708: 2009/09/28(月) 05:50:56 ID:???
数十台のモニターに囲まれながら、ミサトはえびちゅをあおっていた。
「…なんで私がこんなことしてるのかしらね~」
愚痴をこぼしながらも、次の一缶のプルトップを開ける。周囲のモニターには様々な画像が映し出されている。焦点の合わない目でそれらを眺めながら、
ミサトは先日のゲンドウとの打合せの内容を思い返していた。

2016年、世界は思いっきり平和になった。ネルフ在籍の5機のエヴァンゲリオンの活躍で謎の怪獣は全て撃退され、闇の秘密結社ぜーレは滅びた。
それによって、セカンドインパクト以来混乱していた世界もネルフを核に据えた新国際連合によって統率され、再び落ち着きを取り戻しつつある。そのような
中で、エヴァを占有し、世界の警察たる地位についたネルフおよび世界の救世主たるチルドレンに対して世間の関心と畏怖が集中するのは当然の帰結で
あった。

「……というわけで、ネルフは現在一般人から畏怖の対象とされている」
暗い司令室で、ゲンドウが静かにミサトに告げる。
「しかし、新国連の一機関として再出発した我々にとって、必要以上の畏怖は活動の妨げにしかならんのだよ」
冬月が横から口を挟む。
「従って、我々は印象操作を行い、世間の感情を懐柔する必要がある」
そこでゲンドウは間を置いて、ミサトを見つめた。ミサトはこれから与えられるであろう指令内容を聞き漏らすことの無いよう、全神経を集中する。
「葛城二佐、ネルフの対外印象を向上することを目的として、チルドレンの偶像化戦略の企画を命ずる」
「はい?」
ミサトは聞き慣れない言葉に、思わず内容を聞き直した。冬月がゲンドウの言葉を補足する。
「つまり、チルドレン達をアイドル化するわけだよ。現在あの子達は救世主として皆から敬われ、一部では神格化する動きすら見られる。そのような彼らが
アイドルとして自分達の前に現れれば、世間も彼らに親しみを持つであろうしネルフについても身近に感じるのではないかね?へたに芸能人をイメージ
キャラクターに据えて、ああああああああああなどのスキャンダルでかえってイメージダウンになってもかなわんしな」

709: 2009/09/28(月) 05:52:43 ID:???
「まあ、そう言われればそうかもしれませんが…」
ミサトは『そんなうまいこと行くわけねえっす!』ということをオブラートに包んで述べたが、親父達はミサトの真意を無視して命令を下す。
「ネルフは臨時組織改編を実施し、明日より作戦部は芸能企画部に名称変更する。芸能企画部は、適格者達の芸能界デビューを成功させ、ネルフの
広報活動に寄与させるために設置したものである。この目標を達成するために、これまで同様の努力を期待する」
「はぁ…」
司令命令とあらば拝命するしかないミサトはため息しか出せない。これって、やっぱり左遷よね……。


「はあ……」
12本目のえびちゅを開けて、ミサトは再びため息をついた。いきなり畑違いの職場に投げ出されたとはいえ、司令命令は絶対である。チルドレン達を芸能界に
デビューさせ、アイドルとして成功させなければならない。デビューさせるのは簡単だ。しかし、アイドルとして売れっ子になるかどうかはわからない。
デビューさせて鳴かず飛ばずで消えるようなことにでもなれば、かえってチルドレン達のカリスマ性に傷がついてしまう。そのために、彼らのデビューは出来る
だけ世間にインパクトを与える形にして、短期間の内に売れっ子にする必要があるのだ。
「…でも、今更なにやっても二番煎じよねえ…」
とにかく最も効果的なデビュー手段を考えようと、会議室にこもって多数のモニターに映画やらTVドラマやら歌番組から幼児番組まで様々な映像を流して
みても、決定的な企画が思い浮かばない。無情に時間とえびちゅを浪費するばかりであった。

710: 2009/09/28(月) 05:53:56 ID:???
「…だみだ、こりゃ!」
いい感じでアルコールも入ってきたミサト、どうやら考えるのを放棄したらしい。椅子を三つ並べて横になった。今日はこのままここにお泊まりとなるのか。

