ｶﾞﾗｶﾞﾗ

夫「や！嫁ちゃん」

嫁「やっほー！夫くん！」

夫「今日は天気がいいね！」

嫁「見て見て！私の体からちゃんと酸素出てる？」

夫「出てる出てる！ちょうど酸素欲しいとこだったんだ」ｽｽｽｰｰｰﾊｰｰｯ

嫁「さあさあ新鮮な空気を存分に味わうがいい！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「今日も絶好調だね！」

嫁「おうよ！それにしても今日は来るの早かったね！」

夫「１ヶ月お休みもらってきたんだぜ！」

嫁「すごい！でも大丈夫なの？」

夫「部長が嫁ちゃんとしっかり楽しんであとでしっかり働けだって！」

嫁「部長いい人！でもほんとうにいいの？」

夫「休みの日に仕事の話はNGだよ！」

嫁「失礼した！」

夫「許す！」

嫁「ありがたきお言葉！」

嫁「ねえねえ夫くん！」

夫「どうした！」

嫁「空ってなんで青いか知ってる？」

夫「それ昔テレビで見た記憶が…あ、そうだ！」

嫁「なになに！？」

夫「海が空に反射してるから青いって言ってた！」

嫁「うっそだー！」

夫「ほんとだって！」

嫁「ここ街中じゃん！海ないじゃん！」

夫「それは…えっと…」

嫁「夫くんは無知ぃー！むちむちぃー！」

夫「嫁ちゃんのふともももむちむちぃー！」

嫁「むっちむちやぞ！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「そんなむちむちの嫁ちゃんはなんで空が青いか知ってるの？」

嫁「おうよ！」

夫「ぜひ教えて！」

嫁「青が１番綺麗だから！」

夫「今日も綺麗な青だね！」

嫁「おっ！あの雲はおいしそうだ！」

夫「わたあめみたいだね」

嫁「夏祭りで一緒に食べたわたあめおいしかった！」

夫「嫁ちゃんがベタベタの手で襲ってきたのを思い出した！」

嫁「だって夫くんだけ金魚いっぱい取れてたもん！」

夫「僕があとで２匹あげたよね！」

嫁「うん！たくさんは育てられないから２匹もらった！」

夫「嫁ちゃんは生き物が大好きだよね！」

嫁「私の１番好きな生き物なーんでしょ！」

夫「犬！」

嫁「夫くん！」

夫「嬉しい！」

嫁「犬も好き！」

夫「僕も犬が好き！」

嫁「私は？」

夫「大好き！」

嫁「付き合い始めた頃みたいだね！」

夫「あの頃も楽しかったね！」

嫁「付き合い始めたのは高２の夏だね！」

夫「うん！嫁ちゃんが初めての彼女！」

嫁「私も夫くんが初めての彼氏！」

夫「初めて一緒に帰ったときお義父さん家の外で待ちかまえてたね！」

嫁「あはは！夫くんすごくびびってたね！」

夫「いきなり『娘はやらん！』って言われたからね！」

嫁「夫くん慌てちゃって『絶対もらいます！』って言ってたよね！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「何か言わなきゃと思って！」

嫁「お父さん固まっちゃってたよね！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「ほんと高２でよくあんなこと言えたと思う！」

