1: 2017/08/12(土) 15:44:03
進撃のバハムート・バージンソウル×異世界食堂
になります。

2: 2017/08/12(土) 15:47:31

王宮 謁見の間


カイザル「陛下!」

カイザル「今一度、お考え直しを!」

シャリオス「くどいぞ、カイザル」

シャリオス「もう決めたことだ」

カイザル「しかしこのままでは悪魔達の反感を買うことに……!」

シャリオス「もうよい。下がれカイザル」

シャリオス「話すことは無い」

カイザル「陛下!」

カイザル「…………」

カイザル「……くっ」

3: 2017/08/12(土) 15:48:14

―――――――――――

カイザルの自室


カイザル(…………)

カイザル(……どうすれば)

カイザル(どうすれば良いのだ……)

カイザル(人も悪魔も神も……)

カイザル(争わずに済む方法は無いのだろうか)

カイザル(……何か)

カイザル(…………)

カイザル(…………)

4: 2017/08/12(土) 15:48:56

カイザル(…………)

カイザル(…………)

カイザル「……ん?」

カイザル「…………」

カイザル「なんだ? このドアは?」

カイザル「いつの間に私の部屋に……なんと面妖な」

カイザル「…………」

カイザル「鬼が出るか蛇が出るか」

カイザル「いずれにしても確かめなければならぬ」

     ガチャ… カララン♪

5: 2017/08/12(土) 15:49:54

ライオネル「カツ丼お代わり!」

アレッタ「はい、ただいま!」

アルトリウス「こっちはビールを追加じゃ」

タツゴロウ「……こちらは清酒を二合追加で」

アレッタ「は、はい!」

カイザル「」

     ガヤ ガヤ

カイザル「な……なんなんだ……ここは……」

サラ「……ん?」

サラ「あんた……ここは初めてかい?」

カイザル「あ、ああ……」

サラ「まあ……あたしも最初は面食らったから気持ちはわかるけど」

サラ「ここは洋食のねこやっていう飯屋だよ」

カイザル「飯屋?」

6: 2017/08/12(土) 15:50:35

サラ「変なドアが目の前に現れたでしょ?」

カイザル「そうだ」

サラ「あたしも詳しくは知らないけど」

サラ「7日に一度、どこかしこ、決まった場所に現れるドアをくぐると」

サラ「この不思議な食堂にたどり着くのよ」

カイザル「…………」

サラ「ま、物は試し」

サラ「せっかくここへ来たんだから、突っ立ってないで席について」

サラ「何か注文してみるといいわ」

カイザル「そ、そうか……わかった」

     …ストン

サラ「ちなみにあたしのオススメはメンチカツ」

サラ「最高に美味しい上、懐に優しいよ」

7: 2017/08/12(土) 15:51:24

ハインリヒ「待たれよ」

ハインリヒ「どこか……異国の騎士殿とお見受けするが」

ハインリヒ「それならば、まずは最高に旨いシュライプを堪能できる」

ハインリヒ「エビフライをオススメしたい」

ハインリヒ「君も騎士ならば、一度は食しておくべき絶品だ」

カイザル「はあ……」

ライオネル「カツ丼、お代わりィッ!」

アレッタ「はーい!」

サラ「アレッタは忙しそうね」

サラ「詳しくはこのメニューを見るといいわ」

カイザル「ありがとう」

8: 2017/08/12(土) 15:52:23

     ガチャ… カララン♪ パタン

ガガンポ「……オムライス、オオモリ」

ガガンポ「オムレツ、サンコ、モチカエリ……」

カイザル「」

カイザル(リザードマン!?)

