1: 2010/10/10(日) 19:23:29.10
憂「……モグモグ……」

私の目の前には大量のさくらんぼ。
甘い甘い、美味しいさくらんぼ。

普段は滅多に食べることはない果実です。

でも、ただ食べてるだけではありません。

少しだけ、少しだけ試したくなっただけですから。

3: 2010/10/10(日) 19:29:36.11
今日、クラスメイトの女の子がこんなことを言っていました。

『あんたの彼氏ってかっこいいよねー』

『かっこいいだけじゃなくて、優しくてキスも上手いんだー』

『へえ、いいなぁ。私の彼氏キス下手でさー。ちょっと痛いし』

『キスと言えば、さくらんぼのヘタを口の中で結べたら上手いらしいよ』

『それ聞いたことあるわ。今度やってもらおうかな。結べなかったりして』

『下手なら結べないんじゃない?』

『かもねー。練習させたろうか』

『それいいね。あはははははは』

――こんな会話だったかと思います。

7: 2010/10/10(日) 19:34:54.89
女子高だって彼氏が居る人は居ます。

彼女達は周りの人より大人っぽかったから
彼氏が居ても不思議ではありません。

純ちゃん達と喋りながら
そんな彼女達の会話に聞き耳を立てていました。

――だって、少し興味があったから。

8: 2010/10/10(日) 19:39:15.60
彼女達のその後の会話はどんどんエスカレートしていき
子どもな私には刺激が強すぎました。

いつか大人の階段を上るのかも知れませんが
まだ早いですよね。多分……。

彼女達の話を聞いてしまったためか
私の身体は熱くなり頬も紅潮していると思います。

少し伏せて熱が治まるのを待ちました。

11: 2010/10/10(日) 19:42:48.20
純「憂、どうしたー?」

梓「お腹でも痛いの?」

憂「ううん。ちょっと熱いかな?」

純「窓開けますか」

憂「大丈夫だよ。もう平気。えへへ」

純「そっかぁ。無理しちゃダメだよ」

憂「うん。ありがとう」

12: 2010/10/10(日) 19:47:10.20
いけないいけない、親友に心配をかけてしまいました。

この話はもう忘れようとしました。
この後も授業がありますからね。

余計なことを考えている場合ではありませんから。


そして今日の授業全て終わり
二人に別れの挨拶を済ませて家へと急ぎました。

13: 2010/10/10(日) 19:50:57.12
憂「あ、今日お買い物行かなきゃ」

お姉ちゃんに美味しい物を食べてもらうために
新鮮な食材は欠かせません。

ほぼ毎日買い物をしてあったかご飯を作ります。
美味しいと言うお姉ちゃんの笑顔が私をそうさせますから。

弾む気持ちでスーパーへ向かいました。

15: 2010/10/10(日) 19:54:47.52
憂「今日は何を作ろうかなぁ」

献立を考えるのも楽しい時間です。
食材を見てるとメニューの内容が浮かびます。

これも良いなあれも良いなと食材を選んでいると
頭の片隅に眠っていた、あの果物が目に飛び込んできました。

――さくらんぼ。

19: 2010/10/10(日) 19:58:50.72
それを手に取ります。
瑞々しい鮮紅色のさくらんぼ。

見ているだけで甘くて美味しそうです。

お値段は――少し高いかもしれないけど
何とはなしにカゴに入れてしまいました。

あの時の話が気になっていたからでしょうかね。

20: 2010/10/10(日) 20:02:32.31
そしてそのまま適当な食材をカゴに入れ
お会計を済ましました。

そして、家に帰り食材を冷蔵庫へ入れます。

後は洗濯物をしまい、軽く掃除をしてから
リビングで一息をいれました。

お夕飯を作るまでまだ時間があります。

21: 2010/10/10(日) 20:06:18.88
――何か飲みたいなぁ

そう思ったので冷蔵庫を開け飲み物を探しました。

飲み物といえばお水や牛乳とオレンジジュースくらい……。
どれを飲もうか考えていると
買ってから手を付けていないさくらんぼが目に付きました。

しばらく見詰めます。

――ヘタを結べるとキスが上手いんだって。

あの言葉が再度頭に流れました。

22: 2010/10/10(日) 20:09:11.45
そういえば昔、幼稚園くらいだったっけ
お姉ちゃんとキスしたことがあったなぁ。

その時はふざけててキスって分からなかったけど
唇を押し付けてたら痛がってたっけ。

今なら上手く出来るかな……?