ばんばらばんばんばん……

視界の隅に見えるモニターから軽快な音楽が流れてきた。ぼんやりとそのモニターを眺めていたミサトだったが、突然がばっと起き上がった。
「これよ!この手があったわ!!」
そのモニターに流れる映像から何かの天啓を得たらしい。頭の上に大きな電球が光っているようにすら見える。
「ふふふ…。見てなさいよ~、これであの子達をトップアイドルにしてやるんだから!」
天に向かって拳を振り上げるミサト。得てして酔っぱらいのひらめきなんて碌でもないことしかないものだが、ミサトにはその自覚は1mlもなかった。

711: 2009/09/28(月) 05:55:21 ID:???
その高校には6人の仲がよい少年少女がいた。責任感が強くリーダーシップを発揮する少年・スポーツマンで熱血漢の少年・耽美で神秘的な少年・
活発でお転婆な少女・内気で人見知りな少女・家庭的でおだやかな少女。彼ら6人は、今日も放課後に家庭的な少女がバイトをしている
『カレーショップ ゲンドウ』に集まっている。いつものように、彼ら以外の客はいないようだ。

「かー、委員長のカレーは何杯食うても足らへんな!!」
ジャージの少年がカレーをかきこんでいる。
「ふふ、いくらでも作ってあげるから、おかわりしてね」
「そうか、委員長いつもうまいカレーを作ってくれておつカレー様やな!」

すぱーん!!

はりせんが少年の頭に振り下ろされた。
「いった~…おどりゃ、なにすんねん!」
「鈴原、あんた関西人のくせに、なに下らないだじゃれ言ってんのよ!」
「叩かんでもええやろ!」
「教育的指導よ!!」
「なんやと!」
「なによ!」
一触即発の雰囲気に、一人の少女が声をかける。
「あ、あの、ふたりとも落ち着いて…」
「「あんた(おまえ)はだまってて(とれ)!」」
「ひゃう!」
二人から同時に威嚇されて、あわてて少女は一人の少年の陰に隠れる。
「ははは、ふたりともこらえてこらえて。こんなにおびえてるじゃないか」
その少年が二人をなだめる。見ると少女はその少年の袖にすがりついてぶるぶる震えていた。さすがに口論中の二人も矛を収めざるを得ない。

712: 2009/09/28(月) 05:56:25 ID:???
「す、すまんのう。このアーパー娘がつっかかってくるもんやから、つい…」
「私もごめん、バカジャージについのせられて…」
殊勝な顔で謝った二人だが、すぐにお互いの言葉を聞きとがめる。
「…バカジャージ…?」
「…アーパー娘…?」
再び二人の間に紅蓮の炎が吹き上がる。その炎に当てられて、少女は既に涙目となっている。
「慎司さん…」
「大丈夫だよ、いつものスキンシップだから」
さらに強い力ですがりついてくる少女を、少年はなだめる。そんな騒がしい空気を、無駄にさわやかな声が切り裂いた。

「フフン、諸君。じゃれ合うのもかまわないが、ちょっとあれを見てみないかい?」

壁際でバラを咥えてポーズをとっていた少年が、TVを指さした。そこには、いつもの水○黄門の再放送を中断して、男性アナウンサーが緊迫した表情で
座っていた。
『臨時ニュースです!本日○○:○○にペンペン幼稚園の送迎バスがバスジャックされました!犯人は秘密結社ニョッカーを名乗り、今のところこれと
いった要求を出しておらず…』

714: 2009/09/28(月) 05:59:03 ID:???
「うわーん!」「ままー!」「びえ~~ん!」
ここは、秘密結社ニョッカーのアジト。北関東の採石場に位置するという噂のニョッカー基地に、幼稚園児達は捕らわれていた。
彼らはニョッカーの改造人間として改造されるためにさらわれたのだ。泣き叫ぶ園児達を前に、怪人が満足そうに頷いた。
「ふふふ、これだけの数の改造人間を作り出せば、悪の女王イラストリアス様もさぞお喜びになるだろうて」
「うきー!」
「うきー!」
戦闘員達も嬉しそうにはしゃぐ。しかし、そこに正義の声が響いた!

