11: 2005/09/25(日) 00:43:03 ID:???
「バカのシンジは何処へ行ったあ!」

どかーん!と音立ててミサトの執務室のドアを蹴り破ったのは、
他でもない旧姓惣流、今碇のアスカだった。

カップ麺を吹きこぼしそうになりながら、

「こらー!上司の仕事部屋を何だと心得るかー!」

とりあえず怒ってみるミサト。
それに対して

「あら、いいもん食ってんじゃん。お食事中失礼…それはさておき」

ずかずか歩み寄るや、剣呑極まりない視線でミサトを見据えて

「シンジのバカ、知らない?隠し立てすると、ミサトとは言えただじゃ置かないわよ?」

細い指をべきぼき鳴らしてみせたりするアスカ。

12: 2005/09/25(日) 00:45:47 ID:???
ミサトは動じず、ちゅるんとカップ麺の残りを飲み込んでから、至極うんざりとした目で

「なによ、また夫婦喧嘩~?」
「あのバカ、待ち合わせの時間にも来ないだけじゃなく、
携帯の電源も切りやがってるのよ!
まったくこそこそこそこそと!」
「電源切ってるんじゃなくってジオフロントの中なんでしょ。
大体アンタ、ちゃんと待ち合わせの時間って決めてたの?」
「月曜午後1700!先週もここで待ってろって言ったんだから、
今週も待ってるのが筋ってもんなのよ!」
「なんでそうなるのよ」

ミサト、スープまで全部飲み干してから、容器と箸を後ろにポイ
…片付けの苦手な人間のゴミ捨ては、3ポイントシュートが基本だ…
話聞く気ナッシングなミサトの態度に、アスカブチ切れ寸前。

13: 2005/09/25(日) 00:49:13 ID:???
「いー加減、もう少しはシンジ君の事信じてあげたらどうなの?」
「あんな浮気者の甲斐性なしの、何処をどう信じろってのよ!」
「それはアンタの方が良く知ってるだろうから言わないけど、いままでに
アンタがかけた嫌疑の107件中106件までが冤罪だったんだからね。
普通なら誰だってアンタみたいな癇癪持ちの旦那さんやってるシンジ君の方を
信じたくなるってもんだわよ」
「その冤罪じゃなかった1件が、ファースト相手じゃなけりゃあ、もう少しは
考えてやっても良かったんだけどねえ!」
「ていうか、レイといい感じにまとまりそうだったのを、横から強奪していったのが
アスカだったんじゃん。しかも結婚前の話」
「うーううううううるさいわね!それはそれ!これはこれ!」

人の色恋沙汰に首を突っ込む様な野暮はしたくないから黙っていたし、
あのまま放置していたらレイもシンジも未だに中学生みたいな恋愛してたに
違いないから、結果としては良かったのかもしれないけど。
今でも白いハンカチをくわえてシンジ君の後ろ姿を物陰から見つめているレイの姿を
思い出すと、なんとも忍びないものがある。

14: 2005/09/25(日) 01:04:52 ID:???
「とにかく、あたしは知らないわ。あとはリツコにでも聞いてみるのね。
MAGIの何パーかでも貸してもらえれば、即アタリがつくんじゃないの?」
「くっ…拳銃と同じくらい最後の手段にしたかったんだけど、仕方ないわね…邪魔したわ」

マホガニーの観音開きがばたん、と閉じられてアスカ退出。
ミサトはほうっと一息ついて後ろを見やると、

「もう出てきても大丈夫よー。今からでも追いかけてあげたら?」

かくして、ミサトの背後でカーテンを揺らして現れたのは、カップ麺の
空き容器と割り箸片手に、推奨しきった顔のシンジだった。

「追いかけたいのは山々なんですけど…」

主夫根性の悲しさ、手にした容器をきちんとゴミ箱に放り込んでから、

「いま追っても、即時殲滅されるのがオチですから…。
もう少しだけ、アスカが疲れるのを待たせてください」

幽玄めいた生気の無さ。

「疲れてるわねえ」
「疲れてます…」
「いっそ、少しの間でもアスカと離れて暮らす事、考えた方がいいんじゃない?
距離を置いてお互いの事を見つめなおすっての、何も結婚後にやっちゃいけないって
法は無いと思うけど?」
「それだと、アスカの方が先に参っちゃいますから。難しいけど、頑張ります」

夫婦の機微って奴にも色々あるのよねえ。
未婚のミサトには想像の域を出ないものだが、シンジのそれが、アスカに境界線を
踏み越えさせないための、苦汁の策だということくらいはわかる。

16: 2005/09/25(日) 01:18:44 ID:???
と、そこでミサトのデスクの電話が鳴った。

「もしもしぃ?」
「ミサト?いまアスカを追い返したわ。ああなるとまるで子供ね。
すっかりしょげかえって、半べそだったわよ」

あっちゃあ、薬が効き過ぎた!

