1: 2021/09/15(水) 20:45:13.947
作家「気晴らしにと深夜ドライブしてみたが……」
作家「特にこれといって、思いつくようなネタはないな……」
作家「それにしても適当に走ってたら、いかにも“出ます”って場所に着いてしまったな」
作家「俺の専門はホラー小説じゃない……とっとと帰るか」
ガチャッ バタン
キュルルル…
ブロロロロロロ…
作家「特にこれといって、思いつくようなネタはないな……」
作家「それにしても適当に走ってたら、いかにも“出ます”って場所に着いてしまったな」
作家「俺の専門はホラー小説じゃない……とっとと帰るか」
ガチャッ バタン
キュルルル…
ブロロロロロロ…
5: 2021/09/15(水) 20:48:33.595
作家(俺は作家……専業で食えてはいるが、これといったヒット作もない中堅作家)
作家(ファンからは安定感があるといわれてるが、代わりに爆発力がないともいえる)
作家(さて、今夜も安定感のある作品を書くとしますか)カタカタ
カタカタ… カタカタ…
作家「うん、筆が進む。これは深夜ドライブの効果かな」
幽霊「ほう、あんたは作家なのか……」ボワァ…
作家「え」
幽霊「よう」
作家「うわああああああっ!?」
作家(ファンからは安定感があるといわれてるが、代わりに爆発力がないともいえる)
作家(さて、今夜も安定感のある作品を書くとしますか)カタカタ
カタカタ… カタカタ…
作家「うん、筆が進む。これは深夜ドライブの効果かな」
幽霊「ほう、あんたは作家なのか……」ボワァ…
作家「え」
幽霊「よう」
作家「うわああああああっ!?」
8: 2021/09/15(水) 20:51:18.325
作家「なんだお前!?」
幽霊「幽霊だよ」
作家「幽霊……!?」
幽霊「あんたがさっき車でやってきてたあの地点、あのあたりで俺は氏んだんだよ」
作家「あ……!」
幽霊「それで、ついてきたわけさ」
作家「“憑いてきた”ってわけか……」
作家「で、俺をどうするつもりだ!?」
幽霊「とりあえず、そうだな……酒でも出してくれ。作家先生ならいい酒の一つも持ってるだろ?」
作家「酒!?」
幽霊「幽霊だよ」
作家「幽霊……!?」
幽霊「あんたがさっき車でやってきてたあの地点、あのあたりで俺は氏んだんだよ」
作家「あ……!」
幽霊「それで、ついてきたわけさ」
作家「“憑いてきた”ってわけか……」
作家「で、俺をどうするつもりだ!?」
幽霊「とりあえず、そうだな……酒でも出してくれ。作家先生ならいい酒の一つも持ってるだろ?」
作家「酒!?」
9: 2021/09/15(水) 20:54:28.345
作家「ほら」サッ
幽霊「……」グイッ
幽霊「ふー、うまい」
作家「幽霊なのに、グラスで酒を飲めるのかよ」
幽霊「念を込めれば、現世のものに触ることもできる」
幽霊「ただし力を込めれば込めるほどエネルギーを使うし、使い果たすと消えてしまうだろうがな」
作家「グラスを持ち上げたり、酒を飲むぐらいならわけないってことか」
幽霊「ま、そういうこと。といってもこれですらかなりのエネルギーを使うがな」
幽霊「……」グイッ
幽霊「ふー、うまい」
作家「幽霊なのに、グラスで酒を飲めるのかよ」
幽霊「念を込めれば、現世のものに触ることもできる」
幽霊「ただし力を込めれば込めるほどエネルギーを使うし、使い果たすと消えてしまうだろうがな」
作家「グラスを持ち上げたり、酒を飲むぐらいならわけないってことか」
幽霊「ま、そういうこと。といってもこれですらかなりのエネルギーを使うがな」
10: 2021/09/15(水) 20:58:29.578
作家「それにしてもフィクションでもそうだが、幽霊ってのはちゃんと服を着てるんだな」
幽霊「まあね。そいつが身につけてたなら、物だって幽霊になるんだろうさ」
幽霊「おかげで素っ裸であんたの前に現れずに済んだ」
作家「俺としても助かってるよ。もし、お前が女の幽霊なら残念だったが」
幽霊「ハハ、なかなかユーモアのある人だ。むやみに怖がられるよりこっちのがいい」
幽霊「で、話を戻すが、あんたは作家なんだよな?」
作家「まあな。もっともさほど有名じゃないが」
幽霊「ジャンルは?」
