1: 2017/03/20(月) 23:01:21.822
<豪邸>

メイド「ご主人様、コーヒーです!」

主人「……ありがとう」

主人「ん……ちょっとぬるすぎるな」

メイド「あっ……す、すみませんっ!」

主人「やれやれ」

プルルルル…

主人「私だ」

主人「ふむ、密輸組織のアジトが割れたか。分かった……すぐに殺らせよう」

主人「やれやれ、今月は依頼が多いな」

主人「すまないが、私の部下達の招集を頼む」

メイド「分かりました!」



メイド(私のご主人様は、やれやれが口癖のやれやれ系なんです!)

3: 2017/03/20(月) 23:04:27.816
狙撃手「参上しました」

ナイフ使い「ちわっす!」

ガスマスク「…………」シュコー…

主人「よく集まってくれた」

主人「例の密輸組織のアジトがついに判明した」

主人「武器兵器や禁止薬物、希少動物、挙げ句の果てに少年少女まで売買している連中だ」

主人「紛れもなく世界の害虫だが、逮捕したところで大した罪には問えん。よって……」

主人「一人残らず……殺れ」

狙撃手「分かりました」

ナイフ使い「任せて下さい!」

ガスマスク「了解……」シュコー…



メイド(そして、ご主人様は……殺れ殺れ系でもあるんです!)

4: 2017/03/20(月) 23:07:08.055
<密輸組織アジト>

狙撃手「いつもの通りだ」

狙撃手「ガスで奴らをいぶり出し、俺とナイフ使いが逃げてきた連中を仕留める」

ナイフ使い「へへっ、オレたちの必殺パターンだな」

ガスマスク「……油断大敵」シュコー…

ナイフ使い「わーってるって!」

ナイフ使い「あとオメー、間違ってもオレ撃つんじゃねえぞ!」

狙撃手「俺が標的以外を撃つなど、目をつぶっていてもありえんことだ」

ナイフ使い「頼もしいこって」

狙撃手「各自、配置につけ」

7: 2017/03/20(月) 23:09:13.897
ガスマスク「散布開始……」シュコー…

ブシュウウウウウウ…


「な、なんだ!?」 「……うげええっ!」 「ぐはぁぁぁっ!」

「毒ガスだ! 吸うな!」 「風向き的にあっちなら安全だ!」 「逃げろぉっ!」


ガスマスク「……よし」シュコー…

9: 2017/03/20(月) 23:10:23.541
ナイフ使い「お、来た来た。ゴキブリどもが」

「なんだてめえは!?」 「ガスばら撒いた奴の仲間か!」 「やっちまえ!」

ナイフ使い「殺られるのはテメーらだよ」

ザシュッ! ズシャッ! ザクッ!

「こ、こいつ強ええ!」 「ひいいっ!」 「みんな一撃で……!」

ナイフ使い「おっと、あいつにも残しといてやらないとな。スネちまう」

10: 2017/03/20(月) 23:11:23.451
狙撃手「…………」

狙撃手「ナイフ使いめ、わざわざ俺に標的を残していやがる。いらんことを」

狙撃手「まぁ……せっかくだからありがたく頂戴するか」

狙撃手「頭を……一撃だ」

パシュッ パシュッ パシュッ

12: 2017/03/20(月) 23:15:27.330
<豪邸>

狙撃手「任務完了しました」

ナイフ使い「ラクショーっす。あれならオレら三人のうち、一人だけでも十分でしたよ」

ガスマスク「……証拠も残してません」シュコー…

主人「ご苦労だった。これで少しは世界も平和になるだろう」

主人「しばし、この屋敷で疲れを癒やしてくれ」



メイド(ご主人様のお仕事は、政府から依頼を受けて危険人物や犯罪者を始末すること)

メイド(そして、部下の皆様は私と違ってみんな優秀なんです!)

