2: 2014/03/26(水) 19:21:46.43
【事務所】

小鳥「…………」カタカタ

小鳥「…………ふぅ」


春香「ほら雪歩! 今だよ、今!」

雪歩「で、でも……音無さん忙しそう……」

真「大丈夫、ぜったい喜んでくれるって!」

雪歩「お仕事の邪魔に……」

真美「いやいや、どうせまたソリティアしてるよ」

伊織「この前律子に見つかって叱られてたから、流石にそれはないと思うわよ」


春香「じゃあ雪歩、後ろからソーっと近づいて様子を見たらいいんじゃない?」

雪歩「えっ」

春香「それで大丈夫そうだったら、渡してみたら?」

伊織「まぁ忙しいって言っても、ちょっとぐらいなら平気だと思うけど」

雪歩「そっか……」

1: 2014/03/26(水) 19:20:30.67
続き物

前の前

伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391946993/



春香「人にやさしく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392536389/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395829230

3: 2014/03/26(水) 19:23:57.36
雪歩「…………よ、よし」

雪歩(春香ちゃんに言われたとおり……後ろからソーっと……)

雪歩「こ、小鳥さん!」

小鳥「わっ! びっくりしたぁ……えと、どうしたの?」

雪歩「ど、どど、ど、どうぞ! 疲れたときには甘いもの、ですぅ!」

小鳥「クッキー? あ、これって……」

春香「はい! 昨日みんなで作ったんです」

伊織「って言っても、私達はちょっと手伝っただけで……」

真「雪歩がほとんど一人で作ったんですよ! ねー雪歩!」

雪歩「ねー」

伊織「真美はもっぱら試食してたみたいだけど?」

真美「いやぁ、大地の味がしたときは、真美の舌がオカシクなったのかと思ったよー」

春香「七味を入れようとしたときは、舌じゃなくて頭がオカシクなったのかと……」

真美「はるるん、あれはジョークですぜ」

真「ジョークじゃなかったら恐怖だよ」

4: 2014/03/26(水) 19:25:38.86
小鳥「ありがとう、雪歩ちゃん」

雪歩「は、はい! えへへ」

小鳥「えっと……もう少ししてから頂いてもいいかしら?」

雪歩「はい」

真美「ぴよちゃんってば、またソリティアで忙しいの?」

小鳥「ち、違いますぅ」

伊織「じゃあ今画面に映ってるコレはなによ?」

小鳥「あコレ? これは……アレよ、フリーセル」

伊織「……律子にいいつけてやろうかしら」

小鳥「後生ですからぁ!」

伊織「にひひっ、冗談よ」

真美「息抜きはほどほどにねー」

春香「ゲームは一日一時間ですよ」

小鳥「……はい」

5: 2014/03/26(水) 19:27:07.97
春香「小鳥さん、今日はもう誰も来ないんですか?」

小鳥「えっどうして?」

雪歩「あ、あの……みんなの分もクッキー作ってきたので……」

小鳥「あそっか」


小鳥「えーっと、プロデューサーさんはまだみたい」

春香「そうですか……」

小鳥「あら? 残念そうねぇ」ニヤニヤ

春香「そ、それは小鳥さんだって同じじゃないですかぁ」

小鳥「えぇ、プロデューサーさんが居なくて残念だわー」

春香「あーなんかズルイ!」

小鳥「ふふっ」

春香「っていうか私のことはどうでもよくて! 大事なのはクッキーですからっ」

真「そういうことにしとこうかな」

伊織「そうね」

春香「ちょっとぉー!」

6: 2014/03/26(水) 19:28:47.50
伊織「プロデューサーって今日律子と一緒なんですって?」

小鳥「そうよ」

