1: 2010/09/26(日) 23:18:00.71
律「なんだよ薮から棒に」

梓「だから唯先輩に抱きつかれると、なんかムカつくんですよ」

律「せっかく二人で銭湯に来ているというのに、まったく……」

梓「いいじゃないですか。お湯につかってたら、なんだか喋りたくなったんですから」

4: 2010/09/26(日) 23:21:10.48
律「なんで唯に抱きつかれるとムカつくんだよ?」

梓「知りませんよ。だから『なんか』ムカつくって言ったんです」

律「ほほう。つまり梓は自分でも、どうしてムカつくのかわからないわけだな?」

梓「ええ、まあ……そういうことです。律先輩はどうしてわたしがムカつくんだと思いますか?」

律「え……こんなの真剣に考えなきゃダメなの?」

梓「いいじゃないですか。どうせ湯につかっている間はヒマなんですから」

律「……仕方ない。カワイイ後輩のために、特別に考えてやろう」

梓「わーい」

7: 2010/09/26(日) 23:25:12.44
律「ズバリ、 わたしが思いついたのはな。梓は人の視線を気にしているんじゃないか、ってことだ」

梓「どういうことですか?」

律「ほら、唯ってどんな場所でも梓を見かけたら抱きつくだろ?」

梓「たしかに。正直、恥ずかしいからやめてほしいですね、あれ。」

律「そう、それだよ」

梓「なにが『それ』なんですか?」

律「つまり、梓は唯に抱きつかれるとムカつくんじゃなくてだ」

律「抱きつかれたところをほかの人に見られるのがムカつくんじゃない?」

梓「なるほど。一理あるかもしれませんね」

8: 2010/09/26(日) 23:30:03.58
律「だろ? 我ながら素晴らしい着眼点だと思ったんだけど」

梓「でも、よくよく考えると別に私は恥ずかしくないですよね」

律「いつも、唯に抱きつかれると恥ずかしそうに、やめてください、って言うのにか?」

梓「人目が気にならないわけじゃないですけど、この場合、むしろ人の目線を気にしなければいけないのは唯先輩でしょう?」

律「まあ、たしかに唯みたいに、『あ~ずにゃん!』って言いながら抱きつくのは少しなあ……」

梓「ええ、正直イタいですよね」

律「アレ、きっと唯本人は自覚してないんだろうな」

梓「自覚って……。自覚してたら、ただのカワイコぶりっ子じゃないですか」

律「でも、養殖天然の可能性がもしかしたらあるかもしれないぞ」

9: 2010/09/26(日) 23:33:24.86
梓「本人に聞いてみますか?」

律「そんな度胸は私にはない」

梓「意外ですね。律先輩ならそれぐらいのことなら平気で言えると思ったんですが……」ジー

律「……あのさ。いくら裸のつき合いを現在進行形でしているとはいえ
そんな風に胸をジーっと見られるのは、りっちゃん隊員もさすがに恥ずかしいんだけど」

梓「すみません。度胸という言葉についつい反応してしまいました」

律「度胸って言葉で、人の胸見るヤツは梓くらいだと思うぞ」ジー

梓「そういう律先輩こそ、私の胸を凝視するのはやめてください」ジー

律「……なんかさ」ジー

梓「はい」ジー

律「あまりないはずの胸が痛いんだ。この話はお互いに触れないようにしない?」

梓「そうですね。やめましょう。私たち人間にはコンプレックスから逃げる権利がありますもんね」

10: 2010/09/26(日) 23:38:10.14
梓「……はぁ~、それにしてもいい湯ですね」

律「そうだなぁ。やっぱり日本と言ったら銭湯と米だよな?」

梓「はい。心から日本に生まれてよかったと思います」

律「銭湯はスバらしいな。こう、お湯にぬくもってると身体の疲れがとれるっていうか、癒されるっていうか」

梓「肩コリにもいいらしいですよね。まあ、私たちには無縁ですけどね」

律「まだまだ若いからな。あ、でも澪はけっこう頻繁に肩凝るみたいだけどな」