25: 2010/10/10(日) 20:10:48.43
お夕飯作りまで暇だったので
練習がてらに挑戦してみることにしました。

袋を取るとさくらんぼの甘い匂いが漂ってきました。
普通に美味しそうです。

今度パフェでも作って
お姉ちゃんに食べさせてあげたいくらいです。

26: 2010/10/10(日) 20:15:50.69
こたつテーブルに着き
さくらんぼをお皿に並べ準備は整いました。

一つ摘み口の中へ含みます。
瞬間的に甘味が口の中に広がります。
そして唾液が増えていくのが分かりました。

ついつい笑顔になってしまいます。
女の子なら誰だって甘い物が好きですから。
お姉ちゃんも好きだもんね?

でも味わってる場合ではないので
唾液を飲み込み、先に実だけを食べました。

あ、先に実を取ってからヘタを食べればよかったですね。
ちょっとおっちょこちょいでした。

27: 2010/10/10(日) 20:19:39.60
種を取ったあと
ヘタだけになった口の中で、舌をもごもご動かしました。

こう、舌でヘタを押したり丸めようと必氏に動かしますが
上手くいかないようです。

先ほどの実を食べた味が残っていて
唾液もそれなりに湧いてきます。

その状態で舌を動かすと、くちゅと云った音が耳に響き
何かと恥ずかしくなってきました。

28: 2010/10/10(日) 20:22:53.15
憂「ふぅー」

上手くいきません。
掌に出したヘタは最初の状態から変わっておらず。
軽く弧を描いたままです。

結べないということは――キスが下手!?

憂「まだまだ……!」

落胆しつつも再度チャレンジです。

29: 2010/10/10(日) 20:27:04.78
それから時間を忘れてヘタを結ぶ練習をしました。

でも、まったく思い通りにヘタが動いてくれません。
舌の上をつるつる滑っている感覚です。

――もー、どうして上手くいかないの?

苛立ちを隠せず溜め息が漏れました。

30: 2010/10/10(日) 20:31:08.44
落ち着くために目の前のさくらんぼを食べます。

――甘い。

キスも甘いとか云いますけど
まだ私には解りません……。

でも、いつかはするのかもしれません。
どうせやるなら――



唯「憂?」

31: 2010/10/10(日) 20:33:40.39
憂「っ……!」

ゴクンっと唾を飲み込みました。
あ、種まで飲んでしまいました。

振り返るとお姉ちゃんが不思議そうに
こちらを見ていました。

いつの間にか帰ってきたようです。
夢中で気付かなかったなぁ……。

32: 2010/10/10(日) 20:35:44.91
唯「もー、居るなら居るって言ってよ」

唯「全然返事ないんだもん」

ふと大きな窓の外を見るとすっかり日が落ちていました。
夢中になりすぎてたようです。

ああご飯の準備も何もしていませんでした。
大失態です……。

憂「あ、ごめんねお姉ちゃん」

憂「すぐ準備するから――」

33: 2010/10/10(日) 20:38:23.51
唯「ういー、これはー?」

お姉ちゃんがお皿を手に取って言いました。

憂「あ、えーと……」

唯「さくらんぼだねー。美味しそう」

憂「うん、仕舞っちゃうから貸して」

唯「一個もーっらい!」

憂「あっ」

34: 2010/10/10(日) 20:41:36.20
お姉ちゃんは一つさくらんぼを摘み、口の中へ入れました。
もごもごと口を動かすお姉ちゃんの顔は真剣です。

そのままさくらんぼを口に入れたままお姉ちゃんが喋ります。

唯「ういーしってるー?」

憂「な、何を?」

唯「むぐ、さくらんぼのヘタを口だけで結べるとキスが上手いんだってー」

うん、知ってるよ。返事代わりに頷きました。

36: 2010/10/10(日) 20:44:54.48
暫くリビングには沈黙が流れ
私はお姉ちゃんを見詰めていました。

唯「んっぺ……」

お姉ちゃんが掌にヘタを吐き出します。
ヘタは結ばれて――はおらず
強く押しすぎたせいか少し折れている感じでした。

唯「うーん、やっぱり上手くいかないなぁ」

てへへと頭を撫でながら苦笑いのお姉ちゃん。
惜しいよ!お姉ちゃん!!
可愛いよ!お姉ちゃん!!

37: 2010/10/10(日) 20:48:43.85
唯「練習してたんだけどなぁ」

そう言ってお姉ちゃんは
また一つさくらんぼを手に取りました。

練習?お姉ちゃんも?どうして?

