2: 2014/02/16(日) 16:42:05.10
【社用車内】

春香「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」

P「いいよいいよ、気にするな。 それより春香、ラジオ出演おつかれさん」

春香「はい!」

P「ゴメンな、現場に行けなくて」

春香「いえいえ」

P「そのかわり、ちゃんと移動中に車で聴いてたからな」

春香「なんか恥ずかしいですね」

P「俺なんだから、別に恥ずかしがらなくていいだろ」

春香「プロデューサーさんだからですよぅ」

P「変な春香だな」

春香「……変と恋って似てますよね」

P「は?」

春香「なんでもないです」

1: 2014/02/16(日) 16:39:49.89
続き物



伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391946993/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1392536389

3: 2014/02/16(日) 16:45:46.36
春香「もう終わったんですか? 私が出てた番組」

P「うん、春香の出番が終わって少ししてからな」

春香「なぁんだ、ちょっと聴いてみたかったのに」

P「そうだ! CDの宣伝、番組の最後にもう一度やってくれたよ」

春香「ホントですか? やったー!」

P「効果あると良いな」

春香「そうですね!」


『……次のナンバーは、とても元気の出る曲です』

『THE BLUE HEARTSで「人にやさしく」』


P「おっ」


『きーがーくーるーいそぉー』


P「なーなーなーなーなーなーなー!」

春香「わっ! びっくりしたー」

4: 2014/02/16(日) 16:47:21.91
『やさしい歌が好ーきーで……』


P「春香この歌知ってる……よな?」

春香「えぇ知ってますよ! 有名ですから」

P「そっか、少しホッとしたよ」

春香「え? どうしてですか?」

P「いや、こう……年が離れてるとさ、話が噛み合わないときあるじゃん?」

春香「えぇまぁ」

P「ま、歌ならそうでもないだろうけど」

春香「でもプロデューサーさんと噛み合わないことって、そうないですよね」

P「俺もまだまだ若いってことかな」

春香「う~ん、そんな感じでもないですけど」

P「とかなんとか言ってると、小鳥さんに怒られそうだ」

春香「……ですね」

5: 2014/02/16(日) 16:49:30.30
P「……マイクロフォンのなーかからぁー」

春香「ガンバーレって言っているぅー」


『聞こえてほーしーい あなたにも』


P・春香「がんばれぇー!」

P「……とまぁ甲本さんはがんばれと歌ってくれてるけれども」

P「春香の予定は終わったし、今日はもうがんばらなくてもいいよ」

春香「はい」

P「事務所で少しゆっくりしてから帰るといい」

春香「そうします」

P「どっかコンビニでも寄る?」

春香「いえいえ、いいですよ」

P「そうか」

春香「早く戻んないと、プロデューサーさんも仕事があるんでしょ?」

P「……はい」

6: 2014/02/16(日) 16:50:48.04
【事務所】

P・春香「ただいま戻りましたー」

小鳥「お二人とも、おかえりなさい」

真「お疲れ様です! 春香も、おつかれ!」

春香「うん!」

真美「はるるん、兄ちゃん、おかえりんぐー」

雪歩「お、おかえり……なさい」

春香「ただいま!」

P「なんだか今日は熱烈な歓迎を受けてるなぁ」

春香「そうですね」


P「人数多くて、いつもより幾分にぎやかですね」

小鳥「えぇ、おかげさまで今日は寂しくなかったです」

P「いいかげん一人に慣れましょうよ」

小鳥「だってぇ」

7: 2014/02/16(日) 16:53:29.86
春香「雪歩は今日なにしてたの?」

雪歩「私は真ちゃんと一緒で……」

真「雑誌のインタビューだったよ」

