1: 2012/04/02(月) 20:05:52.26
八幡「ぼくはきれいな八幡」雪乃「」の続編です。
希望があったので、書くことにしました。
プロットはまだ未完成で、着地点を探りながらの見切り発車となりますが、いましばらくおつきあいを…
更新は、少し遅くなると思います、すいません(汗
2: 2012/04/02(月) 20:24:11.42
八幡の記憶が戻ってから数日後の奉仕部部室
??「…なんかもー、し に た い」
??「…なんかもー、し に た い」
3: 2012/04/02(月) 20:30:28.63
テーブルに突っ伏し、氏体が…いや、八幡が呟いた。その目は普段の1.5倍マシマシで腐っている。
結衣「ヒッキー、どうしたのよ…せっかく、記憶が戻ったんでしょ?」
雪乃「…ひょっとして、さっそく、周囲から人が離れていって、数日前との落差に落ち込んでいるのかしら」
結衣が心配げにそちらを見やり、馬鹿ね、だから言ったのに、と雪乃がため息をつく。
結衣「ヒッキー、どうしたのよ…せっかく、記憶が戻ったんでしょ?」
雪乃「…ひょっとして、さっそく、周囲から人が離れていって、数日前との落差に落ち込んでいるのかしら」
結衣が心配げにそちらを見やり、馬鹿ね、だから言ったのに、と雪乃がため息をつく。
4: 2012/04/02(月) 20:34:49.63
八幡の記憶が戻り、奉仕部の正式部員も再び部室に集うようになっていた。
にもかかわらず、雰囲気は重苦しい。その理由は、先ほどから陰鬱なオーラを垂れ流しているこの男にあった。
八幡「…ちゃうねん」
にもかかわらず、雰囲気は重苦しい。その理由は、先ほどから陰鬱なオーラを垂れ流しているこの男にあった。
八幡「…ちゃうねん」
5: 2012/04/02(月) 20:36:15.75
雪乃「…では、どうしたというの?」
結衣「…なぜ関西弁?」アセ
結衣「…なぜ関西弁?」アセ
6: 2012/04/02(月) 20:38:28.47
八幡「記憶が元に戻れば、またぼっちに戻れる…そう思っていた時期が俺にもありました」ボソボソ
雪乃「…違ったというの?」
雪乃「…違ったというの?」
7: 2012/04/02(月) 20:41:30.52
八幡「…クラスでさ…記憶が戻ったこと、みんなに伝えたんだよ」
雪乃「…………」
結衣「みんな、祝福してたよ?」
雪乃が眉を顰め、ん?と結衣が首を傾げる
雪乃「…………」
結衣「みんな、祝福してたよ?」
雪乃が眉を顰め、ん?と結衣が首を傾げる
8: 2012/04/02(月) 20:44:48.43
八幡「ああ…そうだな。そう…みんな、素直に祝福してくれた。悪意のかけらもない態度でな」
結衣「よかったじゃん! それでなんでそんなに落ち込んでるの?」
雪乃「…何か、挙動不審な反応をしてしまった、というところかしら」
結衣「よかったじゃん! それでなんでそんなに落ち込んでるの?」
雪乃「…何か、挙動不審な反応をしてしまった、というところかしら」
9: 2012/04/02(月) 20:45:40.93
八幡「…挙動不審…ああ、そうだな。ほぼ正解だ」
結衣「え? そうだったっけ?」アセ
結衣「え? そうだったっけ?」アセ
11: 2012/04/02(月) 20:49:23.69
八幡「なにか考える前にさ…俺の体が勝手に反応したんだ…」シクシク
雪乃「…どんな痛々しい反応をしたというの?」
いっそ優しげな声で雪乃が問う
雪乃「…どんな痛々しい反応をしたというの?」
いっそ優しげな声で雪乃が問う
12: 2012/04/02(月) 20:53:29.35
八幡「…記憶を失っていた間と同じ調子で『みんな、ありがとう! おかげで、戻ってこられた、感謝してる。いろいろ迷惑かけてゴメンな!』キラキラ …って…そしたら…」
雪乃「……………」
雪乃「……………」
13: 2012/04/02(月) 20:55:23.63
雪乃「…似合わないとバカにされたとか?」
八幡「…みんな、拍手喝采でさ…」
結衣「だからよかったじゃん! 今の話、どこにも落ち込む要素ないよ?!」
八幡「…みんな、拍手喝采でさ…」
結衣「だからよかったじゃん! 今の話、どこにも落ち込む要素ないよ?!」
14: 2012/04/02(月) 20:58:16.03
八幡「それだけじゃないんだよ! その後もさ、善意100%で話しかけられるたびに、体が同じように勝手にリアクションして
爽やかに受け答えしちまうんだ… で、その後で自己嫌悪でこう…うああああぁぁぁ!って…」
結衣「どうしてそうなるかなぁ…」アセ
爽やかに受け答えしちまうんだ… で、その後で自己嫌悪でこう…うああああぁぁぁ!って…」
結衣「どうしてそうなるかなぁ…」アセ
15: 2012/04/02(月) 21:05:10.41
八幡「俺は、卑屈さにかけてだけは、誰にも負けない自信があったんだよ! それが、たかが数週間、記憶を失っていただけでこんなんなっちまうなんて…」シクシク
雪乃「比企谷くん…安心していいわよ。今のあなた、すごく卑屈だわ…」
結衣がドン引きし、雪乃がため息をつく。
雪乃「比企谷くん…安心していいわよ。今のあなた、すごく卑屈だわ…」
結衣がドン引きし、雪乃がため息をつく。
18: 2012/04/02(月) 21:41:51.93
??「…前向きにとらえてみてはどうだ、比企谷」
ガラリと部室の扉が開いた。
結衣「先生!」
奉仕部の顧問、平塚静が入ってくる。
雪乃「先生、いつも言っていますが、ノックを…」
雪乃が苦情を述べた
ガラリと部室の扉が開いた。
結衣「先生!」
奉仕部の顧問、平塚静が入ってくる。
雪乃「先生、いつも言っていますが、ノックを…」
雪乃が苦情を述べた
19: 2012/04/02(月) 21:50:33.27
平塚「ふふ…まぁ、固いことを言うな」ニヤリ
静は意に介さない。雪乃もいつものことなので諦めてため息をつく。
平塚「比企谷、記憶を喪失していた時期のことも憶えているのだろう? その間の君の真摯な思索や努力、その結果としての他者との共感や達成…そういったものは、君の人格にしっかりと体験として刻み込まれたはずだ」
静は意に介さない。雪乃もいつものことなので諦めてため息をつく。
平塚「比企谷、記憶を喪失していた時期のことも憶えているのだろう? その間の君の真摯な思索や努力、その結果としての他者との共感や達成…そういったものは、君の人格にしっかりと体験として刻み込まれたはずだ」
20: 2012/04/02(月) 21:56:10.59
八幡「…………」
平塚「…君は、さまざまな要因によってすっかり捻くれてはいるが、記憶を失っていた時期のアレこそが、本来の性格なのではないか?
私はあの体験が、これまで君を閉じ込めていた殻に、ヒビを入れたのではないかと思っている」
平塚「…君は、さまざまな要因によってすっかり捻くれてはいるが、記憶を失っていた時期のアレこそが、本来の性格なのではないか?
私はあの体験が、これまで君を閉じ込めていた殻に、ヒビを入れたのではないかと思っている」
21: 2012/04/02(月) 22:03:15.11
平塚「…実際、あの時の君の姿は賞賛に値するものだったよ。他者から好意的に見られたとて、正当な報酬だ。好んで卑屈になることもあるまい。
…これを成長の機会ととらえて、これまでの腐った生き方をこそ反省すべきだ。そうだろう?」ニコリ
結衣がうんうんと頷く。
八幡「先生…」
八幡は腐った目のまま、首だけ動かして静をみた。
…これを成長の機会ととらえて、これまでの腐った生き方をこそ反省すべきだ。そうだろう?」ニコリ
結衣がうんうんと頷く。
八幡「先生…」
八幡は腐った目のまま、首だけ動かして静をみた。
22: 2012/04/02(月) 22:08:33.59
平塚「なんだ? 比企谷」
静が慈愛の表情で微笑んでいる。
八幡「…羊水が腐っている人に生き方が腐っているとか ブベラァ?!!」
言い終える前に、静の脳天への肘打ちが八幡を沈黙させた。
平塚「…どうやら、ヒビの入れ方が足りなかったようだな」
八幡「ごめんなさいっした…頭蓋骨にヒビが入りました。いま」
八幡が痙攣しながら呟いた
静が慈愛の表情で微笑んでいる。
八幡「…羊水が腐っている人に生き方が腐っているとか ブベラァ?!!」
言い終える前に、静の脳天への肘打ちが八幡を沈黙させた。
平塚「…どうやら、ヒビの入れ方が足りなかったようだな」
八幡「ごめんなさいっした…頭蓋骨にヒビが入りました。いま」
八幡が痙攣しながら呟いた
23: 2012/04/02(月) 22:20:20.85
平塚「…まったく。私はまだ…ゲフンゲフン…才だ。今の君の暴言にはひどく傷ついたぞ!!」
静が半分涙目で睨みつける。
雪乃「私も、今のは確かにひどいと思うわ」
結衣「そうよ、ヒッキー」
ほかの女性陣からも非難され、四面楚歌状態の八幡。
八幡「ほんとにすんませんでした。マジ反省してます。本心では、静先生素敵だと思ってます。美人女教師マジ萌えます。結婚してください」
机に頭を擦り付けながらの謝罪。
静が半分涙目で睨みつける。
雪乃「私も、今のは確かにひどいと思うわ」
結衣「そうよ、ヒッキー」
ほかの女性陣からも非難され、四面楚歌状態の八幡。
八幡「ほんとにすんませんでした。マジ反省してます。本心では、静先生素敵だと思ってます。美人女教師マジ萌えます。結婚してください」
机に頭を擦り付けながらの謝罪。
24: 2012/04/02(月) 22:27:29.17
平塚「……………///」
結衣「……………」
雪乃「……………」
八幡「…………?」
部屋に沈黙が立ち込める。
急に空気が変わったことに気づき、頭を上げる八幡。
静が赤面し、結衣と雪乃の顔が引きつっていた。
結衣「……………」
雪乃「……………」
八幡「…………?」
部屋に沈黙が立ち込める。
急に空気が変わったことに気づき、頭を上げる八幡。
静が赤面し、結衣と雪乃の顔が引きつっていた。
26: 2012/04/02(月) 23:21:00.46
平塚「…ふ、ふん。見え透いたお世辞はよしたまえ」
赤面してそっぽを向く静。
雪乃「…でも、やはり、体罰はやりすぎだと思うの」ニコ
結衣「ヒッキー、大丈夫?」ナデナデ
おい、なんだこの空気。
平塚「そ、そもそも、なぜ私には態度がそのままなんだ。さっきの話に従えば、爽やかに受け答えしてもいいだろうに」
八幡「いや…やっぱ、多少なり気心が知れてるからっすかね。雪ノ下や由比ヶ浜もだけど」ポリポリ
赤面してそっぽを向く静。
雪乃「…でも、やはり、体罰はやりすぎだと思うの」ニコ
結衣「ヒッキー、大丈夫?」ナデナデ
おい、なんだこの空気。
平塚「そ、そもそも、なぜ私には態度がそのままなんだ。さっきの話に従えば、爽やかに受け答えしてもいいだろうに」
八幡「いや…やっぱ、多少なり気心が知れてるからっすかね。雪ノ下や由比ヶ浜もだけど」ポリポリ
27: 2012/04/02(月) 23:34:13.49
結衣「…ん~、まぁ、ある意味特別扱いってことだよね」エヘヘ
平塚「…ふむ。ふふ…気づいているか? おそらく、そういう素直に仲間意識を認めるようなセリフも、以前の君からは出てこなかっただろう。やはり、君は確実に変化してきていると思うよ」ニヤリ
雪乃「…『も』、ね」ボソ
平塚「…ふむ。ふふ…気づいているか? おそらく、そういう素直に仲間意識を認めるようなセリフも、以前の君からは出てこなかっただろう。やはり、君は確実に変化してきていると思うよ」ニヤリ
雪乃「…『も』、ね」ボソ
28: 2012/04/02(月) 23:35:07.86
八幡「……なん…だと?!」ガクゼン
30: 2012/04/02(月) 23:41:36.96
八幡「う、うそだ、俺は、俺は…」ブルブル
雪乃「…いいのよ比企谷くん。奉仕部でなら素の自分に戻れるというのなら、好きなだけ腐っていても」ニッコリ
八幡「…ゆ、雪ノ下…」ウル
結衣「ゆ、ゆきのんが、ヒッキーにやさしい?!」
雪乃「…ちゃんと、次の燃えないゴミの日に分別して捨ててあげるから」
結衣「と、思ったらそんなことはなかった!!」
八幡「…うん、いつもの雪ノ下だな」
雪乃「…いいのよ比企谷くん。奉仕部でなら素の自分に戻れるというのなら、好きなだけ腐っていても」ニッコリ
八幡「…ゆ、雪ノ下…」ウル
結衣「ゆ、ゆきのんが、ヒッキーにやさしい?!」
雪乃「…ちゃんと、次の燃えないゴミの日に分別して捨ててあげるから」
結衣「と、思ったらそんなことはなかった!!」
八幡「…うん、いつもの雪ノ下だな」
31: 2012/04/02(月) 23:49:22.93
ふんとそっぽを向く雪乃。
…八幡は正直なところ、雪乃との距離を測りかねている。数日前のことをふと、思い出した。
あのキス、いったいどういうつもりだったんだこいつ…まさか、本当に俺のこと…
思わず赤面する。
いやないない。ないから。ないったらない。絶対ない。
中学の時のことを思い出せ。…もうあんなのごめんだ。
妙な期待はしないに限る。
…八幡は正直なところ、雪乃との距離を測りかねている。数日前のことをふと、思い出した。
あのキス、いったいどういうつもりだったんだこいつ…まさか、本当に俺のこと…
思わず赤面する。
いやないない。ないから。ないったらない。絶対ない。
中学の時のことを思い出せ。…もうあんなのごめんだ。
妙な期待はしないに限る。
32: 2012/04/02(月) 23:56:59.76
雪乃「…どうしたの? 変な顔をして」ニッコリ
…思わず、その笑顔に見惚れる
雪乃「…まぁ、いつものことだけれど」
冷たく見下すような目で見られて、思わず安心する。やはり雪ノ下はこうでなくては
結衣「ヒッキー…なんか変な趣味に目覚めてきてない?」
結衣が若干、ヒいていた。
平塚「…そうそう、本題を忘れるところだった」ポン
…思わず、その笑顔に見惚れる
雪乃「…まぁ、いつものことだけれど」
冷たく見下すような目で見られて、思わず安心する。やはり雪ノ下はこうでなくては
結衣「ヒッキー…なんか変な趣味に目覚めてきてない?」
結衣が若干、ヒいていた。
平塚「…そうそう、本題を忘れるところだった」ポン
33: 2012/04/02(月) 23:57:42.38
平塚「劇をやりたい、ということだったな」
35: 2012/04/03(火) 00:08:10.00
感想plz plz
ちなみに、最低限ですませるつもりですが、作中で名前だけしかでてきてない半オリキャラとかいずれ登場する予定です。
ちなみに、最低限ですませるつもりですが、作中で名前だけしかでてきてない半オリキャラとかいずれ登場する予定です。
43: 2012/04/03(火) 18:14:48.55
続き
八幡「いや、それなんですけどね…一時のテンションに任せて提案しちゃったのは俺なんですが、やっぱ無理くさいかなって…」
平塚「ふむ、どういうことだ?」
八幡「いや、それなんですけどね…一時のテンションに任せて提案しちゃったのは俺なんですが、やっぱ無理くさいかなって…」
平塚「ふむ、どういうことだ?」
44: 2012/04/03(火) 18:17:48.05
八幡「まず、人数です。奉仕部の正式な部員は、ここにいる三人だけなわけで、役者だけでも無理がありますが裏方で必要な人員まで考えると到底、劇をやるには足りません」
平塚「…ふむ」
平塚「…ふむ」
45: 2012/04/03(火) 18:22:10.03
八幡「…それに、演劇なんて、このなかでちゃんとした経験やノウハウをもってるやつはいない。本職の演劇部もなにかやるでしょうから内容もかぶるし、場所も設備もこの部室じゃ難しいでしょう」
雪乃「…確かにそうね」
結衣「…そっか-、面白そうだと思ったのにな-」タメイキ
雪乃「…確かにそうね」
結衣「…そっか-、面白そうだと思ったのにな-」タメイキ
46: 2012/04/03(火) 18:24:11.98
平塚「…いや、あきらめるのは早いぞ諸君」ニヤリ
三人「「「?」」」
三人「「「?」」」
47: 2012/04/03(火) 18:27:34.15
平塚「…実はな、その演劇部から、非常にタイムリーな相談が奉仕部にあったんだ」
雪乃「…演劇部から?」
八幡「裏方の人数を貸せとか?」
雪乃「…演劇部から?」
八幡「裏方の人数を貸せとか?」
48: 2012/04/03(火) 18:31:08.16
平塚「いや、惜しいがちがう。…演劇部の現状を知っているか?」
八幡「…いえ、知人とかいないんで」
雪乃も無言で頷く。
結衣は、何やら思いあたったらしい。
結衣「…あ、なんか、2年生部員が続けて辞めたとか聞いたような?」
八幡「…いえ、知人とかいないんで」
雪乃も無言で頷く。
結衣は、何やら思いあたったらしい。
結衣「…あ、なんか、2年生部員が続けて辞めたとか聞いたような?」
49: 2012/04/03(火) 18:38:51.40
平塚「うむ、夏に引退した3年生の代はかなり熱心に活動していたんだがな。今年は1年生が入らず、2年生部員も学業に専念したいなどの理由で、続けざまに退部してしまった。…文化祭を前に、実質活動休止状態なのだよ」
八幡「…そりゃちょっと尋常じゃないっすね。何もこんな時期に辞めなくても」
雪乃も不審な表情をしている。同感らしい。
結衣「…これはあくまで噂なんだけど、勉強云々は建前で、部内の人間関係でいろいろあったんだって。その…」
言いにくそうに
八幡「…そりゃちょっと尋常じゃないっすね。何もこんな時期に辞めなくても」
雪乃も不審な表情をしている。同感らしい。
結衣「…これはあくまで噂なんだけど、勉強云々は建前で、部内の人間関係でいろいろあったんだって。その…」
言いにくそうに
50: 2012/04/03(火) 18:40:44.11
結衣「…三角関係、とか。それで人間関係がぐちゃぐちゃになっちゃって、空中分解したとか」
ちらっと他の二人をみる。微妙に気まずい空気。
ちらっと他の二人をみる。微妙に気まずい空気。
52: 2012/04/03(火) 21:29:33.23
平塚「まぁ、そのあたりの事情は本人たちにでも聞かない限りわからないがね」
静が肩を竦めて苦笑する。
雪乃「…それで、相談の内容というのは?」
平塚「このままでは総武高から演劇部の火が消えてしまう。なんとか新しい部員を確保したいというのが、引退した3年生と顧問の希望だ。そこで…」
静が肩を竦めて苦笑する。
雪乃「…それで、相談の内容というのは?」
平塚「このままでは総武高から演劇部の火が消えてしまう。なんとか新しい部員を確保したいというのが、引退した3年生と顧問の希望だ。そこで…」
53: 2012/04/03(火) 21:41:49.58
平塚「さっき、話にあった劇を君たちがやってみたらいいんじゃないか? それでほとんどの問題が解決すると思うが」ニヤリ
雪乃「なるほど。つまり…」
雪乃が頷く。
平塚「校内で新たな部員を募集するなら、演劇の魅力に実際触れてもらうのが何より一番だろう。君たちが正規の演劇部の代理として公演を行うというのなら、セットの使用や演技指導など、バックアップは惜しまないと思うぞ。場所は、講堂を使わせてやる」
雪乃「…講堂を?」
八幡「そりゃまた、大盤振る舞いっすね…演劇部の代わりっすか」ポリポリ
平塚「そういうことだな。それに先日、清掃を行って使用できるようにしたのは君たちだ。優先的に使えるよう取り計らおう」
雪乃「なるほど。つまり…」
雪乃が頷く。
平塚「校内で新たな部員を募集するなら、演劇の魅力に実際触れてもらうのが何より一番だろう。君たちが正規の演劇部の代理として公演を行うというのなら、セットの使用や演技指導など、バックアップは惜しまないと思うぞ。場所は、講堂を使わせてやる」
雪乃「…講堂を?」
八幡「そりゃまた、大盤振る舞いっすね…演劇部の代わりっすか」ポリポリ
平塚「そういうことだな。それに先日、清掃を行って使用できるようにしたのは君たちだ。優先的に使えるよう取り計らおう」
54: 2012/04/03(火) 21:46:59.16
結衣「んーーー…すごいけど、それでもまだ人数足りなくないかな? 3年生の人は指導だけなんだよね?」
平塚「そうだな。そこは君たちがなんとかしたまえ。友人に声をかけて集めるもよし…そういえば、先日言っていた入部希望の連中はどうする?」ニヤリ
結衣・雪乃「「…入部希望?」」
平塚「そうだな。そこは君たちがなんとかしたまえ。友人に声をかけて集めるもよし…そういえば、先日言っていた入部希望の連中はどうする?」ニヤリ
結衣・雪乃「「…入部希望?」」
55: 2012/04/03(火) 21:49:32.83
平塚「…なんだ比企谷、伝えてなかったのか?」
八幡「…いや、知りませんよ。あれ、冗談じゃなかったんですか…」
意外そうに問う静に八幡がやや引きつりながら答える。
八幡「…いや、知りませんよ。あれ、冗談じゃなかったんですか…」
意外そうに問う静に八幡がやや引きつりながら答える。
56: 2012/04/03(火) 21:56:28.27
結衣「…先生、入部希望って?」
平塚「ああ、先日、球技大会の後でな。比企谷の活躍を見て奉仕部に興味を持ったという生徒たちから入部希望が届いていたのだよ…返事はまだ保留しているがね。ちなみに女子ばかりだ」フフ
結衣「反対、はんたーい!! 動機が、動機が不純!!」
雪乃「…………」ゴゴゴゴ
顔を真っ赤にして反対を叫ぶ結衣
雪乃は、無言だが、八幡は周囲に冷気が渦巻いているような錯覚を感じた。
平塚「ああ、先日、球技大会の後でな。比企谷の活躍を見て奉仕部に興味を持ったという生徒たちから入部希望が届いていたのだよ…返事はまだ保留しているがね。ちなみに女子ばかりだ」フフ
結衣「反対、はんたーい!! 動機が、動機が不純!!」
雪乃「…………」ゴゴゴゴ
顔を真っ赤にして反対を叫ぶ結衣
雪乃は、無言だが、八幡は周囲に冷気が渦巻いているような錯覚を感じた。
57: 2012/04/03(火) 21:59:20.64
雪乃「…そうね、入部を希望しているのに、無碍に拒否するのもかわいそうだわ」ニッコリ
結衣「ゆきのん?!」ガクゼン
雪乃「…だから部長の私が一人ずつ面接して、これならばと納得する人材であれば、入部を許可しましょう…平塚先生、それでよろしいですね?」ニッコリ
平塚「…あ、ああ。お手柔らかにな」ヒク
結衣「ゆきのん?!」ガクゼン
雪乃「…だから部長の私が一人ずつ面接して、これならばと納得する人材であれば、入部を許可しましょう…平塚先生、それでよろしいですね?」ニッコリ
平塚「…あ、ああ。お手柔らかにな」ヒク
59: 2012/04/04(水) 05:23:05.45
全員『…殺る気だ?!』ガクブル
雪乃に表だって突っ込める勇気の持ち主はこの場には誰もいない。
結局、新入部員の件については部長預かりで保留となり、人数の件についてはそれぞれに手分けしてあたってみることとなった。
雪乃に表だって突っ込める勇気の持ち主はこの場には誰もいない。
結局、新入部員の件については部長預かりで保留となり、人数の件についてはそれぞれに手分けしてあたってみることとなった。
60: 2012/04/04(水) 05:41:01.66
その夜
電話
八幡「…ってわけなんだ。悪いけど、頼めないか?」
戸塚「あはは、いいよ。ぼくでよければよろこんで! おもしろそうだよね」
八幡「ホントすまん。じゃあ、詳細はまた明日…おやすみ」ピッ
またねー、おやすみーという戸塚のスイートボイスを確認して電話を切る。人数、一人確保。結衣たちはうまくいっているだろうか?
本当に、その場の思いつきで言ったことだったが、劇については本当にやることになりそうだ。
八幡「なんか大事になってきたな。どうしてこうなった…俺のせいか。みとめたくないものだな、自分自身の若さゆえのあやまちというやつを」タメイキ
連鎖的に『あの夜』のことを思い出し、八幡は思わず赤くなった。
電話
八幡「…ってわけなんだ。悪いけど、頼めないか?」
戸塚「あはは、いいよ。ぼくでよければよろこんで! おもしろそうだよね」
八幡「ホントすまん。じゃあ、詳細はまた明日…おやすみ」ピッ
またねー、おやすみーという戸塚のスイートボイスを確認して電話を切る。人数、一人確保。結衣たちはうまくいっているだろうか?