嫁「そういう真っ直ぐなところがずっと好きだった！」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

夫「や！嫁ちゃん」

嫁「やっほー！夫くん！」

夫「りんご買ってきた！」

嫁「色は！」

夫「みどり！」

嫁「でも青りんご！」

夫「今日は僕が剥く！」

嫁「頼んだ！」

夫「頼まれた！」

嫁「うさぎにして！」

夫「任せて！」ｼｬﾘｼｬﾘ

嫁「ちょっと待って！」

夫「どうした！」

嫁「うさぎは赤りんごだ！」

夫「これはみどり色だ！」

嫁「カエルか！」

夫「カエルだ！」

嫁「でもカエルには長い耳がない！」

夫「長い足がある！」

嫁「それだ！足だ！」

夫「できた！」

嫁「上手にできたね！」

夫「でも嫁ちゃんには勝てない！」

嫁「まだまだ甘い！」

夫「りんごも甘い！」

嫁「こんな甘い日々がどうしようもなく幸せだ！」

夫「先に言われた！」

嫁「あはは！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「今日の体調は？」

嫁「ばっちりだぜ！」

夫「外を散歩しようか！」

嫁「うん！散歩しよう！」

夫「手を握って！」

嫁「よしきた！」ｷﾞｭｯ

夫「準備OK！」

嫁「出発！」

夫「初デートを思い出した！」

嫁「わたしも！」

夫「映画を観たね！」

嫁「映画はあんまり面白くなかったね！」

夫「緊張で何回もトイレに行った！」

嫁「あはは！覚えてる！」

夫「その後もうまくしゃべれなかったよね！」

嫁「２人ともすごく緊張してたね！」

夫「なんとかしなきゃと思って手を握った！」

嫁「すごく嬉しかった！」

夫「離したくないと思った！」

嫁「あの日から今まであなたの隣でよかった！」

夫「また先を越された！」

嫁「あはは！」

夫「これからもずっと隣だ！」ｷﾞｭｯ

嫁「隣だ！」ｷﾞｭｯ

夫「今日もいい天気だね！」

嫁「今日も素晴らしい青空だ！」

夫「あの空に嫁ちゃんは行くんだね！」

嫁「うん！先に向こうで待ってる！」

夫「必ず迎えに行くからね！」

嫁「寄り道しながらでいいからね！」

夫「わかった！お土産話たくさん持ってくる！」

嫁「ねえ夫くん！」

夫「なんだい嫁ちゃん！」

嫁「私が空にいったら別の人を好きになって！」

夫「わかった！」

嫁「約束だよ！」

夫「嫁ちゃんより素敵な人がいたら好きになる！」

嫁「あはは！それも約束だよ！」

夫「約束だ！」

夫「そろそろ戻ろうか！」

嫁「もう少しだけ！」

夫「わかった！あそこのベンチに座ろう！」

嫁「よし！座ろう！」

夫「プロポーズのときを思い出した！」

嫁「懐かしい！でも全部覚えてる！」

夫「僕も全部覚えてる！」

嫁「駅前のベンチでプロポーズしてくれたね！」

夫「あのときが今までで１番緊張した！」

嫁「『僕の隣に一生いてください！』って言ってくれたね！」

夫「返事をもらうときすごくドキドキした！」

嫁「返事をするときすごくドキドキした！」

夫「指輪を渡すときすごくドキドキした！」

嫁「もらったときドキドキした！」

夫「『ありがとう！よろしくお願いします！』って笑ってくれたときすごくドキドキした！」

嫁「でも慌てちゃって右手薬指に指輪はめてくれたね！」

夫「それは２人の一生の秘密だよ！」

嫁「あはは！秘密だ！」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

夫「や！嫁ちゃ…」

嫁「すー、すー、すー」

夫「今日はちょっときつそうだね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

嫁「すー、すー、すー」

夫「今まで何度も余命を乗り越えてくれてありがとう」

嫁「すー、すー、すー」

夫「嫁ちゃんが生きてくれてたから、僕は生きてこられたよ」

嫁「すー、すー、すー」

夫「でもこれからは僕１人でしっかり生きていくから」

嫁「すー、すー、すー」

夫「安心して大好きな空に行っていいよ」

嫁「すー、すー、すー」

夫「ちょっと遅くなるけど、待っててね」

嫁「すー、すー、すー」

夫「嫁ちゃんを守ることはできなかったけど」

嫁「すー、すー、すー」

夫「この約束だけは、必ず守るから」

嫁「すー、すー、すー」

夫「もう泣かない…で、笑ってずっと一緒に…いよう…って言ったけど」

嫁「すー、すー、すー」

夫「ちょっとだけ…許してね…」

嫁「すー、すー、すー」

夫「もっど…嫁ぢゃんと…生ぎてたかっだなあ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

嫁「すー、すー、すー」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

嫁「……ん」ﾊﾟﾁﾘ

夫「すー、すー、すー」