サラ「あはは! やっぱりあれには驚くよね」

カイザル「大丈夫なのか? 武装している様だが……」

サラ「大丈夫よ。見ていてごらん」

カイザル「…………」


ライオネル「カツ丼、お代わりィィィィッ!」

アレッタ「はいはーい!」

アレッタ「マスター! カツ丼、お代わりと」

アレッタ「オムライス大盛りとパーティオムレツ三つ持ち帰りでーす!」

9: 2017/08/12(土) 15:53:24

ガガンポ「…………」

カイザル「……佇まいが並みの者と違うな」

カイザル「かなりの手練れと見た」

サラ「分かるんだ」

カイザル「多少は」


アレッタ「お待たせしました」

アレッタ「オムライス大盛りになります」

ガガンポ「…………」 コクッ

     スッ…

ガガンポ「……イタダキマス」


カイザル「ほう……祈りの言葉も捧げるのか」

カイザル「ますます驚かされる」

10: 2017/08/12(土) 15:54:28

サラ「さ、それよりもあんただよ」

サラ「何を食べるか決めたかい?」

カイザル「そうだな……」

カイザル「…………」 パラパラパラ…

カイザル「…………」

サラ「……どうしたの?」

カイザル「いや……確かにみんな旨そうだ」

カイザル「ただ、ここのところ気苦労が絶えず、食欲が落ちててな……」

サラ「そう」

サラ「騎士様ってのは、そんなのが多いね」

カイザル「ははは……」

11: 2017/08/12(土) 15:55:24

サラ「なら、食べたいものを注文してみたら?」

カイザル「え?」

サラ「なんか聞いた話じゃ」

サラ「肉も魚も卵も乳も入ってない料理っての」

サラ「注文した客が居るんだって」

カイザル「……かなりの無茶振りだな」

サラ「でも、ここのマスターは見事にその注文通りの料理を出したんだってさ!」

カイザル「それは凄い」

カイザル「ここの店主は余程の達人と見える」

サラ「まあそんな無茶振りを真似しろ、なんて言わないけど」

サラ「頼んでみたらどうかな?」


ライオネル「カツ丼、お代わりィィィィィィィッ!」

アレッタ「はーい!」

12: 2017/08/12(土) 15:56:20

サラ「じゃ……あたしはそろそろ行くね」

サラ「ごゆっくり」

カイザル「ああ。いろいろありがとう」

カイザル「助かった」

     ガヤ ガヤ

カイザル「…………」

カイザル「……よし」

カイザル「あー……すまない」

カイザル「注文をしたいんだが」

アレッタ「あ、はい」

アレッタ「ご注文は何になさいますか?」

13: 2017/08/12(土) 15:57:32

カイザル「ウサギ肉のリゾットは出来るだろうか?」

アレッタ「ウサギ肉のリゾット……ですか」

カイザル「うむ」

カイザル「肉に関しては、無いのならそれでも良い」

カイザル「胃腸に優しいものを頼みたい」

アレッタ「分かりました」

アレッタ「マスターに聞いてみますね」

カイザル「すまないな」

―――――――――――

アレッタ「鶏肉でいいのなら出来るそうです」

カイザル「そうか」

カイザル「では、それを頼む」

アレッタ「はい!」

14: 2017/08/12(土) 15:58:21

アレッタ「お待たせしました」

     コト…

カイザル「ありがとう」

アレッタ「いえ。 どうぞごゆっくり」

     スタ スタ スタ…

カイザル「…………」

カイザル(私が知るリゾットは、この様なフタは乗せないものだが……?)

     カパッ モワワッ

カイザル「……!」

カイザル「こ、これは!?」

カイザル「なんという……芳醇なハーブの香り……!」

15: 2017/08/12(土) 15:59:23

     フタを空けた瞬間

     胸をすく様な、とても心地の良い香りが鼻に抜ける

     ……そうか

     フタを置いていたのは、この匂いを閉じ込め

     一気に嗅がせる為だったのか……!

カイザル「…………」

     そして、ハーブの良い香りの後には

     旨そうな肉と細かく刻んだ野菜のたまらなくいい匂いがして

     俺の食欲を刺激する

カイザル「…………」 カチャッ…

     この時の俺は

     うかつにも神への感謝の祈りを怠ってしまっていた

     なさけないが、それ程の衝撃だったのだ

16: 2017/08/12(土) 16:00:35

カイザル「フーフー……」

カイザル「……はむっ」

カイザル「!!」

     ああ……今、俺は何を口にしたんだ?

