1: 2021/10/03(日) 19:04:06.138
ピシャァンッ!

魔法使い「出た……黒い雷!」

師匠「よくやった」

魔法使い「はい! ついに究極の雷魔法“ブラックサンダー”を会得したぞ!」

師匠「これでもはやお前に敵はいない」

魔法使い「それだけ凄い威力ということですね!?」

師匠「いや……“ブラックサンダー”に威力はない。というよりゼロだ」

魔法使い「へ?」

師匠「“ブラックサンダー”の真価は、雷によって生み出される物にある! あれを見よ!」

魔法使い「これは……チョコレート!?」

3: 2021/10/03(日) 19:07:19.441
師匠「食べてみろ。あとワシにもくれ」

魔法使い「はい、半分こしましょう」

師匠「ふむ……さすが我が弟子。ワシ以上の美味さだ」サクサク

魔法使い「たしかにこれはおいしい」サクサク

魔法使い(だけど――)

師匠「ゆけ! この“ブラックサンダー”で魔王を倒すのだ!」

魔法使い「出来るわけないでしょう! たかがチョコレート菓子で!」

師匠「は? お前“ブラックサンダー”舐めてんの?」

4: 2021/10/03(日) 19:11:33.993
師匠「“ブラックサンダー”の原材料を教えてやろう」

魔法使い「はぁ」

師匠「準チョコレートを始めとして、ココアクッキー、油脂加工食品、小麦粉、砂糖、植物油脂、
   ショートニング、カカオマス、食塩、ホエイパウダー、脱脂粉乳、全粉乳。
   さらにソルビトール、膨張剤、大豆由来の乳化剤、香料が含まれている」

魔法使い「すみません、ソルビトールってなんですか?」

師匠「甘味料の一種だ。食品業界では常識であろうが!」

魔法使い「僕がいるの魔法業界のつもりだったんですけど……」

師匠「栄養成分としては一本21gあたり、熱量112kcal、タンパク質1.3g、脂質6g、炭水化物13.1g、
   食塩相当量0.2gといったところだ」

魔法使い「やたら正確に把握してますね」

師匠「これ程の味と栄養を備えた菓子は、そうあるまいて!」

魔法使い「そうなんですか」

師匠「値段をつけるなら30Gといったところだろう」

魔法使い「安いですね! 子供でも買えちゃいますよ!」

師匠「やはりお菓子というものは、子供のためのものだからな」

6: 2021/10/03(日) 19:13:45.003
師匠「とにかく、ワシが生涯をかけて編み出した雷魔法“ブラックサンダー”……」

師匠「使いこなせるのは、若く才能に溢れるお前しかおらぬ」

師匠「頼む、どうかこれで魔王を倒し、ワシの人生は間違ってなかったことを証明してくれ!」

魔法使い「……!」

魔法使い(師匠にこうまで頼まれたら、やるしかないよな)

魔法使い「分かりました! この僕が師匠の“ブラックサンダー”を受け継ぎ、魔王を倒します!」

師匠「頼んだぞ……」

魔法使いの旅が始まった。

8: 2021/10/03(日) 19:17:08.586
~草原~

魔法使い「……ん」

スライム「ピギュ!」

魔法使い「ス、スライム!」

スライム「ピギュゥ……」ギロッ

魔法使い(今にも襲ってきそうだ……体当たりでもされたら大ケガしちゃう……)

魔法使い(となれば、やることは一つ!)

10: 2021/10/03(日) 19:20:11.043
魔法使い「“ブラックサンダー”!」

ピシャァンッ!

スライム「ピギュ!?」

魔法使い「これ、どうぞ」

スライム「ピギュ……ピギ……」モグモグ

魔法使い「どう?」

スライム「ピギーッ!」

魔法使い「!?」

11: 2021/10/03(日) 19:22:40.403
スライム「ピギュ! ピギュ!」ピョンピョン

魔法使い「アハハ、気に入ってくれたかい」

スライム「ピギュピギュ」

魔法使い「え? 仲間になってくれるの?」

スライム「ピギュゥ」コクッ

魔法使い「あ……ありがとう!」

スライムが仲間になった!

魔法使い(そうか、“敵はいない”ってのはこういうことだったのか!)