春香「そっか……真美は?」

真美「暇だったから遊びに!」

春香「あ、そう……」

真美「ずっと3DSしてたんだけど、充電器忘れちゃって……」

春香「ゲームは一日一時間だよ」


P「小鳥さんは何してたんですか?」

小鳥「主に休憩を」

P「こら」

小鳥「冗談ですよ」

真美「マインスイーパーばっかりしてたよ」

小鳥「違います! ソリティアも…………ぁ」

P「……コラ」

10: 2014/02/16(日) 17:23:08.40
P「じゃ春香、俺仕事に戻るから」

春香「はい! あの……ありがとうございました」

P「どうしたんだ急に礼なんて」

春香「なんとなくです」

P「そっか……ありがとな」

春香「プロデューサーさんもどうしたんですか急に?」

P「俺もなんとなく」

春香「ふふっ」

P「礼を言ってくれてありがとう……かな?」

小鳥「それじゃ私もなんとなく、ありがとうございます」

P「あはは」

春香「うふふ」

小鳥「おほほ」


真美「なにやってんのキミたち?」

11: 2014/02/16(日) 17:24:18.54
小鳥「春香ちゃん、お飲み物用意しましょうか?」

春香「はい! おねがいします」

小鳥「お茶とコーヒー、どっちがいーい?」

春香「えと……コーヒーで!」

小鳥「わかったわ、ソファに座って待っててね」


小鳥「はいどうぞ」

春香「あっ、ありがとうございます」

小鳥「一応ミルクと砂糖は入れたけど……足りなかったら自分でお願いね」

春香「はーい」

小鳥「それじゃ……ゆっくりしていってね!」

春香「……は、はい」


春香「フゥー……フゥー……コク…コク……」

春香「…………」

春香「もうちょっと砂糖入れよ」

12: 2014/02/16(日) 17:25:40.34
春香「…………」

真美「まこちーん早く次のページぃ」

真「ボクが買ったんだからボクのペースで読ませてよ」

真美「だって読むの遅いんだもーん」

真「この後読ませてあげるから」

春香(雑誌? 二人ともなに読んでるのかな……)


真美「一人じゃつまんないよー! 一緒に読むからイイんじゃん」

真「真美は邪魔してるだけでしょ」

真美「そっか……まこちんゴメンね………グスン」

真「あっいや! そ、そんなつもりじゃ……」

真美「真美……もう帰るね」

真「い、一緒に読もうよ! ボク、一人だとつまんないからさ!」

真美「へへっ、やーりぃ!」

真「あー! 騙したなー!?」

真美「記憶にございませーん」

13: 2014/02/16(日) 17:26:55.51
春香「ふふっ、二人とも楽しそ…………二人?」

雪歩「…………」

春香「雪…歩?」

雪歩「…………はぁぁ」

春香(どうしたんだろ……なんだか元気が無いみたい)


真「わーこの服、すっごく可愛い!」

真美「え~? まこちんには似合わないっしょー」

真「そ、そうかな……」

春香(二人とも気付いてないし……)

P「…………」カタカタ

小鳥「…………」カチカチ

春香(プロデューサーさんも小鳥さんも忙しそうにしてる)

雪歩「…………」

春香(ど、どうしよう……)

春香(声……かけようかな)

14: 2014/02/16(日) 17:28:09.44
春香(でも……無理に聞こうとすると、逆にプレッシャーになったりして……)

春香(それで私に苦手意識を持っちゃったりとか……しないかな)

雪歩「…………」

春香(でも、だからってあのまま放っておくわけにもいかないし……)

春香「…………」

春香(でもでも……やっぱり出しゃばらない方がいいのかなぁ)

春香(真だって、いつも雪歩のこと気にかけてる)

春香(それで私がこれ見よがしに雪歩に声をかけたりしたら……)

春香(真は私に……)

春香「…………ぁ」

春香(私……自分のことしか考えてない)

春香(今大事なのは雪歩のことだよ)

春香(雪歩が元気無いから、話を聞こうとしてるのに……余計なことばかり考えてる)


春香(……やっぱり声かけよう)