「そうはイカの金○や!!」
「…だれだ、子供の教育に悪い言葉を使う奴は!!」
怪人達が声の方向に振り返る。すると、そこに5つの影が浮かび上がった。

「なにやつ!」

怪人の声に、ひとつの影が飛び上がる!
「熱血の六甲颪!フォースチルドレン鈴原統司こと!」
どかーん!背後で黒色の爆煙が上がるとともに、影が変身した。
「レンジャーブラック!!」
びしっとポーズを決める。

715: 2009/09/28(月) 06:00:05 ID:???
「な、なんなんだ!」
怪人達が驚愕する間もなく、次の影が飛び上がる。
「太陽の微笑み!ファーストチルドレン綾波玲こと!」
背後に白色の爆煙が上がるとともに、影が変身した。
「レンジャーホワイト!」
これまたびしっとポーズを決める。
さらに次の影が飛び上がる。
「フフン♪禁断の薔薇。フィフスチルドレン渚薫こと!」
背後に灰色の爆煙が(以下略
「レンジャーシルバーだよ」
さらに次の(以下略
「え、えと、真紅の雛菊。セカンドチルドレン惣流飛鳥こと」
背後に赤色の(以下略
「レンジャーレッド!です…」
そして最後に飛び上がった影。
「正義の化身!サードチルドレン碇慎司こと!」
背後に青(以下略
「レンジャーブルー!」
そして5人が一列に並ぶ。

「5人そろって」
「ネルフ戦隊 チルドレンジャー!!」

どかーーん!!5色の爆煙が広がった。

レンジャーブルーが一歩前に出て、高らかに宣言する。
「幼稚園児を誘拐し、改造人間にするなど、天が許してもこのチルドレンジャーが許さない!正義の刀が悪を絶つ!!」

怪人達も我に返り、おのおの手に武器を持った。
「うーぬ、我らのアジトを知られた以上、帰すわけにはいかん。ものども、かかれい~!」
「「「うきー!」」」

716: 2009/09/28(月) 06:01:13 ID:???
かくして、大乱戦が始まった。数の上では圧倒的な戦闘員だが、レンジャー達にはかなわない。じわじわと人数が減らされていく。

「きゃっ!」

そのとき、レンジャーレッドがつまずいて転んでしまった。それに乗じて4~5人の戦闘員が襲いかかる。
「い、いやあ!」
思わず身をすくめたレッドだったが、体に衝撃がやってこない。おそるおそる周囲を見渡すと、戦闘員は皆倒されていた。レッドの前には、
ブルーが立ち塞がっている。
「レッドには、指一本触れさせない!大丈夫か、レッド!?」
「ブ、ブルー…。ええ、大丈夫です」
立ち上がるレッドのそばに、ブルーが心配そうに駆け寄る。
「そうか…。もし君の身に何かあったら僕は…」
「そ、そんな…」
あたり一面にピンクの花園が広がった。

「…って、お二人さん!そんなんやっとる場合じゃないで!」
ブラックの声に我に返る二人。見ると、戦闘員は全て倒していたが、怪人一人を相手に3人が苦戦していた。
「ふふふ…このサキエルゲ様の光槍攻撃を受けてみろ~!」
手のひらから高速の槍を発射するサキエルゲ。チルドレンジャーは防戦一方だ。

「よし、合体攻撃だ!」
「「「「おう!」」」」
ブルーの声と共に、全員が腰にぶら下げたパーツを取り外す。そしてそれを組み立てるとひとつの大型の銃砲となった。
「ネルフ謹製陽電子砲ポジトロンライフル!」
5人で陽電子砲を構える。
「「「「「発射!!」」」」」
ちゅいーーん!!!
陽電子束ビームがサキエルゲの胸を貫いた。