作家「ミステリーとかサスペンスとか……そのあたりだ」
幽霊「おおっ、だとしたらもしかしたら俺が役に立てるかもしれないぞ」
作家「? どういうことだ?」
幽霊「ここらで生前の俺について教えてやろう」
幽霊「まあね。そいつが身につけてたなら、物だって幽霊になるんだろうさ」
幽霊「おかげで素っ裸であんたの前に現れずに済んだ」
作家「俺としても助かってるよ。もし、お前が女の幽霊なら残念だったが」
幽霊「ハハ、なかなかユーモアのある人だ。むやみに怖がられるよりこっちのがいい」
幽霊「で、話を戻すが、あんたは作家なんだよな?」
作家「まあな。もっともさほど有名じゃないが」
幽霊「ジャンルは?」
作家「ミステリーとかサスペンスとか……そのあたりだ」
幽霊「おおっ、だとしたらもしかしたら俺が役に立てるかもしれないぞ」
作家「? どういうことだ?」
幽霊「ここらで生前の俺について教えてやろう」
11: 2021/09/15(水) 21:01:18.299
幽霊「俺は……殺人犯だったんだ」
作家「え、殺人……?」
幽霊「ああ、何人も殺った」
作家「……バカバカしい。俺も作家のはしくれ、色んな殺人犯について勉強した。連続殺人なんて特にな」
作家「整形してるってわけじゃなきゃ、お前みたいな奴知らないぞ」
幽霊「ああ、だって俺は逮捕されてないし、そもそも警察は俺を犯人と認識すらしてないだろうからな」
作家「つまり……“完全犯罪”ってことか」
幽霊「そういうことだ」
作家「え、殺人……?」
幽霊「ああ、何人も殺った」
作家「……バカバカしい。俺も作家のはしくれ、色んな殺人犯について勉強した。連続殺人なんて特にな」
作家「整形してるってわけじゃなきゃ、お前みたいな奴知らないぞ」
幽霊「ああ、だって俺は逮捕されてないし、そもそも警察は俺を犯人と認識すらしてないだろうからな」
作家「つまり……“完全犯罪”ってことか」
幽霊「そういうことだ」
13: 2021/09/15(水) 21:04:31.164
作家「……何人頃した?」
幽霊「12人」
作家「多いな……。そんな天才的犯罪者がなんで幽霊になってしまったんだ?」
幽霊「つまらん事故さ。これから13人目を……ってところで事故にあっちまって。ほらあの場所」
幽霊「残念ながら、運転の才能はなかったらしい」
幽霊「それで未練が残って、あの場所で自縛霊みたいになっちまった」
幽霊「だが、あんたがあそこで深夜くつろいでくれたおかげで、こうしてくっついてくることができたのさ」
作家「なるほどな。それで“役に立てる”ってのは?」
幽霊「簡単なことさ。俺の“体験談”をあんたにだけ全て暴露してやるよ」
作家「なに?」
幽霊「12人」
作家「多いな……。そんな天才的犯罪者がなんで幽霊になってしまったんだ?」
幽霊「つまらん事故さ。これから13人目を……ってところで事故にあっちまって。ほらあの場所」
幽霊「残念ながら、運転の才能はなかったらしい」
幽霊「それで未練が残って、あの場所で自縛霊みたいになっちまった」
幽霊「だが、あんたがあそこで深夜くつろいでくれたおかげで、こうしてくっついてくることができたのさ」
作家「なるほどな。それで“役に立てる”ってのは?」
幽霊「簡単なことさ。俺の“体験談”をあんたにだけ全て暴露してやるよ」
作家「なに?」
14: 2021/09/15(水) 21:07:47.863
幽霊「俺もそろそろ、この幽霊生活に飽きてきてさ。ぼちぼち成仏したかったんだ」
幽霊「自分のやってきたことを懺悔すれば、おそらく俺は消えることができるだろう」
幽霊「一方あんたは俺の話を聞けば、小説のネタに出来るかもしれない。Win-Winだろ?」
作家「たしかにそうかもしれないが、犯罪者の力を借りるなんて……」
幽霊「んなこといったって、俺はもう氏んでるし、誰も裁きようがない。自首も受け付けられないだろう」
作家「そりゃそうだが……」
幽霊「それにあんたさっきいったよな。殺人犯のことは色々勉強してるって」
幽霊「それだって犯罪者の力を借りてることにならないか?」
作家「……」
作家「分かった、お前の体験談を聞こう」
幽霊「おっ、話が分かる!」