本当に、その場の思いつきで言ったことだったが、劇については本当にやることになりそうだ。
八幡「なんか大事になってきたな。どうしてこうなった…俺のせいか。みとめたくないものだな、自分自身の若さゆえのあやまちというやつを」タメイキ
連鎖的に『あの夜』のことを思い出し、八幡は思わず赤くなった。
61: 2012/04/04(水) 05:51:30.02
…雪乃の考えていることがよくわからない。いや、結衣の考えていることもだ。
…いや、わかることを、何かが拒否している。素直に、それぞれの行動や言動を分析したら、答えは…
八幡「いや、ないだろ。ないから。ない、ない」
誰かに相談したかったが、生憎そんなことができそうな知り合いはいなかった。戸塚は…なんかちがう。
葉山隼人あたりなら、経験も豊富そうで頼りにはなりそうだったが、この相談についてだけはダメだと直感が言っていた。ヘタすれば血を見る。
…いや、わかることを、何かが拒否している。素直に、それぞれの行動や言動を分析したら、答えは…
八幡「いや、ないだろ。ないから。ない、ない」
誰かに相談したかったが、生憎そんなことができそうな知り合いはいなかった。戸塚は…なんかちがう。
葉山隼人あたりなら、経験も豊富そうで頼りにはなりそうだったが、この相談についてだけはダメだと直感が言っていた。ヘタすれば血を見る。
62: 2012/04/04(水) 05:59:20.29
…答えが出ないことを考えていてもしょうがない。それより今は、劇のことだ。…あー、アイツにも一応声はかけておくか。後でなんか言われてもうぜぇし
携帯電話から以前、無理矢理登録させられた番号を呼び出す。
材木座「むふん、もしもし、我であるが」
10秒以内に出なかったら切ろうと思っていたが、ワンコールで出やがった。うぜぇ
材木座「…なぜ、呼び出しておいて舌打ちをするのだ?」
八幡「気のせいだ。ところで、忙しかったら断ってくれて全然かまわないんだけど、かくかくしかじか」
材木座「まるまるのうまうまか。よかろう。ようやく貴様も、我の才能に気付いたようだな。致し方あるまい、手を貸してやろうではないか」
八幡「いや、本当にムリはしなくていいから」
携帯電話から以前、無理矢理登録させられた番号を呼び出す。
材木座「むふん、もしもし、我であるが」
10秒以内に出なかったら切ろうと思っていたが、ワンコールで出やがった。うぜぇ
材木座「…なぜ、呼び出しておいて舌打ちをするのだ?」
八幡「気のせいだ。ところで、忙しかったら断ってくれて全然かまわないんだけど、かくかくしかじか」
材木座「まるまるのうまうまか。よかろう。ようやく貴様も、我の才能に気付いたようだな。致し方あるまい、手を貸してやろうではないか」
八幡「いや、本当にムリはしなくていいから」
63: 2012/04/04(水) 06:05:16.65
ノリノリだった。超うぜぇ。もう、存在自体がうざかった。会話を切り上げ、電話を切ろうとしてふと、思いつく。
そうだな、もう、こいつでもいいか…
八幡「…なぁ、ところでさ。たとえばの話なんだけど」
材木座「ぶひ? なになに」
八幡「同じ部活の美少女二人がさ、どうやら自分のこと好きみたいなんだ。で、片方にこないだ、突然キスされた。これ聞いてどう思う?」
材木座「それなんて工口ゲ? 我にもタイトルとかくわしく」
八幡「うん、そうだよな、無駄な時間使わせて悪かった」
たしかに、現実にこんな事態が発生するわけがない。あぶなかったわー、あやうくイタい勘違いするとこだった。
そうだな、もう、こいつでもいいか…
八幡「…なぁ、ところでさ。たとえばの話なんだけど」
材木座「ぶひ? なになに」
八幡「同じ部活の美少女二人がさ、どうやら自分のこと好きみたいなんだ。で、片方にこないだ、突然キスされた。これ聞いてどう思う?」
材木座「それなんて工口ゲ? 我にもタイトルとかくわしく」
八幡「うん、そうだよな、無駄な時間使わせて悪かった」
たしかに、現実にこんな事態が発生するわけがない。あぶなかったわー、あやうくイタい勘違いするとこだった。
64: 2012/04/04(水) 06:10:13.50
お礼に、工口ゲならオーサリングヘブンの「The ガッツ」シリーズがお勧めだぞとやさしく教えてから電話を切る。
わかった、さっそくアマ●ンでポチってみるーと最後に聞こえた。いいことしたあとは気持ちいい。疑問も解消したし、今夜はよく眠れそうだ…
八幡サイドout
わかった、さっそくアマ●ンでポチってみるーと最後に聞こえた。いいことしたあとは気持ちいい。疑問も解消したし、今夜はよく眠れそうだ…
八幡サイドout
65: 2012/04/04(水) 06:22:59.34
雪乃「…というわけなの。悪いけど、もしよかったら力を貸してもらえないかしら」
川崎「…んー、悪いけどパスだね」
雪乃「…そう、わかったわ」タメイキ
電話の向こうで、雪乃があっさり引き下がった。もともと、予想していたのだろう。
??「いいじゃん、やりなよ姉ちゃん」
川崎「…んー、悪いけどパスだね」
雪乃「…そう、わかったわ」タメイキ
電話の向こうで、雪乃があっさり引き下がった。もともと、予想していたのだろう。
??「いいじゃん、やりなよ姉ちゃん」
66: 2012/04/04(水) 06:52:29.15
大志「いいじゃん、やりなよ姉ちゃん」
川崎「大志?!」
大志「ごめん、ちょっと会話が聞こえちゃってさ…」
川崎「…あんたには関係ないわよ。あっちいってなさい」
大志「姉ちゃん、本当は、友達と部活とかやってみたかったんだろ? せっかくのチャンスじゃないか。このまま断ったらもったいないよ…」
川崎「大志?!」
大志「ごめん、ちょっと会話が聞こえちゃってさ…」
川崎「…あんたには関係ないわよ。あっちいってなさい」
大志「姉ちゃん、本当は、友達と部活とかやってみたかったんだろ? せっかくのチャンスじゃないか。このまま断ったらもったいないよ…」
67: 2012/04/04(水) 06:54:51.27
大志「高校生活は、一生で一度しかないんだぜ。俺も、家のこととかできる範囲で協力するからさ…」
川崎「…大志」
川崎「…大志」
68: 2012/04/04(水) 06:57:33.71
川崎「…大志」
電話の向こうから、姉弟の会話が聞こえてくる。しばらくして
川崎「…ごめん、お節介な弟がこう言ってるからさ。…さっきの話、私も参加させてくれる?」クショウ
雪乃「…ええ、もちろんよ。相変わらず、姉弟仲が良いのね。うらやましいわ」
電話の向こうから、姉弟の会話が聞こえてくる。しばらくして
川崎「…ごめん、お節介な弟がこう言ってるからさ。…さっきの話、私も参加させてくれる?」クショウ
雪乃「…ええ、もちろんよ。相変わらず、姉弟仲が良いのね。うらやましいわ」
69: 2012/04/04(水) 06:59:13.82
川崎「…そんないいもんじゃないよ。じゃあ、切るわね」
雪乃「…あ、ちょっと待って」アセ
雪乃「…あ、ちょっと待って」アセ
70: 2012/04/04(水) 07:02:38.35
川崎「ん、何?」
雪乃「…その、さっきの話とは別に、個人的に他人の客観的な意見が聞きたいというか、自分以外の視点からの評価をきくのもやぶさかではないというかそういう話があるのだけれど…」モゴモゴ
川崎「…えーと、要するに相談事?」クショウ
雪乃「…その、さっきの話とは別に、個人的に他人の客観的な意見が聞きたいというか、自分以外の視点からの評価をきくのもやぶさかではないというかそういう話があるのだけれど…」モゴモゴ
川崎「…えーと、要するに相談事?」クショウ
71: 2012/04/04(水) 07:04:30.97
雪乃「……」
川崎「…いいよ、どうしたの?」
雪乃「ええと…さっきも言ったように、客観的にみた意見を聞きたいのだけれど」
川崎「…」
雪乃「比企谷くん、私のことどう思ってるのかしら」
川崎「…いいよ、どうしたの?」
雪乃「ええと…さっきも言ったように、客観的にみた意見を聞きたいのだけれど」
川崎「…」
雪乃「比企谷くん、私のことどう思ってるのかしら」
72: 2012/04/04(水) 07:07:03.78
川崎「…切っていい?」
雪乃「ま、待って!」
川崎「本人に聞けばいいでしょうに」ハァ
雪乃「できないから困ってるのよ!」
川崎「…わかったわよ。客観的にみて、ね」
雪乃「ま、待って!」
川崎「本人に聞けばいいでしょうに」ハァ
雪乃「できないから困ってるのよ!」
川崎「…わかったわよ。客観的にみて、ね」
73: 2012/04/04(水) 08:28:52.51
川崎「…客観的なことだけを言えば、命懸けであんたを助けてくれたんでしょ? 実際、事故で記憶を失ったりしてたし」
雪乃「…そうね、でも…通りすがりの小犬でも助けてあげるような優しい人だし…」
川崎「…記憶を失ってる間でも、球技大会での大活躍はあんたのことがモチベーションだったみたいだし、あんたのためにわざわざまた飛び降りやってまで奉仕部に戻ってきたんでしょ?」
雪乃「…そうね、でも…通りすがりの小犬でも助けてあげるような優しい人だし…」
川崎「…記憶を失ってる間でも、球技大会での大活躍はあんたのことがモチベーションだったみたいだし、あんたのためにわざわざまた飛び降りやってまで奉仕部に戻ってきたんでしょ?」
74: 2012/04/04(水) 08:31:43.73
川崎「…なんとも思ってないやつのために、ここまでやる訳ないでしょ。命懸けで愛してるって言われても信じるわよ」
雪乃「…そ、そう…?」
頬が熱い。腕の中のパンさんの縫いぐるみが抱きしめられて形を歪める。
雪乃「…そ、そう…?」
頬が熱い。腕の中のパンさんの縫いぐるみが抱きしめられて形を歪める。
77: 2012/04/04(水) 14:50:02.81
楽しみにしてくれてる人がいる限り俺は書く。
無理にとはいわないが反応があるとやはり嬉しいです。
無理にとはいわないが反応があるとやはり嬉しいです。
78: 2012/04/04(水) 15:37:56.50
川崎「…悔しいけど、あんた美人だしね。比企谷じゃなくても、迫られて墜ちない男なんてほとんどいないと思うんだけど。
…キスまでしたんでしょ? それで何も反応ないの?
…大志、となりでガタガタうるさい!
ゴメン、弟がうるさくて」
…キスまでしたんでしょ? それで何も反応ないの?
…大志、となりでガタガタうるさい!
ゴメン、弟がうるさくて」
80: 2012/04/04(水) 15:59:43.27
雪乃「…意識はしてくれてると思う。でも、何だか戸惑っているというか、壁があるように感じるの」
溜息を吐く雪乃。
川崎「…まぁ、確かに戸惑いはあるんじゃない。あいつ、どうみても恋愛経験豊富そうには見えないし」
溜息を吐く雪乃。
川崎「…まぁ、確かに戸惑いはあるんじゃない。あいつ、どうみても恋愛経験豊富そうには見えないし」
82: 2012/04/04(水) 16:12:08.68
川崎「…まぁそれは、あんたもか。すっかり恋する乙女だね。以前の雪ノ下と本当に同一人物なの?」クス
雪乃「…仕方ないじゃない。告白されたことはあっても…自分から誰かを好きになったことなんて、初めてなのよ」
自室で雪乃は俯き、真っ赤になって縫いぐるみを抱きしめる。
雪乃「…仕方ないじゃない。告白されたことはあっても…自分から誰かを好きになったことなんて、初めてなのよ」
自室で雪乃は俯き、真っ赤になって縫いぐるみを抱きしめる。
84: 2012/04/04(水) 17:54:19.88
雪乃「…川崎さんは違うというの?」
川崎「あ、あたしは…ノ-コメント!!」
雪乃「…ずるい」
川崎「わかった、ないわよ! これでいい?!」
川崎「あ、あたしは…ノ-コメント!!」
雪乃「…ずるい」
川崎「わかった、ないわよ! これでいい?!」
85: 2012/04/04(水) 17:58:49.60
川崎「…だからアドバイスって言っても、あんまり大したことは言えない。積極的に押していけばなんとかなると思うんだけど…でもいいの?」
雪乃「…え?」
雪乃「…え?」
86: 2012/04/04(水) 18:01:56.94
川崎「…由比ヶ浜のこと。あんたたち、仲いいんでしょ? あの娘もどうみても比企谷に惚れてると思うんだけど」
雪乃「……」
雪乃「……」
87: 2012/04/04(水) 18:03:53.76
川崎「…このままじゃ、三角関係で修羅場になるんじゃないの?」
雪乃「…やっぱり、そうよね」ウツムク
雪乃「…やっぱり、そうよね」ウツムク
88: 2012/04/04(水) 19:10:38.43
携帯の電池が切れた…ちょっと今、家に戻れないので、更新が…
90: 2012/04/04(水) 19:48:56.53
由比「…ていう事情なんだけど、姫菜、お願いできない?」
海老名「あははー、いいよー。原稿もメドがたってるし、比企谷くんには世話になったからねー。まぁ、裏方でよければだけど」
由比「ゴメン! ほんと助かるっ!」
電話の向こうの友人に対して拝むしぐさをする由比。
海老名「あははー、いいよー。原稿もメドがたってるし、比企谷くんには世話になったからねー。まぁ、裏方でよければだけど」
由比「ゴメン! ほんと助かるっ!」
電話の向こうの友人に対して拝むしぐさをする由比。
91: 2012/04/04(水) 21:09:02.50
海老名「ほかにも、誰か声かけるの?」
由比「えっと、ヒッキーがさいちゃん達を誘ってるはず。あたしは、今のところ姫菜だけ。優美子は…興味なさそうだし、どうしよう」
由比「えっと、ヒッキーがさいちゃん達を誘ってるはず。あたしは、今のところ姫菜だけ。優美子は…興味なさそうだし、どうしよう」
92: 2012/04/04(水) 21:35:16.60
海老名「隼人くんたちも誘ったら? 人数足りてないんでしょ。 隼人くんが来れば、優美子も来ると思うけど」
由比「うーん、そだねー」
由比「うーん、そだねー」
94: 2012/04/04(水) 22:06:19.66
海老名「そうすればあたし的にもベストカップリングを間近でみるチャンス! デュフフフ…☆」
由比「…え~と、姫菜?」アセ
海老名「う~ん、NTRで三角関係とかもありだな~」テカテカ
由比「う…三角、関係」ドンヨリ
由比「…え~と、姫菜?」アセ
海老名「う~ん、NTRで三角関係とかもありだな~」テカテカ
由比「う…三角、関係」ドンヨリ
97: 2012/04/04(水) 23:26:11.58
海老名「お、どしたの?」
由比「うん…ちょっと…ね。演劇部が、三角関係のもつれでバラバラになったって噂、あったでしょ?」
海老名「うんうん」
由比「そういうの…つらいな、って」
由比「うん…ちょっと…ね。演劇部が、三角関係のもつれでバラバラになったって噂、あったでしょ?」
海老名「うんうん」
由比「そういうの…つらいな、って」
98: 2012/04/04(水) 23:29:14.95
海老名「…うーん、そっかぁ」フム
由比「姫菜?」
海老名「…大丈夫だよ、ユイ。あんたたちは、きっとそうはならない」
由比「ひ、姫菜?!」
海老名「…なんとなくだけどね。そんな気がする」クス
由比「も、もう。誰も、奉仕部がそうだなんていってないじゃない!」カァ
由比「姫菜?」
海老名「…大丈夫だよ、ユイ。あんたたちは、きっとそうはならない」
由比「ひ、姫菜?!」
海老名「…なんとなくだけどね。そんな気がする」クス
由比「も、もう。誰も、奉仕部がそうだなんていってないじゃない!」カァ
99: 2012/04/04(水) 23:36:03.49
海老名「おっと、そうだった? 深読みしちゃったよ、失敬失敬」フフフ
由比「も、もう、ホントだよ! そもそもあたし、別にヒッキーのことなんて…」プンプン
海老名「でも、それはそうとして、比企谷くん最近、あちこちから狙われてるからねー、油断してると、思いもよらないところから足を掬われるかもよ?」
由比「え、え?! ちょっと、やめてってば」
海老名「そうね、由比が何とも思ってないっていうなら、この際あたしもアタックしてみようかな」キラン
由比「姫菜ー?!」
海老名「…なんてね、冗談だってば。でも、今の反応、どういうことかな」フフフ
由比「う、うう…姫菜がいじめるー…」シクシク
由比「も、もう、ホントだよ! そもそもあたし、別にヒッキーのことなんて…」プンプン
海老名「でも、それはそうとして、比企谷くん最近、あちこちから狙われてるからねー、油断してると、思いもよらないところから足を掬われるかもよ?」
由比「え、え?! ちょっと、やめてってば」
海老名「そうね、由比が何とも思ってないっていうなら、この際あたしもアタックしてみようかな」キラン
由比「姫菜ー?!」
海老名「…なんてね、冗談だってば。でも、今の反応、どういうことかな」フフフ
由比「う、うう…姫菜がいじめるー…」シクシク
112: 2012/04/06(金) 00:00:19.66
??「小町キック!!」
八幡「オウフ?!」
気持ちよく寝たはずが突然、蹴り起こされた。 犯人は…自分で自白してるよ。
八幡「…な、なにすんだ小町…」
時計は、夜の11時を指している。
八幡「オウフ?!」
気持ちよく寝たはずが突然、蹴り起こされた。 犯人は…自分で自白してるよ。
八幡「…な、なにすんだ小町…」
時計は、夜の11時を指している。
113: 2012/04/06(金) 00:02:13.69
小町「…お兄ちゃん、そこに正座しなさい」
何やら、怒っているらしい。
八幡「…………?」
よくわからんが、半分寝ぼけた頭で言われた通り正座する
何やら、怒っているらしい。
八幡「…………?」
よくわからんが、半分寝ぼけた頭で言われた通り正座する
114: 2012/04/06(金) 00:06:41.64
小町「…さるスジから、お兄ちゃんが雪乃さんとキスしたという噂をききました。事実ですか?」コホン
八幡「ぶぅぅぅぅーっ?!」
寝覚めのMAXコーヒーを自室に吹く八幡
八幡「ぶぅぅぅぅーっ?!」
寝覚めのMAXコーヒーを自室に吹く八幡
115: 2012/04/06(金) 00:09:55.24
小町「き、汚いなぁもぉ…そのリアクション、小町的に超ポイント低い…」
八幡「お、おまえ、それどこか、か、か…」ガクガク
小町「それは、女のヒミツなんだよお兄ちゃん…」フフフ…
ちなみに、姉の隣の部屋で盗み聞きしていた大志からの緊急メールが情報源である
八幡「お、おまえ、それどこか、か、か…」ガクガク
小町「それは、女のヒミツなんだよお兄ちゃん…」フフフ…
ちなみに、姉の隣の部屋で盗み聞きしていた大志からの緊急メールが情報源である
116: 2012/04/06(金) 00:14:33.05
小町「…その反応をみると、事実なんだね…」
八幡「…お、俺は無実だ、冤罪だ!!」
小町「犯人はみんなそういうんだよ…」
雪乃と同じ反応をする妹。想像以上に、雪乃に毒されているようだ。いかん、このままでは…
小町「…それで、どうするの?」
八幡「ど、どうって、いや何がだよ」
八幡「…お、俺は無実だ、冤罪だ!!」
小町「犯人はみんなそういうんだよ…」
雪乃と同じ反応をする妹。想像以上に、雪乃に毒されているようだ。いかん、このままでは…
小町「…それで、どうするの?」
八幡「ど、どうって、いや何がだよ」
117: 2012/04/06(金) 00:17:23.80
小町「女の子のはじめてを奪っておいて、男としてどう責任をとるのかってきいてるの!」プンプン
八幡「う、奪ったってお前! あれは向こうのほうからだな…初めて…まぁ、そうだろうなぁ。俺もだけど…あいつ、何考えてるんだ…」
小町「お兄ちゃんのバカ!!」
八幡「う、奪ったってお前! あれは向こうのほうからだな…初めて…まぁ、そうだろうなぁ。俺もだけど…あいつ、何考えてるんだ…」
小町「お兄ちゃんのバカ!!」
118: 2012/04/06(金) 00:21:47.88
八幡「?!」
小町「お兄ちゃんのほうこそ何考えてるのよ、言い訳なんてして…雪乃さんが何を考えてるかなんて、はっきりしてるじゃない」ウルウル
八幡「…つまり、どういうことだってばよ」
小町「『お兄ちゃんのことが好き』っていう、必氏の意志表示に決まってるでしょ! 雪乃さんだよ? かけひきや出来心でそんなことすると思う?」
小町「お兄ちゃんのほうこそ何考えてるのよ、言い訳なんてして…雪乃さんが何を考えてるかなんて、はっきりしてるじゃない」ウルウル
八幡「…つまり、どういうことだってばよ」
小町「『お兄ちゃんのことが好き』っていう、必氏の意志表示に決まってるでしょ! 雪乃さんだよ? かけひきや出来心でそんなことすると思う?」
119: 2012/04/06(金) 00:25:24.36
八幡「…しない、よな…でも、あの雪ノ下だぞ? あいつが俺を好きなんてありうるか?」アセ
小町「お兄ちゃんのバカバカ!! 小町キック2!」
八幡「オウフ?!!」
小町「お兄ちゃんのバカバカ!! 小町キック2!」
八幡「オウフ?!!」
120: 2012/04/06(金) 00:36:54.81
小町「お兄ちゃんは自己評価低すぎ! お兄ちゃんは、ちゃんとカッコイイよ、見る人が見れば! たまにだけど! 普段腐ってるけど!」プンプン
八幡「褒めるんならもっと素直に褒めろ!」
小町「とにかく、お兄ちゃんのそのうじうじした態度のせいで、雪乃さんは悩んでいるのです。ちゃんと、男の子として態度をはっきりさせること! いいですね?」ジロッ
八幡「…いや、とはいってもな」アセ
八幡「褒めるんならもっと素直に褒めろ!」
小町「とにかく、お兄ちゃんのそのうじうじした態度のせいで、雪乃さんは悩んでいるのです。ちゃんと、男の子として態度をはっきりさせること! いいですね?」ジロッ
八幡「…いや、とはいってもな」アセ
121: 2012/04/06(金) 00:38:29.40
小町「…お兄ちゃんが態度を改めないというなら、小町にも考えがあるよ…」キラン
八幡「…ってどうすんのお前」
小町「もう、いっしょにお風呂にはいってあげないから!!」
八幡「な、なに?!」
八幡「…ってどうすんのお前」
小町「もう、いっしょにお風呂にはいってあげないから!!」
八幡「な、なに?!」
122: 2012/04/06(金) 00:39:54.07
八幡「…ってちょっとまて。誤解を招く言い方すんな。今でも別に入ってないだろ」
小町「…ばれたか」テヘヘ
最後に入ったのは、小6と小4の時か、たしか
小町「…ばれたか」テヘヘ
最後に入ったのは、小6と小4の時か、たしか
123: 2012/04/06(金) 00:42:04.79
八幡「…この年でいっしょに風呂とか、親父に殺されるわ。しかしまぁ、言いたいことはわかった」
小町「小町的にはべつにかまわないんだけどね…とにかく、しっかりすること! わかったねお兄ちゃん!」
八幡「…あー」フゥ
小町「小町的にはべつにかまわないんだけどね…とにかく、しっかりすること! わかったねお兄ちゃん!」
八幡「…あー」フゥ
133: 2012/04/06(金) 22:48:20.41
翌日の教室…
八幡「いろいろ考えてたら、寝られなかった…危うくまた遅刻するとこだったわ」グッタリ
結衣「ヒッキーおはよ…どうかしたの? 体調悪そだけど」
八幡「…由比ヶ浜か、う-っす。
…いや、お前もなんか、人のこと言えねぇ顔してるぞ。あと、その手どうした?」
結衣「…え、ウソ?!」
結衣が慌てた様子で自分の顔に手をあてる。
八幡「いろいろ考えてたら、寝られなかった…危うくまた遅刻するとこだったわ」グッタリ
結衣「ヒッキーおはよ…どうかしたの? 体調悪そだけど」
八幡「…由比ヶ浜か、う-っす。
…いや、お前もなんか、人のこと言えねぇ顔してるぞ。あと、その手どうした?」
結衣「…え、ウソ?!」
結衣が慌てた様子で自分の顔に手をあてる。
134: 2012/04/06(金) 22:59:35.30
八幡「いや悪かった。気をつけて見なきゃわからねぇよ…なんかあるのかしらんが、体調には気をつけろよ…」
結衣「ヒッキー、なんか優しい…ん? それってあたしのこといつも注意して見てるってこと?///」
八幡「…曲解すんな。いや、もうどうでもいい。眠い…」
机に突っ伏す八幡
結衣「ヒッキー、なんか優しい…ん? それってあたしのこといつも注意して見てるってこと?///」
八幡「…曲解すんな。いや、もうどうでもいい。眠い…」
机に突っ伏す八幡
135: 2012/04/06(金) 23:09:26.22
結衣「…ち、ちょっとヒッキー?! 寝ないでよもう…」
海老名「…まあまあユイ。ところで、その様子だとだいぶ頑張ったみたいだけど、できたの?」
結衣「…う、うん。頑張った…けど…」
八幡「…」スゥスゥ
海老名「…まあまあユイ。ところで、その様子だとだいぶ頑張ったみたいだけど、できたの?」
結衣「…う、うん。頑張った…けど…」
八幡「…」スゥスゥ
136: 2012/04/06(金) 23:16:54.38
昼休み
八幡「…さて、購買いくか」
海老名「…比企谷くん、お昼は誰かともう約束してる?」ニコ
八幡「ん? いや別に」
海老名「じゃあ、あたしたちと一緒に食べましょう」キラリン
八幡「…さて、購買いくか」
海老名「…比企谷くん、お昼は誰かともう約束してる?」ニコ
八幡「ん? いや別に」
海老名「じゃあ、あたしたちと一緒に食べましょう」キラリン
137: 2012/04/06(金) 23:19:47.23
昼休み
八幡「ああ、いいけどさ。先、購買いかせてくれ今日、パンなんだ」
海老名「…あ、大丈夫大丈夫♪…ほら、ユイ」ツンツン
結衣「…あ、あの、ヒッキー」
八幡「…ん?」
八幡「ああ、いいけどさ。先、購買いかせてくれ今日、パンなんだ」
海老名「…あ、大丈夫大丈夫♪…ほら、ユイ」ツンツン
結衣「…あ、あの、ヒッキー」
八幡「…ん?」
138: 2012/04/06(金) 23:22:49.65
昼休み
結衣「…これ、お弁当、作ってきたの。良かったら…食べて///」
八幡「なん…だと」
このとき八幡に電流はしる!
結衣「…これ、お弁当、作ってきたの。良かったら…食べて///」
八幡「なん…だと」
このとき八幡に電流はしる!
139: 2012/04/06(金) 23:27:04.18
八幡「…由比ヶ浜、お前、家族は無事なのか?!火事とか爆発とか…」シンケン
結衣「なにその反応?!」ガクゼン
結衣「なにその反応?!」ガクゼン
140: 2012/04/06(金) 23:36:30.75
八幡「…や、その…悪い、つい」アセ
結衣「ひどいよ-ひどいよ-」シクシク
八幡「悪かったって…ちゃんと食う、命に懸けても食うから、泣きやんでくれ」
結衣「フォローになってない?!」
海老名「…まぁ、気持ちはわかるけど、みてやってよ」クショウ
結衣「ひどいよ-ひどいよ-」シクシク
八幡「悪かったって…ちゃんと食う、命に懸けても食うから、泣きやんでくれ」
結衣「フォローになってない?!」
海老名「…まぁ、気持ちはわかるけど、みてやってよ」クショウ
142: 2012/04/06(金) 23:40:28.51
八幡「…」ゴクリ
結衣の壊滅的な料理スキルを知る八幡は、食欲ではなく緊張から喉を鳴らし、弁当箱を開く。
八幡「…こ、これは?!」
結衣の壊滅的な料理スキルを知る八幡は、食欲ではなく緊張から喉を鳴らし、弁当箱を開く。
八幡「…こ、これは?!」
143: 2012/04/06(金) 23:57:02.04
八幡「…由比ヶ浜、これ…お前が自分で作ったのか?」
結衣「…う、うん。へ、変、かな…///」
その弁当は…なんというか、「普通」だった。ツナやハムを用いたサンドイッチ、プチトマトを沿えたポテトサラダ、レトルトの唐揚げ、デザートは桃缶だった。
ごく普通の、ちょっと不器用な女の子がつくったありふれたお弁当。
だが、八幡は、この弁当が普通に見えるということの意味を知っている。
結衣「…う、うん。へ、変、かな…///」
その弁当は…なんというか、「普通」だった。ツナやハムを用いたサンドイッチ、プチトマトを沿えたポテトサラダ、レトルトの唐揚げ、デザートは桃缶だった。
ごく普通の、ちょっと不器用な女の子がつくったありふれたお弁当。
だが、八幡は、この弁当が普通に見えるということの意味を知っている。
144: 2012/04/07(土) 00:00:45.85
八幡「……お前、本当にがんばったんだな」
結衣「…う、うん。た、食べてみてよ」
八幡は、合掌し、静かに、ひとつひとつ味わいながら食べ始めた。
その様子を、結衣は緊張しながら、海老名はニコニコしながら見守っている。
結衣「…う、うん。た、食べてみてよ」
八幡は、合掌し、静かに、ひとつひとつ味わいながら食べ始めた。
その様子を、結衣は緊張しながら、海老名はニコニコしながら見守っている。
145: 2012/04/07(土) 00:05:56.35
八幡「……ごちそうさま」
八幡が、ハシを置いた。
結衣「ど、どうだった…?」
不安と期待の表情。それに向かって八幡は、笑顔で親指を立ててみせた。
八幡「うまかった! ありがとうな」
結衣「…うん!!」
目を潤ませて微笑む結衣。海老名がよしよしと頭を撫でている。
八幡が、ハシを置いた。
結衣「ど、どうだった…?」
不安と期待の表情。それに向かって八幡は、笑顔で親指を立ててみせた。
八幡「うまかった! ありがとうな」
結衣「…うん!!」
目を潤ませて微笑む結衣。海老名がよしよしと頭を撫でている。
146: 2012/04/07(土) 00:10:45.82
本当のところ、サンドイッチはパンが少し不揃いだった。ポテトサラダはすこししょっぱかった。唐揚げは揚げすぎだったし、桃缶はどれだけ好きなんだよとツッコミたかった。
八幡自身や妹の小町なら、もっと美味く作れるだろうし、まして雪ノ下雪乃の料理とは比べものにならないだろう。
だが、それでも…
八幡自身や妹の小町なら、もっと美味く作れるだろうし、まして雪ノ下雪乃の料理とは比べものにならないだろう。
だが、それでも…
147: 2012/04/07(土) 00:15:33.56
八幡は知っている。結衣の料理スキルが、どれだけ破滅的なものだったか。そして、想像することはできた。彼女が、一体ここまでどれだけの努力をしたのか。思い返せば、手を怪我していたのは今回が初めてではない。喜びに目を潤ませている結衣。その目の下の、メイクでかくしたクマ。手の絆創膏。
八幡「……」
八幡「……」
148: 2012/04/07(土) 00:21:53.46
彼女は、頑張った。頑張って、自分の苦手を克服しようとした。誰のために? 決まっている。
「…頑張ったことが伝わりゃ、男心は揺れんじゃね-の」
初めて会ったとき、自分はなんと言っただろうか。今、自分の心は揺れているか?
