1: 2012/01/23(月) 00:29:02.64
ほむら「魔女の城?」

QB「性質的にはそんな感じだね」

さやか「それってあの空に浮いてるやつのことだよね」

見滝原上空に突如として現れた城。
東京で発生した『七二三事件』及びある特殊な人々に『ねじれた城事件』と呼ばれる2つの事件を想起させるようである。

マミ「それじゃあ、あの空飛ぶ城は魔女なの?」

QB「魔女そのものではなくて魔女の結界の方が近いかな」

ほむら「ワルプルギスの夜みたいなものなの?」

かつて彼女たちの運命を大きく変えた魔女。
特に暁美ほむらにとっては過去を幾度も繰り返すこととなった魔女でもある。
この時間軸において仲間たちとともに退けることができたのは今考えても奇跡である。

QB「確かに近いものがあるね」

QB「恐らくだけどあの城の魔女は一人によるものじゃない」

QB「正体は僕にもわからないけど幾人もの魔法少女の想念の塊のようだね」

ほむら「正体がわからない?」

QB「僕もあんなものは聞いたこともないよ。それに魔力を持たない人間にも認識できるなんて事態は初めてだ」

2: 2012/01/23(月) 00:30:37.95
QBの言うように通常、魔女に関する出来事は一般人には全く認識できない。
しかし今現在も頭上に存在する城は連日ニュースで取り上げられるくらいに広く浸透している。

さやか「結構、避難してる人たちもいみたいだしね」

まどか「仁美ちゃんも東京に避難しちゃったし…」

まどかは避難することを告げられ時に大泣きしていた友人の顔を思い浮かべた。
少なくとも彼女は無事であるだろう。

ほむら「それでワルプルギスの夜以来姿を消していたお前がなぜ現れたのかしら?」

QB「あの城の目的は僕にとっても見過ごせないものだからさ」

マミ「あなたはあの城の目的を知っているの?」

QB「あの城の目的、それは―――」

―――――鹿目まどかの抹殺

4: 2012/01/23(月) 00:31:53.80
まどか「わ、私の?」

さやか「なんでまどかが狙われるのさ!?」

QBの言葉に四人の少女たちに動揺が走る。
あれほどの魔女の目的が魔法少女でもない一人の少女を頃すこと。そんな魔女は誰も聞いたことがない。

QB「まどかが脅威だからだよ」

ほむら「脅威…?」

マミ「なるほど…ね」

年長者であるマミには何かQBの言うことが理解できるらしい。

さやか「どういうこと?」

マミ「鹿目さんはワルプルギスの夜を一撃で倒せるほどの才能をもっていると暁美さんは言っていたわよね?」

ほむら「ええ」

それはほむら自身が繰り返した過去の中で実際に見てきた事実である。

マミ「それほどなのだからすべての魔女を倒せるくらいの力があるのでしょう」

マミ「つまりは鹿目さんは魔女にとっては天敵とでも言うべき存在。それを排除しようということではないかしら」

ほむら「最近見滝原を中心に魔女の出現が増加しているのはまどかが目的というわけ?」

QB「そういうことだよ」

5: 2012/01/23(月) 00:33:27.54
ここ最近、大体『魔女の城』の出現前後あたりから見滝原を中心として魔女が急増している。
しかし、ベテラン魔法少女のマミにもわからない部分がある。

マミ「でも魔女が組んで人を襲うなんて聞いたことがないわ」

QB「あの魔女たちはあの城によって生み出されたものだからさ。いわば使い魔みたいなものだよ」

さやか「使い魔みたいなものって…」

魔女を使い魔として使役する魔女などどれほどの存在なのか。魔法少女になってまだ経験の浅いさやかには想像もつかない。
とはいえそれはこの場にいる他の二人の魔法少女も同じであるようであった。

まどか「じゃあ、私のせいなの…?」

QB「そうなるね」

感情のないQBの一言はただ事実だけを告げる。まどかにとってその事実はあまりにも残酷すぎる。

さやか「まどかのせいじゃないよ!」

マミ「そうね。鹿目さんが狙われているといっても鹿目さんに非は一切ないわ」

ほむら「マミの言う通りよ。まどかが気にすることはないわ」

ほむら(まどかが力によって狙われるのなら責任は私にある…)

まどかの強大な力はほむらの時間遡行によるものである。その時間遡行の過程で因果が集約された結果がまどかの才能だ。

6: 2012/01/23(月) 00:34:30.11
マミ「心配しないで鹿目さん。あなたは私たちが守るから」

さやか「そうだよ。話せばきっと杏子も協力してくれるよ」

まどか「ありがとう…みんな」

友人達の言葉はまどかにとって何よりも心強いものであった。しかし同時にその言葉はまどかの心に大きな影を落とす。

ほむら「インキュベーター」

QB「なんだい?」

ほむら「一つ確認しておくわ。あなたがあの城を見過ごせないのは狙いがまどかだからね?」

QB「そのとおりだよ。まどかは魅力的な存在だから僕としてもみすみす殺させるわけにはいかないよ」

魔法少女の生み出し、魔女となった際に発生するエネルギーの回収がインキュベーターの目的だ。
インキュベーターにとってまどか程の力ならそのエネルギーはどれほどのものかわからないくらいに惹かれるものである。

さやか「あんたまだあきらめてないんだ…」

まどか「QB、私は絶対に契約しないよ」

QB「わかってる。でも生きていれば心変わりしてくれるかもしれない」

ほむら「ならば約束しなさい。少なくともこの件が片付くまでまどかに契約は迫らないと」

QB「そのくらいなら構わないよ。ただまどかの方から望まれたらわからないけどね」

笑顔で言い放つQBはかつては愛らしく感じたが今はどこか不気味に感じられる。

7: 2012/01/23(月) 00:35:37.41
ほむら「…いいわ。今はそれで休戦よ」

QB「ありがとう、ほむら」

マミ「この件を解決するにはやっぱりあの城の魔女を倒さないと駄目なのよね」

さやか「あの城までどうやっていけばいいんだろ…?」

そこが最大の問題である。魔法少女は空を飛べるがあの城までの高度までは難しい。
城まで辿り着かなければどうしようもない。しかしそこに意外な言葉がかけられる。

QB「それについては僕に心当たりがあるから任せてくれないかな」

まどか「心当たり?」

QB「上手くいくかはわからないけど、数日待ってほしいんだ」

現在有効な手のない魔法少女たちはとりあえずその言葉を信じることにした。

ほむら「それじゃあそれまではまどかをの護衛及び魔女の撃退」

マミ「今はそれくらいしかやることがなさそうね」

まどか「ごめんなさい、私のために…」

さやか「気にしないでよ。私たちがやりたいんだから」

鹿目まどかを絶対に守る。
三人の魔法少女たちの思いは共通していた。守られる一人の少女は複雑な思いで受け止めた。

9: 2012/01/23(月) 00:39:27.70
東京の一角、そこにH&K探偵事務所はある。名前はたった二人の従業員の頭文字をとったものだ。
その従業員の一人、玖珂光太郎は連日テレビで報道される事件に苛立ちを覚えていた。

光太郎「なあ、おっさん!あの城について何かわからないのかよ!?」

日向「おっさんじゃない所長だ」

おっさん、もとい所長である日向玄乃丈は光太郎の上司(光太郎に曰く共同経営者)にして師匠でもある。

日向「なんでも魔女が心当たりがあるとかで情報を集めてるみたいだ。今は待て」

光太郎「でもよぉ!」

光太郎という人間は元来、考える前に走って事件を追うタイプの人種である。
その彼が我慢しているのは師匠や知り合いの巫女に魔女に諌められているからに過ぎない。

日向「まあ、魔女によれば今回の城はお前さんにかかわる類ではないようだがな」

光太郎「そういう問題じゃねえよ!あの城の下にも何人もの人がいるだろうが!」

東京で起きた二度の城による事件は光太郎が大きく関わっていた。
日向は関係ないというが、光太郎には今回も自分が関係あるのではないかとも勘ぐっている。

日向「分かっている。だが以前の事件と違って今回は儀式的な前触れも感じられん」

日向「どうも、今回はいままでとは事情が違うようだ」

独自の調べでは城の現れた見滝原では事件による氏者や自殺者はいることはいるが、最近になって爆発的に増加してるわけではない。
さらに言えば法則性も儀式的な要素も全く見当たらない。過去にあった前兆と呼べるものがないのだ。

10: 2012/01/23(月) 00:40:37.43
光太郎「わかってるけどさ…。こうなったら俺だけでも行って…」

光太郎が飛び出そうとしたとき、事務所のドアが叩かれた。

日向「どうぞ」

仁美「し、失礼します…」

日向が応えると扉が開き、年は中学生ごろか、緊張した面持ちで事務所に入ってきた。

光太郎「ええっと、仕事の依頼でいいんだよな?」

日向「ペット捜しかい?」

仁美「いえ…そういうわけでは…」

この探偵事務所の主な収入源はペット捜し。それもかなり成功率が高いため、ペット捜しに限定すればかなり有名どころだ。
この少女もてっきりそっち方面だと思っていたが、どうやら違ったらしい。
志筑仁美と名乗った少女は少しおどおどしていたが、目に留まったテレビに視線を固定した。

仁美「この見滝原のお城の事件を解決していただけませんか?」

日向「!?」

まさか、そういう依頼をされるとは日向も光太郎も予想していなかった。
ある意味で城に関する事件はこの事務所の専売特許ではあるがそれは表には出ていない。

11: 2012/01/23(月) 00:41:51.05
光太郎「なんであんたがそんな依頼を?」

仁美「私は見滝原で中学校に通っています。ですが、家のものに言われてこちらに避難しているんです」

仁美「友達も置いてこちらに避難してきたのですが、やっぱり心苦しくて…」

仁美「そんなときに聞いてしまったんです。あの城は私の友人を狙うためにあると」

思わぬところからあの城の情報が入ってきた。彼女の友人を狙うとはいえ、まだ光太郎が無関係かはわからない。

日向「君の友人というのは?」

仁美「鹿目まどか、というクラスメイトです」

光太郎「なんで中学生を狙ってるんだ?」

仁美「そこまではわかりません。ですが、父が神霊庁の方と話をされているのを聞いたのです」

神霊庁。『神霊庁の認可はすべての法に優先する』という方が存在するくらいの権限を持つ国家機関である。
あそこならば公にしていない情報も持っているだろう。

日向「失礼だが、君の家は神霊庁と繋がりがあるのか?」

仁美「志筑の家はそれなりに大きな家です。見滝原に現れてから父は独自に情報をいただいているようです」

日向「この事務所に来たのも偶然じゃないんだな?」

仁美「はい。私も父に内緒で色々調べました。その中でこちらの事務所は城の事件に詳しいと」

12: 2012/01/23(月) 00:43:10.82
仁美「お願いです!私には友人を助ける力はありません!」

仁美「お金も必ず納得いただけるだけお払いしますから!あなたたちだけが頼りなんです!!」

仁美は立ち上がり深く頭を下げた。

光太郎「わかった!その依頼H&K事務所が責任もって受けるぜ!」

勝手に決める相棒に少しため息が出そうになるが、少女にここまでさせて断るのは日向の矜持に反する。

日向「安心してくれていい。この事件は必ず解決してみせる」

仁美「ありがとうございます!」

この事務所にきて仁美は初めて笑顔になった。

仁美を帰った後、二人は今後について話し合う。

光太郎「じゃ、早速見滝原へ行くとしますか」

日向「まあ、待て」

光太郎「なんだよ?まだなんかあるのか?」

日向「前情報は必要だ。魔女さんなら何か知っているようだからわかってる範囲で教えてもらう」

そういって日向は携帯電話を取り出した。

13: 2012/01/23(月) 00:44:53.69
大きな屋敷のテラスに女はいた。豪華なドレスを身に纏い、そばには執事までいる。
これだけなら絵になるであろうが、向かい側には巫女が座り、さらにテーブルの上には白い獣が座している。

ふみこ「さて、さっさと話しなさいインキュベーター」

ドレスを着た萩ふみこはQBを促す。

QB「相変わらずせっかちだね君は。とはいえ僕の方もそれほど時間があるわけでもないから単刀直入に言わせてもらうよ」

QB「力を貸してほしい」

ふみこ「詐欺師に貸す力なんてあいにく持ち合わせていないわ」

厳しい目つきでにふみこは応える。それを全く意に介さずQBは話を続ける。

QB「見滝原に現れた城を排除するのに君の力が必要だ」

小夜「あのニュースでやっている事件ですね」

巫女服を着た女、結城小夜にとってはあの城のことは気になる。
ある青年を守ることが小夜の存在理由である。かつての城はその少年を狙っていたのだから今回も事によっては城を排除しなければならない。

QB「うん。あの城は鹿目まどかという少女を狙っている」

ふみこ「狙う?あの町の魔法少女は巴マミとかいうのじゃなくって?」

QB「あの町は今マミを含めて四人の魔法少女が守っている。まどかは魔法少女ではないけどその才能は計り知れない」

ふみこ「また増やしたものね。相変わらず阿漕なことをしているのかしら」

14: 2012/01/23(月) 00:46:58.42
QB「心外だな。僕はちゃんとした契約によって魔法少女を生み出しているんだよ」

小夜「魔法少女とはなんですか?」

魔法少女のことを知らない小夜には話の流れがさっぱりわからない。

ふみこ「そうね。私たちオーマ使いとは違う魔術師だとでも思えばいいわ」

QB「君も才能があるようだけど、僕と契約して魔法少女になってよ。どんな願い事でもかなえてあげるよ」

小夜「どんな願いでも…?」

ふみこ「世間知らずの箱入り娘を誑かすのはやめておきなさい。それに少女と言うには年齢が年齢よ」

ふみこ「それとあなたも上手い話には裏があることも社会で生きていくのなら覚えておきなさい」

長い間人類の決戦存在として育てられた小夜はある方面以外では世間知らずで騙されやすい。
インキュベーターにとってはいいカモである。

ふみこ「今回の城は光太郎には関係ないのだから私が関わる理由もないわ」

小夜「ですが、人が氏ぬなら私は行きます」

そうしなければ悲しむ人がいる。

15: 2012/01/23(月) 00:48:55.37
QB「どうしても力を貸してもらうことはできないのかい?」

ふみこ「いくら才能がある娘が狙われているとはいえ、四人も魔法少女がいるのでしょう?」

ふみこ「だったらとっとと絶望させて餌にした方がお前たちにとっては有益でしょうに」

インキュベーターの目的を考えるとそこが解せない以上、ふみこは警戒心を解くことはない。
さらにいえば力を貸してやる義理も理由もない。

QB「…協力は無理そうだね。君はどうだい?」

小夜「もちろん行きます」

ふみこ「あれは正確にはあしきゆめではないわよ?」

小夜「それでも私は人類を守る義務があります。今は役割は失いましたがやるべきことはわかっているつもりです」

ふみこ「そう。だったら好きにすればいいわ」

16: 2012/01/23(月) 00:49:37.93
話を切り上げようとした時、携帯電話が鳴った。表示される相手は日向玄乃丈。

ふみこ「なんの用かしら?家賃なら待たないわよ」

しばらく何かを話した後、ふみこは携帯電話を切った。

ふみこ「気が変わったわ。感謝しなさい、インキュベーター。力を貸してあげるわ」

QB「本当かい?」

日向の電話でふみこの気が変わり、力を貸すことを承諾した。それすなわち、

小夜「光太郎さんが関わるのですね」

ふみこ「ええ。どういうわけかあの馬鹿も事情を知ったようね」

ふみこ「ミュンヒハウゼン、支度しなさい」

そう執事に命じて、『魔女』は再び魔女を狩るための戦争を始める。

17: 2012/01/23(月) 00:53:52.52
学校が終わり放課後。マミの家で魔女の城の目的を聞いたが大きな動きはない。しいて言えば魔女の出現が増えていることくらいだ。