13: 2021/10/03(日) 19:26:18.819
~村~

魔法使い「村にたどり着いたね。一休みしようか」

スライム「ピギュ」

……

魔法使い「なんですって!? 魔物に生贄を要求されてる!?」

村長「そうなんです……」

魔法使い「分かりました、僕が魔物に生贄などやめるよう、説得してきます!」

村長「説得など通じる相手では……」

魔法使い「任せて下さい! 行こうスライム!」

スライム「ピギュ!」

14: 2021/10/03(日) 19:29:08.472
~洞窟~

魔物「グハハハ……生贄は持ってきたか?」

魔法使い「いや、生贄に応じるつもりはない!」

スライム「ピギュ!」

魔物「な、なんだと!?」

魔法使い「お前に食わせる人間などいないといったんだ!」

魔物「面白い。だったらお前と、ついでに隣のスライムを食うまでだ!」

魔法使い「その前にこれを食べてみてくれ」

15: 2021/10/03(日) 19:32:29.497
魔法使い「“ブラックサンダー”!」

ピシャァンッ!

魔物「む……! おのれ、魔法を使うのか!」

魔法使い「さあ、これを食べてくれ」

魔物「なんだこれ……」

魔法使い「黒雷より出でしお菓子“ブラックサンダー”だ」

魔物「いいだろう。ちょうど腹減ってたしな」サクッ

魔物「う、うまい! チョコの甘さとクッキーのサクサク感が絶妙なハーモニーを奏で――」

魔物「雷に打たれたが如く刺激を与えてくれる! 一口食うごとに満足感の津波が襲ってくる!」

16: 2021/10/03(日) 19:34:55.438
魔物「もっとくれ、もっと!」

魔法使い「じゃ、もっと出すよ」バリバリッ

魔物「俺は……こんなうまいものがあるのに、人間なんかを食べようと……」

魔法使い「これからは大人しくしてくれるか?」

魔物「ああ、するよ。こんなうまいもん食わせてくれた奴には逆らえねえ」

魔法使い「やったね!」

スライム「ピギュ!」

19: 2021/10/03(日) 19:38:35.766
~町~

魔法使い「結構大きな町に着いたね」

スライム「ピギュ」プルンッ

魔法使い「せっかくだし、たまには“ブラックサンダー”以外のもの食べるかい?」

スライム「ピギュギュ」

魔法使い「え、バターが食べたい?」

スライム「ピギュ」

魔法使い「じゃあ、あそこで買ってきてあげるよ」

20: 2021/10/03(日) 19:40:22.254
魔法使い「おいしい?」

スライム「ピギュ!」モグモグ

魔法使い「バターが好きなんて変わったスライムだな」

魔法使い「ん?」

ワイワイ…

魔法使い「人が集まってる。行ってみようか」

スライム「ピギュ」

21: 2021/10/03(日) 19:43:36.158
領主「私はコーヒーが大好物なのだ。コーヒーに合う食べ物を持ってこい。持ってくれば褒美をやろう」

町民「これをどうぞ」

領主「これは?」

町民「妻が作ったケーキです。ほどよい甘さでコーヒーに合うかと……」

領主「全然合わん! 貴様は鉱山で強制労働だ!」

町民「ひええ、そんな……」

ザワザワ…

「さっきからみんな鉱山行きだぜ」 「ひでえよな……」 「褒美くれる気なんてないだろ」

魔法使い「ずいぶん横暴な領主みたいだ……」

24: 2021/10/03(日) 19:47:08.309
魔法使い「こんなおかしい領主に関わってられないよ。行こう」

スライム「ピギュ!」

魔法使い「え?」

スライム「ピギューッ!」

領主「ん、なんだそのスライムは」

スライム「ピギュピギュ!」

魔法使い「コ、コラッ!」

25: 2021/10/03(日) 19:50:26.630
スライム「ピギュピギュピギュギュ!」

領主「なに? 下らない催しやって、領民を弄んでるんじゃねえ?」

スライム「ピギューッ! ピギューッ!」

領主「難癖つけて、住民を鉱山に追いやって、鉱山開発を進めようってのが見え見えなんだよこのゴミクズ、だと!?」

スライム「ピギュギュギュ!」

領主「今からコーヒーに合う最高のおやつを出してやるから、舌を洗って待ってろ、だとぉ!?」

領主「面白い、出してもらおうじゃないか!」

魔法使い「お前クチ悪いな!」

スライム「ピギュ!」

27: 2021/10/03(日) 19:53:19.751
魔法使い「じゃあ……“ブラックサンダー”!」ピシャァンッ

魔法使い「どうぞ」

領主「ふざけるな! こんな安っぽいチョコとコーヒーが合うものか!」

領主「こんなもの食わんぞ! お前は即鉱山送りにしてやる!」

魔法使い「いいから食べて下さいよ」

領主「!」ビクッ

魔法使い「僕が鉱山送りにされるのはいいですが、師匠の“ブラックサンダー”を侮辱することは許さない!」

領主「くっ……! いいだろう、一口だけ食ってやる」サクッ

28: 2021/10/03(日) 19:56:11.548
領主「むう……!?」

領主「コーヒーを……一口」グビッ

領主「うおおお……! なんて……なんてコーヒーに合うんだ……!」

領主「コーヒー! ブラックサンダー! コーヒー! ブラックサンダー! 手が止まらん! 喉が止まらん!」

領主「おいしさ……イナズマ級!!!」

スライム「ピギュウ!」

魔法使い(そういえば師匠はいっていた……。“ブラックサンダー”は『コーヒーと一緒に買いたいチョコNo.1』だと)

29: 2021/10/03(日) 19:59:03.633
ワァァァ…

領主「侮辱してすまなかった……」

魔法使い「いいんです。それより、今まで鉱山送りになった人を解放して下さい」

領主「分かった……。無理な開発は思いとどまることにしよう」

領主「それと、約束通り君に褒美を与えたい。君は今何をしているのだ?」

魔法使い「魔王を倒すために旅をしています」

領主「そうだったのか……立派なものだ。ではその旅、私が全力で支援しよう!」

魔法使い「本当ですか!? ありがとうございます!」

スライム「ピギュ!」

30: 2021/10/03(日) 20:02:12.907
~海~

ザザーン…

魔法使い「船まで用意してもらって……いよいよ本格的な旅の始まりだ」

スライム「ピギュ」

魔法使い「食べるかい? ブラックサンダー」

スライム「ピギュ!」

魔法使い「バターも食べたいの? 変わった奴だなぁ」

スライム「ピギュギュ」モグモグ

魔法使い「どんな困難もブラックサンダーで乗り越えてみせるぞ!」



領主の支援を得たことで、魔法使いの旅はここから順調に進むことになる。

31: 2021/10/03(日) 20:05:14.374
~砂漠~

魔法使い「暑い……」

スライム「ピギュ……」

魔法使い「ブラックサンダーを出してもすぐ溶け……」ドロ…

魔法使い「だけど溶けたブラックサンダーも悪くないかも」モグモグ

スライム「ピギュギュ!」モグモグ



~雪国~

魔法使い「今度は寒い……」

魔法使い「このままじゃ凍えちゃう……“ブラックサンダー”!」ピシャァンッ

魔法使い「ブラックサンダーを食べると……体がポッカポカ!」

スライム「ピギュウ!」

魔法使い「遭難した時はチョコレートがいいっていうもんね!」

34: 2021/10/03(日) 20:08:06.295
オーク「ぐへへへ……」

ゴブリン「愚かな人間め……」

コボルト「食ってやる!」

魔法使い「くっ、“ブラックサンダー”!」ピシャァンッ

オーク「うめええええ!」

ゴブリン「これが……人間の英知!」

コボルト「おいしいものを食べさせてくれてありがとう! また遊びに来てね!」

魔法使い「ふぅ、どうにか切り抜けられた」

スライム「ピギュ!」

36: 2021/10/03(日) 20:12:03.311
魔法使い(ものすごい強敵が現れたぞ……)

暗黒騎士「クックック……我は魔王軍最高幹部、暗黒騎士。その命もらい受ける」

魔法使い「最高幹部……!」

暗黒騎士「覚悟するがいい!」ダッ

魔法使い「“ブラッ――」

ズバァッ!

魔法使い「ぐあっ!」

魔法使い(ダメだ……今までの敵とはスピードが違う! 魔法を唱えられない!)

スライム「ピギュ……」

37: 2021/10/03(日) 20:15:00.779
スライム「ピギュゥゥゥゥッ!」ドカッ

暗黒騎士「ぐわっ、なんだこいつ!?」

魔法使い(スライム……!)

暗黒騎士「おのれぇ!」ズバッ

スライム「ピギュア……!」

魔法使い「“ブラックサンダー”!」

ピシャァンッ!

魔法使い「よし、出た!」

暗黒騎士「なんだそれは?」

38: 2021/10/03(日) 20:17:17.056
魔法使い「これを食べてみて下さい」

暗黒騎士「ふざけるな。敵から食物など受け取るか」

魔法使い「暗黒といえどあなたは騎士でしょう?」

魔法使い「こうして正々堂々差し出してる物を受け取れないのですか! とんだ臆病者ですね!」

暗黒騎士「ぐ……! いいだろう、食べてやる」サクッ

暗黒騎士「むむ……これは!」

暗黒騎士「なんという美味だぁぁぁぁぁぁ!!!」

暗黒騎士「む?」パァァァ…

39: 2021/10/03(日) 20:21:41.799
暗黒騎士「これは……私の体が……」パァァァァ…

鎧ごと変化していく。

聖騎士「おお!」

魔法使い「ええっ!?」

スライム「ピギュ!?」

聖騎士「かつて私は魔王に挑んだ騎士だったが、敗北して闇に堕とされてしまった」

聖騎士「しかし、ブラックサンダーの美味さと、黒と暗黒が重なったことによって、元に戻ることができた!」

魔法使い「何がなんだかですが、元に戻れて何よりです」

聖騎士「魔王城はもうすぐだ。私も微力ながら力を貸したい」

聖騎士「魔王の手下として犯した罪を……少しでも償いたいのだ!」

魔法使い「喜んで!」

聖騎士が仲間になった!

40: 2021/10/03(日) 20:25:23.246
~魔王城~

聖騎士「まずはこの門を突破せねばならん。しかし、門番はなかなか強力だ」

スライム「ピギュ……」

魔法使い「では、門番に“ブラックサンダー”を渡します」

魔法使い「門番さん、これどうぞ。食べてみて下さい」

門番「う……うまい!」

魔法使い「通っていいですか?」

門番「よかろう!」

聖騎士(ううむ……まるでワイロのようだ)

41: 2021/10/03(日) 20:27:17.963
聖騎士「魔王城の中は罠だらけだ。心してかかれ!」

魔法使い「はいっ!」

スライム「ピギュ!」

ゴロンゴロン…

魔法使い「って、いきなり上から岩が転がってきた!」

聖騎士「ハァッ!」ズバッ

魔法使い「あ……ありがとうございます!」

スライム「ピギュピギュ!」

魔法使い(流石に罠にブラックサンダーは通用しない……聖騎士さんがいなかったら潰されてたな……)

42: 2021/10/03(日) 20:31:45.099
魔法使い「これ……どうぞ」

上級魔族「こんなお菓子、初めて食べたよ!」

ゴボゴボゴボ…

魔法使い「溶岩が追いかけてくる!」

聖騎士「アイススラッシュ!」ズバァッ

魔法使い「助かりました!」

聖騎士「なぁに、これぐらいしないとな。さあ、魔王の部屋はあそこだ!」

魔法使い「はい!」

スライム「ピギュ!」

魔法使い(いよいよ魔王との戦い……師匠、見てて下さい!)

部屋に突入する。

43: 2021/10/03(日) 20:34:25.279
魔王「来たか……人間ども」

魔法使い(こいつが……魔王!)

魔王「暗黒騎士よ、まさか貴様を戻せる者がおったとはな」

聖騎士「ああ、魔法使い君には感謝してる。今こそ貴様を倒す時だ! うおぉぉぉぉぉっ!」

魔王「無駄だ……」

聖騎士「!?」ズシンッ

魔王「一度でも我が軍門に下った者は、余に刃向かうことはできぬ。貴様に余に挑む資格はないのだ!」

聖騎士「く、くそぉ……!」

魔法使い(いきなり聖騎士さんが封じられてしまった……!)

スライム「ピギュピギュ!」

魔法使い「そうだね、ここで弱気になっちゃいけない!」

45: 2021/10/03(日) 20:37:37.915
魔法使い「“ブラックサンダー”!」

ピシャァンッ!

魔法使い「どうぞ」

魔王「いただこう」サクッ

魔王「……」モグモグ

魔法使い(よし……食べた!)

魔王「ふん、これがどうした? ただのチョコレート菓子ではないか」

魔法使い「通じない!?」

スライム「ピギュ!?」

聖騎士「なぜだ……なぜ“ブラックサンダー”が通じない!?」

魔王「フフフ、冥土の土産に教えてやろう……」

46: 2021/10/03(日) 20:40:28.175
魔王「余は“魔の王”だぞ?」

魔王「部下が集めてきた情報だけで貴様の魔法“ブラックサンダー”を解析し――すでに会得した」

魔法使い「そ、そんな……!」

魔王「そして、余は“ブラックサンダー”を一万本は食べておる! さすがに食い飽きたわ!」

魔法使い「うわあああああっ……!」

聖騎士「一万……!」

魔法使い「そんな……ここまでなのか……」ガクッ

スライム「ピギュ!」

魔法使い「ダメだよスライム……いくら“ブラックサンダー”でも食べ飽きた相手には通じない!」

48: 2021/10/03(日) 20:43:45.125
魔王「観念したようだな」

魔法使い「……」

魔王「ではあの世に送ってやろう。チリも残さず消し飛ばしてくれる」ゴゴゴゴゴ…

スライム「ピギュッ!」

魔王「なんだこのゴミは……」

スライム「ピギュギュギュ……」

魔法使い「やめろ! お前が何したって魔王には通用しない! 逃げるんだ!」

スライム「ピィ~ギュゥゥゥゥ……」

49: 2021/10/03(日) 20:46:16.678
スライム「ピギュ!」ポンッ

魔法使い「これは……!?」

聖騎士「ブラックサンダー……? 少し色が薄い気がするが……」

魔法使い「スライムは旅でたくさんのブラックサンダーを食べてきた……そこから生み出したのか!」

魔法使い「魔王!」

魔王「!」

魔法使い「最期の頼みだ……これを食べてくれ」

魔王「よかろう! これを食って、貴様らにトドメをくれてやるわ!」

サクッ…

50: 2021/10/03(日) 20:49:15.045
魔王「む!? なんだこれは……!?」

魔王「従来のブラックサンダーに、バターの風味が混ざり合って……全く新しい味に!?」

魔法使い「……!」

魔法使い(スライムはよくバターも食べてた! それで――)

魔王「おお……この味……。なんと素晴らしい! 食べるたびに幸せが膨らみ、癒やされる……」

魔王「どこぞの高原で、モーモーと鳴いている牛が目に浮かぶようだ……」

魔王「名づけるならそう――≪至福のバター≫……!」

魔王「ああああ……体も心も……浄化される……」

52: 2021/10/03(日) 20:52:22.330
魔王「余の負けだ……」

魔法使い「魔王……」

魔王「我々は人間界を諦める……二度と侵攻することはないと約束しよう」

魔王「黒き雷“ブラックサンダー”に誓って……!」

魔王「さらばだ……強き人間たちよ……」キラキラキラ…

キラキラキラキラキラ…

魔法使い(魔王が光の粒となって消えた……)

スライム「ピギュ……」

53: 2021/10/03(日) 20:56:06.467
魔法使い「ありがとうスライム!」

スライム「ピギュ!」

魔法使い「やりました、聖騎士さん!」

聖騎士「君たち二人の力が組み合わさった、見事な勝利だ」

魔法使い「はい、スライムがバター好きで本当によかったです」

スライム「ピギュピ!」

魔法使い「さあ、帰ろう!」

54: 2021/10/03(日) 20:59:30.268
魔法使い「師匠ーっ!」

師匠「おお……戻ってきたか!」

魔法使い「はい、師匠の“ブラックサンダー”で、魔王を喜ばせてきました!」

師匠「お前はワシの誇りだ。よくやった……」

魔法使い「それと……」

師匠「?」

スライム「ピギュ」

聖騎士「どうも」

師匠「どちら様!?」

魔法使い「僕の仲間です。しばらくここに住まわせてもいいですか?」

師匠「別にいいけど……とりあえず、ブラックサンダーとお茶でもどうぞ」

55: 2021/10/03(日) 21:03:00.384
魔法使いの功績は世間に知れ渡り――

~城~

国王「魔法使いよ、魔王を倒してくれて感謝する」

魔法使い「いえ、当然のことをしたまでです」

国王「おぬしの偉業はこの国……いや世界中に未来永劫刻まれるであろう!」

国王「皆の者、この落雷で世界を救った勇者を称えよ!」



ワアァァァァァ……!

「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」

「落雷!」 「落雷!」 「落雷!」 「落雷!」 「落雷!」 「落雷!」

「勇者!」 「落雷!」 「勇者!」 「落雷!」 「勇者!」 「落雷!」



魔法使い(なんだか妙な掛け声だけど、まいっか)

56: 2021/10/03(日) 21:07:10.876
やがて――

魔法使いは他の魔法も習得し、正式に“賢者”となっていた。



賢者「……」スタスタ

賢者(王国騎士になった聖騎士さん、元気にしてるかな)

賢者(師匠は相変わらず次の魔法を考えてるし……スライムにバターでも買っていこうかな)

子供「ユーラクさん!」

賢者「こんにちは」



そして、彼の愛称はいつの間にか『ユーラク』となっていた。

称えられる際の『勇者』と『落雷』が混ざって、こうなってしまったらしい。

57: 2021/10/03(日) 21:09:04.152
子供「ブラックサンダーくださいな!」

賢者「いいよ、ほら」ピシャァンッ

子供「わーい! それじゃ30Gね!」チャリンッ

賢者「毎度あり。またおいでね」








~おわり~

59: 2021/10/03(日) 21:23:30.983

コンビニでブラックサンダー買ってくる

60: 2021/10/03(日) 22:23:44.515
すごすぎる

引用元: 魔法使い「究極の雷魔法“ブラックサンダー”を会得したぞ!」