梓「ああ~胸が大きい人は肩コリ、大変らしいですね」

律「ははは、私らには無縁だな!」

梓「そうですね! 肩コリってどんな感じなんでしょうね!あはは!……はぁ~」

律「なんでだろう。受験が終わって不安なことなんてないはずなのに胸が大きくなったみたいに重くなってきたぞ……」

梓「律先輩、安心してください。それは間違いなく錯覚です」

11: 2010/09/26(日) 23:42:18.41
律「梓、どっちが息が持つか勝負しない?」

梓「絶対にやらないほうがいいと思います」

律「なんでだよ?ほとんど人いないし、気にすることなくないか?」

梓「そういうことではなくて。今、お湯の中にもぐったら、沈んだままあがれなさそうなんで」

律「たしかに。気持ちと一緒にどこまでも沈んでいきそうだな」

梓「うっかり間違えて、銭湯で溺氏するかもしれません」

律「そうだな。普通に銭湯を楽しもう、普通に……ブクブクブクブク」

梓「そうしましょう。……あっ!」

律「どうした?」

梓「私、わかったかもしれません」

律「なにが?」

梓「唯先輩に抱きつかれると、ムカつく理由が!」

律「!! なんだって……!」

13: 2010/09/26(日) 23:44:41.42
梓「これは推測の域を出ませんが……おそらく正解だと思います」

律「もったいぶらずに早く話せよ」

梓「律先輩は、いつか澪先輩の恥ずかしがりを克服するために、喫茶店でバイトしたことを覚えてますか?」

律「覚えてるけど、それがどうかしたのか?」

梓「思い出してみてください。私たちがあの給仕服を初めて着用した時のことを」

律「……そういうことか。わかったよ。梓が何が言いたいのか」

梓「ええ。我ながらすごく情けない理由ですけどね」

14: 2010/09/26(日) 23:48:05.98
律「給仕服を着た時、ムギが聞いたんだよな。服のサイズはどうだ、って」

梓「ええ、唯先輩はこう言ったんですよね。胸がキツい、と」

律「そして澪は、腹がキツいって言ったんだよな」

梓「澪先輩のことはどうでもいいです」

律「そうだな。澪のことは本当にどうでもいいな」

梓「どうでもいい澪先輩はさておいて、唯先輩の胸の話です」

律「うん、だいたい予想はついているけど、聞いてあげるよん」

梓「ありがとうごさいます」

15: 2010/09/26(日) 23:51:46.65
梓「そう、そもそも私が唯先輩に抱きつかれて、ムカつくようになったのは進級してからです」

梓「唯先輩が抱き着くと、つまり、私と唯先輩の肉体が密着するわけです」

律「とりあえず、肉体って言うのはやめろ」

梓「失礼。それで、唯先輩が抱きついてくると……感じるんですよね」

律「か、感じる?」

梓「はい。それはもう、感じまくるんです。

唯先輩の胸の感触を。

服越しでありながら、たしかな存在感を持って」

律「なるほど。唯の胸が梓に押しつけられるわけだな」

梓「はい、まるで嫌がらせです。唯先輩の胸が大きくなったことを嫌でも実感させられるわけですから」

律「なるほど、たしかにそれはムカつくな」

18: 2010/09/26(日) 23:55:18.97
梓「しかもそれだけではありません」

梓「唯先輩は私に抱きついて、胸を押しつけてくるだけではないんです」

梓「なにかって、神経の集中する背中に、私の胸を押しつけてくる時が一番タチが悪いんです」

梓「唯先輩の柔らかい乳房が私の背中に押しつけられ、さらに、官能を刺激されるわけです」

梓「それで、むくむくと頭をもたげた、未知の欲望が理性を蝕んでいく中、唯先輩は追い撃ちをかけるのです」

梓「甘ったるい愛生ボイスで『あ~ずにゃんっ』と」

梓「唯先輩ボイスと、私のむきだしの耳たぶにかかる生暖かい吐息が、それはもう、限界まで私を苛むわけです」