717: 2009/09/28(月) 06:02:46 ID:???
「ぐわぁああーーー!!!」

断末魔の悲鳴と共に、倒れ伏すサキエルゲ。チルドレンジャーは勝利に沸いた。しかしその時、空に変態眼鏡をかけた女性の姿が映し出される。非常に
露出の多い服装で、明らかに敵の女幹部か女首領である。彼女は足元のチーターの頭をなでながら、サキエルゲに杖を向けた。
『そんな奴らにやられるなんて、情けないにゃあ。ほら、復活させてあげるから、も一度がんばれ。人生は3歩進んで2歩下がるんにゃよ?』
休まないであ~る~け~!!と、労働基準監督署が聞いたら怒り出しそうなフレーズと共に、その変態女はサキエルゲに怪光線を照射した。その光線を
浴びたサキエルゲは再びむくりと起き上がると共にぐんぐんと体躯が膨らみ、50mを超える大きさにまで巨大化した。

「どーるげーーーー!!!」
暴れ回るサキエルゲ。チルドレンジャーは幼稚園児を安全な場所に避難させるのが精一杯だ。

「これでは手も足も出ないわ!!」
「ふう、あの大きさじゃ、ポジトロンライフルも有効打にはならないようだねえ」
「慎司さん、どうしましょう?」
「く、くそう…」
焦るチルドレンジャー達。しかし、こんなに巨大な敵が相手ではどうしようもない。
ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ……
その時、歯ぎしりするブルーの通信機に連絡が入る。
『苦戦しているようだな』
「父さん!」
通信機に写ったのは、カレーハウスゲンドウのマスターだ。いつもの調理服ではなく、司令服を着ている。
『慎司、あれを送る。洞木君』
『了解!エヴァンゲリオン零号機~四号機、発進!』
ネルフの制服を着た光理がキーボードを操作する。すると、都庁の屋上、国技館の屋根、停泊中の空母の甲板、国会議事堂の庭、
甲子園球場のマウンドに大きな穴が開き、5体のロボットが射出された。ロボットは瞬時に採石場に飛んでくる

718: 2009/09/28(月) 06:04:18 ID:???
「「「「「フェードイン!」」」」」
その叫びと共に、ロボットの胸部、コアと呼ばれる部位からチルドレン達に向かって光が伸びていく。そして、その光に包まれるように、それぞれのエヴァに
吸い込まれていった。
その後なんだかんだで5体のエヴァは合体し、大型ロボットエヴァンキングとなった。そして、肩から2本の刀を引き抜くと、サキエルゲに向かって斬りかかる。
「振動剣サードインパクト斬!!!」
「どーーるげーーー!!!」
光り輝く刀がサキエルゲの体を切り裂く。サキエルゲは悲しげな断末魔とともに、大爆発を起こし四散した。その背後には、夕日に照らされて、エヴァンキングの巨体が光り輝いていた。


719: 2009/09/28(月) 06:05:02 ID:???
「おかーさーーん!」
「ままーー!!」
「健介!!」
「真菜ちゃん!」
そこかしこで再開を喜ぶ親子の姿が見られる。幼稚園児を連れ帰った5人は、その様子を遠くから眺めていた。

「とにかく、一件落着やな」
「そうね、子供達も無事につれて帰れたし」
「でも、あの変態娘はまだまだ悪いことをしでかしそうだねえ」
「だけど僕らは負けない!どんな敵が現れても、必ずこの街は守り通してみせる!」
慎司はぐっと拳を握って青空に誓った。そんな慎司にそっと飛鳥が寄り添う。
「……その時は、私にもお手伝いさせてくださいね?」
「も、もちろんだよ、飛鳥」
真っ赤な顔で見つめ合う二人。
「あ~あ~、あっついわねえ~」ぱたぱた
「ほんまや、地球温暖化を促進しちゃいかんのう、お二人さん」
そんな二人を統司と零がからかう。
「やめてよ、ふたりとも~」
「………」もじもじ
「はっはっはっ。青春だね~」
地球を守る精悍な戦士の表情から、いつもの和やかな仲良し高校生に戻った5人。賑やかに秘密基地でもあるカレーハウスへと帰っていく。しかし、
悪の秘密組織ニョッカーは未だ健在、地球の危機は去ってはいないのだ。悪を倒して平和な未来を築くその日まで、
がんばれ僕らのチルドレンジャー、負けるな僕らのチルドレンジャー!!
(ちゃ~ちゃちゃちゃ、ちゃちゃっちゃあ~♪)←音楽同時に終わる

720: 2009/09/28(月) 06:05:54 ID:???
「ぬ、ぬ、ぬ……」

「ぬ?」

「ぬぁんなのよ、これは~~!?」ばりばりばり!