「…頑張ったことが伝わりゃ、男心は揺れんじゃね-の」
初めて会ったとき、自分はなんと言っただろうか。今、自分の心は揺れているか?
149: 2012/04/07(土) 00:23:46.34
八幡「…ありがとうな。また今度、良かったら作ってくれ…結衣」ニッ
結衣「…!!」
結衣「…!!」
151: 2012/04/07(土) 05:57:32.84
結衣「……うっ、うん!! あ、あたし、飲み物買ってくるね!!」
結衣が、真っ赤な顔で走り去った。八幡と海老名が取り残される。
海老名は、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
八幡は、内心激しく動揺していた。今…自分は何を言った。何をやった。
………またやっちまったぁぁぁ!!!
結衣が、真っ赤な顔で走り去った。八幡と海老名が取り残される。
海老名は、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
八幡は、内心激しく動揺していた。今…自分は何を言った。何をやった。
………またやっちまったぁぁぁ!!!
154: 2012/04/07(土) 08:27:14.97
海老名「…今の気分はどう? 比企谷くん」2828
八幡「ちゃ…ちゃうねん…ちゃいまんねん…」ウアア…
海老名「どうしたの、キャラが崩壊してるよ?」
八幡「そ、そうだよ。キャラが崩壊している…俺はこんな爽やかなキャラじゃなかったはずだ。俺から卑屈さと千葉愛をとったら何が残るんだよ」
シスコンが残ります。
八幡「ちゃ…ちゃうねん…ちゃいまんねん…」ウアア…
海老名「どうしたの、キャラが崩壊してるよ?」
八幡「そ、そうだよ。キャラが崩壊している…俺はこんな爽やかなキャラじゃなかったはずだ。俺から卑屈さと千葉愛をとったら何が残るんだよ」
シスコンが残ります。
155: 2012/04/07(土) 08:33:12.44
海老名「んー、よくわかんないけど、照れてるってことでいいのかな?」クショウ
八幡「なんつーか…微妙に違う。でも、もういい。自己嫌悪は後でする」フゥ
海老名「きみも大変だね…ところでそうそう、球技大会の後で貰ってたラブレターの返事、どうしたの?」
八幡「記憶が戻る前に全部断ってたよ…『今こういう状態だから、無責任に付き合うとか言えない』って一律にな」
八幡「なんつーか…微妙に違う。でも、もういい。自己嫌悪は後でする」フゥ
海老名「きみも大変だね…ところでそうそう、球技大会の後で貰ってたラブレターの返事、どうしたの?」
八幡「記憶が戻る前に全部断ってたよ…『今こういう状態だから、無責任に付き合うとか言えない』って一律にな」
156: 2012/04/07(土) 08:39:06.55
海老名「ふーん…じゃあ、今、今度こそ付き合ってって言われたら?」
八幡「まぁ、ありえないけどな。でも、やっぱ断ると思うぜ」
海老名「どうして?」
八幡「もともとの俺を知らない奴と付き合ってもうまくいくとは思えない。あとなんかあの娘たちコワい」
ミニ三浦っぽいキャラだった。略してミニラ。じゃあ、三浦、ゴジラか。ピッタリだなオイ。
八幡「まぁ、ありえないけどな。でも、やっぱ断ると思うぜ」
海老名「どうして?」
八幡「もともとの俺を知らない奴と付き合ってもうまくいくとは思えない。あとなんかあの娘たちコワい」
ミニ三浦っぽいキャラだった。略してミニラ。じゃあ、三浦、ゴジラか。ピッタリだなオイ。
160: 2012/04/07(土) 15:44:40.58
海老名「…なるほどね。だったら…」
海老名がずずいっと八幡の方へ身を乗り出す。
八幡「…ちょ、海老名さん、近けぇ、顔!! 顔が近い!!」アセ
海老名がずずいっと八幡の方へ身を乗り出す。
八幡「…ちょ、海老名さん、近けぇ、顔!! 顔が近い!!」アセ
163: 2012/04/07(土) 18:09:22.00
海老名「…もし、もともと比企谷くんのことを見ていて、その上で好きだって言われたらどうする?」
桜色の唇がひそやかに囁く。
…てか、この娘、外見は文句なし美少女なんだよな。頭も性格も悪くないし…
これで、趣味が腐ってなけりゃ、さぞモテるだろうに、実に残念。
八幡は、腐った目と性根がすべてを台なしにしていたかつての自分を棚にあげて内心で呟く。
海老名「比企谷くん?」ニコ
桜色の唇がひそやかに囁く。
…てか、この娘、外見は文句なし美少女なんだよな。頭も性格も悪くないし…
これで、趣味が腐ってなけりゃ、さぞモテるだろうに、実に残念。
八幡は、腐った目と性根がすべてを台なしにしていたかつての自分を棚にあげて内心で呟く。
海老名「比企谷くん?」ニコ
164: 2012/04/07(土) 18:11:53.28
八幡「…ああ、いや。それこそありえないって…ぁ」
脳裏にフラッシュバックする、月明かりの中のキス。
ついさきほど見た、両手の絆創膏。
脳裏にフラッシュバックする、月明かりの中のキス。
ついさきほど見た、両手の絆創膏。
165: 2012/04/07(土) 19:50:48.67
海老名「…そうかな、 案外、すぐ傍にいると思うけど? …ていうか、気付いてるでしょ」フフフ
八幡「…だから、顔が近けぇ。何言ってるかワカリマセン」
赤面してバツが悪そうに目を逸らす八幡。
八幡「…だから、顔が近けぇ。何言ってるかワカリマセン」
赤面してバツが悪そうに目を逸らす八幡。
166: 2012/04/07(土) 19:56:18.04
海老名「…ほら、恥ずかしがらないでこっちを見て…☆」キラリン
八幡「ちょ、そろそろ…」
辟易して、つい海老名の指す方向を見てしまう。
八幡「……」
八幡「ちょ、そろそろ…」
辟易して、つい海老名の指す方向を見てしまう。
八幡「……」
167: 2012/04/07(土) 20:03:20.22
結衣「あ、ヒッキー、飲み物買ってきたよ!! …姫菜? なにやってんの?」キョトン
飲み物を買って戻ってきた結衣
葉山「やっ、楽しそうだな、何の話してるんだ? 比企谷くん、姫菜」
…の手前に、F組の誇る爽やかイケメン、葉山隼人がいた。
八幡「…うん、まぁ、聞く耳を持つ必要はない話だと思うぞ葉山」
ジト目で海老名を見る。
至福の笑みを浮かべていた。
飲み物を買って戻ってきた結衣
葉山「やっ、楽しそうだな、何の話してるんだ? 比企谷くん、姫菜」
…の手前に、F組の誇る爽やかイケメン、葉山隼人がいた。
八幡「…うん、まぁ、聞く耳を持つ必要はない話だと思うぞ葉山」
ジト目で海老名を見る。
至福の笑みを浮かべていた。
168: 2012/04/07(土) 20:16:34.62
葉山も、だいたい理解したのか、ああ…と苦笑いを浮かべている。
葉山「珍しいツ-ショットだな。いつの間に仲良くなったんだ?」
海老名「比企谷くんの隠された素質を見抜いて、日夜開花させようとがんばってるんだ、あたし」キラリン
葉山「珍しいツ-ショットだな。いつの間に仲良くなったんだ?」
海老名「比企谷くんの隠された素質を見抜いて、日夜開花させようとがんばってるんだ、あたし」キラリン
169: 2012/04/07(土) 22:52:59.85
八幡「ツーショットじゃねぇよ。由比ヶ…結衣がジュース買いにいってたからたまたまだ」タメイキ
海老名「おやつれないね比企谷くん。お気に召さなかった?」フフフ
八幡「…世の中には隠されたままにしておくべきものがあると思うぜ。いらん素質とか腐った趣味とか。
世阿弥いわく『秘すれば花なり秘せずは花なるべからず』 つーか正直まともにコメントしたくねぇ」アセ
葉山「『風姿花伝』か。教養があるね比企谷くん」
葉山が感心しながら頷く。そこへ結衣が戻ってきた。
結衣「ヒッキーがなんか難しいことゆってる… あ、スポルトップでよかったんだよね?」
八幡「おう、サンキュー…まぁ適当に言ってるだけだ。気にすんな」
ジュースを受け取る。
海老名「おやつれないね比企谷くん。お気に召さなかった?」フフフ
八幡「…世の中には隠されたままにしておくべきものがあると思うぜ。いらん素質とか腐った趣味とか。
世阿弥いわく『秘すれば花なり秘せずは花なるべからず』 つーか正直まともにコメントしたくねぇ」アセ
葉山「『風姿花伝』か。教養があるね比企谷くん」
葉山が感心しながら頷く。そこへ結衣が戻ってきた。
結衣「ヒッキーがなんか難しいことゆってる… あ、スポルトップでよかったんだよね?」
八幡「おう、サンキュー…まぁ適当に言ってるだけだ。気にすんな」
ジュースを受け取る。
170: 2012/04/07(土) 23:13:54.28
結衣「ふーし…なに?」
葉山「室町時代の演劇論だよ。さっきのは、はっきりさせないでおいたほうがいいこともある…ってことかな」
結衣「ふーん、あ、ごめん、隼人くんの分、ないや」アセ
葉山「あ、気にしないでくれ。自前の弁当とお茶もあるから」
葉山が爽やかに笑う
海老名「なるほど、比企谷くんは、人目を憚り耐えしのぶ恋こそ燃え上がると言いたいんだね! 深いなぁ…
『恋の至極は忍恋と見立て候…』」
比企谷「『葉隠』か…よく知ってるな。まぁ、全然そんなこと考えてないけどな俺」アセ
海老名「ちなみに、この一説は、ホ〇のプラトニックラブを示しているといわれて…」テカテカ
比企谷「もういいだまれ」
葉山「やっぱり仲いいじゃないか」ハハ
葉山「室町時代の演劇論だよ。さっきのは、はっきりさせないでおいたほうがいいこともある…ってことかな」
結衣「ふーん、あ、ごめん、隼人くんの分、ないや」アセ
葉山「あ、気にしないでくれ。自前の弁当とお茶もあるから」
葉山が爽やかに笑う
海老名「なるほど、比企谷くんは、人目を憚り耐えしのぶ恋こそ燃え上がると言いたいんだね! 深いなぁ…
『恋の至極は忍恋と見立て候…』」
比企谷「『葉隠』か…よく知ってるな。まぁ、全然そんなこと考えてないけどな俺」アセ
海老名「ちなみに、この一説は、ホ〇のプラトニックラブを示しているといわれて…」テカテカ
比企谷「もういいだまれ」
葉山「やっぱり仲いいじゃないか」ハハ
171: 2012/04/07(土) 23:23:20.67
海老名「あ、そうそう。演劇で思い出した。ユイ、隼人くんにあの件、言ってみたら?」
結衣「あ、そーだね…ヒッキー、いい?」
結衣が八幡のほうをチラっとみる。八幡は頷いた。
八幡「ああ…まぁ、人手はあるほどいいからな。話すぶんには問題ないと思うぜ」
葉山「ん、何かあるのか?」
海老名「実は文化祭でね…」
現在の演劇部の状況や、奉仕部の公演の予定を説明する。葉山は頷き、途中いくつかの質問を挟みながら聞いていた。
一瞬、雪乃のことがちらっと八幡の頭をよぎる。まぁ、特に反対はしないだろうが…
結衣「あ、そーだね…ヒッキー、いい?」
結衣が八幡のほうをチラっとみる。八幡は頷いた。
八幡「ああ…まぁ、人手はあるほどいいからな。話すぶんには問題ないと思うぜ」
葉山「ん、何かあるのか?」
海老名「実は文化祭でね…」
現在の演劇部の状況や、奉仕部の公演の予定を説明する。葉山は頷き、途中いくつかの質問を挟みながら聞いていた。
一瞬、雪乃のことがちらっと八幡の頭をよぎる。まぁ、特に反対はしないだろうが…
172: 2012/04/07(土) 23:33:23.69
葉山への説明が終わる頃、三浦や戸部たちがこちらへやってくる。
三浦「隼人、あーしも一緒にお弁当食べていい?(キャピ
…んだよ、ヒキオもいんの」ジロ
八幡「マ、マツイさんじゃないっすか…」ビク
三浦「はぁ? 三浦だし。誰よマツイって…」
そうだった。ゴジラつながりで混同したがはあっちは元ヤンキース、こっちはヤンキーである。つぅか相変わらず怖え。
三浦「隼人、あーしも一緒にお弁当食べていい?(キャピ
…んだよ、ヒキオもいんの」ジロ
八幡「マ、マツイさんじゃないっすか…」ビク
三浦「はぁ? 三浦だし。誰よマツイって…」
そうだった。ゴジラつながりで混同したがはあっちは元ヤンキース、こっちはヤンキーである。つぅか相変わらず怖え。
173: 2012/04/07(土) 23:40:50.89
人が多くなってきた。潮時か…
八幡「じゃ、俺は昼飯も終わってるし、外の空気吸ってくるわ。葉山、考えといてくれ」
葉山が頷くのを確認し、立ち上がる。結衣が、ついてこようか迷う仕草をするが、手で抑える。
八幡「お前、自分の食事まだだろ? ゆっくり食っとけ。弁当ありがとな」ニッ
結衣「…ん、わかった」ニコ
海老名「またね、比企谷くん。…あ、あたしのことも、なんなら姫菜って呼んでいいよ」クス
八幡「海老名さん、またな」クショウ
うしろで海老名がちぇーと口を尖らせ、戸部が何やらこちらと海老名の間で視線を往復させている。
元祖リア充グループの談笑を背中で聞きながら、教室を出る。
八幡「じゃ、俺は昼飯も終わってるし、外の空気吸ってくるわ。葉山、考えといてくれ」
葉山が頷くのを確認し、立ち上がる。結衣が、ついてこようか迷う仕草をするが、手で抑える。
八幡「お前、自分の食事まだだろ? ゆっくり食っとけ。弁当ありがとな」ニッ
結衣「…ん、わかった」ニコ
海老名「またね、比企谷くん。…あ、あたしのことも、なんなら姫菜って呼んでいいよ」クス
八幡「海老名さん、またな」クショウ
うしろで海老名がちぇーと口を尖らせ、戸部が何やらこちらと海老名の間で視線を往復させている。
元祖リア充グループの談笑を背中で聞きながら、教室を出る。
174: 2012/04/07(土) 23:42:19.34
途中、川崎沙希の机の前を通る。
川崎「…バカじゃないの」
ぼそりと呟く声を聴いた。
川崎「…バカじゃないの」
ぼそりと呟く声を聴いた。
177: 2012/04/08(日) 11:05:41.64
相変わらず、集団の中は苦手だった。居心地が悪いことこの上ない。
一人になれる場所に行きたかった。外の空気といったが今日は雨で、屋上は使えない。
足が、自然と奉仕部の部室へ向かった。
一人になれる場所に行きたかった。外の空気といったが今日は雨で、屋上は使えない。
足が、自然と奉仕部の部室へ向かった。
178: 2012/04/08(日) 11:28:43.74
…いることを、予想していたわけではない。だからドアを開けた一瞬、動きが止まった。
雪ノ下雪乃が、そこにいた。窓の外を眺めている。 …ひとつひとつの姿が、いちいち絵になる少女だった。
雪乃が、こちらを見て微笑んだ。
雪乃「…あら、比企谷くん」
八幡「お、おう」
雪ノ下雪乃が、そこにいた。窓の外を眺めている。 …ひとつひとつの姿が、いちいち絵になる少女だった。
雪乃が、こちらを見て微笑んだ。
雪乃「…あら、比企谷くん」
八幡「お、おう」
179: 2012/04/08(日) 12:18:46.84
雪乃「いらっしゃい…中に入ったら?」
八幡「ああ…一人のとこ邪魔して悪いな」
ドアを閉め、いつもの定位置へ。
記憶が戻ってから二人きりになったのは、久しぶりな気がする。
「ちゃんと、男の子として態度をはっきりさせること!」
昨夜の小町の言葉が脳裏に再生された。
八幡(いや…とはいってもな。どうしろと)アセ
八幡「ああ…一人のとこ邪魔して悪いな」
ドアを閉め、いつもの定位置へ。
記憶が戻ってから二人きりになったのは、久しぶりな気がする。
「ちゃんと、男の子として態度をはっきりさせること!」
昨夜の小町の言葉が脳裏に再生された。
八幡(いや…とはいってもな。どうしろと)アセ
180: 2012/04/08(日) 13:49:04.70
八幡の見るところ、雪乃はずいぶんと変わってきている、と思う。
以前の寄らばKill、寄らなくてもKillという剣呑な雰囲気は影をひそめ、八幡に対しては、今のように柔らかな微笑みなどもよく見せるようになった。
…姉の陽乃のような手管ではなく、ごく自然な、本物の笑顔。正直、捻くれ者の八幡でも、玉砕した百人超の勇者(愚者)の気持ちはわからなくもなくもない。早い話が、以前よりさらに綺麗に、魅力的になった。
外にあらわれているそういった変化は、雪乃の内面の変化のあらわれでもあるのだろうか。
以前の寄らばKill、寄らなくてもKillという剣呑な雰囲気は影をひそめ、八幡に対しては、今のように柔らかな微笑みなどもよく見せるようになった。
…姉の陽乃のような手管ではなく、ごく自然な、本物の笑顔。正直、捻くれ者の八幡でも、玉砕した百人超の勇者(愚者)の気持ちはわからなくもなくもない。早い話が、以前よりさらに綺麗に、魅力的になった。
外にあらわれているそういった変化は、雪乃の内面の変化のあらわれでもあるのだろうか。
181: 2012/04/08(日) 14:03:21.00
だが、正直なところ、綺麗すぎて近寄りがたい。人生即ぼっち歴だった八幡には、どうにかしろといわれても荷が重かった。
…以前のように、罵倒し合う関係の時は、コイツとどうにかなることはないと確信していたから意識せずにすんだのだが…
八幡(そもそも、コイツが俺を好きだなんてこと、本当にあるのか?)
八幡の懊悩はやまない。内心で唸っている八幡を見て、雪乃がクスリと笑う。
雪乃「…どうしたの? さっきから私の顔ばかり見て」
よく見ると、少し赤面していた。
…以前の雪乃なら、ゴミを見るような目で見て、聞くに堪えない罵倒を浴びせてきたところだ。
八幡「あ、ああ、いや、悪い」
八幡も思わず赤面して、そっぽを向く。
しばし、沈黙が室内に満ちた。雨音はまだ止まない。
…以前のように、罵倒し合う関係の時は、コイツとどうにかなることはないと確信していたから意識せずにすんだのだが…
八幡(そもそも、コイツが俺を好きだなんてこと、本当にあるのか?)
八幡の懊悩はやまない。内心で唸っている八幡を見て、雪乃がクスリと笑う。
雪乃「…どうしたの? さっきから私の顔ばかり見て」
よく見ると、少し赤面していた。
…以前の雪乃なら、ゴミを見るような目で見て、聞くに堪えない罵倒を浴びせてきたところだ。
八幡「あ、ああ、いや、悪い」
八幡も思わず赤面して、そっぽを向く。
しばし、沈黙が室内に満ちた。雨音はまだ止まない。
182: 2012/04/08(日) 14:22:59.39
八幡「…そういえば、ここで何をしてたんだ?」
ふと、聞いてみた。
雪乃「ここで昼食をとること、多いの。教室にいても、誰とも話さないし、静かで落ち着くから」
八幡「なるほど」
頷く。ぼっちマイスターである八幡には、すべて通じた。べつに雪乃は、自分の境遇を卑下するつもりはないだろう。
しかし…なぜか胸がちくりとした。
八幡「じゃあ、俺も、昼休み、ここ来ていいか?」
気づいたら口が動いていた。雪乃が、驚いた顔をする。
ふと、聞いてみた。
雪乃「ここで昼食をとること、多いの。教室にいても、誰とも話さないし、静かで落ち着くから」
八幡「なるほど」
頷く。ぼっちマイスターである八幡には、すべて通じた。べつに雪乃は、自分の境遇を卑下するつもりはないだろう。
しかし…なぜか胸がちくりとした。
八幡「じゃあ、俺も、昼休み、ここ来ていいか?」
気づいたら口が動いていた。雪乃が、驚いた顔をする。
183: 2012/04/08(日) 14:34:03.47
雪乃「…それは、かまわない、けど…」
赤面してそっぽを向く。八幡も、自分が何を言ったかに気付いて赤面した。
八幡「ああ、いや、その、変な意味じゃなくて、俺も教室だと落ち着かなくてさ…」
雪乃「………///」
思わず言い訳する。雪乃は、黙ってそっぽを向いたままだ。だがよく見ると、口元が少し幸せそうに緩んでいた。
再び沈黙。ええい、どうしたらいいんだ。
赤面してそっぽを向く。八幡も、自分が何を言ったかに気付いて赤面した。
八幡「ああ、いや、その、変な意味じゃなくて、俺も教室だと落ち着かなくてさ…」
雪乃「………///」
思わず言い訳する。雪乃は、黙ってそっぽを向いたままだ。だがよく見ると、口元が少し幸せそうに緩んでいた。
再び沈黙。ええい、どうしたらいいんだ。
184: 2012/04/08(日) 14:42:47.45
八幡「…………雪乃」
さきほど、結衣にそうしたように、名前で呼んでみた。正直、結果が予想つかない。これは賭けだ。
以前の雪乃なら、命が危ない。今はそこまでの心配はいらないとしても…雪乃が自分を名前やあだ名で呼ぶなどということがありえるか?
八幡は固唾をのんで反応を見守る。
さきほど、結衣にそうしたように、名前で呼んでみた。正直、結果が予想つかない。これは賭けだ。
以前の雪乃なら、命が危ない。今はそこまでの心配はいらないとしても…雪乃が自分を名前やあだ名で呼ぶなどということがありえるか?
八幡は固唾をのんで反応を見守る。
185: 2012/04/08(日) 14:50:35.34
雪乃は顔をそらしたまま一瞬、目を見開いてぴくっと震えた。それから何かをこらえようとするように表情を抑えふるふるとし…
ただし、その顔はどんどん、さらに赤くなってゆく。色白なので、変化がよく目立った。八幡は、無言で見守っている。
ようやく、少し落ち着いたのだろうか。雪乃が、すごくいい笑顔でこちらを振り向いた。
雪乃「…何かしら、あなた」ニコ
ただし、その顔はどんどん、さらに赤くなってゆく。色白なので、変化がよく目立った。八幡は、無言で見守っている。
ようやく、少し落ち着いたのだろうか。雪乃が、すごくいい笑顔でこちらを振り向いた。
雪乃「…何かしら、あなた」ニコ
201: 2012/04/09(月) 00:15:51.14
八幡「」
…やべぇ、いま一瞬、意識が飛んだ。っていうか、時間が跳んだ。
なんかのスタンド攻撃か? ありのままを解説してくれポルナレフ!!
友達とか彼女とかすっ飛ばして、いきなり新妻になってたよ!!
一瞬、6~7年後にいるのかと錯覚した。こんな笑顔で「あなた」とか呼ばれたらヤバい。社会に出て働きたくのもやむなしと思ってしまう。キャラが本当に崩壊する。
…やべぇ、いま一瞬、意識が飛んだ。っていうか、時間が跳んだ。
なんかのスタンド攻撃か? ありのままを解説してくれポルナレフ!!
友達とか彼女とかすっ飛ばして、いきなり新妻になってたよ!!