梓「唯先輩の声と、はく息と、シャンプーの柑橘系の匂い。そしてトドメは……」

梓「首に回された唯先輩の手が、制服越しに私の小さな胸にさりげなく触れる」

梓「そうして、私は暴れ狂った欲望と、必氏にそれを押さえ込もうとする理性の中で悶えながら、絶頂をむか……ふ、ふもっ!?」

律「とりあえずこれ以上喋んな」

20: 2010/09/26(日) 23:59:59.31
梓「ふ、ふもふも、ふもももも!ふも、ふもっふ!!」

律「その気持ち悪い語りをやめるか? やめたら口をふさいでる手をはなしてあげる」

梓「ふもっ!ふもるるっ!」コクリ

律「わかったわかった、はい」

梓「ぷはっ! ……律先輩ひどすぎですよ! 危うく銭湯で、溺れたわけでもないのに窒息氏するとこでした」

律「ひどいのはお前の語りだ。さすがの私もドン引きだ」

梓「わ、私はただ事実を言っただけじゃないですか」

律「さっきの語り、本当に事実なのかよ」

梓「私は嘘はつきませんから」エッヘン

律「ない胸を張るな。むなしくなるだろうが」

22: 2010/09/27(月) 00:02:30.92
律「ていうかさ。梓の話を聞いてるとムカついているどころか、逆に嬉しそうに聞こえるんだけど」

梓「とんでもありません。唯先輩に抱きつかれるなんてムカつく以外のなにものでもないです」

律「……ホントかよ」

梓「はい。本当ですとも。だからこうして、律先輩に頭を下げて悩みを聞いてもらってるんですよ」

律「嘘つけ。一度も頭なんて下げてないだろうが」

梓「あ、下げてたのは自分の評判でした」

律「なんでもいいから、これ以上私の中の梓のイメージを崩すな」

梓「努力します」

24: 2010/09/27(月) 00:07:08.75
律「だけど、梓のことは梓にしかわからないから、私がアレコレ言ったところでなあ」

梓「私にもムカつく原因がわからないから律先輩に相談したんですけどね」

律「うーん……梓は固く考えすぎなんじゃない?」

梓「なにをですか?」

律「だからさ。梓ってよく唯が抱きつくと、やめてくださいって言うじゃん」

梓「だって、実際にやめてほしいんですもん」

律「どうして?」

梓「人前で、抱きついたりするとかはしたないと思いませんか。生粋の大和撫子である私には恥ずかしすぎます」

律「さっきキモい語りを垂れ流していたくせによく言えるな」

梓「そんなことより。私が固いってどういう意味ですか?」

27: 2010/09/27(月) 00:11:07.55
律「あくまでこれは私個人の意見なんだけど、今や世界は、グローバル化とやらがどんどん進んでるわけだ」

梓「また、えらいスケールがでかくなりましたね」

律「まあ黙って聞いてくれ。アメリカ人とかって平気でハグしたりチューしたりするじゃん?」

梓「私は生まれながらの日本人です」

律「知ってるよ……それでだ。今の世の中で日本人がどうとか言ってるようじゃダメだと思うんだ」

梓「なるほど。ボーダレス化していく世界に合わせて、私もグローバルな思考を持つべきだと言いたいんですね?」

律「うん、そんなようなことが言いたかったんだ」

梓「そして、抱きつくのがダメだとか、そんな日本人的な考えは捨ててしまえと」

律「そういうこと。外人さんみたいに、抱きついたりするのが普通だって思えば唯に抱きつかれたって気にならないだろ?」

29: 2010/09/27(月) 00:15:15.86
梓「……そう来ましたか」

律「なんでそんな難しそうな顔してんだよ。べつに変なこと言ってないじゃん」

梓「ええ、変ではないと思いますが、一方で私は一抹の不安を感じるんです」

律「んん? どういうこと?」

梓「私も世界はどんどん交流していくべきだとは思いますよ」

梓「ですので初等教育に英語を組み入れるのにも賛成です」

律「じゃあいいじゃん。何が不安なんだよ?」