さやか「QBからなにも連絡はないけど心当たりってどうなってるんだろうね」

さやか、ほむら、マミが日替わりでまどかを護衛している。今日は護衛役はさやかが担当だ。
ここにいない二人は魔女を狩って回っている。
もう一人の魔法少女、佐倉杏子には相変わらず連絡がつかない。

まどか「ごめんね、毎日守ってもらって」

さやか「気にしなさんなって。っていうかあたしはいつも一緒に帰ってたんだから特に変わらないんだよね」

まどか「あはは、そういえばそうだね」

こういったさやかのおどけた態度は今のまどかには心強い。
口にはしないがやはり命を狙われているのは普通の女の子には辛すぎる。

さやか「最近、みんなで一緒に遊べないのはちょっと残念だけどね」

さやか「とっとと解決してまたマミさんの家でケーキ食べたいよー」

まどか「杏子ちゃんは大丈夫かな…?」

さやか「マミさんは魔女を狩りまわってるから連絡できないんじゃないかって言ってるし、心配しなくても大丈夫でしょ」

何度か杏子とぶつかっているさやかにはあの魔法少女がそう簡単に敗れる姿が想像できない。

まどか「そう…だね」

杏子の実力はまどかも知っている。だが、さやかほどではないが杏子は杏子でたまに無理をするから心配なのだ。

18: 2012/01/23(月) 00:57:13.95
さやか「全部終わったらさ、みんなでどこか行こうよ」

まどか「遊園地とか水族館とかいいよね」

さやか「休みの日に旅行とかでもいいかしれないよ」

まどか「旅行かぁ…」

事件の後のことに思いを馳せるさやかの言葉はまどかの不安を拭ってくれる。
しかし、その不安は再び湧き上がる。

さやか「待って、まどか」

まどか「どうしたの?」

さやか「魔女の気配がする。結構近いかもしれない…ううん、こっちに来てるかも」

20: 2012/01/23(月) 00:59:52.36
まどか「まさか…私を狙って…?」

さやか「多分、そうだと思う」

さやかは素早くマミとほむらに連絡をとる。だがマミには連絡がつかず、ほむらは別の魔女と遭遇したらしくこちらに向かえないとのことだった。
まどかを狙っているのだから逃げても追ってくる。ならばさやかが戦うしかない。

さやか「とりあえず、あたしが足止めするからまどかはマミさんのマンションに行って」

まどか「う、うん」

マミのマンションは結界が張ってあり、何かあった時のための避難所になっている。

まどか「気を付けてね、さやかちゃん」

さやか「さやかちゃんにお任せ!」

そういって、さやかは魔女の方へ駈けだした。

21: 2012/01/23(月) 01:02:54.26
現在の見滝原は魔法少女たちが考えるよりも魔女は多い。

まどか「これって、魔女の結界…!?」

マミのマンションへ走っていくまどか。
しかし、途中でまどかは魔女の結界にとらわれてしまった。その事実に気が付いたときはもう遅い。

まどか「逃げなきゃ…!」

まどか(みんな他の魔女と戦ってるんだ…)

まどか(せめて結界の中を走り回って時間を稼がないと!)

迷宮のような魔女の結界の中を必氏に逃げ回る。だが、気が付くと大きな空間に出ていた。
まどかは直感する。ここは魔女のいる最奥の空間だと。

まどか「あ…」

目の前に使い魔よりも魔女が現れる。

まどか(早くここから離れないと…)

来た道を急いで戻ろうとするが、使い魔たちがそれを遮る。

22: 2012/01/23(月) 01:05:11.13
まどか「あ…あああああ…」

魔女の槍のような攻撃がまどかを狙う。

まどか「きゃああああああああっーーーー!」

まどかは恐怖が爆発し、悲鳴を上げる。それに呼応するように、

光太郎「おおおおおおおおっ!!」

騒々しい足音を響かせ、雄叫びと共に乱入してきた青年は魔女に突撃して、強烈なラリアットをぶちかました。

まどか「え…?」

光太郎「女の子に暴力振るってんじゃねえよ!この野郎!!」

ぐらついた魔女に叫ぶ。その魔女の周りには何か札のようなものが舞っている。
光太郎は再び魔女に駆け出し、声を上げる。

光太郎「派手にいきますよっ!」

指を鳴らした瞬間、魔女の周囲を舞う札が爆ぜた。
そして、爆炎に包まれた魔女を光太郎は全力でぶん殴った。

光太郎「成仏してくれよ」

青い光とともに魔女は消滅した。

23: 2012/01/23(月) 01:07:31.57
結界も解除され、元いた場所の景色に戻ったがまどかは起こったことがまだ信じられない。
魔女を倒せるのは魔法少女だけのはずだ。しかし、今魔女を倒した青年はどう見ても魔法少女ではない。

光太郎「大丈夫か?」

尻餅をついていたまどかに光太郎は手を差し伸べる。

まどか「た、助けてくれたありがとうございます!」

光太郎「気にすんなよ。俺の名前は玖珂光太郎。悪をぶっとばす青年探偵だ」

まどか「悪をぶっとばす青年探偵?」

光太郎「おう」

自信満々に名乗る光太郎に思わずまどかは噴出した。

24: 2012/01/23(月) 01:10:44.69
光太郎「え?なんかおかしかったか?」

まどか「いえ、なんでもありません」

噴出しはしたが、騒々しい足音とともに魔女を倒した光太郎にはその肩書きがこの上なく似合っていた。

光太郎「ええっと、まだ混乱してるかもしれないけどさ。ちょっと聞きたいことがあるんだ」

まどか「なんですか?」

光太郎「鹿目まどかって女の子を探してるんだけど、知らないか?」

魔女を倒す謎の青年に自分の名前を出され驚いたが、少なくともこの人は悪い人ではないとまどかは感じる。

まどか「鹿目まどかは、私です」

だから、まどかも堂々と名乗った。

25: 2012/01/23(月) 01:13:23.24
ふみこの屋敷で今回の一件に関わる情報を得た後、見滝原に来た日向は他の仲間たちとそれぞれ個別に捜査を始めていた。
当面の手掛かりは狙われているという鹿目まどかという中学生。彼女を守るためにも早い段階で接触しておきたい。

日向「ん…?」

大神の一族であり、人狼の日向の鼻が異質な臭いを嗅ぎ取った。
その臭いの元まで来ると知らない陣が宙に描かれていた。

日向「これが魔女の結界の入り口か…」

魔女から教わった知識に当てはめて納得する。ならばこの中の奥に魔女とやらがいるのだろう。
城に乗り込む前に一度くらいは魔女がどのようなものか知っておく必要がある。

日向「魔女なんてのはあの女一人でも十分だっていうのにな…」

日向「今まで以上に得体のしれない敵、魔女か。まあ、依頼を受けた以上やりますか…。やりますよっと」

一人ごちながら日向は魔女の結界に乗り込んだ。

結界の中で日向は自分の式神である雷球を使役して使い魔を倒しながら進んでいく。
どうやら魔女に対しても式神は有効らしい。

ふみこ『魔女というのはあしきゆめと似て非なるもの。そうね、魔法少女があしきゆめに変貌したのが魔女というところね』

光太郎『その子たちを救うことはできないのかよ?』

ふみこ『魔女になった魔法少女はもうもとには戻らないわ。同情するのなら一思いにやってあげなさい』

その会話を思いだす。確かに今まで日向の戦ってきたあしきゆめたちと違いどこか子供の箱庭ような感じを覚える。
ふみこによればかつて魔法少女だったころの思いや願いがこの箱庭には関係しているとの話である。

26: 2012/01/23(月) 01:17:19.67
そうこう考えているうちに結界の最奥まで到達する。話ではここに結界の主である魔女がいるはずだ。

日向「ん…?先客か?」

見ると魔女と戦っている少女がいる。どうやらあれが噂の魔法少女らしい。
これはこれで悪くない。魔法少女に関することも詳しくわかりそうだ。

日向(使っているのはサーベルか?ずいぶんとまっすぐな戦い方をするもんだな)

日向(なんていうか、若すぎて危なっかしいね)

そう日向が感じていると、一匹の使い魔が少女を後ろから貫いた。

日向(しまった!出遅れた!)

危なくなったら割って入るつもりが完全に出遅れた。おそらくあの攻撃で少女はもう戦えない。
日向はそう判断したが、目の前の少女はそんな傷など意に介さないようにそのまま攻撃してきた使い魔を切り裂いた。

日向(あの傷で動けるのか…?)

よく見るとすでに少女の傷はふさがっている。そこで日向は思い出す。

日向(そういえば確か魔法少女は)

魂をソウルジェムという器に移しているために、その肉体は痛覚を遮断することもできる。これもふみこから聞いていた情報だ。
とはいえ、日向の見た感じあの少女はまだ荒削りで危なっかしい戦いをする。

日向「行こうか、相棒」

雷球を呼び出し、駆ける。少女のまわりの使い魔を一気に焼き払う。

27: 2012/01/23(月) 01:19:35.35
日向「助太刀しますよ、お嬢さん」

さやか「へ?」

突如現れた闖入者にさやかは戸惑う。魔法少女でもないのに使い魔を倒した謎の黒ずくめの男に警戒する。

さやか「おじさん誰?」

日向「おじさんは酷いな。俺はまだ二十九だ」

日向「なーに、通りすがりの青年探偵だ。詳しい話はあれを倒してからだ、OK?」

よくわからないが今は敵でない以上、さやかは魔女に集中することにする。

さやか「とりあえず、今は置いておいてあげる」

日向「ありがとう。俺が援護するからお前さんは気にせず切り込め。そういう方が得意なんだろ?」

さやかが考えて戦うタイプでないのは先ほど見ていた時に見抜いている。
その言葉にさやかはうなずき、ダッシュのスタート体制をとる。

日向「いけっ!」

日向の合図に一気に走り出す。さやかの進路にいる使い魔も魔女の攻撃も日向によって沈められる。

さやか「うりゃあああああああっ!!」

さやかの刃が魔女を切り裂き、勝負は決した。

28: 2012/01/23(月) 01:21:25.10
さやか「それで、おじさんは何者なの?」

日向「お兄さんと呼んでくれ。言っただろう、俺は探偵だ。少女を一人探している」

さやか「ふーん。なんでおじさんは魔女と戦えるの?」

日向「だからお兄さんだ。式神って言ってな。魔法少女とは別の力だ」

そんな話は聞いたことがない。魔女に対抗できるのは魔法少女と聞いていたさやかは信じられない。
だが、主な魔法少女に関する情報源はあの獣だ。何か隠していても不自然ではない。

日向「お前さん、中学生だよな?鹿目まどかって子を知らないか?」

その言葉にさやかの視線は鋭くなる。

さやか「まどかになんの用?」

日向(ビンゴ、か)

29: 2012/01/23(月) 01:24:38.22
日向「志筑仁美って子の依頼でな。あの城から鹿目まどかを守りに来た」

さやか「仁美の?」

今はこの町にいない友人の名前が出て少し警戒感が和らぐ。
それと同時に日向の携帯が鳴った。

日向「失礼。光太郎か?まどかって子と接触できたのか?」

日向「そうか。こっちもちょっとな。とりあえず合流するぞ。ああ、場所は…」

どうやらまどかは日向の知り合いと一緒らしい。

日向「どうやらまどかって子も魔女に襲われていたらしい」

さやか「まどかが!?」

日向「うちの相棒が助けたから特に怪我もないそうだ。それより、これから合流するんだが一緒に来てくれるな?」

まどかがいる以上さやかには断る理由はなかった。

30: 2012/01/23(月) 01:27:11.81
まどかとさやかが魔女に襲われている頃、別の場所でも魔女と戦う魔法少女がいた。

ほむら「…ッ!」

爆弾を爆発させて距離をとる。相手の魔女にはあまり効いていないようだ。
魔法で強化しているとはいえやはり自作の爆弾ではあまり威力は期待できないようだ。
それに加え、結界に入る前にさやかから受けた連絡によってほむらの気がはやる。

ほむら「こういう時は銃が欲しくなるわ…」

かつて時を操る魔法が使えた時は銃火器を調達してそれを使用していた。
しかし現在、その魔法を使うことができずほむらは仲間の援護が主な役割となっている。
爆弾しか使えない今のほむらが一人で戦うのはかなり緻密な戦い方を強いられる。

ほむら(使い魔に爆弾を使う余裕はないわね)

使い魔を蹴り飛ばし、次の爆弾を用意する。そのほんの一瞬の隙に魔女の攻撃を受ける。

ほむら「きゃああっ!!」

壁際まで吹き飛ばされる。痛覚を遮断できるとはいえ肉体への衝撃は残る。

ほむら(上手く立ち上がれない…!)

とっさに行動できないほむらに使い魔たちが群がってくる。
爆弾を武器にする以上ある程度距離を取らなければ戦えないのがほむらの最大の弱みだ。

31: 2012/01/23(月) 01:30:05.81
その時、魔女の空間に銃声が響いた。

ほむら「え…?」

ふみこ「無様ね」

唐突に声がした方を見ると『魔女』がいた。
ほむらの戦っている魔女ではなく、箒に三角帽子、さらには眼鏡をかけたおとぎ話に出てきそうな見事な魔女である。
その片手にあるドイツ製の軍用拳銃だけが不釣り合いであるが。

ふみこ「気持ちだけが焦ってまともに戦えない。爆弾を効果的に使おうとして逆に追い詰められる」

ふみこ「なにより典雅さが足りないわよ」

いきなり扱き下ろされてほむらは唖然となる。その前に大口径の拳銃が投げられる。

ほむら「これは…?」

ふみこ「使いなさい。足りなければもう少しあげるけど?」

ほむら「十分です!」

ほむらは体制を整えて銃を構える。使い魔を銃で蹴散らし、魔女に再び向かう。

33: 2012/01/23(月) 01:33:33.88
突如、後ろから聞き覚えのある轟音が響く。いつの間にか機関銃を持った魔女が使い魔の群れに向かい派手にぶっ放していた。

ほむら(…私も他人から見るとあんな感じなのかしら?)