作家「誰かに話したくてウズウズしてたってツラだな」
幽霊「自分のやってきたことを懺悔すれば、おそらく俺は消えることができるだろう」
幽霊「一方あんたは俺の話を聞けば、小説のネタに出来るかもしれない。Win-Winだろ?」
作家「たしかにそうかもしれないが、犯罪者の力を借りるなんて……」
幽霊「んなこといったって、俺はもう氏んでるし、誰も裁きようがない。自首も受け付けられないだろう」
作家「そりゃそうだが……」
幽霊「それにあんたさっきいったよな。殺人犯のことは色々勉強してるって」
幽霊「それだって犯罪者の力を借りてることにならないか?」
作家「……」
作家「分かった、お前の体験談を聞こう」
幽霊「おっ、話が分かる!」
作家「誰かに話したくてウズウズしてたってツラだな」
16: 2021/09/15(水) 21:10:44.870
幽霊「とはいえ、俺がこうしてあんたの前に現れることができる時間はそう長くないんだ」
幽霊「一日につき一つの事件、俺が頃したのは12人だから12日かけて話をするってのはどうだ?」
作家「いいだろう。まとめて聞いたら胸焼けしそうだし」
幽霊「決まりだな。じゃあさっそく一人目を頃した時の話をしよう」
幽霊「一人目は首を絞めたんだったかな……」
作家「……」
作家(こいつの体験談は生々しく、そこらの犯罪者のルポでは味わえないほどの臨場感であった)
作家(特に初めて人を頃した時の心理といったら、それだけで一つの小説が書けてしまいそうだ)
作家(悔しいが、こいつの話を聞けば聞くほど、己の栄養――血肉になっていく感覚を味わっていた)
幽霊「一日につき一つの事件、俺が頃したのは12人だから12日かけて話をするってのはどうだ?」
作家「いいだろう。まとめて聞いたら胸焼けしそうだし」
幽霊「決まりだな。じゃあさっそく一人目を頃した時の話をしよう」
幽霊「一人目は首を絞めたんだったかな……」
作家「……」
作家(こいつの体験談は生々しく、そこらの犯罪者のルポでは味わえないほどの臨場感であった)
作家(特に初めて人を頃した時の心理といったら、それだけで一つの小説が書けてしまいそうだ)
作家(悔しいが、こいつの話を聞けば聞くほど、己の栄養――血肉になっていく感覚を味わっていた)
17: 2021/09/15(水) 21:13:05.817
幽霊「一人目はこんなところかな」
作家「……」
幽霊「今の気分は?」
作家「最悪の気分だ。吐き気がする」
幽霊「ハハ、だろうな」
作家「だが同時に……すごいネタに出会ってしまったという感動にも包まれているよ」
幽霊「いいなぁ、あんた正直で好きだぜ。じゃ、また明日な」スゥゥ…
作家「……」
作家「……」
幽霊「今の気分は?」
作家「最悪の気分だ。吐き気がする」
幽霊「ハハ、だろうな」
作家「だが同時に……すごいネタに出会ってしまったという感動にも包まれているよ」
幽霊「いいなぁ、あんた正直で好きだぜ。じゃ、また明日な」スゥゥ…
作家「……」
19: 2021/09/15(水) 21:17:25.593
次の日の夜――
幽霊「う~ら~め~し~や~」ボァァ…
作家「それをいいたいのは、お前に殺された人達だろうさ」
幽霊「違いない。それじゃ、俺の殺人告白、第二夜を始めるか」
作家「ああ、頼む」
幽霊「二人目は溺氏させたんだ。ちょっと凝った方法を使ってな」
作家「溺氏か……」
作家(幽霊の話したトリックは恐るべきものだった)
作家(小説のネタとして優れてるのはもちろん、これを流用すれば、俺にも完全犯罪が出来ちゃうんじゃと思うほどの……)
幽霊「う~ら~め~し~や~」ボァァ…
作家「それをいいたいのは、お前に殺された人達だろうさ」
幽霊「違いない。それじゃ、俺の殺人告白、第二夜を始めるか」
作家「ああ、頼む」
幽霊「二人目は溺氏させたんだ。ちょっと凝った方法を使ってな」
作家「溺氏か……」
作家(幽霊の話したトリックは恐るべきものだった)
作家(小説のネタとして優れてるのはもちろん、これを流用すれば、俺にも完全犯罪が出来ちゃうんじゃと思うほどの……)
20: 2021/09/15(水) 21:20:45.207
三日目――
幽霊「じゃ、三人目の話をしよう」
作家「三人目の頃し方は?」