梓「いえ、ただそうやって世界の文化やら何やらを
受け入れているうちに日本人は日本人らしさをどんどん失っていくんではないか、と思って」

32: 2010/09/27(月) 00:18:07.05
律「……なんかディープな話だな」

梓「実際問題、日本の素晴らしい文化が廃れている原因にグローバル化は関係あると思うんです」

律「そうか…………なあ、話が明らかにズレてきてるぞ」

梓「すみません。ですが、もう一つだけ言わせてください。日本の銭湯の文化は素晴らしいと思うんです」

律「……なにが?」

梓「昔は、沢山の人たちが銭湯に行って見知らぬ人と人が、よく会話していたらしいんです」

梓「現代社会ではコミュニケーション能力が不足している人が増えていますよね?」

律「う、うん? まあ、そうなのかな」

梓「昔は銭湯のおかげで、人と人が繋がっていたんです」

梓「新しいものを取り入れるのもいいですけど、やっぱり自分の国の文化は大事にするべきだと思うんです」

律「……そだね」

34: 2010/09/27(月) 00:21:41.26
梓「で、なんの話してたんでしたっけ?」

律「唯に抱きつかれると、どうしてムカつくのか、その理由を探ってたんだろうが」

梓「ああ、そうでしたね。忘れかけてました」

律「覚えてろよ。お前が相談したんだろうが」

梓「失礼しました。しかし、結局、原因はわからないんですよね」

律「唯に当てつけのように、胸を押し当てられるのが、ムカつくという理由にはならないんだな」

梓「近いような気がしないでもないですか……なんかやっぱり違うんですよね」

律「ほかに何か心当たりはないのか?」

梓「そうですね。……たとえばこういうのはどうでしょう?」

37: 2010/09/27(月) 00:26:40.53
梓「正直なことを言うと唯先輩のあの性格は、虚構したものではないかと疑ってるんですよね」

律「つまり、天然ぶってるだけで実際は全然違う性格かもしれないと?」

梓「ええ。あながちありえない話じゃないと思います」

梓「たホームセンターでの奇行といい、マラソン大会を無視して近所のお婆さんのとこに行ったりといい」

梓「素でやってたら引くような行動ばかりしてませんか、唯先輩」

律「ホームセンターでの唯は友達と思いたくなかったな」

梓「ええ。私もあそこで名前を呼ばれた時は恥ずかしさのあまり、氏ぬかと思いました」

律「なあ、梓」

梓「なんですか、律先輩?」

39: 2010/09/27(月) 00:31:00.72
律「冷静に考えると、唯が演技している可能性は低いんじゃないか?」

梓「どうしてそう思うんですか?」

律「いや、どう考えたって唯が得しないじゃん」

梓「得?」

律「カワイク見せるために演技するなら、もっとほかにするべき行動があるだろ?」

梓「たとえば?」

律「……梓、この猫耳カチューシャつけてみろ」

梓「どっから出してきてんですか」

律「細かいことは気にするな。さあ、つけるんだ」

40: 2010/09/27(月) 00:35:42.49
梓「いやですよ。こんなところで」

律「いいじゃん。どうせ今までにもカチューシャつけたことあったんだし」

梓「イヤです。どうして人前でこんなのつけないといけないんですか」

律「そんな固いこと言うなって。ほんの少しの時間でいいからさ」

梓「……今回だけですょ。」

律「さっすが、梓。……はい、猫耳カチューシャをセット」

梓「にゃん……って、何やらせてんですか!?」

律「猫耳カチューシャをつけるだけに留まらず、猫の鳴き声までやるとは……」

梓「い、今のはなしです!」

41: 2010/09/27(月) 00:38:15.56
律「気にするなって。誰も見てないって」

梓「そういう問題じゃありません! 私の中の何かが傷つきました」

律「大げさだなあ。だいたい、にゃん、なんて鳴き声までは私は求めてないぞ」