春香「二人で行動って、珍しいですね」

小鳥「うん、竜宮と春香ちゃん達とで何か企画をやりたいらしくって……」

小鳥「いくつか案を考えたから、それを売り込みに行ったみたい」

真「事務所内コラボって感じですか?」

小鳥「そうね」

真美「ムッチャ楽しそう! ねぇねぇ何やるの?」

小鳥「さぁ……私も知らないの」

伊織「まぁでも、その案が通るかどうか分かんないでしょ」

春香「うーん……律子さんも一緒なら大丈夫じゃないかな?」

真「ふふっ、それってプロデューサーだけじゃ頼りないってこと?」

春香「いや別にそーいう意味じゃなくてっ!」

真美「おやおや、随分と慌ててますなぁ~はるるん」

春香「……ウルサイ」

8: 2014/03/26(水) 19:31:42.34
小鳥「あっ、そうそう! もうすぐしたら響ちゃんが帰ってくると思うわ」

真美「ひびきんは今日なにしてんの?」

小鳥「今日はご当地キャラを集めたイベントがあって、その沖縄ブースに呼ばれたの」

真美「おーすんごいジャン!」

小鳥「え、えぇ……」

真美「あれ?」

伊織「小鳥、何よその反応」

小鳥「うん……実は病欠で来れなくなった、中の人の代役なの」

春香「中の人?」

真「ってことは、ぬーぬ…………着ぐるみ?」

小鳥「スーツアクターって言えばいいのかしら?」

伊織「……それで、響はなんて?」

小鳥「『自分、体力には自信あるんだー!』って、喜び勇んで出かけていったわ」

春香「あはは、響ちゃんらしいですね」

9: 2014/03/26(水) 19:34:23.05
小鳥「それから……あら?」

伊織「どうしたの?」

小鳥「あずささんがもう帰ってないとオカシイのに……まだね」

真「まさか……また迷子になっちゃったのかな」

雪歩「ま、迷子!?」

小鳥「一応簡単ではあるけど、手描きの地図を持たせてあるから……」

真美「ぴよちゃ~ん、あずさお姉ちゃんのJPYを侮っちゃいけないよ~」

小鳥「JPY?」

真美「あれ……違ったっけ? あの宇宙から誰かが見てるやつ!」

伊織「その説明は意味わかんないけど、GPSのこと?」

真美「そうそれそれ!」

雪歩「だ、大丈夫かな……」

真「心配だね」

春香「小鳥さん、電話してみたらどうですか?」

小鳥「そ、そうね……やってみる」

10: 2014/03/26(水) 19:40:15.42
――

小鳥「……ダメ、繋がんないわ」

春香「探してきましょうか?」

真「ボクも!」

小鳥「うーん……もう少しだけ待ってみましょう」

小鳥「それでも帰って来ないようなら、お願いしてもいいかしら?」

伊織「そうね……下手に動くと、ミイラ取りがミイラになっちゃうわ」

真美「なにそれ?」

春香「二の舞ってこと」

真美「……ナニソレ?」

真「あずささんを迎えに行ったボクたちまで、連絡がつかなくなるってことだよ」

真美「つまり、ミイラ取りが二の舞を演じるってことだね!」

伊織「……アンタ絶対意味わかってるでしょ」

真美「うぅん、テキトーに言ってみただけ」

11: 2014/03/26(水) 19:41:33.66
【某イベント会場】

響「おつかれさまでしたー!」

響「……よし! プロデューサーに電話だっ!」


prrrrr  prrrrr  prrr――


P『もしm――』

響「ハニー!? 電話出るのが遅いって思うぞ」

P『あぁ響、終わったか?』

響「うがぁー! どーして自分だって分かったんだー!?」

P『知ってるか? 携帯の画面には相手の名前が出るんだよ』

響「……ぁ」

P『それに、声はそこそこ似てたけど……美希は「思うぞ」なんて言わないと、思うぞ』

響「そっか」

P『そんなことより、イベント参加おつかれさん』

響「うん!」

12: 2014/03/26(水) 19:44:17.79
P『一人で移動させてゴメンな』