15: 2014/02/16(日) 17:29:22.20
春香「……よし」

春香(ゆっくり近づいて……)

春香「あ、あの……ゆk――」

真「雪歩? どうかしたの?」

雪歩「えっ……う、うん……ちょっと」

真美「ほうほう、真美さんに話してみなさい」

雪歩「うん……実はね――」

春香「…………」


春香(なにやってんだろ……私)

春香(色々気にかけてるクセに、何も出来ないで時間だけが過ぎて)

春香(力になりたいと思っていても、行動しないのなら思ってないのと一緒だよ……)

春香「…………」

小鳥「春香ちゃんどうしたの? そんなところに立って」

春香「……はぁぁ」

小鳥「???」

16: 2014/02/16(日) 17:30:22.99
春香(雪歩が心配なはずなのに、嫌われたら……とか、出しゃばりたくない……とか)

春香(自分がどう思われるかばかり気にしてる……)

小鳥「春香ちゃん」

春香(それって結局、自分のことしか考えてないってことだよ)

小鳥「はるかちゃーん?」

春香(そもそも周りを気にかけてるのだって……)

春香(自分が気の利く優しい人だって、そう思われたいだけ)

小鳥「…………コホン」

春香(自分を良く見せようとしてるだけなんだ……)


小鳥「春香ちゃん!」

春香「えっ? あ……はい?」

小鳥「なんだか考え込んでるみたいだけど……どうかしたの?」

春香「いえ、なんでもないです」

小鳥「そう……それじゃ私、仕事に戻るわね」

17: 2014/02/16(日) 17:31:47.40
小鳥「…………」

春香(小鳥さん……心配してくれたのかな?)

小鳥「……ふぅ」

春香(小鳥さんは優しいなぁ……真だって、真美だって……みーんな優しい)

春香(でも私は……)

小鳥「…………」

春香(小鳥さん……やっぱり私、違います)

春香(あの時小鳥さんが言ってくれたような、優しい人間じゃない)

春香(私は……わたしは………)

春香「チガウんです」ボソッ

小鳥「え? 何か言った?」

春香「あ、いえ……ち、違うんです!」

小鳥「何が違うの?」

春香「えと……そのぅ……なんでもないですからっ」

小鳥「わ、わかったわ」

18: 2014/02/16(日) 17:33:07.31
春香「…………」

春香(小鳥さんが言ってくれたこと……照れくさかったけど、本当に嬉しかった)

春香(私がそのとおりの人間だったら良かったのに……)


『春香ちゃんは優しい子で、いつも周りを気にかけてる』


春香(私は優しくなんてない……周りを気にしてても、結局は何も出来ない)


『見返りを求めない優しさが春香ちゃんの魅力』


春香(見返りなんて求めてない……けど、自分を良く見せようとしていたのかも)

春香(私はただ、自分に酔ってただけなんだよ)

春香(優しい自分を演じて、自己満足してた……)

春香(褒めてもらいたくて気が利くフリをしていただけ)

春香(そうだよ……私は優しくなんてない)


春香「……はぁ」

19: 2014/02/16(日) 17:33:41.50
ガチャ


小鳥「あっ、おかえりなs――」

律子「アンタはもう少し考えてから行動しなさい」

伊織「してるわよ!」

春香「!?」


律子「よく言うわ」

伊織「大体律子もヘコヘコしすぎよ!」

律子「まったく……誰の所為でヘコヘコしなきゃなんないと思ってるのよ」

伊織「私の所為じゃないでしょー?」

律子「伊織が突っかかるからでしょーが」

伊織「それはアイツ等がウチの悪口を言うからよ!」

律子「確かにそうだけど、だからって……」


春香(……どうしたんだろう?)