梓「うっ……ていうか、なんで私にこんなことさせたんですか?」

律「今みたいなのを狙ってやるならまだ理解できるもなあ、と思っただけ」

梓「意味がわかりませんよ。まったく……」

律「でもまあ、やっぱ唯のアレは天然なのかもな」

梓「なんか段々わからなくなってきましたね」

42: 2010/09/27(月) 00:41:40.75
律「つうか、あの性格が完璧に素だったら、それはそれで大問題だけどな」

梓「大学生活大丈夫なんですかね、唯先輩」

律「大学はともかく、社会人になった時の方がヤバい気がする」

梓「たしかに」

律「ところでさ。さっきから私さ、言いたいことがあったんだよ」

梓「……? なんですか?」


律「梓もけっこうイタいよなって」


梓「え゛?」

43: 2010/09/27(月) 00:47:31.04
梓「え? え? ちょっ……? はい? 私がイタい? 何言ってんですか律先輩?」

律「キョドりすぎ。落ち着けよ」

梓「いえ、私は極めて冷静です。それより律先輩こそなにをおっしゃってるんですか?」

梓「私がイタい? ははは、笑えないですよ?」

律「梓、顔が引きつってんぞ」

梓「ちょっと説明していただけませんか? 私のどこらへんがイタいのか」

律「自覚ないのか?」

梓「え? なんです、その知ってて当たり前的な質問。なんかムカつくんですけど」

律「そういきり立つなよ。きちんと説明してあげるから」

梓「むむ」

44: 2010/09/27(月) 00:50:08.87
律「うん、梓はもっと自覚を持つべきだと思うな」

梓「な、何を自覚しろって言うんですか?」

律「梓は覚えてるか? 私と澪が二年の文化祭でケンカした時のこと」

梓「覚えてますけど、それがどうかしましたか? ……ていうか律先輩、ニヤニヤしすぎです」

律「悪い悪い。つい笑えてきちゃって」

律「で、梓は、私と澪がケンカした時、なんて言ったか覚えてるか?」

梓「…………なんでしたっけ?」

律「あれれ? 覚えてないのかあ?」

梓「忘れました。覚えてないです」

律「じゃあ、バッチリ覚えてる私が教えてしんぜよう」

45: 2010/09/27(月) 00:54:38.01
律「『みなさん、 仲良く練習しましょう』」

梓「普通じゃないですか。どこもおかしくないですよ」

律「ただし、そう言う前に猫耳カチューシャをつけてたよな?」

梓「うっ!」

律「なんで、わざわざ猫耳カチューシャをつける必要があったのかなあ? あーずーさー?」

梓「あ、あれは少しでも場を和ませようと……」

律「ほほう。場を和ませる時には、梓は猫耳カチューシャをつけるのかあ」

梓「ぐぐっ……! でも、実際、先輩たちは一時的とは言え、言い争いをやめて練習してくれたじゃないですか!」

律「そりゃあ、シリアスな場面で唐突に後輩が猫耳つけだしたら、私らも気まずくて練習しようと思うぞ」

律「実際にあの時、私も澪も気まずさが顔に出ちゃったからな」

46: 2010/09/27(月) 00:59:20.32
梓「律先輩、それがいったいなんだって言うんですか?」

律「え? 普通にイタくね、って話なんだけど」

梓「わ、私がイタい!?」

律「さっきからそう言ってんじゃん」

律(ヤバい。後輩いじりちょー楽しい!)

律「唯みたいに高校生にもなって、ホームセンターで電動ドリル遊びするのもイタいけどさ」

律「人がケンカしている最中に猫耳つけ出すヤツは、もっとイタいと思うんだ」

梓「ぐぎぎぎ……!」

48: 2010/09/27(月) 01:18:43.53
梓「律先輩、それがいったいなんだって言うんですか?」

律「え? 普通にイタくね、って話なんだけど」

梓「わ、私がイタい!?」

律「さっきからそう言ってんじゃん」

律(ヤバい。後輩いじりちょー楽しい!)