一瞬、6~7年後にいるのかと錯覚した。こんな笑顔で「あなた」とか呼ばれたらヤバい。社会に出て働きたくのもやむなしと思ってしまう。キャラが本当に崩壊する。
202: 2012/04/09(月) 00:22:16.78
…落ちつけ、落ちついて素数を数えるんだ…素数は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字…。わたしに勇気を与えてくれる
2,4,6,8…やべぇ、これただの偶数じゃん。めっちゃ動揺してる。
2,4,6,8…やべぇ、これただの偶数じゃん。めっちゃ動揺してる。
203: 2012/04/09(月) 00:43:10.48
雪乃「…どうしたの?」
素数の代わりに昔のトラウマを数えようとし始めた八幡に、雪乃が心配そうな顔で声をかける。
その目には、不安の色があった。
八幡「や、なんでもない。悪い、ちょっと一瞬、放心してた」クショウ
素数の代わりに昔のトラウマを数えようとし始めた八幡に、雪乃が心配そうな顔で声をかける。
その目には、不安の色があった。
八幡「や、なんでもない。悪い、ちょっと一瞬、放心してた」クショウ
204: 2012/04/09(月) 00:45:11.19
雪乃「め、迷惑…だった?」
視線を伏せながら、小さい声で雪乃が問う。
八幡「いや、それはない。迷惑とかじゃない」
そこは即座に否定した。
視線を伏せながら、小さい声で雪乃が問う。
八幡「いや、それはない。迷惑とかじゃない」
そこは即座に否定した。
205: 2012/04/09(月) 00:55:04.11
八幡「むしろ、やぶさかではないこともないこともないというか、くそ動揺してうまいこといえねぇ。とにかく、イヤとかじゃない」
雪乃「そ、そう…」ホッ
八幡「で、でも、破壊力が強すぎて心臓に悪い。これまで通りとかでもいいから、別のにしてくれ…雪乃」アセ
雪乃「わかった…普段は、今まで通りに呼ぶわね、比企谷くん」ニコ
雪乃「そ、そう…」ホッ
八幡「で、でも、破壊力が強すぎて心臓に悪い。これまで通りとかでもいいから、別のにしてくれ…雪乃」アセ
雪乃「わかった…普段は、今まで通りに呼ぶわね、比企谷くん」ニコ
214: 2012/04/09(月) 22:35:09.32
八幡「お、おう…そうしてくれ(普段?)」アセ
笑顔が眩しすぎて直視できない。思わず、窓の外を見た。そろそろ、昼休みも終わる時間だ。
八幡「…雨が、止んだな」
ふと気づくと、いつの間にか雨音が途切れ、太陽が雲の間から顔を出していた。
雪乃「ホントね…あ…」
雪乃がわずかに声を弾ませた。
雪乃「比企谷くん、見て…ほら、あれ…」パァ
その表情に、見惚れて、指差す方向を見るのが一瞬遅れた
笑顔が眩しすぎて直視できない。思わず、窓の外を見た。そろそろ、昼休みも終わる時間だ。
八幡「…雨が、止んだな」
ふと気づくと、いつの間にか雨音が途切れ、太陽が雲の間から顔を出していた。
雪乃「ホントね…あ…」
雪乃がわずかに声を弾ませた。
雪乃「比企谷くん、見て…ほら、あれ…」パァ
その表情に、見惚れて、指差す方向を見るのが一瞬遅れた
215: 2012/04/09(月) 22:43:30.01
八幡「…おお」
肩をたたかれて視線を向けると、校庭の空に、七色の虹がかかっていた。
雪乃「…キレイね」
八幡「…そうだな」
空にかかる虹よりも尚、目の前の少女は美しい。もちろん、そんな本音を素直に口にする勇気は八幡にはない。
やはり雪乃は、変わったのだろう。かつての雪乃が、同じものを目にしたとして、このように豊かな表情を見せるだろうか。
…あの数週間が八幡の殻にヒビをいれたように、雪乃もまた、凍り付いていた心が融けだしたのかもしれない。
肩をたたかれて視線を向けると、校庭の空に、七色の虹がかかっていた。
雪乃「…キレイね」
八幡「…そうだな」
空にかかる虹よりも尚、目の前の少女は美しい。もちろん、そんな本音を素直に口にする勇気は八幡にはない。
やはり雪乃は、変わったのだろう。かつての雪乃が、同じものを目にしたとして、このように豊かな表情を見せるだろうか。
…あの数週間が八幡の殻にヒビをいれたように、雪乃もまた、凍り付いていた心が融けだしたのかもしれない。
216: 2012/04/09(月) 22:51:53.27
それはいいことなのだろう。おそらく、きっと、自分にとっても雪乃にとっても。
…だが、八幡はなぜか、自分の心のどこかに、冷たい異物のようなものを感じていた。
鈍く痛むしこり、刺さったまま抜けない棘、雨の日に疼きだす古傷のような何か。その正体は、今の八幡にはわからない。
…だが、八幡はなぜか、自分の心のどこかに、冷たい異物のようなものを感じていた。
鈍く痛むしこり、刺さったまま抜けない棘、雨の日に疼きだす古傷のような何か。その正体は、今の八幡にはわからない。
217: 2012/04/09(月) 23:07:52.50
チャイムが鳴った。
八幡「…教室に戻らないとな」フゥ
雪乃「…ええ、そうね」
雪乃はうつむき、無意識なのだろうか。八幡の服の裾を名残惜しげにつまんでいた。
八幡「…教室に戻らないとな」フゥ
雪乃「…ええ、そうね」
雪乃はうつむき、無意識なのだろうか。八幡の服の裾を名残惜しげにつまんでいた。
218: 2012/04/09(月) 23:10:40.89
八幡「雪…」
何か声をかけようとしたが、雪乃はその前にするっと自分から離れた。部屋の手前で、振り返る。
雪乃「…また、放課後にね」ニコ
そのまま、J組の教室に向け歩み去って行った。
何か声をかけようとしたが、雪乃はその前にするっと自分から離れた。部屋の手前で、振り返る。
雪乃「…また、放課後にね」ニコ
そのまま、J組の教室に向け歩み去って行った。
219: 2012/04/09(月) 23:18:10.68
八幡「…俺も戻るか」
なんとなく宙ぶらりんになった手をにぎにぎしながら呟く。次は国語だ。遅刻したらまた、静の鉄拳制裁が待っている。
八幡も部室のドアを後ろ手にしめると、小走りで教室へ向け移動を始めた。
なんとなく宙ぶらりんになった手をにぎにぎしながら呟く。次は国語だ。遅刻したらまた、静の鉄拳制裁が待っている。
八幡も部室のドアを後ろ手にしめると、小走りで教室へ向け移動を始めた。
220: 2012/04/09(月) 23:48:21.29
放課後
演劇部の顧問に、現状の報告と今後の打ち合わせをすることになった。
八幡「演劇部の顧問って、誰だったっけ?」
結衣「えーっとね、たしか…家庭科の鶴見先生じゃなかったかな?」
演劇部の顧問に、現状の報告と今後の打ち合わせをすることになった。
八幡「演劇部の顧問って、誰だったっけ?」
結衣「えーっとね、たしか…家庭科の鶴見先生じゃなかったかな?」
226: 2012/04/10(火) 22:57:02.54
奉仕部正規メンバーのほか、川崎と海老名もF組からそのまま演劇部室へ同行することになった。雪乃ともJ組の教室前で合流する。
廊下の向こうにいる八幡たちの姿に気付くと、はっと表情を輝かせ、手を振ったあと少し急ぎ足で歩み寄ってくる。
八幡が「うーす、こっちこっち」と手を振り返す。
そんな雪乃の姿を見て、結衣、海老名、川崎がそれぞれ瞠目し、絶句していた。
廊下の向こうにいる八幡たちの姿に気付くと、はっと表情を輝かせ、手を振ったあと少し急ぎ足で歩み寄ってくる。
八幡が「うーす、こっちこっち」と手を振り返す。
そんな雪乃の姿を見て、結衣、海老名、川崎がそれぞれ瞠目し、絶句していた。
227: 2012/04/10(火) 23:01:30.40
結衣「ゆ、ゆきのん…何かいいこと、あったの?」アセ
海老名「雪ノ下さん…なんだかオーラがちがう…ガイアがもっと輝けとささやいたのかしら」
川崎「…比企谷、あんた、何したの?」
川崎の不審げな声で三者の目が八幡に集まる。
海老名「雪ノ下さん…なんだかオーラがちがう…ガイアがもっと輝けとささやいたのかしら」
川崎「…比企谷、あんた、何したの?」
川崎の不審げな声で三者の目が八幡に集まる。
228: 2012/04/10(火) 23:07:14.41
八幡「…お、俺は無実だ!」アセ
冷や汗を大量に流しながら訴える八幡に対し、川崎の視線はあくまで疑わしげだった。
川崎「犯人はみんなそう言うんだよ」ジト
八幡「なにそれ流行ってんの?!」
冷や汗を大量に流しながら訴える八幡に対し、川崎の視線はあくまで疑わしげだった。
川崎「犯人はみんなそう言うんだよ」ジト
八幡「なにそれ流行ってんの?!」
229: 2012/04/10(火) 23:12:34.44
雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん、川崎さん、それに海老名さんも ニコ
…比企谷くんがなにかしたの?」
追いついた雪乃が小首を傾げる。
…比企谷くんがなにかしたの?」
追いついた雪乃が小首を傾げる。
231: 2012/04/10(火) 23:23:46.88
結衣「ゆ、ゆきのん、やっぱりなにか…!!」
いつにない雪乃の柔らかな態度に結衣が動揺する。
いや、海老名、川崎はおろか、周囲のJ組生徒にまで動揺が広がっていた。
ざわ…
おい…あれ…雪ノ下さんが…
ああ…あんな表情もできたんだ…初めて見た
…もともと綺麗だったけど、いまはなんか、もっと…
どよどよ
いつにない雪乃の柔らかな態度に結衣が動揺する。
いや、海老名、川崎はおろか、周囲のJ組生徒にまで動揺が広がっていた。
ざわ…
おい…あれ…雪ノ下さんが…
ああ…あんな表情もできたんだ…初めて見た
…もともと綺麗だったけど、いまはなんか、もっと…
どよどよ
232: 2012/04/10(火) 23:34:25.23
八幡「…何もしてねぇっての。助けてくれ」アセ
川崎にさぁ吐けといわんばかりに胸倉を掴まれて睨みつけられ、八幡がため息を吐く。
雪乃「…どうかしら。助けてもいいけれど、条件次第ね」クス
八幡「おい、勘弁してくれ雪乃。おま、根本はやっぱ変わってないのな!」
笑って悪戯っぽくウインクする雪乃に、引きつり気味で返す八幡。そのやり取りに、ますますざわめきが大きくなる。
川崎にさぁ吐けといわんばかりに胸倉を掴まれて睨みつけられ、八幡がため息を吐く。
雪乃「…どうかしら。助けてもいいけれど、条件次第ね」クス
八幡「おい、勘弁してくれ雪乃。おま、根本はやっぱ変わってないのな!」
笑って悪戯っぽくウインクする雪乃に、引きつり気味で返す八幡。そのやり取りに、ますますざわめきが大きくなる。
233: 2012/04/10(火) 23:42:08.96
いま、あいつ、雪ノ下さんを呼び捨てにした!
しかも、雪ノ下さんもそれを怒ってない! なんか嬉しそうに顔赤らめてるし!
あいつ、F組の比企谷だぞ! こないだの球技大会の!
チクショウ、チクショーウ!!
ざわめきがどよめきに変わりつつあった
雪乃「…うるさい。外野は黙りなさい」
雪乃の一瞥で、沈静化し、全員黙りこんでそっぽを向いた。静寂が耳に痛い。氷の女王は健在である。
雪乃「…さぁ、いきましょう」ニコ
呆気にとられた隙に川崎の手から逃れた八幡の腕を、雪乃が引いて歩き出す。
放心していたF組生徒たちも、それに続いた。
しかも、雪ノ下さんもそれを怒ってない! なんか嬉しそうに顔赤らめてるし!
あいつ、F組の比企谷だぞ! こないだの球技大会の!
チクショウ、チクショーウ!!
ざわめきがどよめきに変わりつつあった
雪乃「…うるさい。外野は黙りなさい」
雪乃の一瞥で、沈静化し、全員黙りこんでそっぽを向いた。静寂が耳に痛い。氷の女王は健在である。
雪乃「…さぁ、いきましょう」ニコ
呆気にとられた隙に川崎の手から逃れた八幡の腕を、雪乃が引いて歩き出す。
放心していたF組生徒たちも、それに続いた。
234: 2012/04/10(火) 23:59:36.51
八幡「…あぁ、頭がいてぇ。なんか、もう、自己嫌悪も何も間に合わないくらい、いろんなものをぶっちぎっちまった気がする。どうしてこうなった…」
自分のこめかみを押さえてため息を吐く八幡。
結衣「ヒッキー、ええと、ゆきのんとも何かあったの? ゆきのんも名前で呼んでたし…」
八幡「…いや、何もねぇよ。しいて言うなら、心境の変化だ。お前のことも含めてな」
今、視界の外でなにか、「…『とも? …も?』」とか聞きとがめる声がした。で、なんか「実は…」とか教室での昼休みのあれこれを小声でチクってるやつがおる。すごい殺気を感じる。こわくてふりかえれない。
自分のこめかみを押さえてため息を吐く八幡。
結衣「ヒッキー、ええと、ゆきのんとも何かあったの? ゆきのんも名前で呼んでたし…」
八幡「…いや、何もねぇよ。しいて言うなら、心境の変化だ。お前のことも含めてな」
今、視界の外でなにか、「…『とも? …も?』」とか聞きとがめる声がした。で、なんか「実は…」とか教室での昼休みのあれこれを小声でチクってるやつがおる。すごい殺気を感じる。こわくてふりかえれない。
235: 2012/04/11(水) 00:10:46.67
結衣「心境の…変化?」
八幡「…考えが大きく変わったわけじゃない。もともとの自分を卑下する気もない。けど、同様に、記憶がなかったときの自分も否定はしたくないんだ。あのとき感じていた気持ちや決断も、整理し切れてはいないとはいえまだ自分の中にある。自分のものとして思い出せる」
八幡「…考えが大きく変わったわけじゃない。もともとの自分を卑下する気もない。けど、同様に、記憶がなかったときの自分も否定はしたくないんだ。あのとき感じていた気持ちや決断も、整理し切れてはいないとはいえまだ自分の中にある。自分のものとして思い出せる」
236: 2012/04/11(水) 00:33:58.08
八幡「…静先生のいうとおり、俺という器にはヒビが入ったんだろう。なら、そのヒビを受け入れて…そんでその上で、意味を考えてみたい。抽象的で悪いけどな」
結衣「…ヒッキー」
いつの間にか、背後の殺気もうすれている。
結衣「…ヒッキー」
いつの間にか、背後の殺気もうすれている。
238: 2012/04/11(水) 00:42:35.71
結衣「…あたしたちのこと名前で呼ぶのは、特別扱いってこと?」
八幡「…まぁそうだな。あんまり認めたくないけど、奉仕部は俺にとって…チッ、やっぱやめだ。こんなもん、口に出すことじゃない」
少し赤面して忌々しげにそっぽを向く八幡に、結衣がねだる
結衣「えー、いいじゃん! 聞きたいから言ってよー」ユサユサ
八幡「やだっつってんだろ」
八幡「…まぁそうだな。あんまり認めたくないけど、奉仕部は俺にとって…チッ、やっぱやめだ。こんなもん、口に出すことじゃない」
少し赤面して忌々しげにそっぽを向く八幡に、結衣がねだる
結衣「えー、いいじゃん! 聞きたいから言ってよー」ユサユサ
八幡「やだっつってんだろ」
239: 2012/04/11(水) 01:15:20.00
雪乃「…私も聞きたいわね、比企谷くん」
雪乃がにっこり笑いながら、結衣と反対の腕に自分の腕をからめてきた。さらに、指と指もからめてくる。
八幡「…雪乃。この態勢は…/// はっ、この態勢は?! いだだだだだだだ!!」
いつぞやの夜と同じく、指を締め上げる関節技が八幡を悶絶させる。
雪乃「言ってなかったかしら、私、実は合気の心得があって…」シレッ
八幡「あだだだだ! 暴力、ぼうりょくはんたいっ!!」
そんな仲睦まじい奉仕部の茶番をみながら
海老名「あはは…かなわないなぁ。これじゃ」
海老名が苦笑し、
川崎「…バカじゃないの」
川崎がいつものセリフを吐きつつため息とついていた。
雪乃がにっこり笑いながら、結衣と反対の腕に自分の腕をからめてきた。さらに、指と指もからめてくる。
八幡「…雪乃。この態勢は…/// はっ、この態勢は?! いだだだだだだだ!!」
いつぞやの夜と同じく、指を締め上げる関節技が八幡を悶絶させる。
雪乃「言ってなかったかしら、私、実は合気の心得があって…」シレッ
八幡「あだだだだ! 暴力、ぼうりょくはんたいっ!!」
そんな仲睦まじい奉仕部の茶番をみながら
海老名「あはは…かなわないなぁ。これじゃ」
海老名が苦笑し、
川崎「…バカじゃないの」
川崎がいつものセリフを吐きつつため息とついていた。
246: 2012/04/11(水) 19:31:20.21
特別棟の演劇部室の扉を八幡がノックすると、どうぞと応えがかえってきた。失礼します、と一言断って中に入ると、演劇部顧問の鶴見と、前部長だという女子生徒が待っていた。
247: 2012/04/11(水) 20:40:31.17
皆さん、感想ありがとうございます。
ストーリーの都合上、どうしてもキャラクターに従来のイメージと異なる行動をとらせてしまう場面が増えますが、原作のキャラクターが、悪い意味で別モノになっていると言われるのはなるべく避けたいと思っています。
デレのんやきれいな八幡の描写で、違和感をなるべく少なくできれば幸いです。
今日は職場泊まり込みで、携帯で更新。やや不規則になりますが、がんばります。
ストーリーの都合上、どうしてもキャラクターに従来のイメージと異なる行動をとらせてしまう場面が増えますが、原作のキャラクターが、悪い意味で別モノになっていると言われるのはなるべく避けたいと思っています。
デレのんやきれいな八幡の描写で、違和感をなるべく少なくできれば幸いです。
今日は職場泊まり込みで、携帯で更新。やや不規則になりますが、がんばります。
248: 2012/04/11(水) 20:52:35.97
八幡を先頭に、全員中に入る。
室内は、代々の部員たちが残してきたのであろう、衣装や小道具の類がそこかしこに積まれており、やや薄暗い。 結衣と海老名が、わ-…などと感嘆の声を上げながら物珍しそうに室内を見回している。川崎は、我関せずという態度。雪乃と八幡が、代表で応対する。
室内は、代々の部員たちが残してきたのであろう、衣装や小道具の類がそこかしこに積まれており、やや薄暗い。 結衣と海老名が、わ-…などと感嘆の声を上げながら物珍しそうに室内を見回している。川崎は、我関せずという態度。雪乃と八幡が、代表で応対する。
249: 2012/04/11(水) 21:05:35.97
顧問の鶴見は40歳前後で既婚の女性教師で、家庭科を担当している。八幡たちとは授業で面識があった。前部長は、ショ-トカットで、はきはきした印象の女生徒だ。背は八幡と同じくらい、化粧映えしそうな顔立ちだが、今はすっぴんの制服である。小田原と名乗った。
250: 2012/04/11(水) 21:16:34.72
小田原からまず、改めて礼と、事情の説明を受けた。大筋は、静から聞いた通りだ。つまりは、建前通り。三角関係のもつれなどといったゴシップについては、何も触れていない。
とりあえず、奉仕部側もそのことに関してこの場で追求する者はいなかった。
とりあえず、奉仕部側もそのことに関してこの場で追求する者はいなかった。
251: 2012/04/11(水) 21:26:19.56
八幡たちも改めて自己紹介する。学年は違うが、小田原は雪乃と八幡については知っていたらしい。雪乃はもともと、学内一の天才美少女として名高かったし、八幡については先日の球技大会の試合をみていたらしい。
「格好よかったよ」などと冷やかされ、八幡としては、「…どうも」言うしかない。数名の少女からじとりとした視線や冷気を感じ、内心で冷や汗をかく。
「格好よかったよ」などと冷やかされ、八幡としては、「…どうも」言うしかない。数名の少女からじとりとした視線や冷気を感じ、内心で冷や汗をかく。
252: 2012/04/11(水) 21:40:42.58
そんな八幡の内心も知らず、小田原と鶴見は上機嫌だ。なにしろつい先日、学内の話題の中心となった八幡と学内一の美少女に加え、ほかの参加者も美形ばかりである。ここには居ない戸塚や葉山も加われば、更に舞台は華やかになるだろう。宣伝としてはこの上ない。
台本や指導については全面的な支援を約束してくれた。
台本や指導については全面的な支援を約束してくれた。
253: 2012/04/11(水) 21:50:08.22
キャスティングや練習のスケジュールは今後の課題として話は落ち着き、一旦退出しようとした八幡を鶴見が呼び止める。
鶴見「比企谷くん。いずれ、伝えなければと思っていたのだけれど… 夏休みに、娘のことでいろいろ気を揉んでくれて、ありがとう」
八幡「…夏休みっていうともしかして」
鶴見「比企谷くん。いずれ、伝えなければと思っていたのだけれど… 夏休みに、娘のことでいろいろ気を揉んでくれて、ありがとう」
八幡「…夏休みっていうともしかして」
254: 2012/04/11(水) 21:54:35.47
鶴見「…留美は、私の娘なの。林間学校に持って行かせたデジカメに変な写真が入っていたから、事情を問い質したのよ。話を聞いて驚いて、平塚先生に確認したら、君が娘のために泥を被ってくれたことを教えてくれたわ」
255: 2012/04/11(水) 22:02:51.47
八幡「…本当に泥を被ったのは、葉山たちっすよ。俺は後ろからそそのかしただけで、礼を言われるようなことはしてないです。…ルミルミは元気ですか?」
鶴見「…ええ、おかげさまで。学校にも元気に通っているわ。教師としては、あのやり方を誉めるわけにはいかないけれど、母親としてはお礼を言います。…君はすごいわね」ホホエミ
鶴見「…ええ、おかげさまで。学校にも元気に通っているわ。教師としては、あのやり方を誉めるわけにはいかないけれど、母親としてはお礼を言います。…君はすごいわね」ホホエミ
256: 2012/04/11(水) 23:24:41.44
八幡「……」
無言で頬をかく仕種が八幡の返答だった。ストレートな賛辞には慣れていない。それに、一般的に誉められた手段ではなかったという自覚もある。
八幡「…ま、ルミルミが元気でやってるって聞いて安心しました。ぼっちの道は甘くないっすからね」フッ
女子供には極められまい…とでもいいたげな無駄にハ-ドボイルドな表情をみせる八幡に、鶴見が微笑みかける。
鶴見「…あら、君も今なら、カレーライスを一人で作らずにすむでしょう? 夏休みは実際、そうだったと聞いているけれど」
無言で頬をかく仕種が八幡の返答だった。ストレートな賛辞には慣れていない。それに、一般的に誉められた手段ではなかったという自覚もある。
八幡「…ま、ルミルミが元気でやってるって聞いて安心しました。ぼっちの道は甘くないっすからね」フッ
女子供には極められまい…とでもいいたげな無駄にハ-ドボイルドな表情をみせる八幡に、鶴見が微笑みかける。
鶴見「…あら、君も今なら、カレーライスを一人で作らずにすむでしょう? 夏休みは実際、そうだったと聞いているけれど」
257: 2012/04/11(水) 23:35:50.81
八幡「…また懐かしい話っすね。今の俺なら、スパイスから調合できますけど、比企谷家秘伝のレシピを公開したくないんで、ええ」
あくまで捻くれたポ-ズを崩そうとしない八幡に、鶴見は苦笑する。
鶴見「…そう。比企谷家が君の代で途絶えないことを祈るわ。そういえば留美が、実は君にまた会いたいと言ってるのだけれど…」
あくまで捻くれたポ-ズを崩そうとしない八幡に、鶴見は苦笑する。
鶴見「…そう。比企谷家が君の代で途絶えないことを祈るわ。そういえば留美が、実は君にまた会いたいと言ってるのだけれど…」
258: 2012/04/11(水) 23:39:59.88
八幡「…えっ、マジですか。それは、「先生じゃなくてお義母さんと呼んでいいのよ」とかそういう話ですか」
鶴見「娘に手を出したら、君をカレー鍋で煮込むわよ」ウフフ
八幡「すいません冗談です」
外からも、なんかすごい殺気を感じる。ヤバい、聞かれてた?!
鶴見「娘に手を出したら、君をカレー鍋で煮込むわよ」ウフフ
八幡「すいません冗談です」
外からも、なんかすごい殺気を感じる。ヤバい、聞かれてた?!