響「気にしなくていいぞっ! プロデューサーは忙しいし」

響「それに、一人で移動してるのは自分だけじゃないぞ」

P『そうだな』

響「まぁ自分完璧だしぃ」

P『助かるよ、ありがとう響』

響「なっ……ちょ……」

P『……どうした?』

響「急にお礼なんて言われたら……て、照れるじゃないか」

P『顔がニヤけてるぞ』

響「でっへへへぇ~」

P『電話だから見えないだろってツッコミが欲しかったんだけどな……』

響「えっなに?」

P『なんでもない』

響「そか……それじゃプロデューサー! 自分、すぐに帰るねっ!」

13: 2014/03/26(水) 19:47:24.73
P『そうそう、今律子と一緒で事務所に居ないからさ、適当に時間潰したら家に帰っていいよ』

響「えっ!? プロデューサー居ないの?」

P『あぁ、多分響の方が早いと思う』

響「なぁんだ……それならゆっくり帰ろっ」

P『何故そうなる?』

響「別にぃ~」

P『ゆっくりだろうとすぐだろうと、気をつけて帰るんだぞ』

響「うん!」

P『もし何かあったら、俺でも小鳥さんでもいいから電話してくれ』

響「はーい」

P『それじゃーな』

響「またやーたい」


響「…………」

響「『ありがとう響』だって」

響「へへっ……帰ろ」

14: 2014/03/26(水) 19:49:05.69
響「ふんふ~ん♪」

響「海やからぁ~ ドンド~ン スゥリィ~~スゥ~リィ~~♪」

響「イーヤサッサ…………ってアレ?」

響(あの交差点で信号待ってるの……あずささん?)

あずさ「…………」

響「やっぱりあずささんだっ!」


あずさ「はぁぁ」

響「う~ん?」

響(信号待ちしてるって感じじゃないぞ……なんだろ?)

響(もしかして……迷子?)

あずさ「…………」キョロキョロ

響(アッチコッチ見てる……多分道に迷ったんだ!)

響「……よしっ!」

15: 2014/03/26(水) 19:50:52.92
あずさ「…………はぁ」


あずさ(どうしてなのかしら?)

あずさ(いつもいつも、道に迷って)

あずさ「…………」キョロキョロ

あずさ「……」キョロ

あずさ(いくら周りを見渡したって、どうにもならないわね)

あずさ(右も左も、前も後ろも……分からないもの)

あずさ(この地図だって、自分がどこに居るか分からないのなら意味が無いわ)

あずさ(せっかく音無さんが描いてくださったのに、そのご好意まで無駄に……)


あずさ「…………」

あずさ(……ここは、どこなの?)

あずさ(私はどうやってここまで来たの? どうやって事務所に戻ればいいの?)


あずさ「はぁぁ」

16: 2014/03/26(水) 19:52:16.58
響「あずささーん!」

あずさ「あ、響ちゃん…………よかったぁ」

響「何がよかったの?」

あずさ「う、うぅん」


あずさ「響ちゃん、今日お仕事は?」

響「もう終わったぞ! 今事務所に戻ってる途中!」

あずさ「そう……」

響「あずささんは?」

あずさ「私も事務所に……戻ろうとして…………それで……」

響「道に迷ったの?」

あずさ「……えぇ」

響「それなら会えてよかったね!」

あずさ「そ、そうね」

響「えへへ」

あずさ「…………」

17: 2014/03/26(水) 19:55:22.12
あずさ「ここは『スクランブル交差点』って場所らしいんだけど……響ちゃんわかる?」

響「う、うん……事務所までは帰れるから安心して」

あずさ「そう……響ちゃんすごいわね」

響「そ、そうかな?」

あずさ「えぇ、とっても」

あずさ(それに比べて私なんて……)

響「…………」


響(あずささん、なんだか元気が無い)

響(もしかして……迷子になったから?)

響(でもあずささんって、いつもそんなこと気にしないし……)