     この味……想像すらも出来ないほど

     複雑で、濃厚で、それでいて優しい味わい……!

カイザル「はむっはむっ!」

カイザル「アツッ!……フーフー、はむっ!」

     塩が入っているのは間違いない

     だが他は何なのだろう?

     細かく刻んだ野菜……タマネギにニンジンだろうか

カイザル「ムシャムシャムシャ……ハフハフ」

17: 2017/08/12(土) 16:02:33

     そして肝心の鶏肉がまた旨い

     俺が知っているウサギ肉のリゾットは

     雑味が少しあったりするのだが

     この鶏肉は何かでそれを消しているのか……?

     それとも良い鶏肉を使っているのだろうか?

カイザル「ムシャムシャムシャ」

     しかもこのライスすら、私が知るものではない

     旨く言えないが、従来のものより粘り気があり

     しかもほのかに甘味がして、それが他の食材の味を吸い込んで旨くなり

     さらには引き立ててもいる

     なんというライスなんだ!

カイザル「……ふう」

18: 2017/08/12(土) 16:03:29

カイザル「…………」

カイザル(……なんてことだ)

カイザル(こんな……こんな……)

カイザル(こんなにも旨いリゾットが存在するなんて!)

カイザル(…………)

カイザル(……久しぶりに腹が満たされた気がする)

カイザル(リタの料理もかなり旨いと思うが)

カイザル(正直、桁違いだ……)

カイザル(…………)

19: 2017/08/12(土) 16:04:19

マスター「リゾット、いかがでしたでしょうか?」

カイザル「!」

カイザル「あなたは……ここのシェフか」

マスター「はい」

マスター「それで、お口に合いましたか?」

カイザル「ああ……」

カイザル「私がこれまで口にした、どのリゾットよりも旨かった」

マスター「それを聞いて安心しました」

カイザル「……それにしても」

カイザル「ここは不思議な空間だな」

マスター「よく言われます」

カイザル「問題は起こらないのか?」

マスター「多少はありますが……大抵ここの料理を食べて頂いた後は」

マスター「おとなしく食事を楽しんでくれる様になってくれますので」

カイザル「……さもありなん、か。 分かる気がする」

20: 2017/08/12(土) 16:05:18

カイザル「何にしても馳走になった」

カイザル「久しぶりに食事を堪能した気分だ」

カイザル「ありがとう」

マスター「いえ、こちらこそ楽しんで頂けたのなら光栄です」

カイザル「勘定を頼む」

マスター「分かりました。 こちらになります」つ(伝票)

カイザル「む……少々値が張るが、あの料理の味ならば納得もできるな」

カイザル「ではこれを」つ(勘定)