266: 2012/04/13(金) 00:27:12.00
八幡「…疲れた」
密度の濃い一日だった。自室のベッドに倒れ込み、ようやく、体の力を抜く。
あの後のことは思い出したくもない。
海老名「口リコンでしょうか?」ニコ
八幡「いいえ、誰でも」キリ
…歴戦のぼっちたる八幡でも、美少女四人に一斉にゴミを見る目でみられたあと、空気扱いされたときには久しぶりに泣きたくなった。まぁ、口リコンちゃうわ!! と必氏で弁明してなんとかわかって貰えたが。
密度の濃い一日だった。自室のベッドに倒れ込み、ようやく、体の力を抜く。
あの後のことは思い出したくもない。
海老名「口リコンでしょうか?」ニコ
八幡「いいえ、誰でも」キリ
…歴戦のぼっちたる八幡でも、美少女四人に一斉にゴミを見る目でみられたあと、空気扱いされたときには久しぶりに泣きたくなった。まぁ、口リコンちゃうわ!! と必氏で弁明してなんとかわかって貰えたが。
268: 2012/04/13(金) 12:57:44.62
雪乃「…大丈夫よ。私は、たとえ比企谷くんがおぞましい変態でも忌まわしい病気を持っていても、見捨てたりしないから」ニコ
八幡「ゆ、雪乃…」
なんか、笑顔が怖いんだが、という台詞は飲み込む。
雪乃「…そう、いざとなったら私がこの手で」フフ…
何をするというのですか。何かをシめたり切ったりする手つきをシミュレーションしている雪乃にそうツっこめる勇気の持ち主はその場にいなかった。
八幡の乾いた笑いが、特別棟の廊下にうすら寒く響いた。ほか3人もドン引きである。
八幡「ゆ、雪乃…」
なんか、笑顔が怖いんだが、という台詞は飲み込む。
雪乃「…そう、いざとなったら私がこの手で」フフ…
何をするというのですか。何かをシめたり切ったりする手つきをシミュレーションしている雪乃にそうツっこめる勇気の持ち主はその場にいなかった。
八幡の乾いた笑いが、特別棟の廊下にうすら寒く響いた。ほか3人もドン引きである。
276: 2012/04/13(金) 23:38:37.00
八幡「…てなことがあったんだよ。 あ、そこ、気持ちええ…あふぅ…」
小町「ほーほー、なるほどなるほど。大変だったねお兄ちゃん」キラリン
ベッドに横になった八幡の上にペタンとまたがり、中学三年生の妹が ここか、ここがええのんかー、などと合いの手を挟みながら応じた。
少し古いベッドのスプリングがぎしぎし言っている。うつ伏せになり、妹の愛のマッサージを受けている兄の姿には威厳の2文字はない。
小町「ほーほー、なるほどなるほど。大変だったねお兄ちゃん」キラリン
ベッドに横になった八幡の上にペタンとまたがり、中学三年生の妹が ここか、ここがええのんかー、などと合いの手を挟みながら応じた。
少し古いベッドのスプリングがぎしぎし言っている。うつ伏せになり、妹の愛のマッサージを受けている兄の姿には威厳の2文字はない。
277: 2012/04/13(金) 23:44:59.18
八幡「いやホントにさ、慣れないことはするもんじゃねぇな。なんか、今日1日で十年分くらいの何かを消費した気がするぜ…」
ぼやく兄を妹がなだめる。
小町「まぁまぁ…お兄ちゃんは頑張った! 小町がほめてあげるよ」ニコニコ
実際、予想以上の成果に小町はご満悦だった。昨夜、発破をかけた甲斐があったというものである。
ぼやく兄を妹がなだめる。
小町「まぁまぁ…お兄ちゃんは頑張った! 小町がほめてあげるよ」ニコニコ
実際、予想以上の成果に小町はご満悦だった。昨夜、発破をかけた甲斐があったというものである。
278: 2012/04/13(金) 23:53:07.48
小町「ふーん、でも演劇かぁ。いいなあ、小町も、参加したかった!」
八つ当たり気味に兄の肩をぽかぽか叩く妹に、八幡は苦笑する。
八幡「…来年、ウチにきてやったらいいさ。最近、成績も上がってきてるじゃんか。このペースで頑張れ受験生」ハハ
小町「演劇がやりたいんじゃなくて…それも楽しそうなんだけど、お兄ちゃんたちと一緒に思い出が作りたかったんだよ…」
八幡「……可愛いこと言いやがってこん畜生。これ以上俺がシスコンになったらどうすんだよ。雪乃にちょん切られちゃうだろ」
八つ当たり気味に兄の肩をぽかぽか叩く妹に、八幡は苦笑する。
八幡「…来年、ウチにきてやったらいいさ。最近、成績も上がってきてるじゃんか。このペースで頑張れ受験生」ハハ
小町「演劇がやりたいんじゃなくて…それも楽しそうなんだけど、お兄ちゃんたちと一緒に思い出が作りたかったんだよ…」
八幡「……可愛いこと言いやがってこん畜生。これ以上俺がシスコンになったらどうすんだよ。雪乃にちょん切られちゃうだろ」
279: 2012/04/13(金) 23:59:21.39
小町「『雪乃』か…えへへへ…ふふふふ…」2828
八幡「な、なんだよ。人の上に乗って不気味な笑い方しやがって。ホラーか。実は、お前が雪乃の手先で、今からちょん切ろうとしてるとかいう展開か」アセ
八幡としてはかなり冗談抜きで、妹が雪乃から受けている影響を心配していた。小町まで雪乃みたいになったらどうしよう。
八幡「な、なんだよ。人の上に乗って不気味な笑い方しやがって。ホラーか。実は、お前が雪乃の手先で、今からちょん切ろうとしてるとかいう展開か」アセ
八幡としてはかなり冗談抜きで、妹が雪乃から受けている影響を心配していた。小町まで雪乃みたいになったらどうしよう。
280: 2012/04/14(土) 00:09:20.25
小町「ううん、べっつにぃー☆」フフ-ン
八幡「…どうでもいいけどお前、もうとっくに秋だぞ。風呂上りだからってもう少し厚着しろよ。大事な時期に体調崩したらどうすんだ」
首だけ捻って妹をジト目で見る八幡。
小町「ふふふー、頑張ったお兄ちゃんに、サービスしてあげてるんだよ。もしかしてムラムラしたりする?」キラリン
八幡「むしろイライラするNE!」
さっきは可愛かったが、今はむしろドヤ顔がうぜぇ。
八幡「…どうでもいいけどお前、もうとっくに秋だぞ。風呂上りだからってもう少し厚着しろよ。大事な時期に体調崩したらどうすんだ」
首だけ捻って妹をジト目で見る八幡。
小町「ふふふー、頑張ったお兄ちゃんに、サービスしてあげてるんだよ。もしかしてムラムラしたりする?」キラリン
八幡「むしろイライラするNE!」
さっきは可愛かったが、今はむしろドヤ顔がうぜぇ。
286: 2012/04/15(日) 22:37:25.08
小町「ぶー、その反応、小町的にポイント超低いー」
じゃれついて首を絞めてくる妹を引きはがし、起き上がる。首をコキコキならしてみた。
八幡「ん、なんか楽になった。あんがとな。 …じゃ、お礼にまた勉強見てやるよ」
小町「えへへー、どういたしまして! …ねぇ、お兄ちゃん?」キラリン
八幡「何だよ…」
じゃれついて首を絞めてくる妹を引きはがし、起き上がる。首をコキコキならしてみた。
八幡「ん、なんか楽になった。あんがとな。 …じゃ、お礼にまた勉強見てやるよ」
小町「えへへー、どういたしまして! …ねぇ、お兄ちゃん?」キラリン
八幡「何だよ…」
287: 2012/04/15(日) 22:42:29.25
小町「最近モテモテだけど、本当のところお兄ちゃんの本命は、誰なのかな?」
八幡「ぶーっ!!」
2日続けて自室にMAXコーヒーを吹き出す八幡。今度は気管に入ったと見え、激しくせき込んでいる。
小町「ま、また…本当に汚いなぁ、もー」アセ
八幡「ぶーっ!!」
2日続けて自室にMAXコーヒーを吹き出す八幡。今度は気管に入ったと見え、激しくせき込んでいる。
小町「ま、また…本当に汚いなぁ、もー」アセ
288: 2012/04/15(日) 22:47:43.65
八幡「…お、お前が変なこと聞くからだ。何だよ、何の話だ本命とか…」ゲホゲホ
小町「だからぁ、雪乃さんと結衣さん、どっちのことが好…」
八幡「待て、ちょっと待て。いいから落ちつけ」アセ
小町「お兄ちゃんのほうこそ落ち着いてよ…別に何も、変なことは聞いてないとおもうけどなー」キラリン
小町「だからぁ、雪乃さんと結衣さん、どっちのことが好…」
八幡「待て、ちょっと待て。いいから落ちつけ」アセ
小町「お兄ちゃんのほうこそ落ち着いてよ…別に何も、変なことは聞いてないとおもうけどなー」キラリン
289: 2012/04/15(日) 22:57:19.53
八幡「………い、いや、どっちが、とかさ。俺は別に…そもそもあいつらが、本当に俺のことが好きかなんて」
小町「ふりーず! 黙りなさいお兄ちゃん!」ビシィ
八幡は、「お前、「黙れ」ならシャラップだぞ、それじゃ「動くな」だ」というツッコミをのみこみ、黙った。妹の学力と志望についてはまた後で話し合おう。
小町「…好きでもない男の子のために、手を切り傷だらけにしてお弁当作ってくる女の子はいません。 名前を呼び捨てにされて、喜ぶ女の子もです」
八幡「………」
小町「ふりーず! 黙りなさいお兄ちゃん!」ビシィ
八幡は、「お前、「黙れ」ならシャラップだぞ、それじゃ「動くな」だ」というツッコミをのみこみ、黙った。妹の学力と志望についてはまた後で話し合おう。
小町「…好きでもない男の子のために、手を切り傷だらけにしてお弁当作ってくる女の子はいません。 名前を呼び捨てにされて、喜ぶ女の子もです」
八幡「………」
290: 2012/04/15(日) 23:05:54.65
小町「小町だって、あの二人とは友達だもん。わかるよ…二人とも、間違いなくお兄ちゃんのことが好きだって。お兄ちゃんだって、本当はもうわかってるでしょ?」
八幡「………」
苦しげに眼をそらす兄に向って
小町「小町は、どっちがお姉ちゃんになってもいいよ。お兄ちゃん、お兄ちゃんに…幸せになってほしいの」キュッ
八幡「………」
苦しげに眼をそらす兄に向って
小町「小町は、どっちがお姉ちゃんになってもいいよ。お兄ちゃん、お兄ちゃんに…幸せになってほしいの」キュッ
291: 2012/04/15(日) 23:16:27.87
しばしの静寂が部屋に満ちる。
八幡「……心配かけて、悪いな。大丈夫、ちゃんとするから安心してくれ」
服の裾にしがみついている妹の肩をややぎこちなく、ポンとたたく。
小町「…うん、信じる」エヘヘ
苦笑しながら、妹の頭をぐりぐりと撫でまわした。
小町「ダメー、髪が、髪がぐしゃぐしゃになるっ!!」
きゃーきゃー叫んでいる妹を捕まえ、強制的撫でまわしの刑に処す。
階下から両親のうるさいという声が聞こえたところでじゃれ合いを中止し、小町の受験勉強を見てやることにした。
八幡「……心配かけて、悪いな。大丈夫、ちゃんとするから安心してくれ」
服の裾にしがみついている妹の肩をややぎこちなく、ポンとたたく。
小町「…うん、信じる」エヘヘ
苦笑しながら、妹の頭をぐりぐりと撫でまわした。
小町「ダメー、髪が、髪がぐしゃぐしゃになるっ!!」
きゃーきゃー叫んでいる妹を捕まえ、強制的撫でまわしの刑に処す。
階下から両親のうるさいという声が聞こえたところでじゃれ合いを中止し、小町の受験勉強を見てやることにした。
295: 2012/04/16(月) 01:52:56.92
川崎「…何ていうかさ、さすがに予想外だったわ」
電話の向こうで、川崎沙希がため息をつく。
雪乃「…どういうこと?」
自室のベッドの上に腰掛けて、雪乃が問い返した。
川崎「ん…『恋は女を変える』って、バカにしてたけど真実かもね。それを実感してる」クショウ
雪乃「…………///」
雪乃の腕の中で、パンさんのぬいぐるみが形を変える。ちなみに、初めてのデート?の際、八幡が雪乃に贈ったものである。
電話の向こうで、川崎沙希がため息をつく。
雪乃「…どういうこと?」
自室のベッドの上に腰掛けて、雪乃が問い返した。
川崎「ん…『恋は女を変える』って、バカにしてたけど真実かもね。それを実感してる」クショウ
雪乃「…………///」
雪乃の腕の中で、パンさんのぬいぐるみが形を変える。ちなみに、初めてのデート?の際、八幡が雪乃に贈ったものである。
296: 2012/04/16(月) 02:15:10.20
雪乃「……お、押していけって言ったのは川崎さんでしょう?」
川崎「まあね。 …あそこまで変わるとは思ってなかったけど、今のあんた、すごく可愛いと思うわ。同性の目から見てもちょっとドキドキしたくらい。
…比企谷も見たとこ、釘づけだったし」
雪乃「そ、そうかしら…」
川崎「演劇の練習が始まれば、一緒にいる時間も増えるんじゃない? あたしもここまで来たら、できる限りの協力はするわ」
雪乃「川崎さん、ありがとう…」
素直に礼の言葉が出てきた。これも、雪乃の内面の変化の顕れだろうか?
川崎は、内心で感嘆していた。そしてなんとかこの不器用な友人…自分の中から『友人』などという単語が、雪乃に対して出てきたことに自分で驚く…の
恋路を助けてやりたいと改めて思う。
川崎「そのためには…」
乙女たちの作戦会議は続いた。
川崎「まあね。 …あそこまで変わるとは思ってなかったけど、今のあんた、すごく可愛いと思うわ。同性の目から見てもちょっとドキドキしたくらい。
…比企谷も見たとこ、釘づけだったし」
雪乃「そ、そうかしら…」
川崎「演劇の練習が始まれば、一緒にいる時間も増えるんじゃない? あたしもここまで来たら、できる限りの協力はするわ」
雪乃「川崎さん、ありがとう…」
素直に礼の言葉が出てきた。これも、雪乃の内面の変化の顕れだろうか?
川崎は、内心で感嘆していた。そしてなんとかこの不器用な友人…自分の中から『友人』などという単語が、雪乃に対して出てきたことに自分で驚く…の
恋路を助けてやりたいと改めて思う。
川崎「そのためには…」
乙女たちの作戦会議は続いた。
325: 2012/04/18(水) 17:40:02.51
八幡「…眠れん」
ベッドの中で溜息をついた。結衣と、雪乃が自分に特別な感情を抱いている…
確かに、素直に彼女たちの反応をみれば、そうとしか思えない。幾多のトラップを踏み抜き、勘違いと玉砕を繰り返すこと数知れず。負けることに関しては最強を自負する八幡でさえ、そう結論するしかなかった。
だが…
ベッドの中で溜息をついた。結衣と、雪乃が自分に特別な感情を抱いている…
確かに、素直に彼女たちの反応をみれば、そうとしか思えない。幾多のトラップを踏み抜き、勘違いと玉砕を繰り返すこと数知れず。負けることに関しては最強を自負する八幡でさえ、そう結論するしかなかった。
だが…
326: 2012/04/18(水) 17:48:43.36
八幡「…俺は、どうしたいんだ?」
これまでの人生を考えれば、浮かれはしゃいで良い状況のはずだった。
嬉しくない訳ではない。だが、不思議とそんな気分にはならない自分に、少し戸惑いを感じている。
これまでの人生を考えれば、浮かれはしゃいで良い状況のはずだった。
嬉しくない訳ではない。だが、不思議とそんな気分にはならない自分に、少し戸惑いを感じている。
327: 2012/04/18(水) 18:05:15.15
もちろん、彼女たちに不満があるわけではない。二人とも客観的にみて、特に雪乃は稀に見ると言っていい美少女だったし、それ以上に二人の内面の美しさについても今の八幡はよく知っている。
結衣の優しさも、雪乃の気高さも。
八幡は、人間の悪意や無関心についてはよく親しんでいた。偽善や嫉妬、下心といったものについても熟知していた。孤独と痛みは長年の友だった。
では、優しさと強さはどうだろう。
結衣の優しさも、雪乃の気高さも。
八幡は、人間の悪意や無関心についてはよく親しんでいた。偽善や嫉妬、下心といったものについても熟知していた。孤独と痛みは長年の友だった。
では、優しさと強さはどうだろう。
328: 2012/04/18(水) 18:09:53.79
…もちろん、知っている。本物のそれは、とても貴重なものだと。
そして、だから…
●●●×××▲▲▲@@@%%%$$$**
……………………………………………………
そして、だから…
●●●×××▲▲▲@@@%%%$$$**
……………………………………………………
329: 2012/04/18(水) 18:18:27.62
「…というわけで、今度の劇のヒロイン役は、材木座くんにやってもらうことになりました」
八幡「おい待て。どういう訳だ」
演劇部前部長の小田原の言葉に、ツッコミを入れる。
鶴見「今回の劇では、インパクトを狙って斬新な解釈で攻めてみようと思って…」
八幡「どんな解釈だよ!!」
八幡「おい待て。どういう訳だ」
演劇部前部長の小田原の言葉に、ツッコミを入れる。
鶴見「今回の劇では、インパクトを狙って斬新な解釈で攻めてみようと思って…」
八幡「どんな解釈だよ!!」
330: 2012/04/18(水) 18:23:15.41
材木座「ぬふぅ、我、頑張る!!」ポッ
八幡「テメェはテメェでやる気だしてんじゃねぇ!!
おかしいだろどう考えても!! 男子がヒロインやるなら、戸塚以外ありえねぇだろうが!!」
八幡は激怒していた
八幡「テメェはテメェでやる気だしてんじゃねぇ!!
おかしいだろどう考えても!! 男子がヒロインやるなら、戸塚以外ありえねぇだろうが!!」
八幡は激怒していた
332: 2012/04/18(水) 18:43:37.45
戸塚「…あはは、劇に出るのはいいんだけど、女の子の役とかはちょっと困る、かな」
困ったように笑いながらも、明確な拒否。
八幡「と、とつ…」
海老名「そうよ、比企谷くん!! 最後まで先生の話を聞きましょう?」
八幡「…なんでそんなに目が輝いてるん? 何がそんなに海老名さんの琴線に触れたの、ねぇ」
海老名「それで先生、その斬新な解釈とは?」
八幡のツッコミは届かない。海老名の食いつきに満足気な微笑みを浮かべて鶴見は答えた。
鶴見「…美女と野獣、のはずが、「美女が野獣?!」
…どうかしら?」
八幡「誰得過ぎだろぉぉ!!」
ドヤ顔の家庭科教師に、珍しい本気の全力でツッコミを入れる八幡。
困ったように笑いながらも、明確な拒否。
八幡「と、とつ…」
海老名「そうよ、比企谷くん!! 最後まで先生の話を聞きましょう?」
八幡「…なんでそんなに目が輝いてるん? 何がそんなに海老名さんの琴線に触れたの、ねぇ」
海老名「それで先生、その斬新な解釈とは?」
八幡のツッコミは届かない。海老名の食いつきに満足気な微笑みを浮かべて鶴見は答えた。
鶴見「…美女と野獣、のはずが、「美女が野獣?!」
…どうかしら?」
八幡「誰得過ぎだろぉぉ!!」
ドヤ顔の家庭科教師に、珍しい本気の全力でツッコミを入れる八幡。
333: 2012/04/18(水) 18:48:35.06
海老名「…素晴らしいと思います、先生!! ところで私にもアイデアがあるのですが、ここでもう一ひねりして、ヒロインを取り合ううちに、主人公と敵役の間に、いつしか憎しみを超えて愛が芽生えるという展開はどうですか?」
八幡「腐ってやがる!!」
八幡「腐ってやがる!!」
334: 2012/04/18(水) 18:59:46.31
鶴見「…海老名さん、貴女、なかなかやるわね」
海老名「…先生こそ」
互いを認めあい、フフフと笑みを交わす二人。
八幡「おいそこの一児の母!! 教師として小学生の娘をもつ母親として、今の自分の姿に疑問を感じろよ!!」
海老名「…先生こそ」
互いを認めあい、フフフと笑みを交わす二人。
八幡「おいそこの一児の母!! 教師として小学生の娘をもつ母親として、今の自分の姿に疑問を感じろよ!!」
335: 2012/04/18(水) 19:16:01.87
鶴見「…ということで、早速、ラストシーンを演るわよ」
八幡「…え、ラストシーンて…まさか…」
海老名「ヒロインのキスで、主人公が変身する場面ですね!!」
逃げようとする八幡の肩を、葉山と戸部がいつの間にかガッチリ押さえていた。
八幡「…お前ら、いつ魂を悪魔に売った?!」
葉山「…これも、劇の成功の為だから」
いつもの爽やかな微笑みの裏に、黒いものを感じずにはいられない。
戸部「…比企谷くんさぁ、最近ちょっとモテすぎだべ?」
戸部の方はストレートに黒かった。
八幡「…ま、待て、話せばわかる!!」
八幡「…え、ラストシーンて…まさか…」
海老名「ヒロインのキスで、主人公が変身する場面ですね!!」
逃げようとする八幡の肩を、葉山と戸部がいつの間にかガッチリ押さえていた。
八幡「…お前ら、いつ魂を悪魔に売った?!」
葉山「…これも、劇の成功の為だから」
いつもの爽やかな微笑みの裏に、黒いものを感じずにはいられない。
戸部「…比企谷くんさぁ、最近ちょっとモテすぎだべ?」
戸部の方はストレートに黒かった。
八幡「…ま、待て、話せばわかる!!」
337: 2012/04/18(水) 19:27:24.45
葉山「…君は良い友人だったが、戯れに剣豪将軍ル-トを選んだ読者が悪いんだよ」
八幡「…謀ったな、葉山ァァ!!」
戸部「…我らの同志となれ、そうすれば海老名さんも喜ぶ」
八幡「魂まで腐ったか、戸部ェェ!!」
必氏で抵抗するが、ガッチリ押さえこまれて動けない。
いつの間にか小田原たちの手で女装させられた材木座が近づいてきた。
材木座「…るふぅ、この沸き上がる未知の感覚、人よ命よ始まりをみる…」
八幡「…ぎゃあああ!!」
その姿はまさに野獣である。被捕食者の本能に駆られ、必氏のスペースラナウェイ八幡にジリジリとせまる美女という名のモンスター
八幡「…謀ったな、葉山ァァ!!」
戸部「…我らの同志となれ、そうすれば海老名さんも喜ぶ」
八幡「魂まで腐ったか、戸部ェェ!!」
必氏で抵抗するが、ガッチリ押さえこまれて動けない。
いつの間にか小田原たちの手で女装させられた材木座が近づいてきた。
材木座「…るふぅ、この沸き上がる未知の感覚、人よ命よ始まりをみる…」
八幡「…ぎゃあああ!!」
その姿はまさに野獣である。被捕食者の本能に駆られ、必氏のスペースラナウェイ八幡にジリジリとせまる美女という名のモンスター
338: 2012/04/18(水) 19:32:47.32
八幡「…や、やめろ。頬を染めるな。目を閉じるな。顔を近づけるな!! や、やめ、や…」
ヤ ッ ク デ カ ル チ ャ - ☆
八幡「…うぎゃあああああ!!!」
ヤ ッ ク デ カ ル チ ャ - ☆
八幡「…うぎゃあああああ!!!」
339: 2012/04/18(水) 19:36:53.42
…気がつくと、自室のベッドの上だった。
八幡「…ゆ、夢か………良かった。本当に良かった」
いろいろ煮詰まっていたせいで、悪夢をみたらしい。あまりのインパクトに、意識を失う直前に考えていた内容は吹っ飛んでしまった。
八幡「…ゆ、夢か………良かった。本当に良かった」
いろいろ煮詰まっていたせいで、悪夢をみたらしい。あまりのインパクトに、意識を失う直前に考えていた内容は吹っ飛んでしまった。
349: 2012/04/21(土) 00:07:40.53
更新するよ
351: 2012/04/21(土) 14:45:06.82
すんません、携帯が故障してました。
続きから
続きから
352: 2012/04/21(土) 15:01:34.80
>>339続き
さすがに、あのような夢を見た後では寝なおす気になれず、予定外の早起きをすることになった。試験期間でもないのに連日の睡眠不足が身に堪える。
結局、いつもより1時間近く早く家を出ることにした。
小町「わわ、お兄ちゃんが早起きしてる!! どういう風の吹き回し?!」
ママレードとマーガリンを塗ったトーストとMAXコーヒーの朝食をとり終え、制服を着たところで、ようやく起きてきた小町が目を丸くして八幡を見ている。
八幡「なんでもねぇよ。お前はゆっくり準備しとけ」
そう言い残し、背後で小町がバタバタ自分の登校の準備をしている音をききながら玄関へ向かう。
八幡「はぁ、眠み…」
あくび交じりに靴を履く。外は快晴だ。靴を履き終え、カバンを持ってドアを開けたところで、八幡の動きが止まる。
八幡「…ゆ、雪乃?」
雪乃「お、おはよう、比企谷くん///」
さすがに、あのような夢を見た後では寝なおす気になれず、予定外の早起きをすることになった。試験期間でもないのに連日の睡眠不足が身に堪える。
結局、いつもより1時間近く早く家を出ることにした。
小町「わわ、お兄ちゃんが早起きしてる!! どういう風の吹き回し?!」
ママレードとマーガリンを塗ったトーストとMAXコーヒーの朝食をとり終え、制服を着たところで、ようやく起きてきた小町が目を丸くして八幡を見ている。
八幡「なんでもねぇよ。お前はゆっくり準備しとけ」
そう言い残し、背後で小町がバタバタ自分の登校の準備をしている音をききながら玄関へ向かう。
八幡「はぁ、眠み…」
あくび交じりに靴を履く。外は快晴だ。靴を履き終え、カバンを持ってドアを開けたところで、八幡の動きが止まる。
八幡「…ゆ、雪乃?」
雪乃「お、おはよう、比企谷くん///」
353: 2012/04/21(土) 15:19:56.83
八幡・雪乃「「……………」」
制服姿の雪ノ下雪乃がそこにいた。頬をわずかに染めた顔は可憐だったが、片手を中途半端に上げようとして固まった姿はちょっと挙動不審である。
八幡と雪乃は、互いに目を合わせた瞬間の姿勢のままで、たっぷり十秒間、固まっていた。
小町「どうしたのお兄ちゃ…はわっ! 雪乃さん?!」
玄関で固まっている兄の様子を不審に思い、小町がひょいっと背後から顔を覗かせる。兄と同じく、予想外の光景に驚いて奇声をあげた。
制服姿の雪ノ下雪乃がそこにいた。頬をわずかに染めた顔は可憐だったが、片手を中途半端に上げようとして固まった姿はちょっと挙動不審である。
八幡と雪乃は、互いに目を合わせた瞬間の姿勢のままで、たっぷり十秒間、固まっていた。
小町「どうしたのお兄ちゃ…はわっ! 雪乃さん?!」
玄関で固まっている兄の様子を不審に思い、小町がひょいっと背後から顔を覗かせる。兄と同じく、予想外の光景に驚いて奇声をあげた。
355: 2012/04/23(月) 01:57:07.90
雪乃「…一緒に登校、しようと思って。でも、いつ、出るのかわからなかったから、少し早めに…」
八幡「お、おう…」
雪乃「め、迷惑…だった?」
八幡「…あ、いや」
小町「…お兄ちゃん!!」
呆然としている兄を、小町が後ろからどやしつけた。
八幡「…別に、迷惑じゃないぞ。俺も今日は、早く出る気分だったんだ…わざわざあんがとな」
何すんだ…と背後の妹を恨めしそうに見ながら返事をする八幡。
八幡「じゃ、一緒に登校するか」
雪乃「…ええ!」
二カッと微笑む八幡の笑顔に、頬を染めぱぁっと目を輝かせる雪乃。
八幡「お、おう…」
雪乃「め、迷惑…だった?」
八幡「…あ、いや」
小町「…お兄ちゃん!!」
呆然としている兄を、小町が後ろからどやしつけた。
八幡「…別に、迷惑じゃないぞ。俺も今日は、早く出る気分だったんだ…わざわざあんがとな」
何すんだ…と背後の妹を恨めしそうに見ながら返事をする八幡。
八幡「じゃ、一緒に登校するか」
雪乃「…ええ!」
二カッと微笑む八幡の笑顔に、頬を染めぱぁっと目を輝かせる雪乃。
362: 2012/04/24(火) 00:19:16.18
八幡「…にしてもさぁ、さすがにちょっと早く来すぎじゃね?」
自転車をこぎながら八幡が背後に語りかける。
雪乃「…だって、比企谷くんがいつ登校するか、わからなかったんだもの…」
自転車の後ろにちょこんと座り、八幡にしがみついた姿勢で雪乃が答える。さすがに恥ずかしいのか、声が小さい。
八幡の位置からは、雪乃の表情は見えない。
早朝の風が火照った頬に心地よい。今自分は、どんな顔をしているのだろう。雪乃の位置からも自分の顔は見えないだろうことは、多少の安心材料にはなった。
ええい、くそ、なんだこれ。なんだこのシチュエーション。こんなの、こんなのなぁ… 爆発しちゃうだろ、畜生!!!
ペダルを踏む足に力がこもる。二人乗りの重さを感じさせない勢いで自転車が早朝の街を加速していく。
自転車をこぎながら八幡が背後に語りかける。
雪乃「…だって、比企谷くんがいつ登校するか、わからなかったんだもの…」
自転車の後ろにちょこんと座り、八幡にしがみついた姿勢で雪乃が答える。さすがに恥ずかしいのか、声が小さい。
八幡の位置からは、雪乃の表情は見えない。
早朝の風が火照った頬に心地よい。今自分は、どんな顔をしているのだろう。雪乃の位置からも自分の顔は見えないだろうことは、多少の安心材料にはなった。
ええい、くそ、なんだこれ。なんだこのシチュエーション。こんなの、こんなのなぁ… 爆発しちゃうだろ、畜生!!!