20: 2014/02/16(日) 17:34:46.51
伊織「あ、春香!」

春香「へ?」

伊織「春香聞いて! 私、アイツ等に言ってやったわよ!」

春香「あいつら?」

伊織「ほら、前にテレビ局の人に悪口言われて、言い返せなかったって……」

春香「あぁ……あの時の」

伊織「また765プロの悪口言ってたから、今度は言い返してやったの!」

律子「ご丁寧に胸倉まで掴んで……ね」

伊織「そのくらいしないと気がすまないわっ」

律子「元々は相手側に問題があったわけだから、今回は大事にはならなかったけど……」

律子「今度からは、あまり感情だけで動かないこと」

伊織「わかってるわよ」

律子「ま、正直……スカッとしたけどね」

伊織「律子、止めに入るのが遅かったもん……そうだと思った」

律子「ふふっ」

21: 2014/02/16(日) 17:36:41.18
伊織「でも……春香の言ってくれたこと、無駄にしちゃったわね」

春香「私、何か言ったかな?」

伊織「ほら『悔しいと思うことが悔しい』って言ってたじゃない」

春香「あ、うん」

伊織「いちいち気にしなくていいって、頭では分かってるんだけど」

伊織「目の前で悪口言われたら……ね」

春香「そうだよね……行動しなきゃ、意味無いよね」

伊織「……へ?」

春香「思ってても何も行動しなかったら、思ってないのと一緒だもん」

伊織「何の話?」

春香「ううん、コッチの話」

伊織「そ、そう……」

春香「伊織が羨ましいなぁ」


小鳥「…………」

22: 2014/02/16(日) 17:38:06.52
小鳥(春香ちゃん……さっきから少し様子が変ね)

小鳥(何かあったのかしら……)

春香「…………」

小鳥(でも帰ってきたときには、元気が無いってわけでもなかったし)

小鳥(かといって、ここで何か起きたかって言うと……)


真美「いおりん、ひっぱたいてやればよかったのに」

P「おいおい……それだとご褒美になっちゃうだろ」

真美「兄ちゃんって本当に変態だったんだね」

P「ありがとうございますっっ!」


小鳥(……別にいつもどおりだし)

伊織「…………」

春香「…………」


小鳥(ど、どうしよう……)

小鳥(声……かけようかしら)

23: 2014/02/16(日) 17:39:53.95
Prrrrrrrr!    Prrrrrrrr!


律子「おっと携帯携帯…………はい、もしもし?」

律子「あっはい! その件でしたら――――」

小鳥(ちょうど律子さんも電話を受けてるし……よし)