律「唯みたいに高校生にもなって、ホームセンターで電動ドリル遊びするのもイタいけどさ」

律「人がケンカしている最中に猫耳つけ出すヤツは、もっとイタいと思うんだ」

梓「ぐぎぎぎ……!」

49: 2010/09/27(月) 01:21:30.96
律「しかもよ、梓。それだけに終わらないんだよ」

梓「すでに満身創痍の私にさらに追い撃ちをかける気ですか?」

律「うん」

梓「うう~、この際ですから受けてたってやります!」

律「いざとなったらムギにでも癒してもらえ」

梓「そ、それで私の他のイタいエピソードとやらは?」

律「そう氏に急ぐなって」

50: 2010/09/27(月) 01:25:59.46
律「さっき話したのは猫耳エピソードだが、今度も猫耳エピソードだ」

梓「またですか……」

律「次は進入生勧誘のために作ったムービーの話だ」

梓「…………何かありましたっけ?」

律「とぼけるのもほどほどにな」

律「ムービーの最後のとこで撮ったアレを、忘れるなんてありえないだろ」

律「軽音部にようこそ……にゃん☆」ニャン

梓「ぬぬぬぬ……!」

律「なあ、梓」

梓「な、なんですか律先輩……?」

51: 2010/09/27(月) 01:30:00.92
律「なんで『にゃん』なんて最後につけたんだ?」

梓「『にゃん』ってつければウケるかな、って」

律「誰にだよ」

梓「……わかりません。でもウケる気がしたんです」

律「つうか、まだほかにもあるんだよなあ」

梓「さ、さらに私に精神的ダメージを!?」

律「初めて猫耳カチューシャをつけた時。梓は、指示通り、猫耳をつけ、その上で『にゃん』って言った」

梓「あ、あれはそうしろって言われたから……あれはイヤイヤやったんです!」

律「ふうん。そのわりにはバッチリ上目遣いだったけど?」

梓「は、はは……なんででしょうね……」

52: 2010/09/27(月) 01:33:21.31
律「それにさ、梓。さっき私が猫耳カチューシャ渡したら、梓、つけてくれたよな」

梓「……え、ええ」

律「あの時も、『にゃん』をつけたよな?」

梓「……なんでそんなに人が覚えていてほしくないことばかり、覚えてんですか?」

梓「もしかして、律先輩は私のことが嫌いなんですか?」

律「馬鹿だなあ。大大大好きだから、梓のことを沢山覚えてんじゃん」

梓「くっ……さらりと嬉しいことを言ってくれますね」

律「だから、梓がイタい女の子でも全然問題ないぞ」

梓「律先輩、来世で私が猫耳をつけようとしたらどんな手を使ってもいいから止めてください……ブクブクブクブク」

律「銭湯で自頃しようとするな」

53: 2010/09/27(月) 01:38:04.69
梓「ええ、そうなんです。私は唯先輩なんて目じゃないくらいのとってもイタい女なんです」

律「そんな急にテンション下げなくても……」

梓「いえ、私は空気も読めないし、練習しろと言いながら結局遊んでいたり」

梓「それにすぐ日焼けするし……なにより、私、わざとやってたんで……」

律「わかってたけど、本人の口から聞くと余計イタいな」

梓「あ、やっぱりバレてたんですか」

律「そりゃあなあ。私と澪がケンカした時とか、どこにも猫耳カチューシャなかったのに、急に現れたからな」

梓「実は毎日猫耳カチューシャを持参してます。なんなら律先輩にも一つ贈呈しますよ?」

律「いらねえよ」

梓「ですよねー。私みたいなイタいヤツからのプレゼントなんていらないですよね……ブクブク」

律「だから、湯の中で窒息氏しようとすんな」

54: 2010/09/27(月) 01:42:23.66
律「まあまあ、人間である以上は多少は演技したりすることは珍しくないじゃん」

梓「私の場合、その演技が度を越えてたみたいでしたが……」

律「ていうかいつから、その……イタい行動をするようになったんだ?」

梓「……思い返してみると、中学生の時からイタい行動はしてた気がします」

律「たとえば?」

梓「くっ、右腕が疼くとか言いながら教室から飛び降りたりとか?」

