1: 2011/11/06(日) 21:23:16.78
女「嗚呼!男様!」

寝ぼけ眼でドアを開けた先には女が立っていた。

いかにもバリバリ働くOLと言った女だった。

男「え?い、一体全体なんなんですか・・・?」

女「あなたを信仰させてください!」

男「・・・ハァ!?」

そういうと女は私にすがりついた。驚きつつ振り払いドアを閉める私。

女「開けてください!お願いします!男様!」

一体どうしてこうなったのか・・・私は今日の出来事を整理する。

2: 2011/11/06(日) 21:23:55.55
4時起床、私は早起きな方だ。着替え、髭剃り、朝飯の用意をする

朝食を食べつつ新聞を読む、TVを付け音声を上げる。

出勤しようと歯磨きをしていると突然チャイムの音が鳴る。そしてさっきの状態だ。

何か私は天罰が下るような事をしたのだろうか。

セールスだ、セールスに違いないと思いつつもこのセールスの仕方は尋常じゃない。

女「男様!開けてください!話を聞いてください!」

男「う、うるさい!入ってきたら不法侵入で訴えてやるからな!」

3: 2011/11/06(日) 21:24:54.13
女「嗚呼・・・」

やっと諦めたか。

女「なんと勇気のあるお方なのでしょうか・・・男様・・・まさか法廷にまで持ち込める勇気があるとは・・・」

男「なっ・・・」この女は私をおちょくっているのか?

女「そんなあなたを私は心の底から信仰しております」どうやら本当に私を本気で信仰してるらしい

男「ま、待ってくれ。何故私なんだ?」

男は普通だった。あまりにも普通すぎた。

背も学力も誕生日も年の真ん中であり、ぼっちにはならず人気者にならず告白されたりは多くなく少なくなく・・・

そういう意味で男は日本一普通の男と言えた。名前も平凡である。男というどこにでもいそうな名前だ。

女「それは貴方様が貴方様であるからなのですよ」

4: 2011/11/06(日) 21:25:45.99
男「いや・・・どういう・・・」

女「決められたことなのです」

男「なら他の・・・」

女「駄目です。貴方でなくてはならないのです!」強い口調で女は言う。

どうやらこの女は私にどういうわけか一目惚れしたらしい。そう解釈した。どう考えても私の方が初対面だからきっとどこかであったのだろう。

何故か私を信仰するなどという妙な言い回しをしているのだが。

男「そうか・・・そういう事なら一度入って話さないか」会社の時間にはまだ早い。今日は仮病を使おう。ドアを開けた。

女「嗚呼!男様!ご尊顔を拝見させていただき」

男「いや待て、そんな事は言わなくていい」

女「いえそんな・・・」

男「君は私が好きなんだろう?」私はあることを思いついた

女「ある意味では・・・」

男「なら・・・信仰の印とやらにあなたの全財産も頂きましょう。お布施としてね。」

6: 2011/11/06(日) 21:29:17.39
女「えっ・・・」

こうしてみれば分かる。女は私に信仰するといった。なら信仰させるのに財産を貰ったらどうなのだろうか。

これなら簡単に諦めて・・・

女「拒否させていただきます」

男「なら信仰の話は」

女「いえ、今あなたは信仰を財産を渡さなければ信仰してはいけないといった。これは立派な信教の自由の侵害です」

なんなのだこの女は。

男「しかし財産を渡さなければ信仰してはいけないという契約を・・・」

女「契約と言うものは法律の前にはさほど力はありません。これを見てください。世界人権宣言です。」

第18条 すべて人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。

この権利は、宗教又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によって宗教又は信念を表明する自由を含む。

女「ね?信仰させてくださいませ男様。」

7: 2011/11/06(日) 21:29:59.33
男「ね?じゃないでしょう!いいですか?世界人権宣言は法的拘束力が」

配達員「郵便でーす。サインを」

男「あ、郵便配達員さん。聞いてくださいよこの女の人が」

女「配達員さん、このお方をどなたと心得ているのですか。男様ですよ?」

配達員「男様だって!?あの・・・あの男様ですか!?嗚呼!男様!是非とも私を信者に」

またややこしいのが増えた・・・

男「一体なんなんですかあなた達は!」

女「あなたの第一信者にさせてください!」

配達員「いえ!その座は私が!」

・・・

何がなんだか分からない

いやもうこの人たちは話してても埒が明かない。

私は制止する2人を振り切ってスーツも着ずに家を出た。

8: 2011/11/06(日) 21:31:07.86


巡査「派出所は今日も平和だなぁ・・・ホ〇でもするかな・・・」

男「あ、巡査さん!助けてください!」限りなく不安な一言を呟いていたが人を選んでいる暇は無い。

巡査「お?事件?ヒャッハー!事件事件!何々?六本木で河豚の毒を使った密室殺人事件があってそこに電卓を携帯に見立てたトリックを盛り込んでくる大胆な犯人がいるだってー!?」