響「う~ん……」

あずさ「響ちゃん?」

響「へ? あ、うん……帰ろっ」

響「……っとその前に、ぴよこに電話するね!」

18: 2014/03/26(水) 19:56:12.48
prrrrr  prrrrr  prrr――


小鳥『もしm――』

響「小鳥嬢……できれば早急に電話をお取り願いたいのですが……」

小鳥『響ちゃん、もう終わったの?』

響「うがぁー! どーして自分だって分かったんだー!?」

小鳥『だって声が響ちゃんそのままなんですもの』

響「そ、そか……」


小鳥『もうこっちに帰ってるのかしら?』

響「うん! あずささんも一緒だぞ!」

小鳥『えっホント!?』

響「ホントだぞっ! さっきたまたま会ったから」

小鳥『は~よかったぁ』

響「えっ?」

小鳥『いや、うん……なんでも』

19: 2014/03/26(水) 19:57:57.72
小鳥『それじゃ、気をつけて帰ってきてね』

響「うん!」

小鳥『もし何かあったら、私でもプロデューサーさんでもいいから電話してください』

響「ふふっ、それプロデューサーも言ってた」

小鳥『あらそう? ってことは……何かあったの!?』

響「うぅん、一応電話しただけ」

小鳥『そっか』

響「じゃ、またあとでねっ!」

小鳥「はーい」


響「……よし、と」

あずさ「……私も電話すれば良かったのね」

響「え?」

あずさ「うぅん」

響「???」

20: 2014/03/26(水) 19:59:32.18
――

響「でね、ドンドンっていうのはロンドンが訛った言葉で……」

あずさ「…………そう」

響「海やからっていうのが……」

あずさ「…………」

響「…………あずささん?」

あずさ「そうだったの」

響「まだ何も言ってないぞ」

あずさ「ぁ……ゴメンナサイね」


響「あずささん、さっきからずっと変な感じ」

響「もう二回も赤信号に気付かないで歩いていこうとしたし」

あずさ「響ちゃんが引き止めてくれて、助かったわ」

響「そうだけど……あずささんだって気をつけて……」

あずさ「……はぁ」

響「ぁぅ……」

21: 2014/03/26(水) 20:02:11.20
響「…………」

響(あずささん、やっぱりいつもと違う………どうしたんだろ?)

響(ひょっとして……)