13: 2017/03/20(月) 23:19:46.484
<コーヒー専門店>

店長「おや、メイドのお嬢さん!」

メイド「こんにちは!」

店長「お、今日はいつもより多めに買っていくんだね」

メイド「ええ、ご主人様の部下の皆様がいらっしゃってますので」

店長「お宅のご主人はお元気かい?」

メイド「それはもう! 今日も私、何度もやれやれといわれました」

店長「ハハ……やれやれ、か」

メイド「ご主人様はやれやれ系ですから!」

メイド「店長さんも一度、ご主人様とお会いしたらいかがです?」

店長「お得意様だし、いずれ気が向いたらね」

メイド(実は殺れ殺れ系でもあると知ったら、きっと驚くだろうなぁ……)

14: 2017/03/20(月) 23:24:19.671
<豪邸>

メイド「銃のお手入れ、お疲れ様です。コーヒーお持ちしました」

狙撃手「これはどうも」

狙撃手「ところで、君はいつからあの方に仕えてるんだい?」

メイド「子供の頃からです」

メイド「両親を亡くした私を、ご主人様が引き取って下さったんです」

狙撃手「そうだったのか。いや、すまない。変なことを聞いた」

メイド「いえいえ! 私はとても幸せですから!」

狙撃手「それならいいんだけど……これからもあの方の力になってあげて欲しい」

メイド「はいっ!」

15: 2017/03/20(月) 23:27:32.372
ナイフ使い「よっ、ほっ、よっ!」ギュルルルルッ

メイド「わぁっ、ナイフの扱いがお上手ですね!」

ナイフ使い「まぁね、オレの取り柄なんてこれぐらいしかないし」チャッ

ナイフ使い「ちょっとやってみるかい?」

メイド「は、はいっ!」

メイド「えいっ!」ギュルルルルッ サクッ

メイド「指を切っちゃいました……」ボタボタ…

ナイフ使い「わーっ! 救急箱、救急箱!」

メイド「やっぱり私は何も持たない方がいいみたいですね」

16: 2017/03/20(月) 23:30:26.935
ガスマスク「…………」シュコー…

メイド「あのー」

ガスマスク「…………?」シュコー…

メイド「あなたってずっとガスマスクを付けてるんですか?」

ガスマスク「…………」コクッ

メイド「ナイフ使いさんたちはものすごいイケメンだなんていってましたけど、本当ですか?」

ガスマスク「…………」フルフルフルフル

メイド「ふふふっ」

ガスマスク「よかったら……君もガスマスク付ける? ……風邪が流行ってるし」

メイド「あ、いえ! 私はマスクしなくても風邪ひかないタチなんて大丈夫です!」

ガスマスク「……残念」

18: 2017/03/20(月) 23:36:11.052
ある日――

<豪邸>

ナイフ使い「へぇ~、メイドさんって子供の頃にあの人に引き取られたんだ」

メイド「はい」

ナイフ使い「もしかして、あの人って口Oコンだったりして……」

メイド「ご主人様はそんなんじゃありませんっ!」

ナイフ使い「じょ、冗談だよ、冗談」

狙撃手「冗談でもいっていいことと悪いことがあるぞ」

ガスマスク「……軽率」シュコー…

ナイフ使い「面目ないっす。マジで」

20: 2017/03/20(月) 23:42:13.303
メイド「皆様はなぜ、ご主人様にお仕えに?」

狙撃手「我々は全員、傭兵や頃し屋だったんだが、あの方に敗れてスカウトされた面々だ」

ナイフ使い「そうそう」

メイド「まぁっ、そうだったんですか!」

狙撃手「現役の頃のあの方は恐ろしく強かった。というか、今も強いだろうが」

狙撃手「あの方と双璧をなすといわれたライバルとともに数々の成果を上げてきた」

狙撃手「凶悪な無差別爆弾魔、細菌兵器を作ってた化学者夫婦、武装カルト教団の教祖……」

狙撃手「あの方に処分された巨悪は数知れず、だ」

メイド「…………」

狙撃手「以前、あの方に聞いたことがある。あなたを殺れる可能性があるのは誰なのか、と」

ナイフ使い「お前も結構きわどい質問するねえ。そしたら?」

21: 2017/03/20(月) 23:45:24.213
狙撃手「二人いる、と答えていた」

ナイフ使い「二人?」

ナイフ使い「一人はライバルだとして、もう一人は誰だ?」