ペダルを踏む足に力がこもる。二人乗りの重さを感じさせない勢いで自転車が早朝の街を加速していく。
363: 2012/04/24(火) 00:33:53.98
雪乃「…大丈夫?」
少し心配そうな声。
八幡「あん? 何ともねぇよ。しょっちゅう小町の奴を乗せてるしな …むしろお前、ちょっと軽すぎないか? ちゃんとメシくえメシ!」
八幡の声には、明らかに照れ隠しの成分が混じっていた。後ろは振り返らない。
雪乃「…必要な栄養素とカ口リーは摂取してるもの」
しがみつく腕の力が、きゅっとわずかに強まった。制服越しに触れ合う部分を意識してしまう。
八幡「…お、おう」
ああ、いや、うん。そりゃあ、静先生や結衣には及ばないとはいえですね、まぁ、なんだ。将来性に期待というかなんというか。姉ちゃんはアレなわけだし。
雪乃「…比企谷くん? 今なにを考えたのかしら?」
やべぇ、心の声を聴かれた!! 雪乃の冷たい声に、戦慄する八幡。
八幡「イイエナニモ」カクカク
雪乃「…今のうちに素直に言えば、温情判決もあり得るわよ?」
あくまで優しいが、「温情」という言葉にひどく違和感を感じる声音だった。やだこわい…
少し心配そうな声。
八幡「あん? 何ともねぇよ。しょっちゅう小町の奴を乗せてるしな …むしろお前、ちょっと軽すぎないか? ちゃんとメシくえメシ!」
八幡の声には、明らかに照れ隠しの成分が混じっていた。後ろは振り返らない。
雪乃「…必要な栄養素とカ口リーは摂取してるもの」
しがみつく腕の力が、きゅっとわずかに強まった。制服越しに触れ合う部分を意識してしまう。
八幡「…お、おう」
ああ、いや、うん。そりゃあ、静先生や結衣には及ばないとはいえですね、まぁ、なんだ。将来性に期待というかなんというか。姉ちゃんはアレなわけだし。
雪乃「…比企谷くん? 今なにを考えたのかしら?」
やべぇ、心の声を聴かれた!! 雪乃の冷たい声に、戦慄する八幡。
八幡「イイエナニモ」カクカク
雪乃「…今のうちに素直に言えば、温情判決もあり得るわよ?」
あくまで優しいが、「温情」という言葉にひどく違和感を感じる声音だった。やだこわい…
364: 2012/04/24(火) 00:38:34.03
八幡「~~♪」
思わず、口笛を吹いて誤魔化す八幡。
雪乃「陳腐な誤魔化し方を… ふむ、この曲は『Country Road』ね?」
思わず、口笛を吹いて誤魔化す八幡。
雪乃「陳腐な誤魔化し方を… ふむ、この曲は『Country Road』ね?」
365: 2012/04/24(火) 00:45:05.74
言われて気づいた。どうやら、今の自分たちの状況から、つい某ジ●リアニメを連想してしまったらしい。
歌詞が思い出せないが、どんなだったっけ? 八幡が記憶を検索していると、雪乃が八幡にだけ聞こえるような小さな声で口ずさみだした。
雪乃「…I dreamed of living Alone but fearless Secret longings
歌詞が思い出せないが、どんなだったっけ? 八幡が記憶を検索していると、雪乃が八幡にだけ聞こえるような小さな声で口ずさみだした。
雪乃「…I dreamed of living Alone but fearless Secret longings
366: 2012/04/24(火) 00:50:01.63
雪乃「…loneliness kept bottled up inside Just reveal your brave face they'll never know you lied♪」
背後の美声に、口笛の伴奏で応える。 リズムに合わせ、軽快にペダルを踏んでゆく。
背後の美声に、口笛の伴奏で応える。 リズムに合わせ、軽快にペダルを踏んでゆく。
367: 2012/04/24(火) 00:59:17.73
日本語の歌詞を思い出した。
「ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢見てた さみしさ 押し込めて 強い自分を 守っていこ…」
…今、雪乃はどんな表情で、この歌を歌っているのだろう。
雪乃「…I'll never stop to share a tear that I've shed, But now I have to walk so fast, Running, sprinting to forget, What is lodged in my head♪
(どんな挫けそうな時だって 決して 涙は見せないで 心なしか 歩調が速くなっていく 思い出 消すため)」
「ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢見てた さみしさ 押し込めて 強い自分を 守っていこ…」
…今、雪乃はどんな表情で、この歌を歌っているのだろう。
雪乃「…I'll never stop to share a tear that I've shed, But now I have to walk so fast, Running, sprinting to forget, What is lodged in my head♪
(どんな挫けそうな時だって 決して 涙は見せないで 心なしか 歩調が速くなっていく 思い出 消すため)」
368: 2012/04/24(火) 01:07:05.69
学校に到着するまで顔見知りに遭遇しなかったのは、幸運というべきだろうか。校門から20mほど手前の交差点で自転車から降り、歩きながら自転車を引く。
隣同士に並びながら、互いに無言だ。雪乃は、八幡の整復の裾を、ちょこんとつまんでいる。八幡は、なんとなくそっぽを向いていた。やっぱ、恥ずかしいだろそりゃ…
隣同士に並びながら、互いに無言だ。雪乃は、八幡の整復の裾を、ちょこんとつまんでいる。八幡は、なんとなくそっぽを向いていた。やっぱ、恥ずかしいだろそりゃ…
369: 2012/04/24(火) 01:08:02.63
続く。すんません、更新なるべくがんばります。感想があれば早くなりますたぶん
380: 2012/04/26(木) 00:54:33.72
??「わん! わん!」
八幡「……ん、犬?」
校門のすぐ前で、リードを首輪につけたままの犬が八幡めがけてまっしぐらに走ってきた。どこか、見覚えがあるような…
雪乃「………!」
雪乃は反射的に八幡の後ろに身を隠す。犬は八幡の足元に駆け寄ってくると、尻尾を激しく振りながら嬉しそうにまとわりつく。
八幡「やたら懐いてんな…ん、この首輪…おまえもしかして」
たしかに覚えがある。自分が、数か月前に誕生日プレゼントとしてある少女に贈ったものだ。
視線を、犬が走ってきた方向に向けた。
八幡「…よう、おはよう」
視線の先で、硬直している少女に朝の挨拶をする。
八幡「……ん、犬?」
校門のすぐ前で、リードを首輪につけたままの犬が八幡めがけてまっしぐらに走ってきた。どこか、見覚えがあるような…
雪乃「………!」
雪乃は反射的に八幡の後ろに身を隠す。犬は八幡の足元に駆け寄ってくると、尻尾を激しく振りながら嬉しそうにまとわりつく。
八幡「やたら懐いてんな…ん、この首輪…おまえもしかして」
たしかに覚えがある。自分が、数か月前に誕生日プレゼントとしてある少女に贈ったものだ。
視線を、犬が走ってきた方向に向けた。
八幡「…よう、おはよう」
視線の先で、硬直している少女に朝の挨拶をする。
381: 2012/04/26(木) 01:20:20.90
結衣「あ…やー、はは…ヒッキー、ゆきのん、おはよ…」
雪乃「……おはよう、由比ヶ浜さん」
結衣は、表情をこわばらせながらも手を振り返してきた。雪乃の声も何やら硬いが、背後の表情はみえない。
結衣「…きょ、今日はいつもより、登校早いんだね」
八幡「あー、なんか早く目が覚めたんだよ。夢見が最悪でな…また授業中に寝ちまいそうだわ。
そっちは早朝からサボレーの散歩か?」
結衣「サブレだし! ひとの犬に変な名前つけないでよもう!」
八幡「はは、ネーミングセンスについちゃお互い様だろ。ほれ、リード。気をつけろよな、また事故に遭うぞ
…にしても、よくよくこの場所に縁があるよな俺ら」
犬をじゃらしながら、結衣にリードを差し出す八幡。
結衣「ん、うん…」
雪乃「……………」
結衣がちらりと、八幡の背後をみやる。雪乃は無言だった。
雪乃「……おはよう、由比ヶ浜さん」
結衣は、表情をこわばらせながらも手を振り返してきた。雪乃の声も何やら硬いが、背後の表情はみえない。
結衣「…きょ、今日はいつもより、登校早いんだね」
八幡「あー、なんか早く目が覚めたんだよ。夢見が最悪でな…また授業中に寝ちまいそうだわ。
そっちは早朝からサボレーの散歩か?」
結衣「サブレだし! ひとの犬に変な名前つけないでよもう!」
八幡「はは、ネーミングセンスについちゃお互い様だろ。ほれ、リード。気をつけろよな、また事故に遭うぞ
…にしても、よくよくこの場所に縁があるよな俺ら」
犬をじゃらしながら、結衣にリードを差し出す八幡。
結衣「ん、うん…」
雪乃「……………」
結衣がちらりと、八幡の背後をみやる。雪乃は無言だった。
382: 2012/04/26(木) 01:24:55.45
雪乃「…私は、先に教室に行くわね」
八幡「ん、ああ…じゃあ、また後でな」
雪乃「…ええ」
雪乃が、場を離れる。すれ違いざま、誰に対してか「…ごめんなさい」とつぶやく声が聞こえた。
結衣と視線はかわしていない。
しばらく、八幡も結衣も無言だった。サブレは、リードを預けたままはっはっと嬉しそうに八幡の周りを飛び跳ねて尻尾を振っている。
八幡「ん、ああ…じゃあ、また後でな」
雪乃「…ええ」
雪乃が、場を離れる。すれ違いざま、誰に対してか「…ごめんなさい」とつぶやく声が聞こえた。
結衣と視線はかわしていない。
しばらく、八幡も結衣も無言だった。サブレは、リードを預けたままはっはっと嬉しそうに八幡の周りを飛び跳ねて尻尾を振っている。
383: 2012/04/26(木) 01:40:48.63
結衣「…ゆきのんとは、たまたま会ったの?」
八幡「……いや。なんか、家に迎えに来られたんで、一緒に登校した」
結衣「ん…そっか…」
八幡「ああ……」
結衣「…………」
八幡「…………」
視線を合わせないまま、サブレをわしゃわしゃする結衣と、それを見ている八幡。サブレは嬉しそうに鼻を鳴らす。
結衣「ねぇ、ヒッキーはさ…」
き~んこ~んか~ん…
結衣の言葉を遮るように、授業まであと30分を告げるチャイムの音が鳴る。
八幡「…お、いつの間にかもうこんな時間か」
ぼつぼつ、登校する生徒の姿もそこかしこにみえている。時折、ちらちらと視線を感じた。
八幡「…家に一度戻らないとマズいんじゃないか?」
結衣「ん、そだね…そうする。 また、あとでね」
結衣の微笑はまだ、少し硬かった。
八幡「……いや。なんか、家に迎えに来られたんで、一緒に登校した」
結衣「ん…そっか…」
八幡「ああ……」
結衣「…………」
八幡「…………」
視線を合わせないまま、サブレをわしゃわしゃする結衣と、それを見ている八幡。サブレは嬉しそうに鼻を鳴らす。
結衣「ねぇ、ヒッキーはさ…」
き~んこ~んか~ん…
結衣の言葉を遮るように、授業まであと30分を告げるチャイムの音が鳴る。
八幡「…お、いつの間にかもうこんな時間か」
ぼつぼつ、登校する生徒の姿もそこかしこにみえている。時折、ちらちらと視線を感じた。
八幡「…家に一度戻らないとマズいんじゃないか?」
結衣「ん、そだね…そうする。 また、あとでね」
結衣の微笑はまだ、少し硬かった。
386: 2012/04/26(木) 22:21:59.86
休み時間は寝て過ごした。時折、誰かの視線や話しかけようとする気配を感じたが、なにせ寝ていたからよくわからない。
人間、本能には勝てない。これもひとえに寝不足が悪いのだ。
しかし、昼休みともなると三大欲求のもう一つを占める食欲が睡眠欲に勝った。もちろん、弁当は今日も用意していない。
購買にいくか…
欠伸しながらのそりと席から立ち上がると、こちらに近づいてくる結衣と視線が合った。海老名と…三浦も後ろにいる。オイオイ!
八幡「…よう」
人間、本能には勝てない。これもひとえに寝不足が悪いのだ。
しかし、昼休みともなると三大欲求のもう一つを占める食欲が睡眠欲に勝った。もちろん、弁当は今日も用意していない。
購買にいくか…
欠伸しながらのそりと席から立ち上がると、こちらに近づいてくる結衣と視線が合った。海老名と…三浦も後ろにいる。オイオイ!
八幡「…よう」
387: 2012/04/26(木) 22:45:33.64
海老名「あははー、おはよう比企谷くん。よく寝てたねぇ」
八幡「…身長をもう少し伸ばそうと思ってな。寝る子は育つっていうだろ、うん」
海老名「そんな育ちざかりの欠食児童な比企谷くんに、嬉しいニュースがあるよ。今日もお弁当の差し入れでーす! ほら、結衣」
結衣「う、うん…あの、ヒッキー、よかったら…」
三浦「いいに決まってるよな?」
八幡「お、おう…」
前に押し出され、もじもじしている結衣の手には、今日も弁当箱がある。背後から虎のような目で睨んでいる三浦の存在がなければ、心ときめく光景であろう。その視線にびびって、八幡の周囲の席からも人がいつのまにか消えていた。数百万人にひとりといわれる覇王色の覇気の持ち主がまさかこんなところに! 千葉の高校でくすぶってないで、とっとと新世界にでもいってくれよ…懸賞金何億ベリーだお前。
八幡「…身長をもう少し伸ばそうと思ってな。寝る子は育つっていうだろ、うん」
海老名「そんな育ちざかりの欠食児童な比企谷くんに、嬉しいニュースがあるよ。今日もお弁当の差し入れでーす! ほら、結衣」
結衣「う、うん…あの、ヒッキー、よかったら…」
三浦「いいに決まってるよな?」
八幡「お、おう…」
前に押し出され、もじもじしている結衣の手には、今日も弁当箱がある。背後から虎のような目で睨んでいる三浦の存在がなければ、心ときめく光景であろう。その視線にびびって、八幡の周囲の席からも人がいつのまにか消えていた。数百万人にひとりといわれる覇王色の覇気の持ち主がまさかこんなところに! 千葉の高校でくすぶってないで、とっとと新世界にでもいってくれよ…懸賞金何億ベリーだお前。
388: 2012/04/26(木) 22:56:59.19
これは、逃げられない。なんか脳内で、ボス戦のBGMが流れてるし。
それに昨日「また作ってくれ」といったのは自分だ。翌日早速とは思わなかったが、結衣のけなげな努力を無碍にはできない。
八幡「すまん…今日も弁当なかったんだ。正直たすかる」
結衣「…うん!」
拝む仕草をする八幡に、結衣の顔がようやくほころぶ。
それに昨日「また作ってくれ」といったのは自分だ。翌日早速とは思わなかったが、結衣のけなげな努力を無碍にはできない。
八幡「すまん…今日も弁当なかったんだ。正直たすかる」
結衣「…うん!」
拝む仕草をする八幡に、結衣の顔がようやくほころぶ。
391: 2012/04/26(木) 23:14:26.65
美少女3人とテーブルを接して弁当を広げる八幡。なんででしょう、傍目にはハーレムなのに、捕虜の心境なんですけど。
今日は、おにぎりだった。多少ゆがんでいるが、十分、形にはなっている。海苔ととろろ昆布を巻いて、おかずはきんぴら、卵焼き、タコ(に似せようとしたと思われる)ウインナー。デザートは今日も桃缶だった。
八幡「…いただきます」
緊張した顔の結衣、にこやかな海老名、睨みつけている三浦。…お前ら、そんなに見られたら食べにくいんですけど。
今日は、おにぎりだった。多少ゆがんでいるが、十分、形にはなっている。海苔ととろろ昆布を巻いて、おかずはきんぴら、卵焼き、タコ(に似せようとしたと思われる)ウインナー。デザートは今日も桃缶だった。
八幡「…いただきます」
緊張した顔の結衣、にこやかな海老名、睨みつけている三浦。…お前ら、そんなに見られたら食べにくいんですけど。
395: 2012/04/26(木) 23:42:32.33
おにぎりの中身は、おかかと梅干し。スタンダードだがそれがいい。
ほかのものも、味が若干濃かったり、見栄えがやや不格好だったりしたが、十分に美味しかった。
結衣の研鑽がしのばれる。
八幡「ごちそうさま」
海老名「御感想は?」2828
八幡「正直、うまかったよ。進歩の跡が著しいな」
ほかのものも、味が若干濃かったり、見栄えがやや不格好だったりしたが、十分に美味しかった。
結衣の研鑽がしのばれる。
八幡「ごちそうさま」
海老名「御感想は?」2828
八幡「正直、うまかったよ。進歩の跡が著しいな」
397: 2012/04/27(金) 00:35:34.67
結衣「…えへへ」
はにかみながら小さくガッツポーズをとる結衣
三浦も、そんな八幡の態度を見て「まぁ、よかろう」とばかりに鷹揚に頷いている。
はにかみながら小さくガッツポーズをとる結衣
三浦も、そんな八幡の態度を見て「まぁ、よかろう」とばかりに鷹揚に頷いている。
400: 2012/04/27(金) 01:21:10.85
八幡「…にしても、今日は葉山たちは一緒じゃないのか? クラスの綺麗どころを独り占めしてるせいで周囲の嫉妬の視線がイタいんだが…」
チラッと三浦の方を見ながら問う。
三浦「…あん? 誰が見てるって?」
ジロッと三浦が周囲を見渡すと、好奇の目でこちらを伺っていた教室内の視線がサッと散る。どんだけ恐れられてんだよ…
海老名「あはは、なんか、サッカー部のミーティングがあるんだってさ」
海老名が苦笑しながら説明する。
八幡「は-…成る程ね。たしか新部長なんだっけか?」
ちなみに大和や大岡はそれぞれ同じ部の仲間といるようだ。グループ内の微妙な距離感が垣間見える。
海老名「そうそう。あ、そういえば、昨日の演劇の話、結構乗り気だったみたいだよ?」
結衣「うん、隼人くんと、あと戸部くんも期待していいかも」
チラッと三浦の方を見ながら問う。
三浦「…あん? 誰が見てるって?」
ジロッと三浦が周囲を見渡すと、好奇の目でこちらを伺っていた教室内の視線がサッと散る。どんだけ恐れられてんだよ…
海老名「あはは、なんか、サッカー部のミーティングがあるんだってさ」
海老名が苦笑しながら説明する。
八幡「は-…成る程ね。たしか新部長なんだっけか?」
ちなみに大和や大岡はそれぞれ同じ部の仲間といるようだ。グループ内の微妙な距離感が垣間見える。
海老名「そうそう。あ、そういえば、昨日の演劇の話、結構乗り気だったみたいだよ?」
結衣「うん、隼人くんと、あと戸部くんも期待していいかも」
415: 2012/05/02(水) 23:58:55.67
>>400 続き
八幡「おお、昨日、あの後そんな話が… 部活も忙しいだろうに、よく手伝ってくれる気になってくれたもんだ。まぁ、俺が言うのもなんだけど」
結衣「去年も確か、バンドをやってたんだよ。隼人くん、ギターもすごい上手なの」
八幡「うへぇ…」
三浦「…何か文句あんの?」ギロ
八幡「ないない。なーんもないです。さすが葉山センセイ、リア充の鑑」フルフル
結衣「ヒッキー、知らなかったの?」
八幡「去年の文化祭、サボってたんでな」
海老名「そ、そりゃ何でまた…」
八幡「おお、昨日、あの後そんな話が… 部活も忙しいだろうに、よく手伝ってくれる気になってくれたもんだ。まぁ、俺が言うのもなんだけど」
結衣「去年も確か、バンドをやってたんだよ。隼人くん、ギターもすごい上手なの」
八幡「うへぇ…」
三浦「…何か文句あんの?」ギロ
八幡「ないない。なーんもないです。さすが葉山センセイ、リア充の鑑」フルフル
結衣「ヒッキー、知らなかったの?」
八幡「去年の文化祭、サボってたんでな」
海老名「そ、そりゃ何でまた…」
416: 2012/05/03(木) 00:08:29.49
八幡「ちょっと持病の発作でな。病名はリア充アレルギー」
結衣「病気かぁ、ヒッキー可哀そう… ってウソでしょ! そんな病気絶対ないし!!」
八幡「いやホントホント。症状は、初々しいカップルのいちゃつく様子とかクラスの団結とか、『青春』を想起させるもの一般に対して激しい拒否反応が出てな…」
結衣「ひ、卑屈すぎる!」
八幡「抑えられない殺意の衝動から、奇声を上げたり、時に直接的なテロ行為に及ぶことも」
海老名「うーん、それが本当ならなかなかに迷惑な病気だね」
八幡「そんなわけで、皆に迷惑をかけないため、泣く泣く自主休校したんだよ。大丈夫、家で文化活動に勤しんでたから。アニメ鑑賞だけど」
結衣「病気かぁ、ヒッキー可哀そう… ってウソでしょ! そんな病気絶対ないし!!」
八幡「いやホントホント。症状は、初々しいカップルのいちゃつく様子とかクラスの団結とか、『青春』を想起させるもの一般に対して激しい拒否反応が出てな…」
結衣「ひ、卑屈すぎる!」
八幡「抑えられない殺意の衝動から、奇声を上げたり、時に直接的なテロ行為に及ぶことも」
海老名「うーん、それが本当ならなかなかに迷惑な病気だね」
八幡「そんなわけで、皆に迷惑をかけないため、泣く泣く自主休校したんだよ。大丈夫、家で文化活動に勤しんでたから。アニメ鑑賞だけど」
417: 2012/05/03(木) 00:26:14.51
結衣「うわぁ…」
結衣の表情はドン引きである。教室の隅で、川崎沙希がこちらを見て、呆れ顔で何やら呟いているのが目に入った。聞かなくても分かる。「バカじゃないの…」と言っているに違いない。
海老名「あはは、比企谷くんはホント、おもしろいなぁ。んー、でもさ? もうその病気、治ってるんじゃない?」
海老名が、にこやかに問いかける。
八幡「な、何を根拠にそんなことを言うのかねキミは…」
海老名「だって、最近の比企谷くん、誰が見てもリア充じゃない」
八幡「ぐほぁ?!」
自分でも気にしていたことを、ズバリと指摘されてしまった。しかも、見ればクラスのそこかしこで聞き耳を立てていた連中が頷いている。
結衣「………………」
海老名「治ってなかったら、今頃アナフィラキシーショックだよ。聞いたんだけど今朝も…」
八幡「待って、ちょっと待って。今、そのショック状態だから。心臓、止まりそうだから」
にこやかにトドメを刺しに来る海老名にストップをかける八幡。
結衣の表情はドン引きである。教室の隅で、川崎沙希がこちらを見て、呆れ顔で何やら呟いているのが目に入った。聞かなくても分かる。「バカじゃないの…」と言っているに違いない。
海老名「あはは、比企谷くんはホント、おもしろいなぁ。んー、でもさ? もうその病気、治ってるんじゃない?」
海老名が、にこやかに問いかける。
八幡「な、何を根拠にそんなことを言うのかねキミは…」
海老名「だって、最近の比企谷くん、誰が見てもリア充じゃない」
八幡「ぐほぁ?!」
自分でも気にしていたことを、ズバリと指摘されてしまった。しかも、見ればクラスのそこかしこで聞き耳を立てていた連中が頷いている。
結衣「………………」
海老名「治ってなかったら、今頃アナフィラキシーショックだよ。聞いたんだけど今朝も…」
八幡「待って、ちょっと待って。今、そのショック状態だから。心臓、止まりそうだから」
にこやかにトドメを刺しに来る海老名にストップをかける八幡。
418: 2012/05/03(木) 00:38:07.57
三浦「…ヒキオ、最近あの女とも仲良くしてるらしいじゃん。今朝もなんか、一緒に登校してたんだって?」
しばらく黙っていた三浦が、八幡を睨み付けながら問い質す。
八幡「あ、あの女とはどなたのことでせうか…」
視線が定まらず、明らかに挙動不審の八幡。秋にもかかわらず発汗が著しい。
海老名「あははー、惚けちゃって。雪ノ下さんに決まってるじゃない」
三浦「ネタはあがってんだよ。おとなしく吐け」
八幡「う、うげぇ…」
教室内にどよめきが走る。それを見て、ますます八幡の顔色が青ざめた。昨日の事と言い、このままじゃとんでもない噂が全校に広まってしまう。
結衣のほうをちらっと見ると、すまなそうに両手を合わせていた。情報源はやはり結衣か…オウ、ジーザス
しばらく黙っていた三浦が、八幡を睨み付けながら問い質す。
八幡「あ、あの女とはどなたのことでせうか…」
視線が定まらず、明らかに挙動不審の八幡。秋にもかかわらず発汗が著しい。
海老名「あははー、惚けちゃって。雪ノ下さんに決まってるじゃない」
三浦「ネタはあがってんだよ。おとなしく吐け」
八幡「う、うげぇ…」
教室内にどよめきが走る。それを見て、ますます八幡の顔色が青ざめた。昨日の事と言い、このままじゃとんでもない噂が全校に広まってしまう。
結衣のほうをちらっと見ると、すまなそうに両手を合わせていた。情報源はやはり結衣か…オウ、ジーザス
419: 2012/05/03(木) 01:05:43.84
海老名「…ズバリ、二人はもう、付き合ってるの?」
八幡「…オイ、勘弁してくれよこんなとこで」ハァ
以前より更に氏んだ魚のようになった瞳で溜息をつく八幡。
三浦「いまさらとぼけんな。さっさと吐けよテメェ」
八幡の胸倉を掴んで締め上げる。
八幡「やめて、今食べた弁当を吐いちゃう…」ウゲゲ
海老名「優美子、まぁまぁ… ゴメンね比企谷くん。でも、どうしてもハッキリ聞きたいな、比企谷くんの口から」
海老名の表情はあくまで微笑んでいるが、声音はいつになく真剣味があった。
八幡「…まったく」ゲホゲホ
結衣「………」
俯いて、身体を固くしている結衣の方をチラッと見た。
八幡「…今のとこ、告白したとかされたとかはねえよ。そういうことが聞きたいんならな。悪いが、これ以上は何聞かれてもノ-コメントだ」
八幡「…オイ、勘弁してくれよこんなとこで」ハァ
以前より更に氏んだ魚のようになった瞳で溜息をつく八幡。
三浦「いまさらとぼけんな。さっさと吐けよテメェ」
八幡の胸倉を掴んで締め上げる。
八幡「やめて、今食べた弁当を吐いちゃう…」ウゲゲ
海老名「優美子、まぁまぁ… ゴメンね比企谷くん。でも、どうしてもハッキリ聞きたいな、比企谷くんの口から」
海老名の表情はあくまで微笑んでいるが、声音はいつになく真剣味があった。
八幡「…まったく」ゲホゲホ
結衣「………」
俯いて、身体を固くしている結衣の方をチラッと見た。
八幡「…今のとこ、告白したとかされたとかはねえよ。そういうことが聞きたいんならな。悪いが、これ以上は何聞かれてもノ-コメントだ」
420: 2012/05/03(木) 01:21:53.19
海老名「…ん、そっか。ありがとう。 …ゴメンね」
結衣「………」ホッ
海老名が苦笑しつつ詫びる。結衣は安堵の表情を浮かべていた。三浦はまだ、何やら納得していない顔で八幡を睨めつけている。
聞き耳をたてていた連中もそこかしこで何やらヒソヒソ話している。中には、メールを打っている奴もいる。オイ、どんな話を流すつもりだ…
八幡は、とても大きな溜息をついた。
結衣「………」ホッ
海老名が苦笑しつつ詫びる。結衣は安堵の表情を浮かべていた。三浦はまだ、何やら納得していない顔で八幡を睨めつけている。
聞き耳をたてていた連中もそこかしこで何やらヒソヒソ話している。中には、メールを打っている奴もいる。オイ、どんな話を流すつもりだ…
八幡は、とても大きな溜息をついた。
423: 2012/05/03(木) 14:22:50.33
三浦「…んで、これからどうすんの?」
八幡「これから? 今はとりあえず、お前らから逃げようと考えてるが…」
海老名「あはは、なかなか正直だね比企谷くん」
三浦の詰問に、いささかうんざりした表情で返す八幡。海老名は苦笑し、結衣はハラハラした表情で見守っている。
三浦「逃がさね-し。言いたいこと、わかんでしょ?」
結衣「…………」
八幡「……それ、お前らに言うことか?」
八幡「これから? 今はとりあえず、お前らから逃げようと考えてるが…」
海老名「あはは、なかなか正直だね比企谷くん」
三浦の詰問に、いささかうんざりした表情で返す八幡。海老名は苦笑し、結衣はハラハラした表情で見守っている。
三浦「逃がさね-し。言いたいこと、わかんでしょ?」
結衣「…………」
八幡「……それ、お前らに言うことか?」
424: 2012/05/03(木) 15:01:12.96
三浦「ハッキリしろっつってんの。 ヒキオ、最近ちょっと活躍したり周りの見る目が変わったからって調子に乗ってない?」
結衣「優美子、もういいから…
海老名「優美子、さすがに言い過ぎ!」
たまらず止めに入る結衣と海老名。しかし荒ぶる炎の女王は止まらない。
三浦「あんたがそんなんだから、結衣も、ううん、隼人だって……!」
結衣「優美子、お願いもうやめて!!」
結衣の必氏の嘆願にようやく、口をつぐむ。しかし、未だ視線は八幡を刺している。
結衣「優美子、もういいから…
海老名「優美子、さすがに言い過ぎ!」
たまらず止めに入る結衣と海老名。しかし荒ぶる炎の女王は止まらない。
三浦「あんたがそんなんだから、結衣も、ううん、隼人だって……!」
結衣「優美子、お願いもうやめて!!」
結衣の必氏の嘆願にようやく、口をつぐむ。しかし、未だ視線は八幡を刺している。
425: 2012/05/03(木) 15:14:30.89
教室は静まり返っている。和やかな昼休みの雰囲気は完全に消し飛んだ。
…やれやれだぜ。視界の隅で川崎が立ち上がりかけていたのを、視線で押さえた。これ以上、ややこしいのに出てこられてますますこじれたら胃に穴が開く。三浦と川崎なんて、絶対に相性最悪だろ…
無意識に何かを探す手に、温かい何かが渡された。水筒から注がれたお茶。視線を上げると、海老名が苦笑していた。
小さくサンキュと呟いて、一口啜った。
…やれやれだぜ。視界の隅で川崎が立ち上がりかけていたのを、視線で押さえた。これ以上、ややこしいのに出てこられてますますこじれたら胃に穴が開く。三浦と川崎なんて、絶対に相性最悪だろ…
無意識に何かを探す手に、温かい何かが渡された。水筒から注がれたお茶。視線を上げると、海老名が苦笑していた。
小さくサンキュと呟いて、一口啜った。
428: 2012/05/04(金) 20:13:44.29
八幡「…まぁ、なんだ」
しばらくの沈黙の後、頭を掻きながら口を開く。クラス中の視線がイタい。
八幡「…周りの見方がどう変わったかは知らんけどな、俺はもともとこんな奴だぜ。これまで、青春とか恋愛とか縁はなかったしやり方も知らん。
ハッキリ言えば、外野がどう思おうと知ったこっちゃないし、訳のわからん空気なんてモノ最初から読むつもりもない」
しばらくの沈黙の後、頭を掻きながら口を開く。クラス中の視線がイタい。
八幡「…周りの見方がどう変わったかは知らんけどな、俺はもともとこんな奴だぜ。これまで、青春とか恋愛とか縁はなかったしやり方も知らん。
ハッキリ言えば、外野がどう思おうと知ったこっちゃないし、訳のわからん空気なんてモノ最初から読むつもりもない」
429: 2012/05/04(金) 21:08:04.64
八幡「…けどな」
また激昂し、何か言い募ろうとした三浦を真っ直ぐな視線で黙らせた。
八幡「まぁ、俺がクズだってんならそうかもしれねぇけどさ。少なくとも、雪乃や結衣…奉仕部は………………」
しばしの静寂。咳払い。
八幡「…それなりに、特別なんだよ。俺にとってもな」
結衣「…ヒッキー」
また激昂し、何か言い募ろうとした三浦を真っ直ぐな視線で黙らせた。
八幡「まぁ、俺がクズだってんならそうかもしれねぇけどさ。少なくとも、雪乃や結衣…奉仕部は………………」
しばしの静寂。咳払い。
八幡「…それなりに、特別なんだよ。俺にとってもな」
結衣「…ヒッキー」
431: 2012/05/04(金) 22:22:19.54
八幡「…でもな、俺ら奉仕部のことについては、部外者のお前らにはわからないことだってあるんだよ。
…たとえば雪乃にとって、結衣がどんなに重要な存在か。こいつのお陰で、俺たちがどれほど…」
…救われたか。という後半の内容は口にしなかった。
結衣「ヒッキー……」
結衣の目が潤んでいる。
三浦も、海老名も、遠巻きに見ているクラスメートたちも無言。
…たとえば雪乃にとって、結衣がどんなに重要な存在か。こいつのお陰で、俺たちがどれほど…」
…救われたか。という後半の内容は口にしなかった。
結衣「ヒッキー……」
結衣の目が潤んでいる。
三浦も、海老名も、遠巻きに見ているクラスメートたちも無言。
432: 2012/05/04(金) 23:12:40.84
八幡「…結衣はアホの子だが」
結衣「…えっ」
八幡「…優しい奴なんだよ、本当に」
三浦「…フン、そんなの、あ-しらだって知ってるし」
海老名「…まぁまぁ、優美子」
むくれる三浦を、海老名がとりなす。結衣は、顔を真っ赤にして恥じらっている。
三浦は、結衣が優しいことくらい知っていると言った。しかし、それは恐らく、自分とは意味が違うだろうと八幡は思う。
安全地帯から、慈悲で恵まれる優しさではなく。弱いくせに、誰より孤立を恐れているくせに、ときに自分の立場を危険にさらしてまで、結衣は「優し」かった。
それは…
結衣「…えっ」
八幡「…優しい奴なんだよ、本当に」
三浦「…フン、そんなの、あ-しらだって知ってるし」
海老名「…まぁまぁ、優美子」
むくれる三浦を、海老名がとりなす。結衣は、顔を真っ赤にして恥じらっている。
三浦は、結衣が優しいことくらい知っていると言った。しかし、それは恐らく、自分とは意味が違うだろうと八幡は思う。
安全地帯から、慈悲で恵まれる優しさではなく。弱いくせに、誰より孤立を恐れているくせに、ときに自分の立場を危険にさらしてまで、結衣は「優し」かった。
それは…
433: 2012/05/05(土) 00:11:24.18
八幡「…じゃあ、雪乃が凄い奴だってのも、別にいまさら語る必要はないよな。雪乃は…「本物」だ。あいつほど強い人間を、俺は他に知らない。
…正直に言えば」
八幡は一旦、言葉を切った。ひとつ息を吐いて、懺悔するような口調で続ける。
八幡「…結衣も雪乃も、俺には眩し過ぎる。 どうしていいかわかんねぇ。
結衣と雪乃を信じられないんじゃない。俺は…」
…正直に言えば」
八幡は一旦、言葉を切った。ひとつ息を吐いて、懺悔するような口調で続ける。
八幡「…結衣も雪乃も、俺には眩し過ぎる。 どうしていいかわかんねぇ。
結衣と雪乃を信じられないんじゃない。俺は…」
434: 2012/05/05(土) 00:35:08.51
八幡「…俺自身の価値が信じられねぇんだよ。こいつらのことを尊敬はしても、好意を受けるような大それたことはした覚えがない。俺にとっちゃ俺が一番大事だが、これまでついてた市場価格はプライスレスだ。 たまたま河原に落ちてた石ころを、宝石と交換してくれって持ち掛けられたらどう思う? しかも相手が引き換えにするのは、差し出す宝石だけじゃないかもしれないんだぜ…」
435: 2012/05/05(土) 01:14:22.50
三浦「……………」
三浦はまだ何か言いたげだが、口をつぐんでいる。海老名は何か考え込んでいた。結衣は羞恥や悲哀、様々な感情の入り組んだ複雑な表情で八幡を見て、かける言葉を探している。川崎も、何やら痛ましそうな視線をこちらに向けていた。
八幡「…ま、不甲斐ないのは自覚してるけどな。態度を今すぐハッキリさせろって言うなら俺は…」
??「…もう、いいわ比企谷くん」
三浦はまだ何か言いたげだが、口をつぐんでいる。海老名は何か考え込んでいた。結衣は羞恥や悲哀、様々な感情の入り組んだ複雑な表情で八幡を見て、かける言葉を探している。川崎も、何やら痛ましそうな視線をこちらに向けていた。
八幡「…ま、不甲斐ないのは自覚してるけどな。態度を今すぐハッキリさせろって言うなら俺は…」
??「…もう、いいわ比企谷くん」
445: 2012/05/05(土) 22:04:09.07
三浦「…ッ 雪ノ下!」
結衣「ゆきのん…どうしてここに?」
八幡「…おい、ここF組の教室だぞ、雪乃」
いつの間にか、雪ノ下雪乃が八幡の背後に立っていた。
さらに教室の入り口をみると、他クラスの生徒まで集まってきている。
…おおおおい、待てよ、ちょっと待て。何なのこのギャラリーども?!
