1: 2013/12/12(木) 09:59:29.88
卓「……」

今日、兄ちゃんは家族の誰よりも早く起きます。何故なら、朝御飯の支度をするからです。
それはウチらでも母ちゃんに言われたわけでもありません。兄ちゃんが母ちゃんの手伝いをしているうちにそうなりました。
でも、母ちゃんは「あんたはまだ学生なんだから……」とあんまり快く思ってないみたいで……だから、兄ちゃんは休日だけ担当しています。

グツグツ

卓「……」

グツグツ

卓「……」

小鞠「ふぁ~……お兄ちゃんおはよ~」

卓「……」ウン

小鞠「あれ? まだ誰も起きてないの? お母さんも?」

卓「……」ウン

小鞠(お兄ちゃんいつも早起きだなぁ……。料理も上手だし……うぅ、私なんかより全然大人の女性だよ……)

小鞠「わ、私も何か手伝おうか?」

卓「……」ウン

小鞠「何を手伝えばいいかな……あっ、そうだ」

小鞠「卵焼き作るね? 私、この前から練習してるの」

卓「……」ウン

小鞠「うん! 任せて! 美味しいの作るから」

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386809969/

2: 2013/12/12(木) 10:03:16.18
――

夏海「……何……この黒い物体は……」

小鞠「……た、卵焼き」

卓「……」

3: 2013/12/12(木) 10:24:37.15
――

兄ちゃんは基本的にウチらと遊ばず1人で何かしてます。
それはウチらに気を使っているのか、一人で居るのが好きなのか……それはウチらにも分かりません。
今日はそんな兄ちゃんの行動を影から見たいと思います。