ナイフ使い「あ、もしかしてオレ?」

ガスマスク「……なわけない」シュコー…

ナイフ使い「お前、無口なくせにツッコミだけは容赦ないのな!」

メイド「ふふっ」

狙撃手「まぁ……きっと自分自身、という意味なのだろう」

22: 2017/03/20(月) 23:49:49.846
<豪邸>

主人「ふう……」

メイド「ご主人様、コーヒーです!」

主人「ありがとう」

主人「ん……ちょっと熱すぎるかな」

メイド「あっ、すみません!」

主人「やれやれ」

主人「しかし、いつもながら味は上等だ」

メイド(それは私のおかげというより、コーヒー屋さんのおかげかな……)

主人「……ふう」

メイド「ご主人様、お疲れのようですね」

主人「うむ……こういう稼業をしていると、時々気持ちが深く沈むことがある」

24: 2017/03/20(月) 23:54:23.903
主人「若い頃から国のため、人々のため、平和のため、と働いてきた私だが……」

主人「いかに平和のため、とはいえ私がやっていることは所詮人頃しだ」

主人「一線を退き、あの三人に殺らせるようになったといってもそれは変わらぬ」

主人「むしろ……私は自分の罪をあの三人になすりつけているのでは、と感じることすらある」

主人「おっと……やれやれ、私としたことが愚痴などこぼしてしまった」

主人「こんな愚痴は君にしかこぼせんな」

メイド「……ご主人様!」

メイド「ご主人様が好きでこんな仕事をやっているのではなく」

メイド「ご主人様がとてもお優しい方だというのは、私がよぉく分かっております!」

主人「お優しいってことはないと思うが……ありがとう」

25: 2017/03/20(月) 23:59:07.097
<コーヒー専門店>

メイド「こんにちは」

店長「おお、メイドのお嬢さん。こんにちは」

店長「お宅のご主人はどうしてる? 元気かい?」

メイド「…………」

店長「どうしたい?」

メイド「実は最近……ご主人様、元気がないんです」

店長「そりゃまたどうして?」

メイド「仕事が……お辛いんだと思います」

店長「……そうかい。まあ、コーヒー飲んで元気出してっていっておやりよ」

メイド「いつもありがとうございます、店長さん!」

26: 2017/03/21(火) 00:04:13.907
そんなある日――

<豪邸>

プルルルル…

主人「私だ」

主人「!」

主人「なんだと……?」

主人「うむ、分かった。すぐに殺らせよう」

主人「君、私の部下の招集を頼む」

メイド「わ、分かりました!」

メイド(心なしかいつもよりご主人様が焦ってる……!? 何があったんだろう……?)

27: 2017/03/21(火) 00:08:39.108
主人「あるテ口リストが、大量の兵器を都市郊外の倉庫に持ち込み、立てこもっているとの情報が入った」

主人「しかも、自分を倒さないと兵器を国内にばら撒く、などと抜かしているらしい」

狙撃手「なんとも妙なテ口リストですね」

ナイフ使い「なんでまた、そんなこと……」

主人「理由は分からん」

主人「だが、こんな輩を放っておくわけにもいかん」

主人「すみやかに……殺れ」

狙撃手「分かりました」

ナイフ使い「任せて下さい!」

ガスマスク「了解……」シュコー…

主人「そのテ口リストはすでに、先行した特殊部隊を全員病院送りにしたと聞く」

主人「くれぐれも油断するなよ」

28: 2017/03/21(火) 00:14:44.346
<倉庫>

狙撃手「相手が手強いからといって、やることは変わらん。変える必要もない」

ナイフ使い「ガスでいぶり出し、オレとお前で仕留めるってこったろ?」

狙撃手「そうだ」

狙撃手「俺たち三人のコンビネーションを崩せる者はあの方を除いて存在すまい」

狙撃手「各自、配置につけ」

ナイフ使い「あいよ!」

ガスマスク「……了解」シュコー…

29: 2017/03/21(火) 00:17:46.973
ガスマスク(倉庫内に侵入……)コソッ…

ガスマスク(ここからガスを出せば、標的はナイフ使いか狙撃手のいる方向へ逃げるしかなくなる)

