい」

律子「焦ってどうするんですか」

P「10時になったら夜食になっちゃうだろう」

律子「なんですかそのこだわり」

P「夕飯は9時までなの!」

16: 2014/02/21(金) 22:38:02.83
律子「もう、なんなんですか」

プロデューサーの着いている、デスクの端に腰かける。

P「だってさあ」

ちょっと、からかってみるか

律子「早くしないと私が逃げちゃうと思います?」

P「うん」

律子「えっ」

P「だから急いでる…」

なんだって?

律子「何バカなこと言ってるんですか」

からかわれてるだけよ…。

22: 2014/02/21(金) 22:44:32.87
律子「夕飯くらいいつだっていいじゃないですか」

P「駄目?」

律子「駄目じゃないですけど…」

ないない…。

律子「私じゃなくてもいいじゃないですか」

P「なんでそんなこと言うのさ…」

律子「頑張ってるアイドルの子たちとか」

P「撮られたらスキャンダルになるよ」

律子「あなたが自制すれば大丈夫です」

26: 2014/02/21(金) 22:50:32.57
P「それ以前に手を出したらクビになっちゃうよ俺」

律子「でしょうね」

P「いや、だからってわけじゃないんだけどさ…」

じゃあ?

律子「じゃあ、なんでですか?」

P「なんでって…」

律子「どっかに、美味しいお店でも見つけました?」

P「あああ、見つけとくべきだった」

律子「そういう返ししますか」

P「ごめん」

律子「はは、期待してませんよーだ」

P「ひどいよ律子」

28: 2014/02/21(金) 22:56:00.74
9時47分。

P「いよっし、終わった!」

メガネを外して、プロデューサーが盛大に伸びをする。

律子「まだです。ほら、確認しないと」

プロデューサーの使っていたマウスを取る。

律子「あー、ほら!ここ雪歩と響が逆じゃないですか!」

P「え、どれ…?」

ひとつのモニターを二人で覗きこむ。

律子「ここ…」

真横に、至近距離に、プロデューサーの素顔

33: 2014/02/21(金) 23:03:45.89
律子「う、」

こっちの視線には気づいてない。
目を擦りながら、画面に釘付けになっている。

律子(眼鏡掛けてない…)

表情は疲れと眠気でゆるんでいるが、画面に向ける眼差しは真剣で。

P「あった、これか!うわ、こっちもか?」

プロデューサーの右手が、私が持ったままのマウスに伸びる。

律子「わ」

急に触れられて、慌てて手を引く。

P「悪い、ありがとう!」

調子が狂う…。

35: 2014/02/21(金) 23:14:19.51
P「よっしゃ、今度こそ終わり!」

律子「ふぅ」

しっかりデータを保存して、退社の準備をする。

P「そんな…22時だよもう」

律子「ちょうどに終わったじゃないですか」

P「時間オーバーだよ…」

律子「なんのリミットなんですか」

P「俺制定の俺ルール違反」

律子「そんなの作ってる暇があったら、もっと働いてください」

P「反省します」

律子「全く…」

プロデューサーがコートを羽織る。
襟を整えている姿を何となく眺めていると、ふと気づいた。

律子「あの、プロデューサー」

36: 2014/02/21(金) 23:18:14.13
P「はい」

律子「そのルール、もしクリア出来てたらどうしたんです?」

P「えええ、それ聞くのか」

律子「気になったので」

P「律子とご飯行きたかった」

律子「ちょっ、まだ言ってたんですか」

P「むしろこれからもチャレンジしたいです」

律子「なんでですか」

P「なんでって…」

二人して黙ってしまう。

37: 2014/02/21(金) 23:24:07.56
P「…いけませんか」

先手を打ってきたのは向こうだった。

P「同僚さんをご飯に誘っちゃいけませんか」

なんか拗ねたように言うプロデューサー。
ええ、ないでしょ。ないない。

律子「そんなこと言ってないじゃないですか」

P「でも」

律子「むしろなんで私なんですか」

P「えっ」

律子「そういうのなら他に可愛い子がいくらでも…」

45: 2014/02/21(金) 23:36:06.07
律子「だって私なんて」

寸銅、堅物、眼鏡。
スタイルも悪いし頭も固いし…。
アイドル時代だって自分がまともに売れるとは思ってなかった。

律子「ないない…」

P「なんでよ」

律子「なんのメリットが」

P「そういう問題なの?」

律子「ああわかった、ほら、現役アイドルじゃないからでしょう?」

P「ええ?」

律子「あんまり皆からその…だから、手頃な所で押さえようっていう」

P「律子、」

律子「そういうのだった、ほら!お互いに良くない結果が待ってますから!私より他の子が…」

P「律子ちょっと」

律子「ああ、でもこっそりやってくださいね?いや、推奨してるわけじゃなくてですね」

50: 2014/02/21(金) 23:44:31.42
律子「んぶっ」

プロデューサーが、両手で頬っぺたを押さてきた。
私の口元がタコみたいに歪む。

P「律子」

律子「…ばんべふか」

P「自虐ネタはもう駄目な」

律子「なべ」

P「駄目な!」

律子「…あい」

P「よし」

プロデューサーが手を離す。

律子「…セクハラですよ、これ」

P「いい法律事務所知ってるよ」

律子「そうですか…」

P「ごめんなさい」

54: 2014/02/21(金) 23:53:10.38
二人で並んで階段を降りる。
なんかもう、横顔も見れない。

P「律子」

律子「なんですか」

P「メリットが全てってわけじゃないのよ」

律子「そうですか」

P「それは一番わかってるでしょ?」

律子「私がですか?」

P「効率主義ならこんな事務所来ないでしょ」

律子「そりゃあ…」

P「俺もそうだよ」

律子「あなたはスカウトでしょう」

P「そうだけどさ」

57: 2014/02/22(土) 00:02:54.13
P「律子だからがいいんですよ」

律子「またぁ、おだてても何も出ませんからね」

P「期待してませんよーだ」

律子「あーもう、真似しないでくださいよ!」

P「うへへへ」

建物の裏、外へ出る戸を開ける。
ビル風が吹いて指先が冷える。

P「さぶ…」

律子「雪でも降りそうですね」

P「なんでこんなに遅れたんだか…」

律子「あなたがダラタラしてるからでしょう!」

63: 2014/02/22(土) 00:16:07.22
さっきまで妙な空気にしておいて、今は飄々としてる。
気に入らない。

律子「あ、そうだ」

振り替えって、プロデューサーに右手を差し出す。

律子「プロデューサー、お手!」

P「?」

素直に従って出されたプロデューサーの手をぎゅっと握ると、私は通りに向かって走り出した。

P「うお、待っ待って」

律子「今日はコンビニで勘弁してあげます」

P「何が!?」

律子「肉まん、肉まん買ってください!高いやつですよ?」

P「いいけど…」

律子「ほら、早く!」

プロデューサーの指先の感触を掌に感じながら、私は熱くなった顔をビル風に当てながら、青いコンビニに彼を引っ張っていった。

おわり

64: 2014/02/22(土) 00:17:18.73
ローソンのステマかよ

65: 2014/02/22(土) 00:17:51.81
じゃあ律子ちゃんの肉まんは俺が

66: 2014/02/22(土) 00:18:16.91
じゃあ俺はりっちゃんの肉まんで我慢するわ

桃まんでもいいよ

75: 2014/02/22(土) 00:32:10.21
おつ
リッチャンハカワイイデスヨ

引用元: 律子「ないない、それはない」