小鳥「あ、あのぅ……春k――」

伊織「小鳥、待って」ボソ

小鳥「え?」

伊織「私が言うから……お願い」ボソボソ

小鳥「……あ、うん」


春香「…………」

伊織「…………コホン」

伊織「春香、ちょっと……いいかしら?」

春香「えっ?」

24: 2014/02/16(日) 17:41:28.74
伊織「小鳥、会議室使うわよ?」

小鳥「あっはい、どうぞ」

伊織「行こ? 春香」

春香「いや……あの」

伊織「時間あるわよね?」

春香「……う、うん」


バタン


小鳥「ねぇプロデューサーさん?」

P「はい」

小鳥「春香ちゃん、いつもと違ってたりしませんでした?」

P「……いえ、いつもどおりでしたよ?」

P「むしろいつもより元気に見えましたけど」

小鳥「そうですか……」

25: 2014/02/16(日) 17:42:34.02
【会議室】

伊織「えと……春香」

春香「……うん」

伊織「もし間違ってたら、それはそれでいいんだけど……」

伊織「春香さ、いま……悩みとかってある?」

春香「え? 悩み?」

伊織「そう」

春香「や、やだなぁ~私に悩みなんてあるわけ……」

伊織「ホントに?」

春香「…………」

伊織「春香、最近元気が無いように見えるわ」

春香「そんな風に見える?」

伊織「春香はいつも元気だから、余計にそう感じるのかもしれないけど」

春香「そうだよ、私はいつもどおり元気だよ」

26: 2014/02/16(日) 17:43:48.89
伊織「ま、本人がそう言うのなら……いいわ」

春香「うん」

伊織「ただ、これだけは覚えておいて欲しいってことがあって……」

春香「???」

伊織「…………」

春香「伊織?」

伊織「い、一度しか言わないから……ちゃんと聞いてよね」

春香「うん、わかった」

伊織「えっとぉ、私も……その……は、春香の味方だから」

春香「え?」

伊織「あの時……悪口言われて落ち込んでた時、私は春香のお陰で元気になれた」

伊織「そのお返しってわけじゃないけど、何か嫌なことがあった時には言って頂戴」

伊織「私なんかで役に立つかは分かんないけど……」

伊織「す、少しでも春香の力になれたらいいなって……思ってるから」

春香「伊織……」

27: 2014/02/16(日) 17:45:21.37
伊織「しつこいけど、ホントに何もない? 悩みとか嫌なこととか」

春香「悩みって程じゃないけど、ちょっと……分かんなくなっちゃって」

伊織「分かんない?」

春香「……うん」

伊織「なにが?」

春香「自分が」

伊織「春香が……分かんない?」

春香「そう、私が」

伊織「それってどういう……」

春香「自分がどんな人間なのか、分かんないの」

春香「少なくとも私は、みんなが思ってるような優しい人間じゃない」

伊織「…………」

春香「あの日……小鳥さんにクッキーを渡したとき、小鳥さんがね――」

28: 2014/02/16(日) 17:46:39.94
――――
――

伊織「そう……小鳥がそんなことを」

春香「うん」

春香「優しい子だって言われて、すっごく嬉しかった」

春香「でも私は優しくなんてない」

伊織「そんなことないわよ」

春香「ううん、そんなことある」

春香「さっきだって雪歩が元気無かったのに、何も言ってあげられなかった」

春香「余計なことばかり頭に浮かんで、雪歩のことはそっちのけ」

春香「結局何もしてあげられなくて、逆に自分が落ち込んじゃったり……」

伊織「そうやって落ち込んでることが、春香が優しいって証拠じゃない」

伊織「私なんて……雪歩が元気無いってこと、今春香に聞いて知ったくらいよ?」

春香「それは……」

伊織「気付いてあげられるだけでも、春香はすごいと思うわ」

29: 2014/02/16(日) 17:47:50.21
伊織「うん、なんとなく分かった。 春香のこと」

春香「え?」

伊織「私……こういうの慣れてないから、上手く言えないけど……」

伊織「春香は春香になろうとしすぎてるのよ」

春香「私になろうとしすぎてる……?」

伊織「小鳥が言ったことは間違いじゃないわ」

伊織「春香は優しくて、いつもみんなを気にかけてる」

春香「それは違うよ」