ガスマスク「散布開始……」シュコー…


ブシュウウウウウウ…


テ口リスト「なるほど……毒ガスで私の行動を誘導するという作戦か。考えているな」

ガスマスク「え!?」

ガスマスク(バカな!? 僕の近くに来れるわけが……)

テ口リスト「だがガスのばら撒き方が……まだまだ甘い。氏角がある」

バキィッ!

30: 2017/03/21(火) 00:21:39.745
ナイフ使い(おかしいな……毒ガスを吸わないよう、こっちに逃げてくるはずなんだが……)

ナイフ使い「――――!」

テ口リスト「ん……二人目か」

ナイフ使い「てめえがテ口リストか!?」

テ口リスト「その通り」

ナイフ使い「てめえ、あいつをどうした!?」

テ口リスト「ああ、彼なら……あっちでシュコシュコいいながら眠ってるよ」

ナイフ使い「許さねえ……!」チャッ

テ口リスト「得物はナイフか……面白い。ならば私もナイフでお相手しよう」チャッ

ナイフ使い「なめんなぁっ!」シュバッ

テ口リスト「速さはなかなかだが……キレがない!」ヒュバァッ

キィンッ!

ナイフ使い(オレのナイフが! そんな……オレがナイフ術で後れをとるなん――)

ドゴッ!

32: 2017/03/21(火) 00:25:14.153
狙撃手「…………」

狙撃手(二人は何をやっている? やられたのか?)

狙撃手(やられたならば……俺が仕留めるしかあるまい。さぁ、姿を現せ……テ口リスト!)

テ口リスト「後ろだよ」

狙撃手「!?」

狙撃手「な……いつの間に……!?」

ドガッ!

狙撃手(こ、こいつ……化物だ……! あの方に……ひ、匹敵……)ガクッ

33: 2017/03/21(火) 00:28:42.930
<豪邸>

主人「――なんだと!?」

メイド「!」ビクッ

主人「あの三人が敗れ、敵に捕われた、というのか……」

主人「分かった……となれば私が殺るしかあるまい」

主人「ブランク? 心配しないでもらおう」

主人「すぐに向かう」

メイド(ご主人様……)