幽霊「三人目は突き落としてやったよ」
作家「ずいぶんシンプルなんだな」
幽霊「シンプルなほど、警察は捜査しにくいもんさ」
作家(この日幽霊は、突き落とされた被害者の氏体がどうなってたか事細かに話してくれた)
作家(今までは想像で書いてた“頃したての氏体”というものがどういうものかよく分かった)
作家(自分の中で、表現の幅が広がっていくのが分かった――)
幽霊「じゃ、三人目の話をしよう」
作家「三人目の頃し方は?」
幽霊「三人目は突き落としてやったよ」
作家「ずいぶんシンプルなんだな」
幽霊「シンプルなほど、警察は捜査しにくいもんさ」
作家(この日幽霊は、突き落とされた被害者の氏体がどうなってたか事細かに話してくれた)
作家(今までは想像で書いてた“頃したての氏体”というものがどういうものかよく分かった)
作家(自分の中で、表現の幅が広がっていくのが分かった――)
21: 2021/09/15(水) 21:23:40.154
四日目――
幽霊「四人目は感電氏させたんだ……」
五日目――
六日目――
作家(幽霊の殺害方法はバラエティに富んでて、俺を飽きさせなかった)
作家(もちろん、被害者に対して申し訳ないという思いはあったが)
作家(俺にこいつを罰する方法はないし、被害者だって見ず知らずの俺に追悼されたところで嬉しくないだろう)
作家(せめて、こいつの経験を小説として昇華させることがその人たちの氏を無駄にしないことなのだと)
作家(妙な理屈で自分を納得させつつ、俺は幽霊の話を聞き続けた)
幽霊「四人目は感電氏させたんだ……」
五日目――
六日目――
作家(幽霊の殺害方法はバラエティに富んでて、俺を飽きさせなかった)
作家(もちろん、被害者に対して申し訳ないという思いはあったが)
作家(俺にこいつを罰する方法はないし、被害者だって見ず知らずの俺に追悼されたところで嬉しくないだろう)
作家(せめて、こいつの経験を小説として昇華させることがその人たちの氏を無駄にしないことなのだと)
作家(妙な理屈で自分を納得させつつ、俺は幽霊の話を聞き続けた)
22: 2021/09/15(水) 21:26:33.232
そして――
幽霊「これが11人目の話だ」
幽霊「どうだ、参考になったか?」
作家「ああ、毒の調合の仕方……とても参考になったよ」
作家「もっともそのまま書いたんじゃ真似する読者が出るから、脚色しないといけないがな」
幽霊「明日で最後か……寂しくなるな」
作家「……」
幽霊「ってなるわけないか!」
作家「いや……ちょっと寂しいかな」
幽霊「ありがとよ」
幽霊「いずれにせよ、明日で俺は消える。それは確実だから安心しろよ。じゃあな」
作家「ああ、また明日な」
スゥゥ…
幽霊「これが11人目の話だ」
幽霊「どうだ、参考になったか?」
作家「ああ、毒の調合の仕方……とても参考になったよ」
作家「もっともそのまま書いたんじゃ真似する読者が出るから、脚色しないといけないがな」
幽霊「明日で最後か……寂しくなるな」
作家「……」
幽霊「ってなるわけないか!」
作家「いや……ちょっと寂しいかな」
幽霊「ありがとよ」
幽霊「いずれにせよ、明日で俺は消える。それは確実だから安心しろよ。じゃあな」
作家「ああ、また明日な」
スゥゥ…
23: 2021/09/15(水) 21:30:00.778
次の夜――
幽霊「お待たせ。さあ、最後の話をしよう」
作家「よろしく頼む」
幽霊「12人目はナイフを使った」
作家「ここにきてようやくナイフか」
幽霊「ナイフで、被害者を解体し……」
作家(ラストを飾るに相応しい、残忍な犯行だった)
作家(だが、人は刃物で刺されるとどうなるのか、とてもよく理解することができた)
作家(以前『殺害シーンの描写が迫力に欠ける』なんて酷評されたことがあったが、その弱点は克服できそうだ)
幽霊「お待たせ。さあ、最後の話をしよう」
作家「よろしく頼む」
幽霊「12人目はナイフを使った」
作家「ここにきてようやくナイフか」
幽霊「ナイフで、被害者を解体し……」
作家(ラストを飾るに相応しい、残忍な犯行だった)
作家(だが、人は刃物で刺されるとどうなるのか、とてもよく理解することができた)
