65: 2008/10/13(月) 19:14:22 ID:???
僕の新しい家に女の子が越してきたのは中2の夏休みだった。

彼女の母親は本当の母親ではなかった。
お母さんは僕の目から見てもとても若かったのを覚えている。
学校でも同じクラスになって僕と彼女は仲良くなった。
彼女は勝ち気な性格ではあったが、その分女子の友達も少なかった。
音楽ばかり聞いて親しい友人の少なかった僕と彼女はお互いの部屋に遊びに行くほど仲良くなった。

そのうち彼女は愚痴を言うようになった。
だいたいは僕の内罰的な生き方のこと。
同じ年ごろの男子はまともな男がいないこと。
すきな年上の男の人ができたけどその人には恋人もいて、やっぱり自分を見てくれないこと。
最初は僕のほうがよくしゃべっていたけれど、この頃からは一方的に彼女が話し僕が聴くようになっていた。


66: 2008/10/13(月) 19:16:18 ID:???
ある日を境に彼女は心を閉ざした。
戦いで戦果を挙げられなかったのが理由だ。
プライドの高い彼女は傷付いたのだろう。
彼女は僕に会うたびに「あんたなんか大嫌い」といった。
「みんな大嫌い」といった。
そして現実味のない復讐や僕の悪口を延々と話し続けた。
僕はただ黙って相槌を打っていた。
しばらくして彼女の素行が荒れ始めた。
夜遅くまで帰ってこないようになった。
家庭環境も悪化し、深夜にいきなり僕と喧嘩が始まったりもした。
一度は監視の黒服の人が彼女を迎えにやってきた。この頃から近所と折り合いが悪くなり、
中傷ビラや落書きなどの悪質な嫌がらせが僕らの家に行われた。
一度は郵便受けに刻んだ猫が入っていた。
僕も綾波に彼女と付き合うのをやめるよう言われた。


67: 2008/10/13(月) 19:39:23 ID:???
ある日彼女は部屋に引きこもるようになった。

僕は彼女の姿を見ることがめっきり減った。
めっきりふけこんだミサトさんに話を聞くと昼は絶対に出てこない。
ご飯は部屋の前においていく。
深夜になるとトイレに行くときだけ出てくる。
そんな生活を送っているようだ。
僕は久しぶりに彼女と話をしようとした。


彼女は僕に会うのを拒絶した。
扉越しに帰れと怒鳴った。
何を話しても黙っていた。
一度なんかはドアがあいたと思ったら味噌汁をかけられた。
ちらりと見えた彼女はげっそりと青白くやつれていた。
絞った雑巾のようだった。
僕は毎日彼女に会いに行った。
毎日彼女の部屋の扉の前に立った。

68: 2008/10/13(月) 19:40:32 ID:???
そのうち彼女は扉越しに話をするようになった。
母親のために頑張って認めてもらおうとしたこと
世界を守る世界一の存在に自分が選ばれたこと
嬉しくて一番に母親に伝えようと息を切らして走ったこと
扉の先で母親が首を括っていたこと
その顔が酷く嬉しそうだったこと
その嬉しそうな顔が嫌だったこと
一人で生きて行こうときめたこと
君は勝手に喋り続け、僕は相槌を打つ。
意見を求められたときはなるべく無難な意見を言う。

そのうち彼女は部屋を出た。
アルバイトも始めた。
だんだん性格も明るくなり始めた。
ミサトさんから泣きながらお礼を言われた。


69: 2008/10/13(月) 19:41:28 ID:???
ある日、彼女は近所の団地から飛び降りた。
下が植え込みだったこととたいした高さじゃなかったために一命は取り留めたが
脊髄が傷ついたために今後の人生は車椅子のお世話になるそうだ。
ベッドに横になった彼女はなきながら謝った。
ミサトさんや僕に迷惑をかけていたのがすごく申し訳なかったから飛び降りたんだそうだ。
泣いている彼女を慰めた。
寝転んだまま泣いている人を慰めるのは難しいと思った。
慰めながら彼女にプロポーズした。
結婚を前提に付き合ってくれるように頼んだ。
彼女は全身の水分を絞りつくすようにして泣きながら
「本気?あたしでいいの?本当にいいの?」
と何度も聞き返した。
訊かれる度にうなづき返した。
君のことがずっと好きだった。
顔をゆがめて僕の悪口を言っていたときも
夜遅くまで帰って来ずに荒れていたときも
一方的に愚痴をしゃべり続けていたときも
君が泣きながらお母さんが自頃したことを告白したときも
引きこもって別人のようにやせたときも
小さく震える背中に反応がないことがわかっていて「良かったね」と声をかけたときも
加持さんがもういないことを伝えたときも
「うそ…」と力なく呟いたときも
どんな言葉で切り裂けば一番効果的だろうかと、ビラの文面を考えていたときも
家のポストに入れる猫を刻んでいたときも
足の感覚を失い白いベッドに飲み込まれそうに小さく横たわっている今も
ずっと君が好きだ。
これで完璧に僕は全部君だけの「もの」だ。

僕たち今度結婚します。

70: 2008/10/13(月) 19:44:56 ID:???
GJ

>家のポストに入れる猫を刻んでいたときも
こえーw

71: 2008/10/13(月) 20:40:12 ID:???
病んでいたのはシンジの方か…
こえー

72: 2008/10/14(火) 01:29:54 ID:???
これは怖いw

73: 2008/10/15(水) 00:24:34 ID:???
>>71
一番病んでるのは、作者だろww

引用元: 落ち着いてLAS小説を投下するスレ 15