35: 2017/03/21(火) 00:31:31.383
主人「私が認めた三人を、単独で破るほどの男……」

主人「あいつしか考えられん」

主人「私は……かつて競い、認め合った友を殺らねばならないのか……」

メイド「ご主人様!」

主人「!」

メイド「ご主人様が殺る必要はありません!」

主人「……では誰が殺るというんだね?」



メイド「私がやります!!!」

36: 2017/03/21(火) 00:36:40.778
<倉庫>

テ口リスト「…………」


ナイフ使い「くそっ、オレらをあっさり捕えるなんて……あの野郎、何者だ!?」

狙撃手「一人しか考えられないだろう」

狙撃手「あの方のライバルだったという男だ」

ナイフ使い「ちっ、かつてはあの方と肩を並べた男も、今やテ口リストに落ちぶれたってわけか!」

ナイフ使い「こいつみてえに、覆面で顔隠してるしよ! 不気味だぜ!」

ガスマスク「…………」ギロッ

ナイフ使い「ご、ごめんね」

狙撃手「しかし、あのテ口リスト……なにが狙いなんだ?」



テ口リスト「!」ピクッ

テ口リスト「……来たか」ニヤッ

38: 2017/03/21(火) 00:42:04.730
テ口リスト「待っていたぞ」

テ口リスト「お前と決着をつけるこの日を……って、え!? あれ!?」

メイド「はじめまして、テ口リストさん!」

テ口リスト「き、君は……」

テ口リスト「……女がなんの用だ?」

メイド「あなた、かつてご主人様の好敵手だった人ですよね?」

テ口リスト「そうだ。ヤツと決着をつけたくて、こうして舞台を整えたんだ」

メイド「でも、ご主人様にあなたを殺らせるわけにはいかないので、私があなたを倒します!」

テ口リスト「ほう……」



ナイフ使い「えええええ!?」

狙撃手「なぜ、彼女がここに……」

ガスマスク「……ビックリ」シュコー…

39: 2017/03/21(火) 00:46:19.829
メイド「あ、あといっておきますけど」

テ口リスト「?」

メイド「あなた、あのお三方を倒して、きっといい気になってると思いますけど」

メイド「狙撃手さんも、ナイフ使いさんも、ガスマスクさんも、あなたより上なんですからね」

メイド「あなたがお三方に勝てたのはマグレなんです! だからいい気になっちゃダメですよ!」

テ口リスト「……分かってるさ」

テ口リスト「もう何年か後だったら、私が殺られていただろう」



ナイフ使い「オレら負け犬トリオにもちゃんとフォローしてくれるなんて……」

狙撃手「ありがたい話だ」

ガスマスク「……いい子」シュコー…

41: 2017/03/21(火) 00:51:56.990
テ口リスト「とにかく君を倒せば、お宅のご主人と戦えるわけだな?」

メイド「そういうことになりますね」

テ口リスト「……で、お嬢さん。君は何を使うんだ? 銃か? ナイフか? 毒ガスか?」

メイド「素手です!」サッ

テ口リスト「……ハッハッハ、面白い!」

テ口リスト「いっとくが私も、徒手格闘が一番得意なんだ!」サッ

テ口リスト「相手になってやろう!」



ナイフ使い「真っ向勝負なんて無茶だ! オレら三人を倒した奴なんだぜ!?」

狙撃手「負けた我々に、とやかくいう筋合いはあるまい。ことのなりゆきを見守るしかないだろう」

ナイフ使い「だけどよぉ……」

ガスマスク「…………」シュコー…

42: 2017/03/21(火) 00:55:05.706
メイド「いきます!」ダンッ

テ口リスト(速いッ!)

メイド「でやっ!」ビュオッ

テ口リスト(心臓狙いの掌底! これを捌く!)パシッ

メイド「えーいッ!」

ベシィッ!

テ口リスト(力はさほどではないが、骨の芯まで響くローキック……!)ビリビリ…

テ口リスト(まるで、あいつと戦っているかのようだ!)

メイド「さすがですね……」

44: 2017/03/21(火) 00:58:49.346
メイド「だあああああっ!」

ズガガガガガッ!

テ口リスト「ちいっ!」

メイド「でいっ!」ブオッ

ズドッ!

テ口リスト「ぐふっ!」

テ口リスト(これは……潰す気でかからんと、やられる!)

メイド(あれ? このテ口リストの方の匂い……)クンクン



ナイフ使い「すげえ、あの化け物と張り合ってる……!」

ナイフ使い(なるほどな……たしかに君にゃナイフなんかなくてもいいよな)

46: 2017/03/21(火) 01:04:25.375
テ口リスト「大したフットワークと蹴りだ……」

テ口リスト「ならば先にその足を潰す!」ギロッ

ズギャッ!

メイド「あぐぅっ!」

メイド(右足を踏まれたっ……! 痛い……!)

テ口リスト(これでもう蹴りはない!)

テ口リスト「殴り合いならこちらが有利だ! ――もらった!」

ガッ! ドカッ! ガッ! ズガァッ!

メイド「ぐ、ううう……っ!」



狙撃手「いかん!」

ナイフ使い「メイドさん!」

ガスマスク「…………!」シュコー…

47: 2017/03/21(火) 01:09:09.308
メイド「私だって、まだまだっ!」

メイド(足はもうダメだけど……手はまだ動く!)グンッ

テ口リスト(掌底が来る……! つかまえて、一気に組みついて絞め落とす!)