嫁「ふふふ、手握ったまま寝ちゃってる」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

夫「すー、すー、すー」

嫁「目が腫れてる。泣いたのかな？」

夫「すー、すー、すー」

嫁「こんな体の弱い嫁でごめんね」

夫「すー、すー、すー」

嫁「夫くんにはたくさん我慢させたね」

夫「すー、すー、すー」

嫁「夫くんに出会えて本当によかった」

夫「すー、すー、すー」

嫁「夫くんのお嫁さんになれて本当に幸せだった」

夫「すー、すー、すー」

嫁「生きてて本当によかった」

夫「すー、すー、すー」

嫁「先に向こうで待ってるから、またプロポーズしてね」

夫「すー、すー、すー」

嫁「大好き！」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

夫「や！嫁ちゃん」

嫁「やっほー！夫くん！」

夫「花を持ってきた！」

嫁「きれいなお花！ありがとう！」

夫「ここに飾っておこう！」

嫁「部屋が華やかになった！」

夫「よかった！僕も鼻が高いよ！」

嫁「ねえ夫くん！」

夫「なんだい嫁ちゃん！」

嫁「そろそろ１ヶ月になる！」

夫「そうだね！」

嫁「もうすぐだと思うからよろしく！」

夫「わかった！」

嫁「一生懸命頑張ってみた！でも多分ここまでが限界だと思う！」

夫「嫁ちゃんはここまでよく頑張ったよ！もう頑張らなくていいよ！」

嫁「少し楽になった！ありがとう！」

夫「僕の方こそ！」

嫁「最後は笑っていたいね！」

夫「笑っていよう！」

嫁「抱きしめて！」

夫「うん！」ｷﾞｭｯ

嫁「夫くんの心臓の音が聞こえる！」

夫「僕も嫁ちゃんの心臓の音が聞こえる！」

嫁「私ちゃんとまだ生きてる！」

夫「うん！今もこれから先もずっと僕の胸の中で嫁ちゃんは生きてるよ！」

嫁「あはは！」

嫁「ねえ夫くん！」

夫「なんだい嫁ちゃん！」

嫁「このお花の名前なんていうの？」

夫「紫蘭！」

嫁「しらん？」

夫「違うよ！シランていう名前の花だよ！」

嫁「そうなんだ！知らないかと思った！」ｹﾗｹﾗｹﾗ

夫「この間までは知らなかったよ！」

嫁「結婚記念日はいつも花束くれたよね！」

夫「嫁ちゃんの喜ぶ顔が見たいから！」

嫁「私はもらってばかりだったね！」

夫「嫁ちゃんもたくさんくれた！」

嫁「愛なら誰にも負けないくらいあげた！」

夫「僕だって負けないくらい愛をあげた！」

嫁「ちゃんと空にもっていくね！」

夫「落っことしちゃダメだよ！」

嫁「あはは！」

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ｶﾞﾗｶﾞﾗ!!!!!!!!!






夫「嫁ちゃん！！」ﾊｧﾊｧ


嫁「やっほー夫くん！」ｽｰｽｰ


夫「大丈夫？」


嫁「そろそかな！」ﾆｺｯ ｽｰｽｰ


夫「…そっか！」


嫁「やっぱり少し怖いかな！」ｽｰｽｰ


夫「大丈夫！僕が側にいるから！」


嫁「夫くんが側にいるなら安心だね！」ﾆｺｯ ｽｰｽｰ


夫「嫁ちゃんの最期はこの目で見届けるって約束だからね！」ﾆｺｯ


嫁「私は幸せものだ！この世で１番の幸せ者だ！」ｽｰｽｰ


夫「僕だって！…うっ」


嫁「せっかくお花もらったのにね！」ｽｰｽｰ


夫「あの花…紫蘭の花の、花言葉はね…」


嫁「"変わらぬ愛"だね！」ﾆｺｯ ｽｰｽｰ


夫「最後まで先を越されちゃったね！でももう１つの意味があってね…」ﾆｺｯ…


嫁「あはは…教えて！」ｽｰｽｰ












夫「"あなたを忘れない"」ﾆｺｯ…ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ












嫁「…うっ…そっかぁ……ありがどう！ほんどうにありがどう！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

夫「結局泣いちゃったね！」ﾆｺｯ ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


嫁「泣きながら笑おう！」ﾆｺｯ ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


夫「そうだね！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

嫁「じゃあ、そろそろ行くね！」




夫「うん！」




嫁「夫くん、愛してる！」




夫「僕も愛してるよ、嫁ちゃん！」




嫁「あはは！…ﾆｺｯ!…………………
















夫「ゆっくり休んでね、嫁ちゃん！」ﾆｺｯ


-fin-

逝ったのか……(´；ω；｀)

乙

ここまで読んで頂きありがとうございました。自分でも途中で書いてて悲しくなりました。きっと空で再会できたと思います。

くそ、こんなスレ開くんじゃなかった；；

ふたりの明るさが救いだった