響「ねぇ……あずささん」

あずさ「なにかしら?」

響「自分と一緒じゃ……楽しく…ない?」

あずさ「えっ?」

響「だから……その…………早く帰りたいのかなぁって」

あずさ「あっ……ち、違うのよ響ちゃん!」

あずさ「私そんなつもりじゃなくて……」

響「でも……」

あずさ「響ちゃん、顔を上げて?」

響「……うん」

あずさ「本当にごめんなさい」

響「自分も……ごめんなさい」

22: 2014/03/26(水) 20:03:18.14
響「それじゃ、どうして元気がないの?」

あずさ「うん……私、なんだか自分が情けないなぁって思っちゃったの」

響「情けない?」

あずさ「えぇ」

響「どうして?」

あずさ「すぐにこうやって道に迷っちゃって、一人じゃ事務所にも帰れないでしょう?」

あずさ「いつもみんなに迷惑をかけてしまう」

響「そんな……」

あずさ「今日だって、響ちゃんに会えなかったらどうなってたか……」

響「う、うん」

あずさ「迷わないようにって、気を付けてるつもりなのに……どうしてかしらね」

響「…………」

あずさ「これじゃいつまで経っても、周りに迷惑を……」

あずさ「こんな年にもなって、情けないわ」

響「そ、そんなこと……ないぞ」

23: 2014/03/26(水) 20:06:21.70
響「自分は……人に迷惑をかけるのは、悪いことじゃないと思う」

あずさ「えっ」

響「だって、自分は今日あずささんに迷惑かけてもらって……嬉しかったもん」

あずさ「そんなのオカシイわ…迷惑をかけたのに、それが嬉しいだなんて……」

響「いや、そもそも迷惑だなんて思ってないぞ」

あずさ「でも……」

響「あずささんはそうやって『迷惑をかけて』って落ち込んでるけど」

響「その分自分達だってあずささんに迷惑かけてるし、助けてもらってる」

あずさ「そ、そんな……」

響「いつもやさしくしてくれるし、ときどきハム蔵にも食べ物をくれるでしょ?」

あずさ「…………」

響「だけど助けられてばかりで、なかなかお返しが出来ないから……」

響「だから、今日それが出来たことが嬉しいんだー」

あずさ「響ちゃん……」

響「……まだこのくらいじゃ全然返せてないけど」

24: 2014/03/26(水) 20:07:35.27
響「おばぁがよく言ってた」

響「人は誰かを助けてるし、誰かに助けられてる」

あずさ「…………」

響「だから自分が助けてもらったとき、素直に感謝できるように……」

響「困ってる人が居たら助けてあげなさいって」

あずさ「……そう」

響「あずささんは、おばぁが言ってたことがちゃんと出来てるぞっ」

響「だから……だからそんなに落ち込まないで………」

あずさ「でも、やっぱり私は迷惑ばかりかけてるわ」

響「それは自分だって、他のみんなだって同じ!」

あずさ「う~ん……」

響「誰かに助けてもらったとか、迷惑をかけたって思うから落ち込んじゃうんだぞ」

響「だからそうじゃなくて、うんと……えと…………アレ」

あずさ「???」

25: 2014/03/26(水) 20:08:52.58
響「ほらあの……アレだぞ! かけっこの時に使う棒………だぞ」

あずさ「……バトン、かしら?」

響「そうバトン! バトンを貰ったと思えばいいんだ!」

あずさ「…………」

響「誰かに助けてもらったときは、その人にバトンを貰ったってことさー」

あずさ「えっと……」

響「例えば……春香!」

あずさ「春香ちゃん?」

響「あずささんが、春香に助けてもらったとするでしょ?」

あずさ「えぇ」

響「それは春香に、優しさのバトンを貰ったってこと」

あずさ「優しさの……バトン?」

響「本当はその場合は、春香にお返ししないといけないんだけど……」

響「そんなすぐには出来ないでしょ?」

あずさ「……えぇ」

26: 2014/03/26(水) 20:10:13.12
響「だからあずささんは、その分誰か別の人を助ければいい」

響「それはその人にバトンを渡したってこと!」

あずさ「うん」

響「でまた、その人が次の人にバトンを渡して……」

あずさ「…………」

響「そうやって765プロのみーんなで、リレーすれば良いんだぞ!」

あずさ「……そうね」

響「そうすれば、助けられたほうは『悪いなぁ』って思わなくていいし」

あずさ「助けたほうも、恩返しが出来て嬉しくなれるのね」

響「うん!」


響「みんながみんなを助けてるし、みんながみんなに助けられてる」

響「だから全然、気にしなくていいぞっ」

あずさ「…………」

響「じ、自分頭悪いから上手く説明できないけど……とにかく自分はそう思うぞ!」

あずさ「うん、ありがとう響ちゃん」

