1: 2013/10/10(木) 18:41:07.61
男「一目惚れなんだ!」
後輩「見た目しか見てないんですよね? なおさら嫌です」
男「と、友達からで」
後輩「妥協する程度の想いだったんですね。なら告白しなきゃいいのに」
男「やっぱり付き合」
後輩「やっぱり? 私の意見に左右されるほど、先輩の意志は弱いんですか」
男「……出直してくる」
後輩「女々しくて、キモいのでやめてください」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1381398067/
2: 2013/10/10(木) 18:44:44.56
男「おっす」
後輩「待ち伏せですか。恋心をこじらせましたか」
男「だって、後輩は校内じゃ話しかけても、無視するじゃないか」
後輩「一つ上の知り合いでもない異性が話しかけてきたら、普通は無視をしますよね?」
男「そ、それはそうだが……」
後輩「待ち伏せ」
男「え」
後輩「キモいのでやめてください」
3: 2013/10/10(木) 18:45:17.04
男「やあやあ」
後輩「待ち伏せはやめろ、と言ったはずなんですが」
男「事前に言っておいただろ」
後輩「教室の前で叫んでた人がいましたね。そうえば、先輩によく似ていた気がします」
男「よく見てるじゃないか」
後輩「異常者がいたら、視線を向けるのが健常者ですよ」
男「酷い言いぐさだ……」
後輩「あれ、やめてくださいね。キモい上に迷惑ですから」
4: 2013/10/10(木) 18:45:53.38
男「付き合ってくれ!」
後輩「なぜですか」
男「お、聞いてくれるのか。後輩と三度話して分かったが、君の性格は君の見た目の可愛さを、ふいにするほどのものではないと判断して」
後輩「いえ、するな、と言った告白をまたしてきた理由のことです」
男「意外と話してくれるから、イケるかなって」
後輩「都合の良い解釈はやめてくれませんか。自意識過剰でキモいです」
男「……出直すよ」
後輩「いい加減にしてほしいです」
5: 2013/10/10(木) 18:46:25.27
男「今日は理由を聞きにきた」
後輩「なんのですか」
男「俺の告白を受けてくれない理由だ」
後輩「キモいから」
男「さ、最初は嫌なだけだったはずだ! 嫌だった理由を教えてくれ」
後輩「……私、頭が悪い人は嫌いなんですよ」
男「え」
後輩「うちの学校、学年ごとに順位が張り出されますよね?」
男「お、おう。五十位以上だけだけど」
後輩「それに先輩の名前が載ってるの、見たことないです」
男「……で、出直してくる」
後輩「出直せますかね」
6: 2013/10/10(木) 18:46:53.79
男「友、勉強を教えてくれ」
友「えぇ、どんな風の吹き回しだよ」
男「後輩と付き合うためなんだよ。力を貸してくれよ!」
友「後輩……ああ、あの性格が悪いので有名な」
男「馬鹿! 可愛くて有名なんだ」
友「変なのに入れ込んだなぁ」
男「見た目が良い女の子に魅かれるのは、当然だ」
友「限度があると思うけどな」
7: 2013/10/10(木) 18:47:26.18
「やあ」
後輩「またき――ん」
友「後輩さんだよね。初めまして、僕は」
後輩「初めまして。では、急ぎますので」
友「え、え、ちょっと……行っちゃった。男、よく話しかけれてるなぁ」
8: 2013/10/10(木) 18:47:56.06
友「昨日、後輩さんと会ったんだけど」
男「てめえ、俺の恋路を邪魔するつもりか!」
友「いやいや、ありゃ邪魔できないよ。話しかけても、会話をしてくれないんだもの」
男「そうか、それはよかった……。友、もう後輩に話しかけるなよな。お前は頭がいいから、なんかの間違いでカップルになるかもしれん」
友「僕は付き合う人を、顔だけで選んだりしないよ」
男「理解できない考えだな」
友「お互い様だよ」
9: 2013/10/10(木) 18:48:33.57
男「次のテスト、楽しみにしていると良い!」
後輩「……久々に現れたかと思ったら、なんですか急に」
男「ともかくだ、次のテストが終われば、俺は後輩にまた告白しにくるからな!」
後輩「やめてください。迷惑です」
男「するって言ってるだろ!」
後輩「だから、やめてと言ってます」
10: 2013/10/10(木) 18:49:05.28
男「な、なぜだ……」
友「総合六十二位。まあ、突然の勉強じゃ、こんなもんだよね」
男「おい、てめえ、上がったけどこれじゃダメなんだよ!」
友「僕に言われてもなぁ。実際に上がってるわけだし、文句を言われても」
男「あ、うん、すまん。ありがとな」
友「いいよ、いいよ。僕も若干上がったし」
男「ちなみに、何位だ?」
友「三十二位」
男「[ピーーー]」
友「理不尽だなぁ」
後輩「……今日も、こない」
後輩「諦めたのかな。……当然か。いつもそうだったし」
後輩「帰ろ」