夏海「というわけでれんちょん。今日は兄ちゃんを尾行ちゃうぜー」

れんげ「探偵なんなー」

夏海「そうそう。『名探偵れんげ』の誕生だー」

れんげ「ウチ、コナン君になっちゃいます!!」

夏海「なっちゃえなっちゃえー」

れんげ「夏海さん。さっそく犯人が動き出しました」

夏海「おっ。自転車でどこかに行くようですなー」

れんげ「ついていくのん」

夏海「行っちゃおうー」

25: 2013/12/12(木) 18:18:31.43
――

れんげ「駄菓子屋なのん」

夏海「へぇー、何だか珍しいね。兄ちゃんが1人で駄菓子屋なんて……」

れんげ「ウチは何度か見た事あるん」

夏海「えっ? マジで?」

れんげ「マジなん。鳥の餌一杯買ってたん」

夏海「そういや兄ちゃん動物好きだったな……いや、動物が兄ちゃんを好きなのか……」

れんげ「兄にい出てきたん。やっぱり鳥の餌持ってるん」

夏海「あっ、本当だ。ポン菓子と……救急箱?」

れんげ「きっと怪我治しに行くんなー」

夏海「いやいや、餌はまだしもウチに怪我した動物なんていなかったし、きっと母ちゃんに頼まれたんだよ」

れんげ「そうなん?」

夏海「ジブリじゃないんだからさ……そんな事がそうそう……」

4: 2013/12/12(木) 10:36:01.60
――



卓「……」

れんげ「山に入っていくん。やっぱり怪我治しにいくん」

夏海「いやいや……きっと寄り道してるだけだよ……多分」

5: 2013/12/12(木) 10:37:28.31
――

山腹

れんげ「兄にいの周り鳥だらけなん。多すぎて兄にい見えないん」

夏海「……うん」

6: 2013/12/12(木) 10:38:20.77
――

山頂

れんげ「兄にいが怪我した猪を手当てしてるん! やっぱりウチが言った通りなん!」

夏海「……」

7: 2013/12/12(木) 10:45:07.57
――

れんげ「なっつん、どうして途中で帰るん? 探偵ごっこ面白いん」

夏海「れんちょん、今日見たのは幻だよ」

夏海「ウチらは二人して兄ちゃんの幻を見てたんだ」

れんげ「ウチ、幻見てたん?」

夏海「勿論。だって、猪に好かれる人間なんて見た事無いでしょ?」

れんげ「確かに……ねえねえもこの前トラックに猪が突っ込んできたって言ってたし……」

夏海「そう! 本来人間が動物に好かれる事なんてないんだよ。れんちょんだって自分の何十倍もの巨人が頭撫でに来ても怖いだけでしょ?」

れんげ「お、恐ろしいん……」ブルブル

夏海「だから、さっき見たのは幻。ウチら、テンション上がり過ぎて何か見間違えたんだよ」

れんげ「ガッカリなのん……」

夏海「まぁまぁ、お詫びと言っちゃなんだけど、駄菓子屋で奢ってあげるよ」

れんげ「なっつん優しいんなー」

8: 2013/12/12(木) 10:46:44.10
――

宮内家

ひかげ「そういやさー。今日吃驚したんだけど」

一穂「なになにー? 何かあったのー?」

ひかげ「いやねー。何もやる事無かったから偶々山に行ったんだけどさー」

ひかげ「そしたら越谷の兄が怪我した猪の手当てしてて、思わず逃げ出しちゃったよ」

れんげ「!?」

一穂「えー? ありえないっしょー」

ひかげ「いや、本当本当。今度聞いてみてよ」

れんげ「……」フルフル

一穂「ん? れんちょんどしたー?」

れんげ「やっぱり!」

9: 2013/12/12(木) 10:56:36.27
――

ガラガラ

夏海「ただいまー」

小鞠「おかえりー」

夏海「はー、疲れた。晩御飯まだー?」

小鞠「今、お母さんとお兄ちゃんが作ってるよ」

夏海「そっかー……兄ちゃんが……」

夏海「……」

夏海「……ねぇ、姉ちゃん」

小鞠「ん? 何?」

夏海「兄ちゃんって……本当にウチらの兄ちゃんなんかな……」

小鞠「はぁ? いきなり何言ってんの?」

夏海「もっと言うと人間なのかな?」

小鞠「……」

小鞠「夏海が壊れた……」

夏海「山の精霊か何かだと思うんだけど……姉ちゃんどう思う?」

小鞠「……う」

小鞠「うわーん!! 夏海がおかしくなっちゃったー!」

バタバタ

雪子「こらっ! どたばたしないのっ!」

小鞠「うわーん! 夏海がー! 夏海がー!」

雪子「小鞠っ!? 夏海! あんた何やったのっ!!」

夏海「そうだ。兄ちゃんは山の神様なんだ……村の様子を見るために人間の姿で……」

卓「……?」

12: 2013/12/12(木) 13:34:19.08
――

お兄ちゃんは恋愛感情が希薄です。でも、アニメのキャラクターのフィギュア? はたくさん持っているので、もしかすると現実の女の子にはあんまり関心がないのかもしれません。
もっともそれはここでは誰しもがそうなんだけど……都会に行けば変わるのかな?

ひかげ「ここに来るのも久しぶりだなー」

このみ「ひかげちゃんは東京住みだからねー」

ひかげ「夏海は? 今日いないの?」

小鞠「うん。れんげと遊ぶって。お兄ちゃんは居るけど」

ひかげ「ふーん……兄は居るんだ……」

このみ「気になるの?」

ひかげ「まぁ、色々あって……」

小鞠「えっ? ひか姉、お兄ちゃんの事好きなの?」

ひかげ「ちげーよっ!!」

13: 2013/12/12(木) 13:37:02.58
このみ「えー? あやしー?」

ひかげ「だから違うって……何か凄い特殊能力を持ってそうだからちょっと聞きたかったんだよ」

小鞠「? 何それ?……あっ、でも、この前夏海も言ってた」

小鞠「お兄ちゃんは山の精霊だとか何とか」

ひかげ「あー、そんな感じ」

小鞠「えー? ちゃんと説明してよー。夏海も結局教えてくれなかったし」

ひかげ「だって、めんどくせーしさー」

小鞠「もー。ひか姉のいじわるー」

このみ「まぁまぁ。ところで、最近小鞠ちゃんも眼鏡君の事話すよね? 何かあったの?」

小鞠「うん……お兄ちゃん何でもできるし、落ち着いてるし、大人の女性みたいだから……お兄ちゃんの真似してればそうなれるかなって……」

このみ「あははは、確かに。でも、大人の女性っていうより、お母さんみたいだよね」

ひかげ「私にはあんまりそう思えないけどなー」

このみ「あれあれー? やっぱりひかげちゃんは眼鏡君の事が気になっちゃうの?」

ひかげ「違うわっ!!」

14: 2013/12/12(木) 13:37:54.63
ひかげ「何度やるんだ……このくだり」

このみ「でも、結構かっこいいと思うよ? 眼鏡君。ひかげちゃんとお似合いじゃない?」

ひかげ「越谷家とは色々近すぎて無理。親戚にしか思えん」

このみ「あはは。だよねー」

小鞠「お兄ちゃんってかっこいいの?」

このみ「うん。ここら辺は眼鏡君しかいないからあんまり分からないかもしれないけど」

このみ「ひかげちゃんもそう思うでしょ?」

ひかげ「まぁ……悪くはない……」

このみ「だって」

小鞠「へぇー」

ガラガラ

楓「うぃーっす」

15: 2013/12/12(木) 13:39:35.55
ひかげ「駄菓子屋が来たぞ」

このみ「珍しいね。小鞠ちゃんが呼んだの?」

小鞠「えっ? 私呼んでないよ?」

楓「おーい、誰も居ないのかー?」

タッタッタ

卓「……」

楓「はい、これ。頼まれてたやつ」

卓「……」ウン

楓「金は……前払いで貰ってるな」

小鞠「お兄ちゃん?」

卓「……」

ひかげ「また珍しい組み合わせだな」

このみ「何してるの?」

16: 2013/12/12(木) 13:42:56.45
楓「あー…………」

楓「……それじゃあ、私はこれで」

ガラガラ

卓「……」

小鞠「? 何これ?」ガサガサ

卓「!?」

美少女フィギュア

小鞠「……」

ひかげ「……」

このみ「……」

小鞠「そ、そうだ! ゲームしよっ! ゲーム!」

このみ「……そうしよっか」

スタスタスタ

ひかげ(東京であんなの一杯見てるからなー。私は別に何とも……)