頭の中が少し混乱している間
お姉ちゃんはさくらんぼを見詰めながら言います。

唯「ういもさー、練習してたんだよね?」

唯「ヘタを口だけで結ぶのを」

38: 2010/10/10(日) 20:51:55.15
ドキっと一瞬鼓動が早くなりました。

何て返事をすればいいのでしょう。
お姉ちゃんとのキスを上手くやりたいから――。

そんなことを言ったらどんな顔をされるか……。

憂「えっと……」

唯「ううん、隠さなくてもいいんだよー」

お姉ちゃんがニッコリ笑顔で言いました。

憂「う、うん。練習……してた」

40: 2010/10/10(日) 20:55:02.96
唯「そっかーそっかー。」

お姉ちゃんは静かにほくそ笑みました。

そしてそのままゆっくり私の隣へ座り
身を乗り出す感じで顔を近づけてきました。

唯「じゃあさ、一緒に練習、してみる……?」

憂「練習……?」

唯「うん練習。ムギちゃんが教えてくれたやり方――」

48: 2010/10/10(日) 21:02:07.03
どことなく緊張の面持ちのお姉ちゃん。
私も困惑の表情をしていると思います。

お姉ちゃんの頬が段々朱くなり
何となく意味が解った私は言います。

憂「お姉ちゃん……それって、キ――」

言い終わる前にお姉ちゃんの人差し指が
私の唇に押し付けられました。

しーっと小さな子どもをあやす様な仕草と
唇に残る指の肌触りが
私の気持ちを高ぶらせていきました。

49: 2010/10/10(日) 21:07:46.01
唯「したいの?したくないの?」

ずるいよ……。
そんな言いかたされたら――。

憂「し……たい……」

喉の奥から搾り出したような声でした。

――ああ、今からどうなるんだろう。

少し手足は振るえ
甘いさくらんぼによって
湧き出た唾液をゴクリと一飲みします。

身体は凄く熱くなっていました

50: 2010/10/10(日) 21:10:34.60
お姉ちゃんは私の言葉に頷くと
さくらんぼに目をやりました。
無造作に一つ摘み口へ。

そして前歯に挟み込み
ニコっと満面の笑顔になります。

本当に眩しいくらいの笑顔です。

息をこらして胸の前で手を握ります。

私の鼓動がますます早くなり
自分では抑えきれないほどです。

51: 2010/10/10(日) 21:15:28.45
お姉ちゃんは少し汗で
額に張り付いた私の髪の毛を掻き分けてくれました。

そして自分の額を私の額にくっつけます。
目の前はお姉ちゃんの顔だけです。
もうお姉ちゃんしか見えません。

お姉ちゃんの吐息が
私の唇にかかるくらいまで近づいています。

後少し――。

53: 2010/10/10(日) 21:19:01.99
私は目を閉じました。
緊張や恐怖心から逃れるためではありません。

――お姉ちゃんを受け入れるために。

視界が失われると足元がおぼつかず
座っていても倒れそうな感覚です。

でも大丈夫。目の前にお姉ちゃんが居るから。
支えてくれるお姉ちゃんが居るから――。

そして、それを皮切りに
お姉ちゃんが私の頬に手を添え



お姉ちゃんと私の唇が一つに重なりました。

56: 2010/10/10(日) 21:23:34.54
唇が触れ合った瞬間
私とお姉ちゃんは身体がビクっと痙攣しました。

子どもの時とは違う、初の体験と感触。
お姉ちゃんの身体も震えています。

私達は暫くそのまま口付けを交わしていました。
お姉ちゃんの鼻息が私の顔に触れます。
くすぐったいけど
どことなく心地いい――そんな感触です。

薄目を開けるとお姉ちゃんは頬を朱くして目は瞑っています。
真剣だけど――かわいいな、そう思える表情でした。

57: 2010/10/10(日) 21:29:32.15
幼き日の遊びとは違い
正真正銘のファーストキス。

――とっても甘かった。

さくらんぼだから甘いのか。
お姉ちゃんの唇だから甘いのか。

私にとって、そんなのどちらでもいいのです。

世界で一番好きな人――愛している人とキスが出来た。

ただ、その事実が私を得も言わぬ幸福感に浸らしてくれます。

59: 2010/10/10(日) 21:36:16.19
再び目を閉じた瞬間に唇をこじ開けられ
異物――さくらんぼが入ります。

そして後からお姉ちゃんの舌が入ってきました。

憂「んっ……」

お姉ちゃんの舌先と私のそれが触れ合います。
先ほどより、一層身体が震えますが
この行為は止まりません。

憂「はっ……おねえひゃ……」

くぐもった声を漏らしつつ私はお姉ちゃんを求めました。

さくらんぼを無視して
ただただお姉ちゃんと舌を絡めるだけになりました。

――練習ってなんだろうね。

61: 2010/10/10(日) 21:43:08.62
暖かくなったさくらんぼが
私の口の中に取り残されています。
それを押し付ける感じでお姉ちゃんの口へ押し込みます。