男「そんな事1マイクロも喋ってないですよ!今私に悪質なストーカーが」

女「嗚呼!男様!」

配達員「男様ー!私を第1信者に!」

巡査「男・・・だと・・・!?」

男「え?」タジッ

巡査「あの、今日発表された『まだ信仰されていない』現人神の男様・・・ですか・・・?」

男「なんですかそれ」

女「知らないんですかー!?」

配達員「おっくれってるぅー!!!」

9: 2011/11/06(日) 21:32:13.78
巡査「いいですか?この国では大分前から国民の向上意識が薄れていました。そこで政府は1年前から『信仰されていない人』を国で選出し、その選出された人を崇めることによって心に余裕を持たせ経済の安定化を図ろうという政策が施行されたのです!」

男「そんな事・・・信教の自由が」

配達員「それは施行前に改正されました」

巡査「これは『秘密裏に作られた憲法』ですからね。そして今日N○Kを通じて男様が選らばれたのです!」

男「知る権 巡査「それは公開されました。新聞に小さく・・・ね」

男「狂っている・・・」頭が痛くなってきた。なんという法律を作るのだ!狂っている!

巡査「国の決まりですから運命とでも取ってください・・・では男様、情報を提供した私を第1信者に」

女「そんな!それは私が!」

配達員「じゃあ間を取って私が」

男「もう好きにしてくれ」

10: 2011/11/06(日) 21:33:18.27
女&配達員&巡査「今なんと?」

男「お前たち3人を同時に信者とする」

3人「やったー!!!」

3人は万歳している。今のうちに逃げ・・・

女「男様、嗚呼男様!どこへ行こうというのです!」

男「家に帰ります」私は走り出した

配達員「嗚呼!男様!待ってください!お供させてください!」

男「止まれ!付いてきたらお前らは破門だ!」

女「破門されても私は男様を教祖として崇め奉ります!私が何をしようと『自由』です!」

男「なっ・・・」

巡査「私とホ〇を!私が何をしようと『自由』なので!」

男「やめろ!訴えるぞ!」

配達員「嗚呼訴える勇気があるとはなんという勇気のある・・・」

男「俺は臆病者のだらしないどうしようもないサラリーマンだ!」

女「まあそう謙遜なさらず!」

なんだこいつら!

11: 2011/11/06(日) 21:34:07.92
しかもこの3人、時たま「嗚呼!男様!」と呼んで確実に仲間を増やしている!

振り向くと既に30人が追ってきていた

信者「男様!男様!」どんどん信者は増える

男「やめろ!来るな!来るな!」

信者「来るかどうかは私たちの『自由』です!」

男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!

男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!

男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!

男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!

河原まで来てしまった。橋を渡り始めたがなんとどこから嗅ぎ付けたのか信者が橋の向こうからも!

男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!男様!

追い詰められた!

信者「嗚呼これが男様のお体!なんという贅肉の無い締まった体!」南無三!囲まれた!万時休す!

12: 2011/11/06(日) 21:35:37.08
男「くそっ・・・離せ!」二つの集団は一つになり、揉みくちゃにされつつ引き剥がす

信者「離すか離さないかは自由です!」

男「人権・・・蹂躙だ!離せ!暴力信者!」

女「嗚呼なんと男らしい口調!うっとりします!」

配達員「男様のお体・・・嗚呼!嗚呼!」

巡査「男様のためにもう準備万端です!咥えてください!」イチモツデロン

男「くっ・・・やめ・・・やめろ!」揉みくちゃにされつつ引き剥がし橋の手すりに立つ

男「お前らが触ったら俺は氏ぬぞ!近寄るな!」

女「そんな事男様がするはずがございません!」サワサワ

信者「男様の体」スリスリ

男「あっ馬鹿!やめっ・・・」

体が宙に浮く

頭が痛い

橋の手すりに辛うじて捕まった。

13: 2011/11/06(日) 21:36:37.98
男「その手を離せ!これは教祖からの命令だ!」

配達員「離しません!私が何をしようと『自由』です!!」

男「自由って・・・」

落ちる、落下、落下、落下。

男「自由ってなんだァァーーーッ!!」

激突。

男は氏んだ。


女「氏んでしまいましたか・・・」

配達員「またか・・・」

女「嗚呼、信仰する事のどこがいけないんでしょうね・・・今まで信仰されて生き残った人は少数ですがいるのに・・・」

巡査「仕方ないさ、これも運命だ。今度はホ〇してくれる相手がいいな」

14: 2011/11/06(日) 21:37:15.65


「日本には八百万の神というものがあります。その中にはきっと不本意ながらも神にされてしまった者もいるでしょう。なにしろ凄い数の神がいますから。」

「あなたは何を信じますか?自分自身だけを信じていける世の中でしょうか。」

「あなたは、もしかすると他人を無意識のうちに信仰し頼り崇め奉っているかもしれませんよ。」



15: 2011/11/06(日) 21:38:00.24
なんか「世にも奇妙な物語」みたいな感じのSSを突発的に書こうとしてたらギャグっぽくなってしまった
それに合わせて巡査を書き換えてたらなんかホ〇っぽくなってしまった。
後悔はしている。反芻はしていない。

それではまたの機会に。

18: 2011/11/07(月) 01:14:08.27
とりあえず乙。導入部がウマいなーと思った
もしかして福山庸治の「17」好き?

引用元: 女「嗚呼!男様!」