27: 2014/03/26(水) 20:11:30.17
あずさ「響ちゃん」

響「なーに?」

あずさ「響ちゃんのお陰で私、元気になれたわ」

響「そ、そっか……良かった」

あずさ「響ちゃんに貰ったバトン、どうしようかしらね」

響「自分は今元気モリモリだぞっ! だから別の人に優しくしてあげて」

あずさ「……うん、わかったわ」

響「それじゃ、そろそろ帰……」

響「」


あずさ「響ちゃん? どうしたの?」

響「…………どうしよ」

あずさ「えっ?」

響「話に夢中になりすぎて、どこだかわかんなくなった」

あずさ「…………ぇ」

28: 2014/03/26(水) 20:12:14.10
――――
――

P「ふぅ」

律子「手応えは……まぁまぁってとこね」

P「うん、悪くはなかったんじゃないかな」

律子「事務所に戻ったら案を練り直しましょう」

P「そうしましょう」


ガチャ


律子「ただいまー」

P「同じくー」

小鳥「お二人とも、おかえりなさい」

P「お疲れ様です、小鳥さん」

春香「おっかえりなさーい!」

P「おう春香、たっだいまー!」

29: 2014/03/26(水) 20:13:14.90
真「プロデューサーさん、律子、おかえりなさい」

真美「兄ちゃん&りっちゃん、おかえりんぐー」

伊織「早かったじゃない」

律子「まぁね」

P「いやぁ今日も熱烈な歓迎をありがとう」

雪歩「あ、あのぅ……」

真美「ねぇねぇ、今日は何して遊んでたの? ゲーセン?」

真「真美、流石にゲーセンは無いんじゃない?」

P「そ、そうだよ……コインゲームとかしてないし……」

律子「プ、プリクラなんか……撮ってないわよ」

真美「ぇ……ホントに行ったの?」

P・律子「冗談」

春香「ゲームは一日一時間ですよ」

伊織「……春香、それ好きね」

春香「ふふっ」

30: 2014/03/26(水) 20:14:40.22
雪歩「ぷ、ぷろ……くっき……」

P「あれ? そういえば響はもう帰りました?」

小鳥「あっ、響ちゃんはあずささんと一緒に帰ってきますよ」

P「へ?」

小鳥「あずささんと連絡が取れなくて心配してたんですけど」

小鳥「たまたま響ちゃんが見つけてくれたみたいで……」

P「あぁ……あずささん、迷子になっちゃったか」

小鳥「やっぱり誰かが付いてあげるべきでしたね」

律子「……私の責任です」

P「いや、律子だけじゃないさ」

伊織「いいじゃない、もう帰ってきてるんだし」

律子「うぅん、何か起こってからでは遅いわ」

春香「今回は大丈夫だったってことで、次から気を付けましょう!」

真「そうそう! ボクたちだって予定が無いときとか、代わりに付いてあげることもできますし」

真美「そーだよそーだよ!」

31: 2014/03/26(水) 20:16:54.36
雪歩「ぷ、ぷ、ぷろ……あの……」

P「みんなありがとな」

伊織「大げさね」

雪歩「ぷ……ぷ………」

雪歩「…………ぅぅ」

真美「…………」


真美「ゆきぴょんゆきぴょん」ボソボソ

雪歩「えっ……な、なーに?」ボソボソ

真美「クッキーでしょ?」ボソボソ

雪歩「…………」

真美「ダイジョーブ、真美に任せて」ボソボソ

雪歩「ぁ……うん」

真美「真美が話を振るから、その後だよっ」ボソボソ

雪歩「うん……ありがとう」ボソボソ

32: 2014/03/26(水) 20:18:39.09
真美「ソ、ソーダ!」

小鳥「ソーダ? 真美ちゃん、ジュースが飲みたいの?」

真美「いやいやいやいや」

小鳥「あらそう」

真美「そんなことより……兄ちゃん達さ、お腹空いてない?」

P「う~んまぁ、空いてるっちゃ空いてるけど?」

律子「どうして?」

真美「うん、ちょっと……ねーゆきぴょん?」

雪歩「は、はい! えと、クッキーを……」

律子「クッキー? あっ、昨日作ったのね」

雪歩「はい!」

P「俺達の分も作ってくれたのか?」

雪歩「はい!」

真美「ジョーズに焼けたんだよねー」

雪歩「はい! あっちが……うん!」

33: 2014/03/26(水) 20:19:42.79
真美「多分二人ともビックリドッキリするよっ!」

春香「雪歩が一人で作ったんですから」

P「そうか、それは楽しみだ」

雪歩「えへへ」

春香「私コーヒー入れてきますねー」

小鳥「あっ! 春香ちゃん、私が行くわ」

伊織「アンタはいいから、パソコンの画面をどうにかしなさい」ボソボソ

小鳥「はぇ?」

伊織「フリーセルだっけ? 律子にバレるわよ」ボソボソ

小鳥「おっと!」カチッ

律子「小鳥さん、どうしたんですか?」

小鳥「いーえいーえ!」

律子「そうですか」

小鳥「ふぅ~」

律子(……気付いてたけどね)

