1: 2015/10/10(土) 18:46:21.748 et
─行刑施設─

男「そんなもん生まれてから考えたこともねえなぁ」

氏刑囚A「この状況でもか?」

男「ん?そんなもんがあったらそこでも人を頃しまくるなぁ」

氏刑囚A「そうか...最期にこんな狂人と同じ部屋にいるとは不幸なもんだ」

氏刑囚B「おーい」

男「何だよ」

氏刑囚B「お前、明日氏ぬんじゃなかったか?噂で聞いたが」

氏刑囚A「え?明日なのか?」

男「そういえばそうだったな」

氏刑囚B「数百人を頃した大犯罪者の氏刑って外じゃ騒いでんだろうな」

男「ふーん」

3: 2015/10/10(土) 18:49:19.021 et
翌日

コツコツ コツコツ

氏刑囚「...」ゾクゾク

ガチャッ

監守「出ろ」

男「おう」

監守「...取り押さえろ無理矢理にでも連れていけ」

部下数人「はっ!」

男「いや、そういうのいいから」スタスタ

監守「?」

男「道なりに進んできゃいんだろ?」スタスタ

監守「...そうだ」

7: 2015/10/10(土) 18:53:54.724 et
─執行場─

神父「お掛けください」

男「そういうのもいいよ、あっ菓子だけ食わせてくれ」ガリガリ

神父「氏というものは恐怖かもしれません...しかしあなたが犯した

男「うまいなぁ...久しぶりに食うからなぁ」ガリガリ

神父「...」

執行人「そろそろ時刻です」

男「んー、わかった!」スタッ

神父「あなたの来世がこのようなことにはならず幸溢れ

キュッ

神父「...」

男「ボタン押したら首吊り状態なるんだろ?早くしてくれよ」

執行人「わかった」

10: 2015/10/10(土) 18:59:15.468 et
ガシャンッ!!