過去には似たような戦い方をしていたほむらはふみこの姿に若干引いていた。
とても優雅に、そして楽しげに撃ちまくる。何者かはわからないが心配する必要はなさそうだ。

ほむら「これなら、戦える!」

拳銃で牽制しなが魔女に近づき、爆弾を取り付ける。
自分が巻き込まれない位置にまで移動し、起爆。今までの苦戦が嘘のようにあっけなく終わる。

ふみこ「あら、やっと終わったの?」

乱入してきた魔女はどこから現れたのか執事を後ろに従えて紅茶を飲んでいた。

ほむら「あなたは一体…?」

QB「お疲れさま、ほむら」

ほむら「インキュベーター?」

QB「他のみんなも無事みたいだよ」

ふみこ「どうやら鹿目まどかもうちの馬鹿が保護したそうよ」

携帯電話をしまいながらふみこは告げる。
まどかを知っており、QBと行動を共にする女性。

ふみこ「萩ふみこよ」

34: 2012/01/23(月) 01:36:25.59
ほむら「ふみこさんは…」

ふみこ「こっちが自己紹介したのだからあなたも自己紹介くらいしなさい」

ほむら「あ、暁美ほむら…です」

ふみこと接しているとなぜか調子が狂う。

ふみこ「よろしい」

QB「オゼット…」

ダンッ!
QBが何か言おうとしたとき、ふみこが射頃した。
だがすぐに新たなQBの個体が現れ、何事もなかったかのように会話を続ける。

QB「酷いじゃないか」

ふみこ「女の過去を簡単に喋ろうとするからよ。それと今はただのふみこよ」

QB「それに何か意味があるかい?わけがわからないよ」

ふみこ「わかる必要はないわ。お前が分かる必要があるのは私がふみこだということよ」

QB「わかったよ。ふみこ」

ふみこ「それでいいのよ」

35: 2012/01/23(月) 01:39:36.67
ほむら「あの、それであなたは何者なの?」

目の前の行われる会話はほむらにも理解はできないが、とりあえずふみこに関してははっきりさせておきたい。
ほむらの目にふみこは魔法少女ではないように思えるが、魔女と戦っておりインキュベーターを知る彼女は時を繰り返してきたほむらにも予想ができない。

QB「彼女は僕の言っていた心当たりさ」

ふみこ「そういうこと。面倒だけど手伝ってあげるわ」

ほむら「…」

ふみこ「安心しなさい。この獣と仲間というわけではないわ」

ふみこ「第一、私はこのケダモノが嫌いだもの」

ほむら「あなたとは仲良くできそうです」

QB「君たちは本当に訳がわからないよ」

ふみこ「さて、とりあえず他の連中と合流するわよ」

ほむら「他の連中?」

ふみこ「ええ。私の下僕たちも連れてきているのよ」

ほむら「…人間ですか?」

ふみこ「男が一人に獣が一匹。メイドが一人よ」

とりあえず、ふみこの仲間がまともな相手であることをほむらは心の中で祈った。

37: 2012/01/23(月) 01:42:28.72
巫女なんて神社以外で見たことはない。そんな巫女が公園の自動販売機の前でオロオロしている。
そんなめずらしい光景に巴マミは遭遇した。
どうやら最新型の自動販売機のお金を入れる場所がわからないらしい。

マミ「あのそれはここからお金を入れるタイプで」

マミが声をかけると巫女が振り向く。瞬間、目つきが鋭くなったが何か思いつた様にすぐに柔らかな表情になる。

小夜「ご親切にありがとうございます」

丁寧に説明すると巫女は深々と頭を下げた。そのまま、近くで遊んでいた子供たちにお茶をあげていた。
街中で巫女服を着ている変わった人だが悪い人ではないようだ。

マミ「この気配は…」

魔女の気配。それを感じてマミはあたりを見回す。
先ほどの巫女と子供たちも居なくなっており、この辺りはマミだけのようだ。
そう思ってた矢先、声をかけられる。

小夜「あの」

マミ「…!?あ、さっきの巫女さん…」

小夜「あなたは魔法少女ですよね?」

中学生とはいえ、魔女との戦いでそれなりに場数を踏んできたマミに気配を感じさせない小夜という巫女。
その巫女が一般人は知らない魔法少女を知っている。不審に思ったマミは少し距離をとり一瞬で変身する。

39: 2012/01/23(月) 01:45:38.68
小夜「あしきゆめの気配に似ていますがどこか違います。これが魔女の気配ですね?」

マミ「魔女を知っているあなたは何者?」

小夜「申し遅れました。私は結城小夜と申します。きゅうべえさんから事情は聴いています」

マミ「QBから?」

彼女がQBの言っていた心当たりだろうか。だとすればマミのことを知っていてもおかしくはない。

小夜「詳しい話は後程。今は魔女を滅する方が先です」

マミ「そう…ですね」

その言葉に同意する。どうやら敵ではないようだし、今は魔女を倒すのを優先すべきだ。

小夜「では、行きましょう」

魔法少女と巫女は気配へと向かう。

40: 2012/01/23(月) 01:48:35.32
魔女の結界内で榊や札を用いて使い魔を滅する姿をみてもマミはまだ信じられなかった。
長い間魔法少女をやっているが、魔法少女以外の力で魔女に対抗できるということは初めて知った。

マミ(こんなこと、QBは言ってなかったわね)

とはいえソウルジェムの秘密や魔法少女と魔女の関係などを黙っていたQBである。
いまさら新たな隠し事があったとしてもそれほど驚かない。

マミ「結城さん、こっちです」

小夜の動きを見る限り戦い慣れているようだが、魔女とは初めて戦うようだ。
結界内の迷宮をマミの先導によって奥に進んでいく。
最奥までくると、当然のように魔女が現れる。

小夜「あれが魔女ですね」

マミ「はい。気を付けてください。使い魔よりも強いですから」

小夜「わかりました」

魔女が二人に向けて攻撃を放つ。マミはマスケット銃を駆使して、小夜は札を用いて迎撃する。
即興にしては二人はうまく連携を取りながら魔女を攻撃する。だが、決定打が足りない。

小夜「巴さん、魔女の攻撃は私が止めます。あなたなら魔女に有効な攻撃をできますね」

マミ「…大丈夫ですか?」

小夜「任せてください」

そう請け負うと小夜は祝詞を詠みあげる。

41: 2012/01/23(月) 01:51:25.34
――――それは闇が深ければ深いほど、夜が暗ければ暗いほど、燦然と輝く一条の光
――――それは呼び合う人の心が、闇を裂くから
――――それは悲しみが深ければ深いほど、絶望が濃ければ濃いほどに、心の中より沸き上がる、意志の弓、闇を払う
――――この手は弓持つ手。この手は闇を払う手。この手は、呼び合う手

小夜の手に弓が現れる。それに矢を番えて構える。

小夜「この手は〝異を封ず〝」

魔女の攻撃が撃ち落される。

小夜「この手は〝路を封ず〝」

マミへ向けられた攻撃の道が矢によって阻まれる。

小夜「この手は〝破を封ず〝」

魔女に刺さった矢によって魔女の動きが止まる。

小夜「今です!」

マミは小夜が生み出した隙に素早く反応し大砲のような銃を召喚して魔女に銃口を向ける。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

爆発。結界が消え、魔女が倒れたことを証明していた。

42: 2012/01/23(月) 01:54:09.26
元の世界に戻ると同時にマミの携帯が着信を知らせる。

マミ「暁美さん?ええ、魔女ならたった今倒したわ。私の家に?構わないけど」

話によればほむらの方にも協力者がいるとのことであった。情報を整理するためにも一度全員で集まろうという話である。
今後の流れを話した後、マミは携帯を切る。

小夜「お仲間ですか?」

マミ「ええ。ふみこさん?っていう人がさっきの相手の子と合流したそうです。小夜さんの知り合いなんですよね?」

小夜「はい。これからそちらと合流するのであれば私もご一緒します」

マミ「もちろん、そのつもりです」

変身を解いたマミと小夜は仲間たちと合流するためにマミのマンションへ向かった。

43: 2012/01/23(月) 01:57:15.08
マミのマンションにこれだけ人が集まるのは初めてかもしれない。だが、その光景は若干異様であった。
制服を着た中学生四人とラフな服装の光太郎はまだいい。問題は他だ。
巫女に魔女、全身黒ずくめの男。さらには執事までいる。

ほむら(何度も時間を繰り返したけどさすがこれは見たことがないわね)

あの一か月を乗り越えられたことも驚きだがまだこの世界には驚くことがあるようだ。
ふみこの言っていた男は二人のどちらかだろうが、獣はほむらの知る白い生物のみ。メイドのメの字も見当たらない巫女が一人とわけがわからない。
簡単な各自の紹介を終え、情報を整理する。

まどか「それじゃあ、玖珂さんと日向さんは仁美ちゃんに頼まれてこの町に来たんだ」

光太郎「ああ。自分で色々調べて俺たちに依頼しに来たみたいだったぜ」

離れてしまった友達が心配してくれている事実はまどかには何よりの励ましだ。

さやか「ふみこさんたちは探偵じゃないんだよね?」

ふみこ「光太郎がここにいる以上私がいてもなんら不思議ではないわ」

小夜「不埒な!」

ふみこ「やかましいわね。女の嫉妬はこれだから嫌だわ」

さやか(三角関係なのかな…?でも、玖珂さんはあんまり気にしてないみたいだしな~)

日向「痴話喧嘩は後にして。今回の事件の原因はあの城でいいんだな?」

QB「正確にはわからないけど、そのはずだよ」

44: 2012/01/23(月) 02:00:40.52
光太郎「じゃあ、とっとと乗り込んで首謀者をぶっとばせば解決するな」

マミ「そんな単純でいいのかしら…?」

ふみこ「手段はそれで問題ないわ。ただ、敵の正体が見えないわ」

ふみこ「魔女はその行動には個別の行動原理があるはずなのだけれど、その魔女たちを統率してその娘を狙う敵というのは聞いたことがないわ」

さやか「へえ~詳しいんですね」

ふみこ「魔女が魔女のことを知っててもおかしくないでしょ」

笑みを浮かべながらふみこは応える。なんでも知っていてもおかしくない、とこの魔女は思わせる。

ほむら「わからないことを分析するよりもあの城に乗り込んだ方が早いんじゃないかしら」

日向「そうだな。こっちで今以上の手掛かりが得られるとも思えん」

まどか「でも、あのお城までどうやって行くんですか?」

ふみこ「ヘリを使うだけよ」

さやか「ヘリ…箒とかじゃないんだ…」

ふみこの容姿からおとぎ話の魔女を夢想して少しがっかりする。
実際、ふみこは箒を持っていたしそういう手段で行くものだと思っていた。

45: 2012/01/23(月) 02:03:28.42
ふみこ「あら、そっちの方がお好みかしら?」

日向「やめておけ。振り落とされるのが落ちだ」

光太郎「ふみこたん、結構乱暴だからな」

さやか「ヘリでいいです…」

ちょっと夢が壊されたさやかであった。

まどか「私はどうすればいいんですか?」

狙われている張本人を城に連れて行くわけにもいかない。

マミ「このマンションに結界を貼っておくわ。私たちが戻ってくるまでここにいてくれればいいわ」

小夜「壬生谷の術が魔女にも有効であるので私も結界を貼っておきます」

ほむら「少なくともこのマンションにいる限り魔女に襲われる心配はないってことね」

まどか「そっか…そうですね」

当事者であるのまたしても蚊帳の外に感じられる。
ワルプルギスの夜をめぐるあの事件でも感じた孤独がまどかの心に広がる。

46: 2012/01/23(月) 02:06:40.60
光太郎「QBはどうするんだ?」

この獣をまどかのそばに置いておくのは色々と不安ではある。
かといって自分で戦う手段を持たないQBを城に連れて行ったところで役に立つとも思えない。

QB「僕はまだやることがあるから城に行くのは遠慮しておくよ」

マミ「やること?」

QB「杏子がまだ見つかってないからね。合流できればまどかの護衛をしてくれるはずだよ」

ここにはいないまどか達の仲間。魔法少女の佐倉杏子は今まで事情を話せていない。
城へ行くには間に合わないが、話せばまどかを守ることには協力してくれるだろう。

マミ「そうね。佐倉さんがいてくれれば鹿目さんは心配いらないわね」

さやか「お願いね、QB」

日向「さて、話もまとまったことだし善は急げだな」

小夜「はい。この町の魔女は徐々に増えているようです。時間をかけると私たちが不利になります」

ふみこ「ミュンヒハウゼン」

ミュンヒハウゼン「すでに準備はできております」

この万能執事は主のためにつつがなく、優雅にあらゆる事を運ぶ。
ヘリの準備くらいなんということはない。

47: 2012/01/23(月) 02:10:06.72
まどか「みんな、気を付けてね」

さやか「心配しないでいいよ。あたしたちは負けないからさ」

ほむら「ええ。何があってもあなたは守る。それは今も変わらないわよ」

マミ「鹿目さんはお茶の用意でもしておいてくれると嬉しいわ」

友人たちの言葉がまどかには嬉しくて、そして無力な自分が悲しかった。

光太郎「んじゃ、いっちょ行きますか」

三人の魔法少女と四人の術者たちは魔女の城へ向け飛び立った。

48: 2012/01/23(月) 02:13:48.61
まどかを残して飛び立ったヘリが城に近づいていく。

日向「しかし、きれいな城だねえ。いままでの城とは大違いだ」

ふみこ「私には悪趣味な城にしか見えないわ」

日向「お前さんの屋敷だってに似たようなものだと思うがね」

ふみこ「おかしなことを言うわね人狼。これだから三十路過ぎの独身男は嫌にだわ」

さやか「へ?日向さんって二十九じゃなかったっけ?」

光太郎「…おっさん、中学生相手にサバよんだのかよ」

魔女にあっさりばらされて周囲の視線がつらいものになる。
視線を遮るように帽子で目元を隠す。

日向「いいじゃないか、少しくらいごまかしたって」

ミュンヒハウゼン「お嬢様。城の門が開きます」

ふみこ「何?」

城に目をやると確かに正門が開いていた。

マミ「歓迎されてるようですね」

光太郎「乗り込んで来いってことか。いいね、やりやすくて」

49: 2012/01/23(月) 02:16:44.52
ミュンヒハウゼン「お嬢様。あの門は空間がゆがんでいるようです。申しわけありませんが、直接ヘリを着けるわけには」

ふみこ「わかったわ。ここからは直接行くわ」

さやか「直接って!?」

ふみこ「このくらいの距離なら飛んで行けるでしょ?」

小夜「私は問題ありません」

ほむら「私もよ」

さやか「うう…」

まだ比較的新しい魔法少女のさやかは飛ぶことがあまり得意ではない。

ほむら「がんばりなさい。たったこれだけなんだから」

友人に言われ、しぶしぶ心を決める。

ふみこ「それとあの門をくぐれば離れ離れになることを覚悟しておきなさい。各々独自に城の中心を目指すこと。いいわね」

マミほむらさやか小夜「はい!」光太郎日向「ああ!」

ヘリのドアが開き、戦士たちは城へと乗り込んで行った。

50: 2012/01/23(月) 02:20:57.64
光太郎「おおおおおおおおっ!!」

さやか「はあああああああっ!!」

二つの青い光が魔女と使い魔を蹴散らし城の奥へ向け突き進む。
一人は男、一人は女。一人は拳を、一人は剣を振るい突き進む。その早い進撃はまるで稲妻のようである。

光太郎「このあたりは片付いたみたいだな」

さやか「みたいだね。ちょっと待って、ソウルジェムの穢れを払うからさ」

グリーフシードを近づけソウルジェムの穢れを払う。
魔法少女が魔法を使うとソウルジェムの穢れに溜まる。穢れを溜めこみ過ぎると魔法少女は魔女になってしまう。
この城では常時魔法を使わなければならないような状況だ。こまめに穢れは払っておく必要がある。
幸い城の中には多数の魔女がおり、グリーフシードに困ることはない。

光太郎「不便なもんなんだな、魔法少女っていうのも」

さやか「まあね。でも、だからこそ守れるものもあるんだよ」

この城で仲間たちと離ればなれになり、一緒に戦ってるうちにかなり気安く二人は話せるようになっていた。
これこそが光太郎という男の真骨頂である。

光太郎「にしてもこの道はどこまで続いてんだろうな」

さやか「なんか詩的な言い方だね」

光太郎「茶化すなよ。第一、この城がなんなのかを知ることも必要だろうが」

昔はただ突っ走るだけだった青年は現在、ちょっとだけ考えることを覚えた。

51: 2012/01/23(月) 02:24:14.89
さやか「え?魔女の結界でできた城でしょ?」

光太郎「…おまえ、馬鹿だろ」

さやか「コウさんだけには言われたくないな…」

光太郎「悪かったな!こっちは生まれて18年、歴戦で一筋、全開で純粋で生粋のバカだ!」

さやか「そこまで言ってないし」

光太郎に言われ、さやかもとりあえず考えてみる。
魔女がまどかを狙うっていうのは理解できないことはない。だが、個人を狙う魔女なんていうのはさやか自身今回初めてだ。
この城は何か例外なのだろうか。さやかが知る魔女の例外と言えば。