伊織「あら? それを一番実感したのは私よ?」

伊織「あの日、誰が私を大泣きさせたんだっけ?」

春香「あれは……」

伊織「大体、自覚が無いのは当たり前よ。 春香はそれが無意識で出来てるんだから」

伊織「だけど、小鳥に優しさが魅力だと言われたことで、それを自覚してしまった」

春香「…………」

30: 2014/02/16(日) 17:49:21.94
伊織「その所為で……っていうと、小鳥が悪いみたいに聞こえるけど」

伊織「春香は心のどこかで、みんなが思う『優しい春香』でなくちゃいけないって……」

伊織「そう考えてるんじゃないかしら?」

春香「優しい春香……」

伊織「人の期待がプレッシャーになることってあるでしょ?」

春香「うん」

伊織「そんな風に、春香がプレッシャーを感じてるんじゃないかって思うの」

伊織「優しくならなきゃいけない……ってね」

春香「プレッシャー……かぁ」

伊織「それを感じさせてるのは、私達なんだろうけど」


伊織「今の春香は『春香』であることにこだわりすぎて、春香じゃなくなってる」

春香「…………」

伊織「本当に優しい人ってのは、なろうと思ってなれるようなものじゃない」

伊織「人にやさしく……なんて、そんなこと春香は考えなくて良いのよ」

伊織「春香は春香のままで、十分優しいんだから」

31: 2014/02/16(日) 17:50:37.45
伊織「春香の前だから言えるし、みんなも分かってるだろうけど……」

伊織「ぶっちゃけると、アイドルのときの私は猫を被ってるわ」

春香「ま、まぁ……そだね」

伊織「でも、ずっとそれだと疲れちゃうでしょ?」

伊織「だから私は事務所に居るときとか、みんなの前では素の自分で居る」

春香「…………」

伊織「春香は今、必氏で『春香』を被ろうとしてる。 そんな必要ないのに」

伊織「だって、そんなの被らなくっても春香は春香じゃない」

春香「……うん」


伊織「段々自分が何言ってるか分かんなくなってきたから、この辺にしとくわ」

伊織「とにかく、もう少し肩の力を抜いたほうが良いんじゃない?」

伊織「春香は私と違って、自然体がいいのよ……多分」

春香「そだね、ありがと伊織」

伊織「どういたしまして。 春香には助けられてばかりだから、たまには……ね」

春香「ありがとう」

32: 2014/02/16(日) 17:51:30.44
伊織「さてと…………小鳥、いるんでしょ?」

春香「えっ」

伊織「そんなコソコソしてないで、入ってきなさいよ。 ちょうど喉も渇いたし」


ガチャ


小鳥「ぬ、盗み聞きするつもりはなかったんだけど……」

伊織「別にいいのよ。 それより、アンタも春香のこと気にしてたんでしょ?」

小鳥「えぇ」

春香「小鳥さん……」

小鳥「春香ちゃん、ゴメンナサイ」

小鳥「私……春香ちゃんに悪いことしちゃったね」

春香「そんなことないですよ! ホントに嬉しかったんですから」

小鳥「でも、その所為で春香ちゃんが……」

春香「それはもう大丈夫です。 伊織のお陰で」

伊織「わ、私は……別に何も」

33: 2014/02/16(日) 17:53:17.71
春香「私、やっと分かった」

小鳥・伊織「えっ?」

春香「私が優しくなれるのは、みんなが優しいから」

春香「人にやさしくされるから、人にやさしくなれるんです!」

春香「…………あれ?」

春香「人にやさしくなれるから、人にやさしくされる……アレ?」

小鳥「いや、言いたいことはすっごく良く分かるわ!」

伊織「えぇ、伝わってるわ!」

春香「そ、そか……よかった」


小鳥「ほら、春香ちゃん言ってたじゃない『笑顔のお返し』って」

春香「あ……はい」

小鳥「優しさも、人に与えて、人から与えられて……」

小鳥「そうやって信頼関係が出来て、絆が生まれるのよ」

伊織「そうね……結構クサい台詞だけど、その通りかもしれないわ」

小鳥「そこ、恥ずかしくなるようなこと言わない。 さっきのアナタも大概よ」

34: 2014/02/16(日) 17:54:11.92
伊織「ささっ、もう戻りましょ」

春香「うん!」

小鳥「私もソリティ……仕事に戻らないとっ!」


ガチャ


雪歩「…………」

小鳥「わっ! びっくりしたぁ」

伊織「雪歩?」