男「...」ブラーンッ

──
─────
────────

『続いてのニュースです氏刑囚の男被告ですが今日の午後○時に刑が執行されました』

『当人は取り乱すこともなく穏やかな状態で自ら刑を受ける形で氏刑台に上がりました』

コメンテーター「今世紀最大の犯罪者なだけあって必氏な抵抗を見せると思いましたが
意外な結果となりましたね」

『さて続いては最近流行りの謎のスイーツ?の特集です』

11: 2015/10/10(土) 19:02:02.697 et
男「...」

男「...」

男「あ」

男「声が出る...だが視界が暗いな...」

男「氏刑が失敗に終わって視力が無くなったということか?」

シーンッ

男「誰かいるか?」

シーンッ

男「病室ではないのか?ここで餓氏でもさせる気か?」

シーンッ

男「餓氏...と思ったが空腹の感覚がないな...」

12: 2015/10/10(土) 19:04:28.406 et
男「暗いな...」スタッ

男「立てるのか」

男「立てるんだな」

男「...」スタスタ

男「...」スタスタ

男「...」スタスタ

男「...」

男「どこだここは...どれだけ歩いても終わりがないぞ」

14: 2015/10/10(土) 19:05:51.131 et
男「...夢か?」

男「...」

男「わかった...わかった氏の世界かこれがそうか」

23: 2015/10/10(土) 19:26:15.230 et
男「さて、ドア以外にはとくに何もないみたいだな」

男「他に道があるというわけでもない」

男「…………開ける以外にとくにやることもないし1番のドアを開いてみるか」

ガチャリ…

男「っ……眩しいな」

男「なんだ……? 何か画面が……『リザルト』……?」

24: 2015/10/10(土) 19:30:07.192 et
男「歯磨きをした回数……睡眠時間の合計……どうでもいいやつばかりだな」

男「ん? これは……」

頃した人の人数:343人

男「……こんな項目もあるんだな」

男「これで終わりか」

男「ん……?」

男「343人……?」

男「待て、俺が頃したのは341人のはずだ……」

男「記憶力はある。忘れようと思ったこともない。殺人を行った回数は覚えている。覚えているはずだ……なぜ……」

25: 2015/10/10(土) 19:34:44.105 et
男「…………」

男「……思い出せないものは仕方ないか。次に行こう……」ガチャリ…

男「……? この部屋さっきより明るくなっていないか?」

男「誰か、いるのか?」

男「……2番に入るか……」ガチャリ…

男「……ここは『リプレイ』か」

26: 2015/10/10(土) 19:41:30.275 et
男「生前の記憶を振り返ることができるのか」

男「そうだ、ここで頃したことを覚えていない2人が誰か確認しよう…………」

……数十時間後

男「…………」

男「……これで最後の1人……やっぱり341人だけだ……」

男「一体、誰なんだ、残りの2人は」

男「…………!」

男「……妊婦、妊婦か……? あっ、あああ」

男「もしかして、あいつ、あの女……」

29: 2015/10/10(土) 19:48:22.244 et
昔、俺と同じ人間がいた。

人を頃すことに呵責を感じず、さながらライフワークのように殺人を行っていた俺と同じ人間……だが一つだけ違うところがあった。

そいつは男の俺とは違い、女だった。

運命の悪戯だろうか、必然か、偶然か、俺たちは出会った。ある日の夜、ふと人を殺そうと思い一軒家に入った時に、ばったりと。

そいつも同じ目的で他人の家に入り込んだらしい。他人の家の中で俺たちは共感し、そのあと二人で住人を頃した。

この出会いのあと、ずっと二人で人頃しを続けていた。

そして俺たちは、やがて互いの身体を貪るようになっていった。

30: 2015/10/10(土) 19:48:49.182 et
>>28
すまん別人だ

34: 2015/10/10(土) 19:55:55.116 et
そいつを殺そうとは思わなかった。

俺が自頃しなかったのと同じ理由だ。俺と同じ人間を殺そうとなんてつゆほどにも思わない。

だが、奴は変わった。

変わってしまった――俺と同じ人間から、俺とは違う、殺人対象に。

だから頃した。

あいつは最後、ナイフを振るう俺に必氏に抵抗して、でも氏んだ。

なんであいつが変わったのか、そのときの俺はまるで気付かなかった。

でも今はわかる。

男「俺の、俺たちの子どもを……孕んでいたのか……」

それに気付いた瞬間、目から涙がこぼれた。俺のような人間にも人情があったというのか……俺がこんなになるんだ。あいつが『変わってしまっ』たのにも納得がいく。

俺は泣いた、もう取り戻せない幸せに悔いて。

36: 2015/10/10(土) 20:00:06.521 et
男「出よう……」ガチャリ…

男「俺はあいつを頃すとき、一緒に子どもを頃していたのか……だから、343人……」

男「双子だったのかな……あるいはもう一人、妊婦を頃していたのかもしれない、な……」

男「最後は3番のドア、か」

男「入ろう……」

ガチャリ…

男「3番目の部屋……『アゲイン』……?」

39: 2015/10/10(土) 20:04:17.702 et
男「この部屋では、自分が関わった既に氏んでいる人間と出会えることができる……っ!」

男「あ、あいつとも、会えるのか……?」

男「…………」

男「俺は、あいつと会っても、いいのか……?」

男「あいつと、子どもを頃した、俺に……その権利が……?」

男「いや、権利とか、そんなものじゃない。……怖いんだ、あいつに何を言われるかが……」

男「……」

男「…………」

男「…………会おう、あいつと、子どもに……」

40: 2015/10/10(土) 20:09:15.807 et
男「あいつと、俺たちの子どもに、会わせてくれ……」

男「…………あっ」

女「……」

男「……ひさしぶり」

女「ああ……お前か」

男「子どもは……?」

女「私の腹の中に、まだ」

男「そうか……」

男「すまない……すまなかった!」

女「……」

男「せっかく、せっかく幸せを掴めたのに、二人の幸せを、得られそうだったのに……! これが、これが殺人鬼の末路……!? なんで、なんで俺は人を頃す……頃したあ!? ごめんごめんごめん、すまないすまないすまない」

男「あああっ、なんで、なんでえ……」

女「……私はさ、いや、私たちはさ、生まれ変わろうと思ってるんだ」

男「え……?」

42: 2015/10/10(土) 20:17:53.998 et
女「たださ、転生するにしてもまずはここでお前に会わないとなと思ってね」

男「それは……」

女「色々と思うことはお互いにあるけどさ……たしかに私はお前のことが許せない、けれどもあれが殺人鬼に相応しい末路だと思ってる自分もいて、それでもお前のことがやっぱり好きで子どもと三人で幸せになりたいという思いも強い」