11: 2013/10/10(木) 18:49:46.40
男「おい、おい、これで合ってるか」
友「合ってるよ。というか、もう一人でやってなよ。僕は疲れたよ」
男「冷たいことを言うなよ。温かいものを奢ってやるから」
友「もう夏前だよ。ほしいわけないだろ」
12: 2013/10/10(木) 18:50:21.45
後輩「……なんですか。道を塞がないでください」
男「期末の結果、見てくれただろ!」
後輩「あー、そうですね。見ましたよ」
男「四十二位だ。どうだ、文句はないだろ。馬鹿じゃないだろ!?」
後輩「そうですね。見直しましたよ、先輩」
男「なら」
後輩「でも、私は普段、二十位前後の成績なんですよ」
男「え」
後輩「あと、頭が良いだけで、貧相な体つきの人も嫌なんですよね」
男「は」
後輩「私に執着し過ぎるの、キモいですよ。それでは」
13: 2013/10/10(木) 18:50:56.51
友「まだ諦めてないの」
男「もちろんだ。俺には後輩以外にはいない!」
友「よくやるもんだよ」
男「あと、今日からトレーニングも始めるから、お前と遊ぶ時間もなくなるから」
友「……ふーん」
男「俺はやるぜ、友!」
友「もうやり切ってるきもするけどね」
14: 2013/10/10(木) 18:51:29.72
友「後輩さん」
後輩「はい? どこかでお会いしましたか」
友「男の友達だよ。ちょっと聞きたいんだけど」
後輩「……なんですか」
友「ちょっと、やり過ぎじゃないかな。男の気持ちは真剣だって、分かってるはずだよね?」
後輩「なんのことですか」
友「君みたいに可愛い子は、たぶん異性の嫌な部分ばかりを見てきたはずだ」
後輩「……だから?」
友「男はそうじゃないよ。長い付き合いだから、僕だって知ってる」
後輩「そうですか。情報提供、ありがとうございます。それでは」
友「……なんだかなぁ」
15: 2013/10/10(木) 18:51:58.50
男「走る、俺は今日、風になる!」
男「……知り合いに見つかると、なんか恥ずかしいな」
男「よし、帽子とサングラスをつけていこう。これで誰にも俺だと分からないはずだ!」
男「行くぜ!」
タッタッタッタッタ
後輩「ん、あれは……」
16: 2013/10/10(木) 18:52:31.15
友「なあ、夏休みの話なんだけど」
男「悪いが、予定は埋まってる」
友「なんとなく分かるけど、言ってみてくれない?」
男「トレーニングと勉強だ! 筋肉をつけ、後輩の順位を抜く!」
友「……まあ、いいけど。時々構ってくれよな」
後輩「夏休み、か」
後輩「……べつに、会うような関係じゃないし」
後輩「いつも通り、いつも通り」
17: 2013/10/10(木) 18:53:02.94
男「時はきた!」
友「男、なんかガッチリしたね」
男「自重、有酸素、プロテイン……やれることは全てやった」
友「結局、夏休みは一度も遊ばなかったな」
男「それはすまないと思ってる。また遊ぼうぜ!」
友「確かにいつでも遊べるけどよぉ」
男「ともかく、肉体改造と勉強はやり果たした……」
男「この夏休み明けテストが勝負のときだ!」
友「男、別人みたいだなぁ」
18: 2013/10/10(木) 18:53:50.58
後輩「――先輩、ですか」
男「ああ、久しぶりだな。テストの結果、知ってるよな」
後輩「ええ、一応。一桁順位とは、驚きましたよ」
男「そして……この体を見よ!」バサッ
後輩「え、わ、わ、なにを急に!?」
男「この体を貧相とは言わせないぜ! 腹筋割れてるぞ、バッキバキだぞ!」
後輩「分かりました。分かったので服を着てください!」
男「ちぇ、なんだよ」モゾモゾ
後輩「……正直、感心しました。ここまでしてくる人は、初めてでしたから」
男「ん、なんの話? それより告白したいんだけど」
後輩「そりよりって……まあ、したければすれば良いんじゃないですか」
男「よしきた! 後輩、俺と付き合ってくれ!」
後輩「嫌です」
男「え」
19: 2013/10/10(木) 18:54:23.09
友「男が三年生になったら、か」
男「とうとう時間だけだ。いやぁ、ここまで長かった!」
友「時間だけって、明らかにはぐらかされるじゃない」
男「なにを言ってる。後輩みたいな可愛い子が、嘘を吐くわけないだろ」
友「盲目を過ぎて盲信してるね」
男「目が良くなきゃ、後輩を見れないからな! ほら、あそこによく見え――」
友「あれ、後輩さんの隣にいるの、同学年のイケメンだね」
男「……帰る」
友「え、久々の遊びなのに?」
男「察してくれ」
友「ちょ、ちょっと!?」
20: 2013/10/10(木) 18:54:49.66
男(そうだ、体や頭ならなんとかなる)
男(けど、顔は無理だ。俺が面食いだから、よくわかる)
男(そうか……後輩は俺の顔も好みじゃなかったのか)
男(これはさすがに、諦めるしかないか)