海老名「…あー、あはは… 雪ノ下さん、いつから聞いてたの?」
海老名が笑顔を引きつらせながら雪乃に問う。
雪乃「『ズバリ、二人はもう、付き合ってるの?』のあたりから聞こえてたわ」
ニッコリと笑いながら答える雪乃。
海老名「あー…そ、そうなんだ」
おい、ほぼ全部聞いてたのかよ…
結衣「ゆきのん…どうしてここに?」
八幡「…おい、ここF組の教室だぞ、雪乃」
いつの間にか、雪ノ下雪乃が八幡の背後に立っていた。
さらに教室の入り口をみると、他クラスの生徒まで集まってきている。
…おおおおい、待てよ、ちょっと待て。何なのこのギャラリーども?!
海老名「…あー、あはは… 雪ノ下さん、いつから聞いてたの?」
海老名が笑顔を引きつらせながら雪乃に問う。
雪乃「『ズバリ、二人はもう、付き合ってるの?』のあたりから聞こえてたわ」
ニッコリと笑いながら答える雪乃。
海老名「あー…そ、そうなんだ」
おい、ほぼ全部聞いてたのかよ…
446: 2012/05/05(土) 22:44:25.19
三浦「…………」
雪乃「…三浦さん、まだ何か言いたいことがあるの?」
敵意も露わに宿敵を睨みつける三浦を、雪乃は冷然と見下ろしている。
おい、頼むから喧嘩すんなよお前ら…
三浦「…あんた、どういうつもりよ」
雪乃「…質問の意味がよくわからないわね。はっきり言ってくれないかしら?」
三浦「…ヒキオにちょっかいだしてんのはどういうつもりかって聞いてんだけど」
雪乃「…部外者のあなたに答える筋合いはないわね」
三浦「……ッ、あんたね!」
結衣「優美子、やめてってば…」
雪乃「…でも、この際だからはっきりさせたほうがいいかもしれないわね。私は…」
八幡「…雪乃!!」
雪乃「…三浦さん、まだ何か言いたいことがあるの?」
敵意も露わに宿敵を睨みつける三浦を、雪乃は冷然と見下ろしている。
おい、頼むから喧嘩すんなよお前ら…
三浦「…あんた、どういうつもりよ」
雪乃「…質問の意味がよくわからないわね。はっきり言ってくれないかしら?」
三浦「…ヒキオにちょっかいだしてんのはどういうつもりかって聞いてんだけど」
雪乃「…部外者のあなたに答える筋合いはないわね」
三浦「……ッ、あんたね!」
結衣「優美子、やめてってば…」
雪乃「…でも、この際だからはっきりさせたほうがいいかもしれないわね。私は…」
八幡「…雪乃!!」
447: 2012/05/05(土) 22:57:00.71
雪乃「………」
八幡「…頼むから、ここは退いてくれ。三浦もだ」
結衣「ヒッキー…」
雪乃「…わかったわ」
三浦「…ふん。指図すんなっての」
八幡「…さすがにもう、いいだろ。行かせてくれ」
この日何度目になるかわからない溜息を吐き、椅子から立ち上がる。
八幡「…頼むから、ここは退いてくれ。三浦もだ」
結衣「ヒッキー…」
雪乃「…わかったわ」
三浦「…ふん。指図すんなっての」
八幡「…さすがにもう、いいだろ。行かせてくれ」
この日何度目になるかわからない溜息を吐き、椅子から立ち上がる。
448: 2012/05/05(土) 23:06:35.80
八幡「おい、そこのギャラリーども、見世物じゃねぇんだよ。散れ散れ」
見物人を威嚇しながら教室から出て行こうとする八幡に、結衣と雪乃も目を合わせてから無言で追随しようとするが
八幡「…悪い、しばらく一人にしてくれ」
といわれて立ち止まる。
教室と廊下の生徒たちが、道を開けた。
海老名「…比企谷くん」
八幡「………?」
立ち去る八幡の背中に、海老名が声をかける。返事はないが一瞬、歩みが止まった。
海老名「…優美子はああ言ってたけど。私は逆に、比企谷くんはもっと調子に乗るべきだと思う」
八幡「…そうかい。どーも」
一言つぶやくと、早足で歩き去る。その背を追うものはいなかった。
見物人を威嚇しながら教室から出て行こうとする八幡に、結衣と雪乃も目を合わせてから無言で追随しようとするが
八幡「…悪い、しばらく一人にしてくれ」
といわれて立ち止まる。
教室と廊下の生徒たちが、道を開けた。
海老名「…比企谷くん」
八幡「………?」
立ち去る八幡の背中に、海老名が声をかける。返事はないが一瞬、歩みが止まった。
海老名「…優美子はああ言ってたけど。私は逆に、比企谷くんはもっと調子に乗るべきだと思う」
八幡「…そうかい。どーも」
一言つぶやくと、早足で歩き去る。その背を追うものはいなかった。
449: 2012/05/05(土) 23:44:46.44
午後の授業中にも、しばしば好奇の視線やひそひそと噂されているのを感じたが、もう気にするのはやめることにした。
そら、噂もされるわ…自分が昼休みにやらかしたことを思い返して、今更ながら頭を抱える八幡。
すべてが煩わしい。頼むから、頼むから、どいつもこいつもこんな石ころのことなんて放っといてくれよ。
元のぼっちに戻りたい。分不相応にもほどがある。体質的に受け付けないんだって…
…たぶん、俺、根本的に恋愛とか向いてないんじゃねぇかな。いまさらだけど。
どんどん、ネガティブな方向に思考が向かう。
…そもそも、あいつら、俺のどこがいいってんだ? また、壮大な勘違いとか夢オチとかじゃないのかこれ…
そら、噂もされるわ…自分が昼休みにやらかしたことを思い返して、今更ながら頭を抱える八幡。
すべてが煩わしい。頼むから、頼むから、どいつもこいつもこんな石ころのことなんて放っといてくれよ。
元のぼっちに戻りたい。分不相応にもほどがある。体質的に受け付けないんだって…
…たぶん、俺、根本的に恋愛とか向いてないんじゃねぇかな。いまさらだけど。
どんどん、ネガティブな方向に思考が向かう。
…そもそも、あいつら、俺のどこがいいってんだ? また、壮大な勘違いとか夢オチとかじゃないのかこれ…
451: 2012/05/06(日) 00:18:51.21
結衣「…え? ええと…その…優しいところ、かな」
顔を赤らめながらはにかむ友人の反応をみて、八幡のどこが好きなのかを問うた海老名は苦笑する。
海老名「そっか……まぁ私は否定しないけど…」
彼のことを『優しい』って評価は少数派かもね。心の中でそう続ける。今、にわかに女生徒からの人気を集めている八幡だが
その評価は、容姿や「クールで格好いい」といったものが多い。
結衣「…ヒッキーは、人から誤解されやすいんだよ。それに、自分から人を遠ざけてるし…」
海老名「うん…確かにそうかも」
結衣「…あたしも、きっかけがなかったら、きっと気付かなかったと思う。サブレを入学式のときに助けてもらってから、ずっと、気になって目で追っかけてたの。ヒッキーは…」
顔を赤らめながらはにかむ友人の反応をみて、八幡のどこが好きなのかを問うた海老名は苦笑する。
海老名「そっか……まぁ私は否定しないけど…」
彼のことを『優しい』って評価は少数派かもね。心の中でそう続ける。今、にわかに女生徒からの人気を集めている八幡だが
その評価は、容姿や「クールで格好いい」といったものが多い。
結衣「…ヒッキーは、人から誤解されやすいんだよ。それに、自分から人を遠ざけてるし…」
海老名「うん…確かにそうかも」
結衣「…あたしも、きっかけがなかったら、きっと気付かなかったと思う。サブレを入学式のときに助けてもらってから、ずっと、気になって目で追っかけてたの。ヒッキーは…」
452: 2012/05/06(日) 00:41:48.61
結衣「…いつも他人を遠ざけようとしているし、口ではクズっぽいことばかり言ってるけど…本当はすごいお人好しなんだよ。なんだかんだで困っている人から頼られたら助けようとするし、いざとなったら自分から泥をかぶったり、危険を引き受けたりする。でも、人から言われたら、『好きなようにやってるだけだから感謝される筋合いじゃない』とか嫌がるけど」
海老名「んー…なんか、ツンデレっぽいね」
結衣「そうかも…攻略難度高すぎ」
二人で、あははと笑い合う。
海老名「…比企谷くんも、ユイのこと優しいって言ってたね。あたしも、そう思うよ。あんたたちは、どっちも優しい。だから、お互いの優しさが分かるのかもね」
結衣「ん…そ、そうかな」テレ
海老名「んー…なんか、ツンデレっぽいね」
結衣「そうかも…攻略難度高すぎ」
二人で、あははと笑い合う。
海老名「…比企谷くんも、ユイのこと優しいって言ってたね。あたしも、そう思うよ。あんたたちは、どっちも優しい。だから、お互いの優しさが分かるのかもね」
結衣「ん…そ、そうかな」テレ
453: 2012/05/06(日) 00:51:52.79
海老名「…雪ノ下さんも、同じなのかな?」
結衣「…ん、わかんないよ……」
海老名「なんていうか、彼女も敵ながらすごいね…火が付いたら、一直線のまっしぐらだもん。アウェーに単騎乗り込むなんて、三国志の武将みたいだよ…あそこで比企谷くんが止めなかったら、どうなってたんだろ」
結衣「…………敵、なのかな」
海老名「うーん…恋敵って意味では多分、そうじゃないかな。…ユイはどう思ってるの?」
結衣「………ん、恋敵……かもしれないけど…あたしは…」
結衣「…ん、わかんないよ……」
海老名「なんていうか、彼女も敵ながらすごいね…火が付いたら、一直線のまっしぐらだもん。アウェーに単騎乗り込むなんて、三国志の武将みたいだよ…あそこで比企谷くんが止めなかったら、どうなってたんだろ」
結衣「…………敵、なのかな」
海老名「うーん…恋敵って意味では多分、そうじゃないかな。…ユイはどう思ってるの?」
結衣「………ん、恋敵……かもしれないけど…あたしは…」
454: 2012/05/06(日) 00:57:28.09
三浦「……あんた、ヒキオのどこがいいの」
雪乃「…部外者に答える筋合いはないわ。さっきも言ったけれど」
三浦「…あーしほどじゃなくても、男なんて選び放題でしょ。 弱みでも握られてるのか、それともよっぽど趣味が悪いん…?!」
ほとんど凍り付くような視線と殺気を浴びせられて、嘲弄の言葉が途切れた。
雪乃「……あなたに言っても理解できるとは思えないけれど、ひとつだけ教えてあげるわ」
雪乃「…部外者に答える筋合いはないわ。さっきも言ったけれど」
三浦「…あーしほどじゃなくても、男なんて選び放題でしょ。 弱みでも握られてるのか、それともよっぽど趣味が悪いん…?!」
ほとんど凍り付くような視線と殺気を浴びせられて、嘲弄の言葉が途切れた。
雪乃「……あなたに言っても理解できるとは思えないけれど、ひとつだけ教えてあげるわ」
455: 2012/05/06(日) 01:10:32.51
雪乃「……彼は、確かに欠点も多いし、私もこれまでクズ呼ばわりしてきたけれど」
三浦「…………」
雪乃「ひとつ、信頼できる点がある。それは…彼は、比企谷八幡は、周囲にどう思われようと、
他人に迎合して自分の魂を売り渡したりはしない人間だということよ。
たとえ集団から孤立しようが納得できないルールは受け入れないし、泥の中を這いまわることになっても
自分の決めたルールに沿ってなら受け入れる。 彼は…そういう人間よ。愚昧ではあっても、意志のない人形ではないわ」
三浦「…………」
雪乃「ひとつ、信頼できる点がある。それは…彼は、比企谷八幡は、周囲にどう思われようと、
他人に迎合して自分の魂を売り渡したりはしない人間だということよ。
たとえ集団から孤立しようが納得できないルールは受け入れないし、泥の中を這いまわることになっても
自分の決めたルールに沿ってなら受け入れる。 彼は…そういう人間よ。愚昧ではあっても、意志のない人形ではないわ」
458: 2012/05/06(日) 19:02:23.19
三浦「は…何それ。意味わかんないし。買い被りじゃないの」
雪乃「…だから、話しても理解できないと言ったでしょう。いずれにせよ、他人のあなたには関係のない話よ」
三浦「…ユイの気持ちは知ってんでしょ。それも、関係ないってワケ?」
雪乃「……それ、は」
冷然と自分を見下ろす宿敵を憎々しげに睨みながら、三浦は雪乃を糾弾する。雪乃は、そこで初めて、声を詰まらせた。
雪乃「…だから、話しても理解できないと言ったでしょう。いずれにせよ、他人のあなたには関係のない話よ」
三浦「…ユイの気持ちは知ってんでしょ。それも、関係ないってワケ?」
雪乃「……それ、は」
冷然と自分を見下ろす宿敵を憎々しげに睨みながら、三浦は雪乃を糾弾する。雪乃は、そこで初めて、声を詰まらせた。
459: 2012/05/06(日) 19:33:59.62
「…今日は、受診の日だから。悪いけど、とりあえず準備は進めといてくれ」
八幡は、そう言って部活の不参加を告げた。方便ではなく、未だ記憶喪失のフォローのために週一回の通院を続けている。
一度来いと言われていたのを思い出し、下校前に職員室に顔を出すことにした。
八幡は、そう言って部活の不参加を告げた。方便ではなく、未だ記憶喪失のフォローのために週一回の通院を続けている。
一度来いと言われていたのを思い出し、下校前に職員室に顔を出すことにした。
462: 2012/05/06(日) 20:20:48.79
八幡「…ッス」
何やら話していた平塚と鶴見、それに小田原が一斉にこちらを見た。それに会釈を返し、職員室に入る。
八幡「…来ましたけど、なんの話っすか?」
平塚「ふむ、まぁ、少し手狭だから場所を変えようか。何、劇の台本とキャスティングの相談だよ」
職員室の隅にある、テ-ブルとソファに移動する。
鶴見「君には、主人公を演ってもらいます」
八幡「え…いきなり決定?! ボクできたら、村人Aとか路傍の木とかにしてもらいたいんスけど…」
夢を思い出し、顔を引き攣らせる八幡。
小田原「却下よ。このキャスティングだけは悪いけど動かないわ。今回の劇は奉仕部への依頼だし、男子の正式な奉仕部員は君だけでしょう? それに君は、今いろいろと注目の的だからね。話題性も充分だし」
八幡は、ニヤリと笑う前演劇部長を戦慄とともに見つめた。この女、今日のことを知って……?!
平塚「そうだな。それに、そもそもの言い出しっぺは君だ。潔く、責任をとりたまえ」
静がニヤリと笑いかける。どうやら、逃れる術はないらしい…
八幡「…わかった、わかりましたよチキショウ…」
何やら話していた平塚と鶴見、それに小田原が一斉にこちらを見た。それに会釈を返し、職員室に入る。
八幡「…来ましたけど、なんの話っすか?」
平塚「ふむ、まぁ、少し手狭だから場所を変えようか。何、劇の台本とキャスティングの相談だよ」
職員室の隅にある、テ-ブルとソファに移動する。
鶴見「君には、主人公を演ってもらいます」
八幡「え…いきなり決定?! ボクできたら、村人Aとか路傍の木とかにしてもらいたいんスけど…」
夢を思い出し、顔を引き攣らせる八幡。
小田原「却下よ。このキャスティングだけは悪いけど動かないわ。今回の劇は奉仕部への依頼だし、男子の正式な奉仕部員は君だけでしょう? それに君は、今いろいろと注目の的だからね。話題性も充分だし」
八幡は、ニヤリと笑う前演劇部長を戦慄とともに見つめた。この女、今日のことを知って……?!
平塚「そうだな。それに、そもそもの言い出しっぺは君だ。潔く、責任をとりたまえ」
静がニヤリと笑いかける。どうやら、逃れる術はないらしい…
八幡「…わかった、わかりましたよチキショウ…」
463: 2012/05/06(日) 20:37:58.20
渡された台本をペラペラとめくる。美女と野獣。
平塚「何、難しく考えるな。なかなか適役だと思うぞ」
八幡「人事だと思って…」
くっくっと笑う顧問にジト目を向ける。
八幡「…それで、他のキャストは?」
あれは夢だ。まさか、材木座がヒロインてこともなかろう…
鶴見「ヒロインに部長の雪ノ下さん、ヒロインの父親が由比ヶ浜さん、あとは、助っ人の子たちから考えてるわ」
八幡「…そうですか」
平塚「何、難しく考えるな。なかなか適役だと思うぞ」
八幡「人事だと思って…」
くっくっと笑う顧問にジト目を向ける。
八幡「…それで、他のキャストは?」
あれは夢だ。まさか、材木座がヒロインてこともなかろう…
鶴見「ヒロインに部長の雪ノ下さん、ヒロインの父親が由比ヶ浜さん、あとは、助っ人の子たちから考えてるわ」
八幡「…そうですか」
464: 2012/05/06(日) 21:00:17.50
部長がヒロイン、唯一の男子が主人公、というキャスティングなら文句は出にくいだろう。それに事前に役を決めて貰っていたほうが、揉めずに済むかもしれない。今の雪乃なら、ヒロインの演技にも不安はない。
…とにかく、これ以上人間関係がギクシャクすれのはゴメンだ。三角関係なんて、まったく冗談じゃ……
…そういえば、辞めた演劇部員たちも三角関係でおかしくなったって言ってたな。
チラッと小田原の方をみる。噂は真実なのだろうか?
…とにかく、これ以上人間関係がギクシャクすれのはゴメンだ。三角関係なんて、まったく冗談じゃ……
…そういえば、辞めた演劇部員たちも三角関係でおかしくなったって言ってたな。
チラッと小田原の方をみる。噂は真実なのだろうか?