さやか「…QBの言うとおりこの城って魔女の集合体なのかも」

この城について、QBがそんなことを語っていたのを思い出す。

さやか「この城の魔女って正直あんまり強くないんだよね。だから、この城の一部みたいなのかなって」

光太郎「魔女の集合体…か」

確かにこれだけの力を持つ存在が個であるとは考えにくい。それこそ世界でもなければ。

光太郎「もう少し、手掛かりが欲しいな」

さやか「コウさんって探偵なんでしょ?もうちょっとなんか考えないの?」

光太郎「…俺は肉体派なんだよ」

52: 2012/01/23(月) 02:27:47.76
話しながら城を進む二人の前に扉が出現する。

さやか「どうしよう?」

光太郎「行くしかないだろ。他に道もないし」

進もうとしたとき、光太郎の携帯に着信があった。

光太郎「もしもし、ジュニアか?」

さやか「なんで携帯が通じんの!?」

外界からは隔離されているはずの魔女の結界内部で携帯が通じるなんてさやかの知る限りありえない。

光太郎「万能執事だからな。それより、この扉の向こうがこの城の動力部らしい」

光太郎「そこを叩けばこの城にダメージを与えられるそうだ」

さやか「動力壊したらこの城が落ちるんじゃない?」

光太郎「この城は別に動力で飛んでるわけじゃねえからな。問題ねえだろ」

さやかは少し不安だが、扉を開ける。コンサートホール。そう感じさせる空間だ。
舞台では楽団の演奏が行われている。

53: 2012/01/23(月) 02:30:09.61
光太郎「なんだこりゃ?これも魔女の結界ってやつか?」

さやか「多分…」

このコンサートホールを模した空間に踏み込んでからさやかは強烈な既視感に襲われ続けている。
恐らく、舞台で唯一こちらに背を向けているヴァイオリン奏者が幼馴染にどこか似ているからだろう。

光太郎「動力がどれかわからないけど、とりあえずぶっ潰すか」

さやか「うん」

二人が暴れようとした。その瞬間魔女が上から魔女が現れた。
西洋の騎士のような上半身と人魚のような下半身を持つ魔女は舞台を守るように二人に立ちはだかった。

さやか「多分、こいつがこの空間の主だよ!」

光太郎「だな。じゃあ、動力もこいつかもな」

こちらが構える前に魔女は無数の車輪を放ち攻撃を始める。
それをさやかは避けるが、光太郎は拳でぶん殴って破壊する。

さやか「無茶苦茶だなぁ…」

光太郎「うるせえよ!」

54: 2012/01/23(月) 02:33:57.35
呆れるさやかに叫びながら光太郎は突撃していく。光太郎に向けて魔女の剣が振り下ろされる。
その大きな剣を光太郎は受け止めた。真剣白羽どりで。

さやか「んな…」

光太郎には驚かされてばかりだが、本当にすごいことをやってのける男である。
すぐにさやかは驚きから立ち直り、光太郎を狙った腕を切り落とす。

さやか「どうやったらそんなことができるのさ!」

光太郎「経験だ!前にもっとでかいの受け止めたしな!」

嘘だと思うが、この男ならあり得そうだ。

さやか「おりゃああああああっ!!」

車輪を潜り抜け、魔女の懐に飛び込んで剣を振り上げる。魔女の鎧を貫き、剣を突き立てた。

その瞬間、さやかは魔女の正体を理解した。

さやか(この魔女…!)

それは"さやか"の思い出。それは"さやか"の思い。それは"さやか"の悲しみ。
魔女のすべてがさやかに流れ込んでくる。

さやか「ぁ…あ…うわあああああああああああああーーーーーーー!!」

光太郎「さやか!!」

叫び声を上げるだけで動かないさやかを車輪が狙う。それを間一髪で光太郎がさやかを魔女から引き離す。

55: 2012/01/23(月) 02:36:37.71
光太郎「何やってんだ馬鹿野郎!!」

さやか「あたし…あたしは…」

光太郎「おい。しっかりしろ!」

さやか「コウさん…あの魔女、私だ…」

さやか「よくわかんないけど、あの魔女は私が魔女になった姿みたい…」

光太郎「どういうことだ?」

さやか「わかんないよ!!わかんないけどわかるんだ!」

さやか「あの魔女の悲しみも、絶望も、何を思っているのかも!!」

意味不明なことを言うさやかだが、光太郎はそれが真実だと感じる。この少女は必氏に無茶苦茶なことを訴えている。

光太郎「よくわかんねえけど…あれがお前だっていうんならちゃんと救わねえとな」

さやか「救う…?」

光太郎「魔女ってのは絶望で生まれるんだろ。だったら、お前自身で絶望を払ってやれよ」

さやか「…」

そうだ。あの"さやか"は一人ぼっちなのだ。
"さやか"の思い出はすべて知った。さやかと"さやか"の違いは、自分を助けようとした友人の手を取ったか否か。
彼女は差し伸べられた手を振り払い続けた自分なのだ。だったら。

56: 2012/01/23(月) 02:42:24.90
さやか「うん…あれが絶望した私だっていうんならその闇を振り払うのも私だ!!」

光太郎「おっしゃ!じゃあ、行くぜ!!」

さやか「うん!」

光太郎は再び魔女に突撃し、さやかは力を集中する。光太郎が攻撃を避けながら魔女の周囲に札をばらまいていく。

光太郎「派手にいきますよっと!!」

札が一斉に起爆する。だがそれは魔女を攻撃するためではなく、単なる目くらましだ。

魔力の集中したサーベルが青い光を纏い、輝く。助走をつけて一気に飛び上がる。
青く輝く剣を振りかぶり、思いっきり振り下ろす。

さやか(もう大丈夫だよ、"さやか")

一閃。魔女の闇は払われた。

57: 2012/01/23(月) 02:45:17.63
光太郎「お疲れさん」

さやか「うん」

光太郎「あれがお前の言う通り、さやかが魔女になった姿だっていうならますますわからないよな」

さやか「…違う世界。違う世界の私じゃないかな」

光太郎「違う世界?」

さやか「さっきほむらって子がいたでしょ?」

かつてほむらがやってきた時間の繰り返し、その中で起こったらしい出来事を簡単に説明する。

光太郎「可能性はあるな。違う世界からの侵略に利用されてた城もあったからな」

光太郎が最初に関わった『七二三事件』はふみこの話では異世界からの介入による事件だったという話だ。

さやか「へえ~。じゃあこれも同じ世界からの侵略かな?」

光太郎「どうだろうな。なんかこの城は根本的に違う気がするんだよな」

馬鹿二人が頭を捻るが答えは見つからない。
そうしていると再びミュンヒハウゼンから光太郎に連絡が入る。

光太郎「おう、こっちは終わったぜ。…何!?城が落ち始めただって!?」

58: 2012/01/23(月) 02:48:47.57
マミのマンションに一人残ったまどかはやはり不安である。
ただ自分のために命を懸けて戦ってくれる友たちを待つだけというのはかなり堪える。

まどか「みんな、大丈夫だよね…?」

気を紛らわすためにテレビをつけてみるが、どこもあの城に関する特別報道ばかりである。
特に変化はないようだが、やはり関心は薄れることはないのだろう。

まどか「…」

これではやはり不安が増すだけだ。そう思い、テレビを消そうとしたとき、動きがあった。

城が落下を始めた。

そう、アナウンサーが慌てた調子で告げる。その事実にまどかは愕然とする。このままでは見滝原が潰されてしまう。
ほぼ反射的にまどかはマミのマンションから飛び出していた。

まどか(私がここにいるとみんな氏んじゃう!どこでもいい、遠いところへいかなきゃ!)

自分が狙わている以上、自分が逃げればあの城も追ってくるに違いない。
この町に守りたいものがあるのは魔法少女たちだけではなく、まどかも同じだ。
だが、町にあふれている魔女たちはそんなまどかを見逃さなかった。

まどか「魔女の結界…!!」

59: 2012/01/23(月) 02:51:08.55
溢れる使い魔たち。そして、いきなり目の間に魔女。
力を持たないまどかにとって絶体絶命の状況であるが、思う。

まどか(…ここで私が氏ねば、お城は見滝原に落ちなくて済むよね)

そう、心のどこかが考える。
使い魔がまどかを殺そうと襲いかかってくる。目を閉じて、氏への恐怖に涙を流しながらも覚悟を決める。
だが、その氏は訪れなかった。

杏子「なに泣いてんのさ、まどか」

酷く懐かしく感じられる声が聞こえ、まどかは目を開いた。
そこには当然のように、約束したそのように佐倉杏子が立っている。
なにも、変わらぬ。そのように。まどかを守ろうとするものが現れた。

QB「間に合ったようだね」

まどか「杏子ちゃん…QB…」

杏子「遅くなって悪かったね。っていうか、マミのマンションにいるんじゃなかったの」

まどか「そ、それは…」

杏子「あんた、生きることを諦めようとしてなかった?」

厳しい目つきで指摘される。上手く言葉にできないまどかの思いは杏子に見透かされている。

60: 2012/01/23(月) 02:54:14.49
杏子「あんたが氏ねばあの城は止まるかもしれないよ。でも、それじゃああの城に乗り込んでるさやか達はどうなるのさ?」

杏子「心配することなんてないよ。あたし達はあんたを守るために全力で戦うんだから」

まどか「ごめん…なさい…」

杏子「わかればよろしい」

QB「杏子、魔女や使い魔の数が多い。気を付けてね」

杏子「わかってるよ」

まどか「杏子ちゃん、頑張ってね!」

杏子「ありがとね。あたしの友達を狙うなんていい度胸だよね」

数では圧倒的に劣っているが、思いでは負けることはない。杏子はまどか達に結界を張って、槍を構える。

杏子「まどかには指一本触れさせないよ!!」

61: 2012/01/23(月) 02:58:54.42
城の中を魔女と魔法少女が進む。銃声を響かせ、砲撃を轟かせ、氏をばら撒きながら進軍を続ける。
ある程度、魔女との戦いになれたほむらでさえ苦戦する城の中の魔女と使い魔を隣の『魔女』は悠々と葬っていく。

ほむら(この人はどれだけ規格外なの…?)

今回の事件で出会ったこの女はほむらにも計り知れない。

ふみこ「余計なことを考える暇があったら一匹でも多く潰しなさい」

ほむら「…わかってます」

弾薬を補給し、使い魔を射頃する。久しぶりに銃を使うが腕は衰えていないようだ。

ふみこ「ふむ。ひと段落って所かしら」

あらかたの敵をなぎ倒し、周囲の気配を確認してから一息つく。

ふみこ「まさか、もうバテたんじゃないでしょうね?」

ほむら「いえ、大丈夫です」

ふみこ「ならいいけど。穢れだけは溜めこまないようにしなさい。隣で魔女になられると迷惑だから」

本物の魔女が何を言うかと思いながらほむらはソウルジェムを使い穢れを払う。

62: 2012/01/23(月) 03:02:27.84
ほむら「ふみこさんはなぜそこまで魔法少女や魔女に詳しいんですか?」

いい機会だからずっと疑問に思っていたことを尋ねた。QBとの繋がりと言い、彼女たちの言うただの魔術師とは思えない。

ふみこ「女には色々とあるのよ。あなたも大人になればわかるわ」

ほむら「もしかしてあなたは…」

ほむらが言葉を続けようとしたとき、周りの景色が変わった。

ほむら「これは!?」

ふみこ「ふうん、この城の中でも魔女の結界は発生するのね」

驚くほむらとは対照的にふみこは冷静に分析する。
結界が生まれたことにも驚いたが、ほむらをさらに驚かせたのはその結界の中だ。
見覚えのあるその景色はどうみても、荒廃した見滝原であった。

ふみこ「見滝原のようだけど…随分と荒れているわね」

ほむら「…」

ほむらの中で何度も繰り返した忌まわしい悪夢が蘇る。そして、その悪夢は現実にも現れる。

63: 2012/01/23(月) 03:05:06.60
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハ!!」

不快な笑い声が辺りに響き渡り、この空間の魔女が姿を見せた。

ほむら「ワルプルギスの夜…!!」

忘れたくても忘れられない、凶悪な魔女を再び目にするほむらは大きく心を乱した。

ふみこ「また懐かしいものを出してきたものね」

ほむら「え?」

ふみこ「さっさと迎撃するわよ。準備しなさい」

ほむら「そんなこと言われても、あの魔女は一筋縄じゃ行きません!あれはかなり強い魔女なんですよ!」

ふみこ「だから何?あれは敵よ。こちらの進軍を邪魔するのならとっとと掃滅するだけ」

ふみこ「それにあれはこの城に囚われ、劣化したまがい物。大したことはないわ」

本当に何でもないように淡々とほむらに説明する。だが、ふみこの言葉でほむらは冷静さを取り戻す。ふみこはいつの間に取り出したパンツァーファウストを構え放つ。

ほむら「まったく、なんて無茶苦茶な人なの…」

呆れながらもほむらもロケット砲を構え、放つ。この城に来る前にミュンヒハウゼンに大量に武器を用意してもらっている。

65: 2012/01/23(月) 03:08:12.49
何十発もの弾頭を浴びながらもワルプルギスの夜に応えた様子はない。その様子にふみこはため息をつき執事に命ずる。

ふみこ「ミュンヒハウゼン。あのでデカ物を焼き払え」

次の瞬間、ワルプルギスの夜に極大の光が降り注いだ。

ほむら「サテライトレーザー…」

ふむこ「いい女になればこのくらい簡単に用意できるわよ」

ほむら「多分、それはないと思います」

爆発の中から二人に向かって黒い触手が伸びてくる。あれで仕留められたとは思っていない二人は回避する。

ほむら「劣化していようが…悪夢は悪夢!夢に戻りなさい!!」

見滝原を模した結界の中を走り回りながらほむらはパンツァーファウストを放つ。
ふみこもふみこでワルプルギスの夜の攻撃を回避しながら攻撃を続ける。
だが、劣化しているとはいえワルプルギスの夜は強い。その力で操られたビルの破片がほむらを直撃する。

ほむら「きゃああああっ!!」

吹き飛ぶほむらの脳裏にあの戦いが思い出される。勝てない。混濁した意識の中でその思いが湧き上がる。
倒れたほむらに魔女の触手が襲いかかってくる。避けることは叶わず、ほむらは氏を覚悟した。
だが、その攻撃はほむらには届かない。ほむらが目を開けると青い光が彼女を守るように舞っていた。

66: 2012/01/23(月) 03:11:07.96
ほむら「これは…?」

ふみこ「かつて生きていて、遠い未来を夢見ている。その光は氏してもなおあなたを守る想いよ」

いつの間にかそばに来ていたふみこが解説する。それを受けて、ほむらはこの光を理解した。

ほむら「まどか…さやか…マミさん…杏子…」

この世界ではない。かつてほむらが諦め、見捨てた世界の仲間たち。彼女たちは今、ほむらを守ろうとしている。
ほむらはその想いがひどく嬉しく、そしてひどく悲しかった。

ふみこ「…暁美ほむら。あなたに魔法を教えてあげるわ」

ふみこは手をかざし、唱える。

――――偉大なる青にして青の王 純粋の炎ゆえに青く輝く最強の伝説
――――全ての力を従えし万物の調停者の御名において 青にして空色の我は万古の契約の履行を要請する
――――我は王の悲しみを和らげるために鍛えられし一振りの剣 ただの人より現れて 歌を教えられし一人の魔女
――――我は招聘する精霊の力 我は号する天空を砕く人の拳 我が拳は天の涙 我が拳は天の悲しみ
――――勅命によりて我は力の代行者として魔術を使役する