男「ちきしょう……!」
21: 2013/10/10(木) 18:55:18.34
友「後輩さん」
後輩「友さん、でしたね。なにか用ですか」
友「男のことなんだけどさ、本当に三年生になったら、あいつと付き合うの?」
後輩「……それは」
友「もしその気がないなら、もう振ってやってほしい」
後輩「え、そ、そんなことは」
友「イケメンと君が歩いているのを見てから、男が意気消沈気味なんだよ」
後輩「イケメン……? 誰ですか、それ」
友「え」
22: 2013/10/10(木) 18:55:49.75
友「いやぁ、もう三年生だね」
男「……そうだな」
友「えっと、後輩さんは?」
男「……はっはっは、何度も言ってるだろ? 諦めたよ」
友「嘘吐かないでよ。もう何ヶ月その状態なんだよ」
男「しつこいぞ。諦めたんだ」
友「それにしちゃ、体も頭もなまらないね?」
男「……し、習慣だ」
友「はぁ」
23: 2013/10/10(木) 18:56:28.16
後輩「友さん」
友「うわっ! 後輩さん」
後輩「なんですか、その反応。人を化け物かなにかみたいに」
友「いや、だって後輩さんに話しけられるとは、ついぞ思わず」
後輩「私をなんだと思ってるんですか。……先輩のことなんですけど」
友「男の?」
後輩「はい。あの、えっと、あの人は……まだ、私を好きですか」
友「あー……うん、好きだろうね」
後輩「そ、そうですか。ふぅん」
友「でも、諦めたって言ってるよ」
後輩「はぁ!?」
24: 2013/10/10(木) 18:57:20.65
後輩「な、なぜですか。もしかして、私に愛想を」
友「違う、違う。男はなんか勘違いをしてるっていうか」
後輩「……もしかして、前の友さんのお話に出た、イケメンとかいう」
友「まあ、おおむねそんな感じ」
後輩「そうですか」
友「ああ、僕は勘違いを解く気はないよ。男を助けることはするけど、後輩さんを助ける気はないし」
後輩「私を……」
友「うん。だって、男は告白する気がないみたいだし、僕は君が嫌いだもの」
後輩「当然、ですね」
友「親友にあれだけ無茶させればね、そりゃ嫌いだよ。……まあ、後輩さんが何かするなら、邪魔はしないさ」
後輩「――今、先輩はどこに?」
友「先に帰るって言ってたから、家に向かってると思うよ。この道をまっすぐだね」
後輩「ありがとうございます!」
友「……言わなきゃ良かったかな」
25: 2013/10/10(木) 18:57:50.29
男(告白、か。……やっぱり整形は無理かな)
男「はぁ」
後輩「先輩!」
男「ぎゃ!」
後輩「なんですか、先輩までそんな反応で」
男「いやいや、いきなり大声出されたら驚くわ」
男「……ん、なんで後輩がここに?」
後輩「私は」
「告白されにきました」
26: 2013/10/10(木) 18:58:52.12
男「告白、ん、あー、それはな」
後輩「なんですか、早くしてください。するなと言っても、あれだけしてきたじゃないですか」
男「悪いけど、俺はイケメンには勝てないよ。体も頭も、努力はするけど顔を変えるのは、な」
男「情けない話だけど、俺は君のためなら何でもできるわけじゃない」
男「面食いだからこそ、自分の見た目に、人一倍愛着があるんだ。……別にナルシストじゃないぞ?」
後輩「さっきから顔顔と、なんの話ですか」
男「え、でも」
27: 2013/10/10(木) 18:59:28.50
後輩「先輩は私の性格や過去など、どうでも良いキモい面食いでしょうけど、私は違うんですよ」
後輩「私と付き合うために、無茶苦茶を叶えるために努力して、その姿を何度も見せてきて」
後輩「好きにさせるだけして、勝手に身を引くような人とは、違うんです」
後輩「好きなんですよ。高飛車で、男性不信で、口の悪い、自分勝手な私に、あそこまで努力できる先輩が」
後輩「顔なんて関係なく、好きになったんです!」
後輩「……だから、告白してください。もう、先輩は三年生でしょう」
28: 2013/10/10(木) 19:00:07.39
男「――そうだな。約束だもんな」
後輩「はい。言ってしまったものは、仕方ないんです」
男「後輩、一目惚れだ。君の顔が好きだ」
男「そして、毒舌で尊大で自分勝手なお前が好きだ」
男「俺と付き合ってくれ!」
29: 2013/10/10(木) 19:00:49.65
「嫌ですけど」
「――私も先輩が好きです。渋々ですが、お受けします」
終わり
30: 2013/10/10(木) 19:02:27.01
初めてのオリジナルでした
読んでくれてあざました。
蛇足ですが、イケメンは後輩に付きまとっていただけで、後輩はイケメンを気にも留めてません
31: 2013/10/10(木) 19:04:54.35
おもしろかった 乙
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