作家(以前『殺害シーンの描写が迫力に欠ける』なんて酷評されたことがあったが、その弱点は克服できそうだ)
25: 2021/09/15(水) 21:33:20.252
幽霊「これで全て話し終わったよ。おかげでスッキリした。心おきなく消えられる」
作家「そうか……。そして、今のが最後の犯行になったわけだな?」
幽霊「ああ、俺は氏んだからな。13人目を頃しに行こうっていう時にな」
作家「ちなみに13人目はどうやって殺るつもりだったんだ?」
幽霊「色々考えていたが、第一候補は焼殺だったかな」
作家(燃えて氏ぬ……。一番苦しいらしいし、実行されなくて本当によかった)
幽霊「それじゃ俺は消えるとするよ。本当に楽しかった」
作家「ああ、不謹慎だが、俺も楽しめたよ」
幽霊「それじゃ、いい小説書いてくれよ、先生!」
作家「もちろんだ!」
作家「そうか……。そして、今のが最後の犯行になったわけだな?」
幽霊「ああ、俺は氏んだからな。13人目を頃しに行こうっていう時にな」
作家「ちなみに13人目はどうやって殺るつもりだったんだ?」
幽霊「色々考えていたが、第一候補は焼殺だったかな」
作家(燃えて氏ぬ……。一番苦しいらしいし、実行されなくて本当によかった)
幽霊「それじゃ俺は消えるとするよ。本当に楽しかった」
作家「ああ、不謹慎だが、俺も楽しめたよ」
幽霊「それじゃ、いい小説書いてくれよ、先生!」
作家「もちろんだ!」
27: 2021/09/15(水) 21:37:48.386
――ガシッ!
作家「ぐっ!?」
幽霊「ただし消えるのは……あんたを頃してからだ」ググッ…
作家「がっ……!?」
幽霊「13はいわくつきの数字……13人目を殺れずに氏ぬのはやっぱり未練があったんだよ」
幽霊「13人目になるのは……あんただ!」
作家「こんなことしたら……エネルギーを……消費……」
幽霊「ああ、力を使い果たして俺は消えるだろうな。だが、それでいい」
幽霊「人をこの手で絞めて、命が潰える感触を味わって消えられるんだからな」グググッ…
幽霊「幽霊による殺人……これほどの完全犯罪はないだろ?」グググッ…
作家(油断した……! こいつはその気になれば俺にも触れられるんだった……!)
作家「ぐっ!?」
幽霊「ただし消えるのは……あんたを頃してからだ」ググッ…
作家「がっ……!?」
幽霊「13はいわくつきの数字……13人目を殺れずに氏ぬのはやっぱり未練があったんだよ」
幽霊「13人目になるのは……あんただ!」
作家「こんなことしたら……エネルギーを……消費……」
幽霊「ああ、力を使い果たして俺は消えるだろうな。だが、それでいい」
幽霊「人をこの手で絞めて、命が潰える感触を味わって消えられるんだからな」グググッ…
幽霊「幽霊による殺人……これほどの完全犯罪はないだろ?」グググッ…
作家(油断した……! こいつはその気になれば俺にも触れられるんだった……!)
28: 2021/09/15(水) 21:40:45.242
作家「なんで……さっさと殺さなかった……? いくらでも……チャンスはあったはず……」
幽霊「これが最後の頃しになるなら、より絶望した表情を見たかったからだよ」
幽霊「俺の話、ずいぶん参考になったろ? なんなら“これでヒット作を書ける”なんて思ってたはずだ」
幽霊「だが、あんたはその思いを果たせず俺に殺されることになる。ヒット作はあの世で書くんだな」
作家「くそぉっ!」ブンブンッ
幽霊「無駄だよ。生きてる人間は俺に触れることはできない。できたとしても、この首にかけてる手は決して緩めない」
作家「あ……が……(意識が……)」
ポトッ
作家(……ん?)
幽霊「これが最後の頃しになるなら、より絶望した表情を見たかったからだよ」
幽霊「俺の話、ずいぶん参考になったろ? なんなら“これでヒット作を書ける”なんて思ってたはずだ」
幽霊「だが、あんたはその思いを果たせず俺に殺されることになる。ヒット作はあの世で書くんだな」
作家「くそぉっ!」ブンブンッ
幽霊「無駄だよ。生きてる人間は俺に触れることはできない。できたとしても、この首にかけてる手は決して緩めない」
作家「あ……が……(意識が……)」
ポトッ
作家(……ん?)