女「というか、それが一番だ」

女「結局は自分が一番可愛いんだろうな。頃した奴等にはすまないとは思っているけれど、やっぱり幸せになりたい」

男「…………」

女「なあ、一緒に生まれ変わろう。そして来世では、普通の人間になって二人で出会って、そしてこの私のお腹にいる子どもをもう一度孕んで、そして普通の家族になろう」

女「ほら……ここを出て最初にいた場所に戻るんだ。あそこに4番目の扉が出来ているはずだ。そこを開けば転生できる」

男「ありがとう……わかった」

女「……それじゃあ待ってるよ…………」

男「…………行こう」

男「……いや、もう一人、会わないと」

男「俺が頃したことを知らない……もう一人に……」

50: 2015/10/10(土) 20:33:42.472 et
男「……俺が知らない、頃したもう一人に会わせてくれ……」

女性「…………」

男「……あなたが……」

男「……今更ですが俺は……あなた、あなたたち、にっ!」ガシィッ!

男(首を、掴まれ……仕方ない、仕方ないよな……これは)

女性「……お前を生まなければッ!」

男「……っ!?」

女性「お前を生まなければ私は氏ななかったァ!」

男「……なっ!」

男「ま、まさ……か」

男「母さん……なのか!?」

53: 2015/10/10(土) 20:42:40.347 et
俺が初めて殺人を犯したのは17歳だった。頃したのは見知らぬオジサンだった。

だから俺はそれ以前に人など頃していないだろうと踏んで17歳の時点から殺人の記録を見始めた。

だがそれは誤りだった。

俺が初めて殺人を犯したのは17歳のある日ではなく――0歳、それも産まれた瞬間だった。

母「お前が産まれたせいで私は氏んだァ!」ギュウウウウ

男(母の姿は写真でも見たことがなかった……今目の前にいるこの人の姿は俺よりも若い……氏んだ時の姿のまま、ここで俺を待っていたのか)

男(ああ……幽霊でも首を絞められれば気分が悪くなるんだな……この部屋の扉が、遠い……)

男(…………あぁ……)

54: 2015/10/10(土) 20:48:22.869 et
男(俺はもうこのまま意識を失って、あの扉にたどり着くことはできないんだな……あいつとの約束も果たせない……)

男(…………すまない)

母「お前は! お前はッ!」

?「うおおおおおおおおおッッッ!」

母「!?――ゲヒッ!」ドガァ

男「なっ!?」ドサッ

女「ほら! 行くぞ!」ガシィ

男「おおおっ!?」

母「……っ! 待てッ! 待て!」

女「待つかよ!」タタタッ!

女「お前もしっかり走ろ!」タタタッ!

男「あ、ああ!」タタタッ!

――ギィ ガチャン!

56: 2015/10/10(土) 20:54:58.136 et
女「はあっ! はあ、はあ……逃げ切れたな……」

男「っ……眩しっ……ここってこんなに明るかったか……?」

女「さあね、私が最初にここに来たのはもう何年も前だからな……というかお前、なんであんなことになってたのさ……私がなんとなく様子を見に来たからいいものを……」

男「すまんね……っと、奥の道にドアが……あれが生まれ変わるために通る道……?」

女「ああ、そうだ。せっかくみんな揃ってここにいるんだ。一緒に行こうぜ」タッタッ…

男「そうだな…………これが4番目の扉……『リンカーネーション』」

59: 2015/10/10(土) 20:59:40.248 et
女「さて、ここを通れば私たちは別々に生まれ変わる。どこで、それにいつ生まれ変わるかもわからない。二度と出会えるかもわからない」

男「要は神頼み、か……」

女「そうだな。けれどもここで立ち往生したってつまらないだろ?」

男「それもそうだ。それじゃあまたお前に出会えることを願って」

男「そして……お前にもな」スッ

女「ふふ……」ニッ

女「……よし。それじゃあ、また会おう」ギィ

男「おう、それじゃあ、また」スッ

ギギギ…

ガチャン!



~おわり~

62: 2015/10/10(土) 21:04:56.299 et

引用元: 男「死後の世界?」死刑囚A「ああ」