465: 2012/05/06(日) 21:07:50.75
…すんません。やはり、今日完結は無理かも(^-^;
なんかまだ、思ったより先に話がいきそうなんです。何人かほぼオリのサブキャラもでる予定ですし…あくまでモブですが。
しばらく、最終的にはゆきのんル-ト回収方向でシリアス路線が続きます。しんどくならないよう、合間にギャグも挟むようにしますが、感想や要望あればできる範囲でとりいれていきます、よろしくお願いします。
なんかまだ、思ったより先に話がいきそうなんです。何人かほぼオリのサブキャラもでる予定ですし…あくまでモブですが。
しばらく、最終的にはゆきのんル-ト回収方向でシリアス路線が続きます。しんどくならないよう、合間にギャグも挟むようにしますが、感想や要望あればできる範囲でとりいれていきます、よろしくお願いします。
466: 2012/05/06(日) 21:26:47.19
視線に気づき、訝しむ小田原に 何でもないですと手を振る。まぁ、他人のことはどうでもいい。同じ轍を踏むのだけは避けたいが。
台本は受けとり、予定どおり下校する。途中、戸塚と顔を合わせた。奉仕部の部室に呼ばれているのだという。夜に電話で話をする約束をし、校舎を出た。
台本は受けとり、予定どおり下校する。途中、戸塚と顔を合わせた。奉仕部の部室に呼ばれているのだという。夜に電話で話をする約束をし、校舎を出た。
471: 2012/05/07(月) 00:33:58.24
診察を終えて外に出ると、すでに月が出ていた。
経過には大きな問題はない。今、頭を悩ませているいろいろなイロイロは、医学的な問題とは関係ない事柄だ。医者に話しても、どうなるものでもない…しつこく聞き出されたけど。
…にしても、主治医…厚木という女医…がやたらと、学校内のことに詳しかったんだが、どこかにスパイでもいるのか?…まさかな。
いつか、雪乃と遭遇した交差点。さすがに今日はいないだろう。
信号を待ちながら、月を見上げる。今日は、ずいぶん綺麗に見えた。 優しく淡い光が心を癒してくれるようで、手を伸ばせば、触れられそうな気さえする。
…わかっている。もちろん、錯覚だ。
月は、ただ太陽の光を反射しているだけで、自ら輝いたりはしていない。手を伸ばしても、追いかけても決して38万㌔の距離には届かない。
手を伸ばして、背伸びして、ジャンプしても決して手にはいらず。しまいに転んで泣きわめく。
そんな子供も、時が経てば道理を知り、自分が愚かで未熟だったと苦笑しながら理解するのだ。
……あのときの自分も、思えばそんな子供と一緒だった。
経過には大きな問題はない。今、頭を悩ませているいろいろなイロイロは、医学的な問題とは関係ない事柄だ。医者に話しても、どうなるものでもない…しつこく聞き出されたけど。
…にしても、主治医…厚木という女医…がやたらと、学校内のことに詳しかったんだが、どこかにスパイでもいるのか?…まさかな。
いつか、雪乃と遭遇した交差点。さすがに今日はいないだろう。
信号を待ちながら、月を見上げる。今日は、ずいぶん綺麗に見えた。 優しく淡い光が心を癒してくれるようで、手を伸ばせば、触れられそうな気さえする。
…わかっている。もちろん、錯覚だ。
月は、ただ太陽の光を反射しているだけで、自ら輝いたりはしていない。手を伸ばしても、追いかけても決して38万㌔の距離には届かない。
手を伸ばして、背伸びして、ジャンプしても決して手にはいらず。しまいに転んで泣きわめく。
そんな子供も、時が経てば道理を知り、自分が愚かで未熟だったと苦笑しながら理解するのだ。
……あのときの自分も、思えばそんな子供と一緒だった。
472: 2012/05/07(月) 00:56:26.81
脳裏を掠める、淡く苦い思い出。優しい、女の子だった。勘違い。告白。「友達じゃ、だめかなぁ?」 その後は、卒業まで口を利かなかった。今頃は、どうしているか…
気付くと、信号はもう変わっていた。チィ、つまらんことを思い出しちまったクソ! 早足で横断歩道を渡る。
気付くと、信号はもう変わっていた。チィ、つまらんことを思い出しちまったクソ! 早足で横断歩道を渡る。
478: 2012/05/08(火) 00:15:09.23
八幡「…まだちょっと時間があるな」
少し寄り道をするのもいいかもしれない。TSUTA●Aに寄っていくことにした。
劇の役作りのために、DVDでも探してみよう。
ディズニーの「美女と野獣」…あった。なんか、あと1本しかないけど。スペシャル・リミテッド・エディション。
サイドストーリーのDVDもあんのな…これは知らなかった。最後に本編見たのは何年前だったっけなぁ…
せっかくなので、ほかのDVDも借りることにした今日は懐かしモノの作品でまとめてみるか。
「STAND BY ME」スティーブン・キング原作 ロブ・ライナー監督
あとアニメもなんか借りるか…
少し寄り道をするのもいいかもしれない。TSUTA●Aに寄っていくことにした。
劇の役作りのために、DVDでも探してみよう。
ディズニーの「美女と野獣」…あった。なんか、あと1本しかないけど。スペシャル・リミテッド・エディション。
サイドストーリーのDVDもあんのな…これは知らなかった。最後に本編見たのは何年前だったっけなぁ…
せっかくなので、ほかのDVDも借りることにした今日は懐かしモノの作品でまとめてみるか。
「STAND BY ME」スティーブン・キング原作 ロブ・ライナー監督
あとアニメもなんか借りるか…
479: 2012/05/08(火) 00:25:17.28
ディズニーもいいけどやっぱりアニメは日本。7泊8日の旧作コーナーを物色していると、見知った顔があった。
材木座「…お?」
八幡「…げっ」
しまった。目が合った上に反応してしまった。
材木座「はっはっはっはっはっ八幡ではないか!」
やめろ、這い寄ってくんな。あと声がでけぇ。名前を呼ぶな。
某LOVEるをまとめ借りしようとしてる奴と知り合いだと思われたくねぇ。
いや、矢●先生は偉大ですけどね。
八幡「い、いや人違いで…」
顔を隠して逃げようとしたが、忽ち追いつかれる。
材木座「こんなところで会うとは奇遇だな八幡! ぬ、どうしたのだ八幡! どこへいくというのだ八幡!」
材木座「…お?」
八幡「…げっ」
しまった。目が合った上に反応してしまった。
材木座「はっはっはっはっはっ八幡ではないか!」
やめろ、這い寄ってくんな。あと声がでけぇ。名前を呼ぶな。
某LOVEるをまとめ借りしようとしてる奴と知り合いだと思われたくねぇ。
いや、矢●先生は偉大ですけどね。
八幡「い、いや人違いで…」
顔を隠して逃げようとしたが、忽ち追いつかれる。
材木座「こんなところで会うとは奇遇だな八幡! ぬ、どうしたのだ八幡! どこへいくというのだ八幡!」
480: 2012/05/08(火) 00:35:29.51
八幡「…うるせぇぇ!! 人の名前連呼してんじゃねぇ!!」
材木座「ぬふぅ、やはり貴様ではないか」
ああ…ここでも注目を集めてる。しかも悪い意味で。何て日だ畜生。もういいやさっさと借りて出よう。
材木座を無視してレジへ向かうが、当然のように後ろについてきた。オイ、なんでパッケージごと持ってきてんだよ。
旧作値引き中だからって某LOVEるに加えてかの●んもかよ! どんだけだお前!
材木座「ぬふぅ、やはり貴様ではないか」
ああ…ここでも注目を集めてる。しかも悪い意味で。何て日だ畜生。もういいやさっさと借りて出よう。
材木座を無視してレジへ向かうが、当然のように後ろについてきた。オイ、なんでパッケージごと持ってきてんだよ。
旧作値引き中だからって某LOVEるに加えてかの●んもかよ! どんだけだお前!
481: 2012/05/08(火) 00:43:01.50
八幡「…どこまでついてくる気だお前…もう、帰るんだが」
桃鉄の貧乏神のようにTSUTAY●から出てもついてくる材木座にうんざりしながら声をかける。
材木座「貴様と我の仲ではないか、つれないことを言うな。どうせ方向は同じであろうが」
真剣に、遠回りで帰ることを検討していると、携帯電話が鳴る。表示は…小町からだ。
八幡「おう、もしもし?」
桃鉄の貧乏神のようにTSUTAY●から出てもついてくる材木座にうんざりしながら声をかける。
材木座「貴様と我の仲ではないか、つれないことを言うな。どうせ方向は同じであろうが」
真剣に、遠回りで帰ることを検討していると、携帯電話が鳴る。表示は…小町からだ。
八幡「おう、もしもし?」
482: 2012/05/08(火) 00:50:03.12
小町「あ、お兄ちゃん? 今どこ?」
八幡「まだ●●駅の近くだが…どうした?」
小町「実はね…」
何でも、両親の仕事の都合で帰りが今日は遅くなるため、食事は二人で外食してくるように言われたそうだ。
八幡「んー、そっか…じゃあ、お前もこっちに来るか?」
小町「行く行くー♪ どこで食べる?」
八幡「つっても、夕食代はあとで貰うにしても手持ちがそんなねぇからな…サイゼでいいか?」
小町「いいよー、じゃあ、直接いくから、先に場所とっといて!」
八幡「OK、んじゃまた、後でな」ピッ
八幡「まだ●●駅の近くだが…どうした?」
小町「実はね…」
何でも、両親の仕事の都合で帰りが今日は遅くなるため、食事は二人で外食してくるように言われたそうだ。
八幡「んー、そっか…じゃあ、お前もこっちに来るか?」
小町「行く行くー♪ どこで食べる?」
八幡「つっても、夕食代はあとで貰うにしても手持ちがそんなねぇからな…サイゼでいいか?」
小町「いいよー、じゃあ、直接いくから、先に場所とっといて!」
八幡「OK、んじゃまた、後でな」ピッ
483: 2012/05/08(火) 00:54:29.43
八幡「…つぅわけでだ、予定が変わった。ここでお別れだな」
材木座のほうを振り向いて告げる。
材木座「くっくっくっく…八幡、いや、ここは敢えて兄上と呼ぼう」
八幡「断る。とっとと帰れ。つか、氏ね」
材木座「…まだ何も言っていないのだが」
材木座のほうを振り向いて告げる。
材木座「くっくっくっく…八幡、いや、ここは敢えて兄上と呼ぼう」
八幡「断る。とっとと帰れ。つか、氏ね」
材木座「…まだ何も言っていないのだが」
484: 2012/05/08(火) 01:08:27.57
数分後
八幡「ええい鬱陶しい! 放せ! なんで兄妹水入らずの外食にお前を招かなきゃいけねぇんだよ!」
材木座「たーのーむーよーハチえもーん!!」
駅前で服の裾をつかんで駄々をこねる同級生(イメージアニマル:熊。意外にも豚ではない)を持てあます。
ひたすらにウザい。またなんかギャラリーが遠巻きに集まってきたし…ド畜生、人目がなければ道路に突き飛ばしてやるのに。
八幡は、この日ほんとうに何度目になるかわからない大きな溜息を吐いた。
八幡「…わかった、ただし条件がある」
材木座「ぶひ?」
八幡「お前だけ来るのはさすがにNGだ。戸塚にも連絡を取ってみるから、戸塚もOKなら考える」
材木座「うむ、よきにはからえ」
八幡「なんで上から目線だ…あと、これだけは覚えとけよ。小町になんかしたら、ホ ン ト に 殺 す ぞ」
材木座「…お、おう」
八幡「ええい鬱陶しい! 放せ! なんで兄妹水入らずの外食にお前を招かなきゃいけねぇんだよ!」
材木座「たーのーむーよーハチえもーん!!」
駅前で服の裾をつかんで駄々をこねる同級生(イメージアニマル:熊。意外にも豚ではない)を持てあます。
ひたすらにウザい。またなんかギャラリーが遠巻きに集まってきたし…ド畜生、人目がなければ道路に突き飛ばしてやるのに。
八幡は、この日ほんとうに何度目になるかわからない大きな溜息を吐いた。
八幡「…わかった、ただし条件がある」
材木座「ぶひ?」
八幡「お前だけ来るのはさすがにNGだ。戸塚にも連絡を取ってみるから、戸塚もOKなら考える」
材木座「うむ、よきにはからえ」
八幡「なんで上から目線だ…あと、これだけは覚えとけよ。小町になんかしたら、ホ ン ト に 殺 す ぞ」
材木座「…お、おう」
490: 2012/05/09(水) 23:25:34.77
戸塚「うん、いいよ。現地集合でいい?」
八幡「急な呼び出しでスマン!」
戸塚「あはは、気にしないでいいってば。劇のこととかも相談しないといけないし、小町ちゃんに会えるのも楽しみだし」
八幡「ああ、じゃ、また後で」
どうやら来られるらしい。戸塚だけならなぁ……
小躍りしているお邪魔虫をジト目で見るが、気付く様子はない。
小町にも連絡しないと…
八幡「あ、小町か? 実はな…」
八幡「急な呼び出しでスマン!」
戸塚「あはは、気にしないでいいってば。劇のこととかも相談しないといけないし、小町ちゃんに会えるのも楽しみだし」
八幡「ああ、じゃ、また後で」
どうやら来られるらしい。戸塚だけならなぁ……
小躍りしているお邪魔虫をジト目で見るが、気付く様子はない。
小町にも連絡しないと…
八幡「あ、小町か? 実はな…」
491: 2012/05/09(水) 23:32:07.97
小町も、戸塚が来ると聞いて、無邪気に喜んでいた。 なんかコイツら、仲いいな…
目的地のサイゼはすぐ近く。どうやら近隣の高校生の溜まり場になっているらしく、同年代の姿がちらほら見える。
幸い、前のグループと入れ替わりですぐに四人席を確保できた。とりあえずドリンクバーを二つ注文し、 ほか二人の到着を待つ。
目的地のサイゼはすぐ近く。どうやら近隣の高校生の溜まり場になっているらしく、同年代の姿がちらほら見える。
幸い、前のグループと入れ替わりですぐに四人席を確保できた。とりあえずドリンクバーを二つ注文し、 ほか二人の到着を待つ。
492: 2012/05/09(水) 23:42:42.82
材木座「ぬふぅ、ドリンクはどうする?」
八幡「任せるから、お前なんか適当に持ってきてくれ。てかむしろ、せめてそんくらい働けこの野郎」
材木座「ふん…まあよかろう。我の広大な度量に感謝するのだな」
八幡「……2、3、5、7、11」ビキビキ
八幡が素数を数えて殺意を押さえている間に、材木座が席を離れる。
気を落ち着けて、時間つぶしに学校で受け取った台本を取り出し、パラパラめくる。 主役だけあって覚える台詞もかなり多い。こりゃ骨が折れそうだな…
八幡「任せるから、お前なんか適当に持ってきてくれ。てかむしろ、せめてそんくらい働けこの野郎」
材木座「ふん…まあよかろう。我の広大な度量に感謝するのだな」
八幡「……2、3、5、7、11」ビキビキ
八幡が素数を数えて殺意を押さえている間に、材木座が席を離れる。
気を落ち着けて、時間つぶしに学校で受け取った台本を取り出し、パラパラめくる。 主役だけあって覚える台詞もかなり多い。こりゃ骨が折れそうだな…
493: 2012/05/10(木) 00:27:21.73
材木座「ぬ、それは台本か。我も持ってる」ハイ
八幡「お前も? …ああ、お前も今日のミ-ティング来てたのか…一応サンキュ」
戻ってきた材木座から、コ-ヒ-らしい飲み物の入ったコップを受け取る。
材木座「然り。我の役柄は、お城の仲間たちその1よ。いささか我には役不足ではあるがな…」
八幡「…役不足の用例として誤用ではない、だと…」
密かに戦慄する。まぁ、本人の意図はともかく内容はおこがましいが。
八幡「お前も? …ああ、お前も今日のミ-ティング来てたのか…一応サンキュ」
戻ってきた材木座から、コ-ヒ-らしい飲み物の入ったコップを受け取る。
材木座「然り。我の役柄は、お城の仲間たちその1よ。いささか我には役不足ではあるがな…」
八幡「…役不足の用例として誤用ではない、だと…」
密かに戦慄する。まぁ、本人の意図はともかく内容はおこがましいが。
494: 2012/05/10(木) 00:34:31.91
八幡「…じゃせっかくだから、今あるんならお前も台本だせよ。そういや、戸塚の役は知ってるか?」
材木座「うむ、確か戸塚氏もお城の仲間だったはずだ。我らが同輩よ」ゴソゴソ
八幡「そうか…これこそ役不足だよな。ヒロインも余裕の人材だというのに」
むしろ、誰より似合いそうだ。
材木座「うむ、確か戸塚氏もお城の仲間だったはずだ。我らが同輩よ」ゴソゴソ
八幡「そうか…これこそ役不足だよな。ヒロインも余裕の人材だというのに」
むしろ、誰より似合いそうだ。
495: 2012/05/10(木) 23:29:45.62
八幡「…………」
ペラ…ペラ…
しばらく無言でページをめくる。周囲の喧騒も意識から遮断。材木座は何やらごそごそやっている。
基本的には、アニメの「美女と野獣」を下敷きにしたそのままの筋書きだ。まさに王道のラブストーリー。
…改めて、「美女と野獣」のストーリーに思いをはせる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E5%A5%B3%E3%81%A8%E9%87%8E%E7%8D%A3_%28%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E6%98%A0%E7%94%BB%29
ふん…「真実の愛」か。わざわざ姿を怪物に変えておいてからこんな条件を出すとは、無茶振りにもほどがあるよな …改めて自分が演じる立場で考えると。
外見がバケモノの時点で、人間とまともなコミュニケーションができる可能性すらほとんどない。
初期設定の時点でほとんど詰んでるじゃねぇか、何というクソゲー。 いや、これこそが人生か…
ペラ…ペラ…
しばらく無言でページをめくる。周囲の喧騒も意識から遮断。材木座は何やらごそごそやっている。
基本的には、アニメの「美女と野獣」を下敷きにしたそのままの筋書きだ。まさに王道のラブストーリー。
…改めて、「美女と野獣」のストーリーに思いをはせる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E5%A5%B3%E3%81%A8%E9%87%8E%E7%8D%A3_%28%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E6%98%A0%E7%94%BB%29
ふん…「真実の愛」か。わざわざ姿を怪物に変えておいてからこんな条件を出すとは、無茶振りにもほどがあるよな …改めて自分が演じる立場で考えると。
外見がバケモノの時点で、人間とまともなコミュニケーションができる可能性すらほとんどない。
初期設定の時点でほとんど詰んでるじゃねぇか、何というクソゲー。 いや、これこそが人生か…
496: 2012/05/10(木) 23:38:54.69
この魔女は、最初から野獣を人間に戻すつもりがなかったとしか思えない。最初から呪いを解除不能にするのではなく、クリア不可能な条件を課したのは、より苦しめ絶望させるためではないか。
…どんだけ恨みを買ってんだよ。いったい、魔女に何をしたんだ元王子(現野獣)
八幡「…そういや、魔女役は誰なんだ?」
材木座「んむ? 特別出演で平塚先生が演じるらしいぞ」
八幡「…ああ、なるほど」
わかった。多分、年齢の話題でも出したんだなきっと…
…どんだけ恨みを買ってんだよ。いったい、魔女に何をしたんだ元王子(現野獣)
八幡「…そういや、魔女役は誰なんだ?」
材木座「んむ? 特別出演で平塚先生が演じるらしいぞ」
八幡「…ああ、なるほど」
わかった。多分、年齢の話題でも出したんだなきっと…
497: 2012/05/11(金) 00:58:30.75
八幡「…なんか、頭痛がしてきたぜ」
台本を閉じる。演じる立場で改めてストーリーを読み返すと、いろいろ余計なことを考えてしまう。
野獣の絶望感への共感と、ご都合主義な展開を嗤う気持ちと、その反対の憧れの気持ちと。
…もし、醜い姿のままでも愛してくれるひとが現れたなら。変わることができるのだろうか?
…アホらしい。これはおとぎ話だっての
台本を閉じる。演じる立場で改めてストーリーを読み返すと、いろいろ余計なことを考えてしまう。
野獣の絶望感への共感と、ご都合主義な展開を嗤う気持ちと、その反対の憧れの気持ちと。
…もし、醜い姿のままでも愛してくれるひとが現れたなら。変わることができるのだろうか?
…アホらしい。これはおとぎ話だっての
498: 2012/05/11(金) 01:12:22.16
材木座「ふむ、温くなる前に、我の持ってきたコーヒーをのむがよい」
八幡「おお、そうだった。たまには気が利く…ぶふぅ?!」
勧められるままに珈琲を口に含んだ次の瞬間、吐き出す。
八幡「…げほげほ! なんじゃこりゃあ?!」
明らかに異常な味がした。そしてここのところ、コーヒーを吹き出しすぎである。
材木座「ふはははは、お気に召さなかったか…八幡、もしかして珈琲にはタバスコ入れない派?」
テーブル備え付けのタバスコを片手にゲラゲラ笑う材木座。
八幡「てめぇ、なんかごそごそしてると思ったら! どこの国のコーヒーにタバスコがはいってるんだよ! もうマジで頃す!!」
珈琲に練乳が入っている県なら日本の関東地方にあるが。いったい、どういう状況でそんな発想に至ったのだろう。
材木座は攻撃を読んでいたらしくゲラゲラ笑いながら八幡の手をすり抜けて脱出した。ドリンクバーの向こうで、ちらちらこちらを伺っている。
いちいち追いかけるのもめんどくせぇ…ウザいという点に関しては、他の追随をゆるさないキャラである。
八幡「おお、そうだった。たまには気が利く…ぶふぅ?!」
勧められるままに珈琲を口に含んだ次の瞬間、吐き出す。
八幡「…げほげほ! なんじゃこりゃあ?!」
明らかに異常な味がした。そしてここのところ、コーヒーを吹き出しすぎである。
材木座「ふはははは、お気に召さなかったか…八幡、もしかして珈琲にはタバスコ入れない派?」
テーブル備え付けのタバスコを片手にゲラゲラ笑う材木座。
八幡「てめぇ、なんかごそごそしてると思ったら! どこの国のコーヒーにタバスコがはいってるんだよ! もうマジで頃す!!」
珈琲に練乳が入っている県なら日本の関東地方にあるが。いったい、どういう状況でそんな発想に至ったのだろう。
材木座は攻撃を読んでいたらしくゲラゲラ笑いながら八幡の手をすり抜けて脱出した。ドリンクバーの向こうで、ちらちらこちらを伺っている。
いちいち追いかけるのもめんどくせぇ…ウザいという点に関しては、他の追随をゆるさないキャラである。
499: 2012/05/11(金) 01:18:08.20
もはや、無視することにした。材木座の荷物も、席から放り出す。
やり過ぎたとわかったのか卑屈にもみ手をしながら戻ってこようとする材木座を目で威嚇する。
そうしていると、入り口から声が聞こえてきた。
店員「申し訳ありません、席が埋まっておりまして…」
??「えー。なんとかならない? ほら、あそこの席空いてるじゃない」
やり過ぎたとわかったのか卑屈にもみ手をしながら戻ってこようとする材木座を目で威嚇する。
そうしていると、入り口から声が聞こえてきた。
店員「申し訳ありません、席が埋まっておりまして…」
??「えー。なんとかならない? ほら、あそこの席空いてるじゃない」
507: 2012/05/14(月) 01:38:18.77
顔を向けると、近隣の高校の制服をきた女子高生の3人組が入り口で店員と話している。
先ほどの声の主が指差しているのは…オイ、このテーブルだよ。なんか、近づいてきた。
??「あの、すいません。ちょっとよろしいですか?」ニコ
先ほどの声の主が指差しているのは…オイ、このテーブルだよ。なんか、近づいてきた。
??「あの、すいません。ちょっとよろしいですか?」ニコ
508: 2012/05/14(月) 01:59:21.67
目の前に立っている、同年代の女生徒に話しかけられる。結構、可愛い顔立ちだが面識は…多分、ない。
八幡「…ん、えーと、俺?」
以前は、女子に話しかけられることなど皆無であったため、思わず左右を見て確認してしまう。
女生徒A「はい、そうです、その制服、総武高のですよね? カッコイイ! …実はあたしたち、3人でご飯を食べに来たんだけど席が埋まってて… よかったら、相席お願いできませんか?」
手を合わせらてたのまれる。 …まいったな。頭を掻きながら溜息。
八幡「…あー、いや、悪いんだけどさ」
待ち合わせしてるから…と続けようとしたところで
??「そうだよ、山下さん… ほかの店にいくか、おとなしく待ちましょう?」
その声の方向に視線を向け、動きが止まった。
…放課後、二人きりの教室。傾いた日差し。今でも思い出すあの声。
『友達じゃダメかなぁ?』
八幡「…ん、えーと、俺?」
以前は、女子に話しかけられることなど皆無であったため、思わず左右を見て確認してしまう。
女生徒A「はい、そうです、その制服、総武高のですよね? カッコイイ! …実はあたしたち、3人でご飯を食べに来たんだけど席が埋まってて… よかったら、相席お願いできませんか?」
手を合わせらてたのまれる。 …まいったな。頭を掻きながら溜息。
八幡「…あー、いや、悪いんだけどさ」
待ち合わせしてるから…と続けようとしたところで
??「そうだよ、山下さん… ほかの店にいくか、おとなしく待ちましょう?」
その声の方向に視線を向け、動きが止まった。
…放課後、二人きりの教室。傾いた日差し。今でも思い出すあの声。
『友達じゃダメかなぁ?』
512: 2012/05/15(火) 01:37:50.80
目が合った。数秒の沈黙。彼女の表情の変化を見た。 見覚えがある、誰だっけ…? という疑問の表情。思い至った理解の表情。驚愕。ひきつった顔は嫌悪と恐怖からか。それを作り笑いで覆い隠そうとする努力。
見てしまった。見たくなかった。できれば。
「あ…ひさしぶり…だね。こんなところで会うなんて偶然…」
目を微妙にそらしながら彼女が言う。
八幡「……ああ、そうだな」
再会の味はとってもビター。
山下「ん、なになに? かおり、この人と知り合いだったの?」
かおり「あ…うん…中学の、同級生…」
見てしまった。見たくなかった。できれば。
「あ…ひさしぶり…だね。こんなところで会うなんて偶然…」
目を微妙にそらしながら彼女が言う。
八幡「……ああ、そうだな」
再会の味はとってもビター。
山下「ん、なになに? かおり、この人と知り合いだったの?」
かおり「あ…うん…中学の、同級生…」
513: 2012/05/15(火) 01:47:00.38
山下「へぇ、ホントにすごい偶然だね! ねぇねぇ、せっかくだから紹介してよ! あ、私、この娘の高校の同級生で、山下っていいます。あっちは島村です」ニコニコ
しまった、断るタイミングを逸した。いつのまにかテーブルが占拠されている。山下さんは、さっきの表情やかおりの微妙な態度には気付いていないようだ。
かおり「…あ、うん。ええと…」
しまった、断るタイミングを逸した。いつのまにかテーブルが占拠されている。山下さんは、さっきの表情やかおりの微妙な態度には気付いていないようだ。
かおり「…あ、うん。ええと…」
515: 2012/05/15(火) 02:20:11.06
おまけ 次回作 予告編
5年前、一人の同級生の女の子を救った。そしてその後、一人の年上の女の子に救われた。
「…小学生時代の、2つの出会いが今の俺を作ったと思っている。一人は、雪ノ下 雪乃。一度縁が途切れて…この総武高でまた、つながった幼馴染。
もう一人は、平塚 静。 俺の恩人で…師匠だ」
総武高校奉仕部初代部長 元ボクシング部 比企谷 八幡
『おれのことは、わすれていい。おまえは新しい友達と、仲良くやれ』
「『泣いた赤鬼』の童話…やさしい青鬼はその後、いったい、どこに行ったのかしらね…」
総武高校現生徒会長 雪ノ下 雪乃
『好きなら、なんで、守ってやらないんだよ! そんなに自分がいい子でいたいか!』
『………!!』
拳よりも、その言葉が胸に突き刺さった。
「…君にまた会いたいとずっと思っていたのは会長だけじゃない。俺もだ比企谷くん!」
総武高校生徒会副会長 ボクシング部所属 葉山 隼人
『…そんなところで泣いていないで、よかったら私とキャッチボールでもしないか? 少年』
『え…おねえさん、だれだ?』
「こんなところで何をしている、このバカ弟子!!」
総武高校 新人教師 奉仕部顧問 平塚静
「もしも八幡が小学生時代に、雪乃、平塚先生と出会っていたら」
間違っている青春ラブコメが間違って間違っていない青春ラブコメが始まります。
この話が完結したあとでな!! (つまりずっと先)
続・八幡「ぼくはきれいな八幡」雪乃「」(2)
5年前、一人の同級生の女の子を救った。そしてその後、一人の年上の女の子に救われた。
「…小学生時代の、2つの出会いが今の俺を作ったと思っている。一人は、雪ノ下 雪乃。一度縁が途切れて…この総武高でまた、つながった幼馴染。
もう一人は、平塚 静。 俺の恩人で…師匠だ」
総武高校奉仕部初代部長 元ボクシング部 比企谷 八幡
『おれのことは、わすれていい。おまえは新しい友達と、仲良くやれ』
「『泣いた赤鬼』の童話…やさしい青鬼はその後、いったい、どこに行ったのかしらね…」
総武高校現生徒会長 雪ノ下 雪乃
『好きなら、なんで、守ってやらないんだよ! そんなに自分がいい子でいたいか!』
『………!!』
拳よりも、その言葉が胸に突き刺さった。
「…君にまた会いたいとずっと思っていたのは会長だけじゃない。俺もだ比企谷くん!」
総武高校生徒会副会長 ボクシング部所属 葉山 隼人
『…そんなところで泣いていないで、よかったら私とキャッチボールでもしないか? 少年』
『え…おねえさん、だれだ?』
「こんなところで何をしている、このバカ弟子!!」
総武高校 新人教師 奉仕部顧問 平塚静
「もしも八幡が小学生時代に、雪乃、平塚先生と出会っていたら」
間違っている青春ラブコメが間違って間違っていない青春ラブコメが始まります。
この話が完結したあとでな!! (つまりずっと先)
続・八幡「ぼくはきれいな八幡」雪乃「」(2)
引用元: 続・八幡「ぼくはきれいな八幡」雪乃「」
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