アスカは手にしていた小冊子を思い切り引き破った。アスカの周りでは4人の適格者および予備適格者の洞木ヒカリが小冊子を読んでいたが、アスカの声に
驚いて一斉に顔を上げた。
「なんなのよって、さっきも言ったでしょ?あんたたちが主演する映画の台本よ」
ミサトがこともなげに言った。周りのみんなも頷いている。
「違うわよ!なんで私たちの最初の主演映画がこんな下らないお子様映画なのか、って言ってんのよ!」
あ~、そういうことか、と周りも納得した。

チルドレンアイドル化計画は順調に遂行され、チルドレン達にもその計画が伝えられた。洞木ヒカリを加えた6人は当初その作戦への参加に難色を示して
いたが、ネルフのため、ひいては人類のためだと詐欺すれすれのミサトの口車に乗せられて、作戦参加を了承してしまった。そして今、鮮烈デビューを飾る
ためのミサトの秘策『主演大作映画公開日にデビュー』作戦のための映画の打合せを行っているわけなのだが。

722: 2009/09/28(月) 06:07:43 ID:???
「普通の映画じゃインパクトないでしょ?こういう娯楽作品の方が集客性が高いし、話題性もあってインパクトが大きいのよ」
ミサトの説明。あ~、なるほどねえ、とアスカ以外は納得顔だ。
「で、でも、普通こういう戦隊ものだと赤いのがリーダーするもんでしょ?!なんでシンジがリーダーなのよ?!バカシンジのくせになんかかっこいい役に
なってるし!!」
帰国子女の割には、マニアックな知識を持ってるな。
「それよりなにより、なんなのよ、私の役柄は!?ひ弱で内気で人見知りで、こ、こともあろうにシンジに憧れてるぅ~?!」
アスカは顔を真っ赤にして激高している。
「なんで私がこんなバカシンジに惚れるような役をやらなきゃなんないのよ!?すぐに訂正してちょうだい!!」
アスカは手にしていた台本(の残骸)をミサトの机にたたきつける。しかし、ミサトは涼しげな顔でアスカに告げる。
「アスカは顔とスタイル だ け は、超美少女だからね~。せっかくの素材だし、もっと大衆向けにアピール出来るように役作りを考えたのよ」
「別に、今の私のままでもいいでしょ!」
「今時ツンデレやヤンデレも時代遅れだしねえ。あんたの容姿で一般に最もアピールする性格をMAGIで解析したら、あんな性格になっちゃったのよ。
他のみんなもそう。鈴原君・渚君・ヒカリちゃんは普段とあまり変わらないけど、レイとシンジくんについてはほとんど別人のような性格が一番適しているという
結果が出たわ。つーわけで、今後はあんた達みんな、アイドルとして公の場にいる時は、この映画での性格設定に沿って行動してもらうわよ。」

723: 2009/09/28(月) 06:09:24 ID:???

その言葉にアスカは青ざめた。
「じゃあなに?アイドル活動をしている時は、こんな『こ、困りますぅ…』みたいなアホ娘を演じてなきゃならないわけ?」
アスカが媚びを売るような演技を見せた。その演技を見て、シンジがちょっと萌えてしまったりしてるけど。
「レイ!あんたも何か言ってやってよ!活発なアーパー娘なんてやらされて、いままで築き上げた『神秘的で寡黙な少女』のイメージが崩されるのよ!
こんな要求に従うの?!」
アスカはレイに救援を求めるが。
「命令なら、そうするわ」
にべもなく断られてしまった。がっくりするアスカ。しかし、そんなアスカを哀れんだのかレイが別案を提案した。
「…アスカがどうしても嫌なら、代わってもいいわよ」
「へっ?」
「あなたが活発な女の子の役で、私が内気な女の子の役をするの」
「お~、それやったら二人とも普段とあんまり変わらんかもな~」
トウジが感心したように言った。