ふみこ「完成せよ!精霊手!!」

青い光がワルプルギスの夜を襲う。効果はある。だが、倒すまでには至らない。

67: 2012/01/23(月) 03:14:23.30
ふみこ「精霊手に耐えるなんて思っていたよりは丈夫だったようね」

ほむら「今のは…魔法…?」

ふみこ「魔法とは理解と約束よ。魔法を使うのに魔法少女になる必要などない」

ほむら「理解と約束…」

立ち上がり、天に手をかざす。魔女が見守る中でほむらは魔術師として魔法を使う。

――――偉大なる青にして青の王 純粋の炎ゆえに青く輝く最強の伝説
――――全ての力を従えし万物の調停者の御名において 青にして空色の教え子である我は万古の契約の履行を要請する
――――我は一人の少女の絶望を払うための一振りの剣 魔女により 歌を教えられし一人の魔法少女
――――我は招聘する精霊の力 我は号する天空を砕く人の拳 我が拳は天の涙 我が拳は天の悲しみ
――――勅命によりて我は力の代行者として魔術を使役する

ほむら「完成せよ!精霊手!!」

想いを乗せた青の一撃はワルプルギスの夜を貫く。凶悪な魔女は少女たちの想いによって再び退けられた。

68: 2012/01/23(月) 03:18:09.17
ふみこ「とりあえず及第点と言った所かしらね」

ほむら「はぁ…はぁ…」

ふみこ「その程度で疲れるなんて典雅さが足りないわよ」

ほむら「このくらい…なんてことはないわ。それよりも急ぎましょう。まどかを守るために」

ほむらの目的はそれだけだ。自分の疲れなど二の次だ。

ふみこ「上出来。さっさと進軍を続けるわよ」

ふみこ(それにしてもワルプルギスの夜を従えるほどの魔女か…。他世界の想いが現れる城…)

ふみこ(なるほど、そういうことね。この城がなんなのか理解できたわ。この子を鍛えるためにはおあつらえ向きね)

再び進軍を開始する。その後二人はミュンヒハウゼンから連絡を受け、城が落下し始めたことを知らされた。

69: 2012/01/23(月) 03:21:23.37
杏子「ちくしょう…どんだけいるのよ…」

すでにどれほどの魔女と使い魔を撃破したかわからない。ひたすら襲ってくる魔女を退ける杏子は限界が近づいていた。
だが、ここで退くわけにはいかない。彼女の後ろには守るべき友がいる。

まどか「杏子ちゃん!もういいから!」

杏子「よくないよ!あんたを守るって決めたんだ!もういいなんてことはない!」

槍を振るい、使い魔を倒す。一匹で多く倒しておく。自分が倒れるまで。

まどか「駄目…駄目だよ、杏子ちゃん!私なんかのために杏子ちゃんがそこまですることないよ!!」

杏子「私なんかって言うな!!」

まどか「…ッ!!」

杏子「さやかを説得する時にさ、一緒にあんたと駆けずり回って思ったんだ。あたしにもできることがあるって」

杏子「あんたはあたしの知る誰よりもも優しい子だ。まどかを見てるとマミと一緒にいたころの自分を思い出せた」

杏子「あの時まどかが救ったのはさやかだけじゃないんだ!あたしだってあんたに救われたんだよ!だからさ…私なんかって悲しくなることは言わないでよ…!」

戦友の告白。絶望しかけたさやかを説得するためにまどかは叫び続けた。だが、その叫びが杏子まで救っていたことにまどかは初めて知った。

まどか「杏子ちゃん…でも…でも…!!」

だからといって、杏子が自分のためにここまですることはない。杏子がまどかを大切に思うように、まどかも杏子を大切に思っている。

70: 2012/01/23(月) 03:26:00.18
杏子「まどかが気にする必要はないよ。あたしがやりたいからやるんだ!!」

杏子は己の魔力を高めていく。すべての敵を排除することは適わなくとも自爆すればまどかを逃がすくらいはできるはずだ。

杏子「あたしの大切なものはもう壊させない!!」

杏子が敵の中心に向かおうとしたとき、声が響き渡った。

ロジャー「ソォコマデダ!!」

まどか「え…?」

杏子「は…?」

ロジャー「天が呼ぶ!地が呼ぶ!魔法少女が呼ぶ!友を守ると声がするぅう!!」

ロジャー「セカーイ忍者!ロジャー・サスケ!見ッ参ッ!!」

金色の髪に青い目をした忍者が突如、戦場に乱入した。

71: 2012/01/23(月) 03:29:22.51
QB(彼は…)

ロジャー「少女達よ、無事で何よりでゴザル」

杏子「あんた、何者だよ…いや、名前はわかったけどさ…」

ロジャー「何、光太郎の知り合いでゴザルよ」

杏子「光太郎?」

QB「今回の事件に協力してもらっている探偵だよ」

杏子「探偵ねぇ…」

ロジャー「そんなことよりも、ここは拙者に任せられて、お主達は城へ向うでゴザル」

まどか「あのお城にですか…?」

ロジャー「お主を目指して落ちてくるのならばお主が城の中にいれば城が落ちる心配はゴザらん」

確かにロジャーの言うことは理屈としては成り立っている。しかし、一つ問題がある。

杏子「そう言われてもさ、あたしの力じゃあの城まで飛んでいけないよ」

ロジャー「心配めさるな!」

そういってロジャーは忍者刀を握りしめて構えをとる。

ロジャー「世界忍法!次元断!!」

72: 2012/01/23(月) 03:31:36.16
空間が切り裂かれ、ここではない場所への道が拓かれる。

杏子「なんだよこれ!?魔法か!?」

ロジャー「世界忍法でゴザル!さあ、ここを通ればあの城にたどり着ける!」

忍者が二人の少女を促す。

杏子「…あんたは一人で大丈夫なのか?」

ロジャー「ふっ!世界忍法!影分身!!」

何かの印を組み、ロジャーが叫ぶとその姿がいくつにも増殖した。

まどか「すごい…」

ロジャーは杏子を見ながら言葉を投げかける。

ロジャー「友情は、信頼の大地に立つ勇気の樹に咲く、一輪の大花。お主にはやるべきことがあるのであろう」

ロジャー「お主の戦は友のために。一心不乱の友情のために!」

杏子「…感謝するよ、世界忍者。あたしはあたしの友を守るためにここはあんたに任せる」

杏子「だからあたしは安心してやらせてもらう。迷いも衝いもなくただ一心不乱の友情のために戦うことを」

ロジャー「いい返事だ」

杏子が小さく微笑むと、ロジャーが小さく頷く。

73: 2012/01/23(月) 03:34:18.81
杏子「まどか、行くよ!」

まどか「うん!」

杏子に手を取られ裂かれた空間に向かうまどかに、世界忍者は声をかける。

ロジャー「何ものにも穢されぬ守るべき姫よ!お主には友情を貴ぶ幻想の踊り手がついておる!何も心配することはない!」

まどか「はい!ロジャーさん、ありがとうございます!」

二人の少女はゲートへと潜り、戦いの場へと向かっていった。

74: 2012/01/23(月) 03:39:21.58
二人がいなくなり、裂かれた空間も元に戻ったのを確認するとロジャーは分身を解除する。
その隣に白い獣が寄ってきた。

QB「まさかセプテントリオンが介入してくるとは思わなかったよ。いいのかい?組織は今回の件に介入する気はないだろうに」

ロジャー「この件に関しては静観して場合によっては介入しとのご達しさ。つまり、僕の裁量で判断できる」

QB「だとしても、表に出てくることもないと思うけど?」

ロジャー「セプテントリオンには『インキュベーターには関わるな』って教えもあるからね」

はるか太古の昔。もはやそれを知るものいないずっと昔のカビの生えた話だ。
人類に万物の根源であるリューンを制御してオーマを使役する事をもたらしたのは宇宙人であった。
その宇宙人はすでにその術を失ってしまったが、人類はその技を継承し続けた。
それと同時に語り継がれたセプテントリオンの不文律。

QB「ならば僕は余計に疑問に感じるんだけど?」

ロジャー「あの少女たちが氏ぬとコウが悲しむ。それにさっきの彼女を見ていると力を貸してあげたくなってね」

ロイ・バウマンという少年がいた。彼はある国で一人のサムライと出会い、惚れこんだ。
それから彼の人生は大馬鹿野郎のために、一心不乱の友情のために存在することとなる。

QB「やっぱり人間はわけがわからないよ」

ロジャー「わからなくていいよ、インキュベーター。それより僕は君がなぜあの少女達に固執するのかが知りたいけどね」

インキュベーターを知る者が抱く疑問にQBは回答を示す。

75: 2012/01/23(月) 03:42:12.42
QB「…ただ、彼女たちがこれからどうなるのか見届けるだけだよ」

ロジャー「何故?」

QB「特に理由はないよ」

インキュベーターの回答に、ロジャーは小さく噴出してしまった。

QB「…?何がおかしいんだい?」

ロジャー「特に理由はないでゴザルよ」

QB「わけがわからないよ」

ロジャー「もし理由が解る時が来ればお主は先ほどの答えに理由が付くのでゴザろうな」

ロジャー「お主のその回答が得られただけでこの戦に参じた価値があるというもでゴザル」

笑いながらロジャーは式神を呼び出す。

ロジャー「暗黒舞踏ワガメちゃん!HI!」

ロジャー・サスケの戦いが始まる。

76: 2012/01/23(月) 03:45:04.59
小夜は魔女の結界に囚われていた。床一面にシンプルな黒と白。
その世界で小夜は敵と対峙していた。

小夜(動きが速い…)

敵はこの城に囚われた魂だということが壬生谷の巫女である小夜にはわかった。
相手の外見からおそらく彼女は魔法少女なのだろう。
眼帯をした黒い魔法少女の素早い攻撃に小夜は苦戦を強いられていた。

キリカ「魔法少女でもないのにここまで戦える人間がいるなんて知らなかったな」

小夜「私には戦うことしかできませんから…」

キリカ「なるほど。その物言い、まるで兵器みたいだね」

小夜「兵器で居続けることが出来たのなら、どれだけ幸せだったことか…」

心を持った魔導兵器は大切な者の心を守るために戦い続けることを誓った。
この戦いも、あの優しい少女を氏なせるようなことがあればあの男はきっと悲しむ。だから小夜は戦うのだ。

キリカ「きみも誰かに無限に尽くしているんだね。わかるよその生き方」

キリカは無邪気に笑う。だが、その笑顔はすぐに凶暴な嗤いにかわる。

キリカ「でも!私のやることは変わらない!私はあなたを故人にするからね!」

高らかに宣言し、両手に魔法の爪を生み出す。それに応え、小夜も榊を構える。
二人がぶつかろうとした時、小夜の後方の空間が裂けた。

77: 2012/01/23(月) 03:48:47.61
杏子「よっと!」

まどか「きゃっ!」

その裂け目からまどかと杏子が現れる。

小夜「鹿目さん!?」

まどか「小夜さん!よかった…無事で…」

小夜「何故あなたがこの城に?」

まどか「お城の落下を止めるために、ロジャーさんって言う人が導いてくれたんです」

小夜「そうですか…ロジャーさんが…」

光太郎の親友にして、小夜にとっては光太郎を守る同志でもある。向こうは小夜に対して色々と複雑ではあるが。
城が落下し始めたというのは小夜には初耳であった。恐らく、ロジャーはまどかを狙う性質上、まどかが城内部にいれば落下は阻止できると考えたのであろう。

小夜「そちらの方は…」

杏子「佐倉杏子だ」

魔法少女たちの話の中に出てきたもう一人のまどかを守る魔法少女。

小夜「結城小夜と申します」

78: 2012/01/23(月) 03:53:18.72
キリカ「自己紹介は終わったかい?」

敵の魔法少女の言葉に小夜と杏子はまどかを守るように身構える。
まどかに防御の結界を施し、杏子は敵を見据える。

杏子「魔女…っていうより、魔法少女だね」

小夜「はい。彼女はこの城に呪縛された霊です。本体はすでに亡くなっているはずです」

杏子「幽霊ってことか…」

小夜「そう思ってもらって構いません」

キリカ「酷いね。この世界の私はまだ生きているよ、佐倉杏子」

小夜(この世界の…?)

杏子「あたしを知っているの?」

キリカ「直接会うのは二度目だけどね。いや、一度目かな」

杏子「何をわけのわからないことを言ってるのさ?」

キリカ「この城に使われるのは気に食わないけどさ。私が尽くすのは彼女だけなんだから」

キリカ「でも、鹿目まどかを殺せば織莉子も喜んでくれるからね」

まどか「織莉子…?」

79: 2012/01/23(月) 03:57:15.16
キリカ「ついでに佐倉杏子にもリベンジできるし、この城にも少しは恩を感じるな。でも、できればこの城も頃したいけど」

こちらに話しかけるというよりは独白のようにキリカはしゃべり続ける。
そして、突然仕掛けてきた。

杏子「速い!?」

杏子はとっさにガードしたものの、不意打ちに今の速度では反応できたのが奇跡のようだった。

キリカ「どうすれば、この城を殺せるかな。あ、でもこの城を倒しちゃったら私も消えるのか」

小夜と杏子は二人がかりだが、キリカはその上を行く。爪の数を変えながら小夜を切り裂き、杏子を叩き伏せる。

杏子「二人がかりなのに歯が立たないなんて…」

小夜「彼女、かなりの実力者のようですね」

二人は知らないがこの魔法少女、呉キリカは魔法少女だった期間は短い。だが、その短い期間の中でキリカは多くの魔法少女を殺害してきたのだ。
キリカの魔法少女、というよりは戦士としての才能は突出している。

杏子「それにしても、あいつスピードにムラがない?」

小夜「それは私も思っていました」

キリカの攻撃速度は一定ではない。最初はフェイントかと思っていたが、どうやらそういうわけでもなさそうだ。

80: 2012/01/23(月) 04:00:16.03
キリカ「あまり時間をかけても仕方ないし。もう飽きた」

杏子と小夜を正面に見据えキリカが爪を増やす。

キリカ「一手で十手だ。散ね」

傷を負った二人にキリカが二人に襲いかかる。

まどか「杏子ちゃん!小夜さん!」

まどかが早口で叫び声をあげる。

小夜「くっ…ヤタ!」

杏子「このぉっ!」

小夜は式神を使い、杏子は魔法で防御する。だが、キリカの攻撃は止まらない。

キリカ「次次々次次っ!」

杏子「きゃあああっ!!」

小夜「佐倉さん!」

ついに防御が破られ、杏子は攻撃を受け吹き飛ばされる。

81: 2012/01/23(月) 04:03:18.62
キリカ「あれ?一人しか駄目だったか。まあ、ささいなことだ。すぐにきみも倒す」

キリカはそう宣言する。しかし、小夜もただ防御していたわけではない。キリカの魔法はすでに看破した。

小夜「あなたのその速度は私たちの速度を低下させることによって相対的に加速しているのですね」

キリカ「正解。よく気が付いたね」

小夜「その爪の本数と反比例していましたし、何より術式の外にいる鹿目さんの声が早く聞こえていました」

キリカ「まあ、バレたところで関係ないけどね」

小夜「正体が分かれば対抗はできます」

再びキリカが小夜に切りかかる。小夜は小さく何かを唱え始める。

キリカ「諦めたのかい!?刻むよ!」

キリカが小夜に斬りかかる。
しかし、今度は小夜は防御せずに回避する。まるであらかじめキリカの攻撃を読んでいたように。

82: 2012/01/23(月) 04:14:10.04
キリカは驚き小夜に背後を取られたが、すぐに立て直す。

キリカ「さすが巫女さんだね。予知能力までもってるんだ」

小夜(壬生谷の技を一瞬で看破された…?)