マスター「はい、確かに」

マスター「またのご来店をお待ちしてます」

カイザル「ああ。 7日後、また来る」

21: 2017/08/12(土) 16:06:13

     以降、私は毎週末が楽しみになった


     思えば……

     この7日に一度のリゾットがあったおかげで

     私は陛下とアザゼル達の板ばさみに

     何とか耐えられていたのかもしれない


     あの芳醇なハーブの香りと

     鶏肉と野菜の匂いを思い出すだけで

     不思議とやる気が沸いてくる


     また食べたいな……

22: 2017/08/12(土) 16:07:19


―――――――――――


悪魔街の廃墟


????「……ザル……カイザル」

????「起きろ、カイザル」

カイザル「……む」

カイザル「…………」

カイザル「ああ、ファバロか」

ファバロ「のんきに寝やがって……」

ファバロ「晩飯だぞ」

カイザル「ああ、分かった」

23: 2017/08/12(土) 16:07:55

リタ「やっと起きたの、カイザル」

ファバロ「まったくだぜ」

カイザル「……すまん」

リタ「別にいいわよ。 ほら、あなたの分の食事」

カイザル「ありがとう、リタ」

リタ「……ふん」

ニーナ「うーん! 美味しい~!」

ニーナ「やっぱりリタの料理は最高ね!」

リタ「はいはい」

バッカス「これで酒がありゃあなぁ……」

ハンサ「無理なものは無理ですクヮアら」

ムガロ「…………」

アザゼル「…………」

24: 2017/08/12(土) 16:08:56

カイザル「…………」

カイザル「……あ」

ファバロ「どうしたぁ? カイザル」

カイザル「そうか……そういう事だったんだ」

リタ「何の話?」

ファバロ「まぁだ寝ぼけてんのか?」

カイザル「……しっかりと起きている」

カイザル「以前、陛下とやりあった時を思い出していた」

カイザル「理想の為、どの様な道を選ぶのか尋ねられた事があってな……」

カイザル「その時は上手く答えられなかった」

ニーナ「…………」

25: 2017/08/12(土) 16:09:56

ファバロ「けっ……道とか理想とか」

ファバロ「相変わらず堅っ苦しいこと考えてやがんな」

バッカス「……で?」

バッカス「何かまとまったのか?」

カイザル「今……本当にたった今、気がついたんだ」

カイザル「俺の目指す道は……望む世界は」

カイザル「この光景だった事に」

     !?

アザゼル「……貴様」

アザゼル「こんな惨めな光景を望んでいると言うのか!?」

カイザル「すまないアザゼル。 言葉足らずだった」

カイザル「俺が言いたい事は、だな」

26: 2017/08/12(土) 16:10:38

カイザル「神も」

バッカス「…………」

ハンサ「…………」

カイザル「天使も」

ムガロ「…………」

カイザル「悪魔も」

アザゼル「…………」

カイザル「魔物も、竜族も、人間も」

リタ「…………」

ニーナ「…………」

ファバロ「…………」

27: 2017/08/12(土) 16:11:45

カイザル「どの種族も、どの立場も、上も下も無く」

カイザル「こうやって顔を突き合わせ、食事が出来る世界を」

カイザル「俺は望んでいる事に気がついたんだ」


一同「…………」


アザゼル「……話になr」

ニーナ「うんうん! いいね! それ!」

ニーナ「私もそんな世界がいい!」

ハンサ「ニーナお嬢さん。実現はクヮアなり むずクヮアしいと思われます」

リタ「ホント……お花畑な考えね」

カイザル「言われるまでも無く分かっている」

カイザル「くだらない理想だ、と言われるのも仕方ない」

カイザル「でも……俺が目指しているのは、そういう世界なんだ」

28: 2017/08/12(土) 16:12:18

ファバロ「……いいんでねーの」

ファバロ「理想くらい高くてもよぉ」

ファバロ「割かし嫌いなもんでもねーしな」

カイザル「ファバロ……」

ファバロ「ま、今それは置いといて」

ファバロ「目の前の現実ってやつを何とかしねーと いけねーけどな」

カイザル「……そうだな」

アザゼル「言っておくが」

リタ「俺は群れる気は無い、でしょ?」

リタ「こっちはご飯分くらいの働きを期待してるわ」

アザゼル「……ふん」

29: 2017/08/12(土) 16:12:59

ニーナ「でもでも!」

ニーナ「私は騎士様の世界、いいと思うから応援する!」

カイザル「ありがとう、ニーナ」

ファバロ「さ……気は済んだか?」

ファバロ「なら、さっさとメシ食って、明日の話をしようぜ」

カイザル「ああ」

カイザル(…………)

カイザル(……あの時)

カイザル(ねこやで見たあの光景)

カイザル(あのマスターの料理があれば、あるいは……)

30: 2017/08/12(土) 16:13:29

カイザル(…………)

カイザル(……いや)

カイザル(たとえそれが無くても出来る様でなければ、な)

カイザル(…………)

カイザル(不可能などではないさ……)

カイザル(きっと……)




     おしまい

31: 2017/08/12(土) 16:14:10
バハムートの続き、どうなるのか楽しみっす。
カイザルはこんな事を考えているのかなー?という妄想でした。
異世界食堂も面白いっす!

32: 2017/08/12(土) 16:17:02

引用元: カイザル「そうか……そういう事だったんだ」