メイド「でぇやぁぁぁぁぁっ!」


ドゴォッ!


テ口リスト(え……なんで蹴り……!?)ゲホッ…

メイド「あ、間違えて、痛いのに蹴り出しちゃった」

メイド(でもおかげでチャンス! 今度こそ胸へ掌底!)


ズドォッ!


テ口リスト「ゴボッ……!」ドザァッ…

48: 2017/03/21(火) 01:12:56.913
テ口リスト「ぐ……!」

テ口リスト「まさか君がここまでやるとはな……」

テ口リスト「さあ、私を殺るがいい……冥土に送るがいい……」

メイド「いえ、殺りません」

テ口リスト「なぜ……?」

メイド「あいにく私はご主人様から殺れと命令されてませんし――」

メイド「それにあなた、テ口リストなんかじゃないでしょう?」



ナイフ使い「え!?」

狙撃手「テ口リストじゃない?」

ガスマスク「……どういうこと」シュコー…

49: 2017/03/21(火) 01:15:23.652
主人「その通りだ」



メイド「ご主人様!」

テ口リスト「お前……!」

主人「二人が戦ってるスキに、倉庫中を調べさせてもらったが……」

主人「兵器などどこにもなく、単なるコーヒー豆の倉庫だった」

主人「私と戦いたいがゆえの狂言だったのだろう」

51: 2017/03/21(火) 01:19:43.210
主人「私とお前はずっと音信不通になっていたが、なぜこんな騒ぎを起こした?」

テ口リスト「……ある筋から最近、お前が元気がないって話を聞いてね」

テ口リスト「ここらでお前がやらなきゃ解決しないような任務が発生すれば」

テ口リスト「お前が昔を思い出して奮い立つんじゃないか、と思ったのさ」

主人「バカめ……そんなことで奮い立つわけがなかろう」

主人「メイドがいなければ、私は親友頃しをするはめになるとこだったのだぞ」

テ口リスト「ああ、ちょっと軽率だった。反省してる」

主人「ちょっとじゃないだろ……」

主人「まぁいい。お前のことは殺ったということにして、この事件については収めるさ」

テ口リスト「そうしてくれると助かる」

ナイフ使い「ま、オレらもいい訓練ができましたしね!」

狙撃手「まったくだ。我々もまだまだ甘い」

ガスマスク「……精進しないと」シュコー…

52: 2017/03/21(火) 01:23:51.951
テ口リスト「ところで、メイドさん」

メイド「はい?」

テ口リスト「なぜ私がテ口リストじゃないと気づいたんだ?」

メイド「だって、特殊部隊の方々を病院送りにしたり、お三方を捕えるだけにしたり」

メイド「テ口リストにしては、やけに甘いじゃないですか」

メイド「それに、あなたからはコーヒー豆の匂いがプンプンするんですもの!」

テ口リスト「……鼻がいいんだな。シャワーはしっかり浴びてきたつもりなんだが」

メイド「しかも、このコーヒー豆の匂いはいつも通ってる店で嗅いでる匂いと同じですから!」

テ口リスト「なるほど……」

テ口リスト(どうやら、メイドのお嬢さんは私の正体に気づいたようだな)

メイド(きっとこの人も、私がよく行くコーヒー専門店の常連客なんだろうな)