キリカ「残念だけど、予知能力のことなら私はよく知っているよ。彼女のことならいくらでも知ってるし!いくらでも知れる!」

キリカの言葉はいまいち理解できないが、どうやら彼女には予知能力を持った知り合いがいて対応されたということのようだ。
再びキリカの攻撃が始まる。今度は通常速度で。小夜が短期予知の詠唱を行おうとした瞬間、キリカの速度が上がった。

小夜(しまっ…!)

キリカ「じゃあね、ばいばい」

詠唱状態で無防備な小夜もまた、キリカの攻撃を受け、倒れた。

83: 2012/01/23(月) 04:18:52.87
まどか「小夜さん!」

小夜がまどかの隣まで飛ばされてくる。どうやら気を失ってしまっているようだ。
まどかを守っていた結界もすでに失われていることから杏子の状態も深刻だ。

キリカ「さて、きみを守るものは何もなくなったね」

キリカが静かに近づいてくる。

キリカ「ここには恩人も、千歳ゆまも、暁美ほむらもいない。大人しく故人になりなよ」

怖い。だが、まどかはここで逃げるわけにはいかない。逃げられないからではない。
ここで逃げてはいけないのだ。

まどか「あなたは、私を殺せば二人を助けてくれますか?」

そのまどかの言葉にキリカは驚いた。キリカは直接まどかと接したことはなかったので、ただの少女だと思っていた。
だが、目の前にいるのは自分のすべてを投げ出して誰かを守ろうとしている。だからこそ、織莉子は危機を覚えたのだろう。

キリカ「きみが氏ねばこの城の目的は達成される。だから、あの二人に手を出す必要は私にはないよ」

その言葉に、まどかは決意する。諦めではない。みんなは自分を守ってくれるように、自分のできることで仲間を守る。
馬鹿なやり方だけど、今のまどかにはこれが限界である。

まどか「…約束だよ」

まどかは静かに目を閉じた。

84: 2012/01/23(月) 04:24:09.40
まどかとキリカの会話は意識を取り戻した杏子にも届いていた。

杏子(あの馬鹿…何言ってるんだよ…)

まどかを守るために杏子たちはここにいるのだ。それなのに。

杏子(それなのに、あたしは何をやっているんだろ…)

キリカに敗北し、まどかの氏をただ見届けようとしている。また失うのか。
かつて、尊敬していた父を、好きだった母親を、大切だった妹を失った時のように。
そんな結末を佐倉杏子は望まない。

杏子「うああああああああああああああっ!!」

力を振り絞り、まどかに近づくキリカに突撃する。しかし、あまりにも正直すぎる攻撃はキリカには届かない。

まどか「杏子ちゃん!?」

キリカ「まだ動けたのか。折角、鹿目まどかがきみを助けようとしていたのにね」

杏子「そんな助けはいらない!あたしがまどかを助けるんだ!」

キリカ「彼女にそこまで尽くすんだ…でも、もうきみには無理だよ!!」

再び弾き飛ばされる。
杏子は声を上げ、槍を支えにして立ち上がろうとするが体に力が入らない。

85: 2012/01/23(月) 04:27:47.04
まどか「杏子ちゃん!もういいよ!もういいから…」

キリカ「なんだ。もう限界だったのか。じゃあ、そこで動かないでよね。今から鹿目まどかを頃すから」

すでに動けない杏子をキリカは見限る。まどかに向き直り、爪を振り上げる。

キリカ「ひゅっ―!」

何のためらいもなく爪を振り下ろす。
そして、キリカはまどかの榊によって貫かれた。

キリカ「え…?」

まどか?「あなたの魂のあるべき場所へ帰ってください」

まどかの姿が揺らぎ、小夜に変わる。

キリカ「幻覚…?これは魔法…?佐倉杏子なのか…?」

杏子「あんたがいつのあたしを知ってるのか知らないけど、その魔法は知らなかったみたいだね」

少し回復した杏子は頭を押さえながらまどかの隣に立つ。
杏子にとってその魔法はかつて自分のすべてを壊した忌むべき魔法。使用するだけで強烈なトラウマに襲われる。
同時に、いつか再び仲間に滅びをもたらすのではないかという恐怖。

杏子(でも、そのいつかはいまじゃない)

この魔法で守れるものがあるのなら使う。いま使わなければならないから使う。ただそれだけのことだ。
そして佐倉杏子は過去に別れを告げる。

87: 2012/01/23(月) 04:34:20.03
キリカ「あははははっ!なんでまた私達の邪魔をするんだ!?」

キリカ「きみ達は何をしているのか理解しているのか!?」

キリカ「その女はあれになるんだ!あれを解き放ってはいけないんだ!」

己の傷も顧みず、まるで何かが乗り移ったかのように叫ぶキリカ。
そんなキリカの言葉を小夜は一蹴する。

小夜「だからどうした!!希望はだからどうしたといい続けるところから始まります!」

小夜「最初から絶望しか見てないあなた達には希望は決して見えません!」

だからどうした。かつて、この世界に雨宿りしていた友人に教わった合言葉。好きな男のために世界を超えて走り抜けていった豪華絢爛な女。

まどか「私は魔法少女にはなりません。あなたがどこから来たのかはわからないけれど、言っておきます」

まどか「あなたの絶望は杞憂だったと」

杏子「そういうことだよ。あんたには悪いけど、あたしたちは明日を生きさせてもらう」

88: 2012/01/23(月) 04:38:35.77
小夜「ヤタ」

小夜は青く光るカラスを召喚する。

小夜「悪鬼退散!!」

青いカラスが黒い魔法少女を切り裂いた。キリカが光に包まれる。

キリカ「これは…そうか、私は解放されるんだね。感謝するよ」

キリカ「…最後に教えてあげる。この城の目的と私の目的は全く同じだ」

キリカ(織莉子…これできみのもとへ行けるよ)

そう言い残し、呉キリカはこの城から解放された。

杏子「魔女の目的が魔法少女と同じ…?」

小夜と杏子は簡単な回復を施し、キリカの言葉を考える。キリカの話を総合すると、彼女の目的は最悪の魔女となるまどかの抹殺。
それと全く同じということであればこの城の目的もまたそういうことだ。

89: 2012/01/23(月) 04:41:56.28
まどか「じゃあ、このお城は私を魔法少女じゃなくて魔女にしないために…?」

杏子「そういうことになるだろうな」

魔女が魔女を生まないために行動する。ある程度魔女を知る杏子とまどかにはその行動は理解できない。

小夜「この城からは強い意志が感じられます。もしかすると、この城の主は魔法少女としての意識が残っているのかもしれません」

まどか「そっか…魔法少女として魔女を倒すってことなら…」

杏子「最悪の魔女を生まないためにまどかを…ってことか」

一つの結論に達し、とりあえず話を切り上げる。

小夜「力の流れが変わり始めました。どうやら終わりが近いようです。急ぎましょう」

小夜の言葉にまどかと杏子は頷いた。

90: 2012/01/23(月) 04:44:21.97
巴マミはベテラン魔法少女と聞いていたが、まさかこれほどとは意外であった。
最初に出会った美樹さやかとはかなり実力に開きがある。

マミ「っ!」

マスケット銃を繰りながら戦う姿はさながら舞踏のようであった。
踊るように戦いながらもその一連の動作は洗練され、隙を見せない。すべてが無駄なく敵を倒すための一手になっている。

日向(最近の中学生は末恐ろしいねぇ…)

ワルプルギスの夜の騒動の中でマミは一度己の慢心によって氏にかけたことがある。後輩を危険な目にあわせ、ほむらがいなければどうなっていたかわからない。
自信を砕かれ戦うこともままならなかったが後輩たちによってここを救われた。
そこからはベテランゆえに、戦い方がされに磨かれていった。結果、魔法少女の中でマミは最強と言えるほどに実力を身に着けた。

日向「とりあえず、一服できそうだな」

マミ「ええ。それにしれも、結城さんや日向さんのような人たちがいたなんて知りませんでした」

日向「知らない方が幸せな世界だよ。魔法少女だって似たようなものだろう?」

マミ「…そうですね」

こんな血なまぐさい世界にわざわざ自ら飛び込んでくるのは本物の馬鹿だけで十分だ。

91: 2012/01/23(月) 04:47:14.55
アララ「随分と仲がいいのね」

気が付けばいつの間にか、一人の女が目の前にいた。

日向「あんたは…」

アララ「久しぶりね、凛々しい殿方。今回は女連れなのね」

日向「そういうんじゃないさ。しかし、また会えるとは思わなかったな」

マミ「お知り合いですか?」

どうやら日向はこの妖艶な女と知り合いらしい。

日向「昔、ちょっとな」

探偵の言い方に思春期の中学生は少し顔を赤らめる。

日向「そういう関係じゃない」

アララ「残念ね。でも、また会えて嬉しいわよ」

日向「敵と味方じゃなければもっと嬉しかったんだけどね」

嘆息するように言い、次に目つきを変えて質問する。

92: 2012/01/23(月) 04:50:31.66
日向「なぜあんたがここにいる?ねじれた城であんたはこの世界から解放されたはずだ」

アララ「今の私はこの城と同じ。この世界に残されたアララ・クランの欠片をかき集めて作られたただの残骸に過ぎないわ」

マミ「あなたはこの城の目的を知っているのですか?たった一人の少女を頃すためにこんな大がかりなことを!」

アララ「可愛い子ね。おねーさんの服の下がとうなってるか、知りたい?」

マミ「なっ!?」

日向「…あんたそっちもいける口だったのか」

アララ「可愛い若い子は私のものよ」

日向「あんまり中学生をからかって欲しくないんだが」

クスクスと笑うアララの言葉にマミは顔を赤くする。

93: 2012/01/23(月) 04:53:25.38
アララ「この城は優しい城。貴方達が守っているのは、最悪の絶望よ」

日向「悪いが、だからどうしたという感じだな。問題なのは事件の解決、以上、終わり。細かいことを気にしていたら探偵はやっていけない」

鹿目まどかがどういう存在であれ、日向は探偵として志筑仁美の依頼を受けたのだ。ならばプロとして全力を尽くすまでだ。

アララ「だったら、言葉は不要ね」

日向「残念だよ、前から思っていたがあんたみたいな人好きだよ」

アララ「私が氏んだら抱き締めてね。あなたが氏んだら抱き締めるわ」

日向「俺でよければ」

マミ「ええっと…戦っていいのかしら…?」

目の前でやり取りされる大人の会話にマミはただ戸惑うだけであった。

日向「気にしなさんな。折角の再会だが、急がせてもらう」

アララ「なら、始めましょうか。命を賭けた氏の舞踏を。三人で踊りましょう」

アララが鎌を構え、日向が雷を従え、マミがマスケット銃を召喚する。命を懸けたダンスが始まった。

94: 2012/01/23(月) 04:59:01.21
アララの光弾が降り注ぐ。回避しながら、マミは射撃で応戦する。しかし、アララは難なく避け続ける。

マミ「それなら…!」

アララが日向に気を向けた一瞬を狙い、拘束魔法を発動する。

アララ「甘いわ!」

生み出したリボンは呆気なく切り裂かれた。その瞬間、今度は日向が仕掛けるがやはりアララには届かない。

日向「くっ…」

アララ「どうせなら脱いでくれてもいいのよ?」

日向「ご婦人の前で肌をさらすのは趣味じゃない」

余裕を見せるが実際のところはかなり厳しい。確かに欠片というだけあって以前のアララ程の力はないようだがそれでも強い。
さすがはふみこの知り合いといったところだろうか。

アララ「さあ…避けきってみなさいよ!!」

先ほどよりも激しい弾幕が襲いかかる。それらをかいくぐり、爆炎に紛れる。マミは一気に距離を詰め、アララをマスケット銃でぶん殴った。

95: 2012/01/23(月) 05:02:15.29
マミ「届いたっ!」

アララ「痛いじゃない…」

だが、アララは吹き飛ばされることもなく逆にマミの腕を捕らえた。

日向「マミ!」

マミ「離してください!」

アララ「心配しないで。痛くはないから」

そう言ってアララはマミに唇を重ねた。

少女と女の口づけを見て、日向はやられたと感じた。あの女の得意技は精神寄生。つまり。

マミ「…」

日向「悪趣味だな…」

アララ「女二人が踊るのよ。男子の本懐じゃないかしら?」

冗談ではない。ただでさえ有効な手段がなかったのに二対一のアドバンテージすら奪われる。
しかも、ここからは操られたマミを助けだすことも必要となる。

日向「ちょいと厳しいが、格好つけさせてもらいますか!」

アララ「いい返事ね。がっかりさせないでね」

女二人と男の舞踏が再び始まった。

96: 2012/01/23(月) 05:06:13.27
暗い空間の中にマミはいた。誰もいない、一人ぼっちの闇の中で声がする。

「マミ…」

二人の男女が目の前に現れる。

マミ「パパ…ママ…!」

交通事故で失った両親。あの時、魔法少女となったマミは生き残ったが二人は亡くなった。
その二人が今、目の前にいる。

「長い間、一人ぼっちにしてごめんね」

「がんばったな、マミ」

その言葉が懐かしくて、嬉しくて。マミは両親に抱きつき泣きじゃくった。

マミ「私、ずっと、ずっと会いたかった!」

「泣かないで、マミ。これから私たちとここで暮らそう」

「これからはずっと一緒よ。」

マミ「パパとママとずっと一緒…」

一人きりのマンション。魔法少女としての過酷な戦い。思い出せば辛いことばかりだ。
優しい両親と一緒に一緒にいられるなら、これが夢でもなんでもいい。もう、一人ではない。

97: 2012/01/23(月) 05:09:12.10
『それでいいの?』

――それでいい

『本当にあなたは一人だったの?』

――違う。私には一緒にいたい仲間がいる

『あなたは夢の方が幸せなの?』

マミ「そんなわけないじゃない!!」

心から叫ぶ。両親から離れ、泣き笑いを浮かべながらマスケット銃を召喚する。

「マミ…?」

マミ「あのね、私の居場所はここじゃない」

マミ「さようなら、パパ、ママ。会えて嬉しかったわ」

両親の姿が消え、アララ・クランの姿が浮かび上がる。彼女の顔は言っている。

『それでいいのよ』

マミはマスケット銃の引き金を引いた。

98: 2012/01/23(月) 05:12:05.70
日向「くっ…」

血を流し、片膝をつく日向。

アララ「あら、もう終わりなの?」

アララを攻撃しようとすれば、そこにマミが割って入る。マミの動きを止めようとすればアララが仕掛けてくる。
マミは操られているとはいえ二人の連携は並大抵のものではなかった。

日向(どうするかね…)