律「さらりとスゲーこと言うな」


55: 2010/09/27(月) 01:44:29.56
梓「ははは、いや、もう自分のイタさかげんに笑うしかありませんね」

梓「ていうかですね。高校に入ってからなんですよ。私がさらにイタくなったのは」

律「そうなんだ」

梓「ええ、少なくとも昔は猫耳つけて『にゃん』とか言ったりはしてなかったはずです」

律「もしかして……梓、お前は唯のことが好きなんじゃないのか?」

梓「何のぼせたこと言ってるんですか。そんなわけないでしょう」

律「じゃあ一つ聞くけど梓が一番、練習をしようって言う相手は誰だ?」

梓「……たぶん、唯先輩だと思います」

56: 2010/09/27(月) 01:47:51.81
律「梓、この本を見てみろ」

梓「どっからこの本出したんですか……って、なんですか、この本?」

律「『サルでもわかるオモシロ心理学』っていう本だ。このページに目を通してみな」

梓「……好きな人には理解してもらいたいから、ついついキツク当たってしまう……これが何か?」

律「わからないかなあ。この本の通りだとしたら、梓は唯のことが好き」

律「それで、好きな唯には自分の考えを理解してほしくて、ついつい辛く当たってしまう、みたいな」

梓「……じゃあ、どうして私は唯先輩に抱きつかれるとムカつくんですか?」

律「好きで、抱きつかれるとドギマギして情緒不安定になるのを、ムカつくのと勘違いしてるんじゃない?」

梓「な、なんと……」

57: 2010/09/27(月) 01:53:46.97
梓「いやいや、しかしですね」

律「根拠はこれだけじゃないぞ。梓は高校に入学してからよりイタくなったって言ったよな?」

梓「言いましたね。それがどうかしました?」

律「ようは梓のイタい行動は猫のモノマネをすることだろ?」

梓「はい……ていうかイタいイタい言わないでください。傷つきます」」

律「悪い悪い……それで、梓の猫のモノマネをもっとも好むヤツは誰かわかる?」

梓「……唯先輩」

律「そう、つまり私の考えはこうだ。梓は唯のことが好きで、無意識に唯が喜ぶ、猫のモノマネをしてしまうんだ」

梓「ふ、不覚にも納得しそうになりました」

58: 2010/09/27(月) 01:58:55.51
律「そう、梓。お前は唯のことが好きなんだよ」

梓「な、なんということでしょう……! わ、私はどうしたら……」

律「今まで普通通りに接すればいいんだよ」

梓「そ、そうでしよね」

律「うん。そういうこった。これで梓の悩みは解消したな」

梓「そうですね。ありがとうございました、律先輩」

律「なに、気にすることはない」

60: 2010/09/27(月) 02:05:37.22
梓「律先輩、お礼に一つ雑学を」

律「ん?」

梓「さきほど、日本特有の文化である銭湯の話をしましたよね?」

律「したな。それがどうかしたか?」

梓「昔の銭湯は会話の場所として利用されていて、みんなけっこう長い間つかっているんです」

律「さっき言ってたな」

梓「ただ、会話に夢中になって長く湯につかりすぎる人が時々いるんですよ」

律「うんうん」

梓「だからよく、のぼせてしまう……お゛え゛え゛えええええいっ」

律「」


おしまい

63: 2010/09/27(月) 02:27:23.18
乙しておきますね

70: 2010/09/27(月) 07:23:52.15
おまけ

梓「こんにちはー」(今日からはもう少し優しく唯先輩と接しよう)

唯「あ゛?」

梓「え?」

唯「……なにジロジロ見てんだ? ああん!?」

梓(え? なに?どうしちゃったのこの人!?)

唯「おら! 早くお茶いれんかいー!」

梓「は、はい……ただいま!」

―――――――――――

唯(昨日、私も憂と一緒に銭湯にいたんだよね)

唯(まさか私、イタい娘扱いされてるなんて……いいもん)

唯(今日からイメチェンして、カッコよくなるもん!)



引用元: 梓「唯先輩に抱きつかれるとなんかムカつく」