――――

――

53: 2017/03/21(火) 01:30:28.559
<豪邸>

ナイフ使い「いやー、驚いたのなんの!」

ナイフ使い「メイドさんがあんなに強いなんて思わなかったよ!」

ガスマスク「……ナイスファイト」シュコー…

メイド「いえいえいえ! とんでもないです!」

ナイフ使い「しっかし、どうしてあんなに強いんだ?」

メイド「私は幼い頃から、ご主人様に鍛えられてましたから……」

狙撃手「そうか、君はあの方に引き取ってもらったんだったな」

狙撃手「ご両親を亡くしたから……」

ナイフ使い「そりゃ強くなるわけだ! あの人の英才教育を受けてたんだもんな!」

ナイフ使い「天国の父さん母さんも安心して見てられるだろうさ」

メイド「ええ、でも実は――」

55: 2017/03/21(火) 01:35:54.407
メイド「私の両親を頃したのは……ご主人様なんです」

三人「え!?」

メイド「幼い私に、ご主人様はおっしゃいました」


『君の両親を頃したのは私だ』

『君が私を憎むなら、仇を討たせてやりたいが、私としてもただ討たれるわけにはいかん』

『これから私は、君が私を殺れるぐらいの腕前に鍛え上げてやる』

『そしてもし……自信がついたなら、私を殺れ』


メイド「――と」

狙撃手「…………!」

ガスマスク「…………!」シュコー…

狙撃手「なるほど、あの方がおっしゃってた二人のうちの一人は……君だったのか」

ナイフ使い「ってことは、君はあの人の命を……」

メイド「最初はそのつもりでした。そのつもりで、氏に物狂いで格闘技を習得しました」

メイド「ですが……両親の氏について、自分で調べていくうちに分かったんです」

56: 2017/03/21(火) 01:39:49.883
メイド「私の両親は恐るべき細菌兵器を研究する、化学者夫婦であったことが」

三人「!!!」

メイド「そして……娘である私をたびたび実験台にしていたことが」

メイド「色んな菌やウイルスの実験台にさせられた“せい”なのか、“おかげ”なのか」

メイド「私の体は風邪一つひくことはなくなりました」

メイド「検査で周囲に害をもたらすことはないと分かったとはいえ、殺処分されてもおかしくない私を」

メイド「ご主人様はかばい、引き取って下さったんです」

メイド「ご主人様は一言も、そんな経緯があったとはおっしゃいませんでしたけどね」

メイド「だからもう……私にご主人様を殺るつもりはありません」

メイド「これからもメイドとしてご主人様に仕えるつもりです」

狙撃手「…………」

ナイフ使い「…………」

ガスマスク「…………」シュコー…

57: 2017/03/21(火) 01:45:12.969
ナイフ使い「なるほど!」

ナイフ使い「ま、ちょいと驚いたが、オレらだってみんな暗い過去の一つや二つ持ってる!」

ナイフ使い「だよなぁ?」

狙撃手「一つや二つどころではないがな」

ナイフ使い「これからも今まで通り、よろしく頼むよ!」

ガスマスク「……またコーヒー入れてね」シュコー…

メイド「はいっ!」

ナイフ使い「ところでさ」

メイド「なんでしょう?」

ナイフ使い「普段のうっかりぶりも、もしかして人体実験の影響ってやつなの?」

狙撃手「おい……なんてこと聞くんだ!」

メイド「あ、それは素です」

アッハッハッハッハ…… シュコココココッ…



メイド(皆さん……ありがとう……)

59: 2017/03/21(火) 01:49:24.678
主人「やれやれ、今日は色々なことがありすぎる日だった」

メイド「ホントですね」

メイド「でも……よかったですね、ご親友がテ口リストじゃなくて」

主人「ああ、正直ホッとしてるよ」

主人「ところで、あいつにやられた傷は大丈夫か?」

メイド「あ、平気です。ご主人様もご存じのように、私は傷の治りが早いですから」

主人「そうだったな」

主人「ならば、コーヒーを入れてくれないか?」

メイド「かしこまりました!」

60: 2017/03/21(火) 01:54:29.105
メイド「ご主人様、コーヒーです!」

主人「……ありがとう」

主人「うむ……適温だ。素晴らしいよ」

メイド「あっ……す、すみませんっ!」

主人「んん?」

メイド「って適温なら、謝る必要ないですよね。ついうっかり……」

主人「……やれやれ」







― 完 ―

62: 2017/03/21(火) 01:59:25.982
やれやれ…面白いSSだった

64: 2017/03/21(火) 02:58:38.073

68: 2017/03/21(火) 09:00:15.149
良かったよ
優しい物語だった

引用元: メイド「私のご主人様はやれやれ系」主人「……殺れ」