唯「んっ……ひゃ」

口の隙間から艶かしい声色が漏れ
それがさらに私の情動を掻き立てました。

お姉ちゃんと唇と私の唇が橋となり
行ったり来たりするさくらんぼ。

唾液が、開いた唇の隙間から顎を伝い私達の服へ沁み込みます。

舌が触れ合う感触とさくらんぼの丸い感触が気持ちよくて……。

頭の中が真っ白になり、意識が飛びそうでした。

62: 2010/10/10(日) 21:47:13.30
それから私の身体は弛緩し力が入らなくなりました。

後ろに倒れそうになりますが
頬に添えてたお姉ちゃんの左手が背中に回り支えてくれます。

右手は私の左手と絡み合い、力強く握ってくれました。

お姉ちゃんに支えられている
この心地よさが堪らなく好きです。

後はお姉ちゃんに身を任せ、されるがままになりました。

63: 2010/10/10(日) 21:53:16.28
お姉ちゃんが私の舌の上でヘタを押さえつけています。
ああ、結ぼうとしているのかな。

私もヘタを押さえつけますが

――やっぱりダメだよ。実が付いたままだもん。

憂「おね……はっ……さくらんぼ」

唯「うい……ふぁ」

ぽろりと口から零れるさくらんぼ。

唯「はぁ……はぁ」

憂「お、ねえちゃ……」

お姉ちゃんは、私をそのままゆっくり床に仰向けに寝かせ
私を見詰めながら手探りでコタツ上のさくらんぼを掴みます。

焦る気持ちが先走ったのか、お皿がひっくり返った音がしました。

65: 2010/10/10(日) 21:59:44.04
そして掴んださくらんぼをまた口へ含みました。

三つほど掴んでましたが、二つぽろりとまた床へ落ちます。

憂「あ……さ、んっ」

言葉を発する前にお姉ちゃんの唇で塞がれました。

お姉ちゃんはまた私の頬に手を添えひたすら舌を絡めます。
そんなお姉ちゃんが愛しく、背中に両手を回し強く抱きしめます。

お姉ちゃんがガリっと実を噛んだらしく
先ほどより甘い味が口の中へと広がりました。

唯「お、はぁ……。おいひい?」

憂「あふ……うん…………はぁ」

67: 2010/10/10(日) 22:06:21.93
あれからどれくらい時間が経ったのでしょうか。
口の中のさくらんぼはどちらが飲み込んだらしく
綺麗さっぱり無くなっていました。

それでもただひたすらに口付けをし
舌を絡めるだけになった私達。

リビングには
私達の淫靡とも呼べる音が響き渡るだけでした。

でも、流石に疲れたのか
ゆっくりとお姉ちゃんが顔を上げました。

68: 2010/10/10(日) 22:12:42.78
艶っぽい表情を浮かべ、肩で息をするお姉ちゃん。
唇には私の唇へと通ずる糸が出来ていました。

それを畳む様にまたキスをしてきました。

私は全身が幸福感に包まれましたが
何とも言えない虚無感と脱力感にも包まれました。

実の姉にこんなにも濃厚な口付けをし
欲情とも言える感情までも抱いてしまったからでしょうか。

――でも、またやりたい。

この想いが暫く抜けることはないと思います。

69: 2010/10/10(日) 22:17:04.41
お姉ちゃんは唇を離し、私の頭を優しく撫でてくれました。
そして、唇周辺の唾液を指で拭いてくれました。
ぷるっと唇が揺れた気がします。

憂「お姉ちゃん……」

唯「ういー。さくらんぼ無くなっちゃったね」

ニコニコと、笑顔のお姉ちゃん。
耳元へ顔を近づけ囁きました。

唯「明日も“練習”しようね」

憂「う……ん……」

72: 2010/10/10(日) 22:21:14.25
練習――そう練習です。明日も。きっとその次の日も。

身体をゆっくり起こし、お姉ちゃんを見詰めました。

唯「さあ、ご飯作ろう。手伝うよー、お腹空いちゃった」

うん、お腹空いたね。お姉ちゃんの好きな物作るよ。

そして明日も“さくらんぼ”沢山買ってくるからね。

――本当に明日が楽しみだね、お姉ちゃん。





                          おしまい


75: 2010/10/10(日) 22:28:53.01

甘すぎワロタ

引用元: 憂「さくらんぼ」