724: 2009/09/28(月) 06:11:11 ID:???
(役柄の交換ねえ…)

アスカは想像する。活発でアーパーな私。アーパーってのは気に入らないけど、性格作りはそんなに難しくはないわね。うん、いいかも。そんで、レイが
内気で人見知りな性格になるっと。これも今とそんなに違いがあるわけじゃないから問題なしかな?で、いつもレイはバカシンジの側に寄り添うことに
なって………

「……ま、まあ、それはいいわ。レイに迷惑をかけるわけにもいかないしね」
「そう?」
レイは『自分は別にかまわないけど』という表情でアスカを見た。アスカもこんな好条件の取引をなぜ断ったのか、自分でもよくわからない。アスカの
心の機敏を感じ取れたのはミサトとヒカリだけだった。
「はいはい、それじゃアスカも納得してくれたわね」
「う、うぐ……わかったわよ」
アスカが折れた。この6人の中でもっとも弁の立つアスカが折れた以上、他の5人は抗弁するつもりもなかった。

725: 2009/09/28(月) 06:12:21 ID:???
「それじゃ、今後のスケジュールを説明するわ。この映画の撮影期間は明日から2ヶ月間、公開は3ヶ月後。公開日直前までタイトル以外は全て非公開で
臨むわ。そして公開日にあなた達はアイドルグループ『適格者』としてデビューします。デビュー曲は映画撮影後の1ヶ月間でマスターしてもらうからね。」
「デビュー曲ってなんですか?」
シンジが質問した。
「映画の挿入歌でもある『わたしはエヴァのパイロット』って曲よ」
「なんか悪い予感しかしないけど、一応聞いておくわ。どんな曲なの?」
アスカは既にあきらめきった表情をミサトに向けた。
ミサトは手元の機械を操作する。ちょっとした前奏の後にマヤの脳天気な歌声が聞こえてきた。

『♪きゅ~んきゅ~ん、きゅ~んきゅ~ん、わた~しはエヴァの、パイロ~ット~♪』

「………もういいわ、止めて」
アスカは半泣きでミサトに懇願した。シンジやトウジですら『今のはちょっとあんまりだよな』という顔をしている。カオルは早速鼻歌で今のフレーズを
繰り返している。結構気に入ったようだ。
「さて、そう言うわけであんた達にはこれからスタジオに籠もってもらうわ。アイドル作戦中はかなり不便を強いることになるでしょうけど、ネルフの
広報活動が軌道に乗ったらすぐに芸能界から引退させるからそれまで我慢してちょうだい」
「「「「「「…は~い」」」」」」
チルドレン達は、拒否の出来ない自分達の立場を嘆き、全てを諦めきった声で返事を返した。

726: 2009/09/28(月) 07:06:18 ID:???

「じゃ、解散ね」
ミサトの声と共に皆がため息をつきながらがたがたと席を立っていく中で、一人アスカは机に突っ伏していた。そんなアスカにヒカリが声をかける。
「アスカ、あんまり気負わない方がいいわよ。気楽にいきましょ」
「ヒカリ~、アンタはほとんど普段通りだからそういうこと言えるのよ~」
恨めしげな目で睨まれたヒカリ。ヒカリの役どころはおだやかで常識的な少女で、トウジとお互いに意識し合う仲。ヒカリにはなんの不満もないわけで、アスカの立場には同情することしかできない。
「あはは… ま、まあこういう映画とああいう曲でデビューさせられるんだから、多分すぐに世間から忘れ去られるアイドルになるんじゃないかしら」
「そう?」
「うん。そうなれば、この作戦も遂行不可能ということになって、すぐに引退できると思うわよ」
「そうだといいんだけどねえ…」
アスカは盛大なため息をこぼした。

727: 2009/09/28(月) 07:08:37 ID:???
以上、おしまいです
かなり独りよがりな内容ですね。すみません。

続きは次の機会に投下できればいいなと思っております。

728: 2009/09/28(月) 23:31:24 ID:???
終局の続きみたいなノリの軽い話ですね
LASとしては…微量かな?かなりギャグ方向に走ってるようでw

引用元: 落ち着いてLAS小説を投下するスレ 15