雪歩「あの……春香ちゃん」

春香「えっ、私? どうしたの?」

雪歩「うん…あ、あのね……そのぅ」

真美「ゆきぴょんね、はるるんにおせーて欲しいことがあるんだって!」

春香「教えて欲しいこと?」

雪歩「…………」コクッ

春香「そっか……なーに?」

35: 2014/02/16(日) 17:55:02.49
雪歩「こ、この前クッキー作ったんだけど、失敗しちゃって……」

真「どうしたら春香みたいに上手に作れるのか、教えて欲しいんだって」

春香「あっ、それでずっと元気が無かったんだ!」

雪歩「……うん」

春香「なぁーんだ、そんなことか」

雪歩「ぇ」

春香「あっ……ち、違うよ! すっごく落ち込んでたから……」

春香「何か嫌なことがあったんじゃないかって思ってたの」

春香「だからお菓子のことだって聞いて、ちょっと安心しただけっ!」

伊織「でも、雪歩がお菓子作るなんて珍しいじゃない」

雪歩「やっぱり似合わないよね」

伊織「いや、別に似合わないとかってんじゃなくてっ!」

真美「お二人とも随分と慌ててますなぁ」

春香・伊織「……ウルサイ」

36: 2014/02/16(日) 17:55:57.93
春香「どんな風に失敗しちゃったの?」

雪歩「なんだか硬くなっちゃって……」

春香「う~ん……粉を合わせるときの混ぜ方とかで、そうなったりするかなぁ」

雪歩「混ぜ方?」

春香「うん、あまり混ぜすぎちゃダメだよ」

真「へぇーそうなんだ」

春香「ボールを回しながら、ヘラで切るように混ぜるの」

雪歩「そ、そっか」

真「切るようにってよく聞くけど、いまいち分かんないよね」

伊織「確かに」

春香「そうかな? 分かりやすいと思うけど……」

真美「真美知ってるよ? コの字型でしょ?」

春香「うん、違うよ」

真美「……やっぱり?」

37: 2014/02/16(日) 17:57:37.98
春香「う~ん……言葉じゃ説明しづらいね」

伊織「だったら今から作る?」

春香「えっ?」

伊織「材料揃えてウチで一緒に作れば良いじゃない」

伊織「アンタ達、今日はもう何も無いんでしょ?」

春香「うん、私は無い」

真「ボクと雪歩も」

真美「真美は元々予定なかったし」

伊織「だったらちょうど良いじゃない」

雪歩「で、でも……」

伊織「律子? プロディーサー? 良いわよね?」

律子「えぇ良いわよ」

P「そうだな、楽しんでおいで。 怪我だけはしないように気をつけるんだぞ」


小鳥「わ、私も……」

P・律子「小鳥さんはダメ」

38: 2014/02/16(日) 17:58:52.44
伊織「そうと決まれば、早速迎えに来てもらいましょ! 材料もウチで用意させて……」

春香「あっ、材料はみんなで買わない?」

真「うん、そうだね。 そっちの方が楽しいし!」

真美「先生ー! バナナは材料に入りますかー?」

春香「ダメってこともないだろうけど……どうだろ?」

伊織「果物はウチに沢山あるから、買わなくても平気よ」

真「流石は伊織だね」

真美「ねぇねぇ、失敗したとき用の市販クッキーもある?」

春香「失敗するの前提なんだ……」

雪歩「ふふっ」


ガチャ      バタン


P「…………」

小鳥「…………」

律子「…………」

39: 2014/02/16(日) 18:00:23.26
P「なんかシーンとしちゃったな」

律子「そうですね」

小鳥「私はジーンと来ちゃいました………グスッ」

P「泣くほど行きたかったんですか?」

小鳥「いえ……みんな良い子で、みんな仲良しで……」

小鳥「そんなみんなを見てると……すんっ……なんだか涙が出てぎぢゃっで」

P「そ、そう……ですか」

律子「…………」


P「……だいぶいってるからさ、涙腺が緩くなってるんだよ」ボソボソ

律子「荒んだ心に染みるんでしょうね」ボソボソ

小鳥「……聞こえてるんですけど?」

P「ちょっとトイレに」

律子「さぁ仕事仕事ー!」

小鳥「んもうっ! アナタ達はもう少し人にやさしく……」

END

40: 2014/02/16(日) 18:00:55.05
お粗末さまでした

42: 2014/02/16(日) 18:38:12.83
いい話だなぁ

引用元: 春香「人にやさしく」