胸元のお守りに手をやる。ここはプライドを捨ててでもマミだけは助けるべきだ。
日向が覚悟を決め、ライターを取り出した時、地面から生えたリボンがアララを拘束する。

アララ「強引ね」

マミ「感謝します。あなたのおかげで幸せな悪夢を見ることができました」

アララ「…そう。よかったわね」

マミは大砲のような銃を召喚し、アララに向ける。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

直撃を受けたアララ。しかし、損傷した体が修復していく。

アララ「残念だけど、この程度では私は倒せないわよ」

99: 2012/01/23(月) 05:20:07.00
日向「安心しろ。あんたは解放してやる」

日向は構え、雷球を放つ。雷球の中には一本のシャープペンシル。日向のお守りの一つ、フラれた女の置き土産だ。
青い光を帯びたシャープペンシルが、アララを貫いた。

アララ「これは…群青の…また、あの子に助けられるわけね」

日向「一つ聞かせてくれ。この城はなんなんだ?」

アララ「この城は救いの城。あらゆる時間を超えて魂を集めるとても優しい城」

アララ「そうね…根本的な部分では最初の城に近いのかしらね。私が言えるのはこんなところね」

日向「ありがとうよ。…抱きしめてもいいかい?」

アララ「…ほんとに抱き締めるつもりだったのね。でも、私はこっちでいいわ」

そういって消えゆくアララはマミを抱きしめた。

マミ「…ありがとうございます。おかげで大切なモノがなんなのかわかりました」

アララ「頑張ってね、可愛い踊り子さん」

日向「魔女に何か伝えることはあるかい?」

アララ「この前、別れは済ませたわ」

これ以上は無粋。そう、顔に浮かべて今度こそアララ・クランはこの世界から消えた。

100: 2012/01/23(月) 05:23:13.96
探偵は考える。アララのくれたヒントとこの城にまつわるキーワード。
最初の城はなんだったか。表向きは古き神々による神降ろし。そして裏には、異世界からの侵略。
魔法少女と魔女。鹿目まどか。その危険性。そして、アララの言う根本ということは異世界からの侵略。

日向「…一つ確認したい。あのほむらって子は確か時間を繰り返していたんだったな?」

マミ「暁美さんですか…?ええ、彼女は鹿目さんを守るためだけに何度も時間を巻き戻していたそうです」

マミ「それがどうかしたんですか?」

日向「なんてこった…」

―――だとすれば、この城はひどく優しく、残酷な城である。

101: 2012/01/23(月) 05:26:40.15
ふみことほむらは最奥へと続く扉の前にたどり着いた。

ほむら「この奥みたいですね…」

その時、どたどたと騒がしい足音が聞こえてくる。

光太郎「ふみこたん!」

さやか「ほむら、無事だったんだね」

ほむらは再会を喜ぶ友の様子になにか違和感を感じる。

ほむら「あなた、何かあったの?」

さやか「ん、あとで話すよ」

日向「お嬢ちゃん達、無事で何よりだな」

日向とマミも追いついてくる。

マミ「後は結城さんだけですね」

人数を確認するマミにふみこが厳しい視線を浴びせる。

マミ「な、なんですか…?」

ふみこ「玄乃丈、これはどういうことかしら?」

日向「一戦、やりあっただけだ。だからその子をあんまり睨んでやるな」

102: 2012/01/23(月) 05:29:12.60
杏子「おーい!さやかー!ほむらー!マミー!」

さやか「杏子…?って、なんでまどかもいるの!?」

小夜と一緒に現れたのは地上に置いてきたはずのまどかと杏子だった。

まどか「お城が落下してるって聞いていてもたっても居られなくって…」

ほむら「どうやってここまで来たのよ?」

杏子「世界忍者ってやつに送ってもらった」

光太郎「ロイの奴かよ…」

ふみこ(セプテントリオンが首を突っ込んでくるとはね…)

103: 2012/01/23(月) 05:31:23.07
さやか「あ、小夜さん怪我してるね。ちょっと、動かないで」

さやかが魔法で小夜の傷を癒す。

小夜「ありがとうございます。あなたの術はとても優しいですね」

まっすぐな笑顔で言われて、さやかは照れくさくなった。だが、小夜はすぐに表情を引き締める。

小夜「それで、この奥に城の主がいるのですね」

マミ「そうみたいです」

その言葉に日向とふみこは視線をそらす。そして、扉が自動的に開く。

ほむら「向こうも待ちくたびれているようね」

光太郎「OKOK…望むところだ!!事件の首謀者はぶっとばす!」

一行は城の中央へと足を進めた。

104: 2012/01/23(月) 05:34:43.59
城の玉座には一人の少女が座っていた。その少女を魔法少女達はよく知っている。
城の主である魔法少女の姿をした少女、"鹿目まどか"がそこにいた。

まどか「わ、私…!?」

光太郎「どういうことだよ…!?」

城を支配する魔女、マドカは微笑みながら口を開く。

マドカ「久しぶりだね。ほむらちゃん」

ほむら「…あなたは、どの"まどか"なのかしら?」

マドカ「そうだね。特にどれってことはないよ。私の中にはいろいろな"まどか"がいるから」

皆が動揺する中、ふみこが一歩踏み出し話しかける。

ふみこ「それで、あなたの目的は鹿目まどかの魔女化の阻止でいいのかしら」

マドカ「ふうん、そこまで気が付いているんだね。そうだよ、私が生きたままじゃいつ世界が滅ぶかわからないもん」

そのマドカの言葉はまどかも心の奥底を代弁している。間違いない。あれは"まどか"だ。

小夜「あの鹿目さんはあしきゆめのようですね」

光太郎「どうすりゃいいんだ…?」

日向「俺がいて、お前がいるんだ。だったら事件を解決するだけだ」

巫女と二人の探偵は覚悟を決める。必要なのはやるかやらないかだけだ。

106: 2012/01/23(月) 05:37:47.85
マミ「あれは、私達の知る鹿目さんなのね…」

杏子「ちくしょう…やらなきゃだめなのかよ…」

ほむら「…」

守るはずの少女が敵。勝っても負けても失われるのはまどか。
一人の魔法少女が前に出る。

さやか「あたしはこんなやり方間違ってると思うし、認められない」

杏子「相手がまどかでもかよ?」

さやか「まどかだからだよ。友達が間違ってるんだ。だったら、それを正してあげるのも友達だよ」

さやかには迷いはない。そんなさやかを見て、マドカは嬉しそうに、寂しそうに、懐かしそうに笑った。
マドカが手を掲げる。瞬間、大量の魔女と使い魔が王の間に召喚される。
手にもった弓を構える。マドカの後方に大量の光の矢が召喚される。

マドカ「さあ、私を守って見せてよ」

108: 2012/01/23(月) 05:40:40.96
無数の魔女や使い魔、光の矢がまどかを狙い、襲いかかってくる。
光太郎が拳を振るい、小夜が祝詞を詠みあげ、日向が雷を繰る。ふみことほむらが銃声を響かせ、マミがマスケット銃を放ち、杏子が槍を振るう。
さやかだけは魔女をを振り切り、矢の雨を潜り抜け一直線にマドカに駆けていく。そのさやかの攻撃をマドカは弓で守る。

マドカ「この城でさやかちゃんは自分の魔女と会ったんだよね?」

それには答えず、さやかは剣撃を放ち続ける。

マドカ「この世界の私も魔女になったらあれよりももっとひどいことになるんだよ」

防御するだけで反撃しないマドカの言葉に反応せず、ひたすらさやかは剣を振り続ける。
まどかにはあのマドカがなぜ戦わないのか痛いほど解る。自分が彼女の立場でもさやかを攻撃することはない。

そしてそのことはさやか自身もわかっている。この城においてさやかが弱いと感じなかったのは自分の魔女だけ。
そのほかの魔女も、使い魔も決してさやかを傷つけることはなかった。つまり、マドカはさやかを傷つけるつもりはない。
だが、そんな親友にさやかは攻撃し続ける。涙を浮かべながら。まどかを守るために。

マドカ「ねえ、私に守る価値ってあるの?」

返答せず、さやかの剣がまどかの胸に突き立てられた。

その光景を見た誰もが心を痛めると同時に、終わりを感じた。
だが、絶望はまだ終わらない。

マドカ「あ…あ…ああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーー!!」

マドカの絶叫が響き渡る。その叫びに呼応するようにマドカの姿が変わっていく。

109: 2012/01/23(月) 05:43:12.55
マミ「これは…魔女…?」

木の枝か、木の根か。それらが集まったような姿をした魔女。暁美ほむらは知っている。それは紛れもなく、鹿目まどかの絶望した最悪の魔女である。
その魔女の根のような触手が呆然とするさやかを捕らえる。

さやか「え!?」

杏子「さやか!!」

そのまま、さやかを包み込む。何者にも犯されぬよう、守るように。

さやかを取り込んだ後、最悪の魔女は明確な行動を起こさない。だが、一同の体に変化が表れる。

日向「くっ…これは…!?」

全身から力が抜ける。まるで魂を吸い取られているかのように。

ふみこ「どうやら、これがあの魔女の力というわけね…」

杏子「どういうことだよ…!?」

ほむら「あの魔女は魂を奪うのよ…」

小夜「魂を…」

繰り返す時間の中でほむらが得た情報だ。どうやら本物の"まどかの魔女"よりも力は劣るようだが、それでもかなりの強力な魔女である。

誰もがその力の前にひれ伏そうとしている中、一人の馬鹿だけは抗う。

110: 2012/01/23(月) 05:46:21.07
光太郎「うおおおおおおおおおっ!!」

雄叫びを上げながら立ち上がり、大声を張り上げる。

光太郎「女の子一人頃すことで世界を救うだって!?迷惑千万だこの野郎!!」

光太郎「よく聞け!お前の選択は二つに一つ!A.ぶっとばされてさやかを返すか、B.さやかを返してぶっとばされるかだ!」

その偉大なる馬鹿の輝きは誰もに伝染する。あまりにも馬鹿馬鹿しく、騒々しく在りたいと思うくらいに。

111: 2012/01/23(月) 05:49:40.76
魔女の触手をマミと杏子は迎撃する。魔女の力はまどかに及ぶことはない。だから、直接的な手段でまどかを狙ってくる。
マミは大量のマスケット銃とリボンを用いて、杏子は槍を用いて触手を薙ぎ払う。

杏子「ちっ!さすがに魔力が足りないな」

マミ「そうね…」

この城での戦いはかなり厳しいものであった。マミも杏子も動きが鈍り始めた。
特に杏子はキリカ戦において、負傷し、さらに己に封じた幻覚の魔法を行使している。そこに魔女によって魂にもダメージを受け、限界は近い。

杏子「しまっ!」

体が言うことを聞かず、体制を崩す。そこを、魔女は見逃さない。
だが、杏子への攻撃はマミがすべて受け止める。

マミ「うあ…っ!」

魔女の攻撃を受けてうめき声をあげるが、マミは倒れない。

杏子「何やってんだよ!あたしのことは自分のことだけに集中してろ!」

マミ「嫌よ!」

かつて、マミには一緒に手を取り合って戦った相棒ともいえる魔法少女がいた。その魔法少女は大切なモノを失い、マミの元を去った。
マミはその魔法少女を救うことができなかった。だが、新たな仲間たちのおかげで再び手を取り合うことができた。

マミ「今度こそ、あなたの手を離さない!!」

112: 2012/01/23(月) 05:52:57.61
杏子の手を掴み、しっかりと握りしめる。マミももう、大切なモノ失うのは御免だ。
魔力が底をつき始めたマミに女が語りかける。

『あなたに歌を教えてあげる』

マミ「…!!」

杏子「マミさん?」

マミ「佐倉さん、私に力をかして!!」

マミが杏子にも歌を伝える。杏子にはなんなのかわからないが、マミの言葉を信じて力を託す。
二人の女は声を合わせて詠う。

―――赤よ赤 万物の中にありてその始祖たる美の根幹
―――奔流たるその巡りにして大河の一滴 赤にして薄紅の代行者たる我らは美の極北を体現する
―――万系に届く我が連なりによりて我は世の理への反逆を我に許す

杏子「完成せよ!」

マミ「純潔の鎖!!」

幾条もの赤い光が魔女に向けて伸びていった。

113: 2012/01/23(月) 05:55:24.45
機嫌が悪い。会ってさほど時間は経っていないが、ほむらはふみこの機嫌がある程度わかるようになっていた。
何が彼女の機嫌を損ねたのかは分からないが、恐らくはマミと杏子が絶技を使用したことに関係あるのだろう。

ふみこ「気に入らないわね…」

ふみこ「ほむら、絶技戦準備。あの女の匂いのする小娘どもだけに好き勝手を許すな」

命じられるが、絶技の使用をほむらは躊躇う。あれは"まどか"なのだ。かつて自分が救えなかった。その過去に拳を向けることにほむらは迷う。
そんなほむらを見透かし、ふみこは小さく息を吐く。そして親猫が子猫に接するように優しく、しかし凛として問いかける。

ふみこ「私の可愛い教え子。あなたのやりたいことは?」

ほむら「まどかを守ること…」

ふみこ「あなたのやるべきことは?」

ほむら「まどかを守ること!」

ふみこ「やりたいこととやるべきことが一致しているのに何を迷うことがある!」

ほむら(そうだ…あの時まどかを撃ったのは誰?あの時まどかを見捨てたのは誰?)

ほむら(いまは私はこの世界のまどかを守る、ただそれだけよ。いまさら過去を倒すくらいで迷うことはない!!)

ほむらはその罪は背負い続ける。周りに集まるかつての友たちは言う。気にするな、と。
手を掲げ、優しい魔女に教わった歌を詠う。

ほむら「完成せよ!精霊手!!」

ほむらは青い輝きを過去に叩き込んだ。

114: 2012/01/23(月) 05:58:18.93
少女たちの放つ絶技を見て、日向は笑みを浮かべる。

日向「若いっていうのはいいねえ。まっすぐに前を向いて走っている」

日向「お前さんも、いい加減顔を上げないか?」

日向はまどかに語りかける。まどかは自分が魔女になった姿からずっと目を背け続けている。俯き、涙を流しながら。

日向「あの子たちにとってお前さんは太陽だ。お前さんがそんな顔をしているとあの子たちは悲しむ」

ある少女は日向に言った。この手に太陽をつかみたかったのだと。日向のことを私の太陽だと。
光太郎が日向達にとって太陽であるように、まどかはあの少女たちを照らす太陽だ。

まどか「でも…私は、昔から何もできないし…いつも守られてばっかりで…」

日向「今まで何もできなかったからと言って、これからもそうだとは限らない」

日向「俺は一人の馬鹿に教えられた。大切なのは今だとな」

日向「後ろを振り向く奴は前を向いて走るやつには追いつけない。お前さんは一人立ち止まるのかい?」

日向の問いに、まどかは涙を浮かべた顔をあげて答える。

まどか「私は…みんなといたい!さやかちゃんと!ほむらちゃんと!マミさんと!杏子ちゃんと!」

まどか「仁美ちゃんも!ママも!パパも!タツヤも!一緒に!」

まどか「私は太陽なりたい!絶望なんか吹き飛ばせるくらい輝きをもった太陽に!」

115: 2012/01/23(月) 06:00:06.30
日向「それでいい。ま、太陽ならあそこで寝坊している親友を起こしてやりな」

まどか「はい!」

微笑む日向にまどかは涙の拭い、微笑みを返す。その微笑みは日向にこの少女の守るために一肌脱ごうと思わせるのに十分だった。
愛用のライターを取り出し、開く。

―――我は白き手の乙女に冀う それは損得を抜いて成立する聖なる契約
―――白にして白銀の我は万古の契約を履行する 我は日に向かいて月を測る狼
―――ただ狼より現れて歌を教えられし一匹狼 勅命によりて我は力の代行者として振り上げたる牙を使役する

日向『完成せよ!弱者を守る万民の剣!』

人狼である日向の姿が人から狼へと変化する。

まどか「日向さん…?」

日向『俺は人狼の一族でね。驚いたかい?』

まどか「ええっと…可愛いワンちゃんですね」

日向『…狼だ』

これだから平成生まれは。

116: 2012/01/23(月) 06:03:20.84
光太郎はさやかの元へ一直線に駆け抜けていく。正面からの攻撃はすべて叩き落としながら。
その他の攻撃はすべて彼の式神、結城小夜が防いでいく。いままでの巫女姿とは違い、着物姿で光太郎に寄り添い戦う。
その姿はかつての光太郎の式神と融合した名残である。

光太郎「おおおおおっ!邪魔すんじゃねえよ!」

魔女に近づくにつれ、光太郎への攻撃は激しさを増していく。だから光太郎は式神に命じる。

光太郎「小夜!!」

言葉はそれだけでいい。光太郎の望むことを理解し、小夜は口上を述べる。

―――万物の源にしてその集合 全ての光の王たる我が父 白の白に 白にして白亜の我はお願い奉る
―――蘇ったこの数分に力を 今代は愛を追うことを
―――万能精霊集結 リューン総量31万 再編成開始 陣形:光鴉陣

小夜「完成せよ!百倍光鴉陣!!」

無数の青いカラスが表れ、光太郎の進む道の障害を一掃する。
光太郎がさらに加速していく。そしてたどり着く。
魔女の体をかき分け、さやかの姿を確認する。そして、手を差し出し、叫ぶ。

光太郎「掴まれ――!!」

117: 2012/01/23(月) 06:06:41.70
暗闇の中でさやかは眠っている。ここは居心地がいい。優しく自分を包み込んでくれる。
ずっとここに居たいと願えるくらいに。

―――…ゃん

声が聞こえる。慣れ親しんだ、嬉しくなる声が。
それと共に騒々しい足音をたてて何者かが近づいてくる。

―――…かちゃん

さやか(もう…朝…?)