34: 2014/03/26(水) 20:20:38.04
雪歩「あの……ちょっと待ってくださいね」

雪歩「鞄の中に……」ガサゴソ

雪歩「………………ぁ」


春香「はーい、インスタントなコーヒーお待た……せ?」

雪歩「ぁ……ぅ…………ぅぅ」

春香「ゆ、雪歩? どうしたの?」

雪歩「……割れてる」

真美「えっ」

雪歩「クッキーが……割れてる」

真「ぜ、全部?」

雪歩「…………」コクッ

伊織「ちょっと見せ……ぁぁ」

伊織「…………粉々ね」

雪歩「う、うぅ…………ふえぇぇぇぇん」

春香「あぁ雪歩……泣かないで」

35: 2014/03/26(水) 20:22:26.00
真「ど、どうしよう……」

春香「そうだ! 小鳥さん、さっきのクッキーまだ…………」

小鳥「たべちゃった」

春香「そうですか……」

小鳥「ゴメンナサイ」

伊織「いや、小鳥は悪くないわよ」


雪歩「ひっく…………ぐすっ」

P「ゆ、雪歩! クッキーぐらい、気にしなくて……ぁ」

P「いやあのっ……“ぐらい”って別に変な意味じゃなくてっ」

春香「プロデューサーさん……」

P「くそぅ……俺のバカ」

律子「雪歩、その……気持ちだけでも十分頂いたから、クッキーなんて……ぁ」

律子「いやちがっ……“なんて”って別に変な意味じゃなくてっ」

伊織「律子……」

律子「あぁ……私のアホ」

36: 2014/03/26(水) 20:24:09.66
伊織「えっと……二人とも、もう仕事に戻っていいわよ」

律子「そ、そうよね……」

P「俺達余計なことばかり……」

伊織「いやいや、これも変な意味じゃないのよ!」

律子「でも……」

伊織「律子いつも言ってるじゃない」

伊織「プロデューサーは二人しか居ないんだから、誰かに付きっきりってわけにはいかない」

伊織「だから、自分達で出来ることは自分達でやれるようにって」

律子「確かにそんなこと言ったわね」

伊織「今日だって二人が居ないから、響もあずさも一人で行動したわ」

伊織「あずさが迷子になっちゃったけど、それでもなんとかなってる」

伊織「だから私達に任せて頂戴」

P「…………」

伊織「このくらい……っていうと雪歩に失礼だけど」

伊織「落ち込んだ仲間を励ますぐらい、私達にも出来るわ」

37: 2014/03/26(水) 20:25:43.56
律子「そっか………分かったわ」

伊織「ありがと」

P「礼を言わないといけないのは俺達の方だよ」

伊織「よし、そうと決まれば……私も雪歩を励ましてくるわ」

律子「頼んだわよ」

伊織「任せて」


律子「さて……プロデューサー、企画を練り直しましょう」

P「…………」

律子「プロデューサー?」

P「…………うん」

律子「……あの子達なら大丈夫ですよ」

P「いや、そうじゃなくて……伊織、頼もしいなぁと思ってさ」

律子「そうですね……でも、伊織だけじゃない」

P「うん、そうだな」

38: 2014/03/26(水) 20:26:57.33
――――
――

響「ふぃぃ……やっと帰り着いたー」

あずさ「ありがとう響ちゃん」

響「礼なんて……自分、道分かるって言っておきながら全然だったし……」

あずさ「あら? その分響ちゃんとたくさんお話が出来て、嬉しかったわ!」

響「ホント?」

あずさ「えぇホントよ」

響「へへっ……自分も嬉しかったし、楽しかったぞっ!」

あずさ「事務所に着いちゃうのがちょっぴり残念ね」

響「でも……多分、みんな心配してる」

あずさ「そうね、入りましょうか」

響「うん!」


ガチャ

39: 2014/03/26(水) 20:27:47.23
響「ハイサーイ!」

あずさ「ただいま戻りましたー」

雪歩「うぅ……ひっく…………ぐすっ」

響「」

あずさ「」


真「雪歩、もう泣かなくていいから……ね?」

雪歩「だって…………だって…………」

あずさ「あらあら」

響「ゆ、雪歩! どうしたんだ!?」

雪歩「…………すんっ」

響「おなか? おなかがゴロゴロするのか!?」

雪歩「クッキーが……みんなのクッキーが……」

あずさ「クッキー?」

春香「はい、実は……」

40: 2014/03/26(水) 20:29:01.03
――

あずさ「そうだったの……」

春香「昨日みんなで……っていうか、雪歩がほとんど一人で作ったんです」

響「雪歩、すごいじゃないか!」

雪歩「でも、もう割れちゃった……」

響「あっいや……そのぅ…………だ、大丈夫だぞっ!」

響「自分、割れたクッキー大好き……だし」

雪歩「粉々だもん」

響「そ、そう! 粉々クッキーがいちばん大好……物………ぅぅ」

響「うわぁぁ~ん! ゆきほぉ元気出してくれぇ~~!!」

雪歩「……グスン」

響「あぅぅ……」

あずさ「響ちゃん、私に任せて」

響「あずささん……」

41: 2014/03/26(水) 20:30:33.80
あずさ「雪歩ちゃん、いいかしら?」

雪歩「…………」コクッ

あずさ「雪歩ちゃんがクッキーを作ってくれたのは、みんなに食べて欲しかったからでしょう?」

雪歩「……は、はい」