卓「……」

ひかげ「……あっ、そうだ」

ひかげ「あのさ、どうやったら猪と仲良くなれんの?」

卓「……?」

17: 2013/12/12(木) 14:15:41.92
――



夏海「腹減ったー。兄ちゃん御飯できてるー?」

小鞠「こ、ここでひっくり返せばいいの?」

卓「……」ウン

夏海「あれ? 姉ちゃん、何してんの?」

小鞠「ちょ、ちょっと話しかけないで……今、お兄ちゃんに料理教えてもらってるんだから」

夏海「ちょっとー、せっかくの活力を台無しにしないでよー」

小鞠「う、うるさいな……わわっ」

夏海「まっ、兄ちゃんついてるなら大丈夫だと思うけど……ふぁ~あ……顔洗ってこよ……」

――

夏海「……味は悪くないけどさ」

小鞠「ふふーん。今日のは自信作だもんね」

夏海(形が歪すぎる……卵焼き鍋で作ったはずなのに……)

卓「……」モグモグ

18: 2013/12/12(木) 14:20:28.94
――



卓「……!?」

卓「……」スタスタ

ガラガラ

――

宮内家

一穂「そういや昨日熊出たんだって」

れんげ「人間食べに来たのん?」

一穂「さらっと恐ろしい事を言うなよ……」

れんげ「誰か食べられたん?」

一穂「いんや、どっか行ったみたい」

――

小鞠「お兄ちゃん、頭に木の枝刺さってるよ」

卓「……」ウン

20: 2013/12/12(木) 16:48:01.63
――

私の名前は一条蛍。最近、東京からこの村に引っ越してきた小学5年生です。
最初は環境の変化に不安でしたが、村の人たちはとても親切で楽しくやっていけそうです。

ペチ「ワンワン!」

蛍「あ! ペチ!」

この子はペチ。私の家族です。いつもは大人しいんだけど……決まってある時にこうやって吠えるんです。

卓「……」

蛍(やっぱり……)

ペチ「くぅーん」スリスリ

ペチはお兄さんの事が好きみたいで、私より懐いているかもしれません。
でも、このおかげでペチと一緒に散歩している時は道に迷う事はありません。

蛍「お兄さん、こんにちは」

卓「……」ウン

蛍「今日はおひとりですか?」

卓「……」ウン

蛍「今から帰るんですか?」

卓「……」ウン

蛍「先輩に返したい本もあるので、一緒に行ってもいいですか?」

卓「……」ウン

21: 2013/12/12(木) 16:50:50.33
――

ガラガラ

蛍「こんにちわー」

小鞠「おかえりー。って、蛍?」

卓「……」ウン

小鞠「あ、お兄ちゃんと一緒だったんだ」

蛍「はい。途中でお会いしたんです」

卓「……」スタスタ

ペチ「くぅーん」スリスリ

卓「……」ピタッ

蛍「この本とっても面白かったです!」

小鞠「ほんとっ? 良かった、私もその本好きなんだー」

蛍(えへへ~。先輩が喜んでる)

卓「……」フルフル

卓「……」スッ

ペチ「くぅ……」スタスタ

蛍「あっ、ペチ」

蛍「先輩すいません。そろそろ失礼しますね」

小鞠「うん。またね」

卓「……」ニコッ

小鞠(!? お兄ちゃんが笑ってる……)

22: 2013/12/12(木) 17:12:15.75
――

結局、兄ちゃんが不思議人間なのかどうかはウチらには分かりませんでした。
でも、いいよね。兄ちゃんは兄ちゃんなんだから。
例え神様だったとしてもウチらの優しい兄ちゃんには変わりないもんね。

学校

夏海「よーし、今日は缶けりだー」

れんげ「缶けりなんなー」

小鞠「えー? もう三日連続なんだけどー」

蛍(やった! 今日も先輩と同じ場所に居よーっと)

ガヤガヤ

卓「……」

卓「……」パラ

一穂「……あっ、そうだ」

一穂「兄ちゃんってさ」

卓「……?」

一穂「熊と友達なの?」

卓「!?」

終わり

24: 2013/12/12(木) 17:30:14.99
乙でした

26: 2013/12/12(木) 18:45:40.99

兄貴いいキャラしてるから好きだわ

引用元: 夏海「兄ちゃんの日常」