シンジの走り出す気配に、

「大回りになるけど、ルートはO-37を使いなさい。電算区域で携帯電話は通じず、
ここともリツコの部屋とも離れてるわ。AOジャンクションで接敵できるでしょ」

ありがとうございます!
遠ざかっていく声と後ろ姿にひらひら手を振りながらミサト。

「あんなんでも夫婦ってんだから、なんなんだかねえ」

苦笑を禁じ得ないが、かといってアスカの面倒見られる他の人間ってのも、
そう簡単には思いつかない。

「ま、結婚が人生の墓場ってわけでなし。アンタたちみたいなのは、
墓場を花畑にすることでも考えながら、毎日過ごしてりゃいいのよ」

椅子の上でぬーっと伸びをしてミサト。
カップ麺くさいげっぷを漏らして、そう思った。

23: 2005/09/25(日) 22:09:24 ID:???
「…ただいま」
「おっかえりなさいシンジ様ぁ~」
「うっ…た、ただいま」
「ここでクイズです!寂しいと氏んじゃう生き物ってなんだ?」
「…(また始まった…)」
「分からないかな~?ヒントは小さくて弱々しくてとっても可愛いのよ」
「あ!わかった。ウサギだねアスカ」

「…」
「ねぇ、機嫌治してよ…」
「…アンタなんてカップ麺でも食ってなさいよ…」
「そんな…お腹減っちゃったよ……僕」
「…うるさい!」

「…」
「どっか食べに行く?」
「…」
「確か通りのエスニック料理の店なら九時までやってるし…
 そこが閉まってたらファミレスで我慢してね
 あ!明日は休みだしお酒でも飲もうか?駅前に魚の美味しいお店があるんだよ」
「…あぅ」
「ほら、行こう。久しぶりにデートだよ。デ・エ・ト」
「…あぅあぅ」

69: 2005/10/02(日) 04:31:58 ID:???
せっかく籍を入れて夫婦水入らずになったはずなのに、
二日目にしてミサトに夕食をたかられ、血管が切れそうなアスカさん。
三日目は綾波レイに夕食をたかられた挙げ句、布団まで貸すハメになって血管が切れたアスカさん。
四日目には何故かしれっと戻ってきた鋼鉄のマナに夕食、布団どころか朝食まで供することになり、
切れた血管から初号機のごとく血のしぶきを吹き出して怒り心頭に発したアスカさん。

「なんでそんなに怒ってるの?」
小動物的に小首をかしげて、甲斐甲斐しく闖入者たちに食事を振る舞い、
おろしたてのシーツでベッドメークをしてのけたシンジ君相手に
「アンタがはっきり断らないからでしょおおおおお!!!!???」

五日目にはちゃんと二人きりで過ごせたので、翌日は何事も無かった様な上機嫌で
ネルフに出勤するアスカさん。

一方、一身上の都合で五日目はお休みすることになったシンジ君。
その日一日、アスカが帰ってくるまで、氏んだ魚の様な目で、ベッドの上で
膝を抱えてぶつぶつ言って過ごしたらしい。

流石に見かねて「…悪かったわよ」と、亜鉛のサプリをシンジ君に手渡すアスカさん。

穏やかなすれ違いと和解を重ねて日々を過ごせる様になった事に、思ってたよりも
結婚って悪くないなあと、ほんのり頬を染めるアスカさん。
もうちょっとだけアスカがおとなしくなってくれれば、もっと言う事ないんだけどなあと、
結婚自体には最初から賛成だったけど、今後のダメージの蓄積が少しだけ怖いシンジ君。

そんな二人。

72: 2005/10/03(月) 01:10:50 ID:???
シンジとアスカの寝室勤務 月月火水木金金


引用元: シンジとアスカの夫婦生活 二日目