あずさ「それを私達が貰って嬉しくなるのは、雪歩ちゃんのそういう気持ちとか……」

あずさ「作るときに雪歩ちゃんが感じた楽しさとか、出来たときの嬉しさが中に詰まってるからなの」

あずさ「確かにクッキーは割れちゃったけど、雪歩ちゃんの気持ちも一緒に割れちゃった?」

雪歩「…………」フルフル

あずさ「そうでしょう? だから私達はその心を貰って、とっても嬉しいわ」

響「そ、そうだぞ雪歩! 自分だって嬉しいぞっ!」

響「それに……ほら! まだ大きな欠片がある!」

響「モグモグ……お、美味シーサー! なんちゃってなんちゃってぇ!」

あずさ「…………」

雪歩「…………」

響「じ、自分……黙ってる」

42: 2014/03/26(水) 20:31:25.18
あずさ「元気出た?」

雪歩「はい……えと……ありがとうございました」

あずさ「うぅん、いいのよ」

雪歩「響ちゃんも、ありがとう」

響「そんな……自分何にも役に立ってないし…………」

雪歩「そんなことないよ」

響「でも、雪歩が泣き止んでくれてよかった」

雪歩「……うん」


雪歩「それから、みんな……ゴメンナサイ」

春香「どうして謝るの?」

真「そうだよ、別に謝られるようなこと……」

雪歩「せっかくみんなで作ったクッキー、私の所為で……」

真美「あーダメダメ! またそうやって暗黒面に堕ちちゃダメだよ~」

雪歩「みんなに食べて欲しかったのに……」

43: 2014/03/26(水) 20:32:42.83
伊織「はいそこで伊織ちゃんの登場よ」

真美「デコだけに凸然だね」

伊織「なぁんですってぇ!?」

真美「ほらほら、ゆきぴょんが怖がってるよー」

伊織「おっと…………コホン」

伊織「クッキーでもそれ以外でもいいから、ウチでまた作れば良いじゃない」

雪歩「えっ」

伊織「今度はあずさと響も一緒に」

響「えっ? 自分達もいいの?」

伊織「もちろん」

雪歩「で、でも……」

伊織「律子? プロデューサー? 良いわよね?」

P「あぁ、楽しんでおいで」

律子「怪我だけはしないように気を付けるのよ」

小鳥「…………」

44: 2014/03/26(水) 20:34:20.10
春香「でも二日連続だし、お家の人に迷惑だったり……」

伊織「みんなが嫌なら……べ、別に来なくてもいいけど?」

真「そんなことないよ」

真美「いーじゃんいーじゃん! せっかくいおりんが良いって言ってるんだし」

雪歩「そうだね……伊織ちゃん、ありがとう」

伊織「えっあっ……ど、どういたしまして」

伊織(面と向かって言われると……照れるわね)


春香「それじゃ、また材料揃えないといけないね」

真美「先生ー! バナナは材料に入りますかー?」

伊織「材料ってアンタ……昨日バナナ普通に食べてたじゃないの」

真美「いやぁちょっとお腹空いちゃって……」

真「失敗したとき用って言ってた市販クッキーも食べてたよね」

真美「あれは味の研究ダヨ~」

小鳥「…………」

45: 2014/03/26(水) 20:36:09.08
小鳥「わ、私も……」ボソッ

P「……行きたいですか?」

小鳥「へ?」

P「いいですよ、行ってきて」

小鳥「い、いや……私が若いみんなに混じるのもなんか変ですよねぇ~」

伊織「うぅん、実は今日両親が居ないから、小鳥が居てくれたら助かるわ」

小鳥「で、でもやっぱり……」

P「行きたいんじゃないんですか?」

小鳥「そりゃー行きたいですけどぉ……仕事もまだまだ残ってるしぃ~」

P「残りは俺がやっときますから」

小鳥「……ホント?」

P「えぇ」

小鳥「ホントにホント?」

P「しつこいですよ」

小鳥「……ぃやったぁ~!」

46: 2014/03/26(水) 20:37:11.05
P「まぁアレですよ、そのかわりと言っちゃーなんですけどもね」

P「今度二人で食事でも……」

律子「もう誰も居ませんよ」

P「えぇっ!? はっや!!」


律子「…………」

P「…………」

P「なんかシーンとしちゃったな」

律子「そうですね」

P「…………」

律子「…………」

P「……飯でも行く?」

律子「小鳥さんがダメだからしょーがなくって感じが引っ掛かりますね」

P「いや、何もそういうわけじゃないぞ! もちろん俺が奢るし」

律子「う~ん」

47: 2014/03/26(水) 20:39:13.98
律子「いいですよ、仕事が終わったら行きましょう」

P「そうこなくっちゃ」

律子「ついでに企画をまとめましょ!」

P「おっけー」


P「ってことで、小鳥さんの仕事手伝ってくれ」

律子「……初めからそれが目的ね?」

P「認めよう」

律子「ふふっ、正直でよろしい」

P「やーりぃ」

律子「その代り、何か高いもの食べさせてくださいね」

P「げぇ」

律子「お寿司か、お肉か、おフランスか……」

P「……お財布と相談させてくれ」

END

48: 2014/03/26(水) 20:39:54.78
お粗末さまでした

49: 2014/03/26(水) 21:08:53.37

引用元: あずさ「哀愁交差点」