29: 2021/09/15(水) 21:43:26.541
作家(こ、これは……)
作家(念を込めればこいつは俺の首だって絞められる……)
作家(だったら俺も“これ”にさわれるかも!)
幽霊「顔面が青白くなってきたな。たまんねえな。やっぱり俺は絞殺(これ)が一番好きだ」
作家「……」
幽霊「ん?」
メラメラメラ…
幽霊「なんだぁ!? 俺の体が……燃えてやがる!」
作家(念を込めればこいつは俺の首だって絞められる……)
作家(だったら俺も“これ”にさわれるかも!)
幽霊「顔面が青白くなってきたな。たまんねえな。やっぱり俺は絞殺(これ)が一番好きだ」
作家「……」
幽霊「ん?」
メラメラメラ…
幽霊「なんだぁ!? 俺の体が……燃えてやがる!」
30: 2021/09/15(水) 21:46:42.316
幽霊「何をした!?」メラメラ…
作家「これさ」
幽霊「それは……ライター!?」
作家「今お前のポケットから落ちたんだよ。13人目は焼殺とかいってたから、それで持ってたんだろうな」
作家「身につけてた“物”も幽霊になる。お前がいったことだ」
作家「そして念を込めて……ライターに手を近づけたら、さわれたから火をつけたんだ」
幽霊「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!」メラメラメラ…
作家「よく燃えるな。幽霊による攻撃は幽霊によく効くんだな。あるいは焼殺に未練があったからか」
幽霊「ひいいいっ! 水っ! 水っ! 水よこせっ!」
作家「そのまま地獄に落ちろ。12人も頃してきた……報いだ」
幽霊「あぢいぃぃぃぃぃぃ……!」
メラメラメラメラメラ…
作家「これさ」
幽霊「それは……ライター!?」
作家「今お前のポケットから落ちたんだよ。13人目は焼殺とかいってたから、それで持ってたんだろうな」
作家「身につけてた“物”も幽霊になる。お前がいったことだ」
作家「そして念を込めて……ライターに手を近づけたら、さわれたから火をつけたんだ」
幽霊「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!」メラメラメラ…
作家「よく燃えるな。幽霊による攻撃は幽霊によく効くんだな。あるいは焼殺に未練があったからか」
幽霊「ひいいいっ! 水っ! 水っ! 水よこせっ!」
作家「そのまま地獄に落ちろ。12人も頃してきた……報いだ」
幽霊「あぢいぃぃぃぃぃぃ……!」
メラメラメラメラメラ…
31: 2021/09/15(水) 21:49:52.693
作家「消えた……」
作家「この“幽霊化したライター”がなかったら……俺は氏んでたな」
作家「……お前もホントは人だとかあんな幽霊じゃなく、煙草に火でもつけたかったろうにな」
スゥゥ…
作家「ライターも……消えた……。成仏できるといいが……」
作家「まったく……不可思議な十数日だったよ」
…………
……
作家「この“幽霊化したライター”がなかったら……俺は氏んでたな」
作家「……お前もホントは人だとかあんな幽霊じゃなく、煙草に火でもつけたかったろうにな」
スゥゥ…
作家「ライターも……消えた……。成仏できるといいが……」
作家「まったく……不可思議な十数日だったよ」
…………
……
32: 2021/09/15(水) 21:52:32.181
記者「新作がまたしてもベストセラーになる大ヒット! おめでとうございます!」
作家「ありがとうございます」
記者「しかし、失礼ながら長らく中堅作家に甘んじてきたあなたが、ここにきてヒット作を連発してるのは」
記者「なにか理由がおありなんじゃないですか?」
作家「私が売れっ子になれたのは……ゴーストライターのおかげですよ」
記者「! アハハ……ご冗談を」
作家「ふふ、どうでしょうかね」
END
作家「ありがとうございます」
記者「しかし、失礼ながら長らく中堅作家に甘んじてきたあなたが、ここにきてヒット作を連発してるのは」
記者「なにか理由がおありなんじゃないですか?」
作家「私が売れっ子になれたのは……ゴーストライターのおかげですよ」
記者「! アハハ……ご冗談を」
作家「ふふ、どうでしょうかね」
END
33: 2021/09/15(水) 21:58:17.603
乙
いいスレタイ回収だった
いいスレタイ回収だった
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります