1: 2019/05/02(木) 21:45:30.896
コッコロ「ふふ、主さま、お散歩でございますか? わたくしもお供してよろしいでしょうか?」

キャル「……ねぇペコリーヌ」

ペコリーヌ「ふぁい、なんれひょうふぁ?」

キャル「コロ助って、いっつも主さま主さま言ってるじゃない? あいつのこと好きなのかしら」

ペコリーヌ「むぐむぐ……。好きなんじゃないですか?」

キャル「意味分かってる? 好きって、愛してるとかそういう意味の好きよ?」

ペコリーヌ「キャルちゃん」

キャル「なによ」

ペコリーヌ「コッコロちゃんは、まだ11歳のちっちゃな女の子ですよ? そういうのはまだ早くないですか?」

キャル「いいえ、そんなことないわ。『もう11歳』よ。恋をしたって、なにもおかしくないっての」

ペコリーヌ「う~ん……そういうのじゃないと思いますけどねぇ。それで、結局キャルちゃんはなにが言いたいんですか?」

キャル「何ってことはないんだけどね。暇なのよ。あいつらすぐフラ~ッとどっか行っちゃうから」

ペコリーヌ「わたしが……んぐんぐ……いるじゃないですか」

キャル「あんたいつも食べてばっかじゃない!」

3: 2019/05/02(木) 21:48:04.772
キャル「あたしも出かけたいの! 楽しいことがしたいのよ!」

ペコリーヌ「でもキャルちゃん、前はずっと一人で行動してましたよね? わたしが誘ってもツンツンしてたじゃないですか」

キャル「……」

ペコリーヌ「あはは、ごめんなさい。そんなむくれないでくださいよ、ちょっとイジワルしてみただけですから♪」

ペコリーヌ「それじゃあ……どこ行きましょうか? わたしたちもお散歩します?」

キャル「散歩ぉ? そんなことして何が楽しいのよ。疲れるし、足が痛くなるし、ロクなことないじゃない」

ペコリーヌ「そうですか? じゃあじゃあ、かわいいお洋服を探しに行くとか☆」

キャル「あたしお金ないわよ? あんたの食べ歩きに付き合ってたせいで、毎日ギリギリの生活なんだから」

ペコリーヌ「それはちょっと申し訳ないなって思いますけどぉ~……。でも、一緒に見て回るだけでも楽しいじゃないですか」

キャル「イヤ。そんな惨めったらしいことしたくないし」

ペコリーヌ「う~ん……キャルちゃんは難しいですね……。他には、運動……は嫌がりそうですし、食べ歩き……も喜ばなさそうですよね……」

キャル「早くなんか案出しなさいよ。時間がもったいないじゃない」

ペコリーヌ「むっ……」

4: 2019/05/02(木) 21:52:15.581
ペコリーヌ「キャルちゃんも何か意見言ってくださいよ。さっきから否定してばっかりで、自分からは何も言ってくれないじゃないですか」

キャル「あんたがあたしを楽しませるんだから、あんたが考えなさいよ!」

キャル「あたしが考えたら……あんたのこと無理やり付き合わせてるみたいじゃない……」

ペコリーヌ「へ……?」

ペコリーヌ「もぉ~、そんなふうに考えてたんですか? あははっ♪ キャルちゃんはおバカさんですね~☆」

キャル「なっ……! 誰がバカよ! あたしは、あんたに嫌がられたくなくて──」

ペコリーヌ「嫌がったりなんてするわけないじゃないですか~。だいたい、いつもはわたしがキャルちゃんのこと、振り回しちゃってるんですから」

ペコリーヌ「たまにはキャルちゃんがわたしを振り回してください☆ わたし、なんだって付き合いますよ?」

キャル「でもさ……」

ペコリーヌ「もし嫌だって思っても、やってみたら案外楽しかったりするものですし♪ キャルちゃんもそう思いません?」

キャル「それは……ええ、そうね……。いつも最初はイヤって思うけど、なんだかんだ楽しいし……」

ペコリーヌ「でも、キャルちゃんがわたしに『楽しませてほしい』って思ってくれてるなら、今日はわたしが考えますね☆」

キャル「……ううん、一緒に考える。考えるのも、その……楽しいし」

ペコリーヌ「はいっ♪ えへへ、じゃあどうしましょうか?」

5: 2019/05/02(木) 21:56:10.927
キャル「で、結局散歩してるけど。あんたの言う、とっておきってなんなの? そろそろ教えなさいよ」

ペコリーヌ「ふふっ、そろそろ着きますよ♪ キャルちゃん、きっと喜んでくれます! えぇっと、あそこの細い路地の先を曲がって──」

ペコリーヌ「……あっ、いましたよ! あそこです、見てくださいキャルちゃん!」

キャル「なになに? ……うっわぁ~! 猫がこんなにたくさん! これ、全部ノラ猫なの!?」

ペコリーヌ「首輪もしていませんし、そうなんじゃないですか? 話には聞いていましたけど、想像よりずっとたくさんいますね~」

キャル「ぺ、ペコリーヌ……? 急に近づいたらダメよ? 猫はとっても神経質で、警戒心も強いわ……! そ~っと、ご機嫌を伺いながら──」

みけ「にゃお~ん♪」

キャル「……って猫の方から寄ってきた!? す、すりすりしてる……。かわいい~……♪」

ペコリーヌ「なんでも、この辺りに住んでる人たちにかわいがってもらってるそうですよ?」

ペコリーヌ「見ての通り、とっても人馴れしているので、こうして寄ってきてくれるんだとか。やばいですね☆」

キャル「え? ごめん、全然聞いてなかったわ。だって……ふふっ♪ この子たちかわいすぎるんだもの♪」

きじとら「みゃうみゃう」

はちわれ「んにゅ~ごろごろ……」

キャル「きゃ~♪ 見て見てペコリーヌ! なで放題よ! それどころか、いくらもふもふしても全然嫌がらないわ!」

キャル「うへへ~……だっこでちゅか~? おいでおいで~♪ にゃお~ん♪」

ペコリーヌ「んふふ、癒されますねぇ~……」

6: 2019/05/02(木) 21:59:13.606
キャル「ペコリーヌは猫って好き? なんとなく犬好きなイメージがあるけど」

ペコリーヌ「わたしも好きですよ、猫ちゃん。ワンちゃんも好きですし、鳥さんやウサちゃんも大好きです♪」

キャル「えぇっと……念のため聞いておくけど、ペコリーヌ……? ペットとして好きなのよね……?」

ペコリーヌ「はい?」

キャル「た、食べるのが好きなんてことないわよね……?」

ペコリーヌ「あはは♪ 大丈夫ですよ、この子たちは食べませんから!」

キャル「そ、そう……。よかっ──えっ、ちょっと、ねぇ待ちなさいよ……。この子たちは、ってことは……他の子は食べちゃうの? ねぇ、ペコリーヌってば!?」

ペコリーヌ「よ~しよしよしよし♪」

ぶち「ふにゃ~」

キャル「ときどきあんたのことが堪らなく怖く思えるわ……。今も心臓がドキドキ鳴りっぱなしよ……」

ペコリーヌ「一度休憩してお昼にしましょうか」

キャル「この流れでお昼は食べたくないわね……。一旦通りに出て、何かおもしろいものがないか冷やかして回りましょ」

ペコリーヌ「なんだかデートみたいですね♪」

キャル「あたしを冷やかしてどうすんのよ。バカなこと言ってないで早く行くわよ。ちょっとだけ名残惜しいけど……」

猫たち「にゃ~ん……にゃ~ん……」

ペコリーヌ「ふふっ、キャルちゃんさえよければ後でまた来ましょうね☆」

8: 2019/05/02(木) 22:04:15.561
キャル「通りに出たはいいけど……なんだか今日はやけに人が多いわね。この辺りで何か催し物でもあるのかしら?」

ペコリーヌ「お祭りの予定はないと思いますけど──キャルちゃん、ちょっと失礼しますね」

キャル「ちょっ……!? なんでいきなり引き寄せるのよ!? あぅ……思わず抱きついちゃった……」

荒くれ「オラァ! 退けやオラァ! 邪魔だコラァ!」

ペコリーヌ「ふぅ~。ぶつかっちゃったら大変ですからね☆ えへへ、急に引っ張っちゃってごめんなさい。もう離れても大丈夫ですよ?」

キャル「あっ、う、うん……」

ペコリーヌ「かなり混雑してますし、もしかしたらはぐれちゃうかもしれません。このまま手を繋いでいましょうか♪」

キャル「あたしは人混みに流されたりなんてしないわよ。手を繋いで歩くなんて……は、恥ずかしくて無理だっての……!」

ペコリーヌ「う~ん、わたしの方がどこかに押し流されちゃいそうなんですよね~。美味しそうな匂いに釣られてフラフラしちゃうかもしれませんし……」

ペコリーヌ「せっかくキャルちゃんとお出かけしてるのに、はぐれちゃうのは悲しいです……」

キャル「ぐっ……」

ペコリーヌ「けど、嫌なら仕方ありませんね……。もしはぐれちゃったら、さっきの猫ちゃんたちの集会所で落ち合いましょうか」

キャル「……手」

ペコリーヌ「え? なんですかキャルちゃん?」

キャル「手、繋いでてあげる。どっか行かれても困るし、わざわざ探すのなんて面倒だもの。だから仕方なくよ。ほら、早くしなさい?」

ペコリーヌ「いいんですか? えへへ……ありがとうございます、キャルちゃん♪」

キャル「まったく、ほんっと手がかかるんだから! あたしがいないと全然ダメね~!」

9: 2019/05/02(木) 22:08:05.620
コッコロ「おや? キャルさまにペコリーヌさま。このようなところでお会いするとは、偶然でございますね」

ペコリーヌ「あっ! コッコロちゃんと、それからあなたも! おいっす~☆」

キャル「こんな人の多い場所で出くわしちゃうなんて、呪われてるんじゃないの……?」

コッコロ「ふふ……お二人はまるで姉妹のように仲良しでいらっしゃいますね♪」

キャル「ばっ……! 手を繋いでるのはこいつがはぐれないように仕方なくよ!」

キャル「そ、そういうあんたたちだって恋人同士みたいに手繋いでるじゃない?」

ペコリーヌ「きゃ、キャルちゃん……! からかったらかわいそうですよ……!」

コッコロ「あぁ……これはですね……主さまがはぐれてしまわないように……。主さまはもう既に三回も迷子になってしまっていて……」

キャル「簡単に想像ついちゃうところがなんとも悲しいわ……」

ペコリーヌ「そう言っているうちに、またどこかに行っちゃいそうですよ?」

コッコロ「はっ……! いつの間にかわたくしの手をすり抜けてフラフラと……!」

キャル「綱にでも繋いでおいた方がいいんじゃないかしら。マジメな話」

ペコリーヌ「お散歩の意味合いが変わっちゃいそうですね☆」

キャル「今も鬼ごっこみたいなものじゃない」

コッコロ「はぁ、はぁ……。なんとかお引止めすることができました……」

コッコロ「しかし申し訳ありません、キャルさま、ペコリーヌさま……。わたくしと主さまには、この人混みは少々難しくてですね……」

キャル「気を遣わなくていいわよ。適当な場所まで一緒に行きましょ」

コッコロ「い、いえ。お二人はどうぞそのままお楽しみくださいまし。主さまのお世話は、わたくしが精一杯努めますので」

コッコロ「おや……? あぁっ……! 主さま、お待ちください……! 主さま~……!」

ペコリーヌ「……行っちゃいましたね。大丈夫でしょうか?」

キャル「いつものことだしきっと平気よ。いつものことだし。はぁ~……」

11: 2019/05/02(木) 22:11:27.265
キャル「いろいろ見て回ったけど、あんまりそそられるものはなかったわね~」

ペコリーヌ「ねぇねぇ、キャルちゃんキャルちゃん。この髪飾り、かわいいと思いません? キャルちゃんにぴったりです♪」

キャル「どれ? ……へぇ~、猫の顔をかたどった髪留めかぁ。たしかにかわいいけど……うっ、5000ルピ……」

ペコリーヌ「すいませ~ん! これくださ~い☆」

キャル「ちょ、ちょっと! あたしお金ないんだってば!」

店員「お包みいたしますか?」

ペコリーヌ「そのままで大丈夫です。すぐにつけてあげたいんですけど、大丈夫でしょうか?」

店員「はい、きっと妹さんにぴったりですよ♪ お買い上げありがとうございました~」

ペコリーヌ「キャルちゃん、お待たせしました♪」

キャル「あんたねぇ……! 少しは人の話を聞きなさいよ! どうすんのよ、そんなに高いもの買っちゃって……」

ペコリーヌ「こうするんですよ。ジッとしててくださいね──」

キャル「うぅ~……! なんなのよ、もぉ~……!」

ペコリーヌ「はい、もういいですよ~。……あはっ♪ とっても似合ってます! やばいですね☆」

キャル「そりゃどうも……」

ペコリーヌ「それはですね、わたしからキャルちゃんにプレゼントです♪」

キャル「えっ? こ、これをあたしに?」

13: 2019/05/02(木) 22:14:52.818
キャル「いやいや、もらう理由がないわよ! お金はあるときにちゃんと払うから!」

ペコリーヌ「もらってくれませんか? 理由がないとダメでしょうか……?」

キャル「気持ちは嬉しいけど……。安もんじゃないしね……」

ペコリーヌ「う~ん……理由……。理由ですか……」

ペコリーヌ「あっ、じゃあキャルちゃんがかわいいから、っていうのはどうでしょう?」

キャル「はぁ? 意味不明すぎ。無理に理由づけしなくていいわよ」

ペコリーヌ「うぅ~……。ただキャルちゃんに喜んでほしかっただけなんですけど……」

キャル「……」

キャル「……あたしが喜ぶと、あんたは嬉しいの?」

ペコリーヌ「え? はい、もちろんです。大好きなキャルちゃんの笑顔を見てると、わたしすっごく元気になっちゃうんですよ~♪」

キャル「ふ~ん、そっか。そうなのね。ふふっ……♪」

キャル「やっぱりこれ、もらっておいてあげるわ」

ペコリーヌ「ほ、ほんとですか!?」

キャル「かわいくて気に入っちゃったのは事実だし。それにこれ、あたしに似合ってるんでしょ?」

ペコリーヌ「それはもう、最っ高にかわいいです♪ ぎゅ~って抱きしめたくなっちゃいます☆」

キャル「……」

ペコリーヌ「キャルちゃん?」

キャル「……ありがとね。大切にするから」

ペコリーヌ「えへへ……♪」

14: 2019/05/02(木) 22:18:33.879
キャル「そ、そろそろお昼にしましょうか……! ブラブラしてたから、ちょっと遅くなっちゃったけど……」

ペコリーヌ「……実はもうお腹ペコペコで倒れちゃいそうでした」

キャル「そういうのははやく言いなさいよ! あぁもう、どこか空いてるお店はあるかしら?」

ペコリーヌ「もう一個『実は』なんですけどね? 実は、お弁当を作ってきたんです。よかったら広場で食べませんか?」

キャル「えっ? けど今日は、急に出かけようってことになって──」

ペコリーヌ「ま、まぁまぁ! 細かいことはいいじゃないですか! あぁ~お腹が空いちゃいましたよ~! はやくしないと倒れちゃいますよ~!」

キャル「誤魔化すの下手すぎよ……。こっちが気ぃ遣うじゃない……」

キャル「まぁいいか。じゃああんたのお弁当をいただきましょ。座る場所、空いてるといいけど」

ペコリーヌ「もし混雑してるようなら、さっきの猫ちゃんたちと食べます?」

キャル「な、なんて恐ろしいことを言うのよ……! ダメよ! それだけは絶対ダメ!」

ペコリーヌ「むぅ……どうしてですかぁ~……」

キャル「いくら人馴れしてるとはいえ、ノラ猫はノラ猫! お弁当なんて広げてみなさい? あっという間に全部持ってかれちゃうわよ!」

ペコリーヌ「お弁当をにゃんにゃん齧ってくるなんてかわいいじゃないですか♪」

キャル「甘いっ! 甘すぎるわペコリーヌ! 食べ物を前にすると、かわいさなんて捨てて牙を剥くのが猫って生き物なのよ!」

ペコリーヌ「キャルちゃんはかわいくごはん
食べるのに」

キャル「あたしは人よ」

15: 2019/05/02(木) 22:22:48.503
ペコリーヌ「あっ、あそこ! 一番いいところが空いてますよ!」

キャル「よかった~、ペコリーヌのお腹もなんとか保ったわね。あんたが倒れたら、あたし一人じゃ運べないもの」

ペコリーヌ「そんなパタパタ倒れたりしませんよ。もし倒れちゃっても、おにぎりを口に詰めてくれたら復活しますし☆」

キャル「普段倒れないヤツは、倒れたときの復活の仕方なんて考えないっての」

キャル「ともあれ、スペースは確保できたんだしお弁当食べちゃいましょ。あれこれ言ったけど、あたしもお腹ペコペコよ」

ペコリーヌ「えへへ~、今日のお弁当は気合を入れて作ったんですよ~? なんと、おにぎりにサンドイッチ、それからオカズとデザートもあるんです♪」

キャル「へぇ~。おにぎりは想定内だとして、そんな豪勢に作ってくれたんだ? 俄然楽しみになってきたわ♪」

ペコリーヌ「まずは──って、順番に食べてるとキャルちゃんすぐお腹いっぱいになっちゃいますよね。ではでは~……一気にドーン☆」

キャル「おぉ~……! ほんとに気合入ってるわね~。どれから食べるか迷っちゃうわ♪」

ペコリーヌ「好きなものを好きなだけ食べていいですからね♪ わたしはやっぱり、おにぎりから☆」

キャル「最初はペコリーヌと同じやつにしようかしら。このおにぎり頂くわね。……それじゃあ──」

二人「いただきま~す♪」

16: 2019/05/02(木) 22:25:45.205
キャル「むぐむぐむぐ……」

ペコリーヌ「はぐはぐはぐはぐ♪」

キャル「……んっ。やっぱりあんたの作るご飯は美味しいわね。店で食べるよりも落ち着くっていうか──ううん、なんでもない」

ペコリーヌ「美味しく食べてもらえてるなら、頑張って作った甲斐がありました♪」

キャル「依頼で町の外に出かけるときは、いつもコロ助がお弁当作ってくれてるものね~」

キャル「あんたの作ったごはん。家で食べる料理じゃなくて、こうやってお弁当として食べるのって初めてなんじゃない?」

ペコリーヌ「そうですね♪ その場で食べちゃうお料理と、しばらく時間が経ってから食べるお弁当……それぞれ勝手が違ってきちゃうんですよ~」

ペコリーヌ「だから結構頭を使って考えなくちゃいけなくて──って、こんな話をされてもおもしろくないですよね。えへへ、ごめんなさい」

キャル「ううん、そんなことないわ。もっと聞かせてよ、あんたの苦労話」

ペコリーヌ「苦労話、ですか?」

キャル「そうそう。あんたって、何かあってもいっつもニコニコしてるだけでさ。愚痴のひとつも言わないじゃない?」

キャル「だから、あんたが普段何を考えてるのか~なんて、ちっとも分からないもの」

ペコリーヌ「う~ん……? キャルちゃんが思ってるより、わたしってずぅっと単純だと思いますよ?」

キャル「じゃあお弁当作りに苦労した話、途中でやめちゃったのはどうして?」

キャル「ほんとにつまらない話だと思ってるわけじゃないんでしょ? 話してるあんた、楽しそうだったし」

ペコリーヌ「うっ……。それはですね……えぇっと……」

キャル「なにモジモジしてんのよ。黙ってるならあたしが当てるクイズ形式にするわよ?」

ペコリーヌ「わっ、わっ……! それは恥ずかしすぎますから! 分かりましたよぉ~……もぉ~……」

17: 2019/05/02(木) 22:28:30.832
ペコリーヌ「……格好悪いところを見せたくないんです。これでも、ギルドでは一番年上ですから」

ペコリーヌ「彼は同い年くらいでしょうけど、知っての通り記憶喪失ですし……」

キャル「ふ~ん? へぇ~? カッコ悪いところ見せたくないんだ?」

ペコリーヌ「笑いたいなら笑ってもいいですよ~だ……」

キャル「ぷふっ……! あはははは! ふふっ、あははははは! ペコリーヌが? お姉さんぶってたってこと? あはははは!」

ペコリーヌ「むぅ~……」

キャル「その結果が、食い意地だけの食欲大魔神じゃない! んふふふふ……くくっ、あはははは!」

ペコリーヌ「お腹が空くのだけはどうしようもないんですよぉ……! うぅ……そんなに笑わなくたっていいじゃないですかぁ~……」

キャル「あぁ~、おっかしい……。ふふふっ……」

キャル「まさかペコリーヌがそんなかわいいこと考えてたなんてね~。あはは!」

ペコリーヌ「……やっぱり話さなければよかったです」

キャル「違うでしょ、バカ」

ペコリーヌ「えっと……?」

キャル「あたしにはもう知られちゃったんだから。これからはちゃんと全部話しなさいよ。今更カッコつけたって遅いんだし」

ペコリーヌ「また笑うじゃないですか……」

キャル「かもね。だって最高におもしろいもの♪」

18: 2019/05/02(木) 22:31:11.280
キャル「あんた、自分が一番年上だから~なんて言ってたけど。あたしにとって、そんなのどうだっていいことよ」

キャル「年上だから、なんて理由で気を遣ったりしないし、みっともなかったら笑いもするわ」

ペコリーヌ「うぅ……キャルちゃんはイジワルです……」

キャル「その分、年上だからってあんたに全部背負わせたりなんてしないし。辛いことがあったら慰めてあげる」

キャル「……あたしたち、同じギルドの仲間なんでしょ? だったらもうちょっと信じなさいよ」

ペコリーヌ「きゃ、キャルちゃぁん……」

キャル「ちょっ、泣くんじゃないわよ! 別に普通のこと言っただけでしょ!? ……あ~あぁ、鼻水垂れちゃってるじゃない」

ペコリーヌ「ぎゅ~……」

キャル「げっ……!? 抱きついたら鼻水ついちゃうでしょ!? 離れなさいよ!」

ペコリーヌ「あ……つい……。ずび~……」

キャル「ほら、ちり紙あげるから」

ペコリーヌ「ちーん……!」

キャル「まったく、ちょ~っとからかうつもりが……。どうしてこんなことになったんだか……はぁ~……」

19: 2019/05/02(木) 22:34:59.144
キャル「……」

ペコリーヌ「えへへ♪」

キャル「近いんだけど……」

ペコリーヌ「ぎゅ~っ☆」

キャル「鬱陶しいんだけど……」

ペコリーヌ「ちゅ~……」

キャル「ぎゃあああ!? あ、あんまり調子に乗るんじゃないわよっ! ……もうっ、なに赤ちゃんになってんの?」

ペコリーヌ「甘えていいって言ったじゃないですか」

キャル「頼ってもいいって言ったの! あたしには、コロ助みたいに赤ちゃんの世話する趣味なんてないんだから!」

ペコリーヌ「甘えん坊なお姉ちゃんは嫌いですか……?」

キャル「それ。それよペコリーヌ。前から気になってたんだけど、なんでちょっと姉妹感出してるわけ?」

キャル「コロ助もそんなようなこと言ってたし、さっきこの髪留めを買った店の店員だってそうじゃない」

ペコリーヌ「それだけ仲良しに見えるってことですよ♪ この町では、それぞれ種族が異なる姉妹も珍しくありませんし」

キャル「仲が良いだけで姉妹ならその辺のカップルなんて全員兄妹よ!」

キャル「大体なんであたしが妹なのよ? あんたよりよっぽどしっかりして見えるでしょ?」

ペコリーヌ「身長とか、身体つきとか……あとはオトナの余裕、ですね☆」

キャル「……ふんっ、ガキで悪かったわね」

20: 2019/05/02(木) 22:37:36.679
ペコリーヌ「はぁ~……♪ 拗ねてるキャルちゃんはかわいいですねぇ……♪ 食べちゃいたいくらいかわいいです~♪」

キャル「……比喩よね?」

ペコリーヌ「どうして離れるんですか? ねぇキャルちゃん」

キャル「適度な距離は大切よ? 近づきすぎない、踏み込みすぎない、食べない。ちゃんと守ってよね」

ペコリーヌ「三つ目はともかく、前二つは気をつけますね。ついつい押しが強くなっちゃうことがあるって、自分でも分かってるんです……」

キャル「あたしとしては三つ目だけちゃんとしてくれれば、他はまぁいいんだけど……」

ペコリーヌ「食べませんってばぁ~……。わたしをなんだと思ってるんですか……」

キャル「なら聞くけど、あたしとコロ助とあのバカ……もし食べるなら誰を食べる?」

ペコリーヌ「キャルちゃんです」

キャル「ほらぁっ!」

ペコリーヌ「今のは質問が悪いですよ。『もし食べるなら』って言うからじゃないですか」

キャル「それにしたって答えるのが早すぎじゃない? 考える間もなく即答したし」

ペコリーヌ「じゃあキャルちゃんはどうなんですか? わたしとコッコロちゃんと彼、もし食べるなら誰を選びます?」

キャル「食べるわけないでしょ。誰も選ばないわよ」

ペコリーヌ「ひとり選ばないとダメなんですぅ選ばなかったら自分が食べられちゃうんですぅ」

キャル「子供みたいなこと言うんじゃないわよ」

ペコリーヌ「先に子供みたいな質問してきたのはキャルちゃんですぅ」

22: 2019/05/02(木) 22:40:09.073
キャル「まったく……。ほら、口尖らせてないでそろそろ行きましょ」

ペコリーヌ「……抱っこして連れて行ってください」

キャル「はぁ? 無理に決まってんでしょ。重くて持ち上がらないわよ」

ペコリーヌ「貧弱キャルちゃん」

キャル「なによ、あんたあたしにケンカ売ってんの? ゴリラみたいな腕力のゴリリーヌからしたら、たしかにあたしなんて貧弱なモヤシよね! ふんっ!」

ペコリーヌ「……」

キャル「……」

ペコリーヌ「わたしはモヤシ、大好きですよ? 栄養たっぷりですから」

キャル「……あたしもゴリラは嫌いじゃないわ。強いし」

ペコリーヌ「えへへ……♪」

キャル「行くわよ、ペコリーヌ。もう一度あの猫の溜まり場に行ってみましょ」

ペコリーヌ「はいっ☆ ……あ、手繋いでくれるんですね♪」

キャル「せっかくここまで迷子にならずに済んだんだから、最後まではぐれたくないだけよ」

ペコリーヌ「そうですね、帰るまでずぅっと一緒がいいです♪」

23: 2019/05/02(木) 22:44:02.546
さび「みぃ……」

キャル「あれ? さっきと違って随分しょんぼりしてるのね? 何かあったのかしら?」

ペコリーヌ「どの子もションボリして、元気がないみたいです……。よしよ~し」

「みゅぅ……みゅ~……」

ペコリーヌ「ん~……? キャルちゃんキャルちゃん。どこかから、か細~い鳴き声が聞こえてきませんか? みゅ~って」

キャル「え? いや、分かんないけど……。どこかに子猫でも隠れてるのかしら?」

「みゅぅ……みゅぅ……」

ペコリーヌ「ほら! 絶対聞こえました! 弱々しくて、なんだか悲しくなっちゃう声です……」

キャル「気になるんなら探してみましょうか。とは言え、この猫の山の中からじゃ難しいわね」

ペコリーヌ「声がどこから聞こえてくるのかは分かりませんし……。どうしましょう……」

キャル「ねぇ、見てペコリーヌ……! この猫たち、みんな同じ方向を見てるわ! 視線の先は──」

ペコリーヌ「あっちです! わたしちょっと見てきますね!」

キャル「あっ、ちょっと! もぉ、走るのはいいけど猫たちを踏まないようにしなさいよ?」

ペコリーヌ「分かってま──わっとと! えへへ……」

キャル「見てらんないわね……。待ちなさい、あたしも行くわ」

24: 2019/05/02(木) 22:47:37.337
キャル「こっちはいないわね。どう? 子猫見つかった?」

ペコリーヌ「ど、どうしましょうキャルちゃん……」

キャル「なによ、そんな泣きそうな顔しちゃって。……何があったの?」

ペコリーヌ「こ、子猫さんがぁ……」

キャル「……っ……あんた、その血……!」

子猫「みゅぅ……」

キャル「ひどい怪我……! 氏にかけてるじゃない……!」

キャル「どいてっ! 少しなら回復魔法も使えるから……きっと助けられるわ!」

ペコリーヌ「お、お願いします……助けてあげて……」

キャル「分かってる……分かってるわよ……! くっ……」

子猫「……」

ペコリーヌ「キャルちゃん……? その子、鳴かなくなっちゃいましたよ……? ま、まさか……」

キャル「……いいえ、もう大丈夫よ。眠っただけだから。もう大丈夫……」

子猫「ぷぅ……ぷぅ……」

キャル「はぁ~……焦った~……」

キャル「あたしのウデじゃ治してあげられないかと思ったけど……。ふふ~ん、さすがあたしね~♪ 火事場の馬鹿力ってやつかしら?」

ペコリーヌ「治ったんですか……? 治ったんですね……! わぁ~いキャルちゃ~ん♪」

キャル「あっ、こらっ! 騒いだらこの子が起きちゃうでしょ?」

ペコリーヌ「ご、ごめんなさい……。しーっ、ですよね……」

キャル「傷は治せたけど、大分体力が落ちちゃってるのよ。今は寝かせてあげないと」

25: 2019/05/02(木) 22:50:40.577
キャル「少し離れて話しましょうか。よいしょ──わっ、あっ、ひゃあっ!?」

ペコリーヌ「だ、大丈夫ですか? 足、プルプルしちゃってますけど……」

キャル「腰抜けちゃった……」

ペコリーヌ「あらら。気が抜けちゃったんですかね? あっちまで、わたしが抱っこして運びますね。掴まっても、掴まらなくてもいいですよ~」

キャル「えっ、ちょっ待っ──」

ペコリーヌ「よっこいしょ~♪」

キャル「ひぁぁっ!? ど、どうしてお姫様抱っこなのよぉっ!?」

ペコリーヌ「どうして、って……運びやすいからですけど。キャルちゃん的にもこの体勢が一番楽だと思いますよ?」

キャル「ばかぁ~……! 恥ずかしいってば……!」

みけ「にゃ~」

くつした「にゃんにゃん」

ペコリーヌ「あれ? あれれ? 猫ちゃんたちが足下に集まってきちゃいました~! これじゃあ前に進めませんよ~……!」

キャル「はぁ!? どうすんのよ、こんな状態で足止めだなんて! 降りようにも降りられないし……あぁもぉ~っ!」

はちわれ「ごろごろ……」

キャル「あんたの足に乗っかってくつろいじゃってるじゃない! なんとかしなさいよっ!」

ペコリーヌ「なんとかって……なんともなりませんよぉ~……。わたしの体力はまだ持ちますから、しばらくこのまま我慢してください」

キャル「うぅ~……恥ずかしくて氏んじゃうわ……」

27: 2019/05/02(木) 22:53:52.060
ペコリーヌ「猫ちゃんたち、なんだかリラックスしてるみたいです♪ みんな、あの子猫のことが心配だったんでしょうか?」

キャル「……」

ペコリーヌ「なんですか? わたしの顔をじっと見つめて。ちゅーしちゃいますよ?」

キャル「すんなバカ! ていうか、あんたこの胸引っ込めなさいよ! 邪魔よ、邪魔!」

ペコリーヌ「無茶言わないでくださいよ。顔埋めちゃってもいいですから、我慢してください」

キャル「その気がなくても埋まるわよ……! もしこれで窒息して氏んじゃったら、あんたを頃すから!」

ペコリーヌ「言ってることがめちゃくちゃじゃないですかぁ~……」

ペコリーヌ「だいたい、窒息なんてしませんってば! わたしの胸をなんだと思ってるんですかキャルちゃんは……」

キャル「凶器よ! 凶器! 捥げろ!」

ペコリーヌ「もぉ~、キャルちゃんだってそろそろ大きくなるんですから、あんまりひどいこと言うと全部自分に返ってきちゃうんですからね?」

キャル「……」

キャル「大きくなるかしら……?」

ペコリーヌ「なりますよ。ちょうど育ち盛りじゃないですか」

キャル「そうかな……? そうだといいな……」

ペコリーヌ「揉むと大きくなるって聞きましたけど、試してみます?」

キャル「……」

ペコリーヌ「……冗談ですよ?」

キャル「わ、分かってるわよ……!」

28: 2019/05/02(木) 22:56:41.311
ぶち「ふにゃ、うにゃ~ん」

キャル「ふわぁふ……。ペコリーヌ~、なんか言ってるわよ~」

ペコリーヌ「どうしたんでしょうか? 子猫さんを助けたお礼に、山ほどお魚をくれるとか? やばいですね☆」

くつした「にゃ~ん」

ペコリーヌ「あっ、スペースを空けてくれたみたいです。今ならキャルちゃんを地面に降ろせそうですけど、降ります?」

キャル「降りたところで、狭い足場の中であんたと不安定に立ってなきゃいけないじゃない。降りる意味なんてないわ」

キャル「あたしを抱えたまま座っちゃいなさいよ。その方が有意義に空間を使えるでしょ?」

ペコリーヌ「キャルちゃんがそう言うならそうしましょうか。バランスが崩れちゃうと危ないですから、わたしの首に手を回して、しっかり掴まっててくださいね」

キャル「え、ええ、分かったわ……んしょ。いいわよ」

ペコリーヌ「じゃあ座っちゃいますね。……猫ちゃ~ん? ちょこっとだけ離れていてくださいね~?」

はちわれ「にゅ~……」

ペコリーヌ「よっこい……しょ、っと。ふぅ~♪」

キャル「お疲れさま。あたしは勝手にしがみついてるから、あんたは楽にしてていいわよ。腕も疲れちゃったんじゃない?」

ペコリーヌ「そうですね、ちょっとだけ疲れちゃいました……。キャルちゃんはとっても軽いですけど、時間が長かったので」

はい「みゃうみゃう」

しろ「みぃみぃ♪」

ペコリーヌ「空いた手に猫ちゃんたちがすり寄ってきちゃいました~♪ えへへ~、これじゃあ休まる暇がありませんね~♪」

キャル「あ、あたしもなでたい……おいでおいで……」

くろ「がぶーっ」

キャル「ぎゃあああ!? なんでーっ!?」

31: 2019/05/02(木) 22:59:41.292
キャル「この子は気難しい子なのかしら……」

くろ「ふしゃーっ!」

ペコリーヌ「あはは、なんだかキャルちゃんみたいですね♪」

キャル「あたしは誰彼構わず噛み付いたりなんてしないわよ」

ペコリーヌ「……」

キャル「ちょっと、なんか言いなさいよ」

くろ「みゃぁお……ぺろっ」

キャル「……あ」

くろ「ふーっ……!」

キャル「かわいく舐めてくれたと思ったら、またツンツンしてるわ……。何考えてるのか全っ然分からないわね……」

ペコリーヌ「やっぱりキャルちゃんみたいです♪ きっと寂しいんですよ、その子。甘えたいけど素直になれないんじゃないですか?」

くろ「……」

キャル「……ったく、つまんない意地張ってないでこっち来なさいよ」

くろ「ぷいっ」

キャル「なっ……! こいつぅ……! 人が下手に出てればいい気になっちゃって……! 来なさいってば! ほ~ら~!」

くろ「ふしゃーっ! ふしゃーっ!」

キャル「あはは! ほ~ら捕まえた~♪ 大人しくなで回されなさい! うりうり~♪」

くろ「みゃう……。みゃお~ん……♪」

キャル「ふふっ♪ 最初からそうやって素直になってたら、みんなにかわいがってもらえるのに。バカなヤツね~」

くろ「みぎゃーっ! ぎゃぁう!」

キャル「い゛ったいわね! ひっかくんじゃないわよ!」

ペコリーヌ「はぁ~……♪ かぁわいいですねぇ~……♪」

34: 2019/05/02(木) 23:03:36.743
ペコリーヌ「もががが……もごっ、むぐぐ?」

キャル「いつの間にか顔にまで猫が張り付いてるじゃない……。何言ってるか全然分かんないわよ」

さび「みぃ……♪」

キャル「……」

キャル「そのまま耳も塞いでてね」

きじとら「みゃう!」
あかげ「にゃお~ん!」

ペコリーヌ「ふがががが……」

キャル「……優しい言葉もいらないし、目を掛けてくれなくてもいい。なでてもらえなくたっていいわ。けど──」

キャル「あんたの膝は、あたしだけの場所よ? ここは誰にも譲らないんだから。ちゃんと空けておきなさいよね」

ペコリーヌ「ひゃるひゃん……?」

キャル「はぁ~。今日はあんたと出かけられてよかったわ。ふふっ……♪」

くろ「みゃお~?」

キャル「ペコリーヌってね、こう見えてとってもいい子なのよ? 案外世話焼きだし、それなりに頼りになるし」

キャル「お前もきっと気に入るわ。だって、あんたはあたしに似てるんだもの。そうでしょ?」

くろ「ぷいっ」

キャル「ふふん、いいわよ別に。ペコリーヌはあたしが独り占めしちゃうんだから♪ んふふ、あったか~い♪」

くろ「みゅ~……」

ペコリーヌ「もが~」

35: 2019/05/02(木) 23:06:09.312
ペコリーヌ「──ぷはっ!」

キャル「あら、猫の海で溺れずに済んだみたいね。あははっ、顔中毛だらけよ! ……ジッとしてなさい?」

ペコリーヌ「あぶぶぶ……」

キャル「はい、キレイになったわよ」

ペコリーヌ「はふぅ……ありがとうございます♪」

ペコリーヌ「ところでキャルちゃん。猫ちゃんたちと何かお話ししてたみたいですけど、どんなお話をしてたんですか?」

キャル「ナイショ♪ ねっ、チビ助?」

くろ「みゃおん」

ペコリーヌ「むぅ~……なんだか仲間ハズレみたいでさみしいですよぅ……」

キャル「ねぇペコリーヌ? 猫は好きだって言ってたわよね? じゃあ、あたしは? あたしのことも好き?」

ペコリーヌ「どうしたんですか、急に? ナゾナゾですか?」

キャル「んなわけないでしょ。違うわよ。いいから答えて」

ペコリーヌ「もちろん大好きです。ここの猫ちゃんたちには申し訳ないですけど、わたしはキャルちゃんのことが一番好きですよ♪」

キャル「ふふ~ん♪ だってさ、チビ助。羨ましい?」

くろ「がぶーっ」

キャル「み゛ゃーっ!?」

ペコリーヌ「あはは、何やってるんですか~♪」

36: 2019/05/02(木) 23:09:47.031
ペコリーヌ「そういうキャルちゃんはどうなんですか? わたしのこと、ちゃんと好きですか?」

キャル「キライよ」

ペコリーヌ「が~ん……!」

キャル「……懐いてほしかったら、もっとかわいがってみれば?」

キャル「そうすればさ……少しくらいなら、好きになってもらえるかもしれないわよ……?」

ペコリーヌ「キャルちゃん、もしかして甘えたくなっちゃいました?」

キャル「うっさい! 空気読んで黙ってなでなさいよ!」

ペコリーヌ「……よしよし♪」

キャル「ん……」

ペコリーヌ「わたしは」

ペコリーヌ「わたしは。キャルちゃんも知ってるように、単純でニブいです」

キャル「うん……?」

ペコリーヌ「ですから、キャルちゃんのしたいこと、してほしいこと……気づけないことがきっとたくさんあります」

ペコリーヌ「でも──」

キャル「……」

ペコリーヌ「いつだって、どんなときだって、わたしはあなたを想っていますよ。……大好きですから」

キャル「ぺ、ペコリーヌ……?」

ペコリーヌ「ぎゅってしてもいいですか?」

キャル「……好きにすれば?」

ペコリーヌ「はい……♪ では──」

キャル「……」

キャル「……♪」

37: 2019/05/02(木) 23:12:26.896
ペコリーヌ「ん~っ……! 今日はたっくさん遊びましたね~☆」

キャル「すっかり日も暮れちゃったわね~。猫たちともたくさん遊べたし、大満足の一日だったわ♪」

ペコリーヌ「また今度、猫ちゃんたちに会いに行きましょうね。あの子猫さんの様子も見に行ってあげたいですし!」

キャル「あの子、目が覚めたあとも元気そうで安心しちゃった。とりあえず今日のところはもう心配いらないと思うわ」

キャル「けどまぁ、また怪我でもしてたらかわいそうだしね。あんな大怪我はさすがにもうしないでしょうけど」

ペコリーヌ「今度は元気に遊ぶ姿もみたいです♪ あ、そうだ! 次はコッコロちゃんたちも連れて四人で行きましょう!」

キャル「ふふっ……マヌケ面で猫たちにもみくちゃにされるあいつの顔が眼に浮かぶわ!」

ペコリーヌ「コッコロちゃんがオロオロしながら、猫の山からあの人を助け出すんでしょうか? んふ~っ……かわいすぎですっ! やばいですね☆」

キャル「きっと大騒ぎね。はぁ~……。ペコリーヌひとりでも大変なのに、あいつらまでいたらあたしの精神がもたないかもしれないわ……」

ペコリーヌ「それなら大丈夫です! またわたしがお弁当を作りますから!」

キャル「それでなにがどう大丈夫なのよ」

ペコリーヌ「美味しいご飯を食べれば、心まで元気いっぱいになれるじゃないですか。今日と同じように、またキャルちゃんの好きなものだけを──」

ペコリーヌ「……」

キャル「ふ~ん? わざわざあたしが好きなものだけ作ってくれてたんだ?」

ペコリーヌ「あっ! 見てくださいキャルちゃん! お月さまがあんなにキレイですよ!」

キャル「……まっ、誤魔化されといてあげるわ」

キャル「こうしてのんびり歩きながら、あんたと月を見る日が来るなんてね~。……うん、悪くない気分だわ♪」

38: 2019/05/02(木) 23:15:18.691
ペコリーヌ「お月さまを見てたら、なんだかお腹が空いてきちゃいました……。黄色くて、まんまるで……じゅるり」

キャル「風情もなにもあったもんじゃないわね……。帰ってコロ助たちと合流したら、みんなでご飯にしましょ」

ペコリーヌ「ぐるるる~……あ、お腹が鳴っちゃいました……」

キャル「はいはい、急いで帰りましょうね」

ペコリーヌ「ゆっくりでいいですよ? ゆっくり帰りましょう? ね?」

キャル「でもあんた、お腹が──」

ペコリーヌ「お腹は我慢しますから。もう少しこのまま二人で……」

キャル「……あたしも疲れちゃったし? ペコリーヌが、ど~~してもって言うんなら、あんたのペースに合わせてあげてもいいけど?」

ペコリーヌ「ほんとですかっ!? じゃあじゃあ、向こうで少し休んでいきましょう☆ 空がとってもキレイに見える場所があるんです♪」

キャル「そんないきなり走ったら、すっ転んで怪我するわよ~」

ペコリーヌ「キャルちゃ~ん! はやくはやく~♪ 置いてっちゃいますよ~?」

キャル「疲れてるっつってるでしょうが。まったく……待ちなさいよ! ペコリーヌ~!」

ペコリーヌ「あ、そこ段差ありますからね」

キャル「わわわっ……! っとと、はやく言いなさいよ……。危うく転ぶところだったじゃない……」

ペコリーヌ「やっぱり手を繋いで行きましょうね。こうしていると安心です♪」

キャル「そうね。転ぶときはあんたを道連れにできるし」

ペコリーヌ「転びませんよ。わたしが転ばせません」

キャル「……そう」

39: 2019/05/02(木) 23:18:28.299
キャル「ただいま~」

コッコロ「おや、お二人とも随分と遅いお帰りでしたね? 夕食を先に頂いてしまおうかと、主さまと相談していたところです」

ペコリーヌ「ごめんなさい、コッコロちゃん……。つい、ゆっくりしちゃって……」

コッコロ「お気になさらず。お二人の様子を見れば──いえ、余計な話でございますね」

コッコロ「さっそく夕食にいたしましょう。火にかければすぐに完成ですので、先におててを洗って来てくださいね♪」

ペコリーヌ「は~い♪」

キャル「全部任せちゃって悪かったわね、コロ助。お礼に今度ペコリーヌが何かご馳走するわ」

ペコリーヌ「わたしですか!? まぁいいんですけど。お店、考えておきますね♪」

コッコロ「ふふ、主さまと楽しみにお待ちしております」

キャル「さっ、ペコリーヌ。さっさと手を洗いに行きましょ。シャワーも浴びたいところだけど、それは食べてからね」

ペコリーヌ「一緒にシャワー……」

キャル「ダメ」

ペコリーヌ「あぅ~……」

キャル「ちょっと、いつまであたしの手握ってるつもりよ。これじゃ手が洗えないでしょ?」

ペコリーヌ「あわわ、ごめんなさい!」

キャル「甘えんぼは二人のときだけにしなさい? あいつらの前では、カッコいい歳上のお姉さんなんでしょ? ぷぷぷ……」

ペコリーヌ「そうでした……! きゃ、キャルちゃん、二人には今日のこと、ナイショにしておいてくださいね……?」

キャル「言われなくてもこんな話できないっての……。あんたの方こそうっかり口滑らせるんじゃないわよ?」

40: 2019/05/02(木) 23:22:17.337
コッコロ「ん~っ……んぅ~~っ……! もう少しで……届っ……とど──」

ペコリーヌ「このお皿ですか? はい、コッコロちゃん♪」

コッコロ「ありがとうございます、ペコリーヌさま♪ 主さまはお腹ペコペコで、食卓から動けなくなってしまっていたので……。とても助かりました」

ペコリーヌ「お料理を運ぶの、お手伝いしますね! コッコロちゃんの特製晩ご飯~♪ 楽しみすぎてよだれが垂れちゃいそうです☆」

コッコロ「ふふ……♪ ペコリーヌさまはたくさん召し上がりますから、おかわりもたんとご用意いたしました。遠慮せず、お好きなだけ召し上がってください♪」

キャル「……」

コッコロ「主さま~、お待たせいたしました~。……ふふ、そのように満面の笑顔で待たれていると、おいしく召し上がっていただけるか、少し緊張してしまいますね」

ペコリーヌ「……キャルちゃんキャルちゃん」

キャル「なによ、そんな小声で。はやくそれ、食卓に並べちゃいなさいよ」

ペコリーヌ「キャルちゃんは後で二人のときに、たぁっくさん甘やかしてあげますから」

キャル「んなっ……!?」

ペコリーヌ「は~い、お待たせしました~♪ これでお料理は全部揃いましたよね? あとは……じゅるり……美味しく食べるだけですね☆」

キャル「クソッ、ペコリーヌのやつぅ……! あとで氏ぬほどイジワルしてやるんだから……!」

ペコリーヌ「キャルちゃ~ん、はやくお席に着いてくださいよ~」

キャル「分かってるわよ、うるさいわね。まったく……よいしょっと。……ペコリーヌ、もう少しこっち寄りなさいよ」

ペコリーヌ「ぴっとり~♪」

コッコロ「こほん。それでは、本日も全員でおいしく──」

キャルたち「「「「いただきます!」」」」



おしまい

41: 2019/05/02(木) 23:28:23.628
おつ

引用元: キャル「暇。つまんない」 ペコリーヌ「二人でお出かけしましょうか♪」