ぼんやりとする頭で耳を澄まし、目を開く。今度ははっきり聞こえる。夜明けを告げる足音とともに。

まどか「さやかちゃん!!」

さやかの前に手が差し伸べられる。まるで太陽が差し伸べているかのように。

光太郎「掴まれ――!!」

さやかは、太陽に手をのばした。

119: 2012/01/23(月) 06:09:52.34
光太郎がさやかを引っ張り出して、後退する。まどかのそばまで来て、さやかを横たえる。

まどか「さやかちゃん!!よかった…」

まどかがさやかに抱きつく。

さやか「聞こえてたよ…まどかの声…」

そういってさやかは再び目を閉じた。

まどか「さやかちゃん!!」

ふみこ「気を失っただけよ」

さやかから巨大な魔女へと視線を移す。まだ、事件は終わっていない。
魔女を絶技や魔法で攻撃をするが、決め手に欠ける。
ふみこは何かを考え込み、そして口を開く。

ふみこ「小夜、光太郎の力を使って弓を出しなさい」

小夜「弓…ですか?」

疑問に思ったが、ふみこの言うとおり小夜は自信に流れ込む光太郎の力を使い弓を召喚する。
ふみこはその弓をまどかに差し出す。

ふみこ「鹿目まどか、あなたが決着をつけなさい」

120: 2012/01/23(月) 06:12:21.36
まどか「私…が…?」

ふみこ「これはあなたにしかできないことよ」

まどか「でも、私こんなの使ったことありません」

突然のふみこの言葉に戸惑うまどかに光太郎が言う。

光太郎「難しく考えなくていいぜ。まどっちが魔法少女知ってから、何を想ったのかそれを乗せればいいんだ」

小夜「まどっち…?」

小夜が訝ったが、気にせず光太郎はまどかに笑顔を見せる。
光太郎に頷き、まどかは立ち上がる。

小夜「それは夜が暗ければ暗いほど。闇が深ければ深いほど。燦然と輝く一条の光」

小夜「魔女よ。あなたの絶望を払う希望はたった今生まれました」

弓を構え、まどかは目を閉じ、想う。

121: 2012/01/23(月) 06:15:14.60
魔法少女と出会い、気が付いたらまどかには大切な仲間がいた。さやか、ほむら、マミ、杏子。
彼女たちの喜び、悲しみ、それらをまどかは見てきた。その度に非力な自分が嫌だと思った。
でも、この城で知ることができた。力なんて関係ない。やらなければならないからやるのだ。

目を開き、魔女と化した自分を見る。
彼女の想いが痛いほどにわかる。しかし、それはそれだ。

まどか「あなたが何を想って絶望したかはわからない!でも、それはこの世界には関係ない!」

まどか「この世界に絶望なんていらない!私はみんなと未来を手に入れる!」

まどか「私の世界はもう救われている!あなたの絶望は私が払います!!」

弓を引き絞る。

まどか「―――ハッピーエンドは返してもらいます!!」

未来を描く希望は、明日へと走り出した。

122: 2012/01/23(月) 06:18:00.36
その光景を暁美ほむらは酷く懐かしく感じる。繰りかえす時間の中で見た光景だ。
彼女の親友の放つ矢は、破壊をまき散らす魔女を倒す希望を乗せ、同時に最悪の魔女を生み出す絶望を乗せていた。
だが、今放たれた一撃は絶望なんかない。騒々しい明日を呼ぶための希望だけを乗せている。

かつての魔女を知るほむらは、静かに別れを告げる。

ほむら「さようなら…まどか…」



―――希望が絶望を貫いた。

123: 2012/01/23(月) 06:21:34.89
ロジャー「これは…」

魔女と使い魔が消えていく。どうやら、城の主が討たれたようだ。
式神を戻し、忍者刀を鞘へと納める。

QB「どうやら、やったみたいだね」

ロジャー「そのようだな。拙者の役割もここまででゴザル」

QB「玖珂光太郎には会わないのかい?」

ロジャー「今は必要ない」

ロジャー・サスケとしてやることが終われば、ロイ・バウマンは組織に戻るだけだ。

QB「また会えるかい?」

ロジャー「…もう会わないことを祈るよ。セプテントリオンにとってインキュベーターは禁忌だからね」

世界忍者と魔女、使い魔が消えた場所には一匹の獣だけが残された。

124: 2012/01/23(月) 06:24:19.64
身創痍の杏子はマミに支えられながら、呟く。

杏子「終わった…のか?」

マミ「そうみたいね…」

終わった。その言葉を聞いたまどかは全身から力が抜け、倒れそうになる。
それを気が付いたさやかとほむらが支える。

ほむら「全く…あなたは締まらないわね」

さやか「がんばったね、まどか」

まどか「ありがとう。さやかちゃん、ほむらちゃん」

笑顔。そんな少女達をみて、魔術師たちも笑みを浮かべる。

126: 2012/01/23(月) 06:27:56.21
光太郎「一件落着、だな…って何か揺れてないか!?」

さやか「地震!?」

杏子「馬鹿。この城は空に浮かんでるんだぞ!」

いつの間にか人間に戻った日向にはこの現象に覚えがある。

日向「主を失った城は崩れ落ちるだけだ」

ほむら「つまり?」

ふみこ「とっとと脱出するわよ」

小夜「行きましょう」

一同は未来へと走り出した。

128: 2012/01/23(月) 06:30:26.78
魔女の城事件において、H&K探偵事務所はあるものを得た。

日向「赤字だ…」

主に見滝原への交通費を含む諸経費が割と高くついた。しかし、今回の依頼者である志筑仁美は良家の娘であってもまだ中学生である。
仁美はすべて支払うといったが、中学生から何万もの報酬をもらうことは光太郎はもちろんのこと、日向のプライドも許さなかった。
結果、一般的な中学生の小遣いでも支払える程度の報酬を受け取った。

日向(家賃の支払いはどうするかね…)

とりあえず美人で優しい大家の元に光太郎をやって、機嫌を取るしかない。
その光太郎が日向に尋ねる。

光太郎「なあ、所長。あの子たちってやっぱ普通の人間には戻れないのか?」

それは魔法少女を知った光太郎がずっと抱えている疑問だ。魔法少女の運命は魔女になるか、戦って氏ぬかしかない絶望しかない生き方だ。

日向「魔女さんの話によればそうらしい。精々、魔女にならないように先延ばしして生き残るくらいだ」

光太郎「そんなの…あんまりだろ」

129: 2012/01/23(月) 06:33:22.74
光太郎の言うとおりではあるが、日向はあの少女たちに関してはあまり心配していない。
ふみこが色々と教えているようだし、何よりもあの子たちにはまどかが付いている。そう簡単に絶望することはない。そう確信している。

日向「そう思うんだったら、あの子たちが困っていたら助けてやれ。それが年上の責務だ」

光太郎「そっか、そうだな」

そうだ。少なくとも光太郎はあの少女達よりも年長者なのだ。馬鹿だが、正しい道を示してやることくらいはできる。

光太郎「よっし!おっさん、なんか仕事はないのか!?」

日向「所長と呼べ。いつも通りペット捜しの依頼がある」

資料を受け取った光太郎は事務所を飛び出していった。残された日向も別の案件に取り掛かる。
とりあえず探偵は足掻いてみることにした。家賃のために。

130: 2012/01/23(月) 06:36:05.98
初めて白い獣と出会ったテラスで小夜とふみこはお茶を飲んでいる。

小夜「結局、あの城はどういったものだったのでしょう?」

明確な答えはわからない。異世界のまどかが大元だという話だが、それだけでは釈然としない。
あの後も独自に情報を集めたふみこが解説する。

ふみこ「この世界からずっと遠い世界で一人の少女がすべての魔女を消すことを願い、人でなくなったわ」

ふみこ「でもどれほどの存在になろうと所詮、元は人間。あまりにも膨大な存在の力が一部あふれ出た」

ふみこ「そして本来、決して交わるはずのないこの世界に流れ着き、最悪の魔女となる鹿目まどかの生存を知った」

小夜「そのために魔女を消すという願いが歪んだ形で表れた、というわけですか」

本来はとても優しい願いだったはずなのに、とても残酷な願いに変貌してしまったものだ。

ふみこ「さて、それじゃああなたに新しいバイトを紹介するわよ」

小夜「なんでそうなるんですか!?ちゃんとお屋敷のことやや悪霊払いの手伝いをしているではありませんか!」

光太郎のそばにいるために小夜はふみこの屋敷に居候している。世間知らずで一般的な金銭の稼ぎ方がうまくできない小夜は肉体労働によって家賃としている。
もっとも、政府とかかわりの強い壬生谷の巫女である小夜の生活は神霊庁が保証してくれるはずである。
そんなことを小夜は知らず、ふみこが面白そうだからと言う理由で現在のようなことになっている。

ふみこ「もうすぐ、この屋敷にも使用人が増えるんだもの。負担が減るのだからそのくらい当然でしょ」

小夜「使用人が増える…?」

ふみこ「ええ。とりあえず、来年二人程。再来年になればさらに三人ほど…ね」

131: 2012/01/23(月) 06:38:30.07
佐倉杏子には最近納得できないことがある。

杏子「なあ、本当に東京の高校に行くのかよ?」

マミ「ええ」

マミは東京の高校に進学を決めた。表向きはよりレベルの高い学校へということだが、裏の目的は魔術を習うことだ。
魔女の城で歌を教えられ、魔法少女の力以外で魔女を倒せることを知った。
ならば、ソウルジェムの穢れを抑えるためにもその力を使いこなす。そのためにマミはふみこのもとで修行することを決めた。

杏子「別にこっちから通えばいいじゃんか?」

マミ「そういうわけにもいかないでしょ。って言うかなんでそんなに文句を言うのかしら?」

杏子「だって…マミがいないと寂しいじゃんか」

132: 2012/01/23(月) 06:41:06.23
杏子の言葉にマミは笑顔になる。また、自分は彼女に必要とされていることがわかったからだ。
だが、彼女の誤解を解いておく。

マミ「寂しいって何を言ってるのよ。あなたも一緒に来るのよ」

杏子「へ…?なんであたしまで!?」

マミ「佐倉さんは私と一緒に行くのは嫌かしら?」

にこにこと笑顔で言われると杏子は嫌とは言えない。

杏子「わかったよ!あたしもマミと一緒に行くよ!」

マミ「そういってもらえてよかったわ」

まだ文句を言いたい杏子であったが、より笑顔になったマミを見て諦めた。
マミが時計を見て立ち上がる。

マミ「さてと、そろそろみんなが来るからお茶の準備しましょうか」

杏子「手伝うよ…マミさん」

二人はキッチンへと向かう。
一人なんかじゃない。だから、もう何も怖くない。

133: 2012/01/23(月) 06:43:47.15
学校の屋上で運動場を見ながら暁美ほむらは考えていた。魔女の城で出会ったふみこという女性。
聞いてもはぐらかすだろうが、恐らく彼女は魔法少女だったのだろう。ということは。

ほむら「魂を肉体に戻す方法は存在する…」

ふみこが聞いて答えてくれるかはわからないが、だがほむらはその術を探すことに決めた。己のために。仲間のために。
その時、背後に気配を感じた。

QB「やあ、まどかたちは一緒じゃないのかい?」

ほむら「今更何しに来たのかしら?まさか、まだまどかに付きまとう気なの?」

QB「まどかはもう魔法少女にはならないよ」

鹿目まどかはオーマ使いとなる道を選んだ。仲間を守るために。
ならば彼女にとって魔法少女となる道はもはや不要だ。

134: 2012/01/23(月) 06:45:40.86
ほむら「なら何故お前はまだここにいるの?」

QB「魔法少女でオーマ使いなんてかなり希少な例だからね。しばらくは君たちを観察させてもらうよ」

ほむら「本当にそれだけが目的かしら?」

QB「もちろん、本当だよ」

この生物は嘘をつかない。ならば今の時点ではそれが事実なのだろう。

ほむら「ああ、そういえばお前に渡すものがあったんだわ」

ほむらは魔法少女に変身し、盾から山のようなグリーフシードを取り出す。
あの城で戦った時に手に入れたグリーフシードだ。それをいっぺんにQBへと放り投げる。
機敏な動きで回収していくが、いかんせん数が多すぎる。
QBの頭にコツン、とぶつかる。それを見てほむらは言う。

ほむら「典雅さが足りないわよ」

微笑むほむらを見て、感情のないインキュベーターは彼女の将来が心配になった。

135: 2012/01/23(月) 06:47:09.80
用事があるといっていたほむらを残し、まどかとさやかはマミのマンションへと向かっていた。

さやか「しっかし、仁美の奴めちゃくちゃ泣いてたね」

今日、東京から戻ってきた仁美が登校してきた。そしてまどかの姿をみるなり号泣した。

まどか「それだけ私のことを心配してくれてたんだよ」

だからこそ彼女は探偵たちに自分を守ることを依頼したのだ。
さやかはふと事件を思い出し、口を開く。

さやか「あの城でさ、あたしの魔女と会ったんだ」

まどか「さやかちゃんの…?」

さやか「あの魔女は城に生み出されたんじゃなくてきっとどこかから連れてこられたんだと思う」

魔女になっても、自分のそばに居続けてくれる親友。あの城でそれが余計にわかった。
もしワルプルギスの夜をめぐる事件で自分がまどか達の手取らなければああなっていたのだろう。

136: 2012/01/23(月) 06:49:44.80
さやか「どれだけまどかがあたしを想ってくれてるか、よくわかったよ」

さやか「だから改めて言わせて。あたしに手を差し伸べてくれてありがとう」

そういうさやかにまどかは微笑んで言う。

まどか「だったら私も言わせて。いつもそばで守ってくれてありがとう」

感謝を伝えあい、自然と手をつなぐ。
彼女たちはこれからも共に彼女たちの描く未来へと走っていく。

―――それが世界の選択である




          まどか「悪をぶっとばす青年探偵?」 了

140: 2012/01/23(月) 07:59:59.14
おもしろかった、まどかと式神とか俺得過ぎる
早朝から乙

このままガンパレとか書いてもいいのよ?

引用元: まどか「悪をぶっとばす青年探偵?」